第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 本文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。

(経営方針)

 当社は、以下のパーパス・バリューに基づき、持続的な事業成長を達成することによって、企業価値の最大化を図ることを目標としております。

◆パーパス ―存在意識―

 私たちは、常に顧客視点で変化を先取りし、社会インフラとして成長し続けるEコマースの進化に貢献します

 

◆ブランドプロミス ―提供価値―

 クライアントのビジョンを深く理解し、エンドユーザーのニーズを誠実に考え抜き、サービス品質に一切妥協をせず、成長を支えるビジネスパートナーであり続けます

 

◆バリュー ―共有価値観―

1.二つのお客様を大切にする心

 「クライアントが大事にしていることはなんだろうか」「エンドユーザーだったら、どう思うだろうか」

まずは、クライアント企業の事業やエンドユーザーに興味を持つところから

クライアント企業の成功とその先のエンドユーザーの満足を考えて、行動します

2.新しい目標と提案力

 「今日の正解は、明日の不正解かもしれない」「本当にそれはベストな選択だろうか」

時代の変化とともに、取り巻く環境もエンドユーザーのニーズも変化する

クライアント企業の成功とエンドユーザーの満足のため、改善の余地がないか追求します

3.スピード感と正しい生産性

 「どうすれば実現できるだろうか」「どこか見直せないだろうか」

仕事の価値をあげるのは、自分自身

現状に甘んじることなく、クライアント企業の成功とエンドユーザーの満足を求め、スピード感と責任感をもって生産性の向上に努めます

4.責任を伴う自由の奨励

 「それは正しいだろうか」「こうすれば良くなるのではないか」

エンドユーザーのことを考え、時にはクライアント企業に厳しい内容をお伝えする

クライアント企業の真の成功と、エンドユーザーの満足のためには、「誰」ではなく「何」という物事の本質を捉え、他者からの建設的な意見を受け入れる謙虚さを忘れません

5.自分事・誠意・敬意を元にしたチーム志向

 「この仕事は誰のためだろうか」「誰かではない、自分がやる」

最大の成果はチームでつくりだす

協働する全ての関係者に敬意を払い、クライアント企業の成功とエンドユーザーの満足のために、「誰かがやってくれる」ではなく、「自分がやり遂げる」集団を目指します

6.倹約

 「これは本当に必要だろうか」「ここは無駄じゃないか」

社会に約束した価値を提供しつづけるため

ROIを見極め、資本を適切に活用しながら妥協のないサービスを提供し、クライアント企業の成功とエンドユーザーの満足のために、最善を尽くします

 

(中長期的な会社の経営戦略等)

 当社は、上述のパーパス・ブランドプロミス・バリューに基づき、顧客ニーズに応える以下の3つの軸を強化し、事業の拡大を図ってまいります。

① 生産性の向上

 賃借床面積の稼働率を追求し、高効率運営を実現します。

 FCの運営モデルを保管型ビジネスから出荷型ビジネスへ転換し、収益性を向上します。

② 活用資産の収益力向上

 既存FCの稼働率向上を追求するとともに、自動化の促進や投資効率を鑑みた新たな収益資産の構築を進め、より収益力の高い資産の構築を実現します。

 

③ サービス拡張による新たな収益源の構築

 顧客や市場のニーズの変化に対応し、フルフィルメントサービスを主軸に多様な業態の事業者との提携、協業を推進しながらサービス拡張を行ってまいります。

 

(目標とする経営指標)

 当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高及び営業利益であります。

 売上高は、当社及び業界の成長を表す指標と判断しており、業界、競合他社及び当社の成長度合いを計る指標として総合的に判断して決定し、売上高の拡大を目指してまいります。

 売上高計画における具体的な策定方法といたしましては、物流業界、倉庫業界及び顧客となるEC業界の将来展望に加え、AI(人工知能)の登場によるデジタルインフラストラクチャの進化に対する要望などを踏まえ、当社独自の戦略により業界成長率にどの程度上乗せして成長できるかを見込んでおります。

 営業利益については、当社が持続的な成長を実現するための源泉となり、人員計画や設備投資計画の実行や株主還元を行ううえでの重要な指標になると考え、社員一人当たりの稼ぐ力の向上を図りながら、営業利益の拡大を目指してまいります。

