第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は「われわれは 知恵と汗を礎にして 社会に貢献する」を社是とし「柔軟な発想と技術で、環境にやさしい空調製品の開発に努め、あらゆる用途・空間に最適な空調を提供していくこと」を目指しております。

同時に、当社は、サステナビリティの視点を経営の中核に位置づけ、環境問題や社会課題の解決を通じて事業機会の創出を図ることを目指しております。

 

(2)目標とする経営指標

当社は、顧客の分野別に需要をとらえ、付加価値の高い製品を分野別に供給することで販売および収益につなげる経営戦略を掲げており、売上高営業利益率を主要経営指標の一つとしております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

業務用空調においては、温度に加えて湿度・清浄度・気流などを用途に応じて最適にコントロールすることが求められます。また、気候変動対応のため、新製品開発へ積極的に取組み、温室効果ガス排出量の削減に貢献してまいります。

当社は、工場などの「産業分野」、オフィスビル、ショッピングセンターなどの「商業分野」、病院、学校などの「保健分野」の3つに類別し、「分野別最適空調」を推進しております。

・産業分野においては、暑熱対策、生産される製品や取り扱う資材に応じた空気質の管理を行うことで、職場環境改善、製品の信頼性の向上および品質の維持に貢献します。

・商業分野においては、省エネ、省スペースによって競争力を高めていくことで、建築物の付加価値向上に貢献します。

・保健分野においては、適切な温熱環境を保つことで、衛生管理、健康増進、知的生産性の向上に貢献します。

 

(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

わが国経済は、企業の設備投資の増加、雇用環境や個人所得の改善により景気は引き続き緩やかな回復基調にありましたが、資源・エネルギー価格高騰の長期化、米国の関税政策や為替動向、地域紛争等による地政学リスクの高まりなど、企業の経営環境は依然として不透明な状況が続いています。

また、地球環境や社会へ配慮した企業経営がますます重要となる中で、当社は、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の最大化を目指しております。このような経営環境において、当社はサステナビリティの視点を経営の中核に位置づけ、以下の重点課題に取り組んでまいります。

 

① 空調システムメーカーへの進化

さらなる省エネルギーの推進、空気質の向上には、空調機器そのものの性能向上に加え、高度な制御技術を活用し、空調システム全体を最適化することが必要不可欠です。当社は、「空調機器メーカー」という従来の枠を超え、空調全体をシステムとして提案できる「空調システムメーカー」を目指します。

② 事業活動を通したカーボンニュートラル社会の実現への貢献

地球温暖化対策は、地球規模で取り組むべき重要課題であり、空調業界においても大きな課題・機会と捉えています。

当社では、技術研究センターの建設を進め、自然力の活用や省エネ・コンパクト化等により環境負荷を低減する研究ならびに製品開発をより一層推進してまいります。

③ 健康で衛生的な空気質

現代の空調には、従来の快適性に加え、健康で衛生的な空間の実現が求められています。当社は、新鮮空気の導入を主な目的とした外調機の分野を開拓・発展させてまいりました。今後、制御技術の充実等をとおして、更なる空気質向上に積極的に取り組みます。

④ 製造基盤の強化と地域環境の維持向上

今後の当社の成長のためには、製造基盤の強化が重要な課題であり、八尾製作所の建替え等を進めています。併せて、再生可能エネルギー導入等による省エネの推進や地域環境保全のための取り組みを推進してまいります。

⑤ DXの推進

製品やサービス、製造プロセス等、さまざまな業務を変革する際にデジタル技術を活用した取り組みが求められています。当社は、DX戦略を策定し、継続的な活動とするための体制の構築および人材育成に努め、積極的にDXを推進してまいります。

 人財育成を通した企業体質の強化

全社員にサステナビリティの浸透を図るとともに、「社是」「企業倫理規範」および「社員行動規範」の実践を通じて次の時代を生き抜く人財を育て、経営基盤を強化します。

また、社員一人ひとりが心身ともに健康でいきいきとした人生を送り、やりがいを感じて働ける会社を目指し、研修・資格制度の充実等、積極的なサポートを行ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ全般

空調の役割は、快適・適切な空気環境づくりに加えて、環境にも配慮し、健康で衛生的で心身ともに豊かな生活を送るための手段として進化していくものと考えられます。

今後、私たち木村工機は、強靭な経営基盤を構築し、空調事業を通して豊かな社会の実現を目指します。

なお、当社は、サステナビリティに関する取り組みについて、幅広いステークホルダーの皆様にご報告し、コミュニケーションを促進するために、サスティナビリティレポートを発行しています。

https://www.kimukoh.co.jp/sustainability/esg_data/#section-report

 

① ガバナンス

当社では、社長を委員長としたSDGs推進委員会を設置しています。その配下に環境・社会・ガバナンスそれぞれの委員会を、さらにその配下にはマテリアリティごとの部会を設置しています。

サステナビリティについての取り組みや目標は、これらの委員会にて原案が作成され、取締役会の助言を受け決定します。目標の実現に向けての取り組みは、各部会の担当者が中心となり各部署の日々の活動を通して行われます。

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② 戦略

当社は、「空気のちからで社会を豊かにする」をスローガンに掲げています。

このスローガンのもと「エコ」と「ウェルネス」の視点で「社会課題の解決」に真摯に取り組み、社会と自社の成長を目指します。また、同時に「自社の変革」を推進し、高い対応力を持ったレジリエンスな体制を構築します。

