文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は、医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(医薬品、医療機器、人工知能(AI)ソリューション等)を、医師と共に医療現場で研究開発し、医療イノベーション創出に貢献し続けることで、ヒトが心身共に生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造することを経営理念として掲げています。
医薬品産業も、低分子医薬品を中心とした開発から、バイオ医薬品(抗体医薬、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療)へと、モダリティが多様化しつつあります。さらには近年の工学系や情報系技術の進歩により、情報・工学技術との融合による新たな医療の模索も進んでおり、欧米や国内の大手製薬企業では既に医薬品単体のビジネスから医療ソリューション全般にわたるビジネスへと転換を迎えており、学際研究領域での開発が注目されています(図表25)。そのため、これまでの当社の主体である化学系や生物系の研究に加えて、今後工学系や情報系の研究にも視野を広げ、多彩で魅力ある研究と事業のポートフォリオを創生したいと考えます。当社は、新しいモダリティについても、大学など公的研究機関などで発掘されたシーズを育成し、大手企業へつなぐ医薬品等の開発に向けたエコシステムに貢献できると考えます。革新的な次世代医療創出のために、ヘルスケア産業における「医・薬・工」の異分野融合等、産学官オープンイノベーションを推進していきます。
<図表25 医療の変遷とイノベーション>

□ 多様なモダリティー:低分子からバイオ医薬品、ビッグデータや人工知能(AI)の活用
□ ブロックバスター(多数)から個別化医療(個)への転換
□ 基礎研究から実用化までの期間の短縮(イノベーションの加速)
□ ベンチャーの果たす役割の拡大
ポストコロナ時代には、ウェットラボ(化学系、生物系)に加えて、ドライラボ(情報工学系)の研究、特に人工知能(AI)を活用した効率的な研究がライフサイエンス領域でも、間違いなく台頭すると予測されます。医師主導治験の患者選択、治験デザイン、データ解析などにもAIがますます活用されていくはずです。これまで当社の事業パートナーは、製薬企業が主でしたが、最近は、医工学機器企業、IT企業との研究及び事業開発連携にも注力しています。多彩な分野の企業との研究開発及び事業開発連携を行うことが魅力あるポートフォリオを創生する上で重要と考えます。
当社は、多くの国外の大学と基礎研究を展開してきましたが、今後は更に国外での臨床研究にも注力いたします。日本で開発された新薬を、国外に展開するための鍵は、① グローバルで通用する知的財産権(新規医薬品化合物を含めた物質特許) ② グローバルに通用するデータやマテリアル ③ グローバルな研究開発を推進できる体制です。国際的に通用する高品質な非臨床データパッケージや治験薬を揃えること、各国規制当局との連携を図ること、グローバルな視点から開発できる様な枠組みが重要と考えます。これまでに、米国ノースウェスタン大学(新型コロナウイルス感染症)、トルコメデニエット大学(新型コロナウイルス感染症)、オランダマーストリヒト大学(糖尿病)の3つの臨床試験を国外の大学・医療機関と共同で実施しています。
世界保健機関(WHO)は、近年では老化関連疾患(非感染性疾患)にも注力しており、がん、心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患の4疾患を非感染性疾患としています(世界の全死亡に占める71%の原因)。当社の開発品目は、がん、心血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患という4疾患を全て対象としており、先進国のみならず新興国でも重要な医薬品となり、国際社会に広く貢献できると考えます。
これまでの製薬企業や創薬ベンチャーの多くはパイプラインのバリューチェーン(開発の全ての工程を積み上げていく)を自社で全て構築し、事業価値を高めることに注力してきました。しかし、医薬品のように成功確率が極めて低く、開発期間が長く、投資が大きな分野では研究開発及び事業リスクが大きいため、多くのパイプラインを組み合わせたポートフォリオを形成し、リスク分散をすることが不可欠です。大手製薬企業は潤沢な資金を背景に、多くはパイプラインのバリューチェーンを自社独自で形成するという既存の枠組みでの開発ができますが、ベンチャーのように資金が潤沢でない場合なかなか難しいです。
当社は外部機関(研究機関、医療機関、CRO/ARO)の資源を最大限活用し、コストを含めた開発効率を最大限高めるための開発を実践してきました。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理などが異なります。研究所も持たず、少ない人的リソースや経費で多くのパイプラインを広げ、モダリティも展開できていますので、確実に実績もあげています。すなわち、昨年度は11名の役職員(非常勤取締役及び監査役を除く)で8件の臨床開発段階のパイプラインを稼働し、また、これまでに52の医療機関と共同で21件の医師主導治験を実施しています。さらに、AI医療ソリューションを含む8つのパイプラインについて事業会社と提携しました。自己資源や社内環境のみに注力するのではなく、むしろ外部資源や外部環境に注力し、効率的にイノベーションを創出するプラットフォームが形成できれば大きな成長が期待できます(図表26)。
<図表26 当社の構築するパイプライン構築プラットフォームの拡大による成長>

□ 自社でバリューチェーンを生み出すモデルではなく、プラットフォーム形成でエコシステムを実現
□ 少ないリソースで最大価値を創出する優位性(コミュニティから価値を引き出し、価値をもたらす)
現在、研究開発段階にある当社は、ROA、ROEその他の数値的な目標となる経営指標等は用いておりません。当社は、医薬品のパイプライン(医薬品候補群)の一部を製薬企業やベンチャー企業に導出済で、加えてオプション契約及び共同研究契約等を締結し、契約一時金などの収益を上げており、現在医薬品候補品はすべて研究開発のステージにあります。また、医療機器開発におきましても、ディスポーザブル極細内視鏡の検証的試験を終了し、グローバル医療機器企業への導出及び導出先による製造販売申請について準備を行っておりますが、契約一時金及び一部のマイルストーン以外は事業収益の計上には至っておりません。研究開発パイプラインの進捗状況等に目標を置いた事業活動を推進すると共に、既存医薬品候補群の適応症拡大、新モダリティ(低分子化合物以外の医薬品)を含む新規プロジェクトの導入と開発、更には人工知能(AI)を用いた医療ソリューションを提供するための新規事業開発などを質・量ともに充実させることが、企業価値を高め、経営を安定させる上での不可欠な目標と認識しております。当該目標達成のために、共同研究や事業提携を推進すると共に、より充実した研究・開発体制の確立のための研究開発・設備投資等の施策を推進して参ります。
バイオベンチャーの取り組む最先端医療分野は、環境変化のスピードが極めて早いと考えられ、潜在的な競争相手に先行し、他社の知的財産権を上回る開発をする必要性があります。医薬品もこれまでの化学を基盤とする低分子と異なり、近年は抗体医薬、核酸医薬や遺伝子治療といったバイオ医薬品が主流に成りつつあります。さらに、今後は、ビッグデータやAIなど情報系技術を取り入れていかないと、競争の激しい医療分野での開発は難しくなります。医療のあり方もブロックバスターから個別化医療へ大きく変遷しています。一方、技術は日進月歩で進んでいます。重要なことは、最先端の研究、技術、シーズをいち早く取り入れる枠組み、速やかに臨床現場で実証することと考えます。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な蔓延で、研究のあり方も変わりつつあります。ウェットラボ(化学系、生物系)での研究制限が生じる一方で、リモート研究で実施できる情報工学系のドライラボ研究、特にAIを活用した効率的な研究がライフサイエンス領域でも必要とされています。
また、病院への受診制限や自粛のため新型コロナウイルス感染症に伴い病院を受診する患者数が減少することにより、治験を実施するための患者登録が遅延したり、治験支援のための開発業務受託機関(CRO)などの病院への訪問機会が減少するなど、治験の進捗は、未だコロナ禍前に戻ってはいません。特に、医師主導治験を実施している医療機関でクラスターが発生する場合には臨床試験にも影響が出ます。現時点では、月経前の精神症状以外は健常な女性を対象とするPMS/PMDDの医師主導治験において、新型コロナウイルス感染症のために病院への受診率が低下しており、患者登録が遅延気味のために、実施医療機関数を増加したり、治験の案内や種々啓発活動など対応を講じています。
① コーポレート・ガバナンス及び経営体制の強化
当社は、事業環境の変化に対応した迅速な意思決定を重視しておりますが、経営の効率性を一層高めるとともに、継続的な事業発展、持続的な企業価値の向上に資するようコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、これまで以上にステークホルダーに公正な経営情報を開示し、その内容の適正性を確保して参ります。
