第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

ここに記載した将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。当該将来に関する事項については、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は、「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」というビジョンを掲げ、「知のめぐりをよくする。」というコンセプトの下、「プロシェアリング」業界を創る冒険に挑んでおります。

 

我が国においては、少子高齢化による労働力の減少に始まり、人生100年時代におけるシニア世代の働き方、女性の活躍推進、地方中小企業の事業承継問題等、国の経済発展において多くの課題を抱えております。従来の企業と個人が「雇用」という形で繋がるというあり方では、これらの課題に対応することが困難な状況になってきております。「人」ではなく、人が保有する「経験・知見」をどう活用するかということに着目し、時間や場所、組織の枠組み等の制限なく、個人が力を発揮できる仕組みが必要となると考えられます。

 

当社の取り組みは、高い専門性を持つプロ人材の経験・知見を活用し、企業の経営課題を解決する「プロシェアリング」事業であります。地方金融機関等と連携し、ノウハウ・人材不足に悩む地方の中小企業、最先端のスタートアップ、大手企業まで、日本中のあまねくプロ人材の「知」を届けます。人材の活用において「雇用」が前提となっている日本社会において、一人が複数の企業で働く「プロシェアリング」は新しい概念であります。また、技術の進歩によってグローバル化は加速、国境を超えての受発注や国外の経験・知見を取り入れていこうという動きはより活発になっております。それに伴って、国家間でのシームレスな取引や評価ができる仕組み、経験・知見が行き交うプラットフォームの整備も必要になってくると考えられます。

 

個人の「働く」ことに対する価値観も変化しております。終身雇用の終焉、副業・兼業の原則容認等により、企業に依存しない「個」として働くことを選ぶ人が増えていくと当社は考えております。時間や場所の柔軟さ、対価としてお金よりもやりがいを重視する等、個人の働く価値観の変化に合わせたサービスはより求められるものと考えております。

 

既存の労働・人材市場に変革は起こり始めております。私たちは、既存のエコノミクスの原理を覆し、新しい価値を提供することを使命とし、日本経済の発展、様々な社会課題の解決を目指し、世の中の知のめぐりをよくして参ります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社は、サーキュレーションの提供価値、すなわち売上を重視しております。売上の増加が長期のフリーキャッシュ・フローの最大化、ひいては企業価値向上に繋がると考え、売上を重要な経営指標と位置づけて各経営課題に取り組んでおります。

具体的には、売上高を「稼働プロジェクト件数」×「顧客請求単価」と捉え、「稼働プロジェクト件数」の最大化に向けて、月次プロジェクト継続率、新規決定数増加に向けた社員の生産性向上に取り組むと共に、より強固なプラットフォームを構築すべく、プロ人材の契約・稼働・評価データを蓄積し、経験・知見の循環プラットフォームを構築して参ります。

 

(3) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

我が国においては、人口減少社会が到来しております。企業は、自社の競争力をより高めていくに当たり、優秀人材の確保が経営課題となり、一方で世の中のプロ人材の働き方は多様化し、いよいよ「雇用」に縛られない社会が到来すると当社は考えております。

 

当社は、TAM(※1)としてフリーランス経済規模(※2):約15兆円、SAM(※3)としてハイスキル人材市場(※4):約1.3兆円と推計しております。既存の人材関連サービスマーケットとは異なる新しい市場の開拓に取り組んでおります。

 

(※1)TAM(Total Addressable Market):「ある市場において、獲得できる可能性のある最大の市場規模」を意味しております。当社が提供しておりますプロシェアリングサービスにおきましては、プロ人材が豊富に存在し、かつ国内企業の内「外部から経営課題解決に当たっての提案を貰いたい」と考えたことのある全ての法人企業が、それら経営課題解決に当たり、プロ人材を週に1日、1年間活用すると仮定した場合の市場規模という主旨にて記載しております。

(※2)プロノウハウ市場(プロ人材が豊富に存在し、かつ国内企業の内「外部から経営課題解決に当たっての提案を貰いたい」と考えたことのある全ての法人企業が、それら経営課題解決に当たり、プロ人材を週に1日、1年間活用すると仮定した場合の市場規模):国内企業数約368万社(総務省令和5年6月「経済センサス」)×プロニーズ70%(金融庁令和元年11月「企業アンケート調査の結果」)×年間単価600万円(当社実績)。

   なお、本算出結果が実際の市場規模等と異なる可能性がございます。また、「国内企業数約368万社」は令和3年6月1日現在の企業数でございます。

(※3)SAM(Serviceable Available Market):「ある市場において、あるサービスが獲得できる可能性のある最大の市場規模」を意味しております。プロシェアリングサービスにおきましては、プロ人材として稼働が期待できる層の定義を便宜的に「給与1,000万円超」のビジネスパーソンとし、それら全員が1年間副業・兼業を実施すると仮定した場合の市場規模という主旨にて記載しております。

(※4)ハイスキル人材市場(プロ人材として稼働が期待できる層の定義を便宜的に「給与1,000万円超」のビジネスパーソンとし、それら全員が1年間副業・兼業を実施すると仮定した場合の市場規模):給与1,000万円超人口約275万人(国税庁民間給与実態統計調査令和4年分)×副業月収41,000円(パーソル総合研究所2021年8月「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」)×12ヶ月

   なお、本算出結果が実際の市場規模等と異なる可能性がございます。

 

現在、我が国においては少子高齢化による就業人口の減少に直面する中、日本国政府は働き方改革を推し進めております。また同時に、人生100年時代を迎える中、個人の持つビジネスにおける経験・知見の見える化のニーズは益々高まっております。さらに、テクノロジーの急速な進歩を背景に、変化の加速する事業環境において、イノベーションを実現するためのビジネス知見へのニーズは、起業を目指す個人から大企業まで広く浸透しつつあります。このような経営環境を背景として、当社は高い事業成長を実現するべく、以下の経営戦略を実行して参ります。

