文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社は、2021年10月1日に、前田建設工業(株)、前田道路(株)及び(株)前田製作所の完全親会社として設立されました。「どこまでも、インフラサービスの自由が広がる世界。」の実現をビジョンに掲げ、「インフラストラクチャー・ビジネスの既成概念に挑み、イノベーティブなアイデアで世界中に最適なサービスを提供する。」を果たすべき使命と定め、企業活動を通じて、環境・社会課題の解決にとどまらず、社会そして地球の持続可能な発展に貢献する「総合インフラサービス企業」を目指しています。
「社会・地域の安全安心とサステナビリティ」をバリューとし、当社グループ共通の価値観を醸成するとともに、企業が果たすべき社会的責任についての理解を共有し企業施策を実行していくことで、ステークホルダーの皆様の理解と共感が得られる開かれた経営に努めます。
また、当社は、ステークホルダーの皆様の権利を尊重し、経営の監督機能と業務執行機能を明確に分離することにより経営の公正性・透明性を確保するとともに、適切な情報開示とステークホルダーの皆様との対話を通じ、良好かつ円滑な関係を維持しながら信頼関係を構築していくことで、共同の利益や長期的な価値を協創し、社会価値の創造に貢献します。

当社は、当社グループ全体として永続的成長を遂げることを目的に、中長期的に目指す姿を「総合インフラサービス企業」と定め、事業会社の従来の事業における強みを活かしつつ、事業領域を拡大し安定的に高収益を上げ続けるビジネスモデルへ転換することや、生産性改革に向けたデジタル化戦略、技術開発及び人材育成等の協働推進による経営基盤強化に取り組んでいます。また、実効性のあるガバナンス体制の構築やDXの推進等により迅速かつ適正な経営を実現し、社会変化への対応力を強化することで、「あらゆるステークホルダーから信頼される企業」を目指しています。今後も、社会・地域・お客様とともにインフラの可能性を広げ、最適なサービスを提供していきます。
これらの実現のため、当社設立時に『INFRONEER Vision 2030 中長期経営計画』(以下、中長期経営計画)を策定しています。中長期経営計画において定める当社グループの「目指す姿」、それを実現するための中長期経営ビジョンの内容は以下のとおりです。
①会社概要
②経営環境認識
当社グループを取り巻く現状の経営環境については、以下のとおりと認識しています。
・今後、国内の新規建設の請負市場は、財政上の制約から縮小していくと予測
・その解決策として、官民連携によるインフラの維持管理・更新や新規建設の新たな市場が拡大すると予測
・さらにカーボンニュートラルに向けた政策推進により、再生可能エネルギー市場も急速に拡大すると予測
・担い手不足に対して、働き方改革、抜本的な生産性改革の推進が必須
・長期的な企業成長のためには、ESG経営の更なる推進、より高い水準のガバナンス体制が必須
・デジタル技術の急激な進展による社会変化の加速に対し、迅速かつ機動的な経営体制の確立が急務
③我々が目指す姿
当社グループが「目指す姿」は、以下のとおりです。
・外的要因に左右されずに持続的成長を実現するビジネスモデルの確立を目指し、インフラ運営の上流から下流までをワンストップでマネジメントする「総合インフラサービス企業」をグループ全体戦略として強力に推進する
・グループ各社のエンジニアリング力の集結と、積極的なM&Aによる事業領域の拡大により、競争力を早期に最大化し、外的要因に左右されない「高収益かつ安定的な新たな収益基盤」を確立する
・さらに、実効性のあるガバナンス体制の構築やDXの推進等により、迅速かつ適正な経営を実現し、「社会変化への対応力」を強化することで、「あらゆるステークホルダーから信頼される企業」を目指す

④戦略三本柱と重点施策
当社グループが「目指す姿」の実現にむけた戦略三本柱とそれぞれの主な重点施策の内容は、以下のとおりです。
・「インフロニアのビジネスモデルに基づく収益基盤の確立」
・「付加価値の最大化」
・「体質強化・改善」

