第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、「あらゆる産業において、ソフトウエア技術が生み出す新たな付加価値を通じて、お客様に安心と満足そして豊かさを提供すると共に、社員を大切にし、株主様に貢献する」ことを企業理念としております。この企業理念を基本とし、高度なソフトウエア技術力によりお客様の課題を解決し、お客様の製品や商品・インフラ開発を支援しております。また、社員全員が当社グループを愛し、自ら成長し続ける会社環境を提供し、社員一人ひとりが希望とやりがいが持てる会社を実現します。そして、地域社会と共に発展できる地域のコア企業としての役割を担います。

 

(2) 経営戦略等

 当社グループを取り巻く事業環境は、「2025年の壁」をはじめとするDX化の流れに伴う旺盛なIT開発ニーズの一方で、慢性的なIT人材の不足という大きな潮流の中で、難しいかじ取りを迫られております。このような中で、当社グループは、DXソリューションカテゴリー、半導体ソリューションカテゴリー、AIソリューションカテゴリーという3つのカテゴリーの構成による事業拡大に取り組むとともに、以下の戦略を推進することで、事業の発展、拡大及び企業価値向上を図ってまいりました。

①顧客ニーズに即したソフトウエア開発推進

 慢性広域的な人手不足の中で、お客様のDX推進に応えるための、最新要素技術を活用したソリューションの提供が求められております。当社グループでは、社会インフラ、エネルギー、製造業など日本の骨格となる産業への貢献を果たすため、ユーザーエリアの拡大と開発バリューチェーンの多様化を推進してまいりました。

②半導体業界への深耕と新技術の研究開発

 世界的な半導体不況の次を見据え、国家プロジェクトによる国内半導体産業拡大への積極的な関与を実現するため、特定の半導体メーカーに偏らない次の顧客基盤を確立してまいりました。また、大学等との共同研究等を通じた新技術の研究開発を軸とした新しい収益の柱の構築を図ってまいりました。

③持株会社化とM&Aの実現

 持株会社化による大胆な組織改革を通じ、生産性の向上と経営の効率化を図るため、2024年6月1日より、ティアンドエスグループ株式会社を持株会社とする新たな体制に移行いたしました。人材の積極採用とスキル創出のための人材積極投資に加え、M&Aを通じた規模拡大を目指しております。

 

(3) 経営環境

①DXソリューションカテゴリーを取り巻く環境

 近年ソフトウエアは、組込み機器やコンピュータに代表されるハードウエアの進歩と共にその需要は増大してきました。さらに今後は、ITを中心にサービスや価値が再設計される時代に入ると認識しております。このため、AIや自動運転、ロボット等に搭載されるソフトウエアが、ハードウエアを決定する「ソフトウエア中心」の時代になるといわれ、益々ソフトウエアの需要が拡大すると予想しております。

 国内ソフトウエア市場は、右肩上がりの成長を持続する反面(*1)、ソフトウエア開発を支えるIT人材の不足が予想されます(*2)。つまり、日本のソフトウエア市場は益々拡大を重ね、当社グループのようなソフトウエアを専門として事業展開している企業の需要が益々高まっていき、一方で、IT人材をいかに獲得するかがこれらの企業の大きな課題になると考えております。

②半導体ソリューションカテゴリーを取り巻く環境

 半導体市場は、需給バランスの影響により「半導体サイクル」といわれる好不況の大きな波が存在しますが、全体としてはプラスの成長を維持しております。当社グループ調べによると、製品別半導体全市場のうち、約1/3をメモリデバイス(注1)が占め(*3)、DRAM(注2)とNAND Flash メモリ(注3)がその市場の中心となっております。特にNAND Flashメモリは、主にスマートフォン等の記憶デバイスとして採用されておりますが、近年のIoTによるデータ量の急激な増大に伴い今後も市場が拡大すると当社グループ独自に予想しております。
 2024年は世界的に旺盛なAI関連投資を背景にメモリや一部ロジック製品の需要が急拡大しており、2025年はAI関連の需要に加え、環境対応や自動化等の成長領域を念頭に、半導体市場の継続的な成長が期待されています(*4)。このような背景のもと、当社グループの得意先であるキオクシア株式会社も新たな製造棟の稼働に備えております。

