文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針・経営環境
当社グループは「価値の高い情報サービスの創造と提供を通して社会に貢献し、常に期待される企業を目指す。」という企業理念の下、「技術と情熱をもってお客様に楽しさと満足を提供するサービスを創造するとともに、社員一人ひとりの個性を尊重し社員の成長を支援する。」ことを企業指針とし、メッセージングプラットフォーム「Cuenote(キューノート)」を、クラウドサービス(SaaS)形式、ソフトウエア形式で提供しております。
2024年6月7日に公表された総務省の「令和5年通信利用動向調査の結果」によりますと、調査対象企業におけるクラウドコンピューティングサービスの導入割合は上昇傾向が続いており8割に近づいております。場所や機器を選ばない簡便さや、サーバ等の資産を持たず、保守体制のアウトソーシング化も可能であり、それらがメリットとして認識され、経営面で「非常に効果があった」又は「ある程度効果があった」とする評価は、導入企業全体の88.4%に上っていることが示されております。
また、当社グループの推進するメッセージングソリューション事業は、継続率の高いサービス利用料が収入の大半を占めるストック型ビジネス(サブスクリプションモデル)であり、収益・投資等の計画を立てやすく、スケールメリットを得やすいビジネスモデルのため、基本的には堅調な事業推進が可能となっております。
(2)経営戦略等
このような経営方針・経営環境の下、「SaaS事業成長」「顧客価値向上」を通じて、健全な事業拡大のため、次のような取り組みを行っております。
① 提供サービスの拡充
「Cuenote SMS」については、2024年2月に利便性の向上を目的とし、絞り込み配信機能の搭載、アドレス帳管理機能のアップデート、双方向SMSの送受信履歴ダウンロード機能の搭載を実施しております。
また、2024年6月にインバウンド向けコールシステム「OSORA」と連携を行っております。これにより、WEBサイトや申込みフォーム等、口頭での案内が難しい内容であっても受電者の電話番号宛に即時にSMSを送ることができ、オペレーターの負担軽減及びお客様の利便性向上を図っております。
更に、2024年8月にオプションとして「他人接続判定機能」の追加、提供を開始し、電話番号の変更によりメッセージが本人以外に届くリスクの低減を図っております。
加えて、2024年7月にSalesforceと連携する「Cuenote SMS for Salesforce」の提供を開始し、Salesforceの管理画面からシームレスにSMSを送信することを可能にし、利用者の業務効率化を図っております。
並びに、同月にコクー株式会社と提携しメール配信運用支援「メルサポ」及びデジタルマーケティングトータル支援「デジサポ」の提供を開始し、企業の課題に合わせて選べるメールマーケティング・デジタルマーケティング支援を行います。
そのほか、2024年10月にサイボウズ株式会社の業務アプリ構築クラウドサービス「kintone(キントーン)」と連携する「Cuenote SMS for kintone」の提供を開始し、「kintone」の管理画面からSMSの個別配信・一斉配信および配信結果の確認を可能にし、利用者の業務効率化を図っております。
当社グループでは2003年にMTAを独自に開発して以降、メッセージング領域における技術力とノウハウを蓄積し、顧客ニーズに応じたサービスや機能を拡充し続けてまいりました。
生活様式が多様化する現在において、情報通信技術やデジタルデバイスの進展により企業と消費者の
コミュニケーション手段もまた多様化しております。
複数のコミュニケーション手段を統合的に管理でき、個々に対し最適な手法を用いメッセージングする
基盤の構築は、マーケティング効果や業務効率の向上、良質な顧客体験の提供を実現する上で効果的
かつ不可欠な手段になると捉え、統合基盤(プラットフォーム)化を進めてまいります。
② 開発力の強化
安定的かつ着実な事業拡大を図る上では、既存顧客の契約を継続することのみならず、案件数等が増加した場合においても、収益率を高水準に維持し、かつ顧客サービスのパフォーマンスを維持・向上することが重要であると考えております。
当連結会計年度においても新規サービスやCuenoteサービスの機能開発など、開発力向上のため技術者の採用に注力いたしました。なお、優秀な技術者を採用するため、東京、大阪及び北海道に拠点を有しており、継続的に開発力強化のための基盤整備を推進してまいります。
③ 基盤設備の増強
国内に新たなSaaS用のサービス基盤設備を2020年3月に開設いたしました。新基盤では新技術を採用し、システムの可用性、拡張性の向上にあわせ高いデータの堅牢性を実現しております。2018年12月期より提供するDR(ディザスタリカバリ)拠点間分散サービス(注1)とともに顧客からは事業継続の観点から高い評価を得られていると考えております。
なお、当連結会計年度における各サービスの稼働率(注2)は次のとおりとなりました。
Cuenote FC(注3) : 99.9982%
Cuenote FC Premium(注4): 99.9996%
Cuenote SR-S : 99.9994%
Cuenote Survey :100.0000%
Cuenote SMS :100.0000%
Cuenote AUTH :100.0000%
Cuenote 安否確認 :100.0000%
引き続き、適時適切な設備投資により基盤設備を強化し、データの堅牢性の維持確保、提供サービスの安定運用を図ってまいります。
④ サービスの認知・理解向上のためのプロモーション、セミナー活動
オンラインでのプロモーション活動の強化や展示会への出展、また、サービス活用セミナーの実施により、Cuenoteブランドの認知、営業機会の創出にあわせ、既存顧客に対してもサービスの効果的な活用方法を提示してまいりました。
今後も継続的に、ブランド力の維持・強化並びにメッセージングソリューションサービスの認知・理解の向上を推進してまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社グループは、適時適切なリスク管理並びに業務運営の効率化を通じた企業価値向上のため、コーポレート・ガバナンスの強化が重要な課題であると考えております。
企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために、効率性の優れた透明性の高い経営を実現させ、適切な資源配分、意思決定の迅速化、コンプライアンスの徹底を推進することは、健全な企業統治体制の確立の視点からも極めて重要であると強く認識しており、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。
