当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
企業理念『ひとりのかけがえのない命のために、ステラファーマは世界の医療に新たな光を照らします。』
当社は、「ひとりのかけがえのない命のために」それぞれの使命を実行することを行動指針の基盤とし、「世界の医療に新しい光を照らす」ことを経営目標の策定方針として企業理念に掲げております。
この企業理念を実現するため、当社は会社設立時よりBNCTの実用化に取り組んでおり、がん患者へ新たな医療の選択肢を提供することを、経営の基本方針としております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、新規医薬品の上市を目指して研究開発を先行して行う、いわゆるバイオベンチャー企業であり、2020年3月に、切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌を効能・効果として、ステボロニン®の製造販売承認を取得いたしました。また同年5月からステボロニン®の販売を開始しております。
当面の経営上の目標は、新たな医療としてBNCTの認知度を向上させることによる上市後の安定的な収益の獲得及びそれに伴う事業基盤の確立であります。
従って、当社は、ROEのような利益を基準とした経営指標を目標とせず、売上高の増加割合すなわちBNCTの実施症例数の伸長を、目標の達成状況を判断するための主要な経営指標として事業活動を推進する計画であります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は、ステボロニン®を事業基盤とすべく国内では適応疾患の拡大を図り、さらに米国、欧州及びアジアを中心にグローバルに事業を展開していき、新たながん治療の選択肢として各国にステボロニン®を提供することを中長期の経営戦略としております。
適応拡大については、主にBNCTの臨床研究データが豊富な疾患や未だ有効な標準的治療法が見つかっていない疾患に対する医療ニーズ、いわゆる「Unmet Medical Needs」の分野での適応拡大を目指し、CSRの観点からも社会に貢献していく方針であります。
また、海外展開においては、グローバルの製薬企業等をパートナー企業として提携し、導出モデルをとることで上市までの期間短縮を図る方針であります。
(4)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社が属する製薬業界は、国内における市場規模は横ばいで推移しつつも、がん患者数はなだらかな増加傾向を示しております。高齢化社会を迎えている日本では、医療費の増加とともに今後も一定の市場規模を維持していくことが予測されます。
また、海外では当社が属するがん治療の分野においては、新薬承認及びオーファンドラッグ(希少疾病医薬品)の増加等により米国を始めとした主要な市場での伸長が予測されております。
がん治療の分野においては、新薬の研究開発が盛んに行われており、潜在的な競合相手に先行するためには、開発から承認に至るまで開発計画を遅延することなく迅速に進める必要があります。
このような経営環境の下、当社が対処すべき主な課題は、次のとおりであります。
① 適応疾患の拡大
当社は、2020年3月に、切除不能な局所進行又は局所再発の頭頸部癌を効能・効果として、ステボロニン®の製造販売承認を取得するに至りました。現在、頭頸部癌以外の疾患では、再発高悪性度髄膜腫(医師主導治験により実施)、血管肉腫を対象に臨床試験を実施しており、悪性黒色腫の開発は第Ⅰ相臨床試験で対象とした疾患から適応を広げることも含めて、今後検討していく予定です。再発高悪性度髄膜腫、悪性黒色腫及び血管肉腫も国内では同様に希少がんとされております。その中で、厚生労働省より2023年12月に切除不能な皮膚血管肉腫を予定される効能・効果として希少疾病医薬品の指定を受けました。また、既に国内第Ⅱ相臨床試験を完了している再発悪性神経膠腫に対しては、その結果を用いて承認申請を行う当初方針を変更し、初発悪性神経膠腫への適応拡大も視野に入れ、再検討することとしており、2024年1月には国立大学法人筑波大学が実施する初発膠芽腫を対象とした第Ⅰ相医師主導治験が開始され、当社は当該治験の実施に協力しております。
治験の実施においては、開発体制の強化と開発資金の獲得を滞りなく進め、スケジュール管理の徹底等によって開発計画を着実に実施し、早期承認を得ることを目指してまいります。
② 海外展開の推進
日本で承認を得た疾患を対象に、米国、欧州及びアジアを中心とした海外市場への展開を計画しております。海外展開において、早期の上市を目指すには、地域ごとに異なる医薬品の製造販売承認に係るレギュレーションを熟知しているパートナー企業との提携が必要不可欠であると考えられます。当社は、海外展開において信頼できるパートナー企業をいち早く選定し、関係構築及び連携を推進してまいります。
海外第1号案件である海南島プロジェクトについては、医薬品の品質を確保した輸送体制を確立するとともに、現地パートナー企業と協力して必要な許認可を遅滞なく取得し、BNCTセンター稼働後に速やかに治療が行える準備を進めます。
③ 新規パイプラインの拡充
医薬品事業においては、開発パイプラインの充実度が将来の利益貢献に大きく影響することから、新規パイプラインの拡充が重要となります。この点、当社では、BNCTの新規パイプラインとして胸部にある複数の癌腫を対象とした胸部悪性腫瘍の開発にも着手し、臨床試験の実施に向けて当局との相談を含め、世界初となるバスケット型のBNCT治験の準備を進めております。また、BNCTに関連する新規パイプラインの拡張策として、「18F-FBPA-PET」の開発に取り組んでおります。18F-FBPA-PETによる体内でのボロファラン(10B)分布の可視化は、BNCTへの適応の検討を容易にするなどのBNCTとのシナジー効果が期待されることから、世界初となるBNCTの胸部悪性腫瘍に対する治験開発計画に組み込む計画を進めております。当社は、限りある経営資源を有効に活用し、長期的な成長戦略に基づいた新規パイプラインの拡充を実施してまいります。
④ 財務体質の強化
