第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文章中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営方針

社は「ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする」をミッションに掲げ、近視、ドライアイ、老視、脳疾患などアンメット・メディカル・ニーズ(UMN)の高い疾患領域において、革新的なソリューションの創出を目指しております。慶應義塾大学医学部発の研究開発型ベンチャーとして、世界的に拡大する近視人口、ドライアイによるQOL(生活の質)の低下、老視の予防・治療ニーズの高まり、ならびに中枢神経系疾患に対する医療的対応の必要性といった社会課題に真正面から取り組み、企業価値の向上を図っております。

 

(2) 経営戦略

社は、短期的な利益の最大化にとらわれるのではなく、社会課題の解決という本質的な目標に対し、長期的な視点から真摯に取り組むことを基本方針としています。特許に繋がる独自の発明(Invention)と、パートナー企業との協働による社会実装(Implementation)を掛け合わせることで、確実なイノベーションの創出を目指しています。この目標を達成するために、当社は社会課題の解決と企業の持続的成長の同時実現を目指すCSV経営(*1)の考え方に基づき、パートナー企業と連携し、社会課題の解決を企業活動の原動力とすることで新たな社会価値を創造し、持続可能なかたちで企業価値の最大化を図ってまいります。

*1 CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)とは、企業が強みを生かしながら本業を通じて社会課題の解決に貢献することで、社会的価値と経済的価値の双方を同時に創出し、持続可能な成長を実現する経営アプローチを指します。従来のCSR(企業の社会的責任)とは異なり、社会貢献と事業成長を一体化させる点に特徴があります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、各パイプラインの事業化(上市)を目指して共同研究または実施許諾を行うベンチャー企業であり、事業化後(上市後)のロイヤリティ収入を安定的に計上するステージにはまだありません。従いまして、当社は、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)といった経営指標を目的とせず、各パイプラインの進捗状況等を適時かつ正確に管理することを目標においた事業活動を推進してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 基礎研究、知財発掘および管理の強化

当社は、近視、ドライアイ、老視および脳疾患といったUMNの高い分野において、先進的な研究開発に取り組んでいます。

当社は創立初期より、契約一時金を含むライセンス収入を安定的に確保しながら、財務的な健全性を保ちつつ研究開発を推進してきました。こうした取り組みを通じて、価値ある研究成果を継続的に創出し、パートナー企業との共同研究開発へとつなげるエコシステムを構築しております。また、研究成果に基づく知的財産の戦略的な管理・活用を通じて、導出力(ライセンシング・パワー)の強化にも注力しております。将来的には、これらの研究成果をもとに、パートナー企業との共同開発を通じて製品化を実現し、上市された製品からロイヤリティ収入を得るビジネスモデルの構築を目指しております。得られた収益は、さらなる研究開発への再投資に活用し、新たな革新的ソリューションを次々と創出することで、UMNの高い領域における選択肢を拡げ、社会に貢献してまいります。

 

② 国内・海外事業開発の強化

当社のビジネスモデルは、独自の技術・知財を基盤に、国内外のパートナー企業と共同研究開発やライセンス契約を締結し、契約一時金、マイルストーン、上市後のロイヤリティによって収益を得るものです。得られた収益は新たな研究開発に再投資し、継続的にパイプラインと企業価値を拡充する循環型モデルを構築しています。当社のような小規模のバイオベンチャーにおいては、研究開発の質と臨床研究および臨床試験の効率的かつ迅速な実施を図る上でも、強固かつ効率的な共同研究開発体制の構築が極めて重要な課題です。今後も国内外の有力な研究機関および企業との連携をさらに拡大・深化させるべく、適切なコミュニケーションを重ねながら、研究開発および事業開発機能の強化を進めてまいります。

 

③ レギュラトリーサイエンス(*2)の強化

究開発の成果を、医薬品医療機器総合機構(PMDA)をはじめ、米国食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、中国国家薬品監督管理局(NMPA)など、各国の規制当局からの承認取得へとつなげ、事業化を実現していくためには、レギュラトリーサイエンスへの対応力の強化が不可欠です。当社では、研究開発本部を中心に社内の専門性を継続的に高めることにより、グローバルな開発・承認戦略にも対応できる体制の構築を進めております。

*2 レギュラトリーサイエンスとは、医療分野の研究開発の成果の実用化に際し、その品質、有効性及び安全性を科学的知見に基づき適正かつ迅速に予測、評価及び判断することに関する科学です。

 

④ 企業体質の強化

当社は、社会課題の解決と企業の持続的成長の同時実現を目指すCSV経営の考え方に基づき、社会課題の解決を企業成長の原動力とすることを基本方針としています。その実行基盤として、米国の先進的スタートアップにおいても成果を上げているOKR(*3)を導入し、ビジョン・ミッションに直結した目標設定と進捗管理体制を構築しております。OKRの導入により、個人と組織の目標をビジョン・ミッションと明確に結びつけ、戦略と現場の一体化、意思決定の迅速化、成果の可視化を図ることが可能となります。当社はこの仕組みを通じて、企業体質を強化してまいります。

*3 OKR(Objective and Key Results)とは、企業が達成すべき目標を具体的な成果指標とともに設定し、組織全体での一貫した目標達成を目指すマネジメント手法です。

 

⑤ 経営体制の強化
a 人材の確保と育成

大学発ベンチャーにおいては、卓越したサイエンスの成果を有しながらも、ビジネスの視点での評価や市場での信頼獲得が課題となるケースが多く見受けられます。当社においても、技術力や研究開発力に加え、経営および事業推進の視点を備えた多様な人材の確保が、今後の成長を加速させる上で重要な経営課題であると認識しております。

こうした認識のもと、当社は上場企業としての信用力と社会的認知度を活かし、国内外から多様なバックグラウンドを持つ優れたビジネス人材の確保・登用を進めてまいります。これにより、当社が有する知的財産権の価値最大化を牽引するとともに、事業環境の変化を踏まえて柔軟かつ機動的に対応し得る戦略的な経営体制の構築を通じて、持続的な企業価値の向上を実現してまいります。

 