⑤マルチステークホルダーに対する付加価値分配方針
当社が生み出す付加価値を、社会からの要請に応えつつあらゆるステークホルダーへバランスよく配分することで、付加価値を最大化するサイクルを構築し、持続的な成長を実現していきます。
・人財投資:モチベーション向上や人財の成長や豊かさに繋がる従業員への還元策の推進
・成長投資・恒常的投資:安全で質の高いインフラサービス、M&A、IT・DX投資等への「攻めの投資」と、生産設備投資の最適化や重複資産の統廃合等の「守りの投資」の両輪により、付加価値を最大化
・事業パートナー(連携企業、協力会社など):パートナーのニーズに合わせて付加価値を分配し、競争力の強化、事業領域の拡大、経営の安定化、生産性向上をともに目指し、質の良い供給力・体制を確立
・株主・市場:タイムリーな情報開示や対話といった「定性的な還元」と、配当や資本政策に応じた戦略的自社株買い等の「定量的な還元」により、市場からの信頼を獲得し当社株価の継続的な上昇を目指す
2030年度の目標数値及び2021年度からの配当性向を以下のように定めています。
(注)1.上記数値は、IFRSに基づいています。
2.2025年度から2027年度までの3か年を対象期間とする『INFRONEER Medium-term Vision 2027 中期経営計画』においては、中長期経営計画で定めた目標を上回る40%以上を目標としています。
(3) 『INFRONEER Medium-term Vision 2024 中期経営計画』の振り返り
当社は、2021年10月の当社設立に伴い、2024年度までの3年間を対象期間とする『INFRONEER Medium-term Vision 2024 中期経営計画』(以下、前中期経営計画)を策定し、公表しました。
業績については、国内のバイオマス発電事業の動向等に鑑み、予定していた再生可能エネルギー事業の売却を延期しましたが、建築、土木、舗装事業における高水準な受注時利益率の確保、施工管理の徹底、設計変更の確実な獲得により、計画からは未達となったものの、3年間において堅調な成長を達成しています。また、重要指標としていた付加価値額も順調に増加しており、前中期経営計画の最終年度となる2024年度においては、計画を上回る1,777億円となりました。
資本戦略・還元方針に係る計画の達成状況については、日本風力開発(株)の完全子会社化による影響で一部計画未達となったものの、配当性向は増配により30%を上回る水準で推移し、自己株式の取得も目標である累計400億円を早期に達成しました。政策保有株式については、2027年度までに保有ゼロとする目標を新たに掲げました。2024年度においては株式52銘柄を売却(内、29銘柄は保有する全株式を売却。売却金額合計約240億円)する等、政策保有株式の縮減に向けた取り組みを加速しています。
<業績数値> (単位:億円)
(注)1.億円未満を四捨五入して表示しています。
2.計画対比は2024年度(2025年3月期)との比較により表示しています。
3.加算法または控除法により算出します。加算法による場合、事業利益、総人件費、減価償却費、研究開発費の総和により算出される額とします。控除法による場合、売上高から外部購入費用を控除して算出される額とします。
4.親会社の所有者に帰属する当期利益です。
<資本戦略・株主還元>
(注)計画対比は2024年度(2025年3月期)との比較により表示しています。
①経営環境と対処すべき課題
当連結会計年度末現在における当社グループを取り巻く経営環境においては、人口減少による税収減、高齢化の進展による社会保障費の増大により、国や地方公共団体の財政がますます厳しくなる一方で、高度経済成長期に整備された膨大な数の社会インフラが一斉に老朽化していくため、新規建設はおろか、既存インフラの維持管理・更新への投資もままならない状況になると予想されます。また、少子高齢化に伴う生産年齢人口減少の影響による担い手不足の更なる深刻化や、デジタル化への変革、地球環境問題等への対応が不可避であることも考えると、建設産業においても従来の価値観が変わり、産業構造そのものが変化していくと考えられます。
このような社会課題を解決するため、当社は、前田建設工業(株)、前田道路(株)、(株)前田製作所、日本風力開発(株)をはじめとしたグループ各社が有する従来の事業における強みを活かしつつ、グループのシナジーを発揮することが重要と考えています。
当社グループは引き続き、インフラに関わる事業の企画提案、施工、運営・維持管理、再投資等のインフラのライフサイクル全体をマネジメントする「総合インフラサービス企業」への転換に挑戦し、「どこまでも、インフラサービスの自由が広がる世界。」の実現を目指してまいります。
②『INFRONEER Medium-term Vision 2027 中期経営計画』の概要
前中期経営計画における取り組みと成果を踏まえ、当社は、2025年度から2027年度までの3年間を対象期間とする『INFRONEER Medium-term Vision 2027 中期経営計画』(以下、新中期経営計画)を策定し、2025年3月に公表しました。新中期経営計画では、2030年度までを対象期間とする『INFRONEER Vision 2030 中長期経営計画』で掲げている目指す姿の実現に向けて、前中期経営計画での成長を基盤に今後3年間を「投資事業拡大フェーズ」と位置付け、財務規律に則り、バリュー思考に基づく積極的な成長投資を推進します。EBITDAを重要指標として収益力を正確に把握し、特にインフラ事業における持続的成長を目指します。
また、当社は、2021年10月の設立時から機関設計として「指名委員会等設置会社」を採用していますが、経営の監督と執行の機能を明確に分離し、透明・公正かつ果断な意思決定を行うための仕組みであるコーポレート・ガバナンスのあるべき体制をさらに進化させ、未来志向の事業戦略と実行力で企業価値向上と社会貢献の両立を実現してまいります。
ビジネスモデル
当社は、インフラの上流から下流までをワンストップでマネジメントする「総合インフラサービス企業」を目指し、グループ全体が外的要因に左右されずに持続的な成長を実現するビジネスモデルの確立に取り組んでいます。請負事業の強化と脱請負事業の拡大により、成長サイクルの好循環を目指してまいります。

新中期経営計画の位置付け
当社は、新中期経営計画の3年間を、「投資事業拡大フェーズ」と位置付けています。官民連携事業や再生可能エネルギー事業への投資拡大や、請負を活かした新事業の実行、M&Aの更なる推進に注力してまいります。

業績目標
2027年度の業績目標について、以下のとおり定めています。
(注)1.事業利益に減価償却費を加算して算出します。
2.加算法または控除法により算出します。加算法による場合、事業利益、総人件費、減価償却費、研究開発費の総和により算出される額とします。控除法による場合、売上高から外部購入費用を控除して算出される額とします。
資本戦略・還元方針
資本戦略・還元方針について、以下のとおり定めています。資産の効率化と収益性の向上を通じてROEを9.0%まで引き上げるほか、自己資本比率30%以上を維持し、D/Eレシオを1.0倍以下に抑えることで、財務健全性を確保します。また、年間配当金の下限を普通株式1株当たり60円とし、配当性向の目標を前中期経営計画の30%以上から引き上げ40%以上とすることで、安定かつ成長に連動した還元を維持してまいります。
政策保有株式については2027年度までに保有ゼロを目標とし、保有不動産については新中期経営計画期間中に100億円以上の売却を推進します。これらの売却により得られる経営資源を官民連携事業や再生可能エネルギー事業等の成長投資に振り向け、事業領域の拡大と利益の最大化を目指します。

