第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものです。なお、本書で記載する市場データは外部の調査会社の調査に基づくものであり、当社では正確性を独自に検証しておらず、現在及び将来における実際の市場の規模・状況と大きく異なる可能性があります

 

(1)経営の基本方針

 当社グループは、「『記憶』で世界をおもしろくする。『記憶』の可能性を追求し、新しい価値を創り出すことで、これまでにない体験や経験を生み出し、世界を変えていく。」とのミッションのもと「『記憶』の技術をコアとして、一人ひとりの新たな未来を実現できる製品やサービス、仕組みを提供する。」というビジョンを掲げ、「メモリ技術」で新しい時代を切り拓き、世界を変えていくことを目指しています。

 ミッション・ビジョンを実現するために、従業員一人ひとりが取り込んでいく価値観を以下の行動方針としてまとめています。

・ 一人ひとりが夢を持ち、語ることができる

・ 制約を設けず、可能性を追求する

・ 柔軟な発想で自ら考え、行動する

・ 多様な価値観を尊重し、協力し合う

・ 常に誠実さと、透明性をもって行動する

 

(2)経営環境及び経営方針

 世界中に広がるデータエコノミーの波の中で、人々が扱うデジタルデータの総量は増加の一途を辿っており、これまで、日々増加するデジタルデータの処理のために、デジタルカメラ、スマートフォン、タブレット端末、PC等においてフラッシュメモリが使用されてきました。今後も、AIの発展を筆頭にクラウド、5G、IoT等の普及により、世界における生成データ量は、2023年から2028年まで年平均成長率24.4%で成長し、2028年には394ZB(ゼタバイト)(注)まで伸長することが予想されています(出典:IDC“Worldwide IDC Global DataSphere Forecast, 2024–2028: AI Everywhere, But Upsurge in Data Will Take Time”, Doc # US52076424, May 2024)。当社は、オートモーティブ、エンターテインメント、ロボティクス、医療・ヘルスケア、インダストリーなど様々なシーンでメモリが果たす役割が重要になると考え、フラッシュメモリの利用も伸長すると見込んでおります。

(注) ZB(ゼタバイト)とは、10の21乗バイトを指し、データの量やコンピュータの記憶装置の大きさを表す単位として使用されます。

 

 また、フラッシュメモリの技術革新とそれによる記憶容量の増大は、様々なフラッシュメモリのアプリケーションへの採用と新しいマーケットの創出を牽引してきました。さらに、データ量の増加とフラッシュメモリの技術革新によって、HDDから、読み出し性能、衝撃・振動等の耐環境性、静寂性及び待機時の省消費電力性等により優れるSSDへの置き換えも進んでいます。データ量の増加とフラッシュメモリの技術革新の好循環によって、フラッシュメモリ市場は成長を続けるものと当社は考えており、第三者の調査機関であるTechInsightsによれば、フラッシュメモリ全体の需要は約2.7倍に伸長する(2023年-2028年(予想))と見込まれております(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。

 フラッシュメモリ市場における主要なアプリケーションはデータセンター、スマートフォン及びPCであり、TechInsightsによれば、データ総量ベースの各アプリケーションのフラッシュメモリ需要につき、データセンターの年平均成長率は38.9%(2023年-2028年(予想))、スマートフォンの年平均成長率は19.7%(2023年-2028年(予想))、PCの年平均成長率は13.0%(2023年-2028年(予想))と見込まれております(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。

 

アプリケーション毎のフラッシュメモリの需要予想                    単位:EB(注)

アプリケーション

2023年

2024年

(予想)

2025年

(予想)

2026年

(予想)

2027年

(予想)

2028年

(予想)

年平均成長率

(2023年-2028年)

(予想)

データセンター

127

218

295

369

489

658

38.9%

スマートフォン

297

346

402

483

589

730

19.7%

PC

235

258

301

336

391

433

13.0%

その他

44

52

57

69

83

98

17.2%

合計

703

874

1,055

1,256

1,552

1,919

22.2%

出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”

(注) EB(エクサバイト)とは、10の18乗バイトを指し、データの量やコンピュータの記憶装置の大きさを表す単位として使用されます。

 

 近年は、AI活用の普及やクラウドコンピューティング等ビッグデータビジネスの進展により、データセンター、エンタープライズ向けフラッシュメモリ需要の拡大傾向に加え、スマートフォン及びノートPC搭載メモリも大容量化傾向にあります。アプリケーション別では、SSD & ストレージ向けメモリ及びスマートデバイス向けメモリのそれぞれについて、記憶容量ベースでの市場規模は拡大傾向にあり、今後も記憶容量ベースでの市場規模の拡大傾向を当社は見込んでいます。

 新型コロナウイルス感染拡大時においては、在宅勤務や在宅学習への移行によりスマートフォンやPCの需要が急増しましたが、今後はこれらの買替えサイクルが到来することが予想されます。また、かかる買替え需要においては、AI搭載製品の比率が高まると予想されており、これはフラッシュメモリの需要増加にさらにつながる可能性があります。TechInsightsによれば、AI搭載のスマートフォン及びPCは、大規模言語モデル(LLM)及びAI処理専用ロジックASIC(Application Specific Integrated Circuit)を搭載したスマートフォン及びPCが想定されており、各アプリケーションにおけるAI搭載製品の比率(出荷台数ベース)について、スマートフォンにおいては、2024年は0.5%、2025年は3.8%、2028年は47.6%、PCにおいては、2024年は9.8%、2025年は17.5%、2028年は32.6%に増加すると予想されています(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。また、生成AIが生成したデータは自動的にデバイスに保存されることとなるため、その結果、必要な1個当たりメモリ容量が増加することとなり、大容量のAI搭載製品がさらに普及することが予想されます。

 さらに、データセンターからのフラッシュメモリ需要も、AIサーバーを中心に拡大すると予想されています。従来のサーバーとは異なり、AIサーバーには、電力効率が高く、高速なデータ転送ができるストレージが求められるところ、SSDは、DRAM及びHDDと比較して、性能、消費電力及びコストの面でバランスが良いことから、AIサーバーに不可欠なものとなると当社は考えています。TechInsightsによれば、データセンター向けフラッシュメモリ需要全体に占めるAIデータセンター向けSSD比率(記憶容量ベース)は、2023年の18.3%から2028年には53.3%に増加すると予想されており、また、AIデータセンター向けSSD需要は、2023年から2028年にかけて年平均成長率72.0%で成長すると予想されています(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。

データセンター向けフラッシュメモリ需要の推移   (注)                   単位:EB

 

2023年

2024年

(予想)

2025年

(予想)

2026年

(予想)

2027年

(予想)

2028年

(予想)

年平均成長率

(2023年-2028年)

(予想)

AIデータセンター向けSSD

23

65

114

162

239

351

72.0%

従来型データセンター向け

SSD

97

141

169

196

236

289

24.3%

その他

7

11

12

12

14

19

22.8%

合計

127

218

295

369

489

658

38.9%

出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”

(注) フラッシュメモリの消費量(サーバーの販売、データセンター構築等)に基づくものであり、フラッシュメモリ製造事業者によるデータセンターや従来の企業向けメモリ及びSSDの販売量に基づくものではありません。

 

 さらに、データセンター向けフラッシュメモリ需要は、AI学習サーバー及びAI推論サーバー向けフラッシュメモリ需要の増加により加速しており、今後もAI推論サーバーを中心に成長することが見込まれます。TechInsightsによれば、従来型データセンター向けSSD、AI学習向けSSD及びAI推論向けSSDのフラッシュメモリ需要は、2023年の97EB、17EB、6EBから、2029年には289EB、74EB、277EBにそれぞれ増加すると予測されており、AI推論サーバー向けフラッシュメモリ需要は、AI推論サーバーの台数とサーバー当たりの記憶容量の双方が増加することにより増加すると予想されています(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。

 

データセンター向けフラッシュメモリ需要予想の内訳                       単位:EB

 

2023年

2024年

(予想)

2025年

(予想)

2026年

(予想)

2027年

(予想)

2028年

(予想)

AI推論向けSSD

6

33

74

115

179

277

AI学習向けSSD

17

32

40

47

60

74

従来型データセンター向けSSD

97

141

169

196

236

289

その他

7

11

12

12

14

19

合計

127

218

295

369

489

658

出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”

 

 他方で、フラッシュメモリ製造事業者においては競合他社が大容量化を推し進め供給を増やすことが予想され、価格競争が見込まれることから、単位記憶容量あたりの販売価格は一定レベルで継続的に下落していく傾向が見込まれます。また、SSDはフラッシュメモリを主記憶デバイスとして使っている製品であるため、今後もフラッシュメモリの価格に連動してSSDの単位記憶容量あたりの販売価格も下落していく傾向が見込まれると当社は考えております。

 加えて、フラッシュメモリ市場は、一般に、急速な技術革新と生産性の向上、顧客からの需要の変動と継続的な価格下落圧力、競合他社との市場シェア獲得競争等により、需給の循環的変動傾向が顕著であり、周期的に市況の改善と悪化が繰り返されていると考えております。

 当社グループとしては、このようなマーケット環境において、当社グループの強みと考える高成長市場にアクセス可能な幅広い製品ポートフォリオをもって、規模が大きく高成長が見込めるエンドマーケットにて、これらのアプリケーションにおける各主要顧客との強固な関係構築を継続してまいります。また、業界をリードする技術競争力を有するフラッシュメモリ業界におけるテクノロジーリーダーとして、市場リーダーの求める製品の開発を推進するとともに、世界最大級(注)のフラッシュメモリ工場を活用し、生産規模及び生産効率を最大化することで高いコスト競争力を実現してまいります。

(注) TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”。2024年4月から6月におけるビット生産量ベースで世界第1位(Western Digitalグループの生産量を含む。)

 足元の世界経済は、先進国においては一部において物価上昇が頭打ちを示していますが、労働市場と個人消費が引き続き堅調であることから、主要国の高金利政策が続いています。新興国の多くにおいては製造業の回復が見られる一方で、不動産市場低迷の影響から個人消費は弱含んでいます。また、地政学リスクは引き続き高い状況にあり、これらの要因により世界経済における不透明な見通しが続いています。

 フラッシュメモリ市場においては、2022年後半から継続した需要低迷に伴い、顧客の在庫水準が上昇し、需給バランスが急激に悪化し、販売価格の大幅な下落を招きました。2023年後半からフラッシュメモリ製造業者各社の減産及び投資抑制が効果を表し始め、また顧客における在庫水準が適正化に向かったため、需給バランスの改善と販売価格上昇が生じました。足元のフラッシュメモリ市場は、顧客の在庫水準の正常化や需要の回復により、需給バランスは改善しました。アプリケーション別では、SSD & ストレージにつきましては、PC向け需要は回復が弱含みましたが、データセンター・エンタープライズSSDの需要は、顧客の在庫水準の正常化やAI需要により伸長しました。AI用途での大容量のSSDに加えて、一般サーバーの需要回復も見込まれています。スマートデバイスにつきましては、スマートフォン向け需要は穏やかに回復しました。今後、オンデバイスAIの普及、メモリ搭載容量の増加に伴う買い替え需要も期待されます。

 このような経営環境において、当社グループは、次の経営方針・経営戦略によりビジョンを実現していきます。

 

[SSD & ストレージ]

 SSDは高成長が期待されるアプリケーションですが、その中でもクラウドサービスの普及に伴うデータセンター向けの需要や、エンタープライズ向けストレージ機器の組み込み容量の増加等を受けて、データセンター・エンタープライズSSD市場について成長が見込まれると当社は考えております。TechInsightsによると、エンタープライズSSD市場は、2025年に第4世代から第5世代へと急速に移行が進むと予測されており、第5世代のエンタープライズPCIeSSDの出荷台数は2024年の210万台から、2025年には1,050万台、2026年には2,130万台へと増加し、それぞれ2025年と2026年のエンタープライズSSDの総出荷台数の30%と54%を占めることが予想されています(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。また、データセンター・エンタープライズSSDは、クライアントSSDと比較して、単位記憶容量あたりの販売価格が高い傾向にあります。TechInsightsによれば、2023年におけるギガバイト当たり平均販売価格は、クライアントSSDは0.05ドルに近い水準であるのに対して、データセンター・エンタープライズSSDは0.06ドルに近い水準であるとされています(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。

 また、上記のとおり、データセンターからのフラッシュメモリ需要は、今後AIサーバーを中心に拡大すると予想されているところ、AIサーバーの増加に伴い、より大きな記憶容量のSSDの需要が喚起されると考えられます。TechInsightsによれば、SSDストレージ容量はAIデータセンター向けSSDの方が大きいと予測されており、従来型データセンター向けSSDでは、2023年は2.6TB、2028年は6.0TBに増加するにとどまるのに対して、AIデータセンター向けSSDでは、2023年の4.9TBから、2028年には12.9TBまで増加すると予測されています(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。

 かかる市場環境を踏まえ、当社グループは、中期的には大手データセンター、エンタープライズ顧客向けを中心としたデータセンター、エンタープライズSSDのより高いシェアの確保に取り組み、長期的にはSSD市場におけるより高いシェアの獲得を目指します。具体的には、2023年8月にエンタープライズ・データセンター向けPCIe® 5.0対応NVMe™ SSDのサンプル出荷、また2023年12月には当社最新SSDがPCIe® 5.0とNVMe™ 2.0の認証を取得するなど、最新のインターフェースに対応した製品を早期に市場投入しており、それを起点として、CBA(CMOS directly Bonded to Array)とOPS(On Pitch SGD)技術を適用したBiCS FLASH™第8世代の市場投入等により、今後拡大する市場においてシェア拡大を目指します。

 さらに、一般消費者向け市場をターゲットとするSSDであるクライアントSSD(PC、ラップトップ、タブレットコンピュータ等の一般消費者向け市場をターゲットとするSSD)についても、当社は成長が見込まれると考えております。

 クライアントSSDについては、2020年7月に台湾・LITE-ONテクノロジー社から買収したSolid State Storage Technology Corporationの開発リソースと当社開発リソースを融合し、技術力の強化と開発の効率化によって、お客様の要求にタイムリーに応えていきます。

 さらに、急速に普及しているAIの活用に伴い、大規模言語モデルの開発、学習、推論用途でデータセンター、エンタープライズ向け大容量ストレージの需要の高まり、AIを搭載したエッジデバイスの登場によるクライアントSSD市場の更なる拡大も期待されております。TechInsightsによれば、AI搭載PCのSSD1台当たり平均ストレージ密度は、2024年には892GB、2028年には1,373GBに増加すると予測されており、AIを搭載したエッジデバイスは、大容量のクライアントSSDの需要につながると予想されています(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。当社グループはこのような新たな市場の変化を逃すことなく、業界主要企業との関係性構築に努めながら、新たな需要の喚起、創出、販売の拡大を目指します。

 

[スマートデバイス]

 スマートフォン市場は依然として規模が大きく、成長しているアプリケーションであり、当社グループにとって引き続き重要なマーケットとなっています。今後、スマートフォン出荷台数については、これまでと同様の伸長は期待できないと考えられるものの、スマートフォン1台当たりのフラッシュメモリ搭載量は成長を続けると予想され、スマートフォン向けのフラッシュメモリの需要を牽引していくと見込んでおります。TechInsightsによれば、スマートフォン1台あたりのメモリ容量は、2023年の231GBから2028年には458GBとなることが予想されており、スマートフォン向けフラッシュメモリの需要を牽引すると予想されています(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)。

 スマートフォン市場において、当社グループは、これまで培ってきた技術力、生産能力、生産性等に基づき、グローバルな主要企業と強固な関係性を長年に亘って構築しており、当該顧客のみが有する最先端のテクノロジーニーズに対応した信頼性の高い高品質な製品やサポートを提供しております。当社グループのかかる強みを活かして、記憶容量ベースでの市場拡大に合わせて、「BiCS FLASH™」の大容量化・積層化・量産化を推進することで、今後もスマートフォン市場におけるシェアを維持してまいります。

 

[生産・販売]

 当社グループが製造合弁契約を締結しているWestern Digitalグループと合わせたフラッシュメモリの2024年4月から6月までのビット生産量は世界最大級となる約31%(注)のシェアを有しております。さらに、拡大するフラッシュメモリ市場に対応すべく、四日市工場及び北上工場の生産能力の強化により、更なる出荷量の拡大を図ります。また、フラッシュメモリの製造は、材料となるシリコンウエハー上に微細な集積回路を作りこむため、工程は数百に及び、製造プロセスの効率化が重要になります。当社グループは、製造過程におけるAIの活用や、四日市工場において製造棟間を繋ぐ棟間搬送を駆使し、製造棟全体の設備の稼働率を高めることで生産性を向上させる総合生産体制を採用することにより、各工場の知見とデータの相互活用により、高い生産効率の実現を図っていきます。今後も継続して生産効率の向上を図り、フラッシュメモリ市場の需要成長に見合う出荷量成長率(メモリ容量単位の前年比成長率)を維持することを目指しております。また、TechInsightsによれば、フラッシュメモリの設備投資額については今後低水準で推移することが予想されていますが(出典:TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”)、当社も設備投資については引き続き規律あるアプローチを採用した上で、投資の効率化を図ります。加えて、ギガバイト当たりのコストの削減も図ってまいります。

