第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社グループは、1914年の創業以来、保温・断熱分野で事業を展開し、さらに1966年に世界で初めて1000℃の耐熱性を有するゾノトライト系けい酸カルシウム材の製造技術を開発した後は、耐火・耐熱分野へと進出し、製品開発と用途開拓に努めてまいりました。

当社の主たる事業である保温・断熱材、耐火・耐熱材の製造販売・施工は、各々SDGs7(クリーンなエネルギーをみんなに)及びSDGs13(気候変動に具体的な対策を)、SDGs11(住み続けられるまちづくり)に貢献するものであります。すなわち当社の存在意義は、サステナブルな社会の実現に貢献することにあると考えております。

このことは1977年に定めた当社の社是(信頼を高め 付加価値を創造し 人間を豊かにする)に表現されており、すべてのステークホルダーに信頼され、独自の技術をもって新たな付加価値を持つ製品を提供することにより、広く社会に貢献する企業となることを目指しております。

 

(2) 経営戦略等

企業価値向上に向けた取り組みにつきましては、当社では、2024年6月に「サステナビリティ経営の推進」を基本テーマに据えた中期経営計画(対象期間:2024~2026年度。以下、中期経営計画)を策定し、推進しております(詳細は、後述(4)①「サステナビリティ経営の推進」をご参照)。長期的には、①2030年までの7年間で約70億円の投資枠を設けること、②チャレンジ戦略枠を創設し、研究開発、人材育成分野を中心に社員に新たな創意工夫を施した事業や方策への挑戦を促すことを掲げております。

サステナビリティに取り組む当社の姿勢を明確にするために、これに併せて、サステナビリティ基本方針を2024年6月に定めました(2.2-1参照)。

 

 (3) 経営環境

最近の事業環境の変化として、以下のような変化が生じていると認識しております。

ウクライナ戦争に端を発する都市ガス、LNG及び電力価格の高騰により、当社製品の製造コストが著しく上昇しました。また、原材料メーカーも同様の影響を受け、原材料価格も上昇しました。これを受けて、当社では価格転嫁を実施しましたが、今後については、地政学リスクもあり不透明な状況です。

② 地球温暖化防止の観点から、プラント事業の顧客(主に電力、石油、化学、鉄鋼分野)では、燃料や原料を化石燃料から非化石燃料由来に切り替える事業構造の転換が始まっています(SAF、アンモニア燃料、ケミカルリサイクル原料への切り替え等)。一方で、従来燃料とのコスト差が大きな課題であり、商用化のスピードは不透明な部分があります。

③ わが国における少子高齢化の影響が当社の採用活動にも影響を与え、希望通りの新卒採用ができない状態が続いています。建設業界においても、時間外労働上限規制が適用されました。

④ 1960年に操業を開始した岐阜工場は、操業開始60年余りを経過し、安定操業を確保するための対策を検討する時期になっています。

⑤ 資本コスト経営に対する要請が強まり、企業に対して「資本を十分に活用した経営を行っているか」の説明責任が益々求められるようになっています。

 

 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題としては、主に下記の8点があります。

① サステナビリティ経営の推進

2024年6月に開示した「中期経営計画(2024~2026年度)~2030年を見据え、環境×技術がつなぐサステナビリティ経営~」に基づき、以下の取組みを推進します。主要方策を次ページに示します。

中期経営計画の目標として、2030年までにPBR1倍、ROE10%以上の水準を、2026年度の業績目標として売上高150億円、営業利益17億円、ROE8%を目指してまいります。そのために、成長投資を2030年度までの7年間で約70億円の投資枠を設けて実施してまいります。重点方策は以下のとおりです。

1) 環境分野において、廃棄物やバイオマスサーキュラーエコノミー関連の新事業の拡大、新燃料製造やケミカルリサイクルなど需要家のカーボンニュートラル化への対応(保温材や保温工事の受注)による事業拡大を図ります。

2)環境貢献として、自社工場におけるCO2削減の推進、自社製品材のリサイクル利用の促進を行ってまいります。

3) 防災まちづくりへの貢献として、耐火建材の機能向上等による事業拡大、高耐熱製品の新製品開発、新用途開拓を推進してまいります。

4)成長基盤の構築として、研究生産体制の整備(生産設備の更新等)、人的資本経営の推進(働きがい改革等)を推進してまいります。

5)ステークホルダーとの共創(株主への還元など)に取組みます。

中期経営計画の概要については、以下をご参照ください。

⇒https://x.gd/V3uFj

 


注.持続可能な航空燃料

②市場の拡大、収益の確保

1)国内事業の拡大

国内市場につきましては、建設投資を確実に受注につなげられるよう営業力の強化を図るとともに、更なる工事管理強化による採算性の向上を図り、また、新市場の開拓及び新規商品の開発を推進してまいります。

・建築事業:耐火被覆材の新用途開発、新製品開発、既存製品の性能・機能の向上

・プラント事業:保温材の新用途開発、保温工事の常駐現場拡大、建設案件の営業強化

・生産部門:生産体制の整備、エネルギー購入コストの低減、生産性の向上

2)海外事業の推進

以下の対策等により海外事業の拡大を図ります。

・ベトナム工場の安定稼働を維持すべく、全力で取り組みます。

・ 各国の販売店との協調を通じ、海外での営業強化(建築・プラント)を図っていきます。

人的資本経営の推進

1)JIC版働きがい改革の推進を、(a)経営トップの意識改革、(b)経営戦略としての「人事戦略・方針」策定、(c)人事施策・方針の見直し、(d)社員との双方向の対話、を核として進め、従業員エンゲージメントの向上を図ります。

