文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、「私たちは国際化社会の中で、社員ひとり一人の個性を尊重し、誠実を旨とし、情報技術の先進的活用により顧客企業と社会の発展に貢献する。」ということを企業理念として掲げており、経営方針は以下のとおりです。
・顧客に信頼される会社となる。
・創造性あふれる専門家集団であり続ける。
・社会への貢献、個人への還元バランスをはかる。
(2)経営戦略等
国内のDX市場については、富士通 キメラ総研の「2024 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編/企業編」によると、企業や社会を取り巻く環境の急速な変化に対応するためのデジタルトランスフィーメーション(DX)の重要性は増しており、2023年度のDX関連市場規模は、4兆197億円の見込みとなっております。大手企業を中心に具体的な実行フェーズへの移行が進み、今後は中堅、中小企業での増加により、2030年度には8兆350億円まで拡大すると予測しています。
IDCでは、データ管理、データ分析に関わる市場をビッグデータ/アナリティクス市場として、テクノロジー分野(ハードウェア/ソフトウェア/サービス)について、国内市場を含むグローバルな支出額分析を「IDC Worldwide Big Data and Analytics Spending Guide」として提供しています。本レポートにおいて、国内市場の支出額では、2024年は前年比14.8%増の2兆749億円になると予測しています。2024年以降は、生成AI/予測型AI利用の拡大とこれに伴うデータ需要の増加を予測しており、AI基盤モデルを提供するAIソフトウェアプラットフォーム市場や、生成AI適用分野と予測されるコンテンツ分析市場、検索システム市場などで高い成長が見込まれます。また、AIの学習データのためのデータウェアハウス/非構造化データストアも高い成長を予測していることから、国内ビッグデータ/アナリティクス市場支出額は2022年~2027年の年間平均成長率(CAGR)は14.3%で成長し、2027年に3兆541億円に達すると予測しています。
IDC Japanの「国内クラウド市場予測、2024年~2028年」によると、2023年の国内クラウド市場は、前年比29.6%増の7兆8,250億円(売上額ベース)となりました。また、2023年~2028年の年間平均成長率(CAGR)は16.3%で推移し、2028年の市場規模は2023年比2.1倍の16兆6,285億円になるとIDCは予測しています。
2023年の国内クラウド市場は、「製品/サービスの単価上昇(為替変動による値上げの影響を含む)」「ハードウェア製品の供給不足からの回復」「クラウドマイグレーションの拡大」によって大きく成長した2022年(前年比成長率38.7%)と比較すると成長率が大幅に低下したものの、順調に推移しました。
今後の国内クラウド市場は、「カスタムアプリケーション開発した基幹系システムのクラウドマイグレーション」「DX/データ駆動型ビジネス」が成長を牽引します。また、Generative AI(生成AI)の普及は、インフラストラクチャに対する投資を拡大するとともに、製品/サービス単価の上昇が見込まれ、DX/データ駆動型ビジネスの成長を加速するものとなっています。
以上により、デジタル革新推進事業、ビッグデータ分析事業、及びシステム基盤事業は、主要顧客との長期にわたる信頼関係も相まって需要は引き続き高い水準で成長すると予想しており、成長戦略の中核と位置付けております。
なお、当社グループは、上記の基本方針及び市場の動向に基づき、安定的かつ継続的な企業価値の向上を目指し、次の姿勢を貫いてまいります。
・お客様の業務を深く理解し、ニーズを汲み取った良質なエンジニアリングサービス、更に上流からのサービス(コンサルティングや各種提案)提供を行っていく
・デジタル革新技術を活用し、お客様の経営戦略実現のための業務統制の適正化と業務活動の効率化、そして経営リソースの有効活用を実現するエンドユーザー志向の新しいビジネスモデル(新事業)を構築し提供する
・社員がシイエヌエスで働くことを誇りに思える魅力を提供し、その魅力のもと高いサービス精神、チームワークを発揮し続け、顧客企業及び社会の発展に貢献する
これら展望を踏まえ、当社グループは次なるステージ上がるべく3か年の新たな経営計画を策定いたしました。2030年をターゲットとする当社の目指す『「人を想う」事業やサービスを通じて社会的課題を解決し、人や社会、未来に貢献する企業グループ』の実現に向けて、新中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)では、組織改革の推進と提案力強化、及び社会課題解決に向けたビジネスの創出に取り組んでまいります。
基本方針
「エンパワーメントの促進とイノベーションの醸成」
■3つの成長戦略(コア成長戦略)
<戦略1 事業基盤の強化>
・ビジネス拡大に必要な体制の強化
・組織風土の改革
<戦略2 新たな顧客獲得による事業規模拡大>
・重点顧客との連携強化による売上拡大
・新たなアライアンスパートナーとの協業関係整備による新規顧客の拡大
<戦略3 ソリューションの拡充による市場拡大>
・デジタル変革ソリューションの拡充
・デジタル変革を実現するソリューションの拡大・拡充
■新中期経営計画にて取り組む新たな成長戦略(強化成長戦略)
<戦略4 新たなビジネス機会の創出に向けた提案力の強化>
・顧客の企業価値向上に向けた成功体験の積み上げ
・主体的な提案活動による顧客接点の拡大
・全社横断の営業組織の立ち上げ
<戦略5 社会課題を起点としたビジネスの創出>
全事業横断の戦略
・社会課題ソリューションの開発ノウハウ蓄積
・地方(自治体含む)との顧客接点開拓
・ソーシャルビジネスの創出と展開
コンサルティング事業注力戦略
・コンサルティング事業の営業力強化
・社会課題解決のコンサルティング手法確立
・ソリューションモデルの立案と案件適用
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
新中期経営経計画(2025年5月期~2027年5月期)の最終年度における目標数値及び達成状況を判断するための客観的な指標として以下のとおり設定いたしました。
(4)経営環境
