(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは当社及び連結子会社4社(株式会社アイキューブドベンチャーズ、アイキューブド1号投資事業有限責任組合、ワンビ株式会社、10KN COMPANY LIMITED)の計5社で構成されております。パーパスを「笑顔につながる、まだ見ぬアイデア実現の母体となる」、提供価値を「デザインとエンジニアリングの力で、挑戦を支える」と定義した上で、「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに、ITを軸とした様々な挑戦を積極的に進めていく企業を目指しております。
(2) 目標とする経営指標
当社グループの主軸事業である、CLOMO事業の導入法人数(CLOMOを導入している企業や、学校や官公庁などの公的機関の組織数)、ライセンス継続率を経営指標としております。なお、子会社であるワンビ株式会社が開発・提供するTRUST DELETEの導入法人数及びライセンス継続率は経営指標の算出に含めておりません。
(3) 経営環境と経営戦略
当社グループの事業環境としては、国内においてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する動きが継続しており、IT投資は堅調に推移すると見込まれます。特に、サイバー攻撃の脅威が増大する中で、企業や官公庁におけるセキュリティ意識の向上は、当社グループの主軸であるCLOMO事業にとって大きな追い風になると認識しております。
このような環境下、CLOMO事業が属するMDM(モバイル端末管理)市場は、2024年に187億円(前年比7.1%増)、2028年までに280億円まで成長する見通し(注1)であり、安定した成長が期待できます。具体的には、企業や医療機関においては、3G停波(注2)に伴うフィーチャーフォン(従来型携帯電話)の生産終了やPHSのサービス終了等により、スマートフォンの導入が加速しております。官公庁においては、自治体DXの進展によりモバイル端末の管理需要が増加しております。さらに、PC資産管理ソフトウェアについては従来のオンプレミス型からSaaS型への移行が進み、モバイル端末とPCの統合管理の需要が増加しております。このように、CLOMO事業はMDM市場における成長機会に加えて、PC資産管理市場にも成長領域を拡大しており、充分な開拓余地があると考えております。
当社グループでは、これらの好機を確実な成長につなげるため、各市場に特化したアプローチを推進してまいります。医療機関に対しては、専門展示会への積極的な出展を通じて認知度向上を図り、官公庁に対しては、政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)登録サービスとしての高い信頼性と、2025年5月より提供を開始したガバメントライセンス(注3)による価格訴求力を強みとして、サービスの導入を推進します。
さらに、グループ価値の最大化に向けて、子会社であるワンビ株式会社とのシナジーを創出するべく、同社が開発・提供するWindows PC向けセキュリティサービスのクロスセル推進に加えて、同社が有する技術・ノウハウを活用し、Windows PC向け機能の強化を図ってまいります。
(注)1.出典 デロイト トーマツ ミック経済研究所「コラボレーション・モバイル管理ソフトの市場展望 2024年度版(https://mic-r.co.jp/mr/03230/)」2024年度市場規模・2028年度市場規模予測。
2.携帯キャリア各社が第3世代移動通信方式(3G)のサービス提供を順次終了する予定となっております。当社の主要な販売パートナーであるNTTドコモグループは、第3世代移動通信方式の「FOMA」及び携帯電話からインターネットやメールを利用できるサービス「iモード」の提供を2026年3月に終了予定です。
3.当社が指定する行政機関や公的機関に対して「CLOMO MDM」のライセンスを特別価格にて提供するものです。
① MDM市場におけるシェアの拡大
CLOMO事業が属するMDM市場は、スマートフォンのビジネス利用の増加に加えて、モバイルPCや業務専用端末など、新たなMDMの活用シーンの拡大によって成長を遂げており、当社グループも導入法人数、ライセンス数の増加により収益基盤が拡大しております。一方で、近年では海外製品の国内参入などを背景に、市場における競争優位性の確保に対する重要性が高まっております。
このような中で、CLOMO事業のMDM市場におけるシェアを拡大させるためには、当社グループの技術開発力をベースにした高機能化、周辺機能の追加、複数種類の端末の管理機能拡充などにより、アップセルとクロスセルを高め、顧客単位の売上増加・コスト減少に取り組んでいく必要があると考えております。加えて顧客の信頼を厚くするためのサポート体制の充実による高い継続率の維持に取り組んでまいります。
また、クラウドを利用したSaaSサービスであるため、顧客の予期せぬ急増や、一度に多量のライセンスを受注した場合においても、当社グループは新規で物理的なサーバー機器を調達、構築する必要がないことから円滑に対応でき、当社グループに大きな負担はありません。導入までのサポートを大きな負荷無く短期間で済ませることで、成長の一層の加速に取り組んでまいります。
② 開発体制の強化
さらに、M&Aを通じた開発人員の増強や、海外におけるオフショア開発先の開拓など、外部リソースを活用した抜本的な開発体制の強化に取り組んでまいります。前連結会計年度において子会社化した、ベトナムに拠点を置くソフトウェア開発会社である10KN COMPANY LIMITEDの成長支援にも注力しており、中長期的な開発リソースの確保・強化が進んでおります。