また、内部統制システムを整備・運用し経営の健全性、透明性並びにコンプライアンスの徹底に努めておりますが、これを一層徹底する目的で、2022年6月29日開催の第23回定期株主総会において監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。
監査等委員会設置会社移行後は、監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与することで監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制の強化及びさらなる企業価値向上を図って参ります。また、これに併せて執行役員制度を導入し、経営の監督機能である取締役会からの権限委任を通じた業務執行体制を図ることとしております。
② パイプラインの拡充・モダリティの多様化
当社は、多様な研究領域・疾患領域にわたる研究機関・医療機関との共同研究を行っていますが、さらに外部機関との共同研究を推進し、既存医薬品候補群の適応疾患を拡大することが重要と考えています。このため、自社シーズをオープンリソースとして外部研究者に提供して、ドラッグリポジショニング研究を推進し事業化に適切なプロジェクトを選択し医師主導治験を活用した臨床開発を実施して参ります。
また、医薬品産業も、低分子医薬を中心とした開発から、バイオ医薬品(抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療、細胞治療など)へと、モダリティが大きく多様化しつつあります。更には近年の工学系や情報系技術の進歩により、情報・工学技術との融合による新たな医療の模索も進んでおり、欧米や国内の大手製薬企業では既に医薬品単体のビジネスから医療ソリューション全般にわたるビジネスへと転換を迎えており、学際研究領域での研究開発や新規事業開発が注目されています。今後は、多様なモダリティのシーズ獲得だけではなく、工学系や情報系の研究にも視野を広げ、多彩で魅力ある研究と事業のポートフォリオを創生することが課題です。
③ 人工知能(AI)研究の加速
人工知能(AI)を活用した効率的な研究がライフサイエンス領域でも重要になっています。医師主導治験の患者選択、治験デザイン、データ解析などにもAIがますます活用されていくはずです。これまで当社の事業パートナーは、製薬企業が主でしたが、最近は、医工学機器企業だけではなく、日本電気株式会社やNECソリューションイノベータ株式会社といったIT企業との研究及び事業開発連携にも注力しています。多彩な分野の企業との研究開発及び事業開発連携を行うことが魅力あるポートフォリオを創生する上で重要と考えます。今年度には10プロジェクト程度まで拡大する予定です。これらのパイプラインについての提携(共同研究、オプション、ライセンス等)により早期に収益につなげること、特に安定収入となるロイヤリティの獲得が重要と考えます。
④ 医師主導治験の推進
当社は、医療現場のニーズを出発点として研究開発に着手し、医療現場で研究開発を展開することに軸足をおいて事業開発を行っております。優れた技術があっても、医療現場の課題やニーズに合致しなかったり、医療現場のスペックに不適切であるなどの理由から、医療応用(実用化)が難しい事例は多く、技術を有する多くの企業でもこの問題に直面しています。当社は、これまでに蓄積してきた多くの医師や医療機関とのネットワークから、多くの診療科、更には複数診療科にわたる開発が可能で、開発領域も特定の疾患に偏っていません。当社の医薬品・医療機器開発における開発パイプラインの多様性と21件に至る医師主導治験(多くの疾患・診療科・医療機関)の実績は、当社の有する医療機関とのネットワークと医療現場を重視する特徴の証です。当社には、医師主導治験の経験やノウハウが蓄積されていますが、これを更に加速することで事業価値を向上できると考えております。
当社では6本のパイプラインが第Ⅱ相試験(医薬品候補の有効性/安全性を確認する試験)段階以上にあり、特に慢性骨髄性白血病は有効性/安全性を確認済みで、現在検証試験(第Ⅲ相試験)を実施しています。これらのパイプラインを早期に導出することにより契約収入を得ること、特に安定的なロイヤリティ収入を獲得することが重要と考えます。
⑤ 研究助成金の獲得
東北大学からの新規シーズ導入、及び東北メディカルメガバンク機構、量子コンピューター、次世代放射光施設などの先端科学技術インフラ活用のため、2022年1月に、東北大学医学部メディシナルハブに東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(TREx)を開設しました。TRExには、研究員を含むレナサイエンス従業員が常駐しています。TRExに医師、先端分野の研究者、異分野業種研究者、行政関係者、ベンチャー関係者などが集い、「医・薬・工」の異文化を融合し革新的な次世代医療創出を図ってまいります。本拠点を最大限に活用して研究開発を加速化するため、常駐者複数名を新たに採用するなどTRExをさらに整備・拡充することが課題と考えます。
⑥ 優秀な人材の獲得
当社が取り組む医療分野は、今後、国内外バイオ・製薬企業との競争が激化することが予想され、より一層の研究開発の加速と競合他社との差別化が必要になると考えます。そのため、創造的かつ独創的な研究活動を推進し、会社の経営を支える優秀な人材の獲得は、当社の重要な経営課題になっています。
⑥ 財務基盤の拡充
当社は、2021年9月に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、公募増資及びオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資により総額1,653,616千円の資金調達を行いました。この調達資金を活用して、既存のパイプラインの開発、新規プロジェクトの導入と開発、更には人工知能(AI)を用いた医療ソリューション開発を推進します。
医薬品の研究開発、特に医師主導治験の実施には多額の開発費が必要であり、同時に開発リスクを伴います。そこで当社は、公的研究助成金を積極的に活用することで、これらリスクの高い医師主導治験に要する研究開発費の負担を補うことも重要と考えます。今後、新規プロジェクトの数と実施すべき医師主導治験の数が増加していくことからも、引き続き公的研究助成金を積極的に獲得し活用していくことが、当社の重要な経営課題であると認識しています。
当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。なお、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありません。
当社は、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。
また、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
当社は、研究の初期段階の探索的研究から第Ⅱ相臨床試験に至るまで、幅広い段階の医薬品開発の経験を有しておりますが、研究の初期段階から医薬品の製造販売の段階に至るまでには、数多くの課題・項目をクリアし、規制当局からの承認及び認可の取得を要し、薬事規制等の法的な規制にも対応していく必要があります。そのため、長期間に及ぶ研究開発体制を維持するために多額の資金を必要とします。また、新規の医薬品候補開発の市場は、国内外を問わないことから、資金力の豊富な国際的な製薬企業や、国内においても多くの企業・研究開発機関と競合しております。
当社の主たる事業は、医薬品候補物質の有効性及び安全性を評価するための初期段階の研究開発(探索的研究、非臨床試験、初期臨床試験等)をアカデミアや研究機関との共同研究及び医師主導治験などの創薬エコシステムを活用して行い、その後、製薬企業等に対して当社が有する医療機器・医薬品候補物質の開発製造販売に係る知的財産権の使用実施許諾(ライセンスアウト)を行い、当該製薬企業等からライセンス収入を得るものです。
ライセンス収入の形態は、ライセンス契約締結時に発生する契約一時金、開発進捗に伴って発生するマイルストーン収入(臨床試験の開始や終了時又は製造販売承認申請時等の予め定めた開発の節目(マイルストーン)毎に支払われる収入)、上市後において導出先である製薬会社が行う医薬品販売に対するロイヤリティ収入等があります。
ライセンス契約の締結は、製薬企業から、それまでの研究開発で得られた医薬品候補物質の有効性及び安全性、並びに予想される対象患者数や薬価、特許存続期間等の事業性に関して一定の評価を獲得する必要があります。従って、製薬企業から研究開発成果に対する評価が得られない可能性、研究開発の遅延により想定どおりのタイミングで評価されない可能性、想定どおりの評価が得られず、契約一時金をはじめ上記の各種収入を当社の想定する規模の金額で契約できない可能性、当社が想定するタイミングでライセンス契約を締結できない可能性又はライセンス契約に至らない可能性があります。
また、導出後も次の開発段階に進むために必要な臨床試験成績が得られない可能性、開発途中で競合新薬・医療機器の上市、疾病の治療法そのものの変化のほか、特許係争の発生等で事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性やライセンス契約解消に至る可能性があります。
更に上市に至った場合においても、薬価が当初の想定を大きく下回ることや、市場環境等の状況が当初の想定より悪化する可能性がありますが、このような場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