当社グループは、システムエンジニアリングサービス事業の単一セグメントでありますが、サービス事業としてデジタル革新推進事業、ビッグデータ分析事業、システム基盤事業、業務システムインテグレーション事業、コンサルティング事業を展開しております。
当社グループが属する情報サービス産業においては、DXを推進する動きが活発化しております。これまで情報システムはお客様ビジネスの構成要素の一部として扱われておりましたが、昨今の急激な環境変化に対応し、ビジネスの成長を拡大する上でデジタル技術を駆使した情報システムを経営の基本骨幹とされるように変化しております。
DXの市場動向については(2)経営戦略等に記載しているとおりであり、デジタル革新推進事業、ビッグデータ分析事業の需要は変わらず堅調であり、デジタル技術を活用する基盤としてシステム基盤事業の成長も後押ししております。他方、IT人材不足を背景に、IT・デジタル人材の採用環境は厳しい状況となっております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①オリジナルサービスの拡大
当社グループは受託型のエンジニアリングサービスやシステム開発に特化し、お客様との取引を拡大してまいりました。一方、少子高齢化による労働人口の減少が進み、人材獲得競争は激化し、労働市場の流動性も高まっております。このため当社は、受託型以外のビジネスモデルの構築に取り組み、2022年10月に当社初のブランド「U-Way」を立ち上げ、オリジナルサービスの提供を開始いたしました。中期経営計画において、U-Wayシリーズの事業展開による売上高20億円を目指しておりますが、この目標の達成に向けて、各事業においてオリジナルサービスの開発・販売拡大に取り組みます。
②新規顧客の獲得
これまでの受託型ビジネスにおいては、主に既存顧客との安定的な取引により業績拡大してまいりました。今後、持続的な成長を実現していくためには、受託ビジネスの姿勢から脱却し、攻めの姿勢に転じることが重要であると考えております。マーケットニーズの把握、顧客ニーズの深掘りの取り組みを強化するとともに、主体的な提案活動による顧客接点の拡大や、ITベンダーやお客様とのパートナーシップの増強により、特に新たなエンドユーザーの獲得に向け取り組んでまいります。2025年5月期より部門横断チームを組成し、営業戦略の策定に着手いたしました。
③業容の拡大
当社グループは、2030年度における目指す姿『「人を想う」事業やサービスを通じて社会課題を解決し、人や社会、未来に貢献する企業グループ』の実現に向けて、社会課題を起点としたビジネスの創出を強化成長戦略の一つに掲げております。2022年5月期より、成長戦略のうちの1つとして「ソリューションの拡充による市場拡大」に取り組んでおりますが、技術領域を拡大することで提供サービスの拡充を図るものであり着実にサービス数は増加しております。今後は、事業会社だけではなく中央省庁や地方自治体に向けた提案も行っていくことで、様々な案件を通して社会課題ソリューションの開発ノウハウの蓄積に努め、業容の拡大につなげてまいります。
④人材の確保と育成・働き方改革の推進
企業成長には優秀な人材の確保・育成は不可欠であり、情報サービス産業は人材こそが全てである業界と言えます。しかしながら、少子高齢化が進む中、業種・業態を超えた人材獲得競争は激化、高度IT人材の不足も深刻化しております。そのため、従業員の働きやすい環境づくりを推進し人材確保に努めるとともに、能力を向上させるための研修、資格取得の推奨を実施しております。新たに策定した中期経営計画(2025年5月期~2027年5月期)における重点施策のうちの一つに、人材戦略の強化として、人事制度改革の完成を掲げており、社員の能力を最大限に発揮させる評価制度の構築、高度人材の認定制度の確立に取り組んでまいります。社員の働き方については、ワークライフバランスに配慮しつつ、生産性及び品質の向上を実現することが重要な課題であると認識しております。2024年5月期には、離職率の低下、及び働き方の多様化促進を目的にフルテレワーク制度を導入いたしました。社員の健康や意欲を損なわない環境を保ち続け、事業の健全な継続を実現するとともに、社員の仕事へのやりがい、誇りを高めてまいります。
⑤内部管理体制の強化
業務運営の効率化やリスク管理、また安定的に事業を拡大するためには内部管理体制のさらなる強化が必要不可欠であると考えております。今後も引き続き、内部管理体制の整備を推進するとともに、労務管理上の問題や情報漏洩、ハラスメントなどが発生しないようコンプライアンスの強化にも努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。なお、特に記載のない限り、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)ガバナンス
当社グループにおいて、サステナビリティをめぐる課題や基本方針について、サステナビリティに知見がある外部有識者も交えて議論し、取締役会で決議しています。
取締役会のモニタリングのもと、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は、事業部、管理本部、経営戦略本部(IR担当含む)及びグループ会社である株式会社シイエヌエス北海道にそれぞれ所属する役職員で構成され、気候関連のリスクと機会の特定や、温室効果ガス排出量削減状況の確認、サプライチェーン全体での人権デューデリジェンスの実施、人的資本を含むサステナビリティ方針や目標、施策などを企画策定など、当社グループが持続的に成長し続けることができるよう、長期的なサステナビリティを巡る課題に関する検討・議論を行い、状況を定期的に取締役会へ報告しています。
今後も、環境の変化に対応しグループ全体でサステナビリティ指標の達成に向けた取り組みを推進してまいります。
■サステナビリティ推進体制図
(2)戦略
<サステナビリティ経営に関する考え方>
当社グループは、「情報技術の先進的活用により顧客企業と社会の発展に貢献する」企業理念としています。当社グループの事業が行うデジタル革新は、まさに情報技術の活用によって、社会の発展に貢献するものです。事業活動を通じて、人を想い、社会を進化させる新価値を生み出すソリューションを提供するとともに地球環境保全、多様性に富んだ人材確保・育成、働き方改革を推進し、社会価値を持続的に向上させていきます。
