第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは「私たちの使命」として以下の二つを掲げています。

・教育を通じて社会に貢献する。

・未来に輝く子どもたちを育てる。

この使命を果たすにあたり、「私たちの約束」として「共に育つ」を掲げております。

これは職員・保護者・子供たちが共に育つ環境を整え、実践していくことが「私たちの使命」の達成に不可欠であると考えるからです。

 

当社グループの企業ビジョンは以下の二つです。

① 教育を通じて社会に貢献し、「世界中の人々から最も必要とされる教育関連企業グループ」を目指します。

国内においては外国人の方にも選ばれる園を目指します。国外においても当社の幼児教育サービスを提供することを目指していきます。

② 一人一人に寄り添うサービスを通じて、未来に輝く子どもたちを育てていきます。

この実現に向け、最先端の教育理論とテクノロジーに、上質なデザインを重ね合わせて、最も優れたサービスモデルを構築します。

具体的には実際に施設を利用・使用する子どもたち、保護者、職員の機能性に加え、感性に寄り添うデザインを施しております。従来の保育施設に比べ彩り豊かなライティングや壁紙、また施設内の照度を高めに設定した照明計画により明るさと暖かさを兼ね備え、子どもに加え大人たちもが穏やかな気持ちで過ごすことのできる空間を目指しております。

また認可外保育施設においては、前日正午まで新規予約・変更を行うことのできる仕組みをはじめ、保護者様の利便性という点からも優れた選ばれるサービスモデルを追求してまいります。

また、レッジョ・エミリア・アプローチや非認知能力育成のプログラム開発等常に最新の幼児教育理論を導入してまいりましたが、今後もその研究・実践を継続してまいります。保育現場の安全性・保育の質の向上、利用者様にとっての利便性向上、保育士の働き方改革等を目的に業務支援ICTツールをはじめ最新テクノロジーも積極的に導入してまいります。

上質なデザインは園児の成長のみならず、保護者・保育者の満足度、当社や園のブランディングにも寄与していくものと考え丁寧に取り組んでまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、企業価値の増大を図っていくための成長性・収益性の経営指標として、以下の項目を重視しております。

施設数

売上高

経常利益

売上高経常利益率

事業活動の全体の成長の指標となる施設数及び売上高、また事業活動の成果及び収益性を示す経常利益を重視する指標としております。

また、当社においては、営業外収益に計上される新園開設に伴う自治体からの補助金が大きく寄与するために、特に経常利益及び売上高経常利益率を重要な指標として捉えております。

 

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループが属する保育市場は、共働き世帯は年々増加しており、内閣府の「平成30年版男女共同参画白書」によると2018年の共働き世帯数は1,219万世帯となり、女性の社会進出を背景とした保育需要が増加し、待機児童問題は引き続き深刻な状況にあります。政府は2017年6月に新たな「子育て安心プラン」を公表し、2020年度末までに32万人分の受け皿を整備すべく、保育施設の整備と保育士確保のための様々な方針を示しました。また、2019年10月には幼児教育・保育の無償化がスタートしました。幼児教育・保育の無償化には年間8,800億円規模の公費投入が想定されており(※1)、対象家庭の可処分所得の増加にも直接つながることから、幼児教育市場規模の拡大も期待されます。こうした方針を受け、これまで保育所を利用していなかった潜在需要が顕在化すると予想されており、引き続き保育市場の拡大が見込まれております。

上記の見通しを踏まえ、当社グループでは、持続的な成長のために中長期的に以下の基本戦略に取り組んでまいります。

 

※1  財務省の「令和2年度予算のポイント」において、全ての3~5歳児、住民税非課税世帯の0~2歳児を対象に、幼稚園・保育所・認定こども園等の費用を無償化する予算として、公費8,858億円が記載されています。

 

<基本戦略>

① 幼児教育を提供する場としての認可保育所の拡大に注力

東京都を中心とした新規開園戦略により、年間10施設前後を目途とした施設拡大を継続することにより、幼児教育を提供する場としての認可保育所の開設を進めます。加えて当社グループオリジナル教育プログラム「KID'S PREP. PROGRAM」の提供品質向上等保育サービス内容の充実により定員充足率の向上を図ってまいります。

 

