文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「わたしたちは、たゆみない努力で健康を願うすべての人々に新たな価値を創造し、豊かな社会づくりに貢献」することを経営理念に掲げ、自社のモノづくりの強みを生かし、世界に広がる販路を活用することで、グローバルヘルスケアトップ企業の一角として世界中の健康を願う皆さまのお役に立ち続ける企業を目指しております。
また、「精緻な技術でヘルスケアの未来を切り拓くリーダーとなる」をビジョンとして設定しており、高品質な医療を、誰もが身近に享受できる未来の実現に向けて、強みである精緻な技術を基盤に、医療従事者や研究者の皆さまと共創し、健康を願うすべての人々のために、ヘルスケアの未来を切り拓いてまいります。
(2)経営環境
世界的な物価高や金融引き締めによる金利上昇等の金融不安に加え、米中の通商問題やロシア・ウクライナ情勢による影響、米国政府による関税政策の動向等、世界経済の景気の不確実性は依然として残っておりますが、刻一刻と変化するこれらの状況に対し、柔軟かつ迅速な対応を図ってまいります。
当社グループを取り巻くグローバルなヘルスケアビジネスにおける環境は、先進国で進行する少子高齢化と世界的な生活習慣病の増加やがん患者の増加、それらに対する様々な技術革新が行われています。その一方で各種医療基準・規制の強化に加え行政の医療費削減の動きが見られます。糖尿病マネジメントに関して、血糖値測定システム(Blood Glucose Monitoring(以下、「BGM」))事業の市場規模は、先進国市場における保険償還額の見直しや持続血糖値測定器(Continuous Glucose Monitoring(以下、「CGM」))の普及拡大等により、今後3年間の年平均成長率は4~5%の縮小傾向と見込んでおります。一方、新興国市場では糖尿病患者数の増加等により市場規模は成長しております。ヘルスケアソリューションについては、日本の受託臨床検査市場では診療報酬改定を背景とした一部検査の受託価格の下落影響等がある一方で、遺伝子・ゲノム検査等の領域は今後の市場拡大が見込まれております。日本における電子カルテシステムの普及は未だ途上にあり、今後も新規開業時の導入や既存開業医においてもレセプトコンピュータ更新時に電子カルテシステムの導入が進むことが予想されます。政府は「医療DX令和ビジョン2030」等、医療DXの推進を図る方針を示しており、医療分野でのデジタル化の動きが加速しております。また、「導入コストの削減」「システム運用・管理費用・人員の削減」「災害時対策」等を訴求点にクラウド型電子カルテが注目されており、導入が進む可能性があります。診断・ライフサイエンスにおいては、病理市場は、がんの発病や検査の増加及び個別化医療の進展によるがんの診断数の増加傾向等を背景に、デジタルパソロジーや人工知能(AI)を駆使した先進的な技術の活用も進んでいます。ライフサイエンス機器市場は、COVID-19に関連した需要が落ち着く一方で、デジタル化やIoTをはじめとする技術革新もあり、機器の高度化と多様化が進み、継続的な需要増が見込まれています。また、細胞及び遺伝子治療(CGT)市場においては、製薬企業やバイオテック企業によってオンコロジー(腫瘍学)領域や新規抗菌薬等の研究開発・創製も積極的に進められており、今後も世界的な市場拡大が見込まれています。その様な環境の中、当社グループは、これまで培った高品質・高性能なモノづくりとデジタルソリューションによる顧客基点のイノベーションを強みとし、事業推進に取り組んでまいります。
(3)目標とする経営指標
当社グループは、「精緻な技術でヘルスケアの未来を切り拓くリーダーとなる」をビジョンとして掲げ、グローバルヘルスケアトップ企業の一角を目指しております。それらの到達を具現化するためには事業規模を拡大し収益性を向上させることが経営上重要であると認識し、売上収益、営業利益、(調整後)EBITDA及び親会社の所有者に帰属する当期利益を重要な経営指標として位置づけ、事業の進捗とそれらの充足状況を分析し経営課題に対処していく方針です。なお、(調整後)EBITDAについては、①営業利益をベースとした指標であり、事業の収益性を示す指標であること、②事業の収益性を評価する指標としてグローバルに活用されている指標であること、③キャッシュ創出力を示す指標の1つであり、成長に向けた投資余力を示す指標であることから、当社グループにおける重要な経営指標の1つとして位置付けております。(調整後)EBITDAの算定方法については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① グローバル規模での中長期の成長を支える社内体制の構築・強化