当社のビジネスモデル上、開発パイプラインが上市され収益化する前に多額の研究開発費用が先行して発生するため、継続的に営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスとなる可能性があります。そのため、早期の黒字化とともに財務体質の強化が課題であると認識しております。今後は研究開発活動の適切なコントロールに加え、金融機関からの資金調達や新株発行等により、更なる財務体質の強化に努める方針であります。
⑤ 優秀な人材の獲得及び育成
当社は、現在、小規模の組織で事業運営を行っておりますが、今後のグローバル展開のためには、製薬業界に通じた経験や知見等を有する優秀な人材を採用し、営業体制、開発体制及び管理体制を整備していくことが重要であると認識しております。また、採用活動を進めるとともに、教育訓練も重視して取り組み、企業と従業員がともに成長していくことができる体制の構築に取り組んでまいります。
⑥ 安定供給の維持・確保
治療を必要とする患者のもとに高品質な医薬品を安定的に供給することは、医薬品メーカーにとって最も重要な使命の一つであります。当社は、厳格な基準による製造管理・品質管理を行うとともに、需要予測の精査及び適正在庫の確保を通じて、安定供給の維持・向上を図っておりますが、棚卸資産のうち、特に原材料は現状においては代替品の無いものとなっていることから、災害時においても安定供給を維持できるように、原材料のセカンドソース化や相当期間分の販売に対応できる在庫数量の確保に取り組んでまいります。
当社は、環境の保全、社会の持続的な発展及び経済や産業の成長に貢献し、様々なステークホルダーの価値創造に配慮した経営と当社の持続的かつ安定的な成長による企業価値の向上を実現するため、以下の基本方針に基づきサステナビリティへの取り組みを推進してまいります。
なお、文中の将来に関する記載は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
1.環境の保全及び社会の持続的な発展・繁栄、国内外の経済・産業の成長に対する直接的・間接的なポジティブな
インパクトの拡大とネガティブなインパクトの低減に努めます。
2.製薬会社としての社会的責任を認識し、事業活動やステークホルダーとのエンゲージメントを通じた間接的なイ
ンパクトの大きさを考慮し、SDGsへの取組みを推進いたします。
3.インパクトや取組みの実現に向けて、利益相反や対立がある場合には、その事情や国際的な規範・合意・世論等
を踏まえ、環境の保全及び社会の持続的な発展・繁栄、国内外の経済・産業の成長の観点から、長期的な視点に基づいて優先順位を付けて取り組みます。
また、上記の「サステナビリティに関する考え方」に基づき、当社の持続的かつ安定的な成長による企業価値の向上を実現するため、以下のとおりSDGsに関連した5つのマテリアリティを設定し、その達成に向けた取り組みを進めてまいります。
※SDGs…国連で採択されましたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称であり、17のゴールと169のターゲットで構成される国際目標です。
(1)ガバナンス
当社のサステナビリティに関する具体的な方針や戦略の検討・計画立案等は、代表取締役直下の組織であるサステナビリティ推進チームにて行い、承認・報告・レビュー等は取締役会、コンプライアンス委員会、リスクマネジメント委員会において適時に実施する体制であります。
基本方針は取締役会で決議し、代表取締役社長が承認したものであり、サステナビリティの取り組みに係る活動の全ての責任は代表取締役社長が負うものとしております。
(2)戦略
当社のサステナビリティに関する具体的な戦略や計画立案は、当社に設置されるサステナビリティ推進チームにて行います。具体的な戦略や計画立案は、適切な方法で全ての取締役及び従業員に周知されるとともに、当社のバリューチェーンに関連する項目については、具体的な行動計画に反映させてまいります。
(3)リスク管理
当社のサステナビリティへの取組みには様々なリスクの発生可能性がありますが、それらのリスク管理は、より専門性の高い社内のコンプライアンス委員会やリスクマネジメント委員会において具体的な状況の共有、対応策の検討が実施されており、適切なリスク管理体制を構築しております。
(4)指標及び目標
当社のサステナビリティへの取組みに係るリスクの評価と対応については、経営資源の有限性の観点から、影響の重要性に応じて取り組むべき優先順位を決定し、目標を設定しております。
当社の事業運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社が必ずしも事業上の重要なリスクであると認識していない事項も含まれておりますが、投資判断上若しくは当社の事業活動を十分に理解する上で重要と考えられる事項については、投資家や株主に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。
当社は、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針でありますが、その対策の成否には不確実性を伴うため、当社株式に関する投資判断は、以下の事項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、当社の事業は、これら以外にも様々なリスクを伴っており、下記の記載は投資判断のためのリスクを全て網羅するものではありません。
当社は、医薬品等の開発、製造及び販売を行っておりますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究開発費用を要し、全ての開発が成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有するバイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。
なお、文中の将来に関する記載は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
Ⅰ.医薬品等の研究開発事業及び医薬品業界に関するリスク
(1)研究開発の不確実性について
適応疾患の拡大を含む医薬品等の研究開発は、一般的に基礎研究から承認取得まで長期間を要し、相当規模の研究開発投資が必要となります。その一方で、新規医薬品の安全性及び有効性の評価は臨床試験による検証を要し、その成功の可能性は、他の産業と比較して相対的に低いものとされております。
