当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは「映像から未来をつくる」というビジョンを掲げ、家から街まであらゆるビジネスシーンの映像をデータ化することで、人々の意思決定を支援するクラウド録画型映像プラットフォーム「Safie(セーフィー)」を開発・提供しております。「Safie」は高画質・安価・安全で、誰でも簡単にスマートフォンやパソコンで使える防犯カメラサービスであり、優位性の高い製品・サービスやアプリケーション、ソリューションが開発・提供されることで、小売・飲食・サービス・建設・物流・製造・インフラ・公共・医療などの幅広い業界の「現場DX」を支援しています。
加えて、映像、クラウド、AI技術を駆使し、またAPIを通じて様々な開発パートナーがデータ連携をできるオープンなプラットフォームを構築することで、一人一人の日々の意思決定を迅速かつ効果的に行える世界の実現を目指してまいります。
(2)当社グループの強み
① 商品の優位性とそれを支える技術力
「Safie」は従来の防犯カメラサービス(注)に比べ、高画質、高セキュリティで低価格なサービスとして、多様な用途で、様々な業界の顧客に活用いただいております。
このサービスを支えるのは、ユーザー視点を考慮したUI/UXとそれを支える技術力です。ウェブサービス・アプリケーションのエンジニアのみならず、膨大なデータを効率的かつ安全に処理するサーバーエンジニア、様々なデバイスを「Safie」とつなげる組み込みソフトを開発するデバイスエンジニア、AIを用いた画像解析を開発する役割や他社のAIソリューションを「Safie」につなげる役割を担うAIエンジニアと多様な異才が一体となってサービスを開発・提供しております。
創業以来、膨大な映像データをクラウドに安定的に保存し、効率的に配信し、APIを活用して他社との連携を構築してきた技術力と独自の仕組みが競争力の源泉であり、継続的なサービス品質・競争力の向上に向けて、新技術の開発や製品・サービスの改善を追求し続けております。
(注)アナログデータを出力するアナログカメラや、設置場所に録画装置を必要とするネットワークカメラを用いた防犯カメラサービス。
② あらゆる業界の顧客基盤
当社グループのサービスはさまざまな業界の大手企業から中小企業で活用されており、従来の「防犯」用途だけではなく、現場運営の生産性向上を目指した業務改善や売上向上を目指したマーケティング施策に役立てられています。
例えば、飲食チェーン企業においては、各店舗に設置したカメラを本社で一元管理し、複数の店舗映像を同時に確認・比較することで、接客オペレーションの実態を把握し、改善に当社グループのサービスを活かしています。また、建設会社やハウスメーカーでは、本社のベテラン社員が、全国の施工現場に設置されたカメラを使って、現場の状況をリアルタイムで確認し、指示を出すことで、移動時間や作業時間の短縮、そして施工品質の維持を実現しています。
当社グループのサービスは小売・飲食・サービス・建設・物流・製造・インフラ・公共・医療などのさまざまな業界での活用が見込まれていますが、各業界が抱える課題は異なります。そこで当社グループとしては、業界ごとの課題に対する理解を深め、その課題を解決するための製品・サービスを提供することで、さまざまな業界の「現場DX」を推進し、事業の拡大を進めています。
③ プラットフォームの拡張性と豊富な製品・サービスラインナップ
当社グループが提供するプラットフォーム上には既に約30万台のクラウドカメラから送られる膨大なデータが集約され、簡単かつセキュアにデータ連携やAI活用が可能となっております。顧客の膨大な映像データは当社グループが契約するクラウドサービス上で管理されておりますが、当社グループの利用規約において録画映像の知的財産権はそれぞれの顧客に帰属し、当社グループはこの映像を閲覧することはできない仕組みになっており、顧客の映像データは安全に管理されております。ただし、顧客からの個別の同意のもと、適切な認証プロセスを経た上で、当社グループや開発パートナーに映像を共有いただくことで、様々な新サービスの開発検討に活かすことがあります。またAPIを通じて開発パートナーが「Safie」サービスとデータ連携を行うためのアプリケーションの開発や連携を行うことや、「Safie」の組み込みソフトをデバイスメーカー等に提供することで多様な他社機器と連携することが可能です。また、映像データをAIで解析したソリューションを生み出すことが容易にしやすくなり、クラウドとAPIやAIを活用したプラットフォーム基盤の構築が進んでいます。
当社グループは創業以来、あらゆる業界の異なるニーズに応えるため、顧客からのフィードバックを活かしながら、デバイスおよびソリューションラインナップを拡充し続けてきました。主に建設業界で活用されているウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket」シリーズは、現場に行かずとも遠隔から現場監督業務を実現したいというゼネコン各社の要望に応え開発・提供が開始されました。
また、2022年9月に提供開始した「Safie One(セーフィー ワン)」、2024年3月に提供開始した「Safie GO PTZ AI(セーフィー ゴー ピーティーゼット エーアイ)」のようにエッジAIを搭載しているカメラは、単純な防犯カメラとしてのサービスではなく「かしこくなるカメラ」として後から追加機能を付加することができ、様々な社会課題を解決するためのソリューションへ進化させていくことが可能となります。
当社グループのサービスを導入済みの顧客からはそのサービスの利便性と拡張性を高く評価されております。数店舗の導入からの全国店舗への導入拡大や、防犯用途で導入されたのちに、マーケティング用途やオペレーション改善を目的とした追加導入など、既存顧客からの多様なリピートオーダーが創出されております。
④ 販売力と強固なデリバリー体制
当社グループでは、展示会やwebサイトを活用したデジタルマーケティング等を通じて流入した企業への営業を中心とする直販営業網と、販売パートナー各社を通じた拡販が可能な営業網を有しております。双方の商流を活用することでクラウドモニタリング・録画サービス市場における稼働台数のシェアNo.1を獲得しています。
直販営業網では、営業組織の強化を進め各業界の大手顧客とのリレーションを築き取引を拡大させてきたことで、2022年以降は毎年、30%以上の成長率を誇っています。
販売パートナーとしてはNTTグループ、Canonグループ、SECOMグループを筆頭に、全国数千人規模の営業員や顧客ネットワークをもつ大企業の強みを活用した効率的な営業網を構築しております。販売パートナーと密に連携し、販売パートナーの事業成長にもコミットすることで当社グループの安定成長も実現しています。また、当社グループが直販営業で培った顧客セグメントごとの販売ノウハウを販売パートナーに共有をしたり、販売パートナーのブランド力を活かして販売パートナー独自の名称でサービス展開をしたり、販売パートナー各社の商材ともAPIで連携して独自商材をつくるなど、お互いの強みを活かして補完し合う協業を行っております。
販売パートナーとの収益モデルは、当社グループから販売パートナーへカメラやクラウドサービスを販売し、販売パートナーがそれぞれの顧客へ再販するモデルとなっており、当連結会計年度の当社グループ売上高における販売パートナーへの売上高割合は55%となっております。
また、大手企業や中小企業からの多様なニーズに応えるためのデリバリー体制も強化しています。当社グループでのカメラの導入に伴う設置工事件数は年々増加しておりますが、大規模な大型案件の受注にも耐えられる体制を整えております。さらに、当社グループのセーフィーベンチャーズ株式会社からの出資企業をはじめとするスタートアップ企業との協業により、クラウドカメラ以外のデバイスやサービスまで、当社グループが提供可能なサービスラインナップを拡充し、顧客が有する個別のカスタマイズニーズにも対応可能なシステムインテグレーション機能も強化しています。
⑤ 高い安定性を誇る財務・収益モデル
当社グループの中核サービスであるクラウド録画サービス「Safie」の課金モデルは、継続収入が見込めるリカーリング型の収益モデルとなっておりますが、このサービスの起点となるカメラは顧客に販売されるため、当社グループの売上高の構成は、リカーリング収益のみならず、スポット収益も伴います。スポット収益にはカメラ等の機器販売や設置工事費などが含まれ、リカーリング収益には、クラウド録画サービス、画像解析サービス、一部のカメラのレンタルサービスやLTE通信費などが含まれております。
カメラ1台当たりの収益構造として、導入時にスポット収益が発生し、その後毎月クラウド録画サービスや画像解析サービスなどのリカーリング収益が発生するため、カメラが継続利用されると最終的にはリカーリング収益のほうがスポット収益よりも大きくなる構造になっております。