 売上原価及び一般管理費については、売上高計画の策定内容に対して必要コストの比率及び見込額を見積り算出しております。具体的には、利益に影響が大きい人員計画、設備投資計画、運送料や賃借料等の動向を勘案し、策定しております。

 

(経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題)

 当社は、今後のさらなる成長を実現する上で、以下の事項を経営課題として重視しております。

(1)収益性の向上

 当社の事業を取り巻くBtoC-EC市場(注1)において、2024年9月に発表された「電子商取引に関する市場調査(経済産業省)」の結果では、2023年の日本国内におけるBtoC-EC市場規模は前年の22.7兆円から24.8兆円になり、前年比9.2%増で拡大しております。国内BtoC-EC市場は、今後もさらに拡大していくことが予想されます。

 一方、人材不足や資源価格高騰等、近年企業の業績悪化要因が相次いで生じております。また、変化の早いBtoC-EC市場では、市場規模の増加に比して既存システムや仕組みが陳腐化してしまう恐れがあります。

 これらに対応すべく新たなシステムやサービス導入の検討を適宜進め、先行き不透明な経済環境に対応するため、サービス提供時における販売価格や販売コストの適正化を随時実施してまいります。また、機械化等に伴う物流業務の生産性向上を追求し、倉庫床面積の稼働率を可能な限り高めることで事業の収益性を高い水準で維持できるよう改善を進めてまいります。

(注1)消費者向け電子商取引

 

(2)人材の採用及び育成

 当社が持続的な成長を達成するためには、各分野で専門的な能力を持った優秀な人材の確保が重要であると考えております。しかしながら、労働人口の減少や雇用情勢の改善から人材の確保は難しくなってきております。したがって、採用手法の多様化への対応や教育制度を整備するとともに、従業員定着率の向上を目指し、福利厚生制度の拡充やワークライフバランスを考慮した働きやすい職場環境づくり等、就業環境の改善に積極的に取組んでまいります。

 

(3)新規・周辺領域サービスの拡充

 当社が持続的な成長を達成するためには、既存サービスの品質や業務効率の向上が重要であると認識しております。したがって、技術革新、通販事業者や通販利用者のニーズの変化やEコマースの進化要望を迅速に取り入れ、新規・周辺領域サービスの拡充に積極的に取組んでまいります。

 

(4)情報管理体制の強化

 当社は顧客である通販事業者の注文に対する物流代行を行っており、購入者の個人情報を含む膨大な注文に関する情報を保有しております。そのため、システム設計、個人情報に関する社内でのアクセス権限の設定等、取扱いには十分な注意を払っております。情報の取扱いに際しては、ISMS認証(ISO27001)及びプライバシーマークを取得し、個人情報保護方針及び社内規程に基づき、情報管理体制の整備・運用を強化することで情報漏洩防止に取組んでまいります。

 

(5)内部管理体制の強化

 当社が経営目標を達成するためには、健全かつ効率的な内部管理体制の強化が必要不可欠であると考えております。そのため業務フローの整備や文書化を進めるとともに、内部監査等による運用状況の確認と改善に努めております。また、リスク管理やコンプライアンスについては、常勤役員等が出席するリスクコンプライアンス委員会を運営することで恒常的に意識を高めており、引き続き経営者を中心とした内部管理体制の強化に積極的に取組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、取締役会がサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、当社のサステナビリティのリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての審議・監督を行っております。

 

(2)戦略

 当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

① 人材育成方針

 当社のパーパスステートメント(「私たちは、常に顧客視点で変化を先取りし、社会インフラとして成長し続けるEコマースの進化に貢献します」)に基づき、常に顧客視点で顧客企業の課題解決と成功を模索する自律した人材の育成を目指し、教育制度を構築しております。

 自己の成長・変革に挑戦する社員を支援・尊重し、成長・活躍・自己実現の場を提供するため、年齢や性別等を問わず、能力と人格を備えた優秀な人材に適切な昇格・昇進の機会を与え、将来の管理職・経営層の育成を行っております。

 

