第3【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

<ビジョン>

・エンド・ツー・エンドのソリューションと高度に持続可能な(サステナブルな)材料を提供することで、全てのお客様に選ばれるワールドクラスなパートナーになります。

 

<ミッション>

・お客様、サプライヤー、パートナー、エコシステム全体のネットワークで当社のノウハウを最大限に活用します。そして、エンド・ツー・エンドのソリューションを提供することで価値を創造し、お客様の革新的な製品の設計と市場投入までの時間を飛躍的に短縮することを可能にします。

・お客様のニーズに応じた特注の材料を作るために、持続的に研究開発への投資を行っていきます。

 

上記の目的を達するため、当社グループは、最終顧客(ブランドメーカー)、サプライヤー、パートナーと連携しネットワークを構築することが必要と考えています。そして、当社のノウハウを最大活用し、短期間で顧客が要請する製品開発を実現できるようにソリューションを提供し続けることを事業ミッションに掲げ、顧客の要求水準を実現する高機能エンジニアリング・プラスチックの開発に向けた研究開発を続けています。

 

(2)経営戦略及び重要課題

<成長戦略>

当社グループは、現在進行中の中期経営計画の経営管理目標の達成及び重要な課題を解決するため、以下の4つの戦略を採用しています。

 

①技術と市場の多様化に対応するための機能の強化

技術のパイプラインと製品開発を強化するために、2つの取り組みを実施しました。それは、当社「エンジニアリング・センター」の設立とSmall World Accelerator(SWA)への投資です。SWAへの投資は、当社グループが先端材料やフォトニクスの技術を持ったスタートアップ企業を支援することが可能になりました。現在までに医療、電子機器及び電気自動車の分野で利用できる可能性のある3つの新興企業を支援しています。

 

当社エンジニアと提携する各種研究機関の材料科学者とのネットワーク及び連携により、当社の製品は開発され、技術開発能力は培われています。

 

当社隣地に設置されたエンジニアリング・センターは、材料プロトタイピング、品質評価・解析、社内の材料データベースなどの機能を開発するプラットフォームとしての機能を有しています。例えば、例えば、熱管理用の先進材料、使用済(PCR)のリサイクルポリマーを使用した持続可能な材料、農業廃棄物を利用したバイオ複合材料などの新素材を開発しています。

また、当社には山形大学(AIカラー・フォーミュレーション)やA*STAR等の研究機関との共同プロジェクトがあります。

 

②M&Aと戦略的パートナーシップによる成長

当社は、過去の企業買収・統合により、顧客ネットワークの拡充や医療、建設等の産業分野への展開といった製商品供給先の多様化に成功しました。また同時に規模拡大による収益性の向上や、東南アジア地域における事業基盤の拡大も実現しています。

具体的な成果につきましては、「第2 企業の概況 2 沿革」に記載のとおりです。

 

当社グループの営業・マーケティング・R&Dチームは、当社グループの製商品とプロセスに関する豊富な知識で顧客と緊密に連携して、顧客の製品仕様にマッチした製品の調達や製品の開発に取り組んでいます。また、電気自動車(EV)業界に特化した専用の素材を開発し、現在評価を行っています。

 

当社の株主である伊藤忠グループはEV関連企業への投資を積極的に行っており、特に電気自動車の生産が急増している中国を中心に投資を行っています。当社はこの伊藤忠グループとの戦略的パートナーシップを活用して、伊藤忠グループが投資したスタートアップ企業に対するビジネスを行っていきます。

 

③デジタル化の推進

当社グループの業務のあらゆる側面を効率化し、競合他社との差別化を図るため、デジタル化を推進しています。当社グループのデジタル化計画は、以下の事業目的とメリットを実現するために重要なものとなっています。

・データの整合性とセキュリティのコンプライアンスと制御。

例としましては、データ取得と保持の精度を保護及び改善するためのシステムのアップグレードなどが含まれます。

・経営陣の意思決定と製造現場の業務管理の意思決定両方の効率性の改善。

・最終的に会社のスピードと競争力を向上させるスマートなシステムとプロセスの採用。

 

④顧客重視の長期的な関係

当社グループの顧客は、中堅企業から大規模なグローバル多国籍企業にまで及んでいます。また、当社グループでは当社の技術革新や品質向上、その他顧客からの要請に適宜応対して、複数の重要顧客との関係を強化・維持しています。

当社グループの製商品とサービスの多様なポートフォリオは、バリューチェーンのさまざまなステークホルダーの進化する要求に応える当社グループの能力を意味します。当社グループは常に最終顧客(ブランドメーカー)に焦点をあてた意思決定を行い、効果的なソリューションを提供することで信頼されるパートナーとなることを目指しています。

 

<成長分野>

当社グループの主な製商品であるエンジニアリング・プラスチックの需要は、世界経済の成長率に応じて成長してきました。今後の成長を牽引するのは、1)5Gに代表される情報技術と通信分野、2)電気自動車に代表されるモビリティー用途、3)建設及び建築分野、の3分野とみられています。当社グループは中長期的にこれら3成長分野へ積極的に取り組んでまいります。また、環境問題に対しても、廃棄物回収・リサイクル技術を活用した活動やプラスチック代替材料の開発を推進しております。既に再生リサイクルポリマーのいくつかのグレードを開発しており、現在、家電製品分野の顧客によって評価されています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

サステナビリティに関する考え方

当社グループは、以下のとおり「コアバリュー:サステナビリティ」を制定しており、2つの観点からサステナビリティに向けた活動に取り組んでいます。

 

<SUSTAINABILITY333>

1.私たちは、事業を展開する国の良き市民として、社会、法律、地域社会、環境の各分野において、一貫した成長を管理しています。

2.私たちは、持続可能性素材の使用をサポートするプロセスを採用し続けます。

 

