当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は「われわれは 知恵と汗を礎にして 社会に貢献する」を社是とし「柔軟な発想と技術で、環境にやさしい空調製品の開発に努め、あらゆる用途・空間に最適な空調を提供していくこと」を目指しております。
同時に、当社は、サステナビリティの視点を経営の中核に位置づけ、環境問題や社会課題の解決を通じて事業機会の創出を図ることを目指しております。
(2)目標とする経営指標
当社は、顧客の分野別に需要をとらえ、付加価値の高い製品を分野別に供給することで販売および収益につなげる経営戦略を掲げており、売上高営業利益率を主要経営指標の一つとしております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
業務用空調においては、温度に加えて湿度・清浄度・気流などを用途に応じて最適にコントロールすることが求められます。
また、気候変動対応のため温室効果ガス排出量削減に取組むべく、新製品開発にも積極的に取組みます。
当社は、工場などの「産業分野」、オフィスビル、ショッピングセンターなどの「商業分野」、病院、学校などの「保健分野」の3つに類別し、「分野別最適空調」を推進しております。
・産業分野においては、生産される製品や取り扱う資材に応じた空気質の管理を行うことで、製品の信頼性の向上および品質の維持に貢献します。
・商業分野においては、省エネ、省コストによって競争力を高めていくことで、建築物の付加価値向上に貢献します。
・保健分野においては適切な温熱環境を保つことで、健康増進と知的生産性の向上に貢献します。
(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
わが国経済は、経済活動の正常化が進み、設備投資の進展や個人消費の持ち直しがみられる一方、資源やエネルギー価格高騰の長期化、為替変動、地政学リスクの高まりなど、経営環境は不透明な状況が続いています。
また、地球環境や社会へ配慮した企業経営がますます重要となる中で、当社は、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の最大化を目指しております。このような経営環境において、当社はサステナビリティの視点を経営の中核に位置づけ、以下の重点課題に取り組んでまいります。
① 空調システムメーカーへの進化
さらなる省エネルギーの推進、空気質の向上には、空調機器そのものの性能向上に加え、高度な制御技術を活用し、空調システム全体を最適化することが必要不可欠です。当社は、「空調機器メーカー」という従来の枠を超え、空調全体をシステムとして提案できる「空調システムメーカー」を目指します。
② 事業活動を通したカーボンニュートラル社会の実現への貢献
地球温暖化対策は、地球規模で取り組むべき重要課題であり、空調業界においても大きな課題・機会と捉えています。
当社においては、「斜平形楕円管熱交換器の製品化」「制御技術の充実」「省エネ計算の提案」などにより、自然力を活用した高効率空調を確立するとともに、放射空調や加湿暖房、外気冷房などきめ細かい技術を導入し、さらなる省エネを目指します。
また、省エネ化をより一層推進する研究ならびに製品開発のため、試験研究棟の建設を進め、2050年CO₂排出量実質ゼロ(スコープ1・スコープ2)達成を目指し、全社挙げてこれに取り組みます。
③ 健康で衛生的な空気質
空調は、コロナ禍以降、従来の快適性に加え、健康で衛生的な空間の実現が求められてきました。当社は、換気を主な目的とした熱回収外調機やルーフトップ外調機等を供給してまいりました。今後、制御技術の充実や、空気清浄力の強化等にも積極的に取り組みます。
④生産力の増強と生産効率・省エネの推進
今後の当社の成長のためには、生産力増強が重要な課題であり、八尾製作所の建て替え等を進めています。これら生産部門は、新基幹システム等の各種DXの推進による効率の改善および再生可能エネルギー導入等による省エネの推進に取り組んでまいります。
⑤ 人財育成を通した企業体質の強化
全社員にサステナビリティの浸透を図るとともに、「社是」「企業倫理規範」および「社員行動規範」の実践を通じて次の時代を生き抜く人財を育て、経営基盤を強化します。
また、健康経営や自己研修制度の充実等の人的資本投資を通して、社員一人ひとりが心身ともに健康でいきいきとした人生を送れ、やりがいを感じて働ける会社を目指してまいります。
(1)サステナビリティ全般
空調の役割は、快適・適切な空気環境づくりに加えて、環境にも配慮し、健康で衛生的で心身ともに豊かな生活を送るための手段として進化していくものと考えられます。
今後、私たち木村工機は、強靭な経営基盤を構築し、空調事業を通して豊かな社会の実現を目指します。
① ガバナンス
当社では、社長を委員長としたSDGs推進委員会を設置しています。その配下に環境・社会・ガバナンスそれぞれの委員会を、さらにその配下にはマテリアリティごとの部会を設置しています。
サステナビリティについての取り組みや目標は、これらの委員会にて原案が作成され、取締役会の助言を受け決定します。目標の実現に向けての取り組みは、各部会の担当者が中心となり各部署の日々の活動を通して行われます。
② 戦略
当社は、「空気のちからで社会を豊かにする」をスローガンに掲げています。
このスローガンのもと「エコ」と「ウェルネス」の視点で「社会課題の解決」に真摯に取り組み、社会と自社の成長を目指します。また、同時に「自社の変革」を推進し、高い対応力を持ったレジリエンスな体制を構築します。
具体的にはガバナンス・コンプライアンス・リスクマネジメントを基盤とし、以下の4つのアクションを実践していきます。
<サステナビリティ戦略>
a.エコ ソリューション
熱回収、高効率コイル、自然熱源利用など、省エネを追求した環境にやさしい製品の開発とその普及により社会課題の解決に取り組みます。
b.エコ トランスフォーメーション
再生可能エネルギーの活用、化学物質の使用量の削減、廃棄物の削減などにより、自社の変革に取り組み、責任あるものづくりができる体制を構築します。
c.ウェルネス ソリューション
外調機や放射整流ユニットなど、健やかで衛生的な製品の開発や提案によって空気質の価値創造を図ることで社会課題の解決に取り組みます。
