第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は創業以来「学びを革新し、誰もが持っている無限の力を引き出す」というミッションのもと、人間が本来持っている能力を最大限に引き出す支援をするのが私たちの使命と考えております。

 世の中の変化のスピードは早く、個人、組織に求められているのは、学習を通じて変化に適応し、変化をチャンスとしてとらえ、活かすことです。学習は、単なる「勉強」ではなく、人や組織が今までできなかったことをできるようにする手段であると考えております。そのために「学び」という人間にとって必要不可欠なことをテクノロジーによって革新し、人や組織の成長を支援してまいります。

また、「世界一『学びやすく、わかりやすく、続けやすい』学習手段を提供する」というビジョンのもと、これからの時代に求められる「学び」についての各種サービスを展開し、人材育成の新たなスタンダードになるべく事業展開をしていきます。

 

(2)目標とする経営指標等

 当社は、持続的な成長と企業価値向上を目指しており、全社的な主要な経営指標として売上高、営業利益を重視しております。

個人向け資格取得事業(スタディング)では、資格取得に興味がある個人が主なターゲット顧客であり、無料講座をお試し頂いた上でコースを購入して頂く販売形態になっております。売上の計上方法については、コースを購入した際の受講料(現金ベース売上高)を、コースの受講期間で按分し、受講期間中に毎月均等額の売上を計上する形になっております。

そのため、事業運営上重視する経営指標としては、会員による受講料の支払い額の総額となる現金ベース売上高及び新規有料登録会員数(ユニーク数)をKPI(Key Performance Indicators)としております。

法人向け教育事業では、企業を取り巻く環境変化により、従来の集合研修を中心にした階層型の社員教育から、より実践的なスキルを効率的に身に着けるオンライン教育の必要性が高まっております。

法人向け事業で展開するエアコースでは「最も社員教育を効率化できるサービス」になるために、学習管理システム(LMS)やコンテンツを強化し、社員教育のデジタルトランスフォーメーションができるプロダクト力を高め、マーケティング、販売力を強化し、パートナーモデルを確立することを目標にしております。

そのため、事業運営上重視する経営指標としては、法人事業における売上高、エアコースの契約企業数及び平均解約率をKPIとしております。

 

(3)経営環境

 当社をとりまく経営環境については、矢野経済研究所「教育産業白書2020年版」によれば、2019年度の教育産業全体の市場規模(15分野の合計)(注1)は前年度比0.3%増の2兆7,747億円(注2)となり、前年度の市場規模から大きな変更は見られませんでした。2020年度につきましては、緊急事態宣言の発出により、事業活動が制限された4月から5月にかけて多くの業界・企業は大きなマイナス影響を受けたものの、緊急事態宣言解除後、事業活動の本格稼働・再開に伴い、集客及び業績は回復基調にあります。しかしながら、前年と同水準までの回復は見込みにくく、市場規模は2兆6,978億円と2019年度比で2.8%程度の縮小が予測されております。なお、少子高齢化が進む我が国においても、生涯にわたる教育の重要性や企業向けの人材育成のニーズは高く、引き続き教育産業は堅調に推移する傾向が予想されています。

 

個人向け資格取得市場

 当社の個人向け資格取得支援サービス(スタディング)が主な事業領域とするのは、教育産業のうち「資格取得学校市場」ですが、矢野経済研究所「教育産業白書2020年版」によれば、資格取得学校市場の2019年度の市場規模は、前年度比0.5%増の1,860億円と微増しております。2020年度の予測につきましては、新型コロナウイルスの影響により、緊急事態宣言発出後の都市部のスクールでは新規の問い合わせが前年比80%程度まで落ち込むケースも見られ、各社ではオンライン・映像授業にシフトする傾向となりました。市場全体としては、一部資格講座は前年を上回るまでになっているものの、前述したコロナ禍での事業活動へのマイナス影響等により、前年度比8.6%減の1,700億円と予測されています。このように、前年に引き続き教室型の大手資格スクールの売上が減少傾向にあり、より単価の安いWeb受講に受講者が流れている事が挙げられており、当社の提供するスタディングのような、従来の資格スクールよりも安価なWeb講座が存在感を増しています。

 