 

 

③AIソリューションカテゴリーを取り巻く環境

 当社グループが今後注力する市場である、AI(人工知能:Artificial Intelligence)技術を利用したロボット、自動運転、IoT等は、今後の企業活動で最も重要な開発領域と見ており、事業の成長を担う市場としては妥当であると考えております。

 AI技術は、ロボット等の産業用機械、自動運転に代表される輸送機関連のほか、様々な民生用機器、医療、社会インフラなど、その用途は多岐にわたります。とりわけ、画像認識をはじめとするセンシング技術の応用は拡大を続けています。

 AI技術の応用は、適切なAIアルゴリズムの実装が鍵を握ります。全世界の企業や研究機関がこぞってAIアルゴリズムを開発しておりますが、同時に製品開発に相応しいアルゴリズムを選択し、実装、評価する需要は益々高まっております。適切なアルゴリズムをベースにしたアプリケーション開発を行うことは、今や機械、電機メーカーに限らず、あらゆる産業分野で必要なものと認識されつつあります。

 

(4) 目標とする経営指標

 当社グループは、短期的には事業規模を表す売上高と本業の収益力を表す営業利益の伸びを重視しております。また、中長期的には自己資本利益率(ROE)を重視しながら安定した事業運営を行うと共に事業拡大と超過利潤の獲得を目指し、企業価値の継続的向上に努めてまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、その経営方針にある「あらゆる産業において、ソフトウエア技術が生み出す新たな付加価値」の創造実現のため、人材面、技術面の拡充と経営基盤の強化を図る必要があると認識しております。顧客のニーズにきめ細かく対応する顧客ファースト実現のためには優秀なIT人材の確保と育成が、AI関連技術の獲得のためには高度なソフトウエア技術力の確保がそれぞれ必要であります。また、これらを実現するための経営基盤として、品質管理体制や経営管理体制の強化を行っていくことが課題であります。具体的な課題と対応方針は以下のとおりであります。

 

 <顧客ニーズに即したソフトウエア開発推進のための課題>

①IT人材の確保と育成

 優秀な技術者の確保は、お客様のすべてのニーズをキャッチアップし、会社を発展させる上で不可欠です。即戦力となる中途採用だけでなく、継続的な新卒採用をより強化し、優秀な技術者の確保に努める必要があるとともに、パートナー企業(BP)との協力体制を継続的に維持し、安定的に技術者を受け入れることも重要です。

 また、IT人材を安定的に確保することと、継続的にそのスキルを向上させることは、当社グループにとっての成長の両輪です。当社グループでは、専門経験のない人材も含め広く採用の門戸を開いております。人材の育成に関しては、新卒入社時に数か月に及ぶ専門知識に関する社内教育を実施し、その後も長期にわたるOJTや教育研修支援、資格手当制度等を実施することで、優秀な技術者の戦力化を目指しております。

②事業領域及び顧客層の拡大

 全産業にわたる広域的な人手不足の中で、お客様のDX推進に応えるための最新要素技術を活用したソリューションの提供は、当社グループが行える最大の社会貢献であり、かつ最大のビジネスチャンスでもあります。社会インフラ、エネルギー、製造業など日本の骨格となる産業への貢献を通じ、ユーザーエリアの拡大と開発バリューチェーンの多様化を推進してまいります。

③品質向上と生産性向上

 品質向上において最も重要なポイントは、ユーザ要求仕様の明確化であり、開発工程の初期段階にユーザ要求仕様を確定することを徹底すると共に、基本設計書・詳細設計書・テスト仕様書作成の徹底化を図ります。プログラム製造工程においては、機能の分割と機能を共有化するための定義を明確化し、機能ごとの作業分担により生産性の向上と品質不良の極小化を目指しております。

 また、生産性及び品質の向上を図るばかりではなく、ソフトウエア処理の高速化やプログラム不良件数のゼロ化等、信頼性の向上も同時に目指すため、優秀な技術者の最適配置を推進しております。

 

