第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

回次

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

決算年月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

売上高

(千円)

441,612

687,502

640,921

954,693

673,532

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

16,694

255,838

202,340

144,221

636,371

当期純利益又は
当期純損失(△)

(千円)

3,016

201,609

153,319

90,181

641,317

持分法を適用した場合

の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

201,553

231,053

231,053

788,972

818,060

発行済株式総数

(株)

223,967

226,327

22,632,700

25,306,800

25,577,500

純資産額

(千円)

330,424

591,033

744,353

1,950,373

1,367,231

総資産額

(千円)

530,480

1,078,578

1,617,795

2,672,961

2,295,159

1株当たり純資産額

(円)

14.75

26.11

32.89

77.07

53.45

1株当たり配当額
(1株当たり中間配当額)

(円)

1株当たり当期純利益又は
1株当たり当期純損失(△)

(円)

0.14

8.97

6.77

3.66

25.15

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

3.52

自己資本比率

(%)

62.3

54.8

46.0

73.0

59.6

自己資本利益率

(%)

0.96

43.76

22.96

6.69

株価収益率

(倍)

226.3

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

262,836

36,724

654,914

28,491

301,350

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

4,405

43,602

72,228

54,027

12,001

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

18,582

236,972

18,530

1,011,623

35,736

現金及び現金同等物

の期末残高

(千円)

380,678

610,773

1,174,929

2,161,016

1,883,400

従業員数
〔ほか、平均臨時雇用人員〕

(名)

5

8

9

10

7

-〕

-〕

-〕

-〕

-〕

株主総利回り

(%)

42.7

(比較指標:東証グロース指数)

(%)

(-)

(-)

(-)

(-)

(97.3)

最高株価

(円)

1,447

847

最低株価

(円)

661

252

 

(注) 1.当社は連結財務諸表を作成しておりませんので、連結会計年度に係る主要な経営指標等の推移については記載しておりません。

2.持分法を適用した場合の投資利益については、関連会社がないため記載しておりません。

 

3.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、第8期から第10期まで、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため記載しておりません。また、第12期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

4.当社は配当を行っておりませんので、1株当たり配当額及び配当性向につきましては、それぞれ記載しておりません。

5.第8期から第10期までの株価収益率は当社株式が非上場であるため記載しておりません。

6.第12期の自己資本利益率、株価収益率については、当期純損失であるため記載しておりません。

7.臨時従業員数は、在籍していないため、人員を記載しておりません。

8.2021年7月15日付けで普通株式1株につき普通株式100株の割合で株式分割を行っております。第8期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)を算定しております。

9.第8期から第11期の株主総利回り及び比較指標は、2022年6月23日に東京証券取引所グロース市場に上場したため、記載しておりません。第12期の株主総利回り及び比較指標は、2023年3月末を基準として算定しております。

10.最高株価及び最低株価は、東京証券取引所グロース市場におけるものであります。
ただし、当社株式は、2022年6月23日から東京証券取引所グロース市場に上場されており、それ以前の株価については該当事項がありません。

 

 

2 【沿革】

 

年 月

概 要

2012年5月

当社の前身となる、ドライアイ新規薬剤、ドライアイケアグッズの開発・製造等を目的として東京都港区に㈱ドライアイKT設立

2014年6月

近視予防物品及び近視予防セットに関する特許を出願(当社パイプラインTLG-001)

2015年2月

㈱ドライアイKTが㈱近視研究所、㈱老眼研究所を吸収合併し、㈱坪田ラボに商号変更

2015年12月

近視予防又は近視の進行を遅らせること等ができる身体装着用の照射装置に関する特許を出願(当社パイプラインTLG-001)

2017年3月

近視予防又は抑制剤、マウス近視誘導モデルの作製方法及び近視予防又は抑制医薬スクリーニング方法に関する特許を出願(当社パイプラインTLG-001)

2017年5月

近視予防用組成物及び機能性食品に関する特許を出願(当社パイプラインTLM-005)

2019年2月

坪田一男が当社代表取締役社長に就任

2019年3月

住友ファーマ㈱とバイオレットライトを用いたうつ病及び認知症に関する共同研究契約を締結(当社パイプラインTLG-005)

2019年4月

近視進行抑制を目指した医療機器TLG-001による探索治験を開始

当社として慶應義塾大学信濃町キャンパス内総合医科学研究棟(リサーチパーク)4S7研究室を開設

2019年5月

㈱ジンズホールディングスとTLG-001(バイオレットライトを用いた近視予防を目的とした眼鏡型の医療機器)に関する実施許諾契約を締結

2019年6月

本社を慶應義塾大学信濃町キャンパス内2号棟5階へ移転

2019年11月

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の2019年度「研究開発型ベンチャー支援事業/シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援」の事業者に選出(当社パイプラインTLG-005)

