第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。

(1)経営方針

人間と物があらゆる情報とつながり始めたこの世界において、高機能汎用技術である半導体レーザ技術の有用性はますます高まってきております。当社は「人の可能性を照らせ。」という経営理念のもとに、世界の人々の生活を安全で豊かなものにし、幸福と平和に貢献する企業を目指すことを経営方針としております。

経営方針に基づく重点施策として下記の5点を掲げております。

● 業界をリードする新製品の開発と安定量産化

● 納期遵守による顧客満足度の向上

● 顧客要求を充足する信頼性の確立

● 製品検査レベルでの品質向上

● 従業員の継続的スキル向上

当社の属する「半導体レーザ」業界は、着実にアプリケーションが拡大しており世界的に半導体レーザの新製品や高性能製品に対する市場ニーズが高まっています。当社はバイオメディカル、精密加工、半導体製造などの領域で顧客の強い支持を得ながら製品開発を進め、着実に市場に浸透しています。今後も量子ドットなどの当社独自の製品の性能向上と新製品開発を進め、新しい市場へ参入いたします。これらの成長する市場の中でシェアを獲得するために以下のような経営戦略を立案し、推進しております。

 

Ⅰ.中期経営計画

① 中期経営計画

2024年11月に中期経営計画を策定し、2027年3月期の全社黒字化達成することを目標とし、「ベースライン計画」と「成長可能性の追求」を行う事業プランを公表しました。この計画に基づき、レーザデバイス事業では、DFBレーザ、小型可視レーザ、高出力レーザをベースライン計画として売上高を毎年20~25%成長させると共に粗利率を45%に上げる計画とし、また量子ドットを成長可能性の追求としてコンピュータ光回路、次世代自動車、高度医療、人工衛星等での用途に向けた研究開発用の需要の獲得を想定しています。また視覚情報デバイス事業では「RETISSA ON HAND」の販売、他社開発視覚支援製品に対するコア部品供給又は技術ライセンス、他社開発ディスプレイ型視覚支援新製品販売をベースライン計画とし、またスマートグラス(XRグラス)、ビジョンヘルスケア(医療応用)を成長可能性の追求として他社との提携等によって将来の成長可能性を確保しつつ足元の負担を軽減し、これらによって視覚情報デバイス事業を2027年3月期に黒字化する計画としています。

中期経営計画の1期目となる2025年3月期は、レーザデバイス事業部、視覚情報デバイス事業部の売上高およびセグメント利益は、中計経営計画に掲げた目標を達成しました。今後とも中期経営計画の目標である2027年3月期の全社黒字化に向けて取組む予定です。なお2026年3月期の業績予想に就きましては開示資料にて公表しております。

 

Ⅱ.経営全般

① ファブレス製造

自社内においては半導体レーザの最も要となるデバイス設計、結晶成長と完成品の評価のみを行い、それ以外の工程は協力会社の生産ラインにて行っております。このため、生産設備保有による固定費や資金流出が抑えられるとともに、需要の変動に柔軟に対応した生産を行うことが可能となり、低コストで顧客満足度の高い生産体制を実現しております。

 

② 幅広い波長領域のレーザの開発、量産化

532nmから1064nm、1310nmまでの幅広い波長領域をカバーする製品をラインナップしております。これにより、通信機器、精密加工装置、生命科学機器、計測センサ機器、ディスプレイ機器等の多様なアプリケーションに対応する製品を開発、量産することが可能となっております。

 

③ 量子ドットレーザ量産技術のシリコンフォトニクス展開

光通信とインターコネクトに用いられる波長1300nmにおいて、量子ドットレーザの量産技術を有しております。この量子ドットは既存光通信デバイスと比較して高温度動作が可能で極低ノイズ特性を有することからシリコンフォトニクス光源として適しており、シリコンフォトニクスによる高速光デバイスの低コスト化・低消費電力化が期待されます。現時点で、世界のシリコンフォトニクスベンダー各社とシリコン融合量子ドットレーザの共同開発を進めており、光コネクタ、チップ間インターコネクトへの適用が検討されております。また、シリコンフォトニクスと量子ドットデバイスを組み合わせてロボティクス、セキュリティ、自動運転用のLiDAR用光源の共同開発も行っております。

 

④ モジュールビジネスの展開

バイオメディカル用途を中心に小型可視レーザ単体を販売する際、レーザと組み合わせるドライバは顧客が準備する必要がありました。一方で市場ではセットアップ時間や製品開発期間を短縮したい研究者および検査装置メーカなどにPlug&Playで直ぐに使える製品のニーズが有ることを捉え、ドライバを内蔵した新製品Lantanaを開発し、受注を開始しました。今後も幅広い市場ニーズを捉えるべくLantanaの波長ラインナップを追加するとともに、モジュール製品の開発を強化する予定です。

 