また、「高度で持続可能な(サステナブルな)材料を提供すること」を経営ビジョンに掲げており、さらにミッションとして「お客様、サプライヤー、パートナーとのネットワークとエコシステム全体でOPSのノウハウを最大限に活用したエンド・ツー・エンドのソリューションを提供すること」を掲げております。すなわち、「持続可能な社会への貢献」を経営戦略の最重要課題と認識しています。

 

具体的な取組

(1)ガバナンス

当社グループは、「コアバリュー:サステナビリティ」に基づいて、持続的成長と中長期的な企業価値向上を図るとともに、株主、従業員、取引先、末端顧客、地域社会等のステークホルダーに対する社会的責任を果たすため、経営の更なる効率化と透明性の向上、業務執行の監督機能強化等のコーポレート・ガバナンスを最重視しています。このため、株主総会、取締役会、各委員会の運営を徹底するだけでなく、内部統制システムの整備・運用を充実させることによって、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組み、投資家の皆様への公平・公正な情報開示に努めています。詳細は、下記「第5 提出会社の状況 3 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご覧ください。

 

サステナビリティに関する具体的な取組みとしましては、サステナビリティをめぐる様々な課題への迅速な対応を図ることとガバナンス強化のため、2023年4月1日付にて常務取締役のRegina Tay Wee LianをCSO(Chief Sustainability Officer)に任命しました。また、2023年6月1日付にて独立社外取締役の加藤 一真を指名委員会及び報酬委員会の委員に登用いたしました。

 

(2)戦略

当社グループは、特に研究開発、環境/気候変動対策及び人的資本の3つのマテリアリティに関する戦略を推進しています。

 

研究開発

①エンジニアリングセンターにおいて、代替・高機能新素材を研究し、革新的手法で開発

②シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)をはじめとする研究機関と積極的に連携し、新規素材の共同開発を推進

 

・環境/気候変動対策

①将来的に太陽光等の非化石燃料代替エネルギーの利用可能性を検討

 

人的資本

① 人材の獲得と育成

当社グループは、優秀な人材の獲得と維持を重視しています。当社グループの人材獲得プロセスでは、多様なスキル、経歴、経験を持つ人材を発掘しています。当社グループは、公平で偏りのない採用活動を徹底し、全ての候補者に平等な機会を提供しています。継続的な成長を促し、従業員の能力を向上させるため、研修プログラムや専門能力開発イニシアチブに投資しています。従業員の能力開発へのコミットメントの一環として、当社はシンガポール・ポリテクニック(SP)と共同で「企業と労働力の変革(CWT)プログラム」に参加しました。このプログラムは、会社の目標やゴールと従業員のスキルを一致させ、スキルギャップを特定し、改善のための提言を行うものです。

また、潜在的なリーダーを育成し、効果的なリーダーになるための知識とスキルを身につけさせることを目的とした、ニューリーダーズトレーニングプログラムにも投資しました。

こうした取り組みにより、従業員は、ダイナミックなビジネス環境に適応し、会社の成功に効果的に貢献するために必要なスキルを身につけることができます。

 

② ダイバーシティ&インクルージョン

当社グループは、ダイバーシティ(多様性)の価値を認識し、インクルージョンを高める職場環境を積極的に推進しています。性別、年齢、民族性など、あらゆる形態のダイバーシティ(多様性)を受け入れています。従業員の54%が女性であり、また11カ国の国籍の従業員で構成されていることから(マレーシア人の割合が45%と最も高い)、組織内で革新性、創造性など幅広い視点を育んでいます。

 

③ 従業員に強固なシステムを提供

サーキットブレーカーの経験を踏まえ、当社グループは従業員がオフィス勤務と在宅勤務を容易に切り替えられるようにするため、ITインフラを引き続き監視し、改善していきます。また、当社グループでは、従業員をデジタルに精通させ、市場での競争力を維持するためのテクノロジーの重要性を理解させるため、従業員の変革とスキルアップの計画を引き続き加速させていきます。この変革をサポートするため、当社グループは、バーチャル会議の頻度を増やし、バーチャル・コミュニケーション・ツールを活用して会社の方向性を伝え、従業員のエンゲージメントを高めてきました。さらに、第三者機関や高等教育機関と協力し、従業員がさまざまな研修コースを受講できるようにしました。例えば、従業員は、シンガポール・ポリテクニック・マイクロ・ラーニングを通じて、高度な製造業におけるIoTに関するスキルを学び、習得することができます。さらに、従業員は、NTUCラーニング・ハブが提供する幅広い研修コースを利用することができ、継続的に技能開発や知識を拡げることができます。

また、ソフトウェアの更新やハードウェアのアップグレードにも投資しており、現在、新しい

ERPシステムへ移行するための従業員へのトレーニングも行っています。

 

(3)リスク管理

現時点では、当社グループでは、サステナビリティ関連のリスクとして、「研究開発体制」、「環境規制」、「災害等による影響」、そして人的資本リスクとして、「優秀な人材の確保、及び従業員の流出による事業遂行への影響」を想定しています。来期は、「環境」「社会」「ガバナンス」の3つの柱で、リスクの絞り込みを行います。

これらのリスクの分析に加えて、CSO(Chief Sustainability Officer)率いるチームが、リスク・コンプライアンス・サステナビリティ委員会と協力して、新たな持続可能性関連のリスクを特定し、それに対処するための対策を講じます。CSO(Chief Sustainability Officer)が率いるチームは、これらのリスクに対する対応方法について報告し、リスク・コンプライアンス・サステナビリティ委員会に提言を行います。

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、国連の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)に従い、2030年までの持続可能な開発目標として以下の3点を設定しています。

 

 

人的資本については、現時点では、グループ全体での具体的な目標は設定しておりません。今後、当社グループを取り巻く環境を踏まえて、必要かつ有用な指標等の検討をすすめてまいります。なお、2024年3月末現在の当社グループの人的資本に関する補足データは、以下のとおりです。

 

性別

(%)

女性

男性

54

46

 

