第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)会社経営の基本方針

当社グループは、「卓越した創意工夫と最良の科学技術によって、どこにもなかった素晴らしい方法を創出し、人々の役に立つ」という企業理念(The Vision)のもと、家電という道具を通して、素晴らしい体験を社会にお届けすべく事業活動に取り組んでおり、これらの活動が株主価値及び企業価値の最大化につながると考えています。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、成長性、収益性及び効率性向上を重視した経営が必要と認識し、企業価値の向上に努めています。企業価値向上の判断にあたっては、重要な経営指標として売上高及び営業利益率を重視し、収益力の向上及び堅実な経営基盤の構築に邁進していきます。

 

(3)経営戦略等

当社グループは、家電を通じて、心躍るような、素晴らしい体験をお届けすることを目指して事業を展開してきました。これまで以上の幅広い層に、製品を通じて感動をお届けするため、新たな技術やデザイン性を追求した製品開発を進めています。2023年においては、ライブキッチンのおいしさと楽しさを実現する「BALMUDA The Plate Pro(ステンレス ホットプレート)」を発売しました。

また、製品の展開にあたっては、比較的認知度の高い日本、韓国に加えて、2020年に進出した北米を重点地域として定め、2023年1月には米国子会社を設立しました。当該子会社を通じて北米でのブランドや製品の認知度向上を図るための各種コミュニケーション施策を強化していきます。加えて、2023年11月にはタイ、シンガポール、マレーシアに進出しました。展開地域の拡大並びに各地域での製品ラインナップの拡充により海外での売上増加を図ることで、更なる成長を目指すとともに、特定地域への売上集中を是正することで、地政学的リスクの低減を図っていきます。

今後の更なる成長へ向けた新たな製品カテゴリーへの挑戦については、2021年に参入した携帯端末事業の終了を2023年5月に決定した一方で、小型風力発電機の研究開発に取り組むことを8月に発表し、10月には屋外での実証実験を開始しました。

 

(4)経営環境

わが国の経済は、雇用・所得環境が徐々に改善する中で、緩やかな回復が続くことが期待されますが、世界的な金融引き締め等による景気の下押しや物価上昇の影響が引き続き懸念され、今後も依然として不透明感の強く残る状況となっています。

当社グループの主要取扱製品である生活家電は、国内においては買い替え需要主体の成熟市場であり、長期的には人口減による市場縮小が見込まれます。また、短期的には、新型コロナウィルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことにより、旅行や飲食等のサービス消費へのシフトが進みました。また、物価上昇による消費マインドの冷え込みも購買意欲に影響を与えていると考えられます。他方、共働きや少人数世帯、高齢化世帯の増加、ライフスタイルの多様化等の変化が生じており、価値観や社会の多様化が加速しています。各メーカーはそのような価値観の変化を見据えた商品開発を行うことが求められています。

 

 

(5)対処すべき課題

① 収益性の改善

外出機会の増加による支出先の変化や、物価上昇による消費マインドの冷え込み、原材料価格の高止まりや、円安による仕入れコストの上昇が引き続き懸念されるなか、そのような状況下でも利益を創出し続けることができる事業構造に変化するべく、現状の売上規模に対応した組織・人員体制の再構築、製品価格の見直し、製品原価の低減や経費の効率的運用、適切な在庫管理等に努めていきます。

 

② 販売地域の多様化

2023年12月期売上高の85.6%は日本及び韓国に依拠しています。両国の景気や社会情勢等の変化による業績への影響を低減するため、重点地域と定める北米での販売強化や、新たにブランド展開を開始したタイ、シンガポール、マレーシアでの販売強化等、販売地域の多様化を推進していきます。

 

③ コーポレートガバナンス体制の強化

経営環境の変化が激しい状況の下、経営の意思決定をより迅速化するとともに、これまで以上に取締役の業務執行に対する監督機能を強化する必要があります。さらなるコーポレートガバナンスの強化及び継続的な企業価値の拡大に努めていきます。

 