当社グループは、2016年のBayer AG社の糖尿病ケア事業の買収、2019年のThermo Fisher Scientific Inc.からの病理事業の買収及び株式会社生命科学インスティテュート(現三菱ケミカルグループ株式会社のグループ会社)からのLSIMの買収及び、2023年の富士フイルムヘルスケアシステムズ株式会社の電子カルテ・レセプト関連事業の取得を経て、事業基盤の強化、事業拡大を進めております。これに伴い、グローバルでのグループガバナンスの向上、内部統制に係る体制の強化、各国での法令順守の徹底に向けた社内体制の構築・強化に努めてまいります。
② 事業及び収益基盤の拡大
当社グループは、顧客ニーズや技術革新の変化・進展が目覚しいヘルスケア業界の中で、「精緻な技術でヘルスケアの未来を切り拓くリーダーとなる」ことを目指し、「糖尿病マネジメント」、「ヘルスケアソリューション」、「診断・ライフサイエンス」の3つの事業ドメインで事業を行っております。
当社グループは、2024年11月に「中期経営計画2027」を策定し、2030年を目標に当社グループが目指すべき姿として、「精緻な技術でヘルスケアの未来を切り拓くリーダーとなる」を新しいビジョンに定めました。このビジョンのもと、2030年までを2つのPhaseに分け、Phase1の「中期経営計画2027」を下記に位置づけました。
本中期経営計画を着実に実行し、企業価値の向上に努めてまいります。
<中期経営計画2027の位置づけ>
・ビジョンの実現のため、「成長に向けた基盤構築」をPhase1、「診断・ライフサイエンス領域を核とした持続的な成長の実現」をPhase2として取り組んでまいります。
・Phase1の中期経営計画2027では、重点施策として、「収益基盤強化のための構造改革」「ポートフォリオ管理強化」、「診断・ライフサイエンス領域への注力」の3つの施策を実行してまいります。

③ 借入金の返済について
当社の借入金は、過去に行ったM&A等により総資産の過半を占める水準となっておりますが、今後見込まれるフリー・キャッシュ・フローにより返済可能な水準であると考えております。当連結会計年度におきましては、手許資金を活用して事業投資や設備増強、及び借入金の返済等を実施しつつ、資金の状況を見ながら資産を活用した資金調達を行っております。引き続き事業における資金需要に鑑みつつ、早期の財務体質強化に努めてまいります。
④ PHCグループとしての認知度の向上
当社グループは、2014年にパナソニックグループよりカーブアウトし、2018年4月にはグループのコーポレートブランドを「PHC」に変更しております。各事業はそれぞれに長い歴史を持ち、長年お客様に親しまれてきた事業・製品ブランドを有しておりますが、2021年10月の東京証券取引所市場第一部(現在、東京証券取引所プライム市場)への上場を機に、今後はグループとしての認知度を更に高めるべく、各事業・製品ブランドの強化に努め、併せて様々な媒体を通じたIR・広報活動を行うことで、投資家をはじめとするあらゆるステークホルダーの皆様に対してPHCグループの認知度をグローバルに向上させるよう努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
PHCグループは、「中期経営計画2027」の中で事業の成長領域を定義づけ、今後の事業成長を牽引するための柱を明確化し、同時にESG経営の強化を加速させることを宣言しました。当社グループは、経営理念「わたしたちは、たゆみない努力で健康を願うすべての人々に新たな価値を創造し豊かな社会づくりに貢献します」を形にしていくための重要課題(マテリアリティ)を特定し、それぞれの指標(KPI)と目標を設定しました。今後、グループ一丸となってサステナビリティ経営を推し進めていきます。
<サステナビリティ経営>
1.ガバナンスとリスク管理
PHCグループでは、取締役会監督のもと、代表取締役社長を委員長とし、最高経営陣(執行役員)と事業部長をメンバーとしたサステナビリティ委員会を設置しています。本委員会では、PHCグループの重要課題(マテリアリティ)の特定、それらに対する指標(KPI)と目標の決定、実績の評価及び改善指示等のモニタリング、新規規制やガイドラインを含むその他サステナビリティに関する活動全般の管理や討議、決定に関する審議を実施しています。決定事項は、各事業部並びにコーポレート部門から選出されたメンバーから成るサステナビリティチームに指示され、各KPIに対する目標値の達成を目指した取り組みやその他サステナビリティに関連する活動等、グループ全体でサステナビリティ経営を実践できる体制を構築しています。なお、サステナビリティ委員会で報告・討議・審議された内容は、社内規程に準じて経営会議及び取締役会への付議・報告を行います。
サステナビリティ委員会は原則として年4回開催し、その内容を取締役会に年2回以上報告します。取締役会はサステナビリティ活動の妥当性、有効性やリスクについて管理・監督いたします。
サステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ担当部門とリスク担当部門が連携し、社内外の環境の変化を考慮しながらリスクアセスメントを実施します。特定したリスクや対応策は「サステナビリティ委員会」で評価し、「リスクマネジメント委員会」と連携しながら管理を行っていきます。
リスクマネジメント体制は「
●サステナビリティ推進体制
●サステナビリティ委員会 構成
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委員長 |
代表取締役社長・CEO |
|
副委員長 |
代表取締役副社長・COO・CSO |
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委員 |
専務執行役員・CAO・CHRO・CTO、常務執行役員・CFO、常務執行役員、執行役員、アセンシア BGM事業部長、CGM事業部長、LSIメディエンス LSIM事業部長、WEMEX ヘルスケア・ITソリューション事業部長、Mediford CRO事業部長、epredia病理事業部長、PHCbi バイオメディカ事業部長、PHCIVD診断薬事業部長 |
●サステナビリティ委員会での主な議論
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2024年4月 |
・マテリアリティ・KPI・目標値に対する進捗報告 ・グループとして優先的に取り組むESG(決議) ・2024年度の計画(決議) |
|
2024年7月 |
・CSRD対応進捗報告 ・PHCグループ環境・衛生・安全方針制定 ・サプライチェーンGHG排出量算定プロジェクト進捗報告 ・主要ESG評価スコア報告 |
|
2024年10月 |
・CSRD対応進捗報告 ・EcoVadis結果報告 ・グローバルESG研修の定期的な実施(決議) ・グループとして優先的に取り組むESGの見直し(決議) ・CFP(カーボンフットプリント)算定準備(決議) |
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2025年1月 |
・サプライチェーンGHG排出量算定、第三者の保証声明書取得報告と開示(決議) ・CSRD対応進捗報告 ・SBT認証申請の進捗報告 |
2.戦略
マテリアリティの特定
PHCグループは、長期的視点でサステナビリティ経営を推進するため、グローバルに取り組む重要課題(マテリアリティ)の11領域と、それぞれの指標(KPI)を設定しました。「中期経営計画2027」と連動させながらグループ一丸となって推進し、社会の持続可能な発展に貢献していきます。
マテリアリティ特定プロセスは当社ウェブサイトをご参照ください。
3.指標と目標
PHCグループでは、重要課題(マテリアリティ)の特定と、それらに対する指標(KPI)と目標を下表のとおり設定し、取り組みを推進しています。なお、マテリアリティ「気候変動への取り組み」「省資源化による環境への配慮」の目標値の基準年は、透明性の確保のため、環境関連データにおいて第三者による検証を受けた2023年度の数値とします。
|
区分 |
マテリアリティ |
KPI |
目標値 |
2023年度 実績値・進捗 |
2024年度 実績値・進捗(注2) |
|
環境 |
気候変動への取組(注3) |
二酸化炭素排出量の削減(Scope 1, 2) |
2040年までのカーボンニュートラル 2030年までに42%削減(2023年比) |
Scope 1:
(基準値) Scope 2:
(基準値) |
25年下期開示予定 |
|
二酸化炭素排出量の削減(Scope 3) |
2030年までに25%削減(2023年比) |
Scope 3: tCO2 (基準値) |
25年下期開示予定 |
||
|
省資源化による環境への配慮 |
製造拠点・ラボ等における連結売上高あたりの取水量の削減 |
2030年までに15%削減(2023年比) |
1.2 m3/百万円 (基準値) |
25年下期開示予定 |
|
|
連結売上高あたりの梱包材量の削減 |
2030年までに10%削減(2023年比) |
12.8kg/百万円 (基準値) |
25年下期開示予定 |
||
|
製造拠点・ラボ等における連結売上高あたりの廃棄物量の削減 |
2030年までに20%削減(2023年比) |
13.0kg/百万円 (基準値) |
25年下期開示予定 |
||
|
サーキュラーエコノミー社会の推進 |
製造拠点・ラボ等における廃棄物のリサイクル割合(サーマルリサイクル除く) |
2030年までに90% |
46% |
25年下期開示予定 |
|
|
プラスチック梱包材における再生プラスチックの割合 |
2030年までに10% |