2)「人的資本経営」の考え方に立ち、人への投資を進めていきます。

3)企業価値の向上及び社員の成長を目指し、社員の生産性向上、少数精鋭体制の確立のため、社員教育の強化、有能な人材の確保に努めてまいります。

4)健康経営の推進に一層努めてまいります。

5)次世代経営者及び次世代幹部候補者の育成に努めるとともに、女性社員、外国人、中途採用者を含めた多様な人材の育成(ダイバーシティの推進)を進めてまいります。

6)グローバル人材の確保のため、語学教育の強化、外国人の登用等を通じ、海外業務に対応できる体制を強化してまいります。

7)当社の工事分野における総合力の向上のため、協力会社の育成を図ってまいります。

コンプライアンスの徹底

1)役職員に対するコンプライアンス教育の徹底(規範意識の向上、ハラスメント防止、インサイダー取引防止、人権尊重など)を行います。

2)反社会的勢力とは一切関係を持たない経営を推進します。

3)内部通報制度及びハラスメント対策に係る制度の運用改善や周知徹底を進めます。

4) 時間外労働の上限規制を遵守します。

ガバナンス体制の強化

1)2021年度下期から実施しているガバナンス改革の更なる推進を通じて、取締役会・経営会議等の機能の高度化を図ります。

2)取締役・監査役・執行役員に対する実効性評価アンケート等で得られた課題への対応を通じて、取締役会・監査役会・経営会議等の運営の改善や社外取締役・社外監査役の機能向上等を図ります。なお、2024年度に実施した実効性評価については、2025年6月に開示予定のコーポレート・ガバナンス報告書において、報告の予定です。

3)任意の委員会として設置している「指名・報酬等検討委員会」及び「経営諮問委員会」(いずれも取締役会の諮問機関)等の運営を通じて、コーポレート・ガバナンスのレベルアップを図ります。

4)2023年度より取締役会メンバー等により定期的に開催している「役員集中討議」等を活用し、経営の方向性、人的資本経営、財務・資本政策、IR戦略、ガバナンス・コンプライアンス関連、研究開発・知財戦略、海外戦略などの当社が中長期的に取り組むべき経営課題についての議論を深め、着実に実行に移していきます。

危機管理への対応

1)リスク管理委員会を核としたPDCAサイクルの適切な実施により、当社を取り巻く様々な潜在的リスクを事前に認識し、リスクが顕在化しないよう、適切な対策を行っていきます。

2)気候変動への対処が喫緊の課題とされている現状を踏まえ、地震や台風などの自然災害に伴うリスクに対し、適切に対応します。

3)海外事業の推進に伴い増加するリスクに対し、適切に対応します。

4)社内の労働環境やハラスメント等の人権リスクを適切に把握し、その対策を確実に行っていきます。

5)建設アスベスト損害賠償請求訴訟については、今後とも弁護士との協議を通じて適切に対応していきます。

6)感染症が当社事業並びに当社役職員を含む全てのステークホルダーの安全・健康に及ぼす影響を適切に見極め、対応していきます。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進

オフィス業務においては、ワークフローシステム活用によるペーパーレス化や、RPAやAIなどを活用した定型業務の自動化を行い、また、研究・生産業務においても、検査工程の自動入力やペーパーレス化、AI活用によるデータ分析や異常検知及び予防保全を行うことで、業務効率化及びコスト削減を図ります。その他、基幹システムの刷新と機能拡張を進め、更なる業務の合理化及び高度化に取り組んでまいります。

労働災害・品質クレームゼロへの取組み

労働災害、品質クレームゼロを目指し、日頃からの管理の徹底、発生時の原因追究及び対策実施を徹底します。

 

上記課題に対処し、これからも社会的責任を果たすため、コンプライアンス体制の強化を図り、事業環境の変化に対応したコーポレート・ガバナンスの一層の充実を推進し、取引先からの信頼の向上を図ります。また、技術力・開発力の強化、収益力の向上を図り、さらに企業価値を高めることにより株主からの支持を得られるよう全社を挙げて努力します。

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、企業の成長並びに生産性向上を測定するうえで、売上高、営業利益及びROEを重視しております。成長性と収益性の観点から、

2024~2026年度を期間とする中期経営計画を策定し、推進しております。

中期経営計画では、サステナビリティ経営を推進し、社会に貢献する事業の拡大を図ってまいります。

これによって、2030年のありたい姿として以下を目標とします。

・ ROE 10%程度

・ PBR 1.0以上

この目標を早期に達成し、さらに高みを目指していきます。

中期経営計画(2024~2026年度)の目標・実績                   (単位:百万円)

(連結)

2024年度

2025年度

2026年度

実績

開示期末予想値

計画

売上高

12,222

(12,547)

13,020

(14,000)

 

(15,000)

営業利益

1,027

(1,186)

1,262

(1,550)

 

(1,750)

営業利益率

8.4%

(9.5%)

9.8%

(11%)

 

(12%)

ROE

5.7%

(5.7%)

6%

(7%)

 

(8%)

 

注.()内は中期経営計画の計画値

 

(6) 「株主資本コストや株価を意識した経営の実現」に向けた取組み

当社グループでは、2030年のありたい姿として上述のとおり目標(ROE10%以上)を掲げ、中期経営計画に基づく取組みを着実に実行することにより、2026年度にROE8%の目標の達成を目指します、中期経営計画の進捗状況は2.2-1(3)をご参照ください。

 

また、資本コストをふまえた社内のハードルレートを設定し、今後の投資に当たっては、事業性を見極めながら、サステナビリティ経営の方向性に合致する事業案件に積極的に投資する方針で投資検討を行ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

 

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

2-1 全般

 

当社は、「サステナビリティ経営の推進」を基本テーマに据えて、2024年度から2026年度を期間とする中期経営計画(以下、中期経営計画)を2024年6月に策定しました。これに合わせてサステナビリティ基本方針を以下のとおり2024年6月に策定しました。特に気候変動、人的資本経営の取組みについては、別に項目立てをして示します。

 

(サステナビリティ基本方針)

①脱炭素社会の実現への貢献 (GX)

 ・当社商品・技術を活用して、お客様の事業活動におけるCO2排出削減に貢献

 ・サーキュラーエコノミーの推進への貢献

 ・自社の事業活動でのカーボンニュートラルに向けたCO2排出削減対策の推進

②レジリエントな社会実現への貢献 (SX)

