文中の将来に関する事項は本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループにおける経営の基本方針として、新パーパス“「家族の幸せ」と「個人の幸せ」が寄り添える社会へ”を掲げております。女性への負担が大きい社会の仕組み改善、個人と家族の幸せの両立、少子化の打開等の新たな社会課題の解決に向けて、幼児教育サービスの会社から、総合パーソナルケアサービスの会社へ生まれ変わる取り組みを続けております。
その取り組みの一環として、事業領域の拡大及び再定義を実施し、国内教育領域、国際教育領域、産後ケア領域、ファミリーサポート領域(調査検討中)と4つの新事業領域を編成しました。
既存事業である国内教育領域につきましては、保育サービスの教育効果、満足度及び安全性を常時改善させながら、引き続き当社グループの重要な収益基盤として安定運営を目指してまいります。今後の新園開設計画につきましては、認可保育園は飽和しつつある市場環境を鑑み当面新園開設の予定はございませんが、保育サービスをさらに充実させることにより、既存施設の充足率改善に努めてまいります。一方、今冬に麻布台ヒルズ(東京都港区)において、「キッズガーデン プレップスクール麻布台ヒルズ」と「キッズガーデン エデュケーションラボ麻布台ヒルズ(アフタースクール)」が開園予定となっております。「0歳から9歳のチテキソウゾウのぜんぶを。」をキーコンセプトに、一人ひとりに寄り添い、教育の多様な選択肢をお届けすることで、お子さまの将来の可能性を広げ、才能をひらくお手伝いをいたします。
また、主に新規事業で構成される国際教育領域、産後ケア領域、ファミリーサポート領域につきましては、それぞれ下記の方針で経営してまいります。
① 国際教育領域:開園後、軌道に乗った3園のグローバルスクール(錦糸町、吉祥寺、センター北)については、引き続きバイリンガルの教育内容やカリキュラムを充実させ、充足率を高めることにより、当社グループの収益基盤となるよう努めてまいります。2024年夏より開始した海外留学支援につきましては、第一弾の英国ボーディングスクールが好評をいただいたことを受け、今夏に英国、スイス、ハワイ(米国)の3か所の実施が決定し、拡大しております。また、新中期経営計画でお伝えしたとおり、海外保育園のM&A検討は引き続き積極的に行っております。事業領域拡大により増えつつある事業ポートフォリオ内でシナジーを生み、高い利益貢献が期待できる事業を有する候補先を鋭意厳選しております。
② 産後ケア領域:5月8日開示「産後ケアサービス事業における開業時期の変更に関するお知らせ」でお伝えしたとおり、開業時期を2026年6月~8月と定め、開業準備を本格化させております。当社グループが、富裕層向けプレミアム教育サービス運営で培ったハイクオリティなサービスレベルと同等以上のものを、産後ケアサービスにおいても実現することにより、都市部中心に展開する産後ケアサービスとして強固な競争優位を獲得できると確信しております。
③ ファミリーサポート領域:新パーパス“「家族の幸せ」と「個人の幸せ」が寄り添える社会へ”に貢献しうる事業について、新中期経営計画でお伝えした領域以外も広く検討しており、高い成長性が期待できる事業計画を検討しております。それらの事業計画を実行に移せる専門人材も確保できつつあり、新たな収益柱の構築に日々尽力しております。
以上、複数の新規事業開発が同時並行で進行しておりますが、全体の経営方針としては、中長期的に高い収益性が見込める事業を取捨選択し、経営資源を集中投入することを重要視しております。そして、中長期の経営戦略としては、総合パーソナルケアサービス事業を営む会社グループとして、新中期経営計画でお伝えしたとおり2030年3月期には新規事業が収益の柱になる体制を目指してまいります。
数値目標については、上場以来、毎期実績は常に期初業績予想を上回って着地しておりますが、投資家の皆様に対する約束として、引き続き期初業績予想をクリアしていくことを最重要目標として経営してまいります。同じく、新中期経営計画で定めた数値目標も必達目標と考え、上記新規事業の開拓を軌道に乗せることにより、その達成に全力を尽くす所存でございます。その過程で東京証券取引所が設定する上場維持基準もクリアし、引き続き成長企業として当社グループを位置づけ続ける所存でございます。
また、2025年3月期より配当、2026年3月期より株主優待制度を開始し、株主還元に着手することを発表いたしました。当社グループは株主還元を経営上の重要な課題として認識しており、従前よりIR活動を通じて安定的な利益体質を実現できた際は、株主還元に取り組む意向をお伝えしてきたところです。
そして、2024年3月期及び2025年3月期を通じて、既存事業において営業利益が持続的に黒字になる経営体制を確立できたことを受け、2025年3月期より配当を開始することを決定いたしました。