0% |
25年下期開示予定 |
||
|
社会 |
事業の発展を支えるヘルスケアイノベーションの創出 |
PHCグループの特許出願件数(意匠、実用新案含む) |
- |
155件 |
164件 |
|
PHCグループで保有する登録特許件数(意匠、実用新案含む) |
- |
4,306件 |
4,160件 |
||
|
新製品・サービスの上市数 |
- |
93 |
55 |
||
|
成長領域における売上高(先端治療開発ソリューション・デジタルヘルスソリューション・個別化検査・診断ソリューション) |
2025年までに860億円 |
410億円 |
394億円 |
||
|
製品の安全性と品質への責任 |
FDA warning letterの件数 |
0 |
0件(達成) |
0件(達成) |
|
|
リコールを実施した件数 |
- |
2件 |
3件 |
||
|
サプライチェーンマネジメントの強化 |
PHC グループサプライヤーサーベイの回答率(注4) |
95% |
95%(達成) |
95%(達成) |
|
区分 |
マテリアリティ |
KPI |
目標値 |
2023年度 実績値・進捗 |
2024年度 実績値・進捗(注2) |
|
社会 |
医療アクセスの改善 |
新興国・途上国における売上 |
- |
493億円 |
562億円 |
|
活力のある組織文化の醸成 |
管理職のジェンダーダイバーシティ |
2030年までに女性30%以上 |
-(注6) |
24.3% |
|
|
従業員エンゲージメントサーベイスコア |
前年比1ポイント以上改善 |
62ポイント 前年比 -1pt |
67ポイント 前年比 +5pt |
||
|
従業員の教育及び能力開発の充実 |
- |
PHC Academy Skill Database |
PHC Academy(Next Generation) Skill Database |
||
|
ガバナンス |
コーポレート・ガバナンスの強化 |
取締役会における多様性(国籍) |
- |
25% |
30.0% |
|
取締役会の有効性評価 |
年1回実施 |
1回実施(達成) |
1回実施(達成) |
||
|
機関投資家・証券会社アナリストとの打ち合わせ回数 |
- |
95回 |
106回 |
||
|
リスクマネジメントの強化 |
リスクマネジメント委員会の開催回数 |
年2回実施 |
キックオフを実施 |
年4回(達成) |
|
|
コンプライアンスに関する研修を受講した従業員の割合 |
100% |
100%(達成) |
100%(達成) |
||
|
サイバーセキュリティの強化 |
サイバーセキュリティ・データ保護に関する研修を受講した従業員の割合 |
100% |
100%(達成) |
100%(達成) |
|
|
重要なITベンダーにおけるサイバーセキュリティレビューの実施割合(2年間で全てのベンダーをレビュー)(注5) |
100% |
100%(達成) |
100%(達成) |
||
|
PHCグループサイバーセキュリティ委員会の開催回数 |
年4回以上 |
年4回(達成) |
年4回(達成) |
(注)1.適切な目標値の設定が困難なKPIについては「-」と表示しています。議論中の項目については目標値が設定でき次第、開示します。
(注)2.マテリアリティ「気候変動への取組」「省資源化による環境への配慮」「サーキュラーエコノミー社会の推進」の2024年度の実績値は算定中です。秋期にウェブページ等にて開示を予定しています。
(注)3.温室効果ガス(GHG)排出の区分については、以下のとおりGHGプロトコルに基づいています。
Scope 1:燃料燃焼等による自社からの直接排出
Scope 2:購入した電気や上記等のエネルギー生産に伴う間接排出
Scope 3:Scope 2以外の間接排出(購入した製品・サービス、輸送、販売された製品の廃棄等)
(注)4.対象は、各事業会社における資材調達の主要サプライヤーとしています。
(注)5.情報セキュリティの観点から、2023年度では国内のISMS認証適用範囲を対象としておりました。2024年度では、PHCグループ全体に対象を拡大しております。
(注)6.2023年度女性管理職比率(連結べ―ス)は未集計のため、記載を省略しております。
<気候変動>
1.ガバナンスとリスク管理
PHCグループでは、気候変動に関連するリスクと機会を適切に管理し、持続可能な企業運営を推進するため、サステナビリティ専任部署を設置しています。この部署は、サステナビリティ委員会の下で活動し、気候変動によるリスク・機会の評価、具体的な施策の立案、実行、モニタリングを担当しています。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長を委員長とし、最高経営陣(執行役員)及び事業部長をメンバーとして構成され、気候変動に関する重要事項を定期的に審議・モニタリングしています。また、同委員会での議論内容や決定事項は、取締役会に年2回以上報告され、取締役会は気候変動に関連するリスクと機会の妥当性、有効性を監督しています。2024年6月には「環境・衛生・安全方針」を新たに策定し、グループ全体で環境保全活動を一層加速させる体制を整えています。