2022年度において、当社グループ全体の持続的な成長と中長期的な企業価値(経済価値+社会価値)向上を目指して、社会課題やニーズを捉え、これらの課題解決を起点としたビジネスの創出ができるアウトサイドインのビジネスアプローチを実現するサステナビリティ経営の実現を目指すことを掲げました。企業理念及び経営ビジョンのもと、サステナビリティ基本方針として、お客様とともに社会課題を解決し、安全・安心・便利で豊かな社会づくりに貢献していく姿勢として「Creating New value for Sustainable~持続可能な新しい価値の創造~」を策定しました。また、2024年7月11日付公表の2025年度から2027年度までの新たな中期経営計画においては、「社会課題を起点としたビジネスの創出」を強化戦略のうちのひとつとしており、サステナビリティ経営とつなげ、持続可能なビジネス(経済価値の向上)及び社会(社会価値の向上)を実現いたします。
<人的資本に関する考え方>
当社のMissionである、「人を想う力で、社会を前進させる新価値を、生み出す」の「人を想う力」は、社員に対してイノベーションを起こせるような環境を提供するという想いも込めています。イノベーションを生み出し続けるためには、多様かつ優秀な人材が不可欠です。長期的にお客様のビジネスの基盤を強固なものにする高品質のシステムインテグレーションを提供するには、人材は当社グループの競争力の源泉であり、最も重要な経営資源です。
このような考えから、中期経営計画における5つの成長戦略のひとつに、「事業基盤の強化」を掲げています。当社のビジネスにとって最も重要なファクターである「人材=社員」の拡充を進めるとともに、高度かつ専門的なスキルが必要とされるビジネス環境に対応できる人材へと育成を進める施策です。技術職は先端技術力+提案・行動力のあるデジタル人材へ、管理部門は上場企業としての業務スキルを有し主体的に動く人材への育成を進めています。
社員の継続的なスキルアップを促すために、以下のような学びの場を提供しています。職位別・年代別に階層別集合研修や、意欲を喚起するための福利厚生制度、社員の定着率向上を図ったエンゲージメント施策を推進しています。
■主な教育施策
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分類 |
研修名/制度名 |
内容 |
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高度かつ専門的なスキル獲得のための研修 |
新人研修・フォローアップ制度 |
入社後3か月の集合研修から、その後の現場配属でのOJT研修、フォローアップ研修で構成される新人向け研修制度になります。 新人研修制度では、Mission・Vision・Value(以下、MVV)や行動指針の浸透から、ビジネススキル、技術研修、事業部主催による事業部研修など、配属に必要な知識の習得を行い、配属後も引き続きのフォローアップ研修と定額研修の受講、先輩社員とのOJT研修やフォローアップ面談を実施しています。 |
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ビジネス変革研修 |
世の中の非効率を発見し、それをデジタル化によって業務を改善するだけではなく、その先のデジタルトランスフォーメーションについて構想し、DXの目的を意識し現在の問題を解決しチームでの成果を出して発表する、年間を通じた研修制度となります。 |
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若手(2~3年目社員)向け研修 |
若手エンジニアの即戦力化を目的に、プロジェクトで必要なチームマネジメントや後輩育成、コミュニケーション能力向上を目的とした研修と、自身の振り返りや今後の目標設定を行う研修です。 |
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新役職者向け研修 |
初めて役職者となる社員を対象に、改めて当社の変革への意識や企業理念、MVV(Mission Vision Value)や行動指針の定着を目的とした研修や当社が求める役職者像を、取締役から新役職者へ伝える研修です。 |
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財務研修 |
初めて役職者となる社員を対象に、財務の基礎知識を習得することで企業活動におけるコスト構造を把握し、会社のビジネスモデル、収益モデルへの理解を深めることを目的とする研修です。 |
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管理職者研修 |
全役職者のスキル診断を実施し、各人の課題を再設定する研修、及びその結果から当社全体で不足しているスキルを補う研修です。 |
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中途入社社員研修 |
中途入社社員を対象に、当社をより理解してもらうために変革への意識や企業理念、MVVや行動指針の説明を中心とした研修や、既存社員との交流を目的とした研修です。 |
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幹部育成塾 |
常勤取締役を含む、全役職者に対して、現任取締役から、過去の成功や失敗などの経験談や得意領域について伝え、経営者視点をもってもらうための研修を実施しています。 |
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スキル獲得のための補助制度 |
自己啓発補助 |
社員のキャリアプランの達成、及び業務上必要な知識・技術の習得支援を目的とし、書籍購入や、通信教育、各種試験の受験費用、アプリケーション購入等、支援該当範囲内において費用の補助を行う制度となります。 |
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資格手当 |
当社が奨励する資格を取得した社員については、決められた一定金額を資格手当として支給する制度です。 |
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社員へのエンゲージメント施策 |
せきカフェ |
代表取締役社長と若手社員が、当社の将来や問題点を中心に直接コミュニケーションする場を設けています。若手社員に対して、改めて経営理念の背景・込めた思いを伝え、社員からは思っていること・聞いてみたいことを時間が許す限り話し合う場としています。 |