マイルストーン収入及びロイヤリティ収入の発生については、導出先製薬企業等の研究開発の進捗及び医薬品発売・販売の状況等に依存するものであることから、営業収益として計上されるまでに長期間を要する可能性があり、また、マイルストーンを達成できない場合、これらの営業収益が計上されない可能性があります。
更に契約一時金収入、マイルストーン収入は継続的な収入ではなく、創薬に係る一定の条件の達成等を前提として一時的に発生する収入であることから、当該収入の計上時期により、年度決算・四半期決算の売上高・利益等が非連続的に偏重する可能性、年度決算比較・四半期決算比較の売上高・利益等において大幅な変動・乖離が生じる可能性があります。
また、上記の収入の計上時期が想定から遅れた場合、決算短信で公表する業績予想が大幅に変更される可能性があります。
当該リスクへの対応については、パイプラインプロジェクトの数を増やすと共に、複数の医薬品・医療機器開発等経験者及びビジネスディベロプメント経験者を社内外に確保するよう努めております。また、研究開発の開始時から開発の体制・期間・資金、知財、薬事などロードマップを明確にして取り組んでいますが、特に出口の戦略を重視しています。研究開発の初期から導出候補企業と導出条件などを協議しながら、なるべく出口の方針が定まった後に開発を実施しています。さらに、自社シーズを、オープンリソースとして外部研究者に提供し研究いただくことで新たな医療用途を発見し、この中から科学性、医学性、経済性(事業性)の観点から取捨選択し医師主導治験に繋げることで、自社シーズの価値向上に努めています。
当社が開発している医薬品候補物質が上市に至るまでには、有効性及び安全性の評価に関する数多くの探索及び検証並びに規制当局からの承認が必要とされます。研究開発の各段階において、次の段階へ進むか否かの判断は、導出前であれば当社が、導出後であれば導出先製薬企業が行いますが、有効性及び安全性に良い評価が得られなかった場合、外部環境の変更等で事業性の喪失が懸念された場合などには、次の研究開発段階への進行が遅れる可能性、研究開発自体を中止・終了せざるを得ない状況になる可能性があります。
当社は、医薬品開発の不確実性を低減するために、試験の設計及び実施においては、外部の開発ターゲットの疾患領域に精通する医師(キー・オピニオン・リーダー)、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び製剤の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)及び規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験の立案と実施を行っております。
しかし、予めすべての要因を想定することは困難であり、研究開発中であれば研究開発の遅れや中止の可能性、製造販売承認申請後であれば国内外の規制当局から追加の臨床試験を求められ又は承認が得られないなどの事態が発生する可能性があります。
研究開発が遅れた場合や追加試験が必要となる場合には、計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となる可能性があり、また、その資金調達の実現自体にも不確実性があります。更に、ライセンス契約の存続期間は、特許権の存続・有効期間が終了するまでの期間とされることもあり、その場合ライセンス契約中にマイルストーンが達成できず、当初想定した投資回収額を回収できないリスクがあります。
研究開発を中止・終了せざるを得ない状況になった場合又は研究開発を終えて製造販売に関する承認申請を規制当局に行っても規制当局から承認されなかった場合には、当初想定していた投資回収額を回収できないリスクがあります。これらの事象が発生した場合、当社のような規模においては影響が大きく、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、試験の設計及び実施においては、外部の開発ターゲットの疾患領域に精通する医師、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び製剤の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)並びに規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験の立案と実施を行っております。
当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価制度及び医療保険制度並びにその他の関係法規・法令による規制が存在します。
非臨床試験においては、医薬品の安全性試験の実施に関する基準であるGLP(Good Laboratory Practice)、原薬等の治験薬の製造においては、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準ずる治験薬GMP、そして臨床試験においては、医薬品の臨床試験の実施に関する基準であるGCP(Good Clinical Practice)を確実に実施していることが研究開発上必須条件となっており、製造販売の段階においては、販売を行う各国で定められている薬事関連法規・法令に従った承認・認可・許可を得る必要があります。
当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準を遵守した治験実施計画を基に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展、市場の動向などにより適宜改定されます。
医薬品等の開発・販売等事業は、年単位の長期間にわたる事業であり、その間にこれらの法律・法令・基準等が大きく改定される可能性、これら法令等が変更される可能性があります。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金の確保が必要となるリスク等があり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、治験の実施や計画立案の前に、可能な限り医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの事前相談を活用して、適切な助言を受けるよう心がけています。
当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。
競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合、当社の事業の優位性は低下する可能性があります。競合他社による新薬の登場により当社の臨床試験において被験者の登録が停滞し臨床試験が遅延する可能性、目標被験者数に届かず臨床試験が中止となる可能性があります。また、この場合、当社事業において想定以上の資金が必要となる可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
更に、競合する新薬の開発が先行し又は競合新薬が上市されたことにより、当社の医薬品候補物質の事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売した場合など、期待された売上が達成できず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、①パイプラインプロジェクトを増やし、リスクの軽減を図り、②プロジェクト毎の開発計画を戦略的に策定し、経営会議などで計画を審議することで競合の少ない適応症獲得を図るように努めております。
新型コロナウイルス感染症に伴い病院を受診する患者数が減少することにより、治験を実施するための患者登録が遅延し、治験支援のためのCROなどの病院への訪問機会が減少するなど、臨床開発の制限や遅延の可能性があります。
当該リスクへの対応ですが、当社は企業治験ではなく主に医師主導治験を主に実施しており、医師自らが治験を実施し、治験実施医療機関は医師が所属する大学等の公的医療機関が主です。治験の調整(治験調整事務局)は、医薬品受託会社(contract research organization: CRO)などの外部機関ではなく、治験実施医師が所属する大学等の内部機関であるAcademic research organization (ARO)を活用します。さらに、治験全般業務を支援する人材も、大学等の公的医療機関に所属する治験コーディネーター(Clinical research coordinator, CRC)が活用できる場合は、外部期間の治験実施機関(Site management organization, SMO)ではなくCRCを主体に治験を実施します。このように、医療機関の内部組織を活用することで、新型コロナウイルス感染症に伴う病院への訪問機会の減少に対応しています。治験調整医師(治験の代表医師)が主体となってリモート会議を行い、治験責任医師(各医療機関の責任医師)と密に進捗管理を行っています。患者登録の治験が見込まれる場合は、治験実施施設数を増加するなど適切な対応を講じて頂きます。
当社は、本書提出日現在、取締役6名(非常勤取締役3名を含む。)、執行役員3名、従業員4名及び臨時雇用者6名の小規模組織であり、現在の内部管理体制はこのような組織規模に応じたものとなっています。今後、業容拡大に応じて内部管理体制の拡充を図る方針であります。
