第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「新しい可能性を、次々と。」をミッションとし、社会における様々な「課題」を、テクノロジーを活用したサービス創造を通じて解決する事業を複数擁するデジタル・トランスフォーメーション・カンパニーとして、社会に貢献してまいります。

 

(2) 経営戦略

今後の方向性としては、主力サービス『ビズリーチ』を含むHR Tech領域でのさらなる事業成長とともに、社会的課題を捉えた新規事業の継続的な創出、国内外の有望な企業への投資とノウハウ提供を通じて、当社グループの事業領域拡大と企業価値の向上を図ってまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業規模と収益性を測る指標として、売上高及び営業利益を重視しております。なお、営業利益の創出を維持するとともに、中長期的な企業価値の向上のため、新規事業への先行投資を継続することを企図しております。また、サービス別では主要サービスである『ビズリーチ』においては、人材採用プラットフォームのアクティビティが重要であると考えていることから、累計導入企業数、年次利用中企業数及びスカウト可能会員数の拡大を重視しております。『HRMOS』シリーズにおいては、サブスクリプション(定期購入による継続課金)型のサービス提供をしているため、利用中企業数の拡大及びChurn rateを低く抑える事を重視しております。

 

(4) 当社グループの強み

① 市場での『ビズリーチ』の明確なポジショニングと更なる拡大余地 

『ビズリーチ』の主なターゲットとなる、日本における従業員101名以上の企業数は、50,455社(「都道府県別一般事業主行動計画策定届の届出及び認定状況(2023年9月末時点)」(厚生労働省)を加工して算出)存在し、『ビズリーチ』をご利用いただいたことのある年次利用中企業数は、16,000社以上(2024年7月末時点)です。現在の市場においても、今後、未利用企業の新規開拓及び利用企業への深耕営業の更なる促進により、更なる成長可能性を有しております。

当社グループの主力サービスである『ビズリーチ』は、経営幹部等のプロフェッショナル人材の採用を支援するサービスであり、顧客企業が抱える経営課題を解決する性質を有しております。スカウト可能な258万人以上(2024年7月末時点)のプロフェッショナル人材のデータベースを擁し、顧客企業と経営上のパートナーとしての関係性を築いております。

 

② 各採用領域における充実したサービスラインナップ

当社グループは、新卒をターゲットとする『ビズリーチ・キャンパス』、企業活動の中核を担うプロフェッショナル人材の採用を支援する『ビズリーチ』とキャリア形成における各ステージのサービスを提供することに加えて、パートタイマー・アルバイト領域の求人検索エンジン『スタンバイ』などを通じて、各領域特化型の採用サービスを提供しております。国内における人材獲得競争が激しさを増す中、当社グループは採用に関する総合的なプラットフォーマーとして、確かな地位を築くことを目指しております。

 

③ 収益構造の多様化

当社グループは、『ビズリーチ』に代表されるフロー型の収益構造に加え、『HRMOS』シリーズに代表されるサブスクリプション(定期購入による継続課金)のサービス提供を通して、収益構造の多様化を図り、安定的かつ継続的な収益構造を目指しております。

 

 

④ 幅広い領域における新規事業創出能力

当社グループは、採用領域における事業開発のみならず、HR SaaS領域における『HRMOS』シリーズ、M&A領域における『M&Aサクシード』、サイバーセキュリティ領域における『yamory(ヤモリー)』、『Assured(アシュアード)』等、幅広い領域において新規サービスを生み出してまいりました。当社グループは、継続的な新規事業創りに対する強いコミットメントを有しております。

また、当社グループは、新規事業を創出し、一定の規模に育てた上で、当該事業を高く評価するパートナー企業に持分を譲渡することを通じて、成長資金を獲得してきた実績もあります。具体的には、株式会社ビズリーチが2010年に開始したセレクト・アウトレット型EC事業『ルクサ』については、当該事業を株式会社ルクサ(現auコマース&ライフ株式会社)として分社させた後に、2015年にKDDI株式会社への株式売却を行いました。また、株式会社ビズリーチが2015年に開始した求人情報一括検索サイト『スタンバイ』については、2019年にZホールディングス株式会社(現LINEヤフー株式会社)と株式会社ビズリーチの合弁事業会社として事業開始した株式会社スタンバイに対して、事業の吸収分割を行いました。さらに、株式会社ビズリーチが2016年に開始したクラウド活用と生産性向上の専門サイト『BizHint(ビズヒント)』の運営を行う株式会社ビズヒントについては、2023年12月にスマートキャンプ株式会社への株式売却を行いました。これらの取引より得られた資金は、グループのさらなる成長のため、新規事業開発等に再投資されております。

 

⑤ プラットフォーマーとしてのポジショニング

当社グループは、主力サービス『ビズリーチ』運営で培ったプラットフォーム運営ノウハウを活かし、他領域でも主要なプラットフォーマーとしての地位を確立しております。

物流業界のデジタル・トランスフォーメーションを推進する荷主・運送企業を結ぶ物流DXプラットフォーム『トラボックス』、国家課題でもある事業承継をはじめとする資本の流動化を支援する法人・審査制M&Aマッチングサイト『M&Aサクシード』、SaaS/ASPなどのクラウドサービスの安全性を可視化するセキュリティ評価プラットフォーム『Assured(アシュアード)』、ITシステムの脆弱性を自動で検知して管理・対策ができる脆弱性管理クラウド『yamory(ヤモリー)』の運営を行っております。

 