④ 企業ブランドの構築

顧客の本質的ニーズを考え、卓越した創意工夫と最良の科学技術によって「うれしさや楽しさ」を顧客が体感できる機能、性能を製品に反映していくとともに、適時適切なコミュニケーション施策の展開を通じて、顧客の様々な体験機会を創出することにより、企画・デザイン・技術・ブランド力で競争優位を確立させるよう努めていきます。

 

⑤ 製品の開発・品質管理体制の強化

製品開発における品質と信頼性の向上に向けて、品質管理部門の陣容の充実に努めるとともに、製品開発プロセスを要所で区切り、進行状況の期限管理を徹底する一方で、企画初期の段階から徹底したリスクアセスメントの実施によって、開発上の対処すべき課題をより広範に洗い出し、次の開発ステップに移行可能かどうかの審査を厳格化することにより、品質の向上に努めていきます。

 

⑥ 内部管理体制の強化

事業の継続的な発展を実現させるためには、コーポレートガバナンス機能の強化は必須であり、そのために財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの適切な運用が重要であると認識しています。コーポレートガバナンスに関しては、内部監査による定期的なモニタリングの実施や監査法人との連携を図ることにより適切に運用を進めています。ステークホルダーに対して経営の適切性や健全性を確保しつつも、ベンチャー企業としての俊敏さも兼ね備えた、全社的に効率化された組織体制の構築に向けてさらに内部管理体制の強化に取り組んでいきます。

 

⑦ 有能な人材確保

今後の更なる成長を目指すうえで、人材の獲得及び育成が重要であると考えています。人材獲得競争は今後も厳しい状況が続くと思われますが、当社の経営方針やビジョンに共感し、高い専門性を有する人材を惹きつけられるように、教育研修制度の整備、福利厚生の充実を図っていくとともに、外部ノウハウの活用等にも積極的に取り組み、事業計画達成に必要となる適切な人材リソースの確保に努めていきます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループは、「卓越した創意工夫と最良の科学技術によって、どこにもなかった素晴らしい方法を創出し、人々の役に立つ」という企業理念(The Vision)のもと、家電等の道具を通して、素晴らしい体験を社会にお届けすべく事業活動に取り組んでおり、これらの事業活動が株主価値及び企業価値の最大化、会社の持続的な成長につながると考えています。そして、当社グループの事業活動が、社会課題解決・社会の持続的な発展に資するものとなるよう取り組んでいます。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、お客様、お取引先様、従業員、地域社会、株主及びその他のステークホルダーからの信頼に応え、株主価値、企業価値を持続的に向上させ、社会の持続的な発展に寄与するためには、コーポレート・ガバナンスの強化が重要であると考えています。詳細は、第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等を参照ください。

 

(2)リスク管理

当社グループが持続的な成長を目指すうえで、当社グループを取り巻く市場環境や事業の状況には様々なリスクがあることを認識しており、全社的なリスク管理の報告及び対応検討の場として代表取締役社長を委員長とするリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。リスク・コンプライアンス委員会は、原則として年1回開催し、リスクの評価、対策等、広域なリスク管理に関し協議を行い、具体的な対応を検討しています。この他、必要に応じて経営会議の中で進捗のフォローを行っています。また、重大なリスクが発生した場合は、代表取締役を総責任者とした対策本部を設置し、迅速かつ的確な対応を行うことで、損害の拡大を防止する体制を整えることとしています。なお、想定されるリスクの詳細については、第2事業の状況 3事業等のリスクを参照ください。

 

(3)戦略

当社グループは、第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等に記載の基本方針、経営戦略に基づき事業活動を行っています。当該基本方針、経営戦略に基づく事業活動のうち、以下の諸施策は、「環境」「社会」の観点で社会課題解決に資するものと考え、関連する各部門にて取組みを推進しています。

・消費電力が低い「DCブラシレスモーター」を採用した扇風機(GreenFanシリーズ)の拡販

・設計・製造・品質保証プロセスの継続的改善(生産性向上、歩留まり改善、製品不良率低減等)

・適切な在庫管理(発注数量の適正化、物流最適化等)

・梱包資材の簡素化、脱プラスチック

・DX推進による業務効率化

・再生可能エネルギー事業への将来的な参入(小型風力発電機の実証実験中)