さらに、営業利益につきまして毎期継続的に改善を続け、2024年3月期の黒字化達成後、過去最高を更新することができました。また経営指標として重視する EBITDA につきましても、上場以来過去最高を更新し続け、既存事業の収益性が盤石になってきていることを受け、株主優待制度の導入を決定いたしました。
事業拡大のための投資フェイズにおける株主還元の開始となりますが、既存事業の好調により新規事業に対する投資を実施しても高い財務安全性が見込まれることに加え、既存事業において、その強固な黒字体質に加え、キャッシュアウトを伴わない多額の減価償却費が今後も計上される見込みより、株主還元の原資については着実に確保できると考えております。
当社グループとしては、現時点で株主還元を開始することにより、投資家の皆様の当社グループに対する認知を高め、ステークホルダーの一員として当社グループの新しい事業展開とさらなる成長に大いなるご支援を賜りたいと考えております。
当社グループは、企業価値の増大を図っていくための成長性・収益性の経営指標として、以下の項目を重視しております。
売上高
EBITDA
営業利益
経常利益
事業活動の全体の成長の指標となる売上高、また事業活動の成果及び収益性を示すEBITDA(営業利益+減価償却費) 、営業利益及び経常利益を重視する指標としております。
当社グループはさらなる事業拡大に向けた重要課題として以下の点に取り組んでまいります。
① 人材の確保・労働環境整備の取り組み
質の高い保育・教育サービスを提供し、保育施設等を継続して開設していくためには、保育士資格等を有する優秀な人材の確保が不可欠です。
当社グループでは、通年で採用活動を行うとともに、従業員の給与の改善や人事評価制度の構築・改善、各運営施設に対する本部運営機能・管理体制の強化による現場職員へのケア、安全管理体制、働き方改革等の徹底を推進する等、働きやすい環境づくりに注力しております。
② 提供サービスの質及び安全性の向上
各分野の専門家集団との連携を構築し、「KID'S PREP.PROGRAM」やモンテッソーリをはじめとする教育プログラムの導入や、教育研修制度の充実を図り、提供サービスの質の向上に向けて取り組んでまいります。また、本部と保育現場が常時緊密に連携を取りながら、不適切保育撲滅委員会、園運営監査、各種研修等を随時実施することにより、保育の安全性を向上させる取り組みを行っております。
③ コンプライアンスへの取り組み
当社では、多くの子どもを預かる事業を行っており、認可保育事業は許認可事業です。従って、児童福祉法等の関連法令の遵守が事業継続の大前提です。またサービス利用者の個人情報を有しており、当該情報を取り扱うことも多いことから、個人情報の管理は重要なものであると認識しております。コンプライアンスの徹底が求められる中で、当社グループでは、適宜改正される法令に対応すべく、諸規定等のルールや社内管理体制を整備・徹底し、役職員全員に対する研修等により、日常的にコンプライアンスに対する意識を高め、適正に業務を遂行してまいります。
④ 収益基盤の多様化
当社グループの運営する認可保育所の多くは、国や自治体からの補助金を基盤として運営されており、事業は安定的に推移いたしますが、政策や制度変更の影響を受けやすい傾向があります。一方、幼児教育無償化他少子化対策による可処分所得の増加による影響も伴い民間教育サービスの市場は拡大すると見込んでおります。このような環境を踏まえ当社グループでは、補助金に頼らない民間教育サービスの展開に重点を置くとともに、産後ケアサービスなど保護者世代を対象に含めた新規事業を開発し、既存の認可保育事業、プレスクール一体型保育所事業のノウハウやブランド力・知名度を活かし、グローバルスクールの展開・海外留学支援・他社とのアライアンス等収益基盤の多様化に取り組んでまいります。
⑤ 保育所・教育施設・産後ケアサービス施設等開設用不動産の確保
当社グループが開園する保育所・教育施設及び産後ケアサービス施設等は、不動産所有者から土地や建物を賃借します。自治体のニーズや保護者の期待に応えられる候補地を短期間で探し出すために、当社グループでは金融機関や不動産開発業者等と常に必要な不動産情報が交換できる関係を構築しており、金融機関は取引実績によるものから、不動産開発業者とは過去の成約実績からその関係を強固なものにしております。今後におきましても、広域での不動産情報の入手のため、関係強化に努めるとともに、適切な開設候補地の開発に取り組んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは保育・幼児教育サービス事業を通じて、持続可能でよりよい社会の実現に向けて取り組んでいます。保護者の出産・子育てを支援し、育児に積極的に取り組める環境づくりに携わることで、少子化のリスクに対応し、次世代の育成に貢献します。今の日本において強く求められている事業領域であり当社グループにとっては機会でもあります。
グループを挙げての取り組みとしていくために、サステナビリティプロジェクトチームを発足し、社内横断的な視点から、施策を検討してまいります。
① ガバナンス