d.ウェルネス トランスフォーメーション
ダイバーシティ、健康経営、ステークホルダーとの協働などにより、自社の変革に取り組み、いきいきと働ける環境を構築します。
また、このアクションごとにマテリアリティを抽出し、取り組みを設定しています。
<マテリアリティと主な取り組み>
③ リスク管理
当社はリスクマネジメントをサステナビリティに関わる重要課題と認識し、ガバナンス委員会の配下に設置したリスクを担当する部会を中心に強化を図っています。
部会では、リスクについて「外部要因リスク」「内部要因リスク」「特殊リスク」の3つに分類し、事業に与える影響度と発生頻度を評価し重要度を決定しています。
この重要度に応じて抽出したリスクに対して「モニタリング」、「改善」等が機能するPDCAサイクルを構築することで低減を図っています。
また、毎四半期に開催されるSDGs推進委員会にて報告・協議され、その結果は取締役会に報告されます。
緊急時の事象については、対策本部を設置し、迅速に報告・連絡・判断をとるようにしています。
なお、リスクの詳細は、「
④ 指標及び目標
各マテリアリティに応じた担当部会単位で毎期初に定性的、定量的な指標・目標が設定されます。また、これらは四半期ごとにSDGs推進委員会に進捗が報告され、その概要は取締役会に報告されます。
(2)気候変動への対応
① ガバナンス
気候変動対応におけるガバナンスはサステナビリティ全般におけるガバナンス体制に組み込まれています。「
② 戦略
当社は、気候変動が事業に与えるリスクと機会をシナリオごとに分析し、事業戦略立案の指針としています。これに基づき「
<リスクと機会の評価>
a.リスクの評価
|
リスク 分類 |
事象 |
|
|
事業インパクト |
財務 インパクト |
対処 |
||
|
2℃上昇 |
4℃上昇 |
2℃ |
4℃ |
|||||
|
物 理 的 |
急 性 |
大型台風、海面上昇などの風水害 |
発生可能性が高い |
発生可能性が非常に高い |
操業停止に伴う機会損失 |
小 |
中 |
・代替生産体制の確立 ・災害への設備対応 |
|
設備の損傷・倒壊に伴う修理・更新 |
中 |
大 |
||||||
|
製品在庫の損傷 |
小 |
中 |
||||||
|
慢 性 |
各地の災害による供給不安(代替素材の争奪など) |
原材料の獲得競争発生 |
原材料の獲得競争激化 |
原材料価格の高騰 |
小 |
中 |
・製品のコンパクト化 ・調達先の開拓 ・代替材料の研究開発 |
|
|
移 行 |
政 策 ・ 法 規 制 |
各種規制(省エネ、温室効果ガス等)強化 |
更なる規制の強化 |
現状の規制が継続 |
エネルギーの使用制限強化 |
小 |
― |
・各種再エネの導入 |
|
フロンの使用量の制限強化 |
小 |
― |
・低GWP冷媒使用製品の開発 |
|||||
|
省エネ性能規制強化 |
小 |
― |
・省エネ製品の開発、認知向上 |
|||||
|
炭素税などの導入 |
小 |
― |
・カーボンオフセットの活用 |
|||||
|
市 場 |
顧客の意識の変化 |
意識の変化大 |
意識の変化小 |
環境配慮型製品へのシフト |
小 |
小 |
・省エネ製品の開発、認知向上 |
|
b.機会の評価
|
機会 分類 |
事象 |
|
|
事業インパクト |
財務 インパクト |
対処 |
|
|
2℃上昇 |
4℃上昇 |
2℃ |
4℃ |
||||
|
製品 |
省エネ・省資源製品の需要の増加 |
需要急増 |
需要は現状維持 |
小型・長寿命製品の需要増 |
小 |
小 |
・小型、長寿命製品、部品の開発 |
|
省エネ製品の需要増 |
中 |
小 |
・省エネ製品の開発、生産力の強化 |
||||
|
フロン使用量・漏洩リスク削減 |
大 |
中 |
・少フロン製品の開発・漏洩防止システム対応 |
||||
|
ヒートポンプ製品の需要増 |
大 |
中 |
・ヒートポンプ製品の普及 |
||||
|
市場 |
低GWPフロン冷媒への移行要請 |
低GWPフロン冷媒へ急速に移行 |
現状維持 |
低GWPフロン冷媒への移行 |
中 |
小 |
・低GWPフロン冷媒利用製品への改造、開発 |
|
大型台風、海面上昇などの風水害に対する防災関連需要の増加 |
需要増加 |
需要急増 |
防災対策の市場拡大 |
小 |
小 |
・災害対応オプションの推奨 |
|
|
災害による建物修繕工事の増加 |
小 |
小 |
・販売活動の充実 |
||||
|
温暖化地域の増加 |
要空調地域の逓増 |
要空調地域の急増 |
冷房要求エリア・空調対象施設の増加 |
中 |
大 |
||
|
強靭性 |
気候変動に伴う動向は予測不能 |
環境規制等が大きく変化 |
環境規制等の変化は少ない |
この先の各国における環境規制、技術革新、顧客行動の変化などへの対応 |
大 |
小 |
・ヒートポンプ製品と冷温水製品の両方の製造販売体制を維持 |
|
・気候や新基準に対応した独自性のある製品を迅速に開発する体制を推進 |
|||||||
|
・多様な分野を対象とした「分野別最適空調」を推進 |
|||||||
③ リスク管理
気候変動対応におけるリスク管理は、「(2)気候変動への対応 ② 戦略」にて分析した「対処」などに基づいて、SDGs推進委員会にて行われます。
年度ごとに抽出された重点テーマを中心に改善活動等がなされ、四半期ごとに開催されるSDGs推進委員会にて報告・協議されます。
また、その結果は取締役会に報告されます。
④ 指標と目標
当社は、SCOPE1・2におけるCO2排出量を把握し、将来における削減目標を定め、これの実現に努めています。SCOPE1・2におけるCO2排出量の目標は以下のとおりです。
・2030年度:2019年度比50%
・2050年度:CO2排出量実質ゼロ
当事業年度は、各製作所及び一部の事業所においてCO2フリー電力に切り替えることができたこと、加えて、化石燃料の使用を一部電力使用に切り替えることができたことなどで、CO2排出量は大幅な減少となりました。
なお、当社の直近のCO2排出量は以下のとおりです。
<CO2排出量の推移>
単位:t-CO2
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|