② 社内環境整備方針

 当社は優秀な人材確保及び育成のため、以下の取組みを行っております。

a.「自己変革」を促すために、職務記述書(JD)を職種・職位毎に作成し、挑戦を志す社員が、「何の業務を行うのか」、「どのような責任範囲があるのか」、「業務遂行に必要な能力は何か」を分かるようにしております。また、社員が必要なスキルを得ることができるよう、コーチングやDX、業務運営手法に関連した研修制度の定期運用を行い、自学の機会を持てるようにしております。

 

b.「公募制度」の運用を通じて挑戦したい社員がチャレンジできるようにし、可視化された環境で昇格・昇進の機会を設定しております。公募に自ら応募・チャレンジし、採用された社員については、その役割・責任に応じた報酬を与えることで意欲を高めてもらうとともに、サクセッションプランニング研修等、専門性の高い研修の実施により業務スキルの向上を図っております。

 

c.変化の激しい時代に対応するため、柔軟かつ強靭な組織構築に向けた人事制度改革を進めております。2023年4月に運用を開始した新人事制度は、JDに基づく職能型の人事制度に加え、エンジニアやコンサルタント等の専門性の高いプロフェッショナルな人材創出を目指したスペシャリストコースを導入しております。勤務体系については、短時間勤務でも正社員となることが可能な短時間勤務正社員制度、以前まで禁止としていた副業を解禁、フルフレックス制度、リモートワーク制度等の導入・推進により、優秀かつ成長意欲に溢れた人材が自律的に働けるような環境を構築しております。また、評価制度については旧来の目標管理制度による短期的・個人的目標への固執という弊害から脱却するため、前述のパーパスステートメントに基づき、バリューとコンピテンシーを主な評価基準とする新しい評価制度を導入し、より組織全体への貢献度を可視化し、社員のモチベーションとエンゲージメントの向上を目指しております。

 

(3)リスク管理

 当社において、全体的なリスク管理は、リスクコンプライアンス委員会で定期的にモニタリングしております。その中でも経営への影響が大きく、対応の強化が必要なリスクは取締役会でリスクを共有し、経営陣も参画するリスクコンプライアンス委員会で進捗管理しております。

 

(4)指標及び目標

 当社では、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 

 

指標

目標

当期実績

パーパスステートメントへの共感度

3.5

3.3

エンゲージメントスコア(レーティング)

2.8

2.5

女性管理職比率

30%

16%

男性育休取得率

正規雇用労働者

50%

100%

パート・有期労働者

50%

100%

男女の賃金格差

正規雇用労働者

75%

64.8%

パート・有期労働者

100%

99.8%

 

・パーパスステートメントの共感度及びエンゲージメントスコアは、自社アンケート結果から算出したスコア

 になります。パーパスステートメントの共感度は5段階にてスコア化(1.0~5.0)しており、エンゲージ

 メントスコアについては3段階にてスコア化(1.0~5.0)しております。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する項目は、当事業年度末において当社が判断したものであります。

(1)事業環境について

① EC市場の動向

 当社が属する通販物流業界は、EC市場の拡大、ネットショッピング利用者の増加、スマートデバイスの普及等により成長を続けてまいりました。このような傾向は今後も継続していくものと考えておりますが、セキュリティの脅威や法規制、その他の予期せぬ要因等によってEC市場の成長が阻害される状況が生じた場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 他社との競合

 当社が属する通販物流業界は、EC市場の拡大に伴い、それを好機として競合他社は増加しつつあります。当社の提供する物流代行サービスや運営代行サービスは、通販事業者が満足する品質や価格の提供を維持することに努めており、競合他社が増加しつつあるものの、当社事業は順調に拡大しております。

 しかしながら、競合他社との品質や価格等の競争が激化した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 宅配事業者による影響

 当社が属するBPOサービス事業は、宅配事業者に宅配サービスを委託し、購入者に商品を届けることができることでサービスの提供が成り立っております。現在、宅配事業者を取り巻く市場環境は、重労働問題や雇用情勢改善による人手不足もあり、労働者の賃金値上げにより、当社も運賃値上げ等の影響を受けております。当社の宅配サービスの外注先については、大手宅配事業者に委託する割合が相対的に大きく、これらの会社が何らかの事情で宅配事業が行えなくなることやこれらの会社との取引ができなくなる可能性はゼロではありません。