 販売に関しては、海外現地法人リソースを充当するとともに、効率的な顧客管理(CRM)等、顧客のニーズに対応した販売インフラの拡充を進めます。

(注) TechInsights Inc.“NAND Market Report Q3 2024”。2024年4月から6月におけるビット生産量ベースで世界第1位(Western Digitalグループの生産量を含む。)

 

[研究開発]

 データ処理量の増大に伴い、フラッシュメモリに代表される不揮発性半導体メモリについても、特にSSD用途において高速動作が要求される傾向にあります。当社グループは、フラッシュメモリ業界のパイオニアとして1987年に世界初のNAND型フラッシュメモリを発明し(注1)、1991年には世界で初めてNAND型フラッシュメモリを量産しました(注1)。また、2024年には当社グループのSSDが、国際宇宙ステーション(ISS)での科学実験を行うサーバーのストレージに使われることになりました。本書提出日時点では、CBA技術・OPS技術や218層積層プロセスを用いたBiCS FLASH™第8世代を製品化するなど、コスト効率を高めながらメモリ容量を拡大する技術革新を行ってきました。直近3連結会計年度における当社グループの売上収益に占める研究開発費並びに販売費及び一般管理費(注2)の割合(平均)はそれぞれ11.7%及び5.3%(合計17.1%)であり、他社の公表情報も踏まえれば同業他社と比べて売上収益に比して低い水準に留めていると認識しており、コスト管理に対して規律あるアプローチを維持しています。

 更なる技術革新に向けて、2023年6月に横浜市内に新たな研究・技術開発施設の稼働を開始しました。これにより分散していた技術開発機能を集結し、フラッシュメモリ、SSDの研究開発の効率性を高めます。また、2024年4月に先端技術研究所を新設し、AI技術の基礎研究からその応用、また次世代メモリ等の研究開発、新規事業につながる技術創出を強化していきます。

 当社グループは今後も技術力を武器に、大容量、低コスト、高性能化による市場競争力のあるフラッシュメモリの開発を進めるとともに、信頼性、安定性も備えた、フラッシュメモリ新製品に代わる次世代メモリの開発も進めていきます。そして、これら将来のビジネスに必要な研究開発投資を積極的に行います。

(注)1.上記における発明、開発、量産及びサンプル出荷に関する記述については、それぞれ出願又は発表時点における当社グループ調べによります。

2.販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費を控除し、PPA影響額を調整したものです。

 

[財務施策]

 当社グループは、中長期的に、想定されるフラッシュメモリ市場の需要成長に見合う出荷量成長率(記憶容量ベース)を維持すること、メモリ製品の販売価格が過去と同程度の下落傾向となること、及び当社グループが過去と同程度のギガバイト当たりのコストの削減を実現することを前提に、フラッシュメモリ市場の周期的市況におけるトレンドとして、高いNon-GAAP営業利益率(Non-GAAP数値については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」で定義される「Non-GAAP指標」をご参照ください。)を実現していくことを目指しております。

 また、当社グループは、2024年3月期末において、1兆4,341億円の有利子負債(IFRSにおいて負債と認識される社債型優先株式を含みます。)に対し、1,876億円の現預金を有しており、ネット有利子負債は1兆2,465億円となります。当社グループは、事業活動等により生じるフリー・キャッシュ・フローを将来の成長資金として使用すると共に有利子負債の返済に充当し、財務体質を改善し、中長期的にはネット・キャッシュ(有利子負債の額を現預金の額が上回る状況)を目指します。

 なお、当社のネット有利子負債/Non-GAAP EBITDA(倍)の過去の推移は以下のとおりです。

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

中間期(注)

1.38

3.51

14.15

1.19

(注) 2025年3月期中間期については、当社のネット有利子負債/Non-GAAP EBITDAの割合は、同中間期のNon-GAAP EBITDAの数値にを乗じた数値を用いて年換算ベースで算出しております。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 拡大する市場についての対応

 中期的なフラッシュメモリ市場は引き続き拡大が見込まれており、当社は競争力のあるBiCS FLASH™第8世代の早期立ち上げ、市場要求に合った新製品の投入、特に市場伸長が見込まれるデータセンター・エンタープライズSSDの新製品の投入によるシェア拡大を目指します。また、クライアントSSD市場で拡大が見込まれる4ビット/セル(QLC)製品の開発及び市場展開を進めます。さらに、急速に普及しているAIの活用に伴い、大規模言語モデルの開発、学習、推論用途でデータセンター、エンタープライズ向け大容量ストレージの需要の高まり、AIを搭載したエッジデバイスの登場も期待されており、当社グループはこのような新たな市場の変化を逃すことなく、業界主要企業との関係構築に努めながら、新たな需要の喚起、新規創出によるビジネス拡大を積極的に推進します。

 

② 開発競争力の強化

 3次元フラッシュメモリは高積層化に伴い開発難易度が高まり、競争は激化しています。その中でコストや性能における競争力を維持していく技術開発が重要と考えています。CBA技術等を生かし、高ビット密度化、高速インターフェース向けの技術開発を推進し、最先端の規格や市場要求に対応していきます。新メモリの研究開発や、BiCS FLASH™応用製品の開発、新材料やAI、システム技術の研究にも積極的に取り組みます。これらの研究開発を強化するため、2023年6月に横浜市内に新たな研究・技術開発施設の稼働を開始しました。神奈川県内に分散していた機能を集結し、研究開発の効率性を高めます。2024年4月に先端技術研究所を新設し、次世代メモリ等の研究開発、新規事業につながる技術創出を強化していきます。

 

③ 財務健全性の確保

 引き続き財務の健全性を高めてまいります。資本構成の最適化並びにより有利な条件の実現及び財務コストの削減を目的としたリファイナンスに取り組み、全体的な財務の安定性を高めていきます。また、強固な財務指標を維持し、財務管理を慎重に行うことにより、信用力の向上に努めます。

 財務健全性の確保のため、弾力的なキャッシュ・フローの創出に注力します。具体的には、現在の投資効率を維持しつつ、設備投資については政府からの補助金も活用しながら引き続き規律あるアプローチを採用した上で、在庫管理のベストプラクティスを導入し、需要と供給のバランスの維持を図ります。

 

④ 生産能力拡大及び地政学リスクへの対応

 拡大するフラッシュメモリ市場に対応し、需要に沿った生産能力の拡大を図ります。今後、適切なタイミングで北上工場の拡張を行います。また、競争力のある最先端のBiCS FLASH™製品を市場に投入することでコスト競争力を維持しながら、投資効率を改善し、設備投資額の最適化を行います。後工程拠点は、米中対立や台湾有事等の地政学リスクを見据えた後工程拠点計画を推進し、リスク低減を図ります。2022年7月には、四日市工場及び北上工場におけるBiCS FLASH™第6世代及び第8世代を生産する設備投資計画が、2024年2月には、上記工場におけるBiCS FLASH™第8世代及び第9世代を生産する設備投資計画が、それぞれ経済産業大臣により、「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」に基づく「特定半導体生産施設整備等計画」に認定(注)されました。半導体は情報通信技術やエネルギー、国防など多くの分野で必要不可欠であり、当社は、日本国内における最先端フラッシュメモリの開発・生産の強化を通じて、半導体関連産業の発展に貢献してまいります。

(注) 特定半導体生産施設整備等計画認定番号「2022半経第002号-2」(2022年7月26日付認定及び2024年2月6日付変更の認定)並びに「2023半経第002号-1」(2024年2月6日付認定)。

 

⑤ サプライチェーンの強靭化

 2022年2月からのロシアによるウクライナ侵攻の長期化や能登半島地震等の自然災害によるサプライチェーンへの影響や、原油価格の高止まりによる原材料価格の高騰が、当社の調達コストの増加や製品供給網に影響を与えています。これらに対応すべく、複数の調達先確保や部品の共通化及び部品点数の削減により調達コストの改善や強靭なサプライチェーンの構築を進めます。

 

⑥ サステナビリティの取り組み

 当社グループは気候変動への取り組みを経営の最重要課題の一つと位置付けております。当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、「TCFD」という。)の提言に賛同を表明しています。当社グループはこのTCFD提言に基づき、気候変動に対して、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの視点から分析を行い、TCFDに沿った取り組みと情報開示を積極的に進めています。また、2023年4月には、2050年度までに当社グループのグローバルな事業活動に伴う温室効果ガスの直接・間接排出(スコープ1、2)をネットゼロにするという新たな目標を設定しました。当社グループはこの目標を達成するため、地球温暖化係数の高いガスの除害装置を対象設備に2011年度以降100%設置しています。また、2040年度までに再生可能エネルギー由来の電力比率を100%とする長期目標の達成に向け、自家消費型太陽光発電システムの導入や、再生可能エネルギー証書の市場調達を進めるなど、今後も最適かつ安定的な再生可能エネルギーの調達に努めます。

 また、多様化し続ける事業環境と市場ニーズに迅速に対応していくためには、技術者をはじめとした様々な人材を確保することが必須となります。当社グループは、多様な人材がそれぞれの力を十分に発揮することが、イノベーションを創出し、企業の成長や社会への新しい価値創造につながるという考えから、女性の経営参画の推進等、ダイバーシティ(多様性)への取組みを積極的に進めています。

 当社の具体的な取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」もご参照ください。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、メモリ市場におけるシェアの獲得状況及び物量と売価の状況を適切にとらえる観点及び適切なコスト管理を実現していく観点から売上収益と営業利益を重要な経営指標と考えております。またPPA(Purchase Price Allocation)(注)を含む非経常的な項目を控除したNon-GAAP営業利益も経営者の意思決定に使用しております。なお、Non-GAAP営業利益を含むNon-GAAP数値については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」で定義される「Non-GAAP指標」をご参照ください。

(注) PPA(Purchase Price Allocation)については、株式会社Pangeaによる旧東芝メモリ株式の買収等に伴い実施した資産の公正価値を基礎とした取得金額の配分手続を指します。以下同じです。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。

 当社グループは、“「記憶」で世界をおもしろくする”というミッションのもと、「記憶」の技術を通じて社会に価値を創出し続けていきます。そのために、当社グループの中長期的な事業活動を支える基盤を強化し、国際社会の一員としてステークホルダーの皆さまからの要請に応えていくことで、持続可能な社会の発展に貢献します。

 地球規模での気候変動などの環境問題、産業化によるエネルギー・資源不足、貧富の差をはじめとする格差の拡大、新たな感染症の脅威など、昨今では様々な環境・社会課題が深刻化しており、当社グループが社会の持続的な発展のために果たすべき役割はますます高まっていることから、当社グループはサステナビリティを経営戦略の中で最も重要な取り組みの一つと位置付けています。サステナビリティ・マネジメントをさらに進化させるために、サステナビリティ会議体を設置し、経営層が中長期的な経営戦略を決定するため、重要な非財務資産の特定や目標の設定について協議する体制に見直しました。また、当社グループが中長期に成長し社会に価値を提供し続けるために、特に重要なテーマを「戦略マテリアリティ(サステナビリティ重要課題)」として設定しています。

 このサステナビリティ体制のもとで当社はTCFD提言への賛同を表明するとともに、TCFD提言に基づいた「気候関連リスクと機会の分析」や「シナリオ分析」について検討を進めており、TCFDに沿った取り組みと情報開示を積極的に推進しています。また、RBA(Responsible Business Alliance)に加盟しており、RBAの行動規範に沿った責任ある事業遂行(自社CSR活動の推進、及び調達取引先への要請)に取り組んでいます。

(1)ガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

 当社のサステナビリティに関する戦略・方針・目標等は、代表取締役社長が議長を務め執行役員により構成されるサステナビリティ戦略会議において審議、決定し、定期的にそれらの進捗度・達成度を確認した上で、取締役会に報告しています。サステナビリティ戦略会議で策定された戦略・方針に基づき、サステナビリティ担当執行役員を委員長とするサステナビリティ推進委員会において、重要テーマ並びに指標及び目標の策定等を討議しています。本会議体の下部には、重要なサステナビリティ課題に取り組むタスクフォースを設置し、進捗の報告や方向性の確認を行っています。また、気候変動、人材多様性等、サステナビリティ関連の主要の指標について、経営計画に織り込み、事業計画と統合したサステナビリティ活動計画を策定しています。

 さらに、サステナビリティ推進を専任で行う部門として、2022年7月、サステナビリティ推進部を新設し、経営と一体化したサステナビリティ・マネジメントを強化、推進しています。

 

② リスク管理

 サステナビリティ関連のリスクと機会について、部門横断のタスクフォースにて、気候変動の財務へのインパクトの算出等、事業に及ぼす影響について検証をしています。これらのリスクと機会及び財務インパクトは、サステナビリティ戦略会議やサステナビリティ推進委員会にて議論され、その概要について当社ウェブサイトで公表しております。

 また、当社グループは、事業の形態やバリューチェーン、関係するステークホルダーに則したサステナビリティ課題・リスクをマッピング・分析し、その回避・軽減に取り組んでいます。

 

(2)戦略並びに指標及び目標

① 戦略

 当社グループは、当社グループの中長期的な経営にとって強みとなる非財務資本を特定し、ステークホルダーの皆さまとともに実現したい社会や製品・サービス・技術開発の社会への影響も考慮して、「戦略マテリアリティ」の3つの構成領域と11の要素を抽出しています。

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 「戦略マテリアリティ」の構成領域は次のとおりです。

(創出する社会価値)

 当社グループが、「『記憶』で世界をおもしろくする」というミッションのもと、「記憶」の技術を通じて、現在、そして将来の製品・サービスの可能性を拡げ、パートナーの皆さまと共に社会に中長期に創りだしていく価値

(価値創出の基盤)

 社会に価値を提供し続けるための当社グループの原動力と考えており、継続して強化する重要な基盤

(ステークホルダーからの要請)

 国際社会の一員として事業活動を行う前提として、特に当社グループが重要と認識している社会的要請

さらに、「戦略マテリアリティ」の主な要素は次のとおりです。

(気候変動)

 当社グループは、気候変動への取り組みを経営の最重要課題の一つと位置付け、事業活動と製品のライフサイクルの両面から、温室効果ガス排出と事業で使用するエネルギーの削減を目指しています。一例として、当社グループは、四日市工場と北上工場において、再生可能エネルギーの活用を推進するために大規模自家消費型太陽光発電システムを導入しており、今後も経営戦略の重要課題の一つと位置付けている気候変動への取り組みを加速させていきます。

(人材(多様性等))

 拡大・高度化・多様化する市場ニーズに対応するためにも、人材は当社グループの重要な経営資本のひとつと考えており、多様な従業員がそれぞれの能力を発揮して活躍でききるよう、ダイバーシティ(多様性)を推進しています。特に女性の経営参画推進のため、女性役職者数や、新卒採用における女性比率について目標を設定しています。また、公正な人事諸制度を構築するとともに、人材育成のための教育体系として、各種研修制度(基礎教育、グローバル教育、階層別教育、経営人材教育等)を整備し、人材の育成・活用を積極的に推進しています。人材戦略の推進にあたっては、社長を委員長とした教育委員会を設置、実績を踏まえた改善、翌年度の方針を審議する体制を構築しています。

(テクノロジー)

 これからも社会に価値を創出し続けるために、半導体メモリにおけるテクノロジーリーダーシップを堅持し、将来を見据えた研究・技術開発を推進します。研究・技術開発の基本的な考え方として、「記憶」のテクノロジーリーダーとして、事業ポートフォリオを拡大し続けるために、最先端の研究開発に取り組んでいます。

(パートナーシップ)

 お客様、研究機関・調達取引先をはじめとするパートナーの皆さまと強固な関係を構築し、共に持続的な成長を果たし、社会に価値を創造していくことを目指していきます。

(持続可能なサプライチェーン)

 当社グループは、各国・地域の法令や社会規範を遵守し、調達取引先との相互理解の促進と信頼関係の構築を通じて、サプライチェーン・マネジメントに取り組み、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動の推進に努めています。

 当社グループは、グローバルサプライチェーンにおける労働・安全衛生・環境・倫理などの社会的責任を果たすため、RBAとRBA傘下の責任ある鉱物調達に関わるイニシアティブであるRMI(Responsible Minerals Initiative)に加盟しております。レギュラーメンバーとして、RBAの行動規範に沿った責任ある事業遂行(自社サステナビリティ活動の推進、及び調達取引先への要請)や、責任ある鉱物調達に取り組んでいます。

 

② 指標及び目標

(気候変動)

 温室効果ガス排出については、製造時に排出される地球温暖化係数の高いPFC等ガス(注1)を除害する装置を、対象設備に2011年以降100%設置しています。また2020年度には、2040年度までに使用電力の100%を再生可能エネルギーに転換する長期目標を策定しました。さらに、2023年4月には、2050年度までに当社グループのグローバルな事業活動に伴う温室効果ガスの直接・間接排出(スコープ1、2)をネットゼロにするという新たな目標を設定しています。省エネルギー活動と非化石電力証書(注2)の活用も含めたエネルギー・ポートフォリオの検討により、事業の拡大に合わせて最適かつ安定した再生可能エネルギーの調達に努めます。また、低消費電力型製品のニーズが非常に高まっているため、製品のエネルギー効率と記憶容量を向上させる高集積化技術の研究開発に取り組んでいます。これについては、2017年度を基準とした1GB処理あたりのエネルギー消費量を2025年度までに50%削減するという高い目標を掲げています。

