文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は、医療現場の課題を解決するための多様なモダリティ(医薬品、医療機器、AIを活用したプログラム医療機器)を、医療現場で研究開発し、医療イノベーション創出に貢献することで、ヒトが心身ともに生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造することを経営理念として掲げています。
当社は特定の技術に特化したベンチャーでは無く、広くモダリティ(医薬品、医療機器など治療の様式)の開発に取り組みます。医薬品産業も、低分子医薬品を中心とした開発から、バイオ医薬品(抗体医薬、核酸医薬品、遺伝子治療、細胞治療)へと、モダリティが多様化しつつあります。近年の工学系や情報系技術の進歩により、情報・工学技術との融合による新たな医療の模索も進んでおり、欧米や国内の大手製薬企業では既に医薬品単体のビジネスから医療ソリューション全般にわたるビジネスへの転換を迎えております。医薬品、医療機器、さらにはAIを活用したプログラム医療機器など、医療現場での治療のオプションも広がりつつあります。当社もこれまで主体であった化学系や生物系の研究に加えて、工学系や情報系の研究にも視野を広げ、がん、抗加齢・長寿、人工知能(AI)など重点研究領域(図表12)を主体に多彩で魅力ある研究と事業のポートフォリオを創出します。
< 図表12 重点研究領域 >

(出典:当社作成)
広くモダリティ開発に取り組むことには、早期の黒字化と将来の収益確保の両立という経営面での利点もあります。医薬品事業は、研究開発費や研究開発期間が比較的大きく事業リスクが高い分野ですが、上市後には極めて高い収益が期待できる事業です。一方、医療機器やプログラム医療機器の事業収益は医薬品と比べると小さいですが、研究開発費や研究開発期間のリスクは小さく、早期に当社収益につながります。当社は、これら2つの事業ポートフォリオを、同時に複数のパイプラインで進めることにより、リスクを分散しながら早期の黒字化と将来の収益の拡大を目指します。
② 少子高齢化の医療課題
平均寿命と健康寿命(平均寿命から寝たきりや認知症などの介護状態の期間を差し引いた期間)の差が約10年あることが大きな課題となっています。加齢と共に生じる種々の疾患、例えば、がん、循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病などを治療できれば、健康寿命の延伸に繋げることができます。これら4疾患は全世界の死亡者数の70-80%に至り、世界保健機関(WHO)でも老化や生活習慣に伴う重要な疾患として位置付けられています。当社は、これら4疾患の治療薬を含めた健康寿命を伸ばすための医薬品開発という医学的あるいは社会的にも重要な課題を解決すべく取り組んでいます。さらに、超高齢化社会の到来を迎えて、今後国際的に著しい成長が期待される「抗加齢・長寿分野」の研究並びに事業にも注力します。近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティ[幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング(老化細胞若返り)、セノリティクス(老化細胞除去)]が提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているために、高額な資金が投資されている分野です。当社のPAI-1阻害薬(RS5614)は、複数経路にまたがり統合的に介入することで、崩れた生体全体の機能を改善できる医薬品候補です。老化環境の改善、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有しており、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを備えています。
医薬品のように成功確率が極めて低く、開発期間が長く、投資が大きな分野では研究開発及び事業リスクが大きいため、多くのパイプラインを組み合わせたポートフォリオを形成し、リスク分散をすることが不可欠です。当社は外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用してコストを抑えるなど、効率の高い開発を実践してきました。外部機関とのアライアンスをもとに多くのバリューチェーン構築を考えており、既存ベンチャーとは戦略、研究開発、人的資源管理などが異なります。少ない人的リソースや経費で多くのパイプラインを広げ、モダリティを展開し、成果も出つつあります。自己資源や社内環境のみに注力するのではなく、むしろ外部資源や外部環境にも注力し、効率的にイノベーションを創出する枠組みを構築していきたいと考えています。
医療イノベーション創出におけるアカデミアなどの研究機関や医療機関の役割が広がりつつあります。低分子医薬品と異なり、バイオ医薬品の技術基盤やシーズは研究機関にあります。また、AIを活用したプログラム医療機器の開発に必要な医療データは企業ではなく医療機関が有しています。当社は、多くの医療機関や診療科と複数の医療分野で医師主導治験を実施しているので、医師から医療現場の課題を把握する機会が多く、またAI開発に必要な医療データも比較的短期間でビッグデータが取得しやすい環境にあります。
当社は、国内外の大学などの研究機関で着想された多くのモダリティにわたるコンセプトやシーズを、基礎研究から臨床開発(医師主導治験)まで一気通貫でつなげる研究開発を行い、大手製薬企業等につなぐことで医療イノベーション創出に貢献します。臨床開発は販売の許可を受けるための承認申請に近いところまで自社で対応します。例えば、2022年12月に厚生労働省から承認を得た医療機器(極細内視鏡)は、製品コンセプトから試作品開発、非臨床試験の実施、検証のための医師主導治験まで複数の大学と共同で開発を進め、当社が取得した成績で薬事承認を得ることができました。また、血液がんの一種である慢性骨髄性白血病及び悪性黒色腫の治療薬は承認申請に必要な検証試験である第Ⅲ相試験を実施中ですが、その他のパイプラインについても今後、可能な場合は第Ⅲ相試験まで自社で実施したいと考えています。その理由は、希少疾患などの治療薬は大手製薬企業からは注力されにくい場合が多いことや、さらに第Ⅲ相試験まで自社で実施することで大きな事業収益が期待できるからです。
⑤ 医師主導治験
当社は、基礎研究から医師主導治験まで一気通貫で実施できる医師(physician-scientistという)との共同研究を重視しています。当社は、これまで31件に至る医師主導治験等の実績(図表13)があり、医師主導治験には多くの利点があります。医師自ら治験を立案及び実施できますので、医療現場での課題や実情に合った試験計画や枠組みで実施できます。当社が行う治験は全て未承認の薬剤(first-in-human)を対象としており、海外承認薬(国内未承認)や既存薬の適応拡大のための治験ではありません。
< 図表13 医師主導治験等の数 >

(31件の内訳は、実施済み24件、実施中5件、実施予定2件)
(出典:当社作成)
⑥ オープンイノベーション
当社は、大学との連携を基にオープンイノベーションを推進し、効率的な開発を推進していきます。具体的には、東北大学との「Tohoku University x Renascience Open Innovation Labo:TREx」、広島大学との「Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo:HiREx」、ノースウェスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)の日本研究室などオープンイノベーション拠点の設置、台北医学大学やサウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)との連携などです。
< 図表14 TRExの風景 >

当社の事業収益は、医薬品、医療機器、プログラム医療機器の研究開発成果を実用化企業に導出して得る一時金、マイルストーン及びロイヤリティ収入がメインです。そのため下記の経営指標を掲げています。
① 臨床段階にある開発パイプライン数(臨床試験数)
パイプラインを実用化企業に導出するためには、非臨床試験や第Ⅰ相試験(健常者での安全性確認試験)では難しく、少なくとも患者での有効性の確認(第Ⅱ相試験)の治験が終了していることが必要です。そのため、臨床段階(特に第Ⅱ相試験以後)にある開発パイプライン数は重要な数値目標になります。当社は当事業年度末日現在において、2027年3月期に臨床試験を実施予定のパイプラインを7本(医師主導6本、企業治験1本)有しており、内訳は第Ⅲ相試験3本(慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、皮膚血管肉腫)、第Ⅱ相試験3本(非小細胞肺がん、膵臓がん、脱毛症)、臨床研究1本(抗加齢)に至り、国内バイオベンチャーとして最大級の臨床試験実績です。
② 契約締結パイプライン数
当社は、製品の開発権、製造権、販売権等をライセンスアウトすることで、契約一時金、開発の進捗に応じて支払われるマイルストーン収入、製品上市後に売上高の一定割合が支払われるロイヤリティ収入、売上高に対する目標値を達成するごとに支払われる販売マイルストーン収入等を得る事業モデルを採用しています。また、比較的早期の研究開発段階において、将来のライセンス契約を前提としたオプション権付き共同研究契約(オプション契約)を出口企業候補と締結することもあります(図表4 事業系統図の(共同研究))。
当社は、現在5本の契約締結パイプライン数を有しており、内訳はライセンス契約3本(エイリオン社に脱毛症など皮膚疾患治療薬、ハイレックスメディカル社にディスポーザブル極細内視鏡、チェスト株式会社に呼吸機能検査診断プログラム医療機器)、オプション契約等2本(ニプロ株式会社に維持血液透析医療支援プログラム医療機器、東レ・メディカル株式会社に透析装置搭載型AI)です。
③ 研究開発費
当社の成長や将来の収益を考えると、上記経営指標である臨床段階にある開発パイプライン数、契約締結パイプライン数、医師主導を含む臨床試験実施数の拡大が望ましい一方、医薬品の研究開発、特に治験の実施には多額の研究開発費が必要です。当社は、開発シーズを、医師主導治験を含む臨床試験を活用しながら開発し、製薬企業等へライセンスアウトするビジネス・モデルを基本としているため、高額な研究開発費を自社で負担する必要があります。そこで、研究開発費(特に自己資金)は重要な経営指標と考えています。開発パイプライン数及び医師主導臨床研究の実施数は順調に増加しており、全体の研究開発費は2024年3月期23,633万円、2025年3月期13,286万円、2026年3月期20,166万円となっております。これらリスクの高い医師主導治験に対しては、公的研究助成金を積極的に活用することで、研究開発費の自己負担の軽減に努めてきました。その結果、2024年3月期13,317万円、2025年3月期6,194万円、2026年3月期3,629万円の公的資金が獲得でき、自己負担の研究開発費は2024年3月期10,316万円、2025年3月期7,092万円、2026年3月期16,536万円に抑えることができました。2027年3月期において、医薬品では慢性骨髄性白血病、悪性黒色腫、非小細胞肺がんが公的資金を確保できています。医療機器、プログラム医療機器ではディスポーザブル極細内視鏡、維持血液透析医療支援AI、糖尿病医療支援AIが公的資金を確保できています。
< 図表15 当社の経営指標 >

研究環境
バイオベンチャーの取り組む最先端医療研究は、環境変化のスピードが極めて早く、潜在的な競争相手に先行し、他社の知的財産権を上回る開発をする必要性があります。医療のあり方もブロックバスターから個別化医療へ大きく変遷しています。重要なことは、最先端の研究、技術、シーズをいち早く取り入れる枠組み、速やかに臨床現場で実証することと考えます。このため、多くの疾患領域に対する最先端の科学技術成果の活用の「場」、医師や研究者とのFace to Faceの交流の「場」、行政や医療産業企業とのオープンイノベーションの「場」が必要であると考え、2022年1月、東北大学に東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Tohoku University x Renascience Open Innovation Labo:TREx)を開設しました。その結果、血管肉腫や膵臓がんなどの医薬品パイプライン、乳がん病理診断、心臓植込み型デバイス患者における不整脈・心不全発症予測、人工心臓患者における血栓発生予測などのプログラム医療機器パイプラインが立ち上がっています。さらに、日本電気株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社、チェスト株式会社、株式会社ハイレックスコーポレーション、株式会社ハイレックスメディカル、ニプロ株式会社、東レ・メディカル株式会社などの契約締結につながっています。さらに、第二のオープンイノベーションラボとして、2023年4月には広島大学に広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo:HiREx)を開設しました。その結果、非小細胞肺がん、皮膚血管肉腫、全身性強皮症及び膵臓がん等において複数の第Ⅱ相医師主導治験を実施しているほか、糖尿病治療支援プログラム医療機器及び維持血液透析医療支援プログラム医療機器については、それぞれ臨床性能試験を完了しPoCを取得しており、医薬品及びプログラム医療機器の両領域において開発成果の創出が進展しております。また、ノースウェスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)の日本研究室などオープンイノベーション拠点の設置、台北医学大学やサウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)との連携など研究環境の充溢、拡大に努めております。
財務環境
当社は、2021年9月に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、公募増資及びオーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資により総額1,653,616千円の資金調達を行いました。この調達資金を活用して、既存のパイプラインの開発(慢性骨髄性白血病や悪性黒色腫などの医師主導治験の実施)、新規プロジェクトの導入と医師主導治験の実施、AIを用いたプログラム医療機器の開発を実施しました。また、2026年3月期にはHeights Capital Management, Inc.が運用する CVI Investments, Inc.との間で、株式及び新株予約権発行プログラムの設定に係る Equity Program Agreementを締結し、第三者割当によって総額1,903,820千円の調達を実施しました。この調達資金を活用して、がん分野における実用化の加速と適応拡大、抗加齢・長寿の国際共同臨床試験や動物用医薬品(イヌ、ネコ)の臨床試験を実施しています。医薬品の研究開発、特に治験の実施には多額の研究開発費が必要です。当社は、公的研究資金を活用し、限られた自己資金の中で効率的な研究開発を心がけており、パイプライン数及び医師主導臨床研究の実施数は順調に増加しております。
医薬品領域では、「がん」分野での開発を重点領域として実施してきましたが、国際的な規模での事業成長が期待される「抗加齢・長寿分野」での研究並びに事業にも注力しています。
(「がん」の開発方針)
「がん」に対しては、国内で複数のがん種に対する治験を実施中です(慢性骨髄性白血病第Ⅲ相試験、悪性黒色腫第Ⅲ相試験、血管肉腫第Ⅱ相試験、肺がん第Ⅱ相試験)。まずは、日本で希少がん(悪性黒色腫、血管肉腫、慢性骨髄性白血病)に対する薬事承認を取得することにより、本医薬品の上市と臨床応用を目指します。悪性黒色腫の第Ⅲ相試験は既に日本で開始しているため(2025年2月18日適時開示)、薬事承認に向けての国外でのブリッジング試験を複数の国の規制当局と協議中です(2025年12月15日適時開示)。血管肉腫に関しては、日本で実施中の第Ⅱ相試験が終了し(2025年12月12日適時開示)、既存治療に比べて極めて良い結果が得られたので(2026年2月10日適時開示)、薬事承認に向けて速やかな第Ⅲ相試験を実施する予定です。並行して、肺がん、膵臓がんなどがん種の適応を拡大し、将来の大きな市場を確保するための第Ⅱ相試験を実施しております(2025年11月26日適時開示、2025年12月16日適時開示)。
(「抗加齢・長寿」の課題と開発方針)
「がん」に比べて「抗加齢・長寿」の研究や事業は課題が多いです。「がん」など従来の医薬品開発は、「単一疾患」、「単一標的」、「明確な臨床評価指標(エンドポイント)」を前提としています。一方、「老化」は加齢に伴う生理的変化の延長でもあり、連続的かつ個体差の大きい現象でもあるため、現在の医療保険の制度上は「疾患」とはみなされていません。「老化」を医療保険上の単独の適応症として定義し、一般的な疾患のように明確な診断基準や評価指標で医薬品として開発することは困難です。ですから、事業化にあたっては薬事規制、臨床試験デザイン、保険償還制度、ビジネス・モデルといった様々な課題が存在しています。しかし、近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティ[幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング(老化細胞若返り)、セノリティクス(老化細胞除去)]が提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているために、高額な資金も投資されている分野です。
老化の病態は単一ではなく、エピジェネティック情報、代謝、炎症、幹細胞機能、免疫などが相互に影響し合い、生体全体の恒常性が崩れた状態です。除去されずに蓄積した「老化細胞」は、炎症性サイトカインやケモカイン(老化関連分泌形質:SASP)を持続的に放出し、周囲の健全な細胞や組織に慢性炎症を引き起こします。これが動脈硬化、線維化、神経変性、代謝異常といったあらゆる老化関連疾患の共通基盤を形成しています。したがって、老化介入には「どの病態を改善するか」ではなく、「生体機能への多面的な介入により、崩れた全体のバランスをどう改善するか」という考え方が重要です。当社のPAI-1阻害薬RS5614は、複数経路にまたがり統合的に介入することで、崩れた生体全体の機能を改善できる医薬品候補です。老化環境の改善、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有しており、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを備えています。