 このようなリスクを踏まえ、当社は既存の大手宅配事業者との継続的な交渉、他の大手宅配事業者や地域宅配事業者の新規開拓等に努めておりますが、これらの施策にもかかわらず、運賃値上げや宅配個数制限の影響を回避できなかった場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ FCの賃貸借契約及び賃借料上昇に関するリスク

 当社は拠点であるFCを賃借しております。何らかの事情により当該FCの継続使用が困難になった場合、又は契約更新時等に賃借料が上昇した場合、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法的規制について

 当社のBPOサービス事業は、「倉庫業法」、「貨物利用運送事業法」、「個人情報保護法」等の法的規制が存在します。当社では、上記を含む各種法的規制について、法令遵守体制の整備・強化及び社員教育を行っております。

 本書提出日現在において各種許認可等の取消事由は発生しておりませんが、今後新たな法令の制定や既存法令等の改正又は解釈の変更が行われ、当社が新たな規制に適時適切に対応することができない場合、許認可等の取消を受けた場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

許認可事業

法律

監督官庁

許認可等の内容

有効期限

取消事由

倉庫業

倉庫業法

国土交通省

登録

なし

同法第21条

第一種貨物利用運送事業

貨物利用運送事業法

国土交通省

登録

なし

同法第16条

 

(3)設備投資について

 当社は今後のEC市場に伴う当社事業の需要拡大に備え、FCの新設等を目的とした設備投資を行っております。FCの新規開設を行った場合には、新規投資に見合う水準までFCの稼働率が上昇するまでに一定の期間を要するほか、借入面積の増加に伴う賃借料負担の増加や新FC立上げに伴う人員増強のための労務費増加等の先行投資が発生するため、一時的に営業損益の低下要因となる傾向があります。

 さらに、事業環境の予期せぬ変化等により、計画した成果や資金回収が得られない場合又は資産が陳腐化した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)人材の確保について

 当社事業が持続的な成長を達成するためには、人材の確保及び育成が重要であると考えております。現在、労働人口の減少や雇用情勢の改善による人手不足の影響もあり、従業員の採用は厳しい状況であります。今後、雇用情勢がさらに悪化し、従業員の採用や育成した従業員の定着が順調に進まなかった場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)情報セキュリティについて

 当社は顧客である通販事業者の商品の配送に関して、購入者の個人情報を含む膨大な注文に関する情報を保有しております。そのため、システム設計、個人情報に関する社内でのアクセス権限の設定等、情報の取り扱いには十分な注意を払っており、ISMS認証(ISO27001)及びプライバシーマークを取得の上、個人情報保護方針及び社内規程を整備し、情報管理体制の運用を強化しております。

 しかしながら、不測の事態による個人情報の喪失や外部への漏洩事故が発生した場合には、当社への損害賠償請求や信用失墜による顧客喪失等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)システム障害について

 当社の事業運営は、倉庫管理システムであるWMS(Warehouse Management System)等、主にインターネットを経由して処理されるよう設計されております。したがって、想定外の自然災害又は事故、コンピューターウィルスによる不正侵入もしくは誤操作等による大規模なシステム障害の発生により業務が停滞した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)コンプライアンスに関するリスクについて

 当社はリスク管理規程及びコンプライアンス規程に基づき、リスクコンプライアンス委員会を設置し、法令違反等のリスク低減について協議し、その結果を役職員の法令遵守体制の整備・強化及び社員教育に役立てております。

 しかしながら、上記に反し当社の役職員が法令違反行為等を行うことや、情報管理体制の不備による個人情報の喪失や外部への漏洩事故が発生した場合には、当社への損害賠償請求や社会的信用の失墜等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)感染症に関するリスクについて

 新型コロナウイルス感染症をはじめその他の感染症の流行、拡大により、終息期間が長期化した場合もしくは想定以上の事態が発生した場合、従業員への感染によるFCの稼働低下、顧客の業績悪化による債権回収の停滞等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)自然災害等によるリスクについて

 当社はFCを運営し顧客の商品の保管・発送業務を行っております。そのため、大規模な地震、風水害、火災による事故等によりFCが被害を受け、又は輸送経路が遮断される等の事態が発生した場合、物流業務が停滞し当社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)採用単価の高騰及び人件費の高騰