従って、新規医薬品の開発過程においては、臨床試験の結果等に起因して、開発が遅延し又は中止となる場合があることから、研究開発活動の将来性は不確実性を伴っております。
新規医薬品の開発は、製薬企業のほか、臨床試験を実施する医師及び医療機関、各国の薬事関連法規等に基づき承認権限を有する規制当局の三者によって実施されます。製薬企業が策定した臨床試験計画等について、臨床試験を実施する医師の見解あるいは医療機関における意思決定等の内容によっては、計画の変更を余儀なくされる場合があります。また、承認取得には厳格な審査を受ける必要があり、審査過程において規制当局からの要望又は指導等により、計画の変更を余儀なくされる場合があります。また、医薬品業界を規制する医薬品医療機器等法や他の関連法令の改定により、計画の変更を余儀なくされる場合があります。これらの要因により、開発が遅延し又は中止となる場合があり、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)副作用及び製造物責任について
医薬品は、臨床試験段階から上市後まで、予期せぬ副作用が発現する可能性があります。医薬品の安全性は、非臨床試験及び臨床試験において十分に検討されますが、少数例での臨床試験では検出されなかった発現頻度の低い副作用が、当該医薬品の上市後において検出される可能性があります。
当社では、これらの副作用発生による補償又は賠償に対応するために、想定し得る範囲で治験保険あるいは製造物責任保険に加入又は加入を予定しておりますが、保険契約でカバーされる補償の範囲を超えた賠償責任を問われる可能性は否定できません。また、重篤な副作用や死亡例の発現は、製品及び企業のイメージ・ブランドを損ねることとなり、当該製品以外の事業への影響が生じる可能性があります。重篤な副作用や死亡例の発現により、製品の回収、製造販売の中止、薬害訴訟の提起、製造物責任賠償及び他の事業への影響等が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)医薬品業界特有の競合関係について
医薬品の開発は、国際的な巨大企業からバイオベンチャー企業まで国内外の数多くの企業又は研究機関等により、激しい競争環境の下で行われております。当社の開発パイプラインは、特に競争が激しいとされるがん治療の分野であり、新薬等の研究成果あるいはその開発結果によっては、当社開発品の優位性が低下する可能性があります。従って、新薬等の開発、上市又は上市後の販売における競争結果により、当社の製品開発や販売計画等の事業計画が計画どおりに進捗しない場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4)薬事関連法規及び医療保険制度による規制について
当社の属する医薬品業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の薬事関連法規、医療保険制度及びその他関係法令等により、様々な規制を受けており、国内における医薬品の製造販売に関しては、以下の許認可を取得しております。当社は、当該許認可を受けるための関連法規及び諸条件の遵守に努めており、当事業年度末現在において当該許認可が取り消しとなる事由は発生していないものと認識しておりま
す。しかし、法令違反等により当該許認可が取り消された場合には、医薬品の回収又は製造及び販売を中止することを求められる可能性があります。このような事象が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、適応疾患の拡大を含む医薬品の開発には、相当規模の研究開発投資と長い歳月を必要としますが、安全性、有効性及び品質に関する十分なデータが得られず、規制当局が医薬品としての有用性を認めない場合には、承認が計画どおり取得できず上市が困難になる可能性があります。これは開発品を他社に導出する場合も同様であり、当初計画した条件での導出が行えない可能性、導出そのものが困難になる可能性、導出した場合にその契約内容が変更になる可能性若しくは導出契約が解消される可能性があります。また、日本国内では医療費の増加により、定期的な薬価引下げ等の医療費抑制のための施策が実施される傾向にあり、薬価改定等で想定している保険価格が付されない可能性があります。このような事象が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(主たる許認可の状況)
|
許認可の名称 |
所轄官庁等 |
有効期限 |
主な許認可等の取消事由 |
|
第一種医薬品製造販売業許可 (医薬品医療機器等法第12条) |
大阪府 |
2028年6月 (5年ごとの更新) |
薬事関連法規に関する法令若しくはこれに基づく処分等に違反する行為があったとき又は役員等が欠格条項に該当したときは許可の取り消し (医薬品医療機器等法第75条第1項) |
Ⅱ.事業遂行上のリスク
(1)販売体制及び販売計画について
当社は、国内では自社販売モデルを採用しておりますが、中性子発生装置の設置状況の進捗や想定する患者数の見積りの精度により実績と計画に相違が生じる可能性があります。また、BNCTは臨床研究として実施した症例数を含めても、その治療実績数は限定的であります。BNCTによる治療が適した症例の数及びその施術数は未知であることに起因し、販売計画が想定どおりに進捗しない可能性もあります。
これらの場合には、当社の棚卸資産及び固定資産の収益性の低下に伴う評価損及び減損損失の計上等が検討され、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社はBNCTの適応疾患の拡大を計画しておりますが、適応疾患の拡大が想定どおりに進捗しない場合においても、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(2)BNCT事業の特異性について