 

b コーポレート・ガバナンスの強化

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、経営の健全性・透明性の確保と、あらゆるステークホルダーとの信頼関係の構築が不可欠であると認識しております。特に当社は、上場企業、医療機関、公的研究機関などとの共同研究開発・事業提携を通じて研究開発を推進しており、こうした取引関係を維持・拡大していくためにも、社会的信用の継続的な向上が重要な経営課題となっております。このような認識のもと、当社は小規模な組織ながらも、実効性あるコーポレート・ガバナンス体制の整備を進めております。具体的には、管理部門の人員体制および内部統制機能の強化に加え、内部監査人と監査役との連携を通じて、業務執行の適法性および妥当性の監視機能をたかめております。また、財務報告に関わるリスクの提言と、経営における意思決定の質の向上を図ることで、健全かつ透明性の高い経営体制の構築を推進しております。今後も、ガバナンス体制の継続的な見直しと改善に努め、法令遵守・情報開示・リスク管理の強化を通じて、社会的責任を果たす企業としての基盤を一層強固なものとしてまいります。

 

c 資金調達・財務基盤の強化

社は、上市までに長期の研究開発期間を要するバイオベンチャーであり、その過程において、臨床研究や臨床試験に多額の資金を必要とします。こうした資金需要に対応するため、当社は外部からの資金調達手段の多様化を図りつつ、財務基盤の強化に取り組んでおります。具体的には、必要に応じた株式市場からのエクイティファイナンスに加え、金融機関からの融資、各種助成金・補助金の活用を通じて、中長期的な成長を支える資金を安定的に確保してまいります。また、運転資金確保の観点から、金融機関との間で、当座貸越契約(極度額10億円)を締結し、資金繰りの柔軟性向上を図っております。

⑥ 慶應義塾大学および他大学との研究協力体制の構築

当社は、慶應義塾大学をはじめとする国内外の大学・研究機関との共同研究を積極的に推進しております。すでに複数の研究機関との連携を開始しており、今後もさらなる拡充を図ってまいります。研究開発戦略の中核には、当社独自の助成制度であるT-SBIR(*4)を位置づけ、アカデミアとのネットワークを国内外に広く構築しています。これにより、高度な専門性を有する研究者による先端的な研究テーマを早期に発掘・創成・強化し、適切なリスクを取りながら、研究開発の推進と早期の事業化を目指す体制を整えております。持続的に価値ある研究開発を行ううえで、多様な知見と技術を有するアカデミアとの連携は極めて重要と考えており、このような認識のもと、共同研究契約等を通じて、大学・研究機関との信頼関係に基づく協力体制を今後も継続的に強化してまいります。

*4 T-SBIR(Tsubota Small Business Innovation Research)とは、米国の中小企業向け研究開発助成制度(SBIR)に着想を得て当社が設立した、大学や研究機関に対する独自の研究助成制度です。革新的なアカデミアの研究活動を支援し、その成果の事業化を推進することを目的としています。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、「ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする」というミッションのもと、慶應義塾大学医学部発のヘルスケア・ベンチャーとして、持続可能な社会の実現に貢献することを企業活動の中核に据えています。近年、世界的に進行する近視人口の増加、ドライアイによるQOLの低下、加齢に伴う老視の進行に加え、うつ病やパーキンソン病などの中枢神経系疾患の患者数も増加の一途をたどっています。現代社会が直面するこれらの医療課題に対して、独自の視点に基づく科学的アプローチと技術革新を強みに、イノベーションの創出に真摯に取り組んでいます。これらの社会課題に挑むことは、単なる医療ビジネスにとどまらず、誰もが年齢や生活環境に左右されずに健やかに暮らせる社会を実現するためのサステナブルな挑戦です。当社は、研究開発の推進に加え、パートナー企業やアカデミアとの連携を通じて、環境負荷の少ない医療技術やサービスの開発にも注力しています。こうした取り組みの一つひとつが、社会全体のウェルビーイング向上に貢献し、同時に企業としての持続的な成長にもつながるものと確信しています。当社は今後も、「科学で社会に貢献する企業」として、ステークホルダーの皆様とともにサステナブルな未来の実現を目指してまいります。

 

 

①ガバナンス

サステナビリティに関する方針を決定し活動を円滑に進めるため、当社では、原則として月1回定時取締役会を開催する他、必要に応じて臨時取締役会を開催しております。経営に関する重要事項を柔軟かつ迅速に決定し、経営基盤の強化、拡充に注力するとともに、その過程で生じた課題や問題点の解決も図っています。また経営及び業務執行に関する機動的な意思決定機関として経営会議を設置しており、毎月1回開催し、経営に関する重要事項の審議及び決議等を行っています。

また、持続可能な成長を目指し、大学の研究成果や知的財産を活用した商業化を通じて、社会実装を推進しています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献し、特に「3すべての人に健康と福祉を」「4質の高い教育もみんなに」「9産業と技術革新の基礎をつくろう」の3つの目標に対して、事業を通じて積極的に取り組んでいます。

 

②戦略

 研究開発推進と新たなパイプライン創出

アカデミア、研究機関といった共同研究先との継続的な研究開発と新規知財の発見、パートナー企業への知財の導出に注力しております。また新たなパイプラインの創出に向けて、共同研究先との新規契約を締結する等、陣容の拡大を図っています。

 

 人材の獲得

医療やライフサイエンスの領域におけるイノベーションは、世界が直面している社会課題の解決に強く結びついており、その事業推進力の源泉は優秀な人材の確保にあります。

当社では自社のシーズ・パイプラインに関連する研究をしている研究者を国内外から招聘し、オープンイノベーションによって外部の技術・アイディアを取り入れることで、既存事業の深化と新規事業の探索を目指しており、基礎研究、知財、臨床研究等で知見を有する人材に対して、国籍、性別、バックグランド、年齢を問わず、幅広く門戸を広げています。

また当社は事業の深化と新規事業に向けた探索を同時に追求するT型戦略を実践していくことに努めておりますが、このことは企業だけではなく、個々人の生き方にも言えるとの考えから、社員一人一人が自身の専門性を更に深化させるとともに、それを軸として専門以外の分野にも幅広く関心を持ち、ネットワークを築き、知識を広げていくことができる取り組みを進めています。同時に、女性活躍をはじめとするダイバーシティの推進も推進しています。

 

 社内環境整備に関する方針

当社では、在宅勤務やフレックス制度等、社員が個々の事情に合わせて働きやすい環境づくりに注力しており、今後も多様性の確保に向けた施策を推進してまいります。

 