 全体的な賃上げ圧力がかかる環境下においては、採用単価、派遣労働者単価、有資格者人件費高騰が予想されることから、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)法改正による原価変動

定期的に見直される建築基準法、建設業法の改正による、労務管理等の変更等により、工期の長期化や、配置人員の増加等で原価が高騰する可能性があります。原価の高騰分を請負金額に反映できない場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)品質管理について

品質管理には万全を期しておりますが、契約不適合責任等による損害賠償が発生した場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13)労働災害及び事故の発生について

労働災害及び事故の発生を防ぐべく対策を講じておりますが、万が一、人身や施工物にかかわる重大な事故が発生した場合は、売上高・利益の減少、採算性の悪化等、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)継続企業の前提に関する重要事象等

 当社は、2022年3月期から連続して営業損失を計上し、また、営業キャッシュ・フローについても2期間連続でマイナスとなっています。当事業年度においては、資金調達によって債務超過の状況は解消し、当社の業績は改善傾向にありますが、継続して営業損失を計上しています。

 このような状況の中、今後追加の運転資金が必要になることが想定されますが、現時点では金融機関等からの十分な資金調達の見通しが得られている状況にはありません。これらの状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

 当該状況を解消又は改善するべく、当社では、以下の対応策を遂行することにより、安定的な収益力の向上及び健全な財務基盤の構築に取り組んでおります。

 

1.安定的な収益力の向上

 当社は、主力サービスであるフルフィルメントサービスを軸に事業拡大を行ってきましたが、改めて、FCの稼働状況と維持管理コストを含む収益性を検討し、FCの坪数の見直しを行い、3拠点のFCを閉鎖しました。拠点閉鎖に伴い、固定費の中でも特に大きい賃借料の削減を図り、他のFCに経営資源を集中することに注力していきます。また、FCの閉鎖に伴い、人員削減を行い、併せて全社ベースで費用の削減を行うことで人件費や業務委託費を削減しています。

 その他、Northmall事業を開始するなど、安定的な収益基盤となる事業を進めていきます。

こうした施策を通じて早期の収益性の改善を実現していきます。

 

2.健全な財務基盤の構築

①販売費及び一般管理費の見直しによる経費削減

 適切な人員配置、役員構成の見直し及び顧問契約・業務委託契約・その他各種契約の見直し等により、販売費及び一般管理費について一定規模の経費削減を実施します。これにより固定費の削減をさらに進め、利益率の改善による営業利益の確保しやすい体質を実現します。

②運転資金の確保

 当社は、運転資金及び開発投資資金の安定的な確保と維持に向け、取引金融機関と借入の返済据え置きなどの協議を進め、また、新たなスポンサー企業による新規融資の申請や資本の増強策の可能性について検討しておりますが、一部の実現に留まり、完了しておりません。このため、今後は、新株の発行や新規の新株予約権行使に伴う資金は、関係者との協議を行いながら進めている途上です。

 

 以上の施策を実施するとともに、今後も引き続き有効と考えられる施策につきましては、積極的に実施してまいります。しかしながら、これらの対応策についての成果が生じるには時間がかかり、また、収益構造の改善には新しい取り組みが含まれていることから不確実性が認められるとともに、業績低迷からの回復に時間を要しております。

 財務基盤の安定化については、資本の増強策の可能性などについて継続的に検討しているものの、関係者との協議を行いながら継続的に進めている途上です。

 なお、財務諸表は、継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を財務諸表に反映していません。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 なお、当社は、株式会社アビスジャパンの全株式を保有している株式会社EL Firstの全保有株式を2024年6月19日付で譲渡していることから、当事業年度より単体財務諸表を作成しているため、キャッシュ・フロー計算書については、前事業年度との比較分析は行っておりません。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復が進み、経済活動の正常化が定着しつつあります。個人消費の持続的な回復やインバウンド需要の本格的な再拡大などを背景に、緩やかながらも景気は持ち直しの動きを見せています。一方で、国際的な地政学リスクや供給制約、原材料・エネルギー価格の高止まり、さらには為替変動などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような状況のもと、当社は「私たちは、常に顧客視点で変化を先取りし、社会インフラとして成長し続けるEコマースの進化に貢献します」をパーパスとして、多様なお客様のニーズに寄り添った対応をより深い次元で実現することに取り組んでおります。

