当社グループの経営方針、経営環境、経営戦略並びに対処すべき課題等は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、別段の表記がない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「エネルギーの未来をつくる」をミッションとして掲げ、エネルギー分野特化型の「エネルギーテック」企業グループとして、エネルギーに関するデータの活用促進を通じ、相互シナジーを活かした事業展開を行い、脱炭素化社会の実現に向け、GXを推進する企業というユニークなポジショニングで、エネルギーテック領域でカテゴリーリーダーとなることを目指しております。脱炭素社会を実現するためには、①電力網の脱炭素化、②交通の電化、③食の改善、④自然保護、⑤製造業の浄化、⑥二酸化炭素の除去といった手法が有効とされており(注)、当社グループでは①電力網の脱炭素化及び②交通の電化に貢献する事業を展開しております。
①電力網の脱炭素化においては、電力の送配電や小売側の技術革新が必要と考えております。当社グループは、エネルギーテック事業者として、変化する環境下において最適と判断するサービスを各種ステークホルダーに提供していく方針です。また、エネルギー業界の構造転換に柔軟に対応しつつ、規制及び環境の変化によって生み出される潜在的なニーズに対してエネルギーデータ解析技術を軸として高い精度のオペレーションを継続することによってそのニーズを満たしていくことが必要であり、それを実現するための施策に継続的に取り組んでいく方針です。
②交通の電化においては、EVの普及と同時にEV充電インフラを整備することが急務であると考えております。EVドライバーにとっては、どこでも簡単に充電できる環境の整備が必要とされており、駐車場を持つ施設にとっては、駐車場を利用するEVドライバーのニーズに対応するため、EV充電設備の導入・運用を安定的に行うサービスが求められています。当社グループとしては、これらのニーズを満たすため、EV充電サービス事業者として、EV充電設備の導入・運用にかかる手間を最小限に抑えたオールインワンのサービスを提供し、日本全国に積極的にEV充電設備を設置することで、快適なEV充電の利用環境の整備に継続的に取り組む方針です。
(注)ジョン・ドーア著「Speed & Scale」参照。
(2)経営環境
当社グループが属するエネルギー業界を取り巻く環境におきましては、ロシア・ウクライナ情勢の悪化以降、資源価格高騰の影響を受けた電力会社の財務状況の悪化が見られましたが、電気料金の値上げや卸電力市場価格の落ち着きに伴い、一部電力会社においてユーザー獲得に前向きな動きが見られる状況です。
長期的な観点でのエネルギー業界を取り巻く環境におきましては、引き続きグリーントランスフォーメーション(GX)が進展しました。日本政府による2022年12月22日の第5回GX実行会議において「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が掲示され、150兆円のGX投資を官民で実現していくため、日本政府としても20兆円規模の先行投資支援を実行する旨の意見表明がなされる中、こうしたGXの動きの中心となる電力業界においては、2016年4月の電力の小売全面自由化以降、全国の電力販売市場は資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画」で示されたとおり、拡大傾向にあり、現在では年間約18兆円規模(注)に達しており、当社はこの成長市場の中で事業を展開しております。
(注)電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報結果」より2024年4月から2025年3月の電力販売額の合計。
(3)経営戦略等
単一制度におけるエネルギー自由化市場としては世界最大規模の電力市場(注1)を有し、近年の電力・ガス自由化、スマートメーターの普及等により競争環境が整備されつつある日本市場において、当社グループの強みは、「エネルギーテック」企業グループとして、エネルギー分野に特化した技術開発力を基盤としたデータ分析力と、幅広い顧客基盤を有していることにあると認識しております。
当社グループのTAMについては、「第1 企業の概況 3.事業の内容」に記載のとおり、「エネルギープラットフォーム事業」は約3,600億円(2024年4月~2025年3月の電力市場規模18兆円に、電力切替後の継続報酬料率相場である2%を乗じて試算)、「エネルギーデータ事業」は約1,800億円(2024年4月~2025年3月の電力市場規模18兆円に、売上高IT予算比率1%を乗じて試算)と推定しております。
*1 電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報結果」より、2024年4月から2025年3月の電力販売額の合計。
*2 電気料金に対する継続報酬売上料率、当社調べ。
*3 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査」のエネルギー業界(社会インフラ)の売上高に占めるIT予算比率。
なお、電力・ガス自由化以降の競争環境の整備、スマートメーター設置の普及等「エネルギーの4D」の浸透、さらには「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において産業・運輸・家庭部門の電化によって現状より最大40%電力需要が増加すると想定されているとおり、電力市場の規模は今後も継続的に拡大するものと想定しております。
当社グループでは、以下の戦略を持って、シェア拡大に取り組んでおります。
「エネルギープラットフォーム事業」においては、中立的な立場でサービス提供をすることが、提携する電力・ガス会社数や取得可能なデータ量の拡大に繋がっていると認識しております。今後も当社グループでは、中立的な立場でのサービス提供を前提に、オンラインのみならず、不動産仲介業者や金融機関等とのパートナーシップを拡大することで、オフラインでの集客力を強化し、ユーザー数の拡大に努めてまいります。また、電力切替に加えて、ガスセットでの切替、クリーンエネルギーの付加価値販売等のクロスセルを通じたARPU(注2)の向上により収益基盤の強化を目指してまいります。
「エネルギーデータ事業」においては、今後、電力・ガス会社間での競争がより激化すると見込んでおり、顧客開拓から電力調達に至るまでの電力・ガス会社にとってのバリューチェーン全体におけるデータ活用に対するニーズがより一層高まると考えております。当社グループはそのようなニーズに対して、「エネルギーデータ事業」で展開しているデジタルマーケティング支援や、電力データ解析サービスによる業務効率化支援を行うことで、電力・ガス会社のデジタル化推進のサポートを通じた競争力強化により事業成長を目指してまいります。
「EV充電事業」においては、2025年3月10日以降、中部電力ミライズとの合弁会社である新会社「ミライズエネチェンジ」により事業運営が開始しております。今後は、持分法適用関連会社であるミライズエネチェンジが主体となって、同社に移管したEV充電事業のノウハウと中部電力ミライズが有する顧客ネットワーク、インフラ事業者としての安心できるブランド力、盤石な財務基盤に裏付けられた資金調達能力を相互に活用することで、脱炭素社会実現に向けた電気自動車(EV)の普及において必要となるEV充電インフラの整備を進めていくこととなります。
(注)1.IEA 2023年2月8日「Electricity Market Report 2023」より。日本の電力需要は中国、アメリカに次ぐ3位。中国、アメリカは部分的に自由化を実施しており、日本は小売全面自由化を実現。
2.ARPUは、Average Revenue Per Userの略称であり、1ユーザー当たりの平均収益を意味しております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、フリーキャッシュ・フローの最大化による企業価値の向上を重視しております。
フリーキャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローで構成され、事業活動による利益創出力や投資余力を示す指標であり、これを拡大することは将来的な成長投資やM&A等の迅速な経営判断を可能とし、企業価値の向上に直結します。
当社グループは、一括型プラットフォームとして多様な顧客ニーズに対応できるソリューションの拡大に取り組んでおります。その一環として、他事業部の既存顧客へのクロスセルや新規サービスの提供を推進し、事業間のシナジー最大化を図っています。また、既存事業の強化策としてオーガニックグロースに加えM&Aに関しても積極的に活用し、グループ全体の成長と収益基盤の安定化を目指しております。
こうした方針のもと、外部環境や自社戦略等を考慮した中期経営計画を策定・更新し、売上高や営業利益、経常利益、当期純利益など各種目標を設定しております。
「エネルギープラットフォーム事業」においては、家庭・法人ユーザーの電力契約切替以降、提携電力・ガス会社より継続的に収受するストック型の切替報酬並びにプラットフォームの基本利用料が、ストック型収益の基盤であり、そのため、ユーザーの電気・ガス代の従量制で継続的に発生するストック型の切替報酬の対象となる継続報酬対象ユーザー数が重要な指標となります(2025年3月期 654,006人)(注1)。電気・ガスの利用自体は、長期にわたり予見性が高いインフラであることを考慮すると、今後もストック型収益基盤は拡大していく見込みです。また、効果的なプロモーション活動やパートナーシップの拡大を継続していき、「エネチェンジ」ブランドの知名度を向上させる方針です。
「エネルギーデータ事業」においては、月額のソフトウエアライセンス料(保守運用費を含む)がストック型収益の基盤であるため、当社の提供サービスを導入している顧客数が重要な指標となります(2025年3月期 63社)。また、エネルギー業界特化型のSaaS事業者としては、直接的な対象顧客は電力・ガス事業者であることから社数が限定的になるため、利用者数に応じた従量課金体系を採用することで、電力・ガスを利用するエンドユーザーを、サービスの間接的な顧客として収益基盤の継続的な拡大を目指しています。そのためにも「エネチェンジクラウドMarketing」及び「エネチェンジクラウドDR」の継続的なプロダクト開発と営業活動を推進してまいります。また、「EV充電エネチェンジ」アプリのノウハウを活用した、EV充電アプリの開発運用や全国のEV充電スポット情報のAPI提供などのEVサービス向けソリューション「エネチェンジクラウドEV」を展開することで、EV充電関連のサービス展開の強化も図っております。
「EV充電事業」においては、事業の立ち上げと推進のためにエンジニア・セールス人員を中心とした採用の拡大による組織体制の構築や、積極的なマーケティングの実施等先行投資を進めた結果、当社が注力する目的地充電(6kW以上)の設置口数は2025年4月2日時点で累計7,373口(注2)となりました。また、パートナー連携を拡大するなど、更なる事業拡大を見据えた施策に取り組んでまいりました。なお、2025年1月24日公表の「EV充電事業の合弁会社化に向けた子会社設立、当社及び子会社間の吸収分割、当社及び中部電力ミライズとの株式譲渡契約等の締結並びに子会社(孫会社)の異動に関するお知らせ」にて公表しましたとおり、当社は、中部電力ミライズとの合弁会社となる新会社においてEV充電事業を運営していくことを決定し、同年3月10日よりミライズエネチェンジでのEV充電事業の運営を開始いたしました。
(注)1.継続報酬対象ユーザー数は、一般家庭ユーザーの電力容量は平均的に4キロワットとみられているため、法人ユーザーの総獲得容量から割り戻した一般家庭ユーザー相当への換算値と一般家庭ユーザー数の合計値を用いております。
2.ミライズエネチェンジ株式会社のHPに記載の2025年4月2日時点で初期設定が完了した利用できる6kW以上の充電器スポットのみを抽出して作成(基礎充電は含まず)。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループとして取り組むべき主な課題は以下の項目と認識しており、課題の解決に向けた取り組みを進めております。