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
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SCOPE1 |
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|
|
|
|
|
SCOPE2 |
|
|
|
|
|
|
合計 |
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|
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2019年度比 (%) |
100.0 |
89.4 |
88.7 |
87.7 |
39.8 |
(3)人的資本
① ガバナンス
人的資本におけるガバナンスはサステナビリティ全般におけるガバナンス体制に組み込まれています。「
② 戦略
a.人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針
当社は、全社員にサステナビリティの視点の浸透を図るとともに、「社是」「企業倫理規範」および「社員行動規範」の実践を通じて、次の時代を生き抜く人材を育て、経営基盤の強化を目指しております。
上記を実現するために、当事業年度は主に以下の取組みを進めました。
イ.研修実績
|
|
研修内容 |
対象者 |
形態 |
受講率 |
|
1 |
インサイダー取引防止 |
新入社員 |
集合研修(オンライン含む) |
100% |
|
2 |
メンタルヘルス研修 |
新入社員 |
集合研修(オンライン含む) |
100% |
|
3 |
ハラスメント研修 |
新入社員 |
集合研修(オンライン含む) |
100% |
|
4 |
心理的安全性 |
全管理職 |
eラーニング |
100% |
|
5 |
なぜなぜ分析講習 |
製作所該当者 |
集合研修(オンライン含む) |
100% |
ロ.研修制度の拡充
従来から実施しております入社時研修、コンプライアンス研修、ISO9001に基づく教育訓練等に加え、2023年11月にはeラーニングシステムを新たに導入し、研修メニューの拡充を図りました。
ハ.資格保有者の状況(2024年3月31日現在)
|
資格内容 |
人数 |
|
|
国家資格 |
高圧ガス製造保安責任者 |
20名 |
|
管工事施工管理技士 |
16名 |
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|
冷凍空気調和機器施工技能士 |
8名 |
|
|
電気機器組立技能士 |
6名 |
|
|
電気工事士 |
33名 |
|
|
民間資格 |
冷媒フロン類取扱技術者 |
18名 |
|
冷凍空調技士 |
27名 |
|
ニ.「自己研修手当」制度の新設
今後の当社の変革・成長の実現のためには、社員のさらなるレベルアップが必要と考えます。
当社は、社員(契約社員を含む。)の自発的な能力開発を奨励し、人材育成の促進を目的として「自己研修手当」を新設し人的資本への投資を進めてまいります。(支給開始は2024年6月より)
ホ.「資格手当」制度の改定
社員の資格取得を奨励、サポートするため、かねてより「資格手当」を設けております。
社員のさらなる能力開発・リスキリングを目的に対象資格の拡充および支給金額の増額改定を実施いたします。(改定は2024年6月より)
b.社内環境整備に関する方針
当社は、様々な価値観や個性を持つ人々が“働きやすく”“活躍できる”職場環境を目指しております。そのため異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観を尊重し、様々なライフステージにおいて安心して仕事ができ、能力が発揮できる体制を構築してまいります。
上記を実現するために、当事業年度は主に以下の取組みを進めました。
イ.安全衛生の取組み
当社では、「法令遵守・安全第一を行動の基本とし、リスク発生の未然防止を徹底する」を方針として定め、全社員が安全で健康に働ける環境を維持していくことを目指しております。
その実現のために、各事業所に「法令・安全衛生委員会」を設置し、社員の健康増進や各製作所におけるリスクアセスメント等について協議し、改善活動を推進しております。
ロ.「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」の認定取得
2024年3月11日付で経済産業省と日本健康会議が共同で実施する健康経営優良法人認定制度において、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。
健康経営の推進体制は、取締役会直轄の「SDGs推進委員会」の部会である「健康安全部会」が中心となり、各事業所の「法令・安全衛生委員会」と連携し推進しております。
ハ.「ホワイト企業認定」の取得
2023年6月1日付で一般財団法人日本次世代企業普及機構による「ホワイト企業認定」GOLDランクを取得いたしました。
この認定制度は、「次世代に残すべき素晴らしい企業」「家族に入社を勧めたい企業」を選定することをコンセプトとしており、当社の人材育成やダイバーシティに関する取組みが評価されたものです。
当社の採用活動や社員の定着率向上に寄与するものであり、翌事業年度は最上位のPLATINUMランクの認定取得に取り組みます。
ニ.「育児・介護休業規程」の改訂
育児や介護と仕事の両立支援を目的に、下記のとおり、規程を改訂いたしました。
本改訂は、「育児・介護休業法」が定める条件を上回る内容であり、当事業年度における当該制度の利用者は、延べ33名であり、子育てや介護世代の社員の両立支援に寄与しております。
(2023年4月1日付)
子の看護休暇、介護休暇の有給化
(2024年1月10日付)
「長期育児休業」の新設
子が2歳以降、3歳に達するまで休業可能(給与は基本給の20%を支給)
「育児・介護時差勤務」の新設
小学校4年生の始期までの子の養育、または要介護状態にある家族を介護する場合、最長1時間の時差勤務が可能
「育児短時間勤務」の期間延長
従来の「小学校就学の始期まで」を、「小学校4年生の始期まで」に延長
ホ.「メンター制度」の導入