また、当社の事業活動は、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発人員に強く依存するところがあります。そのため、優秀な人材の育成に努めておりますが、人員確保及び育成が順調に進まない場合、並びに人材の流出が生じた場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、①経営理念、経営戦略を随時社内に浸透させ、やりがいのある会社風土を醸成し、②HP改修、公的資金の獲得等による知名度向上により新規採用を図るように努めております。
当社はこれまで、創業者であり、多くの社有特許の発明者でもある国立大学法人東北大学大学院医学系研究科の宮田敏男教授(現 当社取締役会長)を中心として、基礎研究をはじめとする事業を推進してまいりました(宮田敏男教授は、PAI-1阻害薬物質特許、用途特許及び用法用量特許、並びにピリドキサミン用途特許及び物質特許の発明者)。当社設立の発端は、同氏の研究成果の事業化を目的とするものであり、当社の研究開発活動において重要な位置付けを有しており、その依存度は極めて高いと考えております。
当社は、今後も取締役会長としての同氏の会社経営の執行が必要不可欠であると考えており、何らかの理由により同氏の会社経営の執行が困難となった場合等には、当社の事業等に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、情報管理について、情報セキュリティ管理規程、個人情報取扱要領、特定個人情報取扱要領、情報セキュリティ・マニュアルに沿って情報セキュリティ管理担当取締役である管理管掌取締役が中心となって運用を行っておりますが、当社の研究又は開発途上の治験、技術、ノウハウ等、重要な機密情報が流出した場合には当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このリスクを低減するため、当社は役職員、取引先との間で、守秘義務契約等を定めた契約を締結しております。また、重要な機密情報を含む社内クラウドサーバーへは必要最低限の役職員のみしかアクセス出来ない様にするなど、厳重な情報管理に努めております。
しかし、役職員、取引先等により、これらが遵守されなかった場合には、重要な機密情報が漏えいする可能性があり、このような場合には当社の事業に影響を与える可能性があります。
当社は研究開発活動において様々な特許等の知的財産権を保有しております。しかし、当社の研究開発を超える優れた研究開発が他社によってなされた場合や、当社の出願した特許申請が成立しないような場合にも、当社の事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、①競合品の開発状況を随時把握し、プロジェクトの優先順位付けを行い、②パイプラインを増やし、リスクの軽減を図るように努めております。
当事業年度末において、当社の事業に関連した特許等の知的財産権に関して、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありません。当社は現在、早期の特許出願を優先する方針をとっており、特許出願後において事業展開上の重要性等を考慮しつつ必要な調査等の対応を実施しておりますので、本書提出日現時点においては他社が保有する特許等への抵触により、事業に重大な支障を及ぼす可能性は低いものと認識しております。もとより、当社のような研究開発型企業において、この様な知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。
今後において、当社が第三者との間で法的紛争に巻き込まれた場合には、弁護士や弁理士との協議の上、その内容に応じて対応策を講じていく方針でありますが、法的紛争の解決に多大な労力、時間及び費用を要する可能性があり、その場合当社の事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、顧問弁護士の2事務所と連携し訴訟及びクレーム等に迅速に対応する体制としております。
2005年4月1日に施行された特許法の法改正に伴い、職務発明の取扱いにおいて、労使間の協議による納得性、基準の明示性、当事者の運用の納得性が重視されることとなりました。これを受けて、当社では経営陣と研究開発部門とが協議の上、発明考案取扱規程を作成し運用しております。しかし、将来係る対価の相当性につき紛争が発生した場合には、当社の事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社の外部委託先である製造施設等において、技術的・規制上の問題若しくは自然災害・火災などの要因により生産活動の停滞・遅滞若しくは操業停止などが起こった場合、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、現在、当社のパイプラインは低分子化合物かつ製造施設は容易に代替可能であり、原薬及び治験薬製剤製造委託候補施設を複数確保するように努めております。
当社は研究開発型企業であり、ロイヤリティ収入が得られるようになるまでは営業収益が安定せず多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。そのため、第18期(2017年3月期)から第23期(2022年3月期)まで連続して当期純損失を計上したことにより、第23期末においてマイナスの繰越利益剰余金を計上しております。
当社は、将来の利益拡大を目指しておりますが、将来において計画どおりに当期純利益を計上できない可能性があります。また、当社の事業が計画どおりに進展せず当期純利益を獲得できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります。
当社は、研究開発型企業として、医薬品の臨床試験を実施する開発パイプラインの拡充や積極的な創薬研究等により、多額の研究開発費が必要となっております。一方で、特に、医薬品の開発期間は基礎研究から上市まで通常10年以上の長期間に及ぶものでもあり、収益に先行して研究開発費が発生している等により、継続的に営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローが生じております。今後も事業の進捗に伴って運転資金、研究開発投資等の資金需要の増加が予想され、収益確保又は資金調達、資金繰りの状況によっては、当社の事業活動等に重大な影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応については、営業キャッシュ・フローの早期黒字化に加え、金融機関との取引実績を積み重ねること等により、安定した資金調達を行えるようにします。
本書提出日現在において、当社は税務上の繰越欠損金を有しております。当社の業績が順調に推移する結果、繰越欠損金が解消され課税所得控除が受けられなくなった場合、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられることとなり、現在想定している当期純利益及びキャッシュ・フローの計画に影響を与える可能性があります。
当社は、海外企業とライセンス契約を締結しており、主に外貨建での決済が行われておりますが、当社においては特段の為替リスクヘッジは行っておりません。そのため、想定以上に為替相場の変動が生じた場合には、当社の業績はその影響を受ける可能性があります。
今回、当社が実施する公募増資資金の使途については、主に研究開発費に充当する計画であります。しかしながら、資金需要の発生時期及びその規模については大幅に変更される可能性があり、当社の事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。調達資金の使途を変更した場合には直ちに開示する予定です。
当社の取締役会長である宮田敏男及び二親等内の親族の実質議決権所有割合は、当事業年度末日現在で48.46%です。同株主等は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求すると共に、少数株主の利益にも配慮する方針です。やむを得ない事情により、大株主である同株主等の持分比率が低下する場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度末における当社の発行済株式のうち、ベンチャーキャピタル(VC)が組成した投資事業有限責任組合が所有している株式の所有割合は15.56%であります。一般に、VCが未公開株式に投資を行う目的は、株式上場後の当該株式を売約してキャピタルゲインを得ることであり、VCは当社の株式上場後に、それまで保有していた株式の一部又は全部を売却することが想定されます。なお、当該株式売却によっては、短期的な需給バランスの悪化が生じる可能性があり、当社株式の市場価格が低下する可能性があります。
当社の経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)及び研究開発活動の概要は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
なお、当社は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)を当事業年度の期首から適用しておりますが、これによる損益影響はありません。