③リスク管理

当社では、安定的に事業の継続を確保していくことを目的に、リスク・コンプライアンス委員会を原則として半期に1回開催し、当社のリスク管理体制の基盤となる「リスク管理規程」に基づき、経営における重大な損失、不利益等を最小限にくい止めるためリスクの把握、評価、対応を継続的に行っております。当委員会は、代表取締役社長、常勤取締役、非常勤取締役、執行役員、本部長、常勤監査役及び非常勤監査役で構成されており、代表取締役社長が議長を務めています。

 

④指標及び目標

育成方針や社内環境整備方針に関する具体的な指標は設定しておりません。

しかしながら、経営陣が社員と定期的に面接を実施し、各社員が日常業務の中で感じていることのヒアリングを行うとともに、人材獲得や育成方針、また労働環境等について意見交換を実施し、より働きやすい環境の実現や社内制度の改善に向けての取り組みも推進しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性がある主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、リスクの発生をすべて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意下さい。

当社は、医薬品、医療機器等の開発を行っていますが、医薬品、医療機器等の開発には長い年月と多額の研究費用を要し、各パイプラインの開発が必ずしも成功するとは限りません。特に研究開発段階のパイプラインを有する製品開発型バイオベンチャー企業は、事業のステージや状況によっては、一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられており、当社への投資はこれに該当します。

また、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。

 

① 医薬品及び医療機器パイプラインの開発及びそれに伴う収益獲得の不確実性

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

医薬品及び医療機器の開発には多額の研究開発投資と長い年月を要しますが、臨床試験で有用な効果を発見できないこと等により、研究開発が予定どおりに進行せず、開発の延長や中止の判断を行うことは稀ではありません。また、日本国内はもとより、海外市場への展開においては、各国の薬事関連法等の法的規制の適用を受けており、新薬等の製造及び販売には各国別に厳格な審査に基づく承認を取得しなければならないため、有効性、安全性及び品質等に関する十分なデータが得られず、予定していた時期に上市できずに延期になる、又は上市を断念する可能性があります。

これは、当社のパイプラインを他社に導出した場合も同様であり、当社が研究開発を行った医薬品及び医療機器候補及び他社に導出した医薬品及び医療機器の候補の上市が延期又は中止された場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

② 副作用発現

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

医薬品及び医療機器には、臨床試験段階からさらには上市以降において、予期せぬ副作用が発現する可能性があり、当社に対する信頼に悪影響が生じる可能性があります。これら予期せぬ副作用が発現した場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

③ 医薬品、医療機器等法その他の規制に関する事項

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

当社の属する医薬品及び医療機器業界は、研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、各国の医薬品、医療機器等法、薬事行政指導、医療保険制度及びその他関係法令等により、様々な規制を受けております。

医薬品及び医療機器は基礎研究から製造販売承認を取得するまでには、多大な開発コストと長い年月が必要となります。研究開発期間中に当初は見込んでいない法的規制の改定等により、医薬品及び医療機器として規制当局が認めない場合には、承認が計画どおり取得できず上市が困難になる可能性があります。これは開発品を他社に導出する場合も同様であり、当初計画した条件での導出が行えない可能性、導出そのものが困難になる可能性、導出した場合にその契約内容が変更になる可能性若しくは導出契約が解消される可能性があります。また、当社開発品への承認を取得できた際にも、健康保険の対象として保険収載されない場合や、計画どおりの保険価格が付されない可能性があります。このような事象が生じた場合、また、将来各国の医薬品、医療機器等法等の諸規制に大きな変化が生じた場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

 

④ 資源投入リスク

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:3年以内、影響度:中

当社は、上場時の公募増資等により調達した資金を用いて、研究開発の強化及び研究員を拡充することとしております。

当該画に基づき、研究開発力を核とした持続的成長を実現するための研究開発に、積極的に経営資源を投入する方針であり、2025年以降も引き続き、特定臨床研究費及び治験費への投入を計画しております。しかしながら、研究開発の成果が目標から大きく乖離した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、臨床試験の結果、予測していた有効性が証明できない、あるいは予測していない副作用が発現した等の理由で承認申請を断念しなければならない可能性があります。

 

⑤ 競合について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

医薬品及び医療機器業界は、国内外の製薬企業、バイオ関連企業、研究機関等が激しく競争しており、技術革新が急速に進む環境下にあります。このため、これらの競合先との競争の結果により、当社が導出した開発品あるいは研究開発中の開発品が市場において優位性を失い、研究開発の中止を余儀なくされるおそれがあります。また、当社の開発品がいち早く上市できた場合でも、これらの競合先が優位性のある製品を市場に投入し、当社の市場シェアが奪われる場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑥ 海外市場について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は、事業拡大戦略の一環として、海外展開を行ってまいります。進出にあたっては、現地の市場動向や関連法令の有無・内容等に関する調査を行い、慎重な判断を行っておりますが、今後、予期しない法規制の変更、政情不安等による社会的混乱等のリスクが顕在化し、当初の計画どおりに事業展開が進展しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 技術革新について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社が携わる研究開発領域は、技術の革新及び進歩が著しく速いバイオテクノロジー分野に属しております。そのため、当社は、大学、公的研究機関及び大手製薬会社等との連携を通じ、最先端の研究成果・情報を速やかに導入できる体制を構築する予定であります。

しかしながら、急激な研究の進歩等により医薬品及び医療機器の研究開発において有効と思われる研究成果等への対応が困難となった場合、当社の事業展開に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、必要な研究成果を常に追求するためには多額の費用と時間を要することから、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

 

⑧ 共同研究型パイプラインについて

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

当社は、開発中の医薬品及び医療機器に関し、パートナーである有力企業又は製薬会社等と共同研究開発契約及び実施許諾契約を締結しており、パートナーと締結する共同研究開発契約による契約金並びに現在開発中のパイプラインの導出時の契約一時金、開発進捗に伴うマイルストーン・ペイメント及びロイヤリティ収入等による収入を元にした事業収益計画を有しております。

しかしながら、このような提携契約には、パートナーによる解除が可能である旨の条項が含まれていることがあるため、パートナーの経営方針の変更や経営環境の極端な悪化等の当社がコントロールし得ない何らかの事情により、期間満了前に終了する可能性があります。現時点では現在のパイプラインに対してこれらの契約が終了となる状況は発生していませんが、本契約が期間満了前に終了した場合は、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