引き続き、企業価値の維持・向上を目指し、経営の公正性・透明性を確保するとともに、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでまいります。
(注1)大規模災害などによるデータセンターの壊滅的被害を想定し、東京・北九州など遠隔拠点に設置する複数設備を用いサービスを提供するオプションサービスです。
(注2)稼働率とは、システムやサービスが稼働すべきであった時間の内、正常に稼働していた時間の割合を求めたもので、次の算式により求めます。
稼働率=(全時間-システム停止時間)/全時間
(注3)Cuenote FCは、プライベート型のSaaSとなります。
(注4)Cuenote FC Premiumは、パブリック型のSaaSとなります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 優秀な人材の確保
事業成長のため、優秀な人材の獲得は不可欠であると考えており、積極的な採用と共に研修等による人材の育成、職場環境の整備に取り組んでまいります。
② サービスの付加価値の向上
当社グループ事業には競合する企業が存在しており、これまで性能面や機能面などにおいて競争力を高めてまいりましたが、今後も継続し機能開発や設備投資によりサービスの付加価値の向上に努めてまいります。
③ サービスの安定稼働
いつでも安心して利用できることは、SaaSにおいて不可欠であり、顧客が継続利用を判断する重要な要素であると考えております。今後も顧客増加や通信量の増加を見据え計画的な設備投資や増強、予防交換に取り組んでまいります。
④ 当社グループ及びサービスの認知度の向上
当社グループはこれまで販売促進を目的にインターネット広告を活用してまいりましたが、今後のサービス拡販や人材獲得のためさらなる認知度の向上が必要であると考えており、インターネット以外のメディア活用や出稿量の増加により露出を高め認知度の向上に努めてまいります。
⑤ 情報管理体制の強化
当社グループではプライバシーマークやISMSなど外部認証を取得し、規程に基づく運用及び定期監査、見直しの実施や役職員への定期的な啓発、訓練、物理的・技術的対策への投資により情報管理体制を強化してまいります。
以上が、当社グループが優先的に対処すべき主要な課題であると認識しております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは持続的な成長と企業価値の向上を目標としており、主な経営指標として売上高、営業利益、営業利益率にあわせ期末月の定期契約額(月次経常収益)とメールサービスの解約率を重視しております。
なお、経営上の指標については、後述の「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
以上のとおり、事業運営上必要な施策を適時適切に実行することにより定期契約額を増加させ、事業規模を拡大し経営の効率性を高めてまいります。
また、内部統制を有効的に機能させることによりコーポレート・ガバナンスを強化し、企業倫理を遵守しながら企業市民としての社会的責任を果たし、定量的にも定性的にも健全な経済活動を展開してまいります。
当社グループは、経営理念として「価値の高い情報サービスの創造と提供を通して社会に貢献し、常に期待される企業を目指すこと」を第一にうたっております。また、それを目標とする会社の姿勢として「技術と情熱をもってお客様に楽しさと満足を提供するサービスを創造するとともに、社員一人ひとりの個性を尊重し、社員の成長を支援すること」を念頭に置いて経営に取り組んできました。
こうした理念や姿勢は、企業経営におけるサステナビリティの基盤となるもので、次に述べる観点に基づき具体化してゆく所存です。
(1)サステナビリティ
当社グループは、環境保全に寄与し社会貢献が可能なメッセージング・ソリューション事業を行っています。当社グループにとってのサステナビリティは、当社の経営理念やあるべき企業の姿勢を踏まえたうえで、人や社会の「つながり」を創造する日本を代表するSaaS事業者を目指し、社会環境に配慮しながら事業を展開してゆくことにあります。
多くの人々が様々な関係性を持って暮らす現代社会では、コミュニケーションは社会経済活動の基盤になるものですが、当社グループの提供するサービスは新聞・雑誌、ラジオ・テレビなど誰にでも情報を伝えるマスメディアとは異なり、メールやショートメッセージによって企業や行政が情報を伝えたい個人の手元に届く伝達手段を実現し、提供しています。
また、新聞・雑誌は大量の紙資源を使用し、郵便物は輸送に多くのエネルギーが使われてきました。しかし、当社グループの情報伝達手段であるメールやショートメッセージサービスは、いかに発信通数が多くなっても、サーバ等の機材を適切な数量で構成して効率的に使用することで、環境負荷の少ない運用が可能となっています。加えて、制作や配布に多くの人手かかる新聞・雑誌、郵便物などとは異なり、メールではこれらを省くことが可能で、省人化や業務効率向上による働き方改革にも寄与しています。
このように、当社グループのサービスは社会経済活動におけるコミュニケーションツールとして有用性や可用性を最大限発揮するとともに、環境負荷の低減にも寄与しており、環境面でのサステナビリティの一助ともなっています。そして、コミュニケーションツールとしての明確な社会的役割を認識し、その役割を継続・拡大することによって、企業としてのサステナビリティも維持し高めてゆく、そういった好ましい循環サイクルを実現していると認識しております。
(2)ガバナンス
当社グループは、公正で透明性の高い経営に取り組むことを基本的な姿勢としています。そして、事業活動を通じてステークホルダー(お客様、ビジネスパートナー、地域社会、株主・投資家、従業員)と良好な関係を築くとともに、その期待に応えて中長期的に企業価値を高め、持続可能で豊かな社会の実現に向けて貢献してゆくことが重要であると認識しています。
企業価値の向上や持続可能な社会の実現のためには、事業活動における立ち居振る舞いが常に社会的に適正なものでなければならず、企業としてコーポレート・ガバナンス体制が最も重要であると認識しています。当社では会社法に基づく機関である株主総会、取締役会及び監査役会を設け、事業運営に対する適切な管理・監督を実行しております。また、高い専門性と豊富な実務経験を有する独立した社外取締役及び社外監査役が取締役会において監督機能を発揮し、的確なアドバイスを提供しています。
当社グループが成長戦略を推進していくうえで、持続可能な社会実現への貢献と中長期的な企業価値の向上が重要な経営課題であるとの認識に立ち、2025年1月、サステナビリティへの取組を推進することを目的に、代表取締役社長を委員長とし、常勤取締役、各本部ゼネラルマネージャーを常任委員とする、サステナビリティ委員会の設置を決定し、活動を開始しました。サステナビリティ委員会は原則として四半期毎に開催され、当社グループのサステナビリティ推進のための基本方針立案、基本方針に沿った施策の推進体制の整備及びモニタリング、サステナビリティに関連する情報の開示等を推進し、その報告や承認において、適宜、取締役会との連携をはかってまいります。また、サステナビリティ委員会は、関係各部・グループ会社と連携して当社グループのサステナビリティの推進を支援してまいります。