当社グループはリカーリング収益をより重視しており、その達成状況を判断するための経営上の指標はARR(注1)とし、2023年12月末は9,370百万円、2024年12月末は11,937百万円となっております。また、ARRに関連する指標として、MRR(注2)及び課金カメラ台数(注3)を注視しております。課金カメラ台数は2023年12月末時点で23.4万台、2024年12月末時点で29.3万台と増加しております。
また当社グループの顧客からは、追加のカメラ導入や画像解析サービスが発生しており、2024年12月期において当社グループの直販NRR(注4)は111.2%、販売パートナーNRR(注4)は125.9%、全社平均月次解約率(注5)は0.9%になっております。
(注)1.ARR:Annual Recurring Revenueの略称。該当月のMRRを12倍して算出。
2.MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。MRRは対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分の料金の合計額(販売代理店経由の売上含む)。
3.課金カメラ台数:各四半期に販売したカメラ台数ではなく、各四半期末時点で稼働・課金しているカメラ台数。
4.NRR:Net Revenue Retentionの略称。直販NRRは、「2023年12月末時点における直販課金顧客から生じる2024年12月末時点における直販MRR」を「2023年12月末時点の直販MRR」で除して算出(販売パートナーからのMRRは含まない)。販売パートナーNRRは「2023年12月末時点における販売パートナーから生じる2024年12月末時点におけるMRR」を「2023年12月末時点の販売パートナーから生じるMRR」で除して算出。
5.平均月次解約率:前月末における課金カメラ台数に占める、当月中に解約に伴い減少した月額課金台数の割合の過去12ヶ月平均値
⑥ 企業文化
当社グループは「映像から未来をつくる」というビジョンを掲げ、それを実現するため、7つのSafie cultureを行動指針として定義しております。このcultureに共感する社員が集まり、個々人が高い自律性を持ちながらも強い一体感を持つ組織を実現しております。
7つのculture
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中長期的に安定して売上収益を拡大させることが重要であると考えております。そのため、達成状況を判断するための経営上の指標としてARRを重視しており、2023年12月末は9,370百万円、2024年12月末は11,937百万円となっております。また、ARRに関連する指標として、MRR及び課金カメラ台数を増やしていくことが重要であると考えております。
(4)経営環境
現在、日本が抱える少子高齢化・労働人口減少の問題は地方でも都市部でも顕在化しており、2040年には働き手が現在の8割になるという「8掛け社会」が到来する(注1)と推定され、人々の生活に多大なる影響を及ぼすと考えられています。特に現場を持つ業界では顕著であり、建設業界では必要な労働力が22.0%、小売業界の販売職では24.8%不足(注2)すると予測されています。
このような労働力不足に備え、デジタル庁は業務の生産性を高め技術革新を促進することを目的に、デジタル技術の活用・業務効率化を妨げる「アナログ規制」を見直す方針を公表、規制の緩和・撤廃が進んでおり、AIやIoTを含んだデジタル技術の活用が促進されています。また、このような現場業務を機械やロボットで代替する動きが広がり、省人化や自動化が進むにあたり、クラウドカメラの活用や映像データの解析・分析によるデータ利活用が広がっています。
さらに、少子高齢化・労働人口減少の社会課題を解決するため、生成AIをはじめとするAI技術の社会実装にも期待が集まっています。例えば、経済産業省はデジタル社会の実現を目指し、半導体やAI技術への積極的な政策資源の投資を進めています(注3)。北海道や熊本県に設立された半導体工場に対し1兆円を超える支援を行っており、また、AI向けの計算資源を国内に整備し提供を行う事業者への支援や、生成AIの基盤モデルの開発者に対する計算資源の提供支援を行っています。
そのような環境下で加えて、当社グループが特に注力する業界である建築・住宅・インフラ業では、2024年6月に厚生労働省が「目視規制」について、デジタルツールを活用した「遠隔巡視」を可能とする旨の通知を行いました(注4)。当社グループが提供する屋外向けクラウドカメラやウェアラブルクラウドカメラを活用することで、事業者の負担を軽減し、かつ安全性を確保する「遠隔巡視」の広がりが期待されています。また、小売・サービス業においては、これまで人による対面接客を基本としてきた中、クラウドカメラやAIソリューションを活用することで、店舗運営の効率化や生産性向上を可能にし、データを基にした店舗マーケティング施策の実施によるデータドリブンな運営が進みます。これにより、利用者にとってもより安心で利便性の高い省人店舗を提供し、満足度向上に寄与することができます。
(注)1.出典元:リクルートワークス研究所:「未来予測2040 労働供給制約社会がやってくる」
2.労働供給不足率=2040年時点での労働供給÷2040年時点での労働需要
3.出典元:経済産業省:「デジタル社会の実現に向けて」(2024年1月)
4.出典元:建設業労働災害防止協会:「令和5年度 ICTを活用した労働災害防止対策のあり方に関する検討委員会報告書」
(5)中長期的な会社の経営戦略
① ユーザー基盤のさらなる拡大
当社グループは、2024年12月末における課金カメラ台数を29.3万台とし、創業以来、順調に売上を拡大し続けております。しかしながら、日本国内に存在するカメラ台数だけで見ても、「Safie」の導入率は未だ低水準であり、潤沢な開拓余地が残されていると考えております。加えて、グローバル及び他の映像デバイスへの広がりを考えると「Safie」の接続デバイス数及び課金カメラ台数の増加余地は膨大に存在しております。
近年の防犯や安心・安全ニーズの高まりを受け、ネットワークカメラの設置需要も拡大してまいりました。日本国内における既設(オンプレミス)カメラ市場は2028年には900万台程度の稼働台数(注1)と試算され、現時点で弊社にて見積もれるネットワークカメラの国内市場は約4,000万台、グローバルでは2028年には約5億台程度になると推計(注2)しており、今後もさらに成長していくと考えております。またドライブレコーダーやドアホン、ロボットなど様々な映像デバイスに「Safie」を搭載し、また接続することができるため、潜在的な市場はカメラ以外にも見込まれております。
「Safie」はあらゆる業界で活用されていますが、特に、小売・サービス業と建設業での利用が進んでいます。建設業では、2024年4月から適用された「時間外労働の上限規制」を受け生産性向上が喫緊の課題となっており、屋外向けクラウドカメラ「Safie GO」シリーズとウェアラブルカメラ「Safie Pocket」シリーズの導入が拡大しております。これらを活用することで、現場全体の進捗管理や現場巡回管理を遠隔から実施でき、現場業務のDXを進めることができます。加えて、現場の出退勤管理には、顔認証クラウド入退室管理システム「Safie Entrance」シリーズ、安全管理には重機やクレーンとクラウドカメラを組み合わせたサービス、さらにドローンカメラの映像を「Safie Viewer」で一元管理できる映像伝送ルータ「Safie Connect」など、新しいソリューションを次々と展開し、それらを活用した現場DXを加速させることができます。
また、小売業では、労働力不足に加えて、効率化や生産性向上を可能とするデータドリブンな店舗運営を目指すなかで、万引き抑止や需要予測に基づくロス削減、生活者の購買体験の価値向上など多岐にわたる課題が浮上しています。2022年9月には当社グループ初となるエッジAI搭載カメラ「Safie One」を発売しました。その「Safie One」内にアプリケーション「AI-App」をインストールすることで、内包される各機能から来店人数や混雑具合を可視化し、オペレーション改善やマーケティング施策に活かすことが可能となります。「Safie One」は「AI-App」をはじめとし、ユーザーが使用したいアプリケーションをインストール可能な設計になっており、ユーザーのニーズに即した活用が可能になります。
小売業以外にも、倉庫や工場現場のIoT化が進む物流・製造業、安心安全なスマートシティ構築のための公共やインフラ業、現場の見守りや安全管理が必要となっている介護・医療業界など新しい業界での当社グループのサービス導入が広がっております。
国内の販売戦略は、直販営業による顧客ニーズを把握し、それに基づいた販売手法を確立することから始めます。その後、この手法を業界ごとの販売パートナーと協議して洗練させ、展開することで、当社グループ単独で行うよりも、はるかに迅速かつ多くのお客様にアプローチすることが可能になります。また、顧客ニーズを直接把握することで、製品開発へのフィードバックを効率的に行い、より使いやすいサービスに継続的にアップデートを行うことで、より長くお客様にご利用いただけるように努めております。今後は、対象となる業界をさらに広げ、さまざまな現場に合わせたソリューションやアプリケーションを増やしていき、それを販売パートナーへも展開することで成長を加速させていきます。