<競争優位性の確保について>
①エンジニア主体によるプロダクト開発の強化
エネルギー業界においては、今後のデジタル化の更なる進展に伴い、ビッグデータ解析やAIといった技術を活用したプロダクト開発の重要性がますます増してくるものと見込まれます。そのような中、当社グループでは、高いエンジニア比率を有する組織構造を保つことでエンジニア主体によるプロダクト開発を強化しています。コア技術を自社開発することを基本方針として、技術部門の陣容を強化しつつ、必要に応じてライセンス調達等を組み合わせながらプロダクトの開発強化を推進してまいります。これらの実現には、高い採用力を維持・強化することが必要であり、今後も採用活動には人的・資金的投資を積極的に行い、当社グループのミッションへの共感を軸とした採用力強化に注力していきます。
②財務体質の強化
当社グループの連結貸借対照表の状況は、当連結会計年度末において純資産は4,551,681千円となり債務超過を解消しております。これは主として以下の取り組みによるものです。
2025年1月24日付「EV充電事業の合弁会社化に向けた子会社設立、当社及び子会社間の吸収分割、当社及び中部電力ミライズ株式会社との株式譲渡契約等の締結並びに子会社(孫会社)の異動に関するお知らせ」にて公表しましたとおり、当社は、中部電力ミライズとの合弁会社となる新会社においてEV充電事業を運営していくことを決定し、同年3月10日よりミライズエネチェンジでの事業運営を開始いたしました。本件による当社連結純資産改善額は約25億円となりました。さらに、2025年2月3日付「伊藤忠エネクス株式会社との資本業務提携契約の締結、及び第三者割当による新株式の発行に関するお知らせ」のとおり、当社は、伊藤忠エネクス株式会社との間で資本業務提携を行うことを目的に資本業務提携契約を締結すること及び同社に対する第三者割当による新株式の発行を行うことを決定し、同年2月19日に新株式発行及び払込が完了いたしました。本件による当社連結純資産改善額は約28億円となりました。
今後も更なるストック型収益基盤の強化を図るにあたり、「エネルギープラットフォーム事業」における効果的なプロモーション活用やパートナーシップの拡大並びにM&Aの推進、並びに「エネルギーデータ事業」における「エネチェンジクラウドMarketing」及び「エネチェンジクラウドDR」に関して、成長をより加速させるための資金需要が生じる可能性があり、資金需要が顕在化した際には、適時に資金調達を検討してまいります。
<管理体制の強化について>
①情報管理体制の強化
当社グループが運営する事業においては、顧客情報や個人情報を多く取り扱っており、これらの情報管理体制の一層の強化が重要であると考えております。
当社はプライバシーマークを取得しており、関連する個人情報保護法令等に基づき、個人情報の適切な取り扱いに十分配慮しながら事業を遂行しております。また、「個人情報保護方針」を含む社内規程の整備並びに運用の徹底、個人情報に関する内部監査や社内研修の実施を通じて、これらの情報については厳正に管理しております。引き続き社内システムの一層のセキュリティ強化、社内研修の整備等を図り、情報管理体制を強化していく方針です。
②システムの安定的な稼働
当社グループが提供する各種サービスはインターネットを利用したサービスであり、システムの安定的な稼働が不可欠です。そのため、「システム管理規程」に基づき、不正アクセス対策、コンピュータウイルス対策、データの管理等の徹底を図っております。データベースについては、原則としてクラウドサービス上で構築・運用をすることでセキュリティを担保しており、クラウドサービスでカバーされない範囲については、データベースの暗号化やセキュリティパッチの自動適用等、必要と考えられる対策を行っております。今後はユーザー数の増加や取り扱いデータ容量の拡大に伴うシステム投資、適切な人員体制の拡充を計画的に行うとともに、データのバックアップ体制強化についても努めてまいります。
<外部調査委員会による調査報告書で指摘を受けた課題>
当社は、2024年6月27日付「外部調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ」にてお知らせしましたとおり、当社のEV充電事業におけるSPC(EV充電インフラ1号合同会社)を非連結とした従来の会計処理(以下、「本件会計処理」といいます。)について、2024年3月より独立した外部の有識者による外部調査委員会を設置して調査を進め、2024年6月21日付で外部調査委員会より調査報告書を受領しました。当社の2024年9月24日付「改善報告書」のとおり、外部調査委員会による調査及び検証の結果、EV充電事業の事業リスクに対応し得る態勢の不足、本件会計処理に関わった当時の当社代表取締役CEO城口洋平氏(以下、「城口氏」といいます。)及び一部の執行役員において、あずさ監査法人との適切なコミュニケーションが不足しており、また、そのような状況について認識を共通化することができていなかったこと、株価の上昇を強く志向する一方でコンプライアンスを軽視した経営トップらの姿勢、実効性のある内部統制及びガバナンスが構築されず、本件会計処理を採用するにあたって十分な牽制・監督機能を果たすことができていなかったことが発生原因と評価され、外部調査委員会の調査結果を踏まえ、当社として、本件会計処理に起因する一連の問題の発生原因として、①当時の代表取締役CEOへの権限集中と強烈なトップダウンカルチャー、②業績優先の経営姿勢、③管理部門による内部牽制機能の不足、④取締役会及び監査役会への情報共有の不足に起因する監督機能不全、⑤経営陣のコンプライアンス意識を軽視する姿勢、⑥会計・法務コンプライアンス面における社内体制の脆弱性、⑦会計監査人とのコミュニケーション上の課題、⑧外部専門家の活用の不足があったと認識し、下記のとおり、再発防止策を策定いたしました。
①責任の明確化
a.2024年7月29日付「代表取締役CEOの異動(退任)のお知らせ」に記載のとおり、当社は、上記の外部調査委員会による事実認定及びあずさ監査法人の見解を踏まえ、本件会計処理に起因する一連の問題について、城口氏の当社代表取締役CEOとしての責任を明確化する必要があると判断いたしました。城口氏は、2024年3月28日に開催された当社第9期定時株主総会(以下、「本定時株主総会」といいます。) の決議によって取締役に選任され、同選任議案記載のとおり本定時株主総会継続会(2024年7月30日開催) 終結時をもって取締役に就任(再任)する予定でしたが、外部調査委員会の調査結果等を踏まえ、城口氏より、当社取締役就任を辞退する旨の申し出があり、当社はこれを受理いたしました。
b.後任の代表取締役については、2024年7月30日(定時株主総会継続会開催日)から2024年9月3日(臨時株主総会開催日)までは平田政善氏が代表取締役会長に就任いたしました。また、平田氏においては、2024年9月3日以降も取締役会長として、当社の再発防止策の確実な実行に関与しております。
②権限分散による経営トップに対する牽制機能の強化
経営トップに対して、適切な牽制や抑制を図ることができる組織体制の見直しを図り、経営トップの権限行使を適切に牽制あるいは抑制できる体制を構築しております。
a.代表取締役を複数名選出し、代表取締役相互の牽制体制の実効性を担保いたします。なお、2024年9月3日開催の臨時株主総会において取締役に選任された丸岡智也氏が代表取締役CEOに、曽我野達也氏が代表取締役COO(注3)に就任しております。
b.最高財務責任者(CFO)は上級執行役員(注3)とし、任命及び人事評価は、指名報酬委員会が行うこととします。
③取締役会及び監査役会の経営トップに対する監督機能の強化
外部調査委員会によって認定された当社の問題点については、城口氏を中心とした当時の執行体制において、金銭消費貸借契約やオプション行使条件等の重要なリスク要素が取締役会へ報告されていなかったことが一因となっています。これを是正するため、今後のリスクへの対応等においては、「②権限分散による経営トップに対する牽制機能の強化」に記載のとおり、複数の代表取締役を選任するとともに、既存のガバナンス体制の適正な運営を前提に、複数のチャネルから取締役会へのリスク事項の報告と議論が徹底できる体制を構築しております。
a.経営執行会議及びコンプライアンス・リスク管理委員会での議論項目と粒度を見直し、現段階のオペレーションリスクのほか、事業戦略に起因するリスク等について執行サイド(常勤取締役、執行役員)と監督サイド(社外取締役、監査役)間での徹底した議論を行うことで、執行サイドと監督サイドを含めた会社全体でリスク認識を共有し、経営課題と一体的に取り組める体制にすることで取締役会及び監査役会の監督機能をより一層強化いたします。
b.権限分散を前提とし、旧来の限定的になっていた取締役会へのレポートラインを複数にすることで、法務及び会計・経理上のリスクを含む重要なリスク要因への対応について、その具体的内容や検討過程、対応状況を積極的に共有いたします。
④コンプライアンス意識の向上
経営トップを筆頭に、当社の全役職員のコンプライアンスに係る認識を改め、上場企業として求められるコンプライアンス意識を徹底するため、以下の施策を実行してまいります。
a.正しい行動を促す企業風土を醸成するため、経営理念や行動規範等を見直し、すべての役職員が守るべきコンプライアンスの基本的な考え方や指針を明文化するとともに、浸透を徹底するための取り組みを継続的に行います。
b.コンプライアンス・リスク管理委員会が主導して実効性あるコンプライアンスプログラムの立案・計画、推進を図るとともに、モニタリングを通して継続的に評価・改善に取り組んでまいります。
c.全経営幹部の会計リテラシーの醸成を目的として、内部統制、財務報告・開示等に関する研修を実施しております。
d.役職員の意識変革を着実に推進するため、体系的な研修プログラムを計画し、実施しております。
e.役職員の人事評価に多面的評価を取り入れるなど、人事評価制度を改善しております。
f.内部通報制度の実効性を高めるための取組みを継続的に行っております。
g.社内のコンプライアンス意識の定着度や醸成状況を把握するため、定期的な意識調査を実施しております。
⑤会計機能・法務機能・内部監査機能の強化
会計・法務・内部監査機能の強化のため、経理リソースの増強、コーポレート企画・管理部法務チームの関与拡大、内部監査の独立性強化を実施いたします。
a.会計・経理機能の強化
会計処理の検討やモニタリングを行うために必要な経理リソースの増強を図るとともに、既存の経理リソースを含め継続的な教育研修を行ってまいります。加えて、金額的重要性が高まっている取引や契約内容が変更となっている取引の有無を経理財務部財務IRチーム、コーポレート企画・管理部法務チーム及び事業部門双方が定期的に確認するとともに、グループ会社の設立やグループ会社との取引条件の決定に際しては、経理財務部財務IRチーム、コ
ーポレート企画・管理部法務チーム及び事業部門で会計処理や契約関係を整理し、その共通認識に基づいたポジションペーパーを作成した上で、重要性に応じて外部の専門家のチェックを経た上で、CFO及び法務責任者を含む執行サイド並びに監督サイドがポジションペーパーのレビューを行い、会計処理の妥当性を確認する態勢を整備しております。
b.法務コンプライアンス機能の強化
コーポレート企画・管理部法務チームを社内の重要なプロジェクトに前広に関与させ、かつその業務執行の独立性が尊重される態勢を併せて整備いたします。具体的には、コーポレート企画・管理部法務チームに法務コンプライアンスを担う専門的知見と相応の経験を有する人材の採用等を検討します。
c.内部監査機能の強化
内部監査の独立性及び実効性を確保するため、専任の内部監査室長を配置いたしました。
また、内部監査の過程で不正の兆候等を検知した場合等には、監査役会へ報告することを義務化します。さらに、内部監査室長の人事評価は、監査役会の同意を経て確定することとしております。
⑥会計監査人との信頼関係の構築
会計監査人との連携強化と三様監査の定期的な情報共有を実施し、適切な会計処理と三様監査の体制を確立しております。
a.会計監査人との連携強化
