文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社は、「どこまでも、インフラサービスの自由が広がる世界。」の実現をビジョンに掲げ、「インフラストラクチャー・ビジネスの既成概念に挑み、イノベーティブなアイデアで世界中に最適なサービスを提供する。」を果たすべき使命と定め、企業活動を通じて、環境・社会課題の解決にとどまらず、社会そして地球の持続可能な発展に貢献する「総合インフラサービス企業」を目指しています。
「社会・地域の安全安心とサステナビリティ」をバリューとし、当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)共通の価値観を醸成するとともに、企業が果たすべき社会的責任についての理解を共有し企業施策を実行していくことで、ステークホルダーの皆様の理解と共感が得られる開かれた経営に努めます。
また、当社は、ステークホルダーの皆様の権利を尊重し、経営の監督機能と業務執行機能を明確に分離することにより経営の公正性・透明性を確保するとともに、適切な情報開示とステークホルダーの皆様との対話を通じ、良好かつ円滑な関係を維持しながら信頼関係を構築していくことで、共同の利益や長期的な価値を協創し、社会価値の創造に貢献します。
当社は、2021年10月1日に、前田建設工業株式会社、前田道路株式会社及び株式会社前田製作所(以下、総称して事業会社3社といいます。)の完全親会社として設立されました。当社グループ全体として永続的成長を遂げることを目的に、中長期的に目指す姿を「総合インフラサービス企業」と定め、事業会社3社の従来の事業における強みを活かしつつ、事業領域を拡大し安定的に高収益を上げ続けるビジネスモデルへ転換することや、生産性改革に向けたデジタル化戦略、技術開発及び人材育成等の協働推進による経営基盤強化に取り組んでいます。また、実効性のあるガバナンス体制の構築やDXの推進等により迅速かつ適正な経営を実現し、社会変化への対応力を強化することで、「あらゆるステークホルダーから信頼される企業」を目指しています。今後は、社会・地域・お客様とともにインフラの可能性を広げ、最適なサービスを提供していきます。
これらの実現のため、『INFRONEER Medium-term Vision 2024 中期経営計画』『INFRONEER Vision 2030 中長期経営計画』を策定しました。当社及び事業会社3社の「目指す姿」、それを実現するための中長期経営ビジョンの内容は以下のとおりです。
中期経営計画『INFRONEER Medium-term Vision 2024』の概要
Ⅰ.会社概要
Ⅱ.経営環境認識
当社グループをとりまく現状の経営環境については、以下のとおりと認識しています。
・今後、国内の新規建設の請負市場は、財政上の制約から縮小していくと予測
・その解決策として、官民連携によるインフラの維持管理・更新や新規建設の新たな市場が拡大すると予測
・さらにカーボンニュートラルに向けた政策推進により、再生可能エネルギー市場も急速に拡大すると予測
・担い手不足に対して、働き方改革、抜本的な生産性改革の推進が必須
・長期的な企業成長のためには、ESG経営の更なる推進、より高い水準のガバナンス体制が必須
・デジタル技術の急激な進展による社会変化の加速に対し、迅速かつ機動的な経営体制の確立が急務
Ⅲ.我々が目指す姿
当社グループが「目指す姿」は、以下のとおりです。
・外的要因に左右されずに持続的成長を実現するビジネスモデルの確立を目指し、インフラ運営の上流から下流までをワンストップでマネジメントする「総合インフラサービス企業」をグループ全体戦略として強力に推進する
・グループ各社のエンジニアリング力の集結と、積極的なM&Aによる事業領域の拡大により、競争力を早期に最大化し、外的要因に左右されない「高収益かつ安定的な新たな収益基盤」を確立する
・さらに、実効性のあるガバナンス体制の構築やDXの推進等により、迅速かつ適正な経営を実現し、「社会変化への対応力」を強化することで、「あらゆるステークホルダーから信頼される企業」を目指す

Ⅳ.戦略三本柱と重点施策
当社グループが「目指す姿」の実現のために戦略三本柱とそれぞれの主な重点施策の内容は以下のとおりです。
・「生産性改革」:付加価値の最大化、固定費・管理コストの適正化、グループ金融戦略の推進
・「新たな収益基盤の確立」:インフラサービスにおける国内外での地位確立、事業領域のさらなる拡大
・「体質強化・改善」:グループ人材戦略の推進、ガバナンス強化

Ⅴ:経営目標数値
2024年度の目標数値は以下のとおりです。
(注)1.営業利益及び純利益については、国際財務報告基準(IFRS)を基準としており、のれん償却を計上していない数値となっています。
2.自己株式の取得については、2022年4月13日までに、19,180,600株の自己株式を約200億円で取得完了し、そのうち16,225,478株を2022年5月23日に消却しています。
また、中長期経営計画『INFRONEER Vision 2030』において、マルチステークホルダーに対する付加価値分配方針を以下のとおり定めています。
マルチステークホルダーに対する付加価値分配
当社が生み出す付加価値を、社会からの要請に応えつつあらゆるステークホルダーへバランスよく配分することで、付加価値を最大化するサイクルを構築し、持続的な成長を実現していきます。
・人財投資:モチベーション向上や人財の成長や豊かさに繋がる従業員への還元策の推進
・成長投資・恒常的投資:安全で質の高いインフラサービス、M&A、IT・DX投資等への「攻めの投資」と、生産設備投資の最適化や重複資産の統廃合等の「守りの投資」の両輪により、付加価値を最大化
・事業パートナー(連携企業、協力会社など):パートナーのニーズに合わせて付加価値を分配し、競争力の強化、事業領域の拡大、経営の安定化、生産性向上をともに目指し、質の良い供給力・体制を確立
・株主・市場:タイムリーな情報開示や対話といった「定性的な還元」と、配当や資本政策に応じた戦略的自社株買い等の「定量的な還元」により、市場からの信頼を獲得し当社株価の継続的な上昇を目指す
2030年度の目標数値及び2021年度からの配当性向を以下のように定めています。
(注)営業利益及び純利益については、国際財務報告基準(IFRS)を基準としており、のれん償却を計上していない数値となっています。
新型コロナウイルス感染症に関しては、感染拡大の防止策や各種政策の効果により、持ち直しの兆しが見られましたが、新たな変異株の感染拡大の恐れから、収束時期は依然として不透明と認識しています。