 製造事業場での運用においては、省エネ法に基づき、前年度の総エネルギー使用量(SCOPE2)の1%以上を削減する目標を掲げています。2022年度は、各種省エネルギー活動により、目標25,800t-CO2/年以上の削減に対して実績は30,754t-CO2/年の削減効果となり、目標を達成しました。2017年から2022年までの省エネルギー活動による削減効果は、累積で約13万t-CO2になります。

(注)1.PFC等ガス:半導体製造時等に使用する、地球温暖化計数が高い代替フロンガス。

2.非化石電力証書:再生可能エネルギー(再エネ)など発電時にCO2を排出しない非化石電源の環境価値を取り出し取引できるようした証書。

 

(人材)

 女性の経営参画推進のため、キオクシア株式会社では、女性役職者数を2025年度までに2019年度比の2倍とすること、そのために、新卒採用における女性比率を事務系45%以上、技術系15%以上とすることなどを中期目標に設定しています。また、「仕事と介護の両立支援ハンドブック」「子育て制度・手続きハンドブック」を作成し、育児、介護などに対応した支援を行うことにより、従業員がこれらのライフイベントに関わらず、それぞれの力を十分に発揮し、活躍できるように努めています。また、多様な専門性を持つ人材を採用し、一人ひとりが力を発揮できるように、キャリア採用の強化、育成の仕組みづくりなどを進めています。

 

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(注)1.キオクシア株式会社における毎期末時点の女性役職者(課長クラス以上。キオクシアホールディングス株式会社への出向者を含む。)が対象です。

2.大卒・大学院卒が対象です。

3.キオクシア株式会社における大卒、大学院卒の正規従業員の年度別入社実績です。なお、キオクシアホールディングス株式会社は新卒採用を行っていません。

 

キャリア採用数 実績(キオクシア株式会社)

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

113人

275人

280人

282人

25人

 

 障がい者雇用についても、社会全体が目指すゴール「ソーシャル・インクルージョン」に向けて、従業員同士の交流、働きやすく・働きがいのある環境の整備、さらには事業価値の創出の観点で、取り組んでいます。

 

3【事業等のリスク】

 

 当社グループの事業領域であるメモリ事業においては、高度で先進的な技術が事業遂行上必要である上に、グローバルな激しい競争があります。当社グループでは、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項 ロ.リスク管理体制の整備の状況」に記載の通り、代表取締役社長をリスク・コンプライアンス責任者とし、また、リスク・コンプライアンス委員会での審議等を通じて、経済活動を遂行する上で生じるリスクをビジネスリスク、財務・会計リスク、その他のリスクに大別し、内部監査部による内部監査の結果等を活用しながら詳細な分析を行い、リスクの特性に応じた管理を実施しております。かかるリスク・コンプライアンスマネジメントを通じて、当社の経営者が認識している当社グループの事業等のリスクのうち主要なものは以下のとおりですが、これらは当社グループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見できないリスクも存在します。このようなリスクが現実化した場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。

 

(1)事業環境及び経済情勢に係るリスク

 

①フラッシュメモリ市場の循環的・短期的変動

 フラッシュメモリ市場は、一般に、急速な技術革新と生産性の向上、顧客からの需要の変動と継続的な価格下落圧力、競合他社との市場シェア獲得競争等により、需給の循環的変動傾向が顕著であり、周期的に市況の改善と悪化が繰り返されています。2022年後半から2023年にかけて経験したように、当社グループ及び競合他社による生産量の拡大や顧客の過剰在庫等により需給バランスに不均衡が生じる場合、フラッシュメモリ製品の販売価格が急速かつ大幅に下落する可能性があります。当社グループは、当該リスクへの対応として、月に1度、業績や市況等の事業の状況を確認する機会を設け、市場の最新動向や顧客の製品動向、リテールの価格状況、顧客の在庫、競合他社の状況を確認して、調査会社等の情報をもとに経済情勢や最新の需給状況を把握し、当社グループの販売状況や生産、開発及び財務状況を確認し、適切に経営状況に反映するよう努めております。しかしながら、そうした経済情勢や需給状況の把握の予測は極めて困難であり、またその経営状況への反映も適時・適切に行える保証はありません。従って、需給バランスが崩れ、顧客の需要又は販売価格が継続的に低迷する場合、当社グループの売上の減少や、工場稼働率の低下に伴う売上総利益率の悪化により当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 フラッシュメモリ市場においては、クラウドサービス、5G、IoTの拡大やAIを搭載したスマートフォンやPC、データセンターを含むAI関連の機器やサービスの普及など、デジタル社会の進展によりメモリ需要が中長期的に拡大することが調査会社等により予測されていますが、かかる予測は直近の低迷期を事前に予測しておらず今後も正確ではない可能性があります。また、フラッシュメモリ市場においては、当社グループの価格決定力は限られていることから、中長期的には、記憶容量ベースの販売価格は過去と同様のペースで下落することが予想されます。当社グループはコスト削減等により、収益性の向上に努めておりますが、今後経済情勢又はフラッシュメモリの需給状況により、当社グループの想定を上回る販売価格の下落又はフラッシュメモリ需要の減少が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

②需要変動

 当社グループの製品に対する需要は、経済情勢、個人消費、技術革新、規制環境のほか、当社グループの製品が使用される最終製品の消費者市場や顧客の動向などの要因により左右され、とりわけ現時点における当社グループの主要な顧客であり、今後も注力するデータセンター向けSSDや、引き続き当社グループの売上の相当程度を占めるスマートフォン市場の動向の影響を強く受ける傾向にあります。さらに、在庫管理を含むサプライチェーンが複雑化する傾向にあり、またデータセンター向けSSDは極めて限られた数の大口顧客が市場シェアの大半を占めていることから、市場の動向や顧客の需要の予測には困難が伴います。実際に、新型コロナウイルス感染症の拡大後の大口顧客による在庫調整や競合他社の生産量の変動の影響により需給バランスが悪化したことを受け、当社グループは2022年10月から2024年3月にかけて減産を実施しており、今後も市場の需給バランスが悪化した場合には同様の対応をする可能性があります。当社グループは、当該リスクへの対応として、上記「①フラッシュメモリ市場の循環的・短期的変動」記載のとおり、経済情勢及び最新の需給状況の把握とその経営への反映に努めておりますが、かかる需要を事前に正確に予測することは困難であり、当社グループが、かかる需要の変化を予測できず、又はかかる変化に適時・適切に対応できない場合には当社グループの製品が顧客あるいは最終製品市場の消費者の要求水準に見合う製品を供給できず、顧客からの受注を失う、想定した販売規模や収益性を下回る、あるいは供給過剰による販売価格の下落等が生じるなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、データセンター等のストレージ、スマートフォン、サーバー等、当社グループの製品の顧客における新製品の売れ行きや大容量化の進展遅れ等様々な要因により、需要が急減し又は当社グループの想定する時期若しくは規模での需要拡大が生じない可能性があります。また、それにより価格の下落、生産量の過剰が発生し、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③AI関連市場の成長

 近年、AI技術の進展にともない、AIを搭載したスマートフォンやPC、データセンターを含むAI関連の機器やサービスが急速に普及しつつあります。これらのAI関連の機器やサービスには大容量のメモリ系半導体を必要とすることから、AI関連の需要は今後フラッシュメモリの需要を中長期的に牽引することになると期待されていますが、AI関連市場が予想された通りに成長する保証はないうえ、DRAMを含む他のメモリ半導体やHDDが存在する状況においてAI関連市場の成長がフラッシュメモリの需要につながるとは限りません。当社グループは、このような新しい需要の獲得に対応するため、市場の調査、分析やお客様との対話を積極的に行い、AI関連のニーズの把握に努め、研究開発を推進しております。しかしながら、AI関連のニーズに適合するための先端的なフラッシュメモリ技術の研究開発や、競争力のある価格での量産化の実現については、これらを他社に先駆けて実行できない場合や、他のメモリ半導体が需要を獲得し、当社グループがAI関連需要を取り込むことができなかった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④競合他社との競争、買収や合弁会社設立等による業界再編

 当社グループは海外を中心としたグローバルな大企業である競合他社との厳しい競争下にあり、また、フラッシュメモリは主要な競合他社が限定されていることから、主要な競合他社の技術や設備への投資、販売量、戦略等による影響を強く受ける傾向があります。競合他社の中には、フラッシュメモリに加えてDRAMやHDDを提供するなど、当社グループにない技術を保有し、当社グループよりも大きな資金力を有している企業もあり、当社グループよりも競争力において優位に立つ可能性があります。また、中国においては、政府の支援による半導体の国産化に向けた動きの加速も見受けられる一方、米中貿易摩擦の影響により今後中国における海外企業の参入や事業活動に制約が生じる可能性もあります。また、中国のほか、米国、EU及び韓国等においても、政府が半導体事業に対して多額の補助金を提供しており、かかる補助金の交付を受けた製造業者が生産効率を度外視した性能やキャパシティの向上を図る可能性もあり、グローバルな競争はさらに加速しています。今後、当社グループが、市場シェアの維持、拡大を図るためには、主要製品の市場の動向や顧客のニーズを適時・適切に把握し、競合他社に対して、特に販売価格、性能、生産効率の優位性を維持することが不可欠です。当社グループは、当該リスクへの対応として、競争力のある製品を市場に供給するため、競合他社の動向を常に確認し、また、研究開発、生産効率の改善、高集積化による利益率の向上を図る取り組みを続けておりますが、それらの実現が他社に遅れ、販売価格の前提となる生産効率、性能、生産量が競合他社に劣る場合、利益率の圧迫や、顧客からの製品の受注を失い、又は当社グループのシェアを維持することができないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、メモリ・半導体市場は、市況の変化も大きく、当社グループを含めグローバルに事業を展開する事業者が多数います。このような事業環境下で、SK hynix Inc.は、2021年12月にIntel Corporationのフラッシュメモリ事業を買収する旨を公表し、また、Western DigitalグループはStrategic Actionを検討し、その一環としてフラッシュメモリ事業の分離を行う旨公表するなど、メモリ・半導体市場においては、事業の買収、事業提携等が行われる可能性があります。これらの買収等に当社グループが含まれる場合も含まれない場合も、当社グループの競争環境が大きく変化する結果、当社グループの競争力が悪影響を受ける可能性があります。

 さらに、キオクシア株式会社及び製造合弁会社3社は、わが国政府から、四日市工場におけるフラッシュメモリの生産に関し、最大で約929億円(未交付分は2024年3月31日時点で約365億円)の補助金が交付される予定となっております。また、キオクシア株式会社、キオクシア岩手株式会社及び製造合弁会社3社は、わが国政府から、四日市工場及び北上工場におけるフラッシュメモリの生産に関し、最大で1,500億円の補助金が交付される予定となっております。これら補助金を含め、かつ、Western Digitalグループの取得分を除くと、当社グループは、2023年3月期に214億円、2024年3月期に186億円、2025年3月期中間期230億円の資産の取得に対する補助金の交付を受けておりますが、当社グループが今後も同様の条件のもとで補助金の交付を受けることができる保証、また、補助金の交付によって当社グループが外国政府より不利な取扱いを受けないという保証はなく、今後の条件によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、また、当社グループの資金調達を含む事業活動に制約が生じる可能性があります。

 

⑤マクロ経済の変動

 当社グループはグローバルに事業を展開しており、当社グループの経営成績も、世界、主要国の経済動向の影響を受けます。当社グループは、マクロ経済環境の影響に対応するための情報収集に努め、変化に対する必要な対策を講じる体制を整備しており、例えば、サプライチェーンの強化等の対策を実施しておりますが、米中貿易摩擦とこれに伴う中国企業への規制の強化、米国における経済政策の変更、中国その他の新興国の成長の減速、新型コロナウイルス感染症の拡大等による国内外における経済活動や消費の停滞とこれに伴う市場環境の悪化、ウクライナ情勢や中東情勢、台湾をめぐる潜在的な対立を始めとする地政学リスクの上昇、原材料及びエネルギー価格等の高騰、金融市場の急激な変動等様々な要因により、製品需要、販売価格、生産活動に影響が生じた場合には、当社グループの売上の減少や、工場稼働率の低下に伴う売上総利益率の悪化に繋がる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥規制環境の変動

 当社グループは、全世界において事業を展開しているため、各国で規制を受けるところ、半導体については各国において経済安全保障上の重要性が認識され、規制が大幅にかつ急激に変更される可能性があります。当社は、かかるリスクへの対応として、報道や各国当局の公表資料、法律事務所等のアドバイザーからの情報、JETRO、JEITA、CISTEC、米SIA等の業界団体活動を通じて得る情報等により、主要各国の規制動向の情報を早期に入手することに努め、必要に応じて社内周知を行うことにより、法規制遵守の徹底、事業影響への最小化を図っています。しかしながら、これらの対応策が有効に機能する保証はなく、国内外の各地域の政治、社会情勢や政策の変化、投資規制、収益の本国への送金規制、輸出入規制、外国為替規制、税金、贈収賄規制、競争法関連規制等を含む各種規制の動向が各地の需要、当社グループの事業体制に悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特に米中貿易摩擦に伴う関税、税金その他の輸出入関連規制や運用見直しにより、中国に所在する当社グループの主要顧客への販売が制限される又はかかる規制により当該顧客の生産量が減少する場合には、かかる主要顧客からの当社グループの売上収益が大幅に減少する可能性があり、また、当社グループが規制の対象となり米国に所在する当社グループの主要顧客との取引が制約される可能性や、米国に所在する当社グループの主要顧客が中国市場へのアクセスを失い生産量が減少し、当該顧客に対する当社グループの売上収益が減少する可能性、当社グループの原材料や生産設備の調達先が規制対象となり、必要な原材料等の調達等に影響を及ぼす可能性があるなど当社グループの事業展開及び経営成績に重大な影響を及ぼすおそれがあります。また、米中貿易摩擦がさらに激化した場合や中国に対する規制の強化等がなされた場合には、米中各政府により、相手国企業に対する更なる規制強化、経済制裁、法令の制定又は改正等がなされる可能性もあり、その内容と当社及び競合他社の対応状況等によっては、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)経営方針・経営判断に係るリスク

 

①経営戦略・長期財務モデルに関するリスク

 当社グループは、当社グループの掲げるミッション及びビジョンを実現するため、当社グループの経営環境を踏まえた経営方針・経営戦略を実施していくとともに、将来に亘って「メモリ技術」で新しい時代を切り拓き、世界を変えていくことを目指すべく、長期財務モデルを策定しております。しかしながら、当該モデルで設定された数値は、将来の市場動向((i)フラッシュメモリ市場が、調査会社等によって予測されているとおり(上記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び経営方針」参照)に成長し、当社グループの出荷量(記憶容量ベース)につき、2021年当時の当社グループの市場シェアの水準まで回復した後は、当該市場成長に見合う成長率が維持されること、(ii)2025年3月期以降のフラッシュメモリの平均売買価格の推移が中長期的に見て2020年から2022年において見られた市場価格の傾向と概ね同様となること、(iii)ギガバイト当たりの生産効率が当社グループの過去の実績と同様に進捗すること、及び(iv)ドル円為替は直近4年間における平均値の水準が継続すること並びに新型コロナウイルスの世界的蔓延や工場の稼働停止のような予見困難な異常事象が発生しないことを含みます。)に関する一定の前提に基づき設定されたものです。当社は長期財務モデルの構築に努めてまいりますが、これらの前提が実際の経営環境と異なることとなった場合や、本「3 事業等のリスク」記載の他のリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績は当該モデルと同様には推移しない可能性があるとともに、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

②フラッシュメモリ市場の予測と設備投資

 当社グループは、メモリ市場の周期的市況における平均値として、売上収益の20%以内を目安として、需要動向、生産プロセス技術の開発状況及びその投資効率などを総合的に勘案しつつ、四日市工場及び北上工場における生産設備等への投資並びに研究開発等に係る設備投資を行う予定です。しかしながら、生産開始時点で、需要予測に対して市場が大きく変動した場合、生産設備過剰若しくは不足により、利益率の悪化、過剰在庫の発生、販売量又は販売価格の下落、固定資産の減損、あるいは販売機会の喪失やシェアの低下に繋がる可能性があります。当社は、設備投資の決定の際に、最新の需要予測や経営環境を確認し、リスクを評価しておりますが、フラッシュメモリ市場における需要の正確な予測は困難であり、また、製造設備、インフラの発注納期が長いため、これらの評価や予測が正確であるとの保証はなく、当社の予測が実際の経営環境と異なる場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループはかかる多額の設備投資に加え、研究開発投資も継続的に行っており、固定費の割合が高い状況にあります。当社は、市場の変動に応じて設備投資計画を変更することは可能ですが、固定費の削減には限界があります。そのため、比較的軽微な売上収益の低下であっても営業利益やキャッシュ・フローに与える影響は相対的に大きくなり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③投資の計画と効果の乖離