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社は、「どこまでも、インフラサービスの自由が広がる世界。」をビジョン(目指す未来)に掲げ、「インフラストラクチャー・ビジネスの既成概念に挑み、イノベーティブなアイデアで世界中に最適なサービスを提供する。」をミッション(使命)と定め、「社会・地域の安全安心とサステナビリティ」をバリュー(約束する価値)とし、企業活動を通じて、環境・社会課題の解決にとどまらず、社会そして地球の持続可能な発展に貢献する「総合インフラサービス企業」を目指しています。
当社の考えるサステナビリティは、「インフラサービスを取り巻く社会課題の解決に取り組み、自社の成長と企業価値向上に努め、良質なインフラサービスの提供とその社会的価値向上を図り、社会に貢献する企業」を目指す事業活動そのものであると考えています。社会には多数の課題が存在しており、環境課題や社会課題は個別の課題ではなく総合的に考えるべき課題であり、当社グループ全体の事業の中で解決しなければなりません。また、これらの課題解決を確実に推進するために、高度なガバナンス体制を採用し適正なリスクマネジメントを行っています。
当社は、代表執行役社長を議長とし、全執行役及び事業会社担当役員を委員とするサステナビリティ委員会を設置しています。当委員会は、企業価値に影響を与える中長期リスク・機会、社会課題に対し、企業の持続的発展を図るための検討を実施し、当社グループの経営計画に反映することを目的としています。
定期的に当委員会を開催し、サステナビリティ関連の方針、目標の制定・見直しや気候変動シナリオの選定及び移行計画(設備・開発投資)の立案、これらの施策を補完するためのステークホルダーエンゲージメントを行い、当社グループ全体のサステナビリティを推進しています。また、当委員会における検討内容は、定期的に取締役会に報告し、取締役会の監督が適切に行われるよう体制を整えています。
当連結会計年度においては、2024年5月、8月、11月、2025年3月の計4回開催し、主な審議事項は以下のとおりです。

当社の考えるサステナビリティは上記のとおり、当社の事業活動そのものです。
サステナビリティに関する課題及びマテリアリティの特定にあたっては、少子高齢化や財源不足、担い手不足などわが国のインフラが抱える課題や当社グループを取り巻くステークホルダー、バリューチェーンなどの分析を行いました。
課題の抽出・統合・絞込みを行い、マテリアリティとして「安全安心とより快適な社会の創造」、「攻めの環境配慮社会の実現」、「バリューチェーンの強化」、「守りの環境配慮社会の実現」、「価値創造人材と相互尊重」、「ガバナンスの強化」を特定しています。これらのマテリアリティの解決を通じて、事業を通じた社会課題解決及び事業基盤の強化に取り組み、社会の持続的な発展と当社グループの持続的な成長の両立を目指します。
これら6つのマテリアリティは、中長期経営計画の戦略三本柱「インフロニアのビジネスモデルに基づく収益基盤の確立」、「付加価値の最大化」、「体質強化・改善」とも連動しており、それぞれに2030年の中長期目標(達成ビジョン)及びKPIを定め、実現に向けた施策を実行・推進しています。なお、中長期目標、KPI、実績の詳細につきましては、「(4)指標と目標」に記載のとおりです。
マテリアリティ特定プロセスにおいて、事業会社(セグメント)別のサステナビリティに関するテーマについて、抽出・統合・絞込みを行い、29項目の重要テーマに分類し、グループ全体及び事業会社へ及ぼすリスク・機会を検討し重要性を評価しています。特に重要なテーマについては、各マテリアリティに対応するサブ課題として整理しています。
これらサステナビリティに関するリスク・機会に関して、サステナビリティ委員会及びリスク管理委員会において具体的な検討を行い、リスクの低減及び機会の獲得・創出に努めています。
(マテリアリティ特定プロセス)

6つのマテリアリティに対して、サブ課題、2030年の中長期目標(達成ビジョン)、KPIを定め、目標達成に向けて進捗管理を行っています。上記ガバナンスにおいて各指標の進捗状況をモニタリングし、今後の取り組みに反映しています。
マテリアリティ、サブ課題、中長期目標、KPI、2023年度実績は以下のとおりです。
(注)2025年6月23日(有価証券報告書提出日)現在においても、社外取締役比率に変更はありません。なお、当社は2025年6月24日に開催予定の定時株主総会の議案として「取締役7名選任の件」を提案しており、これが承認可決された場合、取締役7名のうち6名が社外取締役(社外取締役比率:86%)となる見込みです。
<気候変動への対応>
気候変動に関する方針・考え方
気候変動は当社グループの重要経営課題の一つであり、官民連携によるインフラの維持管理・修繕・更新や新規建設において、カーボンニュートラルの取り組みが加わった市場がより急速に拡大すると認識しています。当社グループは2050年までにスコープ1、2、3の温室効果ガス(以下、GHG)排出量を「実質ゼロ」とする目標を掲げ、気候変動への取り組みを強化すると共に、エネルギー使用の削減と効率化への取り組みを進めています。また、2030年GHG削減目標を「1.5℃水準」に更新し、2024年11月にSBTイニシアチブより認定を受けました。
当社グループは、気候変動を重要経営課題の一つと認識しています。気候変動に関わる基本方針や重要事項について定期的にサステナビリティ委員会にて検討を行うとともに、取締役会の監督が適切に行われるよう体制を整えています。
当社グループは「2050年カーボンニュートラル」に向け、2030年にGHG排出量の削減目標を2018年度比40%削減としていましたが、取り組みを加速させるため新たな目標を掲げました。2021年度を基準年とし、2030年にスコープ1+2を45.8%削減、スコープ3を25%削減としています。この新たな目標は、2024年11月にSBTイニシアチブより認証を受けています。