年齢構成

(%)

25歳未満

25歳~34歳

35歳~44歳

45歳~54歳

55歳以上

10

37

28

18

7

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項を以下に記載しています。あわせて、必ずしも当社グループの事業の状況、経理の状況等に該当しない事項についても、投資家の判断にとって重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しています。なお、本項の記載内容は、当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において入手し得る情報に基づいて当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。

 

(1)事業及び事業環境に関するリスク

①当社グループの事業について

当社グループは、エンジニアリング・プラスチックを主な製商品として、家電製品、OA機器、自動車部品、医療業界向けに事業を推進しています。また、より付加価値の高いエンジニアリング・プラスチックの拡販や、マイクロ・モーター、磁性材料等の新しい市場への展開を推進しています。このため、昨今の多国間の貿易摩擦や、需給バランスの変動による市場変動、消費者需要等に著しい変動が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②市場変動に関するリスク

当社グループが取り扱うエンジニアリング・プラスチックは、石油化学製品を主原料としています。石油化学製品は、原油並びにナフサ等の原材料市況並びに需給バランスの要因から、各エンジニアリング・プラスチック毎の固有の市況を形成しており、その市況の変動により、販売価格や在庫評価等に影響を及ぼし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループが販売するエンジニアリング・プラスチックは、家電製品、OA機器、自動車部品等の用途に供されていますが、これら最終製品の価格及び販売動向といった市場変動は、当社グループが販売するエンジニアリング・プラスチックの価格や販売数量に影響を及ぼし、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③特定の取引先や販路拡大及び用途拡充に関するリスク

当社グループのエンジニアリング・プラスチックは、主にASEAN域に進出してきた家電やIT機器等の最終顧客であるグローバルブランドメーカーで使用されています。複数の最終顧客については、顧客の製品の開発初期段階から当社グループも躯体や構成部品の開発に参画しています。このような最終顧客とのビジネスにおいて、各社の事業方針の変更や、米中貿易摩擦をはじめとする国際情勢に起因する事象により変化が生じた場合には、当社グループの事業や経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが販売するエンジニアリング・プラスチック製商品の過半は、家電用途に供されています。販路拡大及び用途拡充に向けて、今後の需要増が見込まれる医療、建材等の特殊化学品、農業等の新しい市場参入や、金属代替需要が期待される自動車分野への拡大を図っていますが、販路拡大及び用途拡充が計画どおりに進まない場合や、売上の過半を占める家電用途の需要が予想外に減少した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④競合について

当社グループが属するエンジニアリング・プラスチックの市場は、多国籍に事業を展開する事業者が複数存在します。当社グループは、開発リードタイムの迅速化等により同業他社との差別化を図っていますが、本市場は技術革新が早く、当社グループの技術的な優位性を維持できない場合には、当社グループの事業展開や、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤研究開発体制について

当社グループは、本社隣地に「エンジニアリング・センター」と称する研究・開発拠点を有し、取引先との共同開発を行っています。研究開発にはA*STARの設備やリソースの活用支援を得ているだけでなく、シンガポール国内企業やシンガポール国内の研究機関とパートナーシップを締結しています。さらに、Enterprise Singapore(シンガポール企業庁;ESG)とも連携しています。

また、日本の山形大学とはプラスチック素材に関する共同基礎研究を行っています。しかしながら、研究開発に想定以上の時間を要し、製品化が計画よりも遅れた場合や、共同研究先との共同研究が途絶した場合、共同研究の内容が技術革新により陳腐化する或いは市場ニーズに合致しなくなった場合、またシンガポール政府機関からの支援が得られなくなった場合には、当社グループの事業並びに、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥品質管理に関するリスク

当社グループでは、エンジニアリング・プラスチックの流通、並びにコンパウンド製造を行っており、当社グループが提供する技術や製品の品質には細心の注意を払っています。しかしながら、重大な品質問題が発生し、顧客・エンドユーザーへの納入遅延や再作業が必要となった場合には、多額の費用負担や損害賠償責任が生じる可能性があり、当社グループのコンパウンド製造等に起因する問題が生じた場合には、製造物責任を負う可能性があります。こうした事態が生じた場合には、当社グループ又は当社グループの製品に対する社会的信用が低下し、当社の事業や経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦生産体制に関するリスク

当社グループでは、マレーシアとフィリピンに生産子会社を設置し、エンジニアリング・プラスチックのコンパウンド製造等を行っています。原材料の調達や製品の出荷における物流に関しては、調達や出荷ルートを複数設置する等、不測の事態が生じた場合でも円滑に代替手段が取れる体制を敷いていますが、当社グループの想定とおりの調達ができない場合や出荷の遅延、電力不足等のインフラ事故やその他サプライチェーンに支障が生じた場合、或いは想定外の法令・諸規則の変更、ストライキ等の生産活動への支障、経済・政治・災害・その他社会的混乱の発生、人件費・物価等の大幅な上昇等が顕在化した場合には、当社の生産体制に影響が生じ、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは生産活動の一部をグループ外事業者に委託していますが、委託先の確保が十分でない場合や、委託先での事故等が生じた場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧M&Aに関するリスク

当社グループは、当社グループの事業に関連する有力な技術や販売ネットワーク等を保有する会社の買収を行っています。今後も、事業の成長を加速させるために有効と考えられる場合や、既存事業との相乗効果が見込まれる場合には、積極的に企業買収等の投資活動を検討していく方針です。企業買収等の投資活動の実施に際しては、業界動向などを慎重に見定め、買収対象企業に対する十分なデューデリジェンスや、事業計画の実現性及び採算性を精査したうえで投資意思の決定を行っていく予定です。しかしながら、市場環境の急激な変化や、買収企業の競争力や収益力の低下、潜在していた法務リスクの顕在化等が生じ、計画通りの投資回収や事業進展が行えなかった場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法令諸規則に関するリスク