 

① 既存のプロシェアリング事業の成長戦略

当社サービスにおいては、(ⅰ)累積取引企業数の増加→(ⅱ)累積稼働プロジェクト数の増加→(ⅲ)月次プロジェクト継続稼働率の良化→(ⅳ)取引企業当たり平均稼働プロジェクト数増加、というリカーリング型のビジネスモデル(一度の販売で取引が完了するのではなく、継続して取引を行うシステムを構築することで、繰り返し利益を得ることができるビジネスモデル)を確立しております。

 

(ⅰ)累積取引企業数の増加

当社は下図の通り企業開拓を実現しており、累積5,158社(2024年7月末当社実績、過去取引があり、現在は取引がない法人顧客も含む)の企業との取引実績があります。

 

 

 


※集計対象期間以前で取引実績のある全企業数。対象サービスは全サービス。稼働前に解約に至った企業は集計対象から除外とする

 

法人顧客の開拓は、主に「金融機関(都市銀行、地方銀行、信用金庫)アライアンス経由」「インターネット経由」「その他自社活動」の3種類に分かれており、特に「金融機関アライアンス経由」について強化中であります。2024年7月末時点にて、金融機関92行(都市銀行、第一地方銀行、第二地方銀行、信用金庫合計)とビジネスマッチング契約を締結しており、日本全国の金融機関から当社に対し、月間平均197社(2024年7月期通期実績)の顧客紹介(顧客訪問の機会)を受けております。企業は、金融機関から資金面での融資を、当社からプロ人材の提供を受け、事業拡大や事業承継問題の解決に取り組んでおります。

 

(ⅱ)累積稼働プロジェクト数の増加

当社は4つのサービスを展開しており、下図の通り累計18,743件(※)のプロジェクト稼働実績があります。

 


※集計対象期間以前に稼働実績のある全プロジェクト数。対象サービスは全サービス。稼働前に解約に至ったプロジェクトは集計対象から除外とする

 

当社では、経営テーマを絞っておりません。新規事業開発、人事制度設計、営業強化、マーケティング支援、IPO支援、DX推進、テレワーク推進、エンジニアリング、デザイン、事業承継等、あらゆる経営テーマを取り扱っております。それらが18,743件(※)分蓄積しており、各テーマにおける成功事例も多く積み上げているため、プロジェクト成功率を高めることが可能となります。

 

また、プロシェアリングコンサルティングサービス、FLEXYサービスに絞り、累積稼働プロジェクト件数(新規顧客からのプロジェクト件数と、既存顧客からのプロジェクト件数)の推移は下記の通りであります。 ※2024年7月期 既存・継続稼働プロジェクト数(累積)11,427件、新規稼働プロジェクト数(累積)4,958件

 


 

※新規稼働プロジェクト数(累積):集計対象期間以前の初回プロジェクト数の累積。既存・継続稼働プロジェクト数(累積):集計対象期間以前の初回以外のプロジェクト数の累積。初回稼働年度に複数プロジェクトが稼働した場合、新規稼働プロジェクト数は1とし、その他は既存・継続稼働プロジェクト数に集計する。対象サービスはプロシェアリングコンサルティングサービスとFLEXYサービス。稼働前に解約に至ったプロジェクトは集計対象から除外とする

 

上記の様に、既存顧客からのプロジェクト件数が積み上がっております。

 

 

(ⅲ)月次プロジェクト継続稼働率の良化

当社は、1つの法人顧客に、同時期に複数のプロジェクトを支援することがございます。ミッション毎に最適なプロ人材をアサインすることが可能です。例えば、下記プロジェクト支援の実績がございます。

 


 

この様に、当社は1つの法人顧客と関係性が途絶えることなく、複数のプロジェクトが継続稼働し続けております。これらプロジェクトの月次継続稼働割合を示す月次プロジェクト継続稼働率の推移は下記の通りであります。 ※2024年7月期Q1 97.6%、Q2 98.3%、Q3 97.9%、Q4 98.5%

 


 

※集計対象期間における、月次途中解約プロジェクト数合算を、月次稼働プロジェクト数合算で除した値を、1から減算して算出。対象サービスは、プロシェアリングコンサルティングサービス、FLEXYサービス。小数点第二位を四捨五入

 

2019年より社内にカスタマーサクセスチームを組成しております。カスタマーサクセスチームは、プロジェクト開始後、担当コンサルタントと共に法人顧客、プロ人材と並走しながらプロジェクト成功に向けてフォローアップする部隊であります。カスタマーサクセスチームが綿密に法人顧客、プロ人材とコミュニケーションを重ねることにより、直接言いにくいことを代わりにお伝えしたり、双方の期待値の確認や調整を行ったりすることができるようになりました。その結果、プロジェクト途中解約を防ぐことが可能となり、月次プロジェクト継続稼働率は上記グラフの通り98%前後を維持できております。

 

(ⅳ)取引企業当たり平均稼働プロジェクト数増加

取引企業数が増えるにつれて、受注プロジェクト数が増え、それに応じてプロ人材の登録数が増え、優秀な人材が当社経由で法人企業のご支援に入ることにより、取引企業当たり平均稼働プロジェクト数も下図の通り推移しております。 ※2024年7月期 2.8件

 


 

※集計対象期間における年次稼働プロジェクト数を同期間の年次稼働取引企業数で除算して算出。複数の集計対象期間に跨るプロジェクトの場合、各集計対象期間で1プロジェクトとして集計。実稼働した集計対象期間のみ集計対象。対象サービスは、プロシェアリングコンサルティングサービス、FLEXYサービス。小数点第二位を四捨五入