引き続き政府の方針等に基づき、顧客並びに従業員等の安全確保と感染拡大防止を最優先に、適切な対応を迅速に実施するとともに、雇用や所得環境など、社会経済活動に与える影響に十分注意していく必要があります。
また、ウクライナ情勢が不透明なことによる原材料価格の高騰や金融資本市場の変動、供給面での制約等による影響にも十分注意する必要があります。
当社グループを取り巻く今後の経営環境を見ると人口減少による税収減、高齢化の進展による社会保障費の増大により、国や地方公共団体の財政が今後ますます厳しくなることが予想されます。その一方で、社会インフラが一斉に老朽化するため、新規建設はおろか、既存インフラの維持管理、更新への投資もままならない状況になると危惧されています。また、生産年齢人口減少の影響によって、担い手不足のさらなる深刻化が起こり、デジタル化への変革、地球環境問題への対応等が不可避であると考えると、建設産業においても従来の価値観が変わり、産業構造そのものが変化していくと考えられます。
著しく変化する環境の中で、私たちはグループ全体が永続的成長を遂げることを目的とし、中長期的に目指す姿をインフラの上流から下流までワンストップでマネジメントする「総合インフラサービス企業」と定めました。現在の中期経営計画「INFRONEER Medium-term Vision 2024」は、中長期経営計画における「成長フェーズ」に向けた「基盤構築フェーズ」と位置付けております。グループ各社のエンジニアリング力の結集と、積極的なM&Aによる事業領域の拡大により、競争力を早期に最大化し、外的要因に左右されない高収益かつ安定的な収益基盤を確立すること及び、実効性のあるガバナンス体制の構築やDXの推進等による迅速かつ適正な経営の実現により、社会変化への対応力を強化することで「あらゆるステークホルダーから信頼される企業」を目指します。
当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項は、四半期に一度開催されるリスク管理委員会において網羅的に洗い出しを行い、リスクの発生頻度と影響度という2つの観点から重要性の高いリスク項目に対して具体的な検討を行っています。なお、リスク項目においては、マイナスの影響のみならず、プラスの影響も含まれることを念頭に、投資判断、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要とリスク管理委員会が判断した事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載を行っています。
また、当社グループにおいては、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、マイナスの影響を与えるリスク発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。なお、以下の記載は当連結会計年度の末日(2022年3月31日)において判断したもので、当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点にも留意が必要です。
(1)経営統合のリスク
当社は、経営統合による効果を高めるため、慎重に議論を重ねながら展開を図っておりますが、当初期待した統合効果を十分に発揮できないことにより、結果として当社グループの財政状態及び業績に重大な悪影響を及ぼすおそれがあります。統合効果の十分な発揮を妨げる主な要因として経営統合により期待されるシナジー効果が十分に発揮されない場合、組織体系の相違等から、合理化等に時間を要する場合、経営統合に伴う経営インフラの整備・統合等により、想定外の追加費用が発生する場合等が考えられますが、これらに限定されるものではありません。
当該リスクに対しては、各事業会社の組織・事業状況などを把握し、密な連携を取りながら進めることでリスクの最小化に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(2)法的規制・コンプライアンスのリスク
当社グループの事業は建設業法、建築基準法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、廃棄物処理法、建設リサイクル法、労働安全衛生法、労働基準法、品質確保法、個人情報保護法、会社法、金融商品取引法等により法的な規制を受けています。
これらの法律の改廃、法的規則の新設、適用基準の変更等により、業績、事業運営等に影響を及ぼす可能性があります。また、内部統制機能が充分に働かずに公正取引の確保や環境汚染等の法令違反、財務報告の虚偽記載等が発生した場合には、営業活動が予定通り実行できなくなることもあり、その際は業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、法令改正等を注視し、社内規程類を適宜改定するとともに、リスク管理委員会の開催や全役職員への各種研修の実施によりコンプライアンス体制の充実に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(3)災害・気候変動リスク
地震、津波、洪水等の自然災害(気候変動によって発生するものを含む)、事故、感染症の流行、テロ行為等が発生した場合、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、BCPの策定及び計画に基づいた訓練の実施による災害発生時の損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図る体制を構築することにより影響の最小化に努めています。また、感染症についても検温や消毒を徹底し拡大防止に努めるとともに、必要に応じて時差出勤やリモートワークといった勤務形態を行うことによってリスクの最小化に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(4)製品・サービスの欠陥リスク
製品・サービスの品質管理には万全を期していますが、万が一欠陥が発生した場合には顧客に対する信頼を失うとともに、契約不適合責任及び製造物責任による損害賠償や対策費用を負担することもあり、その際には業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、品質・環境規程を定め、規程に則り各段階にて検討会を行い、品質管理のPDCAサイクルを実施することで、製品・サービスの品質向上に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(5)経済・財政状況の変化に伴うリスク