③ 品質保証体制の強化
一方で、CLOMO事業の顧客数の順調な拡大に伴って問い合わせの件数は年々増加しております。これに対して、顧客数の増加に比例して人員増強を進めるのではなく、従来のカスタマーサクセス活動の品質を保ち、高い継続率を維持しつつも、業務効率化によってカスタマーサクセス活動に係る人員数を一定程度に抑制することが課題と考えております。そのために、製品の操作マニュアルや操作レクチャー動画の拡充を進めており、顧客自身で製品操作に対する疑問を解消しやすい環境を整えることで、顧客の利便性向上及び業務の効率化を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに掲げており、様々な挑戦を楽しみながら取り組み、また同時に、挑戦を楽しむ人や組織を支えることで、笑顔あふれる社会の実現に貢献いたします。サステナビリティに関する取り組みについても、この挑戦の一つと捉えております。当社グループを取り巻く事業環境や経営状況を踏まえ、適切な時期に、ステークホルダーの皆さまと連携しながら、持続可能な社会への貢献に取り組んでまいります。

当社グループは、持続可能な社会の実現及び企業価値の向上に向け、2023年6月にサステナビリティ方針を策定しております。当社グループのサステナビリティに関する取り組みについて経営会議等で協議された内容の報告を取締役会が受け、当該施策について、取締役会において審議・監督を行っております。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、次のとおりであります。
① 人材の多様性
当社グループは、多様性を踏まえた人材の活用が持続的成長に不可欠であると考えており、性別・国籍・年齢・価値観・ライフスタイル等の多様なバックグラウンドや個性を持つ人材の採用と、多様かつ挑戦的なカルチャーの醸成を通じて、全ての従業員が尊重され、能力を最大限に発揮できる組織を目指しております。
また近年では、性別による賃金格差をはじめとする不公平な競争環境の是正に対する社会的関心が高まっており、当社グループにおいてもダイバーシティ&インクルージョンに加え、公平性(Equity)の視点を取り入れています。さらに、組織における居心地や心理的安全性等の帰属意識(Belonging)が、従業員のパフォーマンス向上に繋がることから、従来の「D&Iミーティング」を発展させ、EquityやBelongingの視点も取り入れた「DEIBミーティング」を定期的に開催しております。
② 人材の育成
当社グループの競争力の源泉は人材であるという認識のもと、様々な人材育成施策に取り組んでおります。具体的には、従業員一人ひとりのキャリア形成を支援することを目的に、新卒社員向け研修、階層別研修、マネージャー育成プログラム、所属部門によるOJT等を実施しております。さらに、自律的なキャリア形成をサポートするため、eラーニングを導入し、従業員自ら積極的に学べる環境を提供しております。
また、当社グループのエンジニアが専門的な知識を幅広く習得し、かつ、能力向上の動機づけに繋げることを目的として、国内外の技術カンファレンスに積極的に参加できる機会を提供しております。
③ 社内環境整備
当社グループにおいては、従業員一人ひとりが働きがいを持ち、安心して働き続けることができる職場環境を整備しております。具体的には、フルフレックスタイム制や状況に応じたテレワークの活用など、従業員一人ひとりの生活スタイルに応じたワークライフバランスを実現させることができるよう、さまざまな仕組みづくりに努めております。
また、従業員の健康の維持・増進にも注力しており、各種検査費用の補助、オフィスや自宅での軽い運動イベント(オフィストレーニング)の実施、コミュニケーション機会の創出を含めたアウトドアイベント等、健康促進を目的とした独自の施策を実施することで、心身ともに健やかに働ける環境作りを推進しております。
当社グループにおける全社的なリスク管理は、事業活動に伴い発生する可能性がある経営上のリスクについて、リスクを可視化し、当社グループに発生するあらゆるリスクを統合的・包括的・戦略的に把握・評価・最適化し、価値最大化を図るリスクマネジメント手法で行っており、リスク管理担当部門より四半期ごとに取締役会へ報告しております。サステナビリティに関するリスクについても、その他のリスクと同様に、当該手法で管理しております。
当社グループでは、上記(2)戦略において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する実績は、次のとおりであります。
なお、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われていないため、当社グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
ただし、当該事業は、国内外の経済情勢や、顧客企業動向に左右されるうえ、技術進化が著しく、顧客ニーズも多様化していくことから、それらへの対応が遅れた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