①法令及び公的規制の動向と事業への影響について

当社グループは、事業を展開する各国の法令・規制の適用を受けます。適用を受ける法令には、事業の許認可といった一般的な事象をはじめ、関税をはじめとした輸出入規制や、国家安全保障の観点からの輸出制限等の種々の政府規制を受けています。当社グループでは、法令等に対するコンプライアンス体制の強化を図り、法令順守活動に努めていますが、法規制に抵触し行政処分を受けた場合には、事業展開への障害、罰則・罰金等の適用、取引先等からの損害賠償請求のほか、当社グループの社会的信用の低下等が生じ、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 

②環境規制に関するリスク

当社グループは、エンジニアリング・プラスチックを扱っており、製商品の流通及び製品の製造にあっては当社グループの事業地域における環境規制を受ける可能性があるほか、マレーシア、フィリピンでの生産子会社設置に当たっては、廃棄物規制、環境対策等の種々の環境規制の適用を受けています。また、将来にわたって、環境規制や社会的な要求がより厳しくなり、或いはエンジニアリング・プラスチックを用いた製品への要求が厳しくなる可能性があり、当社グループの事業活動に制約が生じ、或いは諸規制に対する対応コストが増加する可能性があります。係る事象に適切に対応できない場合、或いは想定以上の環境対応コストが生じた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③訴訟等に関するリスク

当社グループは、複数国にわたって事業を展開しており、訴訟やその他法的な手続きにより、当局による調査を受ける可能性があります。また、取引先との間で損害賠償等の訴訟が提起される可能性があります。本書提出日現在、当社グループにおいて訴訟、乃至は係争等の事案は生じていませんが、当局からの指導に対する見解相違や、取引先乃至は第三者との間で予期せぬトラブルが生じ、訴訟等に至った場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④知的財産権に関するリスク

当社グループの技術やノウハウを保護し競争優位性を確保するため、当社グループは、知的財産権の確保に努めていく方針です。しかしながら、複数国にわたって事業を展開している中で、地域により知的財産権に対する十分な保護が得られない場合や、これらの地域において第三者による当社の知的財産権を侵害する製商品の販売等が顕在化した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは、知的財産権の保護や侵害に関するリスクをリスク管理項目の対象としてリスク・コンプライアンス・サステナビリティ委員会において対応策を検討し、必要に応じて弁護士と相談したうえで、早急且つ適切な対応ができる体制を敷いています。しかしながら第三者から当社グループによる知的財産権の侵害等が指摘され、訴訟等に至った場合には、当社グループの事業活動、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)財政状態に関するリスク

①会計基準に関するリスク

当社グループは、シンガポールにおいて一般に公正妥当と認められた国際会計基準(IFRS)に準拠する会計基準(FRS)に基づいて連結財務諸表を作成しています。FRSに定められた会計処理の原則や細則に変更・追加・抹消があった場合、当社グループの報告済の経営成績に甚大な影響を与える可能性があり、また変更が発表される前に完了した取引の報告に影響を与える可能性があります。また、新しい会計基準の発効又は既存の会計基準の将来の解釈変更、若しくは当社グループの実務若しくは見積もりにおける変更は、当社グループの収益認識の変更、又は当社グループの経営成績に重大な悪影響を与えうる会計原則の変更をもたらす可能性があります。

 

②取引先の与信に関するリスク

当社グループは、複数の国の取引先に対して信用供与を行っており、信用リスクを負っています。当社グループでは、信用リスクを軽減するために、顧客承認前の与信審査や信用保険契約等の措置を講じていますが、回収不能な売上債権の増加等により保険料が増加する可能性があります。また、信用リスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③棚卸資産の破棄、評価損に関するリスク

当社グループの原材料や製商品等の棚卸資産は、事業の拡大に伴い増加傾向にあります。棚卸資産の管理には細心の注意を払っていますが、市況の急激な変動、製商品の陳腐化、技術革新等により、評価損を計上する可能性があります。これらの事象が顕在化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④固定資産の減損のリスク

当社グループは、生産子会社や研究開発設備等の事業用資産と、過年度に取得した企業ののれん等の固定資産を保有しています。固定資産については適切な評価を行っておりますが、固定資産の損傷や事業活動の悪化が生じた場合には多額の減損処理が必要となる可能性があり、その場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤有利子負債について

当社グループは、資金需要を銀行の貿易金融(注)やタームローン等の借入金でカバーしています。

本書提出日現在、金融機関との取引関係は良好に推移していますが、金利が上昇した場合には、金利負担が増加する可能性があります。また、借入金の一部には財務制限条項が付されています。本書提出日現在、財務制限条項に抵触する事実はありませんが、今後、当該条項に抵触し、適切な対応ができない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(注)貿易金融:インボイス(請求書)を使った短期の銀行借入。仕入先からの請求書の金額を

銀行が支払うことで資金を借り入れるスキーム。

 

⑥為替による影響について

当社グループは、多国籍での事業展開を行っており、国外との販売取引や、仕入等の取引を行っています。為替リスクを軽減するために、決済通貨は原則として米国ドルを使用していますが、為替変動により現地通貨との換算レートの差異が生じる等により為替差損益が生じる可能性があります。

 

(4)会社組織・運営に関するリスク

①海外活動に関するリスク

当社グループの製商品は主に東南アジアの複数の国・地域へ販売されています。また、生産活動は主にマレーシアで行っています。各国・地域への進出には市場、法令、政治・経済状況、人材、インフラ、及び税制等の十分な調査を行ったうえで進出可否を決定していますが、新規進出の国・地域には社会・政治・経済の不安定さ等の潜在的なリスクが内在しています。

当社グループでは当該リスクに対して適切に対応していく方針ですが、現地の規制や社会情勢の変化、予期せぬ慣習等に起因する不測自体が生じた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②特定の人物への高い依存に関するリスク