 

これら(ⅰ)~(ⅳ)の結果、平均月次稼働プロジェクト数、1稼働プロジェクト当たり平均月次請求金額、コンサルタント生産性は下記の通り推移しております。

 

 

2023/7期

Q1

2023/7期

Q2

2023/7期

Q3

2023/7期

Q4

2024/7期

Q1

2024/7期

Q2

2024/7期

Q3

2024/7期

Q4

月次平均稼働プロジェクト数(※1)(単位:件)

1,255

1,276

1,290

1,212

1,161

1,156

1,146

1,085

1稼働プロジェクト当たり平均月次請求金額(※2)(単位:千円)

507

521

549

531

532

543

564

564

コンサルタント生産性(※3)(単位:百万円)

2.4

2.6

2.8

2.4

2.0

2.3

2.9

2.7

 

(※1)当会計期間における各月の稼働プロジェクト数の平均値を算出。集計対象はプロシェアリングコンサルティングサービス、FLEXYサービス、その他サービス(スポットコンサル案件は除く)

(※2)当会計期間における各月の平均請求単価の平均値を算出。集計対象はプロシェアリングコンサルティングサービス、FLEXYサービス、Open Ideaサービス

(※3)当該会計期間内の各月売上総利益の総和を同期間内の各月予算有コンサルタント人員数の総和で除した予算有コンサルタント当たりの月次平均売上総利益

 

 

② データをコアとしたプロシェアリングプラットフォーマーへの成長

当社では、手掛けたプロジェクトの成否やその要因について、法人顧客・プロ人材・プロジェクトの内容等、様々な観点から分析を行い、その内容を「プロ人材の職能データ」「取引先経営課題データ」「プロジェクト契約データ」「プロジェクト進捗管理データ」「プロジェクト評価データ」として蓄積しております。それらプロジェクトが成功したのか、失敗したのか、そしてそれらの要因がプロ人材のスキル・実績によるものか、法人顧客とプロ人材の相性によるものか等の各種データが何よりの競争優位性を保つ源泉と捉え、これらをしっかりと蓄積していくタスクフォースを社内に発足し推進しております。

当社は、これまでに登録している25,900名(登録者総数)のプロ人材の経験・知見を、当社オリジナルの経営課題別スキルマスタデータとして保有しております。同時に、18,743件(※)企業の経営課題をデータ保有しております。それらデータを分析し、プロジェクトの成功確度を高め、法人顧客の経営課題解決に貢献して参りたいと考えております。

(※) 集計対象期間以前に稼働実績のある全プロジェクト数。対象サービスは全サービス。稼働前に解約に至ったプロジェクトは集計対象から除外とする。

 

当社は今後、これら蓄積されたデータを活用し、受注率向上(過去評価の高いプロ人材のアサインによる受注率向上。要件定義、プロ人材アサイン時に利用)、月次プロジェクト稼働継続率向上(過去解約プロジェクトの分析を通して、途中解約プロジェクトを早期発見し未然に防止)、取引企業当たり平均稼働プロジェクト数増加(過去追加提案・受注分析を通して、追加受注率を向上。)に取り組んで参ります。

 


 

また、2021年にリリースしました「PROBASE(プロベース)」(※)は、開始後契約社数が2,891社(2024年7月末時点)まで増えており、プロシェアリングコンサルティングサービス、FLEXYサービス、Open Ideaサービス、人が繋ぐ事業承継サービスと共に、事業拡大に継続して取り組んで参ります。

(※) 「PROBASE(プロベース)」:社外プロ人材との契約をオンラインで一元管理する、法人向けSaaS。社外プロ人材との毎月の業務検収・請求や契約更新、人材評価を一元管理できる機能を具備。

 

なお、当社データの源泉となる登録プロ人材は下図の通り推移しております。

 


 

また、25,900名は下記3つの属性から成り立っております。これらプロ人材の拡充に当たりましては、過去の稼働データ等を基にどの層が活躍しているかを分析し、当該層集客のためのマーケティング手法(オンライン、オフライン共に)を企画・立案・実行しております(データからターゲッティングしたソーシング戦略)。また、登録プロ人材からの口コミやネットワーク効果によりご登録に至るプロ人材もいらっしゃいます。

 


 

(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題

当社は、「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」をビジョンに掲げ、必要な時に必要なだけ、外部プロ人材の経験・知見を活用できるプロシェアリング事業を主たる事業として展開しております。当社が今後益々成長していくためには、下記について対応をしていく必要があると考えております。

 

① 社員生産性の向上

当社はリカーリング型ビジネスモデル(※)をより維持・強化すべく、マーケティング、インサイドセールス、コンサルタント、カスタマーサクセス等、それぞれの部署において、事業成長を支える優秀な人材を育成し、事業拡大に取組んで参ります。

(※) 累積取引企業数の増加→累積稼働プロジェクト数の増加→月次プロジェクト継続稼働率の良化→取引企業当たり平均稼働プロジェクト数増加という、一度の販売で取引が完了するのではなく、継続して取引を行うシステムを構築することで、繰り返し利益を得ることができるビジネスモデル

 

② データマネジメント

当社では、手掛けたプロジェクトの成否やその要因について、法人顧客・プロ人材・プロジェクトの内容等、様々な観点から分析を行い、その内容を「プロ人材の職能データ」「取引先経営課題データ」「プロジェクト契約データ」「プロジェクト進捗管理データ」「プロジェクト評価データ」として蓄積しております。それらプロジェクトが成功したのか、失敗したのか、そしてそれらの要因がプロ人材のスキル・実績によるものか、法人顧客とプロ人材の相性によるものか等の各種データが何よりの競争優位性を保つ源泉と捉え、これらをしっかりと蓄積していくタスクフォースを社内に発足し推進しております。