サステナビリティ委員会のほか、当社はリスク管理委員会、コンプライアンス委員会及び情報セキュリティ委員会を設けております。これらの委員会は、代表取締役社長を委員長とし、常勤取締役及びゼネラルマネージャーで構成され、原則として、四半期毎に開催するほか、必要に応じて臨時に開催しています。サステナビリティの観点で各委員会は次のような役割を果たしています。
リスク管理委員会は、想定される自然災害や労働災害等をはじめ、経営上、大きな影響を及ぼす事象について、発生頻度と影響度を項目別に予測・評価し、その予防策や発生した場合の影響低減策、発生時の対策をあらかじめ策定し、経営上の負のインパクトを抑制できるようリスクアセスメントを行って備えています。
また、コンプライアンス委員会では、法令・規則及び社内規程・就業規則等に基づき、高い企業倫理観を保持しながら企業活動を推進するため、コンプライアンス関連の施策等について協議し、毎年、テーマを決めて全役職員対象に研修を実施するなど、全社を挙げてコンプライアンスに反する事象の発生を防止する体制をとっています。
情報セキュリティ委員会では、配信ソフトウエアやネットワーク・インフラなど、当社グループのメッセージング・ソリューションの基盤に深く関係している電子情報セキュリティに関して、電子情報セキュリティマネジメントシステム認証やクラウドセキュリティ認証を取得したうえで確実に運用し、その状態をモニタリングするほか、情報セキュリティマネジメントにおける重要な事項について審議・連絡・報告等を行っております。
以上のような形で企業としてガバナンスを確保しておりますが、今後も必要に応じて体制の整備を図り、不断の見直しにより、その時々の要請に合致した体制を構築し、実施してまいります。
(3)戦略
当社グループの人的資本、人材の育成及び社内環境整備に関する方針及び戦略は以下のとおりです。
まず人的資本に関しまして、当社グループは、持続的な成長のためには中長期的に多様で優秀な人材の採用及び育成が不可欠であると考えています。当社の収益の主たる源泉は、大量高速のメール配信を可能とする高度な配信ソフトウエアであり、それを支えるハイレベルなネットワーク基盤が担っております。製造業と異なり大きな設備投資は伴いませんが、配信ソフトウエアの高度化やネットワーク基盤の安全で確実な運用は、それぞれ高度な技術に支えられており、持続的な成長のためには、これらの高度な技術を保有する優秀な人材を将来にわたって確保する必要があると考えられます。これに加えて、様々な価値観や技術が組織内に保持できるよう、多様な人材を確保し、新しい事業やサービスを開発する契機にしたいと考えております。
また、人材の育成に関しましては、様々な教育・研修の機会を設けて各人の能力開発を進め、中長期的に会社の業績に貢献できるようになることを目指しています。今後、能力開発のための教育・研修の充実、 効果的な仕組みの検討を続けてまいります。
社内環境整備につきましては、在宅勤務制度、育児・介護休業制度、時短勤務制度など、従業員それぞれの状況に応じて柔軟な働き方が選択できるよう制度整備を行ってきました。現在、従業員数が次第に拡大していく過程にありますが、年齢・性別で区別することなく、従業員それぞれが適切な就業機会が得られて能力発揮ができますよう、現状の人事制度の見直し・改良にも取り組む所存です。その一環として、以前から運用してまいりました「みなし残業給制度」につきましては、近年、社会的に推進されている働き方改革やこの制度の対外的な不透明感を払拭する意味もあり、2023年度末をもって廃止しております。
(4)リスク管理
当社グループは、経営上のリスクや事業上のリスクについて、従来から代表取締役社長が委員長を務める「リスク管理委員会」を原則として、四半期毎に開催するほか、必要に応じて臨時に開催し、潜在的なリスクをできるだけ早く認識できるように運営しています。必ず年間に1回は部門別に想定されるリスクを洗い出し、「リスクアセスメント」を行って、リスク管理委員会においてリスクのレベルや対応策等を審議するなど、リスク回避・防止・低減に向けた活動を行っています。
また、法令・規則等の違反やハラスメント等に関するリスクに関しましては「コンプライアンス委員会」がその任を担っており、情報セキュリティ関連のリスクに関しては「情報セキュリティ委員会」が中心となってリスクアセスメントを行うなど、種々の対策を検討し実施しています。いずれの委員会も委員長は代表取締役社長が務めており、部門横断的な活動を行っています。
(5)指標及び目標
当社グループは、価値の高い情報サービスの創造と提供を通して社会に貢献し、常に期待される企業を目指すことを第一の目標としていますので、今後もこうした理念の具体化に向けた事業活動を続け、サステナビリティに係る課題解決に努めてまいります。2024年12月期においては、ガバナンス面で「ステークホルダーとの対話の拡充」、社会的な課題である「女性従業員比率の向上」、環境保全の観点から紙資源の消費を可能な限り抑制する「ペーパーレス化の推進」をテーマに活動を行いました。
「ステークホルダーとの対話の拡充」では、充実した資料に基づく四半期決算情報の開示をはじめ、英文版を含むわかりやすい決算説明資料の作成・開示、投資家とのコミュニケーションを図るIRイベントへの参加やラジオの情報番組への出演など、情報発信に努めてきました。
「女性従業員比率の向上」では、2024年度において当社の女性従業員比率は32.3%、女性管理職比率は20.0%となりました。なお、当連結会計年度から子会社となった株式会社ROCでは、従業員に占める女性従業員の割合は、83.3%となっております。当社グループにおきましても、女性活躍社会を実現することを念頭に採用活動を行い、社内の各種の制度を整備しております。しかしながら、現在の当社従業員の半数を超えるIT技術者においては、業界全般に男性の割合が高い状態が続いております。また、経験豊富で経営に貢献できる上級管理職の中途採用においても、女性の候補者自体が見つかりにくい情勢です。部門・職種によって女性の活躍を念頭に置きながら社内での人材育成や採用活動に努めてまいりますが、男性の多いIT技術者が中心の企業であるが故、女性従業員比率や女性管理職比率を短期的に向上させることは難しく、2025年度におきましても当社においては昨年度と同レベルの比率の維持を目標として設定し、組織拡大に伴う従業員の増強を図る所存です。また、育児休職取得率は男性・女性とも100%であり、復職率も100%となっています。このほか、柔軟な働き方が可能となるよう育児短時間勤務制度や在宅勤務制度、子供手当の支給など、子育てを行う従業員に対する施策を実施しております。