法人向け社員教育市場

 当社の法人向けの社員教育クラウド(エアコース)が主な事業領域とするのは、教育産業のうち「eラーニング・映像教育市場(B2B向けネットワーク・ラーニング)」であり、2020年度の市場規模は2019年度比0.9%増の690億円となっています。増加の要因としては、新型コロナウイルス感染症の影響によって遠隔教育の需要が高まり、eラーニングのユーザー数を増加させることが想定され、企業の人材育成ニーズの活性化により、eラーニングや動画を使った教育関連サービスの投資増もあって好調に推移しております。

 従来、社員教育の主軸とされてきた集合研修の市場は「企業向け研修サービス市場」に分類されますが、2020年度の市場規模は2019年度比1.3%減の5,200億円と、新型コロナウイルスの感染拡大によるマイナス影響を受ける形で企業業績が悪化、研修予算の削減圧力が高まるとの予想から、マイナス成長を予測しております。しかしながら、各企業のテレワークの推進等により、集合研修による社員教育が難しくなったため、集合研修の代替・補完手段としてeラーニングを活用する動きが見られています。このような状況を考慮すると、今後も企業向けの社員研修や集合研修は、よりeラーニングへシフトしていくことが予想されます。

注1 15分野とは学習塾・予備校、家庭教師派遣、幼児向け通信教育、学生向け通信教育、社会人向け通信教育、幼児向け英会話教材、資格取得学校、資格・検定試験、語学スクール・教室、幼児受験教育、知育主体型教育、幼児体育指導、企業向け研修サービス、eラーニング、学習参考書・問題集を指します。
注2 事業者の売上高ベース

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 安定的な収益基盤の強化

 当社は、今後の持続的な成長を実現するためには、安定的な収益基盤の確保と強化が必須であると考えております。主力の個人向け資格取得事業については、既存講座の内容の改良や、学習システムの強化等を行い、継続的な収益を確保しつつ、販売効率の改善等による収益力の強化を進めてまいります。また長期的視点に基づき、収益性の高い新たな講座を開発するなど安定的な事業基盤の確立を目指します。
② 収益源の多様化

 当社の売上高は、個人向け資格取得事業が大半を占めております。個人向け資格取得事業は順調に伸長しており、また今後も資格取得市場がWeb講座にシフトする構造変化に伴い、当社サービスの優位性を明確にした差別化戦略を実行していくことで十分な成長余力があると考えております。一方で、中長期の経営戦略として考えると、個人向け資格取得事業における資格ごとの減衰や季節要因等のリスクを低減する必要があります。そのため、2018年7月に法人事業部を立ち上げ、法人向け教育事業を本格的に開始いたしました。法人事業部では、企業にニーズの高い社員教育クラウドサービスの販売を軸に、動画制作サービスや、資格講座など関連サービスの販売などを推進してまいります。さらに、社員教育クラウドサービスの競争力を高めた上で、将来的には日本国内だけではなく世界中に事業展開していきたいと考えております。エアコースでは海外現地法人を持つ企業向けに英語版のUI(ユーザーインターフェース)も提供を開始しており、現地法人の利用実績を基にした改善や競争力の強化をした上で、段階的に海外展開を進めてまいります。

③ 技術革新への投資
 当社は「世界一『学びやすく、わかりやすく、続けやすい』学習方法を提供する」というビジョンの実現のため、IT技術を駆使した教育サービスを展開してまいります。そのため、最新の技術を取り込んだサービスの機能強化、機械学習を使い個別最適化した学習方法の提案など、人や組織がより効率的に学習できるようなサービスや機能の開発に投資を行い、競争優位性を高めることで長期的な成長を目指します。

④ 優秀な人材の確保及び育成
 「学びを革新し、誰もが持っている無限の力を引き出す」というミッションに共鳴する優秀な人材を適時採用するとともに、持続的な成長を支える人材の育成を強化してまいります。また、当社の事業領域において市場リーダーシップを構築していくため、新しい顧客価値を創造できる次世代を担うリーダーの育成にも注力してまいります。

 

2【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関するすべてのリスクを網羅しているものではありません。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営環境の変化について