・人的資本・多様性に関する諸施策(以下(4)にて詳述)

 

(4)人材育成及び社内環境整備に関する方針並びに目標、実績

当社グループは、今までにない新しい価値を創造し、お客様に素晴らしい体験をお届けすることをミッションとしています。当社が持続的な成長を続けるためには、このミッションに共感する人材の確保と育成、及び多様な人材が活躍できる社内環境の整備が不可欠であると考え、以下に記載の施策を推進しています。

①人材の育成

人材の育成にあたっては、従業員に適切な教育・研修の機会を提供するとともに、個人目標の明確化と適切な評価・フィードバックを実現する体制を構築し、常にその更新に取り組んでいます。

(主な施策)

・個々の人材の特徴、スキル、専門性の最大限の発揮を目的としたキャリア選択制度

・エンゲージメント向上、コミュニケーション強化、部下の育成を目的とした1on1ミーティング

・幹部社員のマネジメント力強化を目的とした外部研修

②人材の多様性の確保

当社グループは、礼節・誠実さ・道徳を重んじることができるプロフェッショナルの集団であるべきと考えています。この価値観に基づき、多様な人材の採用と登用に取り組んでいます。

(主な施策)

・年齢、性別、国籍等、多様な人材の採用及び登用

(参考)当事業年度における管理職に占める女性労働者の割合:23.3% (注)1

③社内環境の整備

当社グループは、従業員がその能力を十分に発揮できる社内環境の整備に取り組んでいます。業務の状況やワーク・ライフ・バランス、ライフステージに合わせた、柔軟かつ効率的な働き方を実現することを目的とした諸制度を導入し、積極的な活用を推進しています。

(主な施策)

・フレックスタイム制度

・時短勤務制度

・リモートワーク制度

・育児や介護に伴う休業制度

(参考)当事業年度における男性労働者の育児休業取得率:33.3% (注)2

・有給休暇の取得推進

(参考)当事業年度における有給休暇取得率:70.9%

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出しています。

 

なお、当社グループが持続的な成長を続けるためには、当社のミッションに共感する人材の確保と育成、及び多様な人材が活躍できる社内環境の整備が不可欠であると考え、上述の諸施策を推進していますが、現時点においては、目標とする指標等の設定を行っていません。当社グループにとって適切な指標等の設定に向け、今後検討を進めていきます。

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項には、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられるものについては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示を行っています。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、その発生の回避及び発生した場合に適切な対応に努める方針ではありますが、当社株式に対する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えています。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

 (1)製品・サプライチェーンに関するリスク

 ① 新製品の開発について

当社グループは、独自の機能・洗練されたデザインを有する製品の開発を目指していますが、

・期待どおりの機能が得られず、もしくは競合製品の出現等により開発を断念する

・開発の遅延により、製品化が遅れる

・開発費が想定を上回る

・新製品が市場に受け入れられない

 などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ② 原材料の調達について

当社グループは、下記③に記載のとおり、すべての製品を製造委託先から仕入れており、原材料の調達は製造委託先が担うことを基本としています。製造委託先に余裕を持った先行発注を行うことにより安定的な仕入れを行ってきました。しかしながら、急激な需給関係の変化により、予期せぬ原材料価格の高騰、調達性の悪化が生じ、製造の遅れ、製品原価の上昇が避けられなくなる場合があります。設計変更による代替品の活用、当社で調達した部材の製造委託先への支給などの対策を講じても十分な対応ができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ③ 製造委託先等取引先への依存について

当社グループは、製造工場を持たず、すべての製品を国内外の製造委託先から仕入れています。製造委託先との関係強化とともに、リスクヘッジのために代替先の確保にも努めていますが、製造委託先との関係が悪化し、代替先の確保が遅れるなどの状況になった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、製造委託先を含む取引先の経営悪化や、国内外の政治的・社会的な混乱、新たな法的規制や制限、自然災害、紛争等によりサプライチェーンに支障が生じた場合にも、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ④ 海外の販売代理店への依存について