(注)1.日本国内における監視/モニタリングカメラ稼働台数は、矢野経済研究所「2024年度版監視カメラ市場予測と次世代戦略」において監視/モニタリングカメラの使用年数を5~7年と仮定しつつ、取材で得た情報を基に算出された矢野経済研究所による推計値。
2.グローバル総稼働台数は、国内の総稼働台数に係る矢野経済研究所の算出方法を参考に、その年を含む過去5年間の矢野経済研究所の推定による出荷台数の合計値として算出した当社グループ試算値。
② クラウド録画型映像プラットフォームとしての価値向上
当社グループは、拡大したカメラユーザー基盤からクラウドに保存される膨大な映像データを活用し、さらに便利なサービスをお客様に提供する好循環を生み出しています。クラウドに保存される映像データは、映像データの知的財産権を有する顧客からの適切な承諾を得た上で、AIによる画像解析の貴重な教師データとなり、このデータを活用することで、新しい画像解析サービスや画像解析の精度向上が可能です。結果、商用利用可能なレベルの精度を持つAI画像解析サービスをエンドユーザーに提供できるようになります。
「Safie」に、継続的に新しい画像解析機能などが追加され、使いやすさが増すことで、利用者数が増え、それに伴って映像データが集まる好循環を生み出しております。
お客様は「かしこくなるカメラ」として追加機能を簡単に利用でき、開発者・ソリューションサプライヤーはOpen APIを通じて簡単にデータにアクセスできるようになります。これにより、当社グループは客単価の増加や解約率の低下を見込んでいます。このエコシステムがネットワーク効果を生み、ユーザーの拡大が多様なソリューションの開発・提供につながり、さらに多くのユーザーを引き寄せる好循環をもたらし、「Safie」の成長を支える要因となります。
さらに、ネットワークカメラにとどまらず、マルチデバイスのデータを取得することも可能です。映像に加えて、音声や自然言語の時系列データなど、さまざまな種類のデータを解析する基盤として活用できます。今後、IoTやAI技術の進展とともに、「Safie」が活用される機会はますます増えていくと考えております。
(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループの対処すべき主な課題は以下のとおりであります。
① 優秀な人材の採用と育成
当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材を多数採用し、営業体制や開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えております。特に経営戦略の実現の中で、業界ごとの顧客ニーズを正確に把握し、業界別のソリューションを開発していくことが重要と考えており、顧客ニーズを適切に把握できる営業や開発の人員を強化していくことが必要であります。当社グループのミッションや事業内容に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を進めるとともに、高い意欲を持って働ける環境や仕組みの構築に取り組んでまいります。
② 情報管理体制の継続的な強化
当社グループは多くの個人情報を扱っており、情報管理体制を継続的に強化していくことが重要であると考えております。経営方針に従って「映像から未来をつくる」ため、当社グループは膨大な顧客の映像データを管理することになり、プラットフォーマーとしての健全性を強く求められると認識しております。当社グループで取り扱う映像データは個人が特定できる鮮明な画像であることが多く、原則として個人情報に該当するため、現在も個人情報保護に係る施策には万全の注意を払っておりますが、今後も社外有識者との会議を含め、社内体制や管理方法の強化・整備を行ってまいります。
③ 技術力の強化と追加サービスの展開
大量の映像データの処理及び解析に係る技術力は当社グループの競争力の源泉であり、事業の成長を支える基盤でもあることから、継続的な改善、強化が重要であると考えております。優秀な技術者の採用や先端技術への投資・モニタリング等を通じて、技術力の向上に取り組んでまいります。
また映像プラットフォームとしての価値向上のために、自社サービスの追加開発や、他社のソリューションが提供しやすい仕組みを継続的に開発し続けてまいります。
④ 利益及びキャッシュ・フローの創出(収益化)
当社グループは、事業拡大を目指し、開発投資や広告宣伝活動等に積極的に投資を進めており、2024年12月期は、営業損失を計上しております。
当社グループの収益の中心は、サブスクリプション方式でユーザーに提供しており、継続して利用されることでリカーリング収益が積みあがるストック型の収益モデルになります。一方で開発費用やユーザーの獲得費用が先行して計上される特徴があり、中長期的なキャッシュ・フロー、利益の最大化のために短期的には赤字が先行することが一般的です。当社グループでは事業の拡大に伴い、ストック収益が順調に積みあがることで、先行投資として計上される開発費用やユーザーの獲得費用が売上高に占める割合は低下し、将来的には持続的にキャッシュ・フロー、利益を創出できる体質に改善すると見込んでおります。
当社グループは、あらゆる産業の現場DXを推進しております。特にカメラ映像及びAIによる分析により、現場に移動しなくても現場の状況を可視化して把握できる環境をつくることで、ユーザーの皆様の持続可能な事業運営に貢献できると考えております。
また、当社自身が持続可能な組織であるために、一人ひとりのメンバーが自らの能力を最大限に発揮できるような組織づくりを促進してまいりました。今後も「映像から未来をつくる」というビジョンとともに、持続可能な社会の実現に向けて、各種取り組みを推進してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティに関する基本方針及びリスク・機会認識に基づく対応方針・施策等について当社の取締役会にて監督しております。サステナビリティへの対応方針・施策等は、各担当部門が主体となって推進し、これらの進捗状況等を定期的に取締役会に報告します。特にサステナビリティ推進のための専門部署、サステナビリティ推進部を設置し、サステナビリティ視点から事業に関する各種の経営判断に関与することで、マテリアリティに沿って当社の事業推進をサポートしております。
また、私たちの映像プラットフォームの活用場面や取り扱うデータが飛躍的に増大する中で、セーフィーのプラットフォームを皆様に安心して利用いただき、目指す姿である安心・安全な社会作りへの貢献を実現するためには、データの適切な取扱いが必要不可欠であると考えています。映像データが不適切に取り扱われるようなことがあれば、個人のプライバシーへの影響はもとより、監視社会への懸念、差別や偏見の助長、ひいては民主主義などの私たちの社会の根幹を成す人類の根本的な価値観への脅威にもつながりかねません。このような認識のもと、データ領域の専門家や経営者、パートナーで構成する社外の有識者委員と、当社経営陣とでデータガバナンスに関する有識者会議やガバナンス委員会を開催し、有識者委員からの評価及び助言等を受けております。またその活動の中で、私たちの目指す安心・安全な社会作りの実現に向けて、遵守すべき行動原則として「セーフィー データ憲章」を定めました。今後、データの適切な取扱いを確保するためには、プラットフォームを活用いただくお客様等の皆様にも、考え方を共有していただくことが不可欠です。そのため、私たちは、ステークホルダーである皆様と双方向でのコミュニケーションに努め、協力してデータガバナンスの実現を目指します。
(2)戦略
① 気候変動への取り組み
気候変動は、持続可能な社会を実現する上で最も差し迫った課題の1つであり、気候パターンの変化や異常気象により我々の社会に大きな影響を及ぼすリスクがあります。当社グループは気候変動対策として、エネルギー使用量と温室効果ガス排出量の測定・開示・削減に取り組むとともに、「Safie PRO」「Safie Go/Pocket」をはじめとする各種サービスの提供により、遠隔での現場管理のサポートをすることで、ユーザーの皆様の移動の削減の一翼を担い、社会全体の環境負荷低減に貢献していきたいと考えております。
また近年、地震や津波、台風による土砂災害や豪雨といった多くの自然災害が発生し、各地に甚大な被害をもたらしています。こうした自然災害を受け、セーフィーは映像のインフラとして当社製品やサービスを通じて皆様のお役に立ちたいという想いから、被災地の一日も早い復旧を願い、社会貢献活動の一環として災害支援に取り組んでいます。具体的には、災害支援として、遠隔からの被災現場の状況把握や、よりスピーディーな意思決定を可能にするため、被災地の自治体等に対して、クラウド録画カメラを含む映像資機材およびサービスの無償提供を行っております。また、災害発生を想定した平時からの準備とし、一部の自治体と「災害時における映像資機材等の供給支援に関する協定」を締結しております。これからもセーフィーは、自治体やパートナー企業の皆様と連携し、「映像から未来をつくる」というビジョンのもと、映像データを活用した社会課題の解決に積極的に取り組んでまいります。