② 事業領域の拡大

未就学児を対象とする認可保育所・幼稚園以外の民間教育サービスについては、2018年4月からの保育所保育指針の改訂や、2019年10月からの幼児教育無償化に伴い年間8,800億円規模の公費投入が想定されており、対象家庭の可処分所得の増加にも直接つながることから、需要は益々高まるものと思われ、市場の拡大も期待されます。既存のプレスクール一体型保育所のノウハウを活かし、英語やモンテッソーリ、体操、受験対策に力を入れた幼児教室の新展開や、就学児を対象とする学童・アフタースクールの展開等対象年齢層の拡大等を進めていきます。2019年9月に恵比寿に新展開した幼児教室「KIDS GARDEN CLASSROOM EBISU」では、当社グループ初となる親子参加によるベビーモンテッソーリクラスを開講いたしました。このような親と子が「共に育つ」クラスをはじめ、当社グループの「約束」である「共に育つ」を体現する新たな教育サービスの展開も行ってまいります。

また、地方展開を視野に入れた既存事業のフランチャイズ化による提供サービスの拡大、海外展開、同業のみならずインターナショナルスクール・学童・幼児教室・シッター派遣等の関連業種とのアライアンスやM&Aも検討してまいります。

 

(4) 経営環境及び対処すべき課題

当社グループはさらなる事業拡大に向けた重要課題として以下の点に取り組んでまいります。

 

 

① 人材の確保・育成・労働環境整備による保育の質の向上

質の高い保育サービスを提供し、保育施設を継続して開設していくためには、保育士資格等を有する優秀な人材の確保が不可欠であります。

当社グループでは、通年採用活動を行うとともに、従業員の給与の改善や人事評価制度の構築・見直し、各運営施設に対する本部運営機能・管理体制の強化による現場保育士へのケア、安全管理体制、働き方改革等の徹底を推進する等働きやすい環境づくりに注力しております。

また、モンテッソーリ、前述の「KID'S PREP. PROGRAM」をはじめとする教育プログラムの導入や、教育研修制度の充実を図り、保育の質向上に向けて取り組んでまいります。

 

② コンプライアンスへの取り組み

保育事業は許認可事業であります。従いまして、児童福祉法等の関連法令の遵守が事業継続の大前提であります。また、サービス利用者の個人情報を有しており、当該情報を取り扱うことも多いことから、個人情報の管理は重要なものであると認識しております。コンプライアンスの徹底が求められる中で、当社グループでは、適宜改正される法令に対応すべく、諸規定等のルールや社内管理体制を整備・徹底し、役職員全員に対する研修等により、日常的にコンプライアンスに対する意識を高め、適正に業務を遂行してまいります。

 

③ 収益基盤の多様化

当社グループの運営する施設の多くは国や自治体からの補助金を基盤として運営されており、事業が安定的に推移する一方、政策や制度変更の影響を受け易い傾向があります。一方、幼児教育無償化により可処分所得の増加による影響も伴い民間教育サービスの市場は拡大すると見込んでおります。このような環境を踏まえ当社グループでは、補助金に頼らない民間教育サービスの展開に重点を置き、既存のプレスクール一体型保育所のノウハウやブランド力・知名度を活かした学童やインターナショナルスクール等新サービスの展開・海外展開・フランチャイズ化・他社とのアライアンス等収益基盤の多様化に取り組んでまいります。

 

④ 認可保育所開園用不動産の確保

当社グループが開園する認可保育所は、不動産所有者から土地や建物を賃借いたします。自治体のニーズや保護者の期待に応えられる候補地を短期間で探し出すためには、不動産開発業者や不動産所有者とのネットワークが重要になってまいります。当社グループでは金融機関や不動産開発業者等と常に必要な不動産情報が交換できる関係を構築しており、金融機関は取引実績によるものから、不動産開発業者とは過去の成約実績からその関係を強固なものにしております。今後におきましても、広域での不動産情報の入手のため、関係強化に努めてまいります。

 

 

◇ 新型コロナウイルス感染症の影響及び対応

新型コロナウイルス感染症が世界規模で拡大する中、当社グループは運営する認可保育所、プレスクール一体型保育所及び幼児教室において、より良い幼児教育サービスの提供と共に、社会福祉の重要な拠点としてその事業を確実に継続することができるよう、お子様そして保護者様の安全を第一に考え、また従業員が安心して働けるよう、各自治体とも連携して対策とその実行に取り組んでおります。4月の政府による緊急事態宣言発令後は臨時休園または規模を縮小しての開園を実施する一方、本部においてはそれ以前より在宅勤務や時差出勤を実施するなど対策を講じております。