 当社の属するeラーニング教育事業分野は、教育とIT(情報技術)を組み合わせた、いわゆる「EdTech(エドテック)」市場に属しており、従来の通学型・集合型の教育研修からの構造改革が起きており、今後も成長が見込まれております。一方で、今後、新たな事業者の新規参入等により競争が激化する可能性があります。

 当社では、eラーニング教育事業分野での持続的な競争優位性を築くためには、学習システムの開発力、コンテンツの開発力、Webマーケティング力、ローコストオペレーション、AI・データ活用の5つの組織能力が重要と考えており、これらの組織能力を築くための投資・改善に力を入れております。しかしながら、巨大資本等による新規参入により、これらの5つの組織能力を短期的に構築される脅威が発生し、当社が適時かつ適切に対応できなかった場合には、市場での競争力低下や、対応のための支出の増加により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)インターネット利用の普及について

 当社は、インターネットを通じて各種サービスを展開しております。スマートフォンやタブレット端末等、情報機器端末の普及により、インターネット利用環境が引き続き整備されていくとともに、当社の属する市場が今後も拡大していくことが事業展開の基本条件であると認識しております。

 インターネットの普及に伴う障害・新たな規制・その他の要因によって、インターネット利用の発展が阻害された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)技術革新について

 当社が事業展開しているインターネット関連市場では、技術革新や環境変化のスピードが非常に速く、関連事業の関係者はその変化に柔軟に対応する必要があります。

 当社においても、最新の技術動向等を常に把握し、技術を自社サービスに活用できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や環境変化に柔軟に対応できるよう努めております。しかしながら、当社が、優秀な人材の確保を適時適切に行う事ができない場合、また、技術変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)システム障害について

 当社のサービスは、インターネットを介して提供されております。安定的なサービスの運営を行うために、サーバー設備の増強、セキュリティ強化及び監視体制の構築等により、システム障害に対し備えております。

 しかしながら、自然災害やサイバー攻撃、その他何らかの要因等によりシステム障害やネットワークの切断等予測不能なトラブルが発生した場合には、社会的信用失墜等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)前受金について

 当社の行うスタディング事業では、有料講座の購入の際に、受講料をクレジットカード決済、コンビニ支払い、銀行振込等により全額前払いで受領し(現金ベース売上)、この金額を前受金として貸借対照表の流動負債の部に計上します。コースの申込時に全額受講料をお支払いいただき(現金ベース売上)、この金額を前受金として貸借対照表の流動負債の部に計上します。その後、サービス提供期間(講座の受講期間)に対応して月次で会計上の売上として按分しております(発生ベース売上)。そのため、現金ベース売上の拡大に伴い前受金残高が増加し、翌月以降の発生ベース売上の増加に寄与します。したがって、当社は現金ベース売上についても重要な経営指標として認識しておりますが、当初の想定どおり現金ベース売上が推移しない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、過年度及び2020年12月期における当社の現金ベース売上高の四半期ごとの推移は下記のとおりです。

(単位:千円)

 

2015年12月期

2016年12月期

2017年12月期

2018年12月期

2019年12月期

2020年12月期

第1四半期

35,347

51,646

106,933

148,616

197,297

359,511

第2四半期

28,863

56,484

86,193

133,664

193,275

411,547

第3四半期

32,647

72,344

113,178

174,770

293,309

550,662

第4四半期

42,077

92,407

116,857

182,712

278,068

479,432

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(6)業績の季節的変動について

 e-learning・教育事業における個人向け資格取得支援サービス「スタディング」は、原則として申込時に全額受講料をお支払いいただいております(現金ベース売上)。受領した受講料は、一旦前受金として計上され、その後、会計上の売上高がサービス提供期間(コースの受講期間)に対応して期間按分されます(発生ベース売上)。

 当社の主力の資格講座については、試験の終了後にコースの受講期限を設定しておりますが、主力の資格講座の試験日は下期に集中しているため、コースの受講期限についても同様に下期に集中しております。

 受講者が購入したタイミングが年度のどの時期であっても、受講期限は同じタイミングとなるため、主力講座の受講期限の直前にあたる下期の発生ベース売上が最も積み上がる傾向にあります。