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)とそれに伴う各国政府の「緊急事態宣言」発令等が影響し、世界的な経済活動の停滞と移動制限等により、景気は厳しい状況となっております。年度後半にかけては、世界的に新型コロナウイルスの感染が再度拡大し、国内外の経済を下振れさせるリスクが意識されております。
医薬品業界におきましては、患者の受診抑制、顧客への訪問自粛等で販売営業活動に支障が出たほか、移動制限等に伴う、国内出張の自粛、海外渡航の実質的禁止、臨床試験施設の閉鎖により、事業開発活動が遅滞する例が散見されました。このような業界の動向は、創薬研究事業を営む当社が行っているRS8001PMS / PMDD やRS8001自閉症に係る医師主導治験の進捗や販売(ライセンス)活動におきましても治験等の進捗が遅れるなど、少なからず影響を与えております。
このような環境下において、当社は、医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(医薬品、医療機器、人工知能(AI)ソリューション等)を、医師と共に医療現場で研究開発し、医療イノベーション創出に貢献し続けるべく事業活動を行っております。
当事業年度における事業収益は、RSAI02慢性透析システム支援における契約一時金の受領、RS9001ディスポーザブル極細内視鏡におけるマイルストーン収入の計上、RSAI01呼吸機能検査診断システムにおけるマイルストーン収入の計上、RS5614COVID-19に係る受託研究収入の計上及びRS5614メラノーマに係る受託研究収入の計上などにより139,333千円(前事業年度は209,802千円)となりました。また、営業損失は、RS8001PMS/PMDDやRS5614COVID-19などの研究開発費82,713千円を含む事業費用291,810千円を計上したことなどにより210,839千円(前事業年度は86,125千円の損失)、経常損失は、上場に伴う株式交付費を25,532千円計上したことなどにより241,769千円(前事業年度は90,728千円の損失)、当期純損失はRS8001統合失調症に係る特許権の減損損失を11,318千円計上したことなどにより254,292千円(前事業年度は100,054千円の損失)となりました。
なお、当社の事業は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(資産)
当事業年度末の流動資産は、前事業年度末の1,042,644千円と比べて1,385,503千円増加し、2,428,148千円となりました。これは主として、2021年9月に東証マザーズに上場したことに伴う株式発行などにより、現金及び預金が1,360,872千円増加したことなどによるものです。
また、当事業年度末の固定資産は、前事業年度末の23,988千円と比べて14,108千円減少し、9,880千円となりました。これは主としてRS8001統合失調症に係る特許権の減損損失11,318千円の計上などによるものです。
この結果、資産合計は、前事業年度末の1,066,632千円と比べて1,371,395千円増加し、2,438,028千円となりました。
(負債)
当事業年度末の流動負債は、前事業年度末の29,449千円と比べて8,493千円増加し、37,942千円となりました。これは主として、未払法人税等が14,325千円増加したことなどによるものです。
また、当事業年度末の固定負債は、前事業年度末の475,650千円と比べて276,421千円減少し、199,228千円となりました。これは、上場により調達した資金の一部を用いて、RS8001PMS/PMDDに係るCiCLE事業の担保用資金として金融機関から借入れていた長期借入金380,000千円を返済した一方で、RS8001PMS/PMDDに係るCiCLE事業による研究開発資金の受入れにより、長期借入金が103,578千円増加したことによるものです。
この結果、負債合計は、前事業年度末の505,099千円と比べて267,927千円減少し、237,171千円となりました。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末の561,533千円と比べて1,639,323千円増加し、2,200,857千円となりました。これは主として、2021年9月に東証マザーズに上場したことに伴う株式発行などにより、資本金及び資本準備金がそれぞれ946,808千円増加したことなどによるものです。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末の644,944千円に比べ1,360,872千円増加し、2,005,816千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動資金の支出額は230,492千円(前事業年度は89,255千円の支出)となりました。これは主として、税引前当期純損失253,088千円の計上、株式交付費25,532千円の計上、前払費用の増加額24,462千円の計上などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動資金の支出額は296千円(前事業年度は1,719千円の支出)となりました。これは、差入保証金の回収による収入867千円を計上した一方で、有形固定資産の取得による支出1,164千円を計上したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動資金の収入額は1,591,662千円(前事業年度は135,650千円の収入)となりました。これは、株式の発行による収入1,868,083千円及び長期借入れによる収入103,578千円を計上した一方で、長期借入金の返済による支出380,000千円を計上したことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社は研究開発を主体としており生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
当社は研究開発を主体としており受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
当社の事業セグメントは医薬品等の開発・販売等事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。前事業年度及び当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注)1.最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
2.売上高割合が10%未満の相手先については、記載を省略しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。
財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、これらについては、過去の実績や現在の状況等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行っております。ただし、これらには見積り特有の不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
なお、当社が財務諸表を作成するにあたり採用した重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
財政状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の概況」に記載のとおりです。
(事業収益)
当事業年度の事業収益は、139,333千円(前事業年度209,802千円)となりました。前事業年度は、S9001ディスポーザブル極細内視鏡に係るアップフロント収入、RS8001PMS/PMDD及びRS5614COVID-19に係るオプション料の受取りなどによる収益を計上した一方、当事業年度は、RSAI02慢性透析システム支援における契約一時金、RSAI03糖尿病治療支援システムにおける契約一時金、RS9001ディスポーザブル極細内視鏡及びRSAI01呼吸機能検査診断システムに係るマイルストーン収入、RS5614COVID-19及びRS5614メラノーマに係る受託研究収入などを計上したことによるものです。
(事業原価、売上総利益)
当事業年度の事業原価は、58,363千円(前事業年度29,977千円)となりました。前事業年度は、RS9001ディスポーザブル極細内視鏡の契約一時金に係るレベニューシェア支払い等を計上した一方、当事業年度は、RS5614COVID-19及びRS5614メラノーマの受託研究に係る外注費を計上したことなどによるものです。
この結果、当事業年度の売上総利益は、80,970千円(前事業年度179,825千円)となりました。
(事業費用、営業損失)
当事業年度の事業費用は、291,810千円(前事業年度265,950千円)となりました。主な要因は、上場関連費用などの計上により、業務委託費が前事業年度に比べて17,145千円増加したこと、及び、前事業年度では未計上であった事業税資本割の計上などにより、租税公課が前事業年度に比べて12,989千円増加したことなどによるものです。