当社の会計処理にかかる方針を策定する際は、必要に応じて専門家に相談を行い、会計上の論点を明確にし、当社としての判断とその論拠についてポジションペーパーを作成した上で、会計監査人と協議いたします。また、当社が会計監査人とその会計処理にかかる方針について協議する際には、案件の全体像を提示して説明することを徹底します。また、当社と会計監査人間で確認・合意した会計処理にかかる方針に関する事項については、事後的な会
計上の解釈の齟齬を防ぐため、整理して書面化することを徹底します。
b.三様監査の連携強化
監査役、内部監査部門、会計監査人によるミーティングを少なくとも四半期毎に開催し、適時・適切な情報共有と意見交換を実施しております。
当該再発防止策の実行状況に関する詳細は、2025年3月25日付「東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ」に添付の「改善状況報告書」第3.改善措置並びにその実施状況及び運用状況等をご参照下さい。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般への取り組み
当社グループは、「Changing Energy for a Better World ~エネルギーの未来をつくる~」というミッションに基づく事業活動そのものが、持続可能な社会の実現に資するものと考えています。取締役及び全従業員が法令・定款を遵守し、当社グループにおける「企業行動憲章」のもとにその職務を遂行し、企業活動を行って経営の効率性及び透明性を高め、持続的な成長と企業価値の最大化を図ることで、サステナビリティの実現に向けた活動を進めてまいります。
① ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティに関する重要事項については、コーポレート部門を構成する経理財務部、CEO室、コーポレート企画・管理部等が中心となって検討を進め、経営執行会議にて審議の上、コンプライアンス・リスク管理委員会や取締役会に報告の上、必要な事項の決定をしております。
② 戦略
当社グループでは、様々なステークホルダーの皆様の期待や要請に応えていくため、優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。これらの重要課題の選定理由と具体的な取り組み内容の詳細については、当社サステナビリティサイト(https://enechange.co.jp/sustainability/)をご参照ください。
重要課題の策定プロセスは下記のとおりであります。
イ.マテリアリティの抽出
SASB(サスティナビリティ会計基準)やGRIスタンダード、SDGs (国連の持続可能な開発目標) といった国際的な指標を参照しつつ、当社の外部環境分析やステークホルダーからのフィードバックを通じ、当社の企業価値向上に向けた経営課題と関連性の高いマテリアリティを抽出いたしました。
ロ.ステークホルダーとの対話を通した、マテリアリティの整理
株主・投資との対話や主要なパートナーとのディスカッションを通じて、当社に対する期待について情報収集を行いました。また、定期的に実施している従業員サーベイの結果を通して従業員からの期待を把握しました。これらの対話を通じて、抽出したマテリアリティについての整理を実施しました。
ハ.マネジメントによるマテリアリティの特定と位置づけ
抽出・整理したマテリアリティについて、取締役会及び経営執行会議における議論を通じて、当社経営戦略との関連性を評価し、優先的に取り組むべき課題を特定いたしました。
当社はエネルギー業界のイノベーションを推進する「エネルギーテック」企業です。脱炭素社会の実現に向けて、急速な変化が求められるエネルギー企業に対して、最先端のテクノロジーサービスの提供を通じて、エネルギー業界全体の変革を実現することが当社の役割であり、まさにE(Environment)の領域における事業活動が当社の中心であることから、当該項目をステークホルダー並びに当社にとって共に重要な項目であるものと位置づけています。
③ リスク管理
当社グループを取り巻くリスクを認識し、適切に対応するため、代表取締役CEO、代表取締役会長、執行役員、事業部及び室の各責任者、監査役、内部監査室長から構成されるコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、原則として四半期ごとに1回開催することとしております。コンプライアンス・リスク管理委員会では、当社及び子会社のリスク管理に必要な情報の共有化を図り、コンプライアンスに係る取組みを推進する他、コンプライアンス違反の事例が生じた場合に迅速な対応、事実関係の調査、再発防止の立案などを行います。また、リスクアセスメントの導入と対応策のモニタリングをし、リスク管理体制の検証や関連当事者等取引についての検証及びコンプライアンス教育の立案を行うだけでなく、再発防止策の監視・提言を行うことを主な目的とする組織となっております。
サステナビリティに関するリスクを含め、主な重要リスクは「
④ 指標及び目標
当社グループでは、上記マテリアリティの中でも、エネルギー業界における長期の時間軸に対応した形で持続可能性の高い企業体となり、外部環境の変化や技術革新等に対しても柔軟に適応して成長することが重要であるという観点により、ビジネスモデルのレジリエンスを特に重視しております。そのため、レジリエンスの基盤となるストック型収益(毎期、経常的・反復的に生じる継続報酬やソフトウェアライセンス料等)を重要指標と定めています。なお、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標は設定しておりません。
(2)人的資本・多様性に対する取り組み
当社グループでは、人的資本・多様性に対する取り組みにおいて、持続的な成長を担保するためには人的資本が経営に与える影響が大きいとの視座の下、優秀な人材の獲得と従業員の働きやすい環境づくりのために、ダイバーシティの推進/ワークライフバランス、人材育成/人材開発、従業員エンゲージメントという3つの観点から、②戦略における記載の通り取り組みを強化しています。
① ガバナンス
当社グループは、人的資本に関する具体的な取り組みについては、経営企画部の下、各事業部や各室と連携して検討しており、取り組みの進捗状況や人事施策の効果・課題等は、定期的に経営執行会議やコンプライアンス・リスク管理委員会に報告しております。また人的資本に関する各種方針等の重要事項については、取締役会で審議、決定しております。また、従業員に向けて、適宜従業員サーベイを実施しており、その結果は経営執行会議に報告されモニタリングする体制を整え、重要課題の整理に反映させるとともに、人的資本に関するリスクの早期発見・対処に努めております。
② 戦略
人的資本に関して、主に下記に記載の取り組みを行っています。
イ.ダイバーシティの推進/ワークライフバランス
・テレワークを恒久的に
当社では、2020年4月からテレワーク制度を導入し、現在ではテレワークと出社を組み合わせたハイブリッド勤務を行っています。労働法令を遵守した労働管理を行うなど、社員の時間外労働の削減にも積極的に取り組んでおります。
・中核人材の登用等における多様性の確保
<多様性の確保についての考え方>
当社では、性別・年齢・職歴等の属性に関わらず、当社で活躍できる社員を幅広くフラットに採用することを基本方針としております。具体的な目標数値は定めておりませんが、専門的な人員の確保、多様な人材の確保、能力のある人材の管理職への登用は性別や年齢に関係なく行っております。
<多様性の確保の自主的かつ測定可能な目標>
当社では、性別・年齢・職歴等の属性に関わらず、経験・能力等を総合的に判断して管理職への登用を行っているため、管理職に占める属性ごとの目標値は定めておりません。
<多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針、その状況>
当社では、性別・年齢・職歴等にとらわれず採用、配置、評価を行っています。当社の人事評価制度では、性別や年齢等の情報を含めず、従業員が公正に評価されるように制度を設計しています。
また、次世代の人材育成とライフワークバランス等の柔軟な働き方の環境整備のため、産休・育休の取得及び育休後の復帰支援に務めており、「TOKYOパパ育業促進企業2022」において過去2年間の男性の育休取得率が50%以上の「ブロンズ認定」を取得しております。なお、2025年3月末時点での産休育休復帰率は100%となっています。
ロ.人材育成/人材開発
・オンボーディング
当社のオンボーディングでは、会社のルールや各種フローの紹介、事業部の説明会を行っております。テレワークが浸透し、お互いの顔が見えづらいなか、スムーズに溶け込んでもらえることを目的としております。
・OKR
会社やチームと個人の目標を合致させ、目標の設計や管理を効果的に行う仕組みとしてOKRを当社でも取り入れています。当社のOKRは評価制度に紐づいており、四半期ごとに事業部で設定したOKRを個人単位まで落とし込み、設定した個人OKRにそって進捗をベースにした評価を行っております。
・1on1
上司とメンバーとのコミュニケーションの深化や成長支援のための場にフォーカスをした1on1を実施しています。メンバーの職務・タスク習熟度によって頻度は個別に設定することで、メンバーのキャリア形成や目標達成に向かうための障壁を取り除くことを目指しています。
・学習補助金(セミナー受講、書籍購入)
有料セミナーの受講費やビジネス書など業務に必要な書籍の購入費用を全額会社が負担しております。
ハ.従業員エンゲージメント
・持株会制度
メンバー全員が業績や企業価値向上のために取り組み、その成果を分け合えるようにするために設けた制度です。
・ミッション・バリュー表彰制度
当社のミッションである「エネルギーの未来をつくる」と、3つのバリュー「Impact Driven(エネルギーの未来にインパクトを与える)」「Be A Professional(常に最高のパフォーマンスを出す)」、「Energise The Team(一人で成しえない大きな成果を最高のチームで創る)」に基づき、それぞれを業務への取り組みで体現したメンバーを表彰する制度です。ミッションは年に1度、バリューは四半期ごとに表彰しております。
③ 指標及び目標
当社グループでは、優秀な人材の獲得と従業員の働きやすい環境づくりに関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する実績は次のとおりであります。なお、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標は設定しておりません。
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指標 |
実績( |
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(注)提出会社における比率であります。
(3)気候変動に対する取り組み
当社グループでは、中長期的な企業価値の向上、並びに持続可能な社会を実現していく上で、気候変動への対応を重要な経営課題の一つと認識しております。当社グループが事業運営を行うエネルギー業界は、その特性上様々な規制が設けられているがゆえに、政策面での変化や方向性を踏まえたうえで、適切な政策提言を行うと同時に、政策的な変化に伴う事業機会を見出すことで企業価値の向上の両立を実現していきたいと考えております。
① ガバナンス
当社グループは、気候変動に対する具体的な取り組みについては、CEO室室長の下、各事業部や各室と連携して検討しており、当社単独、または後述するような経済団体等を通じて政策立案者への働きかけを行うと同時に、経済産業省等の提言内容や政策の方向性を経営執行会議で審議し、事業開発へと繋げております。またその内容は年に2回の経営合宿において中期経営計画の策定・見直しとあわせて取締役会へも報告されております。
② 戦略
気候変動に対しては主に以下の取り組みを実施しております。
・政策側の働きかけ
当社が事業運営を行うエネルギー業界における自由化の進展や脱炭素社会に資する提言を複数の政府委員会や経済団体内で提言し、脱炭素社会実現等に資する活動をしております。働きかけを行う事で、日本国内における電力業界の革新を促すだけでなく、電力データを活用したサービスとイノベーションを通じた気候変動への対応を推進していきたいと考えております。
・事業開発