具体的にはガバナンス・コンプライアンス・リスクマネジメントを基盤とし、以下の4つのアクションを実践していきます。

 

<サステナビリティ戦略>

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a.エコ ソリューション

熱回収、高効率コイル、自然熱源利用など、省エネを追求した環境にやさしい製品の開発とその普及により社会課題の解決に取り組みます。

b.エコ トランスフォーメーション

再生可能エネルギーの活用、化学物質の使用量の削減、廃棄物の削減などにより、自社の変革に取り組み、責任あるものづくりができる体制を構築します。

c.ウェルネス ソリューション

外調機や放射整流ユニットなど、健やかで衛生的な製品の開発や提案によって空気質の価値創造を図ることで社会課題の解決に取り組みます。

d.ウェルネス トランスフォーメーション

ダイバーシティ、健康経営、ステークホルダーとの協働などにより、自社の変革に取り組み、いきいきと働ける環境を構築します。

また、このアクションごとにマテリアリティを抽出し、取り組みを設定しています。

 

<マテリアリティと主な取り組み>

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③ リスク管理

当社はリスクマネジメントをサステナビリティに関わる重要課題と認識し、ガバナンス委員会の配下に設置したリスク部会を中心にリスク管理の強化を図っております。

リスク部会では、リスクを「外部要因リスク」「内部要因リスク」「特殊リスク」の3つに分類したうえで、個別リスクが事業に与える影響度および発生頻度を基に重要度を判定しております。この重要度に応じて、各リスクに対し「モニタリング」「改善」等が機能するPDCAサイクルを構築し、リスク低減策を講じております。また、BCP(事業継続計画)を策定し、緊急時における事業継続体制を整備しております。リスク部会の活動内容は毎四半期のSDGs推進委員会にて報告・協議し、その結果を取締役会に報告しております。

なお、リスクの詳細は「3.事業等のリスク」に記載しております。

 

④ 指標及び目標

各マテリアリティに応じた担当部会単位で毎期初に定性的、定量的な指標・目標が設定されます。また、これらは四半期ごとにSDGs推進委員会に進捗が報告され、その概要は取締役会に報告されます。なお、気候変動における指標・目標は「(2)気候変動への対応 ④ 指標と目標」にて、人的資本における指標・目標は「(4)人的資本 ④ 指標と目標」にて記載します。

 

(2)気候変動への対応

① ガバナンス

気候変動対応におけるガバナンスはサステナビリティ全般におけるガバナンス体制に組み込まれています。「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」を参照してください。

 

② 戦略

当社は、気候変動が事業に与えるリスクと機会をシナリオごとに分析し、事業戦略立案の指針としています。これに基づき「(1)サステナビリティ全般 ② 戦略 <マテリアリティと主な取り組み>」に記載の主な取り組みを具体化しています。

<リスクと機会の評価>

a.リスクの評価

リスク

分類

事象

 

 

事業インパクト

財務

インパクト

対処

2℃上昇
シナリオ

4℃上昇
シナリオ

2℃
上昇

4℃
上昇

大型台風、海面上昇などの風水害

発生可能性が高い

発生可能性が非常に高い

操業停止に伴う機会損失

・代替生産体制の確立

・災害への設備対応

設備の損傷・倒壊に伴う修理・更新

製品在庫の損傷

各地の災害による供給不安(代替素材の争奪など)

原材料の獲得競争発生

原材料の獲得競争激化

原材料価格の高騰

・製品のコンパクト化

・調達先の開拓

・代替材料の研究開発

各種規制(省エネ、温室効果ガス等)強化

更なる規制の強化

現状の規制が継続

エネルギーの使用制限強化

・各種再エネの導入

フロンの使用量の制限強化

・低GWP冷媒使用製品の開発

省エネ性能規制強化

・省エネ製品の開発、認知向上

炭素税などの導入

・カーボンオフセットの活用

顧客の意識の変化

意識の変化大

意識の変化小

環境配慮型製品へのシフト

・省エネ製品の開発、認知向上

 

 

 

b.機会の評価

機会

分類

事象

 

 

事業インパクト

財務

インパクト

対処

2℃上昇
シナリオ

4℃上昇
シナリオ

2℃
上昇

4℃
上昇

製品

省エネ・省資源製品の需要の増加

需要急増

需要は現状維持

小型・長寿命製品の需要増

・小型、長寿命製品、部品の開発

省エネ製品の需要増

・省エネ製品の開発、生産力の強化

フロン使用量・漏洩リスク削減

・少フロン製品の開発・漏洩防止システム対応

ヒートポンプ製品の需要増

・ヒートポンプ製品の普及

市場

低GWPフロン冷媒への移行要請

低GWPフロン冷媒へ急速に移行

現状維持

低GWPフロン冷媒への移行

・低GWPフロン冷媒利用製品への改造、開発

大型台風、海面上昇などの風水害に対する防災関連需要の増加

需要増加

需要急増

防災対策の市場拡大

・災害対応オプションの推奨

災害による建物修繕工事の増加

・販売活動の充実

温暖化地域の増加

要空調地域の逓増

要空調地域の急増

冷房要求エリア・空調対象施設の増加

強靭性

気候変動に伴う動向は予測不能

環境規制等が大きく変化

環境規制等の変化は少ない

この先の各国における環境規制、技術革新、顧客行動の変化などへの対応

・ヒートポンプ製品と冷温水製品の両方の製造販売体制を維持

・気候や新基準に対応した独自性のある製品を迅速に開発する体制を推進

・多様な分野を対象とした「分野別最適空調」を推進

 