当社グループでは、事業そのものが社会のサステナビリティにつながるものであり、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、定例取締役会において質の高い保育・幼児教育サービスの提供状況をチェックし、更に提供するサービスの拡大の状況を把握しております。
② リスク管理
「コーポレート・ガバナンス」、「リスクマネジメント」、「コンプライアンス」を重点テーマに掲げ、コンプライアンス規程、反社会的勢力に対する基本方針、個人情報管理規程、情報セキュリティ基本方針、ソーシャルメディア利用規程、リスク管理規程、内部通報規程、特定個人情報取扱規程を制定し研修などを通じてグループ社員へ周知を図っています。
また、代表取締役を委員長とした「コンプライアンス委員会」及び「リスク管理委員会」を設置し、リスクマネジメントを推進しております。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針としては、事業の特性上保育士等の資格保有者の採用を主に、性別、年齢、経験年数、障害の有無、国籍にとらわれず幅広く採用育成しております。また、職員の研修の機会を作り、スキルと意識の向上を図るよう成長を支援し、職員のやりがいと満足度を高めるとともに、利用者に対するサービスの向上を実現することが、高水準の人材を安定的に確保し続けることにつながると考えております。
採用においては募集ルートの多様化などを進めるとともに、入社時研修、主任・園長研修、キャリアアップ研修、保育指針研修、施設運営研修、保健衛生研修、防災・安全研修などの階層別研修、目的別研修体制の構築と整備を図ってまいります。
また、海外の最新の教育事情などの情報収集や専門的な知見を高めるとともに、海外で実際に体験し理解を深めるための海外研修を行っております。
社内環境整備方針としては、ワーク・ライフ・バランスを整えながら働ける環境を整備し、社員一人ひとりが生き生きと活躍でき、ライフステージに合わせて仕事ができる施策として、出産前後や育児における休暇・休業、介護休業、時短勤務、フレックスタイム、在宅勤務の制度を整備しております。
社内研修、スキルアップのためのeラーニングやその他福利厚生支援のための総合型福利厚生サービスの導入など、より働きやすい職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。
(4) 指標及び目標
当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
(注1) 男性賃金を100としたときの女性賃金の割合
以下において、当社グループの事業展開等に関するリスク要因となる可能性がある主要な事項を記載しております。また必ずしも事業展開上のリスクに該当しないと考えられる事項についても、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。
なお、以下の記載事項は特に断りがない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
2000年に認可保育所の運営に株式会社を含む多様な運営形態が認められて以降、様々な事業者がその運営に乗り出しました。子ども・子育て支援制度において、国や自治体は待機児童解消に向けて多様な支援策を講じ、各事業者は業容を拡大しております。
また当社グループが現在運営する事業は、児童福祉法、子ども・子育て支援法、こども基本法及び食品衛生法等の法規制が存在します。
当社グループは今後も国の方針に基づき、各自治体との連携を深め業容拡大に邁進してまいりますが、国や自治体の方針が変更され、補助金の削減や株式会社による保育所の開設が制限される場合、又は、関連法令の制定・改廃が行われた場合、当社グループの事業活動が制約を受け、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループが運営する保育所の多くは、児童福祉法に基づき施設ごとに所轄する自治体宛に保育所開設の申請を行い、審査を経て許可等を受け運営されております。当社グループの運営保育所において、過去に認可等の取消事例はありませんが、今後、何らかの事由により認可等が取り消される場合や、新規施設の認可等が得られない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの事業は、認可等を受けた保育所の運営を主体とする子ども・子育て支援に関する事業であります。従って、子ども・子育て支援に関する政策や市場の動向が、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。
厚生労働省より、2013年4月に、待機児童解消に向けた「待機児童解消加速化プラン」が公表され、多数の事業者が新規参入し保育所を開設しております。こども家庭庁が発表した「保育所等関連状況取りまとめ(2024年4月1日)」によると、2024年4月1日現在における待機児童数は2,567人で前年比113人の減少となっています。減少傾向ではあるものの、待機児童の解消に向けた国や自治体の取り組みは当面は継続していくと考えられます。