当社はエネルギーテック企業として、電力データを活用した気候変動への対策に向けた事業を展開しております。特に世界的に注目される再エネ価値同時同量、すなわち24/7カーボンフリーの推進に向けたアワリーマッチングを実現する電力会社向けサービスの展開(eValue Platform)や、ピークシフトや行動変容を促す取組みを環境省の実証実験に協力する形で検討し、再エネ価値を最大限利活用する取組みを行なうことで、今後の気候変動への対応をより強力に推進していきたいと考えております。
③ 指標及び目標
当社は、気候変動への対応として、自社オフィス及びその他事業活動における温室効果ガス(GHG)の排出量を把握・管理し、継続的な削減に取り組んでおります。当連結会計年度においても、スコープ1・スコープ2、その他排出量を以下のとおり算定し、将来的な排出削減目標の策定に向けた基礎データとしております。
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カテゴリー |
指標 |
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SCOPE1(kg-CO₂) |
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SCOPE2(kg-CO₂) |
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SCOPE1+SCOPE2合計(kg-CO₂) |
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その他排出量(kg-CO₂) |
69 |
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電気使用量(kWh) |
51,129.1 |
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熱使用量(MJ) |
129,879.8 |
(注)1.対象はENECHANGE株式会社のオフィス活動および一部の事業に伴う排出に限定。
2.スコープ1排出は該当なし(当社におけるガス等の直接燃焼設備は未使用)。
3.スコープ2排出量は、当社メインオフィス(WeWork東京スクエアガーデン)の電力および熱使用量、ならびに新宿サテライトオフィスの電力使用量に基づき、マーケット基準の排出係数を用いて算定。
4.メインオフィスの電力は、東京電力エナジーパートナーの「グリーンベーシックプラン」を契約しているため、マーケット基準では電力に関する排出量は0。
5.メインオフィスの熱使用量は、WeWork東京スクエアガーデンにおける冷暖房機器による地域熱利用に起因し、都市ガスを熱源とする前提で排出係数0.0000456 t‑CO₂/MJ(令和6年度代替値:2.05 t‑CO₂/千m³)を用いて算定した結果、約5,922 kg‑CO₂の排出量となる。
6.新宿サテライトオフィスの電力契約内容は現在確認中であり、非化石証書の付帯がない場合、同拠点におけるマーケット基準での排出量が発生する可能性がある。
7.その他の排出量として、当社が利用しているクラウドサービスである Amazon Web Services(AWS)の利用に伴う排出は、2024年1月〜2025年2月の期間で69 kg‑CO₂(マーケット基準)と算定。当社ではスコープ3全体の排出量は現時点で算定しておらず、本数値はクラウド利用に限定した開示。
当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載します。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示します。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。なお、2025年3月10日以降、「EV充電事業」が中部電力ミライズ株式会社との合弁会社である新会社「ミライズエネチェンジ株式会社」により事業運営が開始しており、当該新会社による事業運営の開始により、2025年3月末以降、EV充電事業は連結の範囲から外れております。
(1)事業環境に関するリスクについて
①電力小売市場について
当社グループが事業展開をしている電力業界においては、社会全体でのデジタルトランスフォーメーション(DX)への要望が高まっており、「エネルギープラットフォーム事業」ではオンラインでの切替需要増加、「エネルギーデータ事業」では、電力ガス事業者からのDXサービスの導入需要増加等当社グループの業績にとっては好影響になる要素も多いと考えております。しかしながら、今後エンドユーザーの切替意欲の減退による切替数の鈍化や、新電力の競争力低下に伴うシェアの伸び悩み等の要因により、切替が進行しなかった場合、或いは電力ガス事業者に対するDXサービスの導入が順調に進展しなかった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②電力制度改革について
当社グループが事業を展開するエネルギー分野では、東日本大震災以降、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の導入や電力・ガス小売の全面自由化、送配電部門の法的分離など、制度改革が継続的に進められてきました。さらに2024年12月に第7次エネルギー基本計画が策定され、電力自由化から10年を経た制度改革の到達点や課題が整理されつつあります。
こうした中、分散型電源の拡大や需給調整力の高度化に対応するため、同時同量市場(同時市場)の導入や、排出量取引制度(カーボンプライシング)の本格導入など、エネルギー市場の構造改革が今後数年で本格化する見通しです。これらの制度は、電力ビジネスの取引構造や競争環境に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループにとって、これらの制度変化は小売支援、需給最適化、分散型リソース活用における新たな事業機会をもたらす一方で、制度の施行時期の遅延や設計の不確実性が事業戦略に影響を及ぼす可能性もあります。特に、取引市場の変化に迅速に適応できなかった場合や、想定外の制度設計となった場合には、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があると認識しております。
③その他関連市場について
当社グループの展開するサービスは主にインターネットを通じて提供されているため、使用環境の改善や利用可能な端末の増加等を通じたインターネット関連市場の更なる発展が、当社グループの成長のためには重要であると考えております。また、当社グループがサービス展開を行う上での基盤となるクラウド関連市場やビッグデータ関連市場については、今後拡大が見込まれており、当社グループとして積極的に関連サービスを多角的に展開する方針です。
しかしながら、これら当社グループが事業展開する上での基盤となる関連市場が、新たな規制やその他予期せぬ要因により急激な変化に見舞われ、使用環境への制限等を通して発展が阻害された場合は、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容及び提供サービスに関するリスクについて
①電力・ガス会社への依存について
当社グループの「エネルギープラットフォーム事業」及び「エネルギーデータ事業」においては、取引先の電力・ガス会社からの収益が主な収益源となっております。そのため、資源価格や日本卸電力取引所(以下「JEPX」)における電力取引価格の想定外の高騰、自然災害や突発的な事象等予期せぬ事態、などの影響により取引先電力・ガス会社の経営状態が悪化した場合、また電力・ガス会社における集客チャネルに関する戦略の変更等により、当社グループ以外のチャネルの重要度が高まった場合には、既存契約の条件見直しや解消、新規発注の停止等につながる可能性があります。当社グループとしては、取引先電力・ガス会社の分散を通じてリスクの低減に努めておりますが、特定の時期にかかる事象が集中発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②大型案件について
当社グループの「エネルギーデータ事業」においては、顧客の個別ニーズや予算規模により受注案件が大型化した場合、売上計上が可能となるサービスのリリースに至るまでに長期間を要する可能性があります。一部大型案件の受注可否については、特定顧客の動向や判断に左右される部分が多いため、当該案件の受注が計画のとおりに進まなかった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③サービスのライフサイクルについて
当社グループの「エネルギープラットフォーム事業」においては、当社サービスを経由して電力・ガス会社の契約切替を行ったユーザーの小売供給契約期間は基本的に1年間となっておりますが、その後ユーザーの意思に従って契約の更新又は解約がなされます。当社としてはユーザーにとっての最適な小売供給契約の締結をサポートするために、契約締結後もカスタマーサポートの提供や営業活動を通じた顧客ニーズの継続的な把握等に努めており、追加的な電力・ガス会社の切替ニーズが発生した場合は、そのサポートも実施することで継続的な切替報酬を収受しております。しかしながら、当社提携外の電力・ガス会社からの営業活動等により、ユーザーが小売供給契約を当該電力・ガス会社に切替えた場合は手数料収入が減少するため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④競合他社の状況について
「エネルギープラットフォーム事業」においては、家庭向け・法人向けユーザーに電力・ガス切替プラットフォームを展開する事業者が多数存在しており、加えて電力・ガス会社自身も直接または間接的に営業活動を行っていることから、当該事業分野は一定の競争環境下にあると認識しております。当社は現在、提携電力・ガス事業者数の拡大、サービス価値また集客力の向上、パートナーシップ拡大等にの施策を通じてオンライン、オフラインともに一定の競争優位性を有していると認識していますが、今後、 既存・新規の競合他社が同様またはより優れたサービスやマーケティング手法を導入した場合、 業界再編や新規参入等によって市場環境が大きく変化した場合、 電力・ガス会社による直販営業の強化や販売チャネルの多様化がより進んだ場合などにより、当社の市場シェア縮小、価格競争の激化、収益性の低下などが生じるリスクがあります。 また、オフラインの営業活動において代理店による顧客対応が十分でない場合や、優秀な人材の離職・競合他社への流出が生じた場合には、当社の営業活動や事業運営に一定の影響が生じる可能性があります。
「エネルギーデータ事業」においては、一部顧客管理システムや需給管理システムを対象にした商材展開を行っている事業者が存在しております。しかしながら、「エネチェンジクラウドMarketing」においては「エネルギープラットフォーム事業」で蓄積された独自データベースを活用しオンライン上での顧客獲得を推進させるという、ユニークなポジショニングでのサービス展開を実施しているため、本書提出日現在では競争環境は比較的軽微なものと認識しております。今後新たな競合が参入した場合も、電力・ガス比較サイト「エネチェンジ」で培ったマーケティングの知見や蓄積されたデータベース、データ解析技術等を差別化要因として、競合に対する優位性は保てるものと認識しております。
「エネチェンジクラウドDR」においては、今後スマートメーターの普及とともに国内外の競合他社が増加し、競争環境が激化してくる可能性がありますが、国内外の顧客企業へのサービス提供を通じて蓄積された独自データベースを活用したプロダクトの開発やデータ活用に関する知見、導入実績の積み上げにより競争力の向上に努めてまいります。