当社グループの事業においては、公共投資や民間投資の動向に大きく影響されます。公共投資においては国及び地方公共団体等における財政状況の逼迫による公共工事の削減や、民間投資においては国内外の経済情勢の変化に伴う企業の設備投資計画の縮小・延期等が行われた場合には、工事の受注減や製品の販売減により業績に影響を及ぼす可能性があります。また、土地等の資産を保有しているため、地価等の急激な変動により、減損の必要性が生じた場合には、減損損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、市場動向を注視した利益管理の徹底や製品開発・生産量の調整、安定顧客の獲得、技術開発による環境配慮型製品の展開や新規領域への拡大による幅広いニーズの獲得により、リスクの最小化に努めています。また保有資産等については、適正な管理の徹底に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(6)事業戦略のリスク
当社グループは充分な検討を重ねた上でインフラ運営事業の展開を図っていますが、予期せぬ経済情勢の変化やマーケットの急激な変化、気象条件の悪化等により、事業展開が予定通りに実行できない、もしくは進行中のプロジェクトの収益が悪化する可能性があり、契約条項に含まれるリスク分担等により業績への影響を最小限に留めるものの、その程度、時期、影響度はリスク事象ごと、プロジェクトごとに異なります。
当該リスクに対しては、契約段階で、リスクが顕在化した場合のリスク分担をできる限り具体的かつ明確に規定するように努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(7)環境リスク
当社グループが事業を遂行するにあたり、工事現場・工場・研究所におけるCO2排出・騒音・振動・悪臭・粉塵など、社会環境に悪影響を与える重大な問題が発生した場合、当社グループの信用の失墜につながり、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、環境マネジメントシステムを効率的に運用し、継続的改善を行い、地球環境及び社会・生活環境の保全に積極的に取り組むとともに、建設廃材のリサイクル及びエネルギーや天然資源の消費量削減などに向けて、循環型社会形成システムの構築の推進に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(8)情報セキュリティ・ICTリスク
事業活動を行う過程で顧客の機密情報のセキュリティについては細心の注意を払っていますが、万が一保護すべき情報が漏洩した場合には、顧客や社会からの信頼が失墜するとともに、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、DXヘの適応、生産革新、業務の効率性及び正確性の確保のためにICTシステムの充実を図っていますが、想定外の不正な技術等に十分対応できない場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、情報セキュリティ方針に基づき、外部からの不正アクセスの防止、ウイルス対策及び暗号化技術の採用等のセキュリティ対策に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(9)資材調達リスク
災害その他の要因による原材料供給の不足や原材料・原油価格の高騰を請負価格や販売価格に反映することが困難な場合、調達コストの増加や納期の遅延が業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、価格動向のモニタリングによる予測精度の向上に取り組むほか、サプライヤー監査や調達先の多様化に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(10)人材労務に関するリスク
人口の都市部集中と地方の過疎化、少子高齢化に伴う人口減少などにより人材確保が困難になることで、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、過重労働やハラスメントにより従業員等の健康被害等の不利益が生じる他、労働基準法違反等によって行政処分等の対象になることにより、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、多様で柔軟な就業環境の整備、社員研修や福利厚生の充実等により新たな人材の確保を推進することで多様な人材が安心して働ける職場環境の構築に努めています。また、IT・DX等デジタル技術の活用による生産性向上にも努めています。さらに、内部通報やこころとからだの健康相談ができる体制を展開し、ハラスメント等の抑制または早期発見に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(11)金融リスク
金融市場において、予期せぬ経済情勢の変化あるいはマーケットの急激な変化等により、金利の変動または株式の減損の必要が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、自己資本に大きな毀損が生じる場合にも一部の借り入れ取引に付されている財務制限条項に抵触し、期限の利益を喪失する可能性があります。
当該リスクに対しては、市場の動向を注視し、適正な資金調達に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(12)海外事業に伴うリスク
海外での事業においては、予期しない法律、規制、政策の変更、テロ、紛争、伝染病等が発生した場合や経済情勢の変化に伴う、事業の縮小・延期等が行われた場合には、当該事業の損益が悪化する可能性があります。また、外貨建ての資産・負債を有しているため、為替レートの急激な変動により多額の為替差損益が発生した場合には、営業外損益が大きく変動する可能性があります。
当該リスクに対しては、契約時における厳格な審査、平時からの情報収集、予防策の拡充等の危機管理機能の強化に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
(13)偶発債務のリスク
発注者や協力会社が法的倒産等に陥った場合、売上代金の回収不能や製品・サービスの提供期間の遅れなどにより予定外の費用が発生することで業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、関係会社の借入金、工事入札・工事履行、ファイナンス・リース、デベロッパーに対するマンション売買契約手付金等に対し債務保証を行っているため、これら関係会社等の債務不履行が発生した場合には、保証の履行を債権者より求められる可能性があります。