 当社グループは、設備投資の決定の際に、納期、必要な人材や設備・資材の確保状況を継続して確認しております。また、技術開発については、競合他社の状況を注意深く把握し、当社製品の競争優位性の検証を継続しております。しかしながら、当社グループが行う四日市工場、北上工場の新棟立ち上げ等の設備投資、次世代フラッシュメモリ等技術開発投資等については、設備納期、量産立ち上げ、歩留まりの改善、開発の進捗、必要な人材や設備・資材の確保等にかかる遅延、また当初予定された歩留まり、製造工期、製品特性が実現されないこと等により、投資開始時点の計画と生産開始時期に乖離が生じる可能性(なお、2022年後半から2023年にかけてのメモリ市場における急激な需給の悪化を受け、予定していた設備投資を一部延期いたしました。)や、当初想定した生産能力、歩留まり、生産効率が得られず、又はこれらが得られたとしてもこれに見合う需要が得られない等により、想定された投資効果が生じない可能性があります。資金回収時期の遅延、新製品の開発・販売において競合他社に劣後することによる競争優位性の低下やシェアの低下により、当社グループが想定した利益を確保できず、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④戦略的提携、合弁、買収、出資等の成否

 メモリを始めとする半導体業界では、提携、合弁、買収、出資等による再編が行われており、当社グループにおいても技術の獲得や、事業領域の拡大、競争力の強化や収益力向上を行うため、提携、合弁、買収、出資等を実施することがあり、例えば、Western Digitalグループとの間で製造合弁契約を締結し、合弁事業を行っています。2020年7月には、台湾・LITE-ONテクノロジー社の子会社であるSolid State Storage Technology Corporationとその関係会社の全株式を取得しました。また、2022年6月には、株式会社東芝の関係会社である東芝デジタルソリューションズ㈱より中部東芝エンジニアリング株式会社の全株式を取得しました。提携、合弁、買収、出資等においては、対象先の経営状況、事業内容、財務内容、法令遵守や契約関係等について詳細な事前調査を行い、リスクを吟味した上で決定しておりますが、提携、合弁、買収、出資等を行った対象事業の経営成績が悪化した場合には、当社の連結利益の悪化、保有株式やのれんの減損が起きる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また提携、合弁、買収、出資等が当社グループ、若しくはその一部事業についてなされたものの、想定どおりに統合が進まず、また、当社グループが期待するシナジー、スケールメリット等の効果を得られなかった場合には、経営方針の大幅な変更、事業規模の縮小、スケールメリットの喪失等による収益悪化が起きる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、提携、合弁、買収、出資等の形態や内容等によっては、相手方である第三者の行為を当社グループが有効にコントロールすることができず、また、特定の第三者との提携、合弁等を実施した結果、他の者との提携、協業又は取引等が制約される等、当社グループの経営上の選択肢又は事業運営が制約される可能性があります。

 

⑤Western Digitalグループとの合弁事業

 当社グループは、Western Digitalグループとの間で製造合弁契約を締結し、製造合弁会社3社を設立しています。かかる合弁事業を通じることで、当社が単独で投資を行う場合に比して大規模な投資が可能となり、設備投資額や生産効率面でのスケールメリットを享受することが可能となります。合弁契約の概要は、製造合弁会社3社が当社グループ及びWestern Digitalグループからの資金借り入れ又は製造合弁会社3社によるリース契約により生産設備を調達し、当社グループの四日市工場及び北上工場に設置、当社グループは製造合弁会社3社から無償貸与された生産設備にて生産を行い製造合弁会社3社に加工済みのウエハーを販売し、更に製造合弁会社3社から当社グループ及びWestern Digitalグループに50%ずつの割合で販売するというものです。当社グループは、合弁契約に従って、Western Digitalグループによる契約違反など合弁契約上の解約事由が発生した場合、製造合弁会社3社の保有する生産設備の残存簿価を反映したWestern Digitalグループの持分を買い取る可能性があり、この場合多額の資金が必要となることにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当該製造合弁会社3社が保有する生産設備のリース契約に関して、現在キオクシア株式会社とWestern Digital Corporationが個別に50%の債務保証をしていますが、Western Digital Corporationの経営成績又は財政状況の悪化により、同社が自身の債務保証を履行できない場合、キオクシア株式会社がWestern Digital Corporation分の保証債務を承継し又は当該保証債務不履行により合弁契約が解約され、製造合弁会社3社の保有する生産設備の残存簿価を反映したWestern Digitalグループの持分を買い取る可能性があります。これにより当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。更に、当社は、Western Digitalとの間で、生産、投資、研究開発、オペレーション、ファイナンス等について多くのコミュニケーションを行っておりますが、合弁契約上、合弁会社の運営に関しては、Western Digitalグループと対等な権利義務を有しており、かつ、Western Digitalグループは当社グループと競合関係にあるため、両社の経営及び戦略的方向性に乖離が生じた場合には、意思決定に想定以上の時間を要するなど、合弁会社の運営に支障が生じる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、キオクシア株式会社がWestern Digitalグループの持分を買い取った場合、当該製造合弁会社3社が当社の連結子会社として扱われる可能性があり、その場合、製造合弁会社3社の経営成績が当社の連結財務諸表に反映されることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、Western Digitalグループとの間の製造合弁契約の有効期間は、四日市工場について2029年まで、北上工場について2034年までとされており、当該有効期間の経過後も合弁事業を継続するかどうか、継続する場合、どのような契約条件となるかは現時点では未定です。継続しない場合には、製造合弁会社は解散、清算されることとなり、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 2023年10月、Western Digitalグループは、同社のHDD事業とフラッシュメモリ事業を分離し、各々の会社を上場させる計画を公表しました。公表内容によると、Western DigitalグループがHDD事業を継続し、分社した会社グループがフラッシュメモリ事業を行う予定とのことです。当社は現時点で、Western Digitalグループによる分社が当社又は製造合弁会社に重大な影響を及ぼすとは見込んでいませんが、当社が合弁事業を通じて享受してきたメリットを、分社後も享受し続けられるという保証はありません。その他、製造合弁契約上一定の制約はあるものの、Western Digitalグループが第三者との間で、当社に競争上の悪影響を与えるような戦略的提携関係を構築しないという保証はありません。

 

⑥技術革新

 フラッシュメモリは高度な技術を要し、複雑な生産工程を経て生産されておりますが、世代交代や大容量化、特性改善等の技術革新が非常に早い製品です。また将来的にはフラッシュメモリに代わる新技術が生まれる可能性もあります。このため、最新の技術を利用した製品を迅速に提供するためには、長期的かつ継続的な多額の研究開発投資が必要となります。これに対応するため、当社は、最新の技術動向を確認し研究開発・投資計画へ反映することとしており、また、研究開発の実行にあたり、自社戦略との整合性や、市場要求を満たしているかの確認を行っております。具体的には、BiCS FLASH™の高積層化、CBA技術の開発、4ビット/セル(QLC)への移行、その他の新規技術開発に取り組んでおりますが、かかる取り組みが奏功する保証はなく、世代交代や、技術革新、生産効率の向上等において競合他社や新規参入者、フラッシュメモリの代替品に遅れを取り、製品特性や、ギガバイト当たりの生産効率における競争力が低下した場合や、新製品について顧客が要求する技術性能を実現できない場合、また、開発には成功したものの顧客の最終製品の需要が伸びなかった場合等には、当社グループの技術上の優位性ひいては競争力の低下、顧客の喪失やシェアの低下、又は投資に見合う収益を得られないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)当社グループのオペレーションに伴うリスク

 

①特定の販売先への依存

 当社グループはフラッシュメモリ専業メーカーであり、その売上高の多くは大手スマートフォンメーカーやSSDを必要とするハイパースケーラーを含む大規模なIT企業のような限定された顧客や業界に依存しています。当社グループは、市場の成長に合わせた販売の推進、販売ポートフォリオの最適化に努めておりますが、これらの主要顧客や業界の販売動向、経営環境、米中貿易摩擦の激化や台湾を巡る地政学リスクの顕在化や当社グループへの需要量、複数社購買における主要購買先の見直し等の主要顧客の取引に係る方針や取引条件等が変化したこと、又は特定の顧客のニーズに基づき製品開発を進めたものの当該顧客の最終製品の需要が低迷すること等により、これらの主要顧客が当社グループの製品の採用を中止し、又はその発注数量が減少し若しくはその他の取引条件が当社グループに不利に変更された場合には、売上規模の減少、過剰在庫、顧客への転売に伴う価格の見直し等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、2024年3月期において、Appleグループへの販売高が、当社の連結売上収益の10%以上を占めており、また2023年3月期においてはDellグループへの販売高も10%以上占めており、これらの販売先との関係性は米中貿易摩擦をはじめとする国際情勢に起因するものを含め、特に当社グループの事業、経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

②資材等調達・エネルギー

 当社グループの事業活動を継続し、競争力を維持・強化する上では、部品、材料、製造設備等が適時、適切に納入されるなどサプライチェーンの最適化が必要ですが、部品、材料、製造設備等の一部については、その特殊性から調達先が限定されているものや調達先の切替えが困難なものがあります。例えば、2020年から2023年にかけて世界的な半導体の不足が生じ、当社グループを含む製造業者の製造活動に大きな支障を生じました。このように、調達先による部品、材料等の供給不足、供給遅延、環境規制の強化、地政学リスクの顕在化、地域紛争、又は、事故、自然災害や新型コロナウイルス感染症をはじめとする感染症の流行による供給の中断等が生じた場合には、必要な部品、材料等が不足することにより当社グループの製品の製造に支障又は遅延が生じる可能性又は他の調達先から購入するための費用が増加する可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。かかるリスクを可能な限り低減するため、当社グループではシリコンウエハーといった当社グループの製品製造に不可欠な一部資材等について、調達先との間で長期購買契約を締結していますが、契約価格よりも市場価格が下回って推移するなどした場合には、必ずしも長期購買契約が当社グループにとって優位な作用をもたらさない、あるいは不利に作用する可能性があります。

 また、当社グループの生産活動をはじめとする事業活動には、電力が安定して供給されることが必要ですが、停電の発生や電力の供給不足により当社グループの工場をはじめとする施設の稼働が停止又は制限された場合や、国内の原子力発電所の稼働停止に伴う電力供給不足と為替変動を受けた燃料費上昇により、電気料金の更なる値上げ等があった場合、又は再生可能エネルギーの調達価格が第6次エネルギー基本計画通りに低減しない場合には、当社グループの競争力や生産・販売活動に悪影響を与える可能性があります。さらに、当社は技術支援などグループ外からサービスの提供を受け事業運営を行っておりますが、就労人口の減少による人件費の高騰、円安の進行、地政学リスクの顕在化等によりこれらのサービスを合理的な条件で受けられなくなる可能性があります。

 また、2022年3月期においては、3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」の特定の生産工程における不純物を含む部材を起因とする四日市工場と北上工場での操業影響による332億円の損失も発生しましたが、調達した部品、材料等に欠陥が存在し、仕様が満たされていない場合は、当該部品、材料等を使用した当社グループの製品の信頼性及び評価にも悪影響を及ぼす可能性があり、損害賠償等の請求を受ける可能性もあります。これにより当社グループの製品やブランドに対する評価や社会的信用が低下すること又は賠償金の支払い等が生じること等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、近時は、原材料費及び人件費の上昇に加え、国内の大手企業による工場建設の同時進行により、建設資材の獲得競争が激化しており、また、必要な専門知識を持つ建設請負業者の確保も困難を極めており、工期の遅延や建設コストの増大、ひいては当社グループの製品の品質低下につながるおそれがあります。

 当社グループは、当該リスクへの対応として、地政学リスクを考慮したサプライチェーンの構築や調達先の複線化やサプライチェーン情報の把握、在庫保有によるサプライヤインシデントリスクの低減等により、安定調達とコスト削減を推進しております。しかしながら、これらの施策が常に有効であるとの保証はなく、地政学リスクの顕在化による物・人材・情報の国際的な移動に支障を生じサプライチェーンが毀損する場合や、原材料及びエネルギー価格等の高騰や建築材料・建築請負業者のリソース等の不足等により企業活動に支障が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③外部への生産委託

 当社グループでは製品製造に関する工程の一部、特に当社グループのメモリ製品及びSSD製品の組立工程については、その殆どを外部協力会社へ生産委託しております。外部協力会社へは当社グループの仕様に基づく生産を要請するとともに、品質管理について様々な工夫を講じております。

 しかしながら、第三者である外部委託先の生産工程や品質管理を当社グループが完全に把握し、コントロールすることは不可能であり、外部協力会社での当社グループからの生産委託工程に不測の事態が生じた場合や何らかの事態により生産に遅滞が生じた場合には当社グループの製品の顧客への期限内での納品に支障をきたす可能性があります。また、既存の外部委託先が、何らかの事態により当社グループからの生産委託を履行できなくなった場合には、適時に他の適切な外部委託先を確保できる保証もありません。例えば、2022年には、中国のゼロコロナ政策による上海の都市封鎖(ロックダウン)を受けて、当社グループのメモリ製品の組立工程を委託している上海の後工程の工場及び物流倉庫が一時的に閉鎖される事態が生じました。また、生産委託工程に起因する製品の欠陥等が発生した場合には、当社グループと当社グループの顧客との間の関係性や当社グループ又はその製品に対するレピュテーションが悪化し、又は、顧客から損害賠償を請求されるなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは外部生産委託先への依存度や、地政学リスクを踏まえた委託先の選定を行っておりますが、これら対応が奏功するとの保証はなく、特定の外部協力会社への依存が進むと、委託先の切替えが困難になり、価格上昇等により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④経営者への依存

 当社は、監査役、取締役の統制のもとに執行役員主体による経営活動を行っておりますが、代表取締役である早坂伸夫氏及び取締役であるステイシー・スミス氏など特定の経営者への権限や経営判断の集中が起きる可能性が無いわけではありません。その場合には当該経営者の判断が事業に大きな影響を及ぼし、コーポレート・ガバナンスが適切に機能しないおそれがあること、また当該経営者の不在や退任等により、当社グループの事業活動が停滞し、又は後継者への円滑な承継が進まないことにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤人的資源の確保

 当社グループの事業の成否は、開発、生産、販売、経営管理等のすべてのプロセス、分野における優秀な人材の確保に大きく依存しています。特に事業のグローバル展開及び先端的な開発・研究の推進には、優秀な人材の確保が必要不可欠です。人材の確保に向けて、当社グループの認知度・ブランド価値を高める活動を進めるとともに、 ダイバーシティ経営を推進することで、優秀な人材の獲得に努めております。しかし、各プロセス、分野における有能な人材は限られており、特に技術職の人材に対する需要が世界的に高まっている中、円安が進行する傾向がみられるなど、人材確保における競争が一層激しくなっています。このため、当社グループが、必要な人材を必要なタイミングで獲得できず、在籍している従業員の流出を防止できない場合、又は、新たな人材の獲得や維持のために給与やリテンションプランに従来以上のコストが必要となる可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥大規模災害等による生産の遅延、障害等

 当社グループのフラッシュメモリの生産拠点は日本国内に集中しています。当社グループは、リスク・コンプライアンス委員会の中で、危機管理体制の整備や事業継続計画(BCP)の策定等を確認し、自然災害等の有事の際に事業への影響を小さくするよう努めていますが、当社グループの生産拠点やその他当社グループのサプライチェーンにおいて、地震、津波、台風、洪水、火災、噴火その他の大規模災害、ストライキ、テロ、新型コロナウイルス感染症を含む重大な感染症の流行、停電、事故、システムトラブル、インフラの不全等が発生した場合、自社工場の稼働低下や停止、サプライチェーンからの供給の停滞、また需要の低下等により生産、販売に多大な悪影響を受ける可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、2022年に、中国のゼロコロナ政策による上海の都市封鎖(ロックダウン)を受けて、当社グループのメモリ製品の組立工程を委託している上海の後工程の工場及び物流倉庫が一時的に閉鎖される事態が生じました。当社グループは、かかる新型コロナウイルス感染症の広がりによる影響を受けて、在宅勤務の積極的な採用や、サプライチェーンにおいても複数社購買を推進する等、対策を行っておりますが、今後新たな感染症が発生し、社内、サプライチェーンや販売先拠点、若しくはその拠点のある国、地域での感染症の発症、それに伴う操業、移動に制限が発生した場合には、自社工場の稼働低下や停止、サプライチェーンからの供給の停滞、また受注の減少等により生産、販売に多大な悪影響を受ける可能性があります。また、コロナ禍において在宅勤務やオンライン学習、ビデオストリーミングサービス等が普及し、サーバー需要やゲーム需要が増加した一方、新型コロナウイルス感染症が拡大する時期にスマートフォン等の需要が低迷したように、新たな感染症がメモリ製品の需要に重大な影響を与える可能性があります。これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの生産拠点である四日市工場については、地震や洪水の危険性が高い地域に位置しており、また、北上工場については、東日本大震災で大きな被害を受けた地域に位置しています。当社グループの生産、販売拠点において地震、洪水、台風等の大規模災害や停電等が発生した場合には、生産設備の破損や操業の停止、原材料部品の調達停止、物流販売機能の麻痺等により、生産販売活動が阻害され、資産価値や生産販売能力に重大な悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 災害のみならず、当社グループ製造拠点での、製造装置の故障、部材の不具合、生産システムの不具合等により生産販売活動が阻害され、生産販売能力に重大な悪影響を与える可能性があります。2019年6月には、キオクシア株式会社四日市工場での停電による製造停止により、2020年3月期においては345億円の損失(保険収入11億円を考慮すると停電影響としては△334億円)を計上しました。こうした事象が生じた場合には、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ITシステムの障害等