「ペーパーレス化の推進」では、コピー用紙の消費を前年度に比較して15%の使用量削減を目標として掲げ、従業員への意識付けを行った結果、前年比で29.9%削減できました。2025年度も引き続きペーパー使用量削減を推進してまいります。
今後、IR活動については、情報発信をより一層活発に行うとともに、投資家との直接的な会話が可能な機会があればこれを逃さず着実に取り組む所存です。また、女性従業員比率・女性管理職比率ともにレベルアップできるよう、引き続き採用活動や業績評価において適切な判断を行ってまいります。省資源・省エネルギーに関しても継続して検討を進めることといたします。
当社グループでは、事業等のリスクについて、リスク管理委員会を原則として、四半期毎に開催するほか、必要に応じて臨時に開催しており、事業活動におけるリスクを抽出し、発生可能性と影響度から重点対策テーマを定め、その対応策の策定並びに対策状況の評価・検証を行っております。
以下、当社グループ事業においてリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。
また、必ずしも重要なリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要と判断した場合には、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。当社グループはこれらのリスクの可能性を考慮した上で、リスクの発生の回避や分散、又は問題が発生した場合の対応について最大限努めてまいりますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、特段の記載のない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業に係るリスク
① 経営環境の変化について
当社グループはインターネット業界において、メッセージングソリューション事業を中心に、顧客企業に対し、ASP、SaaSを主要な基盤としたサービスを提供しております。現在は顧客企業のIT関連投資マインドの持続的な上昇を背景として当社事業は順調に拡大しておりますが、今後国内外の政治・経済情勢を背景とした、顧客企業におけるIT関連投資を減退するような環境が発生した場合においては、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合他社による影響について
当社グループのASP、SaaS事業では先行者メリットを活かしつつ、顧客のニーズに合ったサービスの開発を行うことで優位性を高めております。しかしながらASP、SaaSサービスの新規参入の法的規制や技術的な障壁は必ずしも高いものとは言えず、資金力、ブランド力を有する大手企業をはじめとする競合他社により類似したサービスが開発され価格競争が激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、顧客のニーズに合わせ、新機能の開発及び改善を進めていくことで、競合他社との差別化を図り、本リスクの低減に努めております。
③ 特定の製品への依存について
当社グループの売上高のうち、主要製品であるメール配信システム「Cuenote FC」の売上高は、売上高全体の64.8%(当連結会計年度)と過半を占めております。当社グループはメッセージングソリューションに関するサービスを提供する企業でありますが、競合製品との競争激化及び市場環境等の変化により「Cuenote FC」の売上が大幅に減少した場合には、当社の業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、引き続き、「Cuenote FC」の売上拡大を図る方針に変わりはありませんが、SMS配信サービス「Cuenote SMS」の売上拡大に取り組むことで、本リスクの低減に努めております。
④ 技術革新への対応について
当社グループが各種サービスを提供するインターネット事業領域においては新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が頻繁に行われており、非常に変化の激しい業界となっております。そのため、当社のこれまでの経験が生かせないような技術革新があり、適時に対応ができない場合、当社が提供するサービスの競争力が低下する可能性があります。また、新技術への対応のため予定していないシステムへの投資が必要となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、新機能開発やサービスの提供に関する新しい技術情報の収集及び習得を行い、積極的に導入することで、技術的優位性を維持することに努めております。
⑤ 取引先との取引が継続されないリスクについて
現在、売上高依存度が総売上実績の10%を超えるような顧客は無く、当社グループの顧客層は分散されております。しかしながら、比較的取引額の大きな取引先との解約等が発生し、解約率が上昇した場合及び販売代理店との関係悪化が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、新機能の開発及び改善を進めサービスの市場価値を高めることにより、取引額の大きな取引先の解約を防ぐとともに、販売代理店との良好な関係を強化して顧客数の増加を図ることで、本リスクの低減に努めております。
⑥ システムトラブルによるサービス障害について
当社グループのASP・SaaS事業はインターネットを通じサービスを提供しております。利用者に質の高いサービスを提供するためサービスの監視やバックアップ、定期的なメンテナンス等を実施し、高い稼働率を維持するよう努めておりますが、次のような障害やトラブルが生じた場合に一時的にサービスが停止し、収益の低下、ユーザーからの信用低下、ブランドイメージの毀損及び開発業務の停滞等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
a.インターネット回線の通信障害
当社グループではサービスを提供する上でのインターネット回線は回線事業者より供給を受けております。インターネット接続回線の多重化や複数回線事業者を採用することで、一部のネットワークの通信切断による全サービスの停止リスクに備えております。また各回線事業者の保守など作業実施に際しては事前に実施日や内容を確認の上、当社のシステムやネットワークの設定変更によりサービス停止などの影響を回避するよう努めておりますが、自然災害や事故等により広い範囲で通信が切断された場合には、サービスの提供に支障が生じる可能性があります。
b.ショートメッセージ送受信用回線・設備の障害