当社は、これまでに登録している25,900名(2024年7月末時点での登録者総数)のプロ人材の経験・知見を、当社オリジナルの経営課題別スキルマスタデータとして保有しております。同時に、18,743件(2024年7月末時点での累積稼働プロジェクト件数)の企業の経営課題をデータ保有しております。それらデータを分析し、プロジェクトの成功確度を高め、法人顧客の経営課題解決に貢献して参りたいと考えております。

 

③ 効率的なマーケティング投資

当社の広告宣伝活動、販売促進活動においては、主に法人企業獲得に向けたウェビナーを軸とするリード獲得施策と、特にDX領域のプロ人材の集客、そしてアライアンス契約締結済みの金融機関との関係性強化であります。これら投資活動においては、常に有効性・効率性をモニタリングしながら実施して参ります。

 

④ 業務提携シナジーの創出

2024年4月18日付適時開示「シンプレクス・ホールディングス株式会社との資本業務提携に関するお知らせ」、及び同年6月3日付適時開示「資本業務提携、株式の売出し、当社の主要株主である筆頭株主、その他の関係会社及び主要株主の異動に関するお知らせ」の通り、シンプレクス・ホールディングス株式会社、株式会社クラウドワークス、株式会社PKSHA Technologyそれぞれとの業務提携シナジーの創出に向けて、各社との取組みを推進して参ります。

 

⑤ 内部統制システムの継続的強化

当社は、売上、組織の拡大とともに、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るために、内部統制システムの適切な運用が極めて重要であると考えております。ステークホルダーに対して経営の適切性や健全性を確保しつつ、組織の拡大、当社の成長に合わせて、今後も内部管理体制の充実・強化に取り組んで参ります。

 

⑥ サステナビリティへの取り組み

当社はサステナビリティ経営を重視しており、方針策定、重要課題(マテリアリティ)の特定をし、経営戦略との融合を進め、中長期的な企業価値向上に向けたESG投資への検討を進めて参ります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

サーキュレーションは、ビジョンである「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」を実現することで多くの社会課題を解決し、「機会格差をなくし、人の可能性を最大化する」社会を創りたいと考えています。

私たちのステークホルダーは仲間、クライアントやパートナー、地方自治体、地方銀行など多岐にわたります。サーキュレーションは創業当初から、ビジョンで繋がり共に挑戦するステークホルダーの皆様からの期待と信頼を大切にし、事業成長し続けてきました。

サーキュレーションは2019年よりソーシャルデベロップメント推進プロジェクトを設置し、地方中小企業や上場企業へのSDGs/サステナビリティ推進支援を積極化してきました。2021年4月には国連グローバル・コンパクトに署名し、同年7月にサステナビリティページを公開、8月には社内でサステナビリティ委員会を設立、2022年にはサステナビリティレポートを発出するなど、社内外共に日本のサステナビリティ経営の着実な実装に向けて歩みを進めてきました。

今後もマテリアリティ(重要課題)に対する中長期視点での機会やリスクを捉えながら、指標と目標に対する戦略と実行に取り組み、サステナビリティ情報開示の充実と持続的成長の実現を目指します。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 戦略

[価値創造ストーリー]

私たちは、ビジョンである「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」を通じて、「機会格差をなくし、人の可能性を最大化する」社会を目指しています。サーキュレーションの価値創造ストーリーは、私たちの資本を活かし(INPUT)、VISION・MISSION・CIRCUIZMを体現することが(PHILOSOPHY)、私たち自身の利益やサービスを生み出すことに繋がるだけではなく(OUTPUT)、社会へ新たな社会価値を生み出し、社会課題解決へ貢献していくことを示しています(OUTCOME)。その結果として、理想の社会としてかかげる「機会格差をなくし、人の可能性を最大化する」社会の実現と世界共通の目標であるSDGsの達成を目指しています(IMPACT)。

 

 


 

[マテリアリティの改定]

サーキュレーションは2022年に5つのマテリアリティを定めました。2024年8月に経営陣での協議およびサステナビリティ委員会を通じ、「エシカルなエネルギーアクション」を「オープンイノベーションを通じた企業と地域の経済活性化」に統合することとしました。背景としては、当社自身がGHGの排出等を多く行う企業ではなく、プロシェアリングを通じた企業支援の一環としてサステナビリティトランスフォーメーションに貢献することが本質的なアクションであると考えたためです。

引き続きエシカルなエネルギーアクションにも貢献しながら、よりシンプルに力強く、4つのマテリアリティを確実に推進してます。

 


 

[ステークホルダーとの関わり]

サーキュレーションの事業活動は、様々なステークホルダーとの共創によって進められています。持続可能な社会の実現に貢献する企業であり続けるために、ステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションを大切にし、いただいたご期待や社会のニーズを企業活動に反映し、高い信頼関係や共創関係を継続的に築いていくことを目指しています。


 

 

[サステナビリティ経営実装プロセス]

サーキュレーションでは、経営メンバーを中心に、当社のサステナビリティ方針策定、マテリアリティ特定~目標の設計、中長期経営計画への組み込み~事業活動を通じた実装、進捗状況管理のPDCAを回すことにより、サステナビリティを経営戦略として位置づけ、推進しています。また、経営メンバーを対象とするだけでなく、年間を通じてマネジメントメンバーに向けた中長期視点での戦略検討の機会提供や、全社員を対象としたサステナビリティに関する理解促進や当事者意識醸成の機会を創出することで、全社横断でのサステナビリティ経営を目指して活動しています。

 


 

