文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「人と技術を活かし、常に社会から必要とされる集団を目指す。」の経営理念のもと、公共事業を中心とした社会基盤の整備と維持管理にかかわる事業活動を通じ、社会の発展に貢献できるよう努めております。そして、社会から支持され、信頼される企業となることによって業績の向上を図り、企業価値を高めていくことを経営の基本方針としております。
公共投資市場は、防災・減災対策や将来を見据えたインフラ老朽化対策の推進、整備新幹線の着実な整備やリニア中央新幹線プロジェクトの推進、全国の高速道路の大規模更新工事及び4車線化といった事業が引き続き展開され、今後の建設需要は底堅い見通しであるものの、世界的なインフレの影響による鉄鋼や木材など建設資材の高騰、高齢化や若年層の入職者減少による人手不足の深刻化、時間外労働の上限規制に伴う協力業者を含めた人件費等の上昇等により、経営環境はより厳しさを増すことが予想されています。また、アメリカの通商政策の不透明感や地政学的な要因など今後の全世界的な動向についても不確実な要素が多く、より緻密でタイムリーな対応や戦略が求められるものと考えられます。
このような環境のもと、当社グループでは、主力事業の強化のため公入札における総合評価力の強化による受注確保への対応、当社グループの持つ特化技術採用に向けた技術営業の推進、競争力を高める研究開発・設備投資の推進、教育の充実と多様な人材活用による組織強化、生産性向上とコスト競争力向上等の戦略を進めてまいります。又、工事現場における長時間労働を是正するため、生産性の向上、社員能力の向上という観点から“人材の育成”“生産性の向上” “働き方改革” の3つの課題をテーマとして対策を進めております。同時に、当社グループの事業を支える協力会社に対して社員研修、資格取得の支援により技能労働者の確保への環境整備も進めてまいります。
当社グループは、これまで培ってきた経営資源をもとに、「事業」、「投資」、「財務」、「サステナビリティ」に対する戦略を構築し、長期ビジョン「オリエンタル白石グループ2030年の将来像」に向け一丸となって挑戦と前進を続けるため、2023年度(2024年3月期)を初年度とし、2025年度(2026年3月期)までの3か年を対象とした「中期経営計画2023-2025~さらなる成長に向けた競争力の向上と新たな挑戦~」を策定しスタートさせております。この中期経営計画では、オリエンタル白石グループの2030年像を「人財と技術の多様性を活かし、社会インフラ整備の様々な需要に応え、挑戦と前進を続ける企業集団」とし、グループの2030年の将来像に向け、基幹事業の充実、連結事業の強化、新規・周辺事業による事業領域の拡大、サステナブル経営への取組を進め、企業価値の一層の向上に努めてまいります。
中期経営計画の主な内容は、以下のとおりであります。
中期経営計画の基本方針
①国土強靭化、インフラ老朽化対策などの社会的課題の解決に貢献し、これを業績の向上につなげる。
②基幹事業のさらなる充実、連結事業の強化、新規・周辺事業の成長と領域拡大を推進しグループ全体の発展を図る。
③DXや技術開発、他社・他業種との連携により、事業生産性を高める。
④教育、研修など“人への投資”を促進し、競争力豊かな人財の構築を図る。
⑤バランスのとれた投資、還元戦略を実行する。
⑥カーボンニュートラルに向け、脱炭素施策の推進と技術開発を継続する。
中期経営計画における経営指標目標(2026年3月期)
企業価値向上と成長戦略
持続的な売上の増加と収益の向上
売上高 730億円
営業利益 62億円
親会社株主に帰属する当期純利益 45億円
成長事業の基盤固め
投資額 220億円
D/Eレシオ 0.29倍
株主に対する還元効率
自己資本当期純利益率(ROE) 9%以上
配当性向 50%以上
総還元性向 70%程度
PBR 1倍以上
(事業戦略)
基幹事業(PC土木、ニューマチックケーソン/一般土木、補修補強、PC建築)
・公共工事におけるシェアと実績の拡大
・ニューマチックケーソンの橋梁と治水設備等への事業拡大
・事業量の確保と収益力の維持を図る
・プレキャストコンクリートのすう勢の中でのPC構造の採用を拡大する
連結事業(鋼構造物事業、港湾事業)
・新設橋梁と補修補強のバランスの中で売上・利益の拡大を図る
・港湾、土木の中小工事で受注・売上を確保するとともに今後本格化するカーボンニュートラルポートプロジェクトへの準備を進める
新規・周辺事業(工場製品外販、地域戦略事業、橋梁維持管理事業、官民連携事業、海外事業、環境事業)
・成長投資、技術開発、生産性向上、他社・他業種との連携、顧客基盤の強化
新規・周辺事業の領域拡大を図ることで基幹事業の拡充、連結事業の強化にも寄与
生産性向上
・プレキャスト化促進
・機械、船舶の機能強化
・情報通信、DX等、新技術の活用
・施工の遠隔化、自動化
・工事、現場支援システムの構築
(投資戦略)
・基幹事業や連結事業の拡充と強化、新規・周辺事業の拡大を図る
経常投資(既存事業継続投資) 50億円
成長投資(成長機会創出投資) 110億円
戦略投資(資本業務提携) 60億円
投資総額(2023-2025年度) 220億円規模
*戦略投資(資本業務提携)資金として伊藤忠商事株式会社への第三者割当増資により約50億円を調達
(財務戦略)