③ リスク管理

気候変動対応におけるリスク管理は、「(2)気候変動への対応 ② 戦略」にて分析した「対処」などに基づいて、SDGs推進委員会にて行われます。

年度ごとに抽出された重点テーマを中心に改善活動等がなされ、四半期ごとに開催されるSDGs推進委員会にて報告・協議されます。

また、その結果は取締役会に報告されます。

 

 

 

④ 指標と目標

当社は、SCOPE1・2におけるCO2排出量を把握し、将来における削減目標を定め、これの実現に努めています。SCOPE1・2におけるCO2排出量の目標は以下のとおりです。

・2030年度:2019年度比50%

・2050年度:CO2排出量実質ゼロ

当事業年度は、製作所及び事業所の一部においてCO2フリー電力に切り替えることができたことで、CO2排出量は大幅な減少となりました。

なお、当社の直近のCO2排出量は以下のとおりです。

<CO2排出量の推移>

 単位:t-CO2

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

SCOPE1

367

308

347

357

274

224

SCOPE2

1,138

1,037

988

963

325

31

合計

1,506

1,346

1,336

1,320

599

255

2019年度比 (%)

100.0

89.4

88.7

87.7

39.8

17.0

 

(3)環境保全・生物多様性への対応

① ガバナンス

環境保全・生物多様性におけるガバナンスはサステナビリティ全般におけるガバナンス体制に組み込まれています。「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」を参照してください。

 

② 戦略

当社は、環境方針に、「自然との共生」を掲げ、地球環境保全、生物多様性保全に取り組んでいます。具体的には水使用量の削減、廃棄物の削減、緑化の推進などです。

 

・水の使用については、水槽テストからヘリウムリークテストへの移行によって削減を図っています。

・再生品の積極採用など、梱包資材の見直しを図り、廃棄物の削減に取り組んでいます。

・製作所の一部の緑化を推進しています。

 

(4)人的資本

① ガバナンス

人的資本におけるガバナンスはサステナビリティ全般におけるガバナンス体制に組み込まれています。「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」を参照してください。

 

② 戦略

a.人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針

当社は、全社員にサステナビリティの視点の浸透を図るとともに、「社是」「企業倫理規範」および「社員行動規範」の実践を通じて、次の時代を生き抜く人材を育て、経営基盤の強化を目指しております。

上記を実現するために、当事業年度は主に以下の取り組みを進めました。

イ.研修実績(eラーニングにて実施)

 

研修内容

対象者

受講率

不正行為防止

全営業職

100%

下請法知識確認テスト

全営業職、営業職以外の関連部門該当者

100%

メンタルヘルスラインケア

全管理職、係長

100%

労務管理

全管理職

100%

情報セキュリティ(基礎編)

全社員(契約社員・派遣社員除く)

100%

心理的安全性

全社員(契約社員・派遣社員除く)

100%

ダイバーシティ

全社員(派遣社員除く)

100%

 

ロ.研修制度の拡充

従来から実施しております入社時研修、コンプライアンス研修、ISO9001に基づく教育訓練等に加え、2023年11月にはeラーニングシステムを新たに導入し、研修メニューの拡充を図りました。

ハ.資格保有者の状況(2025年3月31日現在)

資格内容

人数

国家資格

高圧ガス製造保安責任者

22名

管工事施工管理技士

18名

冷凍空気調和機器施工技能士

8名

電気機器組立技能士

6名

電気工事士

35名

民間資格

冷媒フロン類取扱技術者

18名

冷凍空調技士

26名

 

ニ.「自己研修手当」制度の改定

今後の当社の変革・成長の実現のためには、社員のさらなるレベルアップが必要と考えます。

当社は、社員(契約社員を含む。)の自発的な能力開発を奨励し、人材育成の促進を目的として

2024年6月より「自己研修手当」を新設し人的資本への投資を進めてまいりました。

2025年3月より、支給金額の増額改定を実施し、人的資本への投資を拡大いたしました。

ホ.「資格手当」制度の改定

社員の資格取得を奨励、サポートするため、かねてより「資格手当」を設けております。社員のさらなる能力開発・リスキリングを目的に、今後、対象資格の拡充および支給金額の増額改定を進めてまいります。

 

b.社内環境整備に関する方針

当社は、様々な価値観や個性を持つ人々が“働きやすく”“活躍できる”職場環境を目指しております。そのため異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観を尊重し、様々なライフステージにおいて安心して仕事ができ、能力が発揮できる体制を構築してまいります。

上記を実現するために、主に以下の取り組みを進めてまいりました。

イ.安全衛生の取り組み

当社では、「法令遵守・安全第一を行動の基本とし、リスク発生の未然防止を徹底する」を方針として定め、全社員が安全で健康に働ける環境を維持していくことを目指しております。

その実現のために、各事業所に「法令・安全衛生委員会」を設置し、社員の健康増進や各製作所におけるリスクアセスメント等について協議し、改善活動を推進しております。

ロ.「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定取得

2025年3月10日付で経済産業省と日本健康会議が共同で実施する健康経営優良法人認定制度において、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に認定されました。