主軸事業であるCLOMO事業の販売チャネルとしては、携帯電話販売会社や携帯電話販売代理店を通じての取引が多く、販売先の上位グループ会社による売上が売上高の47.6%(2025年6月期実績)を占めております。当該販売パートナーとは良好な関係を築いておりますが、販売パートナーの予期せぬ販売方針の変更や当社グループが原因となる重大な不具合の発生等により、良好な関係を毀損する事態となった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループはCLOMO事業及び投資事業を展開しておりますが、投資事業については、2022年から新たに開始した事業であり、さらに投資先の事業進捗に応じて投資収益の発生時期が左右されるため、継続的な安定した収益の創出には至っておりません。そのため、CLOMO事業が属するMDM市場の成長が想定通り進まない場合、又は当社グループが事業環境の変化に適切に対応できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、(4)に記載のとおり、当社グループは収益源の多様化のため、新規事業を展開する方針であり、代替となる収益基盤の構築を進めてまいります。
当社グループはCLOMO事業を主軸事業としておりますが、収益源の多様化のため、リスクを慎重に検討しつつ、新規事業を展開する方針です。新規事業の開発あるいは収益化が計画通りに進まない場合、減損損失の計上が必要になる等、投資を回収できなくなる可能性があります。また、新規事業の内容によっては、事業固有のリスクが加わる場合があります。これらの新規事業の内容あるいは進捗状況によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
主軸事業であるCLOMO事業においては、携帯電話販売会社や携帯電話販売代理店によるモバイル端末販売と合わせて、顧客企業であるエンドユーザーと契約を行うため、エンドユーザーと携帯電話販売会社や携帯電話販売代理店の関係悪化等の要因により、エンドユーザーが他社の販売するモバイル端末に切り替える場合に、当社グループによる関与が及ばない状態で、契約を解約される可能性があります。予算及び経営計画において、将来の解約を見込んでおりますが、想定を超える解約が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
当該リスクの対応策として、顧客の問い合わせを迅速に解決する手厚いサポート体制を構築しております。さらに、顧客との関係性強化に向けた定期的な面談や、CLOMO MDMの活用について学べるステップアップセミナーを実施しており、これらのサポート活動及びカスタマーサクセス活動を通じて、モバイル端末を切り替えた場合においても、継続して製品を利用していただけるよう取り組んでおります。
CLOMO事業の属するMDM市場において、新規参入や他社との競合により、価格競争が激化し、想定した単価で契約ができない場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはApple Inc.やGoogle LLC、Microsoft Corporation等といった、いわゆるプラットフォーマーの提供するOSやインフラを利用して、CLOMOサービスを提供しております。これらのプラットフォーマーは自社でもMDMサービスを提供しておりますが、当社グループに対する料金体系や利用上の制約を変更した場合、あるいは当社グループに対するサービス提供を停止した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、業務に関連して多数の顧客企業の情報資産を取り扱っております。当社グループは、情報システム管理規程を策定し、役員及び従業員に対して情報セキュリティに関する教育研修を実施するなど、情報管理の徹底に努めております。また、統合脅威管理機能を持つシステムの利用、社外専門家からのチェック、さらに「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)」への登録審査などを通じて、情報セキュリティ体制の強化を行っております。
しかしながら、外部からのサイバー攻撃、従業員の過失による重要データの消去や従業員による不正取得の可能性のほか、何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩するような場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、第三者との間で将来の業績に影響を及ぼすような重大な訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありません。しかしながら、事業活動を展開する中で、知的財産権、環境、労務等、様々な訴訟の対象となるリスクがあり、将来の業績に大きな影響を及ぼすことが危惧される重大な訴訟が提起された場合や訴訟の結果によっては当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを踏まえ、事業活動の遂行に際し、内部統制の充実やコンプライアンスの強化に努めております。
また、当社グループでは、事業展開にあたり知的財産権に関する訴訟を未然に防ぐため、特許事務所を通した知的財産権の特許調査を実施しており、当社グループの技術等が他社の知的財産権に抵触しているという事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループの業務に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識せず他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、知的財産権侵害として損害賠償請求等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、Apple Inc.やGoogle LLC、Microsoft Corporation等のクラウドサービスを利用してインターネット上でサービスを提供しております。したがって、自然災害や事故によるインターネット通信網の損傷や予期せぬアクセス急増に伴うサーバーダウンに起因して、当社グループのサービス提供に支障が生じる場合があります。そのような事態となった場合、エンドユーザーへの補償等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、分散バックアップデータを元に、早急に障害等から復旧する体制の強化を行ってまいります。