営業CF(堅実なCF創出力の向上)と財務CF(財務健全性を維持した有利子負債の活用、資本業務提携による第三者割当増資)を経常投資・成長投資・戦略投資へ投下し好循環を生み出すことにより企業価値を高めると共に、安定した配当の継続に加え、上記投資の成果と資本効率を踏まえた機動的な自己株式取得を実施します。
(サステナビリティ戦略)
・環境(カーボンニュートラルの実現に向けた取組)
2030年度目標 CO2排出量(Scope1,2) 19,000t-CO2
売上高原単位21t-CO2/億円
削減率 約31%(2021年度比)
・人材戦略
人財と技術の多様性を活かす働きやすさと働きがいのある魅力的な企業づくり
・ガバナンス・対話
グループの持続的な成長を支えるガバナンスとステークホルダーとの対話の充実
当該経営数値目標を採用した理由は、当社の経営方針・経営戦略を理解する上でステークホルダーにとって重要な指標であり、目標に対する進捗状況を継続的にモニタリングし、実現可能性の評価等を行うことが可能となるためであります。
(中期経営計画最終年度の業績予想)
中期経営計画最終年度となる2026年3月期の連結業績予想について、受注面では、補修・補強分野の受注において今年1月に発生した中国自動車道の事故の影響や競争の激化により受注量の減少が予想されるものの、首都圏を中心とした大型ポンプ場等のニューマチックケーソン工事の発注が旺盛な事に加え、新たな連結子会社の受注を取り込む事により昨年度を超える受注量を想定しております。引き続き、当社の得意とする技術や特化工法の採用を推進し選別受注に努めるとともに、グループ内のシナジーを活かし技術優位性が発揮できる難易度の高い工事にも取り組んでいきたいと考えています。
売上面では、前期からの豊富な繰越受注残高はあるものの、大阪モノレール、北海道新幹線工事などの一部大型工事の進捗の遅れやニューマチックケーソン工事の発注が想定よりも遅れている影響で、既存の基幹事業においては若干の減少になりそうですが、新たな連結子会社の売上を加え2025年3月期を超える売上高を確保する計画です。また、売上面に対する事故の影響ですが、大規模更新の継続工事の繰越受注残が全社的に確保されており、該当工事及び同種工事における影響は総じて限定的になると考えています。
利益面では、昨年実績を下回る見込みです。これは、大型工事の竣工に伴う設計変更による収益の押し上げが今年度は見込めないことや、大型ニューマチックケーソン工事については、着工後の早期段階の工事が多く最盛期は次年度以降になるため、今年度の利益率向上への貢献がそれほど期待できないことなどによるものです。
上記のことから、2026年3月期の連結業績予想を下記の通りとしておりますが、中期経営計画経営指標目標に向け改善を目指すとともに長期ビジョンの推進に向け努めてまいります。
2026年3月期の連結業績予想
売上高 660億円
営業利益 43億円
親会社株主に帰属する当期純利益 28億円
(2025年1月に発生した重大事故)
2025年1月27日当社施工工事において、作業員2名が死亡し、3名が負傷する重大事故が発生いたしました。ご遺族、被災された皆様、関係者の皆様、株主の皆様をはじめとする多くのステークホルダーの皆様に多大なご迷惑とご心配をおかけしましたこと改めて深くお詫び申し上げます。
今回発生した重大事故に対して、発生原因の分析、同種工事における再発防止策を策定し全社に周知指導するとともに、新たに社長を本部長とする「安全統括本部」を設置し、工事部門や技術部門、管理部門、工場、機材センター、業革推進部、様々なプロジェクトやタスクチームと連携し、全社的な安全管理体制の強化を図ってまいります。また、安全統括本部を中心として、安全施工、安全対策への指導、支援を行うとともに、安全性、施工性を高める機械や設備、DX、そして社員の安全教育・安全研修などに、さらに注力してまいります。
役員・社員一同、今回の事故に真摯に向き合い、心より反省し、危機感をもって、“安全のオリエンタル白石” の実現に向けて一丸となって今後とも取り組んでまいります。
当社グループは社会から必要とされる集団を理念として掲げており、持続的な社会の実現を図るため、社会から必要とされる価値提供を続けてまいります。そこでサステナビリティ基本方針を定め、定めたプロセスに基づき、当社グループの理念を達成するべきマテリアリティを特定しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティ基本方針
経営理念の「人と技術を活かし、常に社会から必要とされる集団を目指す」に基づき、私たちは社会資本の整備・維持や地域社会及び地球環境の課題解決に向けたあらゆる事業活動を通じ、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を追求していきます。
・脱炭素、再生可能エネルギー、廃棄物の削減、リサイクル活動を推進し、環境保全と汚染の予防に資する技術開発に尽力し、地球環境に配慮した技術提案を行う。
・安心・安全で快適な職場環境を実現するとともに、個人の人権や多様な価値観を尊重し、個々の能力を最大限活 かせる、働きがいのある職場作りに努める。
・協力会社と公平で信頼感のある協力関係の維持に努め、人材育成やリスク管理において一体となった取り組みを実践する。
・全ての企業活動でコンプライアンスを遵守するとともに、リスクマネジメントを徹底する。
マテリアリティ特定のプロセス
当社グループのマテリアリティ
・安全安心な生活に貢献するインフラ建築物の提供