当該リスクに対しては、取引開始時の厳格な審査や対象者の経営状況のモニタリングにより早期の情報収集等の与信管理を行い、適切な債権保全策を講じることでリスクの最小化に努めています。なお、その時期、程度、影響度は、実際のリスク事象により異なります。
当社は2021年10月1日に共同株式移転の方法により前田建設工業株式会社(以下「前田建設」という。)、前田道路株式会社(以下「前田道路」という。)及び株式会社前田製作所(以下「前田製作所」という。)の完全親会社として設立されましたが、経営統合以前、前田道路及び前田製作所は前田建設の連結子会社であり、当社の連結範囲は統合以前の前田建設の連結範囲と実質的な変更はありません。ただし、当連結会計年度は、当社の設立後最初のものとなるため、前連結会計年度との対比は行っていません。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における経済状況は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響が、ワクチン接種や各種政策の効果により社会経済活動の制約が徐々に緩和され、一部持ち直しの動きが見られたものの、ウクライナ情勢の影響による世界経済の混乱など、先行き不透明な状況であり、総じて厳しい状況となりました。
建設業界においては、関連予算の執行によって公共投資は比較的高水準で推移致しました。また、民間の設備投資にも持ち直しの動きが見られた一方で、住宅建設は弱含みで推移しました。
このような状況のなかで、2021年10月1日に共同株式移転の方法により、前田建設、前田道路及び前田製作所の3社の完全親会社として当社は設立されました。当社のもとで、当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ。)全体が永続的成長を遂げることを目的に、中長期的に目指す姿を「総合インフラサービス企業」と定め、外的要因に左右されない「高収益かつ安定的な収益基盤」を確立し、実効性のあるガバナンス体制の構築やDXの推進等により迅速かつ適正な経営を実現し、社会変化への対応力を強化することで「あらゆるステークホルダーから信頼される企業」の実現に向けた取組みを行っています。
また、当社は2021年12月16日開催の取締役会において、プライム市場を選択することを決議し、所定の手続きに基づき選択申請を行い、2022年4月4日にプライム市場に移行しました。
当連結会計年度の経営成績は、売上高が6,829億円余、営業利益は374億円余となり、経常利益は380億円余となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、266億円余となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を旧親会社で株式移転完全子会社となった前田建設の当連結会計年度の期首から適用しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」を参照ください。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
建築事業は、集合住宅や事務所ビルを中心とする建設工事及び付帯する事業を展開しており、国内建築工事において大型工事の受注により手持工事高が順調に推移、また当期出来高が堅調であったことなどにより、売上高は2,161億円余となりました。セグメント利益は工事施工における利益向上の取組みなどにより、84億円余となりました。
(土木事業)
土木事業は、橋梁やトンネルを中心とする建設工事及び付帯する事業を展開しており、国内土木工事において大型完成工事の減少等により、売上高は1,426億円余となりました。セグメント利益は、海外工事における係争案件の終結に伴う損失の戻し入れなどにより、146億円余となりました。
(舗装事業)
舗装事業は、舗装工事等の建設工事及びアスファルト合材等の製造・販売を中心に展開しており、売上高については堅調に推移した結果、2,327億円余となりました。セグメント利益は、産油国による協調減産路線の維持とウクライナ情勢の影響による原油価格の高騰により、26億円余となりました。
(機械事業)
機械事業は、建設機械の製造・販売を中心に展開しており、建設機械関連商品の販売等が堅調に推移し、産業機械関連製品の販売等が海外輸出を中心に改善したことにより、売上高は353億円余となり、セグメント利益は16億円余となりました。
(インフラ運営事業)
インフラ運営事業は、再生可能エネルギー事業及びコンセッション事業を中心に展開しており、愛知道路コンセッション株式会社をはじめとする事業会社の業績が堅調に推移したことに加え、太陽光発電事業を2件売却したことにより、売上高は186億円余となり、セグメント利益は60億円余となりました。
(その他)
その他の事業は、リテール事業から建設用資材製造・販売、ビル管理、不動産事業等を中心に展開しており、売上高は374億円余となり、セグメント利益は18億円余となりました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、△163億円余となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、△225億円余となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、152億円余となりました。以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は、前連結会計年度末に比べ229億円余減少し、760億円余となりました。
キャッシュ・フロー指標のトレンド
(注)1.自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。
3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
4.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
5.2022年3月期は営業キャッシュ・フローがマイナスのため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは記載していません。
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建築事業、土木事業では、請負形態をとっているため、生産を定義することが難しく、生産実績及び販売実績を正確に示すことは困難です。