(2) ガバナンス

持続可能な経営及び成長戦略を実現するために、取締役会の諮問機関の一つとしてサステナビリティ委員会を設置しています。当事業年度ではサステナビリティ委員会の役割や体制を見直し、翌事業年度からはサーキュレーションのマテリアリティ(重要課題)に対する「現在の取り組み進捗」や「中長期的に行う活動内容、目標、計画」における報告、「サステナビリティに関する議題」の検討、その他、外部プロ人材の皆様からのアドバイスを踏まえた「意見交換」を実施して参ります。

経営管理組織の構成につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 会社の機関の内容及び内部統制システムの整備の状況等 a.会社の機関の内容及び当該体制を採用する理由」をご参照ください。

 


 

 

(3) リスク管理

持続可能な開発目標「SDGs」17項目のアジェンダ及び169ターゲット、SASB、GRIスタンダードなどを参考にし、自社及びステークホルダーにとっての重要課題を特定しています。また、2030年を起点とした外部環境分析及びステークホルダーの変化と機会/リスク評価から、現時点においてのみならず中長期的な視点で、自社及びステークホルダーにとっての重要度を評価し、横軸「自社事業との関連性」と横軸「ステークホルダーからの期待」にプロットしています。

また、当社では適宜リスク・コンプライアンス委員会を開催しております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 会社の機関の内容及び内部統制システムの整備の状況等 ニ リスク・コンプライアンス委員会」をご参照ください。

 


 

 

(4) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

サーキュレーションは、すべての人の可能性を信じています。

サーキュレーションに関わる一人ひとりが「成果と成長を最大化する働き方」を通じて、その人にとっての「自分らしい人生の実現」に寄り添っていきたいと考えています。そのために、一人ひとりの働く動機や目的、提供したい価値などを見つけ、それらと、会社のPHILOSOPHYに繋がりを覚え、個人と会社が共に発展していくことを望み、推進していくPHILOSOPHY経営を実践しています。 

また、個人と会社が従来の主従の関係ではなく、同じビジョンを志すパートナーシップとして繋がり、一人ひとりが持つ経験や知見、働き方、アイデア、価値観、バックグラウンドや属性の違いを認め合い、掛け合わせるからこそ、チームサーキュレーションとしての一体感のある組織を実現でき、一人ひとりの可能性と組織の可能性を最大化できると考えています。

「新しい働く価値観を、よりはやく、人と経営になじませる」ことをミッションとして掲げるサーキュレーションは、「ビジョンで繋がる信頼あるパートナーシップ」、「個人のウェルビーイングの追求」、「可能性を最大化するダイバーシティ&インクルージョン」、「個人がプロとなるための知とスキル獲得機会の創出」、「働きがいを生み出す機会の創出」を軸にした様々な施策とアクションを通じて、自分らしい人生を歩める働き方の実現と成果最大化の両立に向けて取り組んでいきます。

 

ビジョンで繋がる信頼あるパートナーシップ

目指す姿:PHILOSOPHYが共通意志となり、自律しながらも、サーキュレーションと繋がり、仲間と共に社会変革に寄与できるチームを目指しています

 

個人のウェルビーイングの追求

目指す姿:個人の幸せの定義の違い及び一人ひとりの"幸せ"を理解し合いながら、個人が心身ともに健康でその実現・維持に向けて進めている応対を目指しています

 

可能性を最大化するダイバーシティ&インクルージョン

目指す姿:"違い"を価値に変え、個人が可能性に満ち溢れていると実感できることで、"人"にしか創り出せない、新たな価値を生み出し続ける環境と信頼を築くことを目指しています

 

個人がプロとなるための知とスキル獲得機会の創出

目指す姿:個性や強みを活かし、社会変革に寄与できる個人を生み出すことで、新しいマーケットの創出と社会変革の牽引を目指しています

 

働きがいを生み出す機会の創出

目指す姿:サーキュレーションとの繋がりが一つの居場所となり、挑戦と変革をし続けられる環境構築を目指しています

 

(5) 人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

挑戦と成長機会の創出、成長実感・やりがいの向上、PHILOSOPHYへの共感機会の提供、働き方の拡充を通じて、従業員の働きがいを高め、当社に関わる一人ひとりが「成果と成長を最大化する働き方」を実現していきたいと考えています。その人にとっての「自分らしい人生の実現」に寄り添える組織の実現を目指していきます。

 

今回、当社では個人の働きがいに関するデータとして「モチベーションスコア」「直近1年での成長実感」「直近1年でのやりがい実感」を指標にしており、定点でチェックを行い、目標値に向けて改善活動を継続して参ります。

 

働きがいに関する現状データ

現状スコア&目標値

モチベーションスコア
(※1)

会社、上司、職場における指標に対するエンゲージメント状況

現状スコア

60

目標値

75

直近1年での成長実感
(※2)

全従業員を対象とした「成長実感」の実感値

現状スコア

78%

目標値

90%

直近1年でのやりがい実感
(※2)

全従業員を対象とした「やりがい」の実感値

現状スコア

67%

目標値

90%

 

(※1)株式会社リンクアンドモチベーションが提供する組織診断のためのエンゲージメントサーベイ「モチベーションクラウド」を年に2回実施しデータ取得。

(※2)※1実施において、当社独自の質問である「直近1年において、仕事へのやりがいを感じましたか。」「直近1年において成長実感はありますか。」の設問に対し、1.全くそう思わない、2.あまりそう思わない、3.ふつうである、4.まあまあそう思う、5.非常にそう思うの5段階の回答によりデータ取得。

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項について、以下に記載しております。また、必ずしも事業展開上のリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断において重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。当社はこれらのリスクの発生可能性を認識した上で、その発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容を慎重に判断した上で行われる必要があると考えております。なお、以下の記載事項は、本書提出日現在の事項であり、将来に関する事項は本書提出日現在において当社が判断したものであります。また、以下の事業等のリスクは、全ての事業活動上又は投資判断上のリスクを網羅しているものではありません。