RS5614のセノリティクス医薬品としての可能性を検討する重要な臨床試験を、XPRIZE Healthspanセミファイナル試験として実施しました(2025年8月18日適時開示)。RS5614を4ヶ月投与することにより、エピゲノム(遺伝子修飾)あるいは遺伝子レベルでの改善が認められました。特筆すべきは、生物学的年齢の2~3歳の若齢化です。タンパクレベルでも、免疫機能、骨・筋肉機能、代謝機能、並びに認知機能の改善など、抗加齢作用に関わる複数のタンパクの改善が認められました。細胞レベルでも、免疫細胞、造血幹細胞の機能回復や若齢化が認められ、さらに全身での酸化ストレスの軽減も確認されました。比較的健康な高齢者に対してもRS5614は安全に経口で投与できることが確認されたのみならず、4ヶ月間の短期間の投与にも関わらず、免疫、代謝、骨・筋肉、認知・神経生理、抗酸化、造血幹細胞など、広く各種臓器に対して抗老化作用が確認されました(図表16)(2026年5月14日適時開示)。これらの分子、細胞レベルでの変化が、各種臓器の抗老化作用に繋がり、最終的に健康寿命の延伸につながるかどうか、大変興味深いところです。
< 図表16 セミファイナル試験結果 >

今回のセミファイナル試験結果及びファイナル試験の計画を取りまとめ、2026年4月にXPRIZE Healthspan評価委員会へ提出しました。2026年8月にファイナリスト(TOP10)に採択されれば、日・米・サウジアラビア・台湾の大規模な国際共同臨床試験(100~150名規模のプラセボ対照盲検試験)を実施する予定です。本プロジェクトに関して、ノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)(2025年11月10日適時開示)、台北医学大学(2025年12月15日適時開示)、サウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)(2026年2月9日適時開示)との間で、臨床試験を共同で実施するための基本合意書を締結しています。
長寿関連事業(医療用医薬品、OTC医薬品、さらには動物医薬品)は、超高齢化を背景に経済や生活に与える効果も極めて大きな成長分野です。PAI-1阻害薬RS5441の脱毛症治療薬としての実例もあり、当社のPAI-1阻害薬の抗加齢・長寿研究をさらに展開する予定です。なお、当社のがん及び抗加齢・長寿領域に関連する取材記事は、科学誌『Nature(Digital edition)』、『Nature Biotechnology』、『Nature Reviews Drug Discovery』に掲載されました(2025年12月1日、2026年2月26日開示)。
当社技術(セノリティクス内服薬)に競合する技術として、幹細胞治療、細胞内成分治療(エクソソーム)、遺伝子治療(エピジェネティック・リプログラミング)などが挙げられます。特に、エピジェネティック・リプログラミングは、米国Life Biosciences社、米国Altos Labsなど20~30億ドルの資金調達を実施して開発を進めているバイオテック企業が注力している分野です。「老化」への治療法の開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業となり得るため、多額の資金が集まっています。2026年1月、米国FDAはLife Biosciencesが開発する「ER-100」の臨床試験開始を許可しました。ER-100は、遺伝子治療によりOSK(OCT4、SOX2、KLF4の3つの転写因子)を導入し、細胞を部分的に初期化(時間を巻き戻す)する方法です(OSKは「山中4因子」から腫瘍化リスクの高いc-Mycを除いたものです)。治験は視神経症という具体的な疾患が対象ですが、「老化」を視野に入れた研究です。一方、当社のアプローチは細胞の時間を巻き戻す(エピジェネティック・リプログラミング)ための遺伝子治療ではなく、蓄積した老化細胞を除去(セノリティクス)するための内服薬です。セノリティクスのアプローチをとるバイオテック企業も複数あり、細胞治療(CAR-T)、遺伝子治療、既存の低分子医薬品の適応外使用(ドラッグリパーパシング)など複数モダリティが提案されていますが、当社は低分子医薬品(内服薬)で挑戦しています。
当社のPAI-1阻害薬RS5614は生物製剤や核酸系医薬品ではなく、低コストで大量合成可能な低分子化合物(分子量:424.81、錠剤)です。大量の工業的生産が可能で、安定した品質の医薬品を生産可能で、グローバルな供給が可能です。RS5614は経口投与が可能で、他の生物製剤とは異なり、自宅で投与できます。細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品とは異なり、地理的又は物流上の制約を受けることなく容易に輸送できます。細胞製剤やエクソソームとは異なり、ドナーも必要としません。最も重要な安全性に関しても、細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品に比べて副作用が少ないことはメリットであり、XPRIZE Healthspanのセミファイナル試験でも、高い安全性が確認されました。世界的な高齢化は、先進国と新興国の両方において深刻な社会問題となっています。長寿医療は、富裕層だけでなく、多くの人々にとって必要な医療でなくてはならず、内服薬であるRS5614は、幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング遺伝子治療、他のモダリティによるセノリティクス医薬品に対しても優位性は高いと考えます。(図表17)
< 図表17 RS5614の優位性 >

当社のサステナビリティ(持続可能な社会の実現)に関する考え方及び取組みは、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社が判断したものです。
当社は、2021年9月に東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2022年6月29日開催の第23回定時株主総会において監査等委員会設置会社に移行しました。これは、経営に関する意思決定スピードを加速し、監督機能の強化と取締役会の審議の一層の充実を図るためです。当社のコーポレート・ガバナンスの概要については、「
また、当社では、サステナビリティを含むリスクについて、定期的に開催される取締役会や経営会議、コンプライアンス委員会などの会議体で適宜確認・管理をする体制を構築しています。
当社は医療課題を解決し、ヒトが心身ともに生涯にわたって健康を享受できるための新しい医療を創造したいと考えます。特定の技術に特化したベンチャーではなく、広くモダリティ(医薬品、医療機器など治療の様式)の開発に取り組みます。医薬品開発も、低分子医薬品を中心とした開発から、バイオ医薬品へと多様化しています。さらに、近年の工学系や情報技術の進歩により、情報・工学技術との融合による新たな医療の展開が進んでおり、欧米や国内の大手製薬企業でも医薬品単体の事業から医療ソリューション全般にわたる事業への転換を迎えております。医薬品、医療機器、さらにはAIを活用したプログラム医療機器など、医療現場での治療のオプションも広がりつつあります。これまでの当社の主体である化学系や生物系の研究に加えて、工学系や情報系の研究にも視野を広げ、多彩で魅力ある研究と事業のポートフォリオを創出しています。
世界保健機関(WHO)では、加齢や生活習慣に伴う疾患(老化関連疾患)を「非感染性疾患(NCDs)」として位置付け、がん・糖尿病・呼吸器疾患・循環器疾患の4つの疾患を重点疾患と認識していますが、全世界の死亡者の70-80%がこれら疾患で亡くなっているといわれています。当社は、これら4疾患の治療薬を含めた健康寿命を伸ばすための医薬品、女性・小児の疾患治療薬など医学的あるいは社会的にも重要な課題を解決すべく取り組んでいます。
世界的な超高齢化は、先進国と新興国の両方において深刻な社会問題となっています。長寿医療は、富裕層だけでなく、多くの人々にとって必要な医療です。近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティが提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているために、高額な資金も投資されている分野です。PAI-1阻害薬RS5614は老化環境を改善し、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる医薬品候補です。事業化にあたっては薬事規制、臨床試験デザイン、保険償還制度、ビジネス・モデルといった様々な課題が存在していますが、この重要な社会的、医学的課題に対してパイオニアとして挑戦していきます(XPRIZE Healthspanの当社チーム名は「PAIoneer」)。
(コーポレート・ガバナンス及び経営体制の強化)
当社は、2022年6月29日開催の第23回定時株主総会の決議により、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。目的は、取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員を取締役会における議決権を有する構成員とすることにより、取締役会の監査・監督機能を強化し、更なる監視体制の強化を通じて、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実を図るため、社外取締役からの客観的な意見を意思決定に反映させることで透明性の高い経営ができ、効率的かつ迅速な経営判断を行うための最適なガバナンス体制となっています。また、これに併せて執行役員制度を導入し、経営の監督機能である取締役会からの権限委任を通じた業務執行体制を採っています。
事業環境の変化に対応した迅速な意思決定を重視し、経営の効率性を一層高めるとともに、継続的な事業発展、持続的な企業価値の向上に資するようコーポレート・ガバナンスの一層の充実に取り組むことで、これまで以上にステークホルダーに公正な経営情報を開示し、その内容の適正性を確保していきます。
(人材育成方針や社内環境整備方針について)
当社は創業時以来、企業の最大の資源は人であり、既存の価値観にとらわれず自ら考え行動できる人材を育成することは企業の成長・発展の礎となるとともに社会を活性化するとの基本的な考え方に立ち、「社員が自ら長期的な視野で考え行動すること」「多様性を尊重し、相互に影響し成長し合うこと」「立場や状況に捉われず積極的に意見を述べ参加すること」「迅速かつ効率的に情報発信と情報共有に努めること」を重視し、社内人材の育成及び社内環境整備を推し進めています。
① コアとなる社員の育成
将来、当社を牽引する人材の育成と、社員各人が当社の掲げる経営方針を理解しその意思を周囲の社員と共有できるよう、経営者はコアとなる社員と直接意見を交わす機会を頻繁に設け、情報を共有しています。多くの社員が重要な会議を含めた経営者の意思に触れられることは少数体制であることの利点であり、社員自身も自分の成長が会社の成長・維持に不可欠であると自覚し、ともに成長ができる体制となっています。さらに、大学など外部環境(例えば東北大学とのオープンイノベーション拠点であるTREx)に若手社員のみならず執行役員も積極的に参画しており、異分野共同研究、学際研究、橋渡し研究など社内では育成が難しい教育にも積極的に取り組んでいます。
② 多様な人材の採用
当社は広くモダリティ(医薬品、医療機器など治療の様式)の開発に取り組んでいるため、専門性を有する多様な人材の招聘が会社の成長に不可欠です。社員がそれぞれの分野で身に付けた専門的な知識や経験を共有し合うことで、社員自身のキャリア形成を実現しつつ相互に成長・発展することができると考えます。幅広い人材を採用し、意欲溢れる優秀な人材には経歴、年齢、性別を問わず機会とポジションを提供する方針です。
③ 効率的な業務のための環境整備
当社では、正規雇用者を対象にフレックスタイムを導入しています。また、COVID-19の拡大以前からリモートワーク制度を導入しており、場所、時間によらない多様な働き方ができる環境を整備し、ライフスタイルや勤務場所が変わっても効率的、持続的に勤務できる体制を採っています。
また、東北大学にTREx(Tohoku University x Renascience Open Innovation Labo)、広島大学にHiREx(Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo)を、それぞれ2022年1月と2023年4月に開設し、最先端の科学技術成果の活用の「場」、医師や研究者とのFace to Faceの交流の「場」、医療産業企業とのオープンイノベーションの「場」として、社員が直接最先端の研究や医療分野に触れられる効率的で価値のある情報収集の環境を作っています。TRExでは、既に、1)東北大学大学院医学系研究科の研究者、東北大学病院の医師、東北大学メディシナルハブに参画する企業、行政など異業種との連携が加速され、2)既存の開発パイプラインの研究推進と複数の新規シーズの導入ができ、3)医師主導治験の実施、医療データの取得、公的資金獲得、許認可戦略の立案などを効率的、迅速に対応できており、4)人材の育成と確保にもつなげられています。
④ 社内教育制度
社内教育は、OJTを基本とし、業務に直接関わりのある上司や先輩はもとより、部署の垣根なく必要な知識やスキルを共有し、社員全体が効率的にスキルアップできる環境となっています。また、自由で発展的な考えを尊重しつつ、企業の存続に影響を及ぼすような重大な事象が起きないよう、コンプライアンスやリスクに関する研修を、新規採用時には必ず実施し、また定期的な研修を開催しています。
当社は、公的資金や外部機関(研究機関、医療機関)のリソースを活用することで、効率的かつ迅速な研究開発を心がけており、大学など外部環境(例えば東北大学とのオープンイノベーション拠点であるTREx)に社員が積極的に参画しています。現在の社員の半数以上はこのような外部環境で研究開発に取り組んでおり、多様な環境ならではの経験と教育や啓発が可能となります。
⑤ 社内人事評価制度
当社では、年齢や性別に関わらず、事業の拡大に貢献できる人材や意欲溢れる優秀な人材を積極的に評価し、管理職や執行役員に採用する方針です。人事考課は、毎年度3月に実施され、直接の上長及び部門長により所属社員の能力や取組みについて評定が行われ、面談により改善点を話し合うなど社内での意思疎通を図っています。人事考課は、当社と従業員の目標達成に対するベクトルの一致を図ることを主眼とし、ひいては適切な人員配置の実現による当社全体の業務の最適化を目指します。
当社が抱える多くのリスクは研究開発に起因します(治験成否、開発費用の拡大、導出、製造物責任、知的財産、情報管理、治験薬副作用、研究人材確保など)。そこで、研究開発の状況は管理部を含めた社内全員が遅延なく把握し、情報共有とリスクの早期把握、また問題が発生あるいは想定される場合には、迅速に対応することが重要です。そこで、週1回毎朝1時間程度「研究開発会議」として、管理部を含めた社員が参加する会議を継続的に実施しています。取締役会(月1回開催)や経営会議(月1回開催)とは違い、社員の意見を広く取り入れることが可能となり、重要な情報の共有と問題の把握、迅速な解決に大きく貢献しています。このような地道な取り組みは、コーポレート・ガバナンスへの意識を高める上でも有効です。取締役会や経営会議、またコンプライアンス委員会では当然のことながらサステナビリティを含むリスクについて定期的に報告と適切な議論を行っています。
当社は、持続可能な社会の実現に向けての開発目標(SDGs)の中で、特に「全ての人に健康と福祉を」に対しては大きく貢献できると考えます。当社は、高齢化や少子化(女性・小児)の疾患といった医学的また社会的に重要な課題解決を図っており、当社の研究開発を推進することが持続可能な社会の実現につながります。世界保健機関(WHO)では、高齢化や生活習慣に伴う重要な疾患(老化関連疾患)を「非感染性疾患(NCDs)」として位置付け、がん・糖尿病・呼吸器疾患・循環器疾患の4つの疾患が対象となっています。新興国を含めた全世界の死亡者の70-80%がこれら疾患で亡くなっているといわれています。当社は、これら4疾患の治療薬を含めた健康寿命を伸ばすための医薬品、女性・小児の疾患治療薬など医学的あるいは社会的にも重要な課題を解決すべく取り組んでいます。
世界的な規模での超高齢化は、先進国のみならず新興国においても深刻な社会問題となっています。長寿医療は、富裕層だけでなく、多くの人々にとって必要な医療でなくてはならず、当社の開発するRS5614は、幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング遺伝子治療、他のモダリティによるセノリティクス医薬品に対しても優位性は高いと考えます。
(人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標について)
① 採用指針
当社が取り組む医療分野、特に医薬品開発は、国内外バイオベンチャーや製薬企業との競争が激しく、より一層の研究開発の加速と競合他社との差別化が必要になります。そのため、創造的かつ独創的な研究活動を推進し、会社の経営を支える優秀な人材の獲得は、当社の重要な経営課題でもあります。そこで、年齢や性別に関わらず、研究開発や事業に貢献できる人材や意欲溢れる優秀な人材については積極的に採用したいと考えます。特に、ビジネスデベロップメント(BD)、ライセンス渉外、臨床開発(薬事戦略)などの分野で貢献できる人材の確保を重視しています。また、事業の国際化に伴い、国外の研究機関や事業会社との連携や渉外の機会も格段に増えていますので、外国人などその他のダイバーシティにも配慮した人材登用も推進しています。
② 女性活躍推進等
当社は、設立当初から年齢や性別に関わらず採用し、個人の希望や能力に応じて役職や業務内容を判断する経営方針を取ってきました。当期は従業員の入れ替わりにより女性従業員比率は33.3%となっており、継続して女性従業員比率25%を達成しており、積極的に女性が活躍できる環境づくりを行っております。
なお、当社は、提出日現在において、人材育成方針や社内環境整備方針に関する具体的な指標及び目標は設定しておりませんが、性別や年齢に関わらず、能力に応じて会社の重要な業務に抜擢し、経営にも参画する機会を提供する方針です。
[女性従業員比率]
※両年とも4月30日時点
※人数には、執行役員、正規雇用者のほか臨時従業員(嘱託社員、パートタイマー)を含む。