 一方、当社では現金ベース売上を獲得するために広告宣伝費を積極的に投下しており、当該費用は当月に計上されます。このことから、上期については発生ベース売上の積み上げが不足がちである一方、主力講座の受講期限が集中する下期については、発生ベース売上が十分に積み上がっているため収益は改善する傾向にあります。

 したがって、広告宣伝費を投下したにも関わらず、十分な現金ベース売上が獲得できなかった場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2019年12月期及び2020年12月期の業績は、下記のとおりです。

(単位:千円)

項目

2019年12月期

2020年12月期

上期

下期

上期

下期

売上高(発生ベース)

333,649

501,616

601,058

921,530

経常損益

△158,789

8,414

△13,091

171,792

当期純損益

△158,935

8,270

△13,237

178,847

 (注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2.2019年12月期の各期間の数値については、EY新日本有限責任監査法人の四半期レビューは受けておりません。

 

(7)大規模な自然災害・感染症等について

 当社は、個人向け資格取得の支援サービスを目的として「スタディング」や法人向けの社員教育研修の支援を目的とした「エアコース」を運営・提供しております。これらのサービスは、Webを介して提供されるため、自然災害や感染症の流行時もサービスを提供することが可能になっております。また、勤務体制としては、テレワークが可能な体制を敷いているため、自然災害や感染症流行時でも事業を継続することが可能であり、今回の新型コロナウイルス感染拡大時においても、影響はでておりません。

しかしながら、今後、大規模な自然災害や・感染症等の発生、拡大等により、長期間にわたって、当社が取り扱っている資格講座の試験が延期、又は中止となったり、法人企業活動が大幅に制限される状態となった場合、当社の経営状態及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)集客方法について

 当社は、個人向け資格取得事業において、顧客となる会員の獲得方法としてWebマーケティング(検索連動型広告)によるユーザーの獲得を主な集客手段として活用しております。検索連動型広告は、ユーザーが検索したキーワードに連動して表示され、広告主は当該キーワードを入札によって購入することになります。現在、検索連動型広告に加え、当社のWebページが検索結果の上位に表示されるようなSEO(Search Engine Optimization)対策や、FacebookなどのSNS(Social Networking Service(ソーシャル・ネットワーキング・サービス))を使った集客方法確立にも力を入れておりますが、仮に検索連動型広告以外での集客手段が構築できず、また検索連動型広告での入札コストが急激に上昇した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)組織規模について

 当社は、従業員30名(2020年12月31日現在)であり、従業員1人当たりの業務領域が広範囲にわたるため、人材育成等の観点では好ましい環境である一方で、事業拡大に伴い急速に業務量が増加していく局面においては、従業員1人当たりの業務負荷が増大し、運営に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、今後、事業拡大に応じた人員増強、内部管理体制の充実を図ってまいりますが、前述した事業拡大に応じた人員増強が計画通り進まなかった場合や内部管理体制の充実がなされなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人材の確保及び育成について

 当社は、継続的な事業拡大のためには、優秀な人材の確保や育成が重要であると認識しております。しかしながら、今後の事業計画において策定される人員採用計画に沿った人材採用が順調に進まなかった場合や、労働力市場の変化、及び経営環境等の変化による人材流出が進んだ場合には、当該影響による業務運営及び事業拡大に支障が生じる可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)知的財産管理について

 当社は、特許権や商標権等の知的財産権に関して、外部の弁理士等を通じて調査する等、その権利を侵害しないように留意するとともに、必要に応じて知的財産権を登録することにより、当社権利の保護にも留意しております。

 しかしながら、当社の認識していない第三者の知的財産権が既に成立している又は今後成立する可能性があり、仮に当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者により損害賠償請求、使用差止請求又はロイヤルティ支払要求等が発生する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)情報セキュリティ体制について

 当社は、受講者の個人情報に加え、資格講座の動画コンテンツなど重要な情報を保有しております。当社では、代表取締役社長を筆頭に、管理担当取締役を情報セキュリティ管理責任者、情報システム部長を情報セキュリティ委員長とした情報セキュリティ体制を構築しております。また、2019年2月にはISMS認証(ISO27001)を取得し情報セキュリティ体制の強化を図っております。しかしながら、万一、個人情報や動画コンテンツへの不正アクセス等により情報漏洩が起きた場合、受講者及び取引先の信頼が失墜し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)経営管理体制の確立について