当社グループの海外売上高比率は32.3%(2023年12月期)であり、そのうち韓国の代理店であるLimotech Korea Co., Ltd.向け売上高比率が14.8%(2023年12月期)となっています。同社を含めた海外代理店とは定期的な情報交換を行うなど関係強化に努めていますが、各代理店における販売戦略の変更、取扱いの中止等が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、各国の政治的・社会的な混乱、新たな法的規制や制限、自然災害、紛争等が生じた場合にも現地での製品の販売に支障が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ⑤ 在庫管理について

当社グループは、在庫管理と販売予測により、品切れによる販売機会のロス削減と過剰在庫の防止に努めています。しかしながら、機能やデザインで差別化を進めていることから販売価格が高くなる傾向があり、類似製品の販売動向を参考に販売予測を立てることが難しく、また、当社製品と類似した競合製品の出現等による競争の激化、物価上昇やポストコロナへの移行による消費行動の変化も、販売予測を難しくする一因となっています。加えて、特に天候の影響を受けやすい扇風機等の空調家電については、昨今の気候変動の影響もあり、販売予測が難しくなってきています。

販売予測を誤った場合には在庫不足又は過剰在庫となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ⑥ 債権回収について

当社グループの販売は、家電量販店や通信販売会社、海外代理店等を経由しており、1社当たりの取引金額が多額となるケースがあります。取引先企業の信用状態の調査を行うとともに、取引開始後も継続的に信用状態の把握を行っていますが、倒産等の理由により回収不能となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ⑦ 製品の不具合発生について

当社グループは、品質や安全に関する法令・規則の遵守に努めるとともに、品質管理部門の人員増強、製品開発プロセスの見直し等の施策により、品質と信頼性の維持向上に努めていますが、万一、予期しない製品の不具合等が発生した場合、アフターサービス費用もしくはリコール費用が生じることとなります。対策として、製造物賠償責任保険等に加入していますが、受取保険金で十分な補償が行えない場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

また、社会的な信用の失墜、顧客の離反を惹起し、当社グループのブランド価値が毀損することとなった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 (2)コンプライアンスに関するリスク

 ① 法的規制について

当社グループは、製造物責任、消費者保護、知的財産権、個人情報保護、製品安全、金融商品取引、適時開示ルール等の各種法令の規制を受けています。これら各種法令の改定、新たな法令の制定等が行われた場合において、対応のための追加的費用の発生、もしくは法規制の違反が生じたときは、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループでは、アジア、欧州及び北米向けの輸出を行っており、製品については海外の各種規制に準拠していますが、現地の法的規制の改正、新たな法規制の制定等が行われた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ② 知的財産権について

当社グループは、新製品の開発に関し、他社の著作権、特許権、商標権等の侵害をしないよう、担当部門を中心として独自の情報収集を行うほか、弁護士や弁理士等専門家のアドバイスを受けています。しかしながら、知的財産をめぐって他社との係争が生じた場合や、他社より知的財産の侵害を受けた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ③ 情報セキュリティについて

当社グループは、顧客、取引先、従業員等の個人情報や機密情報等を保有しています。情報管理に細心の注意を払い情報セキュリティ体制を構築・運用しています。しかしながら、万一、情報が流出した場合は、信用低下や対策のための費用負担が生じることにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、受発注等の業務管理や会計処理等はシステムによる業務処理を実施しており、不測の事態により重要データの改ざん、漏えい、破壊やシステム停止等が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 (3)事業体制に関するリスク

  ① 有能な人材の確保・育成について

当社グループは、今後の新製品開発等事業拡大のために機構設計、電気設計、ソフトウエア設計、デザイン等の製品開発・量産技術に関する豊富な経験を有する能力の高い優秀な人材の確保及びその育成が急務となっています。

当社グループは、優秀な人材の確保に努めるとともに、教育研修制度の充実を図り、管理者の育成に注力しています。しかしながら、人材の確保及び育成が不十分である場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ② 代表者への依存について

当社の代表取締役社長である寺尾玄は創業者であり、製品開発を主導するなど当社グループの経営及び事業運営において、極めて重要な役割を果たしています。

当社グループでは、取締役会等で情報共有を進めるとともに、権限委譲により、同氏へ過度に依存しない体制を構築してきました。また、社内の人材育成が成果をあげつつあること、さらに、外部からの人材登用等の方策により、経営層の厚みが増しています。しかしながら、何らかの要因で同氏が当社グループの経営に関与できなくなる事態が生じた場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ③ 大株主について