当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。なお、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断や当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生を全て回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスク全てを網羅するものではありません。
当社は、医薬品等の開発を行っていますが、医薬品等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。
また、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
当社は、研究の初期段階の探索的研究から承認申請に必要な試験(医薬品の場合は第Ⅲ相臨床試験、プログラム医療機器の場合は臨床性能試験)に至るまで、幅広い段階の医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発経験を有しておりますが、研究の初期段階から医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の製造販売の段階に至るまでには、数多くの課題・項目をクリアし、規制当局からの承認及び認可の取得を要し、薬事規制等の法的な規制にも対応していく必要があります。そのため、長期間に及ぶ研究開発体制を維持するために多額の資金を必要とします。また、新規の医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発市場は、国内外を問わないことから、資金力の豊富な国際的な製薬企業、医療機器会社等や、国内においても多くの企業・研究開発機関と競合しております。
① 収益の不確実性について
当社の主たる事業は、医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補の有効性及び安全性を評価するための初期段階の研究開発(探索的研究、非臨床試験、初期臨床試験等)から承認申請に必要な試験(医薬品の場合は第Ⅲ相臨床試験、プログラム医療機器の場合は臨床性能試験)までをアカデミアや研究機関との共同研究及び医師主導治験などの創薬エコシステムを活用して行い、その後、製薬企業、医療機器会社等に対して当社が有する医薬品・医療機器・プログラム医療機器の候補の開発製造販売に係る知的財産権の使用実施許諾(ライセンスアウト)を行い、当該製薬企業、医療機器会社等からライセンス収入を得るものです。
ライセンス収入の形態は、ライセンス契約締結時に発生する契約一時金、開発進捗に伴って発生するマイルストーン収入(臨床試験の開始や終了時又は製造販売承認申請時等の予め定めた開発の節目(マイルストーン)ごとに支払われる収入)、上市後において導出先である製薬会社、医療機器会社等が行う医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の販売に対するロイヤリティ収入等があります。
ライセンス契約の締結は、製薬企業、医療機器会社等から、それまでの研究開発で得られた医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補の有効性及び安全性、並びに予想される対象患者数や保険償還価格、特許存続期間等の事業性に関して一定の評価を獲得する必要があります。したがって、製薬企業、医療機器会社等から研究開発成果に対する評価が得られない可能性、研究開発の遅延により想定どおりのタイミングで評価されない可能性、想定どおりの評価が得られず、契約一時金をはじめ上記の各種収入を当社の想定する規模の金額で契約できない可能性、当社が想定するタイミングでライセンス契約を締結できない可能性又はライセンス契約に至らない可能性があります。
また、導出後も次の開発段階に進むために必要な臨床試験成績等が得られない可能性、開発途中で競合する医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の上市、疾病の治療法そのものの変化のほか、特許係争の発生等で事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業、医療機器会社等が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性やライセンス契約解消に至る可能性があります。
さらに上市に至った場合においても、保険償還価格が当初の想定を大きく下回ることや、市場環境等の状況が当初の想定より悪化する可能性がありますが、このような場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
マイルストーン収入及びロイヤリティ収入の発生については、導出先製薬企業、医療機器会社等の研究開発の進捗及び医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の発売・販売の状況等に依存するものであることから、営業収益として計上されるまでに長期間を要する可能性があり、また、マイルストーンを達成できない場合、これらの営業収益が計上されない可能性があります。
さらに契約一時金収入、マイルストーン収入は継続的な収入ではなく、医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発に係る一定の条件の達成等を前提として一時的に発生する収入であることから、当該収入の計上時期により、年度決算・四半期決算の売上高・利益等が非連続的に偏重する可能性、年度決算比較・四半期決算比較の売上高・利益等において大幅な変動・乖離が生じる可能性があります。
また、上記の収入の計上時期が想定から遅れた場合、決算短信で公表した業績予想が大幅に変更される可能性があります。
当該リスクへの対応については、パイプラインプロジェクトの数を増やすとともに、複数の医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発等経験者、ビジネスディベロプメント経験者を社内外に確保するよう努めております。また、研究開発の開始時から開発の体制・期間・資金、知財、薬事などロードマップを明確にして取り組んでいますが、特に出口の戦略を重視しています。研究開発の初期から導出候補企業と導出条件などを協議しながら、なるべく出口の方針が定まった後に開発を実施しています。さらに、自社シーズを、オープンリソースとして外部研究者に提供し研究いただくことで新たな医療用途を発見し、この中から科学性、医学性、経済性(事業性)の観点から取捨選択し医師主導治験につなげることで、自社シーズの価値向上に努めています。
当社が開発している医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補が上市に至るまでには、有効性及び安全性の評価に関する数多くの探索及び検証並びに規制当局からの承認が必要とされます。研究開発の各段階において、次の段階へ進むか否かの判断は、導出前であれば当社が、導出後であれば導出先製薬企業、医療機器会社等が行いますが、有効性及び安全性に良い評価が得られなかった場合、外部環境の変更等で事業性の喪失が懸念された場合などには、次の研究開発段階への進行が遅れる可能性、研究開発自体を中止・終了せざるを得ない状況になる可能性があります。
研究開発が遅れた場合や追加試験が必要となる場合には、計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となる可能性があり、また、その資金調達の実現自体にも不確実性があります。さらに、ライセンス契約の存続期間は、特許権の存続・有効期間が終了するまでの期間とされることもあり、その場合ライセンス契約中にマイルストーンが達成できず、当初想定した投資回収額を回収できないリスクがあります。
研究開発を中止・終了せざるを得ない状況になった場合又は研究開発を終えて製造販売に関する承認申請を規制当局に行っても規制当局から承認されなかった場合には、当初想定していた投資回収額を回収できないリスクがあります。これらの事象が発生した場合、当社のような規模においては影響が大きく、当社の事業、業績や財務状況等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発の不確実性を低減するために、試験の設計及び実施においては、外部の開発ターゲットの疾患領域に精通する医師(キー・オピニオン・リーダー)、非臨床試験・臨床試験・CMC(Chemistry, Manufacturing and Control:原薬及び製剤の開発)・薬事それぞれに精通する外部専門家(コンサルタント)及び規制当局との事前相談を通じた情報収集に基づき試験の立案と実施を行っております。
当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、保険償還制度及び医療保険制度並びにその他の関係法規・法令による規制が存在します。
非臨床試験においては、医薬品等の安全性試験の実施に関する基準であるGLP(Good Laboratory Practice)、原薬等の治験薬の製造においては、医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準であるGMP(Good Manufacturing Practice)に準ずる治験薬GMP、そして臨床試験においては、医薬品等の臨床試験の実施に関する基準であるGCP(Good Clinical Practice)を確実に実施していることが研究開発上必須条件となっており、製造販売の段階においては、販売を行う各国で定められている薬事関連法規・法令に従った承認・認可・許可を得る必要があります。
当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準を遵守した治験実施計画を基に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展、市場の動向などにより適宜改定されます。
医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発・販売等事業は、年単位の長期間にわたる事業であり、その間にこれらの法律・法令・基準等が大きく改定される可能性、これら法令等が変更される可能性があります。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金の確保が必要となるリスク等があり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、治験の実施や計画立案の前に、可能な限り医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの事前相談を活用して、適切な助言を受けるよう心がけています。
当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。
競合他社の有する医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補の研究開発が当社と同じ疾患領域で先行した場合、当社の事業の優位性は低下する可能性があります。競合他社による医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の登場により当社の臨床試験において被験者の登録が停滞し臨床試験が遅延する可能性、目標被験者数に届かず臨床試験が中止となる可能性があります。また、この場合、当社事業において想定以上の資金が必要となる可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に甚大な影響を及ぼす可能性があります。
さらに、競合する医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の開発が先行し又は競合品が上市されたことにより、当社の医薬品、医療機器及びプログラム医療機器の候補の事業性が大きく毀損されたと導出先製薬企業、医療機器会社等が判断する場合は、開発スケジュールが遅延する可能性や、ライセンス契約解消に至る可能性があります。上市に至った場合においても、他社が同様の効果や、より安全性のある製品を販売した場合など、期待された売上が達成できず、想定したロイヤリティが得られない等により、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、①パイプラインプロジェクトを増やし、リスクの軽減を図り、②プロジェクトごとの開発計画を戦略的に策定し、差別化が見込まれるパイプラインの獲得と開発を図るように努めております。
当社の研究開発(基礎研究~非臨床試験)は、国内外の外部研究機関との共同研究に基づいています。また、臨床開発も企業治験ではなく医師主導治験として実施しており、外部医療機関、医薬品開発業務受託会社(CRO)、アカデミア臨床研究機関(ARO)への完全委託によって実施されているため、社内に多くの研究人材は必要ありません。社内業務は経営と管理業務が主体であり、取締役6名、執行役員3名、従業員3名及び平均臨時雇用者1名の小規模組織で対応しており、実務は事業を推進する各部門の責任者に強く依存しています。執行役員には適切な人材を配していますが、人材の流出が生じ、人員確保が順調に進まない場合には、当社の事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社が取り組む医療分野、特に医薬品開発は、国内外バイオベンチャーや製薬企業との競争が激しく、より一層の研究開発の加速と競合他社との差別化が必要になります。そのため、創造的かつ独創的な研究活動を推進し、会社の経営を支える優秀な人材(責任者)の獲得は、当社の重要な経営課題でもあります。そこで、年齢や性別に関わらず、研究開発や事業に貢献できる人材や意欲溢れる優秀な人材については積極的に採用しています。
当社はこれまで、創業者であり、多くの社有特許の発明者でもある宮田敏男(現 当社代表取締役会長兼社長)を中心として、基礎研究をはじめとする事業を推進してまいりました(同氏は、PAI-1阻害薬物質特許、用途特許及び用法用量特許、ピリドキサミン用途特許及び物質特許、糖尿病治療支援プログラム医療機器の特許並びに維持血液透析医療支援プログラム医療機器の特許の発明者)。当社設立の発端は、同氏の研究成果の事業化を目的とするものであり、当社の研究開発及び事業活動において重要な役割を有しており、その依存度は極めて高い状況です。
当社は、今後も同氏による会社経営の執行が必要不可欠であると考えており、何らかの理由により同氏の会社経営の執行が困難となった場合等には、当社の事業等に大きな影響を及ぼすことが想定されます。
当社は、情報管理について、情報セキュリティ管理規程、個人情報取扱要領、特定個人情報取扱要領、情報セキュリティ・マニュアルに沿って情報セキュリティ管理責任者が中心となって運用を行っておりますが、当社の研究又は開発途上の治験、技術、ノウハウ等、重要な機密情報が流出した場合には当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。このリスクを低減するため、当社は役職員、取引先との間で、守秘義務契約等を定めた契約を締結しております。また、重要な機密情報を含む社内クラウドサーバーへは必要最低限の役職員のみしかアクセスできない様にするなど、厳重な情報管理に努めております。
しかし、役職員、取引先等により、これらが遵守されなかった場合には、重要な機密情報が漏えいする可能性があり、このような場合には当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社は研究開発活動において様々な特許等の知的財産権を保有しております。しかし、当社の研究開発を超える優れた研究開発が他社によってなされた場合や、当社の出願した特許申請が成立しないような場合には、当社の事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、①競合品の開発状況を随時把握し、プロジェクトの優先順位付けを行い、②パイプラインを増やし、リスクの軽減を図るように努めております。また、出願した特許に対しては、なるべく早期に審査請求し、知財成立によるリスクの軽減を心がけています。
事業に重要な知的財産権の有効期間に関しても、当社の事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応については、必要なRS5614に関しては、物質特許に加えて、非臨床試験や臨床試験からがんや抗加齢・長寿に関わる複数の用途特許を出願して、知的財産権の有効期間を延長しています。また、RS5441に関しても当社が出願済みの物質特許に加えて、導出先のEirion Therapeutics Inc.(エイリオン社)でも用途特許を出願しています。
当事業年度末において、当社の事業に関連した特許等の知的財産権に関して、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありません。当社は現在、早期の特許出願を優先する方針をとっており、特許出願後において事業展開上の重要性等を考慮しつつ必要な調査等の対応を実施しておりますので、本書提出日現時点においては他社が保有する特許等への抵触により、事業に重大な支障を及ぼす可能性は低いものと認識しております。もとより、当社のような研究開発型企業において、この様な知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。
今後において、当社が第三者との間で法的紛争に巻き込まれた場合には、弁護士や弁理士との協議のうえ、その内容に応じて対応策を講じていく方針でありますが、法的紛争の解決に多大な労力、時間及び費用を要する可能性があり、その場合当社の事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクへの対応については、顧問弁護士及び特許事務所と連携し訴訟及びクレーム等に迅速に対応する体制としております。
当社は、臨床開発のために複数の医師主導治験を実施しています。治験に必要な治験薬は充分な量を前もって確保しておりますが、使用期間(通常は最大3年間)もあり、継続的に製造確保が必要になります。当社の外部委託先である製造施設等において、技術的・規制上の問題若しくは自然災害・火災などの要因により生産活動の停滞・遅滞若しくは操業停止などが起こった場合、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応について、現在、当社の医薬品パイプラインは低分子化合物かつ製造施設は容易に代替可能であり、原薬及び治験薬製剤製造委託候補施設を複数確保するように努めております。