(5) 経営環境

企業寿命と労働寿命のミスマッチ、成果主義への移行、新型コロナウイルス感染症拡大の影響によるリモート勤務の浸透などにより、「働き方」や「転職への考え方」が根底から変化し、雇用の流動化は益々加速すると考えております。

また、日本の生産年齢人口が減少していく中、中途採用による人材強化や、労働生産性を向上させるための投資は強化されるものと考えております。

さらに、日本における採用支援市場は、米国市場と比べると、雇用の流動化による市場拡大余地が大いにあると考えております。例えば、厚生労働省が発表した「令和4年版 労働経済の分析-労働者の主知的なキャリア形成への支援と通じた労働移動の促進に向けた課題」 によると、10年以上の勤続年数の雇用者割合は米国の28.8%に対し日本は45.9%と雇用者の勤続年数は長期となっております。雇用の流動化により、労働需要のより高い分野への人の移動を促進することが重要であると考えております。

 

(6) 事業上及び財務上の対処すべき課題

(2)記載の経営戦略を実行していくうえで、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。

① 採用市場における「ダイレクトリクルーティング」の浸透

当社グループの中核をなすHR関連サービスにとって、「ダイレクトリクルーティング」の浸透が大きな成長ドライバーとなっております。そのため、当社グループは、東京・大阪・名古屋・福岡等の各拠点における営業活動、TVコマーシャルなどの積極的な広告宣伝、各種メディアを活用した戦略的な広報等により、当社サービスの知名度の向上とともに「ダイレクトリクルーティング」の周知・啓蒙に努め、一定の成果をあげてまいりました。これにより、「ダイレクトリクルーティング」の代表的なサービスとしての認知を得ることに成功しています。

一方で、国内すべての正社員転職件数を潜在的な市場とみなした場合、当社グループサービスを経由した転職件数が占める比率はまだ低い水準にあると考えております。当社グループサービスの認知度の高まりを、当社グループサービスを経由した転職件数の更なる増加に繋げることで、今後の収益増を実現してまいります。このために、「ダイレクトリクルーティング」の具体的な成功事例の積み上げと周知に努めるとともに、経営者・採用担当者による実践を助けるノウハウを手厚く提供してまいります。

 

② 収益源の多様化

当社グループは、事業規模の指標である売上高については、殆どの事業において順調に成長している一方で、収益性の指標である営業利益については、ビズリーチ事業への依存度が高い状態にあります。中長期に亘って成長するグループであるために、ビズリーチ事業に続く収益の柱を確立することが重要であると考えております。

 

③ 優秀な人材の確保

当社グループは、今後も事業領域を広げつつ、各事業の成長を目指していく上で、多様なバックグラウンドを持つ優秀な人材を採用し続けることが不可欠であると考えております。これまでも、経営者、事業責任者、採用担当者などが自ら候補者を見つけ出してアプローチする「攻め」の採用手法と、求人メディアへの出稿や人材紹介会社の利用といった従来型の「待ち」の採用手法を組み合わせて、あらゆる選択肢の中から主体的に最善手を選びながら「ダイレクトリクルーティング」を実践する中で、従業員1,700名を超える組織を築いてまいりました。今後も、多様な採用手法を用いて優秀な人材の獲得に努め、「ダイレクトリクルーティング」のコンセプトを体現してまいります。

 

④ 情報管理体制の強化

当社グループが運営する事業においては、顧客情報、個人情報を多く取り扱っており、これらの情報管理については重要課題と認識しております。

個人情報保護方針及びインサイダー取引の未然防止を含む社内規程の整備並びに規程の運用の徹底、社内研修の実施を通じて、これらの情報については厳正に管理しておりますが、引き続き関連社内システムの一層のセキュリティ強化、社内研修の更なる整備等を図り、情報管理のための管理体制を拡充してまいります。

また、株式会社ビズリーチ及び一部の子会社は、一般財団法人日本情報経済社会推進協会が運営するプライバシーマーク制度の認証を取得しております。

 

⑤ 内部管理体制の強化

当社グループは、急速に事業が成長しており、求められる機能も拡大しております。継続的に当社グループが成長を遂げていくためには、経営上のリスクを適切に把握し、当該リスクをコントロールするための内部管理体制の強化が重要な課題と考えております。このため、今後も事業運営上のリスク管理や定期的な内部監査の実施によるコンプライアンス体制の強化、監査等委員会による監査等を基軸とするコーポレート・ガバナンス機能の充実等を図ってまいります。また、当社グループの成長速度に見合った人材の確保及び育成のため、継続的な採用活動と研修活動を行ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ全般

当社グループは、事業の拡大を通じてミッションである「新しい可能性を、次々と。」を実現し、企業価値向上とともに持続的な社会への貢献を目指しております。時代がもたらすさまざまな課題を、次々と新しい可能性に変え、世の中の革新を支えていきます。当社グループを取り巻くすべてのステークホルダーの皆様と一緒に、サステナブルな未来の実現を、当社グループの様々なサービスを通して推進していきます。

 

① ガバナンス及びリスク管理

当社グループにおけるサステナビリティ関連の重要事項については、取締役CFOの指揮のもと、組織横断のチームが検討を行い、代表取締役社長を議長とする執行会議に報告し、執行会議にて審議の上、取締役会で決定しております。また、リスク管理については、サステナビリティに関する事項も含めたリスク全般について、リスク管理部門がリスクの特定、分析、評価、対応といったリスクマネジメントを実施しており、代表取締役社長を議長とするグループリスク・コンプライアンス会議に四半期ごとに報告し、グループリスク・コンプライアンス会議がその状況を監督しております。