 

(1) 事業環境の変化に関するリスク

① 経済環境について

当社のプロシェアリング事業は、ビジネス領域、エンジニア領域の経験・知見を求める法人企業に対して、プロ人材による準委任型の業務委託形式でのコンサルテーション、アドバイザリーを提供し、契約形態も月1日~月20日、対面・遠隔、雇用契約・業務委託契約(準委任契約)と柔軟なレパートリーを準備しております。我が国における構造的な課題である少子高齢化に端を発する働き方改革の促進や、オープンイノベーションを推進する法人企業によるプロ人材の活用ニーズの高まりは今後も継続していくものと想定され、経済環境が悪化した場合の影響を受けにくい事業であると考えております。また、当社は登録プロ人材の増加やデータベースの拡充等により顧客満足度を高め、経済環境に左右されないように努めております。

しかしながら、経済環境が急激に悪化した場合には、顧客の需要が想定以上に減少し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合について

当社のプロシェアリング事業は、業務委託契約によって法人企業に外部人材提案をする企業、インターネット上のマッチングプラットフォームを提供する国内企業等と競合が生じております。当社は25,900名(登録者総数)が登録する、経営課題・業界・地域・契約形態等の柔軟性あるサービスとなっており、各業界や各業務において実務経験を有しているアドバイザーの幅広い領域の経験・知見を取りまとめた、更新頻度の高いデータベースを有し、それに基づく様々なサービスの提供を行っております。しかしながら、今後競合他社による新たな付加価値の提供等により当社の競争力が低下した場合には、価格競争やプロジェクト件数の減少等により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 当社の事業活動に関するリスク

① 人材の確保・育成について

当社は、今後の事業拡大のために優秀な人材の確保及び育成が重要な課題であると認識しており、積極的に人材を採用するとともに人材の育成に取り組んでいく方針であります。しかしながら、当社が求める人材を適切な時期に確保、育成できなかった場合、また、社外流出等何らかの事由により既存の人材が業務に就くことが困難になった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② システムトラブルについて

当社の事業は、経営課題・プロ人材情報が全て格納されているSalesforceプラットフォームの上に成り立っており、定期的にバックアップを取っております。しかし、自然災害や事故等何らかの理由によりシステムトラブルが発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ プロシェアリング事業への依存について

当社の営業収益は、プロシェアリング事業のみによる収益となっております。今後も積極的な営業施策や広告宣伝による法人顧客や登録プロ人材の増加、提供サービスの拡充、事業規模拡大を通じた認知度向上等により、収益規模は拡大していくものと考えておりますが、新たな法的規制の導入や改正、その他予期せぬ要因によって、当社の想定通りにプロシェアリング事業が発展しない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 社歴が浅いことについて

当社は2014年1月に設立されており、設立後の経過期間は10年程度と社歴の浅い会社であります。従って当社の過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の業績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。

 

(3) 当社の財務活動に関するリスク

① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社は役員及び従業員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権を付与しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用することが考えられることから、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。なお、2024年9月末時点において、新株予約権による潜在株式数は222,600株であり、発行済株式総数8,444,200株の2.6%に相当しております。

 

② 配当政策について

当社は、現在成長過程にあると認識しており、事業の拡充や組織体制の整備への投資のため、内部留保の充実が重要であると考え、会社設立以来配当を実施しておりませんが、株主への利益還元を重要な課題として認識しております。今後、事業基盤の整備等を進め、株主に対して、継続的かつ安定的な配当を行うことを検討していく方針でありますが、現時点において配当の実施時期等については未定であります。

 

(4) 法的規制・訴訟に関するリスク

① サービスの安全性、健全性について

当社は、一人のプロ人材が複数社に同時に支援に入ることを支援するサービスでありますが、プロ人材が意図せず、守秘義務に服している情報(注)を顧客に提供してしまう可能性があります。そのため当社では、毎月プロ人材に作成依頼・回収を行う「業務報告書」の授受において、「セキュリティチェックリスト」に自己回答を課し、口頭での当社担当からの説明を行っております。また、プロ人材が取得しうる法人顧客のインサイダー情報に関しては、プロジェクト稼働時に締結する業務委託契約書にて守秘義務を課し並びにインサイダー取引に利用しないこと、またプロジェクト進捗中において取得次第即座に当社に連絡をすることを告知しております。プロ人材より当社が取得した業務報告書にインサイダー情報の記載がある場合、当該ファイルにパスワードをかけ閲覧制限をかけております。しかしながら、仮に情報漏洩が発生した場合には、当社の信用低下を招くとともに損害賠償請求訴訟の提起等により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(注) 一般的には、就業規則や秘密保持契約等で定められている情報や、秘密として管理することが明示されている情報等が該当すると考えられます。守秘義務に服する情報としては、事業戦略、事業計画、財務情報、取引先情報、顧客名簿、及び個人情報等、秘密保持契約等で定められている情報や、秘密として管理することが明示されている情報等を指します。

 

② 個人情報について

当社は、事業運営にあたり多くの個人情報を保有しております。それを踏まえ、「個人情報の保護に関する法律」の規定に則って作成したプライバシーポリシー等の社内規程に沿って個人情報を管理し、また、従業員に対する個人情報の取り扱いに関する教育を行い、個人情報の適切な取り扱いに努めております。またプライバシーマークの付与認定取得等、情報セキュリティ対策の強化に取り組んでおります。しかしながら、何らかの原因により個人情報が外部に流出した場合は、当社の信用低下を招くとともに損害賠償請求訴訟の提起等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法的規制について