当社は研究開発型企業であり、ロイヤリティ収入が得られるようになるまでは営業収益が安定せず、多額の研究開発費用が先行して計上されることとなります。そのため、第18期(2017年3月期)から第25期(2024年3月期)まで連続して当期純損失を計上しており、第26期において当期純利益を計上したものの、第27期に当期純損失を計上しており、第27期末においてマイナスの繰越利益剰余金を計上しております。
当社は、将来の利益拡大を目指しておりますが、将来において計画どおりに当期純利益を計上できない可能性があります。また、当社の事業が計画どおりに進展せず当期純利益を獲得できない場合には、マイナスの繰越利益剰余金がプラスとなる時期が遅れる可能性があります。
特に医薬品の開発期間は基礎研究から上市まで通常20年以上の長期間に及ぶものでもあり、収益に先行して研究開発費が発生しているなどにより、継続的に営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローが生じております。今後も開発の進捗に伴って研究開発資金の需要が予想され、収益確保又は資金調達、資金繰りの状況によっては、当社の事業活動等に重大な影響を与える可能性があります。
また、2026年3月期にはHeights Capital Management Inc.が運用する CVI Investments Inc.との間で、株式及び新株予約権発行プログラムの設定に係る Equity Program Agreementを締結し、第1回から第4回までの株式発行に係る払込みが完了しております。一方、新株予約権の行使に伴う資金調達に関しては、その行使の進捗状況によっては、必要な資金を十分に確保できない可能性があります。
本書提出日現在において、当社は税務上の繰越欠損金を有しております。しかし、繰越欠損金の繰越期間内に、繰越欠損金の全て又は一部を利用するために十分な課税所得を当社が得られるという保証はありません。また、当社の業績が順調に推移する結果、繰越欠損金が解消され課税所得控除が受けられなくなった場合、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられることとなり、現在想定している当期純利益及びキャッシュ・フローの計画に影響を与える可能性があります。
当社は、海外企業とライセンス契約を締結しており、主に外貨建での決済が行われておりますが、当社においては特段の為替リスクヘッジは行っておりません。そのため、想定以上に為替相場の変動が生じた場合には、当社の業績はその影響を受ける可能性があります。
2021年9月の株式上場時の公募増資等により調達した資金については、主に研究開発費に充当し、2026年3月までに計画どおり全額充当しました。また、2026年3月期において、第三者割当による新株式及び新株予約権の発行を組み合わせた資金調達を実施しております。なお、資金需要の発生時期及びその規模は公的研究費の獲得状況、研究開発の進捗等により変動する可能性があり、また、新株予約権の行使の進捗状況によっては想定どおりの資金を確保できない可能性があります。調達資金の使途を変更した場合には、速やかに開示する予定です。
当社の代表取締役会長兼社長である宮田敏男及び二親等内の親族の実質議決権所有割合は、当事業年度末日現在で42.33%です。同株主等は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針です。大株主である同株主等の持分比率が低下する場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
当事業年度末における当社の発行済株式のうち、ベンチャーキャピタル(VC)が組成した投資事業有限責任組合が所有している株式の所有割合は0.41%であります。一般に、VCが未公開株式に投資を行う主な目的は、株式上場後の当該株式を売却してキャピタルゲインを得ることであり、VCは当社の株式上場後に、それまで保有していた株式の一部又は全部を売却することが想定されます。なお、当該株式売却によっては、短期的な需給バランスの悪化が生じる可能性があり、当社株式の市場価格が低下する可能性があります。
(10) 自然災害等の発生について
自然災害、事故、重大な感染症の流行等が発生した場合には、リスクマネジメント規程に基づいてリスク低減の措置を講じます。しかし、事業所周辺においてあるいは世界的に大規模な自然災害等が発生した場合には当社の設備等に大きな被害を受け研究開発が遅延する可能性があります。また、感染症の流行等が発生した場合には事業所の一時閉鎖等の事態により研究開発が遅延する可能性があり、その結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社の経営成績、財政状態、キャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)及び研究開発活動の概要は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
①経営成績の状況
当社は、医薬品、医療機器、人工知能(AI)を活用したプログラム医療機器という多様なモダリティの研究開発を進めています。当事業年度においては、将来の高い収益を目指す『がん・抗加齢領域の医薬品開発』と、早期の収益化を目指す『医療機器・プログラム医療機器開発』の双方のポートフォリオにおいて、以下の通り臨床試験の完了や新規提携などの進展がありました。医薬品領域では、「がん」分野での開発を重点領域として実施してきましたが、国際的な規模での事業成長が期待される「抗加齢・長寿分野」での研究並びに事業にも注力しています。「がん」に対しては、国内で複数のがん種に対する治験を実施中です(慢性骨髄性白血病第Ⅲ相試験、悪性黒色腫第Ⅲ相試験、血管肉腫第Ⅱ相試験、肺がん第Ⅱ相試験)。まずは、日本で希少がん(悪性黒色腫、血管肉腫、慢性骨髄性白血病)に対する薬事承認を取得することにより、本医薬品の上市と臨床応用を目指します。悪性黒色腫の第Ⅲ相試験は既に日本で開始しているため、薬事承認に向けての国外でのブリッジング試験を複数の国の規制当局と協議中です。血管肉腫に関しては、日本で実施中の第Ⅱ相試験で既存治療に比べて極めて良い結果が得られたので、薬事承認に向けて速やかな第Ⅲ相試験を実施する予定です。並行して、肺がん、膵臓がんなどがん種の適応を拡大し、将来の大きな市場を確保するための第Ⅱ相試験を実施しています。さらに、近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティ(幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング、セノリティクス)が提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているために、高額な資金も投資されている分野です。当社のPAI-1阻害薬RS5614は、複数経路にまたがり統合的に介入することで、崩れた生体全体の機能を改善できる医薬品候補です。老化環境の改善、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有しており、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを備えています。
RS5614のセノリティクス医薬品としての可能性を検討する重要な臨床試験を、XPRIZE Healthspanセミファイナル試験として実施しました。RS5614を4ヶ月投与することにより、エピゲノム(遺伝子修飾)あるいは遺伝子レベルでの改善が認められました。特筆すべきは、生物学的年齢の2~3歳の若齢化です。タンパクレベルでも、免疫機能、骨・筋肉機能、代謝機能、並びに認知機能の改善など、抗加齢作用に関わる複数のタンパクの改善が認められました。細胞レベルでも、免疫細胞、造血幹細胞の機能回復や若齢化が認められ、さらに全身での酸化ストレスの軽減も確認されました。比較的健康な高齢者に対してもRS5614は安全に経口で投与できることが確認されたのみならず、4ヶ月間の短期間の投与にも関わらず、免疫、代謝、骨・筋肉、認知・神経生理、抗酸化、造血幹細胞など、広く各種臓器に対して抗老化作用が確認されました。これらの分子、細胞レベルでの変化が、各種臓器の抗老化作用に繋がり、最終的に健康寿命の延伸につながるかどうか、大変興味深いところです。世界的な高齢化は、先進国と新興国の両方において深刻な社会問題となっています。長寿医療は、富裕層だけでなく、多くの人々にとって必要な医療でなくてはならず、内服薬であるRS5614は、幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング遺伝子治療、他のモダリティによるセノリティクス医薬品に対しても優位性は高いと考えます。
当事業年度における研究開発活動の実績(総括)を以下に記載します。(専門用語等は(4)研究開発活動の文末にて補足説明をしておりますので、そちらをご参照ください)。
a. 医薬品
当社PAI-1阻害薬RS5614の開発経緯やがんや抗加齢・長寿領域の開発に関しては、科学誌『Nature』の取材記事も参照ください(2023年9月7日、2025年12月1日、2026年2月26日開示)。
(がん)
PAI-1阻害薬RS5614は、免疫系を活性化し、がん細胞や老化細胞の除去を促進させるなどの作用を示します。現在、国内で複数のがん種に対する治験を実施中です(慢性骨髄性白血病第Ⅲ相試験、悪性黒色腫第Ⅲ相試験、血管肉腫第Ⅱ相試験、肺がん第Ⅱ相試験、膵臓がん第Ⅱ相試験)。まずは、国内外で早期承認のための希少がん(悪性黒色腫、血管肉腫、慢性骨髄性白血病)を対象とした第Ⅲ相試験を実施し、薬事承認を取得することにより、本医薬品の上市と臨床応用を目指します。悪性黒色腫の第Ⅲ相試験は既に日本で開始しており(2025年2月18日適時開示)、薬事承認に向けた国外でのブリッジング試験については複数の国の規制当局と協議中です(2025年12月15日適時開示)。血管肉腫に関しては、日本で実施中の第Ⅱ相試験が終了し(2025年12月12日適時開示)、既存治療に比べて極めて良い結果が得られたことから(2026年2月10日適時開示)、薬事承認に向けた第Ⅲ相試験を速やかに実施する予定です。並行して、大きな市場を有する肺がん、膵臓がんなどへ適応を拡大し、第Ⅱ相試験を実施しています(2026年4月24日、2026年5月12日適時開示)。
□ 慢性骨髄性白血病(CML): AMED「革新的がん医療実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受け(2022年3月22日適時開示)、第Ⅲ相試験を開始しました(2022年8月3日適時開示)。東北大学、東海大学、秋田大学など12の大学・医療機関と共同で、CML患者を対象にチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)とRS5614の併用効果を検証するプラセボ対照二重盲検試験です。TKI治療期間が3年以上6年未満の慢性期CML患者60例を対象に、TKI単独投与群よりも治験薬RS5614の併用群において、無治療寛解維持の指標である2年間以上のDMR維持率が有意に上昇することを検証しています。2023年12月末で症例登録を完了し、最終的に解析に必要な症例数を上回る57例が登録されました。2024年12月に実施されたAMEDの最終年度評価で、第Ⅲ相試験の目標症例数の登録が完了し試験が順調に進んでいることが確認されたため、助成期間の延長が承認されました(2024年12月3日適時開示)。その後も試験は予定通り順調に経過しており、2026年3月期さらに2027年3月期にもAMEDの助成を受けることが決定しました(2025年5月7日、2026年2月12日適時開示)。
□ 悪性黒色腫(メラノーマ):悪性黒色腫治療薬については、前期に厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けており(2024年9月2日適時開示)、薬価算定における市場性加算が適用され、承認後の再審査期間が延長されます。これにより本治療薬事業の独占期間が長くなります。当期はこれを踏まえた開発をさらに推進しました
現在、根治切除不能悪性黒色腫患者124例を対象とした第Ⅲ相試験を国内18施設で実施しており、順調に患者登録が進んでいます。また、台湾での薬事承認を視野に台北医学大学と提携しました(2025年12月15日適時開示)。台北医学大学が主体となって、台湾の規制当局(TFDA)と第Ⅲ相試験の協議を進めています。
□ 血管肉腫治療薬:皮膚血管肉腫治療薬については、国内で実施していた第Ⅱ相試験の全登録患者への投与を完了しました。速報結果では、既存の国内臨床試験を凌駕する無増悪生存期間及び全生存期間が示され、高い病勢制御率と良好な忍容性が確認されました。現在、本試験の評価及びデータ解析を進めており、最終的な治験総括報告書は2026年6月頃を予定しています。
□ 非小細胞肺がん治療薬:当期において、広島大学など6医療機関で実施していたニボルマブとRS5614の併用療法に関する前期第Ⅱ相試験の36症例の登録を完了し、有効性が確認された患者の希望による治験期間の延長を経て、2026年3月に試験を終了しました。速報結果として、3次治療として治験を受けた患者において奏効率18.2%、6ヶ月無増悪生存割合27.5%と、既存のニボルマブ単剤療法を約10%上回る高い有効性が示されました。また、重篤な副作用の発現率も低く、良好な安全性が確認されています。最終的な治験総括報告書は2026年8月頃を予定しています。この結果を受け、2026年4月からは早期治療における更なる有効性を目指し、局所進行非小細胞肺がん患者27例を対象とした後期第Ⅱ相試験(化学放射線療法及びデュルバルマブに対するRS5614併用の有効性・安全性の検討)を広島大学病院など12医療機関で新たに開始しました(2025年11月26日、2026年4月24日適時開示)。本試験はAMEDの令和8年度「臨床研究・治験推進研究事業」に採択されましたので、当初想定していた本試験費用の支出が少なくなり、2027年3月期から2029年3月期までの収益性が改善する見込みです(2026年3月9日適時開示)。
□ 膵臓がん治療薬:膵がんは悪性腫瘍における疾患別死亡数の第3位でありながら、早期発見が極めて困難な悪性疾患です。診断時に切除可能な症例は15-20%に過ぎず、46.3%が遠隔転移陽性と診断されます。そこで、「遠隔転移を有する切除不能膵がん又は再発膵がんに対するゲムシタビン及びナブパクリタキセル療法とRS5614併用の安全性・有効性を検討する第Ⅱ相試験」を東北大学病院など3医療機関で医師主導治験を開始しました(2026年5月12日適時開示)。遠隔転移を有する切除不能膵がん又は再発膵がん患者50名を対象に、主要評価項目を奏効率として実施しています。
(呼吸器疾患)
□ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺傷害:2021年6月からAMED「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受けて、後期第Ⅱ相試験を開始しました。2022年10月に患者登録を完了し、治験総括報告書をまとめました(2023年4月17日適時開示)。本後期第Ⅱ相試験はオミクロン株の変異等により対象となる新型コロナウイルス肺炎患者(中等症、入院患者)数が減少し、目標より少ない症例数で治験を完了しました。早期治療におけるRS5614の有効性を示唆する結果を得られました(2023年4月17日適時開示)。
□ 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患治療薬:全身性強皮症(systemic sclerosis)は、皮膚と内臓諸臓器の血管障害と線維化を特徴とする全身性の自己免疫疾患(指定難病51)で、間質性肺疾患は死因の35%を占めます。AMEDの令和5年度「難治性疾患実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の支援を受けて(2023年3月15日適時開示)、東北大学、東京大学、大阪大学など12医療機関と「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対するPAI-1阻害薬RS5614の第Ⅱ相試験」を開始し(2023年10月19日適時開示)、全登録患者の投与(1年間)が予定通り完了し(2025年11月25日適時開示)、試験は終了しました(2026年4月10日適時開示)。結果(速報)、主要評価項目である48週時点の%FVCの変化量については、RS5614群においてプラセボ群に対する有意な上乗せ効果は認められませんでした。一方、皮膚硬化の指標であるmRSSについては、48週時点単独では明確な群間差を認めませんでしたが、治療経過全体を踏まえた追加解析において改善傾向が示唆されました。
(抗加齢・長寿関連)
□ ヒト臨床試験:2024年12月にXPRIZE財団が主催するXPRIZE Healthspan(https://www.xprize.org/competitions/healthspan)に東北大学など国内複数の研究機関と共同で応募しました。XPRIZE Healthspanは、健康寿命を10年以上延ばすことができた研究チームに対して、総額1億米ドルを支払うという国際的なコンペティションです。当社はTOP40(セミファイナリスト)に入賞し、賞金25万米ドルを獲得しました(2025年5月13日適時開示)。
XPRIZE Healthspanの公募要項によれば、セミファイナリスト(TOP40)は、最終的な4年間のファイナル臨床試験の実現可能性を支持するための短期間(4週~8週)、小規模(5~20人)の臨床試験をセミファイナル臨床試験として実施しなければいけません。そこで、加齢に伴い発症する疾患(高血圧症、2型糖尿病、慢性腎臓病、高脂血症)を有し、症状が安定している50歳以上75歳以下の20例を対象に、RS5614を16週間投与する非盲検試験をセミファイナル臨床試験として実施しました(2025年8月18日適時開示)。セミファイナル試験は、特定臨床研究として東北大学病院で開始し、20例の患者登録を完了しました(2025年10月1日適時開示)。速報結果では、RS5614を4ヶ月間投与することにより、生物学的年齢(エピジェネティック・クロック)が平均2~3歳若返り(Horvath法で3.4歳、PC-Horvath法で1.9歳の有意な若齢化)、老化関連microRNA(SA-miRNA)の有意な減少、免疫系の活性化(NK細胞数の正常化、樹状細胞数の増加)、造血幹細胞の機能回復(造血幹・前駆細胞数の有意な増加)、ならびに酸化ストレスマーカーの改善(AGEs/CML低下)など、広く各種臓器に対して抗加齢作用が確認されました(2026年5月14日適時開示)。比較的健康な高齢者に対してもRS5614は安全に経口で投与できることが確認されました。今回のセミファイナル試験結果とファイナル試験概要を取りまとめて、2026年4月中旬にXPRIZE Healthspan評価委員会に提出しました。2026年8月にファイナリスト(TOP10)として採択されれば、ファイナル試験は日本・米国・サウジアラビア・台湾との国際共同臨床試験として実施し、100~150名程度の高齢者を対象としたプラセボ対照盲検試験で免疫機能、筋肉機能、認知機能を評価する予定です。