 


 

② 戦略

当社グループは、下記4つのプロセスを通じて企業価値向上と持続的な社会への貢献のために優先的に取り組むべきマテリアリティを特定いたしました。これらのマテリアリティへの取り組みを通じ、全てのステークホルダーの期待や要請に応えてまいります。

 

マテリアリティの特定プロセス
 
1.社会課題の把握 ・整理

GRIスタンダード、SASB等の国際的なフレームワークやガイドライン、SDGsを考慮して、社会課題を広範にリストアップし、当社グループの属する産業、当社グループの事業の特性等から関連性のある課題を整理し、マテリアリティの候補を特定。

2.ステークホルダー視点での重要性の評価

マテリアリティの候補について、日本・米国・欧州・アジアの機関投資家の投資の際に意識するESG項目に関する開示情報の調査や、株主・投資家、取引先などの社外のステークホルダーとの意見交換を参考に重要性を評価。

3.自社視点での重要性の評価

マテリアリティの候補について、経営陣を中心とした議論をもとに重要性を評価。

4.マテリアリティの特定

ステークホルダー及び自社視点で評価した課題をどのように整理・言語化すべきか取締役会での議論を重ね、優先的に取り組むべきマテリアリティを特定。

 


 

上記プロセスによる検討の結果、「競争力の源泉となる人材の強化」、「価値あることを正しく遂行するガバナンス強化」、「テクノロジー活用による安心・安全なサービス運営」、「事業づくりを通じた課題解決」、「地球環境への責任と対応」の5項目をマテリアリティとして特定しております。

マテリアリティに関する開示に加え、代表取締役社長及び取締役CFOによるサステナビリティに関するコミットメント、ESGに関する取り組みやデータをウェブサイト上で公開しております。

日本語:https://www.visional.inc/ja/sustainability/sustainability.html

英語:https://www.visional.inc/en/sustainability/sustainability.html

 

(2)人的資本

① 戦略

■人材育成方針

当社は、「人材」が最も重要な資産であり、より高い事業成長を続けていくための競争力の源泉と考えております。多様なバックグラウンドを持った人材の採用、又は採用後の成長支援、その人が持つポテンシャルを最大限に発揮し、安心して働ける環境づくりに努めています。また、従業員が主体的にキャリア形成を行い、学び続けるためのサポートにも取り組んでおります。

 

■社内環境整備方針

・働きやすい環境づくり

新卒採用のみならずキャリア採用を積極的に実施しております。多様なバックグラウンドをもつ人材の採用を行っております。

入社時研修等の様々な研修や1on1により成長支援を行っております。

リモートワークを選択可能とし、また、原則フレックス制度を採用しており、柔軟な働き方を可能としております。

・従業員エンゲージメント(企業理念への理解及び組織貢献への意欲)

エンゲージメントの向上や情報共有のため、月1回、株式会社ビズリーチ社長による朝会(タウンホールミーティング)の実施※や、グループ全従業員参加のキックオフを半期に一度実施し、従業員表彰※を行っております。

※株式会社ビズリーチにおける取組み

個人の状態に関してはパルスサーベイを毎月実施し、組織状態の見える化のためエンゲージメントサーベイを年2回実施しております。その結果は、人事部門から各管理職に分析フィードバックを行い、各部門においてはフィードバックをもとに改善活動を行っております。

・『社内版ビズリーチ』による人材活用

今後当社のサービスとして展開予定である『社内版ビズリーチ』の利活用を進めてまいります。当サービスは社内レジュメや社内ポジション要件を作成し、社員とポジションの見える化を進めることにより、スキル・経験から最適なマッチングを通じた企業全体の最適配置の実現を図ると共に、生成AIの活用により最小限の工数で社内の労働市場を活性化させることで、従業員が働きやすい環境やチャレンジしやすい環境を整え、競争力のある人材の育成・維持に役立てることを目指しています。

 

参考:即戦力を社内から採用する『社内版ビズリーチ』構想

 


     注:(1)2024年12月にサービス提供開始予定

 

② 指標及び目標

前述のとおり、当社グループは「人材」が最も重要な資産であり、より高い事業成長を続けていくための競争力の源泉と考えております。これまでも、中途採用と新卒採用を組み合わせ、人員数を拡大してまいりましたが、これにより様々なバックグラウンドや経験、スキルを持った人材が活躍する企業風土の醸成につながっていると考えております。現在の当社事業の中心は、創業事業であるビズリーチでありますが、その他事業への投資や、新規事業の立ち上げによる新市場を開拓する特性から、機動的な戦略策定・変更や市場の動きが、当社グループに与える影響を中長期で予測することが難しいため、中途採用比率等の目標を定めてはおりませんが、今後も中途採用と新卒採用を組み合わせた人員数の拡大を計画しております。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 景気変動と雇用情勢について

当社グループの業績は、景気変動等の経済情勢、社会情勢及び地政学的状況に影響を受けます。特に、当社グループが主力とするHR Techセグメントの事業は、景気変動や雇用情勢等の動向に影響を受けやすい特性があります。雇用情勢は、企業業績及び政府の雇用政策等の影響を受けます。また、Incubationセグメントの事業についても、経済情勢の悪化により、想定しているとおりの成長を達成できない可能性があります。さらに、経済情勢等によって、当社グループの提供するサービスの価格に対する値下げ圧力が増す可能性があります。当社グループは、幅広い採用領域においてサービスを提供することによって環境変化に影響を受けにくい収益構造を目指しておりますが、何らかの要因により、企業の人材採用需要が減退した場合や経済情勢の変化等が当社グループのサービスの需要低下や収益性の低下等を招いた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 競合について