② 人的資本への取り組み
当社グループでは、「異才が集い、常に挑み、顧客とともに未来をつくる」という組織ビジョンを定め、様々な施策や制度策定をしております。
a.異才が集う
顧客の様々な課題に対応できるように多様なバックグラウンドの「異才」を性別、年齢、国籍を問わず集めることが必要です。そのために、顧客の課題を理解し、解決できるように、対象業界の知見をもつ様々な経歴の方を集め、知見を顧客提案に活用できるように取り組んでおります。
また当社グループでは、社内で意思決定に関わる従業員の多様性向上を目指し、その中でも特に年代とジェンダーに関わるギャップの解消を重要と位置づけております。現在は女性管理職比率が13.3%であり、この比率を40%まで高めることを目標に、若手・女性のロールモデル候補を抜擢し、管理職を育成すると同時に、母集団を増加させるための施策を実行しております。
さらに、今後の海外展開時に、進出先に応じて各国の人材を登用、育成していく方針を持ち、現時点でベトナム・タイにて採用をしております。
b.常に挑む
集まった異才が、その力を存分に発揮するために、心理的安全性が担保された状態と、新しいことにチャレンジできる環境を整備しております。
(a)心理的安全性の担保(働きやすさ)
当社グループでは、従業員一人ひとりが健康かつ生産性高く働き、成長と働く幸せを実感できる状態を体現できるよう各種制度を整えております。継続的に働きたいと思える環境づくりのため、所属部署を超えた従業員同士のつながりも重視し部署や職域を超えたコミュニケーションを活発にし、風通しの良い環境の醸成を進めております。具体的には、入社時に一人ひとりの従業員に気軽に相談できる先輩社員をアサインする「メンター制度」、所属する部門外の従業員とのランチ費用を補助する「異才ランチ制度」や、趣味などの課外活動をサポートする「部活制度」により、業務外でのつながりを増やしております。また、ライフスタイルの変化に合わせた働き方の変更も可能な人事制度が充実しており、自ら手を上げて他部署での業務にチャレンジができる「FA制度」や、家族や自身の体調に応じて特別な対応が必要な場合の「スーパーフレックス勤務制度」、産休育休明け職場復帰サポートのためのメンター制度を設けております。
(b)チャレンジの支援(働きがい)
当社グループでは、従業員が個々の強みを活かしながら成長することが、当社グループの長期的な成長に繋がると考えております。特に社内研修は、従業員が講師を務める各種のカメラ研修やネットワーク、倉庫業務研修などの業務に密接に関わるものから、ロジカルシンキング研修、管理職研修、1on1研修、知財セミナーなど多様な内製研修が充実しております。特に、2023年から開始した新卒採用者を含む、若手の育成・抜擢にも注力しております。また、従業員同士が日常的に1on1を実施し、相互にフィードバックし合う風土を従業員全員で育んでおります。
2023年には現在の業績状況と従業員規模に合わせて、基幹人事制度を刷新し、個々の成長により、報酬が増加する仕組みをより洗練させました。また、管理職以上に対する株式報酬(譲渡制限株式)の付与により、管理職と株主が同じ目線で経営に携わるようにしております。
c.顧客とともに未来をつくる
顧客やパートナーとともに、既存事業の深化と新規事業の探索を重ねて、映像から未来をつくることを目指しております。
(a)既存事業の深化
当社事業は競合優位性のあるプロダクトと強固な顧客基盤で成長し、既存顧客からの高いNRRを維持しております。2021年に上場後、先行投資として従業員数を急速に増加させた結果、生産性の指標である「従業員一人あたりの粗利」は停滞しておりましたが、2024年は大きく向上し、第4四半期末時点は前年比+18%となる17.3百万円になっております。今後も全社一丸となり、顧客における継続的なサービスの利用と追加需要を創出するような新商品・新サービスの開発を強化すると同時に、営業体制を効率化していきます。
(b)新規事業の探索
Safieは膨大な映像データが集まるプラットフォームであり、当社プラットフォームに他社のサービスを組み込んだり、API連携することで、様々な新しい分析サービスや事業を創出することが可能であり、すでに様々なサービスが実装されております。2022年に、セーフィーベンチャーズ株式会社を設立し、Safieプラットフォームと連携可能な様々なスタートアップ企業への出資を行うなど、他社連携による新規の事業機会が加速しており、出資先企業への出向による協業の促進と人材の育成を行っております。
(3)リスク管理
当社グループでは、事業の成長とともに組織としても急成長してまいりました。組織化が進み、チームが形成され業務が細分化していく中で、業務目的が不明瞭になることによるモチベーションの低下やチーム間調整コスト発生による生産性の低下がリスクとして挙げられます。
当社グループは、上記リスクに対する対応として、Safie Cultureの浸透施策や、快適なオフィス環境の整備、その他エンゲージメント施策などを実施しております。さらに、従業員サーベイなどを活用してモニタリングする体制の整備、また、内部通報窓口を設置し、リスクの早期発見・対処に努めております。
また、当社グループのサービスは社会のインフラであるという認識のもと、ユーザーの皆様にいつでも安心してご利用いただくためにサービスの安定稼働に努めております。
ユーザーの皆様の重要な映像データを適切に管理、保護するため、情報セキュリティ基本方針を定めるとともに、情報セキュリティ委員会を設置し、情報資産の管理やマネジメントを行なっています。またインシデント発生時も同組織で連携を取り、迅速な対応ができる体制を構築しています。
(4)指標及び目標
当社グループの組織ビジョン「異才が集い、常に挑み、顧客とともに未来をつくる」を実現するために、以下5つの指標及び目標を定義しています。
ア)女性管理職比率は2024年12月末時点で13.3%であり、この比率を2030年までに40%まで高めることを目標にしております。
イ)男性の育休取得率は2024年において76.9%であり、来年以降も50%以上を維持していきます。
ウ)心理的安全性に関する従業員サーベイの回答平均値は、10点満点中7.7点と、調査会社による他社平均値(7.0点)よりも高い状態になっており、同水準以上を維持していくことを目標としております。
エ)同様にチャレンジに関する従業員サーベイの回答平均値結果は、10点満点中7.7点と、調査会社による他社平均値(6.9点)よりも高い状態になっており、こちらも同水準以上を維持していくことを目標としております。
オ)当社の従業員一人当たり粗利額は2024年第4四半期末時点で、17.3百万円となっており、毎年改善していくことを目指します。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社グループの株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
また、以下の各事項において、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化したときに当社グループの経営成績等の状況に与える影響について合理的に予見することが困難な場合には、その可能性の程度や時期・影響についての記述は行っておりません。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。また将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
<当社グループ事業の前提となる外部環境に関するリスク>
(1)インターネットの利用環境について
当社グループはインターネット関連事業を主たる事業対象としているため、インターネットの利用環境は当社グループ事業の基本的な条件であります。インターネットの利用に関する新たな規制の導入や弊害の発生、その他予期せざる要因により、今後、インターネットの利用環境に大きな変化が生じた場合、当社グループの業績に広範囲にわたり影響を及ぼす可能性があります。
(2)クラウド事業について
クラウドとは、アプリケーション機能をインターネット経由で提供するサービスで、ソフトウエア販売における新しい方法・概念として認知され、浸透が進みつつあります。その一方で、今後クラウドを扱う企業レベルの競争も激化する可能性があります。このような事業環境のもとで、他社においてより画期的なコンセプトをもった商品・サービスが出現した場合、又はクラウド自体の需要が当社グループの予測を大きく下回る場合には、当社グループの業績に広範囲にわたり影響を及ぼす可能性があります。
<ビジネスモデル等に関するリスク>
(3)競合について
当社グループは、創業以来、日々進化するテクノロジーによって安全にかつ効率的な映像の大量保存と配信及び分析を行う独自のシステムの開発・運営をし続けてきたことが競争力の源泉となっております。またすでに市場シェアNo.1となっており、それを支える販売網を構築しており、新規の参入者を含む競合に対抗できる事業環境を構築しております。しかしながら、既存事業者との競争の激化や、新たな参入事業者が当社グループのシステムに類似する仕組みを構築する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)先行投資と事業の拡大に伴うリスクについて