当社グループは、業務の適正性、財務諸表の信頼性確保のため、内部統制システムの適切な運用を行っております。また、内部監査室を設置し、コンプライアンスに関する規程を整備・充実するとともに、従業員への研修など啓蒙活動を継続的に実施し、法令遵守に取り組んでおります。しかしながら、故意あるいは想定し得ない重大なコンプライアンス違反や法令違反があった場合、当社グループの社会的信用が低下し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものになっております。今後の事業拡大に応じて従業員の育成、人員の採用を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、急激な社員増加に対応しきれない場合や、退職が続出するような場合には、事業計画が想定通り進捗せず、長期的な競争力の低下あるいは機会損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの創業者であり、代表取締役執行役員社長 CEOである佐々木勉は、当社設立以来、経営方針や戦略の立案・実行、システム開発を推進し、当社グループを強いリーダーシップで牽引してきました。当社グループの保有する知的財産権のほとんどは同氏が手がけたものです。当社グループは各部門のリーダーに権限委譲し、安定的な経営体制を構築しておりますが、同氏に不測の事態が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 人材確保について
当社グループは、業容拡大に伴う適切な人材確保が必要であると考えており、主にソフトウェア開発等に高度な技術スキルを有する人材の確保を必要としております。しかしながら、人材の確保が順調に進まない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当連結会計年度末現在におけるこれらの新株予約権による潜在株式数は93,310株であり、発行済株式総数5,306,750株の1.75%に相当しております。
当社グループは受託開発ではなく、自社で開発した技術をライセンス提供するというビジネスモデルを展開しており、その根幹を支える研究開発に多くの予算を投入していく予定であります。研究開発は、調査やレポートをもとに、利用者のニーズや競合他社の動向等を予測のうえ、方針を決定しておりますが、予測が大きく外れた場合や、研究開発に係る方針を転換しなければならない場合には、投下した資金を回収できず、また事業の展開が遅延することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 投資事業について
当社グループは新たな収益源の創出のため、当社グループの事業領域と親和性の高い企業、社会課題解決型企業、当社グループが本社を置く九州の地場で活動している企業を対象に投資を実施しております。投資先の事業の状況によっては、保有有価証券の評価損が発生し、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、投資対象の株式等について取得原価を上回る価額で売却できる保証はなく、期待されたキャピタルゲインが実現しない可能性や投資資金を回収できない可能性があります。
(17) 海外子会社について
当社グループは、ベトナムに拠点を置くソフトウェア開発会社を海外子会社として有しており、現地で受託開発事業を営むほか、親会社の開発業務を一部委託しております。したがって、ベトナムの政治・経済・法規制等の変化、戦争・テロ等の社会的混乱や予期し得ない労働環境の急激な変化などが生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当連結会計年度において当該子会社が当社グループ全体の売上に占める割合は限定的であり、本リスクが顕在化した場合に与える影響は軽微と見込んでおります。
(18) 為替の変動について
当社グループの主軸事業であるCLOMO事業は、クラウドを利用してSaaSの形態で企業向けにMDMサービスを提供しており、売上原価にはクラウドサービスの利用料が含まれております。これらの利用料は主に米ドル建てで支払っているため、急激に円安が進行した場合には売上原価が増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループはベトナムに拠点を置く海外子会社を有しており、当該子会社の財務諸表を円貨に換算する際に、為替変動により当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは、パーパスを「笑顔につながる、まだ見ぬアイデア実現の母体となる」、提供価値を「デザイン とエンジニアリングの力で、挑戦を支える」と定義した上で、「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに掲 げ、挑戦的な文化を醸成し、ITを軸とした様々な挑戦を積極的に進めていく企業を目指しております。