当社グループが事業を展開する市場では、各分野において既に多数の競合他社が存在しており、一定の競争環境があるものと認識しております。

当社グループの中核事業であるビズリーチ事業では、ビジネスプロフェッショナル向けの人材採用市場において、「ダイレクトリクルーティング」という新しい仕組みを普及させ、これを実践するプラットフォームをいち早く市場へ投入し、また効果的な広告宣伝活動によるプラットフォーム利用者の増加により、すでに一定の市場における競争優位性を確立しているものと認識しております。今後も当社グループのサービスの競争優位性の強化に尽力してまいりますが、伝統的な人材紹介業者等との競争に加えて、国内の人材紹介業者や求人情報サービス業者等がオンラインサービスや人材採用プラットフォームのサービスを拡充したり、オンラインの人材採用プラットフォームをグローバルに展開する海外の競合他社が日本市場でのサービスをより強化する等の場合には、それらの他の人材採用プラットフォームとの競争が激化する可能性があります。

人材採用プラットフォームに関して優れたビジネスモデルを有する競合他社が現れた場合等には、競争の激化により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループでは効果的な広告宣伝活動を継続する方針ではありますが、今後においても広告宣伝活動により、プラットフォーム利用者が増加する保証はなく、プラットフォーム利用者が増加しないこと等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

HRMOS事業についても、日本におけるクラウドベースでのHCM向けの市場は比較的新しく、新たな競合他社が日本の当該市場に参入した場合や、当社がHRMOS事業のサービスを更に拡大し、又は既存の競合他社が自社の事業を拡大した場合等には、競争の激化により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

さらに、Incubationセグメントでは、デジタル・トランスフォーメーションを進めることができる市場ポテンシャルを有すると当社グループが戦略的に考える領域において新規の事業を行っており、今後も行う方針でありますが、当該領域における競合他社との競争や類似の戦略を採用する他社との競争に直面する可能性があります。

さらに、当社グループが事業を展開する市場は技術の変化が激しいため、技術革新に対応できず、当社グループのサービスの競争力が低下した場合等には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 特定事業への依存リスク

当社グループはビズリーチ事業を中核事業と位置付けております。2024年7月期における連結売上高(66,146百万円)に占める同事業の売上高(57,776百万円)の比率は87.3%であり、その依存度は高い状況にあります。ビジネス・プロフェッショナル向けの人材採用市場は今後も継続して拡大すると想定しておりますが、転職・中途採用を受け入れる社会意識やビジネス慣習の変化は、当社グループが期待するほどには進まない可能性があります。また、日本におけるオンライン採用支援市場は、従来型の採用支援市場ほどは成熟していないため、当社グループの見込み通りにオンライン採用支援サービスの利用が増加するとは限らず、事業環境の変化や当社サービスの競争力低下が生じた場合等は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、ビズリーチ事業は、直接採用企業、ヘッドハンター及び求職者から対価を受領して収益を上げており、同事業の継続的な成長にはこれらの顧客の獲得及び維持が重要です。当社サービスの顧客誘引力が低下した場合や、これらの顧客に対する販売・マーケティング活動が奏功しない場合等には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(4) 新規事業について

現在、当社グループの収益の大部分は、ビズリーチ事業から生み出されています。当社グループは、中長期的な事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、ビズリーチ事業で生み出した収益の範囲内で、当社グループの経営ノウハウを活かした新規事業の創出に積極的に取り組む方針であります。新規事業の展開にあたってはリスクを軽減するために必要な情報収集及び検討を実施しておりますが、現時点で新規事業の多くは黒字化を達成しておらず、新規事業の拡大・成長が当初の予測通りに進まない場合、投資資金を回収できず、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、本「3 事業等のリスク」に記載の様々な要因により、ビズリーチ事業から十分な収益を生み出すことができない場合には、新規事業に投資する能力が制限される可能性があります。さらに、新規事業の立ち上げに関して想定以上のコストがかかる場合や、新規事業の収益実現が遅れた場合等には、計画していた投資や事業拡大からの撤退を決定する可能性があり、そのような戦略的な撤退により多額の費用が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

特にHRMOS事業については、即戦力を社内から採用する『社内版ビズリーチ』構想を掲げてサービスの開発を推し進める等、事業の拡大を目指しておりますが、これらのサービスの開発が予定通りに進まなかった場合や収益化が実現できず投資資金を回収できなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) システム障害等について

当社グループの事業は、インターネットを利用しているため、自然災害、事故、不正アクセスなどによって通信ネットワークの切断、サーバー等ネットワーク機器に作動不能などのシステム障害が発生する可能性があります。当社グループでは、稼働状況の定期的なモニタリング、異常発生時の対応方法等の明確化などシステム障害の発生防止のための対策を講じておりますが、このような対応にもかかわらず大規模なシステム障害が発生した場合等には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、その事業の重要な分野で外部のサービスプロバイダーに依存しています。特に、クラウドベースのサービスの大部分は、外部クラウドサーバー(Amazon Web Services社が提供するサービス(以下、「AWS」という。))を利用して提供されています。そのため、顧客へのサービス提供が妨げられるようなシステム障害の発生やサイバー攻撃によるシステムダウン等を回避すべく、複数の地理的リージョン(注1)とアベイラビリティゾーン(注2)の利用による冗長性の確保や定期的な脆弱性診断及び各種不正アクセス対策等によるセキュリティの対応、また、システム稼働状況の監視等を実施しております。しかしながら、このような対応にもかかわらず自然災害、事故、不正アクセスなどによってAWS等のシステム障害が発生した場合、又は外部のサービスプロバイダーとの契約が解除される等によりAWS等の利用が継続できなくなった場合等には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(注)1.地理的に独立したサーバーの設置エリアのことを意味します。