なお、認可保育所は毎月月初の在籍園児数に応じて補助金が交付される制度となっており業績に与える影響は軽微でありますが、当社グループでは、財務の健全性を図りつつ、保育所等の開設に必要な資金についても安定的に調達するために財務基盤の安定性確保に努めております。

今後「ウィズコロナ」の取り組みは長期に渡ることが想定されます。安全・安心志向、働き方改革、デジタルシフト等、生活様式にも大きな変化が見込まれます。また、緊急時においては特に医療・交通・金融・警察・消防・社会福祉等の社会生活を維持するうえで必要なサービスに従事している保護者の方に保育・幼児教育等を提供することについても、ますます重要になってまいります。

当社グループは、お子様、保護者様、取引先、従業員の安全・安心確保の取り組みの徹底、働き方改革の推進による従業員の雇用の安定化を図ると共に、オンラインコミュニケーションツール等を活用した保育・幼児教育サービスの提供等、新しい生活様式に対応した事業展開により企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

以下において、当社グループの事業展開等に関するリスク要因となる可能性がある主要な事項を記載しております。また、必ずしも事業展開上のリスクに該当しないと考えられる事項についても、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。

なお、以下の記載事項は特に断りがない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 子育て支援における国や自治体の方針変更や関連法令等の改正等について

2000年に認可保育所の運営に株式会社を含む多様な運営形態が認められて以降、様々な事業者がその運営に乗り出しました。子ども・子育て支援制度において、国や自治体は待機児童解消に向けて多様な支援策を講じ、各事業者は業容を拡大しております。

また、当社グループが現在運営する事業は、児童福祉法、子ども・子育て支援法、及び食品衛生法等の法規制が存在します。

当社グループは今後も国の方針に基づき、各自治体との連携を深め業容拡大に邁進してまいりますが、国や自治体の方針が変更され、補助金の削減や株式会社による保育所の開設が制限される場合、または、関連法令の制定・改廃が行われた場合、当社グループの事業活動が制約を受け、業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 認可事業であることについて

当社グループが運営する保育所の多くは、児童福祉法に基づき施設ごとに所轄する自治体宛に保育所開設の申請を行い、審査を経て許可等を受け運営されております。当社グループの運営保育所において、過去に認可等の取消事例はありませんが、今後、何らかの事由により認可等が取り消される場合や、新規施設の認可等が得られない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 子ども・子育て支援事業の依存について

当社グループの事業は、認可等を受けた保育所の運営を主体とする子ども・子育て支援に関する事業であります。従って、子ども・子育て支援に関する政策や市場の動向が、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

厚生労働省より、2013年4月に、待機児童解消に向けた「待機児童解消加速化プラン」が公表され、多数の事業者が新規参入し保育所を開設しております。厚生労働省が発表した「H31.4.1時点保育所等整備量・待機児童数の公表について」によると、2019年4月1日現在における待機児童数は16,772人であり、待機児童数はいまだ高水準であると言えます。従って、国や自治体のその解消に向けた積極的な取り組みは今後も継続していくと考えられます。

一方で、少子化が進んでいることも事実であり、想定した園児数を確保できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 人材の確保及びその育成について

当社グループでは、運営施設数の増加に伴い、保育士資格を有する保育士や指導員・スタッフの確保が急務となっております。このため、当社グループでは、採用活動を強化しており、人事部門の強化、社員紹介制度の構築、保育士専門の人材紹介会社からの紹介強化等の施策を実施しております。また、教育研修制度や人事評価制度の充実を図り、人材確保と離職率の低下に向けた制度の充実も図っております。

しかしながら、予定した職員数が確保できない場合、新規施設開園計画の遅延や既存施設の運営計画に支障が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(5) 施設開園場所の確保について

当社グループが開園する保育所の多くは、不動産所有者が、当社グループの保育所仕様に基づいて建設した施設を賃貸して運営しております。待機児童が多い自治体においては、その解消に向け新規保育所に対する期待も大きく、当社グループにおいても積極的に新規開園を進めていく所存であります。そのためには、新規開設候補地を短期間で探し出さなければならず、不動産開発業者や不動産所有者とのネットワークが重要となってまいります。当社グループでは金融機関や不動産開発業者等と常に必要な不動産情報が交換できる関係を構築しており、その確保に全力を尽くしております。

しかしながら、候補地選定の難航、近隣住民の反対運動の発生による開園遅延あるいは開園を断念するに至った場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(6) 食の安全性について