また、連結子会社が営んでいるインフラ運営事業等のように、受注生産形態をとっていない事業もあるため、当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできません。
以上の理由で、生産、受注及び販売の実績を示すことはできませんが、当社グループの受注及び施工等の大半を占める事業会社である前田建設、前田道路の受注及び売上等の実績は次のとおりです。
a.事業会社別受注高・売上高及び次期繰越高
(注) アスファルト合材等の製造・販売に係る金額は含みません。
b.事業会社別受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) アスファルト合材等の製造・販売に係る金額を除いて算出しています。
c.事業会社別完成工事高
(注)1.完成工事のうち請負金額30億円以上の主なものは、次のとおりです。
(注)2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
(注)1.完成工事のうち請負金額30億円以上のものはありません。
2.アスファルト合材等の製造・販売に係る金額は含みません。
d.事業会社別手持工事高
(注) 手持工事のうち請負金額50億円以上の主なものは、次のとおりです。
(注)1.完成工事のうち請負金額30億円以上のものはありません。
2.アスファルト合材等の製造・販売に係る金額は含みません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
Ⅰ.財政状態
当社グループの当連結会計年度の財政状態は、次のとおりです。
a.資産の部
当連結会計年度の総資産は、9,264億円余となりました。
b.負債の部
当連結会計年度の負債は、5,705億円余となりました。
c.純資産の部
当連結会計年度の純資産は、3,558億円余となりました。
Ⅱ.経営成績
当社グループの当連結会計年度の経営成績の状況は、次のとおりです。
a.売上高
当連結会計年度の完成工事高は、3,906億円余となりました。また、その他の事業売上高は、2,922億円余となりました。
b.営業利益
営業利益は、374億円余となりました。
c.経常利益
営業外収益は、40億円余となりました。
営業外費用は、35億円余となりました。
その結果、経常利益は、380億円余となりました。
d.親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益は、84億円余となりました。
特別損失は、19億円余となりました。
法人税等は、147億円余となりました。
その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、266億円余となりました。1株当たり当期純利益は、94.73円となりました。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は「(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
キャッシュ・フローの分析については「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち、主なものは、建設工事の立替資金のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要のうち、主なものは、M&A、設備投資等によるものです。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、長期運転資金の調達については、金融機関からの長期借入・社債の発行、インフラ運営事業については、ノンリコースでの資金調達を基本としています。
なお、当連結会計年度末における有利子負債(リース債務及び公共施設等運営権に係る負債を除く。)の残高は1,934億円となっています。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は760億円となっています。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されています。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
①(公共施設等運営権実施契約)
②(吸収分割契約)
当社は、2021年11月15日開催の取締役会において、2021年12月20日を効力発生日として、当社の完全子会社である前田建設工業株式会社(以下「前田建設」という。)発行に係る社債の管理事業(以下「本事業」という。)に関する権利義務を、吸収分割(以下「本吸収分割」という。)により当社に承継させることを決議し、同年同日付で吸収分割契約を締結しました。
吸収分割契約の概要は以下のとおりです。
(1) 本吸収分割の目的
当社は、2021年10月1日付で、共同株式移転の方法により、前田建設、前田道路及び前田製作所の完全親会社として設立されました。本吸収分割は、当社の完全子会社である前田建設の本事業に関する権利義務を当社が承継することにより、当社グループの社債管理業務を当社に一元化するものです。
(2) 吸収分割期日
2021年12月20日
(3) 本吸収分割に係る割当
本吸収分割は、完全親子会社間での会社分割であり、本吸収分割に際し、当社は前田建設に対して分割対価を交付しません。
(4) 承継する部門の経営成績
当該業務の経営成績に関する記載事項はありません。
(5) 承継する資産、負債の項目及び金額
本吸収分割による継承資産・負債は以下のとおりです。
(6)本吸収分割の当事会社の概要
(注)1. 承継会社は、2021年11月15日付で承継会社の子会社である前田建設及びフジミ工研株式会社が保有する承継会社の株式100,571,964株を取得し、同年11月17日付で取得した当該自己株式のうち100,469,295株を消却しました。
2. 大株主及び持株比率については、2021年10月25日時点の数値となります。
3. 承継会社は、2021年10月1日に設立されたため、最終事業年度が存在しません。
4. 本吸収分割は、2021年12月20日を以って、完了しています。
当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は
(建築事業、土木事業及びインフラ運営事業)