 当社は、業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図る予定です。しかしながら適切な人的・組織的な対応ができずに、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)特定の人物への依存について

 当社代表取締役社長である綾部貴淑は、当社の設立者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。このため、当社は、特定の人物に過度に依存しない体制を作るために、取締役会等における役員間の相互の情報共有や経営組織の強化を図っております。しかし、現状において、何らかの理由により当人が当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)新株予約権の新たな発行による株式価値の希薄化について

 当社は、当社の役員並びに従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。当社は今後も役員並びに従業員に対するインセンティブとして、新株予約権を付与する可能性があり、それにより株式が新たに発行された場合、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末時点でこれらの新株予約権による潜在株式数は100,000株であり、発行済株式総数2,197,000株の4.6%に相当しております。

 

(16)配当政策について

 当社は、利益配分について、将来の財務体質の強化と事業拡大のために必要な内部留保を確保しつつ、当社を取り巻く事業環境を勘案して、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としております。しかしながら、当社は現在成長過程にありますので、更なる成長に向けた事業基盤の整備や事業の拡充、サービスの充実やシステム環境の整備等への投資に有効活用することが、株主に対する利益貢献につながると考え、創業以来無配としてまいりました。

 将来的には、財政状態及び経営成績を勘案しながら配当を実施していく方針でありますが、現時点において配当の実施時期等については未定であります。

 

(17)税務上の繰越欠損金について

 当社には、税務上の繰越欠損金が存在しております。これは法人税負担の軽減効果があり、今後も当該欠損金の繰越期間の使用制限範囲内においては納税額の減少により、キャッシュ・フロー改善に貢献することになりますが、当社の業績が順調に推移するなどして繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税等が計上されることとなるため、当社の業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度につきましては、個人向け事業においては、前年に引き続きスタディング講座の新規開発や既存講座の改訂、及びサービス内容や品質の向上等に注力してまいりました。講座ラインナップにつきましては、新たに開講した「TOEIC®TEST」、「貸金業務取扱主任者」を加えた全27講座となり、従来までの講座カテゴリの充実に加え、新たに「語学」カテゴリを展開しております。また、2020年5月にはAI(機械学習)を活用し、個人別に最適化された学習プランを作成する機能「AI学習プラン機能(ベータ版)」を中小企業診断士講座においてリリースしました。同機能は、大量の受講者の学習履歴データを活用することで、受講者が最も試験の予測得点が高くなる学習プランを作成します。また、AIがレッスン毎に得点予測モデルを生成するため、従来より精度の高い学習計画を立てることが可能となりました。当社のKPIである累計有料会員数(ユニーク数)も順調に伸長しており、2020年11月には9万人を突破しました。累計有料会員数(ユニーク数)については順調に伸び続けており、現金ベース売上についても好調に推移し、今後の発生ベース売上となる前受金の積み上げに寄与することになりました。今後につきましても、サービス機能充実・新規講座のラインナップ拡大を実施していく方針です。

 法人向け事業につきましても、社員教育クラウドサービス「エアコース」の拡販や動画制作等の新規案件の受注獲得に向けた営業活動を積極的に行ってまいりました。エアコースにおいては、リリースした主な新機能として、2020年4月に大規模企業向けにユーザ管理業務の効率化を実現する「組織階層機能」を、2020年8月には受講者の個々の考えを把握し、個別フィードバック・指導が可能となる「提出課題」機能をリリースしております。また、受け放題となる社員教育研修コース開発にも注力し、新たな動画研修講座のリリースを積極的に行い、2020年12月現在では151コースの動画研修講座が受け放題となりました。また、更なる事業の拡大に向け、積極的に人材採用を行い、法人事業の強化をはかってまいりました。