一方で、少子化が進んでいることも事実であり、想定した園児数を確保できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、運営施設数の増加に伴い、認可保育所運営のための保育士資格を有する保育士や指導員・スタッフ及びグローバルスクールの開校に合わせた本部要員、バイリンガル講師、保育士その他職員の確保と育成が重要となっております。このため、当社グループでは、採用活動を強化しており、人事部門の強化、社員紹介制度の構築、専門の人材紹介会社からの紹介強化等の施策を実施しております。また教育研修制度や人事評価制度の充実を進め、人材確保と離職率の低下に向けた取り組みを行っております。
しかしながら、予定した職員数が確保できない場合、新規施設開設計画の遅延や既存施設の運営計画に支障が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、プレミアム教育サービス事業のグローバルスクールを成長の軸として全国展開を計画しております。そのためには、不動産開発業者や不動産所有者とのネットワークが重要となってまいります。当社グループでは金融機関や不動産開発業者等と常に必要な不動産情報が交換できる関係を構築しており、その確保に全力を尽くしております。
しかしながら、候補地選定の難航、近隣住民の反対運動の発生による開園遅延あるいは開園を断念するに至った場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、各施設の園児に対して、必要な栄養量が確保できるように献立を作成し、各施設にて調理・提供しております。そのために、食品衛生法に基づき、厳選した食材管理及び衛生管理を実施し、食中毒や賞味期限切れ食材の使用、異物混入等の事故を起こさないよう努力しております。しかしながら、何らかの理由により食の安全に関する重大な事故が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、安全な保育環境を確保し、保育の質を向上するため、施設全体について定期的に消毒を実施しており、感染症に対するマニュアルに基づいた対策を実施しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザやノロウイルス等の感染症が発生し、当該施設に従事する保育士やスタッフ・児童が多数感染した場合、施設運営に支障が出る可能性があります。このような場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、施設の運営に関し事故等が起こらないよう万全の体制で臨んでおります。しかしながら、万が一重大な事故やトラブルが発生した場合には、行政処分による営業停止や園児の転園等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの運営する施設は東京都・神奈川県・愛知県に集中しております。このため、これらの地域において大規模な地震や火災・集中豪雨等による水害等の発生により、児童や従業員、施設の建物が被害を受けた場合、当該施設の運営が困難となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、児童及びその保護者の氏名や住所等多くの個人情報を保持しております。これら個人情報の保管・取扱いについては規程に基づく管理体制を構築することに努めております。しかしながら、万が一漏洩事故が発生した場合、顧客からだけではなく、広く社会的な信用失墜を招き、施設の運営に支障が生じる等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、施設の新規開園に関する設備資金を金融機関からの借入により調達しており、総資産に対する有利子負債合計の割合は、2024年3月期28.3%、2025年3月期30.1%と高い比率で推移しております。従って、借入金利の上昇等の金融情勢の変化、又は取引金融機関の方針変更等により予定必要資金の調達が困難となり、新規施設の開園が遅延又は中止となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社の代表取締役社長である中西正文は、株式会社Kids Smile Project(現 株式会社Smile Project)の創業者及び創業以来最高経営責任者であり、中西正文の資産管理会社である株式会社エーエムカンパニーとあわせて、当連結会計年度末現在、当社株式を68.4%所有する大株主であります。また同氏の配偶者である取締役副社長土居亜由美(戸籍名:中西亜由美)についても創業以来当社グループの施設開園及び運営に携わり、副社長としての任を担っております。