SMS(ショートメッセージ)配信サービスにおいては、携帯電話事業者の提供する通信経路を活用しております。当社システムと携帯電話事業者間の通信については、複数経路で通信できるよう対策を講じております。また各回線事業者の保守など作業実施に際しては事前に実施日や内容を確認の上、当社のシステムやネットワークの設定変更によりサービス停止などの影響を回避するよう努めておりますが、携帯電話事業者の通信設備や通信網に障害が生じた場合には、ショートメッセージの送信が不能となりサービスの提供に支障が生じる可能性があります。
c.サービス機材の故障、停止
サービスを提供するためのサーバやネットワーク機器については、事前にその性能や安全性、安定性を評価の上採用し、システム構成時には機材を多重化することで単一機材故障時によるシステム障害に備えております。併せて定期的なバックアップや点検、増強、更新によりシステム稼働率の向上に努めておりますが、複数機材の故障や電源供給停止など予測不能な要因によりシステムが停止した場合にサービスの提供に支障が生じる可能性があります。
d.プログラム不具合
当社グループでは新サービスや機能の開発にあたり、機能の企画設計から開発、テストまで十分に管理するとともに、プログラムのバージョンアップに際しては、複数システムに対して順次に適用することにより複数システムの同時トラブルの発生に対処しておりますが、しかしながら、想定しえない理由により予期せぬプログラムの不具合が生じた際にはサービスの提供に支障が生じる可能性があります。
e.外部からの不正アクセスやコンピューターウィルスの感染
サービスを提供するためのシステムやプログラムに対しては外部からの不正アクセスやコンピューターウィルスへの感染に対する物理的・技術的対策を講じるとともに定期的な脆弱性検査による点検を実施しております。しかしながら、オペレーションシステムにおける未知の脆弱性や未知のコンピューターウィルスへの感染等によりシステムが正常に機能しなくなる可能性があり、サービスの提供に支障が生じる可能性があります。
⑦ 法的規制について
当社グループは電子メールを取り扱うASP、SaaS事業を営んでいることから、「電気通信事業法」に基づき電気通信事業者の届出を行っており、通信の秘密等の保護の義務を課せられております。
また、インターネットの普及に伴い「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」「特定商取引に関する法律」「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」等を始め、インターネット事業領域に関する法令整備が進んでおり、今後新たに関連事業者を対象とした法的規制等が制定された場合、業務が一部制約を受け、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、万が一適用される法令等に違反した場合、当社グループの業績、事業運営及び社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社システムでは多数のメールアドレスや電話番号に対してプログラム処理を行うことから、2013年にISMS、2023年にISMSクラウドセキュリティの認証を取得し、全社的な情報管理・業務フローの適正化の監視監督を担う情報セキュリティ委員会の活動を通じて個人情報保護に関するフローの見直し、従業員教育、システムのセキュリティ強化、個人情報取扱状況の内部監査等を実施し、個人情報管理の強化に努めております。
また、当社グループでは、関係諸法令を遵守する体制の整備及び役職員の研修を実施するとともに、事前の情報収集を実施することで、本リスクの低減に努めております。
・主要な事業活動の前提となる事項(電気通信事業者)の内容
電気通信事業者(旧一般第二種電気通信事業者)、2002年9月取得、届出番号:A-13-04991
・許認可等の有効期間
届出についての有効期限の定めはありません。
・許認可等の取消解約事由
届出についての取消解約の定めはありません。
・継続に支障を来たす要因が発生していない旨及び重大な影響を及ぼす旨
届出の継続に支障を来たす要因の発生及び重大な影響を及ぼす事象はありません。
なお、届出事項に変更があった場合に変更の届出を行わないと罰則(3年以下の懲役若しくは200万円 以下の罰金または両方)が科されます。(電気通信事業法 第9条、第177条)
⑧ 特定の人物への依存について
代表取締役社長である清水亘は、会社経営の最高責任者として経営方針や事業戦略の決定をはじめ、当社グループの事業推進において重要な役割を果たしております。当社グループは、同氏に過度に依存しない経営体制を整備するため、取締役会における役員間の相互の情報共有や社外取締役、社外監査役の積極参加による経営組織の強化を図っております。しかしながら、何らかの理由により同氏が業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 人材の採用・育成について
当社グループは、持続的で長期的な事業発展のため、多様な専門技術に精通した人材の確保が重要であると認識しており、人材採用を積極的に実施しております。しかしながら、国内における少子高齢化に伴う労働人口の減少や産業構造の変化を背景に、必要な人材を継続的に確保するための環境は日々厳しさを増しております。同時に人材確保のための採用費及び人件費も高騰しております。今後の競争激化により、必要な人材の確保が計画通りに進まなかった場合や人件費が高騰し続けた場合、また在職している技術者の社外流出が大きく生じた場合、当社の事業展開、業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、様々な媒体、手法による人材の採用及び育成を積極的に行うことで、本リスクの低減に努めております。
⑩ 情報管理体制について
当社グループが提供するサービスは、顧客の有する個人情報や機密情報が登録されることがあります。重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、企業イメージの悪化、社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業展開、業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
このため当社グループではこれらの情報資産を保護するために個人情報保護方針、情報取扱規程を定め、この方針、規程に従って情報資産を適切に管理、保護を図っております。また、ISMS及びISMSクラウドセキュリティ認証取得によるマネジメントプロセスを導入するとともに、ファイアウォールや対策機器等のシステム的な対策を施し、多層的な情報セキュリティ対策強化を推進しております。
⑪ 知的財産権の侵害について