・豊かな生活を維持、享受しながら進める気候変動対策
・働きがいのある魅力的な職場環境
・イノベーションによる省力化、高付加価値の創造
・地域特性を加味した発展と貢献
・コーポレートカルチャーの醸成
当社グループは、サステナビリティの推進機関として「サステナビリティ委員会」を設置しております。サステナビリティ基本方針や戦略を策定し、マテリアリティに対するサステナビリティ推進策の進捗をモニタリング、指導し、ステークホルダーとの対話を充実させる施策を審議し、取締役会に報告・提言する役割を担います。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とし、社内取締役、社外取締役(監査等委員を除く)、担当執行役員、委員長が定める担当部門長で構成し、年2回の開催を実施しております。
2024年度のサステナビリティ委員会の活動は、2024年5月30日と11月29日に開催し、以下に示す協議を行い、実活動へのフィードバックを実行しました。
(2) 戦略
① E:環境 気候変動対策に関する方針、戦略
当社グループの事業構成では、建設事業と鋼構造物事業の使用材料であるセメントや鉄などの製造時に、また港湾事業の主要機材である船舶の使用時に多くの温室効果ガスを排出します。したがって、気候変動対策としてこれに関連する政策の変化や規制の強化が経営に与える影響は大きく、さらに、地球温暖化による物理的変化が事業活動及び事業環境へ与える影響も大きいと考えました。
シナリオ分析においては、2100年までに世界の気温が4℃上昇することを想定した4℃シナリオと1.5℃に抑えることを想定した1.5℃シナリオを検討し、さらに短中長期の時間軸により、リスクと機会を特定、分析、評価を当社事業に当てはめて抽出しました。今後、下記表に示すリスク・機会について、リスクは克服、機会は挑戦する具体的な対策を計画、実行してまいります。
リスク・機会の特定表
② S:社会 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループの人材に対しての考え方は、経営理念に示す重要なリソースの一つとしての観点から「人財」として扱っており、人財と技術の多様性を活かす働きやすさと働きがいのある魅力的な企業づくりを目指しております。そしてその実践において、「人財基本方針」を定め、それに基づいた「採用方針」「教育方針」を設定し、更に協力会社も含めた職場環境を考慮した「労働安全衛生方針」を基準に各活動計画を立案し、実行しております。
当社グループの人財戦略としては、中期経営計画(2023-2025)において、新たな人財投資としての大きな枠を設け、以下に示す戦略を実践しており、またこれらの取組みが当社事業へ及ぼす影響をリスク・機会として以下の通り考えております。
(3) リスク管理
当社グループのリスク管理は「リスク管理委員会」がその役目を担っておりますが、サステナビリティに関するリスクは基本「サステナビリティ委員会」にて審議、対応を図り、その情報はリスク管理委員会でも共有することとしております。
2024年度のリスク管理委員会は2025年2月28日に開催し、抽出したリスク項目を「重要」、「特に重要」とに分類し、グループ会社別にそれぞれに該当する内容と対策について協議し、事業運営において留意することを共有、認識しました。本頁ではサステナビリティ活動と直結する「気候変動に関するリスク」と「人的資本に関するリスク」についての協議項目を下記に示します。
(4) 指標及び目標
① E:環境 気候変動対策に関するCO2排出量並びに削減目標
・3カ年 CO2排出量一覧
※ 2023年度のデータから、Scope3のカテゴリー9,11,12を算定して組み入れています。
※ 2024年度は、再生可能エネルギーの使用量としてバイオ燃料33.7kl、RE100電力1,209,233kWhによるCO2削減効果を含んでいます。
・2030年度CO2排出量削減目標
2021年度の当社グループのCO2排出量を基準とし、中期目標となる2030年度までのCO2削減目標を設定しました。まずはScope1、2排出量のみを対象とし、当排出量から単位売上当たりの排出量原単位を求め、2030年度CO2排出量を想定し、排出削減手段や実施に伴う影響を総合的に判断して削減目標としました。
なお日本政府が提示する2013年度比46%削減(2030年度7.6億t-CO2)とする目標と同期を図るため、2021年度のCO2排出量を使用した削減率を求め、目標値を設定しました。また削減ロードマップとして2024年度まではCO2排出量算出の精度向上、削減策の試行や効果確認を行う準備期間とし、2025年度より本格的な削減を開始する計画としています。
2024年度は、2023年度と比較して売上減少分による総量が減った分に加え、エネルギー消費の大きいセグメントの工事量減少によりScope1の数値が低下しました。Scope2の低下は、再生可能エネルギーの利用が大きく寄与しました。下記に売上高原単位の推移を提示しますが、今期の削減が自助努力で達成できた状況ではないため、引き続きCO2削減対策の実施を推進いたします。
※ 2030年度売上高は中期経営計画の目標値です。
② S:社会 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