この結果、当事業年度の営業損失は210,839千円(前事業年度86,125千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当事業年度の営業外収益は、63千円(前事業年度2,901千円)となりました。主な要因は、受取利息20千円、及び、雑収入42千円を計上したことによるものです。
当事業年度の営業外費用は、30,993千円(前事業年度7,504千円)となりました。主な要因は、上場に伴う株式交付費25,532千円、及び、長期借入金に係る支払利息5,366千円を計上したことなどによるものです。
この結果、当事業年度の経常損失は241,769千円(前事業年度90,728千円)となりました。
(特別利益、特別損失、当期純損失)
当事業年度の特別利益はありません。
当事業年度の特別損失は、11,318千円(前事業年度9,028千円)となりました。主な要因は、RS8001統合失調症の特許権に係る減損損失11,318千円を計上したことによるものです。
これらの結果を受け、当事業年度の当期純損失は、254,292千円(前事業年度100,054千円)となりました。
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの概況」に記載のとおりです。
当社は、創薬等のコンセプトやシーズの研究費及びパイプラインの製品化に向けた開発費並びに係る販売費及び一般管理費等の事業用費用について資金需要を有しております。当社は、主に公的機関の研究開発助成金や第三者割当増資により調達を行った手許資金により事業用費用に充当してまいりましたが、現下では、金融機関の当座貸越枠を確保するなどしており流動性に支障はないものと考えております。中長期眼では、次世代の医療ソリューション開発を掲げ一層の事業拡大や係る投資を想定しており、新規上場に伴う第三者割当増資などによる財務基盤の増強が必要であると認識しております。
なお、現状の現金水準については、2021年9月の株式上場による資金調達や上記当座貸越枠も確保していることから、当面の事業には問題のない水準です。
経営成績に重要な影響を及ぼす要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。
③ 委託研究に関する契約
当社は医薬品等の開発・販売等事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの研究開発活動の概要は記載しておりません。
当社が当事業年度に計上した研究開発費は
(研究開発活動)
当社は、医薬品・医療機器・人工知能(AI)を活用した医療ソリューションなど、多様なモダリティ(治療様式)にわたる複数パイプラインの研究開発を進めており、当事業年度における主要パイプライン開発の進捗は以下のとおりです。
a.RS5614(PAI-1阻害薬)
(a) 慢性骨髄性白血病(CML)治療薬
後期第Ⅱ相医師主導治験は、慢性期CML患者33例を対象にチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)とRS5614を併用し、RS5614投与開始後48週における累積の分子遺伝学的に深い奏効(DMR:がんの原因遺伝子が検出されない状態)達成率(※1)をヒストリカルコントロールに比較して有意に上昇させることを確認することと、RS5614及びTKIの長期併用時におけるRS5614の薬物動態及び安全性の確認を目的に実施しました(2019年8月開始、2021年3月治験総括報告書完成)。33例中DMRを達成した症例は11例で、48週時の累積DMR達成率は33.3%であり、TKI単独でのヒストリカルコントロール(8-12%)に比べて有意に上昇していることを確認しました(POC取得)。特に、TKI治療期間が3年以上5年以下の患者での累積DMR達成率は50.0%に達しました。また、RS5614の1年間の長期投与でも治療薬との因果関係のある重篤な有害事象は認められませんでした。
後期第Ⅱ相試験の成績に基づいて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と2021年6月及び同年8月に事前相談を、2021年11月及び同年12月に対面助言を行い、慢性期CML患者を対象にTKIとRS5614の併用効果を検証するプラセボ対照二重盲検(※2)の第Ⅲ相治験計画が確定しました。第Ⅲ相試験は2022年度上半期から開始予定であり、TKI治療期間が3年以上5年以下の慢性期CML患者60名を対象とし、TKI単独投与群よりも被験薬RS5614の併用群が2年間以上のDMR維持率を有意に上昇させることを検証します。なお、当社の共同研究先である東北大学から国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に申請した本第Ⅲ相治験が令和4年度「革新的がん医療実用化研究事業」に採択されました(当社も分担研究機関として参画)。
(※1) DMR達成率:現在の慢性期CML治療では高額なTKIを生涯服用する必要がありますが、最も深い治療効果であるDMRを達成し、一定期間維持した一部の患者では、TKIを中止しても再発がないこと(無治療寛解維持;TFR)が近年明らかとなっています。これまでに既存TKIで公表されている1年間(48週)の累積DMR達成率は8-12%(ヒストリカルコントロール)です。なお、DMR維持とは、DMRを達成した状態が一定期間継続することです。
(※2) 二重盲検:対象患者を無作為に、被験薬(今回はRS5614)を投与する群と対照薬(今回は効果がないプラセボ)を投与する群に分け、医師も患者もどちらが投与されるかを知らない条件で、両群同時に薬を投与する臨床試験方法。医師が効果の期待される患者に対して被験薬を投与するなどの故意が生じたり、効果があるはずといった先入観が評価に反映される可能性や、患者が知った場合もその処置への反応や評価に影響が生じることを避けるための試験方法です。それぞれの群で出た結果を比較評価することで、被験薬の効果があるかを判断します。
(b) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う急性呼吸窮迫症候群治療薬
当社は、RS5614の肺微小血栓、線維化、肺気腫改善作用及び肺(上皮)保護作用に着目し、COVID-19に伴う間質性肺炎治療薬(経口薬)を開発しています。2020年秋から前期第Ⅱ相医師主導治験(非盲検)を実施し、2021年6月に治験総括報告書が完成しました。特筆すべき副作用は無く、肺障害で入院し本治験薬を投与された26名全員が無事退院されました。
現在、プラセボ対照の後期第Ⅱ相医師主導治験を実施中です。2021年3月にはAMEDの「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(研究代表機関は東北大学、当社は分担研究機関)」に採択され、同年4月に実施されたPMDA事前面談に基づき実施計画書を確定し、2021年6月から治験を開始しています。本治験は、新型コロナウイルス肺炎患者(中等症、入院患者)を対象として、登録患者数100名を見込む医師主導治験であり、国内20の大学等の医療機関の多施設共同、プラセボ対照試験となります。2021年9月末で、目標の半数である50例を超える患者の登録を得ており、患者登録が順調に進めば、2022年3月末には治験を終了し、同年6月に治験総括報告書を完成する予定でした。しかし、2021年10月以降、新型コロナウイルス感染者数が激減し治験の被験者登録が大幅に減少したため、治験実施医療機関の患者登録予定数を再検討し、治験期間を2022年12月まで延長することを決定しました。2022年1月には第6波のために新型コロナウイルス感染患者は再び増加に転じましたが、オミクロン株の感染率は高いものの重症化率は低く、新型コロナウイルス肺炎患者(中等症、入院患者)登録は大きく増加しておりません(2022年3月現在70例の登録終了)。
米国ではノースウェスタン大学で類似のプロトコールで第Ⅱ相医師主導治験を実施しています。米国における新型コロナウイルス感染症が重篤のため、比較対照としてプラセボを投与する本試験への被験者合意取得が難しく(入院患者の5%程度しか合意取得が難しい)患者登録が遅れていることから、ノースウェスタン大学での治験は一時中断し、先行する日本の治験成績を確認した上で再開を検討することとしました。なお、本試験は臨床試験情報のデータベース(Home - ClinicalTrials.gov)において「一時中断(suspended)」と記載されています(Study To antagOnize Plasminogen Activator Inhibitor-1 in Severe COVID-19 - Full Text View - ClinicalTrials.gov)。
また、トルコ共和国メデニエット大学においては、安全性を確認するための前期第Ⅱ相医師主導治験(非盲検)を終了しました。新型コロナウイルス肺炎患者(中等症、在宅患者)を対象として二重盲検試験を実施する準備を進めましたが、現在流行しているオミクロン株感染では重症化する例が少なく、設定した評価項目(入院率)では実施が難しいことから、米国と同様に、先行する日本の治験成績を確認した上で再開を検討することとしました。
2020年12月25日、COVID-19肺炎及びその他肺傷害等の肺疾患治療用途について第一三共株式会社とオプション権付優先交渉権に関する契約を締結しました。本契約締結時は前期第Ⅱ相医師主導治験実施中(後期第Ⅱ相医師主導治験は未定)で、オプション期間を1年後の2021年12月31日としていましたが、後期第Ⅱ相医師主導治験の実施に合わせて、2021年10月にオプション期間を2022年6月まで延長する覚書を締結しました。