 当社は2000年の創業以来、通販物流代行サービスを提供してきました。現在は、これまでに培ったEコマース領域でのナレッジを活かし、クライアントをトータル支援するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスとコンサルティング・人材育成サービスを提供しております。また、2025年2月からはカタログ通販事業 「Northmall」に着手しており、自社でのEC通販事業も手掛けております。

 当社が事業を展開するEコマース業界は急速な市場拡大を遂げており、ロジスティックスの出荷数や在庫過多などの流通上の課題を抱えていることや解決のプロセスもより複雑化しているため、EC事業全体の戦略見直しや提案力が求められています。これらに対応すべく当社では、クラウドビッグデータを基盤にした、当社のWMSなどの社内システムにある貴重な情報資産を活用したBIレポートや分析レポートを導入するなど、DX推進の取り組みを強化しております。分析力を強化して、顧客企業視点での課題の把握及び改善提案を行うことにより、顧客企業と伴走し、顧客企業のEC事業成功を支援する真のBPOパートナーとしての成長を目指してまいります。

 当事業年度は、BPOサービス事業においてFC施設の一部閉鎖や契約移管、それに伴うクライアントとの契約解除を行った結果、売上高は前事業年度に比べ減少し、10,259,178千円(前事業年度比2,610,321千円減少)となりましたが、売上総利益は、増加し563,128千円(前事業年度比254,357千円増加)となりました。販売費及び一般管理費については、業務効率改善を目的としたWMS(倉庫管理システム)の追加開発等によるシステム関連費用の計上はありましたが、人員削減、無駄な費用の洗い出し等によるコスト削減を行った結果、642,018千円(前事業年度比361,597千円減少)となりました。

 以上の結果、営業損失は78,890千円(前事業年度は営業損失694,843千円)、経常損失は75,592千円(前事業年度は経常損失674,264千円)となりました。また、当期においては、保有資産の見直しや業務効率化の取組みを進めた結果、特別利益として、使用を終了した固定資産の売却による収益752千円、投資有価証券の売却益4,927千円を計上しました。さらに、事業所の集約により不要となった事業所閉鎖損失引当金の戻入益が186,015千円発生し、システム開発に伴う補助金収入36,282千円もあわせて、特別利益合計は227,976千円(前事業年度比108,468千円増加)となりました。

 一方で、拠点の再編に関連して、固定資産の除却・売却に伴う損失11,738千円、倉庫移転に係る費用3,343千円、並びに一部の損害賠償対応に伴う費用1,680千円を計上し、特別損失の合計は16,762千円(前事業年度比1,088,561千円減少)となりました。これらの結果、税引前当期純利益は135,622千円(前事業年度は税引前当期純損失1,660,079千円)、当期純利益は123,713千円(前事業年度は当期純損失1,678,681千円)となりました。

 

 なお、当事業年度より前事業年度で連結対象であった株式会社アビスジャパンが連結対象から外れたため「ファシリティ事業」が消滅し、「BPOサービス事業」の単一セグメントとなりました。従いまして、セグメント別の経営成績は全社の経営成績と同一となっております。

 

財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は、2,844,820千円(前事業年度比1,134,502千円減少)となりました。主な内訳は、現金及び預金241,209千円(前事業年度比111,785千円減少)、売掛金692,735千円(前事業年度比700,652千円減少)、差入保証金940,441千円(前事業年度比374,418千円減少)であります。

 

(負債)

 当事業年度末における負債合計は、2,318,561千円(前事業年度比1,939,882千円減少)となりました。主な内訳は、買掛金451,704千円(前事業年度比569,544千円減少)、未払金806,698千円(前事業年度比521,875千円減少)、長期借入金290,267千円(前事業年度比227,055千円減少)であります。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は、526,258千円(前事業年度比805,378千円増加)となりました。主な内訳は、資本金939,597千円(前事業年度比334,994千円増加)、資本剰余金859,597千円(前事業年度比334,994千円増加)、繰越利益剰余金△1,330,570千円(前事業年度比123,714千円増加)であります。