2023年度は、ecole(エコール)※1導入推進や再生可能エネルギー積極活用(非化石証書含む)等の取り組みにより、約274万t-CO2※2(前年度より約28万t-CO2減少)となりました。また、目標に対しては、2018年度比でスコープ1+2は29.0%削減、スコープ3(カテゴリー1+11)は42.8%削減となりました。
また、エンボディドカーボン※3を評価する体制を強化し、バリューチェーン全体の排出量削減を進めます。インフラ運営事業でも、サプライヤーやバリューチェーンのステークホルダー間でGHG排出量削減の実効性を高めるための情報交換と共有の仕組みをつくり、環境負荷削減のワンストップサービス構築を目指します。
※1 機械式フォームド技術を利用した低炭素(中温化)アスファルト混合物。
※2 スコープ1、スコープ2、スコープ3(カテゴリー1+11)の合計値
※3 建物の建設・改修・修繕・廃棄・リサイクル等、運用以外で排出されるCO2の総量。
さらに、報告内容に対する信頼性の確保のための取り組みとして、GHG排出量(スコープ1、スコープ2、及びスコープ3カテゴリー1、11)について、(株)サステナビリティ会計事務所による第三者検証を実施しています。今後も第三者検証を有効に活用し、継続的に精度向上に取り組んでいきます。

(4)リスク管理・戦略
リスクと機会の抽出は、当社グループ全体を対象に各事業会社の主管部門を中心に行い、その結果を当社のサステナビリティ推進室で集約し、財務影響分析を行いました。このプロセスに基づき特定した主要なリスクと機会については、サステナビリティ委員会において検討した後、取締役会へ報告し、必要に応じてリスクの緩和・コントロールについて検討します。さらに、この結果は四半期ごとに開催されるリスク管理委員会とも共有し、当社グループ全体のリスク管理体制の中で検討・管理しています。
(5)シナリオ分析の前提
気候変動におけるリスクと機会は、「脱炭素社会への移行の影響(主に政策面)」と「物理的影響(主に自然災害の発生)」に分けることができ、気候変動の緩和が進む「1.5℃シナリオ(進展シナリオ)」、気候変動の緩和が進まず物理リスクが最大化する「4℃シナリオ(停滞シナリオ)」の2つのシナリオで分析を実施しました。各シナリオの前提条件は、各国際機関等が公表している将来的な気候予測等を参照のうえ、短期~中期(2030年まで)、中期~長期(2050年まで)を想定して検討を行っています。


(6)リスク・機会の財務影響評価及び対応策
シナリオ分析によって特定した、主要なリスク・機会の財務影響評価及び対応策は以下のとおりです。



(7)財務影響評価による戦略の強靭性について
本分析の結果、当社グループにおける戦略は、現時点において移行・物理的リスクのいずれにおいても、致命的な影響は見受けられないものと判断しました。
<人的資本への対応>
(1)戦略
当社グループは、請負と脱請負の連携と融合を加速させるため、グループ全体で幅広い観点から多様性を確保し、知恵とアイデアを重ね合わせて挑戦し、共創する人材と組織をつくるという人材戦略のもと、価値創造人材を育て、組織強化を図ることで企業価値向上を実現します。
(中期経営計画グループ人材戦略)

(グループ人材戦略)