 <半導体業界への深耕と新技術の研究開発のための課題>

④国内半導体産業拡大への積極的な関与

 近年の国家プロジェクトによる国内半導体産業拡大に対し、積極的な関与を行ってまいります。既存の顧客層への深耕に加え、特定の半導体メーカーに偏らない次の顧客基盤の確立も進めてまいります。そのため、半導体関連産業のサプライチェーンが集積する地方における現地採用を強化し、当社グループが得意とする半導体分野での社会貢献を進めてまいる所存です。

⑤高度ソフトウエア技術力の確保

 AIや画像処理の分野において、他社との差異化を行うためには類まれな能力の技術力が不可欠です。当社グループは、博士号を取得している複数名の技術者を中心に、その人的チャネルを駆使して人材確保に当たります。

 また、新しい技術の獲得に関しては、大学等との共同研究開発を継続的に推進し、新しい収益の柱を構築することを目指してまいります。

 

 <持株会社化とM&Aの実現のための課題>

⑥持株会社化とM&Aの実現

 1985年の前身企業における創業から数えて間もなく40年、事業規模の拡大とともに、当社グループ内におけるビジネスモデルの多様化が進んでまいりました。このような中で、今後の次の成長のためには、ビジネスモデルに応じた損益マネジメント、人材マネジメントを通じ、機動的できめの細かい経営の実現が課題であると考えております。今後の新規事業創出やM&Aによる事業拡大を柔軟に実現するためにも、事業会社の独立性を高めつつ、かつグループとして効果的な資源配分と効果的なコーポレート・ガバナンスを行うためには、持株会社体制への移行が最適と判断しております。

 

用語解説

   本項「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」等において使用しております用語の定義について以下に記します。

用語

用語の定義

注1

メモリデバイス

コンピュータにおいて、プログラムやデータを記憶する装置のことをいう。DRAM、SRAM、NAND Flashメモリ等がある。

注2

DRAM

Dynamic Random Access Memoryの略で、半導体メモリ(半導体記憶素子)の一つ。 読み出し/書き込みが自由に行えるRAMと呼ばれる半導体メモリの方式の一種であり、コンデンサーに電荷を蓄えて情報を記憶するタイプの半導体メモリのことをいう。

注3

NAND Flashメモリ

NAND Flashメモリとは、Flashメモリ(電界効果トランジスタでホットエレクトロンを浮遊ゲートに注入してデータ記録を行う不揮発性メモリ)の構造・動作原理の一種で、最初に発明されたNOR型Flashメモリに次いで考案された方式である。NOR型Flashメモリと比べて回路規模が小さく、安価に大容量化できることが特徴である。従来のフロッピーディスクやハードディスク(HDD)に代わるPC用のUSBメモリやソリッドステートドライブ(SSD)、デジタルカメラ用のメモリカード、携帯音楽プレーヤー、携帯電話などの記憶装置として使用される。近年では、サーバ用HDDに比べ速度が速いことから、クラウドサーバの記憶装置として用いられている。

 

*1 受注ソフトウエアを含む国内情報サービス全体の市場は、みずほ銀行産業調査部「日本産業の中期見通し(2023年12月7日)」※1 によれば、2024年以降も拡大が見込まれることが記述されています。

※1 みずほ銀行産業調査部「日本産業の中期見通し(2023年12月7日)」

 https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1073_all.pdf

 

*2 経済産業省「IT人材需給に関する調査(2019年3月)」※2によれば、ソフトウエア開発を支えるIT人材の不足が予想されております。この報告書の試算結果は、今後のIT需要の伸びをそれぞれ低位(需要伸び率1%)、中位(需要伸び率2-5%)、高位(需要伸び率3-9%)の3段階でIT人材の不足を予想しています。これによると、2019年時点において、約26万人が不足していると言われ、2030年までに16万人から79万人のIT人材不足が予想されています。

※2 経済産業省「IT人材需給に関する調査」2019年3月

 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf

 

*3 製品別世界のIC市場予測※3から、2025年の市場全体の出荷額は5,884億ドルであり、そのうちメモリは約2,042億ドルと市場のほぼ1/3をメモリが占めていることになります。

※3 JEITA(電子情報技術産業協会)世界半導体市場統計(2024年春季半導体市場予測について)

 https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20240604WSTS.pdf

 