両氏ともに保育業界に精通しており、施設や教育プログラム開発・経営方針・経営戦略において重要な役割を果たしております。
当社グループでは、他の取締役や、幹部社員に対する権限移譲を進めることにより、両氏に依存しない経営体制を早期に構築していく所存でありますが、何らかの影響により両氏ともに、あるいは一方でも当社グループの経営を継続することが出来なくなった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループが運営する施設の業績が悪化し、その回復の見込みがない場合、あるいは新規開設から一定期間を経過しても業績改善の見込みがない場合、有形固定資産の減損処理が必要となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
新たに保育所等の施設を開設した場合の当社グループの経営成績に与える影響を個々の施設ごとに見ると、一般的に以下のような特徴があります。
このため、新規開設施設の件数増加等は、一時的な営業損益の悪化要因になる傾向がありますが、補助金収入(営業外収益)の増加要因ともなります。一方、新規開設施設の件数減少等は営業損益の改善となりますが、補助金収入(営業外収益)は減少いたします。
当社グループはこれまで積極的に新規開設を行っており、経営成績における新規開設の影響が大きくなっております。しかしながら、運営施設数に対する新規開設施設数の割合が減少するに伴い、今後は3歳~5歳児が定員を満たさないことによる営業損益の悪化等の影響が徐々に緩和するものと考えられます。
自治体からの補助金により固定資産を取得した場合、税務上、固定資産の取得価額から補助金の額を控除する圧縮記帳を行うことが認められております。財務会計において圧縮記帳の方法は、補助金の額を控除した残額を固定資産に計上し毎期の減価償却も控除後の額をもとに計上する直接減額方式と、補助金を収益計上し、固定資産を取得価額で計上する剰余金処分方式とがあります。
当社グループは剰余金処分方式を採用しており、直接減額方式と比較して、新たに保育所を開設した事業年度においては補助金収入が計上されるものの、その後の減価償却費は多額に計上されることになります。当社グループでは保育所等の減価償却費を売上原価に計上し、補助金収入を営業外収益に計上しているため、減価償却費の負担等により営業損失を計上し、営業外収益の補助金収入等にて経常利益を計上しております。
なお、剰余金処分方式においても、利益剰余金と税額の計算により、税務上の効果は直接減額方式と同様となります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断しているものであります。
a.経営成績等の状況
当社グループは、2024年6月21日発表の新中期経営計画において、“「家族の幸せ」と「個人の幸せ」が寄り添える社会へ”を新パーパスとして掲げました。女性への負担が大きい社会の仕組み改善、個人と家族の幸せの両立、少子化の打開等の新たな社会課題の解決に向けて、幼児教育サービスの会社から、総合パーソナルケアサービスの会社へ生まれ変わる取り組みを続けてまいりました。
具体的には、今までの事業経験やノウハウを活かしながら事業領域を拡大し、国内教育領域、国際教育領域、産後ケア領域、ファミリーサポート領域(調査検討中)と4つの新事業領域を編成しました。
従来の認可保育領域(今後は認可保育グループと呼称)及びグローバルスクールを除くプレミアム教育領域(今後はプレミアム教育グループと呼称)は、今後国内教育領域に含むこととし、グローバルスクールは、海外留学支援、ネイチャーツーリズム、海外園運営等と合わせて国際教育領域に含むことといたしました。
また、新パーパス具現化の一環として、2025年1月1日をもって、社名を“株式会社Kids Smile Holdings”から”株式会社Smile Holdings”へと変更いたしました(同時に子会社”株式会社Kids Smile Project”も”株式会社Smile Project”に変更しております)。
新事業領域の区分
当連結会計年度末における各事業領域の状況は下記のとおりです。
国内教育領域においては、当社グループは引き続き「教育を通じて社会に貢献する」「未来に輝く子どもたちを育てる」という使命のもと、子どもたちの自ら学ぶ力を育んでいくことができるよう、プレミアム教育グループと認可保育グループを展開し、多彩な教育プログラムと期待に応える保育サービスの提供に取り組んでおります。
プレミアム教育グループ(国内教育領域)においては、幼児教育内容やイベントの更なる充実に加え、社員教育・研修を行う等の高いサービス水準を維持するための施策を継続的に実施し続けた結果、契約児童数が高い水準で推移し、プレミアム教育のフラッグシップであるキッズガーデン南青山含め高い充足率を達成することができました。
また、麻布台ヒルズにおける新園につきましても、2025年中の開園に向けて準備を進めております。