人材戦略の実現に向けてエンジニアリング力・地域ビジネス・組織文化の3つの視点に即した多様な人材の計画的な確保と、多様な人材が活躍できる組織づくりの両面から施策を策定しています。人材戦略及び施策の推進により、今ある多様な人材の強みと新たに加わる多様な人材の強みを掛け合わせ、当社グループの目指す姿である「総合インフラサービス企業の確立」を実現します。
なお、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下の「インフロニアグループ ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンポリシー」に定めています。
インフロニアグループ
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンポリシー
■ 前文
インフロニアグループは、「インフラストラクチャー・ビジネスの既成概念に挑み、イノベーティブなアイデアで、世界中に最適なサービスを提供する。」という使命をもち、多様な価値観やライフスタイルを持つお客様の日々の生活基盤となるインフラサービスを提供しています。多様性のある社会においてインフラサービスを提供し続けるためには、多様な価値観、属性、能力等を有し、共創するメンバーの一人ひとりが能力を最大限に発揮し、新たな価値を生み出していくことが必要であり、インフロニアグループは、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進を重要な経営戦略として位置づけ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、以下の方針に基づき取り組みを進めていきます。
■ 方針
1. ダイバーシティを活かす
私たちは、インフラストラクチャー・ビジネスの既成概念に挑むため、今ある多様な強みと新たに獲得する多様な強みを結集し、あらゆる意見とアイデアが溢れ出す、革新的かつ創造的な企業文化を醸成します。
2. エクイティの追求
私たちは、挑戦する一人ひとりに公平な機会が提供され、公正な評価や処遇を実現するための制度や環境を整えます。
3. インクルージョンの推進
私たちは、インフロニアグループに誇りを持ち、自分らしさを発揮できるよう、多様な人財の価値観、属性、能力、ライフスタイル等を尊重します。また、挑戦する一人ひとりの成長と活躍を実現するキャリア形成支援に取り組みます。
4. トレーニングの提供
私たちは、全ての人財とダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの重要性を共有し、企業文化を醸成するトレーニングの機会を提供します。
5. パートナーシップの強化
私たちは、パートナーと共にダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを重視し、企業活動を通してより良い社会を作るための取り組みを推進します。
(2)指標及び目標
当社グループでは上記方針に関する指標として、障がい者雇用率、女性社員雇用率及び女性技能社員雇用率を指標として用いています。当連結会計年度末現在における人的資本に係る目標、指標及び実績は、以下のとおりです。測定可能な目標、指標については順次項目の新設や見直しに取り組んでまいります。
(2025年3月31日現在)
当社グループは、事業運営における多様なリスクを認識し、適切に管理することを重要な経営課題と位置付けています。リスク管理委員会を四半期ごとに開催し、経営層及び各部門の責任者が参加する体制を構築しています。この委員会では、事業活動や外部環境の変化に伴うリスクを網羅的に洗い出し、評価・優先順位付けを行い、重要なリスク項目を特定しています。
さらに、各リスクに対する具体的な対応策を策定し、その実行状況をモニタリングすることで、リスク管理の精度を向上させています。また、リスク要因の相関性を考慮した定期的な見直しを実施し、内部統制との連携を強化することで、全社的なリスクマネジメントを推進しています。
当社グループは、リスク管理において単なるリスク回避に留まらず、リスクを認識した上で適切にリスクテイクを行うことで企業価値の向上と持続可能な成長を目指しています。この取り組みはグループ全体で共有され、すべての事業活動において実践されています。
当社グループは、新たに策定した中期経営計画「INFRONEER Medium-term Vision 2027」において、戦略の三本柱並びに重点施策を策定・推進しており、それに伴いリスク管理の枠組みを強化しました。具体的には、前期までの取り組みを踏まえつつ、 「ガバナンス・コンプライアンス・開示と報告」、「戦略と計画」、「業務運営と経営」の視点から、各重点施策に係るリスクの見直しを行いました。この取り組みにより、事業とリスクの関連や影響をより正確に把握し、発生時には迅速かつ適切な対応が可能となっています。
また、リスク管理プロセスにおいては、各重点施策に関連するリスクを網羅的に抽出し、その中でも特に影響が大きいと判断される重点リスクを特定しています。これら重点リスクについては、リスクの発生可能性や影響度を評価した上で、優先的に対応策を講じており、その内容を以下に記載しています。このアプローチにより、当社グループが直面するリスクの重要性を明確化し、効果的な対応を進めています。
なお、以下に記載する内容は当連結会計年度末日(2025年3月31日)において判断したものであり、当社株式への投資に関するすべてのリスクを網羅するものではありません。実際のリスク事象においては、その発生時期、影響の程度が異なる可能性があるため、これらの点に留意する必要があります。
(リスクの見直し・再評価プロセス)

(各重点施策に関連するリスク)