当社グループでは、上記「戦略」で示した取組みの実行に対して、その効果を検証するため、まずは多様性の確保を意識した「新卒女性採用率」「女性・外国人、中途採用の社員割合」「障害者雇用率」を指標としています。また、「女性活躍推進法」「育児・介護休業法」で公表を推進する項目に関する「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」についても以下に示します。
本取組みはグループ会社までの実行には至っておりませんので、以下に示す実績、目標は一部を除き提出会社であるオリエンタル白石株式会社のデータになります。
※ 男女賃金格差について、2024年度の実績は「
2024年度は、「多様な人財の獲得・育成」においては、リクルート活動にてSNSの利用、内定者イベントの拡充を図り、「人財が活躍できる環境整備」に関しては、賃金制度改定、役員と職員とのディスカッション機会を設け、また「人財のエンゲージメント強化」の対応では、エンゲージメントサーベイの結果分析から効果向上が見込まれる研修機会を増やしました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社グループでは、これらのリスクの発生を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。
当社グループは、年1回のリスク管理委員会を開催し、各事業部門において事業年度におけるリスクを把握しリスク低減に関する施策を討議するとともに、その有効性の評価と施策結果の確認を行い、その結果を受け翌事業年度のリスク低減へ反映させるサイクルを行っております。また、リスク管理委員会における経過、結果は取締役会に報告しております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの主要な事業は、建設事業であり、その事業サイクルは受注・施工・売上・回収の流れとなっております。リスクの区分としては、このサイクルに直接的に該当する(特に重要なリスク)と関連する(重要なリスク)に区分されます。
(特に重要なリスク)
① 市場リスク
当社グループの事業は、その大半が国・地方自治体及び高速道路会社からの公共事業に依存しております。これらの発注状況については情報収集に努めておりますが、予想を超える公共事業の削減が行われた場合には、目指すべき受注の確保ができず、売上の減少により業績に影響を与える可能性があります。受注への対応のため、本社において営業戦略会議を毎週開催し、これらの発注状況の共有、各支店の受注活動状況の確認、注力事業分野の指示等の受注量確保のための戦略会議を行っております。
② 資材価格・労務費上昇リスク
請負金額に反映することが困難になる水準で資材価格・労務費が高騰した場合には、工事原価の上昇による利益減少により業績に影響を与える可能性があります。資材価格・労務費については、入札時において見積徴収等を行い価格の動向を確認するとともに施工中における資材価格の高騰について発注者と情報を共有することにより請負金額へ反映されるよう協議を行っております。
③ 事故などの安全上のリスク
事業に関して大規模な事故が発生した場合は、多大な損害が発生する可能性があります。当社グループでは、安全を最優先として、事故防止に努めておりますが、万一事故が発生した場合は、社会的信用の失墜、各発注者からの指名停止措置等の行政処分、損害賠償等により、受注機会の喪失、利益の減少、資金負担の増加等の事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。
④ 品質管理に関するリスク
当社グループの製品の製作及び施工につきましては、品質管理に細心の注意をはらい万全を期しておりますが、万一、重大な契約不適合責任や製造物責任による損害賠償が発生した場合、修復に多大な費用負担、施工遅延の発生や信用力の低下による受注機会の減少等により業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 取引先の信用リスク
当社グループは、民間からの請負工事を行っており、与信管理、情報収集、債権管理等の対応を取っておりますが、工事代金受領前に取引先が信用不安に陥った場合、貸倒損失の計上による利益の減少、資金回収不能による資金繰りの悪化等により業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(重要なリスク)
① 金利上昇による業績変動リスク
資金調達については、当社を中心としたグループ内資金運用を基本に財務体質の維持・強化に努めており、金融機関からの借入期間の検討等により金利負担の低減に努めておりますが、現行金利が予想以上に高騰した場合には、調達資金コストの上昇が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 法的規制に関するリスク
事業を営むにあたり建設業法等の法的規制を受けております。法令遵守の意識徹底は対処すべき課題の最優先課題と位置づけておりコンプライアンス教育による意識の徹底に努めておりますが、万一法令違反があった場合には、行政処分や刑事処分、訴訟による損害賠償等が発生し、受注機会の減少、資金負担の増加等により業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 訴訟等のリスク
事業等に関連して訴訟、紛争、その他法的手続きに関わる判決、和解、決定等により、信用力の低下による受注機会の減少や資金負担の増加等の業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 感染症に関するリスク