⑤ 最終製品の展開

「人の可能性を照らせ。」を具現化するため、従来の部品事業にとどまらず、半導体レーザ技術を応用した消費者向け製品事業を展開しております。そのひとつが、網膜投影技術VISIRIUM(ビジリウム)テクノロジーを採用した製品、RETISSA(レティッサ)シリーズであります。この技術は人間の水晶体のピント調節能力やピント位置に依らず、投影の端部まで鮮明な画像を網膜に描画できるという画期的な特徴を有しております。従来より販売しておりました装着型の網膜走査型レーザアイウェアに加え、様々な使用シーンに向けたレーザ網膜投影機器を上市しました。今後も世の中に光の可能性を提案する製品開発を行ってまいります。

 

⑥ 共同事業化による事業拡大

スマートグラスやビジョンヘルスケアの分野は、将来的に大きな期待が持てますが、収益化までに数年以上の時間を要し、先行投資負担が大きくなることが予想されます。また、これらを商品化するためには、相当規模の資金・人的資源及び量産化・生産管理等のスキル・ノウハウが必要となります。両分野において、当社で持ち合わせている網膜投影技術を、製品化に長けた他社へライセンス化すること等で共同事業化を行い、収益の獲得を図ります。

 

(2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的指標等

企業価値を継続的に向上させるためには利益の確保が重要であることから、当社は売上高総利益率を最も重要な経営指標として採用しております。事業別の指標としては、レーザデバイス事業は、これまでは認定顧客数の増加率で管理しておりましたが、各アプリケーションにおいて主要顧客に認定されていることから、今後は顧客内での認定製品の数を増やすことに重点をおき、認定製品数毎年9製品増加を指標といたします。視覚情報デバイス事業は、レーザ+MEMSの光学ユニットでの受注数を指標といたしますが、具体的な数値目標は今後のマーケティング活動の中で設定いたします。

 

(3)対処すべき課題

今後の世界経済につきましては、トランプ米国大統領による各国への関税政策に懸念が高まり、依然として残る各地の地政学リスクへの警戒感とともに、先行き不透明な状況が継続するものと予想されますが、当社におきましては、「人の可能性を照らせ。」を念頭に、以下の課題に対する諸施策を講じることで、事業の強化を図ってまいります。

① 全社黒字化の達成(2027年3月期)

営業利益の赤字が継続しているなか、2024年11月に中期経営計画を策定し、2027年3月期において黒字化を達成し、黒字化と成長可能性のバランスを図る事業計画を公表しました。この中期経営計画の初年度にあたる2025年3月期については、売上高、利益とも計画を達成しております。今後とも2027年3月期の全社黒字化に向けて取組みを進めて参ります。なお、2026年3月期の事業計画については公表済みであります。

 

② レーザデバイス事業の成長

加工、センサ、バイオメディカル用光源領域では、既存製品の拡販と低コスト化、高付加価値製品の開発、新規アプリケーションへの参入を進め、中長期的に年率10%以上の安定的な事業成長を図ります。当社のコア技術である量子ドットは中長期的な成長ドライバとして光通信、LiDAR、民生品応用に向けた研究開発を進めてまいります。

 

③ ロービジョンエイド領域での取り組み

視覚情報デバイス事業のうち視覚支援領域においては販売拡大が継続的な課題であります。

国内販売につきましては、施設への導入やイベントの実施などを通じたバリアフリーやインクルーシブ社会の実現を目指し、かつ持続可能な取り組みの構築を進めてまいります。

「RETISSA NEOVIEWER」(DSC-HX99 RNV kit)および「RETISSA ON HAND」を販売している米国を含む海外市場においては、医療機器と誤認されるリスクを避けるためにCSUN技術会議など対面の場におけるPR活動を中心にしています。認知の浸透には相応の時間と費用がかかると考えられますが、パートナーとの関係強化、提携先の拡大、中国を含む市場開拓、事業開発を進めてまいります。

 

④ スマートグラス実現に向けた取り組みの継続・拡大

視覚情報デバイス事業の飛躍的成長を実現するためには、多くの方が日常的に使うスマートグラスへの技術採用が欠かせない要素です。共同開発を続けるパートナー企業とともに、アイトラッキング機能の開発、低消費電力化、小型化、高精細化といった要素技術の成熟にむけて取り組むとともに、これまで蓄積した知財・ノウハウの収益化を目指してまいります。

 

⑤ マーケティングと営業体制、新製品開発力の強化

市場・業界・顧客分析、及び分析に基づく戦略的営業活動をさらに充実させるとともに、従来の定期的な顧客訪問、展示会の有効活用、国内外代理店との密な連携、企業パイプラインの強化と複線化、ウェブサイトの充実、Eコマースサイト活用を継続して、売上増大と利益確保を図ります。また、製品開発、研究開発基盤とマーケティングを連動させ、新製品開発力を強化してまいります。

 

⑥ 水平分業提携先との協業体制の維持と発展

チップ作製、モジュールアッセンブリ及び網膜投影機器の生産提携先と、将来ビジョン、年間計画、各案件のスケジュール連携、結果のフィードバック、定期的な訪問、打合せ等を行い、より一層の関係強化を図ってまいります。