事業内容としては、企業、教育、医療の現場で活用されるモバイル端末の一元管理・運用を行うSaaS(Software as a Service)を提供する「CLOMO事業」を主軸に展開しております。また、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)やM&Aを通じた投資活動により、グループの持続的成長とスタートアップ企業の新たな価値創造を支える「投資事業」を運営しております。
組織面では、様々なライフイベントに応じた柔軟な働き方を実現するための各種制度を設け、性別や国籍を問わ ない採用活動により、多様性のある組織づくりを推進しております。また、人材育成のための研修などの成長支援 を通じて、挑戦を積極的に行う文化の醸成に取り組んでおります。このような取り組みの結果、Great Place to Work® Institute Japanが世界共通の基準で従業員の意識調査を行う、「働きがいのある会社」ランキングにおい て、5年連続で働きがいのある会社として認定されております。
また、当社グループは、株主の皆様の日頃のご支援に感謝するとともに、当社株式の魅力を高め、より多くの株 主様に保有いただくことを目的として、新たに株主優待制度を導入いたしました。2025年6月末日を初回基準日として、以降は中間及び期末の年2回実施するものであり、本制度を通じて当社株式の流動性向上や認知度向上につながることを期待しております。さらに、2025年6月には、資本効率の向上等を目的として22万株の自己株式取得を実施するなど、株主還元の拡充及び資本コストの最適化に取り組んでおります。
当連結会計年度の経営成績の状況について、売上高は、CLOMO事業でOEM提供による新規顧客の獲得が進んだことに加え、投資事業で営業投資有価証券の売却による売上が発生し、前年同期比で増加しました。売上原価は、CLOMO事業でソフトウェアに対する顧客からの要望に応じ、一部の軽微な改修を優先した結果、製造経費が増加したことに加え、投資事業における売却原価及び投資先の評価損が発生したことにより、前年同期比で増加しました。販売費及び一般管理費については、医療・官公庁市場におけるCLOMOのサービス認知度向上を目的としたイベント出展や動画広告制作等の広告宣伝費が増加したことに加え、ワンビ株式会社の株式に対する公開買付けに係る諸費用等が発生したことにより、前年同期比で増加しました。さらに、2025年1月に子会社化(みなし取得日:2024年12月31日)したワンビ株式会社の損益計算書を第3四半期連結会計期間から連結対象に含めたことにより、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費がそれぞれ増加しております。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高3,749,791千円(前年同期比27.2%増)、営業利益905,079千円(前年同期比30.8%増)、経常利益877,758千円(前年同期比31.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益558,635千円(前年同期比20.5%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
① CLOMO事業
CLOMO事業においては、2010年から提供を開始したモバイル端末管理ソフトウェアサービス「CLOMO MDM」及びモバイル端末向けアプリサービス「CLOMO SECURED APPs」を事業の主軸に、クラウドを利用したB to BのSaaS事業をサブスクリプションの形で提供しており、2024年12月に公表されたMDM市場(自社ブランド)シェアにおいて、2011年度から14年連続でシェアNo.1を達成しました(注1)。さらに、CLOMOサービスは2024年2月に「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)(注2)」に登録され、政府が求める高いセキュリティ水準をクリアしたサービスとして認められております。
当連結会計年度においては、引き続き、既存及び新規の販売パートナーとの連携を強化し、販売網の強化・拡大を推進してまいりました。また、自社ブランド製品であるCLOMO MDMの販売に加え、株式会社NTTドコモが提供するMDMサービス「あんしんマネージャーNEXT(注3)」へのOEM提供を通じた新規顧客の獲得が進んだことで、着実に顧客基盤が拡大しております。
CLOMO事業のさらなる成長に向けては、顧客基盤の拡大に加えて、ARPU(注4)の向上が重要であるため、オプションサービスの拡充戦略を推進しております。具体的には、セキュリティ対策製品や運用支援サービスなど、MDMの周辺サービスをラインナップし、クロスセルを通じたARPUの向上に取り組んでおります。