 ・建築物の防災への貢献 -耐火建材による建築の資産価値向上

 ・耐熱材料で産業分野への貢献

③持続可能な研究・生産の活動の確保

 ・生産体制の整備

 ・品質管理、労働安全管理の徹底

 ・研究開発の推進

④ステークホルダーとのエンゲージメント深化

 ・人権の尊重

 ・ダイバーシティーの重視

 ・人材の育成 -リスキリングを含む教育訓練等の推進

 ・健やかに働くことのできる職場実現-健康経営、労働時間管理、福利厚生の充実

 ・DXの推進による生産性向上

 ・ステークホルダーとのコミュニケーション

⑤信頼あるガバナンス構築

 

(1) ガバナンス

当社は、前中期経営計画で「サステナビリティ経営の推進」を経営方針に掲げてきたことでもご理解いただけますように、中長期的な企業価値の向上を実現するためには、サステナビリティを巡る課題への対応が必要不可欠と認識しております。サステナビリティに関する経営活動に対する監督体制については、取締役会、経営会議の各機関による経営計画の審議、実施状況の確認を行うこととしております。その詳細につきましては、「コーポレート・ガバナンスの概要」(第4.4(1))に記載しておりますので、ご参照ください。

また、当社グループの事業は、お客様の事業活動における省エネルギーや防災に貢献するものであり、当社の企業活動がそのままSDGs(特にSDGs7、11、12、13)に貢献するものであり、事業活動における廃棄物や資源のリサイクル及び省エネルギーの推進等と相まって、当社事業の拡大を通じて、持続可能な社会の構築への貢献と中長期的な企業価値の向上の両立を実現できるものと考えており、上述の「サステナビリティ基本方針」にサステナビリティを巡る方向性と課題を示し、適切に対応してまいります。

2024年6月20日付で策定したサステナビリティ基本方針は、当社グループのサステナビリティに関連する規定・方針類を束ねる上位方針として位置付けており、関連する方針として、環境方針、健康宣言等を定めています。サステナビリティ基本方針は、当社ウェブサイトに掲載して広く周知に努めております。

 

(2) リスク管理

サステナビリティ課題に関する事項の認識については、代表取締役社長を議長とするリスク管理委員会を設置して、リスクを抽出・評価し、管理するため、年に2回、取締役会メンバー及び執行役員により開催しております。  

リスク管理委員会は、当社を取り巻く潜在的なリスクを事前に具体的に想定し、経営における重要度、影響度、発生可能性を評価しております。

リスク管理委員会では、予防的な取り組みとして、その未然防止策等について審議を行っており、それぞれについて対応担当部署を指定し、その対応策の策定等を指示しています。サステナビリティ関連のリスクの抽出・評価については、リスク管理委員会において、全社のリスクとの統合が図られています。

また、役職員に対する教育の実施により、リスクへの意識の涵養に努めます。さらにトップダウンアプローチに加え、当社はサステナビリティ経営の推進に向けて、社員が問題意識を共有するため、社内でサステナビリティ経営に関する勉強会を実施するなど、ボトムアップアプローチによる取組みも行っております。

 

(3) 戦略と目標

企業価値向上に向けた取り組みにつきましては、事業環境の変化等を踏まえつつ、中期経営計画では以下の事項に力点を置いて進めてまいります。

現時点での主な進捗状況は以下のとおりです。

 

項目

計画

実績

カーボンニュートラルを商機に、既存事業の拡大、新事業展開

顧客で検討が進む事業構造の転換(非化石燃料への切替え等)に保温保冷工事を通じて貢献

・水素、アンモニア等の次世代燃料への燃料転換における保冷材需要が見込まれ、保冷事業への参入を企図

・メタネーション、ケミカルリサイクル等の導入に伴い、新たな保温工事需要の増加

SAF製造設備などいくつかの案件の受注はしていますが、顧客側で案件の検討が遅れている状況と理解しています。

サーキュラーエコノミー関連の事業・製品の開発

廃棄物の再資源化事業への参入

 

・台湾企業に廃棄物処理用の加水分解装置を納入しました。

・NEDO委託事業で調査を実施しました。

バイオ由来原料の製品開発(研究開発段階)

案件生成に向けて取り組んでいます。

顧客の多様なニーズに応える製品開発

耐熱性の高い素材を活かした製品開発・普及等を推進

新製品の開発に取り組んでいます。

建物用途に応じた製品仕様の開発や耐火構造認定の自由度を高める等、ユーザー本位の製品設計

・木質系仕上げ耐火被覆工法の認定を取得しました。

・物流施設向けはり耐火被覆工法(軽鉄下地工法)の認定を追加で取得しました。

自社生産設備のカーボンニュートラル化

・生産設備の集約、老朽設備の更新によるGHG排出量の削減、生産性向上の検討

・省エネ設備の導入によるGHG排出量削減

老朽設備の更新検討に併せ、GHG排出量削減の検討を行いました。

工程で排出される廃材のリサイクルの徹底

はっ水品リサイクルのために、中間処分業の認可を申請しました。

無形資産投資(R&D、人的資本等)を積極化

研究開発の積極的な推進

・若手研究人材の採用、組織の整備

・最新設備の導入

・R&Dマネジメント手法の活用

・産学連携の活用

・耐火試験炉の新設のため、建屋の建設工事を行いました。

・学識経験者を招聘して研究会を実施しました。

チャレンジする企業文化を育み、成長基盤を構築することを目指して、社内ベンチャー的な取組み(チャレンジ戦略枠)の制度を設けて、新たな事業の創造を推進

チャレンジ戦略枠制度の創設を行いました。

・企業成長のために人的資本に投資(人的資本への投資は1.(4)③を参照)

・社員自ら発案し、自発的な学びをサポートするリスキリング(チャレンジ人的資本戦略枠)を拡大

・福利厚生ツールを24年4月に導入しました。

・従業員エンゲージメント調査を実施しました。

・報酬水準を見直し、ベースアップを実施しました。

その他詳細は2.2-3を参照

DXによる生産性向上を目的として必要な投資・基幹システムの更新検討

・RPA、現場帳票電子化ツールの業務への適用拡大

・AI導入による省力化

・EDIシステムの強化拡充

・その他ワークフロー化等

・電子帳簿保存法対応ツールを活用し、製品販売にかかる納品書、請求書の電子発行を実施しました。

・製造検査帳票のデジタル化を行い、現場でのデータ入力を進めました。

・その他RPA、ワークフローの適用範囲を拡大しました。

 