*4 半導体市場は、需給バランスの影響により「半導体サイクル」といわれる好不況の大きな波が存在しますが、JEITA(電子情報技術産業協会)世界半導体市場統計(2024年春季半導体市場予測)※4によれば、2024年は前年比+16.0%、2025年は前年比+12.5%となることが予測されております。2024年は世界的に旺盛なAI関連投資を背景にメモリや一部ロジック製品の需要が急拡大しており、2025年はAI関連の需要に加え、環境対応や自動化等の成長領域を念頭に、半導体市場の継続的な成長が期待されています。

 また、日本の半導体市場は、2024年に6.8兆円、2024年には7.5兆円になると述べられています。

※4 JEITA(電子情報技術産業協会)世界半導体市場統計(2024年春季半導体市場予測について)

 https://www.jeita.or.jp/japanese/stat/wsts/docs/20240604WSTS.pdf

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、経営環境が変化する中において、永続的な発展と成長、持続的な企業価値の最大化を目指しております。これらを達成するため、新技術の獲得と高付加価値のソフトウエアの提供を通じ、お客様とその先にある社会課題を解決することが当社グループの持続的な成長につながると認識しております。このため、社会全体のサステナビリティに関する様々な問題への対応は重要な経営課題と認識しており、全社戦略の3つの柱をSDGsへの貢献と関連付け取り組んでおります。子会社を含めたサステナビリティに関する対応については、当社取締役会にて適切に取り扱うこととしており、関連するリスクはグループ全体を管轄するリスク・コンプライアンス委員会での審議を経て、また、重要な事項については経営会議の審議を経て取締役会で決議することとしています。

 

(2)人的資本に関する戦略

①人材育成方針

 当社グループは、「社員全員が当社グループを愛し、自ら成長し続ける会社環境を提供し、社員一人ひとりが希望とやりがいが持てる会社を実現すること」を経営方針に掲げております。当社グループの永続的な発展のためには高度IT人材の確保・育成を含む人材への積極的な投資が不可欠であり、重要な経営課題として認識しております。

 

②社内環境整備方針

 当社グループは、優秀な人材の採用と教育を強化するため、2022年12月に人材開発室を設置いたしました。新入社員に対しては、対面及びオンライン双方での新人研修とOJTを取り入れ、技術力、提案力、プロジェクト推進力などの基礎力強化に努めております。また、全社員対象のEラーニングや管理職向け研修等を効果的に取り入れた人材育成環境の整備を進め、技術面だけでなく、従業員一人ひとりの成長を支援する中長期的な人材育成プログラムの確立を目指してまいります。

 

(3)リスク管理

 主要なリスク項目については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

また、当社グループでは、「リスク管理規程」を整備し、全社的にリスク防止に努めております。リスクの全社的統括管理機関としてグループ全体を管轄するリスク・コンプライアンス委員会を設置しており、原則として、四半期毎に委員会を開催し、リスクの評価、対策等サステナビリティを含めた広範なリスク管理に関して協議し、具体的な対応策を検討し、関係する部署や委員会において対応しております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、「(2)人的資本に関する戦略」において記載した、人的資本多様性の確保に係る人材育成及び社内環境整備に取り組んでおります。このうち、次世代育成支援対策推進法及び女性活躍推進法に基づく行動計画における当社グループの指標及び目標、実績は以下のとおりです。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

正社員に占める女性比率

2027年3月31日まで25以上

23.2

有給取得率(※)

2027年3月31日までの間60以上を維持

58.8

(※)当連結会計年度は決算期変更に伴い10カ月の変則決算となっていますが、有給休暇付与日の変更は行っていないため2024年9月末までの1年間の数値を記載しております。

 

 また、当社グループでは人材の多様性の観点から、障害者雇用を積極的に推進しております。2024年度における法定雇用率は2.5%と定められており、ティアンドエス株式会社の期末時点における常用雇用者数318人に基づく法定雇用人数は7人です。当連結会計年度末においては、障害者を7人雇用しており法定雇用率を満たしております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済動向及び市場環境による影響

 経済動向や情報サービス市場環境の変動により、企業の情報システムへの投資抑制、予想を超える価格競争の激化、技術革新への対応が遅れる等の事態が発生した場合、また、法律、税制、会計制度等の各種規制・制度や電力、通信等の社会基盤の変動により事業環境が悪化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)特定顧客への依存度について