当社グループは、各施設の園児に対して、必要な栄養量が確保できるように献立を作成し、各施設にて調理・提供しております。そのために、食品衛生法に基づき、厳選した食材管理及び衛生管理を実施し、食中毒や賞味期限切れ食材の使用、異物混入等の事故を起こさないよう努力しております。しかしながら、何らかの理由により食の安全に関する重大な事故が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(7) 感染症について

当社グループでは安全な保育環境を確保し、保育の質を向上するため、施設全体について定期的に消毒を実施しており、感染症に対するマニュアルに基づいた対策を実施しております。しかしながら、新型インフルエンザやノロウィルス等の感染症が発生し、当該施設に従事する保育士やスタッフ・児童が多数感染した場合、施設運営に支障が出る可能性があります。このような場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(8) 運営施設における事故のリスクについて

当社グループでは、施設の運営に関し事故等が起こらないよう万全の体制で臨んでおりますが、万が一重大な事故やトラブルが発生した場合には、行政処分による営業停止や園児の転園等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 大規模災害について

当社グループの運営する施設は東京都・神奈川県に集中しております。このため、これらの地域において大規模な地震や火災・集中豪雨等による水害等の発生により、園児や従業員、施設の建物が被害を受けた場合、当該施設の運営が困難となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(10) 個人情報保護について

当社グループでは、園児及びその保護者の氏名や住所等多くの個人情報を保持しております。これら顧客の個人情報の保管・取扱いについては規程に基づく管理体制を構築することに努めておりますが、万が一漏洩事故が発生した場合、顧客からだけではなく、広く社会的な信用失墜を招き、施設の運営に支障が生じる等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(11) 資金調達について

当社グループでは、施設の新規開園に関する設備資金を金融機関からの借入により調達しており、総資産に対する有利子負債合計の割合は、2019年3月期45.4%、2020年3月期35.2%と高い比率で推移しております。従って、借入金利の上昇等の金融情勢の変化、または取引金融機関の方針変更等により予定必要資金の調達が困難となり、新規施設の開園が遅延または中止となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(12) 創業者への依存について

当社の代表取締役社長である中西正文は、株式会社Kids Smile Projectの創業者及び創業以来最高経営責任者であり、中西正文の資産管理会社である株式会社エーエムカンパニーとあわせて、当連結会計年度末現在、当社株式を74.6%所有する大株主であります。また同氏の配偶者である取締役副社長土居亜由美(戸籍名:中西亜由美)についても創業以来当社グループの施設開園及び運営に携わり、副社長としての任を担っております。

両氏ともに保育業界に精通しており、施設や教育プログラム開発・経営方針・経営戦略において重要な役割を果たしております。

当社グループでは、業務運営を司る取締役に対する権限移譲や、幹部社員に対する教育・研修を徹底させることにより、両氏に依存しない経営体制を早期に構築していく所存でありますが、何らかの影響により両氏ともに、あるいは一方でも当社グループの経営を継続することが出来なくなった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(13) 固定資産の減損について

当社グループが運営する施設の業績が悪化し、その回復の見込みがない場合、あるいは新規開園から一定期間を経過しても業績改善の見込みがない場合、有形固定資産の減損処理が必要となり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(14) 新たに保育所等を開設した場合の経営成績に与える影響について

新たに保育所等の施設を開設した場合の当社グループの経営成績に与える影響を個々の施設ごとに見ると、一般的に以下のような特徴があります。

営業損益・・・・

開設時には3歳~5歳児等が必ずしも定員を満たさない場合があるため、開設初年度から数年間は営業赤字になる可能性がありますが、児童年齢の持ち上がりとともに年々、改善される傾向にあります。

また、新規開設資金のうち費用処理されたものは営業費用に計上されます。

営業外収益・・・

新規開設資金のうち内装工事費等に対して自治体より補助金が交付された場合、営業外収益の「補助金収入」に計上されます。

 

このため、新規開設施設の件数増加等により、一時的に営業損益の悪化要因になる傾向がありますが、補助金収入(営業外収益)の増加要因となります。一方、新規開設施設の件数減少等は一時的に営業損益の改善となりますが、補助金収入(営業外収益)は減少いたします。

当社グループはこれまで積極的に新規開設を行っており、経営成績における新規開設の影響が大きくなっております。しかしながら、運営施設数に対する新規開設施設数の割合が減少するに伴い、今後は3歳~5歳児が定員を満たさないことによる営業損益の悪化及び新規開設に伴う開設補助金(営業外損益)の減少等の影響が徐々に緩和するものと考えられます。