当社グループの最高経営責任者(「CEO」)であるNeo Puay Keongは、当社の創業者であり、当社設立以来CEOとして経営方針や事業戦略の立案・決定、及び事業推進において重要な役割を果たしています。また、2024年8月29日現在、筆頭株主として38.30%の当社株式を保有しています。また、株主であるD3cube Venture Pte Ltdは、Neo Puay Keongの配偶者かつ当社の常務取締役を務めているRegina Tay Wee Lianが株式の100%を保有しています。両氏の長男である、Daryl Neo Boon YaoとNeo Puay Keong、及び上記1社の所有株式数を合算すると発行済株式総数の66.77%を創業家が保有しています。Neo Puay Keongは、今後も過半数以上の創業家の持株比率を維持する方針です。

当社では、シンガポール会社法に基づく社内意思決定体制を整備するほか、4名の独立社外取締役を任命し、うち2名の独立社外取締役が監査委員会及び指名・報酬委員会の議長を務めています。このように人員拡充による権限移譲を進める等により、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を行い、今後も優秀な人材の確保・育成に努めていく方針です。しかしながら、何等かの理由により、同氏が当社グループの業務を推進することが困難となった場合には、当社グループの事業推進に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは、研究開発・調達・生産・販売・経営管理等のプロセスや部門において優秀な人材の確保に依存していますが、優秀な人材の確保は困難であり、適時適切に優秀な人材を確保できなかった場合や、在籍している従業員が流出した場合には、当社グループの事業遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

③災害等による影響について

当社グループが事業を展開する国・地域において、地震、津波、台風、火山噴火等の自然災害や、感染症の流行、或いは戦争・テロ行為の発生により、当社グループの人員、設備に被害が生じた場合には、当社グループの販売活動や生産活動の停滞、或いは出勤者の確保が困難になること等により、当社グループの事業遂行や経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの災害等によるサプライチェーンの破損や、当社グループ製商品用途の市場における需給変動が生じた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 

④情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、開発、調達、生産、販売及び管理等の業務においてITシステムを使用しており、システムの不具合、外部からのウィルス攻撃及び不正アクセス等によりITシステムに重要な障害が生じた場合には、当社グループの事業遂行に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは、事業活動を通じて、顧客や取引先の個人情報や機密情報を入手することがあり、営業上或いは技術上の機密情報を有しています。当社グループでは、これらの情報についての厳格な管理体制を構築し、情報の取扱い等に関する社内規程の整備や従業員への周知徹底を図る等、情報セキュリティの強化を図っています。しかしながら、顧客情報、個人情報、技術上の情報のほか、会社の重要情報が流出した場合には、事業の遂行に影響が及ぼす可能性があるほか、社会的信用の低下等により、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)伊藤忠商事株式会社との関係について

2024年8月29日現在、伊藤忠商事株式会社は、グループ会社であるITOCHU Plastics Pte. Ltd.を通じて当社の発行済普通株式の25.24%を保有しています。当社は、伊藤忠グループから役員1名を迎え、非業務執行取締役に就任しています。なお当社グループと伊藤忠商事グループとの間の人事交流につきましては、各グループの社内規定や法令(雇用法:Employment Act)等の適用を受けることになります。

当社グループは、伊藤忠グループ内の化学品部門に属しており、伊藤忠グループ各社との間で原料調達や製商品販売等の取引があります。当社に対する伊藤忠商事株式会社の出資が終了した場合には、伊藤忠グループ及び同グループのネットワークを活用した取引先との取引が終了する可能性があり、その場合、これらの取引先との取引金額は仕入れ及び販売全体の約10~15%を占めるため当社グループの事業に悪影響が及ぶ可能性があります。なお、当社グループと伊藤忠グループ会社との間の取引条件は、他の同様の第三者との商取引及び独立した対等な関係での取引と同様に設定されています。なお、本書の提出日現在、当社グループの重要な経営判断を制限するような仕組みはありません。

ITOCHU Plastics Pte. Ltd.との取引金額については下記のとおりです。当社グループは、ITOCHU Plastics Pte. Ltd.より汎用プラスチック樹脂を購入しています。

 

 

2023年3月期

2024年3月期

米ドル

米ドル

ITOCHU Plastics Pte. Ltd. に対する売上

466,136

275,950

ITOCHU Plastics Pte. Ltd. からの仕入

24,292,630

28,468,457

 

当社グループと同様に、伊藤忠グループ内にも合成樹脂を取り扱う会社が存在しますが、当社グループの顧客基盤が伊藤忠グループと異なるため、取り扱う製商品や事業領域が分かれており、当社グループと伊藤忠グループとの間で事業上の競合は発生していません。今後、エンジニアリング・プラスチックを中心とした当社グループは、伊藤忠グループのネットワークを活用した販路拡大等を進めていくとともに、相互に異なる顧客に対するクロスセルや共通の樹脂メーカーからの交易条件の良化・注目度の向上により、両グループが連携してそれぞれの企業価値の向上を図っていくことができるものと考えていますが、当社に対する伊藤忠商事株式会社の出資が終了した場合には、意図した連携を図ることができず、当社グループの事業に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

(6)その他

①配当方針について

当社では、利益配分について経営基盤と財務構造を強化しつつ、安定した配当を継続することを基本原則としています。しかしながら、今後の配当の実施及びその時期については、未定であり、配当が行われない可能性があります。

2023年3月期には、1株当たり0.09米ドルの期末配当を実施しました(権利確定日2023年8月31日)。また、2024年3月期には、1株当たり0.15米ドルの中間配当を実施しました(権利確定日2023年12月28日)。なお、2024年3月期の期末配当(権利確定日2024年8月29日)が、2024年8月28日開催の定時株主総会で承認されました。

 