当社グループは、「総合インフラサービス」の実現に向けて、また、多様化・高度化する社会ニーズに対応するため、生産性や品質の向上など、社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。特に最新のICTや自動化技術、AIを駆使した革新的な生産性向上技術、環境・エネルギー関連技術、脱炭素社会に向けた木材資源活用技術、都市インフラ施設の維持管理に関する高度化技術、ICT社会への対応技術などを注力して取り組むべき重要な技術分野として設定しています。
また、技術開発の推進にあたっては、社会環境の激しい変化に対応できる多様性と迅速性が求められる中で、大学や公的研究機関・異業種企業との技術協力や共同開発などのオープンイノベーションを積極的に推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は4,177百万円余であり、主な研究開発成果は次のとおりです。
①ロボットアーム型木材加工機「WOODSTAR」の販売事業を前田建設工業株式会社(以下、「前田建設」という。)と株式会社前田製作所(以下、「前田製作所」という。)で共同開始
前田建設は、既存加工機では困難であった木造非住宅用の大型部材などの加工を可能とするロボットアーム型木材加工機を国立大学法人千葉大学の平沢岳人教授と共同開発しました。前田建設施工案件を中心とする加工実証を経て、このたび2021年10月、商品名「WOODSTAR(ウッドスター)※」として前田製作所と共同で全国のプレカット工場などに向けて販売事業を開始しています。WOODSTARの優位性は大型部材や複雑形状への対応のみならず、急速に普及するBIM(Building Information Modeling)と連携したDX化により、生産性の飛躍的向上を可能とします。前田建設の技術開発力及び木造建築に関する知見と前田製作所の機械製作・販売の豊富な経験という互いの強みを融合し、シナジー効果を発揮していきます。
※ 「WOODSTAR」「ウッドスター」:前田建設、前田製作所が商標登録手続き中です。出願番号:商願2021-115750
②集合住宅向け「床チャンバー空調システム」を超高層ZEH-M(※)の770戸に大規模実装
「床チャンバー空調システム」は集合住宅の多くに採用される二重床空間を冷暖房と換気の給気経路に利用する、前田建設が開発した住戸セントラル空調技術です。新しい集合住宅には「地球温暖化対策と良質な住宅ストック蓄積」が必須との思いのもと、約20年にわたり基礎研究~実大住宅実験~居住実験~施工実験の繰り返しと小規模実装を進め、確かな設計・施工・品質を経済的に提供できる技術・体制を整備しました。
2021年度には、当社設計施工のZEH-M Oriented超高層マンション「プラウドタワー亀戸クロス」(事業主:野村不動産株式会社)に同社商品名「床快full(ゆかいふる)」として770戸に当社開発技術が大規模実装されました。「床快full」は2020年度「グッドデザイン・ベスト100」に選定され、マンションの省エネ・省CO2化を目指す新しいシステムとしてますますの拡充が期待されています。引き続き省エネで良質な住宅ストック蓄積に向けた研究開発を推進します。
※ ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略。省エネと創エネ技術を採用し年間のエネルギー収支を「ゼロ以下」にする住宅のこと。太陽光発電設置面積が限られる中高層の集合住宅では、省エネ性を20%以上高めた「ZEH-M(マンション) Oriented」が増えつつあります。
③空調設備向け空間除菌消臭装置を日機装株式会社と共同開発
前田建設は、2020年12月に大手医療機器メーカーの日機装株式会社と、日機装の持つ深紫外線LED技術(※1)を用いた空間除菌消臭技術「Aeropure(エアロピュア)Technology」を活用する、空調設備向け空間除菌消臭装置の共同開発に関する業務提携契約を締結しています。
本技術の特徴となる深紫外線LEDと光触媒技術の独自の組み合わせにより、世界規模での社会課題となる新型コロナウイルス感染症の抑制・除菌をはじめ、スギ花粉やダニ等のアレル物質除去、料理臭やペット臭等の生活臭の消臭効果が期待できます。2050年には耐薬剤菌による死者数がガンを超える(※2)と言われている中で、深紫外線LEDは未曾有の耐薬剤菌にも有効な感染症対策技術です。また省電力・長寿命・水銀不使用など、環境に優しい技術として、SDGsの面でも注目されています。
現在、空間除菌消臭装置は実装段階に入っており、オフィスビル、技術研究施設や工場の厚生棟及び集合住宅に採用が決定しています。
※1 青色LEDの発明で2014年にノーベル物理学賞を受賞した名城大学の赤﨑教授・名古屋大学の天野教授の指導の下、日機装が2006年から研究開発に取り組み、高出力かつ長寿命の「深紫外線LED」の量産化に成功。
https://www.nikkiso.co.jp/products/duv-led/features.html
※2 「厚生労働省におけるAMRの取組」(オニールレポート)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000189799.pdf
④ICI総合センターの風洞実験模型自動製作装置が日本風工学会技術開発賞を受賞
2019年2月に開所したICI総合センターにおいては風環境実験施設として「大型乱流境界層風洞」を導入しました。風洞実験模型自動製作装置は、大型乱流境界層風洞のターンテーブル部分に設置され、ターンテーブル上に市街地や地形といった模型をGISデータに基づいて自動的に製作する装置となっています。風洞実験模型を簡易に短時間で製作できる画期的な装置として、2021年に日本風工学会技術開発賞を受賞(※1.2.3)しました。また、2022年3月には特許として登録(特許第7033986号)されました。
この装置の活用により、模型製作期間を大幅に短縮することができるようになり、模型を何度も作り替えることが容易にできるので、周辺の変化に対するパラスタが簡単にできるようにもなりました。また、模型が使い捨てでないので、環境負荷を少なく実験が可能になったともいえます。この装置を有効に活用することで、風洞実験の効率化を図り、風工学の発展に寄与できるような研究成果を多く世に出していきたいと考えています。
※1 日本風工学会誌 2021 年 46 巻 4号 p. 400-401
https://doi.org/10.5359/jawe.46.400
※2 日本風工学会誌 2021 年 46 巻 4号 p. 414
https://doi.org/10.5359/jawe.46.414
※3 日本風工学会誌 2021 年 46 巻 2号 p. 209-213
https://doi.org/10.5359/jawe.46.209
⑤振動ローラの加速度応答を利用した現場締固め管理システム(次世代αシステム)