当社グループは「Safie」録画サービスのオプションや、ソリューションとして様々な画像解析サービスや機器連携サービス及び他社との連携ソリューションを開発しております。これにより新たな顧客業界の開拓と将来の収益拡大を狙っておりますが、これらの開発及び収益化はまだ初期段階にあります。エンジニアを積極的に採用し開発にあたっておりますが、現時点では収益貢献は少なく、先行投資の位置づけとなっております。今後も、収益化が上手く進まない場合や、当該分野に関係する法規制に新たに服することになる場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)研究開発活動と広告宣伝活動等の先行投資について
当社グループの手掛ける事業では、先行者メリットを活かしつつ売上高拡大を目指すため、新機能の拡充や新機種対応などの研究開発投資や広告宣伝活動や営業体制の強化等において一定の先行投資が必要となります。しかしながら、その結果として、設立以来営業損失を計上しているほか、累積損失を抱えております。また、今後の研究開発投資及び広告宣伝活動について、その費用対効果を見ながら慎重に行っていく方針ではありますが、先行投資を縮小する場合には、新規受注や新規ユーザーの獲得に影響が出る可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)特定の販売先への依存について
当社グループは、販売パートナーとともに当社グループサービスの拡大を進めており、主要な販売パートナーとの資本業務提携を含めて緊密な関係を構築しております。
主要取引先とは良好な関係を築いており、現時点において取引関係等に支障を来たす事象は生じておらず、当社グループとしては今後も継続的な取引が維持されるものと見込んでおります。しかしながら、販売パートナーにおける経営方針、販売方針・販売施策の変更及び取引条件の変更が生ずる場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループといたしましては、今後も主要取引先との取引拡大に加え、他社への売上高の拡大にも努めることで、当該特定取引先への依存度低下を図り、リスク低減に努める方針です。
(7)技術革新への対応について
当社グループは新技術の積極的な投入を行い、適時に独自のサービスを構築していく方針ではありますが、技術革新等への対応が遅れた場合や、予想外に開発費等の費用が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
<コンプライアンスに関連するリスク>
(8)知的財産権の侵害等について
当社グループで開発・設計しているソフトウエアやプログラムは、当社グループが独自に開発・設計したものであり、当社グループ内に知財の専門組織を設立し、特許権侵害の調査及び出願等を行っております。さらに、当社グループはサービスの名称等について商標の出願、登録を行う等、第三者の商標権を侵害しないように留意しております。
しかしながら、当社グループの事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であるため、他社の知的財産権を侵害してしまう可能性があります。この場合、特許権侵害や商標権侵害を理由とする損害賠償請求や差止請求を受けたり、知的財産権の使用に対する対価の支払い等が発生する可能性があり、これらの場合には当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが保有している知的財産権が第三者により侵害された場合には、法的措置を含めた対応を要するなど、当社グループの事業運営に影響が及ぶ可能性があります。
(9)訴訟等について
本書提出日現在において当社グループを当事者とする訴訟手続はありません。しかしながら、将来訴訟等による請求を受け又はその他の形で当社グループを当事者とする訴訟等の手続が行われる可能性はあり、このような事態が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。
(10)個人情報の取扱いについて
当社グループは、当社グループ従業員の個人情報に加えて、当社グループが提供するサービスにおいて顧客の住所、氏名等の個人情報を保持しており、さらには顧客が保有する録画映像や、限定的ではありますが顔認証を用いたサービスにおいては録画映像に映り込んだ第三者の映像などの個人情報に関与するケースがあります。当社グループは個人情報の取扱いに関する重要性を十分に認識し、個人情報の管理に最大限の注意を払っており、また、2005年4月に全面施行された「個人情報の保護に関する法律」や、当局となる個人情報保護委員会が制定した「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」の要求事項の遵守に努めております。当社グループは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格「ISO/IEC27001:2013」及び「JIS Q 27001:2014」の認証を2016年5月、ISMSクラウドセキュリティの国際規格「ISO/IEC 27017:2015」及びプライバシー情報マネジメントシステムの国際規格「ISO/IEC 27701:2019」を2022年5月に取得しております。なお、それぞれの認証の登録範囲については、「ISO/IEC27001:2013」及び「JIS Q 27001:2014」はクラウド映像プラットフォーム開発及びそれを用いたサービスの運営・保守・カスタマーサポート、「ISO/IEC 27017:2015」はSafieクラウド録画サービスの影響に係るサービスプロバイダとしてのシステム開発・運用及び保守並びにアマゾンウェブサービスのクラウドサービスカスタマとしての利用に関わるISMSクラウドセキュリティマネジメントシステム、「ISO/IEC 27701:2019」はクラウド映像プラットフォームの運用・保守及びサービスに関するカスタマーサポート、となっております。加えて、情報セキュリティ委員会の定期的な開催等、様々なセキュリティ対策を行う個人情報保護マネジメントシステムを構築・運用しております。
当社グループのサービスの提供に際しては、カメラの設定、送付、設置工事など顧客の個人情報を用いる業務の一部を当社グループの責任において第三者となる業務委託先に再委託する場合があります。その場合においても、国内の法令等を遵守し、適切かつ合理的な方法で業務委託先の安全管理を行っております。
しかしながら、上記の取り組みにも関わらず、自然災害や事故、外部からの悪意による不正アクセス行為及び内部の故意又は過失による顧客情報の漏洩、消失、改ざん又は不正利用等、万一当社グループ又は当社グループの業務委託先から個人情報が漏洩した場合には、信用の失墜又は損害賠償による損失が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)映像等の流出について
顧客からの膨大な録画映像は当社グループが契約するクラウドサービスプラットフォーム上で管理されておりますが、当社グループの利用規約において、録画映像の知的財産権はそれぞれの顧客に帰属し、当社グループはこの映像を閲覧することはできない仕組みになっており、顧客の映像データは安全に管理されております。ただし、顧客からの個別の同意のもと、適切な認証プロセスを経た上で、当社グループや開発パートナーに映像を共有いただき、様々な新サービスの開発検討に活かすことがあります。またカメラ設置時や設置後のサポートの中で、一部の社員に限定して顧客からの同意の元、顧客の映像を共有いただく場合があります。さらに、顔認証を用いた一部のサービスで生成される顔の特徴点などのデータ等については、個人情報保護法に基づき、当該個人情報の運用を受託されております。
これらの映像データ等の外部への流出を防止するため、録画映像データはカメラからクラウドへの送信時、クラウド上での保管時、クラウドから顧客への配信時にそれぞれ暗号化を実施しており、万一、第三者が違法に映像データをその録画、配信経路上、もしくはクラウド上から入手したとしても暗号化されているのでデータを再生して見ることができない設計になっております。また顧客が映像を共有する場合においても、共有相手ごとに映像のアクセス権を個別に設定できる仕組みにしており、IDやパスワードの共有による映像流出事故が起きにくい仕組みにしております。その上で社員教育等様々な対策を講じております。
それに加え、膨大なデータを預かるプラットフォームの健全性を保つ取り組みとして、データ憲章の策定・公表、変化する社会情勢の中でプラットフォーマーとしての責務を果たすために必要な取り組みを継続的に議論するため、外部有識者会議を開催しております。会議の参加者は個人情報保護やITに詳しい弁護士、AIの利活用に詳しく憲法学を専門とする大学教授、社外取締役、当社取締役等となっており、年に数回開催し、当社グループでの研究開発や顧客におけるデータ活用に対する啓蒙活動などを協議しております。