(c) 悪性黒色腫(メラノーマ)治療薬
国内のメラノーマ患者では、海外とは異なるサブタイプのメラノーマが多いことから、抗PD-1抗体(ニボルマブ)単剤療法による治療が奏効しづらいとされています。RS5614が免疫チェックポイント分子を制御しがん免疫系を活性化する作用に基づき、メラノーマ治療薬としての有効性と安全性を確認するための第Ⅱ相医師主導治験を、2021年7月から実施しています(2024年3月終了予定)。
本治験は、2021年5月にAMED「橋渡し研究プログラム」シーズC(研究代表機関は東北大学、当社は分担研究機関)の助成金で、NPO法人「Japan Skin Cancer Network(JSCaN)」を立ち上げてメラノーマの治療成績向上のために連携している東北大学、筑波大学、都立駒込病院、近畿大学、名古屋市立大学、熊本大学の6大学との多施設共同で実施され、進行性悪性黒色腫(メラノーマ)患者40例を対象とした非盲検試験です。ニボルマブ併用のもと、RS5614を1日1回120-180mgで投与し、8週間投与後に有効性と安全性の評価を行います。
2022年3月現在、順調に症例登録が進み、目標の半数である20例に達しています。
(d) 抗がん剤による間質性肺疾患の予防・治療
RS5614が間質性肺疾患(間質性肺炎・肺線維症)を改善することを示唆する非臨床試験の成績に基づき、抗がん剤の副作用である間質性肺疾患をRS5614が予防できるかどうかを京都大学と共同で研究する予定です。
現在、京都大学と臨床試験に向け必要な準備を進めています。
(e) FGF23関連性低リン血症性くる病
過剰産生された線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor23:FGF23)により尿中のリン排泄が亢進し、低リン血症から骨変形や成長障害など生じる希少疾患です。RS5614によりFGF23の分解が促進されることが報告され、FGF23関連性低リン血症性くる病の病態を改善できる可能性が示唆されました。2021年11月に東京医科歯科大学の認定臨床研究審査委員会(CRB)に申請し承認され、試験薬の製造など臨床試験の準備が整っています。2022年3月に東京医科歯科大学と共同研究契約を締結しました。2022年度より臨床研究(目標症例数5例)として試験を開始する予定です。
(f) RS5441(PAI-1阻害薬)脱毛症治療薬
導出先のEirion Therapeutics Inc(米国)で第Ⅰ相試験を準備中です(2022年実施予定)。
(g) RS5614(PAI-1阻害薬)の新規適応探索研究
RS5614が、がん免疫系を活性化する知見に基づいて、メラノーマ以外でのがん免疫療法の新たな適応についての検討を開始いたしました。具体的には、東北大学と共同で、希少疾患の血管肉腫と皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)(※1)を対象として、基礎的な研究や臨床研究に取り組む予定です。また、全身性強皮症(※2)にともなう間質性肺疾患についても検討を開始する計画です。
(※1) 血管肉腫と皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL):血管肉腫は皮膚がんの一種で、とりわけ頭皮の血管肉腫は100万人当たり2.5人程度とまれですが、極めて悪性度が高く、急速に進行し、5年の無病生存率は20%以下と報告され、標準的な治療法は確立されていません。皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)は、免疫担当細胞の一つであるT細胞に由来する皮膚に生じる悪性リンパ腫です。CTCLも国内総患者数2,500人、年間罹患数は170人と推定されるまれながんで、再発を繰り返し、特に進行期では原疾患の悪化に伴う腫瘍の浸潤・転移や感染により死に至るとされ、治療法は確立されていません。また、それらのがんではがん免疫療法の新たな治療法の可能性が示唆されています。
(※2) 全身性強皮症:全身性強皮症は、皮膚の硬化に加えて多臓器の線維化が生じる原因不明の難治性の疾患で、国内の患者数は3万人以上といわれ、自己抗体陽性などの免疫の異常を伴います。その最も多い死因は、間質性肺疾患(間質性肺炎・肺線維症)で、患者の50~60%で認められ、生命予後に大きく影響することが分かっています。
b.RS8001(ピリドキサミン)
(a) RS8001(自閉スペクトラム症治療薬)
自閉スペクトラム症患者に対するピリドキサミンの有効性及び安全性を探索的に評価し、また、適切な対象患者集団や用法用量、評価指標を決定することを目的として、易刺激性を有する自閉スペクトラム症患者を対象として、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施しました。同試験は、2021年5月に終了し、同年6月に治験総括報告書が完成しました。
安全性に大きな問題がなく、忍容性が良好であることが示されました。有効性に関しては、主要評価項目の「最終評価時点のABC-J興奮性サブスケールスコア平均変化量(※1)」において実薬高用量群が最も改善していましたが、用量反応関係並びにプラセボ群と統計的な有意差は確認できませんでした。本薬剤の有効性をより適切に評価するためには、対象患者の選定や、プラセボ効果を減少する治験計画の策定(あらかじめプラセボ効果を見ておくプラセボリードイン方式(※2)の採用)など、特に精神科領域疾患で検討すべき課題が明らかになりました。プラセボ効果を減少し、有意差を出すための実証試験に必要な症例数や治験体制は大規模な治験となるため、導出先企業を確保し検討することとしました。
(※1) ABC-J興奮性サブスケールスコア平均変化量:自閉スペクトラム症において薬物治療効果をみるのに世界的標準法として使用されている有効性の評価尺度です。ABC-Jは異常行動チェックリスト(ABC)の日本語翻訳版です。
(※2) プラセボリードイン方式:プラセボには有効成分は含まれていませんが、心理的な効果で病気の症状が改善することがあります(プラセボ効果)。そこで、実薬投与の前に一定期間プラセボを服用していただき、プラセボ効果の大きな被験者は試験に参加していただかない試験デザインを採用しています。
(b) RS8001(月経前症候群(PMS)及び月経前不快気分障害(PMDD)治療薬)
2019年度にAMEDの医療研究開発革新基盤創生事業(CiCLE)に採択され、AMEDから助成金を得て、近畿大学、東北大学、東京医科歯科大学、東京女子医科大学で第Ⅱ相医師主導治験(プラセボリードイン方式プラセボ対照二重盲検3群比較試験、目標症例数105例)を進めています(2020年11月開始、2023年12月終了予定)。
当初予定の2021年2月より早い2020年11月から治験を開始できましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により患者来院数が減少したため、症例登録促進を目的として、2021年度前半には新たな取り組みとして、医療法人聖和会早川クリニックを実施施設として追加したほか、広告・啓発活動の一環として、院内ポスターや啓発用の冊子の作成や、NPO法人Healthy Aging Projects for Women(HAP)主催で治験調整医師による薬剤師対象Webセミナーを2021年3月に実施しました。さらに、2021年度後半には、実施施設として医療法人jMOG田辺レディースクリニックを追加し、ボランティアパネル(※)の活用、NPO法人と協賛した疾患啓発のための治験責任医師等による公開講座の開催など、症例登録促進のための対応を継続して講じています。
AMEDで中間評価マイルストーンの達成状況及び今後の取り進めについての報告を行い、2021年9月に本治験助成の継続が承認されました。
(※) ボランティアパネル:治験支援企業・団体が運営する治験参加希望者の登録システムです。
(c) RS8001(統合失調症治療薬)
2020年、導出先の興和株式会社(興和社)による統合失調症後期第Ⅱ相試験(約100名を対象としたプラセボ対照二重盲検試験)が終了しました。サブ解析では改善を認める陰性症状の項目もありましたが、主要評価項目である陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)(※)の陰性症状尺度の総スコアではプラセボ群と実薬群で明確な差は認められず、興和社では今後の開発を行わない方針です。
(※) 陽性・陰性症状評価尺度(PANSS):主として統合失調症の精神状態を全般的に把握することを目的として作成された30項目の評価尺度です。
(d) RS8001(更年期障害)
更年期障害の2大症状(ホットフラッシュ(※)とうつ)の治療薬としてRS8001の臨床研究(実薬25例、プラセボ25例)を東京医科歯科大学で実施するため準備を進めています。2021年9月には厚生労働省の先進医療Bの事前面談を終え、同年11月に東京医科歯科大学の認定臨床研究審査委員会(CRB)に申請し承認され、同年12月に東京医科歯科大学と共同研究契約を締結しました。試験薬の製造など臨床試験の準備が終了し、2022年度よりプラセボ対照二重盲検での臨床研究(プラセボリードイン方式、目標症例数50例)として試験を開始する予定です。