当社が開発するBNCTは、ホウ素薬剤を投与した患者に中性子線を照射することで効果を得るものであり、医薬品と医療機器の双方を使用するコンビネーションプロダクトによる治療法となります。医療機器については、住友重機械工業株式会社において、医療機関に設置可能な小型加速器が開発され、当社と共同で世界初となるBNCTの臨床試験を実施し、2020年3月に製造販売承認を取得されております。また、同社以外においても中性子発生装置の研究開発が進められておりますが、将来、中性子発生装置の研究開発や製造販売の遅延又はその他の何らかの事由の発生により、医療機関への機器の設置が進まない場合や、医療機関に設置された中性子発生装置に不具合が生じた場合等においては、医療機関でのBNCTによる治療が制限され、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)仕入先に対する依存度について
当社開発品であるステボロニン®の原薬「ボロファラン(10B)」の製造には、その原材料となるホウ素の安定同位体であるB-10を高純度まで濃縮する必要があり、当社は、唯一その技術を国内で有しているステラケミファ株式会社から独占的に仕入れを行っております。
原材料の代替性の確保のため、新たな研究開発や相当期間分の販売に対応できる在庫数量を保有するなど検討して取り組んでおりますが、現状においては、当該原材料は代替性が無いものであり、将来、災害等を含む何らかの事由の発生により、同社との関係で取引や生産が停止した場合は、当社におけるステボロニン®の製造販売が困難となり、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、同社との原材料の仕入取引に関して、医療用途に限定した独占的取引基本契約を締結しておりますが、同契約の有効期間は医薬品製造販売承認取得日から10年間(以後、1年間ごとに特段の意思表示がない限りは自動的に継続)であります。10年経過以降、同契約の解除又は独占権が付与されない場合、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4)製造委託について
当社開発品であるステボロニン®の製造については、外部の製造委託企業と良好な関係を保ちながら、品質管理及び安定供給に努めております。
しかしながら、万が一、製造委託企業が災害等に見舞われ、製造設備への被害等不測の事態が発生した場合や、製造委託企業の生産管理及び品質管理体制の不備を原因とした製造ラインの休止や法令違反に伴う営業停止処分がなされた場合は製品の品質や安定供給等に支障をきたし、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、製造委託企業の経営破綻や法令違反に伴う営業許可の取消処分がなされた場合は、当社は製造委託企業
の変更を余儀なくされ、代替企業の選定から製造、検証及び医薬品の一部変更承認申請まで一定の期間を要する
ことから、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(5)海外展開について
当社は、米国、欧州及びアジアを中心とした海外市場への展開を計画しております。海外市場への展開においては、適切なパートナー企業との提携が想定どおりに進まない可能性や、提携先での製造や販売に支障が生じる可能性があるほか、法令や規制の変更、政情不安、経済動向の不確実性、税制の変更や解釈の多様性、為替相場の変動、商習慣の相違等に直面する場合があり、これらに伴うコンプライアンスに関する問題の発生を含め、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(6)会社組織について
a.小規模組織及び少数の事業推進者への依存
当社は、当事業年度末現在、取締役8名及び従業員44名の小規模組織であり、現在の内部管理体制は組織規模に応じたものとなっております。今後、業容の拡大に応じて内部管理体制の拡充を図る方針ですが、体制の整備が予定どおり進捗しない可能性があります。
また、当社の事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発人員に強く依存するところがあります。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めていますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
b.社歴について
当社は、2007年6月に設立された社歴の浅い企業であります。従って、当社の過去の業績から当社の将来の業績等を推測することは難しい状況にあります。また、企業として未経験のトラブル等が発生する可能性は否定できず、それへの組織としての対応能力については、未知のリスクがあります。
(7)知的財産権について
当社は、研究開発活動等において様々な知的財産権を使用しており、これらは当社所有の権利であるか、あるいは適法に使用許諾を受けた権利のみであると認識しております。当社は、製剤処方にかかる特許権を複数取得又は出願しており、今後も周辺特許の出願を積極的に行っていく方針であります。しかしながら、出願中の特許が登録に至らない、又はその一部のみしか登録に至らない可能性があります。また、当社が所有又は使用許諾を受けた知的財産権に比して優位な知的財産権が第三者によって産み出される可能性や、第三者の知的財産権の侵害に基づく将来の紛争の可能性を完全に回避することは困難であり、これらの事象が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社では他社の知的財産権の侵害を未然に防止するため、当社として必要と考える特許の調査を実施しております。しかしながら、当社のようなバイオベンチャー企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(8)訴訟等について
当社は、当事業年度末現在において提起されている訴訟はありません。しかしながら、将来何らかの事由の発生により、訴訟等による請求を受ける可能性を完全に回避することは困難であり、そのような事態が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(9)経営上の重要な契約等について
当社の経営上の重要な契約等は、「5 経営上の重要な契約等」に記載のとおりです。事業環境の変化、契約の相手方の方針の変更等何らかの事由により契約が終了する場合、契約の履行に支障が生じる場合には、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(10)情報管理について