 この結果、自己資本比率は、17.4%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、91,209千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、使用した資金は206,422千円となりました。これは主に、税引前当期純利益135,622千円の計上、売上債権の減少770,619千円、敷金及び保証金の支払い賃料相殺額443,973千円等により資金増加があった一方、事業所閉鎖損失引当金の減少362,277千円、仕入債務の減少569,544千円、未払金の減少531,035千円、違約金の支払い160,000千円等による資金減少があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は361,117千円となりました。これは主に、定期預金の増加150,000千円、無形固定資産の取得による支出156,928千円、敷金及び保証金の差入による支出77,466千円等による資金減少があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、得られた資金は305,754千円となりました。これは主に、第三者割当増資による収入668,016千円等の資金増加があった一方、長期借入金の返済による支出290,281千円、短期借入金の減少に伴う50,200千円等による資金減少があったことによるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

 当社は、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 BPOサービス事業の受注実績は、販売実績とほぼ一致しておりますので、受注実績に関しては販売実績の項をご参照ください。

 

 

c.販売実績

 当社は、「BPOサービス事業」の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。

なお、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

販売高(千円)

割合(%)

株式会社TOBE COMMUNITY

1,310,375

12.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績の分析

(売上高)

 当事業年度の売上高は、10,259,178千円となりました。

 これは主に、既存顧客との取引が堅調に推移したことに加え、EC・DX関連の追加受注が寄与したことによるものです。

 

(売上原価、売上総損失)

 売上原価は、9,696,049千円となりました。

 これは主に、一人当たり人件費は増加した一方、FC3拠点を閉鎖したことにより賃借料・光熱費等が大幅に減少し、原価構造の軽量化が進んだことによるものです。

 以上の結果、売上総利益は563,128千円となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

 販売費及び一般管理費は、642,018千円となりました。

 これは主に、倉庫内WMSシステムへの投資や本社固定費の最適化を進めたことによるものです。

 以上の結果、営業損失は78,890千円となりました。

 

(営業外損益、経常損失)

 営業外収益は、18,096千円となりました。これは主に、保険金収入及び閉鎖拠点の固定資産売却等によるものです。

 営業外費用は、14,798千円となりました。これは主に、支払利息の計上によるものです。

 以上の結果、経常損失は75,592千円となりました。

 

(特別損益、親会社株主に帰属する当期純損失)

 特別利益は、227,976千円となりました。これは、事業所閉鎖損失引当金戻入(3拠点閉鎖完了により将来費用が不要となったため)やシステム開発に係る補助金収入によるものです。

 特別損失は、16,762千円となりました。これは主に、減損損失及び事業所閉鎖損失引当金繰入額の計上によるものです。

 以上の結果、税金等調整前当期純利益は135,622千円となりました。さらに、法人税、住民税及び事業税12,825千円及び法人税等調整額916千円を計上した結果、当期純利益は123,713千円となりました。

 

当社のセグメントごとの経営成績の分析

 単一セグメントのため記載を省略しております。

 

財政状態の分析

 財政状態の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析に関する情報については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社における資金需要は、主として荷造運賃、賃借料等の運転資金及びFCへの設備導入並びに保証金の差入等があります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 運転資金の財源については自己資金により賄い、設備投資等については、金融機関からの借入れによる資金調達を基本としております。なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は91,209千円となっております。

 今後の事業拡大等に向けた運転資金及び設備投資資金については、金融機関からの借入れ又は株式発行による調達を予定しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表等は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じて合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、不確実性があるため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 目標とする経営指標」に記載のとおり、売上高及び営業利益を重要指標としております。

 当事業年度は、上記「① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりです。今後も原価及び経費の低減を図りつつ、売上高及び営業利益の拡大に努めてまいります。

 

当事業年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

売上高(千円)

10,259,178

営業損失(△)(千円)

△78,890

 

5【重要な契約等】

(第三者割当による第7回新株予約権の発行)

 当社は、2024年8月19日開催の取締役会及び2024年9月18日開催の臨時株主総会において、豊田Holdings(株)及びG Future Fund1号投資事業有限責任組合を割当先とする第三者割当による新株式及び第7回新株予約権の発行を決議し、2024年9月19日に総数引受契約を締結しております。詳細は「第4提出会社の状況1株式等の状況(2)新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。