また、当社がパートナーに導出した医薬品及び医療機器候補は、パートナーが主体となって臨床試験及び承認申請を行うことになりますが、その進捗と結果が当社の事業戦略及び経営成績に大きな影響を及ぼします。当社は、導出後もパートナーをサポートしますが、臨床試験及び承認申請はパートナーが行うものであり、当社でコントロールすることはできません。したがって、臨床試験及び承認申請の進捗が当社の予期しない事由により遅滞が発生し得ること、臨床試験及び承認申請が断念されることによりマイルストーン・ペイメントやロイヤリティが得られず、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

なお、当社では今後、こうした開発中のパイプラインの中断や中止による経営成績や財政状態への影響を避けるため、パイプラインの複線化を行うとともに、早期より共同研究開発パートナーとの提携や導出することによって将来収益の一部を受けることと引き換えにリスクの低減を行ってまいります。また、技術的問題が要因で開発が中断した際には、成功確率がより高いターゲットへ研究資源の再配分を実施いたします。一方でパートナーの戦略的判断による中止の場合で当社が開発継続に合理性があると判断する場合は、自社又は別のパートナーとの共同研究によって開発を継続することを検討いたします。

その他、医薬品及び医療機器の研究開発には多額の資金が必要となることから、当業界においては組織再編やM&Aが盛んであり、パートナーの組織再編、競合他社による買収(競合他社から買収される)等、業界における競争の構図が短期間に塗り替えられる可能性があります。こうした大規模な企業組織再編が当社のパートナーに生じた場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑨ 特定の販売先への依存について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社の販売先のうち、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 c. 販売実績」に記載のとおり、総販売実績に対する割合が10%を超える相手先がロート製薬株式会社及びBeijing Yijie Pharmaceutical Technology等の4社となっております。当社といたしましては、特定顧客への依存度を引下げるため、大口新規顧客の開拓、既存顧客の深耕開拓に注力しておりますが、見込みどおりに顧客開拓が進まず、かつ、同社の業績が悪化した場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑩ 重要な契約について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

経営上重要と思われる契約の概要は、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載のとおりであります。現時点において、経営上の重要な契約の相手先とは、当該契約の遂行に支障をきたすような事象は発生しておりませんが、今後において、当該契約の期間満了、相手先の経営状態の悪化や経営方針の変更による契約解除その他の理由による終了、若しくは当社にとって不利な改定が行われた場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

 

⑪ 提携関係に関する事項について

a パートナー企業との提携関係について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は、開発品の導入や導出のほか、研究開発の各段階において広範な提携関係を構築し、それによって固定費の増加を回避しつつ最先端技術の取込みを図っております。特に研究開発本部では、組織の規模拡大を一義とせず、自社では専門性を有する少数の人材を確保するに留め、パートナー企業との協力・協業によって研究開発活動を遂行しております。当社は、自社の研究開発人員とこれらの提携関係をもって研究開発体制を構築しております。これら提携関係のうち、特に重要と考えられる契約は、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載のとおりであります。今後も事業基盤の強化、効率的な経営の実現に向けて、広範な提携関係の構築を推進してまいりますが、当社の計画どおりに提携関係が構築できない場合、提携関係に想定し得ない変化が生じた場合、提携の効果が当初の計画を下回る場合、若しくは提携関係が当社の意図に反して解消された場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

b 外部委託研究員との提携関係について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社の研究開発活動は、研究開発の各段階において外部委託研究員と広範な提携関係を構築し研究開発活動を行っており、研究開発活動において重要な役割を果たしております。

当社では、これらに外部委託研究員に過度に依存しない研究開発体制を築くために、研究開発体制の強化を図っております。しかしながら、当面の間はこれら外部委託研究員への依存度が高い状態で推移するものと考えております。このような状態において、これら外部委託研究員の研究開発活動への関与が何らかの理由により困難となった場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑫ 収益計上について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

当社の収益は、原則として(a)契約金に始まり順次、(b)成功報酬(マイルストーン・ペイメント)、(c)売上ロイヤリティで構成されております。

(a)契約金、(b)成功報酬(マイルストーン・ペイメント)は、当社の事業活動に依拠する部分が大きいものの、特に(b)について、パートナー企業における研究開発の進捗状況に大きく依存するものであり、研究開発結果により達成が困難となり共同研究開発が終了し、それ以降の収益が計上できなくなる可能性があります。

(c)売上ロイヤリティに至っては、パートナー企業における業務の進行状況に大きく依存するものであり、当社でのコントロールは困難な収益であります。そのため、当社の計画に対してパートナー企業における販売スケジュールの遅れや販売計画に変更等があった場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑬ 剰余金の分配について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

当社は、株主への利益還元については、重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存でありますが、当面は、多額の先行投資を行う研究開発活動の継続的かつ計画的な実施に備えた資金の確保を優先するため、配当等の株主還元は行わない方針としております。

この点、収益計上額の大きな変動若しくは、収益計上の時期の変更等により、将来的な剰余金の分配について遅れる可能性があります。

 

 

⑭ 会社組織に関する事項

a 社歴に関する事項

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社では、医薬品等業界又はその他専門分野での経験を有する人材を登用することに努めておりますが、企業体としての経験はいまだ浅く、今後予測できない事業上の問題等が発生し、これに対応する人材を確保できない場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

b 小規模組織に関する事項

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は、医薬品等を取り扱う企業としては小規模組織であるために、役職員一人一人が担当する業務及び責任範囲は相対的に広範となる場合が多く、退職あるいは休職等に対応する補充要員が十分でない環境にあります。今後の事業拡大に伴い、必要な人員増加を図ってまいりますが、多くの人材流出等があった場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

c 人材の確保及び育成に関する事項

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

当社の事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者や構成員等に強く依存しております。そのため、常に必要とされる人材の確保と育成に努めておりますが、このような人材確保又は育成が計画どおりに行えない場合は、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑮ 訴訟等に関する事項

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

当社は、本書提出日現在において提起されている訴訟はありません。しかしながら、将来何らかの事由の発生により、訴訟等による請求を受ける可能性を完全に回避することは困難であり、このような事態が生じた場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑯ 知的財産権