社員の定着を目的に、2023年度新卒新入社員を対象に「メンター制度」を導入しました。
本制度により、新入社員の不安や悩みを解消し、定着(離職者:0名)に寄与いたしました。
③ リスク管理
人的資本におけるリスク管理は、SDGs推進委員会の人財開発を担当する部会で年度ごとに抽出された重点テーマを中心に改善活動等がなされます。また、四半期ごとに開催される当委員会にて報告・協議され、その結果は取締役会に報告されます。
④ 指標と目標
人材の多様性確保や女性活躍、男性の育児参画支援の観点において重要とされる、下記指標の目標を定めマネジメントしております。
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指標 |
目標 |
実績(当事業年度) |
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男性育児休業取得率 (育児目的休暇の取得を含む。) |
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本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありません。
リスク分類
当社は、想定されるリスクを3つのカテゴリーに大分類し、その大分類の中をリスクの性質に基づき、個別のリスクとして把握しております。
リスクの大分類としては、「外部要因リスク」、「内部要因リスク」、「特殊リスク」をあげております。
・外部要因リスクとは、そのリスクの原因が外部要因によるものです。
・内部要因リスクとは、そのリスクの原因が内部要因によるものです。
・特殊リスクとは、本来外部要因リスクまたは内部要因リスクに分類すべき事項ですが、投資判断上特に注目度が高いと思われるリスクについて、別のカテゴリーとして分類しているものです。
(1)外部要因リスク
①自然災害リスク
当社は、日本全国に本社・支店・営業所および3か所の工場を有しております。地震による被害、気候変動による台風等風水害の規模拡大による自然災害により、当社の施設および従業員が被害を受ける可能性があります。それに加え、当社ステークホルダーおよび日本国内全体にも被害が及ぶ可能性があります。
これにより、当社の事業遂行に直接的または間接的な影響が発生するだけでなく、日本国自体も影響を受けることは否めません。こうした事態となった場合のため、事業継続計画の策定、各拠点の整備改善および保険契約により、対策を講じております。
しかしながら、想定を超える被害が生じた場合、当社の事業遂行、経営成績および財政状態に影響が生じる可能性があります。
②外部調達リスク
当社の製品を製造するためのエネルギーや製品を構成する銅やアルミ等の主要原材料および室外機や圧縮機等の主要部品は、経済情勢、国際情勢や為替相場等の影響や調達先の生産状況等により、価格の大幅な上昇もしくは調達が困難になる可能性があります。これに伴い、生産・営業活動が停滞ないしは停止するリスクがあります。
また、当社は、生産性向上および外部企業が持つ高いスキルを活用するなどの目的で、外部企業への製造・加工の委託、物流、工事等の役務の提供を受けております。経済情勢等によるコストの上昇や人員の確保の困難等により、価格の大幅な上昇もしくは役務の提供が困難となるリスクがあります。
上記のリスクについて、サプライチェーンの見直し、原材料・主要部品の備蓄、設計の変更、新規外注先の開拓等の対策を講じております。
しかしながら、対策を超える事態が生じた場合には、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③経済環境リスク
当社は製造販売を全て国内でおこなっており、国内の経済情勢、日本の国際競争力の低下、DX等の情報インフラ整備の遅れ等、日本国自体の経済・政治状況に依拠しております。これに伴い、大幅な為替変動、大幅な金利上昇、国内の設備投資の減少およびエネルギーを始めとする原材料の調達困難等のリスクがあります。
このために、たゆまぬ業務改善、製品力の向上および財務体質の改善を図っております。
しかしながら、こうした企業努力で吸収できないような事態が生じた場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④外部からの攻撃リスク
当社事務所・工場を含む国内でのテロ等の破壊行為および機密情報を含む窃取行為、サイバーテロ等による当社を含む国内情報システムへの攻撃による当社の施設、情報資産を含む資産および従業員に対する被害、生産・業務システムが正常に稼働しないなどの可能性があります。
こうした事態となった場合のため、事業継続計画の策定、警備会社との契約、サイバーセキュリティに対する施策、サーバーの物理的安全管理措置の強化やクラウド化等により、対策を講じております。
しかしながら、想定を超える被害が生じた場合、当社の事業遂行、経営成績および財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑤感染症等リスク
新型コロナウイルス感染症が5類移行したものの今後も新型感染症の拡大により、当社人員の確保、原材料等のサプライチェーンの混乱、その他感染症拡大のための措置により、当社業務運営に障害が発生するリスクがあります。
上記への対策として、感染拡大期においては在宅勤務・時差出勤の実施や衛生管理の徹底により、感染拡大防止を図る方針です。
しかしながら、想定以上の感染拡大が生じた場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥法令等変更リスク
当社の展開する事業に関する法的規制としては、外注先を利用する場合の製品製造・保守等に関する「下請代金支払遅延等防止法」、許認可を要する空調設備設置工事に関する「建設業法」、工場等で排出する産業廃棄物に関する「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、フロンガスの管理等に関する「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」等があります。関連法令の改正に加え、環境規制の強化がおこなわれる可能性があり、製品開発や事業展開が制限されるなどのリスクが生じる可能性があります。また、法令違反の事象が発生した場合、許認可の取消を受けるなど事業上の問題が発生する可能性があります。