2020年6月

本社を慶應義塾大学信濃町キャンパス内2号棟5階から東京都新宿区信濃町34番地トーシン信濃町駅前ビル304へ移転

2020年10月

 

ロート製薬㈱と当社が保有する近視抑制点眼薬に関する知的財産権及び研究開発成果に関する実施許諾契約を締結(当社パイプラインTLM-003)

ロート製薬㈱と近視抑制のメカニズム、リバウンド等の基礎研究に関する共同研究開発契約を締結(当社パイプラインTLM-003)

2021年3月

住友ファーマ㈱と脳活性化バイオレットライトメガネTLG-005を用いた、うつ病、軽度認知障害及びパーキンソン病についての共同研究契約を締結

2021年4月

マルホ㈱とマイボーム腺機能不全の処置剤に関する国内及びアメリカ、フランス、イギリス、ドイツ等への実施許諾契約を締結(当社パイプラインTLM-001)

2021年9月

ロート製薬㈱と2020年10月に締結した実施許諾契約の対象国に、台湾、ベトナム、インドネシアの3カ国を追加する覚書を締結

2022年6月

東京証券取引所グロース市場に株式を上場

2022年11月

Twenty Twenty Therapeutics社とTLG-001の北及び南アメリカ大陸を対象とした独占実施許諾契約を締結

 

 

年 月

概 要

2022年12月

Laboratoires Théa社とTLM-003の米欧等を対象とした独占実施許諾契約を締結

2023年6月

日本スタートアップ大賞 審査委員会特別賞を受賞

2023年9月

「老齢犬の認知機能低下に対する認知機能改善機器の研究開発」が成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech 事業)として採択

2023年10月

近視進行抑制を目指した医療機器TLG-001 検証的臨床試験の被験者組み入れ完了

2024年3月

「網膜色素変性症に対する革新的医療機器の開発」がTOKYO 戦略的イノベーション促進事業における助成事業として採択

2024年3月

「光照射による月経不順治療機器の開発」が女性のためのフェムテック開発支援・普及促進事業における助成事業として採択

2024年3月

ロート製薬㈱と当社が保有する点眼薬に関する知的財産権及び研究開発成果に関する知的財産権実施許諾契約を締結

 

 

 

3 【事業の内容】

株式会社坪田ラボは「ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする」をミッションに掲げ、近視(*1)・ドライアイ(*2)・老眼(*3)・脳疾患の治療に画期的なイノベーションを起こすことを目標に設立した、慶應義塾大学医学部発ベンチャーです。2012年5月に慶應義塾大学医学部眼科学教室の研究成果を社会に届けるために、また、イノベーションを起こすために、当社の前身である株式会社ドライアイKT(現 当社)が設立されました。

近視、ドライアイ、老眼は、超高齢社会における健康長寿とQuality of Visionの観点から眼科医療領域において大きな課題と認識されておりますが、いまだ原因療法が確立していない、いわゆるアンメット・メディカル・ニーズ領域(*4)であります。世界では、近視は約26億人、ドライアイは約7.5億人、老眼は約18億人の患者数が推定されています。当社では、これらの3領域に加えて、眼と同じ中枢神経系である脳関連の疾患にも研究領域を拡大し、患者様に対して画期的なイノベーションによる研究開発成果を届けるため、提携大学と連携し先進的な研究を行っております。その研究成果を評価するパートナー企業と共同開発を行い、新しい価値を提供する製品を上市しております。なお、当社の事業セグメントは、研究開発事業のみの単一セグメントであります。

 

主な提携研究機関 :学校法人慶應義塾

主なパートナー企業:株式会社ジンズホールディングス、ロート製薬株式会社、 住友ファーマ株式会社、わかもと製薬株式会社、マルホ株式会社、Twenty/Twenty Therapeutics、Laboratoires Théa

 

(1) ビジネスモデル

当社のビジネスモデルは、パートナー企業との共同研究開発契約および実施許諾契約による契約一時金、マイルストーン・ペイメントならびに事業化後(上市後)のロイヤリティ契約によるロイヤリティで収益化し、その収益を新しい研究に投資することで、新たな価値創造につなげることです。