認可保育グループ(国内教育領域)では、「選びたくなる園」であり続けるため、保育の質向上はもとより、未就園児、出産を迎える保護者、教育実習生の積極受入れを行うことで認知度向上を図ると同時に、地域に根付く保育園運営を行ってまいりました。加えて、ICT化推進による、保育サービスの利便性の向上に継続的に取り組み、在籍児童数は引き続き高い水準を維持することができました。
国際教育領域においては、2023年4月1日に開園したキッズガーデングローバルスクール錦糸町、2024年10月1日に開園したキッズガーデングローバルスクール吉祥寺が順調に推移していることに加え、2025年4月1日に予定どおり開園したキッズガーデングローバルスクールセンター北も順調な事業開始となっております。
また、海外留学支援の第一弾として、昨年8月に英国ボーディングスクール留学支援を実施し、好評をいただいたことを受け、第二弾として今夏に英国、スイス、ハワイ(米国)の3か所を実施いたします。さらに、この冬以降のボーディングスクール留学支援企画も進めております。
産後ケア領域においては、5月8日付「産後ケアサービス事業における開業時期の変更に関するお知らせ」にて開示しましたとおり、2026年6月~8月に第一施設の事業開始を行います。不動産事情により着工時期が遅れておりますが、新たな事業開始に向けて準備は順調に進捗しております。
ファミリーサポート領域においては、引き続き調査検討中でございます。
当連結会計年度末における当社グループが運営する施設数は、認可保育所を東京都・神奈川県・愛知県に70施設、プレスクール一体型保育所(認可外保育施設)、幼児教室及び学童施設、スイミングスクールを東京都に10施設合計80施設となっております。
費用面では国内教育領域の各施設及び本社費用における効率的運営を徹底して取り組み、売上原価、販売費及び一般管理費の低減に継続的に取り組んでおります。
なお、当連結会計年度において、減損損失を計上しております。当社グループの保有する固定資産のうち、収益性が厳しくなると予想される施設について、将来の回収可能性を検討した結果、帳簿価格を回収可能見込まで減額し、40百万円の減損損失を特別損失に計上しております。
以上により、当連結会計年度の当社グループの連結業績は、売上高は13,656百万円(前年同期比6.1%増)、営業利益は410百万円(前年同期比76.4%増)となりました。経常利益につきましては、413百万円(前年同期比32.8%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、151百万円(前年同期比14.5%増)となりました。
b.資産、負債及び純資産の状況
当連結会計年度末の財政状態における総資産は、15,222百万円(前連結会計年度末は14,163百万円)となり、1,058百万円増加しました。その内訳は以下のとおりとなります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は、6,741百万円(前連結会計年度末は5,368百万円)となり、1,373百万円増加しました。これは現金及び預金の増加(1,078百万円)、未収入金の増加(241百万円)等があったことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は、8,480百万円(前連結会計年度末は8,795百万円)となり、314百万円減少しました。これは建設仮勘定の増加(197百万円)等があったものの、建物及び構築物(純額)の減少(396百万円)、長期前払費用の減少(69百万円)、並びに繰延税金資産の減少(25百万円)等があったことによるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は、5,271百万円(前連結会計年度末は3,981百万円)となり、1,290百万円増加しました。これは、短期借入金の増加(545百万円)、未払費用の増加(432百万円)、並びに未払法人税等の増加(243百万円)等があったことによるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は、3,453百万円(前連結会計年度末は3,860百万円)となり、407百万円減少しました。これは長期借入金の増加(110百万円)等があったものの、社債の減少(145百万円)、繰延税金負債の減少(363百万円)等があったことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、6,497百万円(前連結会計年度末は6,321百万円)となり、175百万円増加しました。これは親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加(151百万円)等によるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,078百万円増加し、4,670百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、929百万円(前連結会計年度は976百万円の収入)となりました。