また、以下の機関とXPRIZE Healthspanのファイナル試験を共同で実施する基本合意書を締結しています。
・ ノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)(2025年11月10日適時開示)
・ 台北医学大学(2025年12月15日適時開示)
・ サウジアラビア・キング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center(KAIMRC))(2026年2月9日適時開示)
□ 男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬:米国ノースウエスタン大学との共同研究により、PAI-1を過剰発現するマウスで著しい脱毛が生じ、PAI-1阻害薬RS5441を経口投与すると著明な発毛が認められることが分かりました。2016年10月に皮膚科疾患用途におけるRS5441の独占的権利をエイリオン社に許諾し、同社が男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬(ET-02)として開発を進めています。男性型脱毛症(加齢性脱毛症)治療に対する安全性と有効性を評価する第Ⅰ相臨床試験では、ET-02(RS5441)の安全性・忍容性が確認され、プラセボ群と比較して非軟毛(又は正常)の毛数が6倍に増加することが報告されました(2024年7月3日、2025年1月9日適時開示)。同社において、引き続き米国における第Ⅱ相臨床試験に向けた準備・検討が進められています。
□ 動物医薬品:RS5614の抗加齢・長寿に対する作用はヒトのみならず、イヌやネコを主とするコンパニオンアニマルなど動物医療にも有用と期待されることから、動物用医薬品の分野での研究を開始しました。まずは、イヌ及びネコにおける安全性確認試験を開始し(2025年11月19日適時開示)、終了しました(2026年2月4日適時開示)。今後、イヌ(関節炎、メラノーマなどの皮膚がん)やネコ(慢性腎臓病)に対する有効性を検討します。
□ 国際共同研究:
米国:当社はノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)の日本の研究室を、東北大学内の当社オープンイノベーション拠点である東北大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(TREx)内に設立しました(2025年1月22日適時開示)。さらに、東北大学とノースウエスタン大学は、がんや長寿の研究や臨床試験に関する包括的な基本合意書を締結しており(2025年11月10日適時開示)、その一環としてXPRIZE Healthspanの当社チームに参加し、XPRIZE Healthspanのファイナル試験を共同で実施する予定です。
サウジアラビア:当社はサウジアラビア最大の研究・医療機関である「キング・アブドラ国際医療研究センター(KAIMRC)」と基本合意書を締結し(2025年10月6日適時開示)、XPRIZE Healthspanのファイナル試験を共同で実施する予定です(2026年2月9日適時開示)。
台湾:台北医学大学と、国内で実施している悪性黒色腫の第Ⅲ相試験について、台湾での薬事承認を視野にブリッジングスタディを実施するための契約を締結しました(2025年12月15日適時開示)。
現在、ノースウエスタン大学、KAIMRC、台北医学大学が、それぞれの国の薬事規制当局(Food and Drug Administration (FDA), Saudi Food and Drug Authority (SFDA), Taiwan Food and Drug Administration (TFDA))と臨床試験に向けた協議を進めています。
b. 医療機器
□ ディスポーザブル極細内視鏡:この極細内視鏡は、腹腔内を可視化するためのファイバースコープ部分と操作性を容易にするためのガイドカテーテル部分から構成されています。ファイバースコープ部分はPMDAへの承認申請(2022年9月14日適時開示)を経て、厚生労働省から薬事承認を受けています(2022年12月26日適時開示)。
株式会社ハイレックスコーポレーション及びその子会社である株式会社ハイレックスメディカルとガイドカテーテル作成を含む医療機器開発の共同研究契約を締結し(2022年9月1日適時開示)、その後ライセンス契約を締結しました(2024年5月20日適時開示)。ガイドカテーテルの開発及び製造の目処がつき、多施設共同臨床試験でも有害事象は認められず、安定期腹膜透析患者の臨床評価を補完する有意義な非侵襲的検査法であることが確認されました(2024年6月24日、2026年3月4日適時開示)。ガイドカテーテルとファイバースコープを合わせて2026年内に薬事申請する予定です。
c. 人工知能(AI)を活用したプログラム医療機器
疾患の診断や治療を支援する人工知能(AI)の開発に取り組んでおり、呼吸機能検査診断、維持血液透析医療支援、糖尿病治療支援、嚥下機能低下診断のためのプログラム医療機器(SaMD)を開発しています。当社のAIプログラム医療機器の開発については、科学誌『Nature』の取材記事も参照ください(2024年3月18日開示)。
□ 呼吸機能検査診断:京都大学、チェスト株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社(NES)と共同で開発しています。2023年3月に開発段階の研究を終了し、チェスト株式会社で事業化への開発が進められています。チェスト株式会社から、事業化段階への移行に関するマイルストーン(2023年6月14日適時開示)、及び対象地域拡大(国際展開)に係るオプション権行使に伴う一時金も受領しています(2025年2月12日適時開示)。
□ 維持血液透析医療支援:聖路加国際大学、東北大学、ニプロ株式会社、日本電気株式会社(NEC)、NESと共同で開発しています。AMED「医療機器開発推進研究事業(代表機関:東北大学、当社は協力機関)」に採択されました(2023年2月27日適時開示)。薬事承認申請のための臨床性能試験を実施し(2024年10月21日適時開示)、目標症例数である150症例の登録を完了しました(2025年4月9日適時開示)。解析の結果、主要評価項目の目標正解率80%を10%上回る正解率90.0%を達成し、専門医に対するAI予測の非劣性(同等性)が実証されました(2025年10月20日適時開示)。また、実用化加速のためAMEDから研究費(調整費)143,000千円の追加配賦を受けました(2025年9月10日適時開示)。実用化に向けて、東レ・メディカル株式会社(2023年12月8日適時開示)、ニプロ株式会社(2024年3月14日適時開示)と共同開発契約を締結しています。さらに薬事承認・事業化を加速するため、ニプロ株式会社との共同開発契約変更に関する覚書を締結しました(2025年10月30日適時開示)。2022年10月に基本となる知的財産権を出願し、2023年5月に国際出願、2024年1月には新たな知財を追加出願しました。
□ 糖尿病治療支援:東北大学、NEC、NESと共同で開発しており、AMED「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)(当社が代表機関)」に採択されています(2022年4月20日適時開示)。薬事承認のための臨床性能試験を実施し(2024年8月19日適時開示)、目標症例数である130症例の登録を完了しました。解析の結果、最終的な正解率(平均)は85.46%と目標正解率80%を5%上回りました。専門医に対するAI予測の非劣性(同等性)が実証され、総括報告書をまとめています(2025年3月6日適時開示)。また、2022年6月に基本となる知的財産権を出願し、2023年4月に国際出願を行いました。また、本AIを含む糖尿病関連のAI研究において、東北大学とユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のマッチングファンドに採択され、国際共同研究を推進しています(2026年3月3日適時開示)。
□ 嚥下機能低下診断:東北大学、NECと共同で音声から嚥下機能の低下を診断するプログラム医療機器を開発しています。健常者と嚥下機能低下患者の音声を区別できるAIの開発はすでに完了しており、2023年3月に基本となる知的財産権を出願しました。さらに、2023年12月にはPMDA開発前相談を実施しました。
□ その他のプログラム医療機器:乳がん病理診断、心臓植込み型電気デバイス患者における不整脈・心不全発症予測、人工心臓患者における血栓発生予測などの新たなAIを活用したプログラム医療機器を開発しています。
□ その他の関連事項:台北医学大学(TMU)の完全子会社であるTMU-Biotech社と、台湾でのプログラム医療機器の研究開発・実用化を目的に共同開発契約を締結しました(2024年8月30日適時開示)。台北医学大学は6つの病院を擁しており、豊富な医療データを活用したSaMDの研究開発が実施可能です。キング・アブドラ国際医療研究センター(KAIMRC)とも、プログラム医療機器の開発・事業化に向けた基本合意書を締結しています(2025年10月6日適時開示)。2024年度から国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)(代表機関:東北大学)に参画し、災害時においても安全安心な医療を提供するためのプログラム医療機器のデジタルツインモデル(リアル空間にある情報をインターネット技術などで集め、送信されたデータを元にサイバー(仮想)空間でリアル空間を再現する技術)の開発を進め、2025年3月に本事業を終了しました(2024年3月7日適時開示)。
(事業収益に関する実績)
東レ・メディカル株式会社と人工知能(AI)搭載型血液透析医療機器の開発に関する共同開発契約を締結しており、共同研究の対価としてマイルストーン収入を計上しました。また、ニプロ株式会社と慢性透析患者の透析治療時における除水量の最適値を予測する人工知能(AI)アルゴリズムを活用した製品に関する共同開発契約を締結しており、共同研究の対価として契約一時金を計上しました。また、共同開発契約を延長したことに伴う契約一時金を計上しました。
なお、当社ではCML及び全身性強皮症に伴う間質性肺疾患、核酸医薬品の開発プロジェクトがAMED事業に採択されており、研究開発業務を受託し、受託業務の対価を受託研究収入として計上しています。
以上の結果、当事業年度における事業収益は、人工知能(AI)搭載型血液透析医療機器の開発に係る東レ・メディカル株式会社からのマイルストーン収入の計上及び慢性透析患者の透析治療時における除水量の最適値を予測する人工知能(AI)アルゴリズムを活用した製品に係るニプロ株式会社からの契約一時金並びにAMED事業に係る受託研究収入の計上により68,554千円(前事業年度は事業収益132,693千円)となりました。また、営業損失は、CML治療薬や悪性黒色腫治療薬、非小細胞肺がん治療薬、皮膚血管肉腫治療薬、膵臓がん治療薬、抗加齢作用を評価する臨床研究等に係る研究開発費201,663千円を含む事業費用421,093千円を計上したことにより356,885千円(前事業年度は営業損失178,827千円)、経常損失は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所及び自治体からの助成金収入27,009千円、世界的な長寿医療コンペティションXPRIZE Healthspanで TOP40(セミファイナリスト)に入賞したことによるコンテスト賞金収入36,975千円、未収入金の為替換算に伴う為替差損1,326千円、第三者割当にかかる資金調達を実施したことによる株式交付費用9,606千円を計上したことなどにより300,272千円(前事業年度は経常損失178,987千円)、当期純損失は、法人税、住民税及び事業税1,004千円を計上したことにより301,276千円(前事業年度は当期純利益113,427千円)となりました。
なお、当社の事業は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末の流動資産は、前事業年度末の1,871,252千円と比べて1,631,900千円増加し、3,503,153千円となりました。これは主として第三者割当にかかる資金調達を実施したことにより、現金及び預金が1,602,888千円増加したことなどによるものです。
また、当事業年度末の固定資産は、前事業年度末と同額の110千円となりました。
この結果、資産合計は、前事業年度末の1,871,362千円と比べて1,631,900千円増加し、3,503,263千円となりました。
(負債)
当事業年度末の流動負債は、前事業年度末の151,210千円と比べて29,375千円増加し、180,585千円となりました。これは主として、取引先への未払金が31,222千円増加したことなどによるものです。
この結果、負債合計は、前事業年度末の151,210千円と比べて29,375千円増加し、180,585千円となりました。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末の1,720,151千円と比べて1,602,525千円増加し、3,322,677千円となりました。これは主として、第三者割当にかかる資金調達を実施したことにより資本金と資本準備金がそれぞれ945,614千円増加したことなどによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末の1,799,816千円に比べ1,602,888千円増加し、3,402,705千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動資金の支出額は291,307千円(前事業年度は176,342千円の支出)となりました。これは主として、税引前当期純損失300,272千円の計上などによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動資金の収支はありません(前事業年度は382,147千円の収入)。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動資金の収入額は1,894,196千円(前事業年度は52,182千円の支出)となりました。これは主として、株式の発行による収入1,881,622千円を計上したことなどによるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
当社は研究開発を主体としており生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
当社は研究開発を主体としており受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
当社の事業セグメントは医薬品等の開発・販売等事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注)1.最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
2.当事業年度における国立大学法人大阪大学の事業収益及び当該事業収益の総事業収益に対する割合は、100分の10未満であるため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。
財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、これらについては、過去の実績や現在の状況等を勘案し、合理的と考えられる見積り及び判断を行っております。ただし、これらには見積り特有の不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
財政状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりです。
(事業収益)
当事業年度の事業収益は、68,554千円(前事業年度132,693千円)となりました。前事業年度は、血液透析における目標除水量を予測する人工知能アルゴリズム開発に係るニプロ株式会社からの一時金の受領及び人工知能(AI)搭載型血液透析医療機器の開発に係る東レ・メディカル株式会社からのマイルストーン収入の計上並びに皮膚疾患治療RS5441(経皮薬)の第Ⅰ相試験開始に伴うエイリオン社からのマイルストーン収入、さらにチェスト株式会社よりオプション権行使に伴う一時金の受領に加え、AMED事業に係る受託研究収入を計上した一方、当事業年度における事業収益は、人工知能(AI)搭載型血液透析医療機器の開発に係る東レ・メディカル株式会社からのマイルストーン収入の計上及び慢性透析患者の透析治療時における除水量の最適値を予測する人工知能(AI)アルゴリズムを活用した製品に係るニプロ株式会社からの契約一時金並びにAMED事業に係る受託研究収入を計上したことによるものです。
(事業原価、売上総利益)
当事業年度の事業原価は、4,346千円(前事業年度3,747千円)となりました。前事業年度及び当事業年度いずれについても、人工知能(AI)搭載型血液透析医療機器の開発に係る人件費等を計上したことによるものです。
この結果、当事業年度の売上総利益は、64,207千円(前事業年度128,946千円)となりました。
(事業費用、営業損失)
当事業年度の事業費用は、421,093千円(前事業年度307,774千円)となりました。主な要因は、研究開発費201,663千円を計上したことにより、前事業年度に比べて113,318千円増加したことなどによるものです。
この結果、当事業年度の営業損失は356,885千円(前事業年度178,827千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当事業年度の営業外収益は、67,545千円(前事業年度1,092千円)となりました。主な要因は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所及び自治体からの助成金収入27,009千円、世界的な長寿医療コンペティションXPRIZE Healthspanで TOP40(セミファイナリスト)に入賞したことによるコンテスト賞金収入36,975千円を計上したことなどによるものです。