(注)各重点施策に関連するリスクを○で示しています。また、その中でも特に影響が大きいと判断される重点リスクを◎で示しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果もあり、一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復してきました。一方で、通商政策等のアメリカの政策動向、物価上昇や為替相場の変動等による影響を十分注視すべき状況が続いています。
建設業界においては、設備投資は堅調な企業収益等を背景に持ち直しの動きがみられ、住宅建設は概ね横ばいで推移しており、公共投資はインフラ老朽化対策や国土強靭化の推進等の関連予算の執行により底堅く推移しています。
このような状況の中、当社は、グループ全体が永続的成長を遂げることを目的に、中長期的に目指す姿を、インフラ運営の上流から下流をワンストップでマネジメントする「総合インフラサービス企業」と定め、外的要因に左右されない「高収益かつ安定的な収益基盤」を確立し、実効性のあるガバナンス体制の構築やDXの推進等により迅速かつ適正な経営を実現し、社会変化への対応力を強化することで「あらゆるステークホルダーから信頼される企業」の実現に向けた取り組みを行ってきました。
当連結会計年度の経営成績は、売上高は前期比542億円(6.8%)増の8,475億円、事業利益は前期比29億円(5.7%)減の485億円となり、税引前利益は前期比3億円(0.6%)増の497億円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益につきましては、前期比1億円(0.5%)減の324億円となりました。
※事業利益は、売上高から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除し、持分法による投資損益を加えた、当社の経常的な事業の業績を測る利益指標です。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(建築事業)
建築事業は、集合住宅や工場・物流施設を中心とする建設工事及び付帯する事業を展開しており、国内建築工事において大型工事を含む手持工事の順調な進捗に加え新規工事の受注も伸び、売上高は前期比469億円(17.2%)増の3,206億円となりました。セグメント利益は、期首手持工事の順調な利益率改善と適正な利益を確保した新規工事の受注などにより、前期比96億円(220.5%)増の139億円となりました。
(土木事業)
土木事業は、橋梁やトンネルを中心とする建設工事及び付帯する事業を展開しており、今年度完工案件における設計変更の獲得及び施工効率化・工期短縮により売上高、セグメント利益ともに堅調に推移したものの、前期に計上した大型工事における設計変更の獲得反動減により、売上高は前期比204億円(12.6%)減の1,419億円、セグメント利益は前期比135億円(46.6%)減の155億円となりました。
(舗装事業)
舗装事業は、舗装工事等の建設工事及びアスファルト合材等の製造・販売を中心に展開しており、売上高は堅調に推移した結果、前期比113億円(4.5%)増の2,631億円となりました。セグメント利益は建設工事における受注時利益率の向上、及びアスファルト合材販売における原材料費高騰分の転嫁がさらに進んだことにより、前期比45億円(30.2%)増の198億円となりました。
(機械事業)
機械事業は、建設機械の製造・販売を中心に展開しており、建設機械関連商品及びクレーン等自社製品の販売が堅調に推移したことにより、売上高は前期比12億円(3.1%)増の410億円となり、セグメント利益は前期比1億円(4.8%)増の22億円となりました。
(インフラ運営事業)
インフラ運営事業は、再生可能エネルギー事業及びコンセッション事業を中心に展開しており、大洲バイオマス発電(株)が新たに営業運転を開始、また愛知道路コンセッション(株)をはじめとする事業会社の業績が引き続き堅調に推移したものの、再生可能エネルギー事業案件の売却を先送りしたことにより、売上高は前期比122億円(66.5%)増の305億円となり、セグメント損失は22億円(前期はセグメント損失10億円)となりました。
(その他)
その他の事業は、リテール事業、建設用資材製造・販売、ビル管理及び不動産事業等を中心に展開しており、売上高は前期比29億円(6.3%)増の501億円となり、セグメント利益は前期比3億円(14.1%)増の24億円となりました。
(2) 財務状態
当連結会計年度における資産は、売却目的で保有する資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ401億円(2.8%)増加し、1兆4,507億円となりました。負債は、社債及び借入金の減少などにより前連結会計年度末に比べ835億円(8.4%)減少し、9,078億円となりました。また資本は、第1回社債型種類株式を発行したことなどにより、前連結会計年度末に比べ1,236億円(29.5%)増加し、5,428億円となりました。なお、当該社債型種類株式の発行によって調達した資金については、全額を2024年8月末までに日本風力開発(株)の株式の取得(子会社化)に伴い金融機関から借り入れた借入金2,184億円の返済資金の一部に充当しています。
以上の結果、親会社の所有者に帰属する持分は5,191億円となり、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度の28.4%から35.8%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益を497億円計上した一方、営業債権及びその他の債権の増加が314億円あったことなどにより396億円(前期は389億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出が378億円、その他の金融資産の売却による収入が244億円あったことなどにより△275億円(前期は△2,792億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の減少や株式の発行による収入などにより△48億円(前期は2,613億円)となりました。以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末の残高は、前連結会計年度末の1,134億円から60億円増加し、1,195億円となりました。
当社グループの運転資金需要のうち、主なものは、建設工事の立替資金のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要のうち、主なものは、M&A、設備投資等によるものです。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、長期運転資金の調達については、金融機関からの長期借入・社債の発行、インフラ運営事業については、ノンリコースでの資金調達を基本としています。