以上の取り組みにも関わらず、不測の事態によりこれらの情報の漏洩や映像データに関するトラブルが発生した場合、当社グループの企業価値の毀損、社会的信用の失墜、流出の影響を受けた顧客その他関係者への補償等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)法令について
当社グループは、電気通信事業法等、企業活動に関わる各種法令の規制を受けております。当社グループは、コンプライアンス体制の充実が重要であると考えており、コンプライアンスに関する社内規程類を策定し、適宜研修を実施して周知徹底を図っております。しかしながら、今後国内において新たにプライバシー関連法規の制定やインターネット関連事業者を規制する新たな法律等による法的規制の整備が行われる可能性があります。さらに、インターネットは国境を超えたネットワークであるため、海外諸国からの法的規制による影響を受けることも想定されることから、それらが将来的に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
<一般外部環境及びインフラ整備等に関するリスク>
(13)設備及びネットワークの安定性について
当社グループの事業を支えるサーバーは、当社グループが契約するクラウドサービスプラットフォームで管理されており、複数のサーバーによる負荷の分散、冗長化、定期的なバックアップの実施等を図り、システム障害を未然に防ぐべく取り組みを行っております。障害が発生した場合に備え、リアルタイムのシステムの稼働状況、ログチェック機能やソフトウエア障害を即時にスタッフに通知する仕組みを整備しており、また、障害が発生したことを想定した復旧訓練も実施しております。
上記取り組みには地域上の負荷の分散、冗長化も含まれており、限定的な火災、地震等の自然災害や外的破損の発生時にもサービスの維持が可能となるよう設計されております。
しかしながら、上記取り組みにも関わらず、例えば日本全土に渡るような大規模災害、人的ミスによるシステム障害、その他予期せぬ事象の発生により、万一、当社グループが契約するクラウドサービスプラットフォームやネットワークの利用に支障が生じた場合には、サービスの停止等を余儀なくされることとなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)サービス等の不具合について
一般的に、高度なソフトウエアは不具合の発生を完全に解消することは不可能であると言われており、当社グループのアプリケーション、ソフトウエアやシステムにおいても、各種不具合が発生する可能性があります。
当社グループは、すべての新サービスの開始及び更新前に、専任の品質保証チームによるテストを行うなど、信頼度の高いサービス提供をするための開発体制を維持・構築しておりますが、当社グループ事業の運用に支障をきたす致命的な不具合が発見され、その不具合を適切に解決できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)ハードの不具合について
当社グループは、販売・貸与する製品の品質保証体制を確立し、製品の安全性確保及び事故発生防止に努めております。また、万一に備え、賠償責任保険も付保しております。しかし、当社グループが製造・販売した製品に起因する損害が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)製造物責任について
当社グループは、販売・貸与する製品の品質保証体制を確立し、製品の安全性確保及び事故発生防止に努めた上で、各種製品を販売及び製造委託しておりますが、すべての製品に欠陥がなく、将来的にクレーム等が発生しないという保証はありません。また製造物賠償責任については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を担保できるという保証はありません。さらに当社グループが引き続き製造物賠償責任保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模な製品の欠陥が生じた場合、それらが多額のコストや当社グループの評価に影響を与え、その結果、売上が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)大規模な感染症の発生による影響について
将来的に新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症が再び発生し、経済活動の停滞によって飲食・小売業などの休業・閉店に伴う受注減によるマイナス影響が、遠隔業務需要の高まりを上回るような場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(18)サプライチェーン、自然災害、事故、感染症等について
当社グループはカメラ在庫を保有して迅速にサービス提供ができる体制を構築しております。自然災害、事故、感染症の発生等に備え、BCPを策定し、トラブル発生時の迅速な復旧体制を構築しております。また顧客へ提供しているサービス及び社内の管理システムはすべてクラウドサービスとなっており、故障機器の交換などの一部のハードウエアに関連する業務を除き、基本的なサービスはすべてリモート勤務体制でも提供が可能です。
しかしながら、当社グループ、当社グループが在庫管理を業務委託している株式会社バン・ソフト・コミュニケーション(所在地:福井県)及びその倉庫近辺において、大地震や洪水等の大規模自然災害が発生した場合、当社グループが保有する商品在庫の損壊やインターネットアクセスの制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生して、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
<内部環境等に関するリスク>
(19)経営管理体制の確立について
当社グループは、業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図る予定ですが、適切な人的・組織的な対応ができずに、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(20)人材の育成及び確保について
当社グループは、積極的に優秀な人材を採用し、社内教育等を行うことによって体制の拡充を図っております。しかし、適切な人材を十分に確保できず、あるいは在職中の従業員が退職するなどした場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後の事業拡大に向け、特にエンジニア人員の確保が必要となりますが、採用が計画どおり進まなかった場合、あるいはエンジニア人員の流出が生じた場合には、事業拡大の制約となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(21)特定の人物への依存について
当社代表取締役社長CEOである佐渡島隆平は、当社グループの設立者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしております。このため、当社グループは、佐渡島隆平に過度に依存しない体制を作るために、取締役会等における役員間の相互の情報共有や経営組織の強化を図っております。しかし、現状において、何らかの理由により佐渡島隆平が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
<その他のリスク>
(22)資金使途について
株式上場時の公募増資による調達資金の使途につきましては、事業拡大に伴い増加する人件費、広告宣伝費等の運転資金及びオフィス増床等の設備資金に充当する予定であります。しかしながら、経営環境の急激な変化等により、上記の資金使途へ予定どおり資金を投入したとしても、想定通りの投資効果をあげられない可能性があります。
また、今後の事業環境の変化や、当社グループ事業戦略等の変更等により、将来において調達資金に係る資金使途に変化が生じる可能性があります。
(23)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、役員及び従業員のモチベーション向上のためストック・オプションを付与しており、本書提出日の前月末現在、その数は1,985,900株、発行済株式総数の3.58%となっております。なお、これらストック・オプションが行使された場合、既存株主の株式価値を希薄化させる可能性があります。
(24)配当政策について
当社は創業以来、株主に対する剰余金の分配を実施しておりません。株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来は経営成績及び財務状況を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存であります。現時点においては、研究開発資金等への投資を優先していくことが企業価値向上、ひいては株主利益の最大化につながるものと考えております。