 当社グループは、キオクシアグループ、東芝グループ、日立グループを重要顧客として長年にわたり取引を継続しております。従って、当該顧客の事業方針、経営状況等が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

相手先

前事業年度

(自 2022年12月1日

  至 2023年11月30日)

当連結会計年度

(自 2023年12月1日

  至 2024年9月30日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

キオクシアグループ

1,028,103

29.9

733,885

24.6

日立グループ

783,543

22.8

689,452

23.1

東芝グループ

672,900

19.5

569,566

19.1

 

(3)見積り違い及び納期遅延等の発生

 案件の作業工程等に基づき必要工数やコストを予測し、見積りを行っておりますが、仕様変更や追加作業に起因する作業工数の増大により実績が見積りを超えた場合、低採算又は採算割れとなる可能性があります。また、予め定めた期日までに顧客に対して作業を完了・納品できなかった場合には損害遅延金、最終的に作業完了・納品ができなかった場合には損害賠償が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)人材の確保について

 当社グループの事業は、技術専門性及び人間性に富んだ技術者により支えられており、優秀な人材の確保と育成及び、定着率が最も重要な命題となります。人材の確保に関しては、IT開発事業の伸びからIT人材不足が懸念され中長期的に困難になることが予想されます。採用において計画どおり優秀な人材を確保できない場合や離職により技術者が大幅に減少した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)先進AI半導体に関する研究開発について

 当社グループは、大学等との共同研究等を通じ、先進AI半導体に関する研究開発を行っております。

 当社グループのAIソリューションカテゴリーに属する事業は、当該共同研究等の成果に依存する部分があります。そのため、本研究の成果が想定どおりに進まない場合には、本カテゴリーに属する事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)法的規制について

a. 下請代金支払遅延等防止法(下請法)

 当社グループが委託先に対し業務の一部を外注するにあたり、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の適用を受け、3条書面の交付、5条書類の作成等、下請代金支払遅延の防止が求められる場合があります。下請法に違反した場合、公正取引委員会による勧告・指導に加え、罰金刑が科されるおそれがあります。当社グループでは、コンプライアンス規程を制定し、当社グループの役職員が遵守すべき法的規制の周知徹底を図り、内部通報制度の導入等によって速やかに法令違反行為等の情報を収集する体制を構築しております。しかしながら、法令に抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用が著しく失墜し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

b. 労働者派遣法及び関係諸法令

 当社グループの事業の一部である技術者派遣事業は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という)」に基づいて事業を営んでおり、労働者派遣法及び関係諸法令による法的規制を受けております。当社グループでは、コンプライアンスを徹底し、リスク・コンプライアンス委員会、内部監査により関係諸法令の遵守状況の把握・監視等に努めており、事業の遂行に支障を来す要因は発生しておりません。しかしながら、労働者派遣法に定める派遣事業主としての欠格事由に該当した場合や、法令に違反する事由が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、将来これらの法令ならびに関連諸法令が社会情勢の変化などに伴って、改正や解釈の変更等があり、それらが当社グループの事業運営に不利な影響を及ぼすものであった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

会社名

許認可等の名称

有効期限

登録の交付者

取消事由等

ティアンドエス株式会社

労働者派遣事業許可

2027年5月

厚生労働大臣

労働者派遣法第6条に定める欠格事由(注)に抵触した場合

TSシステムソリューションズ株式会社

労働者派遣事業許可

2027年10月

厚生労働大臣

労働者派遣法第6条に定める欠格事由(注)に抵触した場合

(注) 労働者派遣法第6条に定められている主な欠格事由としては、当社グループ役員又は当社グループ派遣元責任者が禁固以上の刑や関係諸法令に違反し罰金刑に処せられ5年を経過していない場合、成年被後見人、被保佐人又は破産者となり復権を得ていない場合、労働者派遣事業の許可取り消し後5年を経過していない場合等であります。

 

(7)業務請負契約に基づく瑕疵担保責任について

 当社グループが業務請負契約で行う開発サービスについては、設計・開発を請負って完成すべき業務の遂行や成果物に対して対価を受領しております。したがって業務請負契約で完成すべき業務や成果物に係る瑕疵担保責任や製造物責任などの追及を受ける可能性があるため、当社グループでは、これら瑕疵担保責任や製造物責任に係るリスクを軽減するために、個別契約(注文書)において、完成すべき業務や成果物の仕様、検収方法を明確に定義しております。しかし、当該追及を受けた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報管理について