感染拡大や収束時期の長期化による上記①市場リスク(建設投資計画の見直しや工事発注時期の延期による受注機会の減少)や、②資材価格・労務費上昇リスク(工事中断の発生に伴う工程遅延による売上高減少や、関連する経費・労務補償等の原価が増加)等により、業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 情報セキュリティリスク
当社グループは、施工物件に関する情報、経営・技術・知的財産に関する情報、個人情報等様々な情報を取り扱っております。情報セキュリティ規程を定め従業員教育を行うとともに、サイバーセキュリティ対策として、働き方の多様化を踏まえたエンドポイントセキュリティの強化やマネージメント・セキュリティ・サービスを導入しておりますが、これらの情報が外部からの攻撃や従業員の過失等により漏洩または消失等した場合は、信用の毀損、損害賠償や復旧費用等の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 気候変動に関するリスク
TCFDの枠組みに則り、気候変動に関するリスクは移行リスクと物理的リスクに区分して特定しております。 移行リスクにおいては、CO2削減に伴うエネルギー、材料、資機材等の価格高騰、施主や顧客によるCO2削減要求に対する制約、事業に関する法規則の厳格化が挙げられます。また物理的リスクは気象、環境変化による現場作業不能や災害、労働者の健康被害が挙げられます。
(経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
受注高、売上高及び受注残高の状況
(注)上記数値には、当連結会計年度に連結子会社となりました、株式会社榮開発、株式会社菊政及びその子会社1社の数値は含まれておりません。
損益の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まりが期待されることから、アメリカの通商政策等の影響による国内外の金融資本市場の変動等の不透明感はあるものの、全体としては、緩やかな回復基調にあるものと目されます。
また、輸出入面において、持ち直しの動きがあるアジア・アメリカ向けの輸出取引に加え、概ね横ばい傾向にある輸入取引と併せて、今後先行きへの期待が高まるなか、物価上昇の継続による消費者マインドの下振れが個人消費に及ぼす影響などに一層注意する状況が続いております。これら状況下で、改善している企業収益にもとづく企業の業況判断も足踏み状態であることから、雇用・所得環境の改善の動きに期待しながら、慎重に総合的な動向を見定めようとする環境となっております。
一方、公共投資につきましては、国の令和6年度一般会計予算の補正予算において約2.4兆円の追加予算が計上され、補正後は前年度比1.4%増となり、令和7年度一般会計予算の公共工事関係費でも、当初予算案は前年度並みの水準となっております。公共工事請負金額の年度累計も、対前年同期比46.4百億円増の103.2%の実績となっていることから、今後も底堅く推移していくことが見込まれております。
このような状況におきまして、当社グループ全体で受注活動に取り組んだ結果、当連結会計年度の受注高は、650億8千5百万円(前年同期比3.9%減)となりました。前連結会計年度比で鋼構造物事業で増加となりましたが、建設事業、港湾事業で減少となりグループ全体としても減少となりました。
当社グループの当連結会計年度における売上高は645億5千3百万円(前年同期比4.2%減)となりました。各セグメントにおいて前年同期比で減少となりました。また、受注残高につきましては、上記の受注及び売上の状況により、987億2千4百万円(前年同期比0.5%増)となりました。
当連結会計年度における売上原価は528億9千3百万円(前年同期比3.4%減)となり、売上総利益は116億6千万円(前年同期比7.6%減)となりました。売上高の減少に伴い、売上原価も減少となり売上総利益においても減少となりました。
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、試験研究費、諸経費の増加により62億2千5百万円(前年同期比2.4%増)となりました。営業利益は54億3千4百万円(前年同期比16.8%減)、経常利益は55億5千6百万円(前年同期比15.6%減)となりました。
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、37億1千5百万円(前年同期比19.8%減)となりました。
なお、当社グループの報告セグメントごとの業績を示すと、次のとおりであります。
受注高、売上高、受注残高及びセグメント利益の状況
(注) 1 「その他」は、太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業であります。
2 上記数値には、当連結会計年度に連結子会社となりました、株式会社榮開発、株式会社菊政及びその子会社1社の数値は含まれておりません。
① 建設事業
当セグメントにおきましては、売上高は539億5千7百万円(前年同期比1.9%減)、セグメント利益(営業利益)は50億1千1百万円(前年同期比15.5%減)となりました。前年同期比で主にPC土木(新設橋梁)、ニューマチックケーソン工事における売上高の減少に伴い、利益についても減少となりました。