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役職者交流会 |
事業部を横断して役職者間で当社の価値観や課題感を共有することで、コミュニケーションを活性化させ、生産性の向上や事業部を超えての新たなビジネスチャンスの機会につながる環境づくりを目的としています。 |
上記の施策により、ジュニアレベルの段階から多くの資格を取得し、優秀なエンジニアの人数も増えております。
(3)リスク管理
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値(経済価値+社会価値)向上を目指すうえで重要な課題、また、ステークホルダーにとっても関心度の高い課題を総合的に評価し、優先的に取り組むべきテーマとして、7つのマテリアリティを特定しています。サステナビリティ委員会において、重要指標のモニタリング及び進捗管理、取締役会への報告を行っています。また、リスクマネジメントについては、リスク管理・コンプライアンス委員会において全社的な視点によるモニタリングを行うマネジメント体制を整備しております。
■特定したマテリアリティのマトリックス
(4)指標及び目標
当社グループは、サステナビリティに関連するリスクと機会を評価、重要指標を定めています。
また、当社グループの事業活動から発生する温室効果ガス排出量について、SBTイニシアティブの「企業ネットゼロ基準」に則り、2019年度を基準年とし2030年度までに総排出量の46%を削減する目標を設定しています。
2023年度の削減実績としては、当社及び株式会社シイエヌエス北海道合わせて4.34CO2t削減いたしました。
■温室効果ガス削減目標
当社は、次世代育成支援対策推進法・女性活躍推進法に基づき「一般事業主行動計画」を策定しています。その中で、期間中の育児休業の取得率を男性社員は10%、女性社員は100%の水準以上で維持することを目標に掲げています。 また、技術職の女性を50名以上にする目標も併せて掲げています。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のあるリスクをすべて網羅するものではありません。
(1)リスクマネジメント体制
当社は、当社グループの事業活動に関する諸種のリスク管理を所管するため、代表取締役社長を委員長としたリスク管理・コンプライアンス委員会を設置し、リスク管理体制の構築と運用にあたっております。リスク管理・コンプライアンス委員会は、経営上のリスクの識別・評価、対策立案、状況の確認を定期的に実施しております。
(2)リスクマネジメント運用状況
当社は、リスク管理・コンプライアンス委員会を四半期毎及び必要に応じて開催し、リスク状況の報告・対応方針の審議等を行っております。リスク管理・コンプライアンス委員会の協議内容について、経営上、重要なリスクは取締役会に報告し、審議しています。
(3)市場環境に関するリスク
①技術革新への対応について(発生可能性:中、影響度:中)
当社グループが属する情報サービス業界においては、技術革新の速度及びその変化が著しい業界であり、日々、新しい技術やサービスが生まれております。そのため、当社グループは常に最新技術の習得に努め、目まぐるしい環境変化に迅速に対応できるようエンジニアの採用・教育・能力開発を進めております。しかしながら、当社グループの想定を上回る急激な技術革新等により生じた劇的な環境の変化に対し、当社グループが適切に対応することができない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②景気変動によるリスクについて(発生可能性:中、影響度:中)
当社グループの主たる事業は、国内企業に対するコンピューターシステム及びプログラミングの開発に関する受託業務の運営であるため、国内企業の設備投資(IT投資)の動向に影響を受けやすい傾向にあります。当社グループは、国内外の政治・経済の大幅な変動、又は戦争等による連鎖的な国内景気の悪化により、当社グループが提供するサービス領域が縮小される可能性があります。したがって、国内企業全体のIT投資需要が減少した場合、新規受注の減少や既存契約の解約等により当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③生成AIのリスクについて(発生可能性:中、影響度:中)
生成AIをコード生成などに活用することで、ITビジネスの生産性を高める事が可能になりますが、機密情報の漏洩や著作権侵害等の懸念があり、ガイドラインや安心して使うための環境整備が必要になります。情報技術の先進的活用で社会に貢献してきた当社は、生成AIを活用し受託案件の生産性を高めると共に新たなサービス開発に向けた検討と知見の蓄積を進めてまいります。しかしながら、生成AIが当社のビジネス環境を崩すような活用がされた場合には当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)事業に関するリスク
①人材の確保、育成について(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループが今後さらなる事業の拡大及び高付加価値サービスの提供を図るためには、優秀な人材の確保及び育成が不可欠となります。高い技術力を有したエンジニアの確保及び育成はもとより、顧客に当社グループのシステム開発能力やサービス力を提案できる技術営業担当者及び事業拡大の基盤となるプロジェクトマネージャーの確保が重要になっております。当社グループでは、上記のような人材の確保及び育成に注力してまいりますが、人材の確保及び育成が当社グループの想定通りに進まなかった場合は、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②ビジネスパートナーである協力会社の確保について(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループは、コンピューターシステム及びプログラミングの開発に関する受託業務の運営において、案件ごとの必要技術や効率性、収益性の向上の観点から当社グループ内のエンジニアの他、ビジネスパートナーである協力会社を活用することで、機会損失の発生を低減することを目指しております。そのためには、協力会社の確保及び協力会社との良好な取引関係の維持・構築の実現が極めて重要となり、今後、当社グループが事業規模の拡大を図る上で、協力会社との連携強化が必要不可欠となります。したがって、当社グループは協力会社の継続的な確保及び一層の連携強化に努めてまいりますが、協力会社の確保が十分に行えなかった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③大口顧客への依存に関するリスクについて(発生可能性:小、影響度:大)