当社は、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「電子署名及び認証業務に関する法律」、「個人情報の保護に関する法律」、「不正競争防止法」、「下請法」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」等の法的規制を受けております。これらの内、当社が事業を展開するに当たり直接規制等を受ける法律に関しては、「個人情報の保護に関する法律」「不正競争防止法」であります。当社は、個人情報の保護に関する法律をはじめとする主要法令等の遵守を徹底する体制の整備及び社内教育を実施し、関連諸法令等の遵守を図っておりますが、今後、新たな法令の制定や既存法令における規制強化等がなされ、当社の事業が制約を受ける場合、もしくは万が一法令等遵守体制が機能しなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 知的財産権について

当社は現在、他社の知的財産権を侵害している事実は認識しておりません。また、当社は新サービス、新事業を開始する際には、特許庁のホームページで権利の状況を確認する等、法務・コンプライアンス部門が権利侵害となるものの有無の確認、弁護士への相談等の対応を図っております。しかしながら、当社の認識していない知的財産権が既に成立していることにより当社の事業運営が制約を受ける場合や第三者の知的財産権侵害が発覚した場合等においては、信用失墜や損害賠償請求等が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 第三者との係争について

当社は、コンプライアンス研修の推進等、役職員の法令違反等の低減努力を実施しております。しかしながら、当社並びに役職員の法令違反等の有無にかかわらず、取引先、その他第三者との予期せぬトラブル、訴訟等が発生する可能性があり、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟を提起される可能性があります。その場合、損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次の通りであります。

 

① 経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国の経済は、米国を中心に海外経済の下振れリスクが薄らぐ中で、円安を背景とする輸出の増加、コロナ禍明けのインバウンド需要の復活などが景気回復の追い風となっております。その一方で、長引くロシアウクライナ情勢に起因した資源価格の高騰、人手不足による供給制約なども不安材料として存在しているため、景気の回復ペースは緩やかなものに留まっております。企業の業績改善を背景に設備投資意欲が高まる中、国内のITサービス市場は、既存システムの刷新やクラウド移行、DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進に関する需要が拡大し、底堅い成長を続けております。

 個人の働き方におきましては、人生100年時代におけるシニア世代の働き方、女性の活躍推進、日本国政府の掲げる働き方改革、企業を取り巻く終身雇用の崩壊等により、多様な働き方を望む個人が増加しており、組織に依存しない働き方が広がっております。加えて、高度な技能を有するプロ人材は、高い専門性を磨き「一社に雇用されるのではなく、専門性を活かし複数社で価値を発揮する」志向性を持った働き方が増加しております。

 企業も、少子高齢化による労働力の減少、地方中小企業の事業承継問題、大手企業のイノベーションのジレンマ等、我が国の経済発展において多くの課題を抱えております。

 従来の企業と個人が「雇用」という形で繋がるというあり方では、これらの課題に対応することが困難な状況になっております。「雇用」に縛られない多様な働き方を望む個人と、外部のプロ人材による経営改革を進めたい企業が、時間や場所、組織の枠組み等の制限を超えて、協業できる仕組みが必要になっていくと考えられます。

 このような状況のもと、当社は、「世界中の経験・知見が循環する社会の創造」というビジョンを掲げ、「プロシェアリング」事業を展開し、順調に業績を伸ばしております。当社主力サービスである「プロシェアリングコンサルティング」サービスは、世の中の法人企業が抱える経営課題を外部プロ人材の力で解決支援するサービスであります。また、「FLEXY(フレキシー)」サービスは、企業のITに関する経営課題をDXによって解決支援するサービスであります。「プロシェアリングコンサルティング」サービス、「FLEXY」サービスの売上高は、「平均月次稼働プロジェクト数×平均月次請求単価×12ヶ月」により算出されます。

 我が国の労働環境においては、労働人口減少による人手不足や働き方改革に加え、オープンイノベーションによる経営改革やDXによる業務効率化を推進する企業が増加する等、外部プロ人材活用の需要が堅調に推移いたしました。また、新型コロナウイルス感染症に係る過去の緊急事態宣言を経て、当社登録のプロ人材による法人顧客へのWeb MTG等を用いたリモート支援が定着しております。

 適時開示にて公表しております2023年4月18日付「代表取締役の異動に関するお知らせ」及び、同年4月20日付「代表取締役退任の開示に関する経過報告及び新経営体制に関するお知らせ」による影響につきましては、営業活動の一時的な遅延の発生、また稼働中プロジェクトの一時休止や契約満了後の継続契約停止等は、第1四半期までの限定的な影響と捉えております。一方で、2024年6月21日付「前代表取締役の保有する当社株式の処分の完了に関するお知らせ」の通り、前代表及び前代表の資産管理会社が当社の株式を保有しないことになったことを受け、一部休止中のアライアンス契約済み銀行からの顧客紹介の再開が見込まれますが、当事業年度におきましてはその影響は軽微であります。また、新規受注につきましては、新規入社者の立ち上がりが引き続き課題となっており、改善の兆しは見えてきたものの想定を上回ることができませんでした。

 その結果、当事業年度は平均月次稼働プロジェクト数が1,137件(前事業年度の平均月次稼働プロジェクト数は1,259件)となり、減少しております。一方で、請求単価につきましては提案の質が向上し、当事業年度は550千円(前事業年度の請求単価は527千円)と増加しております。新規入社者の生産性につきましては、立ち上がりスピードをできる限り早め、早期業績貢献を図るべく、育成体制の更なる増強を進めて参ります。プロシェアリング事業を取り巻く日本市場の成長は今後も加速していくと見込んでおり、またDXニーズもより堅調に推移することが見込まれることから、現在直面している課題を確実に克服し、事業の成長と競争力向上を図って参ります。