 このような状況のなか、当事業年度の経営成績は、1,522,588千円(前年同期比82.3%増)となり、営業利益は172,473千円(前年同期は149,504千円の営業損失)、経常利益は158,700千円(前年同期は150,375千円の経常損失)、当期純利益は165,610千円(前年同期は150,665千円の当期純損失)となり、前年同期比で大幅な改善となりました。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は2,194,869千円となり、前事業年度末に比べ1,437,517千円増加いたしました。これは主に現金ベース売上増、および新規上場に伴う公募増資等による現金及び預金の増加1,319,464千円、2021年4月に予定している、本社移転に伴う敷金の支払いによる敷金及び保証金の増加70,860千円、新規システム開発に伴うソフトウエアの増加23,518千円によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債合計は1,215,780千円となり、前事業年度末に比べ528,940千円増加いたしました。これは主に短期借入金の返済に伴う減少30,000千円があったものの、現金ベース売上増に伴う前受金の増加377,337千円、広告宣伝費の増加等に伴う未払費用の増加40,372千円並びに未払金の増加28,260千円によるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は979,088千円となり、前事業年度末に比べ908,576千円増加いたしました。これは、新規上場に伴う公募増資等により資本金及び資本準備金がそれぞれ371,483千円増加、及び当期純利益165,610千円によるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前事業年度末に比べて1,319,464千円増加し、1,830,191千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は724,927千円(前年同期比744.0%増)となりました。これは主に、税前当期純利益158,700千円、現金ベース売上増に伴う前受金の増加額377,337千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は130,038千円(前事業年度は37,920千円の資金の使用)となりました。これは主に、2021年4月に予定している本社移転に伴う敷金及び保証金の差入による支出70,860千円、システム開発に伴う無形固定資産の取得による支出54,774千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果獲得した資金は724,575千円(前年同期比1,166.2%増)となりました。これは主に、新規上場に伴う公募増資、オーバーアロットメントに伴う株式の発行による収入742,716千円等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

  当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

  当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

  当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。

当事業年度

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

前年同期比(%)

1,522,588千円

182.3

 (注)1.当社は、e-learning・教育事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

    2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。

    3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社の当事業年度の経営成績については、個人向け資格取得事業は、2020年3月に「TOEIC®TEST」講座を、同7月には「貸金業務取扱主任者」講座をリリースし、全27講座のラインナップとなりました。累計有料会員数は2020年11月に9万人を達成し、前年同期比で92%増、現金ベース売上高についても前期比87%増となり、通期黒字化を達成し前年同期比で大幅な改善となりました。また、中小企業診断士講座においてAI(機械学習)を活用した学習プランを作成する機能として、「AI学習プラン機能」を新たにリリースしております。同機能は、当社スタディング講座受講者の学習履歴データを活用したAIによる学習支援モデルであり、受講者毎に個別最適化された学習プランを作成することが可能となりました。当社の事業モデルにおいては先行投資となるWeb広告への適切な出稿や告知により、無料会員を獲得しその中から講座を購入(有料会員へ移行)していただくことが重要です。それにより受講料の支払額の総額である現金ベース売上が積み上がり、現金ベース売上はその後、発生ベース売上として売上按分されることになるため、現金ベース売上の推移(貸借対照表上は前受金計上)はそのまま収益に影響を及ぼすことになります。Web広告はGoogleやYahoo!等が提供する検索連動型広告(リスティング広告)への出稿が主でありますが、リスティング広告はいわゆるオークション形式であり、キーワードの入札価格や広告としての品質によって順位付けられて表示されるため、適切な運用が重要です。Web広告では、広告が表示された回数、クリックされた回数、かかった費用、費用対効果などのデータ収集や効果測定が可能であるため、データを分析しながらより効果的な運用が可能となります。

 一方で、広告効果を高めるには、Web広告の効果測定の分析結果から、費用対効果の見極めと、きめ細やかな運用をすることが不可欠となるため、当社では日時でデータをチェックし対応するための人的リソース確保や運用ノウハウの獲得を重視しております。また、集客をリスティング広告のみに依存した場合、運用結果次第では費用が予期せず増大するリスクがあるため、検索での流入を増やすSEO対策や、YouTubeによる動画広告への出稿等資格取得市場における認知度を高めるブランディング施策を展開することで、中長期的に自然流入による集客の増加を図ることを重視しております。したがって、個人向け資格取得事業においては、現金ベース売上を確保していくこと、そのベースとなる集客手段において、費用対効果の改善を含め、より収益性を高めていくことが重要な経営目標であると認識しております。