上記のリスクに対して、法改正や環境規制の強化については十分な情報収集をおこない、前倒しに対応できるように準備をおこなっております。加えて、法令遵守に関しては、当社内において周知徹底し、法務部門によるモニタリングを実施するとともに、内部監査による定期的な確認も実施し、法令違反が発生しないように努めております。
こうした対策が十分に機能しない場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦知的財産権リスク
当社に対し、第三者より知的財産権の侵害についての提訴または通知を受けるリスクがあります。こうした提訴等への対応に伴い、訴訟に係る多額の費用の発生、権利侵害に伴う損害賠償および侵害の対象となった技術を利用できないなどの可能性があります。
こうした事態となった場合のため、専門部署を設置し、特許事務所とともに、特許権を含む知的財産権を管理しております。
しかしながら、対策を超える事態が発生した場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)内部要因リスク
①人的資本リスク
事業遂行に当たり、優秀な人材を採用し、確保し続けることは、当社の競争力を維持するために必要不可欠であると考えております。しかしながら、人口減少、少子高齢化およびそれに伴う人件費、派遣費等の上昇により、事業継続に必要な人員の確保が困難となることや処遇を含めて当社の魅力が低下した場合に人材流出が起きるリスクがあります。
これらのリスクについて、賃金等の適正な引上げ、労働環境の整備、業務プロセスの見直しによる効率化、教育・リスキリング等の教育投資の実施等の対策を講じております。
しかしながら、対策が十分な効果を発揮しない場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②製品競争力低下リスク
製品価格と性能との比較から見た割高感や研究開発の遅れによる競争力の低下により、製品(価格)競争力が低下するリスクがあります。
顧客の声を広く収集し製品開発に活かすマーケティング活動、コスト削減、生産性向上、研究開発投資の継続等の対策は講じております。
しかしながら、対策が十分な効果を発揮しない場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③情報システムリスク
当社は、販売、生産、経理、労務管理等において情報システムを利用しております。プログラミングミスや人為的ミスにより、システム障害による業務運営の障害や情報漏えいが発生するリスクがあります。これに加え、情報漏えいに伴い、第三者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
また、当社では、現在全体的にDX化を進めておりますが、適切なDX化を図れない場合や改善効果が乏しい場合等、当社の業務上の効率性が他社比劣後することが想定され、当社の市場における競争力が低下するリスクがあります。
上記のリスクについて、トップダウンによるDX化やセキュリティシステムの導入、内部統制の強化、情報漏えいに備えた保険契約をおこなっております。
しかしながら、対策が不十分な場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④事務・業務リスク
製造ミス、設計ミスに起因する当社製品の不良や業務過誤により、損害賠償や当社信頼感の低下を招くリスクがあります。
上記のリスクについて、品質管理の徹底、設備等の更新・改良、内部統制の徹底および保険契約等による対策を講じております。
こうした対策を超える損害が発生した場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤コンプライアンスリスク
セクハラ、パワハラ、社員による刑事事件、社員等による不正により、金品等の盗難、機密情報の持出し、損害賠償請求、労働環境の悪化による人材流出、新規雇用への影響、株価への影響等のリスクがあります。
上記のリスクについて、内部統制の徹底、従業員教育、内部通報制度の整備等により、対策を講じております。
こうした対策を超える損害が発生した場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥信用リスク
当社は、総合建設業者、設備工事業者、施主等と取引をおこなっております。これらの取引先に対し貸倒れ等の不良債権の発生による損失の発生や財務体質の悪化が生じる可能性があります。また、不良債権額が多額の場合、株価の下落、資金調達への影響が発生するリスクがあります。
上記のリスクについて、信用調査に基づく取引限度額の設定や定期的な取引状況の把握による信用リスクの低減に努めております。
現時点において当社の事業継続に影響を与える規模の不良債権の発生の可能性は低いと考えておりますが、仮にそうした事態となった場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦減損リスク
当社は、事業用の資産として、有形・無形の固定資産を保有しております。事業に供しているこれらの資産については、業績が低迷し、事業から得られる将来のキャッシュ・フローの見積りが帳簿価額を大幅に下回った場合、減損処理が必要となる場合があります。
減損処理が発生した場合には、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)特殊リスク
①地政学リスク
世界各地における戦争・テロ(サイバーテロを含む。)により、サプライチェーンの混乱、経済のブロック化、大国対立の先鋭化等の可能性があります。これにより、当社の事業遂行に直接的または間接的な影響が発生し、国内情勢も影響を受けることは否めません。
こうした事態となった場合のため、サプライチェーンの見直しや主要部品の備蓄等による、対策を講じております。
しかしながら、想定を超える事態が生じた場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②気候変動への対応リスク