健康経営の推進体制は、取締役会直轄の「SDGs推進委員会」の部会である「健康安全部会」が中心となり、各事業所の「法令・安全衛生委員会」と連携し推進しております。

ハ.「ホワイト企業認定」の取得

2023年6月1日付で一般財団法人日本次世代企業普及機構による「ホワイト企業認定」GOLDランクを取得いたしました。

この認定制度は、「次世代に残すべき素晴らしい企業」「家族に入社を勧めたい企業」を選定することをコンセプトとしており、当社の人材育成やダイバーシティに関する取り組みが評価されたものです。

当社の採用活動や社員の定着率向上に寄与するものであり、最上位のPLATINUMランクの認定取得に取り組み、2025年6月に取得いたしました。

ニ.「育児・介護」に関する支援

当社では、育児や介護と仕事の両立支援を目的に、「育児・介護休業規程」を制定しております。

本規程は、「育児・介護休業法」が定める条件を上回る内容となっており、本制度の活用により、多様な人材がキャリアを継続し、活躍できる就業環境を構築しております。

 

(育児支援)

項目

概要

育児休業期間の延長

法定:最大2歳まで

当社:最大3歳まで

※保育所に入所できない等の場合のみ延長可能

育児短時間勤務制度の利用期間

法定:3歳まで

当社:小学校3年生の終わりまで利用可能

育児時差勤務制度

始業時間を最大1時間、繰り上げもしくは繰り下げることができる制度

※小学校3年生の終わりまで利用可能

子の看護等休暇の有給化

子の看護等休暇を「有給」で取得可能

育児休業中の収入支援

育児休業中は、「育児休業給付金」等が給付されますが、就業時と比べて収入が減少します。そこで、当社では、休業中も賃金の一部を支給し、収入減の緩和を図っております。 ※正社員のみ

 

(介護支援)

項目

概要

介護時差勤務制度

始業時間を最大1時間、繰り上げもしくは繰り下げることができる制度

介護休暇の有給化

介護休暇を「有給」で取得可能

介護休業中の収入支援

介護休業中は、「介護休業給付金」が給付されますが、就業時と比べて収入が減少します。そこで、当社では、休業中も賃金の一部を支給し、収入減の緩和を図っております。 ※正社員のみ

 

ホ.「役職定年」の延長

長年の経験や豊富な知識を有しているシニア人材の能力を最大限に活用し、企業全体のパフォーマンス向上を目的に、「役職定年」を62歳から65歳へ変更いたしました。

ヘ.「メンター制度」の導入

社員の定着を目的に、2023年度より新卒新入社員を対象に「メンター制度」を導入しました。

本制度により、新入社員の不安や悩みを解消し、定着(離職者:0名)に寄与いたしました。

 

③ リスク管理

人的資本におけるリスク管理は、SDGs推進委員会の人財開発を担当する部会で年度ごとに抽出された重点テーマを中心に改善活動等がなされます。また、四半期ごとに開催される当委員会にて報告・協議され、その結果は取締役会に報告されます。

 

④ 指標と目標

人材の多様性確保や女性活躍、男性の育児参画支援の観点において重要とされる、下記指標の目標を定め、マネジメントしております。

指標

目標

実績(当事業年度)

役職者(係長・主任)に占める女性比率

2025年3月末までに22

26.4

女性労働者の平均勤続年数

2025年3月末までに10

9.7

採用(新卒・中途)における女性比率

2024年度 25

19.2

女性育児休業取得率

2024年度 100

100

男性育児休業取得率

(育児目的休暇の取得を含む。)

2024年度 100

100

 

3【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありません。

 

リスク分類

当社は、想定されるリスクを3つのカテゴリーに大分類し、その大分類の中をリスクの性質に基づき、個別のリスクとして把握しております。

リスクの大分類としては、「外部要因リスク」「内部要因リスク」「特殊リスク」をあげております。

・外部要因リスクとは、そのリスクの原因が外部要因によるものです。

・内部要因リスクとは、そのリスクの原因が内部要因によるものです。

・特殊リスクとは、本来外部要因リスクまたは内部要因リスクに分類すべき事項ですが、投資判断上特に注目度が高いと思われるリスクについて、別のカテゴリーとして分類しているものです。

 

(1)外部要因リスク

①自然災害リスク

当社は、日本全国に本社・支店・営業所および3か所の工場を有しております。地震による被害、気候変動による台風等風水害の規模拡大による自然災害により、当社の施設および従業員が被害を受ける可能性があります。それに加え、当社ステークホルダーおよび日本国内全体にも被害が及ぶ可能性があります。

これにより、当社の事業遂行に直接的または間接的な影響が発生するだけでなく、日本国自体も影響を受けることは否めません。こうした事態となった場合のため、事業継続計画の策定、各拠点の整備改善および保険契約により、対策を講じております。

しかしながら、想定を超える被害が生じた場合、当社の事業遂行、経営成績および財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

②外部調達リスク

当社の製品を製造するためのエネルギーや製品を構成する銅やアルミ等の主要原材料および室外機や圧縮機等の主要部品は、経済情勢、国際情勢や為替相場等の影響や調達先の生産状況等により、価格の大幅な上昇もしくは調達が困難になる可能性があります。これに伴い、生産・営業活動が停滞ないしは停止するリスクがあります。