当事業年度の営業外費用は、10,932千円(前事業年度1,252千円)となりました。主な要因は、未収入金の為替換算に伴う為替差損1,326千円、第三者割当にかかる資金調達を実施したことによる株式交付費用9,606千円を計上したことなどによるものです。
この結果、当事業年度の経常損失は300,272千円(前事業年度178,987千円)となりました。
(特別利益、特別損失、当期純利益)
当事業年度の当期純損失は、301,276千円(前事業年度は当期純利益113,427千円)となりました。主な要因は、法人税、住民税及び事業税1,004千円を計上したことによるものです。
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
当社は、創薬等のコンセプトやシーズの研究費及びパイプラインの製品化に向けた開発費並びに係る販売費及び一般管理費等の事業用費用について資金需要を有しております。当社は、主に公的機関の研究開発助成金や第三者割当増資により調達を行った手許資金により事業用費用に充当して参りましたが、現下では、金融機関の当座貸越枠を確保するなどしており流動性に支障はないものと考えております。中長期では、次世代の医療ソリューション開発を掲げ一層の事業拡大や係る投資を想定しており、当事業年度においては第三者割当増資の実施により財務基盤の増強を図りました。
なお、現状の現金水準については、2021年9月の株式上場による資金調達や2025年11月から2026年3月にかけての第三者割当にかかる資金調達、上記当座貸越枠も確保していることから、2年分の研究開発費は十分維持しております。
経営成績に重要な影響を及ぼす要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
当社の経営上の重要な契約は次のとおりであります。
② 導入に関する契約
④ 委託研究に関する契約
当社は、医薬品・医療機器・AIを活用したプログラム医療機器など、多様なモダリティ(治療様式)にわたる複数パイプラインの研究開発を進めており、当事業年度における主要パイプライン開発の進捗及びこれまでの開発実績は以下のとおりです。
なお、当事業年度における研究開発費は
a.RS5614(PAI-1阻害薬)
(a) 慢性骨髄性白血病(CML)治療
血液がんである慢性骨髄性白血病(CML)は、骨髄内の「骨髄ニッチ」と呼ばれる部位に存在する血液細胞の元になる細胞(造血幹細胞)の遺伝子に変異が生じ、がん化した疾患です。CMLに対する標準治療は、イマチニブなどの分子標的治療薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)です。TKIの開発によりCML患者の生存率は大きく改善しました。TKIはCML細胞には作用しますが、CML細胞の元になる細胞(CML幹細胞)には作用しないことから、TKIを休薬するとCML細胞は再び増殖し、がんが再発します。CMLを治療するためには長期にわたる高額なTKI治療の継続が必要です。
最近、深い分子遺伝学的奏効(deep molecular response、DMR:がんの原因遺伝子が検出されない状態)が一定期間継続しているCML患者では、TKIを中止しても再発が生じない状態(無治療寛解維持)となることが明らかになりました。しかし、3年間程度の治療期間で無治療寛解維持を達成できる患者の割合は5~10%にしか過ぎません。無治療寛解維持を達成するためには、少なくとも2年以上のDMRの維持が必要とされています。
当社PAI-1阻害薬RS5614はCML幹細胞に作用して、骨髄ニッチから遊離させます(Blood 2017)。遊離したCML幹細胞はTKIにより死滅するため、骨髄ニッチのCML幹細胞は消滅して、CMLを根治できる可能性が示唆されました。実際に、CMLモデルマウスにRS5614とTKIを併用することで、TKI単独投与に比べて骨髄に残るCML幹細胞数が著明に減少し、生存率を大きく向上させることが可能です(Blood 2017)。
後期第Ⅱ相試験
CML患者を対象にTKIとRS5614を併用し、RS5614投与開始後48週の有効性と安全性を確認するための後期第Ⅱ相試験(非盲検)を、東北大学、秋田大学、東海大学の大学・医療機関で実施しました。その結果、33例中DMRを達成した症例は11例(33.3%)であり(TKI治療期間が3年以上5年以下の患者では50.0%)、過去の試験結果に基づくヒストリカルコントロールの8%と比較して4倍程度上昇しました。重篤な有害事象も認められず、TKIとRS5614併用の有効性及び安全性が確認されました(Cancer Medicine 2023)。
第Ⅲ相試験
後期第Ⅱ相試験の成績に基づいて、東北大学、東海大学、秋田大学など12の大学・医療機関と共同で、CML患者を対象にTKIとRS5614の併用効果を検証するプラセボ対照二重盲検の第Ⅲ相試験を実施中です(2022年8月3日適時開示)。本試験は日本医療研究開発機構(AMED)「革新的がん医療実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の助成を受けています(2022年3月22日適時開示)。TKI治療期間が3年以上6年未満のCML患者60例を対象とし、TKIとRS5614の併用によるDMR達成率の有意な上昇と2年間の無治療寛解維持を検証します。2024年12月に実施されたAMED「革新的がん医療実用化研究事業」の最終年度評価の結果、第Ⅲ相試験の目標症例数の登録が予定通り2023年12月に完了し、順調に実施されているとの理由から、助成期間が延長されました(2024年12月3日適時開示)。2026年3月期さらに2027年3月期にも助成を受けることが決定しました(2025年5月7日、2026年2月12日適時開示)。
(b) 悪性黒色腫(メラノーマ)治療薬
悪性黒色腫は表皮にある色素を作る細胞(メラノサイト)のがんで、悪性度が高いがんです。欧米と比較すると日本の患者数は約4,000人と希少ながんです。日本の患者は、海外とは異なる遺伝子変異を有していることから、標準治療である免疫チェックポイント分子阻害薬の抗PD-1抗体(ニボルマブ、商品名オプジーボ)による治療が効きにくいことが報告されています(Ann Oncol. 2020)。抗CTLA4抗体(イピリムマブ、商品名:ヤーボイ)とニボルマブとの併用による奏効率は33.3%と、ニボルマブ単剤の20%と比べて高いですが、併用患者の約70%で重度の免疫関連副作用が発症することが問題となっています。さらに、2種類の高額な抗体医薬を使用しなければなりません。そのため、副作用が無く、奏効率を向上でき、抗体医薬より安価な、内服で使用できる簡便な併用薬の開発が望まれています。
第Ⅱ相試験
民間非営利組織(NPO)「Japan Skin Cancer Network(JSCaN)」に属する東北大学、筑波大学、都立駒込病院、近畿大学、名古屋市立大学、熊本大学の6大学と共同で、悪性黒色腫に対するRS5614とニボルマブとの併用の有効性と安全性を確認するための第Ⅱ相試験(非盲検)を実施しました。本試験は、AMED「橋渡し研究プログラムシーズC(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」の助成を受けて実施した多施設共同、非盲検試験です。RS5614をニボルマブと8週間併用することにより、29例の患者のうち7例において奏効(24.1%)が確認され、ニボルマブとイピリムマブの併用の奏効(海外21%、国内13.5%)を凌駕する結果が得られました(2024年2月22日適時開示)。さらに、ニボルマブとRS5614の併用により62%という高い病勢制御率も得られました。一方、ニボルマブとイピリムマブ併用で生じる重篤な免疫関連副作用は認めませんでした(2024年2月22日適時開示)。本試験の結果は科学誌『British Journal of Dermatology』に掲載されました(2024年6月7日適時開示)。
第Ⅱ相試験の結果から、厚生労働省より悪性黒色腫に対する希少疾病用医薬品指定を受けました(2024年9月2日適時開示)。希少疾病用医薬品指定を受けたことにより、悪性黒色腫治療薬としてのRS5614の薬価算定における市場性加算が加わり、さらに承認後の再審査期間が延長されて本治療薬事業の独占期間が長くなります。
第Ⅲ相試験
現在、根治切除不能悪性黒色腫患者124例を対象に、ニボルマブとRS5614との併用の有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相試験を、ランダム化プラセボ対照二重盲検試験として、東北大学病院など国内18施設で実施しています(2025年2月18日適時開示)。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の令和7年度希少疾病用医薬品等試験研究助成事業に、第Ⅲ相試験を対象とした申請が採択され(2025年7月16日適時開示)、2025年4月~2028年3月の間の3事業年度において、悪性黒色腫の関連研究費として支出した経費の2分の1を上限とし、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の当該事業予算の範囲内で事業年度毎に助成を受けられます。本第Ⅲ相試験では、124名の患者を予定していますが、2026年5月末時点で98名登録と順調に進んでいます。
台湾における薬事承認を視野に台北医学大学とブリッジングスタディを実施するための契約を締結しました(2025年12月15日適時開示)。現在、台北医学大学が主体となって、台湾の規制当局であるTaiwan Food and Drug Administration (TFDA) と臨床試験に向けた協議を進めています。
(c) 血管肉腫治療薬
血管肉腫は国内約300人程度の極めて希少ながんであり、5年生存率は9%と非常に低く、悪性度の高いがんです。血管肉腫の標準治療の第1選択薬はパクリタキセルですが、血管肉腫患者の全生存期間は649日と短く、長期寛解を得ることは困難です。PAI-1は主として血管内皮から産生されるため、血管内皮細胞の腫瘍である血管肉腫には、PAI-1が多く発現しております。血管肉腫の患者検体を用いた解析で、PAI-1が多く発現している患者の予後は悪いことが明らかとなっています。パクリタキセルはがん細胞を死滅(アポトーシス)させますが、PAI-1を多く発現しているがん細胞はアポトーシスに耐性であることから、PAI-1の発現量が多い血管肉腫では、パクリタキセルが効きにくいと考えられます。
第Ⅱ相試験
PAI-1阻害薬RS5614を併用することにより、パクリタキセルの治療効果を増強できる可能性に基づき、東北大学など7医療機関と「皮膚血管肉腫に対するパクリタキセルとRS5614併用の安全性・有効性を検討する第Ⅱ相試験(非盲検)」を開始し(2023年10月26日適時開示)、16例の症例登録を完了し(2025年6月20日適時開示)、全登録患者の投与を予定どおり完了しました(2025年12月12日適時開示)。
試験結果は、治療開始28週時点における画像判定(中央判定)による奏効率は完全奏効12.5%でした。さらに、無増悪生存期間(PFS)及び生存期間(OS)は、それぞれ4.0ヶ月及び20.8ヶ月で、国内前向き臨床試験であるパゾパニブ(JCOG1605)の結果(2.8ヶ月、12.1ヶ月)を凌駕する結果が得られました。また、15例中13例(86.7%)で病勢の安定が確認され、高い病勢制御率が示されました(2026年2月10日適時開示、その後奏効率の数字を修正)。一方、副作用の発現は少なく、因果関係が否定できないGrade3以上の有害事象は16例中5例(31.25%:肝機能障害及び白血球減少)と、重篤な有害事象は認められませんでした。JCOG1605におけるGrade3以上の有害事象の70%と比較しても、良好な忍容性が示されています。現在、本試験の評価及びデータ解析を進めており、最終的な治験総括報告書は2026年6月頃を予定しています。
(d) 非小細胞肺がん治療薬
肺がんは日本のがん死亡原因の第一位であり、非小細胞肺がんは全体の85%を占めます。その中で根治的手術が適応とならない局所進行非小細胞肺がん患者は年間1万人にも至ります。非小細胞肺がんモデルマウスを用いた非臨床試験により、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブとRS5614の併用投与はニボルマブ単剤投与よりも高い治療効果が得られることを確認しました。さらに、PAI-1ががん血管の新生をもたらし、肺がん細胞の増殖能を亢進していること、ニボルマブに耐性となった肺がん細胞がPAI-1を多く発現していることなどを見出しました。
前期第Ⅱ相試験
切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(3次治療以降の患者)を対象に、広島大学、島根大学、岡山大学、鳥取大学、四国がんセンター、広島市民病院などの医療機関と協力して、ニボルマブとRS5614との併用投与の有効性及び安全性を確認するための前期第Ⅱ相試験を開始し(2023年9月26日適時開示)、症例登録を終了しました(2025年7月3日適時開示)。治験調整医師(治験代表医師)及び治験責任医師(実施医師)から、有効性(奏効)が確認できている患者でRS5614の内服継続を希望する声があったことから、試験期間を3ヶ月延長し(2025年11月26日適時開示)、試験を終了しました(2026年3月5日適時開示)。結果(速報)は、全症例(3次治療以降)での評価は、主要評価項目である奏効率(ORR)は8.3%、副次評価項目である6ヶ月無増悪生存割合(PFS)22.5%でした。そのうち3次治療として本試験治療を受けた11例で評価すると、奏効率18.2%、6ヶ月無増悪生存割合27.5%と高い有効性を示す結果が得られており、既報(Clin Cancer Res. 2022 28: OF1-OF7. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-22-0602)のニボルマブ単剤療法と比較して約10%の抗腫瘍効果の上乗せを示す結果でした。安全性についても、試験治療が関連した重篤な有害事象(Grade 3以上)は13.8%であり(既報のニボルマブ単剤療法では20.3%)、重篤な副作用は認められませんでした。最終的な治験総括報告書は2026年8月頃を予定しています。
後期第Ⅱ相試験
局所進行非小細胞肺がん患者に対しては、根治を目的として化学放射線療法が標準治療として行われ、化学放射線療法後に病勢進行や重篤な放射線肺障害を含む合併症が認められない症例では、免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブによる地固め療法が施行されます。前期第Ⅱ相試験において、RS5614の免疫チェックポイント阻害薬の効果増強が期待されること、また、早期の治療でより高い有効性が得られていることから、後期第Ⅱ相試験として「局所進行非小細胞肺がんを対象に、初回標準治療である化学放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブによる地固め療法に対するPAI-1阻害薬(RS5614)併用療法の有効性と安全性を検討する医師主導治験」を、広島大学病院など12医療機関と2026年4月に開始しました(2025年11月26日、2026年4月24日適時開示)。根治手術が適応とならない局所進行非小細胞肺がん患者27例を対象に、化学放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブによる地固め療法に対するRS5614併用の有効性(主要評価項目:1年無増悪生存割合)と安全性を検討することを目的とし、2029年3月まで実施予定です。
本試験はAMEDの令和8年度「臨床研究・治験推進研究事業」に採択されましたので、当初想定していた本試験費用の支出が少なくなり、2027年3月期から2029年3月期までの収益性が改善する見込みです(2026年3月9日適時開示)。当社は、国立大学法人広島大学と非小細胞肺がんに対する非臨床試験及び臨床試験に向けての共同研究契約を締結し、さらに包括的研究協力に関する協定書を締結して(2023年4月24日適時開示)、オープンイノベーション拠点(Hiroshima University x Renascience Open Innovation Labo:HiREx)を設けています。これら肺がんの試験はHiRExを主体に実施しています。
(e) 膵臓がん治療薬
膵がんは悪性腫瘍における疾患別死亡数の第3位ですが、早期発見が極めて困難な悪性疾患であり、診断時に切除可能な膵がんは15-20%に過ぎず、46.3%が遠隔転移陽性と診断される予後不良のがんです。膵がんで長期生存を得るには根治的切除が必須ですが、たとえ根治的切除が達成されても切除後の再発が極めて多い悪性腫瘍であり、その予後は18.8-31.3%と未だに不良です。遠隔転移を有する膵がんや切除後再発膵がんに対する標準治療は化学療法ですが、有効な治療法が少なく、FOLFIRINOX療法(奏効率、31.6%;全生存期間、11.1ヶ月)やゲムシタビン及びナブパクリタキセル療法(GnP療法:奏効率、29%;全生存期間、8.5ヶ月)にても5年生存率は全体で10%程度であり(遠隔臓器やリンパ節に転移した段階であるステージ4では1~3%)、既存の標準治療を増強する治療薬が求められています。
PAI-1は、膵臓がんの予後不良因子の1つです。PAI-1阻害薬RS5614は、がん組織において、上皮間葉転換の抑制、Tリンパ球の活性化、腫瘍浸潤マクロファージ(TAM)の減少、腫瘍内のTリンパ球数の増加、がん細胞上の免疫チェックポイント分子発現の低下、がん細胞の免疫チェックポイント分子阻害薬への耐性解除、腫瘍免疫微小環境の改善、腫瘍免疫の活性化などの作用を有しています(2025年11月11日当社ニュース掲載)。また、PAI-1阻害薬の薬理作用である抗血栓作用や抗線維化作用、さらにはがん関連線維芽細胞(CAF)の減少は、膵がんの腫瘍環境を考える上でも有用な薬理作用を有しています。
第Ⅱ相試験
「遠隔転移を有する切除不能膵がん又は再発膵がんに対するゲムシタビン及びナブパクリタキセル療法とRS5614併用の安全性・有効性を検討する第Ⅱ相試験(非盲検)」が東北大学病院など3医療機関で開始されました(2026年5月12日適時開示)。遠隔転移を有する切除不能膵がん又は再発膵がん患者50名を対象に、主要評価項目を奏効率として実施します。