当社グループには、継続的な販売先である主要取引先として大口顧客が存在します。当連結会計年度における当社グループの総売上高に対するNTTデータグループへの販売額は38.2%、野村総合研究所グループへの販売額は24.5%を占めております。
当社グループは、今後、これらの大口顧客との取引金額の拡大を図りながらも、その他の顧客との取引金額の拡大を図り、大口顧客への取引依存度の低減に努めてまいりますが、経済情勢などの変化により、大口顧客の事業運営が大きく影響を受け、大口顧客による当社グループとの取引の急激な減少を余儀なくされた場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④情報システムのトラブル発生に関するリスクについて(発生可能性:小、影響度:大)
当社グループは、業務効率化や社内情報共有のため、情報システムを構築・運用しております。情報システムの構築・運用に当たっては、ISMSの認証取得やプライバシーマークの認定取得を行い、従業員教育や各種の情報セキュリティ対策を講じることで危機管理対応に積極的に取り組んでおりますが、外部からの予期せぬ不正アクセスやコンピューターウィルス侵入、自然災害・事故等による情報システムの深刻なトラブルが発生した場合には、業務効率性の低下を招くほか、被害の規模によっては、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤長時間労働の発生に関するリスクについて(発生可能性:小、影響度:小)
システム及びプログラミングの開発プロジェクトにおいては、当初計画に見込まれていない不測の事態の発生に起因して、品質保持や納期厳守の観点から長時間労働が発生することがあります。当社グループでは適切な労務管理に努め、長時間労働の発生を未然に防ぐべく事業部門と管理部門の双方によるチェック体制を整備しております。しかしながら、上述のような不測の事態の発生に伴う不可避的な長時間労働が発生した場合には、システム及びプログラミング開発における労働生産性の低下等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他のリスク
①法的規制に関するリスクについて(発生可能性:小、影響度:小)
下請代金支払遅延等防止法に対しましては、支払代金の遅延等を未然に防止する体制を構築し、法令遵守に努めておりますが、法令違反に該当する事態が発生した場合、又は法律等の改正等が行われた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は監督官庁より労働者派遣事業者として許可を受けておりますが、今後、偽装請負と見做されること、あるいは何らかの事由により当該許可の取消事由に該当し、業務の全部もしくは一部の停止処分を受けた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②知的財産権に関するリスクについて(発生可能性:小、影響度:小)
当社グループは、第三者の知的財産権を侵害することがないよう常に注意を払っており、現時点において第三者の知的財産権の侵害の事実はないものと認識しておりますが、無体財産に係る財産権の場合には、意図せずに侵害することは容易に起こりえます。この場合、社会的信用力の低下、当該第三者からの損害賠償請求により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。第三者の知的財産権を侵害し、金銭的損害が発生する、あるいは第三者に知的財産権を侵害され競争力が低下した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③情報セキュリティについて(発生可能性:小、影響度:中)
当社グループでは、事業遂行上、顧客の企業情報並びにビジネスパートナーである協力会社及びエンジニアの個人情報等、多くの機密情報を取扱う機会を有しております。当社グループでは、情報セキュリティに関する取り組みとして、情報セキュリティ管理に関する規程の制定、社内教育を実施し、情報管理への意識向上を図るとともに、ISMS認証やプライバシーマークの認定を取得し、情報の適正な取扱いと厳格な管理を行っておりますが、これらの情報が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用力の低下や損害賠償請求の負担等が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④事務リスクについて(発生可能性:中、影響度:中)
当社グループはお客様や協力会社様との間で様々な取引を行っており、取引ごとに様々な事務処理が発生いたします。これらの事務処理においては事務ルールを定め定期的モニタリング及び適時のルール見直しを実施していますが、ミスや不正等により、受注・発注等の業務の中断による営業活動の停止、取引先からの信用の失墜等が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤自然災害や感染症に関するリスクについて(発生可能性:中、影響度:中)
当社グループが事業展開する地域において、地震、台風、津波等の自然災害、火災、停電、各種感染症の拡大等が発生した場合、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、当社グループの主要な事業拠点である首都圏において大規模な自然災害等が発生した場合には、正常な事業運営が行えなくなる可能性があり、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、自然災害等が発生した場合に備え、業務フローの見直しやITツールの活用及び情報セキュリティ強化等を図って、円滑にリモートでの業務活動を可能とする態勢整備を拡充していますが、自然災害等による人的、物的損害が甚大である場合には、当社グループの事業の継続そのものが不可能になる可能性があります。