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社では研究開発をはじめとする事業展開において知的財産を使用する場合があり、必要に応じて使用許諾を他社から受けてまいります。

また、当社が保有している現在出願中の特許が全て成立する保証はありません。さらに、特許が成立した場合でも、当社の研究開発を超える優れた他社の研究開発により、当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在しております。当社の特許権の権利範囲に含まれない優れた技術が他社により開発された場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

また、当社では他社の特許権の侵害を未然に防止するため、当社として必要と考える特許の調査を実施しており、これまでに、当社の開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑰ 職務発明について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

役員、従業員等の職務発明の発明者から特許等を譲り受ける場合、当社は特許法に基づき相当の対価を支払わなければなりません。当社では「職務発明取扱規程」を設けておりますが、これまで発明者との間で問題は生じておりません。しかしながら、将来、発明者との間で対価の支払請求等について問題が生じる可能性があります。その場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

 

⑱ 特定人物への依存について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:15年以内、影響度:大

当社はこれまで、慶應義塾大学医学部眼科学教室の教授を務めていた坪田一男が近視、ドライアイ、老視の医療機器、医薬品等の開発を目的に設立した企業であり、坪田一男を中心として、基礎研究・研究開発をはじめとする事業の全般を推進してまいりました。当社設立は、坪田一男の研究成果の事業化を目的とするものであり、また、現在の当社と慶應義塾大学医学部眼科学教室との共同研究においても中心となっていることから、当社の研究開発活動において重要な位置付けを有しており、その依存度は極めて高いと考えられます。

また、坪田一男は、当社の筆頭株主であり、当社の経営基盤の安定のためにも、重要な位置づけを有しております。

当社は、今後においても坪田一男の当社への関与が重要であると考えており、何らかの理由により坪田一男の関与が困難となった場合等には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑲ 慶應義塾大学医学部眼科学教室との関係について

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は、自社での研究活動の他、慶應義塾大学医学部眼科学教室と共同研究を実施しており、特許権について共同保有する等しております。外部委託研究員の多くが慶應義塾大学にも所属しております。

当社は同大学から、商業化を行う大型特許については、全て買取をしておりますが、まだ商業化を計画していない一部の特許については買取をしていないため、今後同大学との間で、共有特許について同大学から独占的実施権の許諾を受け、契約一時金及びかかる特許権を第三者に実施許諾したことによる収入(契約一時金、マイルストーン収入、ロイヤリティ収入)の一定料率に相当する金額を同大学に支払うこと等を定めた契約を締結した場合は、当該契約に基づき、上記に該当する収入を受け取った場合には、一定率の金額を慶應義塾大学に支払うことになります。

また、同大学との取引については、良好な関係を維持しつつも当社又は株主の利益を害することのないよう、法規制を遵守するとともに、取締役会の監視等を通じて十分留意しております。しかしながら、このような留意にかかわらず、利益供与を疑われる等の事態が発生した場合や同大学との取引が継続できない事態が発生した場合は、当社の利益及び社会的評価を損ねる可能性があり、その結果として当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

⑳ 情報管理に関する事項

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

当社は、事業の過程において技術、営業に関しての機密情報を保持し、また一定の個人情報を有しております。これらの情報の外部への不正な流出を防止するため、セキュリティシステムの継続的な改善を図るとともに、情報の取り扱いに関する社員教育や、情報へのアクセス管理等、内部管理体制についても強化しております。しかしながら、予期せぬ事態により情報が流出する可能性は存在し、このような事態が生じた場合、社会的信用の失墜を招き、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります

 

㉑ 風評上の問題の発生について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は、開発における安全性の確保、法令遵守、知的財産権管理、個人情報管理等に努めております。しかしながら、当社に関してマスコミ報道等において事実と異なる何らかの風評上の問題が発生した場合、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす場合があります。

 

㉒ 自然災害等の発生

発生可能性:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は、東京都新宿区に本社及びラボを設置しており、事業活動や研究開発活動に関する設備及び人員が現所在地に集中しております。このため、現所在地の周辺地域において、地震等の自然災害、大規模な事故、テロ等が発生し、当社設備の損壊、各種インフラの供給制限等の不測の事態が発生した場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

㉓ 大株主について

発生可能性:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社創業者かつ代表取締役社長である坪田一男の当事業年度末日現在での議決権所有割合は、直接所有分として47.00%であります。また、坪田一男の資産管理会社である株式会社坪田及び二親等内血族の議決権を合算した所有割合は61.78%となっており、引き続き大株主となる見込みであります。坪田一男は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しています。

坪田一男は、当社の創業者かつ代表取締役社長であるため、当社としても安定株主であると認識していますが、将来的に何らかの事情により当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

㉔ 当社株式の流動性について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は、当社株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、㈱東京証券取引所の定める流通株式比率は当事業年度末日現在において32.61%であります。今後、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