また、当社は、生産性向上および外部企業が持つ高いスキルを活用するなどの目的で、外部企業への製造・加工の委託、物流、工事等の役務の提供を受けております。経済情勢等によるコストの上昇や人員の確保の困難等により、価格の大幅な上昇もしくは役務の提供が困難となるリスクがあります。

上記のリスクについて、サプライチェーンの見直し、原材料・主要部品の備蓄、設計の変更、新規外注先の開拓等の対策を講じております。

しかしながら、対策を超える事態が生じた場合には、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③経済環境リスク

当社は製造販売を基本的に国内でおこなっているため、事業活動は国内の経済情勢、日本の国際競争力の低下等、日本国自体の経済・政治状況に依拠しております。これに伴い、大幅な為替変動、大幅な金利上昇、国内設備投資の減少、エネルギーを始めとする原材料の調達困難等のリスクがあります。また、足元では米国の関税政策が各国経済に影響を与え、日本国内の設備投資が減少するリスクも想定されます。

これらのリスクに対処するため、当社では国内市場の動向収集と早期対応、たゆまぬ業務改善、製品力の向上および財務体質の改善を図っております。

しかしながら、こうした企業努力で吸収できないような事態が生じた場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④外部からの攻撃リスク

当社事務所・工場を含む国内でのテロ等の破壊行為および機密情報を含む窃取行為、サイバーテロ等による当社を含む国内情報システムへの攻撃による当社の施設、情報資産を含む資産および従業員に対する被害、生産・業務システムが正常に稼働しないなどの可能性があります。

こうした事態となった場合のため、事業継続計画の策定、警備会社との契約、サイバーセキュリティに対する施策、サーバーの物理的安全管理措置の強化やクラウド化等により、対策を講じております。

しかしながら、想定を超える被害が生じた場合、当社の事業遂行、経営成績および財政状態に影響が生じる可能性があります。

 

⑤感染症等リスク

新型コロナウイルス感染症のような新型感染症の拡大により、当社人員の確保、原材料等のサプライチェーンの混乱、その他感染症拡大のための措置により、当社業務運営に障害が発生するリスクがあります。

上記への対策として、感染拡大期においては在宅勤務・時差出勤の実施や衛生管理の徹底により、感染拡大防止を図る方針です。

しかしながら、想定以上の感染拡大が生じた場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥法令等変更リスク

当社の展開する事業に関する法的規制としては、外注先を利用する場合の製品製造・保守等に関する「下請代金支払遅延等防止法」、許認可を要する空調設備設置工事に関する「建設業法」、工場等で排出する産業廃棄物に関する「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」、フロンガスの管理等に関する「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」等があります。関連法令の改正に加え、環境規制の強化がおこなわれる可能性があり、製品開発や事業展開が制限されるなどのリスクが生じる可能性があります。また、法令違反の事象が発生した場合、許認可の取消しを受けるなど事業上の問題が発生する可能性があります。

上記のリスクに対して、法改正や環境規制の強化については十分な情報収集をおこない、前倒しに対応できるように準備をおこなっております。加えて、法令遵守に関しては、当社内において周知徹底し、法務部門によるモニタリングを実施するとともに、内部監査による定期的な確認も実施し、法令違反が発生しないように努めております。

こうした対策が十分に機能しない場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦知的財産権リスク

当社に対し、第三者より知的財産権の侵害についての提訴または通知を受けるリスクがあります。こうした提訴等への対応に伴い、訴訟に係る多額の費用の発生、権利侵害に伴う損害賠償および侵害の対象となった技術を利用できないなどの可能性があります。

こうした事態となった場合のため、専門部署を設置し、特許事務所とともに、特許権を含む知的財産権を管理しております。

しかしながら、対策を超える事態が発生した場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)内部要因リスク

①人的資本リスク

事業遂行に当たり、優秀な人材を採用し、確保し続けることは、当社の競争力を維持するために必要不可欠であると考えております。しかしながら、人口減少、少子高齢化およびそれに伴う人件費、派遣費等の上昇により、事業継続に必要な人員の確保が困難となることや処遇を含めて当社の魅力が低下した場合に人材流出が起きるリスクがあります。

これらのリスクについて、賃金等の適正な引上げ、労働環境の整備、業務プロセスの見直しによる効率化、教育・リスキリング等の教育投資の実施等の対策を講じております。

しかしながら、対策が十分な効果を発揮しない場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②製品競争力低下リスク

製品価格と性能との比較から見た割高感や研究開発の遅れによる競争力の低下により、製品(価格)競争力が低下するリスクがあります。

顧客の声を広く収集し製品開発に活かすマーケティング活動、コスト削減、生産性向上、研究開発投資の継続等の対策は講じております。

しかしながら、対策が十分な効果を発揮しない場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③情報システムリスク

当社は、販売、生産、経理、労務管理等において情報システムを利用しております。プログラミングミスや人為的ミスにより、システム障害による業務運営の障害や情報漏えいが発生するリスクがあります。これに加え、情報漏えいに伴い、第三者から損害賠償請求を受けるリスクがあります。

また、当社では、現在全体的にDX化を進めておりますが、適切なDX化を図れない場合や改善効果が乏しい場合等、当社の業務上の効率性が他社比劣後することが想定され、当社の市場における競争力が低下するリスクがあります。