なお、当連結会計年度末における有利子負債(リース負債及び公共施設等運営権に係る負債を除く。)の残高は、前連結会計年度末の4,815億円から863億円減少し、3,951億円となりました。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。
なお、連結財務諸表の作成に用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。
(6) 生産、受注及び販売の実績
当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建築事業及び土木事業では請負形態をとっているため、生産を定義することが難しく、生産実績及び販売実績を正確に示すことは困難です。
また、連結子会社が営んでいるインフラ運営事業等のように、受注生産形態をとっていない事業もあるため、当該事業においては生産実績及び受注実績を示すことはできません。
以上の理由で、生産、受注及び販売の実績を示すことはできませんが、当社グループの受注及び施工等の大半を占める事業会社である前田建設工業(株)、前田道路(株)の受注及び売上等の実績は次のとおりです。
a.事業会社別受注高・売上高及び次期繰越高
(注) アスファルト合材等の製造・販売に係る金額は含みません。
b.事業会社別受注工事高の受注方法別比率
工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) アスファルト合材等の製造・販売に係る金額を除いて算出しています。
c.事業会社別完成工事高
(注)1.当事業年度の完成工事のうち、主なものは次のとおりです。
(注)2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
(注) アスファルト合材等の製造・販売に係る金額は含みません。
d.事業会社別手持工事高(2025年3月31日現在)
(注) 手持工事のうち、主なものは次のとおりです。
(注) アスファルト合材等の製造・販売に係る金額は含みません。
(公共施設等運営権実施契約)
当連結会計年度は、建築事業、土木事業、舗装事業、機械事業及びインフラ運営事業を中心に研究開発を行い、その総額は
(建築事業、土木事業及びインフラ運営事業)
連結子会社である前田建設工業(株)においては、「総合インフラサービス企業」に変革するため、生産性や品質の向上に加え、多様化する社会課題に対し、ビジネスを通じて解決することで社会的価値と事業価値の向上を同時に実現する研究開発を推進しています。
当期の具体的な取り組み方針として、現場作業の生産性向上に向けた自動化・省力化・DX分野、脱請負のさらなる加速を目的とした維持更新・マネジメント分野、また中長期にわたり取り組むべき社会課題として考えられるカーボンニュートラル分野などに重点を置きました。
また、技術開発の推進にあたっては、当期も定期的に審査会を開催し、進捗状況の共有と新たに発生した課題への即時対応を進めるとともに、開発技術の活用展開に注力し既存技術による価値向上に努めました。これにより、昨今の事業環境の急激な変化に即応すべく、取組課題の絞り込み、経営資源の選択と集中を図っています。
当連結会計年度における研究開発費は3,579百万円であり、主な研究開発成果は次のとおりです。
①LCA評価支援システム「CO2-Scope」~BIMデータ活用により迅速な建築物LCA評価及び比較検討を可能に~
2050年カーボンニュートラル実現に向け、BIMとLCAツールの連携を自動化し、建築物のライフサイクルを通じた環境負荷を短時間で評価できるLCA評価支援システム「CO2-Scope」を開発しました。同システムにより、従来1か月程度を要していたデータ作成と算出プロセスを最短1日で完了させることが可能となり、建物の新築・解体時等に発生するEC(エンボディドカーボン)の早期見える化や効率的な削減提案、設計変更時の迅速な環境評価を実現します。前田建設工業(株)は本システムを活用することで、建築物の環境性能向上に取り組んでいます。
②権利許諾済の画像生成AIによる著作権者の新収益源創出を試行~来場者へ「秘密結社 鷹の爪」吉田くん風のAI生成似顔絵を配布~
(株)タジクと共同で、(株)光邦の技術支援と(株)ディー・エル・イーの協力のもと、画像生成AIにおける著作権利用対価を教師データ提供者へ支払う試行を開始しました。同試行では、(株)ディー・エル・イーのコンテンツ「秘密結社 鷹の爪」の画像を教師データとして活用し、生成された似顔絵の配布枚数に応じた対価を支払う仕組みを導入しています。これにより、著作権者への正しい利益還元や画像生成AIの権利許諾の新たなモデルを提案します。将来的には建設分野への展開も視野に入れ、エコシステム構築を目指します。
③高速道路リニューアル時の工期短縮と疲労耐久性向上を実現する新床版継手技術「ESCON TPジョイント」を開発
飛島建設(株)、佐藤工業(株)及び(株)エスイーと共同で、高速道路床版取替工事の工期短縮と耐久性向上を実現する新技術「ESCON TPジョイント」を開発しました。本工法は機械式鉄筋定着工法と超高強度合成繊維補強コンクリートの組合せにより継手構造を簡略化することで作業効率を向上させるとともに、高い疲労耐久性を発揮します。これにより工期短縮、コスト削減、品質向上を実現し、インフラの長寿命化と効率化に貢献します。
④3Dプリンティングを用いた建設部材構築技術「WAV3D」の開発・国内初適用
3Dプリンティング技術を用いた、運搬・組み立てが容易な積層ブロックの組み合わせによる建設部材の構築技術「WAV3D」を開発しました。本技術は、複雑な自由形状が造形可能といった3Dプリンティングの特徴を活かすことで、現場での活用しやすさやデザイン性を両立しています。波形状やシアーキを持つ積層ブロックは安定性と耐久性を高めるとともに、リユースが可能でサステナブルな建設を実現します。また、自然に調和するデザインや照明・植栽の設置も可能で、多様な利用シーンに対応します。前田建設工業(株)ICI総合センター(茨城県取手市)内で実用化され、今後は耐久性や色調変化のデータ収集を通じ、活用領域の拡大を目指します。本技術を通じ、建築物や土木構造物のデザイン・構造の自由度を向上させるとともに、インフラ分野の担い手不足や作業の安全性向上など、社会課題の解決に取り組んでいきます。
⑤木材の柱と梁を強力に接合する工法が(一財)日本建築センターの特別工法評定を取得
帝人(株)と共同で、鉄筋コンクリート造のプレストレス技術を木造ラーメン構造に応用した新工法を開発し、(一財)日本建築センターから特別工法評定を取得しました。本工法により柱梁接合部に接合金物を配置し、プレストレス技術で柱・梁を一体化することで、従来の接合技術よりも接合部の耐力が向上します。これにより、従来難しいとされていた木造での大空間確保を可能にしました。本技術を用いることで、従来の木造ラーメン構造と比較して木材断面積を35%削減し、鉄骨造と同等の靭性能を実現しました。ICI総合センターでの実験で構造性能を確認し、大規模建築への適性も証明しました。今後、木材利用拡大や鉄骨造への部分的適用を進めてまいります。