「エネチェンジクラウドEV」においては、今後のEVの普及に伴い国内外の競合他社が増加し、競争環境が激化してくる可能性がありますが、「EV充電エネチェンジ」アプリのノウハウを活用した、EV充電アプリの開発運用や全国のEV充電スポット情報のAPI提供などは模倣が困難であり、競合優位性を保てるものと認識しております。「エネチェンジクラウドRE」においては、非化石証書を始めとした多様化する再エネメニューや、自己託送の業務負荷を軽減する必要性の増加などを背景として今後ニーズの拡大が見込まれており、競合環境が激化してくる可能性がありますが、様々なエネルギー関連企業との取引を通じて蓄積されたノウハウを活用し、競争力の向上に努めてまいります。しかしながら、今後他に優れた技術やビジネスモデルを持ち合わせた競合の参入により、当社グループの事業領域における競争激化の結果として当社グループユーザーの解約や電力・ガス会社との契約単価の下落が生じる場合、若しくは当社グループサービスの導入が進まなかった場合は、当社グループの事業及び経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤検索エンジンのロジック変化について
当社グループの「エネルギープラットフォーム事業」では、GoogleやYahoo!Japan等の検索エンジンから多くのユーザーを集客しており、今後も検索エンジン経由の集客強化を目的にSEO対策等の取り組みを継続してまいります。しかしながら、検索エンジンを提供する企業による検索アルゴリズムの変更や、新たな検索エンジンが普及した場合、検索結果の表示順位が変動し、当社サービスへの集客及び経営成績・財政状態に影響が生じる可能性があります。加えて、近年のChatGPTをはじめとする生成AI・対話型AIの進化や、AIによる情報取得スタイルの変化等により、従来の検索エンジンに依存したSEO施策が十分な効果を発揮しなくなる、あるいは検索エンジン以外の新たな集客チャネルの重要性が相対的に高まるリスクも想定されます。今後さらなるテクノロジーの進化やユーザーの情報収集行動の変化によって、現行の集客手法が有効でなくなる場合、当社グループの事業及び経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥技術革新等について
当社グループが事業展開するエネルギー分野においては、電力ビッグデータのAI技術による解析の他、電気自動車、蓄電池といった分野における技術革新や、技術の普及に伴う価格競争力の強化によって、従来にはなかった様々なサービスの誕生が見込まれており、それに伴った顧客ニーズの変化も発生するものと予想されます。当社グループは、これらの変化に対応するため、ENECHANGE Insight Venturesというアクセラレーションプログラムの運営を通じた海外の有望な電気自動車、蓄電池制御関連のエネルギーベンチャーとの連携を率先して行う等情報収集・連携に努めております。また、それらの技術を実用化するために必要な技術者の確保や体制の整備に努めておりますが、今後当社グループが技術革新や顧客ニーズの変化に適時に対応できない場合、または、変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦海外展開について
当社の関連会社であるJapan Energy Capital 1 L.P.は主に中東地域での再生可能エネルギー発電所への投資を行っており、関連会社であるJapan Energy Capital 2 L.P.は海外のエネルギーベンチャー企業への投資を行っております。これらの取組みに関して、海外における当社グループの事業に係る法規制等の成立・改正等が実施された場合、政治情勢により事業運営に支障をきたす事態が生じた場合、予期せぬ自然災害、人為災害、テロ、戦争や感染症等が発生した場合等は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧システム障害等について
当社グループの事業は、電力やガス等のインフラ関連企業の継続的なサービス提供が前提となっております。また当社グループのサービスは、主にインターネットを介して提供されており、そのサービス基盤はインターネットに接続するための通信インフラに依存しております。従って、自然災害、人為災害、テロ、戦争等に伴いシステム障害が発生することでサービスの提供が困難となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、事業別コンティンジェンシープランを作成し、役職員に対して周知することでこれら不測の事態に対しての対応を定めておりますが、かかる事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨当社が出資するファンドの投資コミット金額について
当社グループの「JEF」サービスにおいては、Japan Energy Capital合同会社より、主に海外の再生可能エネルギー発電所への投資を行うファンドであるJapan Energy Capital 1 L.P.及び海外の脱炭素化ベンチャー企業への投資を行うファンドであるJapan Energy Capital 2 L.P.のファンド運営業務等を独占的に受託しており、Japan Energy Capital 2 L.P.の運営業務等に係る報酬はJapan Energy Capital 2 L.P.の投資コミット金額に連動します。なお、Japan Energy Capital 1 L.P.への出資は完了し、今後のJapan Energy Capital 1 L.P.の運営業務等に係る報酬はJapan Energy Capital 1 L.P.の投資残高に連動します。
(3)業績変動に関するリスクについて
①四半期毎の業績変動等について
「エネルギープラットフォーム事業」における売上高は、特定の電力・ガス会社の撤退等に伴う切替先の電力・ガス会社を探すユーザーの増加により切替報酬が一時的に増加するといった外部環境の要因や、引越の繁忙期における切替報酬増加、または暖冬・冷夏等の特定の気象状況下における切替報酬減少等、季節要因の影響により変動します。
「エネルギーデータ事業」における売上高は、新規受注や新規機能のサービスリリースに伴う一時的な売上が発生する等の要因で変動する傾向にあります。また人材の確保を円滑に進めるための採用活動に伴う費用や、新規ユーザーを獲得するための各種プロモーション施策に係る費用が一部四半期に集中することもあります。
②事業領域の拡大について
当社グループが取り組む事業領域では、市場の規制撤廃や新たな技術革新やサービスモデルの誕生が見込まれております。本書提出日時点において、当社グループの収益は、「エネルギープラットフォーム事業」及び「エネルギーデータ事業」による影響を大きく受けている状況であるため、当社グループは、「エネルギーの4D」に則した新たな収益源を常に模索し、事業の拡大と安定化に取り組んでおります。しかしながら、事業領域を拡大し、新たな分野に進出することで、人材採用、システム開発、営業体制構築等の投資を実施したにも関わらず、当該分野における収益化が進まない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③為替変動について
当社グループでは、海外子会社の現地通貨建ての財務諸表を日本円に換算した上で、連結財務諸表を作成しております。また、一部外貨建ての出資や債権債務、外貨建てで収入若しくは支出が発生する取引が存在します。従って、為替相場の変動が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)コンプライアンス・法的規制等に関するリスクについて
①法的規制について
当社グループが事業展開する電力業界においては、電気事業及びその関連事業を行う者に対し電気事業法が課せられております。当社は小売電気事業者と一般ユーザーとの間の小売供給契約締結の「媒介」(注)を行う事業者として取引に関与しており、電気事業法及び同法施行規則で定められた義務や、経済産業省が公表する「電力の小売営業に関する指針」上のガイドラインに基づいて事業を行っております。また当社は、小売電気事業者として経済産業省へ登録(法人番号6010601047805)を行っております。
これら関連法規制やガイドラインへの対応については、外部弁護士の見解確認を踏まえて四半期毎のコンプライアンス・リスク管理委員会において慎重に判断を行っておりますが、新たな法令等の制定や、当社グループが想定しない形での既存法令等の解釈変更等がなされた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注)「媒介」とは、「他人(小売電気事業者及び小売供給を受けようとする者)の間に立って、当該他人を当事者とする法律行為(小売り供給契約)の成立に尽力する事実行為」をいいます。また「媒介」の他にも「取次ぎ」「代理」のパターンがあり、「取次ぎ」とは「自己の名をもって、他人(小売供給契約)の計算において、法律行為(小売供給契約)をすることを引き受ける行為」をいい、「代理」とは、「他人(小売電気事業者)の名をもって、当該他人のためにすることを示して行う意思表示」をいいます(「電力の小売営業に関する指針」)。
②知的財産権について
当社グループが事業活動を行うにあたり、第三者が保有する商標権、著作権等の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っており、損害賠償請求や特許権侵害の訴訟等は現在ありません。しかしながら、万が一、第三者の知的財産権を侵害した場合、当該第三者より、損害賠償請求、使用差し止め請求、ロイヤリティの支払要求等が発生する可能性があり、その場合には、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③情報管理について
当社グループでは、企業情報及び個人情報を取り扱っております。当社においては、個人情報取扱事業者として適切な管理体制を構築するため、プライバシーマークを取得し、他の情報についても厳密なセキュリティルールを施して管理することに加え、情報管理に関する社員研修も毎年受講必須とする等、社員教育・運用面の徹底もしております。また、情報管理に関しての適切な運用遵守状況を内部監査室が組織横断的に確認しております。しかしながら、万が一不測の事態によりこれらの情報が流出・漏洩した場合には、当社グループへの損害賠償請求や社会的信用の失墜により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④メディアコンテンツの品質維持について
当社グループでは、「エネルギープラットフォーム事業」で運営しているメディアのコンテンツとして、電気やガスをはじめとしたライフサポート領域に関する記事の制作の一部を、外部委託しております。かかるコンテンツの内容については公開前に自社ガイドラインと照らし合わせた厳正なチェックを行っており、また、その運用状況を内部監査にて確認することで、著作権侵害やコンテンツの盗用等の事態を未然に防止するような体制を構築しております。しかしながら、当社の意図せざる事態によってメディアの一部コンテンツが第三者の権利侵害等を発生させていると認定された場合、当該第三者より使用差し止め請求や損害賠償請求、ロイヤリティの支払い要求等が発生する可能性があり、かかる場合において当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤広告掲載について
当社グループの「エネルギープラットフォーム事業」において掲載される広告については、当社独自の広告掲載基準による確認を実施し、景品表示法等の関連法令に違反する広告や公序良俗に反する広告の排除に努めております。しかしながら、人為的な過失等に起因して広告掲載内容に瑕疵が発生した場合や広告掲載が行われなくなった場合においては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥訴訟等について
当社グループでは、「エネルギープラットフォーム事業」において、サービス利用規約を定めてサービス利用者からの同意を得ることで利用者との間での紛争防止に努めております。また当社の社内規程として、「コンプライアンス規程」及び「リスク管理規程」を定め、役職員に対して当該規程を遵守させるとともに、コンプライアンス違反の恐れのある事象については経営執行会議やコンプライアンス・リスク管理委員会等に報告する仕組みを構築・運用することで、法令違反や損害賠償等の発生リスクの低減に努めております。しかしながら、当社グループの提供するサービスに関連して顧客、取引先、及びその他第三者との間で予期せぬトラブルが生じた結果、訴訟に発展する可能性があります。かかる訴訟の内容及び結果によっては、訴訟対応費用の発生や社会的信用の失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他のリスクについて