   2.リージョンの中の個々の独立したデータセンターの名称のことを意味します。

 

(6) サービス等の不具合

高度なソフトウェアは不具合の発生を完全に解消することは不可能であると言われており、当社グループのアプリケーション、ソフトウェアやシステムにおいても、各種不具合が発生する可能性があります。

今後も信頼度の高い開発体制を維持・構築してまいりますが、当社グループ事業の運用に支障をきたす致命的な不具合が発見され、その不具合を適切に解決できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動を通して、お客様や取引先の個人情報及び機密情報を入手することがあり、また、営業上の機密情報を保有しています。当社グループでは、当社グループ共通の「情報セキュリティ基本規程」に基づき、当社グループ全体の情報管理を統括するグループ最高情報セキュリティ責任者に付与し、グループ最高情報セキュリティ責任者のもとでグループ基準に適合した情報の管理体制を構築するとともに、情報の取扱い等に関する規程類の整備・充実や従業員等への周知・徹底を図るなど、情報セキュリティを強化しております。しかしながら、サイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルスの侵入、情報セキュリティの欠陥等により、万一これらの情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信用を低下させ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 特定人物への依存について

当社の代表取締役社長である南壮一郎は、創業以来当社グループの事業に深く関与しており、また、インターネット関連事業に関する豊富な経験と知識を有していることから、経営戦略の構築やその実行に際して極めて重要な役割を担っております。当社グループは、特定の人物に依存しない経営体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社グループにおける業務執行が困難になった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 人材の確保・育成について

当社グループは、事業運営にあたり、各事業領域や職能において専門性を有する人材が必要であり、今後とも事業拡大に応じて継続的な人材採用・育成を行うことが欠かせません。当社グループは、「ダイレクトリクルーティング」のコンセプトを自ら体現し、人材の採用のため多様な採用手法を用いて優秀な人材の獲得に努めていく予定ではありますが、将来的に、優秀な人材の獲得が困難となる、人材の育成が計画通りに進まなくなる、在職する人材が社外流出する等の事態が生じる場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 内部管理体制の構築について

当社グループの継続的な成長のためには、コーポレート・ガバナンスが適切に機能することが必要不可欠であると認識しております。取締役CFOのもとで業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規程及び法令遵守を徹底してまいりますが、事業が急速に拡大・多角化することにより、コーポレート・ガバナンスが有効に機能しなかった場合には、適切な業務運営を行うことができず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) コンプライアンスについて

当社グループでは、企業価値の持続的な拡大を図るにはコンプライアンスが重要であると認識しています。そのため、当社グループでは、当社代表取締役社長を議長とするグループリスク・コンプライアンス会議を原則として四半期に1回開催し各子会社からコンプライアンスに関する事項について報告を求めています。また、「コンプライアンス規程」や「ビジョナルグループ行動規範」を設け、イントラネット上に明示するとともに、定期的な社内研修を実施しております。しかしながら、これらの取り組みにもかかわらず、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループのブランドイメージ及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(12) レピュテーションリスクについて

当社グループの事業においては、当社グループ及び当社グループが提供するサービスの顧客認知度、ブランドイメージや社会的信用の維持及び向上が重要ですが、当社グループによるプロモーション活動が奏功する保証はありません。

また、マスコミ報道やインターネット・ソーシャルメディアの書き込み等において、当社グループに対する否定的な風評が発生し流布した場合又は不適切な事象の発覚等に端を発して、社名が報道・公表された場合、関係各所が連携し適切に対応できる体制となっておりますが、当社サービスの欠陥や個人情報及び機密情報の流出等並びに当社グループや当社グループに関する風評の発生等により、当社グループや当社グループが提供するサービスのブランドイメージや社会的信用が低下し、その結果として、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(13) 法規制・動向について

①一般的な法的規制について

当社グループが提供するサービスを規制する主な法律として「電気通信事業法」、「消費者契約法」、「特定商取引に関する法律」、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)」、及び「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」等があります。

当社グループは、これらの規制に準拠したサービス運営を実施しており、今後も法令順守体制の強化や社内教育の実施等を行ってまいりますが、新たな法規制の制定や改正が行われ、当社グループが運営するサービスが新たな法規制の対象となる場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

②個人情報の保護

当社グループは、求職者の職務経歴書や応募情報等の個人情報を取得し、利用しているため「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務が課されております。

当社グループは、個人情報の外部漏洩、改ざん等を防止するため個人情報の管理をサービス運営上の重要事項として捉え、個人情報保護方針を定め、個人情報の取得の際には利用目的を明示し、その範囲内でのみ利用するとともに、個人情報の管理につきましても、役員及び従業員を対象とした個人情報の取扱いに関する社内研修や、社内でのアクセス権限の設定、アクセスログの保存、個人情報管理に関する規程の整備を行っております。