 

⑦ 高品質・安定した製品の供給

高品質、高性能な製品を市場に供給し顧客満足度を継続して向上できるようISOに準拠した製品開発を行っていきます。また、顧客の性能、品質、価格、納期へのご要求に常に耳を傾け、開発・生産・営業が一体となりスピーディーに対応できる体制の継続的改善を行ってまいります。

 

⑧ MBE装置(分子線エピタキシー法による結晶成長装置)の維持管理

当社の技術を支えるMBE装置は事業部の移転に合わせて2026年4月に横浜市戸塚区の新拠点に移設をする予定でありますが、本装置は繊細な管理を必要とするため、移設時及び日々の修繕において、安定的な運用ができるような体制を図ってまいります。

 

⑨ 適切なコーポレートガバナンスとIR体制強化

開示書類の早期作成、業務プロセスの改善、内部管理体制の強化を継続的に推進するとともに、株主とのコミュニケーションを強化し、株主満足度の高いIR体制を構築してまいります。

 

⑩ MEOCHECK関連事業の展開

眼のセルフチェックツールである「MEOCHECK」の判定結果の受診勧奨が診断にあたることが判明し、自主回収とソフトウェアの改修を進めております。本作業を早急に完了し、法令に適合した製品を市場に投入するとともに、眼のセルフチェックサービス事業においても医療行為と認識されることがないように慎重にビジネスモデルの構築を進めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

社会課題や価値観の多様化に伴い、ESGを重視したサステナビリティ経営がより一層求められています。当社も、持続的な社会環境の創造について、責任を持って取り組んでいくべきであると考えております。

当社にとってのサステナビリティとは、事業を通して社会課題の解決に資することであり、当社の持続的な成長が社会の持続的な発展に寄与することを目指してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において、当社が判断したものであります。

 

ガバナンス

当社は、株主、お客様、従業員、地域社会及びその他のステークホルダーからの信頼に応え、企業価値を持続的に向上させ、社会の持続的な発展に寄与するためには、コーポレート・ガバナンスの強化が重要であると認識しております。

詳細は、第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等を参照ください。

 

戦略

当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は下記のとおりであります。全般的な戦略については、第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針を参照ください。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、少数精鋭体制のもと、各メンバーが自律的に専門性を発揮し、製品の価値向上と顧客満足の実現に貢献してまいりました。とりわけ、技術・開発・営業の現場を横断できる人材の存在は、当社の競争力の中核を成すものと位置づけております。

そのため、単なる採用・研修施策にとどまらず、「どのような人材が、どのような文脈で力を発揮しているのか」「今後、どういった人材の厚みが必要か」といった観点から、人的資本を戦略的に整備しています。

こうした考えのもと、当社が持続的な成長を目指すにあたっては人的資本が価値創造の源泉であり、人材力の強化を継続的に実行し、組織の人的資本を最適化することが重要であると考えております。以下のような取り組みを通じて、その基盤を構築しております。

1.採用:優秀な人材を採用するためには、求職者との良好な関係を築くことが重要です。適切な求人広告を出し、求職者の能力や経験に基づいて選考を行っています。

2.育成・教育:トレーニング、コーチング、メンタリング、キャリア開発プログラムを組み合わせ、従業員が最新の知識やスキルを獲得できるよう支援しております。

3.評価:業績評価制度や1on1面談を通じて、明確な目標設定と成長支援を行う仕組みを整備しております。

4.報酬:市場価値を意識した報酬制度を設け、従業員のモチベーションと貢献に報いております。

5.離職防止:従業員満足度の向上と柔軟な働き方の導入により、定着率の向上を目指しております。

6.組織文化:共通のビジョンに向かって協働できる環境づくりを進め、価値観の共有と一体感の醸成に努めております。

 

リスク管理

当社は、当社が持続的な成長を目指す上で、当社を取巻く市場環境や事業の状況には様々なリスクがあることを認識しており、リスクの全社的統括管理を経営企画室が行っております。主要なリスクについては定期的に開催される経営進捗会議においてモニタリング・評価・分析を行い、定期的に取締役会に報告することとしています。

 

指標及び目標

当社では、上記「人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」について、当社が持続的な成長を目指すにあたっては人的資本の最適化が重要であり、それらを定量的に測定するために以下の指標を用いております。

 

指標

2024年度

実績

2025年度

目標

補足

1.人材数

61

63

 

2.スキルポイント

89

90

個人別スキルマップに基づき算出しております。

3.離職率

4.7

4.0

 

4.女性人材率

19.7

19.7

 

5.従業員の平均在籍期間

6.8

8.0

 

6.従業員の平均年齢

50.6

50

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社を取り巻く市場環境及び事業の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりであります。なお、以下の各事項は、本書提出日現在において、当社が把握している情報等から判断可能なものについて記載したものであります。

 

(1)市場・外部環境に関するリスク

① 市場環境について

当社が参入しているレーザ関連市場は、既存技術の代替や新分野への活用等にて今後の成長、拡大が大きく見込める市場でありますが、今後の更なる技術革新、最先端技術の変化により、レーザに代わる廉価且つ大量生産可能な代替品が市場投入された場合、レーザ関連市場が縮小する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