② 鋼構造物事業
当セグメントにおきましては、売上高は73億3千4百万円(前年同期比13.7%減)、セグメント利益(営業利益)は2億7千万円(前年同期比51.8%減)となりました。前年同期比で主に新設橋梁工事における売上高の減少に伴い、利益についても減少となりました。
③ 港湾事業
当セグメントにおきましては、売上高は29億9千7百万円(前年同期比18.4%減)、セグメント利益(営業利益)は5千9百万円(前年同期はセグメント損失(営業損失)1千5百万円)となりました。
④ その他
太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業により、売上高は2億6千3百万円(前年同期比26.0%増)、セグメント利益(営業利益)は8千7百万円(前年同期比114.0%増)となりました。
当社グループは、2023年度(2024年3月期)を初年度とし、2025年度(2026年3月期)までの3か年を対象とした「中期経営計画2023-2025 ~さらなる成長に向けた競争力の向上と新たな挑戦~」を策定しスタートさせており、当連結会計年度は中期経営計画の2年度にあたります。当社グループの2026年3月期の目標と当連結会計年度での主な指標の達成率は以下のとおりであります。
売上高につきましては、各セグメントにおいて前年同期比で減少となり、当連結会計年度においては88.4%の達成率となりました。
営業利益につきましては、当連結会計年度において達成率87.6%となりました。これは、前年同期比で、各セグメントにおける売上高が減少するなかで、港湾事業では増加となりましたが、建設事業、鋼構造物事業において減少となったことによるものであります。
なお、2026年3月期の連結業績予想につきましては、2025年5月13日に公表いたしました「2025年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」において、売上高660億円、営業利益43億円としております。
経営成績に重要な影響を与える主な要因は、事業の大半を国・地方自治体及び高速道路会社等からの公共事業に依存する中、急激な公共投資の削減や建設コストの上昇等の事業環境の変化であります。当連結会計年度における事業環境は良好に推移したものと考えております。
今後の建設需要は底堅い見通しであるものの、働き方改革に伴う工期延伸、発注ロットの大型化により繰越工事が増加していることによる協力業者を含めた配置人員と受注のバランス、引続き懸念される地政学的影響による資源価格の高騰が経費へ影響を及ぼす恐れや原材料価格の高騰等、今後の経営環境は厳しさを増すことが予想され、より緻密な戦略、対策、計画が求められるものと考えられます。
(2) 財政状態の状況
(流動資産)
流動資産は、前連結会計年度に比べ2.1%減少し558億1千2百万円となりました。これは主に未成工事支出金が13億4千1百万円増加しましたが、受取手形・完成工事未収入金等が13億4千8百万円、未収消費税等が18億7千万円減少したことなどによるものであります。
(固定資産)
固定資産は、前連結会計年度に比べ36.9%増加し217億6千1百万円となりました。これは主に連結子会社3社を取得したことにより有形固定資産が24億1百万円、のれんが22億9百万円増加したことなどによるものであります。
(流動負債)
流動負債は、前連結会計年度に比べ8.2%増加し187億3千9百万円となりました。これは主に支払手形・工事未払金が16億4千4百万円減少しましたが、未払金が7億4千3百万円、未払消費税等が14億2千3百万円、未成工事受入金が8億3千8百万円増加したことなどによるものであります。
(固定負債)
固定負債は、前連結会計年度に比べ34.3%増加し75億6千5百万円となりました。これは主に長期借入金が2億8千6百万円、長期未払金が13億4千5百万円増加したことなどによるものであります。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度に比べ2.6%増加し512億6千8百万円となり、自己資本比率は66.1%となりました。
当社グループの報告セグメントごとの財政状態は、次のとおりであります。
セグメント資産
(注) 「その他」は、太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業であります。
① 建設事業
当セグメント資産は698億5百万円(前年同期比9.6%増)となりました。連結子会社3社を取得したことによる機械及び装置、のれんなどの固定資産の増加等によりセグメント資産は前年同期から増加しております。
② 鋼構造物事業
当セグメント資産は75億2千1百万円(前年同期比2.3%減)となりました。完成工事未収入金、現金及び預金等の流動資産の減少等によりセグメント資産は前年同期から減少しております。
③ 港湾事業
当セグメント資産は55億9千6百万円(前年同期比4.1%減)となりました。のれんの償却に伴う無形固定資産の減少等によりセグメント資産は前年同期から減少しております。