 当社グループは、生産、販売、管理等多岐の業務にITシステムを使用しています。これらのシステムの不具合や外部からのコンピュータウイルスによる攻撃、不正アクセス等により、当社グループのITシステムに重大な障害が発生する可能性があります。当社は、当該リスクへの対応として、ネットワーク及びセキュリティ障害の監視を行い、外部からの攻撃や不正アクセスを検知し、障害の未然防止に努め、大規模なシステム変更やメンテナンスについては、リスク確認会等を開催し、障害のリスクを低減し 、また、障害を想定したBCP訓練を定期的に実施しています。しかしながら、かかる対応が常に有効に機能するとの保証はなく、ITシステムに重大な障害が発生した場合には、障害対策に多額の費用と労力を要するほか、復旧期間における工場の生産、受発注、出荷の停止等により、当社グループの事業活動に重大な悪影響を与える可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧個人情報やその他の機密情報の漏えい

 当社グループは、当社グループ及び取引先・調達先等の技術、研究開発、製造、販売及び営業活動等により入手した個人情報やその他機密情報を様々な形態で保持及び管理しています。当社グループにおいては、当該リスクへの対応として、情報セキュリティマネジメントに関する社内規程を定め、情報セキュリティ委員会を運営しており、システム対策と従業員への教育や訓練などを通じ、継続的な改善活動に取り組んでいます。また、個人情報保護法への対応として、拠点・関係会社を含めた情報セキュリティ体制を整備しており、迅速に対応できる連絡・通報体制を構築しています。さらに、保護対象となる情報について、社内IDによるアクセス管理やアクセス権の棚卸を定期的に実施することにより、管理を厳格化しております。しかしながら、これらの対策が常に有効である保証はなく、予期せぬ事態により当社グループが保持又は管理する情報が漏えいし、第三者がこれを不正に取得又は使用するような事態が生じた場合、営業秘密の流出による競争力の低下や顧客の信用や社会的信用の低下を招くほか、個人情報の流出やシステム改修等の対応に係るコストの発生や当社グループに対して損害賠償を求める訴訟が提起されるなどにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)財務リスク

 

①多額の借入金及び社債型優先株式

 当社グループは、金融機関を貸付人とする融資契約(シンジケートローン)を締結し、多額の借入を行っております。短期借入金と長期借入金の合計は2022年3月期において1,100,435百万円、2023年3月期において1,074,886百万円、2024年3月期において1,111,312百万円となっており、かかる有利子負債に係る金利が上昇した場合には、金利負担が増加する可能性があります。また、当社グループは、2020年3月期において甲種優先株式及び乙種優先株式(以下これらの優先株式を総称して「社債型優先株式」という。)の発行による資金調達を実施しており、それら社債型優先株式は期限満了をもって償還を行う設計としているため、当社が連結決算において採用するIFRSでは負債として扱われます。社債型優先株式の残高は2022年3月期において309,012百万円、2023年3月期において309,367百万円、2024年3月期において322,741百万円となっております。連結総資産に対する借入金残高及び社債型優先株式残高の合計額は2022年3月期において45.9%、2023年3月期において46.5%、2024年3月期において50.1%を占めております。当社グループは、かかる融資契約及び社債型優先株式の引受契約/投資契約に基づき財務制限条項等一定の条件の遵守が課されており、融資契約については、当社グループ資産の担保提供を課されております。当社グループが融資契約や引受契約/投資契約における財務制限条項等の条件への抵触等により期限前弁済事由や償還(金銭を対価とする取得)事由に該当する状況となった場合には、貸付人又は引受人からの請求により直ちに返済ないし償還のための資金確保が必要となりますが、適時に、また当社にとって望ましい条件で、借換え等による資金確保ができる保証はなく、また、融資契約に基づき返済ができない場合には、担保権を実行される可能性があります。なお、財務制限条項等の内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 15.借入金及びその他の金融負債」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 要約中間連結財務諸表注記 6.借入金及びその他の金融負債」をご参照ください。当社グループは競争力の強化や収益力向上を通じた財務体質の強化に努めますが、これらの事由により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、社債型優先株式の株主は、剰余金の配当及び残余財産の分配に際し、普通株主に先立って、あらかじめ定められた方法で算出される一定額の優先配当金又は残余財産分配金の支払いを受けることができるとされているため、当社の普通株主は、優先株主に対する上記の優先配当金又は残余財産分配金の支払いがなされない場合には、剰余金の配当又は残余財産の分配を受けることができません。当該優先配当金については、一定期間の経過により、配当年率が上昇するとされています。また、当社は、その選択により、普通株主への配当又は上記の優先配当に先立ち、又は、これらを行った後に、社債型優先株式の株主に対して特別配当を行うことができるとされており、これにより当社グループのキャッシュ・フローや配当能力に影響が生じ得る可能性があります。なお、社債型優先株式に係る剰余金の配当及び残余財産の分配に係る規定の詳細については、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況」をご参照ください。

 また、キオクシア株式会社四日市工場の土地については、セール・アンド・リースバック取引を行っており、年間2,667百万円の賃料を負担しています。なお、セール・アンド・リースバック取引の詳細については、後記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。

 

②のれんの減損

 2024年3月期末におけるのれんは395,405百万円であり、連結資産合計の13.8%を占めています。当社グループにおける重要なのれんは、2018年6月に旧東芝メモリ株式会社の全株式を取得した際に認識したのれんであります。当社が連結決算において採用するIFRSでは、のれんについては償却を行わず、事業年度毎又は減損の兆候が確認される場合において減損テストを実施します。そして、当社グループの事業の収益やキャッシュ・フロー創出力が低下したと認められる場合に減損損失を計上することが必要となり、これにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社が連結決算において採用するIFRSでは、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準と異なり、前述のとおりのれんの償却を行いません。そのため、のれんの減損損失の計上が必要となる場合、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づく減損損失の計上額に比して、損失計上額が多額となる可能性があります。

 

③繰延税金資産

 当社グループは、現行の会計基準に基づき、税務上の繰越欠損金等及び将来減算一時差異に対して将来の課税所得を合理的に見積り回収可能性の検討をした上で繰延税金資産(2024年3月期末における純額は370,686百万円)を計上しております。当社及び当社グループ各社の経営成績や経営環境の著しい変化により、繰延税金資産の全部又は一部に回収可能性がないと判断した場合や、税率変更を含む税制改正又は会計基準の改正等が行われた場合には、当該繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)金融市場リスク

 

①為替変動

 当社グループの事業活動は、世界各地域において様々な通貨により行われているため、当社グループの事業、経営成績及び財政状態は、為替相場の変動による影響を受けます。特に、当社グループの売上収益は基本的に外貨建てとなり、他方で前工程の製造拠点は日本国内にあるため、営業費用の相当部分は円建てとなり得ることから、円高が進行した場合には当社グループの事業、経営成績及び財政状態への悪影響を及ぼします。

 当社グループは、定期的にヘッジ取引を行うことで、為替相場の変動の影響を極小化する対応に努めていますが、為替ヘッジの期間は実需の規模を見通すことができる数ヵ月としているため、その効果は限定されます。また、急激な為替変動により、外貨建ての債権債務の計上時期と決済時期の為替レートの差異から生じる為替換算差損が発生する可能性があります。

 また、当社グループの保有する外貨建ての資産、負債等を連結財務諸表の表示通貨である円に換算することによって発生する外貨換算調整額は、その他の包括利益として資本に含めて報告されます。このため、当社グループの親会社の所有者に帰属する持分は為替相場の変動により悪影響を受ける可能性があり、これにより当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②資金調達環境の変化

 当社グループは、金融機関からの借入れや社債型優先株式の発行等による資金調達を行っており、上場後は資本市場での資本性資金の調達も選択肢となりますが、資金調達の可否及び条件は、金融・証券市場の環境、金利等の動向、資金需給の状況、貸し手又は出資者側の融資・投資方針の変更等の影響を強く受けるため、これらの環境の変化が、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、金融機関からの借入れについては、財政状態の悪化による当社の信用力の低下、金融市場の混乱、金融機関に対する自己資本規制強化等に伴い、金融機関が貸出しを圧縮するなど当社グループに対する融資方針を変更した場合には、以後新たに同様の条件により借換え又は新規の借入れを行えるとの保証はなく、当社グループが適時に必要とする金額の借入れを行うことができず、又は資金調達コストが増加する場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 フラッシュメモリは、量産効果が大きく、新製品の開発競争も激しいため、価格、品質等の競争力を維持、強化するためには、多額の設備投資と研究開発投資が必要ですが、当社グループが前述の理由により適時に必要とする資金を調達できない場合には、必要な時期に必要な設備投資や研究開発を実施できない可能性があり、これにより当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)法的リスク

 

①重要な訴訟事件等の発生に係るもの

 当社グループは全世界において事業活動を展開しており、訴訟やその他の法的手続に関与し、当局による調査を受ける可能性があります。地域ごとに裁判制度の違いがあり、またこれらの手続は本来見通しがつきにくいものであり、当社グループの想定を超えた金額の支払いや販売差し止め等業務や取引の制限や停止が命じられる可能性も皆無ではありません。このため、訴訟やその他の法的手続、当局による調査の結果、当社グループに不利益な決定がなされた場合、その決定の内容によっては当社グループの事業、経営成績、財政状態、社会的評価・信用に影響を及ぼす可能性があります。また、様々な事情により、訴額の大きな訴訟等が提起された場合には、仮に損害賠償等の金銭の支払いが命じられる可能性が低いとしても、社会的な注目を集める結果、当社グループの社会的評価が低下する可能性があります。当社は、当該リスクへの対応として、外部との取引において当社グループと相手方の責任範囲を明確化する契約の締結に努めるとともに、個別事案については外部の専門性の高い弁護士のアドバイスを取得して対応する方針ですが、これらの施策が常に有効に機能するとの保証はなく、訴訟事件等の内容と結果によっては、当社グループの事業展開、経営成績、社会的評価、及び信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

②知的財産権保護

 当社グループは、当社グループの技術やノウハウを保護するため、関連する各部門が連携し、知的財産権の確保に努めています。しかしながら、地域によっては知的財産権に対する十分な保護が得られない可能性があり、これらの地域での第三者による当社の知的財産権を侵害する製品の販売等により当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、当社グループの製品の製造や研究開発の一部を第三者に委託し、また、当社グループの知的財産権を第三者に使用させておりますが、かかる第三者により当社グループの技術やノウハウを不適切に利用される可能性も皆無ではありません。

 当社グループは、第三者からの使用許諾を受けて第三者の知的財産権を使用していることがありますが、今後、必要な使用許諾を第三者から受け入れられない可能性や、不利な条件での使用許諾しか受けられなくなる可能性があり、これらの事態が生じた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、メモリ業界においては、主要な製造業者それぞれが多数の重要な特許を保有しており、それらを相互にクロスライセンスすることが一般的に行われています。他社が当社グループに比して有効かつ多数の特許を保有するに至った場合やクロスライセンスに関する経営方針を変更する場合には、当社グループの製品の製造や販売に制約が生じ、又はライセンス料の支払いが高額となる可能性があります。

 また、当社グループが知的財産権に関する訴訟等を提起される、又は自らの知的財産権を保全するために訴訟等を提起する可能性があります。このような訴訟等には、時間、費用その他の経営資源が費やされ、また、訴訟等の結果によっては、当社グループが重要な技術を利用できなくなる可能性や損害賠償責任を負う可能性があり、これにより当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③品質問題

 当社グループは、製品の特性に応じて最適な品質を確保できるよう、国際標準規格である品質マネジメントシステムISO9001及びIATF16949、環境マネジメントシステムISO14001を取得しております。重大な品質問題を防ぐため、製品出荷判定プロセスの実行、製造工程での品質管理、継続的な品質改善の推進、不具合発生時の是正及び予防処置等を行っております。しかしながら、今後当社グループや、当社グループの委託先、調達先に起因するものを含む品質問題が発生する可能性は皆無ではありません。また、重大な品質問題が発生し、顧客への納入の大幅な遅延や再作業が必要となった場合、多額の費用負担や損害賠償責任が生じる可能性があり、またSSD、USBメモリ、SDメモリカード等については一般ユーザーに対する製造物責任も生じる可能性があり、その場合の対応費用や損害賠償の額は甚大となり、また当社グループ又は当社グループの製品に対する社会的信頼が著しく低下する可能性があります。これにより当社グループの事業展開、経営成績、社会的評価、及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

④環境関係

 当社グループは、大気汚染、水質汚濁、有害物質、廃棄物処理、製品リサイクル、地球温暖化防止、エネルギー等に関し、世界各国において様々な環境関連法令(近時では、米国におけるPFAS規制など)の適用を受けています。当社グループは、法令等のチェック体制を構築し、関係する法令等の動向を注視する等、法的規制の遵守に努めるとともに、事業活動における環境への影響をモニタリングし、リスクの低減に努めておりますが、かかる環境関連法令の下、当社グループは、過失の有無にかかわらず、製造等の拠点における土地の浄化責任を負うことがあるなど、過去分を含む事業活動に関し、環境に関する法的、社会的責任を負う可能性があります。また将来環境に関する規制や社会的な要求がより厳しくなり、有害物質の除去や温室効果ガス排出削減等の責任が更に追加される可能性があり、これにより当社グループの事業活動に制約が生じ、又はかかる規制に対応するためのコストが増加する可能性があるほか、かかる環境関連の規制又は社会的要請に適切に対応しないことにより当社グループに対する社会的評価・信用が低下するなど、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤コンプライアンス

 当社グループは、事業を展開する各国の法令、規則の適用を受けます。かかる法令等のコンプライアンス体制の整備、業務の適正化の為に必要な内部統制システムの導入を図っておりますが、内部統制システムに内在する限界、法規制、法解釈の変更等により法規制等の遵守が困難になる可能性があります。当社グループは、当該リスクを軽減するため、リスク・コンプライアンス委員会を設置しております。また、コンプライアンス教育の実施により法令遵守の周知徹底を行うとともに、内部監査によるモニタリングを実施しておりますが、これらの取組みにもかかわらず、コンプライアンス違反が発生し、業務停止等の行政処分を受けた場合には、業務への障害、罰則や課徴金の適用、法令違反に係る損害賠償請求、当社グループに対する社会的評価・信用の低下等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)株主等の関係に関するリスク

 

①ベインキャピタルグループとの関係

 当社はグローバルなプライベート・エクイティファームであるベインキャピタルグループが投資助言を行うファンドから、BCPE Pangea Cayman, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1B, L.P.及びBCPE Pangea Cayman2, Ltd.を通じて出資を受けており、これらのファンドは本書提出日現在では当社発行済普通株式の56.23%を間接的に保有する株主となっております。また、当社の取締役である杉本勇次、末包昌司、当社の監査役である中浜俊介の3名がベインキャピタルグループから派遣されております。

 当社は、Bain Capital Private Equity, L.P.とのマネジメント契約に基づき、同社より戦略立案、資金調達、オペレーション等に関する経営指導を受けており契約に基づくフィーを年間10億円(諸経費を除く)支払っております。なお、当社の新規株式公開等の場合は、35億円をそのクロージング時に支払う義務を負っていますが、それ以降は当該契約に基づく対価の支払いは発生しません(なお、後記「5 経営上の重要な契約等」に記載の、BCPE Pangea Cayman, L.P.、BCPE Pangea Cayman2, Ltd.、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1B, L.P.、株式会社東芝、HOYA株式会社、キオクシア株式会社及び当社との間の株主間契約は、当社普通株式の上場日に終了します)。

 ベインキャピタルグループが投資助言を行うファンドは、当社の上場時において所有する当社株式の一部を売却する予定であり、またBain Capital Private Equity, L.P.とのマネジメント契約は当社の上場時に終了いたしますが、上場後においても相当数の当社株式を保有する予定であるため、当社について他の一般株主と異なる利害関係を有しており、一般株主が期待する議決権の行使その他の行為を行わない可能性があります。

 

②東芝グループとの関係

a 株式会社東芝との資本関係

 株式会社東芝は、本書提出日現在、当社の発行済普通株式の40.64%を保有しております。株式会社東芝によれば、2017年9月29日及び2019年11月11日付で同社の保有する当社普通株式に係る議決権の行使に当たり、株式会社INCJに対し、当該普通株式に係る議決権の一部について指図権を付与する旨合意したとのことですが、当社普通株式の上場日をもって当該指図権を消滅させる旨株式会社INCJと合意していると伺っています。株式会社東芝は、当社の上場時において所有する当社株式の一部を売却する予定であり、上場後においても相当数の当社株式を保有する予定であること、また知的財産のクロスライセンスなど当社の一般株主と異なる利害関係を有していることから、株式会社東芝が保有する普通株式に係る議決権については、一般株主の利害と異なる議決権の行使が行われる可能性があります。

b 東芝グループとの取引関係・契約関係

 当社は、後記「5 経営上の重要な契約等」に記載のとおり、株式会社東芝との間で、メモリ事業に必要な特許権及び技術情報に係るクロスライセンス契約を締結しております。今後、当該クロスライセンス契約が終了した場合や契約の条件が当社に不利益に変更される場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 更に当社グループと東芝グループとの取引は、取引の合理性と取引条件の妥当性を確認したうえで行っており、対等な立場で行われているものではありますが、当社と特定の関係を有する者との取引であるため、東芝グループとの取引の条件その他に何らかの影響が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③SK hynix Inc.との関係