上記のリスクについて、トップダウンによるDX化やセキュリティシステムの導入、内部統制の強化、情報漏えいに備えた保険契約をおこなっております。

しかしながら、対策が不十分な場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④事務・業務リスク

製造ミス、設計ミスに起因する当社製品の不良や業務過誤により、損害賠償や当社信頼感の低下を招くリスクがあります。

上記のリスクについて、品質管理の徹底、設備等の更新・改良、内部統制の徹底および保険契約等による対策を講じております。

こうした対策を超える損害が発生した場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤コンプライアンスリスク

セクハラ、パワハラ、社員による刑事事件、社員等による不正により、金品等の盗難、機密情報の持出し、損害賠償請求、労働環境の悪化による人材流出、新規雇用への影響、株価への影響等のリスクがあります。

上記のリスクについて、内部統制の徹底、従業員教育、内部通報制度の整備等により、対策を講じております。

こうした対策を超える損害が発生した場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥信用リスク

当社は、総合建設業者、設備工事業者、施主等と取引をおこなっております。これらの取引先に対し貸倒れ等の不良債権の発生による損失の発生や財務体質の悪化が生じる可能性があります。また、不良債権額が多額の場合、株価の下落、資金調達への影響が発生するリスクがあります。

上記のリスクについて、信用調査に基づく取引限度額の設定や定期的な取引状況の把握による信用リスクの低減に努めております。

現時点において当社の事業継続に影響を与える規模の不良債権の発生の可能性は低いと考えておりますが、仮にそうした事態となった場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦減損リスク

当社は、事業用の資産として、有形・無形の固定資産を保有しております。事業に供しているこれらの資産については、業績が低迷し、事業から得られる将来のキャッシュ・フローの見積りが帳簿価額を大幅に下回った場合、減損処理が必要となる場合があります。

減損処理が発生した場合には、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)特殊リスク

①地政学リスク

世界各地における戦争・テロ(サイバーテロを含む。)により、サプライチェーンの混乱、経済のブロック化、大国対立の先鋭化等の可能性があります。これにより、当社の事業遂行に直接的または間接的な影響が発生し、国内情勢も影響を受けることは否めません。

こうした事態となった場合のため、サプライチェーンの見直しや主要部品の備蓄等による対策を講じております。

しかしながら、想定を超える事態が生じた場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②気候変動への対応リスク

世界的に気候変動に対する意識は高まっており、特にCO2の削減を念頭においた「カーボンニュートラル」への取組みが企業行動のうえで不可欠となってきております。

このため、カーボンニュートラル対応の遅れ、特に「温室効果ガス」対策への取組みの遅れおよび環境適応力の劣後が、当社競争力の低下につながるリスクがあります。

上記のリスクについて、SDGs対応強化、温暖化係数の低い冷媒の使用および機器のパッケージ化・システム化技術による温暖化ガスの使用量削減・漏えい策等による対策を講じております。

しかしながら、対策が十分な効果を発揮しない場合、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

当社は、空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は省略しております。

 

①財政状態の状況

当事業年度末における総資産は、前事業年度末より2,029,337千円増加し、22,189,560千円となりました。

当事業年度末における負債は、前事業年度末より84,541千円減少し、10,425,657千円となりました。

当事業年度末における純資産は、前事業年度末より2,113,879千円増加し、11,763,903千円となりました。

 

②経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、企業の設備投資の増加、雇用環境や個人所得の改善により景気は引き続き緩やかな回復基調にありました。一方で、資源・エネルギー価格高騰の長期化、米国の関税政策や為替動向、地域紛争等による地政学リスクの高まりなど、企業の経営環境は依然として不透明な状況が続いております。

このような中、当事業年度の売上高については、堅調な国内設備投資需要を当社独自製品で取り込めたことにより順調に推移しました。産業分野では、生産現場の職場環境改善のため、工場用ゾーン空調機、ルーフトップ外調機を中心に導入が増加しました。商業分野では、オフィスビル更新案件へ直膨式高性能AHU等の導入が増え、保健分野では、庁舎や公共施設向けに冷温水式AHU、病院案件にルーフトップ外調機の導入が増加しました。

技術開発では、環境負荷の低い製品開発をより一層加速させるため、技術研究センターの建設ならびに省エネ製品の研究を深化させております。また、営業施策として、環境に配慮した制御性の高い省エネ空調システムの提案を積極的に展開してまいりました。

なお、製造部門では、八尾製作所内の主工場棟、管理棟が順調に稼働し、引き続き再開発工事が進んでおり、2026年3月期に完了予定となっております。

上記の売上状況および取り組みにより、八尾製作所旧工場棟解体等による特別損失85,212千円を吸収し、売上および全ての利益項目において過去最高を更新することができました。

この結果、当期の経営成績は、売上高16,042,155千円(前年同期比15.8%増)、営業利益3,675,846千円(同37.2%増)、経常利益3,660,089千円(同36.4%増)、当期純利益2,496,235千円(同20.9%増)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純利益が3,574,876千円、有形固定資産の取得による支出1,796,983千円、長期借入れによる収入1,600,000千円、棚卸資産の減少額314,534千円等により1,598,420千円(前事業年度末は1,716,096千円)となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果取得した資金は2,241,859千円(前事業年度は2,000,629千円の収入)となりました。主な増加要因は、税引前当期純利益が3,574,876千円、減価償却費588,429千円であり、主な減少要因は、売上債権の増加1,118,867千円、法人税等の支払額824,384千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は1,995,084千円(前事業年度は1,504,422千円の支出)となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出1,796,983千円、有形固定資産の除却による支出71,625千円、無形固定資産の取得による支出58,325千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は364,449千円(前事業年度は118,196千円の支出)となりました。主な増加要因は、長期借入れによる収入1,600,000千円であり、主な減少要因は、短期借入金の純減少額1,235,000千円、配当金の支払額320,521千円、長期借入金の返済による支出279,691千円等によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