前田建設は、株式会社大林組と共同で開発したICT土工現場締固め管理システム「αシステム」の適用性拡大を図るために、国立研究開発法人土木研究所や株式会社高速道路総合技術研究所など発注者側研究機関との共同研究を進めてきました。国土交通省が推進するi-constructionでは盛土転圧用重機に搭載したICT機器を駆使し盛土施工の効率化と生産性向上を目指していますが、これらの共同研究は転圧回数や撒き出し厚といった施工仕様に限定した現状の管理手法から一歩前進し、盛土の締固め品質(土の密度や剛性、含水状態など)を包括したICT品質管理システムの具現化と本格的なDX化を目指すものです。2020年度~2021年度の2回に渡り国土交通省の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)実証事業にも採択されるなど、新システムの本格的な構築と現場実証を進めています。
⑥環境残留性の高い有機フッ素化合物の熱分解処理技術の開発
前田建設では、これまでに培った環境技術をベースにPFAS類を99.999%分解可能な「可搬型無害化処理装置『De-POP’s』TM」を開発しました。
有機フッ化化合物(PFAS)は、水と油を弾く性質を有する化学物質であり、撥水剤、表面処理剤、消火剤といった日常生活上の多様な用途で用いられてきました。一方、昨今では、PFAS類の生体への有害性が指摘されはじめ、また自然環境中に放出されたPFAS類がその安定性ゆえに、難分解性物質として蓄積し、広範囲に汚染が存在することも顕在化しています。米国バイデン政権も規制強化の方針を公約として掲げており、PFAS類を安全かつ確実に分解する技術が求められています。
前田建設では、当該装置を用いた実証試験を実施し、PFAS類を99.999%分解することに成功しました。今後、PFAS類の課題を抱える国内外への技術投入により、地球環境、地域社会の保全に引き続き貢献していきます。
⑦「建設用3Dプリンタ」の社会実装に向けた共同実証実験を実施
労働力不足が深刻な建設業界における省人化技術として建設用3Dプリンタが注目されており、前田建設は、2020年10月より、建設用3Dプリンティング技術を有するベンチャー企業である株式会社Polyuse(ポリウス)と共同研究を行ってきました。これまでの研究により、造形材料の配合、室内での造形に関する技術やノウハウを蓄積してきましたが、さらに、2021年6月に、屋外での造形が可能であることを検証するために、ICI総合センター敷地内のICI Campにて経年劣化した既設集水桝の更新工事を行い、建設用3Dプリンタにより、雰囲気温度の変動が大きい屋外における新設集水桝の造形に成功し、その出来形や機能に問題がないことを確認しました。
今後は、建設用3Dプリンタの普及に向けた活動にも取り組み、施工の省人化・無人化の実現に向けて貢献していきます。
⑧愛知アクセラレートフィールドにおけるインフラ運営・維持管理技術の実証
2018年8月より開始した愛知アクセラレートフィールド(※)は4年目の活動に入り、引き続きコンセッション事業の運営・維持管理における様々なニーズを募集テーマとして、運営している有料道路をリビングラボと位置づけて新技術実証実験フィールドとして提供し、数多くの実証実験を実施しています。昨年10月には逆走車・誤侵入歩行者防止システムの社会実装を、今年1月には橋梁のUAV点検の社会実装についてHP上で公表したほか、各種の構造物モニタリング技術の実証実験の成果をプロジェクトレポートとしてHP上に公開し、広く社会のために役立ててもらうべく、活動を続けています。
また、それらの成果の活動報告展示会を、2022年1月にオンラインで実施いたしました。これまでの成果を広く周知するとともに、社会的な新技術導入拡大の一助となればと考えています。
※詳細は愛知アクセラレートフィールドのホームページをご確認ください。(https://www.acceleratefield.com/)
(舗装事業)
連結子会社である前田道路株式会社(以下。「前田道路」という。)においては、二酸化炭素等の温室効果ガスの放出による地球環境問題や道路交通騒音・振動等の沿道環境問題への対応、道路インフラの効率的な保全、デジタル技術の活用等、社会及び国民の幅広いニーズに応えるべく、「人と環境に配慮した技術」、「維持修繕の効率化に貢献する技術」、「生産性の向上に寄与する技術」及び「持続可能な社会をつくる技術」を重点テーマにあげて研究開発に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費は
①「人と環境に配慮した技術」に関する研究開発
前田道路ではCO2排出量削減目標を2030年度に2013年度比50%削減、2050年度にカーボンニュートラルを目指しており、その一環として2022年1月より広島合材工場においてアスファルト混合物製造時に排出されるCO2を50%削減した低炭素合材の製造販売を開始しました。アスファルト混合物製造における骨材等の加熱乾燥に用いる燃料を、重油からCO2排出原単位の小さい都市ガスとバイオマス由来のカーボンニュートラルなバイオ重油に変更しました。また、プラントの稼働電力をすべて再生可能エネルギー率100%に変更することにより、アスファルト混合物製造に伴うCO2排出量を50%削減することが可能となり、低炭素合材として販売する運びとなりました。これにより施工会社は当工場のアスファルト混合物を使用することで、スコープ3を大幅に低減することができます。
また、当工場にはアスファルトに少量の水を添加することで通常のアスファルト混合物製造温度を最大30℃低減できるフォームドアスファルト装置(LEAB)があり、この技術を使用することによりCO2排出量をさらに削減可能となります。
②「維持修繕の効率化に貢献する技術」に関する研究開発
Ⅰ.都市部のヒートアイランド現象対策として路面温度上昇抑制効果を有する遮熱性舗装が開発され、2002年度から2020年度までで累計約2.9百万㎡が施工されました。施工は専用機械を必要とするため、施工面積が狭くなると1㎡当たりの単価が高くなる傾向があり、遮熱性舗装のポットホールの補修や占用工事など小規模施工においては遮熱塗料を塗布しない場合もあります。小規模施工において遮熱性舗装を遮熱性舗装で復旧するためには、安価で小面積塗布可能な補修材が必要となります。そのため、スプレー型遮熱塗料を開発しました。これにより、小規模施工に対応可能になったとともに、使いかけのスプレーは長期間保管可能であるためロスなく使い切ることが出来ます。この製品は、2022年4月に販売を開始しました。