当社は、事業の過程において技術、営業に関しての機密情報を保持し、また一定の個人情報を有しています。これらの機密情報の外部への流出を防止するため、セキュリティシステムを継続的にアップデートするとともに、情報管理に関する社員教育を実施し、機密情報へのアクセス管理等の管理体制についても強化を図っております。しかしながら、何らかの事由により機密情報が流出する可能性は存在し、そのような事態が生じた場合は、社会的信用の失墜を招き、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
Ⅲ.業績等に関するリスク
(1)財務状況について
当社は、適応疾患の拡大を含む医薬品の研究開発を先行して行う、いわゆるバイオベンチャー企業であります。医薬品の研究開発には多額の先行投資を要し、その投資資金回収にかかる期間も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、バイオベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、当期純損失が先行して計上され、一般的に繰越利益剰余金がマイナスとなる傾向にあります。
当社は、開発パイプラインを進捗させるとともに、製品上市後の利益計上及び利益拡大を目指しております。しかしながら、開発計画及び販売計画が計画どおりに進捗しない場合には、将来において当期純利益を計上する時期が遅延する可能性もあります。また、計画どおりに当期純利益を計上できない場合には、繰越利益剰余金がプラスとなる時期も遅延し、配当による株主還元の実施時期が遅れる可能性があります。
(2)業績見通しについて
当社は、事業年度ごとに業績予想を公表しております。しかしながら、経営環境の変化及び上記の不確実性等に伴う予測不可能な要因により、業績予想や目標を期限内に達成すること、また目標を維持することが困難になる可能性があります。
(3)資金繰りについて
当社は、研究開発費用の負担により長期にわたって先行投資の期間が続きます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上し、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなる可能性があります。
このため、当社製品の上市後も安定的な収益源が確保されるまでの期間においては、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
(4)有利子負債について
当社の借入金には、財務制限条項が設定されております。取引銀行との間では良好な関係を築いておりますが、同条項に抵触した場合には、期限の利益の喪失により、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。また、当社の総資産に対する有利子負債合計の構成は、2023年3月期25.3%、2024年3月期24.4%であり、有利子負債の構成比は減少しております。
今後、事業規模の拡大に伴い借入が増加する可能性があり、金利の急激な変動や金融情勢の変化等により、計画どおり資金調達ができない場合においても当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
借入金に係る財務制限条項についての詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表」の注記事項をご参照下さい。
また、有利子負債合計の構成についての詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 ⑤附属明細表 借入金等明細表」をご参照下さい。
(5)調達資金の使途について
上場時の公募増資等により調達する予定の資金は、ステボロニン®の適応疾患の拡大のための国内外における研究開発資金、長期借入金の返済原資並びに事業運営及び開発のために必要な人件費等に充当する計画であります。ただし、研究開発活動等の成果が収益に結びつくには長期間を要する一方で、研究開発投資から期待した成果が得られる保証はなく、その結果、調達した資金が期待される利益には結びつかない可能性があります。
また、がん治療の分野においては、外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市の動向、法令等の改正、当社の研究開発活動の進捗状況及び結果によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があります。
(6)新株発行による資金調達について
当社は、医薬品のバイオベンチャー企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資等の新株発行を伴う資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
当事業年度末現在において行使価額修正条項付新株予約権を用いた資金調達を実施しております。当該新株予約権による潜在株式数は2,750,600株(発行済株式総数に対する割合8.81%)であり、これらの新株予約権の権利が行使された場合は、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(7)当社取締役及び従業員に対する新株予約権について
当社は、当社取締役及び従業員の業績向上に対する意欲や士気を高めるほか、優秀な人材を確保するための施策として、ストック・オプション制度を採用しております。会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、株主総会の承認を受け、当社取締役及び従業員に対して、新株予約権の付与を行っております。
当事業年度末現在における当社の発行済株式総数は31,225,500株、当社取締役及び従業員に対する新株予約権による潜在株式数は888,800株(発行済株式総数に対する割合2.85%)であり、これらの新株予約権の権利が行使された場合は、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。また、今後も優秀な人材の確保のため、同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があります。従って、今後付与される新株予約権が行使された場合にも、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