 当社は、空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の実績につきましては、品目別に記載しております。

a.生産実績

 当事業年度の生産実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

冷温水式AHU(千円)

2,990,743

127.9

冷温水式FCU(千円)

883,142

106.9

空冷HP式空調機&外調機(千円)

7,941,732

97.4

冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機(千円)

1,065,989

66.2

その他(千円)

2,563,249

109.0

合計(千円)

15,444,856

101.1

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目の名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

冷温水式AHU

3,482,655

146.4

1,436,926

148.5

冷温水式FCU

1,017,132

114.2

362,965

162.8

空冷HP式空調機&外調機

8,117,969

127.6

3,316,730

98.9

冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機

988,045

71.2

402,078

44.9

その他

2,579,951

111.8

617,865

111.4

合計

16,185,756

121.5

6,136,566

102.4

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績を品目ごとに示すと、次のとおりであります。

品目の名称

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

冷温水式AHU(千円)

3,013,422

138.5

冷温水式FCU(千円)

877,080

105.3

空冷HP式空調機&外調機(千円)

8,153,316

115.5

冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機(千円)

1,489,524

110.2

その他(千円)

2,508,811

103.1

合計(千円)

16,042,155

115.8

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は特定の顧客への売上高が10%以上でないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社は空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメントごとの経営成績の状況の記載を省略しております。

a.財政状態

(資産)

当事業年度末における総資産は、22,189,560千円(前事業年度末20,160,222千円)となり、2,029,337千円増加いたしました。これは主に、建設仮勘定の増加1,381,849千円、売上債権の増加1,118,867千円、棚卸資産の減少314,534千円、建物の減少216,060千円等によるものであります。

(負債)

当事業年度末における負債は、10,425,657千円(前事業年度末10,510,198千円)となり、84,541千円減少となりました。これは主に、未払法人税等の増加327,484千円、借入金の増加85,309千円、仕入債務の減少337,813千円、未払金の減少137,172千円等によるものであります。

(純資産)

当事業年度末における純資産は、11,763,903千円(前事業年度末9,650,023千円)となり、2,113,879千円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上による増加2,496,235千円の計上、自己株式の取得による減少129,236千円、剰余金の配当による減少321,916千円等によるものであります。

 

b.経営成績

(売上高)

堅調な国内設備投資需要を当社独自製品で取り込めたことにより売上高は順調に推移しました。産業分野では、生産現場の職場環境改善のため、工場用ゾーン空調機、ルーフトップ外調機を中心に導入が増加しました。商業分野では、オフィスビル更新案件へ直膨式高性能AHU等の導入が増え、保健分野では、庁舎や公共施設向けに冷温水式AHU、病院案件にルーフトップ外調機の導入が増加しました。この結果、売上高は16,042,155千円(前年同期比15.8%増)となりました。

(売上原価、売上総利益)

売上原価は、前事業年度に比べ1,096,515千円増加し、8,736,756千円となりました。売上総利益は前事業年度に比べ1,093,076千円増加し、7,305,399千円となりました。これは主に、八尾製作所の主工場棟、管理棟が稼働したことに伴う減価償却費の増加があったものの、当社独自製品を中心とした販売により引き続き高収益率を確保できたことなどによるものであります。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ96,645千円増加し、3,629,552千円となりました。これは主に、売上増加に伴う荷造運搬費の増加によるものであります。

以上の結果、営業利益は前事業年度に比べ996,431千円増加し、3,675,846千円となりました。

(営業外損益、経常利益)

営業外収益は、前事業年度に比べ5,275千円減少し、43,966千円となりました。これは主に、前事業年度において、公租公課の還付があったことによるものであります。また、営業外費用は、前事業年度に比べ13,663千円増加し59,723千円となりました。これは主に、支払利息の増加によるものであります。

以上の結果、経常利益は前事業年度に比べ977,492千円増加し、3,660,089千円となりました。

(特別損益、当期純利益)

特別損失は、前事業年度に比べ84,575千円増加し、85,212千円となりました。これは、八尾製作所の建物建て替えに伴う固定資産除却損が発生したことによるものであります。

以上の結果、当期純利益は前事業年度に比べ430,723千円増加し、2,496,235千円となりました。

 

当社の経営成績に重要な影響を与える要因として、市場動向、資材価格の動向、災害・事故・感染症拡大等、様々なリスク要因があると認識しております。なお、米国の関税政策の動向が注目されますが、当社は国内市場向けに空調システム機器の製造販売を展開しており、米国向けの製品や部材の輸出入は行っていないため、当社事業への直接的な影響は限定的であると考えております。ただし、関税政策が影響する企業の設備投資の差し控えや海外製部材価格が間接的に業績へ影響する可能性があるため、市場の変化に対して柔軟かつ迅速に対応を行ってまいります。