気候変動を含むサステナビリティ推進体制は、<サステナビリティ経営>のガバナンスとリスク管理をご参照ください。
PHCグループ環境・衛生・安全方針は当社ウェブサイトをご覧ください。
https://www.phchd.com/jp/sustainability/environment/policy
2.戦略
(1)シナリオ分析の進捗
当社グループでは、気候変動が事業活動に与える影響を適切に把握し、事業の持続可能性を確保するとともに、持続可能な社会の実現に貢献するため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づき、気候変動に関連するリスクと機会の特定・評価を進めています。具体的には、TCFD提言で示されている分析プロセスを活用し、シナリオ分析を実施しています。シナリオ分析では、異なる気候変動の進行状況を想定した複数のシナリオを採用しています。当社グループでは、以下の2つのシナリオを用いて分析を行いました。
・1.5℃シナリオ:気温上昇を1.5℃以内に抑えるための厳格な脱炭素政策や技術革新が進展する世界を想定。
SSP1-1.9:持続可能な発展を基盤とし、産業革命以前から2100年にかけての気温上昇を1.5℃以内に抑える
ための気候政策を導入し、2050年にカーボンニュートラルを実現するシナリオ。
NZE(Net Zero Emissions by 2050 Scenario):地球の気温上昇を1.5℃に抑え、エネルギー関連の持続可
能な開発目標を達成するためのシナリオ。
このシナリオに基づき、当社グループでは、以下のようなリスクと機会を含む内容で、事業活動に関連する気候変動リスク及び機会を網羅的に抽出しています。
機会:再生可能エネルギーの普及拡大や低炭素技術の導入による新規事業機会の創出。
移行リスク:炭素価格の高騰や厳格な規制導入によるコスト増加の可能性。
・4℃シナリオ:気候変動対策が不十分であり、気温上昇が4℃に達する世界を想定。
SSP5-8.5:化石燃料依存の経済発展を続け、気候政策が導入されず、2100年に気温上昇が4℃以上となる
シナリオ。
STEPS(Stated Policies Scenario):2021年までに発表された各国の政策公約に基づき、エネルギー起因
の排出量が一部減少するものの、産業由来の排出量が増加し、排出量が現行水準にとどまるシナ
リオ。
このシナリオに基づき、当社グループでは、以下のようなリスクと機会を含む内容で、事業活動に関連する気候変動リスク及び機会を網羅的に抽出しています。
物理リスク:洪水や台風等の極端な気象現象の頻発や水資源の逼迫に伴うサプライチェーンへの影響。
(2)今後の取り組み
これらのシナリオ分析を通じて網羅的に抽出した当社グループの物理リスク、移行リスク及び機会について、短期(1年)、中期(2~5年)、長期(6年以上)の時間軸に基づき、定性的な評価及び財務的な影響度の評価を進めています。本分析の結果については、完了次第適切な形で開示いたします。
当社グループは、気候変動に関するリスクと機会を適切に管理し、中長期的に事業の持続可能性を確保するとともに、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。今後も、透明性を重視し、分析プロセスや結果についての情報開示を継続して行ってまいります。
PHCグループの気候変動への取り組みの詳細は当社ウェブサイトをご参照ください。
https://www.phchd.com/jp/sustainability/environment/climate
3.指標と目標
PHCグループは、2040年までに自社から排出される温室効果ガス(GHG)排出量(Scope1及びScope2)を実質
ゼロにする「カーボンニュートラル目標」を掲げています。この目標の達成に向けた取り組みとして、2023年12月にScience Based Targets(SBT)へのコミットメントを行い、PHCグループ全体のサプライチェーンにおけるGHG排出量(Scope1、Scope2、Scope3)を算定しました。2023年度の排出量データは、環境関連データの透明性及び信頼性を向上させるため第三者保証を取得し、これを今後の気候変動対応における目標値の基準年としております。