(25)過年度における継続的な損失計上について
当社グループは、過年度において、継続的な事業成長を図るため、積極的な人材採用と既存のソリューションの強化と新しいソリューション開発への投資、顧客基盤拡大のための積極的な広告宣伝活動を実施しており、2018年12月期(第5期)から当連結会計年度である2024年12月期(第11期)において、継続的な売上高拡大が図られたものの、先行投資と位置付けられる研究開発費や人件費、広告宣伝費の計上により、利益面では損失計上が継続しておりました。
当社グループ主力事業である映像プラットフォーム事業は、サブスクリプション型課金モデルであり、継続して利用されることで収益が積みあがるストック型の収益モデルになります。一方で、広告宣伝費などの顧客獲得費用や研究開発費用は先行して計上されるため、短期的には赤字が先行することが一般的です。今後もユーザー獲得や組織規模拡大のための費用負担が拡大した場合には、継続した利益計上が実現できない可能性があります。
(26)海外展開について
当社グループは、高い成長を実現するため今後は海外展開を進めていく方針です。海外における商習慣や事業環境の差異等を含め、国内における事業展開以上に高いリスクが存在することは否めず、そのリスクに対応しきれない場合や国内と比較してマーケットの開拓や収益化が想定通り進まない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は10,246,326千円となり、前連結会計年度末に比べ7,981千円減少いたしました。これは主に、売掛金が530,335千円増加した一方で、現金及び預金が417,475千円減少、商品が178,316千円減少したことなどによるものであります。
当連結会計年度末における固定資産は777,163千円となり、前連結会計年度末に比べ669,778千円減少いたしました。これは主に、投資有価証券が672,691千円減少したことなどによるものであります。
この結果、当連結会計年度末における資産合計は11,024,087千円となり、前連結会計年度末に比べ677,444千円減少しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は2,408,521千円となり、前連結会計年度末に比べ782,982千円増加いたしました。これは主に、買掛金が392,283千円増加、未払金が269,327千円増加、賞与引当金が156,480千円増加したことなどによるものであります。
当連結会計年度末における固定負債は46,399千円となり、前連結会計年度末に比べ12,653千円減少いたしました。これは繰延税金負債が5,002千円増加した一方で、その他固定負債が15,999千円減少、長期借入金が1,656千円減少したことによるものであります。
この結果、当連結会計年度末における負債合計は2,454,920千円となり、前連結会計年度末に比べ770,328千円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は8,569,167千円となり、前連結会計年度末に比べ1,447,773千円減少いたしました。これは主に、資本金が32,870千円増加、資本剰余金が32,870千円増加、親会社株主に帰属する当期純損失1,552,485千円を計上したことなどによるものであります。
この結果、自己資本比率は77.4%(前連結会計年度末は85.6%)となりました。
b.経営成績
当社グループは「映像から未来をつくる」をビジョンに掲げ、家から街まであらゆるビジネスシーンの映像をデータ化することで、人々の意思決定を支援するクラウド録画型映像プラットフォーム「Safie(セーフィー)」を開発・運営しております。「Safie」は高画質・安価・安全で、誰でも簡単にスマートフォンやパソコンで使える防犯カメラサービスとして、小売・飲食・サービス・建設・物流・製造・インフラ・公共・医療などの幅広い業界で活用いただいております。
当連結会計年度においても、近年高まる防犯カメラとしての用途にとどまらず、遠隔での状況確認や業務ツールとの連携による業務効率化、AIを活用した映像解析による異常検知・予測などのニーズが急速に拡大しており、社会的な課題を解決できるソリューションの開発、提供を進めております。現在、日本が抱える少子高齢化・労働人口減少の問題は地方でも都市部でも顕在化しており、2040年には働き手が現在の8割になるという「8掛け社会」が到来すると推定され、人々の生活に多大なる影響を及ぼすと考えられています。このような労働力不足に備え、デジタル庁は業務の生産性を高め技術革新を促進することを目的に、デジタル技術の活用・業務効率化を妨げる「アナログ規制」を見直す方針を公表しており、規制の緩和・撤廃が進んでいます。建築・住宅・インフラ業では、2024年6月に厚生労働省が「目視規制」について、デジタルツールを活用した「遠隔巡視」を可能とする旨の通知を行いました。そのような中、セーフィーの屋外向けクラウドカメラやウェアラブルクラウドカメラを活用することで、事業者の負担を軽減し、かつ安全性を確保する「遠隔巡視」の広がりが期待されています。また、小売業では、これまで人による対面接客を基本としてきた中、クラウドカメラやAIソリューションを活用することで、店舗運営の効率化や生産性向上を可能にし、データを基にした店舗マーケティング施策の実施によるデータドリブンな運営が進みます。これにより、利用者にとってもより安心で利便性の高い省人店舗を提供し、満足度向上に寄与することができます。
さらに、少子高齢化・労働人口減少の社会課題を解決するため、生成AIをはじめとするAI技術の社会実装に期待が集まっています。2024年10月には国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「データ・生成AIの利活用に係る先進事例に関する調査」において当社の「AIソリューションプラットフォーム事業案」が採択されました。この機会を通じて、より迅速かつ容易に個別最適化したAIを生み出すことのできるプラットフォーム構築を強化し、映像データとAI活用により、あらゆる業界の「現場DX」推進に邁進してまいります。
当社グループのKPIであるARRは2024年12月末時点で11,937百万円(2023年12月末比27.4%増)、課金カメラ台数は29.3万台(2023年12月末比25.2%増)になりました。カメラ等の機器販売や設置作業費などが含まれるスポット収益は4,558百万円となり、クラウド録画サービス、一部のカメラのレンタルサービスや、LTE通信費、画像解析サービス等を含むリカーリング収益は10,491百万円となりました。
この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高15,049,858千円(前年同期比27.4%増)、営業損失580,565千円(前年同期は1,091,510千円の営業損失)、経常損失623,592千円(前年同期は1,110,518千円の経常損失)となりました。また、投資有価証券評価損868,633千円を特別損失に計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失1,552,485千円(前年同期は1,438,686千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。また、エンタープライズ顧客への課金カメラ導入数の大幅な増加によるスポット収益やリカーリング収益の増加、ソリューションの導入拡大が主要因となり、売上総利益金額は7,336,299千円となり、当初見込みを上回りました。そのため、調整後営業損失535,066千円(営業損失580,565千円)と2024年2月14日に2023年12月期決算短信にて開示した2024年12月期連結業績予想の調整後営業損失850百万円との間に差異が生じております。
なお、当社グループは、映像プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末と比べ417,475千円減少し、6,699,232千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は101,078千円(前連結会計年度は1,386,016千円)となりました。これは主に、投資有価証券評価損の計上868,633千円(前連結会計年度は該当なし)、仕入債務の増加392,393千円(前連結会計年度は145,407千円)、未払金の増加282,120千円(前連結会計年度は12,167千円の減少)等の増加要因があった一方で、税金等調整前当期純損失1,545,743千円の発生(前連結会計年度は1,434,706千円)等の減少要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は274,539千円(前連結会計年度は310,500千円)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出221,692千円(前連結会計年度は221,485千円)、有形固定資産の取得による支出49,525千円(前連結会計年度は197,297千円)等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は38,717千円(前連結会計年度は141,596千円の資金獲得)となりました。これは主に、非支配株主からの払込みによる収入30,000千円(前連結会計年度は該当なし)、新株予約権の行使による株式の発行による収入21,658千円(前連結会計年度は173,252千円)があった一方で、長期借入金の返済による支出91,656千円(前連結会計年度は31,656千円)等があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