②Matwerkz Technologies Pte. Ltd.との取引について

Matwerkz Technologies Pte. Ltd.は、熱管理材料の開発を専門とする会社であり、当社CEOは、同社のアドバイザーであります。同社との提携により、当社は、強化すべきと考えている熱管理材料の製品拡充を目指しており、また、同社においては原材料調達について当社を介することで、コストメリットを享受できると考えています。なお、同社の設立には当社のエンジニアリングセンターにも在籍していたLeong氏が関与しており、同氏が同社の取締役に就任していますが、当社と同社には情報及び技術流出を防止する秘密保持契約を締結しています。

上記のとおり、当社は同社との提携による企業価値向上を企図していますが、当該提携が奏功しなかった場合には、当社グループの財政状況及び収益状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社と同社との間にはサービス契約に基づく取引(2024年3月期実績:24,732米ドル)が存在しますが、当該取引の実施に際しては、当該取引が当社グループの経営の健全性を損なっておらずかつ有効であるか、取引条件は、他の独立第三者との取引と比較して同等の条件であるか等に留意して、その取引の事業上の必要性及び合理性さらに取引条件の妥当性について、取締役会において確認の上で意思決定しています。

 

③関連当事者取引について

当社グループにおける関連当事者取引(ITOCHU Plastics Pte. Ltd.を除く。)については、次のとおりです。

会社名

関連当事者との関係

取引の内容

R&P Technologies Pte Ltd

持分法適用会社

原材料の購入、コンパウンド(混合、着色等)品の販売

Omni-Plus System Plastics Co., Ltd

ジョイント・オペレーション

原材料の購入

Hybrid Digital Pte Ltd

CEOのNeo Puay Keongが100%保有

ITサービスサポートの提供、ソフトウェアの提供

Matwerkz Technologies Pte.Ltd.

CEOのNeo Puay Keongが27%保有

熱対策材料の開発

 

上記4社を含む取引額は次のとおりです。

2023年3月期

2024年3月期

米ドル

米ドル

R&P Technologies Pte Ltdに対する売上

7,330,790

5,856,652

R&P Technologies Pte Ltdからの仕入

6,758,624

5,915,608

R&P Technologies Pte Ltdに対する施設使用料

39,077

37,123

Hybrid Digital Pte Ltdからの仕入

35,735

32,468

Hybrid Digital Pte Ltdからのサービス提供

269,361

284,855

Hybrid Digital Pte Ltdからの機器のレンタル

43,641

44,620

Matwerkz Technologies Pte.Ltd.に対する売上

28,596

Matwerkz Technologies Pte.Ltd.からの仕入

30,107

Matwerks Technologies Pte.Ltd.からのサービス提供

24,558

269,263

Matwerks Technologies Pte.Ltd.へのサービス提供

24,413

24,732

Omni-Development Sdn Bhdに対する売上

9,048,281

1,859,213

Omni-Development Sdn Bhdへの資産売却

1,195,725

      注:2023年9月15日、当社グループはOmni-Development Sdn Bhdの株式の99.998%を取得し、同社は   

当社グループの子会社となりました。

 

④JDR(有価証券信託受益証券)について

1.本有価証券信託受益証券保有者には株主の権利がありません。

当社は、法令で定められる場合を除き、本有価証券信託受益証券の保有者を当社の株主として扱いません。したがって、本有価証券信託受益証券の保有者は、法令等(シンガポールの法令等を含む。)又は当社定款により認められる株主としての権利(当社の取締役及び執行役に対して株主代表訴訟を起こす権利を含みます。)を有さず、受益者として授与されるJDR信託契約(当社、委託者としてのみずほ証券株式会社、並びに受託者としての三菱UFJ信託銀行株式会社及び日本マスタートラスト信託銀行株式会社の間で2021年5月25日に締結された受益証券発行信託契約及び発行会社にかかる契約を指します。以下、同じ。)上の権利を有します。また、株主総会における議決権については、本有価証券信託受益証券の受託者に対し指図権を行使することにより間接的に行使することになります。本有価証券信託受益証券の保有者は、株主としての権利を行使するためには、保有する本有価証券信託受益証券を当社の普通株式に交換する必要があり、その際には譲渡課税が発生する可能性があります。

 

2.本有価証券信託受益証券の保有者が株主総会における議決権行使の指図をしない揚合、受託者は、白票の議決権行使を行うこととなり、保有者が当社の経営に影響を与えることができない可能性があります。

原則として、本有価証券信託受益証券の保有者が受託者に議決権行使指図書面を提出しない場合、JDR信託契約に基づき、受託者は、当社の要求に基づき、白票の議決権行使を行います。

白票として行使された議決権は、定足数の充足を確認するための有効投票数に算入されますが、議案に対する賛成票又は反対票のいずれにも参入されません。その場合、保有者は自己の本有価証券信託受益証券の原資産である普通株式の議決権を行使できなくなり、保有者が当社の経営に影響を与えることができない可能性があります。

 

3.会社関係者への株式所有の集中は、本有価証券信託受益証券の保有者の当社の議案に対する影響力を制限する可能性があります。

2024年8月29日現在、当社の創業者であり最高経営責任者(CEO)であるNeo Puay Keongは当社の発行済株式総数の38.30%を所有しております。また、株主であるD3cube Venture Pte Ltdは、Neo Puay Keongの配偶者であり当社の非業務執行取締役を務めているRegina Tay Wee Lianが100%株主です。さらに両氏の長男である、Daryl Neo Boon Yaoの保有する株式を含めると発行済株式総数の66.77%となります。Neo Puay Keong、Daryl Neo Boon Yao及びこの1社は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株式の利益にも配慮する方針を有しております。しかし何らかの事情により大株主である同人の株式の多くが減少した場合には、本有価証券信託受益証券の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.既存株主が将来株式を売却する揚合、本有価証券信託受益証券の価格が下落する可能性があります。

既存株主が、当社普通株式又は本有価証券信託受益証券の相当量を売却する場合又は売却の意図を示す場合、本有価証券信託受益証券及び保有普通株式の取引価格が下落する可能性があります。

 