2025年6月には、PHCグループの2030年に向けた温室効果ガス(GHG)排出量削減目標が、地球温暖化を1.5℃以下に抑えるための科学的根拠に基づいた目標であることが国際的なイニシアチブ「SBTi」に認められ、SBT(Science Based Targets)の認定を取得しました。今後も、GHG排出量削減目標の達成に向けた取り組みを推進するとともに、定量的な情報のモニタリング及び透明性のある情報開示を継続して行ってまいります。
目標の詳細は、「サステナビリティ経営 3.指標と目標」をご参照ください。
2023年度の実績値及び第三者保証声明書の詳細は当社ウェブサイトにてご参照ください。
https://www.phchd.com/jp/sustainability/environment/environmental_data
<人的資本経営>
1.グループ人財戦略の社内環境整備方針
「多様性の尊重」
・事業間で協業することでシナジーを起こし新たな価値を生みだせる人財を育成するために、国内外及び法人間・事業部間での人財交流を実施しています。
・グローバルに採用を強化し、多様な能力や経験をもつ人財が活躍できる環境をより充実していきます。
「連携の基盤づくり」
・グローバル人事システム導入により、人事データベースを統合することで国や事業を跨いだ人財の連携や、PHCグループの次世代幹部の育成をシームレスに実現できる体制を構築します。
「人財の活性化」
・グループ統一のエンゲージメントサーベイを実施し、組織と従業員の透明性あるコミュニケーションを活性化し、働きがいを高める取組を行います。
・キャリア構築を自ら行う自律的な人財を育成することで、個々人の成長を支えています。
・個人のチャレンジ・成長を支援するため、主体的に学ぶ環境を整備し、能力開発の機会を提供します。
2.指標と目標
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区分 |
KPI |
具体的 取り組み |
2023年度 実績値・進捗 |
2024年度 実績値・進捗 |
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多様性の尊重 |
グループ全体のシナジー強化に向け、今後、海外から日本への出向・赴任数の拡大を目指すと共に、国内の人財交流も含めて戦略的人財ローテーションを促進 |
国内外、法人・事業部の人財交流 |
グループ間の海外赴任・出向者数は、25名(日本から海外:23名) |
|
|
女性の採用を充実し、多様性を前提とした中長期的な会社・社員の成長を図る 今後は外国籍社員の採用についても検討 |
採用強化、多様な能力・経験をもつ人財活躍の環境充実 |
・国内主要会社全体で382名の採用 ・新卒:26%、キャリア:74% ・男性:56%、女性:44% ・新卒採用は男性33%、女性67% |
・国内主要会社全体で287名の採用 ・新卒:50%、キャリア:50% ・男性:57%、女性:43% ・新卒採用は男性48%、女性52% |
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連携の基盤づくり |
グループ会社全体へのグローバルシステムの導入完了
スキルデータベースを活用した新規事業の創出や新製品の市場投入能力の強化 |
グローバル人事システムの導入で、効果的な人財の連携や育成ができる体制を構築 |
グローバルシステム導入 ・グローバル全体の導入率51% ・国内主要会社の導入率30%(注)1 スキルデータベースの活用 ・グループ全体の技術人財のスキルセットをデータとして可視化 ・登録率92% |
グローバルシステム導入 ・グローバル全体の導入率60% ・国内主要会社の導入率46% ウィーメックス株式会社へ導入完了(注)1 スキルデータベースの活用 ・FY23グループ全体の技術人財のスキルデータ可視化に加え、PHCホールディングス株式会社及びPHC株式会社全従業員を対象にスキル登録を実施 |
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区分 |
KPI |
具体的 取り組み |
2023年度 実績値・進捗 |
2024年度 実績値・進捗 |
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人財の活性化 |
2024年度よりセルフサービス型のサーベイツールに変更しており、更に自律的・能動的なエンゲージメント向上を促進 |
グループ統一のエンゲージメントサーベイの実施と向上施策の打ち出し |
2023年度エンゲージメントスコア ・参加者9,908名、回答率89% ・グループ全体スコア62:前年比1ポイントダウン ・組織・チームごとの強み・弱みを元に組織ごとにアクションプランを作成し、改善への取り組みを実施 |
2024年度 ・参加者6,335名、回答率88% ・グループ全体スコア ・組織・チームごとの強み・弱みを元に組織ごとにアクションプランを作成し、改善への取り組みを実施予定 |