当社の事業が関係する空調業界におきましては、従来の快適性に加え、健康で衛生的な空間の実現が求められると同時に、省エネや温室効果ガス削減等の環境対応、製造現場の暑さ対策等の労働環境改善など持続可能な社会の実現に向けての欲求が高まっております。

市場動向に対しては、分野・用途毎に多様性のある空調ニーズに応えるため、先進的で付加価値の高い空調システム機器の開発を進めてまいります。今後も、地球温暖化の影響や生産現場の人手不足等の影響により、暑熱対策、職場環境改善への取り組みは継続するものと考えられます。特に、産業分野では、猛暑が続く中、厚生労働省より熱中症対策を事業者へ義務付ける「改正労働安全衛生規則」が2025年6月より施行されたことに伴い、熱中症予防対策、職場環境改善の需要を取り込む営業活動を展開してまいります。商業分野、保健分野では、省エネに配慮した空調システムの提案を積極的に推進してまいります。

資材価格の動向に対しては、鋼材、非鉄金属、原油等の価格上昇への対応として、資材取引先と従来以上に密接な情報交換を行うことにより関係を強化し、更なるコスト削減に努めてまいります。原価低減努力だけでは賄いきれない資材価格の高騰に対しては製品価格の適正化へも取り組んでまいります。

災害・事故・感染症拡大に対しては、事業継続計画の策定、事前の対応策の立案、現場作業に携わる作業員の意識改革等の継続的な現場管理活動により、事業継続へ影響を与えるような災害・事故・感染症拡大の抑制に努めます。

製品開発については、自然力を活用し、高い制御技術を搭載した省エネ、省資源、省スペース製品の開発を行ってまいります。主な開発内容については、「第2 事業の状況の6 研究開発活動」に記載のとおりであります。

生産活動については、八尾製作所の主工場棟、管理棟が順調に稼働し、生産力の増強に取り組むとともに、生産工程での脱炭素化の実現に努め、サステナビリティを一層推し進めてまいります。

 当社はこれら空調技術の進歩発展を通して社会に貢献することにより、持続可能な社会の実現を目指してまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の当事業年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の必要資金は、当社製品の製造販売に係る原材料費、経費、販売費及び一般管理費等の運転資金および設備投資に係る投資資金が主なものです。

財政状態は健全性を保っており、現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入金による資金調達により、事業拡大に必要な資金を十分に賄えると考えています。

また、金融市場の混乱等、緊急に資金が必要となる場合に備え、金融機関と当座貸越契約を締結し、資金流動性を確保しております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、資産・負債や収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りおよび判断・評価は、過去の実績等を勘案し合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④経営上の目標の達成状況について

当社は売上高営業利益率を重要な経営指標として位置付けております。当事業年度における売上高営業利益率は22.9%(前年同期比3.6ポイント改善)であります。引き続きこの指標について、改善されるよう取り組んでまいります。

 

5【重要な契約等】

(1)企業・株主間のガバナンスに関する合意

該当事項はありません。

 

(2)企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意

該当事項はありません。

 

(3)ローン契約と社債に付される財務上の特約

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社における研究開発活動は、技術開発部門が主体となり、分野・用途毎に多様性のある空調ニーズに対し、先進的で付加価値の高いサスティナブル空調システム機器の開発を推進しており、以下の開発テーマを主な活動指針といたしております。

なお、当社は空調機器関連製品の開発・製造・販売の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は省略しております。

・人の健康を支える良質な衛生環境を提供する製品開発

・快適性や生産性向上に繋がる高品質環境を提供する製品開発

・高効率で空調システム全体におよぶ省エネを実現する製品開発

・軽量・小型で施工性や利便性が高く設備コスト低減に繋がる製品開発

・機能性、拡張性の高い自動制御機器の開発

また、大学の研究室、顧客情報を集約する営業推進部門などとの連携により、システムや製品、部品の開発に繋げています。

当社は、当事業年度の開発活動において、昨年度開発したコンパクト化と省資源、省エネに効果をもたらす『空調機&外調機連動制御』の効果検証および改良などを実際の執務空間を用いて進めました。

この『空調機&外調機連動制御』は、「冷温水式高性能空調機」と「空冷ヒートポンプ式熱回収外調機」が相互に連携し制御するシステムのことで、室内排熱や中間期の涼しい外気などを積極的に空調エネルギーとして利用し、同時に動作のムダを抑制することで、衛生環境と省エネ性のバランスを向上させます。

さらに高性能空調機の新モデルとして「冷温水式うす形空調機」を開発し、シリーズの拡充を図りました。本製品は特にうす形にこだわり、部品や構造設計を見直すことで、従来同性能製品に比べ設置床面積を約51%削減し、省スペース化、省力化に繋げることができました。

これらの活動により、水や空気による熱搬送を主体とする空調システムの魅力を高め、フロン使用量やフロン漏えいの抑制、自然との調和に寄与することを目指し、今後も提案力を強化してまいります。

その他の活動として、今後の新製品開発、技術研究の拠点となる『技術研究センター』の構築に向けたプロジェクトを開始しました。製品力や信頼性・競争力の強化、技術人材育成などを見据えた、利用価値の高い設備とする予定です。また、運用計画も進めており、2025年末の稼働を目指しています。

今後も、柔軟な発想と信頼される技術力で人と環境にやさしい製品・部品作りを追求し、社会に貢献してまいります。なお、当事業年度における研究開発費は、158,884千円であります。