5.本有価証券信託受益証券の保有者に対して配当を行うことが違法となる揚合又は現実的でない揚合、本有価証券信託受益証券の保有者は当社が普通株式に行う配当その他の対価を受けられない可能性があります。

受託者は、当社が普通株式に対して支払った現金配当その他の配当を、手数料及び費用を差し引いた上で、本有価証券信託受益証券の保有者に支払うことに同意しています。

本有価証券信託受益証券の保有者は、当社の普通株式を原資産とする本有価証券信託受益証券の保有株式数に応じて配当を受け取ります。しかしながら、受託者は、本有価証券信託受益証券の保有者に配当を支払うことが違法である場合又は現実的でない場合、配当を支払う責任を負わず、本有価証券信託受益証券の保有者は配当相当額の支払を受けられない可能性があります。これらの制限は投資家の保有する本有価証券信託受益証券の価値を著しく減じる可能性があります。

 

6.当社の修正基本定款及びシンガポール法の規定は、当社の支配権の移動又は経営陣の変更を抑制し、遅延させ又は妨げる可能性があります。

シンガポール法並びに発行価格決定日までに発効する当社の修正基本定款及び修正付属定款には、株主が有益とみなす当社の支配権の移動又は取締役会の変更を抑制し、遅延させ又は妨げる可能性のある規定が含まれています。それらの規定の中では、

・取締役は、発行済株式総数の過半数の株主の賛成がない限り解任できないと定められていま

す。

・当社の修正基本定款の修正には、発行済株式の総議決権の4分の3以上の賛成が必要となり

ます。

 

株主が株主総会を招集する権限はシンガポール会社法(50条)において制限されており、合計で発行済株式総数の10%以上を保有する2人以上の株主による場合でなければ招集することはできません。

・当社の基本定款には書面決議の方法による株主の行動を許可する条項は含まれておらず、あ

らゆる株主の行動は株主総会において執り行われる必要があるとされています。

・取締役選任の推薦又は株主が株主総会で行うことができる事項の提案は、事前通知の要件が

定められています。

 

これらの規定により、株主は当社経営陣の指名責任を有する取締役会の構成員を交代させることが難しくなり、現在の経営陣を交代させ又は解任しようという株主の試みはくじかれ又は妨げられるかもしれません。

なお、当社は、法令で定められる場合を除き、本有価証券信託受益証券の保有者を当社の株主として扱いません。

上記「本有価証券信託受益証券保有者には株主の権利がありません。」をご参照ください。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、シンガポールにおいて一般に公正妥当と認められるシンガポール財務報告基準(「FRS」)に準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたりましては、経営者による会計方針の選択・適用と、資産・負債の評価などの会計上の判断・見積りが含まれています。これらの見積りについて過去の実績や現状を勘案し、合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。

 

(2)財政状態及び経営成績の状況の分析

・第22期連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

資産

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比較して26.9百万米ドル増加しました。この増加は、主に現金及び現金同等物が34.0百万米ドル、売掛金及びその他の債権(その他の売上債権を含む)が10.8百万米ドル、非流動資産(その他の売上債権を除く)が3.4百万米ドル増加したことによるものですが、棚卸資産が21.3百万米ドル減少したことなどにより一部相殺されています。

棚卸資産の減少は、主に経営陣が仕入れを管理し、手持ちの在庫を顧客に押し出したことと、前連結会計年度末と比較して滞留在庫引当金を0.6百万米ドル追加計上したことによるものです。

売掛金及びその他の債権の増加は、主に前連結会計年度末時点と比較して、当連結会計年度末時点での回収時期が66日から83日と17日増加したことによるものです。

現金及び現金同等物の増加については、主に運転資金への現金支出を前連結会計年度末時点と比較して、減少させたことによるものです。

 

負債

負債合計は、前連結会計年度末と比較して21.9百万米ドル増加しました。この増加は、主に有利子負債が4.8百万米ドル、買掛金及びその他の債務が16.3百万米ドル、未払税金が0.8百万ドル増加したことによるものです。

買掛金及びその他の債務と有利子負債の増加は、前連結会計年度末と比較して貿易金融が増加したことと、当第4四半期における仕入の増加によるものです。

 

資本

資本合計は、前連結会計年度末の70.7百万米ドルから5.0百万米ドル増加し、75.7百万米ドルとなりました。この増加は、主に利益剰余金の増加10.5百万米ドルによるものですが、配当金の支払総額5.1百万米ドル及び為替換算調整勘定の増加0.4百万米ドルにより一部相殺されています。

 

損益計算書

2024年3月期の売上収益は、310.1百万米ドルとなり、前期と比較し5.4%の減収となりました。

売上総利益は、前期の43.4百万米ドルに対し、40.2百万米ドルと7.4%減少しました。また、売上総利益率は、前期の13.2%から13.0%と低下しましたが、これは主に樹脂価格の下落傾向、ジェネリック(汎用)プラスチックとスペシャリティ(特殊)プラスチックのセールスミックス及び市場の競争激化によるものです。

当期利益は、前期の16.4百万米ドルに対し、今期は10.5百万米ドルとなりました。この減少は、主にその他の営業費用、金融費用、税金費用の増加によるものです。

営業費用(販売費、管理費及びその他の営業費用を含む)は、22.8百万米ドルから26.4百万米ドルへと3.6百万米ドル(15.7%)増加しました。この増加は、主にマレーシアリンギットとインドネシアルピアの対米ドル安による為替差損の増加、賃貸料、修理・修繕費用、貸倒引当金及び貸倒費用、事務・専門サービス料、配送・物流コストなどの増加によるものです。

金融費用は、4.5百万米ドルとなり、前期の3.2百万米ドルから38.9%の増加となりました。この増加は、主にシンガポールにおける銀行金利の上昇と銀行の貿易金融枠の利用増加によるものです。