しかしながら、外部からの不正なアクセスや当社グループ関係者の故意又は過失により個人情報が流出するなどの問題が発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求や信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。また、新たな法規制の制定や改正が行われ、又は既存法令等の解釈変更等がなされ新たな規制が生じた場合等には、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③HR Tech事業に関する法的規制について

当社グループが運営する『ビズリーチ』等の採用に関するプラットフォームは、「職業安定法」が定める募集情報等提供事業として個人情報の適切な管理等の義務が課されております。

当社グループは、規制に準拠したサービス運営を実施しており、今後も法令順守体制の強化や社内教育の実施等を行ってまいりますが、新たな法規制の制定や改正が行われ、又は既存法令等の解釈変更等がなされ当社グループが運営するサービスが新たな法規制の対象となる場合、許可の追加取得が必要となる場合、又は、許可の取消し、業務停止命令若しくは業務改善命令の対象となる場合等には、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

④運送事業に関する法規制について

当社グループが運営する『トラボックス』は、プラットフォーム上において荷主と運送会社を直接マッチングさせるため「貨物利用運送事業法」等の各種運送事業に関する義務は課されておりません。

当社グループは、今後も法令順守体制の強化や社内教育の実施等を行ってまいりますが、新たな法規制の制定や改正が行われ、又は既存法令等の解釈変更等がなされ当社が運営するサービスが新たな法規制の対象となる場合等には、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤知的財産権について

当社グループが運営する各サービスに関連する商標、ソフトウェア、システム等の知的財産権は当社グループにとって重要であり、当社グループはそれらの獲得に努めておりますが、それらが不正使用されない保証はありません。

また、当社グループが運営する各サービスにおいて使用する商標、ソフトウェア、システム等については、現時点において第三者の知的財産権を侵害するものではないと認識しております。今後においても、侵害を防ぐため著作権等を含めた管理を顧問弁護士、顧問弁理士と協力して行っていく方針でありますが、当社グループの事業分野で当社の認識していない知的財産権が既に成立している、又は新たに当社グループの事業分野で第三者の知的財産権が成立する可能性もあります。

そのような場合には、当社が知的財産権を侵害したことによる損害賠償請求や使用の差し止め、権利に関する使用料等の支払い請求等がなされることが想定されます。そのような事態が発生する場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 第三者との係争について

当社グループは、コンプライアンス研修の推進等、役員及び従業員の法令違反等の低減努力を実施しております。しかしながら、当社グループ並びに役員及び従業員の法令違反等の有無にかかわらず、取引先、従業員その他第三者との予期せぬトラブル、訴訟等が発生する可能性があります。

個々の係争が発生する可能性を予測することはできず、また個々の係争に係る発生時期も予測することは困難ですが、訴訟等の結果にかかわらず、多大な訴訟対応費用の発生や信用及びブランドイメージ低下等により当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、訴訟等の結果、当社グループのサービスの停止等の事態が生じた場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) M&A等を含む投融資について

当社グループは、事業規模の拡大を目指すため、既存事業の強化・経営ノウハウを活かせる事業など新規事業領域への参入とその強化を通じた企業価値の最大化を経営上重要視しており、そのための手法の一つとして、M&A等を含む投融資活動を実施しており、今後、これを強化していきます。対象企業について事前に可能な限り詳細な審査を行い、十分にリスクを検討した上で、M&Aを進めてまいりますが、買収後に未認識債務の判明や偶発債務の発生等事前の調査で把握できなかった問題が生じること、買収後の事業の展開等が計画通りに進まないこと、買収後の事業維持につき想定以上のコストが生じることや事業提携先の企業が後に競合相手となり当社グループとの提携中に獲得したノウハウ等を利用されること等が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、M&A等により、当社グループが行っていなかった新たな事業が加わる際には、その事業固有のリスク要因が加わることとなります。

 

(16) M&Aにおけるのれん等の減損リスク

当社グループでは、2024年7月末時点で、企業結合により生じたのれんを2,523百万円、顧客関連資産を1,117百万円計上しております。これらの資産については、今後の事業計画との乖離等によって期待されるキャッシュ・フローが生み出されない場合、減損損失が計上されること等により当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 持分法適用関連会社(株式会社スタンバイ)について

当社ではZホールディングス株式会社(現、LINEヤフー株式会社)との合弁会社である株式会社スタンバイ(本項目において、以下「同社」という。)を共同経営しています。同社では、求人検索エンジン『スタンバイ』を運営しております。同社への出資比率は、当社が40.0%(Zホールディングス株式会社は60.0%)であり、当社にとって同社は持分法適用関連会社であります。

同社の事業の立ち上げにあたっては、HR Techビジネスにノウハウをもつ当社グループが重要な役割を担う必要があることから、同社の代表取締役社長には当社代表取締役社長である南壮一郎が就任しております。今後、同社に予期せぬ事象が発生し、当社代表取締役社長南壮一郎が同社代表者としての責任を問われる場合、当該兼務先における経営責任者としての職務の負荷が想定を超えて過大になる場合及び出資比率の変更等があった場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社グループは、役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし新株予約権(以下「ストック・オプション」という。)を付与しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用する可能性があり、現在付与しているストック・オプションに加え、今後も付与されるストック・オプションについて権利行使された場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。本書提出日の前月末現在でストック・オプションによる潜在株式数は2,010,700株であり、発行済株式総数及び潜在株式の合計41,688,800株の4.82%(小数点以下第3位を四捨五入)に相当しております。なお、第2回新株予約権から第30回新株予約権について、提出日の前月末現在における行使可能日が到来する期別の新株予約権の目的となる株式の数は以下のとおりです。