大学は研究のレベルが高く、特許を取得し、研究内容に関する論文の執筆までは行いますが、社会全体にその研究開発成果を届けることが難しくなっています。大学単独ではイノベーションが起こりにくいことを踏まえ、当社では慶應義塾大学発ベンチャーとして、大学の研究成果・知的財産“サイエンス”を商業化“コマーシャリゼーション”してイノベーションを生み出すべく、日々研究開発・事業展開に取り組んでおります。

当社の事業領域は基礎的な研究開発から一部治験までとなっております。これらの研究開発成果に基づく製品は、患者様に利用いただくことになると思いますが、当社は患者様との直接的な接点を持っていないため、最終的なユーザーである患者様に接する大手企業が当社の直接的な顧客となるB to Bのビジネスモデルとなっております。

当社の研究開発では、多くの研究が外部委託研究員によって進められています。これが当社の特徴の一つであり、各外部委託研究員は様々な領域で、高度な専門性を持つ研究者であり、当社の幅広いパイプラインに対し、確固たるエビデンスに基づいた研究成果を上げ、新たなパイプラインを創出する役割を果たしています。

 

また、医薬品、医療機器の開発・販売には時間を要するため、コモディティの開発・販売も並行して進めるデュアル戦略を採っております。さらにコンサルティング業務などで安定的な収入も得ております。現在までに数十社の企業と早期に契約を締結しています。

 

 


 

以下の図は、当社の標準的な収益構造を示しております。

当社の研究成果、知財をパートナー企業に提供し、その対価として、共同研究開発契約又は実施許諾契約の契約一時金、ならびに開発のステージに伴うマイルストーン・ペイメントを順次受け取ります。そして事業化後(上市後)はロイヤリティ収入を得るビジネスモデルですが、現時点で当社収益の中心は、契約一時金とマイルストーン・ペイメントとなっております。

 


 

 

(当社における収益構造)

収 益

内 容

契約一時金

共同研究開発契約及び実施許諾契約の契約締結時に、当社が提供するそれまでの研究成果及び知財実施権許諾の対価等として受け取る収入

マイルストーン・ペイメント

契約相手先の研究開発の進捗(契約書に規定された研究開発段階の達成)又は売上の進捗(契約書に規定された売上高の達成)に応じて受け取る収入

ロイヤリティ

医薬品、医療機器等の上市後に販売額の一定料率を受け取る収入

コンサルティング

製薬会社等へのコンサルティングの対価として受け取る収入

 

 

(事業系統図)

 


 

また、成長戦略の基本としてT型戦略(「深化」と「探索」)の概念を取り入れ、サイエンス(研究)においては、研究予算全体の70%を深化(研究の深掘り、知財の導出等)に、30%を探索(基礎研究による発見、新規知財等)に配分し、バランスの取れた研究を目指しております。

 


 

 

(2) 事業の概要

a 近視領域

近視は、失明の主要因であり、有病率の増加は大きな社会問題となっております。近視が激増している現在、世界保健機関(WHO)が発表した「THE IMPACT OF MYOPIA AND HIGH MYOPIA」によると、世界には2020年時点において約26億人の患者が存在しており、2050年には約48億人にもなると試算されています。また、近視は単にメガネをかければよいものではなく、失明につながる重大な疾患であり、予防方法の確立が急がれています。その市場規模は数兆円ともいわれ、巨大なアンメット・メディカル・ニーズが存在する研究領域であります。

 


 

当時、当社代表取締役社長坪田一男が教授を務めていた慶應義塾大学医学部眼科教室では2017年に、バイオレットライト(波長360~400nmの可視光)(*5)の光が近視の予防に効果がある事を発見いたしました。

バイオレットライトは、OPN5(*6)という非視覚系光受容体(*7)を刺激し、脈絡膜(*8)を介した眼の血流を維持、増大することが判明いたしました。これら一連の発見の知財化を進めてきております。「現代社会で欠乏しているバイオレットライトを効率的に子供たちに供給することにより近視の進行を抑える」ということが当社の基盤技術となっており、以下の図の様な研究アプローチとなっております。

 


 

 

(a) TLG-001(Tsubota-Lab Glassframe-001)[株式会社ジンズホールディングス][Twenty/Twenty Therapeutics]

TLG-001は、バイオレットライトを1日に3時間310μW/cm2の強度(東京における水平方向で東西南北方位の年間平均バイオレットライト放射照度)で供給することにより、子供の近視の予防を行うメガネフレーム型近視予防デバイスであります。