当社グループは、自社の事業活動が他社の知的財産権等を侵害していないかの確認を実施しております。また、第三者の有する知的財産権の侵害を防ぐ体制として、自社及び外部専門家への委託等による事前調査を行っております。
既存のサービスについても調査可能な範囲で第三者の知的財産権侵害の可能性の調査を行っており、当社グループが事業活動を行うプロセスにおいて使用しているシステムは第三者の知的財産権等を侵害するものではないと認識しております。しかしながら不測の事態、例えば外部に委託した調査の不備により第三者の知的財産権等の侵害が生じた場合、その紛争の解決のための費用又は損失が発生する可能性は否定できないものと認識しております。この場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、第三者の知的財産権等の侵害可能性については、専門家と連携を取り調査可能な範囲で対応を行うことで、本リスクの低減に努めております。
⑫ 訴訟リスクについて
当社グループが事業の継続・拡大を行っていく上で、製品販売先若しくは各種取引先との間で紛争等が生じ、これにより訴訟等が提起され、当社が想定外の損害賠償金を支払うような事態が生じる可能性は常に存在します。上記「⑪知的財産権の侵害について」に記載のとおり、当社は第三者の知的財産権の侵害についての確認を実施しており、また、製品の開発等においても法的規制・製品の安全性の確認を実施することで、第三者の権利を侵害しないよう努めておりますが、第三者からの訴訟の提起を受ける可能性はゼロではなく、訴訟の提起を受けた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑬ 自然災害等について
地震、台風、津波等の自然災害、火災、各種感染症の拡大等が発生した場合、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に大規模な自然災害が多発したような場合には、当社グループの営業活動が制限されたり、取引先において正常な事業運営が行えなくなるなど悪影響が生じ、正常な事業運営が行えない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、サービスを提供するための重要な事業基盤である情報資産が格納されているサーバを複数の拠点で分散配置、運用を行うことで、本リスクの低減に努めております。
⑭ 固定資産の減損損失について
当社グループが保有するのれんなどの固定資産において、経営環境の変化等で、その収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合などには、固定資産の減損会計の適用による減損損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑮ 事業投資に係るリスクについて
当連結会計年度に子会社化した株式会社ROCは、今後、当社グループの業績に大きく貢献するものと見込んでおりますが、市況及び事業環境の急変等により、予期せぬ状況変化や当初想定していた事業計画からの大幅な乖離が生じた場合、損失等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)親会社との関係について
本書提出日現在、当社の支配株主(親会社)であるアイテック阪急阪神株式会社は、当社株式の51.8%を所有しておりますが、アイテック阪急阪神株式会社は阪神電気鉄道株式会社が55.7%及び阪急阪神ホールディングス株式会社が14.2%を保有する阪神電気鉄道株式会社の子会社であり、阪神電気鉄道株式会社は阪急阪神ホールディングス株式会社の完全子会社(連結対象)であることから、上記3社はいずれも当社の親会社に該当します。
なお、これら親会社とは法令等(東京証券取引所の定める有価証券上場規程を含む)に基づく開示に必要な情報のみを事前報告事項とする旨の契約を結び、独立性・自立性を確保しております。
① 親会社における当社グループの位置付けについて
アイテック阪急阪神株式会社は、阪急阪神ホールディングス株式会社の連結子会社であり、情報通信業としてインターネット、医療システム、社会システム等の事業を展開しています。当社グループは、メッセージングプラットフォーム「Cuenote」を開発し、メール配信システムやSMS配信システム等をクラウドサービスとして展開しています。
現在、アイテック阪急阪神株式会社及び阪神電気鉄道株式会社を含む阪急阪神ホールディングス株式会社のグループ(以下、「親会社グループ」という。)において当社グループと同じ業務を行う企業はなく、当社グループと親会社グループ各社との間には事業の棲み分けがなされ、競合関係もありません。
② 取引関係について
当社は現在アイテック阪急阪神株式会社との取引として、主にデータセンターの転借取引やCuenoteの代理店販売の委託を行っています。これらの取引については、親会社グループ各社からの独立性確保の観点も踏まえ、第三者である他社と同等の条件により取引を行っています。
当社は、Cuenoteの代理店販売を除き、親会社グループとの取引削減を進める方針ですが、今後も継続する取引及び新たに取引を行う場合は、その取引の合理性及び条件の妥当性について事業上の必要性及び他社との取引条件等を比較し検証を行った上で、当社グループにとって不利益となる場合は条件の見直し、解約を親会社と交渉を行い、取締役会で承認を行うこととしています。
現在においての当社グループと同社との間の主要な取引については、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表等 注記事項(関連当事者情報)」に記載のとおりです。
また、当社グループは、非常勤取締役として事業運営に知見を有する斎田 誠氏を、非常勤監査役として宇仁菅 亮介氏を同社から招聘しておりますが、出向者の受入れ等その他の人的関係はありません。当社グループは同社の承認を必要とする取引や業務は存在せず、事業における制約もなく、当社グループの経営方針及び事業戦略等の重要事項の意思決定において、当社グループは同社からの独立性・自立性は保たれているものと考えております。
同社は、今後も中長期的に当社株式を保有する方針ですが、将来的に、同社をその傘下に置く阪急阪神ホールディングス株式会社におけるコア事業体制の見直し等による、事業戦略変更・基盤事業再編を受け、市場で当該株式の売却が行われた場合や売却の可能性が生じた場合には、当社株式の市場価格に影響を及ぼす可能性があります。さらに、市場での売却ではなく特定の相手先へ譲渡を行った場合には、当該譲渡先の保有株数や当社グループに対する方針によっては、当社グループの経営戦略等に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー (以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、当連結会計年度は連結財務諸表作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