①固定資産の減損等について
当社グループでは、継続的に行う開発投資に係る人件費等の一部をソフトウエア資産として計上することがあります。これらの資産を利用して提供するサービスの収益性が著しく低下した場合、当該資産について減損損失の計上が必要となる可能性があります。
また、過去に実施した株式取得や事業譲受によって生じたのれんは、当該株式取得や事業譲受による期待収益及び将来のシナジー効果が発揮された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと想定しております。しかしながら、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られないと判断された場合等においては、減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②関連会社株式等の減損等について
当社グループは、事業を遂行する過程で、海外企業等への投資を行うリミテッドパートナーシップ形態のファンドへの出資、他社との業務提携や合弁会社設立にあたり取得した関連会社株式等を保有しております。これらの関連会社株式等は金融商品に関する会計基準に基づき適切に減損の判定を実施しております。当該投資先に対しては、定期的に適切なモニタリングを実施する体制を構築しておりますが、当該投資先の財政状態の悪化による実質価値の著しい低下が発生した場合、投資金額を回収するのに十分な将来の経済的便益が見込めないと判断した場合等においては、減損損失が発生し、当社グループの経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について
当社では、取締役、執行役員、従業員に対するインセンティブを目的としたストックオプション制度を採用しております。本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は5,142,364株であり、発行済株式総数42,628,620株と潜在株式数5,142,364株の合計の10.8%に相当します。今後付与される新株予約権の行使が行われた場合には、既存株主が保有する株式の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
④人材の確保・育成について
当社グループでは、事業の持続的な成長を支える優秀な人材を確保することが事業運営上重要であると考えております。このため、テレワークの恒久化、テレワーク手当の支給等、優秀な人材を惹きつけることができるような取組みを積極的に実施しております。今後も優秀な人材の採用を積極的に推進し、当社グループの企業理念及び経営方針を理解した社員の確保・育成を行ってまいりますが、雇用情勢の変化等により、計画のとおりに人材が確保できない場合には、事業運営や開発計画に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤大規模な自然災害等について
当社グループは、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波等の自然災害が想定を大きく上回る規模で発生した場合、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に影響を及ぼし、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、世界的に流行した新型コロナウイルス感染症については、当社グループでは新型コロナウイルス感染症の流行以降、迅速にリモートワークを推奨しており、柔軟に事業を継続できる体制の整備に努めており、当社グループのビジネスへの影響は軽微であると認識しております。しかしながら、同様の感染症の流行等により、度重なる緊急事態宣言の発令や外出自粛等により法人ユーザーの電力使用量が極端に低下し、当社グループ顧客の業績への影響が想定を超えて拡大したりした場合には、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に影響を及ぼし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥内部統制について
当社グループは、2024年6月27日付「外部調査委員会の調査報告書の公表に関するお知らせ」のとおり、当社グループのEV充電事業におけるSPC(EV充電インフラ1号合同会社)を非連結とした本件会計処理について、2024年3月より独立した外部の有識者による外部調査委員会を設置して調査を進め、2024年6月21日付で外部調査委員会より調査報告書を受領しました。外部調査委員会による調査及び検証の結果、EV充電事業の事業リスクに対応し得る態勢の不足、本件会計処理に関わった当時の当社代表取締役CEO城口洋平氏及び一部の執行役員において、当時の会計監査人である有限責任 あずさ監査法人との適切なコミュニケーションが不足しており、また、そのような状況について認識を共通化することができていなかったこと、株価の上昇を強く志向する一方でコンプライアンスを軽視した経営トップらの姿勢、実効性のある内部統制及びガバナンスが構築されず、本件会計処理を採用するにあたって十分な牽制・監督機能を果たすことができていなかったことが発生原因と評価されました。
当社は、2024年9月24日付「改善報告書」のとおり、外部調査委員会の調査結果を踏まえ、当社として、本件会計処理に起因する一連の問題の発生原因として、①当時の代表取締役CEOへの権限集中と強烈なトップダウンカルチャー、②業績優先の経営姿勢、③管理部門による内部牽制機能の不足、④取締役会及び監査役会への情報共有の不足に起因する監督機能不全、⑤経営陣のコンプライアンス意識を軽視する姿勢、⑥会計・法務コンプライアンス面における社内体制の脆弱性、⑦会計監査人とのコミュニケーション上の課題、⑧外部専門家の活用の不足があったと認識し、再発防止策を策定し、2025年3月25日付「東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ」に添付の「改善状況報告書」第3.改善措置並びにその実施状況及び運用状況等のとおり、再発防止策の堅実な実施に努めております。
ただし、これらの再発防止策の継続的な実行及び内部管理体制等の強化が適切になされない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態、レピュテーション並びに金融機関、大株主、取引先、監督省庁等との関係等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、その他内部統制の整備上の欠陥や運用上の認識不足等の不備により財務報告等に重大な誤りが生じた場合にも、当社の信用が失墜すると共に、当社グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当該再発防止策の実行状況に関する詳細は、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」及び2025年3月25日付「東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ」に添付の「改善状況報告書」第3.改善措置並びにその実施状況及び運用状況等をご参照下さい。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識並びに分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
当社グループは決算期変更に伴い、当連結会計年度は15ヶ月の変則決算となっております。このため、前連結会計年度との比較は行っておりません。
(1)財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は5,475,642千円となり、前連結会計年度末に比べ1,838,020千円増加いたしました。これは主に商品及び製品が5,523千円、前払費用が102,834千円、未収入金が606,832千円減少した一方、現金及び預金が2,083,792千円、売掛金及び契約資産が356,272千円増加したことによるものです。
また、当連結会計年度末における固定資産は1,936,102千円となり、前連結会計年度末から8,916千円増加いたしました。これは主にのれんが227,695千円、ソフトウエアが199,842千円減少した一方、投資有価証券が401,288千円、長期貸付金が150,260千円増加したことによるものです。
この結果、総資産は、7,411,744千円となり、前連結会計年度末に比べ1,846,936千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は2,393,447千円となり、前連結会計年度末に比べ1,172,463千円減少いたしました。これは主に、契約負債が167,823千円、1年内返済予定の長期借入金が269,992千円増加した一方、未払金が352,978千円、短期借入金が577,155千円、決算訂正関連費用引当金が826,855千円減少したことによるものです。
また当連結会計年度末における固定負債は466,615千円となり、前連結会計年度末に比べ3,011,507千円減少いたしました。これは主に、長期借入金が1,067,487千円、社債が1,000,000千円、リース債務が241,878千円、長期前受収益が405,250千円、長期未払金が287,796千円減少したことによるものです。
この結果、負債合計は、2,860,062千円となり、前連結会計年度末に比べ4,183,971千円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は4,551,681千円となり、前連結会計年度末に比べ6,030,908千円増加いたしました。これは主に第三者割当増資等により資本金が1,459,192千円、資本剰余金が5,532,730千円増加した一方、親会社株主に帰属する当期純損失1,273,466千円が計上されたことによる減少であります。
(2)経営成績の状況と分析
当社グループは決算期変更に伴い、当連結会計年度は15ヶ月の変則決算となっております。このため、前連結会計年度との比較は行っておりません。
当連結会計年度における我が国経済は、足踏みも見られますが、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、おだやかに回復しております。景気の先行きについては、欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済の先行き懸念など、依然として不透明な状況となっております。
当社グループが属するエネルギー業界を取り巻く環境におきましては、ロシア・ウクライナ情勢の悪化以降、資源価格高騰の影響を受けた電力会社の財務状況の悪化が見られましたが、電気料金の値上げや卸電力市場価格の落ち着きに伴い、一部電力会社においてユーザー獲得に前向きな動きが見られる状況です。
長期的な観点でのエネルギー業界を取り巻く環境におきましては、引き続きグリーントランスフォーメーション(GX)が進展しました。日本政府による2022年12月22日の第5回GX実行会議において「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」が掲示され、150兆円のGX投資を官民で実現していくため、日本政府としても20兆円規模の先行投資支援を実行する旨の意見表明がなされる中、こうしたGXの動きの中心となる電力業界においては、2016年4月の電力の小売全面自由化以降、当社のベース市場である電力販売額は約18兆円(注1)と拡大しております。また、乗用車の新車販売における電気自動車(EV)をはじめとした電動車比率を2035年までに100%とする目標が掲げられる(注2)など、EVの普及とそれに併せたEV充電インフラの需要が高まることが見込まれております。