探索治験によりバイオレットライトの安全性が確認されており、医療機器製造販売承認に向け、2022年6月より最終的な検証治験(*9)を実施しております。

当社は株式会社ジンズホールディングスと日本国内における実施許諾契約を締結しており、近視予防を請求できる医療機器製造販売承認を株式会社ジンズホールディングスが取得し販売開始する計画があります。ビジネスモデルとしては開発契約金に加えて、マイルストーン・ペイメント、ロイヤリティ収入を受け取る契約となっております。

また海外においては、2022年11月にTwenty/Twenty Therapeuticsと、当社が所有する知的財産権のアメリカ大陸における独占的実施許諾契約を締結しました。

 


 

(b) TLM-003(Tsubota Lab Medicine-003) [ロート製薬株式会社][Laboratoires Théa]

TLM-003は1日1回~2回の点眼によって近視の進行を予防する、新しいタイプの近視進行予防点眼薬です。TLG-001がバイオレットライトにより眼の血流を増大させ近視予防をするのに対して、本点眼薬は強膜の菲薄化を抑制することにより、強膜の伸展を抑え、近視となることを抑制します。すでにマウスの動物実験において、近視進行抑制効果を証明しており、ロート製薬株式会社と長期の開発契約を締結し、ロート製薬株式会社が2023年から第1相臨床試験を開始しております。

また海外においては、2022年12月にLaboratoires Théaと、米欧を中心とした地域において、当社が所有する知的財産権の独占的実施許諾契約を締結しました。

 

 

(c) TLM-007 (Tsubota Lab Medicine-007)

TLM-007は血流増大の効果がある緑内障の点眼薬を適用拡大し、近視の進行を予防する点眼薬としての開発をしています。2024年から特定臨床試験を開始しております。

 

b ドライアイ領域

現代の視覚情報化社会において眼は酷使され、乾燥による蒸発増大や、現代社会のストレスによる涙液分泌の低下によりドライアイを引き起こします。症状としては眼が乾く、眼が疲れる、眼が重いなどの不定愁訴(*10)が多く、日本だけで2,000万人(ドライアイ研究会ホームページより)の潜在患者がいると考えられております。

ドライアイは涙液層の不安定さを伴う不定愁訴であり、現代社会においては急増しており、特に新型コロナウイルス感染症の影響による在宅勤務の増大により、ドライアイ症状を持つ患者が急増していると考えられております。涙液層の不安定化の原因は主に3つの要因から成り立っており、涙液そのものの減少、ムチン層(*11)の減少、異常及び油層(*11)の異常による蒸発量の亢進とされております。現在この3つのメカニズムについて全世界で治療法の開発が行われており、当社では眼の周りの環境を整えるためのメガネや、涙液の量を増やすためのサプリメントの開発などを行っております。

 


 

(a) TLM-001 (Tsubota Lab Medicine-001) [マルホ株式会社]

ドライアイは上図にありますように3層からなる涙液層が不安定になり、慢性疼痛を引き起こす疾患です。3層は油層、涙液層(水層)、ムチン層(*11)から構成されておりどの層が障害を受けても涙液層は不安定となります。最近増えているタイプのドライアイはこのうち油層に影響するものが多いとされています。油層を構成する油成分はまぶたの縁にあるマイボーム腺という脂腺から分泌されます。加齢や炎症によってこの脂腺の機能が落ちますが、我々はビタミンD関連物質がこの機能を回復させることを動物実験および臨床研究によって証明しました。現在ビタミンD関連物質を主体とした眼軟膏を開発しており、すでにマルホ株式会社と全世界の導出に関する契約を結んでおります。開発が進むにつれてマイルストーン収入を得ますとともに、上市されればロイヤリティ収入を受け取る契約となっております。

 

 

c 老眼領域

老眼は加齢によって水晶体が硬くなるために生じる調節力障害であり、40歳以降の多くの人が罹患します。顕著な症状として、近くのものが見にくくなります。従来は多焦点メガネや眼内レンズ等で対応しておりますが、根本的に老眼を予防治療する医薬品はまだ開発されておりません。

現在、患者数は40歳または50歳以上の全人類に相当するといわれ、超高齢化社会の到来とともに老眼問題はさらに拡大するのが予測されます。水晶体の老化は、まさにエイジングそのものであるため、代謝からの新しい切り口により、医薬品等の開発を進めて参ります。

 

d 脳疾患領域
(a) TLG-005 (Tsubota Lab Glassframe-005)[住友ファーマ株式会社]