② 景気動向について

当社が参入しているレーザ関連市場は、精密加工装置やバイオ系検査装置等の産業用、医療用機器向けを中心に成長傾向は継続するものと見込んでおりますが、国内外の経済情勢や景気動向、それに伴う設備投資意欲の減退等の理由により、市場の成長が鈍化する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

③ 為替変動について

当社は、国内だけでなく、海外とも仕入及び販売取引を行っております。為替の変動については、リスクヘッジ策を行っておりますが、今後、想定外の為替変動が発生した場合、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

④ 国際情勢について

当社が製造する製品は、国内外に販売しており、2025年3月期における国外販売比率は60%(注)を占めております。また、製品の製造プロセスの一部を海外のパートナーに委託しています。アメリカ、欧州、アジア等特定の地域に偏重せずに各地域にバランスよく展開しておりますが、各国・地域の法的規制、慣習、国際情勢の変化等に起因する事態が発生する場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

   (注) 国内代理店を経由した国外の二次顧客分は含んでおりません。

 

(2)事業内容・サービスに関するリスク

① 開発受託業務について

当社が展開している開発受託業務は、当社の先端基盤技術に基づくもので、開発費と利益の獲得、基盤技術の高度化、知財の蓄積、新規発想の具現化、新アプリケーション創造と市場の開拓、受託先の量産展開力の活用等、当社の利益に資する重要なビジネスモデルであり、今後も幅広く展開していく方針ですが、受託先の経営方針の変更や経営状態の悪化等により、受注が減少する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

② 網膜投影製品の販売について

視覚情報デバイスにおける各機器は、直接または代理店経由でエンドユーザーに販売しております。また、当社から機器やパーツ、モジュールを提供し、販売先企業が製品化あるいはパッケージ化して販売しております。

視覚情報デバイスの販売計画は、こうした企業の販売目標や締結済みの契約を目安に作成しております。こうした販売目標は市場投入前のマーケティング活動等を踏まえて設定されたものですが、網膜投影機器は市場にとってほとんど前例のない製品であり、当初の目標台数よりも販売できない場合、各社の事業方針に変更等があった場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)法務・知財に関するリスク

① 知的財産権について

当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレーム等の問題が発生した事実はなく、現時点において、当社の事業に関し、他社が保有する特許権等への侵害により、事業に重大な支障をきたす可能性は低いものと認識しております。また、技術調査等を継続的に行い、侵害事件を回避するよう努めております。しかしながら、当社の様な研究開発型企業にとって、知的財産侵害問題の発生を完全に回避することは困難であり、今後第三者との法的紛争に巻き込まれた場合には、弁護士や弁理士と協議の上、個別具体的に対応策を検討してまいります。当社の技術が侵害されるケース及び当社が第三者の技術を侵害していると指摘されるケースのどちらとしても、解決に際しては、時間及び多額の費用を要する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

② 法的リスクについて

当社の様々な事業活動において、国内外を問わず、当社が関与する技術・製品・サービス等について知的財産権に関する係争や製造物責任問題、薬事、商取引、税務等その他事業に関連する法令、慣行を巡って予期しない問題が提起される可能性があります。その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(4)サプライチェーンに関するリスク

① 部品・部材等の調達及び価格変動について

当社は、生産活動や研究開発活動に必要な部品・部材を外部の取引先から調達しております。それらの調達先からの供給が当社の製造に影響が出る様な供給の不安定化、また、価格の高騰、供給部材の品質劣化等が発生した場合、製品の品質や納期を守る事ができなくなる可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(5)財務・投資に関するリスク

① 継続的な投資について

当社は継続的な成長のために、新製品又は新技術の開発のための必要な研究開発活動を継続する必要があると考え、これまで積極的に研究開発費に係るコストに投下しており、今後も継続して必要な研究開発活動を行っていく方針であります。

しかしながら、その結果として2025年3月期においても営業損失を計上し、累積損失を抱えており、営業キャッシュ・フローもマイナスとなっております。今後の研究開発活動については、その費用対効果を勘案しながら慎重に行っていく方針ではありますが、研究開発活動の効果が十分に得られない場合や、開発コストの増加等が生じた場合、想定以上の投資に係る費用が発生することが想定され、中期経営計画が達成できない可能性や営業損益等の黒字化に時間を要する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)品質管理に関するリスク

① 製品の品質について

当社では、ISO9001の基準に加えて、外注管理規程、研究開発管理規程及び生産管理規程を設け、当該規程に則り、各種製品の製造、品質の保持向上に努めております。

信頼性には万全の配慮をしてまいりますが、想定していない理由により、製品の欠陥が発生した場合には、その欠陥内容によっては多額のコスト発生や信用の失墜を招き、当社の経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。当社では、引き続き製品の品質向上に努め、特に不具合に対する継続的な改良、不具合の起きにくい製品設計の推進、完成試験の信頼性向上試験の導入を含め、開発時、出荷時の試験を強化し、製品への非常時対策の機能開発の継続、顧客クレーム、故障等の処理プロセス等について強化してまいります。