世界的に気候変動に対する意識は高まっており、特にCO2の削減を念頭においた「カーボンニュートラル」への取組みが企業行動のうえで不可欠となってきております。
このため、カーボンニュートラル対応の遅れ、特に「温室効果ガス」対策への取組みの遅れおよび環境適応力の劣後が、当社競争力の低下につながるリスクがあります。
上記のリスクについて、SDGs対応強化、温暖化係数の低い冷媒の使用および機器のパッケージ化・システム化技術による温暖化ガスの使用量削減・漏洩策等による対策を講じております。
しかしながら、対策が十分な効果を発揮しない場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当社は、空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は省略しております。
①財政状態の状況
当事業年度末における総資産は、前事業年度末より2,490,190千円増加し、20,160,222千円となりました。
当事業年度末における負債は、前事業年度末より594,754千円増加し、10,510,198千円となりました。
当事業年度末における純資産は、前事業年度末より1,895,435千円増加し、9,650,023千円となりました。
②経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化が進み、設備投資の進展や個人消費の持ち直しが見られるなど景気は緩やかな回復基調にありました。一方で、資源・エネルギー価格高騰の長期化、世界的な金融引き締めによる為替変動、地政学リスクの高まりなど、企業の経営環境は依然として不透明な状況が続いております。
このような中、当事業年度の売上高については、コロナ禍で先送りされた設備投資の再開、生産体制の国内回帰の増加等に伴う国内設備投資需要を取り込めたことにより堅調に推移しました。産業分野においては、暑熱対策および空気質改善気運の高まりにより、工場用ゾーン空調機およびルーフトップ外調機を中心に導入が増加しました。商業分野においては、「換気」「省エネ」対策のため、オフィスビルを中心に熱回収外調機の更新需要が増加しました。
利益面においては、当社独自製品の売上が大幅増加したことに加え、生産工程の見直しや部品調達の多様化によるコスト低減などにより営業利益率が順調に改善し、対前年において増加となりました。
製造部門においては、八尾製作所内の主工場棟、管理棟の建て替えが完了しました。2023年9月8日公表の「八尾製作所の一部建物の建て替えに関するお知らせ」のとおり、残る工場棟の建て替えにも着手しております。さらに、八尾製作所および河芸製作所に試験研究棟の建設を予定しております。これにより、生産能力の強化、技術力の発展に一層取り組んでまいります。
また、全製作所においてCO2フリー電力を導入し、カーボンニュートラルに向けた省エネ製品開発とともに製造過程に発生するCO2排出削減へ積極的に取り組んでおります。
この結果、当期の経営成績は、売上高13,852,563千円(前年同期比18.4%増)、営業利益2,679,415千円(同70.4%増)、経常利益2,682,596千円(同71.1%増)、当期純利益2,065,512千円(同99.2%増)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純利益が2,681,959千円、有形固定資産の取得による支出1,449,536千円、長期借入れによる収入500,000千円、棚卸資産の増加額483,013千円等により1,716,096千円(前事業年度末は1,338,085千円)となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は2,000,629千円(前事業年度は548,267千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益が2,681,959千円、棚卸資産の増加額483,013千円、減価償却費447,943千円、仕入債務の減少額372,441千円、売上債権の増加額367,191千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,504,422千円(前事業年度は2,193,632千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,449,536千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は118,196千円(前事業年度は733,822千円の収入)となりました。これは主に、長期借入れによる収入500,000千円、短期借入金の純減少額255,000千円、長期借入金の返済による支出176,191千円、配当金の支払額143,519千円、自己株式の取得による支出81,285千円等によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
当社は、空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の実績につきましては、品目別に記載しております。
a.生産実績
当事業年度の生産実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
|
品目の名称 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
冷温水式AHU(千円) |
2,337,840 |
121.3 |
|
冷温水式FCU(千円) |
826,083 |
90.2 |
|
空冷HP式空調機&外調機(千円) |
8,156,185 |
141.0 |
|
冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機(千円) |
1,611,102 |
129.7 |
|
その他(千円) |
2,352,045 |
107.8 |
|
合計(千円) |
15,283,257 |
126.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当事業年度の受注実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