今後は、大株主からの売出、当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加分を勘案し、これらの組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針でございます。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当事業年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における日本経済は、賃金の伸び、インバウンド需要の回復、企業による積極的な設備投資を背景に、緩やかな回復基調で推移しました。一方で、地政学的リスクに伴うエネルギー・原材料価格の上昇、欧米との金利差に起因する為替変動、海外情勢の不透明感、さらには米国の政権交代に伴う通商問題の再燃など、不確実性の高い経済環境が継続しております。こうした状況下、当社は慶應義塾大学医学部発のベンチャー企業として、「ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする」というミッションを掲げ、近視、ドライアイ、老視、脳疾患などアンメット・メディカル・ニーズの高い分野において革新的なソリューションの創出を目指し、事業の拡大と収益力の強化に取り組んでまいりました。 研究開発活動では、新たな知的財産の創出とパイプライン拡充を目的とした基礎研究に注力するとともに、共同研究先との連携を通じた開発体制の強化を進めました 近視領域では、バイオレットライト技術を用いた医療機器「TLG-001」が検証的臨床試験においてすべての被験者の治療期間を終了し、観察期間に移行しました。また、点眼薬「TLM-003」は、ロート製薬株式会社との長期開発契約のもとで第Ⅰ相臨床試験を完了し、安全性が確認されています。さらに、海外においても臨床試験の準備を進めております。新たな薬理機序に基づく近視進行抑制薬「TLM-007」については、現在、特定臨床研究を実施中です。 ドライアイ領域においては、マイボーム腺機能不全を対象とした「TLM-001」について、マルホ株式会社が国内で臨床試験を進行中です。 脳疾患領域では、バイオレットライト技術を応用した医療機器「TLG-005」に関し、パーキンソン病、うつ病、軽度認知障害(MCI)を対象とする特定臨床研究を終了しました。いずれの研究においても安全性が確認され、うつ病においては有効性が示唆され、パーキンソン病においては一部の症状に改善傾向が認められました。 その他の分野では、バイオレットライト技術を用いた女性の月経不順治療機器「TLG-021」の臨床研究を実施しており、サーカディアンリズム調整を通じた新たな治療法の確立を目指しています。また、網膜色素変性症向け医療機器「TLG-020」については、特定臨床試験の準備を進めております。加えて、老齢犬における認知機能改善を目的とした研究も公的支援のもとで進行中であり、動物医療分野への展開可能性も探っています。 事業開発面では、国内外のパートナー企業との間で4件の導出契約を締結しました。海外では、中国の大手眼科医薬品メーカーであるShenyang Xingqi Pharmaceutical Co., Ltd.と特定特許に関する独占実施許諾契約を締結し、中国市場への本格展開に向けた基盤を確立しました。また、Beijing Yijie Pharmaceutical Technology Co., Ltd.とはTLG-001に関する基本合意契約を経て、2025年3月に正式なライセンス契約を締結しました。さらに、別の海外製薬企業とも非臨床・臨床データに関するライセンス契約を締結しています。国内では、ロート製薬株式会社と開発中の点眼薬に関する独占評価契約を締結しました。また、国際学会や展示会等への積極的な参加を通じ、当社の研究成果や知的財産の認知度向上とビジネス化を推進しました。 これらの活動の結果、当事業年度の経営成績は売上高、経常利益、当期純利益のいずれも4年ぶりに過去最高を更新するなど、着実な成長を遂げました。 なお、当社は研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載は行っておりません。

(単位:千円)

 

売上高

営業利益

又は

営業損失

(△)

経常利益

又は

経常損失

(△)

当期純利益

又は

当期純損失

(△)

1株当たり

当期純利益

又は

1株当たり

当期純損失

(△)

当事業年度

1,357,133

235,467

281,499

205,766

8.04円

前事業年度

673,532

△649,554

△636,371

△641,317

△25.15円

増減

683,601

885,021

917,870

847,083

33.19円

 

 

 

② 財政状態の状況

 

前事業年度

当事業年度

増減

資産合計(千円)

2,295,159

2,503,123

207,964

負債合計(千円)

927,927

915,850

△12,077

純資産合計(千円)

1,367,231

1,587,272

220,040

自己資本比率(%)

59.6

63.4

3.8

1株当たり純資産(円)

53.45

61.91

8.46

 

 
(流動資産)

当事業年度末の流動資産の残高は、2,445,308千円となり、前事業年度末に比べて221,611千円増加いたしました。これは、売掛金が528,046千円、未収消費税等が62,187千円増加し、現金及び預金が344,547千円、未収還付法人税等が28,998千円減少したことが主な要因であります。

(固定資産)

当事業年度末の固定資産の残高は、57,814千円となり、前事業年度末に比べて13,648千円減少いたしました。これは、工具、器具及び備品が7,819千円、特許権が1,970千円が減少したことが主な要因であります。
(流動負債)

当事業年度末の流動負債の残高は、846,636千円となり、前事業年度末に比べて9,088千円増加いたしました。これは、買掛金が115,296千円、未払金が28,425千円、未払法人税等が81,241円増加し、契約負債が87,816千円、契約損失引当金が121,910千円減少したことが主な要因であります。
(固定負債)

当事業年度末の固定負債の残高は、69,214千円となり、前事業年度末に比べて21,166千円減少いたしました。これは、長期借入金が21,166千円減少したことが要因であります。

  (純資産)

当事業年度末の純資産合計は、1,587,272千円となり、前事業年度末に比べて220,040千円増加いたしました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本準備金がそれぞれ7,137千円増加し、当期純利益205,766千円を計上したことが要因であります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、1,538,853千円となりました。当事業年度期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は317,754千円(前年同期は301,350千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純利益281,049千円、仕入債務の増減額115,296千円、減価償却費28,754千円、法人税等の還付額27,575千円、未払金の増減額22,732千円の増加要因があった一方、売上債権の増減額528,046千円、契約損失引当金の増減額121,910千円、契約負債の増減額87,816千円、未収消費税等の増減額66,959千円の減少要因があったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は14,547千円(前年同期は12,001千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出13,994千円の支出があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は12,246千円(前年同期は35,736千円の収入)となりました。これは、株式の発行による収入14,274千円の収入があった一方で、長期借入金の返済による支出26,520千円の支出があったことによるものです。

 

 

④ 生産、受注、仕入及び販売の状況

a. 生産実績

当社は直接的な生産活動は行っておりませんが、製造原価の品目としては主に経費のみであることから、生産実績にはなじまないため、記載を省略しております。

 

b. 受注実績

当社の事業による共同研究は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。

 

c. 販売実績

販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は、研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

セグメントの名称

販売高(千円)

前期比(%)

研究開発事業

1,357,113

201.5

合計

1,357,113

201.5

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。なお、前事業年度のLaboratoires Théa、Shenyang Xingqi Pharmaceutical Co., Ltd.、Beijing Yijie Pharmaceutical Technologyに対する販売実績はありません。

相手先

前事業年度

(自  2023年4月1日

  至  2024年3月31日)

当事業年度

(自  2024年4月1日

  至  2025年3月31日)

販売高

(千円)

割合

(%)

販売高

(千円)

割合

(%)

ロート製薬㈱

531,548

78.9

181,501

13.4

㈱ジンズホールディングス

105,107

15.6

9,302

0.7

Laboratoires Théa

521,688

38.4

Shenyang Xingqi
Pharmaceutical Co., Ltd.