製品開発においては、CLOMOサービスのPC資産管理市場でのシェア獲得に必要となるWindows PC向けの機能強化のほか、他社製品との連携、オプションサービスの機能拡充など、顧客のニーズに応えるための開発活動に注力しております。また、当社は2025年3月に、Microsoft CorporationのDevice Compliance Partnerとして「Microsoft Intune(注5)」との連携機能を実装し、「Microsoft Entra ID(注6)」の条件付きアクセスに対応しました。昨今、働き方の多様化やDXの推進によって企業などの組織におけるモバイル端末の活用が急速に拡大しており、多様な端末が業務に利用される環境下で、企業の情報資産を安全に管理する重要性が高まっております。この機能により、IT管理者はCLOMOサービスで管理された端末のみがMicrosoft365のアプリにアクセスできるよう制御でき、より強固なセキュリティ管理が実現可能となります。さらに、国内の競合他社においては、Microsoft Entra IDの条件付きアクセスに対応していない状況(2025年6月末時点の当社調べ)であり、本機能はCLOMOサービスの競争優位性を高めるものと考えております。
また、2025年1月に子会社化(みなし取得日:2024年12月31日)したワンビ株式会社の損益計算書を、第3四半期連結会計期間から「TRUST DELETE」としてCLOMO事業セグメントの連結範囲に含めたことにより、売上高及び営業利益が増加しております。同社はWindows PC向けの情報漏洩対策ソリューションを開発・提供しており、これまでに75万台以上の豊富な導入実績を有しております。同社のグループ参画により、Windows PC向けサービスの強化に加え、販路共有による顧客基盤の拡大を図りながら、CLOMO事業のさらなる成長を目指してまいります。
これらの取り組みにより、導入法人数(注7)は8,620社(前連結会計年度末に比べ1,910社、28.5%増)に達しました。
この結果、売上高は3,628,799千円(前年同期比23.0%増)、営業利益は930,277千円(前年同期比21.9%増)となりました。
なお、サービス別の内訳は次のとおりであります。
② 投資事業
投資事業では、ベンチャーキャピタル子会社である株式会社アイキューブドベンチャーズを通じてアイキューブド1号投資事業有限責任組合を設立し、CVCとして投資活動を推進しております。
主な投資対象はモバイル、SaaS、セキュリティ等、当社事業領域と親和性の高い企業、社会課題解決型企業及び当社グループが本社を置く九州の地場で活動している企業としております。また、当社グループの新たな市場領域への進出及び収益源の創出を図るべく、M&Aを通じた新事業開発にも積極的に取り組んでおります。
当連結会計年度においては、新たに2社へ投資し、累計投資社数は9社となっております。また、アイキューブド1号投資事業有限責任組合における営業投資有価証券の売却による収益を当連結会計期間において計上しました。
この結果、売上高は120,991千円(前年同期は-千円)、営業損失は25,198千円(前年同期は営業損失71,165千円)となりました。
(注)1.出典 デロイト トーマツ ミック経済研究所「コラボレーション/コンテンツ・モバイル管理パッケージソフトの市場展望(https://mic-r.co.jp/mr/00755/)」2011~2013年度出荷金額、「MDM自社ブランド市場(ミックITリポート12月号: https://mic-r.co.jp/micit/2024/)」2014~2023年度出荷金額・2024年度出荷金額予測。
2.政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスを予め評価・登録することにより、政府のクラウドサービス調達におけるセキュリティ水準の確保を図り、円滑に導入できることを目的とした制度です。本制度は「政府情報システムにおけるクラウドサービスのセキュリティ評価制度の基本的枠組みについて」(2020年1月30日サイバーセキュリティ戦略本部決定)に基づき、内閣サイバーセキュリティセンター・デジタル庁・総務省・経済産業省が運営しております。
3.株式会社NTTドコモが提供しているモバイル端末管理サービスです。主に、社員・生徒に貸与したモバイル端末に対して紛失・盗難時に有効な「ロック/初期化」機能や、「カメラ制御」「利用可能アプリの制限」などのセキュリティ機能、「アプリ配信」などのデバイス管理業務効率化機能を備えております。
4.Average Revenue Per Userの略称であり、導入法人数当たりの平均月間単価。
5.Microsoft Corporationが提供するモバイル端末及びモバイルアプリケーション管理のクラウドサービスです。
6.Microsoft Corporationが提供するIDやアクセス管理のクラウドサービスです。
7.TRUST DELETEの導入法人数は含めておりません。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末における財政状態については次のとおりであります。
(資産)
総資産は4,438,748千円となり、前連結会計年度末に比べ829,510千円の増加となりました。これは主に現金及び預金が412,906千円、顧客関連資産が321,400千円、投資有価証券が94,764千円、売掛金が86,667千円、のれんが48,010千円増加し、ソフトウエアが64,471千円、営業投資有価証券が49,087千円、ソフトウエア仮勘定が31,066千円減少したことによるものです。
(負債)
負債は1,577,840千円となり、前連結会計年度末に比べ548,166千円の増加となりました。これは主に契約負債が342,324千円、繰延税金負債が90,162千円、その他流動負債が84,261千円、賞与引当金が12,172千円増加したことによるものです。
(純資産)