 

(15) 補助金により固定資産を取得した場合の会計処理について

自治体からの補助金により固定資産を取得した場合、税務上、固定資産の取得価額から補助金の額を控除する圧縮記帳を行うことが認められております。財務会計において圧縮記帳の方法は、補助金の額を控除した残額を固定資産に計上し毎期の減価償却も控除後の額をもとに計上する直接減額方式と、補助金を収益計上し、固定資産を取得価額で計上する剰余金処分方式とがあります。

当社グループは剰余金処分方式を採用しており、直接減額方式と比較して、新たに保育所を開設した事業年度においては補助金収入が計上されるものの、その後の減価償却費は多額に計上されることになります。当社グループでは保育所等の減価償却費を売上原価に計上し、補助金収入を営業外収益に計上しているため、減価償却費の負担等により営業損失を計上し、営業外収益の補助金収入等にて経常利益を計上しております。

なお、剰余金処分方式においても、利益剰余金と税額の計算により、税務上の効果は直接減額方式と同様となります。

 

 

(16) 四半期別業績変動要因について

当社グループにおける保育所等は4月に新規開設されるものが大部分となっております。そのため、第1四半期連結会計期間(4月~6月)において、多額の新規開設費用、補助金収入が計上される傾向にあります。

 

(17) 新型コロナウイルス感染症に関するリスクについて

新型コロナウイルス感染症の流行が長期化した場合、自治体からの登園自粛の再要請等に伴うプレスクール一体型保育所の利用率低下による売上減少、また、当社グループの保育士等の関係者が感染した場合、保育士の必要人数を確保するための対応費用の増加等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断しているものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

a.経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、政府による景気対策を背景に企業収益や雇用・所得環境に改善の兆しが見られるなど、緩やかな回復基調で推移してまいりました。しかしながら、当連結会計年度末に新型コロナウイルス感染症の流行が世界的に拡大しており、極めて先行き不透明な状況となっております。

さて、当社グループが属する保育・幼児教育サービス市場におきましては、共働き世帯は年々増加しており、女性の社会進出を背景とした保育需要は増加し、待機児童問題は引き続き深刻な状況にあります。こうした保育需要増加に対応するため、政府は保育施設の整備と保育士確保のための様々な方針を示しております。また、2019年10月から幼児教育・保育の無償化が開始されたことで、これまで保育所を利用していなかった潜在需要が顕在化すると予想されており、引き続き保育・幼児教育サービス市場の拡大が見込まれております。

このような事業環境の中、当社グループは認可保育所の開設を推進し、2019年は、4月に10施設、6月に2施設、7月に1施設、10月に1施設をいずれも東京都に新規開設したほか、9月に幼児教室1施設を東京都に開設いたしました。その結果、2020年3月末における当社グループが運営する施設数は、認可保育所を東京都・神奈川県・愛知県に46施設、プレスクール一体型保育所(認可外保育施設)を東京都に4施設、幼児教室を東京都に1施設の合計51施設となりました。

以上により、当連結会計年度の当社グループの連結業績は、売上高は7,275百万円(前連結会計年度は5,326百万円)、営業損失は323百万円(前連結会計年度は132百万円)、経常利益は1,885百万円(前連結会計年度は1,965百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,175百万円(前連結会計年度は1,272百万円)となりました。

なお、当社グループは2020年4月にも認可保育所9園を東京都に新規開園しておりますが、新型コロナウイルス感染拡大防止と予防につき各自治体とも連携して対策とその実行に取り組んでおり、いずれも概ね計画通りの稼働率を達成しております。

 

b.資産、負債及び純資産の状況

当連結会計年度末の財政状態における総資産は、11,525百万円(前連結会計年度末は9,075百万円)となり、2,449百万円増加しました。その内訳は以下のとおりとなります。

 

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産は、2,545百万円(前連結会計年度末は1,486百万円)となり、1,059百万円増加しました。これは現金及び預金の増加(823百万円)及び未収入金の増加(223百万円)等があったことによるものであります。

 

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産は、8,979百万円(前連結会計年末は7,589百万円)となり、1,390百万円増加しました。これは建設仮勘定の減少(870百万円)があったものの、建物及び構築物(純額)の増加(1,950百万円)、長期前払費用の増加(119百万円)並びに敷金及び保証金の増加(102百万円)等があったことによるものであります。

 

 