Ⅱ.鋼床版舗装の防水層には、一般的にグースアスファルト舗装が用いられています。この混合物は、高温時の流動性を利用した流し込みによる施工のため転圧の必要がなく、ボルトなどの凹凸部や管の裏側等に隅々まで充填することができます。しかし施工には、混合物を240℃程度に加熱するため、特殊な加熱撹拌装置付運搬車が必要となり、さらに安定した加熱撹拌をするためには3t以上の混合物が必要となるため、小規模施工時には多くの材料が廃棄される場合が多く、コスト面を考慮すると不向きな点がありました。前田道路で開発した「マイルドグース」は、単粒度砕石の間隙に特殊バインダを非加熱での流し込み不透水層を形成するものであり、加熱撹拌装置付運搬車が不要となり、少量からの製造及び施工が可能で、余り合材がほとんど発生しないため、小規模施工の際にはコストの大幅な削減が期待できます。また、長期保管できるため、緊急を要する補修作業の際にも対応が可能です。この製品は、2022年上半期に販売を開始します。
③「生産性の向上に寄与する技術」に関する研究開発
Ⅰ.社会インフラとして人々の暮らしに欠かせない道路や建物は、解体後その大部分がリサイクルされていますが、現状、解体時に発生するがれき類の異物は一部(製品としてリサイクルできない金属や木材等)を破砕工場にて手作業で取り除いており、作業環境の改善が課題となっていましたが、前田道路はFUJIのロボット・画像処理技術を活用したAI画像認識による「リサイクル分別ロボット」を導入し、無人で異物除去を行うことにより、リサイクル製品の製造工程における作業環境の改善、労働力不足の解消、品質向上と環境改善を目的とした実証実験を行っています。
Ⅱ. i-Constructionに代表される情報通信技術(ICT)などを活用して建設現場の生産性向上技術の開発に取り組んでいます。
現場作業の効率化として、「建設機械搭載型レーザスキャナを用いた出来形管理技術」が国土交通省の「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に2年連続で選定され、アスファルト舗装への適用やBIM/CIMへ対応など更なる高度化について現場検証を行いました。今後は汎用化に向けて取り組んでいきます。
拡大が見込まれる舗装修繕工事への取り組みとして、古くなった舗装を撤去する路面切削機に対する情報化施工技術である前田道路独自工法「かんたんマシンガイダンス」が国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されました。この技術は前田道路の工事へ積極的に導入するだけでなく、汎用化を図るために大手建機レンタル会社に技術協力を行いました。その結果、大手建機レンタル会社から商品化されて地元業者の方でも使えるようになりました。
舗装工事における省人化は生産性向上のみならず安全性向上にも寄与する重要課題と捉え、作業の機械化など様々な技術開発を進めており実用化に向けた現場テストを重ねています。
④「持続可能な社会をつくる技術」に関する研究開発
アスファルト舗装はほぼ100%リサイクル可能であり、持続可能な社会をつくる技術と言えます。しかしながら、再生アスファルト混合物は1980年代より製造・施工が開始され、その間再生、再々生と繰り返し再生されている状況です。再生回数の増加に伴いアスファルトの劣化が進むため、今現在の再生混合物の品質は一定の水準を確保していますが、今後さらに再生回数が増えると再生混合物の品質低下が予想されます。そのため前田道路では様々な側面から再生混合物の品質向上への取り組みを行っており、その中の1つにWフォームド技術(フォームドアスファルトの性能向上、再生用添加剤へのフォームド技術の適用)があります。本技術は既に実用化に至っており、これにより再生混合物の品質向上が図れています。
アスファルト舗装は持続的再生利用が求められており、今後も更なる品質向上が求められるため、引き続き再生混合物の品質向上に関する様々な研究開発を行っていきます。
(機械事業)
連結子会社である(株)前田製作所においては、自社製品のカーボンニュートラル化に向けた電動仕様の開発及び、現場ニーズに対応した製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。当連結会計年度における研究開発費は
①バッテリー仕様かにクレーンMC305CB-3の開発
弊社では2030年度までに主要自社製品のカーボンニュートラル化を目指しており、2021年度は、バッテリー仕様かにクレーンの第2弾として2.9t吊りのMC305CB-3を開発し発売しました。バッテリーにはリチウムイオン電池を採用することでCO2の排出を抑制するだけではなく、ライフサイクルの面からも環境負荷低減に努めています。
②自走式スクリーンBM545M-3及び磁選機オプションの開発
自走式スクリーンBM545S-2のモデルチェンジ機として特定特殊自動車排出ガス2014年基準値適合エンジンを搭載したBM545M-3を開発し発売しました。また、資源の有効活用のためお客様よりご要望が多かった磁選機オプションを開発し発売しました。
③クローラクレーン地下仕様CC1485G-1の開発
お客様より復刻のご要望が多かった、地下現場での使用に最適化されたクローラクレーンCC1485G-1を開発し発売しました。従来機では一部コンポーネントをパートナー企業より供給を受けていましたが、モデルチェンジ機ではエンジン、足回り、油圧部品ともに自社で設計・選定したものとなっています。
④クローラクレーンCC985S-1・CC1485S-1用マルチアシストビューの開発
クローラクレーンの周囲の安全確認のため、CC985S-1・CC1485S-1用のオプション品としてマルチアシストビュー(全周囲カメラ)を開発し発売しました。
⑤クローラクレーンCC985S-1・CC1485S-1用旋回規制装置の開発
地下、鉄道現場等周囲に制限がある現場での安全作業実現のため、クローラクレーン CC985S-1・CC1485S-1用のオプション品として旋回範囲規制装置を開発し発売しました。
⑥合金微粉末事業の推進
脱炭素社会実現に向け必要とされる省電力機器で使用される接合材は高温度耐用が要求されることから、高額な金、銀が使用されており、これらに代わる合金粉末の接合材が求められています。
当社では、合金微粉末の製造特許取得業者と連携し、均一組成、低酸化の品質を確保した上で大量生産可能な装置を導入し、合金微粉末製造事業を推進しています。
⑦自動化・遠隔制御技術の開発
当社コア技術であるクレーン制御技術とオープンイノベーションにより習得したIoT技術を応用展開し、農場における自動洗浄ロボット制御技術とロボット遠隔管理システムを開発しました。今後は様々な装置への展開、データ解析による新たな付加価値創出を進めていきます。