(※) ホットフラッシュ:更年期障害の代表的な症状として上半身ののぼせ、ほてり、発汗などが起こります。
c.RS9001(ディスポーザブル極細内視鏡)
腹膜透析(※1)は透析液を注入するチューブを常に腹膜に挿入されていますが、当社は、この細いチューブを通して挿入し、開腹手術にも腹腔鏡にもよらず非侵襲的に腹腔内を観察する極細内視鏡(径1mm程度)を東北大学等複数の大学と共同開発しました。2020年5月に、大手医薬品及び医療機器会社であり腹膜透析医療におけるリーディングカンパニーである米国Baxter Healthcare Corporation(バクスター社)と共同開発及び事業化に関する契約(ライセンス契約)を締結し、薬事承認申請の準備中です。
バクスター社とガイドカテーテル(※2)製造業者の交渉が遅延していることから、メインフレームであるファイバースコープ(※3)のみ(付属品であるガイドカテーテル抜き)で承認申請することをバクスター社と合意し、2021年3月にはPMDAからもその方針で進めて良いことを確認し、準備を進めております。2022年度中に承認申請の予定です。また、2021年6月にファイバースコープ製造業者とバクスター社が供給契約を締結したことに伴い第1回目のマイルストーンを受領しました。
(※1) 腹膜透析:透析の装置として、自分の体の腹膜(胃や腸などの臓器を覆っている薄い膜)を使う方法です。腹腔内に管(カテーテル)を通して透析液を入れておくと血液中の老廃物や不要な尿毒素、電解質、余分な水分などが透析液の中に移動し血液がきれいに浄化されます。
(※2) ガイドカテーテル(使い捨て):ファイバースコープと組み合わせて使用することでファイバースコープの先端部分を自由に動かすことができます。ガイドカテーテルを使用しなくても、ファイバースコープのみで腹膜の状態を観察することが可能ですが、使用することで操作性が向上します。
(※3) ファイバースコープ(使い捨て):ディスポーザブル極細内視鏡の本体です。先端部は径1mm程度で、腹部に留置されているチューブの中を通ります。
d.人工知能(AI)を活用した医療ソリューションの開発
(a) RSAI01(呼吸機能検査診断システム)
呼吸器疾患や呼吸機能の検査の中でスパイロメトリー(※)が最も重要ですが、その普及は進んでいません。被験者(患者)の協力(努力呼吸)が必要である点に加えて、正しく検査が行えたかどうかを判定し、かつ出力された結果(フローボリューム曲線)を解釈することが非専門医には難しいためです。非専門医でも簡便に結果を解釈できるシステムの開発は、呼吸器疾患を診断し、早期治療を行う上で重要な医療課題と考えられます。フローボリューム曲線を解釈するAIを、京都大学及びNECソリューションイノベータ株式会社と開発中です。2020年7月にスパイロメトリーのリーディングカンパニーであるチェスト株式会社(チェスト社)と共同開発及び事業化に関する契約(ライセンス契約)を締結し一時金を受領しました。呼吸器疾患の鑑別診断が可能な初期AIモデルが開発できたので、2021年10月にはチェスト社との契約に基づいてマイルストーンを受領しました。今後、医療データの「量」と「質」を改善することで予測精度を向上させ、事業化に向け開発予定です。
(※) スパイロメトリー:呼吸機能生理検査で、被験者が吐き出す息の量と吐き出す時間を測定します。慢性閉塞性肺疾患(COPD)及びその他の肺の病気の診断に重要な検査です。
(b) RSAI02(慢性透析システム支援)
血液透析は慢性腎不全患者の生命維持に必要な腎代替医療です。透析中の血圧低下は5〜10%という高い頻度で発生しますが、血圧低下を予測する医療機器はありません。透析病院では数十名の患者に対して、1名の医師、数名の看護師や臨床工学技士の少ないスタッフで血液透析を行っており、一部の患者に血圧低下が発生するとスタッフは患者への昇圧処置や看護に追われることになり負担となります。当社は、透析中に発生する急激な血圧低下を予測するAIの開発を目指し、聖路加国際病院や民間の15透析医療施設からの3,000症例(透析回数80万件)の医療データ(患者情報、透析情報、検査情報)を取得し、ディープラーニングをベースにしたAIエンジン(DCCN: Dual-Channel Combiner Network)で取り組み、現時点でAUC0.80の精度で透析中血圧低下(20mmHg以下)を予測可能なAIを得ています。2021年5月に、グローバルな血液透析医療機器メーカーであるニプロ株式会社と共同研究契約を締結いたしました。今後臨床パラメータ精査による精度向上、個々の患者で学習するAIへの改良(P-DCCN)、透析中血圧低下の発生有無に加えて透析中の安全な除水量を予測する機能の追加など、AIの精度と機能の向上を目指し開発を進めます。
(c) RSAI03(糖尿病治療支援システム)
糖尿病の血糖値を厳格にコントロールし、糖尿病合併症を予防するためにはインスリン注射治療が必要です。しかし、インスリンの安全な用量域は狭く、過剰投与で低血糖を生じるために、患者ごとに最適な種類と投与量を選定する必要があります。一方、糖尿病専門医は医師全体の2%もおらず、地理的にも偏在しているため、現状では糖尿病患者の主治医が糖尿病専門医であるとは限らず、むしろ非専門医に受診することが多いです。
当社は、東北大学及び日本電気株式会社(NEC)と共同開発を行い、非糖尿病専門医にも専門医レベルのインスリン治療を実行できるよう支援するAIを開発しています。2022年1月には、東北大学病院に入院する約1,000名(約1,080,000臨床パラメータ)の患者データに基づく分析作業が終了し、専門医の処方するインスリンの投与量から数単位の誤差で予測するAIを開発しています。ディープラーニングをベースにしたスキル獲得学習AIアルゴリズムSAiL (Skill Acquisition Learning)を活用し、現在、インスリンの投与量2単位程度の誤差で予測できるAIが取得できています。今後、医療データの「量」と「質」の改善により予測精度をさらに向上させ、実用化のための臨床試験を実施する予定です。なお、本研究は、2022年4月、AMEDの医工連携イノベーション推進事業 (開発・事業化事業)に採択されました。2022年度から3年間、AMEDの支援を受けて本研究を実施いたします。
2021年11月にニプロ株式会社と共同研究契約を締結しました。
(d) RSAI04(発音・発語及び嚥下機能診断)
高齢社会において摂食嚥下障害は増加し、死因とされる肺炎の約7割の原因が誤嚥です。誤嚥性肺炎の予防には嚥下機能低下の早期発見が重要ですが、現在では、嚥下内視鏡検査、嚥下透視検査方法など患者負担の大きい嚥下評価法しかありません。
当社は、嚥下と会話で使用する器官は舌や口腔・咽頭など共通部分が多く、会話から嚥下機能を予測できる可能性に着目し、嚥下機能障害を会話時の音声データから評価可能な新しいAIの開発に取り組んでいます。
東北大学の複数の診療科(耳鼻咽喉科、歯科、医工学部リハビリテーション科)及びNECと共同で、東北大学病院嚥下治療センターに受診する患者の話す音の全周波数を時系列データの分析に特化したAIエンジン(時系列モデルフリー分析)で解析することで、健常者の発音と患者の発音の違いを検出し、嚥下機能の低下を診断するAIを開発します。
(e) RSAI06(小児発達障害(識字障害)音読診断)
小児の学習障害の1つである識字障害(ディスレクシア)は音韻処理障害であり、学業不振や不登校に至る原因となりますが、早期に発見し、適切なトレーニングを受けることで一般生活が送れるようになる障害です。適切な早期での支援を提供するためにも、簡便で正確な診断方法の開発が急務ですが、現在は、良い診断法はありません。
当社は、識字障害と小児の音読の間違いやスピードに相関性があるという事実に基づき、識字障害を診断するAIを開発しています。声を周波数として捉え、時系列データとして扱うことで、健常域から逸脱する異常値を検知するAIを活用し、医療データは東北メディカルメガバンク機構(※)にて行われる小児発達調査データ、及び東北大学病院など複数の医療機関で識字障害と診断された児童の音読データを使用します。音声データに基づく簡便な診断システムが開発出来れば、定期検診などの短い時間で障害の有無を検知でき、該当者への早期からの支援に繋がります。
(※) 東北メディカルメガバンク機構:未来型医療を築いて震災復興に取り組むために設置され、東日本大震災の被災地の地域医療再建と健康支援に取り組みながら、医療情報とゲノム情報を複合させたバイオバンクを構築しています(2012年設立)。
e.診断薬:血中フェニルアラニン測定キット
フェニルケトン尿症は、適切な治療を行わないと知能発達遅延などの重篤な症状を出現します。1977年に生後マス・スクリーニング検査が実施され、ほぼ全ての患児が早期に発見されるようになりました。フェニルケトン尿症の治療には、フェニルアラニンを制限するための食事療法を正しく行う必要があり、定期的な医療機関での検査が必要ですが、数か月に1度の採血では、きめ細やかな食事管理ができません。
当社は、自宅で簡便かつ正確に血中フェニルアラニン濃度を測定するシステムを、東北大学と共同で開発しています。この新規検査系をキット化し、自己管理の保険償還に繋げることを目的とします。糖尿病患者での自己血糖管理のように、家庭でいつでも自己測定が可能になれば、フェニルケトン尿症を有する患者のきめ細やかな食事管理が実現できます。
2021年5月には診断薬に関する特許を東北大学と共同で出願し、同年6月にはPMDA相談を行いました。