 当社グループの競合他社であるSK hynix Inc.は、当社の普通株式77,400,000株(本書提出日現在の発行済普通株式数の14.96%に相当します。)を保有するBCPE Pangea Cayman2, Ltd.に対して、同エンティティのほぼ全ての議決権に係る株式に転換可能な社債を保有しております。他方、SK hynix Inc.は、当社との間で、当社の合意がない限り、2028年まで同社が当社の総議決権数の15%超を保有することはできない旨合意しております。SK hynix Inc.は本書提出日現在までの間にかかる社債の株式への転換を行っていませんが、SK hynix Inc.は、すでに各国の独占禁止法並びに外国為替及び外国貿易法に基づく必要な手続を開始している可能性があり、その完了をもって、いつでも当該社債を同エンティティの株式に転換することが可能であり、そのような転換を早期に行うことも合理的に予測されます。SK hynix Inc.は、かかる転換により、当該エンティティを通じて当社の株主総会における議決権行使が可能となります(なお、SK hynix Inc.と当社又は当社の他の主要株主との間に当該合意の他に特段の契約はなく、当該エンティティが保有する当社普通株式に係る権利の行使以外に、同社が当社の経営に影響を及ぼすことはないものと認識しております。)が、SK hynix Inc.は当社グループと競合関係にあるため、その議決権行使は当社の一般株主の利害とは異なる可能性があります。

 

④関連当事者取引

 当社グループは、当社のグループ会社間の取引のほか、株式会社東芝及びその子会社との間で製品の加工委託やITシステムの保守サービス等に係る取引があります。当社グループは、関連当事者取引の必要性、妥当性を確認した上で、公正な取引条件によって取引を行う体制を構築しており、このような関連当事者取引等についても対等な立場で行われておりますが、当社グループと特定の関係を有する者との取引であるため、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤当社株主による当社株式の処分に係るもの

 べインキャピタルグループが投資助言を行うファンドが保有するエンティティ(BCPE Pangea Cayman, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.、BCPE Pangea Cayman 1B, L.P.及びBCPE Pangea Cayman2, Ltd.)、株式会社東芝及びHOYA株式会社は、本書提出日現在、当社の総株主の議決権数のそれぞれ56.23%、40.64%及び3.13%に相当する当社普通株式をそれぞれ保有しております。当社普通株式の上場後において、これらの株主による当社普通株式の売却が行われ、又はかかる売却により当社普通株式の需給状況が悪化するとの観測が市場で広まった場合には、当社普通株式の市場での取引や市場価格に影響を及ぼす可能性があります。

 また、今後ストック・オプションや譲渡制限付き株式を多数発行する場合には、これらの行使や売却により、株式価値に、希薄化等の影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥大規模な公募又は売出しを伴う新規上場に係る特例の適用及び当社普通株式の流動性

 当社は、取引所プライム市場への上場を予定しており、上場に際しては、公募増資及び売出しによって当社普通株式の流動性の確保に努めることとしております。新規上場時における流通株式比率につき、取引所は新規上場時における株式の公募又は売出しの規模が1,000億円以上の見込みである場合に、「流通株式比率に係る基準に適合するための計画書」を提出することで、上場時に求められる流通株式比率は10%以上の見込みで足りるとされます。当社は新規上場に際して、この「大規模な公募又は売出しを伴う新規上場に係る特例」の適用を受けております。なお、当社普通株式の流通株式比率は新規上場時においてオーバーアロットメントによる売出しを除いて35%を下回る見込みであります。当社は、上場後最初に到来する事業年度の末日の翌日から起算して5年を経過する日までの間に東証が定める上場維持基準である流通株式比率35%以上を当社株式の上場維持のため実現するよう企業価値の増大に向けた成長施策の実践を進めていく方針であり、かつ、引き続き各大株主への追加的な当社株式の売却等の検討と実行を要請してまいりますが、何らかの事情により当該基準を達成することができない場合には、上記特例の適用期間終了後に上場廃止となる、又はプライム市場から他の市場に移行し、当社普通株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社普通株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)気候変動リスク

 

①気候変動に伴う移行・物理的リスク

 気候変動に対して、当社グループは、2040年度までに使用電力の100%を再生可能エネルギーに転換、さらに、2050年度までにグローバルな事業活動に伴う温室効果ガスの直接・間接排出(スコープ1、2)をネットゼロにするという目標を設定し、当社グループ工場での太陽光発電等再生可能エネルギーの導入、製造における省エネルギー化、工場での温室効果ガスの排出量削減などを進めています。しかしながら、脱炭素社会に向けた各国・地域での炭素税等の導入や、再生可能エネルギー証書及び再生可能エネルギーの導入、更に生産拡大とともに増加する温暖化係数の高いPFC等ガスを除害する装置の導入によるコスト増加等で、当社グループのサステナビリティへの取り組みにかかる支出が増加する可能性があります。また、気候変動に伴う物理的リスクとして、外部気温上昇によるクリーンルームの温度調整のための空調コストの増加や、洪水や大規模豪雨などの自然災害の増加、長期的な気候パターンの変化等が、当社グループ及びサプライチェーンに影響を及ぼし、工場の操業低下、停止等事業活動が制限される可能性があります。こうした状況に対応するため、電力使用量や温室効果ガス排出量を抑制するため、全社横断的なワーキンググループを設置し、空調や装置冷却エネルギーの削減、製造プロセスの効率化、PFCガスの使用量削減に取り組んでいます。また、洪水・土砂災害ハザードマップでリスクのある建物に関しては、洪水時の被害を低減するための対策を実施しています。しかしながら、これらの取組みが成果をあげられない可能性があり、かかる場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

 当社グループにおける財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の分析は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

 当社グループの経営成績等の状況の概要は次のとおりであります。

 当社グループはメモリ事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しておりますが、売上収益を製品の用途に応じたアプリケーション別に区分しています。「SSD & ストレージ」には主にPC、データセンター、エンタープライズ向けSSD製品及びメモリ製品が含まれています。「スマートデバイス」にはスマートフォン、タブレット、テレビ等の民生機器、車載、産業機器等の用途で使用される制御機能付きの組み込み式メモリ製品が含まれています。「その他」にはSDメモリカード、USBメモリ等のリテール向け製品及び製造合弁会社3社経由で計上されるWestern Digitalグループ向けの売上収益等が含まれています。

 また、当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下「Non-GAAP指標」という。)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。

 Non-GAAP指標は、IFRSに基づく利益から、非経常的な項目としてPPA(Purchase Price Allocation)影響額、2019年6月に四日市工場で発生した停電影響額及び2022年1月下旬に発生した3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」の特定の生産工程における不純物を含む部材を起因とする四日市工場と北上工場での操業影響額を調整したものです。

 経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。Non-GAAP指標は、当社グループの経営上の社内指標であり、IFRSに基づく会計項目ではなく、また、監査法人の監査又は期中レビューを受けた数値ではありません。そのため、当社グループの実際の財政状態や経営成績を正確に示していない可能性があります。なお、非経常的な項目とは、一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。

 

①経営成績の状況

2024年3月期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

 前連結会計年度

(自 2022年4月1日

  至 2023年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 前期比増減

(+:増加、

-:減少)

売上収益

1兆2,821

億円

1兆766

億円

-2,055

億円

SSD & ストレージ

6,540

億円

5,164

億円

-1,377

億円

スマートデバイス

4,402

億円

3,743

億円

-659

億円

その他

1,879

億円

1,859

億円

-20

億円

Non-GAAP営業利益(△損失)

△674

億円

△2,540

億円

-1,866

億円

不純物を含む部材を起因とする操業影響額(△損失)

億円

76

億円

+76

億円

PPA影響額等(△損失)

△316

億円

△63

億円

+253

億円

営業利益(△損失)

△990

億円

△2,527

億円

-1,537

億円

税引前利益(△損失)

△1,864

億円

△3,433

億円

-1,569

億円

当期利益(△損失)

△1,381

億円

△2,437

億円

-1,056

億円

Non-GAAP親会社の所有者に帰属する

当期利益(△損失)

△1,164

億円

△2,446

億円

-1,282

億円

親会社の所有者に帰属する

当期利益(△損失)

△1,381

億円

△2,437

億円

-1,056

億円

基本的1株当たり当期利益(△損失)

△266.94

△470.97

-204.03

 (注) 本表における億円単位表記箇所については、Non-GAAP数値、PPA影響額等及び不純物を含む部材を起因とする操業影響額を除き「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に記載の数値から億円未満を四捨五入した数値を記載しています。

 

 当連結会計年度における世界経済は、先進国では物価高が継続しており、長期金利が高水準に推移しているものの、堅調な労働市場が賃金を押し上げており個人消費は底堅く推移しています。しかしながら、新興国においては経済成長の鈍化が見られ、世界経済においても地政学リスクが高まっており不透明な見通しが続いています。為替レートは国内外の金利差を受けて2023年3月以降、大幅な円安が急速に進みました。

 フラッシュメモリ市場において、2022年後半から継続した需要低迷に伴い、顧客の在庫水準が上昇し、需給バランスが急激に悪化し、販売価格の大幅な下落を招きました。これを受けてフラッシュメモリ製造業者各社は減産を開始しコスト削減策に着手したものの、未稼働製造固定費や棚卸資産評価損の計上を要し、販売価格の下落を吸収できず、経営成績が大幅に悪化しました。

 2023年後半からフラッシュメモリ製造業者各社の減産及び投資抑制が効果を表し始め、また顧客における在庫水準が適正化に向かったため、需給バランスの改善と販売価格上昇が生じました。アプリケーション別では、スマートフォン及びPCは顧客の在庫水準の正常化により需要が回復し、今後、オンデバイスAIの登場、メモリ搭載容量の増加及びPCのオペレーティングシステム更新に伴う買い替え需要も期待されます。データセンター・エンタープライズSSDの需要は、2024年後半に向かって回復傾向がみられており、AI用途での大容量のSSDなどによる今後の需要増加が見込まれています。

 当連結会計年度の売上収益のうちSSD & ストレージにつきましては、売上収益全体の48.0%を占める5,164億円(前期比1,377億円減少)となりました。出荷量(記憶容量ベース)は増加しましたが、販売価格が大幅に下落し、前期比で減収となりました。また、スマートデバイスにつきましては、売上収益全体の34.8%を占める3,743億円(前期比659億円減少)となりました。出荷量(記憶容量ベース)は増加しましたが、販売価格が大幅に下落し、前期比で減収となりました。

 以上の結果、当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)の売上収益は1兆766億円(前期比2,055億円減少)となりました。主な減収要因は販売価格の大幅な下落によるものです。なお、出荷量(記憶容量ベース)は前期比で増加しました。営業損失は2,527億円(前期比1,537億円悪化)、税引前損失は3,433億円(前期比1,569億円悪化)となりました。販売価格の大幅な下落と、生産調整による未稼働製造費用の影響があり、棚卸資産評価損の減少による改善と製造費等のコスト削減は貢献しましたが、損益は大幅に悪化しました。金融費用927億円(前期比255億円減少)及び法人所得税費用等控除後、親会社の所有者に帰属する当期損失は2,437億円(前期比1,056億円悪化)となりました。また、PPA影響額(△63億円)と2022年1月下旬に発生した3次元フラッシュメモリ「BiCS FLASH™」の特定の生産工程における不純物を含む部材を起因とする四日市工場と北上工場での操業影響に係る受取保険金(76億円)を除くNon-GAAP営業損失は2,540億円(前期比1,866億円悪化)、Non-GAAP親会社の所有者に帰属する当期損失は2,446億円(前期比1,282億円悪化)となりました。

 

2025年3月期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

 当中間連結会計期間(2024年4月1日~9月30日)における世界経済は、先進国において物価上昇が鈍化していることなどから金融政策が引き締めから緩和に転じ、労働市場や個人消費が堅調であることから景気も底堅く推移しました。新興国においては、不動産市場低迷の影響から個人消費と製造業が弱含み、景気の停滞がみられます。また、ウクライナや中東地域の一段の緊張など地政学リスクは引き続き高い状況下にあり、世界経済における不透明な見通しが続いています。

 フラッシュメモリ市場において、減産及び投資抑制が2023年後半から効果を表し始めて需給バランスの改善と販売単価の上昇が生じましたが、直近では販売単価の上昇率が緩やかになっています。アプリケーション別では、SSD & ストレージにつきましては、PC向け需要は顧客の在庫が高水準となっており回復が弱含み、また、今後も需要が弱含む状況が短期的に継続すると見込まれますが、今後AI搭載モデルの普及、メモリ搭載容量の増加及びPCのオペレーティングシステム更新に伴う買い替えによる需要回復が期待されております。エンタープライズ、データセンターSSDの需要は、AI需要により伸長しました。大手テクノロジー企業が引き続きAI投資に注力しており、今後AI関連サービスの拡大からAI推論向けサーバーが増加し、従来サーバーの買い替え需要の増加と併せて継続した需要増加が期待されております。スマートデバイスにつきましては、新規モデル等への部品取り込みによるスマートフォン向け需要の季節性要因により、出荷量(記憶容量ベース)は増加しました。足元では顧客の在庫が高水準となっており、需要が弱含む状況が短期的に継続すると見込まれますが、その後はAI搭載モデルの普及の増加による需要回復が見込まれています。

 

■前四半期比較表

 

   当第1四半期

   連結会計期間

 (自 2024年4月1日

  至 2024年6月30日)

   当第2四半期

   連結会計期間

 (自 2024年7月1日

  至 2024年9月30日)

前四半期比

(+:増加、

-:減少)

売上収益

4,285

億円

4,809

億円

+524

億円

SSD & ストレージ

2,231

億円

2,742

億円

+511

億円

スマートデバイス

1,519

億円

1,526

億円

+7

億円

その他

536

億円

541

億円

+6

億円

Non-GAAP営業利益

1,262

億円

1,663

億円

+402

億円

PPA影響額等(△損失)

△3

億円

△3

億円

+0

億円

営業利益

1,259

億円

1,660

億円

+402

億円

税引前四半期利益

997

億円

1,492

億円

+494

億円

四半期利益

698

億円

1,062

億円

+365

億円

Non-GAAP親会社の所有者に帰属する四半期利益

700

億円

1,064

億円

+365

億円

親会社の所有者に帰属する

四半期利益

698

億円

1,062

億円

+365

億円

基本的1株当たり四半期利益

(△損失)

134.80

205.26

70.46

 (注) 本表における億円単位表記箇所については、Non-GAAP数値及びPPA影響額等を除き「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に記載の数値から億円未満を四捨五入した数値を記載しています。

 

 当第2四半期連結会計期間(2024年7月1日~9月30日)の売上収益は4,809億円(前四半期比524億円増加)となりました。この大幅な増収は、出荷量(記憶容量ベース)の増加や販売単価の上昇によるものです。アプリケーション別では、SSD & ストレージの売上収益は2,742億円(前四半期比511億円増加)、スマートデバイスの売上収益は1,526億円(前四半期比7億円増加)となりました。

 営業利益は1,660億円(前四半期比402億円改善)と大幅に改善しました。これは、前述の出荷量(記憶容量ベース)の増加や販売単価の上昇を受けた売上収益の増加によるものです。金融費用208億円(金利上昇によって支払利息が増加した一方、為替差損益が改善したため、前四半期比54億円減少)等控除後、税引前四半期利益は1,492億円(前四半期比494億円改善)となりました。法人所得税費用等控除後、親会社の所有者に帰属する四半期利益は1,062億円(前四半期比365億円改善)となりました。また、PPA影響額(△3億円)を除くNon-GAAP営業利益は1,663億円(前四半期比402億円改善)、Non-GAAP親会社の所有者に帰属する四半期利益は1,064億円(前四半期比365億円改善)となりました。

 

■前年同期比較表

 

   前中間

   連結会計期間

 (自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

   当中間

   連結会計期間

 (自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

前年同期比

(+:増加、

-:減少)

売上収益

4,925

億円

9,094

億円

+4,169

億円

SSD & ストレージ

2,134

億円

4,973

億円

+2,838

億円

スマートデバイス

1,856

億円

3,044

億円

+1,189

億円

その他

935

億円

1,077

億円

+142

億円

Non-GAAP営業利益(△損失)

△2,260

億円

2,925

億円

+5,185

億円

PPA影響額等(△損失)

△56

億円

△6

億円

+50

億円

営業利益(△損失)

△2,316

億円

2,919

億円

+5,235

億円

税引前中間利益(△損失)

△2,690

億円

2,489

億円

+5,180

億円

中間利益(△損失)

△1,891

億円

1,760

億円

+3,651

億円

Non-GAAP親会社の所有者に帰属する中間利益(△損失)

△1,852

億円

1,764

億円

+3,616

億円

親会社の所有者に帰属する

中間利益(△損失)

△1,891

億円

1,760

億円

+3,651

億円

基本的1株当たり中間利益

(△損失)