|
品目の名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
冷温水式AHU |
2,379,379 |
122.3 |
967,693 |
126.8 |
|
冷温水式FCU |
890,736 |
94.4 |
222,912 |
134.8 |
|
空冷HP式空調機&外調機 |
6,361,167 |
83.7 |
3,352,076 |
82.7 |
|
冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機 |
1,387,621 |
91.0 |
895,691 |
104.3 |
|
その他 |
2,306,924 |
97.4 |
554,590 |
81.5 |
|
合計 |
13,325,828 |
92.6 |
5,992,965 |
91.9 |
c.販売実績
当事業年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。
|
品目の名称 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
冷温水式AHU(千円) |
2,174,978 |
116.8 |
|
冷温水式FCU(千円) |
833,226 |
93.0 |
|
空冷HP式空調機&外調機(千円) |
7,060,513 |
119.7 |
|
冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機(千円) |
1,351,075 |
142.5 |
|
その他(千円) |
2,432,768 |
115.9 |
|
合計(千円) |
13,852,563 |
118.4 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は特定の顧客への売上高が10%以上でないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメントごとの経営成績の状況の記載を省略しております。
a.財政状態
(資産)
当事業年度末における総資産は、20,160,222千円(前事業年度末17,670,032千円)となり、2,490,190千円増加いたしました。これは主に、有形固定資産の増加1,134,859千円、棚卸資産の増加483,013千円、現金及び預金の増加378,010千円、売上債権の増加367,191千円等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は、10,510,198千円(前事業年度末9,915,444千円)となり、594,754千円増加となりました。これは主に、未払消費税等の増加274,188千円、未払法人税等の増加260,895千円、未払金の増加192,359千円等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、9,650,023千円(前事業年度末7,754,588千円)となり、1,895,435千円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上による増加2,065,512千円の計上、自己株式の取得による減少81,077千円、剰余金の配当による減少143,495千円等によるものであります。
b.経営成績
(売上高)
経済活動の正常化が進み、コロナ禍で先送りされた設備投資の再開、生産体制の国内回帰の増加等に伴う国内設備投資需要を取り込めたことにより、売上高は堅調に推移しました。産業分野においては、暑熱対策および空気質改善気運の高まりにより、工場用ゾーン空調機およびルーフトップ外調機等の導入が増加しました。商業分野においては、「換気」「省エネ」対策のため、オフィスビルを中心に熱回収外調機の更新需要が増加しました。この結果、売上高は13,852,563千円(前年同期比18.4%増)となりました。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は、前事業年度に比べ629,774千円増加し、7,640,240千円となりました。売上総利益は前事業年度に比べ1,519,546千円増加し、6,212,322千円となりました。これは主に、当社独自製品の売上が大幅増加したことに加え、生産工程の見直しや部品調達の多様化によるコスト低減などによるものであります。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ412,929千円増加し、3,532,907千円となりました。これは主に、人件費の増加および売上増加による荷造運搬費の増加によるものであります。
以上の結果、営業利益は前事業年度に比べ1,106,616千円増加し、2,679,415千円となりました。
(営業外損益、経常利益)
営業外収益は、前事業年度に比べ14,473千円増加し、49,241千円となりました。これは主に、設備投資による補助金収入および公租公課の還付によるものであります。また、営業外費用は、前事業年度に比べ6,320千円増加し46,059千円となりました。これは主に、支払利息の増加によるものであります。
以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ1,114,770千円増加し、2,682,596千円となりました。
(特別損益、当期純利益)
特別損失は、前事業年度に比べ140,652千円減少し、636千円となりました。これは、前事業年度において、八尾製作所の建物建て替えに伴う固定資産除却損が発生したことによるものであります。
以上の結果、当期純利益は前事業年度に比べ1,028,370千円増加し、2,065,512千円となりました。
当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、市場動向、資材価格の動向、災害・事故・感染症拡大等、様々なリスク要因があると認識しております。