 

 

 

2-2 気候変動への取組

当社は、気候変動を事業機会ととらえ、気候変動対策に貢献する新事業や新製品の開発に向けた取組みを進めております。

 

(1) ガバナンス

当社は「サステナビリティ経営の推進」を経営方針に掲げていることもあり、気候変動への取組に関する経営活動に対する監督体制については、2-1の通り、取締役会、経営会議の各機関による経営計画の審議、実施状況の確認を行うこととしております。

 

(2) リスク管理

気候変動に関するリスクについては、2-1の通り、リスク管理委員会を設置して、経営全般にわたるリスクを認識し、リスクが顕在化しない様に対策を講じる中で、サステナビリティに関しても経営層による検討を実施しております。

 

(3)当社における削減目標と前中期経営計画期間における実績

(削減目標)

 わが国政府目標に準拠して、

・2030年までに、2013年比でGHG排出量を46%削減するように努めます。

・2050年までに、カーボンニュートラルを実現できるように努めます。

(実績)

2013年度から2023年度までのCO2排出量の推移は右図のとおりですが、2022年10月より岐阜及び北勢地区で使用している電気をカーボンフリー電気に切り替えたこともあり、2024年度のCO2総排出量は16,998t-CO2となり、2024年度実績は2013年度実績比27%削減となりました。

2023年度との比較では、生産量が増加したこともあり、58t-CO2増となりました。

 

(2024年度における取組み例)

また、リサイクルでのCO2削減として、これまでの通常品のリサイクルに加え、岐阜工場でもはっ水処理製品のリサイクルを行うため、中間処分業の許可取得の申請を行いました。

 


 

 

 

2-3 人的資本経営の取組

当社は創業以来、さまざまな危機や環境変化に直面する中で、社員一人ひとりが社会の変化を見極め、事業モデルを変化させてきました。さらに変化に対応できるスキルを一人ひとりが身に付けられる研修制度や人事制度を充実させることで、社員が安心して長く働き続ける環境を構築していきます。

 

(1) ガバナンス

当社は「サステナビリティ経営の推進」を経営方針に掲げていることもあり、人的資本経営に関する経営活動に対する監督体制については、2-1の通り、取締役会、経営会議の各機関による経営計画の審議、実施状況の確認を行うこととしております。

 

(2) リスク管理

人的資本経営に関するリスクについては、2-1の通り、リスク管理委員会を設置して、経営全般にわたるリスクを認識し、リスクが顕在化しない様に対策を講じる中で、サステナビリティに関しても経営層による検討を実施しております。

中でも、将来見込まれる建設業界における人手不足は、当社においても重大なリスクであると認識しております。現場では主任技術者の配置が必須であり、今後の業容拡大のためには、優秀な人材の採用及び教育研修実施・内容の充実により、当社グループの成長を支える社員、特に専門的な知識を持った人材の確保・育成をすることが重要な経営課題であり、現在、有資格者の採用及び社員の資格取得の促進に注力しております。

 

 

(3) 戦略と目標

人的資本経営については、2023年2月に経営諮問委員会(経営全般について大所高所から取締役会に提言を行う機関)が人的資本経営、従業員エンゲージメントの観点から「JIC版働きがい改革実現のための提言」を行ったことを受け、今後より一層積極的な方策を検討し、推進することとしております。

 

① 従業員との双方向の対話

当社では、社員の働き方改革の一環として、社員に対するエンゲージメント調査を、外部調査会社に依頼し、実施いたしました。調査結果として、仕事へのやりがいや、職場環境への満足度が高いものの、会社の将来への期待が、やや低くなっている傾向にあるということがわかりました。

このような傾向を改善すべく、今回のエンゲージメント調査結果を基にし、当社における働き方改革として、今後は、「個人の機会の活用と創出」、「経営方針の効果的な伝達」、「評価制度と組織運営の改善」等の取り組みを実施していきます。

 

②  人材育成

1)当社は、以下の方針により、人材の育成に取り組んでおります。

「日本インシュレーションは、独自の製造技術を武器にけい酸カルシウム系の耐火被覆材及び保温断熱材の製造メーカーとして、お客さまに喜ばれる高い付加価値を提供できる従業員の育成と、一人ひとりが持つ能力を最大限発揮することができる社内環境の整備を推進してまいります。」

 社是である「信頼を高め 付加価値を創造し 人間を豊かにする」を軸に、人材を人財と捉え、企業価値向上の重要な資本と位置づけ、「成長意欲にあふれる自立した人材の育成」に取り組みます。

2)人材育成プログラムとして、当社では、将来を見据えた、人材への成長投資を推進し、必要なスキルを社員自ら選び、自発的な学びをサポートする取組みを拡大していきます。

 新入社員、中堅社員、幹部社員など階層別に種々のカリキュラムを整備し、社員スキルの向上に努めています。


(注)上表の他、施工管理技士取得支援研修、RPA技能研修等の各事業部単位での人材育成も実施しています。

 

また、社内外の研修教育実績を集計したところ以下のとおりであり、今後、前年実績を上回る水準を確保しつつ、計画的な推進を行ってまいります。

   提出会社

2024年度

研修時間

研修費用

社内研修

517時間

7,502千円

外部研修

523時間

3,437千円

合   計

1,040時間

10,939千円

 

(注)ジェイ アイ シーベトナム有限会社は海外子会社であり、研修形態が異なるため含めておりません。

 

③ 働き方改革

いきいきと働きやすい風土づくりを進めるため、以下のような目標と方策を実施しております。

《目指す姿》

・社員の個性を尊重し、お互いが支え合う風土の醸成

・心身共に健康で働きやすい職場作りの構築

・有給休暇取得率80%以上

《主な取り組み施策》

・仕事とライフイベント

・自己実現を支えるワークライフバランス

1)ノー残業デーの実施

 残業時間削減を目的に、全社一斉のノー残業デーを設けて、社員に不要不急の残業をせずに帰宅するように呼び掛けています。

2)有給休暇の取得推進

 計画的有給休暇の取得を年5日設定し、安心して働くことができる環境整備に力を入れています。また、有給休暇取得率の実績は下表のとおりであります。

提出会社

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

2024年度

74%

72%

77%

75%

73

 