 当社の売上高は現状では個人向け資格取得事業が大半を占めております。しかしながら中長期の経営戦略を考えたとき、収益源の多様化は重要な経営課題であると認識しております。個人向け資格取得事業における資格ごとの減衰や季節要因等のリスクを低減し、安定した収益を確保するためには、法人企業との取引が不可欠であると考えております。そのため、2018年7月に法人事業部を立ち上げ、法人向け事業を本格的に開始しております。法人事業部では、企業にニーズの高い社員教育クラウドサービス(エアコース)の販売や、社員教育動画制作サービス、個人向け資格取得事業で展開している資格対策講座の法人向け販売などを積極的に推進しており、主力のエアコースでは、社員教育の効率化を目的とした新機能のリリースや、受け放題となっている社員教育研修コースの開発に注力するとともに、法人事業部の人員強化を進めることにより、中長期的には法人事業の成長により収益源を多角化することで経営リスクを低減させていく方針です。

 当社は、ITを駆使し、スマートフォンやタブレット、PCなどの情報端末を活用した学習方法を提供しております。それら情報端末の進化は著しく、また通信環境の改善により、ユーザーは動画を始めとするリッチコンテンツの閲覧や多様な情報の取得が可能となっております。したがってそれら技術革新を正しく理解し、品質の高いサービスの提供に向け高い技術力の確保が重要であると考えております。その実現のため、優秀な技術者の確保を加速するとともに、AIを含む最新の技術知識の獲得を加速させる方針です。

 将来を見据えた人材の確保と育成も重要な経営課題です。当社の持続的な成長を支える優秀な人材の採用(特にエンジニア、講座開発等)を進めるとともに、既存社員の育成を行うことで、当社の事業基盤を支え、次世代を担うマネージャー、リーダー等の育成に注力してまいります。これらを始めとした今後も先行投資については、費用対効果を十分に検討・精査し適宜、実施していく方針です。

 当事業年度において、当社の個人向け資格取得事業のサービス開始から12年、法人設立後10周年を迎えることができ、2018年12月にはブランド名称を従来の「通勤講座」から「スタディング」へと変更しました。これにより、「通勤」という従来のイメージから学生や主婦層等にもターゲットを広げ、生涯学び続けるという人生100年時代を見据えたブランドイメージとしました。来期以降の成長戦略としてブランド認知向上を実行していくことも、当社の重要な経営課題と認識しております。

 新型コロナウイルスの対応と業績への影響については、主に緊急事態宣言が発令された第2四半期会計期間において、新型コロナウイルスのプラス要因による需要増が顕著に発生しました。当事業年度の後半はその影響は徐々に下がっているものの、一定の需要増がある状態は継続しており、リスク要因と想定していた、試験延期等による学習意欲低下や、競合との競争の増加、法人企業各社における研修予算の削減等については、これまでは大きな影響は出ていないものの、引き続き注意が必要と考えております。2021年12月期の計画においては、今後、新型コロナウイルスのプラス要因は徐々に収まっていくという前提を置き、プラス要因が収束した状況でも成長できるように、新規講座の開発、既存講座の強化、認知度向上のためのマス広告(テレビCM)等への投資、AIのさらなる活用やシステム開発によるサービス力の強化等、売上拡大につながるための施策を積極的に展開してまいります。事業運営については、一定の在宅勤務比率を継続しつつ、法人販売でのWeb商談、Web会議等による業務効率化、社内管理体制や法令順守、コンプライアンス体制等をより充実させてまいります。常に顧客目線を心掛け、「世界一『学びやすく、わかりやすく、続けやすい』学習手段を提供する」というビジョンのもと、顧客への提供価値および企業価値を高める方法を追求してまいります。そしてそれこそが、私たちのミッションである「学びを革新し、誰もが持っている無限の力を引き出す」を達成することにつながると考えております。

 

 

② 資本の財源及び資金の流動性

 当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、広告宣伝費等の営業費用であり、これらに必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて最適な方法による資金調達を行う予定であります。

なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,830,191千円であり、有利子負債の残高は116,221千円であります。

 

③ 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社の財務諸表を作成するにあたって採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。