445,870

32.9

Beijing Yijie Pharmaceutical Technology

180,000

13.3

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析

当事業年度末の経営成績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりでありますが、主要な表示科目に沿った認識及び分析は次のとおりであります。

 

・売上高

当事業年度の売上高は1,357,133千円(前期比683,600千円増)となりました。これは主に、国内外を対象としたTLG-001(*1)の実施許諾契約による、契約一時金280,000千円、TLM-003(*2)の実施許諾契約及び点眼薬に関する知的財産実施許諾契約により、契約一時金及びマイルストーン収入計1,047,558千円、合計1,327,558千円の計上によるものであります。

*1 バイオレットライト技術を用いた、近視進行抑制のための医療機器開発

*2 近視進行抑制作用を発揮する点眼薬開発

 

・売上原価、売上総利益

当事業年度の売上原価は180,231千円(前期比471,921千円減)となりました。これは主に、TLG-001の治験等における研究費の計上及び2026年3月期に終了予定であるTLG-001の検証的臨床試験およびその後に実施される統計解析(期間は1年を予定)に係る費用が契約一時金を超過する見込みとなり、前期に契約損失引当金として328,303千円を計上したことによるものであります。その結果、売上総利益は1,176,901千円(前期比1,155,521千円増)となりました。

 

・販売費及び一般管理費、営業利益

当事業年度の販売費及び一般管理費は941,433千円(前期比270,499千円増)となりました。これは主に、事業拡大による人件費255,989千円(前期比37,410千円増)、研究開発強化による研究開発費254,107千円(前期比48,810千円増)及び特許費用98,351千円(前期比44,781千円増)等の計上によるものであります。その結果、営業利益は235,467千円(前期比885,021千円増)となりました。

 

・営業外収益、営業外費用、経常利益

当事業年度の営業外収益は47,118千円(前期比32,589千円増)となりました。これは主に、為替差益38,170千円(前期比38,170千円増)、助成金収入4,024千円(前期比1,330千円減)及び償却債権取立益1,584千円(前期比5,966千円減)の計上によるものであります。営業外費用は1,085千円(前期比258千円減)となりました。これは、支払利息1,085千円(前期比80千円増)の計上によるものであります。その結果、経常利益は281,499千円(前期比917,870千円増)となりました。

 

・特別損失、法人税等合計、当期純利益

当事業年度の特別利益の計上はありません。特別損失は449千円(前期比449千円増)となりました。これは主に固定資産売却損449千円(前期比449千円増)の計上によるものであります。当事業年度の法人税等合計額は75,283千円(前期比70,337千円増)となりました。これは、法人税、住民税及び事業税を75,283千円(前期比74,333千円増)を計上したことによるものであります。これらの結果を受け、当事業年度の当期純利益は205,766千円(前期比847,083千円増)となりました。

 

 

② 財政状態

財政状態につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討

キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容

当社は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、各パイプラインの事業化(上市)を目指して実施許諾または共同研究開発を行うベンチャー企業であり、事業化後(上市後)のロイヤリティ収入を安定的に計上するステージにはまだありません。従いまして、当社は、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)といった経営指標を目的とせず、各パイプラインの進捗状況等を適時かつ正確に管理することを目標においた事業活動を推進してまいりました。当事業年度の達成状況につきまして、売上高については、国内を対象としたTLG-001の実施許諾契約によるマイルストーンを達成、TLM-003の共同研究契約によるマイルストーンを達成及び当社が保有し、また今後保有する点眼薬に関する知的財産権及び研究開発成果に関し、知的財産実施許諾契約を締結したことによる契約一時金等により1,357,133千円となりました。また、研究開発費については、254,107千円となりました。当期の経営成績並びに研究開発活動の詳細につきましては「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」並びに「第2 事業の状況 6研究開発活動」に記載のとおりであります。

今後もパートナー企業とともに共同研究開発を行うため、基礎研究の強化を図るとともに、国内に展開している各パイプラインを海外へと横展開を推進し、各パイプラインの進捗状況等を目標に努めてまいります。

なお、パイプラインの開発の進捗については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 当社のパイプライン」に記載しております。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性

当社の資金の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社は、事業上必要な資金を手許資金で賄う方針でありますが、事業収益から得られる資金だけでなく、株式市場からの必要な資金の獲得や銀行からの融資、補助金等を通して、安定的に開発に必要な資金調達の多様化を図ってまいります。資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、現金及び現金同等物において確保を図っております。資金需要としては、継続して企業価値を増加させるために、主に継続した研究開発や必要な設備投資資金となります。

 

 

⑥ 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりましては、資産、負債、収益及び費用に影響を与える見積り及び判断を必要としております。

当社は財務諸表の基礎となる見積り及び判断を過去の実績を参考に合理的と考えられる判断を行った上で計上しております。しかしながら、これらの見積り及び判断は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものは次のとおりであります。

 

(仕掛品の評価)

仕掛品の貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しております。

当該収益性の見積りには、マイルストーンの達成などの将来の未確定事象に係る見積要素が含まれており、パートナー企業における研究開発の進捗状況に大きく依存するものであります。

そのため、翌事業年度において、研究開発結果によりマイルストーンの達成が困難となり共同研究開発が終了した場合には、損失が発生する可能性があります。

 

(TLG-001(国内)実施許諾契約に係る契約損失引当金の見積り)

TLG-001(国内) 実施許諾契約に係る契約損失引当金は、実施許諾契約で定められているマイルストーン達成に必要な見積り総費用が、マイルストーン達成時に得られる収入を超過する額を見積り損失額として算定しています。

契約損失引当金の見積り要素として、マイルストーン達成までに要する期間とその費用が含まれております。マイルストーン達成までに要する期間とは、実施許諾契約で定められている条項を達成するために要する期間であり、当初予見していなかった事象が生じた場合、その期間が延長されます。その結果、翌事業年度において、マイルストーン達成までに要する期間が延長され、追加費用の見積りが必要になるため、見積りの不確実性は高まります。

 

⑦ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

⑧ 経営者の問題認識と今後の方針にあたって

当社は、“ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする“をミッションに掲げ、「近視、ドライアイ、老視、脳疾患の治療に画期的なイノベーションを起こす」ということを経営方針としております。この経営方針実現のために、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の課題に対して取り組んでまいります。

 

 