    (注)ジェイ アイ シーベトナム有限会社は海外子会社であり、労働形態が異なるため含めておりません。

 

 

・仕事と育児の両立支援

育児休暇取得後の育児短時間勤務を小学校卒業までとしています。

・JIC人材バンク制度

諸事情により、当社を退職された社員で、将来当社での再就業を希望する方を対象にキャリア登録を行い、再雇用を希望する方も積極的に採用しています。

・自己申告制度

従業員が現在の職場、担当業務や勤務地等について満足しているか調査し、配置転換の際に経営計画等の会社ニーズと従業員個人のニーズを出来るだけ合致させるための参考にしています。また業務を円滑に遂行するために、上司との面談を通じて、最も適切な部下の育成方向を明確にして能力開発を図ります。

 

④ 健康経営の推進

・当社は、「JIC健康経営宣言」を定め、目標を設定して方策の推進に取り組んでおり、その取り組みを「見える化」するため、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2025」の認定を受けました。初めて認定された2022年4年連続となります。

《JIC健康経営宣言》

日本インシュレーションは「働き方改革」を推進すると共に「会社の基盤は社員の健康」という認識のもと、従業員一人一人が心身ともに健康で個性や能力を発揮することが,会社の成長につながると考えています。

“従業員が活き活きと働くことができる職場環境と風土作り”をさらに発展させるため,社員の健康維持・増進を支援し、「健康経営」を積極的に推進してまいります。

《体制》

人事部に属する健康推進担当が中心となり、 産業医や安全衛生委員会等と連携して体制を整備するとともに、効果的な施策を実行していきます。また、健康に関する情報発信だけではなく、従業員が相互にコミュニケーションが図れる仕組みを積極的に取り入れながら、 従業員の健康づくりや病気の予防に活用しています。

《指標及び目標》

  提出会社

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

健康診断受診率

100

100

特定保健指導受診率

100

86

ストレスチェック受検率

100

98

有給休暇取得率

80以上

73

 

    (注)ジェイ アイ シーベトナム有限会社は海外子会社であり、労働形態が異なるため含めておりません。

 

《主な取組み施策》

・適切なワークライフバランスの維持

・一人ひとりの勤務時間をしっかりと把握・管理することで長時間労働を抑制

・有給休暇取得促進の取組み

・健康増進イベントの開催

・健康アプリを活用したウォーキング大会を通じて、歩くことの習慣化を促進

・従業員の課題に応じて、各種セミナーを実施

・女性の健康管理セミナー

・健康管理サポート

・健康診断の受診促進や産業医によるケアなどサポート体制を構築

・外部の福利厚生サービスを導入(2024年4月)

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

 

(1)景気変動、経済情勢等のリスク

当社グループの主要製品であるけい酸カルシウム保温材の主な需要先は石油・石油化学、電力・ガス、鉄鋼等の業種における設備投資動向に依存し、また、けい酸カルシウム耐火被覆材についてはオフィスビルや物流施設等の建設需要の動向に依存し、内外の景気動向や経済情勢の影響を受けます。また、建築物やプラント全体の建設費用の高騰があった場合は、けい酸カルシウム以外の保温材、耐火被覆材との価格競争を惹起する可能性があり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原材料・エネルギー等価格の変動及び調達に関するリスク

当社グループの製品の主な原材料は石灰石、珪石等であり、また、製造工程において熱源として天然ガス等を使用しています。原材料及びエネルギー価格の上昇があった場合や、地政学リスク等により需給のひっ迫により安定的調達が困難となった場合、あるいは、物流業界の労働時間管理強化による製品・商品の運賃の上昇があった場合には、当社グループの製造コストを上昇させ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの調達する多くの原材料において高い純度を求めていること等により仕入先は限定されることが多く、これに伴い調達先の確保が困難となるリスクがあります。

 

(3) 人材の確保・育成に係るリスク

従業員一般での人材確保ができない場合には、適切な労働環境の確保が困難となるリスクがあります。特に建設事業においては、有資格者の確保が事業を継続していくための基盤となっており、建設現場では主任技術者の配置が必須であり、今後の業容拡大のためには、人材の採用及び教育研修実施・内容の充実により、専門的な知識を持った人材の確保・育成をすることが重要な経営課題であると認識しております。有資格者の採用及び社員の資格取得の促進に注力しておりますが、急激に業容が拡大する等して必要な人材の確保が追いつかない場合や、採用に係るコストが上昇した場合には、事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) アスベストによる健康被害者への補償のリスク

過去に建設現場等において石綿に曝露し、これが原因で肺癌等の疾病に罹患した作業員及びその遺族等が、集団で国及び建材メーカー多数を相手に損害賠償請求の裁判を提起しております。当社もその建材メーカー多数の中の1社として現在係争中であります。当社はこれまで当社製品と原告の発病との明確な因果関係が認められたごく一部の事案を除き、集団訴訟において敗訴となったことはありません。但し、当社製品と原告の発病との明確な因果関係が認められた場合等は敗訴となる可能性があり、必要な場合、合理的な方法で訴訟損失引当金の計上の要否を検討してまいります。このように、アスベスト健康被害に関し、個別に損害賠償請求の提訴を受けた場合も含めて、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、当社起因のアスベスト疾病により死亡または療養されている従業員及び元従業員に対して、社内規定に基づき補償金を支払っており、今後もアスベストによる健康障害者への補償費用等の負担が継続していく可能性があります。なお、補償金支払の対象者が発生した都度、検討し、健康被害補償引当金を計上しています。

 

(5) 労働災害に関わるリスク

当社グループが関与する工事現場においては、労働災害の防止や労働者の安全と健康管理のため、労働安全衛生法等に則り安全衛生体制の整備、強化を行っております。当社では、社内に安全衛生委員会を設置し、日常的な安全衛生教育を実施している他、経営幹部等による安全パトロールを実施する等、事故の未然防止を図るための安全管理を徹底しております。しかしながら、万が一重大な労働災害が発生した場合には、当社に対する社会的信用が毀損し、ひいては受注活動に影響が及ぶ等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 経営成績の季節変動性に関するリスク