当社の代表取締役社長である寺尾玄が、当連結会計年度末現在で発行済株式総数の68.5%を所有しており、引続き大株主となる見込みです。

同氏は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しています。

同氏は、当社の創業者であるとともに代表取締役社長であるため、当社としても安定株主であると認識していますが、将来的に何らかの事情により同氏により当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④ 配当政策について

当社グループは、株主に対する利益還元を経営上の重要施策であると認識しています。一方で、持続的な成長のための研究開発や収益性の向上も重要な経営課題であると考えています。

当社グループは、これまで、成長につながる内部留保を優先し、配当を行っておらず、今後も当面の間、内部留保の充実を進める方針です。将来的には、各期の業績、財務体質を勘案しつつ利益還元を検討していく方針ですが、現時点においては、配当の可能性及びその時期については未定です。

 

 ⑤ 継続企業の前提に関する重要事象等について

当社グループは、当連結会計年度において、記録的な円安ドル高等の厳しい外部環境の影響により、多額の営業損失を計上したこと、また、一部の当座貸越枠については財務制限条項に抵触したことから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象または状況が存在しています。このような状況を解消すべく、取引金融機関と協議を行った結果、財務制限条項に係る期限の利益喪失を請求できる権利について、当該金融機関が放棄することの合意が得られています。加えて、現状の経営環境や売上水準でも利益を創出できるよう、売上総利益率の改善(製造コスト低減・価格改定による利幅の改善)、固定費の圧縮(売上規模に対応した組織・人員体制の再構築)及び家電カテゴリー製品の積極的な展開(国内外における製品ラインナップの拡大)を経営戦略として掲げ、各施策について既に着手しています。

以上のことから、当社グループにおいては、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しています。

 

 (4)事業環境に関するリスク

 ① 為替変動の影響について

当社グループは、製品の輸出入を行っており、通常、決済は外貨で行っています。当社グループは、大半の製品を中国や台湾等、海外の製造委託先から仕入れており、販売の67.7%(2023年12月期)は国内向けであることから、総じて円高は仕入れコストの低下につながることで業績にプラスに作用し、円安はマイナスに作用します。為替の変動に対するリスクヘッジ策を推進していますが、急激な為替変動が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 ② 自然災害等について

地震、台風、津波等の自然災害、火災、国際紛争、世界的な感染症の流行等が発生した場合、当社グループの事業運営に重大な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいては、自然災害等が発生した場合に備え、リスク対応策の検討と準備を推進していますが、各種災害等の発生による影響を完全に防止できる保証はなく、各種災害等による物的、人的損害が甚大である場合には、事業の継続に支障をきたし、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1) 経営成績の状況

当社グループに関連する家電業界においては、一般社団法人日本電機工業会(JEMA)によると、2023年における民生用電気機器の国内出荷金額は2兆5,433億円(前年同期比98.9%)と2年ぶりのマイナスとなりました。5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことにより、旅行や飲食等のサービス消費へのシフトが進んだことに加え、物価上昇による消費マインドの冷え込みが影響を与えているとみられています。

このような環境下、当社は新たな体験価値を提供すべく、国内外で製品ラインナップを拡大しました。国内においては10月に「BALMUDA The Plate Pro」を発売、海外においては、「BALMUDA The Brew」を中華人民共和国とアメリカ合衆国で、「BALMUDA The Gohan」を韓国で、「BALMUDA The Range」を台湾で発売しました。11月にはタイ、マレーシア、シンガポールでのブランド展開を開始し、「BALMUDA The Toaster」「BALMUDA The Pot」を発売しました。

加えて、「BALMUDA The Range」「BALMUDA The Toaster」「BALMUDA The Toaster Pro」のリニューアルモデルの発売、「BALMUDA The Light」の製造工場移管を実施し、既存製品の体験価値・機能性の向上と利幅の改善に取り組みました。