 

(7)研究開発に関するリスク

① 研究開発活動について

当社は最先端のレーザ技術を既存製品に流用し、生活を豊かにする研究開発に取り組んでおりますが、当社が業界と市場の変化を十分に予測できず、また、間違った判断をすることで、顧客や市場からの支持を得られる新製品、新技術を提供できない可能性があります。その場合、将来の成長と収益性を低下させ、当社の事業活動、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)組織構造に関するリスク

① 小規模組織であることについて

当社は、従業員48名の小規模組織であり、内部管理体制も現状の組織規模に応じたものとなっております。今後の事業拡大と事務量の増加に備え、従業員の育成、人員の増強及び内部管理体制の一層の充実を図る方針でありますが、人材の増強及び内部管理体制の充実が円滑に進まなかった場合には、適切な組織的対応ができず、当社の業務効率や事業拡大に支障をきたす可能性があります。

 

(9)人材・労務に関するリスク

① 人材の確保及び人件費の高騰について

現在、日本経済全体として労働人口の減少等による人手不足や人件費の高騰が大きな問題となっております。当社では、当社の欲する人材を採用してきましたが、今後において、人材の供給が当社の要望にかなわずスキルの不一致、賃金の不一致等で安定的に適正な人件費で人材確保ができなくなった場合、当社の業務効率や事業拡大に支障をきたす可能性があります。

 

② 退職者による技術・ノウハウ流出について

当社のレーザ関連技術について、特許等によりコアとなる技術は保護されている状態を保っておりますが、退職者によって、当社技術と異なるも近しいレーザ関連技術が他社により開発された場合や、独自性が失われ市場への訴求力が低下するような事態となった場合には、当社の事業活動、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)拠点・施設に関するリスク

① レーザデバイス事業部拠点の移転について

当社は2024年4月25日公表のとおり、2026年4月にレーザデバイス事業の拠点を横浜市戸塚区へ移転する予定であります。この移転には当社の技術を支えるMBE装置(分子線エピタキシー法による結晶成長装置)の移設も含まれており、本装置は繊細な管理を必要とするため、移設作業には過去の経験を含めた万全な体制を取る予定ですが、移設後の装置立上げが想定通りに進まなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(11)委託・外部依存に関するリスク

① 製造委託先の経営悪化、品質事故等

当社ではファブレス製造の方針を採用しておりますので、外部の協力企業に製造を委託しております。それぞれの企業の特性等を考慮し、当社製品の製造能力に応じて、各社への製造委託品目を決めております。

各社に対しては、当社にて品質検査、経営状態の確認等を実施しております。仮に委託先の経営悪化、品質事故等が発生した場合、容易に委託先の変更は可能ではありますが、新たな生産体制が再構築されるまでの期間、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(12)内部統制・ITに関するリスク

① 情報セキュリティに係るリスク(情報の漏洩、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等)

当社の主な事業は顧客の個人情報を取得する必要のあるものではありませんが、一部取引には個人情報を取得する場合があり、また、顧客と秘密保持契約を締結した上で技術情報や営業情報を取り扱う業務もあり、想定していない理由により、これらの情報の漏洩が発生した場合には当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、会計、販売管理等コンピュータによる業務処理を実施しており、地震・火災等の災害によるハードウェアやネットワークの損傷、外部からのコンピュータウイルス攻撃におけるシステムトラブルやデータ破壊、情報の盗難、漏洩等が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)財務・制度に関するリスク

① 配当政策について

当社は、創業以来配当を実施しておらず、本書提出日現在においても、会社法の規定上、配当可能な状態にありません。当面は、内部留保による財務体質の強化及び研究開発活動への再投資を優先させる方針であります。一方、株主への利益還元は重要な経営課題の一つととらえており、経営成績及び財政状態を勘案しつつ、配当の実施を検討してまいります。しかしながら、利益計画が予想どおりに進捗せず、今後も安定的な利益計上ができない場合には、配当による株主への利益還元が困難になる可能性があります。

 

② 資金繰り及び資金調達等に関するリスク

当社は、研究開発活動の進捗に伴い、先行して多額の研究開発費が計上されております。今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資及び設備投資等の資金需要の増加が見込まれます。今後、継続的に財務体質の強化を図ってまいりますが、収益確保または資金調達の状況によっては、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、当社の公募による資金調達の使途に関しましては、レーザ網膜投影製品の製造費用や視覚情報デバイス事業及び本社の人件費、賃料、知財費等の運転資金に充当する予定でありますが、急激な事業環境の変化等により、当初予定した資金使途以外に利用する場合があり、投資効果が期待どおりにあげられない可能性があります。また、当社の行使価額修正条項付新株予約権による資金調達の使途に関しましては、主にレーザデバイス事業の生産能力増強やM&Aに充当する予定でありますが、急激な事業環境の変化等により、当初予定した資金使途以外に利用する場合があり、投資効果が期待どおりにあげられない可能性があります。