当社グループの製品の販売については、大きな季節変動はありませんが、工事については、工事完了時期が年度末付近に集中することから、下期に偏重する傾向があります。万一、比較的大きな案件で何らかの事情で工事の完了が遅れることになる場合には、予定の売上が上がらずに翌期にずれるなど、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 海外事業に伴うリスク

当社グループは、連結子会社の立地するベトナムをはじめ東南アジア地域において、事業展開を行っております。これらの地域におけるテロ、戦争、疫病等社会的混乱の発生、社会インフラの未整備による停電や物流の停滞等予期せぬ事象、商慣習の違いから生じる取引先との予期せぬリスクの顕在化等によって、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが拠点を持つ各国において、税法をはじめとした法令改正、経済の減速、貿易障壁の発生、反日デモや不買運動等が発生した場合、あるいは、移転価格税制等に基づく課税等が生じた場合にも当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、東南アジア地域では、もみ殻を原料・燃料に使用したバイオマス事業として、けい酸カルシウム保温材の市場展開を図っておりますが、計画通りに進まなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

これらの事象については、当社グループの取引先において発生した場合も、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8) 協力会社の確保に関するリスク

当社グループは、工事の施工管理を行っており、優秀な協力会社の確保が必要不可欠であります。現状は、長年取引を行っている協力会社を中心として受注工事に対応できる十分な施工能力を有しておりますが、万が一主要な協力会社との協力関係に不測の事態が発生し、施工能力に問題が生じた場合もしくは外注コストが上昇した場合には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損に関わるリスク

当社グループは、固定資産の減損に関わる会計基準を適用しております。経営環境の著しい悪化による収益性の低下等により、保有する固定資産に減損損失が発生し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)自然災害等に関わるリスク

当社グループは、国内外に複数の生産拠点などを有しております。万一、当該拠点のいずれかにおいて大規模な地震、風水害、疫病等の自然災害が発生した場合には、保有設備の復旧活動に関する安全確認、施工中物件の工事の遅延、一時的な生産の停止による出荷の遅延等により多額の費用が発生し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)収益及び費用の計上基準に関わるリスク

工事契約において、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗に基づく収益を計上しております。なお、進捗度の見積りの方法は、発生した原価の累計額が工事原価総額に占める割合(インプット法)で算定しております。

工事原価総額等の見積りは、工事の完成引渡しまでに必要となるすべての工事内容に関する原価を見積って算定しており、工事着手後に工事内容の変更が生じた場合は、適時・適切に再見積りを行っております。当該見積りは、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に発生した工事原価及び工事収益総額が見積りと異なった場合や、異なる結果になると見込まれた場合には、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(12)不採算工事の発生に対するリスク

当社グループは、工事にあたり適切な積算を行っておりますが、想定外の追加原価等により、万一不採算工事が発生した場合には、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(13)情報セキュリティに関わるリスク

当社グループは、事業活動を通じて、取引先の個人情報及び機密情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報を保有しています。これらの情報について、情報の管理に関する諸規定等の整備・充実や従業員等への周知・徹底を図るとともに、サイバー保険に加入するなどの対策を強化しておりますが、サイバー攻撃、不正アクセス等により、情報流出や重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信用低下や財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 

 

(14)債権管理のリスク

当社グループでは、取引先に対して、売掛金、受取手形や差入保証金などの債権を有しております。取引先の与信管理については細心の注意を払っておりますが、取引先の業績悪化や倒産等により、売上債権の回収に支障が出た場合は、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)法的規制、コンプライアンス等についてのリスク

当社グループは、建設業法に基づき国土交通省より特定建設業・一般建設業の許可を得ているほか、建築基準法、消防法、労働安全衛生法、環境基本法等、幅広い法規による規制を受けており、それらに従って事業を行う必要があります。また、当社グループの工場は、環境関連、労働安全衛生関係で、国内外の政府や自治体の監督を受けております。

当社グループでは、事業継続のため、これらの法令等を含めたコンプライアンスが遵守されるよう、役職員に対して研修等を通じて周知徹底を図ることで、これらの適用法令等に対応できる体制を構築しております。現時点で事業継続に支障を来す事項はありませんが、今後、何らかの理由により適用法令等の違反が発生した場合には、処罰、処分その他の制裁を受け、損害賠償等の責を負い、当社グループの社会的信用やイメージが毀損することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法令等に将来改正が行われた場合、当社グループの事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、適用法令等について、その有効期間やその他の期限等が法令等により定められているものは下表のとおりであります。下表のとおり2025年7月11日に許可の有効期限が到来する予定であり、所管官庁に対し、許可更新の手続き中であります。

 

取得・登録者名

当社

取得年月

2020年7月

2025年3月

2020年7月

許認可等の名称

一般建設業(許可)

一般建設業(許可)

特定建設業(許可)

所管官庁等

国土交通省

国土交通省

国土交通省

許認可等の内容

管工事業

国土交通大臣 許可(般-2)第4567号

機械器具設置工事業

国土交通大臣 許可(般-6)第4567号

建築工事業、とび・土工工事業、内装仕上工事業、左官工事業、塗装工事業、熱絶縁工事業、解体工事業

国土交通大臣 許可(特-2)第4567号

有効期限

2020年7月12日から

2025年7月11日

2025年3月5日から

2030年3月4日

2020年7月12日から

2025年7月11日

法令違反の要件及び主な許認可取消事由

不正な手段による許可の取得や役員等の欠格条項違反等に該当した場合は許可の取消(建設業法第29条)

不正入札等不誠実な行為があった場合は業務停止等の処分(建設業法第28条)

 

また、当社グループは、2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法の趣旨に則り、パワーハラスメント防止に向けた相談窓口の設置等の制度を構築し、運用しております。現時点で事業継続に支障を来す事項はありませんが、今後、万一法令違反やハラスメントに係る事案が発生した場合には、当社グループの社会的信用やイメージが毀損することにより、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)製品及び工事の品質の瑕疵のリスク