5 【重要な契約等】

(1) 実施許諾契約

相手先の名称

相手先の
所在地

契約品目

契約
締結日

契約期間

契約内容

株式会社ジンズホールディングス

日本

TLG-001

実施許諾契約

2019年

5月13日

製造販売承認取得日以後に到来する最初の4月1日から10年間が経過する日まで

TLG-001の日本国内における独占実施許諾契約

ロート製薬株式会社

日本
 アジア

TLM-003

実施許諾契約

2020年

10月1日

発効日からロート製薬株式会社から当社への対価の支払いが全て終了する日まで

TLM-003の日本国内およびアジア(ベトナム、台湾、インドネシア)にける独占実施許諾契約

マルホ株式会社

日本

TLM-001

実施許諾契約

2021年

4月20日

製品販売した日から10年間

TLM-001の日本およびアメリカ、フランス、イギリス、ドイツ等における独占特許実施許諾

Laboratoires Théa

フランス

TLM-003

実施許諾契約

2022年

12月21日

各国、対象知的財産権の存続期間が全て終了する日又は上市後10年経過する日のいずれか遅い日まで

TLM-003の米欧における独占実施許諾契約

ロート製薬株式会社

日本

TLM-018

実施許諾契約

2024年

3月8日

発効日からロート製薬株式会社から当社への対価の支払いが全て終了する日まで

TLM-018の日本国内における独占実施許諾契約

Shenyang Xingqi

Pharmaceutical Co., Ltd.

中国

点眼薬

実施許諾契約

2024年

9月5日

対象地域における特許満了日もしくはLocal MPA承認に基づく販売後12年又はNMPA承認に基づく発売後8年間を経過した日まで

中国とアジアにおける当社プログラムの独占実施許諾契約

ロート製薬株式会社

日本

点眼薬

独占評価契約

2024年

10月1日

発効日から評価期間終了の通知または実施許諾契約の締結まで

点眼薬に関する知的財産権の独占評価契約

Laboratoires Théa

フランス

点眼薬

使用許諾契約

2024年

10月15日

対象地域における特許満了日まで

非臨床試験データに関する独占使用許諾契約

Beijing Yijie

Pharmaceutical Technology Co.,

Ltd.

中国

TLG-001

実施許諾契約

2025年

3月31日

対象地域における特許満了日もしくは販売後9年間を経過した日まで

TLG-001の中国における独占実施許諾契約

 

(注) 上記契約の対価として契約一時金及びマイルストーン・ペイメントを受けとっております。

 

(2) 共同研究開発契約

相手先の名称

相手先の
所在地

契約品目

契約
締結日

契約期間

契約内容

ロート製薬株式会社

日本

共同研究契約

2020年

10月1日

2020年10月1日から

2028年3月31日まで

近視抑制のメカニズム、リバウンド等の基礎研究に関する共同研究開発

FrontAct株式会社

日本

共同研究契約

2021年

3月30日

2021年3月30日から

2025年3月31日まで

脳活性化バイオレットライトメガネTLG-005を用いたバイオレットライトのうつ病、軽度認知障害についての共同研究

 

(注) 上記契約の対価として契約一時金及びマイルストーン・ペイメントを受けとっております。

 

 

(3) 基本合意契約

該当する事項はありません。

 

(4) 研究機関等の主な受託・共同研究契約

相手先の名称

相手先の
所在地

契約品目

契約期間

契約内容

学校法人慶應義塾

(医学部眼科学教室)

日本

共同研究契約

2024年4月1日から

2027年3月31日まで

近視進行の分子機序の解明とそれに基づく治療開発

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社では、近視、ドライアイ、老視、脳疾患領域に関する研究開発に注力しており、当事業年度における研究開発費は254,107千円であります。なお、当社は研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載はしておりません。

各領域に関する研究開発活動は以下のとおりであります。

 

(a) 近視領域

バイオレットライトによる近視進行抑制機器であるTLG-001は、日本国内において、2022年6月より医療機器製造販売承認の取得に向けた最終段階の検証治験を開始し、現在は全ての被験者の治療期間を終了し、観察期間に移行しております。

近視進行抑制薬TLM-003については、ロート製薬株式会社と長期の開発契約を締結しており、同社により第1相臨床試験が終了し、安全性が確認されています。2025年より第2相臨床試験を開始する予定です。また、2022年12月にはLaboratoires Théa社と米欧を中心とした地域における独占的実施許諾契約を締結し、欧州での臨床試験の準備を進めております。

TLM-007については、特定臨床研究を実施中であり、新たな薬理機序に基づく近視進行抑制薬として開発中です。

また、慶應義塾大学医学部眼科学教室との共同研究においては、近視進行の分子機序の解明およびバイオレットライトによる作用機構の解析を進めており、新たな治療標的の探索および革新的近視治療薬の創出を目指しています。

さらに、2024年9月にはShenyang Xingqi Pharmaceutical Co., Ltd.と中国における眼科用医薬品の独占的実施許諾契約を締結し、中国での臨床試験も準備中です。

 

 

(b) ドライアイ領域

イボーム腺機能不全に対する治療薬TLM-001については、マルホ株式会社と日本国内および米国、フランス、英国、ドイツなど複数地域における実施許諾契約および長期の開発契約を締結しており、同社により日本国内での臨床試験が進められています。

 

(c) 脳疾患領域

イオレットライトによる脳神経疾患治療機器であるTLG-005については、うつ病、パーキンソン病、および軽度認知障害を対象とした特定臨床研究を実施しました。いずれの研究においても機器の安全性が確認されており、うつ病においては有効性を示す結果が得られました。パーキンソン病においては、一部の症状に対して改善傾向が示唆される結果が得られており、更なる検討が期待されます。軽度認知障害に関する研究では、主要な有効性指標において統計的有意差は確認されなかったものの、現在得られたデータを基に詳細な解析を進めております。

 

(d) その他領域

その他の領域においては、以下の研究活動を公的研究助成も活用しながら実施しています。

円錐角膜治療機器TLG-003は、特定臨床研究が終了し、現在は今後の開発方針を検討中です。

バイオレットライト照射による女性の月経不順治療機器TLG-021に関しては、サーカディアンリズムの調整を通じた非薬物的かつ副作用の少ない治療手段の確立を目指し、現在臨床研究を実施中です。

網膜色素変性症に対する医療機器TLG-020については、特定臨床試験の準備を進めております。

また、老齢犬の認知機能改善を目的とした研究も公的支援のもとで実施しており、動物医療への応用可能性についても検討を進めています。老齢犬の認知機能改善の試験を実施中です。