このような環境のもと、当社グループでは、「エネルギープラットフォーム事業」においては、「エネチェンジ」(家庭向け電力・ガス切替プラットフォーム)及び「エネチェンジBiz」(法人向け電力・ガス切替プラットフォーム)の2サービスを展開しております。家庭向け電力・ガス切替プラットフォーム「エネチェンジ」においては、引越し時のライフライン切替を、より簡単に行える新機能として、「ガスの開栓受付」の提供を開始いたしました。本機能のリリースにより、電気とガスを同時に一つのプラットフォームからお申し込みいただけるようになり、引越し時のライフラインお申し込みの利便性向上に貢献しております。
「エネルギーデータ事業」においては、主に電力ガス事業者向けにクラウド型で提供する、デジタルマーケティング支援SaaS「エネチェンジクラウドMarketing」及び家庭向けデマンドレスポンスサービス「エネチェンジクラウドDR」等のサービスにつき、継続的な新規機能開発と営業強化に努めております。また、「EV充電エネチェンジ」アプリのノウハウを活用した、EV充電アプリの開発運用や全国のEV充電スポット情報のAPI提供などのEVサービス向けソリューション「エネチェンジクラウドEV」を展開し、ENEOS株式会社が提供する「ENEOSChargePlusEV充電アプリ」の開発を受託するほか、複数の企業・団体に対する位置情報の提供をしております。加えて、主に電力会社向けのサービスとして、再生可能エネルギーの環境価値管理を効率化し、アワリーベースで環境価値を管理することにより、24/7カーボンフリーをはじめとした多様な再生可能エネルギー管理業務を実現できるSaaS型サービス「eValue Platform」を発表するなど、サービス展開を強化しております。
「EV充電事業」においては、「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」の充電インフラ整備事業に対応した充電器を6kWに加え3kWのラインナップも拡充し、主力である目的地充電だけでなく基礎充電において積極的な営業展開や、EV充電分野におけるシェア向上に向けた積極的な投資を継続しました。また株式会社e-Mobility Powerとの提携を中心としてEVユーザーの更なる利便性の向上に取り組んでまいりました。また、2025年1月24日公表の「EV充電事業の合弁会社化に向けた子会社設立、当社及び子会社間の吸収分割、当社及び中部電力ミライズ株式会社との株式譲渡契約等の締結並びに子会社(孫会社)の異動に関するお知らせ」にて公表しましたとおり、当社は、中部電力ミライズとの合弁会社となる新会社においてEV充電事業を運営していくことを決定し、同年3月10日よりミライズエネチェンジでのEV充電事業の運営を開始いたしました。当該新会社による事業運営の開始により、2025年3月末時点では、ENECHANGE EVラボ株式会社、EV充電インフラ1号合同会社、EV充電インフラ2号合同会社は連結子会社から外れ、ミライズエネチェンジ株式会社は当社の持分法適用関連会社となりました。
以上の結果、当連結会計年度の当社グループの売上高は、6,715,556千円、営業損失は3,630,553千円、経常損失は2,081,198千円、親会社株主に帰属する当期純損失が1,273,466千円となりました。
(売上高)
当連結会計年度において、売上高は、6,715,556千円となりました。主な要因は、エネルギープラットフォーム事業においては、ユーザー数が堅調に増加したことに加え、ARPUが好調に推移したことによります。エネルギーデータ事業においては、顧客数は63社となったことによります。エネルギープラットフォーム事業におけるユーザー数、エネルギーデータ事業における顧客数については、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度において、売上原価は1,473,430千円となりました。主な内訳はエネルギープラットフォーム事業における開発人件費及びEV充電事業における人件費です。
この結果、売上総利益は5,242,125千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当連結会計年度において、販売費及び一般管理費は8,872,679千円となりました。主な内訳は、給料手当1,600,307千円、業務委託費1,556,837千円、広告宣伝費908,848千円、販売手数料2,184,227千円等です。
この結果、営業損失は3,630,553千円となりました。
(セグメント売上高、損益)
セグメントの経営成績は、次のとおりです。
(I)エネルギープラットフォーム事業
「エネルギープラットフォーム事業」においては、家庭向け・法人向け共に切替件数が堅調に推移した結果、継続報酬対象ユーザー数は654,006件となりました。また、電力価格の高騰や電力各社の業績回復により、当連結会計年度のARPU(注3)(ストック収益)は725円となりました。
以上の結果、セグメント売上高は5,081,097千円、セグメント利益は659,029千円となりました。
(II)エネルギーデータ事業
「エネルギーデータ事業」においては、デジタルマーケティング支援SaaS「エネチェンジクラウドMarketing」、家庭向けデマンドレスポンスサービス「エネチェンジクラウドDR」等の既存顧客への継続的なサービス提供や新規顧客への導入を進めた結果、顧客数は63社となりました。また、既存顧客へのクロスセルの導入等をしているものの、当連結会計年度のARPU(ストック収益)は一時的な減少により3,127千円、他方、当連結会計年度のARPU(フロー収益)は2,032千円となりました。
以上の結果、セグメント売上高は1,488,607千円、セグメント利益は218,623千円となりました。
(III)EV充電事業
「EV充電事業」においては、事業の立ち上げと推進のためにエンジニア・セールス人員を中心とした採用の拡大による組織体制の構築や、積極的なマーケティングの実施等先行投資を進めた結果、当社が注力する目的地充電(6kW以上)の設置口数は2025年4月2日末時点で累計7,373口(注4)となりました。また、パートナー連携を拡大するなど、更なる事業拡大を見据えた施策に取り組んでおります。
以上の結果、セグメント売上高は145,851千円、セグメント損失は3,142,222千円となりました。
(注)1.電力・ガス取引監視等委員会「電力取引報結果」より、2024年4月から2025年3月の電力販売額の合計。
2.資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画」(2025年2月18日)より、電動車は電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、ハイブリッド車(HV)を含む。
3.Average Revenue Per Userの略称であり、1ユーザー当たりの平均収益を意味する。
4.ミライズエネチェンジ株式会社のHPに記載の2025年4月2日時点で初期設定が完了した利用できる6kW以上の充電器スポットのみを抽出して作成(基礎充電は含まず)。
(経常損失)
当連結会計年度において、営業外収益が5,517,416千円、営業外費用が3,968,061千円となりました。営業外収益の主な内訳は、補助金受贈益5,494,158千円です。営業外費用の主な内訳は、固定資産圧縮損2,680,460千円、支払手数料482,329千円、持分法投資損失390,918千円、支払利息354,283千円等です。
この結果、経常損失は2,081,198千円となりました。
(税金等調整前当期純損失)
当連結会計年度において、特別利益は2,427,890千円、特別損失は1,622,225千円となりました。特別利益の主な内訳は、関係会社株式売却益2,272,645千円等です。特別損失の主な内訳は、減損損失1,244,330千円、決算訂正関連費用引当金繰入額269,666千円です。
この結果、税金等調整前当期純損失1,275,532千円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損失)
法人税、住民税及び事業税が6,016千円となりました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純損失が1,273,466千円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当社グループは決算期変更に伴い、当連結会計年度は15ヶ月の変則決算となっております。このため、前連結会計年度との比較は行っておりません。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は4,263,507千円(前連結会計年度末2,179,715千円)となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果獲得した資金は220,927千円となりました。主な増加要因は、減価償却費108,292千円、減損損失1,244,330千円、固定資産圧縮損2,680,460千円、持分法による投資損益390,918千円等であり、主な減少要因は、税金等調整前当期純損失1,275,532千円、決算訂正関連費用引当金の増減額826,855千円、関係会社株式売却益2,272,645千円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は3,397,103千円となりました。主な増加要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式売却による収入4,742,183千円、主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出4,587,987千円、関係会社株式の取得による支出2,940,000千円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果得られた資金は5,283,334千円となりました。主な増加要因は、株式の発行による収入6,925,899千円等であり、主な減少要因は、社債の償還による支出1,000,000千円、長期借入金の返済による支出797,495千円等であります。
(4)生産、受注及び販売の実績
当社グループは決算期変更に伴い、当連結会計年度は15ヶ月の変則決算となっております。このため、前連結会計年度との比較は行っておりません。
a.生産実績
当社グループは生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
エネルギープラットフォーム事業 |
- |
- |
|
エネルギーデータ事業 |
- |
- |
|
EV充電事業 |
1,070,100 |
- |
|
合計 |
1,070,100 |
- |
c.受注実績
当社グループは受注生産を行っていないため、該当事項はありません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
エネルギープラットフォーム事業 |
5,081,097 |
- |
|
エネルギーデータ事業 |
1,488,607 |
- |
|
EV充電事業 |
145,851 |
- |
|
合計 |
6,715,556 |
- |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社NEXT ONE |
843,481 |
19.3 |
957,456 |
14.3 |
(5)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、必要な見積りを行っており、それらは資産・負債及び収益・費用の計上金額に影響を与えています。これらの見積りについては、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき合理的と考えられる要因を考慮したうえで行っていますが、結果としてこのような見積りと実績が異なる場合があります。
(6)経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであり、当該リスクが顕在化した場合、経営成績に重要な影響を与える可能性があります。そのため、当社グループは、市場動向等を注視し、組織体制の整備、リスク管理体制の強化、成長事業領域への継続投資等を行い、当社グループの経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減する対応を適切に行ってまいります。