△365.42

340.06

+705.48

 (注) 本表における億円単位表記箇所については、Non-GAAP数値及びPPA影響額等を除き「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に記載の数値から億円未満を四捨五入した数値を記載しています。

 

 当中間連結会計期間の売上収益は9,094億円(前年同期比4,169億円増加)となりました。この大幅な増収は出荷量(記憶容量ベース)の増加や販売単価の大幅な上昇及び円安の好影響によるものです。

 営業利益は2,919億円(前年同期比5,235億円改善)となりました。この大幅な改善は、前述の出荷量(記憶容量ベース)の増加や販売単価の上昇を受けた売上収益の増加の影響に加えて前年同期には未稼働製造費用があったことなどによるものです。金融費用445億円(金利上昇による支払利息の増加等により前年同期比59億円増加)等控除後、税引前当期中間利益は2,489億円(前年同期比5,180億円改善)となりました。法人所得税費用等控除後、親会社の所有者に帰属する中間利益は1,760億円(前年同期比3,651億円改善)となりました。また、PPA影響額(△6億円)を除くNon-GAAP中間営業利益は2,925億円(前年同期比5,185億円改善)、Non-GAAP親会社の所有者に帰属する中間利益は1,764億円(前年同期比3,616億円改善)となりました。

 

②財政状態の状況

2024年3月期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

前連結会計年度

(2023年3月31日)

当連結会計年度

(2024年3月31日)

前期末比増減

(+:増加、-:減少)

資産合計

2兆9,745億円

2兆8,649億円

-1,095億円

負債合計

2兆3,163億円

2兆4,152億円

+989億円

資本合計

6,582億円

4,498億円

-2,084億円

親会社の所有者に帰属する持分

6,581億円

4,496億円

-2,084億円

親会社所有者帰属持分比率

22.1%

15.7%

-6.4ポイント

 (注) 本表における億円単位表記箇所については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に記載の数値から億円未満を四捨五入した数値を記載しています。

 

(資産)

 当連結会計年度末の資産は、2兆8,649億円となり、前期末に比べて1,095億円減少しました。

 これは、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の増加等により繰延税金資産が957億円増加した一方、業績悪化等により現金及び現金同等物が738億円減少、生産調整影響等により棚卸資産が923億円減少、設備投資の抑制等により有形固定資産が1,127億円減少したことなどによるものです。

 

(負債)

 当連結会計年度末の負債は2兆4,152億円となり、前期末に比べて989億円増加しました。

 これは、リボルビング・クレジット・ファシリティ枠の活用等により借入金(流動負債及び非流動負債)が364億円増加、契約負債の増加等によりその他の流動負債590億円が増加したことなどによるものです。

 

(資本)

 当連結会計年度末の資本は4,498億円となり、前期末に比べて2,084億円減少しました。

 主な減少要因は、当期損失2,437億円の計上です。この結果、親会社所有者帰属持分比率は15.7%となり、前期末に比べて6.4ポイント減少しました。

 

2025年3月期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当中間連結会計期間

(2024年9月30日)

前期末比増減

(+:増加、-:減少)

資産合計

2兆8,649億円

2兆9,256億円

+606億円

負債合計

2兆4,152億円

2兆3,077億円

-1,075億円

資本合計

4,498億円

6,179億円

+1,682億円

親会社の所有者に帰属する持分

4,496億円

6,178億円

+1,682億円

親会社所有者帰属持分比率

15.7%

21.1%

+5.4ポイント

 (注) 本表における億円単位表記箇所については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に記載の数値から億円未満を四捨五入した数値を記載しています。

 

(資産)

 当中間連結会計期間末の資産は2兆9,256億円となり、前期末に比べて606億円増加しました。

 これは、売上収益増加に伴い営業債権及びその他の債権が701億円、棚卸資産が598億円増加した一方で、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の減少等により繰延税金資産が489億円減少したことなどによるものです。

 

(負債)

 当中間連結会計期間末の負債は2兆3,077億円となり、前期末に比べて1,075億円減少しました。

 これは、リボルビング・クレジット・ファシリティの返済等により借入金(流動負債及び非流動負債)が2,213億円減少した一方で、リース負債(流動負債及び非流動負債)が422億円増加したことなどによるものです。

 

(資本)

 当中間連結会計期間末の資本は6,179億円となり、前期末に比べて1,682億円増加しました。

 主な増加要因は、中間利益1,760億円の計上です。この結果、親会社所有者帰属持分比率は21.1%となり、前期末に比べて5.4ポイント増加しました。

 

③キャッシュ・フローの状況

2024年3月期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比増減

(+:増加、-:減少)

営業活動によるキャッシュ・フロー

3,391

億円

1,951

億円

-1,440

億円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△4,986

億円

△2,749

億円

+2,237

億円

財務活動によるキャッシュ・フロー

△508

億円

32

億円

+540

億円

 (注) 本表における億円単位表記箇所については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に記載の数値から億円未満を四捨五入した数値を記載しています。

 

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,876億円となり、前期末に比べて738億円減少となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、獲得した資金は1,951億円(前年同期は3,391億円の獲得)となりました。

 主な内容は、税引前損失3,433億円(前年同期は1,864億円)、減価償却費及び償却費3,461億円(前年同期は4,182億円)、棚卸資産の減少945億円(前年同期は棚卸資産の増加566億円)、営業債権及びその他の債権の増加244億円(前年同期は営業債権及びその他の債権の減少1,834億円)、営業債務及びその他の債務の増加759億円(前年同期は営業債務及びその他の債務の減少333億円)などです。また、獲得した資金が前期比1,440億円減少した主な要因は、棚卸資産の減少等による資金獲得が増加した一方で、税引前損失の計上等による資金流出が増加したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は2,749億円(前年同期は4,986億円の使用)となりました。

 主な内容は、有形固定資産の取得による支出3,044億円(前年同期は5,064億円)などです。また、使用した資金が前期比2,237億円減少した主な要因は、設備投資の抑制に伴う有形固定資産の取得による支出の減少によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、獲得した資金は32億円(前年同期は508億円の支出)となりました。

 主な内容は、短期借入金の純増加額911億円(前年同期は276億円)、長期借入による収入1,681億円(前年同期は1,599億円)、長期借入金の返済による支出2,285億円(前年同期は2,156億円)などです。また、獲得した資金が前期比540億円増加した主な要因は、リボルビング・クレジット・ファシリティ枠の活用等による資金調達額が、借入金返済額を上回ったことなどによるものです。

 

2025年3月期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

 

   前中間

   連結会計期間

 (自 2023年4月1日

  至 2023年9月30日)

   当中間

   連結会計期間

 (自 2024年4月1日

  至 2024年9月30日)

前年同期比増減

(+:増加、-:減少)

営業活動によるキャッシュ・フロー

372億円

2,419億円

+2,046億円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,841億円

△628億円

+1,213億円

財務活動によるキャッシュ・フロー

350億円

△2,217億円

-2,567億円

 (注) 本表における億円単位表記箇所については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に記載の数値から億円未満を四捨五入した数値を記載しています。

 

 当中間連結会計期間末における現金及び現金同等物の残高は1,437億円となり、前期末に比べて439億円減少となりました。

 各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、獲得した資金は2,419億円(前年同期は372億円の獲得)となりました。

 その内容は、税引前中間利益2,489億円(前年同期は税引前中間損失△2,690億円)、減価償却費及び償却費1,577億円(前年同期は1,812億円)などです。また、獲得した資金が前年同期比2,046億円増加した主な要因は、前述の営業損益の改善に伴い、税引前中間利益の計上等による資金獲得が、棚卸資産の増加等による資金流出を上回ったことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は628億円(前年同期は1,841億円の使用)となりました。

 その内容は、有形固定資産の取得による支出873億円(前年同期は1,889億円)などです。また、使用した資金が前年同期比1,213億円減少した主な要因は、設備投資の抑制に伴う有形固定資産の取得による支出の減少などによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、支出した資金は2,217億円(前年同期は350億円の獲得)となりました。

 その内容は、短期借入金及びリボルビング・クレジット・ファシリティ実行残高の純減少額938億円(前年同期は短期借入金の純増加額864億円)、長期借入による収入264億円(前年同期は774億円)、長期借入金の返済による支出1,401億円(前年同期は1,150億円)などです。また、支出した資金が前年同期比2,567億円増加した主な要因は、借入金返済額が新規借入額を上回ったことなどによるものです。

 

④生産、受注及び販売の実績

 当社グループはメモリ及び関連製品を製造・販売していますが、同種の製品であっても性能、構造、形式等が異なること、また、受注生産形態を取っていないため、品目ごとの生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。このため、生産、受注及び販売の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しています。

 なお、最近2連結会計年度及び当中間連結会計期間の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。

 

 顧客の名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

至 2024年9月30日)

金額

(億円)

割合

(%)

金額

(億円)

割合

(%)

金額

(億円)

割合

(%)

Appleグループ

3,110

24.3

2,253

20.9

1,893

20.8

WPIグループ

(注1)-

(注1)-

(注1)-

(注1)-

1,076

11.8

Western Digitalグループ

1,705

13.3

1,705

15.8

994

10.9

Dellグループ

1,455

11.3

(注1)-

(注1)-

(注1)-

(注1)-

 (注)1.連結損益計算書の売上収益の10%未満であるため、記載を省略しています。

2.本表における億円単位表記箇所(当中間連結会計期間に係るものを除く。)については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」に記載の数値から億円未満を四捨五入した数値を記載しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①経営成績等の状況に関する分析・検討内容

2024年3月期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 前記「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、フラッシュメモリ市場において、2022年後半から継続した需要低迷に伴い、顧客の在庫水準が上昇し、需給バランスが急激に悪化し、販売価格の大幅な下落を招き、経営成績が悪化しました。2023年後半からフラッシュメモリ製造業者各社の減産及び投資抑制が効果を表し始め、また顧客における在庫水準が適正化に向かったため、需給バランスの改善と販売価格上昇が生じました。アプリケーション別では、スマートフォン及びPCは顧客の在庫水準の正常化により需要が回復し、今後、オンデバイスAIの登場、メモリ搭載容量の増加及びPCのオペレーティングシステム更新に伴う買い替え需要も期待されます。データセンター・エンタープライズSSDの需要は、2024年後半に向かって回復傾向がみられており、AI用途での大容量のSSDなどによる今後の需要増加が見込まれています。加えて、AI関連の機器やサービスの普及が加速しており、フラッシュメモリ市場の需要喚起が期待されています。一方で、新興国においては経済成長の鈍化が見られ、世界経済においても地政学リスクが高まっており不透明な見通しが続いています。また、かかるAI関連市場が予想された通りに成長する保証はないうえ、DRAMを含む他のメモリ半導体やHDDが存在する状況においてAI関連市場の成長がフラッシュメモリの需要につながるとは限りません。さらに、足元では、PCの需要はほぼ一服したともみられ、今後大幅な需要の増加は見込めない可能性もあります。また、為替変動については、当社グループは定期的にヘッジ取引を行っていますが、足元の為替相場は大きく変動しており、今後円高が進んだ場合には経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。引き続き市場の動向を注視しつつ、適切に対応してまいります。

 

2025年3月期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

 前記「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、フラッシュメモリ市場において、減産及び投資抑制が2023年後半から効果を表し始めて需給バランスの改善と販売単価の上昇が生じましたが、直近では販売単価の上昇率が緩やかになっています。アプリケーション別では、SSD & ストレージにつきましては、PC向け需要は顧客の在庫が高水準となっており回復が弱含み、また、今後も需要が弱含む状況が短期的に継続すると見込まれますが、今後AI搭載モデルの普及、メモリ搭載容量の増加及びPCのオペレーティングシステム更新に伴う買い替えによる需要回復が期待されております。エンタープライズ、データセンターSSDの需要は、AI需要により伸長しました。大手テクノロジー企業が引き続きAI投資に注力しており、今後AI関連サービスの拡大からAI推論向けサーバーが増加し、従来サーバーの買い替え需要の増加と併せて継続した需要増加が期待されております。スマートデバイスにつきましては、新規モデル等への部品取り込みによるスマートフォン向け需要の季節性要因により、出荷量(記憶容量ベース)は増加しました。足元では顧客の在庫が高水準となっており、需要が弱含む状況が短期的に継続すると見込まれますが、その後はAI搭載モデルの普及の増加による需要回復が見込まれています。一方で、新興国においては、不動産市場低迷の影響から個人消費と製造業が弱含み、景気の停滞がみられます。また、ウクライナや中東地域の一段の緊張など地政学リスクは引き続き高い状況下にあり、世界経済における不透明な見通しが続いています。また、かかるAI関連市場が予想された通りに成長する保証はないうえ、DRAMを含む他のメモリ半導体やHDDが存在する状況においてAI関連市場の成長がフラッシュメモリの需要につながるとは限りません。さらに、PC及びスマートフォン向け需要については、今後想定通りに回復しない可能性もあります。また、為替変動については、当社グループは定期的にヘッジ取引を行っていますが、足元の為替相場は大きく変動しており、今後円高が進んだ場合には経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。引き続き市場の動向を注視しつつ、適切に対応してまいります。

 

②経営成績に重要な影響を与える要因について

 「3 事業等のリスク」に記載のとおり、フラッシュメモリ市場の循環的変動、需要変動、競合他社との競争、買収や合弁会社設立等による業界再編、マクロ経済の変動、規制環境、投資の成否、戦略的提携、技術革新、大規模災害等による生産の遅延、障害等、ITシステムの障害等、為替変動、資金調達環境の変化等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

③資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの主な資金需要は、製品製造のための設備投資です。これらの資金需要に対しては、営業活動によるキャッシュ・フローに基づく自己資金を充当することを基本としていますが、市況が大幅に悪化する局面等においては、金融機関からの借入金や種類株式発行の払込金額も充当してきました。当社グループの2024年9月末における借入金の総額は8,900億円、親会社所有者帰属持分比率は21.1%、ネット有利子負債/Non-GAAP EBITDAは1.19倍となっており、また社債型優先株式の残高は3,216億円となっております。また、当社グループの2024年9月末における現金及び現金同等物の残高は1,437億円となっており、当社グループの足元の資金繰りは確保されているものの、今後急速にフラッシュメモリの市況が悪化する場合等においては、金融機関からの追加的な借入や種類株式の発行は困難となる可能性があります。なお、現在予定している設備の新設・改修等に係る投資計画は、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。

 

④重要性がある会計方針及び重要な会計上の見積り

 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しております。連結財務諸表の作成に当たって、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で、見積り及び判断を行っていますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」をご参照ください。

 

5【経営上の重要な契約等】

 

(株式会社東芝と東芝メモリ株式会社(現キオクシア株式会社)との契約)

契約の名称

契約締結日

契約内容の概要

契約期間

契約書

2017年6月5日(2018年3月22日付で覚書を締結)

契約当事者が保有し、かつ、単独で第三者に対して許諾しうる特許権及び技術情報について、対価の支払いなしにクロスライセンスする。

2017年4月1日から、許諾される各権利の存続期間満了の日又は各技術情報に含まれる営業秘密の秘密管理性の喪失若しくは著作物の著作権の消滅までの、いずれか遅い方まで。

 

(SanDisk Corporation(Western Digital Corporationの子会社である現SanDisk Limited Liability Company)等との製造合弁契約)

 キオクシア株式会社と、SanDisk Corporation(Western Digital Corporationの子会社である現SanDisk Limited Liability Company)及びその関係会社との間で、当社グループの四日市工場及び北上工場における協業に関して、以下の製造合弁契約が有効に存続しています(締結当時の当事者である株式会社東芝から分社時に契約上の地位を承継しています)。

契約の名称

契約締結日

契約内容の概要

契約期間

FLASH PARTNERS MASTER AGREEMENT

2004年9月10日

四日市工場第3製造棟他におけるメモリ製造に係る合弁企業(フラッシュパートナーズ㈲)の協業の枠組みを規定

2004年9月10日から2029年12月31日まで

FLASH ALLIANCE MASTER AGREEMENT

2006年7月7日

四日市工場第4製造棟他におけるメモリ製造に係る合弁企業(フラッシュアライアンス㈲)の協業の枠組みを規定

2006年7月7日から2029年12月31日まで

FLASH FORWARD MASTER AGREEMENT

2010年7月13日

四日市工場第5製造棟他におけるメモリ製造に係る合弁企業(フラッシュフォワード合同会社)の協業の枠組みを規定(但し、当該合弁企業の四日市工場における協業及び設備は、フラッシュパートナーズ㈲及びフラッシュアライアンス㈲に移管する設備を除き、岩手県北上市の北上工場へ順次移管中)

2010年7月13日から2034年12月31日まで

 

(株主間契約)

 当社は、2019年3月1日付で、BCPE Pangea Cayman, L.P.、BCPE Pangea Cayman2, Ltd.、株式会社東芝、HOYA株式会社及び東芝メモリ株式会社(現キオクシア株式会社)との間で以下の株主間契約を締結し、その後、株式会社日本政策投資銀行との間の投資契約締結及び株式会社三井住友銀行等との間のシニア・ファシリティ契約締結等に伴い、2019年5月31日付でこれらの契約に関する記載を追加するための修正契約を締結しています。なお、2020年8月27日付で実施された、BCPE Pangea Cayman, L.P.が保有する転換型株式の一部の移動に伴い、BCPE Pangea Cayman 1A, L.P.及びBCPE Pangea Cayman 1B, L.P.が同日付で契約当事者として加わっておりますが、下記「契約期間」に記載のとおり、当社普通株式の上場日に終了する予定です。