眼が脳の神経組織の一部であることを考えると、バイオレットライトが眼の血流を上げるだけでなく脳の血流も上げることを予期し研究を重ねた結果、実際にこの現象を発見いたしました。バイオレットライトには、近視の予防効果があることに加えて、うつ病や認知症等の脳に対しても効果があることが徐々に解明されており、うつ病、パーキンソン病や軽度認知障害については複数の特定臨床研究を行っております。2023年度に、うつ病およびパーキンソン病の研究を終了し、また、軽度認知障害についても被験者組み入れが完了しております。

(注)パーキンソン病につきましては、2024年5月22日に開催された取締役会において、住友ファーマ株式会社とのプロジェクト終了を決議しております。

 


 

e その他

バイオレットライトによる脈絡膜の機能維持期に貢献できるとの仮説のもとに、後眼部疾患への応用も検討中です。更に、光による角膜コラーゲンのクロスリンク(*12)を目指した円錐角膜治療の臨床研究TLG-003でも、データを蓄積しており、至適治療条件を探索する研究が進んでいます。

更に、OPN5は網膜の局所的な概日光同調にとって必要かつ十分な感光色素であることが判明しており、脳中枢を介してサーカディアンリズム(*13)を改善し、現代の生活スタイルに根付く生活習慣病の治療に展開する準備の一つとして、女性の月経不順に対してバイオレットライトによる治療に挑戦します。

また、これらの知見はペット領域への展開も検討中であり、老犬の体調管理に対する試験を公的支援のもと実施中です。

 

(3) 当社のパイプライン

以下の表は、当社の開発製品並びにその適応症、市場、開発段階及び本書提出日現在の進捗状況を示しております。

なお、製品の開発に際しては様々なリスクを伴います。当社製品の開発リスクの概要については、「第2[事業の状況] 3[事業等のリスク]」の通りであります。

 


 


 

 

 

用語

意味・内容

*1

近視

無調節の状態で眼に入る平行光線が網膜の前方で結像する眼の屈折状態。視力障害を伴うものは疾患であり、進行抑制・治療の必要がある。

*2

ドライアイ

ドライアイは、様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり、眼不快感や視機能異常を生じ、眼表面の障害を伴うことがある。

*3

老眼

老眼は40歳前後からはじまる誰もがなる眼の老化で、水晶体の弾力性が弱まり、調節力が低下した結果、近いところが見えにくくなる症状のこと。

*4

アンメット・メディカル・ニーズ領域

いまだ有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズがある領域のこと。

*5

バイオレットライト

波長360~400nmの光を指し、JIS Z 8120 「光学用語」により、この波長域の光は可視光波長域の短波長限界と定義されている。

*6

OPN5

人において380nmにその吸収スペクトルのピークを持つ、非視覚系光受容体のこと。

*7

非視覚系光受容体

光受容体のなかで、「見るため」ではない目的で働く種類のものを指す。OPN5は非視覚系光受容体の一種のこと。

*8

脈絡膜

網膜と強膜の間にあり、眼球壁を形成する膜のこと。

*9

検証治験

医療機器開発における、医療機器承認を目指した、主に有効性を評価する臨床試験のこと。

*10

不定愁訴

頭痛や食欲不振など主観的な多岐にわたる自覚症状の訴えがあるものの、検査をしても客観的所見に乏しく、原因となる病気が見つからない状態。

*11

涙液層(水層)、油層、ムチン層

涙を構成する3層。涙液(水)は上まぶたの涙腺から、ムチンという粘性成分は結膜から分泌される。最表層である油層は、上下まぶた裏側にあるマイボーム腺から出て、水分の蒸発を防ぐ役割がある。

*12

クロスリンキング

ドイツのSeilerらが開発した円錐角膜の手術方法のこと。リボフラビンなどを点眼し、365nmの波長の光を照射すると、角膜のコラーゲン繊維が架橋(クロスリンキング)される。

*13

サーカディアンリズム

体内時計である約24時間周期のリズムを概日リズム(サーカディアンリズム)と呼ぶ。

 

 

 

4 【関係会社の状況】

該当事項はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 提出会社の状況

 

 

 

2024年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

7

51.0

3.4

10,507

 

 

事業部門の名称

従業員数(名)

研究開発本部

4

事業開発本部

2

管理本部

1

合計

7

 

(注) 1.当社は単一セグメントであるため、事業部門別の従業員数を記載しております。

2.臨時従業員数は、在籍していないため、人員を記載しておりません。

3.前事業年度に比べ従業員が3名減少しておりますが、主に自己都合退職によるものです。

 

(2) 労働組合の状況

当社には、労働組合は組成されておりませんが、労使関係は良好に推移しております。

 

(3) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)」の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。