⑥気候変動リスクについて(発生可能性:小、影響度:小)
当社グループは、持続的に成長する上で優先的に取り組むべきテーマとして、「事業活動を通した脱炭素社会への貢献」をマテリアリティ(重要課題)として認識しており、当社グループの事業活動から発生する温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、国際的イニシアティブ「Science Based Targets Initiative(SBTi)」による中小企業向けSBT認定を取得しています。また、情報サービス産業協会(JISA)のCO2削減自主行動計画の取り組みにも賛同し、当社はこのイニシアティブに協力・参加しています。しかしながら、社会的に多大な影響を与える気候変動が生じた場合には当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動リスクへの対応や情報開示が不十分であった場合又はそのように見做された場合には、当社グループの企業価値の毀損に繋がるおそれがあります。
⑦不採算案件の発生可能性について(発生可能性:小、影響度:大)
原価が受注額を上回る不採算案件の発生については、品質保証委員会活動にて未然に防止を図りますが、予測できない要因により不採算案件が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の当社を取り巻く事業環境は、国内の企業収益が好調に推移し、デジタル技術を活用したビジネスプロセス及びビジネスモデルの変革、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けた投資意欲が旺盛であった一方、コストの削減や期間の短縮を目的に内製化の志向も高まった一年でした。IT・デジタル人材は依然として不足しており、需給差は拡大しております。その影響でIT業界における開発単価は上昇傾向となりましたが、採用環境についてはより厳しい状況で推移いたしました。
このような環境の下、DX向けソリューションである、クラウド構築、ビッグデータ分析、業務ワークフローの自動化(ServiceNow)により、顧客企業が提供する価値増強への支援を継続するとともに、2023年6月に立ち上げたコンサルティング事業においては、企業のDX戦略の策定、実行支援のニーズに対応しており、ITソリューションからコンサルティングまでワンストップで対応するサービスを提供してまいりました。また、2023年8月に発表したリブランディングの下、当社が次のステージに進むための社内向け施策の検討、設計に取り組んでまいりました。中長期的な成長を見据え、改めて当社の強みを再定義したリブランディングでは、新たに当社ブランドメッセージ「BEYOND THE RIGHT ANSWER. -正解以上の答えをだそう-」を策定し、コーポレートアイデンティティのリニューアルも実施いたしました。当社の価値の源泉である3つの強み「人を想う力」「技術を活かす力」「可能性を広げる力」と、当社が目指すこれからの”CNS”の姿を表現しております。
当社の事業は主に準委任契約による受託開発・システムコンサルティング等であり、人員数の増減が収益に影響を与えるビジネスモデルでありますが、以降でご説明する各既存事業の対前年同期増減率については、2024年5月期からの下記の新事業体制による人員異動の影響を考慮しておりません。
● システム基盤事業を再編し、一部のリソースをデジタル革新推進事業、業務システムインテグレーション事業、コンサルティング事業へ移管
● ビッグデータ分析事業に属するリソースをコンサルティング事業へ移管
■成長戦略と施策の実践状況
当社グループは、DX変革ビジネスの拡大を成長戦略の中核に据え、前連結会計年度に続き、「1.事業基盤の強化」、「2.新たな顧客獲得による事業規模拡大」、「3.ソリューションの拡充による市場拡大」の実現に向けた各施策を推進いたしました。
なお、当社グループのマテリアリティに関連して「積極的な新卒採用と早期育成」、「DX推進のためのパートナー企業アライアンス拡大、協業」「最新のIT技術の活用」の取り組みの実践状況も含めてご報告いたします。
①事業基盤の強化
当期は新卒採用に比重を置き、ダイレクトリクルーティング及びインターンシップの活用を進めることで優秀な人材の囲い込みに努めた結果、2024年度入社の新卒社員数はおおよそ計画どおりとなりました。人事部では入社前の研修やフォロー、社員交流イベントを充実させ内定承諾率の向上を図り、入社後は集合研修後、配属現場でのOJT・フォローアップ研修を行っております。下半期においては、現場配属後の即戦力化を目指し、特に新卒社員の育成施策の改善に取り組むことで、主体性とチームワークがさらに身に着くよう研修の見直しを行いました。中途採用に関しては、各事業部における募集要項を見直し、応募数の増加を図るとともに入社後のミスマッチ防止に努めましたが、ターゲット層の採用は厳しい状況で推移いたしました。既存のエンジニアについては、ますます加速する技術進化の中で常にキャッチアップを行い、対応可能な案件の幅を広げるとともに、資格取得の推奨・支援により顧客に対して付加価値を提案できる人材の育成に努めました。
②新たな取引先拡大のための強化施策
当社が注力するデジタルワークフローを提供するServiceNowについては、引き続き需要は高く、主要取引先である株式会社NTTデータに加え、新規SIerとの取引を開始いたしました。システム基盤事業における独自サービス「U-Way」Oracle Cloud Infrastructure(以下、OCI)シリーズは、日本オラクル社の注力パートナーとして、同社と連携してそれらサービスの販売を強化し、ベンダーを挟んだ間接取引のみならず、エンドユーザーからの直接取引にも繋げ顧客の裾野を広げることができました。ビッグデータ分析事業においても、SAS社製品を活用した独自サービス「U-Way Migration to SAS Viya構築支援サービス」の開発・リリースをいたしました。業務システムインテグレーション事業では、金融業界を中心にローコード開発等対応業務の幅を拡げることで顧客の要望に柔軟に対応し取引を拡大することができました。
③ソリューションの拡充による市場拡大