また、メディア向けの新製品発表会や旗艦店BALMUDA The Store Aoyamaを活用した期間限定カフェ等、製品の体験価値を伝えるためのコミュニケーション活動を展開、SNSアカウントでの情報発信も継続的に実施するなど、BALMUDAブランドの構築及び製品の認知度向上策を推進しました。

一方で、BALMUDA Phoneに続く新たな携帯端末の開発については、原材料価格の高騰や急激な円安の進行等、様々な条件の変化により中止せざるを得ない状況となり、今後、持続的な成長のためにどの領域に経営資源を投入すべきかを慎重に検討した結果、5月に携帯端末事業の終了を決定しました。

上述のような諸施策を推進した結果、新製品やリニューアルモデルの投入が奏功し、当第4四半期連結会計期間の国内家電売上高(携帯端末関連を除く売上高)は過去最高を更新しました。しかしながら、当連結会計年度の業績は、想定以上に厳しい外部環境の影響を受けて売上高が減少したこと、原材料価格の高止まりと記録的な円安ドル高による仕入コストの上昇、旧品在庫のセール及び評価減等により売上総利益率が低下したこと、並びに携帯端末事業の終了決定に伴い特別損失を計上したことなどにより、以下のとおりとなりました。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2022年12月

2023年12月

前期差

前期比(%)

売上高

17,595

13,011

△4,584

△26.1

営業利益又は営業損失(△)

75

△1,375

△1,450

経常利益又は経常損失(△)

14

△1,237

△1,252

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

3

△2,071

△2,074

 

 

(売上高)

国内においては、新製品やリニューアルモデルの投入、販売促進施策の強化等を実施したものの、物価上昇による消費マインドの冷え込みやポストコロナに移行したことによる外出機会の増加の影響を受けました。

海外においては、製品ラインナップの拡大や東南アジアでのブランド展開の開始等を推進しましたが、国内と同様、厳しい外部環境の影響を受けたこと、また、流通在庫調整のため韓国向けの出荷を調整したことなどにより、売上高が減少しました。

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

地域別売上高

2022年12月

2023年12月

前期差

前期比(%)

日本

10,918

8,806

△2,111

△19.3

韓国

4,328

2,329

△1,999

△46.2

北米

658

631

△27

△4.1

その他

1,690

1,244

△446

△26.4

合計

17,595

13,011

△4,584

△26.1

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

製品カテゴリー別売上高

2022年12月

2023年12月

前期差

前期比(%)

空調関連

3,798

2,442

△1,356

△35.7

キッチン関連

10,837

9,278

△1,558

△14.4

携帯端末関連

868

2

△866

△99.7

その他

2,091

1,288

△802

△38.4

合計

17,595

13,011

△4,584

△26.1

 

 

(売上原価、売上総利益)

売上高が減少したこと、並びに原材料価格の高止まりと記録的な円安ドル高による仕入コストの上昇、旧品在庫のセール及び評価減等によって売上総利益率が低下したことにより、売上原価は9,508百万円(前期比2,619百万円減)、売上総利益は3,503百万円(前期比1,964百万円減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

販売費及び一般管理費は、売上規模に対応した組織・人員体制の再構築(携帯端末事業の終了決定等)により人件費や人材募集に関する費用が減少したこと、広告宣伝や販売促進に関する費用を効率的に運用したことなどにより、4,878百万円(前期比513百万円減)となりました。この結果、営業損失は1,375百万円(前年度は75百万円の営業利益)となりました。

 

(経常損失)

営業損失を1,375百万円、為替差益を126百万円等計上した結果、経常損失は1,237百万円(前年度は14百万円の経常利益)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純損失)

経常損失を1,237百万円計上し、法人税等を225百万円(前期比214百万円増)計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は2,071百万円(前年度は3百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

 

なお、当社グループは家電事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として掲げている、売上高及び営業利益率は以下のとおりです。企業価値向上のため、引続き新製品の発売、ブランドや認知度向上を図るための各種コミュニケーション施策の実施等を通じて、収益力の向上及び堅実な経営基盤の構築に努めていきます。

 

2022年12月

2023年12月

前期差

前期比(%)

売上高(百万円)