⑥全設計施工物件でホールライフカーボン排出量算出を開始
カーボンニュートラル達成を目指して、2025年4月から設計施工の全物件でホールライフカーボン排出量の算出を開始します。部材ごとのCO2排出量を算出し、削減効果を明確化するため、自社開発の「CO2-Scope」やクラウドツール「OCL」を活用します。さらに、建築物運用時のCO2削減には「ZEB-Scope」を用い最適なZEB設計を推進します。環境性能を含む総合的な最適設計を通じて設計品質向上に取り組みます。
⑦「地域に着目した市民参画型インフラサービスの具体像」をテーマに「ICI DAYS 2024」を開催
ICI総合センター内に設置しているICI未来共創センターは、2024年11月6日に「ICI DAYS 2024」を開催しました。今回のテーマは「地域に着目した市民参画型インフラサービスの具体像」と題して、同センターの描く未来のインフラビジョンを示すとともに、第一部「地域社会の持続と分散型サービスの可能性」と第二部「市民参画型インフラサービス実現への第一歩」に分けて、社内外の方からの先行事例発表とパネルディスカッションを行いました。また基調講演として、東京大学の岡田猛教授から「地域内の触発と創造的思考」と題してご講演をいただきました。当センターでは、共創パートナーとの連携を通じて、革新的なテクノロジーやサービスの開発を継続的に進め、これらの取り組みを通じて、持続可能な社会の構築と次世代インフラの実現に寄与してまいります。
(舗装事業)
連結子会社である前田道路(株)においては、「新たな収益基盤と未来への投資を確立すること」を研究開発部門の使命と捉え、競争力の促進を図るため、「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」と「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」を重点テーマにあげるとともに、「既存技術の深化による付加価値の向上」にも注力しながら研究開発に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費は
①「カーボンニュートラル(CN)に貢献する技術」に関する研究開発
Ⅰ.舗装用材料へのCO2固定化技術の開発
アスファルトプラントの排ガス中のCO2を舗装用材料に固定化するシステムとして、「コンクリート再生路盤材へのCO2鉱物固定技術」の開発を進めてきました。基礎実験は完了し、得られた成果については、2025年4月~10月に開催される大阪・関西万博(未来社会ショーケース「グリーン万博」、RITE未来の森)において展示を行います。今後はプラント実装に向けた取り組みを進めていきます。
また、アサヒ飲料(株)と共同で、自動販売機で回収したCO2を活用する技術の開発も行っています。この技術では、「CO2を食べる自販機」内に設置された特殊材がCO2を吸収し、化学反応により合成炭酸カルシウムが形成されます。これをアスファルト合材に混合することで舗装内にCO2を固定化することができます。一連の室内実験により実現可能性が確認されたことを踏まえ、アサヒ飲料(株)の施設敷地内や茨城県土浦市道において試験舗装を行い、供用性の確認を行っています。
Ⅱ.アンモニアを燃料として使用した合材製造の実証実験
脱炭素化に向けた次世代燃料として水素が注目されていますが、輸送や価格の面で実用化には課題が多く存在します。そこで、これらの課題の解決が期待される「アンモニア」に着目し、アンモニア変換水素ガスを燃料としたアスファルト合材製造の実証実験を行いました。技術研究所内の実験プラントにおいて燃焼実験、排ガス測定、混合物性状の確認試験等を行った結果、従来の化石燃料と比較して遜色なく合材製造が可能であることを確認し、業界に先駆けてアンモニアを燃料として活用できる準備を整えることができました。
②「ICTやデジタル技術を活用した建設現場の生産性向上」に関する研究開発
生産性向上については、各種デジタル技術を活用して、建設現場の省力化・省人化に貢献できるよう開発を継続しています。舗装の施工現場や合材の製造現場における重機関連作業はもちろんのこと、舗装工事に付随した出来形管理や品質管理の業務にも着目しています。個々の省力化・省人化技術を確立することで、舗装工事全体の生産性を向上させることを目標としています。
③「既存技術の深化による付加価値の向上」に関する研究開発
当期は、「マイルドパッチ」の改良を行いました。マイルドパッチは、「水分硬化型の全天候型高耐久常温アスファルト混合物」に分類される製品であり、前田道路(株)が業界に先駆けて開拓した技術です。現在、同業他社の製品が多く市場に出回る状況にあることから、これらと差別化を図り、ユーザーの満足度をさらに向上させるため改良を行った結果、低温時(冬期施工時)の作業性改善と保存期間の延長を実現することができました。
(機械事業)
連結子会社である(株)前田製作所においては、カーボンニュートラルによる持続可能な社会の実現に向けた電動仕様クレーンの開発、海外マーケットの更なる拡大のための米国向け製品の開発を推進しています。また、要素技術開発として今後の労働力不足に対応するべく自動化・遠隔制御技術等の開発を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費は
①かにクレーンMC305C-5・MC405C-5の開発
かにクレーンMC305C・MC405C 2機種のモデルチェンジを行い、2025年4月に日本・欧州・米国で発売予定です。2機種ともに狭所でのクレーン能力を最大限に発揮するためのマルチアウトリガーモードを標準装備し、また、欧州・米国向けについても日本同様ラジコンを標準装備しています。なお、MC305C-5についてはカーボンニュートラルに向けた取り組みとしてリチウムバッテリー仕様もラインナップしています。
②クローラクレーンCC985S-3・CC1485S-3の開発
クローラクレーンの主力製品CC985S・CC1485Sのモデルチェンジを行い、日本、欧州で発売しました。このモデルチェンジでは運転席にオートエアコンを装備する等作業者の居住性向上、天窓の大型化による吊り荷の視認性向上を図っています。
③林業用フォワーダFC560S用ラジコンの開発
林業用フォワーダFC560S用のラジコン装置を開発・発売しました。このラジコン装置を使用することで、木材の積み込みを行う重機の運転席からフォワーダの遠隔操作が可能となり、現場作業の効率化を実現することができます。
④建設機械用足回り洗浄機の開発
建設機械用足回り洗浄機を開発・発売しました。冬場の作業等、厳しい環境下も多い建設機械の洗車作業を機械化・自動化することで、整備現場の効率化・省人化に繋がる製品となっています。
⑤自動化技術の開発
建設ニーズや大型機械に対応した自動運搬システムの研究・開発を進めており、実証試験による検証を行っています。今後は施工現場の省人化実現のため、前田建設工業(株)と共同で取り組んでいる自動運搬台車等、様々な装置や建設現場への実装に向けた活動を推進してまいります。