 以上の結果、その他サービスの売上高も加味し、当事業年度における売上高は7,661,206千円(前年同期比6.0%減)となりました。費用につきましては、厳選した中途採用を行ったため、採用関連投資は縮小しております。一方、社内DXの推進に積極的に取り組んでおり、システム投資は増加傾向にあります。また、特別損失として、前代表退任に関連し発生した一連の費用をクライシス対応費用として計上しておりますが、当該費用につきましては前代表に求償の上、合意した金額を受取補填金として特別利益に計上しております。その結果、営業利益は266,798千円(前年同期比53.1%減)、経常利益は271,929千円(前年同期比52.3%減)、当期純利益は176,725千円(前年同期比52.1%減)となりました。また、当社は「プロシェアリング」事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における資産合計につきましては、前事業年度末と比較して、312,017千円減少し、3,435,033千円となりました。これは主に、法人税等の納付や自己株式の取得に伴い、現金及び預金が287,985千円減少したこと、また、売掛金及び契約資産が62,641千円減少したことによるものです。

 

(負債)

当事業年度末における負債合計につきましては、前事業年度末と比較して225,787千円減少し、816,203千円となりました。これは主に、未払法人税等が132,801千円、未払消費税等が37,286千円、賞与引当金が15,854千円減少したことによるものです。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末と比較して86,229千円減少2,618,829千円となりました。これは主に、自己株式306,838千円を取得した一方で、当期純利益等の計上により、利益剰余金が117,927千円増加したことに加え、当社取締役及び執行役員を割当対象とし、中長期的な企業価値向上を目的とした譲渡制限付株式報酬制度導入により、自己株式90,618千円を処分したことによるものです。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末と比べ287,985千円減少し、2,355,543千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りとなります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、22,970千円の収入となりました。

収入の主な内訳は、税引前当期純利益259,382千円、売上債権の減少 65,904千円、減価償却費 32,225千円、前代表からの補填金の受取額 39,640千円であり、支出の主な内訳は、法人税等の支払額 235,329千円、前代表退任に伴うクライシス対応費用に係る支出 96,808千円、未払消費税等の減少 37,286千円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、16,180千円の支出となりました。

支出の主な内訳は、パソコンの購入等に係る有形固定資産の取得による支出 9,440千円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、294,775千円の支出となりました。これは、自己株式取得による支出 306,838千円及びストックオプションの行使による収入 12,062千円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社の行う事業は提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略いたします。

 

b.受注実績

当社の行う事業は提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略いたします。

 

c.販売実績

当事業年度の販売実績は、次の通りであります。なお当社はプロシェアリング事業の単一セグメントであるため、サービス別に記載しております。

 

サービス

前事業年度(千円)

当事業年度(千円)

前年度比(%)

プロシェアリング

コンサルティングサービス

4,358,196

4,294,137

98.5

FLEXYサービス

3,567,405

3,179,752

89.1

その他

220,546

187,316

84.9

8,146,148

7,661,206

94.0

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。

また、財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高

 当事業年度における売上高は7,661,206千円(前年同期比6.0%減)となりました。主な要因は、提案の質が向上し、平均月次請求単価が増加したものの、平均月次稼働プロジェクト数が前事業年度は1,259件から、当事業年度は1,137件と減少したためであります。

 

b.売上総利益

当事業年度における売上総利益は、プロジェクト件数の増減による売上高の推移と併せ、3,091,643千円(前年同期比7.3%減)となりました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

当事業年度における販売費及び一般管理費は、社内DX推進、ウェビナー施策を推進するためのマーケティング投資等を行い、営業利益は266,798千円(前年同期比53.1%減)となりました。

 

d.経常利益、特別利益、特別損失、税引前当期純利益

当事業年度における営業外収益は7,807千円、営業外費用が2,676千円となり、その結果、経常利益は271,929千円(前年同期比52.3%減)となりました。

当事業年度における特別利益は57,235千円、特別損失が69,782千円となり、その結果、当事業年度における税引前当期純利益は259,382千円(前年同期比54.5%減)となりました。

 

e.法人税等、当期純利益

当事業年度における法人税、住民税及び事業税は73,445千円、法人税等調整額は9,210千円となり、法人税等は82,656千円となりました。この結果、当事業年度における当期純利益は176,725千円(前年同期比52.1%減)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 
④ 資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金需要の主なものは、プロシェアリング事業の拡大を受け、プロ人材への業務委託費用のほか、人材獲得、維持に係る人件費、当社サービス浸透のための広告宣伝費、サービスの品質維持及び向上のためのシステム関連費等であります。当社は、事業運営上必要な資金の流動性と財源を安定的に確保しながら、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入による資金調達を基本とし、必要に応じてエクイティファイナンス等による資金調達を検討する予定です。なお、資金調達手法の優先順位は、資金需要の額や用途に合わせ柔軟に検討を行う予定であります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

シンプレクス・ホールディングス株式会社との資本業務提携に係る契約の締結)

当社は、2024年4月18日開催の取締役会において、シンプレクス・ホールディングス株式会社との資本業務提携に係る契約を締結することについて決議し、同日付で締結をいたしました。詳細は、2024年4月18日付適時開示「シンプレクス・ホールディングス株式会社との資本業務提携に関するお知らせ」に記載の通りであります。

 

(資本業務提携、株式の売出し、当社の主要株主である筆頭株主、その他の関係会社及び主要株主の異動に関するお知らせ)

当社は、2024年6月3日開催の取締役会において、株式会社クラウドワークス及び株式会社PKSHA Technologyとの間でそれぞれ資本業務提携に係る契約を締結することについて決議し、同日付で締結をいたしました。詳細は、2024年6月3日付適時開示「資本業務提携、株式の売出し、当社の主要株主である筆頭株主、その他の関係会社及び主要株主の異動に関するお知らせ」に記載の通りであります。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。