(f) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺傷害治療薬
RS5614は抗血栓・抗繊維化・抗炎症作用を有し、COVID-19肺傷害に対する治療薬として、2020年秋に前期第Ⅱ相試験(非盲検)を実施しました。RS5614を投与された入院患者26名全員が副作用もなく退院し(Scientific Reports 2024)安全性が確認されました。続いてAMED助成を受け2021年3月、国内20医療機関と後期第Ⅱ相試験(プラセボ対照二重盲検、75例)を実施しました(2023年4月17日適時開示)。主要評価項目「酸素化悪化指標スケールの総和」では、群間に統計学的な有意差は認めませんでしたが、プラセボ群に対する悪化の抑制が見られ、特に中等症Ⅰ患者での有効性が示唆されました。副作用発現率はRS5614群とプラセボ群で同程度であり、安全性も確認できました。
RS5614は抗ウイルス薬とは作用機序が全く異なり、内服が可能な医薬品です。現在、COVID-19は落ち着いていますが、将来の新たなウイルスの発生に際して速やかに臨床試験が実施できるよう準備をしています。前期及び後期第Ⅱ相医師主導治験の結果は、2024年1月に科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。
(g) 全身性強皮症に伴う間質性肺疾患治療薬
全身性強皮症(systemic sclerosis)は、皮膚と内臓諸臓器の血管障害と線維化を特徴とする全身性の自己免疫疾患で難病に指定されています(指定難病51)。全身性強皮症は免疫異常、血管障害、線維化を主な病態として、臓器線維化による臨床症状として、レイノー症状、皮膚硬化、間質性肺疾患(Interstitial lung disease、ILD)、強皮症腎クリーゼ、心病変、肺動脈性肺高血圧症など、さまざまな多臓器障害を生じます。他の自己免疫疾患に比してステロイドや免疫抑制薬の効果は限定的です。特に間質性肺疾患は全身性強皮症の死因の35%を占めており、また間質性肺疾患が直接の死因とならない場合でも、高度な呼吸機能低下により生活の質(QOL)や日常の生活動作(ADL)の著しい低下を招きます。間質性肺疾患に対しては、ステロイドや免疫抑制薬が第一選択薬ですが、その治療効果は充分ではありません。近年、抗線維化薬であるニンテダニブが承認されましたが、進行を抑制する作用はあるものの、間質性肺疾患を改善する作用は無く、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対する新規治療薬の開発が強く望まれています。
第Ⅱ相試験
AMEDの令和5年度「難治性疾患実用化研究事業(代表機関:東北大学、当社は分担機関)」に採択され(2023年3月15日適時開示)、東北大学など12医療機関と「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対するPAI-1阻害薬RS5614の第Ⅱ相試験(プラセボ対照二重盲検試験)」を開始し(2023年10月19日適時開示)、全登録患者の投与(1年間)を予定通り完了しています(2025年11月25日適時開示)。結果(速報)、主要評価項目である48週時点の%FVCの変化量については、RS5614群においてプラセボ群に対する有意な上乗せ効果は認められませんでした。一方、皮膚硬化の指標であるmRSSについては、48週時点単独では明確な群間差を認めませんでしたが、治療経過全体を踏まえた追加解析において改善傾向が示唆されました(2026年4月10日適時開示)。
(h) 抗加齢・長寿研究
1. 老化細胞を除去するセノリティクス内服薬
従来の医薬品開発は、「単一疾患」「単一標的」「明確な臨床評価指標(エンドポイント)」を前提としています。一方、「老化」は加齢に伴う生理的変化の延長でもあり、連続的かつ個体差の大きい現象でもあるため、現在の医療保険の制度上は「疾患」とはみなされていません。「老化」を医療保険上の単独の適応症として定義し、一般的な疾患のように明確な診断基準や評価指標で医薬品として開発することは困難です。ですから、事業化にあたっては薬事規制、臨床試験デザイン、保険償還制度、ビジネス・モデルといった様々な課題が存在しています。しかし、近年、これまでの古典的な老化治療(食事療法、運動療法、睡眠療法、サプリメントなど)とは異なる新たな老化に対する治療アプローチやモダリティ(幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング(老化細胞若返り)、セノリティクス(老化細胞除去))が提案されており、臨床試験も展開されつつあります。「老化」への治療法開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業としても捉えられているため、高額な資金も投資されている分野です。
老化の病態は単一ではなく、エピジェネティック情報、代謝、炎症、幹細胞機能、免疫などが相互に影響し合い、生体全体の恒常性が崩れた状態です。除去されずに蓄積した「老化細胞」は、炎症性サイトカインやケモカイン(老化関連分泌形質:SASP)を持続的に放出し、周囲の健全な細胞や組織に慢性炎症を引き起こします。これが動脈硬化、線維化、神経変性、代謝異常といったあらゆる老化関連疾患の共通基盤を形成しています。したがって、老化介入には「どの病態を改善するか」ではなく、「生体機能への多面的な介入により、崩れた全体のバランスをどう改善するか」という考え方が重要です。当社のPAI-1阻害薬(RS5614)は、複数経路にまたがり統合的に介入することで、崩れた生体全体の機能を改善できる医薬品候補です。老化環境の改善、老化細胞の除去及び生物学的年齢の若返りを通じて、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有しており、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを備えています。
これまでの国内外の研究機関との共同研究により、加齢関連疾患の予防や健康寿命延伸の可能性を示す以下の知見を明らかにしてきました。
ⅰ 細胞の老化(Senescence)
細胞の分裂停止(老化)にはp53、p21などの細胞周期調節因子が関与しており、老化した細胞ではPAI-1の発現が極めて高いことが分かっています。PAI-1阻害薬はこれら調節因子やDNA損傷応答などの老化バイオマーカーを改善し、心筋細胞や血管内皮細胞の老化を阻害します。早老症患者の細胞を用いた研究でも、細胞老化を改善することが報告されています。
ⅱ 組織や個体の老化(Aging)
早老症モデル(klothoマウス)やウェルナー症候群の患者など、老化した組織や個体でもPAI-1の高発現が確認されています。老化モデルマウスにPAI-1阻害薬を投与すると、老化の主症状が改善し、正常マウスと同じ寿命を維持できることが明らかになっています。
ⅲ 加齢に関連する疾患
がん、動脈硬化、糖尿病、慢性腎臓病、認知症といった加齢に伴う疾患の病的組織ではPAI-1の発現が極めて高く、PAI-1阻害薬の投与による病態改善が確認されています。特に、現代の生活習慣病によって加速される「血管の老化」を防止・回復させる作用も示唆されています。
ⅳ 長寿家系の疫学的調査
米国ノースウエスタン大学との共同調査で、PAI-1遺伝子を持たない人々は持っている人に比べて10年長生きすることが見出されました。同様の遺伝子異常を持つマウスも寿命が20%長いことが示されています。
2. 恒常性再構築のヒトにおける実証:XPRIZE Healthspanセミファイナル臨床試験
PAI-1阻害薬RS5614の抗加齢・長寿作用に基づき、「老化細胞を除去し、老化関連疾患を抑制する新規医薬品(セノリティクス内服薬)」を提案し、東北大学、東海大学、広島大学の研究機関及び医療機関との共同で、世界的な長寿コンペティションであるXPRIZE Healthspan(https://www.xprize.org/prizes/healthspan)に応募しました。世界から600以上のエントリー、200以上の書類申請があり、治療アプローチとして、低分子医薬品、バイオ医薬品(エクソソーム、免疫調節剤、抗体医薬)、遺伝子治療、幹細胞治療、医療機器(デジタルヘルスデバイス、電気医療機器、磁気医療機器)、サプリメント、機能性食品、食事制限、運動療法、さらにそれらの組み合わせが提案されました。
当社は、米国ニューヨークで開催されたXPRIZE Healthspanの受賞セレモニーでTOP40(セミファイナリスト)に入賞し、賞金25万米ドルを受け取りました(2025年5月13日適時開示)。セミファイナリストは、セミファイナル臨床試験を実施し、2026年4月に報告書を提出します。2026年8月にTOP10(ファイナリスト)が選出され(賞金100万米ドル)、最終コンペティションのための4年のファイナル臨床研究が実施され、ファイナル臨床研究を実施したTOP10のチームの中からグランプリが選ばれます(最大8,100万米ドル)。
XPRIZE Healthspanの公募要項によれば、セミファイナリスト(TOP40)は、最終的な4年間のファイナル臨床試験の実現可能性を支持するための短期間(4週~8週)、小規模(5~20人)の臨床試験をセミファイナル臨床試験として実施しなければいけません。そこで、加齢に伴い発症する疾患(高血圧症、2型糖尿病、慢性腎臓病、高脂血症)を有し、症状が安定している50歳以上75歳以下の20例を対象に、RS5614を16週間投与する非盲検試験をセミファイナル臨床試験として実施しました(2025年8月18日適時開示)。これまでRS5614は多くのがん患者には投与されてきましたが、比較的健康な高齢者を対象に投与されたことはないため、安全性の確認が必要になります。投与期間が極めて短期間であり、各種臓器の抗加齢作用を評価することは難しいと考えられたため、老化、免疫、代謝、骨・筋肉、認知・神経生理、抗酸化、造血幹細胞など、各種臓器の老化に関わるエピゲノム(遺伝子修飾)、遺伝子、タンパク、細胞などのバイオマーカーの変動を解析しました。実施医療機関は東北大学、さらに検査などの協力機関として広島大学、東海大学が参加しました。RS5614を4ヶ月間投与した前後の検査が実施できた19名の患者(平均年齢60.4±5.6歳、男性13名、女性6名)を有効性評価の対象とし、RS5614投与を受けた20名の患者を安全性評価の対象としました。その結果、以下のデータが得られました。
ⅰ 安全性の確認
比較的健康な基礎疾患を持つ高齢者への4ヶ月間の経口投与において、RS5614との因果関係が否定できない有害事象は「軽度肝機能異常」の1例のみであり、出血イベントを含むその他の重篤な副作用は一切確認されず、きわめて高い安全性が実証されました。
ⅱ エピゲノム・遺伝子レベルの若返り(老化マーカー)
・生物学的年齢(エピジェネティック・クロック)の若年齢化:DNAメチル化解析により推定した生物学的年齢が、4ヶ月の投与で実年齢(平均60.4歳)に対してHorvath法で平均3.4歳(p<0.001)、PC-Horvath法で平均1.9歳(p<0.001)有意に若返りました。
・老化関連マイクロRNA(SA-miRNA)の減少:組織老化を促進する6種のSA-miRNA(miR-22-3p、miR-18a-5p、miR-28-5p等)がいずれも極めて有意に(p<0.001)低下し、老化を誘導する遺伝子発現制御の軽減が示されました。
ⅲ 免疫機能の再構築・自然免疫の動態改善
機能低下を補うために異常増加していた老化NK細胞が有意に減少し、一方で監視役である樹状細胞が有意に増加しました。これにより、老化細胞や異物を認識・排除する免疫監視能力が向上しました。
ⅳ 幹細胞機能の回復(造血幹細胞)
・幹細胞の量と質の改善:加齢に伴い減少する造血幹・前駆細胞数が有意に増加し、特に加齢によるリンパ球産生低下の一因とされる多能性リンパ系前駆細胞(MLP)が有意に増加しました。
・トランスクリプトームの若齢化:RNA-seq解析により、オートファジーやDNA修復、抗酸化防御に関連する遺伝子群(SQSTM1、UNG等)が有意に増加し、逆に加齢を促進する遺伝子群(MDM2等)が有意に減少するなど、遺伝子発現が全般的に若年幹細胞の特性へと回復していることが示唆されました。
ⅴ タンパク・代謝レベルでの全身(多臓器)の機能向上
7,596種の血漿タンパク質を対象とした網羅的解析(SomaScan)により、以下の全身的な機能改善が確認されました。
・抗炎症及びマクロファージ機能:全身性炎症マーカー(SAA-1等)の低下やIL-1βシグナルの減弱に加え、死細胞の除去(貪食)に関与する受容体(TREM2等)が有意に増加しました。
・骨・筋肉の再生シグナル:IGFシグナル系(IGFBP-5等)、Wntシグナル系、BMPシグナル系(BMP-2等)といった骨・筋肉組織の修復・再生・形成シグナルが広範に活性化しました。
・認知・神経生理機能:神経損傷や認知機能低下のリスク因子であるアミロイドβA4や血清アミロイドPコンポーネント(SAP)が減少し、興奮性シナプスの維持に不可欠なNPTX2等の保護因子が有意に増加しました。
・その他の機能改善:線溶系の活性化(u-PA、t-PA上昇)、脂質代謝の改善(可溶性Leptin receptorの増加)、小胞体ストレス応答の制御などが確認されました。
ⅵ 酸化ストレス及び老化マーカーの低下
酸化ストレスマーカー(8-OHdG)の減少傾向に加え、タンパク質の糖化により生成され老化を早める原因物質となる終末糖化産物(AGEs)の一種であるCML(カルボキシメチルリジン)が有意に低下しました。

3. 今後の展望
RS5614を4ヶ月投与することにより、エピゲノム(遺伝子修飾)あるいは遺伝子レベルでの改善が認められました。特筆すべきは、生物学的年齢の2~3歳の若齢化です。タンパクレベルでも、免疫機能、骨・筋肉機能、代謝機能、並びに認知機能の改善など、抗加齢作用に関わる複数のタンパクの改善が認められました。細胞レベルでも、免疫細胞、造血幹細胞の機能回復や若齢化が認められ、さらに全身での酸化ストレスの軽減も確認されました。比較的健康な高齢者に対してもRS5614は安全に経口で投与できることが確認されたのみならず、4ヶ月間の短期間の投与にも関わらず、免疫、代謝、骨・筋肉、認知・神経生理、抗酸化、造血幹細胞など、広く各種臓器に対して抗加齢作用が確認されました(2026年5月14日適時開示)。これらの分子、細胞レベルでの変化が、各種臓器の抗加齢作用に繋がり、最終的に健康寿命の延伸につながるかどうか、大変興味深いところです。
今回のセミファイナル試験結果及びファイナル試験の計画を取りまとめ、2026年4月にXPRIZE Healthspan評価委員会へ提出しました。2026年8月にファイナリスト(TOP10)に採択されれば、日・米・サウジアラビア・台湾の大規模な国際共同臨床試験(100~150名規模のプラセボ対照盲検試験)を実施する予定です。
本プロジェクトに関して、ノースウエスタン大学Potocsnak Longevity Institute(長寿研究所)(2025年11月10日適時開示)、台北医学大学(2025年12月15日適時開示)、サウジアラビアのキング・アブドラ国際医療研究センター(King Abdullah International Medical Research Center:KAIMRC)(2026年2月9日適時開示)との間で、臨床試験を共同で実施するための基本合意書を締結しています。
長寿関連事業(医療用医薬品、OTC医薬品、さらには動物医薬品)は、超高齢化を背景に経済や生活に与える効果も極めて大きな成長分野です。PAI-1阻害薬RS5441の脱毛症治療薬としての実例もあり、当社のPAI-1阻害薬の抗加齢・長寿研究をさらに展開する予定です。なお、当社のがん及び抗加齢・長寿領域に関連する取材記事が、科学誌『Nature(Digital edition)』、『Nature Biotechnology』、『Nature Reviews Drug Discovery』に掲載されました(2025年12月1日、2026年2月26日開示)。
当社技術(セノリティクス内服薬)に競合する技術として、幹細胞治療、細胞内成分治療(エクソソーム)、遺伝子治療(エピジェネティック・リプログラミング)などが挙げられます。特に、エピジェネティック・リプログラミングは、米国Life Biosciences社、米国Altos Labsなど20~30億ドルの資金調達を実施して開発を進めているバイオテック企業が注力している分野です。「老化」への治療法の開発という挑戦は、社会構造の基盤となるヘルスケアのイノベーションをもたらし、重要なプラットフォーム事業となり得るため、多額の資金が集まっています。2026年1月、米国FDAはLife Biosciencesが開発する「ER-100」の臨床試験開始を許可しました。ER-100は、遺伝子治療によりOSK(OCT4、SOX2、KLF4の3つの転写因子)を導入し、細胞を部分的に初期化(時間を巻き戻す)する方法です(OSKは「山中4因子」から腫瘍化リスクの高いc-Mycを除いたものです)。治験は視神経症という具体的な疾患が対象ですが、「老化」を視野に入れた研究です。一方、当社のアプローチは細胞の時間を巻き戻す(エピジェネティック・リプログラミング)ための遺伝子治療ではなく、蓄積した老化細胞を除去(セノリティクス)するための内服薬です。セノリティクスのアプローチをとるバイオテック企業も複数あり、細胞治療(CAR-T)、遺伝子治療、既存の低分子医薬品の適応外使用(ドラッグリパーパシング)など複数モダリティが提案されていますが、当社は新規低分子医薬品(内服薬)であるRS5614を開発しています。
当社のPAI-1阻害薬(RS5614)は、老化環境を改善し、老化細胞を除去し、生物学的年齢を若返らせ、種々の加齢疾患を予防・治療できる可能性を有し、セノリティクス医薬品としては適したプロファイルとモダリティを有します。本剤は生物製剤や核酸系医薬品ではなく、低コストで大量合成可能な低分子化合物(分子量:424.81、錠剤)です。大量の工業的生産が可能で、安定した品質の医薬品を生産可能で、グローバルな供給が可能です。RS5614は経口投与が可能で、他の生物製剤とは異なり、自宅で投与できます。細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品とは異なり、地理的又は物流上の制約を受けることなく容易に輸送できます。細胞製剤やエクソソームとは異なり、ドナーも必要としません。最も重要な安全性に関しても、細胞製剤、エクソソーム、遺伝子治療などのバイオ医薬品に比べて副作用が少ないことはメリットであり、20名の高齢者を対象としてXPRIZE Healthspanのセミファイナル試験でも、高い安全性が確認されています。世界的な高齢化は、先進国と新興国の両方において深刻な社会問題となっています。長寿医療は、富裕層だけでなく、多くの人々にとって必要な医療でなくてはならず、内服薬であるRS5614は、幹細胞治療、エクソソーム治療、エピジェネティック・リプログラミング遺伝子治療、他のモダリティによるセノリティクス医薬品に対しても優位性は高いと考えます。