その他の収益は、前期の1.3百万米ドルから3.2百万米ドル(250.2%)増加し、4.6百万米ドルとなりました。この増加は、主に設備・不動産の処分益及び第三者への機械の解体・委託を提供するためのサービス料によるものです。

税金費用は、前期の2.6百万米ドルから46.8%増の3.8百万米ドルとなりました。この増加は、主にシンガポール政府による税制優遇措置の終了による追加の引当金計上によるものです。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析

当社グループは、事業活動のための適切な資金確保及び適切な流動性の維持を図るにあたり、営業活動で得られた資金により設備投資の資金をまかなうことを基本方針としています。当社グループは、手元流動性等の水準から、十分な流動性を確保していると考えていますが、この資金を効率的な拡大再生産に振り向けていくことが経営課題であると認識しています。なお、当社グループは、現在取引している金融機関と良好な関係を築いています。

 

キャッシュ・フロー計算書

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前期末の29.1百万米ドルから34.2百万米ドル増加し、63.3百万米ドルとなりました。また、当連結会計年度末の定期預金額は、20.9百万米ドルとなりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、33.5百万米ドルの収入となりました。運転資本増減考慮前営業利益は、19.8百万米ドルとなりましたが、主に16.8百万米ドルの運転資本の増加と3.0百万米ドルの法人所得税の支払により一部相殺されました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、4.8百万米ドルの収入となりました。主な内訳は、有形固定資産の処分による収入6.8百万米ドル、利息の受取額0.4百万米ドル、子会社取得(取得現金純額)0.4百万米ドルでしたが、有形固定資産の取得による支出3.3百万米ドルと関連会社への出資の増加0.6百万米ドルにより一部相殺されました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、3.7百万米ドルの支出となりました。これは主に有利子負債の返済157百万米ドル、配当金の支払い5.1百万米ドル、利息の支払い4.4百万米ドルによるものですが、有利子負債からの収入163百万米ドルにより一部相殺されました。

 

(4)生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

第21期連結会計年度及び第22期連結会計年度における生産実績は、次のとおりです。

なお、当社グループはエンジニアリング・プラスチック事業の単一セグメントとなっています。

セグメントの名称

第21期連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

22期連結会計年

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

生産高

(USD)

前年同期

生産高

(USD)

前年同期

エンジニアリング・プラスチック事業

 

71,276,013

 

87.7

 

52,755,214

 

74.0

合計

71,276,013

87.7

52,755,214

74.0

 

b.受注実績

当社グループは受注生産を行っていませんので、該当事項はありません。

 

c.販売実績

第21期連結会計年度及び第22期連結会計年度における販売実績は、次のとおりです。

なお、当社グループはエンジニアリング・プラスチック事業の単一セグメントとなっています。

セグメントの名称

第21期連結会計年

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

第22期連結会計年

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

販売

(USD)

前年同期

販売

(USD)

前年同期

エンジニアリング・プラスチック事業

 

327,700,757

 

102.9

 

310,157,176

 

94.6

合計

327,700,757

102.9

310,157,176

94.6

 

(5)経営成績に重要な影響を与える要因について

上記「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(6)課題に対する経営陣の認識及び将来の指針

上記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

5【経営上の重要な契約等】

当社は製品の購入、販売、流通及び研究開発について次の6社と契約を締結しています。

 

2024年3月31日現在

契約会社名

相手方の名称

国名

契約の内容

内容

契約期間

当社

Industrial Polymer Sdn. Bhd

マレーシア

当社製品のインドネシアにおける独占流通販売業者の任命

2019年4月1日から5年間

以後5年ごとの自動更新

当社

R&P(Pte) Ltd

シンガポール

中国を除くアジア太平洋における特殊高分子化合物の製造、流通、販売を行う合弁会 R&P Technologies Pte Ltdの設立及び運営

2017年8月21日から無期限

当社

Matwerkz Technologies Pte. Ltd.

シンガポール

・エンジニアリング・センターのポリマー処理装置とラボテスト施設の使用

・オフィススペース、オフィス機器等の賃貸

・人事、財務、IT業務の受託

2022年12月1日から2025年10月15日まで

当社

国立大学法人

山形大学

日本

機械学習と人工知能を使用したポリマー着色剤

ライブラリの共同研究

2022年1月1日から2023年9月12日まで

(2024年6月30日まで延長)

当社

日ノ出樹脂工業株式会社

日本

日本及び海外の産業用及び消費者向けの高度に持続可能(サステナブル)な製品・素材の開発

2024年1月1日から2027年12月31日まで

当社

BASF

ドイツ

主にPOM(ポリオキシメチレン)樹脂への着色液の配合に関するコンパウンドを受託。将来的には他のエンジニアリング・プラスチックへの供給範囲の拡大も視野

2024年2月1日から無期限

 

6【研究開発活動】

当社は、A*STAR及びその傘下のInstitute of Materials Research and Engineering(IMRE:材料研究・工学研究所)と共同で、研究・開発拠点であるエンジニアリング・センターを設立しました。

 

エンジニアリング・センターは顧客の要求特性と市場のニーズに応じて、オーダーメイドのポリマー材料がカスタマイズされるイノベーション・ハブとしての研究施設であり、そこでは、ポリマー加工機械、材料特性評価機器を使用するとともに、研究開発の人材を採用し、迅速な製品カスタマイズを可能にしています。

 

2024年3月末現在、6名の従業員が研究開発活動を行っています。主な研究開発テーマは、特に自動車、家庭用電化製品セクターで使用される材料向けのグリーン複合材、高温複合材、新規補強材等です。

 

当社グループの研究開発費用は、以下のとおりです。

項目

2023年3月期

(米ドル)

2024年3月期

(米ドル)

研究開発費用

314,682

256,405

 

現在取り組んでいる全11件の研究開発プロジェクトのうち、5件は顧客による評価段階、2件は評価に適した顧客を探している段階、4件はまだ開発段階にあります。また、今後は持続可能な素材の研究開発にも、より一層注力してまいります。