契約の名称

契約内容の概要

契約期間

AMENDED AND RESTATED SHAREHOLDERS AGREEMENT

・BCPE Pangea Cayman, L.P.は当社の全取締役候補及び全監査役候補並びに、代表取締役を指名する権利を有し、当社の全株主は当該指名された取締役候補及び監査役候補が選任されるよう議決権を行使する。

・当社及びその子会社の事業上、財務上、ガバナンス上の一定の重要事項は、BCPE Pangea Cayman, L.P.の事前の書面同意が必要である。

2019年3月1日から、①当社の発行済株式等の過半数の譲渡等、②当社の株式等の新規公開(IPO)の実施又は③全契約当事者の書面合意、による終了まで。

 

(株式会社三井住友銀行等との借入契約)

 当社は、2019年5月31日付で、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行及び株式会社みずほ銀行をアレンジャーとする長期借入金(シニア・ファシリティ契約)を締結し、その後、2024年6月12日付で締結された当該契約の修正契約により、返済期限の延長と借入枠の増額を行っています。

 主な契約内容は以下のとおりです。

1 主要な契約の相手方

株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、三井住友信託銀行株式会社

 

2 借入金額(2024年10月31日現在

タームローン:5,095億円

リボルビング・クレジット・ファシリティ:0円

 

3 借入枠

リボルビング・クレジット・ファシリティ借入枠:2,100億円

 

4 返済期限

タームローン:2024年9月17日より3ヵ月ごとに2027年6月17日(最終返済日)まで。

リボルビング・クレジット・ファシリティ:利息期間の最終日

 

5 金利

TIBOR+スプレッド

 

6 主な借入人の義務

① 当社グループの決算書及び年次計画等を所定の期間内に提出すること

② 財務制限条項を遵守すること

③ 当社グループの不動産、銀行預金、関係会社株式等を担保提供すること

④ 本契約において許容されるものを除き、第三者に担保提供を行わないこと

 

 なお、担保に供している資産については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記15.借入金及びその他の金融負債(2)担保に供している資産」をご参照ください。

 

(株式会社日本政策投資銀行との間の投資契約等)

 当社は、2019年5月31日付で、株式会社日本政策投資銀行に対して発行する甲種優先株式及び乙種優先株式の発行に際し、株式会社日本政策投資銀行との間で株式引受契約を締結するとともに、株式会社日本政策投資銀行及びキオクシア株式会社との間で投資契約を締結しています。その後、投資契約については、2024年7月19日付で締結された当該契約の修正契約により、取得請求権発生日の変更と償還期限の延長を行っております。

 当該株式引受契約及び当該投資契約で規定されている、当社の経営上重要な条項は以下のとおりです。

1 当社又はキオクシア株式会社の主な義務

① 優先配当またはPIK(未払い配当の額を優先株式の基本価額に加算)

② 分配可能額確保義務

③ 剰余金振替義務

④ 支払原資確保義務

⑤ 報告義務

⑥ 情報開示義務

⑦ 本優先株式の消滅等の禁止義務

⑧ 当社が取得価額を支払わない場合のキオクシア株式会社の補償義務

 

2 強制償還及び株式会社日本政策投資銀行による取得請求権の行使時期

 甲種優先株式及び乙種優先株式は、2028年6月17日に強制償還される。また、2027年12月17日を経過したとき、発行会社の各事業年度末に係る確定した財務諸表に基づく分配可能額が取得価額を下回った場合であって、当該財務諸表が確定した日から3ヵ月を経過しても当該状態が治癒されないとき等、一定の場合にも株式会社日本政策投資銀行は金銭を対価とする取得請求権を行使することができる。

 

3 株式会社日本政策投資銀行による事前同意事項

 一定の定款変更、企業再編その他一定の事項について、株式会社日本政策投資銀行による事前同意が必要とされている。

 

4 優先配当の制限

 2024年6月17日以降に発生する甲種優先株式及び乙種優先株式に係る優先配当金については、以下の①ないし③のいずれも満たす場合にのみ、株式会社日本政策投資銀行に対して支払うことができる。

①当該配当金の支払時点において上記シニア・ファシリティ契約に定める債務不履行事由が発生していないこと

②当該配当金の支払後に上記シニア・ファシリティ契約に定める財務制限条項に抵触するおそれがないこと

③当該配当金の支払後1年間の返済計画をシニア・レンダーに提出していること

 

(四日市工場の土地のセール・アンド・リースバック契約)

 当社は、2024年1月30日開催の取締役会において、三重県四日市市に所在するキオクシア株式会社が所有する四日市工場の土地(65万9,281㎡)(以下「本件土地」という。)につき、同社が①自らを当初委託者兼当初受益者、三井住友信託銀行株式会社を受託者として本件土地を信託譲渡すること(以下「本件信託」という。)、②本件信託に係る信託受益権をヒューリック株式会社に対して譲渡すること、及び③本件土地につき、三井住友信託銀行株式会社が当社に対して事業用定期借地権を設定すること(セール・アンド・リースバック取引)を行うことを決議し、当該決議に基づき、同年2月9日付で以下の一連の契約が締結されています。

 

契約の名称

契約内容の概要

契約期間

不動産管理処分信託契約

キオクシア株式会社が、本件土地を信託不動産として、自らを当初委託者兼当初受益者、三井住友信託銀行株式会社を受託者として信託譲渡し、三井住友信託銀行株式会社は、受益者の指図に従って本件土地を管理、運営及び処分する。

(信託期間)

2024年3月8日から

2034年3月31日まで

信託受益権売買契約

キオクシア株式会社が、本件信託に係る委託者及び受益者の地位及び権利義務をヒューリック株式会社に対して譲渡する。

該当なし

事業用定期借地権設定契約

本件土地について、三井住友信託銀行株式会社が、本件信託の委託者兼受益者であるヒューリック株式会社の指図に基づき、当社に対して事業用定期借地権を設定する。

2024年3月8日から2074年3月6日まで

 

(BCPEマネジメント契約)

 2018年6月1日付で、Bain Capital Private Equity, L.P.とキオクシア株式会社との間でマネジメント契約を締結し、当社はBain Capital Private Equity, L.Pとの間で2019年3月1日付でその変更契約を締結しています。当該契約は、下記「1 契約期間」に記載のとおり、当社の新規株式公開等の完了により終了する予定です。

 主な契約内容は以下のとおりです。

1 契約期間

2018年6月1日から、①Bain Capital Private Equity, L.P.からの書面による解約通知、②当社の新規株式公開等のクロージング、③支配権の異動、又は④契約の一方当事者による重大な違反が他方当事者による書面通知から30日以内に治癒されない場合、のいずれかもっとも早い日まで。

 

2 契約内容

資金調達、経営、事業運営、事業戦略等に係るアドバイザリーサービスのBain Capital Private Equity, L.P.から当社に対する提供

 

3 報酬

 継続的サービスに対する定期報酬として、当社はBain Capital Private Equity, L.P.に対して、年10億円を毎四半期初に支払う。

 資金調達、組織再編、有価証券の募集、買収・売却、支配権の異動を伴う取引等に係るアドバイスの対価として、当社はBain Capital Private Equity, L.P.に対して、独立当事者間ベースかつ市場標準レートに基づく別途当事者間で合意する金額をそのクロージング時に支払う。当社の新規株式公開等の場合は、35億円をそのクロージング時に支払う。

 

6【研究開発活動】

 

2024年3月期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(1)研究開発活動の体制と方針

 当社グループでは、キオクシア株式会社のメモリ事業部、SSD事業部にて製品の開発を行い、将来市場を見据えた研究開発は同社先端技術研究所が行います。研究開発戦略は同社メモリ開発戦略部と先端技術研究所がそれぞれ協力しながら取り組んでいます。先端技術研究所は、次世代メモリ等の研究開発、新規事業につながる技術創出の強化のためにメモリ技術研究所を再編し、2024年4月に発足しました。

 拡大するストレージ市場におけるお客様の新たな要求に応えることで、安定した事業の成長を目指し、大容量・低コスト、高性能化による市場競争力のあるメモリ及びSSD製品の開発を行います。特にビジネスの中核となる3次元フラッシュメモリチップで世界トップグループの地位を確立するために、新規デバイス、プロセス及びコントローラの技術開発を加速してまいります。そのための将来のビジネスに必要な研究開発投資を積極的に行います。

 2024年3月期における当社グループの研究開発費は141,030百万円であり、研究開発の主要な成果は次のとおりです。

 また、当社グループはメモリ事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しています。

 

(2)研究開発の主要な成果

主要製品・サービス

発表時期

概要

PCIe® 4.0対応の小型・大容量クライアントSSD

2023年5月

クライアントSSDのラインアップに、PCIe®4.0高速インターフェースに対応し、モバイル機器向けの小型フォームファクターを採用しながら大容量を実現した「KIOXIA BG6シリーズ」を追加。携帯性と高機能を求められるPCなどのモバイル機器、IoTデバイス、ゲーム機器などの高性能化に貢献。

UFS(注1)4.0に対応した組み込み式フラッシュメモリの、性能を向上させた次世代製品

2023年5月

ハイエンド・スマートフォンをはじめとするモバイル機器などのアプリケーション向けに、データのダウンロードの高速化、タイムラグの短縮など、5Gの高速ネットワークを活用することができるように開発した製品。次世代製品の投入によって、ユーザー体験を向上させる高性能モバイル機器の開発に貢献。

エンタープライズ・データセンター向けPCIe® 5.0対応NVMe™ SSD「KIOXIA CD8Pシリーズ」

2023年8月

サーバーやクラウドで必要となる大量で複雑な高速データ処理などの厳しい条件に適した高性能・大容量ラインアップを開発。エンタープライズとデータセンター向けの次世代SSDフォームファクターEDSFF(Enterprise and Datacenter Standard Form Factor)のE3.Sと、2.5インチ(U.2)のフォームファクターに対応。

e-MMC Ver.5.1準拠のフラッシュメモリ製品

2023年9月

民生機器向けに、性能を向上させたJEDEC e-MMC Ver.5.1(注2)準拠の組み込み式フラッシュメモリを開発し、サンプル出荷を開始。

PCIe®4.0に対応したメインストリームモデルのパーソナル向けSSD「EXCERIA PLUS G3シリーズ」

2023年10月

「EXCERIA PLUS G3シリーズ」はゲーミングPC、デスクトップPC、ノートPCなどで手軽にPCIe®4.0の高速性を体感したいメインストリーム・ユーザー向けに開発したパーソナル向けSSD。

SDXC規格最大容量となる2TBのmicroSDXC メモリカード「EXCERIA PLUS G2 microSDXC 2TB」

2023年12月

当社独自の薄厚チップ多段積層パッケージング技術によって、チップ搭載部分の厚さが最大0.8mmのmicroSDメモリカードのパッケージ内に、1テラビット(128ギガバイト)のフラッシュメモリのチップを16枚積層することで、SDXCの最大容量である2TBのmicroSDメモリカードを実現。

 

 

主要製品・サービス

発表時期

概要

次世代高速インターフェースPCIe® 5.0及びNVMe™ 2.0の認証を取得したエンタープライズSSD

2023年12月

高性能サーバーやストレージシステム用に、次世代高速インターフェースPCIe® 5.0に対応したエンタープライズSSD 「KIOXIA CM7シリーズ」の量産を開始。AI、機械学習、データ分析など次世代ユースケースの要求に対応。

車載機器向けUFS Ver4.0準拠の組み込み式フラッシュメモリ

2024年1月

車載機器向けのJEDEC UFS Version 4.0インターフェースに準拠した組み込み式フラッシュメモリ(UFS製品)を開発し、サンプル出荷を開始。

 (注)1.UFS(Universal Flash Storage):JEDECが規定する組み込み式フラッシュストレージの標準規格。シリアルインターフェースを採用し、全二重通信を用いているため、ホスト機器との間でのリード・ライトの同時動作が可能。

2.e-MMC(embedded Multi Media Card):JEDECが規定する組み込み式フラッシュメモリ標準規格の一つ。

 

2025年3月期中間連結会計期間(自 2024年4月1日 至 2024年9月30日)

(1)研究開発活動の体制と方針

 当中間連結会計期間における当社グループの研究開発費は65,579百万円です。

 当中間連結会計期間における研究開発方針及び主な研究開発体制についての変更はありません。

 研究開発の主な成果は次のとおりです。当社グループはメモリ事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しています。

 

(2)研究開発の主要な成果

主要製品・サービス

発表時期

概要

小型化及び性能向上した、最新世代UFS4.0フラッシュメモリ製品

2024年4月

当社従来製品比でパッケージサイズを約18%縮小し、性能向上した最新世代のUFS4.0組み込み式フラッシュメモリ製品のサンプル出荷を開始。5G高速ネットワークに対応したハイエンド・スマートフォンを含むさまざまな次世代モバイル機器に適した製品。

ノックスライド式デザインのUSBフラッシュメモリ

2024年4月

ワンプッシュで簡単にコネクタを格納できるノックスライド式デザインの使いやすいUSBフラッシュメモリ「TransMemory U304シリーズ」を発売。

ゲーマー向けヒートシンク付きSSDの発売

2024年6月

パーソナル向けヒートシンク付きSSDである「EXCERIA with Heatsink SSDシリーズ」を発売。ヒートシンクを標準搭載し、優れた放熱機能を備えSSDが発熱しやすいゲーミング環境でも温度上昇を抑える製品。

当社のSSD「KIOXIA CM7シリーズ」とXinnor社のRAIDソフトウェアを組み合わせたPCIe 5.0対応高速ストレージソリューションの構築

2024年6月

PCIe® 5.0対応NVMe™ SSD「KIOXIA CM7シリーズ」とXinnor社のRAIDソフトウェア「xiRAID Opus」との間の互換性と相互運用性の確保および、性能向上のためのチューニングをすることで、高速ストレージソリューションを構築。ベンチマーク試験において、生成AI などで使われるPostgreSQLデータベースの実行性能を、標準のソフトウェアベースのRAIDソリューションと比較して最大約25倍※向上。オンプレミスのサーバーにおけるAI、データアナリティクスなどのミッションクリティカルなアプリケーションの性能向上に貢献。

※ Linux環境での標準RAIDソフトウェアソリューション(mdraid / mdadm)における RAID縮退時(ドライブ1台故障状態でのデータベース読み出し時)との比較。

業界最大容量となる第8世代BiCS FLASH™ 2Tb QLC製品のサンプル出荷を開始

2024年7月

従来製品の第5世代QLC製品と比較して、ビット密度が約2.3倍、書き込み電力効率は約70%と大幅に向上。2Tbのチップをひとつのパッケージ内に16段積層することにより、パッケージあたり業界最大容量となる4TB(テラバイト)の容量を実現。サイズは11.5 x 13.5mm、高さは1.5mm。

光インターフェース採用の広帯域SSDをFMS(The Future of Memory and Storage)に出展

2024年8月

データセンター内に設置される機器の電気配線を光配線化することにより、高い信号品質の確保、デバイス間の物理的距離の大幅な拡大、並びに省電力化を実現。NEDOの助成事業「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築/次世代グリーンデータセンター技術開発」の成果。

SSD向けRAIDオフロード技術がFMSでBest of Show Awardを受賞

2024年8月

データ保護に用いるRAIDパリティの計算をSSD側で提供。

ホストのCPU、メモリ、キャッシュ等のリソースの主要アプリケーション高速化に割り当て、システム全体の性能向上と省電力化に貢献。

株式会社モーデックと共同で業界初となる立体構造物の高周波特性測定用プロービングシステムを開発

2024年9月

3次元プロービング技術を開発し、従来は直接評価できなかった立体構造を持つ伝送線路の高周波特性を、110GHzまで評価可能とした。

 なお、当社グループは2024年10月にPCIe® 5.0対応EDSFF(Enterprise and Datacenter Standard Form Factor)E1.S SSDの評価用サンプルの出荷を一部のお客様向けに開始しました。当社グループのE1.S SSDとしては第3世代品であるKIOXIA XD8シリーズは、PCIe 5.0 (32 GT/s x 4)およびNVMeTM 2.0仕様に準拠、Open Compute Project (OCP) Datacenter NVMe SSD v2.5仕様にも対応します。データセンターからの最新のニーズである、より高い性能、効率性、拡張性に対応し、クラウド・プロバイダーやハイパースケーラーのインフラストラクチャーの最適化に貢献します。

 また、当社グループは2024年10月に業界初のQLC技術を採用したUFS4.0組み込み式フラッシュメモリ製品の量産を開始しました。QLC UFSは、従来のTLC UFSよりもビット密度が高く、大容量が求められるモバイル・アプリケーションに適しており、コントローラ技術とエラー訂正の進歩により、QLCを用いた性能と容量の高いバランスを実現しました。当社のQLC UFSは、スマートフォンやタブレットだけでなく、PC、ネットワーク機器、AR/VR、AIなど、より大容量で高性能が必要とされる次世代アプリケーションにも適しています。