そのほか、当社グループはメッセージングソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末の資産は、3,435,222千円となりました。主な内訳は、現金及び預金2,540,460千円、売掛金357,581千円、のれん108,163千円であります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、588,379千円となりました。主な内訳は、未払金68,758千円、未払費用189,446千円、未払法人税等89,430千円、前受金75,088千円、長期借入金50,040千円、買掛金48,201千円であります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、2,846,843千円となりました。主な内訳は、資本金273,853千円、資本剰余金191,351千円、利益剰余金2,466,188千円であります。
② 経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、経済活動の正常化が進みましたが、ロシア・ウクライナ情勢の長期化による資源価格の高騰、円安の進行、物価上昇など、依然として不透明な状況が続いております。
一方、2024年12月11日に内閣府・財務省が発表した法人企業景気予測調査(2024年10~12月期調査)によれば、今年度における国内の設備投資のスタンスを見ると、全産業における大企業の「省力化合理化」が重要度第2位の45.3%であり、うち非製造業では「情報化への対応」が重要度第2位の47.0%と強く意識されており、当社グループが属する情報通信業界では収益機会が続くことを物語っております。
当社グループにおいては2024年9月にSNSソリューションを提供する株式会社ROCを子会社化し、グループとしてメール・SMSに加えSNSプロモーション支援も可能となりました。
また、2024年10月及び12月に月間では81億通を配信、年間を通じては891億通の配信を記録しメッセージ配信サービスの過去最高配信数を更新しております。
このような状況の中、当社グループは引き続き「SaaS事業成長」「顧客価値向上」に向け、積極的に取組みを行いました。
当連結会計年度におきましては、次のような提供サービスの拡充を行っております。
・SMS配信サービス「Cuenote SMS」
2024年2月に利便性の向上を目的とした以下の機能追加を実施いたしました。
絞り込み配信機能の搭載:特定の条件でアドレス帳データを絞り込み、そのリストに対して配信することができる機能です。絞り込み条件は複数指定でき、「年齢」「都道府県」「生年月日」等の基本的な情報から「購入商品」「申込イベント」等の情報まで絞り込むことができます。これにより属性に応じた情報の出し分けが可能になります。
アドレス帳管理機能のアップデート:ファイルによる配信リストの差分更新機能を搭載いたしました。これまで、アドレス帳のレコードを追加・更新する際には、CSVファイルによる全レコードの再登録処理または操作画面からの1レコード単位での追加・更新処理が必要でしたが、 今回新たにファイルによる差分更新機能を搭載いたしました。
双方向SMSの送受信履歴ダウンロード機能の搭載:双方向SMSにおいて、送信相手からのSMSも含めたメッセージのやり取りをダウンロードすることができ、やり取りの履歴を長期間残しておきたい場合にご活用いただけます。
2024年6月にインバウンド向けコールシステム「OSORA」と連携を行っております。この連携により、「OSORA」を導入する企業は、コールセンターでの案内を音声のみでなくSMSを用いたテキストメッセージでも行えます。これにより、WEBサイトや申込みフォーム等、口頭での案内が難しい内容であっても受電者の電話番号宛に即時にSMSを送ることができ、オペレーターの負担軽減及びお客様の利便性向上を図っております。
2024年8月にオプションとして「他人接続判定機能」の追加、提供を開始し、電話番号の変更によりメッセージが本人以外に届くリスクの低減を図っております。
・Cuenote SMS for Salesforce
2024年7月に「Salesforce」と連携する「Cuenote SMS for Salesforce」の提供を開始し、Salesforceの管理画面からシームレスにSMSを送信することを可能にし、利用者の業務効率化を図っております。
・メルサポ及びデジサポ
2024年7月にコクー株式会社と提携しメール配信運用支援「メルサポ」及びデジタルマーケティングトータル支援「デジサポ」の提供を開始し、企業の課題に合わせて選べるメールマーケティング・デジタルマーケティング支援を行います。
・Cuenote SMS for kintone
2024年10月にサイボウズ株式会社の業務アプリ構築クラウドサービス「kintone(キントーン)」と連携する「Cuenote SMS for kintone」の提供を開始し、「kintone」の管理画面からSMSの個別配信・一斉配信および配信結果の確認を可能にし、利用者の業務効率化を図っております。
サービス提供種別の売上高の概況は以下のとおりであります。
・ストック型収益:Cuenote SaaSのサブスクリプション(サービス利用)売上並びにソフトウエア保守売上が含まれます。当連結会計年度は顧客個別の要望に応じるエンタープライズ向けプランの獲得、ショートメッセージ顧客数の増加及びGmailガイドライン変更に伴う需要増によりストック型収益は2,592,520千円、当連結会計年度末定期契約額は226,039千円となりました。
・スポット型収益:Cuenote SaaSの初期売上(初期利用登録、カスタマイズ、セキュリティ証明書などの取得代行)並びにソフトウエアライセンス売上(オンプレミス)が含まれます。当連結会計年度の売上高はSaaS及びオンプレミスの新規受注が堅調に推移したことから、76,950千円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は2,669,470千円、営業利益は637,593千円、経常利益は