当社グループは、ISO9001の品質保証規格やJISに基づく認証を受けており、厳しい品質管理体制のもとに生産活動を行っておりますが、製品の開発・製造における不具合や工事の施工での施工ミス等の品質上の全てのリスクを完全に排除することは困難であります。今後、当社グループの製品に予期しない重大な欠陥が発生した場合や施工ミスによる瑕疵が発覚した場合には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)為替変動に伴うリスク

当社グループでは、海外事業展開をしており、輸出入取引において為替の変動によって影響が生じます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、在外連結子会社の財務諸表を円貨換算しており、為替変動による期間損益の円貨換算額が増減するリスクが存在します。これらの為替変動リスクは、事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)知的財産権についてのリスク

当社グループは、事業活動に有用な知的財産権の取得に努めると共に、他社の知的財産権の調査を行うことにより、問題発生を回避する様に努めておりますが、万一、他社から訴訟等を提起された場合、その結果によっては経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)繰延税金資産の回収可能性に係るリスク

当社グループは、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)を適用しております。課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収可能性の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純利益が変動する等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)サプライチェーンにおける人権侵害に伴うリスク

当社グループは、海外から原料の一部を輸入するとともに、製品の一部を海外へ輸出しております。原料調達に当たっては、人権侵害の有無に留意して調達先を選定しており、原料の多くは別の供給先に代替可能なものでありますが、万一、原料調達先で人権侵害や紛争が発生した場合、原料調達に影響を及ぼす可能性があります

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループの業績につきましては、建築関連では、工事部門は物流施設、データセンター、工場等の耐火被覆工事の受注推進に取り組み、工事売上高は前年同期比でやや増加しました。販売部門は予定していた大型案件の進捗が遅れている影響や中小案件が振るわなかったこともあり、販売売上高は前年同期比で減少しました。その結果、建築関連セグメントの売上高は前年同期比で減少しました。プラント関連では、工事部門は予定していたメンテナンス工事が堅調に推移したものの、建設工事案件が一服し、前年同期比では工事売上高は減少しました。販売部門は建設案件向けの出荷が増えたため、前年同期比で販売売上高は増加したものの、プラント関連セグメントの売上高は前年同期比で減少しました。また営業利益面では、工事外部原価の上昇、価格転嫁の遅れ等による売上総利益の減少、運送費、人件費の上昇による販管費の増加等から、前年同期比で減少しました。なお、親会社株主に帰属する当期純利益については、政策保有株式の売却益や賃上げ促進税制等の税額控除があったものの、前期比で減少しました。

その結果、当社グループにおける当連結会計年度の売上高は12,222,902千円(前年同期比2.5%減)、営業利益1,027,449千円(前年同期比29.5%減)、経常利益は1,030,869千円(前年同期比29.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は776,607千円(前年同期比20.4%減)となりました。

 

セグメント別の経営成績は以下の通りであります。

<建築関連>

工事部門においては、物流施設、データセンター、工場等の耐火被覆工事が比較的堅調に推移し、工事売上高は前年同期比でやや増加となりました。一方、販売部門においては、住宅向け耐火被覆材、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)用型材の販売量が堅調に推移したものの、予定していた非住宅分野の大型案件の進捗が遅れている影響や中小案件が振るわなかったこともあり、販売売上高は前年同期比で減少しました。販売売上の減少を工事売上の増加でカバーするには至りませんでした。

以上の結果、工事及び販売を合わせた建築関連全体の売上高は4,458,325千円(前年同期比3.2%減)となりました。

<プラント関連>

工事部門においては、電力、鉄鋼、化学等のメンテナンス工事関係が堅調に推移しましたが、当期においては、建設工事案件が一服し、工事売上高としては前年同期比で減少しました。販売部門においては、建設案件向け出荷が増えたため、販売売上高は前年同期比で増加しましたが、工事売上の減少を販売売上の増加でカバーするには至りませんでした。

以上の結果、工事及び販売を合わせたプラント関連全体の売上高は7,764,576千円(前年同期比2.1%減)となりました。

 

当連結会計年度末の財政状態は、次のとおりであります。

当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べて306,886千円減少し、17,809,928千円となりました。

 

(流動資産)

流動資産については前連結会計年度末に比べて335,675千円減少し、11,543,141千円となりました。これは主に、現金及び預金が270,836千円、電子記録債権が156,790千円増加した一方で、受取手形が188,589千円、完成工事未収入金が275,420千円、契約資産が127,598千円、仕掛品が216,611千円減少したことによるものであります。

(固定資産)

固定資産については前連結会計年度末に比べて28,789千円増加し、6,266,786千円となりました。これは主に、投資有価証券が94,697千円減少した一方で、建設仮勘定が131,719千円増加したことによるものであります。

(流動負債)

流動負債については前連結会計年度末に比べて535,069千円減少し、2,971,755千円となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が175,360千円増加した一方で、支払手形及び買掛金86,435千円、契約負債177,231千円、未払法人税等が296,182千円、賞与引当金が58,546千円、その他が87,383千円減少したことによるものであります。

(固定負債)

固定負債については前連結会計年度末に比べて138,901千円減少し、1,140,274千円となりました。これは主に、資産除去債務が25,114千円増加した一方で、長期借入金が177,500千円減少したことによるものであります。

(純資産)

純資産については前連結会計年度末に比べて367,084千円増加し、13,697,898千円となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金が48,909千円減少したものの、利益剰余金が430,416千円増加したことによるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末と比較して252,832千円増加し、4,899,591千円となりました。

 

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は、897,093千円(前年同期は1,915,910千円の獲得)となりました。これは主に、賞与引当金の減少額58,694千円、仕入債務の減少額122,071千円、契約負債の減少額177,231千円、その他の減少額180,460千円、法人税等の支払額604,577千円により減少した一方で、税金等調整前当期純利益1,072,823千円、減価償却費302,042千円、売上債権及び契約資産の減少額423,161千円、棚卸資産の減少額252,352千円により増加したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により支出した資金は、251,956千円(前年同期は447,001千円の支出)となりました。これは有形固定資産の取得による支出294,639千円、無形固定資産の取得による支出94,179千円より減少した一方で、投資有価証券の売却による収入122,008千円により増加したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により支出した資金は、396,330千円(前年同期は274,526千円の支出)となりました。これは主に、長期借入金による収入400,000千円により増加した一方で、長期借入金の返済による支出402,140千円、配当金の支払額346,190千円により減少したことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