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債は、3,616百万円(前連結会計年度末は3,996百万円)となり、380百万円減少しました。これは短期借入金の増加(303百万円)等の増加があったものの、1年内返済予定の長期借入金の減少(302百万円)、未払金の減少(158百万円)及び未払費用の減少(213百万円)等があったことによるものであります。

 

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債は、3,181百万円(前連結会計年度末は2,463百万円)となり、718百万円増加しました。これは長期借入金の減少(64百万円)があったものの、繰延税金負債の増加(590百万円)及び長期前受金の増加(100百万円)等があったことによるものであります。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は、4,726百万円(前連結会計年度末は2,615百万円)となり、2,111百万円増加しました。これは新株式発行による資本金の増加(467百万円)及び資本剰余金の増加(467百万円)、並びに親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加(1,175百万円)によるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ829百万円増加し、1,526百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、2,307百万円(前連結会計年度は2,649百万円の増加)となりました。

主な内訳は、売上債権の増加(243百万円)及び未払費用の減少(213百万円)等による資金の減少があったものの、税金等調整前当期純利益(1,808百万円)及び減価償却費(574百万円)等による資金の増加があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、2,349百万円(前連結会計年度は2,749百万円の減少)となりました。

主な内訳は、認可保育所の新規開設に伴う有形固定資産の取得(2,348百万円)等による資金の減少があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、871百万円(前連結会計年度は86百万円の増加)となりました。

主な内訳は、長期借入金の返済による支出(1,406百万円)による資金の減少があったものの、短期借入金の純増額(303百万円)、長期借入れによる収入(1,039百万円)及び株式の発行による収入(935百万円)等の資金の増加があったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

b 受注実績

当社グループは受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

 

c 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

なお、当社グループは幼児教育事業の単一セグメントであります。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

対前期増減率(%)

幼児教育事業

7,275,973

36.6

合計

7,275,973

36.6

 

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

(自 2018年4月2日

  至 2019年3月31日)

当連結会計年度

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

品川区

1,320,698

24.8

1,367,894

18.8

 

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、一定の会計基準の範囲内で見積りが認められている部分があり、資産及び負債、並びに収益及び費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらと異なる可能性があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は7,275百万円(前連結会計年度は5,326百万円)となりました。これは、2019年4月に認可保育所を東京都に10施設、2019年6月に認可保育所を東京都に2施設、2019年7月に東京都に認可保育所を1施設、2019年10月に東京都に認可保育所を1施設を新規開設したほか、2019年9月に幼児教室を東京都に1施設を新規開設したことにより、施設数が認可保育所46施設、プレスクール一体型保育所4施設、幼児教室1施設となったことによるものであります。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度における売上原価は、認可保育所の施設数の増加及び新規開設等に伴い6,404百万円(前連結会計年度は4,589百万円)となりました。主な内訳は、給与及び手当2,313百万円、地代家賃966百万円等であります。この結果、売上総利益は871百万円(前連結会計年度は737百万円)となり、売上総利益率は12.0%(前連結会計年度は13.9%)となりました。

 

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、認可保育所の新規開設に伴う採用費及び本社人員等を増加させたことによる人件費等の計上に伴い1,194百万円(前連結会計年度は870百万円)となりました。主な内訳は、役員報酬121百万円、給与及び手当247百万円、採用費372百万円等であります。この結果、営業損失は323百万円(前連結会計年度は132百万円)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

当連結会計年度における営業外収益は2,284百万円(前連結会計年度は2,179百万円)となり、主な内訳は補助金収入2,282百万円等であります。営業外費用は76百万円(前連結会計年度は80百万円)となり、主な内訳は支払利息29百万円及び支払手数料31百万円等であります。この結果、経常利益は1,885百万円(前連結会計年度は1,965百万円)となり、売上高経常利益率は25.9%(前連結会計年度は36.9%)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

税金等調整前当期純利益は1,808百万円(前連結会計年度は1,954百万円)となりました。また法人税等合計(法人税等調整額を含む)は633百万円(前連結会計年度は681百万円)となり、この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,175百万円(前連結会計年度は1,272百万円)となりました。

 

b.資本の財源及び資金の流動性について

当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

また、今後の中長期的な成長に向けて、事業基盤強化のための投資等を推進していきたいと考えております。資金需要のうち短期運転資金につきましては、主に営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、金融機関からの短期借入にて、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入等にて対応していくこととしております。

なお、資金の流動性については、金融情勢等を勘案しながら、現金及び現金同等物の残高が適正になるように努めてまいります。

 

c.経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

該当事項はありません。