 

③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社では、取締役、従業員に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主が有する保有株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。2025年5月末現在、これらの新株予約権による潜在株式数は1,306,500株であり、発行済株式総数41,761,392株の3.1%に相当しております。

 

(14)自然災害・不可抗力に関するリスク

① 地震等の自然災害について

当社は製造委託先の製造拠点を国内外に分散しております。また、地震等の災害について事業継続計画に準拠して、非常事態に対応する体制を構築しております。今後も地震等の自然災害が発生した場合、その規模及び地域によって経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(15)訴訟等に関するリスク

① 訴訟について

当社は、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、販売した製品の不具合等、予期せぬトラブルが発生した場合、それに起因した損害賠償の請求、訴訟を提起される可能性があります。その場合、損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社の事業活動、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当事業年度における世界経済は、高金利と地政学リスクが継続する中、各国で景気減速の懸念が強まりつつも、インフレは徐々に鎮静化しつつありましたが、年度終盤にはトランプ米国大統領による各国への関税政策に懸念が高まり、依然として残る各地の地政学リスクへの警戒感とともに、先行き不透明な状況が続いております。わが国においては、個人消費や賃金の持ち直しに支えられつつも、それらを上回る物価上昇がみられており、今後も外部環境の不確実性や物価動向への懸念などは継続するものと思われます。

このような状況の中、当社では2024年6月に新経営体制に移行し、「人の可能性を照らせ。」のコーポレートスローガンのもと、新波長の小型可視レーザやオールインワン小型可視レーザ「Lantana」、半導体検査用超高速DFBレーザ及びアイトラッキング駆動システムを含む次世代アイウェアの開発、既存レーザ製品の拡販やレーザ網膜投影機器の販路開拓を進めてまいりました。

また、2024年11月14日に中期経営計画を発表し、「攻め」の土台となるベースライン計画と、その土台に基づく積極的な「攻め」となる成長可能性追求の両立に向けた道筋について示すとともに、2027年3月期での黒字化を明確な目標とし、事業領域の再編成、共同事業化を含めた他社との提携の検討など計画達成のための取り組みを開始いたしました。

当社製品の販売状況としては、レーザデバイス事業では売上高は前事業年度から増加しました。製品別ではDFBレーザ、小型可視レーザ、高出力レーザが前事業年度から増収となりましたが、量子ドットレーザが前事業年度から減収となりました。視覚情報デバイス事業では売上高は前事業年度から減少しました。

この結果、当事業年度の売上高は1,308,870千円(前事業年度比4.9%増)、視覚情報デバイス事業の販売方針変更による販路等構築途上のために依然として販売費及び一般管理費が売上総利益を上回り、営業損失は445,689千円(前事業年度は営業損失604,014千円)、経常損失は443,547千円(前事業年度は経常損失600,972千円)、当期純損失は445,768千円(前事業年度は当期純損失642,627千円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

なお、当事業年度より、従来「レーザアイウェア事業」としていた報告セグメントの名称を「視覚情報デバイス事業」に変更しております。この変更は報告セグメントの名称変更のみであり、セグメント情報に与える影響はありません。

a.レーザデバイス事業

当事業年度におきましては、売上高は、量子ドットレーザが開発用途向けの販売減少等により9.4%前事業年度から減少しましたが、DFBレーザが加工用途やセンサ用途向けの販売増加等により33.6%、小型可視レーザがバイオセンサ用途向けの販売増加等により27.5%、高出力レーザがセンサ用途向けの販売増加等により3.5%、それぞれ前事業年度から増加したことにより、全体として前事業年度から19.9%増加しました。量子ドットレーザは前事業年度における期ずれの影響を受けたために開発用途向けの売上が減少しておりますが、量産向けは顧客へは希望納期に沿った出荷を行いました。

この結果、当事業年度の売上高は1,120,719千円(前事業年度比19.9%増)、セグメント利益は141,249千円(前事業年度比241.6%増)となりました。

 

b.視覚情報デバイス

当事業年度におきましては、売上高は、次世代網膜投影型アイウェア(スマートグラス)に向けた各種要素技術の開発受託が、アイトラッキング駆動システムの開発を中心とした受注拡大により44.0%前事業年度から増加しましたが、デジタルカメラ用網膜投影ビューファインダ「RETISSA NEOVIEWER」等の網膜投影製品ビジネスが83.9%前事業年度から減少し、全体として前事業年度から39.9%減少しました。