637,471千円、親会社株主に帰属する当期純利益は469,681千円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、2,540,460千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は601,378千円となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益637,471千円、減価償却費82,014千円、株式報酬費用8,186千円、未払費用の増減額50,146千円等であり、支出の主な内訳は、売上債権の増減額△35,941千円、長期前払費用の増減額△21,043千円、法人税等の支払額△203,912千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は150,067千円となりました。支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出△63,687千円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得に伴う支出△57,397千円であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
該当事項はありません。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社の提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社の提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はメッセージングソリューション事業の単一セグメントであるため提供サービス別に記載しております。
|
サービスの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) (千円) |
前連結会計年度比(%) |
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Cuenoteシリーズ |
2,668,771 |
- |
|
その他 |
699 |
- |
|
合 計 |
2,669,470 |
- |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、
総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は2,669,470千円となりました。これは主にCuenote FCシリーズの受注が引き続き順調に推移したことによるものであります。なお、経営指標として重視しております、Cuenoteシリーズの期末月の定期契約額は226,039千円となりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度における売上原価は872,976千円となりました。その主な内訳としては、労務費、サーバ保守費用及びデータセンター関連費用であります。
この結果、売上総利益は1,796,494千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、1,158,901千円となりました。その主な内訳としては、人件費、広告施策に伴う広告宣伝費及びM&Aに係る支払手数料であります。
この結果、営業利益は637,593千円となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当連結会計年度における営業外収益は465千円となりました。これは銀行預金の受取利息及び業務受託料によるものであります。
また、当連結会計年度における営業外費用は587千円となりました。これは株式報酬費用消滅損等によるものであります。
この結果、経常利益は、637,471千円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度において、税金等調整前当期純利益は637,471千円となりました。また、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、469,681千円となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性に関する情報
資本の財源及び資金の流動性については、当社の資金需要の主なものは、運転資金、法人税等の支払等であり、その資金の源泉といたしましては、営業活動によるキャッシュ・フロー等、自己資金により、必要とする資金を調達しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用されている重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、主な経営指標として売上高、営業利益、営業利益率にあわせ期末の定期契約額(月次経常収益)とメールサービスの解約率を重視しております。各指標の推移は以下のとおりであり、持続的な成長と企業価値の向上に向け順調に推移しているものと認識しております。今後も新規契約の獲得や解約抑制により期末定期契約額を積み上げることで売上や営業利益の拡大に努めてまいります。
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当連結会計年度 |
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売上高 |
2,669,470千円 |
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営業利益 |
637,593千円 |
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営業利益率 |
23.9% |
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期末定期契約額(注)1 |
226,039千円 |
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メールサービス解約率(注)2 |
0.41% |
(注)1.期末月の定期契約売上(期間利用を定めた契約に基づく収益:月次経常収益)となります。
2.メールサービス解約率は、メールサービスの金額基準の月次解約率の該当期間の平均値(小数点第3位を四捨五入)となります。
なお、「Cuenote SMS」「Cuenote Survey」「安否確認」は、含めておりません。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針
当社グループは「価値の高い情報サービスの創造と提供を通して社会に貢献し、常に期待される企業を目指す」という企業理念のもと「SaaS事業の成長」「顧客価値向上」を通じ、事業を拡大してまいりました。
今後も持続的に成長するためには「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の課題に対し、事業環境の変化を捉えつつ最善の経営方針を立案することが必要であると認識しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。