純資産は2,860,908千円となり、前連結会計年度末に比べ281,343千円の増加となりました。これは主に自己株式の取得に伴う減少が404,360千円、剰余金の配当に伴う利益剰余金の減少が163,314千円発生し、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加が558,635千円、非支配株主持分の増加が289,604千円発生したことによるものです。
以上の結果、自己資本比率は57.7%(前連結会計年度末は71.2%)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は2,224,033千円となり、前連結会計年度末に比べ412,966千円の増加となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,014,907千円(前年同期は得られた資金823,344千円)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益877,758千円、減価償却費353,375千円、のれん償却額52,628千円、固定資産除却損12,697千円、投資事業組合運用損17,696千円、売上債権の増加額53,861千円、契約負債の減少額7,138千円、営業投資有価証券の減少額49,087千円、営業活動その他の増加額54,936千円、法人税等の支払額349,727千円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は36,305千円(前年同期は使用した資金616,441千円)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出234,863千円、投資有価証券の取得による支出110,000千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入313,486千円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は564,761千円(前年同期は使用した資金452,254千円)となりました。これは主に、配当金の支払額163,301千円、自己株式の取得による支出404,360千円によるものです。
(4) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載を省略しております。
② 受注実績
当社グループで行う事業は、受注から役務提供の開始までの期間が短く、受注状況には重要性がないため記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては、記載を省略しております。
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績の状況」、「(2) 財政状態の状況」、「(3) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。事業運営上必要な運転資金の需要のうち主なものは、当社グループサービスを安定的に運営し、また拡大していくための開発人員及び営業人員の人件費、研究開発に係る費用であります。
④ 目標とする経営指標の状況
a 導入法人数(CLOMO事業)
当連結会計年度末の導入法人数は8,620社(前連結会計年度末に比べ1,910社、28.5%増)となりました(注1)。
営業拠点を通じた地方の販売パートナーとの連携強化や、OEM提供先サービスの成長によって、顧客基盤の拡大が進んでおります。
b ライセンス継続率(CLOMO事業)
当連結会計年度のライセンス継続率は95.5%となりました(注2)。
カスタマーサクセス部門による、ユーザーミーティングの開催や、定期面談、製品活用のためのステップアップセミナーの実施など、エンドユーザーの成功体験を目的とした様々な取り組みの成果が、製品に対する心理的ロイヤルティ向上を後押ししたことで、ライセンス継続率は引き続き高い水準を維持しております。
(注)1.TRUST DELETEの導入法人数は含めておりません。
2.継続率は、当連結会計年度に発生した各月の解約数を前年同月末のライセンス数から控除したライセンス数について、前年同月末ライセンス数で除して算出しております。なお、TRUST DELETEのライセンス継続率は算出に含めておりません。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
当社は、2024年11月29日開催の取締役会において、ワンビ株式会社(証券コード:5622)の株式を金融商品取引法に基づく公開買付けにより取得することを決議し、同日付で、本公開買付けへの応募に合意した株主との間で公開買付応募契約を締結いたしました。その結果、当社はワンビ株式会社の普通株式350,000株を取得し、発行済株式総数に対する所有割合は53.9%となりました。これにより、2025年1月9日付(公開買付けの決済の開始日)で、ワンビ株式会社は当社の連結子会社となりました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表」の「注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。
当連結会計年度の研究開発活動として、新たなサービスを開発するための開発調査や、CLOMO事業の顧客基盤の拡大を目的とした、追加機能開発を行うための開発調査を行いました。
当社グループの研究開発における社内体制としては、CLOMO事業本部に所属する、クラウドやEMM領域、生産性向上のためのシステム開発等に高い専門性を有するメンバーが活動しております。
これらの研究開発活動により、当連結会計年度における研究開発費は