この結果、当事業年度の売上高は188,151千円(前事業年度比39.9%減)、セグメント損失は311,751千円(前事業年度はセグメント損失375,604千円)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における総資産は前事業年度末から640,484千円減少し、5,505,868千円となりました。流動資産は4,554,880千円となり、前事業年度末から1,207,137千円減少しております。これは主にレーザデバイス事業の拠点移転準備や運転資金の支出により現金及び預金が1,082,105千円、売掛金の回収により売掛金が16,485千円、消費税の還付等により未収入金が67,259千円、出荷及び評価減により商品及び製品が16,181千円減少したこと等によるものであります。固定資産は950,987千円となり、前事業年度末から566,652千円増加しております。これは主に小型可視レーザ製造設備稼働による建設仮勘定からの振替により機械及び装置が62,150千円、レーザデバイス事業の拠点移転準備により長期貸付金が378,617千円、長期前払費用が220,059千円、差入保証金が37,200千円増加した一方、レーザデバイス事業拠点移転決定に伴う償却期間短縮による減価償却費増により建物附属設備が57,781千円、設備稼働に伴う本勘定への振替により建設仮勘定が70,837千円減少したこと等によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債は前事業年度末から191,958千円減少し、286,602千円となりました。流動負債は256,096千円となり、前事業年度末から188,461千円減少しております。これは主に設備代金決済等により未払金が183,221千円減少したこと等によるものであります。固定負債は30,506千円となり、前事業年度末から3,497千円減少しております。これは主に業績連動報酬引当金が取締役2名の評価期間の途中での退任により1,621千円、レーザデバイス事業拠点移転決定に伴う償却期間短縮により繰延税金負債が1,578千円減少したこと等によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は前事業年度末から448,525千円減少し、5,219,265千円となりました。これは主に利益剰余金が純損失の計上により445,768千円減少したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、3,754,424千円(前事業年度末比1,082,105千円の減少)となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動の結果減少した資金は506,823千円(前事業年度は443,446千円の減少)となりました。主な資金増加要因は減価償却費98,792千円、貸倒引当金の増加26,620千円、売上債権の減少16,485千円、棚卸資産の減少27,403千円、その他の流動資産の減少42,881千円であり、主な資金減少要因は税引前当期純損失443,547千円、長期前払費用の増加220,059千円、仕入債務の減少12,894千円、その他の流動負債の減少33,719千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動の結果減少した資金は568,605千円(前事業年度は138,133千円の減少)となりました。主な資金減少要因は有形固定資産の取得による支出167,320千円、長期貸付けによる支出375,331千円、敷金及び保証金の差入による支出37,200千円であり、主な資金増加要因は短期貸付金の回収による収入12,000千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動の結果減少した資金は9,512千円(前事業年度は1,835,702千円の増加)となりました。主な資金減少要因は長期借入金の返済による支出8,651千円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(a) 生産実績

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業  

710,554

122.54

視覚情報デバイス事業

155,562

51.68

合計

866,116

98.32

 

(注) 1.金額は製造原価によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載の棚卸資産の評価損が含まれております。

(b) 仕入実績

当事業年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業  

528,707

121.89

視覚情報デバイス事業

87,382

39.07

合計

616,089

93.71

 

(注) 1.金額は仕入価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(c) 受注実績

当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

レーザデバイス事業  

1,148,244

127.11

333,597

112.27

視覚情報デバイス事業

184,354

58.73

2,325

37.25

合計

1,332,598

109.48

335,922

110.73

 

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(d) 販売実績

当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業 

1,120,719

119.91

視覚情報デバイス事業

188,151

60.15

合計(千円)

1,308,870

104.92

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

日本電計株式会社

136,426

10.94

190,955

14.59

Beckman Coulter, Inc.

166,665

12.73

Fabrinet Co., Ltd.

160,723

12.28

 

(注)前事業年度におけるBeckman Coulter, Inc.及びFabrinet Co., Ltd.に対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 経営成績の分析
a.売上高

当事業年度における売上高は1,308,870千円(前事業年度比61,385千円の増加)となりました。これは主に、DFBレーザ、小型可視レーザ、高出力レーザが前事業年度から増収となり、量子ドットレーザ及び視覚情報デバイス事業における前事業年度比減収を上回ったことによるものであります。

b.売上原価、売上総損失

当事業年度における売上原価は865,014千円(前事業年度比63,389千円の減少)となりました。これは主に前事業年度の棚卸資産の評価損が多額なものであったことから、それが減少したことによるものであります。この結果、売上総利益は443,855千円(前事業年度比124,774千円の増加)、売上総利益率は33.9%(前事業年度は25.6%)となりました。利益率の増加は主に棚卸資産の評価損の減少によるものであります。

c.販売費及び一般管理費、営業損失

当事業年度における販売費及び一般管理費は889,545千円(前事業年度比33,550千円の減少)となりました。これは主に、試作材料費の時期ずれや役員減少による役員報酬及び株式報酬費用の減少等によるものであります。この結果、営業損失は445,689千円(前事業年度は営業損失604,014千円)となりました。

d.営業外収益、営業外費用、経常損失

当事業年度において受取利息、為替差益等により営業外収益が10,657千円(前事業年度比22,286千円の減少)、資金調達費用等により、営業外費用が8,514千円(前事業年度比21,387千円の減少)発生しております。この結果、経常損失は443,547千円(前事業年度は経常損失600,972千円)となりました。

e.特別利益、特別損失、当期純損失

当事業年度において特別利益、特別損失は発生しておりません(前事業年度は特別損失37,709千円)。この結果、当期純損失は445,768千円(前事業年度は当期純損失642,627千円)となりました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社の運転資金需要のうち主なものは、材料仕入、外注費、人件費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要の主なものは半導体レーザウエハ結晶成長装置、小型可視レーザ製造装置、測定装置等の機械及び装置等であります。