 当社グループの事業においては、顧客企業の製品開発やシステム開発業務に従事しており、多くの個人情報・機密情報を扱っております。当社グループはISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の取得等により、規程の整備と共に全従業員に対して入社時及び定期的に個人情報・機密情報の取扱いに関する啓発・教育・周知徹底を行い、また内部監査を実施することにより情報管理の強化を行っております。しかしながら、取引先内(顧客企業内)にて勤務する技術社員が知り得た顧客情報や個人情報が故意又は過失により外部へ流出し、当社グループの管理責任問題、法律的リスク(訴訟等)、風評被害等が生じた場合、当社グループの社会的信用等の失墜や多額の賠償金支払い等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

登録の名称

登録の内容

有効期限

ISMS認証基準

ISO/IEC 27001:2013

情報セキュリティマネジメントシステム

登録番号:IR0227

2025年10月31日

 

(9)法規制等に関するリスク

 当社グループは、各種法令・規制等の遵守は極めて重要な企業の責務と認識の上、法令遵守の徹底を図っております。しかしながら、こうした対策を行ったとしても当社グループの事業活動に関連して、第三者から訴訟や法的手続が行われるリスクを完全に回避することはできず、これらの結果によっては、信用失墜若しくは予期せぬ多額の損害賠償責任を負うなど当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社グループでは、役員、従業員及び社外協力者に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。本書提出日の前月末時点において、これらの新株予約権による潜在株数が43,200株であり、発行済株式総数の0.6%に相当しております。

 これらの新株予約権が行使された場合には、当社株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度は決算期変更(11月30日から9月30日へ変更)に伴い、10か月の変則決算となっております。また、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期との比較は行っておりません。

 

①財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は2,774,116千円となりました。主な内訳は、現金及び預金2,013,957千円、売掛金432,353千円、未収入金258,832千円であります。固定資産は146,982千円となりました。主な内訳は、繰延税金資産67,017千円であります。

 この結果、総資産は2,921,098千円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は424,302千円となりました。主な内訳は、買掛金164,514千円、未払法人税等74,347千円、未払消費税等72,916千円であります。固定負債は60,985千円となりました。内訳は、退職給付に係る負債60,985千円であります。

 この結果、負債合計は485,287千円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は2,435,811千円となりました。主な内訳は、利益剰余金1,901,275千円、資本剰余金567,843千円であります。

 この結果、自己資本比率は83.4%となりました。

 

②経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかな景気の持ち直しがみられるものの、資源価格の上昇、為替相場の変動など先行き不透明な状況が続いております。企業活動においては、在宅勤務やオンラインミーティングの活用、クラウドサービスの活用、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など、ITの重要性や業務のIT化の流れはますます拡大しており、AI関連の需要も伸びていくことが期待されます。

 なお、当連結会計年度は決算期変更(11月30日から9月30日へ変更)に伴い、10か月の変則決算となっております。また、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前年同期との比較は行っておりません。

 当社グループの事業は、システム開発及びその関連サービスの単一セグメントですが、事業の構成を3カテゴリーに分け事業展開しております。従来、ソリューション、半導体、先進技術ソリューションの3カテゴリー構造としておりましたが、当期首より、DXソリューション、半導体ソリューション、AIソリューションの3カテゴリー構造に変更しております。上記のような経済環境のなか「DXソリューションカテゴリー」では重電、社会インフラ、業務系システム等の領域において、大手企業顧客を中心に情報システムの開発及びITサービス事業の拡大を図ってまいりました。「半導体ソリューションカテゴリー」では半導体関連企業向けに、工場内システムの開発、保守及び運用サービスの拡大を図ってまいりました。「AIソリューションカテゴリー」ではAI関連製品を開発中のお客様向けのソリューション提供の拡大を図ってまいりました。カテゴリー毎の売上高は下記のとおりであります。