(i) RS5441(PAI-1阻害薬)男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬
毛髪は毛が伸びる成長期、毛が抜けやすくなる退行期、毛が抜ける休止期と複数の相からなる周期を持って成長しています。男性型脱毛症(AGA)は,毛周期を繰り返す過程で成長期が短くなり,休止期にとどまる毛包(毛根を包み成長させる組織)が多くなる疾患で、日本人男性の頻度は50代以降で40%以上です。米国ノースウエスタン大学との共同研究により、PAI-1を過剰発現するマウスは脱毛が激しく、一方このマウスにPAI-1阻害薬RS5441を経口投与すると著明な発毛が認められることが分かりました。RS5441の投与により総毛包数が93.5%増加し、退行期の毛包数は64%減少しました。
2016年10月に皮膚科疾患用途におけるRS5441の独占的権利をエイリオン社に許諾し、同社で男性型脱毛症及び加齢性脱毛症外用薬(ET-02)として開発されています。男性型脱毛症患者の頭皮組織移植片60検体を用いた非臨床試験で、ET-02による治療4ヶ月目の発毛率は標準治療薬ミノキシジルによる発毛率の4倍高いという結果が得られました。男性型脱毛症(加齢性脱毛症)治療に対する安全性と有効性を評価する第Ⅰ相臨床試験が開始され(2024年7月3日適時開示)、ET-02(RS5441)は安全で、良好な忍容性を示し、プラセボ群と比較して非軟毛(又は正常)の毛数が6倍に増加することが報告されました(2025年1月9日適時開示)。同社において、引き続き米国における第Ⅱ相臨床試験に向けた準備・検討が進められており、将来的にET-02が商業化された場合にはエイリオン社からロイヤリティを受領する予定です。なお、特許期間満了(2029年3月31日)後も一定期間((a) ET-02の製品が当社許諾特許の有効な請求範囲でカバーされる最終日、(b) ET-02の製品に関する規制又はデータ独占権の満了日、及び(c) ET-02の製品の最初の販売から10年後、のいずれか遅い日まで)ロイヤリティが受領できる契約となっております。
(j) 動物医薬品
RS5614の抗加齢・長寿に対する作用や薬理特性はヒト医療のみならず、イヌやネコを主とするコンパニオンアニマルなど動物医療分野でも有用であることが期待できることから、イヌやネコを対象とした動物用医薬品分野での研究を開始しました。具体的には、イヌやネコへの有効性を確認するために、安全性試験(非臨床試験)や臨床試験を実施予定です。まずは、イヌ及びネコにおける安全性確認試験を実施しました(2025年11月19日適時開示)。イヌ及びネコに28日間RS5614を想定薬効用量の10倍量経口投与しましたが、ネコで食事量の減少を認める他は、一般症状の観察、血液学的検査及び血液生化学的検査など特に問題となる有害事象を認めませんでした(2026年2月4日適時開示)。今後、イヌ(関節炎、メラノーマなどの皮膚がん)やネコ(慢性腎臓病)への病気に対する有効性を検討する予定です。
b.RS8001(ピリドキサミン)更年期障害治療薬
更年期障害は、内分泌学的変動に加えて心理・社会的ストレスが加わることにより発症するホットフラッシュ・発汗などの血管運動神経症状、易疲労感・関節痛などの身体症状、うつ・不安・不眠などの精神症状を呈します。東京科学大学・女性健康医学講座では、これら症状がビタミンB6の摂取量と逆相関することを見出しました。2021年12月に更年期障害に対するRS8001(ピリドキサミン)の臨床研究に関して東京科学大学と共同研究契約を締結しました(2021年12月15日適時開示)。2023年3月にAMED「女性の健康の包括的支援実用化研究事業(代表機関:東京科学大学、当社は協力機関)」に採択され、臨床研究が開始されました。本臨床研究では、プラセボ効果をできる限り排除する目的でプラセボリードイン方式を採用した二重盲検法(各群25名)で実施しています。
c.RS9001(ディスポーザブル極細内視鏡)
腹膜透析は在宅での透析を可能とし、医療経済的にもメリットのある治療法です。しかし、腹膜が経年劣化し重篤な合併症を引き起こす事があるので、5年程度で腹膜透析治療が中止される症例が多いです。腹膜の状態を確認するためには、開腹手術若しくは腹腔鏡による侵襲的な観察しか無く、患者にも負担を強いています。腹膜透析患者は透析液を注入するチューブを常に腹膜に挿入した状態にあるため、この細いチューブを通して挿入し非侵襲的に腹腔内を観察する極細内視鏡の開発を着想し、東北大学、順天堂大学、東京慈恵会医科大学らと共同開発しました。多くの医師の意見を基に、医療現場のスペックに適した外径約1mm程度のディスポーザブルファイバースコープです。本医療機器は、従来の消化器系の内視鏡とは異なるコンセプトで開発されたもので、胃瘻チューブ、尿道バルーン、気管チューブ、注射針からの挿入が可能で、様々な臨床的有用性も期待できます
この極細内視鏡は、腹腔内を可視化するためのファイバースコープ部分と操作性を容易にするためのガイドカテーテル部分から構成されています。ファイバースコープはPMDAに承認申請され(2022年9月14日適時開示)、厚生労働省から薬事承認されました(2022年12月26日適時開示)。本製品の詳細は、以下のとおりです。
・ 承認番号:30400BZX00294000
・ 一般的名称:軟性腹腔鏡
・ 販売名:経カテーテル腹腔鏡 PD VIEW
・ 類別コード:器25
株式会社ハイレックスコーポレーション及びその子会社である株式会社ハイレックスメディカルと付属品であるガイドカテーテル作成を含めた医療機器開発に関する共同研究契約を締結し(2022年9月1日適時開示)、その後株式会社ハイレックスメディカルとライセンス契約を締結し(2024年5月20日適時開示)、開発を進めています。ガイドカテーテルの開発及び製造の目処もつき、多施設共同臨床試験でも有害事象は認められず、安定期腹膜透析患者の臨床評価を補完する有意義な非侵襲的検査法であることが確認されました(2024年6月24日、2026年3月4日適時開示)。ガイドカテーテルとファイバースコープを合わせて2026年内に薬事申請する予定です。
d.人工知能(AI)を活用したプログラム医療機器の開発
当社は、1)医療ニーズの把握と医療現場での開発を重視する視点、2)多くの医師や診療科とのネットワーク、3)医薬品や医療機器の医師主導治験で蓄積された経験やノウハウを基に、医師と医療機関、AI技術を有するITベンダー、出口の製薬・ヘルステック企業間を結ぶハブとなり、医療分野でのAI研究から事業までを繋げるエコシステムの創出にも取り組んでいます。薬機法に則った臨床試験(医師主導治験)が実施できるために、実地臨床に役立てられる本格的なAI医療ソリューション(診断、治療)の開発も可能です。現在、呼吸機能検査診断、維持血液透析医療支援、糖尿病治療支援、嚥下機能低下診断などの領域でAIを活用したプログラム医療機器(SaMD)を開発しています。当社のAIを活用したプログラム医療機器の開発に関しては、科学誌『Nature』の取材記事も参照ください(2024年3月18日開示)。
台北医学大学は6つの病院を擁し、ベッド数は3,000床に至り、それら豊富な医療データを活用してSaMDの研究開発が実施可能です。サウジアラビア最大の研究・医療機関である「キング・アブドラ国際医療研究センター(KAIMRC)」との間でも、プログラム医療機器の開発や事業化に向けた連携を進めていくための基本合意書を締結しました(2025年10月6日適時開示)。
(a) RSAI01(呼吸機能検査診断プログラム医療機器)
世界保健機関(WHO)では、がん・糖尿病・循環器疾患に加えて呼吸器疾患を重要な疾患として考えています。代表的な呼吸器疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や喘息などです。呼吸器機能を診断する検査の普及が不十分なために、COPDなど呼吸器疾患の有病率、罹患率、死亡率などは明らかではありません。呼吸器疾患や呼吸器機能の検査の中でスパイロメトリーが最も重要ですが、患者の協力(努力呼吸)が必要である点に加えて、正しく検査が行えたかどうかを判定し、かつ出力された結果(フローボリューム曲線)を解釈することが非専門医には難しいことも課題です。非専門医でも簡便に結果解釈できるシステムの開発は、呼吸器疾患を診断し、早期治療を行う上で重要な医療課題と考えられます。フローボリューム曲線を解釈するプログラム医療機器を、京都大学、チェスト株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社(NES)と共同で開発しています。2023年3月に開発段階の研究を終了し、チェスト株式会社で事業化への開発が進められています。チェスト株式会社から事業化段階への移行に関するマイルストーン(2023年6月14日適時開示)。及び対象地域拡大(国際展開)に係るオプション権行使に伴う一時金も受領しています(2025年2月12日適時開示)。
(b) RSAI02(維持血液透析医療支援プログラム医療機器)
慢性腎不全患者は、廃絶した腎臓の代わりに除水と老廃物の除去を行うために週3回、生涯にわたって血液透析を受けます。除水不足は心不全、高血圧等心肺機能に障害を与える一方、過度な除水は透析中の低血圧を生じ、気分不良、意識消失といった有害事象をもたらします。不適切な除水量の設定により除水不足や過除水が生じ有害事象が発生すると医療従事者は患者対応に追われ、大きな負担となります。透析病院では数十名の患者を対象に、1名の医師、数名の看護師や臨床工学技士を中心に管理が行われていますが、人的資源は充分ではなく、透析中に発生する急激な低血圧などの合併症の発生は、少ない人的資源を消費し、患者の生命予後にも悪影響を及ぼします。安全安心な血液透析を実現するために、適切な目標総除水量を予測するプログラム医療機器を、聖路加国際大学、東北大学、ニプロ株式会社、日本電気株式会社(NEC)、NESと共同で開発しています。このプログラム医療機器はNEC北米研究所と共同で開発した人工知能(AI)であるDual-Channel Combiner Network(DCCN)をコア技術として活用しています。AMED「医療機器開発推進研究事業(代表機関:東北大学、当社は協力機関)」に採択され(2023年2月27日適時開示)、2023年4月にPMDA開発前相談を実施し、2024年1月にはPMDAプロトコール相談を完了しました。薬事承認申請のための臨床性能試験を実施し(2024年10月21日適時開示)、目標症例数である150症例の登録を達成し(2025年4月9日適時開示)、最終的な解析結果は正解率90.0%と当初設定していた主要評価項目の目標正解率80%を10%上回り、専門医に対するプログラム医療機器の非劣性(同等)が実証されました(2025年10月20日適時開示)。また、AMEDより本事業の実用化を加速するための研究費(調整費)143,000千円の追加配賦を受けました(2025年9月10日適時開示)。これにより、本来当社の費用負担にて実施する予定であった実用化に向けたシステム開発費用が削減されました。本プログラム医療機器の実用化に向けて、東レ・メディカル株式会社(2023年12月8日適時開示)、ニプロ株式会社(2024年3月14日適時開示)と共同開発契約を締結しました。さらに、薬事承認申請や事業化に向けた取組みを加速するため、ニプロ株式会社との間で共同開発契約の変更に関する覚書を締結しました(2025年10月30日適時開示)。2022年10月に基本となる知的財産権を出願し、2023年5月に国際出願、2024年1月には新たな知財を追加出願しました。
(c) RSAI03(糖尿病治療支援プログラム医療機器)
糖尿病の血糖値を厳格にコントロールし、糖尿病合併症を予防するためにはインスリン注射治療が必要です。しかし、インスリンの安全な用量域は狭く、過剰投与で低血糖を生じるために、患者ごとに最適な種類と投与量を選定する必要があります。一方、糖尿病専門医は医師全体の2%もおらず、地理的にも偏在しているため、現状では糖尿病患者の主治医が糖尿病専門医であるとは限らず、むしろ非専門医に受診することが多いです。非専門医にも専門医レベルのインスリン治療を実行できるよう支援するプログラム医療機器を東北大学及びNECと共同で開発しています。このプログラム医療機器は、NECが開発したAIであるSkill Acquisition Learning、SAiL(スキル獲得学習)を東北大学で医療用にカスタマイズしたDM-SAiLをコア技術として活用しています。東北大学病院に入院する約1,000名(約1,080,000臨床パラメータ)の患者データに基づく学習が終了し、専門医の処方するインスリンの投与量から2単位程度の誤差で予測するプログラム医療機器が開発できています。AMED「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)(当社が代表機関)」に採択され(2022年4月20日適時開示)、2024年2月にPMDAプロトコール相談を実施し、臨床性能試験のプロトコールが確定しました。薬事承認のための臨床性能試験を実施し(2024年8月19日適時開示)、目標症例数である130症例のデータを取得しました。解析の結果、最終的な正解率は85.46%と、主要評価項目の目標正解率80%を上回る結果であり、専門医に対するプログラム医療機器の非劣性(同等)が実証され、総括報告書をまとめました(2025年3月6日適時開示)。2022年6月に基本となる知的財産権を出願し、2023年4月には国際出願を行いました。また、東北大学とユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のマッチングファンドに採択され、国際共同研究を推進しています(2026年3月3日適時開示)。
(d) RSAI04(嚥下機能低下診断プログラム医療機器)
加齢に伴い口腔機能が低下しますが、その状態(オーラルフレイル)を放置すると摂食障害や構音(発話)障害等多くの身体的、社会的障害、さらには全身性の筋肉虚弱(フレイル)につながるため、早期の診断と適切な処置が重要です。高齢社会において口腔機能低下のひとつである摂食嚥下障害は増加し、高齢者の主な死因とされる肺炎の約7割が誤嚥によるとの報告もあります。誤嚥性肺炎の予防には嚥下機能低下の早期発見とリハビリテーション等の治療介入が重要ですが、現在では、嚥下内視鏡検査、嚥下透視検査方法等患者負担の大きい嚥下評価法しかありません。嚥下と会話で使用する器官は舌や口腔・咽頭等共通部分が多く、会話から嚥下機能を評価できる可能性に着目し、嚥下機能障害を会話時の音声データから評価可能なプログラム医療機器を東北大学、NECと共同で開発しております。既に、健常者と嚥下機能低下患者の音声を区別できるプログラム医療機器を開発し、2023年3月に基本となる知的財産権を出願しました。さらに、2023年12月にはPMDA開発前相談を実施しました。
上記の実用化に向けたプログラム医療機器の開発研究に加えて、下記の複数の探索的な研究開発を進めています。
(e) 探索研究(乳がん病理診断プログラム医療機器)
乳がんは日本人女性のがんの中で最も患者数が多く、生涯に乳がんを患う日本人女性は11人に1人と言われています。しこりや画像診断等で乳がんが疑われた場合、最終診断は病理診断ですが、診断には経験を積んだ病理医が必要です。当社は東北大学大学院医学系研究科病理検査学教室と共同で、病理画像から乳がんの病変部を検出するAIを開発しています。探索研究段階では、検出モデルを3クラス(良性、非浸潤がん、浸潤がん)又は2クラス(良性、悪性)で分類し、それぞれ88.3%と90.5%での診断精度を達成しました(科学誌『Journal of Pathology Informatics』に掲載)。
さらに、この技術を応用し、乳がんの術中迅速病理診断の支援のためのAI開発に取り組んでいます。術中迅速診断は、乳がんの外科手術の範囲などを決定するための病理診断として極めて重要ですが、限られた時間や人材(病理医)で対応しなければならず、乳がんの病理診断に対して高い専門性を有する病理医が必要とされます。標本受領から10~20分以内に診断を下さねばならず、加えて凍結切片の品質は相対的に低下する傾向があります。これらの課題を解決するために、術中迅速診断の支援のためのAIを開発しました。2025年12月に本AIについての論文が掲載されました(科学誌「The Tohoku Journal of Experimental Medicine」)。
(f) 探索研究(心臓植込み型電気デバイス患者における不整脈・心不全発症予測プログラム医療機器)
心不全患者には植込み型除細動器(ICD)、両心室ペースメーカ(CRT-P)など心臓植込み型電気デバイスが広く使用されます。これら心臓植込み型電気デバイスを活用することで、自宅にいながら、刻々と変化する生体情報の経時的な遠隔モニタリングが可能となります。当社は、東北大学と共同で、心臓植込み型電気デバイス患者の遠隔モニタリング情報を活用し、心不全及び致死性不整脈の発症を事前に予測するAIを東北大学大学院医学系研究科循環器内科学教室と共同で開発しています。
(g) 探索研究(人工心臓患者における血栓発生予測プログラム医療機器)
植込み型補助人工心臓は末期心不全患者の生命維持には欠かせない治療ですが、血栓など合併症が課題です。当社は、株式会社ハイレックスメディカル及び東北大学と共同で補助人工心臓の血栓発生を予測するAIの開発に取り組んでいます。
e.診断薬:血中フェニルアラニン測定キット
フェニルケトン尿症は、適切な治療を行わないと知能発達遅延等の重篤な症状が出現します。1977年に生後マス・スクリーニング検査が実施され、ほぼ全ての患児が早期に発見されるようになりました。フェニルケトン尿症の治療には、フェニルアラニンを制限するための食事療法を正しく行う必要があり、定期的な医療機関での検査が必要ですが、数ヶ月に1度の採血では、きめ細やかな食事管理ができません。自宅で簡便かつ正確に血中フェニルアラニン濃度を測定するシステムを、東北大学大学院医学系研究科小児科学教室と共同で開発しています。糖尿病患者での自己血糖管理のように、家庭でいつでも自己測定が可能になれば、フェニルケトン尿症を有する患者のきめ細やかな食事管理が実現できます。2021年5月には診断薬に関する特許を東北大学と共同で出願し、同年6月にはPMDA相談を行いました。2023年5月に本研究内容が科学誌『Molecular Genetics and Metabolism Reports』に掲載されました。
[用語解説]※「第一部 企業の概況 3.事業の内容」内の用語についても掲示しております。