 

 

 

2022年7月期

2023年7月期

2024年7月期

2025年7月期

2026年7月期

(株)

(注1)253,700

(注2)34,000

(注3)87,400

(注4)414,400

(注5)376,000

 

 

 

2027年7月期

2028年7月期

2029年7月期

2030年7月期

2031年7月期

(株)

(注6)357,900

(注7)226,400

(注8)228,100

(注9)17,600

(注10)15,200

 

(注)1.上場日翌日から1年後の2022年4月23日より行使可能となっております。

2.上場日翌日から2年後の2023年4月23日より行使可能となっております。

3.上場日翌日から3年後の2024年4月23日より行使可能となっております。

4.上場日翌日から4年後の2025年4月23日より行使可能となります。

5.上場日翌日から5年後の2026年4月23日より行使可能となります。

6.上場日翌日から6年後の2027年4月23日より行使可能となります。

7.上場日翌日から7年後の2028年4月23日より行使可能となります。

8.上場日翌日から8年後の2029年4月23日より行使可能となります。

9.上場日翌日から9年後の2030年4月23日より行使可能となります。

10.上場日翌日から10年後の2031年4月23日より行使可能となります。

 

 

(19) 大規模自然災害、感染症の伝染及び有事について

地震、台風及び津波等の自然災害、火災、停電、感染症の伝染並びに戦争及びテロ攻撃等が発生した場合、当社グループのサービスや業務に従事する従業員、業務委託先の従業員、派遣社員が大量に罹災・罹患することや、政府における非常事態宣言や外出禁止等の措置に伴う業務の制限、地震等による当社設備の損壊等により、当社グループのサービス提供、その他事業運営に影響が生じ、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、大規模な自然災害等が発生した場合、当社グループのお客様の事業の中断や休止等並びに求職者の転職活動の休止等の二次的影響が生じ、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度の我が国経済は、個人消費等の持ち直しに足踏みが見られながらも緩やかに回復しています。しかしながら、世界的な金融引締めに伴う高い金利水準の継続に伴う影響、中国経済の先行き懸念、中東地域の情勢、及び継続的な物価上昇圧力に伴う世界経済の下振れが景気下押しリスクとなっており、先行きは依然として不透明な状態にあります。このような状況の中、当社グループにおいては、企業の求人意欲の継続を背景に、当連結会計年度においてもビズリーチ事業がグループ全体の業績をけん引する結果となりました。

この結果、当連結会計年度の実績は、売上高は66,146百万円前年同期比17.5%増)、営業利益は17,837百万円同34.9%増)、経常利益は18,476百万円同28.5%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は12,990百万円同30.8%増)となりました。

 

(ⅰ)HR Tech

HR Techセグメントは『ビズリーチ』、『HRMOS』及びその他のHR Techサービスで構成されています。

ビズリーチ事業においては、引き続きプロフェッショナル人材領域の人材需要の強さや、積極的な広告宣伝活動の結果として、当連結会計年度末時点で、累計導入企業数(注1)は31,700社以上(前連結会計年度末26,200社以上)、年次利用中企業数(注2)は16,000社以上(同13,400社以上)、利用ヘッドハンター数(注3)は7,800人以上(同6,600人以上)、スカウト可能会員数(注4)は258万人以上(同214万人以上)となり、全ての指標で、前連結会計年度末比で成長し、ビズリーチ事業の売上高は57,776百万円前年同期比17.5%増)、管理部門経費配賦前の営業利益(注5)は23,331百万円同15.9%増)となりました。

HRMOS事業においては、新規機能の開発のためのプロダクト開発を継続しつつ、利用顧客の拡大のための営業活動等を行っております。2024年7月には、『HRMOS』の新シリーズとして、労務・給与システム『HRMOS労務給与』を提供開始しております。『HRMOS労務給与』は、労務や給与に関する業務を効率よく処理するための機能を提供するクラウドシステムであり、『HRMOS』シリーズの各機能・サービスとのシームレスな連携により、労務や給与に関するさまざまな業務の効率化を実現し、ヒューマンエラーを防ぎます。

『HRMOS採用』及び『HRMOSタレントマネジメント』両サービス合算のKPIについては、ARR(注6)は前年同期末比29.8%増の2,777百万円、利用中企業数(注7)は同25.9%増の1,947社、ARPU(注8)は同3.1%増の118,878円となり、12か月平均であるChurn rate(注9)は0.60%となりました。

この結果、HRMOS事業の売上高は3,844百万円前年同期比76.0%増)、管理部門経費配賦前の営業損失(注5)は1,021百万円前年同期は1,740百万円の管理部門経費配賦前の営業損失)となりました。

これらの結果、HR Techセグメントの当連結会計年度のセグメント売上高は63,791百万円前年同期比18.8%増)、セグメント利益は20,062百万円同27.8%増)となりました。

 

 

(注)1.『ビズリーチ』を導入した累計企業数、ヘッドハンターを除く

2.会計期間中に1日以上の利用がある直接採用企業数

3.株式会社ビズリーチによる審査を経たヘッドハンター数

4.『ビズリーチ』会員のうち、「採用企業への職務経歴書公開設定」を公開にしている、又は「ヘッドハンターへの職務経歴書公開設定」を公開にしている会員数

5.経理、法務、人事機能等の経営管理に携わる人件費や付随する外注費等の費用及び、情報システム部門やデザイン部門のうち直接製品に費用を賦課することの出来ない人件費や付随する外注費等の費用を事業に負担させる前の事業の営業利益又は損失