・DXソリューションカテゴリー

 ソリューションカテゴリーの当連結会計年度の売上高は1,806,553千円となりました。

 主要取引先に加え、その他の既存取引先及び新規取引先からの受託開発案件の受注が堅調に推移しました。

・半導体ソリューションカテゴリー

 半導体カテゴリーの売上高は887,019千円となりました。

 半導体メーカーの業績回復の遅れにより、当社売上の一部が翌期にずれ込む等、やや軟調に推移したものの安定した受注がありました。

・AIソリューションカテゴリー

 AIソリューションカテゴリーの売上高は286,918千円となりました。

 AI、画像認識、ハードウエア制御等の高度技術を駆使したサービスや最先端技術に関わる研究開発支援サービスが計画通り推移いたしました。

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は2,980,491千円、営業利益は519,799千円、経常利益は520,496千円となり、特別損失として投資有価証券評価損50,399千円を計上したことなどにより親会社株主に帰属する当期純利益は321,357千円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、法人税等の支払、配当金の支払等の要因により一部相殺されたものの、税金等調整前当期純利益470,096千円の計上等により、当連結会計年度末には2,013,957千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は363,886千円となりました。これは主に、法人税等の支払額157,744千円があったものの、税金等調整前当期純利益470,096千円があったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は21,592千円となりました。これは主に投資有価証券の取得による支出20,000千円があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は49,601千円となりました。これは主に配当金の支払額49,509千円等があったことによるものです。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当社グループの事業は、システム開発及びその関連サービスの単一セグメントですが、当連結会計年度のカテゴリー別販売実績は次のとおりであります。

カテゴリーの名称

当連結会計年度

(自 2023年12月1日

 至 2024年9月30日)

前年同期比(%)

DXソリューション(千円)

1,806,553

半導体ソリューション(千円)

887,019

AIソリューション(千円)

286,918

合計(千円)

2,980,491

 (注)1.2024年9月期より連結財務諸表を作成しているため、前年同期比については記載しておりません。

2.半導体カテゴリーには東芝グループ等キオクシアグループ以外への販売実績も含まれております。

3.当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

当連結会計年度

(自 2023年12月1日

至 2024年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

キオクシア(株)

439,355

14.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の財政状態については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであり、純資産の期末残高は2,435,811千円となりました。その結果、自己資本比率は83.4%、自己資本利益率(ROE)は13.2%となりました。

売上高は2,980,491千円、営業利益は519,799千円となりました。これは、人材採用や持株会社化に伴う費用が発生したものの順調に推移している結果であります。特別損失として投資有価証券評価損50,399千円を計上した結果、税金等調整前当期純利益は470,096千円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は321,357千円となりました。

当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであり、現金及び現金同等物は、期末残高は2,013,957千円となりました。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、将来の事業活動に必要な資金を確保し、適切な流動性を維持することを基本方針としております。現在、金融機関からの借入は行っておりませんが、運転資金及び設備投資等の調達につきましては、自己資金を充当することを原則としながら、必要に応じて銀行借入による調達を行う予定であります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 

(1)共同研究契約

相手方の名称

契約締結日

契約期間

契約内容

国立大学法人

東北大学

2019年6月27日

2023年4月1日変更

2019年7月1日から

2024年3月31日まで

次世代メモリの制御ソフトウエアに関する共同研究

国立大学法人

東北大学

2019年8月1日

2023年4月1日変更

2019年8月1日から

2024年3月31日まで

次世代メモリの応用ソフトウエアに関する共同研究

国立大学法人

東北大学

2021年8月18日

2023年10月10日変更

2021年10月1日から

2024年9月30日まで

物体認識向けAIプロセッサにおける高効率高性能アルゴリズムの研究

 

(2)コミットメントライン契約

契約締結先

株式会社りそな銀行

借入極度額

5億円

契約締結日

2022年5月31日

契約期間

3年

契約形態

相対型コミットメントライン

資金使途

運転資金

担保の有無

無担保・無保証

 

(3)吸収分割契約

 当社は、2024年1月30日開催の取締役会において、当社100%子会社との吸収分割契約を締結すること(以下、係る吸収分割契約に基づく吸収分割を「本吸収分割」という。)を決議し、2024年2月28日開催の第8回定時株主総会において承認可決され、2024年6月1日付で本吸収分割の効力が発生しております。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発はAIソリューションカテゴリーの基礎研究となっており、当連結会計年度の研究開発費の総額は14,619千円であります。当社グループは国立大学法人東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター(以降、CIES)及び東北大学工学研究科と共同研究を進め、以下の3つのテーマの研究開発を行っております。