(8)配当政策
医薬品の研究開発には多額の先行投資が必要であり、その投資回収までの期間も長期に及ぶ傾向にあり、当社においても繰越利益剰余金がマイナスとなっております。
2024年3月期においては、会社法の規定上、配当可能額がありませんが、株主への利益還元については重要な経営課題と認識しており、製品上市後、医薬品事業の収益力が安定し、継続的に当期純利益が計上され、相当の財政状態になった場合は、配当による利益還元の実施を検討したいと考えておりますが、予測不可能な要因による経営環境の変化や研究開発計画の遅延等により想定どおりに配当を実施できない可能性があります。
Ⅳ.大株主(ステラケミファ株式会社)との関係について
(1)資本関係について
ステラケミファ株式会社(以下「同社」という。)は、当事業年度末現在、当社議決権の36.67%を所有する大株主であります。当社は同社の100%子会社として設立されましたが、現在は同社の関連会社に該当しております。
(2)同社との取引関係について
当社が開発している医薬品の主となる原材料は、ホウ素の安定同位体であるB-10を高純度まで濃縮する必要があり、唯一その技術を国内で有している同社から独占的に仕入を行っております。当該原材料は代替品が無いものであり、取引の合理性及び取引条件の妥当性を慎重に検討した上で、今後も継続的に取引を行う方針であります。
(3)同社との取引条件について
当社と同社は「(2)同社との取引関係について」に記載しております原材料の仕入取引に関して、医療用途に限定した独占的取引基本契約を締結しております。同契約の有効期間は、医薬品製造販売承認の取得日から10年間(以後、1年間ごとに特段の意思表示がない限りは自動的に継続)であります。なお、同契約においては、①同契約又は同契約に基づく個別契約に定める個別の条項に違反し、催告しても是正されなかった場合、②反社会的勢力の排除に係る条項に違反した場合、③破産手続、民事再生手続又は会社更生手続開始の申し立てがあった場合、④手形や小切手の不渡り処分を受けた場合、⑤合併(存続会社となる場合を除く)、会社分割、事業全部若しくは重要な一部の譲渡又は解散を決議した場合、⑥監督官庁より営業許可若しくは営業登録の取消処分を受けた場合、⑦その他財政状態が著しく悪化したと認められる相当の事由がある場合は、相互に同契及び同契約に基づく個別契約の一部又は全部を解除できることとなっております。当社は、当事業年度末現在において同契約の継続に支障をきたす要因は存在しておりません。
同契約において定められている取引価格については、第三者間で通常行われる取引に準じ、製造原価に適正な利益率を付加して、取引価格を決定しております。取引価格の基礎となる製造原価(直接費)は、設備投資にかかる減価償却費及びメンテナンス費用等の固定費が大部分を占めております。同契約においては、経済情勢の変動又は製造原価の大幅な変動等があった場合には取引価格が変更できる旨定めておりますが、取引価格の改定時に同社の恣意性が働かないようにするため、取引価格の改定は大規模な設備投資が追加的に必要になった場合等に限定しており、その場合には当社に対し数値的根拠の開示及び改定後の取引価格についての当社の承諾が必要な旨を定めております。さらに、当社の業容拡大に応じ、取引量が増加した場合には、一定の値引きが行われる旨を定めております。なお、取引価格については、監査等委員会及び取締役会で慎重に検討の上、適切な水準で決定しております。
また、当社のホウ素製剤に使用している同社の原材料が売上原価に占める構成割合は相対的に低く、取引価格の改定が及ぼす影響は限定的であります。今後の取引においても第三者取引に準じた公正な取引価格及び取引条件を継続する旨、同社から意見表明を得ております。
(4)同社からの独立性の確保について
当社と同社との間に競合関係はなく、同社からの出向者はおらず、原材料取引以外に当社の事業活動に影響を与えるものはありません。
当社の経営判断については、同社の承認を必要とする事項はなく、当社が独自に検討した上で決定し、独立性は確保していると認識しております。
現在、同社との関係について大きな変更を想定しておりませんが、将来において、同社との関係に大きな変化が生じた場合は、当社の経営に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は3,629,291千円となり、前事業年度末に比べ163,443千円減少いたしました。これは、有価証券が300,943千円、仕掛品が163,123千円、売掛金が16,939千円増加した一方で、現金及び預金が657,597千円減少したことが主な要因であります。
固定資産は191,330千円となり、前事業年度末に比べ344,987千円減少いたしました。これは、有形固定資産が21,347千円、投資その他の資産が314,521千円減少したことが主な要因であります。
この結果、総資産は、3,820,622千円となり、前事業年度末に比べ508,431千円減少いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は455,599千円となり、前事業年度末に比べ34,014千円増加いたしました。これは、買掛金が26,620千円、未払金が6,281千円増加した一方で、預り金が1,235千円減少したことが主な要因であります。
固定負債は988,010千円となり、前事業年度末に比べ166,954千円減少いたしました。これは、退職給付引当金が5,825千円増加した一方で、長期借入金が160,008千円、長期未払金が12,771千円減少したことが要因であります。
この結果、負債合計は、1,443,610千円となり、前事業年度末に比べ132,940千円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は2,377,012千円となり、前事業年度末に比べ375,490千円減少いたしました。これは、減資による欠損填補として繰越利益剰余金が778,824千円、新株予約権の行使による新株の発行により資本金と資本準備金がそれぞれ195,722千円増加した一方で、減資による欠損填補として資本金が558,029千円、資本準備金が220,794千円減少し、当期純損失763,749千円を計上したことが主な要因であります。