6.Annual Recurring Revenueの略称。各四半期末の月末のMRR(Monthly Recurring Revenueの略)を12倍して算出。MRRは、対象月末時点における継続課金企業に係る月額料金の合計額(一時収益は含まない)

7.『HRMOS採用』及び『HRMOSタレントマネジメント』のサービスを利用するユニークな有料課金ユーザー企業数

8.Average Revenue Per Userの略称。月末時点のMRR÷利用中企業数

9.当月の解約により減少したMRR÷前月末のMRRを単月Churn rateとし、その直近12か月平均

 

(ⅱ)Incubation

Incubationセグメントは『トラボックス』、『M&Aサクシード』、『BizHint』、『yamory(ヤモリ―)』、『Assured(アシュアード)』等で構成されています。なお、2023年12月1日付で当社の連結子会社であった株式会社ビズヒントの全株式を譲渡したことに伴い、BizHint事業を連結の範囲から除外しております。

Incubationセグメントの各事業については、HR Techセグメントより生み出される利益の範囲内で人材投資、新規プロダクト開発、広告宣伝活動等を行っており、当連結会計年度のセグメント売上高は2,219百万円前年同期比9.8%減)、セグメント損失は1,020百万円前年同期は1,401百万円のセグメント損失)となりました。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末における総資産は76,314百万円で、前連結会計年度末に比べ18,440百万円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が16,936百万円増加し、58,107百万円となったこと、売上高が伸長したことにより売掛金が602百万円増加し、5,753百万円となったこと、建物が523百万円増加し、895百万円となったこと等によるものであります。

当連結会計年度末における負債合計は23,926百万円で、前連結会計年度末に比べ5,181百万円の増加となりました。これは主に、ビズリーチ事業において、利用企業数が伸長したこと等により未経過分の契約負債が1,756百万円増加し、8,615百万円となったこと、未払金が2,311百万円増加し、6,246百万円となったこと、未払法人税等が1,250百万円増加し、4,310百万円となったこと等によるものであります。

当連結会計年度末における純資産は52,388百万円で、前連結会計年度末に比べ13,259百万円の増加となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が12,990百万円増加したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は58,107百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益18,928百万円、契約負債の増加1,756百万円、未払金の増加1,543百万円、法人税等の支払いによる支出3,761百万円等により、全体として18,369百万円の収入となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産の取得による支出930百万円、敷金の差入による支出666百万円等により、全体として1,712百万円の支出となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは新株予約権の行使による株式の発行による収入286百万円、長期借入金の返済による支出8百万円等により、全体として279百万円の収入となりました。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、受注状況の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度おける販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

HR Tech

63,791

118.8

Incubation

2,219

90.2

合計

66,010

117.6

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.上記の他に不動産賃貸収入等が135百万円計上されております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、判断時には予期し得なかった事象等の発生により、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

(のれん及び顧客関連資産の評価)

当社グループは、のれん及び顧客関連資産について、その効果の発現する期間にわたって均等償却しております。また、その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、当該事業計画等の仮定に変動が生じることで、将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合は、減損損失として計上する可能性があります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の状況の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は66,146百万円前年同期比17.5%増)となりました。主な内訳としては、ビズリーチ事業が57,776百万円同17.5%増)、HRMOS事業が3,844百万円同76.0%増)と伸長しております。

ビズリーチ事業においては、引き続きプロフェッショナル人材領域の需要の強さや、積極的な広告宣伝活動の結果として、2024年7月期末の利用中企業数は16,000社以上と2023年7月期末の13,400社以上に比べ増加いたしました。また、スカウト可能会員数は258万人以上同44万人増)となり売上の伸長に寄与いたしました。

HRMOS事業においては、積極的な顧客開拓により、利用中企業数は1,947社同401社増)となりました。12か月平均のChurn rateは0.60%となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

売上原価は5,718百万円前年同期比1.7%減)となり、売上高の増加に伴い、売上総利益は60,428百万円同19.8%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は42,591百万円前年同期比14.4%増)となりました。人員の拡大等に伴う人件費等の増加やビズリーチ事業の広告宣伝費の増加を上回る売上総利益の増加の結果、営業利益は17,837百万円同34.9%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

営業外収益は持分法による投資損益や違約金収入等により657百万円、営業外費用はコミットメントフィー等により18百万円となり、この結果、経常利益は18,476百万円前年同期比28.5%増)となりました。

 

(特別利益、特別損失、親会社株主に帰属する当期純利益)

特別利益は子会社株式売却益等により486百万円となり、税金等調整前当期純利益は18,928百万円前年同期比31.7%増)となりました。また、法人税等を5,933百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は12,990百万円同30.8%増)となりました。

 

b.財務状況の分析

財務状況の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に含めて記載しております。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの主な資金需要は、営業活動にかかる広告宣伝費や人件費です。必要な資金は主に営業活動によって得られるキャッシュ・フローにより調達しております。また、運転資金については、当社及び連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、グループ内資金を当社が一元管理しております。各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針に関して

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

 当社グループは、人的資本データプラットフォームの構築に向けたHRMOSの追加機能開発のための研究開発に力を入れています。また、市場変化に迅速に対応し、時代がもたらす様々な課題を解決する、より魅力あるサービスを提供するために研究開発活動を行っております。

 上記活動に伴い、当連結会計年度の研究開発費は8百万円となりました。