(単位:百万円)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、対前年3億2百万円減少の198億7千7百万円(前年同期比1.5%減)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は78億3百万円(前年同期比48.0%増)となりました。これは主に減価償却費13億6千万円、売上債権の減少8億6千1百万円、仕入債務の減少19億4千5百万円、未収消費税等の減少19億4千3百万円、未払消費税等の増加14億2千1百万円、法人税等の支払額16億7千4百万円、税金等調整前当期純利益55億1千9百万円などによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は52億1千1百万円(前年同期比423.0%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出23億8千8百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出27億6千8百万円などによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は28億9千5百万円(前年同期は19億9千9百万円の増加)となりました。これは主に配当金の支払額20億6百万円、自己株式の取得による支出5億円などによるものであります。
当社グループの資本の財源は、営業活動による確実な代金回収を基礎としており、当連結会計年度末において現金及び現金同等物を198億7千7百万円保有しております。
当社グループは、月商の約2.0か月分を安定的な経営に必要な手元資金水準とし、それを超える分については、企業価値の向上に資する研究開発の強化や戦略的投資へ配分しております。当連結会計年度の設備投資は25億1千1百万円、研究開発は9億8千4百万円でありました。これらの設備投資及び研究開発費は、自己資金で賄っております。
資金の流動性につきましては、運転資金は内部資金及び金融機関からの借入金によって調達しており、機動的かつ安定的な資金調達のため、取引銀行5行との間で、シンジケーション方式による総額100億円のコミットメントライン契約を締結しております。なお、当連結会計年度末において当該契約に基づく実行残高はありません。また、子会社において、取引銀行2行との間でシンジケーション方式による総額15億円のコミットメントライン契約を締結しており、当連結会計年度末において当該契約に基づく実行残高は9億円であります。
当社は、2023年5月16日に、2023年度からの3か年を計画期間とする「中期経営計画(2023年~2025年)」を発表しており、事業への資源配分及び株主還元について次のとおり考えております。
事業への資源配分については、積極的な投資による企業成長の好循環を目指し、2023年度からの3年間で経常投資、成長投資、戦略投資の各分野で総額220億円の投資計画を設定しております。これまでのところ、ニューマチックケーソン事業等の技術研究開発に加え、M&Aによる事業領域の拡大や工場・船舶の機能強化等、事業の成長機会の創出に資する投資を展開しており、2025年3月期までの累計で総額109億円の投資を実施しております。
株主還元については、安定した利益還元を経営における最重要課題のひとつと考え、安定した利益配当を継続することを基本方針としております。また資本効率の向上と経営環境の変化に対応した機動的な資本政策の一環として自己株式取得の推進を通じ、2026年3月期においては、配当性向50%以上、総還元性向70%程度を目標としております。2025年3月期時点では配当性向51.7%、総還元性向65.6%となっており、自己株式については2025年2月~3月に総額5億円の取得を実施、2025年5月~7月に総額10億円(上限)の取得を計画しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらとは異なることがあります。
連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下の通りです。
一定の期間にわたり認識する方法による収益
請負工事契約に関する収益は、収益認識会計基準等により、一定の期間にわたり充足される履行義務は、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しております。なお、履行義務の充足に係る進捗度の見積りの方法は、工事原価が履行義務の充足における進捗度に比例して発生すると判断しているため、主として、見積総原価に対する発生原価の割合(インプット法)で算出しております。
見積総原価としての工事原価総額は、原価要素別・作業内容別に個別に積み上げ、所定の承認手続を経て確定された実行予算に基づいて見積っております。工事の進行途上において工事内容の変更等が行われる場合には、当該状況の変化に関する情報を適時に適切な部署・権限者に伝達し、当該情報をもとに実行予算の見直しを行うことで、工事原価総額の見積りに反映させております。対象となる請負工事は、工事ごとに内容や工期が異なるため個別性が強く、また、進行途上において当初想定していなかった事象の発生により工事内容の変更が行われる等の特徴があるため、今後、想定していなかった状況の変化等により工事原価総額の見積りの見直しが改めて必要となった場合、将来の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(生産、受注及び売上の状況)
当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、記載はしておりません。