当社グループの主力ソリューションであるデジタル革新技術(業務ワークフローの自動化(ServiceNow)、ビッグデータ分析、クラウド構築等)について、顧客にとって分かりやすく、かつタイムリーに提供することを目的に、ノウハウの標準化、方法論のフレームワーク化を進めてまいりました。これによりサービスメニューの整備が進み、自社ブランドを立ち上げたことから、2023年8月の自社ウェブサイト更改に合わせてサービスページもリリースいたしました。U-Wayシリーズの事業展開に関しては、システム基盤事業では2022年10月から現在までに4サービスを提供し、ビッグデータ分析事業においては、2024年1月に1サービスの提供を開始しております。業務システムインテグレーションにおいては、アプリケーション開発のみならず、ERP関連のSaaS等のソリューション導入サービスにも着手いたしました。
■当期の状況
デジタル革新推進事業では、既存の性能やデータベース移行に関するテクノロジーコンサルティング案件及び新規に獲得したキャッシュレス決済アプリケーション開発案件の大幅な拡大に加え、注力するServiceNowでは新規顧客を獲得いたしました。この結果、当連結会計年度における当事業の売上高は、前期比20.6%増の1,819,938千円となりました。売上総利益率は、リカバリー対応を優先したこと、ServiceNowパートナー認定ランクに係る取り組み費用を抑制できたことで前期比0.9%減に止まり、24.5%となりました。
ビッグデータ分析事業は、組織再編による人員減少の体制で今期開始いたしました。このような状況のなか、主要顧客における事業環境の変化による受注案件の縮小、新規顧客にて計画していた案件の中止等の影響を受けました。これらのリカバリーに向けて営業活動を強化した結果、小規模も含めた案件の獲得につながり、当連結会計年度における当事業の売上高は、前期比1.5%増の1,139,923千円となりました。売上総利益率につきましても、利益率の高い案件の縮小により、前期比5.2%減の24.5%となりました。
システム基盤事業についても組織再編に伴う人員減少により収益が縮小いたしましたが、SES契約ではなくサービス形態による案件受注・拡大を目指し、当社独自サービス「U-Way」をフックに、日本オラクル社とともに積極的な提案活動を行った結果、新規エンドユーザーを獲得することができました。加えて、既存顧客に対しても対応範囲を広げ体制を拡大することができましたが、当連結会計年度における当事業の売上高は、前期比10.4%減の1,779,555千円となりました。一方で売上総利益率については、既存顧客への単価アップ交渉や「U-Way」OCIシリーズの寄与により前期比1.2%増の24.4%となりました。
業務システムインテグレーション事業は、金融業界における法規制等に対応する大型スクラッチ開発案件やシステム老朽化対応案件などの前期下半期からの継続案件に加え、経済安全保障に係る案件や証券会社向けシステム構築案件を新規に獲得したことにより、当連結会計年度における当事業の売上高は、前期比10.7%増の1,517,934千円となりました。売上総利益率については、主に大口顧客からの受注案件の縮小により、前期比0.3%減の23.8%となりました。
当期新たに立ち上げたコンサルティング事業については、主にコンサルティング案件を対応していた既存エンジニアを移管し、上流エリアのビジネス拡大に向けた営業活動を実施してまいりました。エンジニアとともに移管した案件の継続、及び生成AIや金融機関向けのコンサルティング案件等を下半期において新たに獲得できたものの、コンサルタント人材数が計画通りに進捗しなかったことにより、当連結会計年度における当事業の売上高は、399,730千円(計画比79.8%)、売上総利益率については、想定していた新規コンサルティング案件を受注できなかったことにより、29.7%(計画比4.4%減)となりました。なお、コンサルタント人材の獲得が進み、2025年5月期は当該事業の立て直しを図り、上流のDXコンサルティングの拡大に努めてまいります。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は6,657,083千円(前期比11.1%増)となりました。認知度向上に向けたIR・PR活動に積極的に取り組んだことにより当該費用は増加したものの、即戦力人材採用活動の見直しによるコスト削減等があったことで販管費率は前期比で0.5ポイント減少し、営業利益619,974千円(同10.9%増)、経常利益650,255千円(同10.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益461,328千円(同6.5%増)となりました。
財政状態は、次のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における総資産は4,933,509千円となり、前連結会計年度末と比較して386,331千円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が410,401千円、前払費用が21,147千円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は1,261,842千円となり、前連結会計年度末と比較して55,772千円の増加となりました。これは主に、買掛金が25,432千円減少した一方で、未払法人税等が41,001千円、未払消費税等が11,717千円増加したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は3,671,667千円となり、前連結会計年度末と比較して330,558千円の増加となりました。これは主に、配当により利益剰余金が130,770千円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が461,328千円増加したことによるものです。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して350,390千円増加し2,933,565千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果による収入は564,567千円となりました。主な要因は法人税等の支払額153,411千円があった一方、税金等調整前当期純利益が636,489千円等あったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果による支出は80,653千円となりました。主な要因は定期預金の預入による支出が60,010千円、保険積立金の積立による支出39,573千円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果による支出は133,523千円となりました。主な要因は配当金の支払額130,770千円等があったことによるものです。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが営むシステムエンジニアリングサービス事業は、提供するサービスの関係上、生産実績の記載になじまないため、記載しておりません。