当社の事業が関係する空調業界におきましては、従来の快適性に加え、健康で衛生的な空間の実現が求められると同時に、省エネや温室効果ガス削減等の環境対応、製造現場の暑さ対策等の労働環境改善など持続可能な社会の実現に向けての欲求が高まっております。
市場動向に対しては、分野・用途毎に多様性のある空調ニーズに応えるため、先進的で付加価値の高い空調システム機器の開発を進めることで対応します。
資材価格の動向に対しては、鋼材、非鉄金属、原油等の価格上昇への対応として、資材取引先と従来以上に密接な情報交換を行うことにより関係を強化し、更なるコスト削減に努めてまいります。
災害・事故・感染症拡大に対しては、事前の対応策の立案、現場作業に携わる作業員の意識改革等の継続的な現場管理活動により、事業継続へ影響を与えるような災害・事故・感染症拡大の抑制に努めます。
今後は、エネルギー、資源価格上昇の長期化、世界的な金融引き締めによる為替変動、ウクライナ、中東における地政学リスクの高まりにより、企業の経営環境は不透明な状況が続くものと考えられます。
空調業界におきましては、地政学リスクやサプライチェーン対策による生産体制の国内回帰等、国内の設備投資需要は今後も続くものと考えられます。さらに、温暖化の傾向や工場現場の人手不足等の影響により、暑熱対策、空気質改善への取り組みも増えてくると考えられます。
このような中、当社は、製品開発については、斜平形楕円管熱交換器を搭載した新製品の開発を進め、省資源、省コスト化できる製品からシステムまでを提案してまいります。主な開発内容については、「第2 事業の状況の6 研究開発活動」に記載のとおりであります。
生産活動については、八尾製作所の主工場棟、管理棟の建て替えが完了し、生産力の増強に取り組むとともに、生産工程での脱炭素化の実現に努め、サステナビリティを推進してまいります。
販売面については、従業員の定着化を狙った現場環境改善、暑熱対策等のための需要を取り込むとともに、「陽圧換気空調システム」の営業活動を展開してまいります。さらに、通常の換気で発生する結露、カビ問題対策のための外調機関連の提案を積極化してまいります。
当社はこれら空調技術の進歩発展を通して社会に貢献することにより、持続可能な社会の実現を目指してまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の当事業年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の必要資金は、当社製品の製造販売に係る原材料費、経費、販売費及び一般管理費等の運転資金および設備投資に係る投資資金が主なものです。
財政状態は健全性を保っており、現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入金による資金調達により、事業拡大に必要な資金を十分に賄えると考えています。
また、金融市場の混乱等、緊急に資金が必要となる場合に備え、金融機関と当座貸越契約を締結し、資金流動性を確保しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、資産・負債や収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りおよび判断・評価は、過去の実績等を勘案し合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④経営上の目標の達成状況について
当社は売上高営業利益率を重要な経営指標として位置付けております。当事業年度における売上高営業利益率は19.3%(前年同期比5.9ポイント改善)であります。引き続きこの指標について、改善されるよう取り組んでまいります。
該当事項はありません。
当社における研究開発活動は、技術開発部門が主体となり、分野・用途毎に多様性のある空調ニーズに対し、先進的で付加価値の高いサスティナブル空調システム機器の開発を推進しており、以下の開発テーマを主な活動指針といたしております。
なお、当社は空調機器関連製品の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は省略しております。
・人の健康を支える良質な衛生環境を提供する製品開発
・快適性や生産性向上に繋がる高品質環境を提供する製品開発
・高効率で空調システム全体におよぶ省エネを実現する製品開発
・軽量・小型で施工性や利便性が高く設備コスト低減に繋がる製品開発
・機能性、拡張性の高い自動制御機器の開発
また、大学の研究室、顧客情報を集約する営業推進部門などとの連携により、システムや製品、部品の開発に繋げています。
当社は、当該年度の開発活動において、昨年度に開発した要素技術である「斜平形楕円管熱交換器(以下、斜平コイル)」を搭載した新製品を3機種リリースしました。
『冷温水式 高性能天埋形空調機』および『冷温水式 高性能たて形空調機』は、新しい設計によって、空調機のサイズを大幅にコンパクト化し、省資源と省エネに効果をもたらす特長を備えることで、冷温水式空調の付加価値を高めました。
また、『空冷ヒートポンプ式 熱回収外調機スリム形』では、斜平コイルを活用したスリム化を実現し、小型製品ラインアップの強化を図りました。
当機種は、従来機から室内機と室外機を一体型にした構造で少フロン(冷媒)を実現し、環境負荷低減に寄与していましたが、今回新たに温暖化係数の低いR32冷媒を採用することで、一層の環境負荷低減に貢献できるものと考えます。
さらに、これらの製品を組み合わせ、各機器の自動制御機能を連携させることで、「空調機&外調機連動制御」を可能としたシステムを新たに構築しました。
このシステムにより、運転動作のムダを削減し、省エネ効果をさらに高めることができます。
今後、当システムの信頼性向上のための効果検証を継続的に進めてまいります。
加えて、空調システムの年間消費エネルギーを予測する「省エネ計算プログラム」を新たに開発しました。このプログラムをZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)実現に向けた省エネ設備導入の一助とし、今後の提案活動および製品開発に活用してまいります。
今後も、柔軟な発想と信頼される技術力で人と環境にやさしい製品・部品作りを追求し、社会に貢献してまいります。なお、当事業年度における研究開発費は、