運転資金、投資資金ともに自己資金から確保することを基本方針としております。当事業年度末の現金及び現金同等物は3,754,424千円であり、現状の事業運営に必要な運転資金、投資資金は十分であると考えておりますが、500,000千円の金融機関のコミットメントライン枠を有しているほか、必要に応じて銀行借入を中心とした調達手段を検討してまいります。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討

当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は売上高総利益率であり、当事業年度の売上高総利益率は33.9%(前事業年度は25.6%)となりました。これは主に前事業年度においてはレーザアイウェア事業(現視覚情報デバイス事業)の棚卸資産の評価損が多額なものであったことから、それが減少したことと、レーザデバイス事業における価格見直し等のためであります。2026年3月期については売上高総利益率の目標を39.8%としております。

レーザデバイス事業の指標としましては認定顧客数の20%増加としており、当事業年度末の認定顧客数は82社(前事業年度末は77社)で前事業年度末から6%増加となりました。これは高出力レーザ、DFBレーザおよび小型可視レーザにおいて新規認定顧客が増加したためであります。今後も量子ドットレーザを含め、認定顧客を増やしていく方針ではありますが、各アプリケーションにおいて主要なお客様に認定されていることから、今後はお客様内での認定製品の数を増やすことにも重点をおき、認定製品数を指標といたします。

視覚情報デバイス事業の指標としましてはこれまで累計販売10万台・年間生産5万台と定めておりましたが、2024年11月14日公表の中期経営計画で発表した通り、事業領域の再構築を図っているところであり、新たな指標は未定となっておりますが、当面は光学ユニット新規受注数を客観的指標といたします。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社の事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

(賃貸借契約)

契約期間

契約の目的

自 2025年9月30日
至 2060年9月29日

レーザデバイス事業部

及び本社移転

 

 

敷地面積

1,110㎡

建物延面積

1,531,70㎡

敷金

37,200千円

建設協力金(契約時元本額)

865,000千円

 

 (注)1.建設協力金は本物件の引渡しから5年間据置されるものとし、据置期間後、30年間均等の毎月末日払いにて返還されます。ただし、第1回目の返還額は3,400千円とし、第2回目以降は2,400千円となります。

2.建物の賃貸借は内装工事等を含まないため、本契約に伴い、今後、内装工事等の設備投資が必要となります。

3.2.の内装工事等のうち、内装工事については、約4億円の工事発注内示を行っております。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社は、イノベーションの創出、顧客に提供する価値の向上、人類の能力向上と社会の進歩に貢献することを開発の目的とし、研究テーマは、中期経営計画立案時に社長より方向性が提示され、新製品の開発の他、既存製品のリニューアル時期やISOの一環であるCS調査の内容等も加味して決定しております。研究開発費用は、中期経営計画立案時にテーマごとに見積もっております。

共同で発明された成果については共同保有とし、特許出願を行っております。

 

当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は173,785千円となりました。

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(レーザデバイス事業)

レーザデバイス事業では製品開発6名、ウエハ開発2名体制を構築しております。

また、東京大学量子イノベーション協創センターと新しい価値創出のため共同で研究開発を進めております。

東京大学とは2009年4月より共同研究開発契約を締結して共同研究を実施しております。東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構とは、量子ドット結晶の改良(密度の増大、均一性の向上)を目的として研究開発を行っております。

当事業年度の研究開発費は39,503千円となりました。

研究開発の活動は、以下のとおりであります。

新製品または新技術名

内容

オールインワン小型可視レーザ「Lantana」

ドライバを内蔵したPlug&Playで直ぐに使える小型可視レーザ「Lantana」の試作完了。

加工用1030nm DFBレーザの特性改善

ファイバレーザの種光である1030nm DFBレーザの光アンプ特性改善のための試作完了。

 

 

(視覚情報デバイス事業)

視覚情報デバイス事業では製品開発5名、先端技術開発4名体制を構築しております。

当社の技術を用いて顧客の問題を解決する開発受託業務を請け負う中で、研究開発を行っております。

当事業年度の研究開発費は134,281千円となりました。

研究開発の活動は、以下のとおりであります。

新製品または新技術名

内容

レーザアイウエアの小型化と高画質化

TDK株式会社のフルカラーレーザモジュールを3原色光源として活用し、フォーカスフリーで視野角60度、フルカラーフルハイビジョン画像を提供するARグラスの試作の実施。

アイトラッキング駆動システム

眼がどこを向いてもレーザがそれを追いかけ、網膜に投影する技術。アイウエア搭載に向けた試作の改善継続。