 

当社グループの研究開発はスピントロニクス技術を用いた次世代メモリとAIとの融合をテーマとしております。現在CIESで研究開発されているスピントロニクス技術を用いた次世代メモリは、世界トップレベルの技術であり(*1)、これを搭載したマイコンやAIプロセッサの消費電力は、従来のプロセッサに比べ性能を落とすことなく1/100~1/1,000に低減できるという実績が報告されております(*2)。近年の自動運転・画像処理・IoT機器・ロボット産業といった分野の急成長には、低消費電力化が不可欠です。CIESの次世代メモリ及びそれを搭載したチップの研究成果は、上述した分野の急成長の実現に大きく貢献することが期待されています。CIESの取り決めにより、共同研究への参加企業は「1業種1社」とされており、当社グループはこの研究活動の中で、特にこれらに関連したソフトウエアの研究開発全般を担当します。当連結会計年度は、以下のテーマを中心に研究開発活動を行っており、当テーマの共同研究契約は当連結会計年度末までに期間満了を迎えています。

 

(1) スピントロニクス技術を搭載した次世代メモリのエラー訂正技術の研究開発

スピントロニクス技術を搭載した次世代メモリは、既存のメモリと同様に書き込み・読み込み時のビット反転エラーが発生することがあります。このエラービットを訂正するには『誤り訂正符号』と呼ばれるエラー訂正技術が有効です。これは、元の情報に訂正用の情報を付加して冗長性を持たせることによりエラーを訂正する技術です。エラー訂正符号は既にフラッシュメモリなどで利用されていますが、次世代メモリはフラッシュメモリよりも高速な動作が期待されているため、当社グループではエラー訂正符号が高速かつ安定に動作するアルゴリズムの研究開発を行いました。

 

(2) スピントロニクス技術搭載AIプロセッサ用アプリケーションソフトウエアの研究開発

自動運転や産業用機器、IoT機器に搭載されるAIプロセッサは消費電力が少なく応答が速いことが期待されておりますが、現状ではまだ開発途上のステージにあります。消費電力と応答に優れたスピントロニクス技術を用いた次世代メモリをAIプロセッサに搭載することで、これまでの機器よりもさらに省エネ・小型化・高機能化を実現することが可能であります。当社グループでは、次世代メモリを搭載したAIプロセッサを最大限に活かすためのソフトウエア開発技術の研究開発を行いました。

 

(3) 物体認識向けAIプロセッサにおける高効率高性能アルゴリズムの研究

AIの主な活用先として、音声認識、画像認識等が挙げられます。その中で、物体認識の応用範囲は広く様々なアプリケーションで用いられることが知られています。本研究では、スピントロニクス技術を用いた次世代メモリを搭載するAIプロセッサに適した省電力・高性能な物体検出アルゴリズムの研究開発を行いました。

 

*1 CIESは、世界初となる各実証に成功しており、世界トップレベルの技術を有していると認識しております。

・「スピントロニクス技術とCMOS技術の融合により、スピン軌道トルク型磁気トンネル接合(SOT-MTJ)素子を用いた不揮発メモリ(SOT-MRAM)チップの試作・実証に初めて成功」(2020年6月16日)

http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/06/press20200616-01-sot-mram.html

・「4重界面磁気トンネル接合素子(Quad-MTJ)の材料・デバイス技術の開発により、工業製品化されている従来の2重界面磁気トンネル接合素子(Double-MTJ)では困難であった車載スペックでの10年以上のデータ保持特性を維持しながら、1)10ナノ秒(ns)の高速書き込み動作と、2)21%の低消費電力動作と、3)1011回以上の高書込み耐性の同時達成を世界で初めて実証(2020年6月15日)

http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/06/press20200615-01STT-MRAM.html

また、第14回産学官連携功労者表彰で、CIESの研究成果が「内閣総理大臣賞」を受賞しております。

 

*2 「日経エレクトロニクス」2020年6月号 P28~38 日経BP社