この結果、自己資本比率は62.0%(前事業年度末は63.3%)となりました。
② 経営成績の状況
当事業年度における国内の医薬品業界は、新薬創出の難易度が高まる中、医療費を含む社会保障費の適正化政策の方針継続や薬価制度の改正の影響等により、厳しい事業環境の中で推移いたしました。
このような事業環境のもと、当社は、将来のBNCTの業容拡大を見据え、国立大学法人筑波大学が計画している初発膠芽腫を対象とした第Ⅰ相医師主導治験に関する契約を締結したほか、当社と三菱ケミカル株式会社及び国立大学法人東京大学との間で、ポリビニルアルコール※1とボロノフェニルアラニン※2から構成されるBNCT用製剤の実用化に向けた共同研究契約を締結いたしました。また、2024年2月には、BNCTの安全性と再発頭頸部癌に対する有効性に関する論文がCancersの電子版(論文題目「Safety of Boron Neutron Capture Therapy with Borofalan(10B) and Its Efficacy on Recurrent Head and Neck Cancer: Real-World Outcomes from Nationwide Post-Marketing Surveillance」)に掲載されました。BNCTの有効性について解析対象となった頭頸部癌患者155例のうち、頭頸部扁平上皮癌137例の最良奏効率は72.3%で、うち63例(46.0%)で完全奏効(CR)が認められました。また頭頸部非扁平上皮癌17例の最良奏効率は64.7%で、うち8例(47.1%)で完全奏効(CR)となりました。本論文掲載は頭頸部癌診療ガイドラインへの掲載に向けた大きな前進と考えております。
また、当社の開発パイプラインに関しては、2023年12月に「切除不能な皮膚血管肉腫」を対象として、希少疾病医薬品の指定を受けることができました。同指定を受けることにより、製造販売承認に向けた手続きにおける優先的な審査や国からの研究費の助成を受けることができるなどの優遇措置が付与されることになります。また、医師主導治験として開発を進めております「再発高悪性度髄膜腫」については、2024年2月に第Ⅱ相臨床試験の主要評価に関する観察期間が完了いたしました。今後は、本試験のデータ解析等の結果について慎重に評価を行った上で、製造販売承認に向けて最善を尽くしてまいります。
さらに、当社の海外事業に関しては、アジア市場への取り組みの一つとして、2025年から治療開始を予定している中華人民共和国における海南島医療特区への薬剤供給に向けて、現地当局や物流企業とともに輸出入手続きや当社における輸出取引開始に向けた社内組織の整備などを進めております。一方、欧米市場への取り組みに関しては、現地パートナー企業候補との協議を重ねておりますが、薬剤提供体制の構築に係る資金支出は、その投資効果が最大化される時期に調整を行い、引き続き医薬品受託製造会社やコンサルティング会社との協議を進めております。
BNCTの認知度向上に向けた取り組みに関しては、ライフサイエンス分野の最先端情報を提供するビジネス誌であるLife Sciences Reviewにおいて、BNCTの実用化を達成したこれまでの取り組みが評価され、当社が同誌のTop 10 Therapeutics Companies in APAC 2023 に選出されるとともに、医薬品の製造・開発に関する専門誌であるPHARM TECH JAPANにおける連載企画に寄稿を行いました。また2024年3月には、国際的な総合科学雑誌Nature(2024年3月21日号 Volume627 Issue 8004)の特集「RADIOLOGY IN JAPAN」に当社の記事広告 Japan pioneers a new cancer radiation treatment が掲載されました。これは当社代表取締役社長を含む3名のインタビューをもとに作成されております。本掲載では、BNCTの原理や特徴、日本で行われているBNCTの治療実施状況の解説に加え、BNCTの適応拡大に向けた取り組み状況に言及しており、この情報発信により国内外にある影響力のある研究者や医療機関、グローバル製薬企業に対するBNCTの認知度がさらに高まることが期待されます。さらに、在日フランス大使館において、当社のBNCTに関心を示すフランスのリヨンベラールがんセンター(Centre Léon Bérard)の研究所長と面談を行い、BNCTに関する認知度の向上に向けた取り組みを推進いたしました。
以上の結果、当事業年度の売上高は269,491千円(前年同期比17.6%増)、営業損失は760,300千円(前事業年度は営業損失806,775千円)、経常損失は760,208千円(前事業年度は経常損失775,974千円)、当期純損失は763,749千円(前事業年度は当期純損失778,824千円)となりました。
なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
<語句説明>
※1「ポリビニルアルコール」
生体適合性に優れた無色無臭の水溶性高分子であり、医用材料として既に様々な形で利用されております。
※2「ボロノフェニルアラニン」
必須アミノ酸のフェニルアラニンと類似した構造を持ちながら、ホウ素原子を含有した化合物です。がん細胞に選択的かつ効率的に取り込まれることが知られており、熱中性子を当てると化合物中のホウ素原子が核反応を起こし、がん細胞を殺傷いたします。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,012,233千円(前事業年度末は
2,669,727千円)となり、前事業年度末に比べ657,493千円減少いたしました。