17,595

13,011

△4,584

△26.1

営業利益率(%)

0.4

△10.6

△11.0

 

 

 

生産、受注及び販売の実績は、以下のとおりです。

 

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績は以下のとおりです。なお、当社グループは、家電事業の単一セグメントであるため、製品カテゴリー別に記載しています。

製品カテゴリー

金額(百万円)

前期比(%)

空調関連

1,808

△34.9

キッチン関連

5,998

△27.9

携帯端末関連

21

△96.3

その他

611

△64.7

合計

8,440

△37.0

 

(注)金額は、総製造費用によっています。

 

② 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績は以下のとおりです。なお、当社グループは、家電事業の単一セグメントであるため、製品カテゴリー別に記載しています。

製品カテゴリー

金額(百万円)

前期比(%)

キッチン関連

11

△71.4

合計

11

△71.4

 

(注)金額は、仕入価格によっています。

 

③ 受注実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しています。

 

④ 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、前述(売上高)の製品カテゴリー別売上高をご確認ください。

なお、主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は以下のとおりです。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Limotech Korea Co., Ltd.

4,328

24.6

1,932

14.8

株式会社ミツバ

1,347

7.7

1,508

11.6

 

(注)当該割合が100分の10未満である相手先別の販売実績については、記載を省略しています。

 

(2) 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は7,803百万円となり、前連結会計年度末と比べて2,104百万円減少しました。流動資産は6,893百万円(前連結会計年度末比1,419百万円減)となり、これは主に商品及び製品が1,078百万円減少したことによるものです。固定資産は909百万円(前連結会計年度末比684百万円減)となり、これは主に携帯端末事業の終了決定に伴う有形固定資産及び無形固定資産の減損損失を293百万円計上したこと、繰延税金資産が221百万円減少したことによるものです。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は3,537百万円となり、前連結会計年度末と比べて57百万円減少しました。流動負債は3,209百万円(前連結会計年度末比101百万円減)となり、これは主に1年内返済予定の長期借入金が183百万円増加した一方で、短期借入金が200百万円減少したこと、製品保証引当金が75百万円減少したことによるものです。固定負債は328百万円(前連結会計年度末比43百万円増)となり、これは長期借入金が増加したことによるものです。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は4,265百万円となり、前連結会計年度末と比べて2,046百万円減少しました。これは主に利益剰余金が2,071百万円減少したことによるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は1,167百万円となり、前連結会計年度末と比べて78百万円減少しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により獲得した資金は246百万円(前連結会計年度は840百万円の獲得)となりました。主な要因は棚卸資産の減少1,053百万円、売上債権の減少237百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は371百万円(前連結会計年度は621百万円の使用)となりました。主な要因は有形固定資産の取得による支出398百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により獲得した資金は44百万円(前連結会計年度は5百万円の獲得)となりました。主な要因は長期借入れによる収入800百万円、長期借入金の返済による支出572百万円、短期借入金の純増減額200百万円です。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、当社の資金需要の主なものは、運転資金、金型等の設備投資、法人税等の支払、借入金の返済等であり、その資金の源泉としては、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入、新株発行等により、必要とする資金を調達することとしています。また、不測の事態に備えて、金融機関とコミットメントライン契約を締結し、必要な資金を適時に確保する体制を整えています。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、製造以外の部分をすべて内製化することを基本とし、自社内に開発(機構設計/電気設計/ソフトウエア設計)、製造技術、品質保証のエンジニアを配置することにより、知見を蓄積し、これまで以上の幅広い層に、製品を通じて感動をお届けするため、新たな技術やデザイン性を追求した製品開発を進めています。これらの活動の結果、新製品として「BALMUDA The Plate Pro」を発売、また、リニューアルモデルとして「BALMUDA The Toaster」、「BALMUDA The Toaster Pro」、「BALMUDA The Range」を発売しました。さらには、今後の更なる成長に向けた新たな製品カテゴリーへの挑戦として、小型風力発電機の研究開発に取り組むことを8月に発表し、10月には屋外での実証実験を開始しました。

当連結会計年度における研究開発費の総額は561百万円です。

なお、当社グループは、家電事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。