当連結会計年度における受注実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1 「その他」は、太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業であります。
2 上記数値には、当連結会計年度に連結子会社となりました、株式会社榮開発、株式会社菊政及びその子会社1社の数値は含まれておりません。
当社グループの主な事業である建設事業は、請負形態をとっており「販売」という概念には適合しないため、販売実績に替えて売上実績にて記載しております。
当連結会計年度における売上実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1 「その他」は、太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業及びインターネット関連事業であります。
2 上記数値には、当連結会計年度に連結子会社となりました、株式会社榮開発、株式会社菊政及びその子会社1社の数値は含まれておりません。
3 主な相手先別の売上実績及びそれぞれの総売上実績に対する割合は次のとおりであります。
前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)
(取得による企業結合)
株式会社榮開発の株式取得
当社は、2025年2月12日開催の取締役会において、株式会社榮開発の株式を取得し、子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。
なお、2025年2月26日に本株式取得を実施いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
GCJG35株式会社の株式取得
当社は、2025年1月14日開催の取締役会において、GCJG35株式会社の株式を取得し、子会社化することについて決議し、2025年1月17日付で株式譲渡契約を締結いたしました。
なお、2025年1月31日に本株式取得を実施いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
(1)建設事業
建設事業では、プレストレストコンクリートとニューマチックケーソン技術を中心とした豊富な知識と経験を活かし、技術的により優れた企業を目指して、基礎的研究から新製品及び新工法の開発まで幅広く取り組んでおります。近年ますます高度化、多様化するニーズに対応するために、当社グループの独自技術を研鑽するとともに、大学、各種研究機関及び異業種企業やグループ会社との共同研究に加え、持続可能な社会のためのCO2削減技術・資源循環型構造や、少子高齢化による生産人口減少に対する生産性向上技術に関する研究開発も進めております。当連結会計年度における研究開発費の金額は
① ニューマチックケーソン工法における無人化施工システムの開発
建設業全体における労働人口の減少や、大規模・大深度化に対応するためのニューマチックケーソン無人化及び自動化技術の開発、機器の故障診断ならびに働き方改革への取り組みとしての超遠隔地でのケーソン掘削集中管理、AI活用による沈下予測方法に対する開発や改良など、合理的かつ安全な施工方法に関する研究ならびに実工事での展開の上での改良を図っております。
② 補修・補強技術の開発
橋梁をはじめとする社会インフラの老朽化に対応するため、床版取替工法「SLJスラブ工法」・非鉄材料で構成するプレキャストPC床版である「MeLスラブ工法」・桁取替工法「SCBR工法」ならびに維持管理性を向上させた「dVIP桁」や、PC合成桁の床版取替にプレキャスト部材を活用した「SPスランプ工法」や電気化学的補修工法、ならびに、PCグラウト再注入工法「PC-Rev工法」の充填及び防錆性能に優れる材料開発など、さらなる開発・改良・実装化を進めております。また、橋脚・基礎補強工法「SSP工法」「ピアリフレ工法(曲げ補強対応)」「STEP工法」をはじめとする各種補修・補強技術やAIを活用した調査診断技術の改良や開発を実施しております。
③ 橋梁技術の開発
「SCBR工法」や「プレキャスト壁高欄」などプレキャスト部材を多用した省力化技術の適用拡大や、IoT技術活用による安全管理、AR空間によるバイブレーター充填管理、X線画像によるグラウト充填に関するAI診断など、生産性向上の観点から検討を進め、実工事への展開や改良を図っております。
④ 港湾構造物の開発
港湾分野など新たな市場開拓を目指した「港湾桟橋用SLJスラブ」・「CFRPスラブ」の実用化、過酷な塩害環境下での要求性能を満足する構造開発に注力するとともに、岸壁構造へのケーソン構造の適用について技術開発ならびに実用化を図ります。
⑤ サステナブル社会に向けた開発
CO2削減コンクリートや建築分野を含めたリユース材の利活用ならびにCO2削減に資する工法について、開発ならびに実工事への展開を図ります。また、農水産物の循環型生産システムにおいて、独自に高効率を図ったアクアポニックスシステムの開発と実用化を図ります。これらの事より、サステナブルな社会の実現を目指します。
⑥ 労働安全衛生に資する技術開発
建設工事における労働安全衛生について、更なる安全性や効率の向上を目的として、IoT技術等の活用による建設DXに関する技術開発を行います。
(2)鋼構造物事業
当連結会計年度における研究開発費の金額は