(7)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものには、「エネルギープラットフォーム事業」における人件費及び広告宣伝費、「エネルギーデータ事業」におけるソフトウエア制作に係る人件費及び外注費のほか、管理部門における人件費等があります。
当社グループでの資金需要は、自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等でバランスよく調達していくことを基本方針としており、資金需要の金額や資金使途に応じて柔軟に検討を行う予定です。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,263,507千円となっています。
当社は2024年2月26日にJICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合を割当先とする新株式を発行し、総額3,999,899千円を調達しました。また、2025年2月19日に伊藤忠エネクス株式会社を割当先とする新株式を発行し、総額2,950,000千円を調達しております。なお、当社は当連結会計年度末において複数の取引金融機関との当座貸越契約を締結しており、資金調達手段を確保することにより、変動する資金需要に対応し、流動性リスクをコントロールしております。
(8)経営者の問題認識及び今後の方針について
当社グループが認識する課題等について、経営者は「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に対処していく必要があると認識しております。これらの課題に対し、経営者は市場ニーズや事業環境の変化に関する情報の入手、分析を行い、現在及び将来の事業環境を認識したうえで、当社グループの経営資源を適切に配分し、対応策を実施していく方針です。
(9)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について
「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。
(第三者割当による新株式の発行)
1.当社は、2024年2月9日開催の取締役会において、JICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合を割当予定先とする第三者割当による新株式を発行することを決議し、株式引受契約書および総数引受契約書を締結しました。その概要は次のとおりであります。
(1)発行する株式の種類及び数 :3,784,200株
(2)発行価格 :1株につき1,057円
(3)発行価格の総額 :3,999,899千円
(4)資本組入額 :1株につき528.5円
(5)資本組入額の総額 :1,999,949千円
(6)募集又は割当方法 :第三者割当増資
(7)割当先 :JICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合
(8)資金の使途 :今後の成長に向けた投資資金として
① 「EV充電事業」のプロモーション強化及び事業運営体制強化のための投資に係る資金
② EV充電インフラのネットワーク構築のための充電機器購入に係る運転資金
③ 「EV充電事業」の将来成長に資する投資資金
2.当社は、2025年2月3日付の取締役会決議において、伊藤忠エネクス株式会社を割当予定先とする第三者割当による新株式を発行することを決議し、株式引受契約書および総数引受契約書を締結しました。その概要は次のとおりであります。
(1)発行する株式の種類及び数 :7,375,000株
(2)発行価格 :1株につき400円
(3)発行価格の総額 :2,950,000千円
(4)資本組入額 :1株につき200円
(5)資本組入額の総額 :1,475,000千円
(6)募集又は割当方法 :第三者割当増資
(7)割当先 :伊藤忠エネクス株式会社
(8)資金の使途 :今後の当社の事業成長に向けた投資資金として
① 「エネルギープラットフォーム事業」における当社と伊藤忠エネクスの相互の顧客基盤及び商材を活用したプラットフォーム価値向上のための共同マーケティングやプロモーションに係る広告宣伝費及び販売促進費/販売手数料・人件費・外注費等へ充当する資金
② 「エネルギーデータ事業」における、当社のソフトウェア開発と伊藤忠エネクスの業務オペレーションのノウハウやグループアセットを活用した電力小売事業者向け並びに需要家向けプロダクトや脱炭素・DX推進支援並びにEV充電関連サービスの共同開発や外販に係る人件費・外注費等へ充当する資金
③ 「エネルギープラットフォーム事業」、「エネルギーデータ事業」の将来的な戦略的拡張に資するM&A等(伊藤忠エネクスとの共同出資を含む)の買収待機資金
(9)株式等の譲渡制限 :本株式に譲渡制限は付されておりませんが、資本業務提携契約において、割当予定先は、払込期日後3年間は、当社の事前の書面による同意なくして、当社株式の譲渡等をしてはならないこととしております。
(当社及び子会社間の会社分割(吸収分割)並びにEV充電事業の合弁会社化)
当社は、2025年1月24日開催の取締役会により、新たに当社の完全子会社(以下「本承継会社」といいます。)を設立し、当社が運営するEV充電サービス「EV充電エネチェンジ」に関する事業(以下「EV充電事業」といいます。)を、本承継会社に対して吸収分割(以下「本会社分割」といいます。)の方法により承継させた上で、本承継会社の発行済株式のうち51.0%を中部電力ミライズ株式会社(以下「中部電力ミライズ」といいます。)に譲渡(以下「本株式譲渡」といいます。)し、更に本株式譲渡の実行後に当社及び中部電力ミライズが、その持株比率(当社:49.0%、中部電力ミライズ:51.0%)に応じて本承継会社の増資を引き受けること(以下「本増資」といい、本会社分割及び本株式譲渡と総称して「本取引」といいます。)により、中部電力ミライズとの合弁会社となる本承継会社においてEV充電事業を運営していくことを決議し、本承継会社との間で本会社分割に係る吸収分割契約(以下「本会社分割契約」といいます。)を締結いたしました。
(1)本取引の目的
当社は、これまで積極的な事業投資を通じてEV充電インフラ構築を加速させてまいりましたが、EV充電事業におけるSPC(EV充電インフラ1号合同会社)を非連結とした従来の会計処理に起因する一連の事案も踏まえ、2024年9月2日に当社開示の「事業計画及び成長可能性に関する事項」に記載のとおり、「財務基盤の強化」や「EV充電事業における将来のストック売上の最大化を可能にするインフラ設置加速のための外部資本の活用も含めたアプローチ」の具体案について、当社の企業価値や株主価値向上の観点から、あらゆる選択肢を検討してまいりました。
これらの検討の結果、当社が抱える資金面での制約を解消し財務基盤の強化を図りつつ、EV充電事業の成長最大化や当社コア事業とのシナジーを追求し、以て将来的なリターンを株主に還元するためには、EV充電事業に関して中部電力ミライズをパートナーとして新たに合弁会社を設立し、当該合弁会社の株式の49%を保有しながら、引き続きEV充電事業の成長にコミットすることが最適と考えました。
当社は、今後当社のコア事業であるエネルギープラットフォーム事業及びエネルギーデータ事業と合弁会社を通じて展開する現EV充電事業との間で、EV充電インフラを活用した分散型エネルギーネットワークの構築や、それを活用したエネルギーマネジメントソリューションなど、脱炭素社会の実現に向けた新たなシナジー創出を目指します。加えて、本取引により改善されると見込まれる財務の健全性を背景に、コア事業への成長投資(M&Aを含みます。)を本格化することで、株主価値の最大化に努めてまいります。
(2)本会社分割の方式
当社を吸収分割会社とし、新会社を吸収分割承継会社とする吸収分割です。
(3)新会社設立、本会社分割及び本株式譲渡の日程
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当社の取締役会決議日 |
2025年1月24日 |
|
本会社分割契約締結日 |
2025年1月24日 |
|
本会社分割効力発生日 |
2025年3月10日 |
(注)本会社分割は、当社においては会社法第784条第2項に規定する簡易会社分割に該当し、新会社においては同法第796条第1項に規定する略式吸収分割に該当するため、双方において、株主総会の承認を得ることなく行います。
(4)本会社分割に係る割当ての内容
本会社分割に際して、本承継会社から当社への株式の割当て、金銭その他の財産の交付はありません。
(5)割当株式数の算定根拠
本会社分割は、完全親子会社間において行われるため、本会社分割に際して、株式の割当てその他の対価の交付は行いません。
(6)分割又は承継する事業部門の概要
① 分割する事業の内容
EV充電事業(ENECHANGE EVラボ株式会社の株式、並びにEV充電インフラ1号合同会社及びEV充電インフラ2号合同会社の持分を含みます。EVsmartウェブサイトに係る事業は含まれません。)
② 分割する部門の経営成績(2023年12月期)
EV充電事業の直近事業年度の売上高は139,807千円、営業損失は2,081,636千円です。なお、EV充電事業における充電インフラ整備に係る営業外収益で補助金受贈益120,487千円、また、営業外費用で固定資産圧縮損114,067千円を計上しております。
③ 分割する資産、負債の項目及び金額(2024年6月30日現在)
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資産 |
負債 |
||
|
項目 |
帳簿価額 |
項目 |
帳簿価額 |
|
流動資産 |
1,119,658千円 |
流動負債 |
627,700千円 |
|
固定資産 |
30,010千円 |
固定負債 |
4,795,314千円 |
|
合計 |
1,149,668千円 |
合計 |
5,423,014千円 |
(7)新設分割設立会社の概要
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商号 |
ミライズエネチェンジ株式会社 |
|
本店の所在地 |
東京都中央区京橋三丁目1番1号東京スクエアガーデンWeWork内14階 |
|
代表者の氏名 |
代表取締役社長 柘野 善隆 代表取締役 丸岡 智也 |
|
資本金の額 |
3,000百万円 |
|
純資産の額 |
6,000百万円 |
|
総資産の額 |
6,000百万円 |
|
事業の内容 |
EV充電事業 |
注1.本会社分割の効力発生後には、本承継会社が、当社より承継したEV充電事業を運営します。また、本会社分割の効力発生直後に本株式譲渡が実行されることで、当社が所有する本承継会社の発行済株式の51.0%が中部電力ミライズに譲渡され、本承継会社は当社の子会社ではなくなり、中部電力ミライズの子会社として運営されます。
2.当社及び中部電力ミライズは、本株式譲渡の実行直後に、その持株比率(当社:49.0%、中部電力ミライズ:51.0%)に応じて、本承継会社の本増資を引き受け、本増資後の本承継会社の資本金は3,000,000,001円となります。(なお、当社及び中部電力ミライズの本承継会社に係る持株比率に変更は生じません。)なお、本承継会社は資本金額の減少を行う予定ですが、減資前の資本金の額を記載しております。
(ポート株式会社との業務提携)
当社は、ポート株式会社(以下「ポート」といいます)と、事業上の連携を行うことで事業上のシナジーを実現させ、もって企業価値及び株主価値の向上を図ることを目的として、業務提携契約を締結しました。
業務提携契約において、ポートが保有する当社の普通株式(以下「当社株式」といいます)を、ポートの最終的な持分比率が実質的な議決権割合で5%未満となるよう、当社株式の市場価格に悪影響を与えないような時期、条件及び方法で段階的に売却する旨をポートとの間で合意しております。
なお、2025年5月23日付で公衆の縦覧に供されている大量保有報告書の変更報告書において、ポートが2025年5月16日現在で当社株式を売却し、その議決権割合は5%未満となる旨が記載されております。
該当事項はありません。