当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果使用した資金は876,837千円(前年同期は827,669千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失760,976千円を計上するとともに、棚卸資産が175,660千円増加、売上債権が16,939千円増加した一方で、仕入債務が26,620千円増加、減価償却費を35,039千円計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果使用した資金は9,010千円(前年同期は29,925千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出10,978千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果獲得した資金は228,353千円(前年同期は291,819千円の収入)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入388,258千円があった一方で、長期借入金の返済による支出160,008千円があったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
|
事業部門の名称 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
医薬品事業 |
494,709 |
132.5 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社は、市場動向の予測に基づく見込み生産を行っており、受注生産は行っておりません。
c.販売実績
当社は、医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。
当事業年度の販売実績は以下のとおりであります。
|
事業部門の名称 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
医薬品事業 |
269,491 |
117.6 |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
相手先 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社エス・ディ・コラボ |
229,067 |
100.0 |
269,491 |
100.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金は、新株式の発行と金融機関からの借入であります。当事業年度末における現金及び現金同等物は2,012,233千円であり、充分な流動性を確保しております。当社は、研究開発投資が資金需要の大部分を占めており、今後も継続して研究開発投資を実施する方針であります。必要な資金につきましては、自己資金のほか、新株式の発行や金融機関からの借入等により、資金調達を行う方針であります。
④ 経営戦略の現状と見通し
当社の経営上の目標は、BNCTの認知度の向上と上市後の安定的な収益の獲得及びそれに伴う事業基盤の確立であります。そこでBNCTの実施症例数の伸長に基づく月次売上高(ステボロニン®の受注数量)を上記目標の達成状況を判断するための主要な経営指標としております。
当事業年度の月次売上高の推移は次のとおりとなっております。
|
(単位:千円) |
|||||||
|
売上高 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
年間累計 |
|
15,399 |
23,099 |
23,099 |
30,799 |
23,099 |
38,498 |
269,491 |
|
|
10月 |
11月 |
12月 |
1月 |
2月 |
3月 |
||
|
15,399 |
15,399 |
15,399 |
23,099 |
7,699 |
38,498 |
||
今後もBNCTの認知度の向上と上市後の安定的な収益獲得が実現できるよう経営資源を重点的に配分してまいります。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。
|
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約締結日 |
契約内容 |
契約期間 |
|
ステラケミファ株式会社 |
日本 |
原材料 |
2019年7月24日 |
原材料の独占的売買取引に係る契約 |
医薬品の製造販売承認取得日から10年間 以後1年ごとの自動更新 |
|
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 (注)1 |
日本 |
特許権及び ノウハウ |
2021年2月9日 |
知的財産権の独占的通常実施権の実施許諾に係る契約(注)2 |
契約締結日から対象となる特許権の存続期間の満了日まで(注)3 |
(注)1.特許権等を含む知的財産権の実施料として、売上金額から直接経費を控除した額に対し、一定率を乗じた額を支払っております。
2.当該契約は、事前同意を得ずに、開発成果の実施に係る事業譲渡、当社の議決権の過半数を有する1つ又は複数の株主の異動(ただし、当社がその発行する株式を日本の株式市場に上場する場合を除く。)、合併、会社分割、株式移転、株式交換その他の事由による契約上の地位又は権利義務の承継をすることができない条項を含んでおります。
3.契約期間の定めに関わらず、実施料の支払い対象となる売上金額には、契約期間内における販売実績のほか、契約締結日以前の販売実績及び契約満了日に当該実施権の対象となる製品在庫を当社が有する場合には、契約満了日の属する事業年度の末日までの販売実績を含んでおります。
当社は、いわゆるバイオベンチャー企業であり、BNCTの適応拡大や開発パイプラインの拡充に経営資源を集中しております。当該研究開発活動において発生する研究開発費は、臨床試験費用や製剤開発費用等によって構成されております。当事業年度における研究開発費の金額は
研究開発活動の具体的な内容は、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりです。今後も財務状況を勘案の上、研究開発投資を継続し、更なる企業価値の向上に努めてまいります。
なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。