主な内訳は、税金等調整前当期純利益(426百万円)、減価償却費(763百万円)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、413百万円(前連結会計年度は224百万円の支出)となりました。
主な内訳は、投資有価証券の売却による収入(33百万円)の資金の増加があったものの、保育施設等の新規開設に伴う有形固定資産の取得による支出(431百万円)等による資金の減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は、562百万円(前連結会計年度は70百万円の収入)となりました。
主な内訳は、短期借入金の純増額(545百万円)及び長期借入れによる収入(506百万円)等の資金の増加があったものの、長期借入金の返済による支出(331百万円)、社債の償還による支出(145百万円)等の資金の減少があったことによるものであります。
当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
当社グループは受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
なお、当社グループは幼児教育事業の単一セグメントであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、一定の会計基準の範囲内で見積りが認められている部分があり、資産及び負債、並びに収益及び費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は13,656百万円(前連結会計年度は12,867百万円)となりました。これは、認可保育園において補助金の対象となる保育内容の充実や職員定着率の向上に継続的に取り組んだこと、並びに2024年10月に東京都内にキッズガーデングローバルスクール吉祥寺(1歳から6歳対象)を開園したこと等によるものであります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は、グローバルスクールの新規開設等に伴い11,722百万円(前連結会計年度は11,273百万円)となりました。主な内訳は、給与及び手当4,043百万円、地代家賃1,607百万円等であります。この結果、売上総利益は1,933百万円(前連結会計年度は1,594百万円)となり、売上総利益率は14.2%(前連結会計年度は12.4%)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、新事業領域の拡充による広告宣伝費及び人件費の増加により、1,522百万円(前連結会計年度は1,361百万円)となりました。主な内訳は、役員報酬144百万円、給与及び手当302百万円、採用費320百万円等であります。この結果、営業利益は410百万円(前連結会計年度は232百万円)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は31百万円(前連結会計年度107百万円)となりました。主な内訳は補助金収入26百万円等であります。また営業外費用は28百万円(前連結会計年度は28百万円)となりました。主な内訳は支払利息18百万円及び社債利息2百万円等であります。この結果、経常利益は413百万円(前連結会計年度は311百万円)となり、売上高経常利益率は3.0%(前連結会計年度は2.4%)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
税金等調整前当期純利益は426百万円(前連結会計年度は264百万円)となりました。また法人税等合計(法人税等調整額を含む)は275百万円(前連結会計年度は132百万円)となり、この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は151百万円(前連結会計年度は132百万円)となりました。
b.資本の財源及び資金の流動性について
当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
また、今後の中長期的な成長に向けて、事業基盤強化のための投資等を推進していきたいと考えております。資金需要のうち短期運転資金につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの短期借入にて、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入等にて対応していくこととしております。
なお、資金の流動性については、金融情勢等を勘案しながら、現金及び現金同等物の残高が適正になるように努めてまいります。
c.経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。