建築関連

2,817,371

94.7

プラント関連

5,734,191

97.6

合計

8,551,563

96.6

 

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。

2.金額は、工事原価、製造原価によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

建築関連

4,946,415

104.6

2,344,190

126.3

プラント関連

8,045,880

108.6

1,760,262

119.0

合計

12,992,295

107.0

4,104,452

123.1

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

建築関連

4,458,325

96.8

プラント関連

7,764,576

97.9

合計

12,222,902

97.5

 

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。

2.総販売実績に占める割合が10%以上である販売先は、該当ありません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表に影響を及ぼします。なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下の通りであります。

a. 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。

将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収可能額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益が変動する可能性があります。

b. 健康被害補償引当金

アスベスト(石綿)健康被害を受けた元従業員等に対する支払に備えるため、将来発生すると見込まれる補償額を計上しております。

対象者が増加した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

c. 完成工事高及び完成工事原価の計上

工事契約において、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗に基づく収益を計上しております。なお、進捗度の見積りの方法は、発生した原価の累計額が工事原価総額に占める割合(インプット法)で算定しております。想定していなかった原価の発生等により工事進捗度が変動した場合は、完成工事高及び完成工事原価が影響を受け、当社グループの業績を変動させる可能性があります。

d. 投資の減損

当社グループは、長期的かつ戦略的な取引関係維持を目的に特定の取引先の株式を所有しております。これら株式には上場株式と非上場株式が存在します。当社グループは投資価値の下落が一時的ではないと判断した場合、減損処理を行っております。上場株式については、時価が取得原価の50%以上下落した場合には全て減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には、当該金額の重要性、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。非上場株式及び関係会社株式については、実質価額が取得原価の50%以上下落した場合に、当該金額の重要性、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。将来、株式市場の悪化または投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる可能性があります。

e. 固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、収益性が著しく低下した場合は、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績の分析

売上高については、建築事業は販売が減収、工事が増収。プラント事業は工事が減収、販売が増益となり、全体として当社グループの売上高は前年同期と比較して314,869千円減少し、12,222,902千円となりました。

売上原価については、前年同期と比較して15,871千円増加し、8,921,816千円となりました。

この結果、当連結会計年度における売上総利益は、前年同期と比較して330,741千円減少し、3,301,085千円となりました。これは主に、工事外部原価の上昇、価格転嫁の遅れ等によるものであります。

販売費及び一般管理費については、賃借料、支払手数料、雑費が減少したものの、製品発送費、広告宣伝費、給料、修繕費、試験研究費が増加などにより、前年同期と比較して99,919千円増加し、2,273,636千円となりました。

これにより営業利益については、前年同期と比較して430,661千円減少し、1,027,449千円となりました。

営業外収益については、受取利息及び受取配当金、その他が増加したものの、為替差益、受取保険金の減少などにより、前年同期と比較して12,035千円減少し、53,384千円となりました。営業外費用については、健康被害補償引当金繰入額が減少したことなどにより、前年同期と比較して12,817千円減少し、49,964千円となりました。

これにより経常利益については、前年同期と比較して429,879千円減少し、1,030,869千円となりました。

特別損失については、減損損失を計上し39,211千円となりました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期と比較して198,574千円減少し、776,607千円となりました。

また、セグメントごとの経営成績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

b. 財政状態の分析

当連結会計年度末における総資産は、現金及び預金が増加したものの、完成工事未収入金、契約資産、仕掛品が減少したことなどにより前連結会計年度末と比較して306,886千円減少17,809,928千円となりました。

当連結会計年度末における負債は、支払手形及び買掛金、契約負債、未払法人税等、賞与引当金、その他が減少したことなどにより、前連結会計年度末と比較して673,970千円減少4,112,029千円となりました。

当連結会計年度末における純資産は、利益剰余金が増加したことなどにより、前連結会計年度末と比較して367,084千円増加の13,697,898千円となりました。

c. キャッシュ・フローの分析並びに、資本の財源及び資金の流動性に係る情報

1.キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

2.資金需要について

運転資金のうち主なものは、当社グループの製品製造のための原材料購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いによるものです。

設備投資資金のうち主なものは、試験設備増設等のための支払いであります。

3.財務政策について

運転資金として必要な資金は、営業活動により得られるキャッシュ・フローにより賄い、設備投資については、自己資金及び資本市場から得られた資金により実施しております。なお、設備資金及び長期運転資金として金融機関から調達した長期借入金につきましては、約定通りの返済を行い、金融機関との関係維持の為に一定の借入を実施する予定です。

また、金融上のリスクに対応するために取引金融機関との間で当座貸越契約を締結することで、手元流動性を確保しております。当座貸越契約とその借入実行残高(短期借入金)の状況は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  注記事項 (連結貸借対照表関係)3」に記載のとおりであります。

d.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の進捗について

当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の進捗については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度における主な研究開発活動は、①既存の製品の改良、②けい酸カルシウムにこだわらない材料・工法の技術の開発、③新規用途の開発、④第三の事業分野の開発に向けた研究開発等であります。

研究開発体制は、技術本部を中心に、4つの部門(建築事業部、プラント事業部、生産事業部、技術本部)の連携により行っています。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は、202,648千円であります。

当連結会計年度における研究成果は次の通りであります。

(1) 建築関連

けい酸カルシウム耐火被覆板等の評価等による新規耐火ライセンス取得、けい酸カルシウム以外の建材による新規耐火板の開発、推奨副資材の研究、建物用途に応じた各種性能の改良研究、新規用途向けの材料や工法の開発等に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発費の金額は133,070千円であります。

(2) プラント関連

保温材の品質改善、プラント用けい酸カルシウム耐火被覆板の評価等による国内外の耐火ライセンス取得、新規用途向けの材料や工法の開発、検討中の環境対応(廃棄物有効利用)新規事業に関する開発研究等に取り組んでおります。当連結会計年度における研究開発費の金額は69,577千円であります。