当社グループは受注生産形態をとる事業を行っていないため、生産規模及び受注規模を金額及び数量で示す記載をしておりません。
a.生産実績
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績を事業別に示すと、次のとおりであります。なお、当社グループは、映像プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
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事業の名称 |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
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金額(千円) |
前年同期比(%) |
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映像プラットフォーム事業 |
15,049,858 |
127.4 |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
前述の「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 a.財政状態」に記載のとおりであります。
b.経営成績の分析
前述の「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に記載のとおりであります。
c.キャッシュ・フローの分析
前述の「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、仕入資金、従業員の給与手当の他、販売費及び一般管理費の営業費用であります。当社グループは、事業運営上必要な資金を安定的に確保するために、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等でバランスよく調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位については、調達時期における資金需要の額、用途、市場環境、調達コスト等を勘案し、最適な方法を選択する方針であります。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。また、今後の経営成績に影響を与える課題につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
⑤経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(カメラクラウドシステム等の提供に関する契約)
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約 締結日 |
契約内容 |
契約期間 |
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セーフィー 株式会社 |
東日本電信電話 株式会社 |
日本 |
カメラクラウドシステム等 |
2018年 11月26日 |
「ギガらくカメラ」に対するSafieのカメラクラウドシステム等の提供に関する契約 |
2018年11月26日から 2019年3月31日まで 以後1年ごとの自動更新 |
当連結会計年度における研究開発活動についても引き続き、当社グループの「映像から未来をつくる」というビジョンのもと、家から街まであらゆるビジネスシーンの映像をデータ化することで、人々の意思決定を支援するために活動しております。
当社グループの映像プラットフォームの継続的な開発、各業界課題に沿ったプロダクト、ソリューションの開発に取り組んでおり、当連結会計年度における研究開発費は
なお、当社グループは映像プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。
(1)クラウド録画配信基盤の強化と既存機能の強化
2024年12月末現在、29.3万台の課金カメラ普及に伴い、数十万台~百万台規模のカメラ稼働に耐えうるシステム基盤の設計・開発、その保守・運用体制の強化に継続して取り組んでいます。今後、ますますの活用拡大が見込まれるAI基盤の開発や、エンタープライズ用途でも問題なく利用可能とすべく、サービスのセキュリティレベル強化や統合管理機能、当社グループ内での業務システムの強化も推し進めております。
(2)AIソリューションプラットフォーム基盤の構築強化
創業以来、開発・提供してきた「映像プラットフォーム」基盤をより強固なものとし、AI開発・普及を加速することが求められています。そういった中、NEDO公募の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/データ・生成AIの利活用に係る先進事例に関する調査」に「AIソリューションプラットフォーム」事業案が採択されたことを機に、データホルダーとAI開発者の多対多の連携を可能とし、簡単なデータ利用を促進し、AI生成・再学習を簡単に実現できるプラットフォームを構築し、AIビジネスの新規創出を加速してまいります。
(3)屋外向けクラウドカメラ「Safie GO 360」のリリース
360°全方位を広範囲に撮影できる魚眼レンズを備えたカメラにより、現場全景を見える化した、屋外向けクラウドカメラ「Safie GO」シリーズの最新機種として、「Safie GO 360(セーフィー ゴー サンビャクロクジュウ)」を2024年2月に提供開始いたしました。現場の全景の俯瞰した撮影に加え、狭小地の撮影でも、焦点距離が近い対象物を歪みがなく明瞭に映し出すことが可能です。過去映像の振り返り時にも、360°の上下及び左右自由に動かせる画角により映像の隅々まで取り逃しがなく、現場業務の生産性と安全性向上に貢献いたします。
(4)映像×AIの調査サポートサービス「Safie Survey」のリリース
多岐にわたるカメラ製品とデータ解析用のAIエンジンを融合させた調査サポートサービス「Safie Survey(セーフィー サーベイ)」を2024年2月に提供を開始いたしました。適切なカメラの選定から解析結果の出力までの一連の流れをオールインワンで実施し、従来の手法でかかっていた多くの時間やコストを削減することができます。交通状況を加味したイベント開催や土木工事の施工計画の立案に有益な情報を提供いたします。
(5)エッジAI搭載屋外向けクラウドカメラ「Safie GO PTZ AI」のリリース
カメラに搭載したエッジAIによる人物検出および人数カウントが可能な屋外対応のLTE搭載クラウド録画型カメラ「Safie GO PTZ AI(セーフィー ゴー ピーティーゼット エーアイ)」を2024年3月に提供開始いたしました。このカメラは、セーフィー特別仕様のカメラとしてi-PRO(アイプロ)株式会社と共同開発されたもので、確認したい場所をピンポイントに撮影できるパンチルトズーム機能に加え、搭載したエッジAIの機能を活用することで、建築・土木現場での活用をはじめとした屋外の現場状況のさらなる見える化・定量化を実現します。
(6)既存のアナログカメラを活用しクラウド録画サービスが利用できるソリューションをリリース
既設のカメラや配線ネットワークをそのまま活用し、アナログエンコーダーを用いることで、クラウド録画サービスを利用できるようになります。これにより、従来クラウドカメラの導入が難しかった施設や現場でも、最小限の工事期間と初期費用で最新のクラウド録画サービスを活用することが可能になります。
(7)エンタープライズ向け管理システム「Safie manager」の開発を推進
2020年7月より、主にエンタープライズの業務生産性向上を実現するアプリケーションとして「Safie manager」を提供開始しております。主に大手小売チェーンや大手ゼネコンの管理者が、アプリケーション内で複数のカメラとユーザーアカウントを統合管理することを可能にしてきました。当連結会計年度においては、企業単位ではなくその配下の部門単位で管理者を設定することができる「部門管理機能」を追加したり、アプリケーションの体験品質の向上を目的に、UIのリニューアルを実施しました。