b.受注実績
当社グループが営むシステムエンジニアリングサービス事業は、提供するサービスの関係上、受注実績の記載になじまないため、記載しておりません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(千円) |
前期比(%) |
|
システムエンジニアリングサービス事業 |
6,657,083 |
111.1 |
|
合計 |
6,657,083 |
111.1 |
(注)1.当社グループはシステムエンジニアリングサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の売上高及び当該売上高の総売上高に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年6月1日 至 2023年5月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年6月1日 至 2024年5月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社エヌ・ティ・ティ・データ |
2,027,071 |
33.8 |
- |
- |
|
株式会社NTTデータ |
- |
- |
1,310,805 |
19.7 |
|
株式会社NTTデータグループ |
- |
- |
975,180 |
14.6 |
|
株式会社野村総合研究所 |
748,912 |
12.5 |
765,626 |
11.5 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。また、この連結財務諸表の作成にあたりましては、会計方針の選択及び適用、損益又は資産の報告金額等に与える見積りを必要としております。これらの見積り及び判断につきましては、過去の実績等を勘案して合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、以下の事項が重要であると認識しております。
(繰延税金資産)
当社は、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、繰延税金資産の回収可能性の判断に重要な影響を与える可能性があります。
(請負業務に係る履行義務充足に伴う収益認識)
売上高の計上は進捗度に基づき測定され、進捗度はプロジェクトの総見積原価に対する連結会計年度末までの発生原価の割合(原価比例法)によって算定しております。適用にあたっては、プロジェクトの総見積原価は、各プロジェクトに対する専門的な知識と経験を有するプロジェクト責任者による一定の仮定と判断を伴うものであり、見積原価総額の変動により、各連結会計年度の売上計上額に重要な影響を与える可能性があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態に関する認識及び分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の経営成績の前連結会計年度との比較分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しておりますが、その主な要因は次のとおりです。
(売上高)
当連結会計年度の売上高は6,657,083千円(前期比11.1%増)となりました。主な増加要因は、既存顧客ビジネスの維持・拡大、新規案件獲得によるものであります。
(売上原価)
当連結会計年度の売上原価は5,017,663千円(前期比11.9%増)となりました。主な増加要因は外注加工費によるものであります。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,019,445千円(前期比7.7%増)となりました。主な要因は、従業員増加に伴う給料及び手当、退職給付費用等の人件費が増加したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度の営業利益は、619,974千円(前期比10.9%増)となりました。
(経常利益)
当連結会計年度の営業外収益は32,877千円(前期比12.2%増)となりました。主な内訳は、保険積立金の解約に伴う受取保険金、助成金収入によるものであります。
この結果、当連結会計年度の経常利益は、650,255千円(前期比10.6%増)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
法人税、住民税及び事業税(法人税等調整額を含む)を175,161千円計上したことにより、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は461,328千円(前期比6.5%増)となりました。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フロー分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.財務政策
当社は、事業活動に必要な流動性を安定的に確保するため、手許流動性3~6か月を目安に保有しておくこととしております。
当社は事業の特性上、巨額な投資は必要としないため、間接金融ではなく直接金融を原則として安定的な経営を行っていく方針です。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業価値の向上及び財務体質の強化を図るため、具体的な数値目標は設定しておりませんが、売上高成長率及び営業利益率を重要な経営指標としております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。