|
2024年度より更に若い世代を育成すべく育成プログラムの開始
2025年度より新たにグループ管理職向けに研修を導入し管理職スキルを強化
2027年度を目途に全管理職の10%程度の幹部候補プールの確立 |
自律的な人財育成と個々の成長支援 |
経営幹部育成プログラムの導入完了 ・指名報酬委員会での役員の要件定義及び候補者の選抜を議論 ・研修プログラム(PHC Academy)を設立、育成を開始 ・参加人数:20名(国内12名海外8名) ・期間:2024年1月~2025年6月
年代別キャリアデザイン研修の実施 ・対象者研修参加率:91% |
経営幹部育成プログラム「PHC Academy」の設立と導入により役員後継者を自社内で養成中 ① Potential Successor Candidates 対象:5年以内に役員後継者として指名されることが期待される層 期間:2024年1月~2025年6月 参加人数:19名(国内12名海外7名)
② Next Generation 対象:5年後以降に役員の後継者として指名されることが期待される層 期間:2025年1月~2026年3月 参加人数:25名(国内16名海外9名)
グループリーダーシップ研修 ・国内グループの管理職向けに研修を実施 参加者:644名 研修満足度:92% |
|
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個人のチャレンジ・成長を支援するためのシステムを継続して活用 |
主体的に学ぶ環境の整備と機会の提供 |
自立型研修システム「Udemy Business」の利用促進 ・登録率:19%(登録者381名) (登録者数/導入会社全社員数)(注)2 |
自律型研修システム「Udemy Business」の利用促進 ・登録率:12%(登録者231名) (登録者数/導入会社全社員数)(注)2 |
(注)1.国内主要会社は、PHCホールディングス株式会社、PHC株式会社、株式会社LSIメディエンス、メディフォード株式会社、ウィーメックス株式会社、ウィーメックスヘルスケアシステムズ株式会社を指します。
(注)2.Udemy Businessシステム導入済み企業はPHCホールディングス株式会社とPHC株式会社です。
当社グループは、持続的な成長と企業価値の最大化を図るために、事業活動に伴う多様なリスクを適切に把握・評価し、未然に防止又は軽減することが重要であると認識しています。このため、リスク管理に関するグループ全体の基本的な方針や体制及び取り組み内容を定めた「リスクマネジメント基本規程」に基づき、リスクマネジメント体制を整備し、経営リスク、財務リスク、法務リスク、自然災害リスク、地政学リスク等の重要リスクを抽出し、管理・対応を全社的に推進しています。
<リスクマネジメント体制及びプロセス>
当社グループはリスクマネジメント体制の強化及びリスクの統合的管理を目的として、リスクマネジメント委員会を設置しています。リスクマネジメント委員会は、リスク担当役員であるCOO(Chief Operating Officer)を委員長とし、執行役員、国内外の事業責任者、本社部門責任者等で構成され、年4回定期的、また必要に応じて随時開催しています。リスクマネジメント委員会では、リスクの発生回避及び発生時の影響を最小減にするための対応策案の作成・実行状況の確認、評価と見直しを行い、独立性を有する取締役会に報告しており、持続可能な事業運営を実現しています。
(PHCグループのリスクマネジメント体制 ※2025年3月31日現在)
リスクの特定及び評価については、定期的に各事業部門、本社部門にてリスクを特定し、影響度と発生可能性等の観点からリスクの重要度を分析・評価しています。重要度の高いリスクについては、対応方針や対策の検討を行い、経営層へ報告し、全社的な対応を推進しています。対策の実行状況については、モニタリングを継続的に実施し、変化する経営環境に即した柔軟な見直しを行っています。また、リスクが顕在化した場合には、迅速な対応を行い、被害の最小化と再発防止に努めています。
(リスクマネジメントプロセス)<当社グループのリスク状況>
当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがありますが、これらに限定されるものではありません。また、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
なお、本文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるリスクを全て網羅的に記載したものではありません。
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1. 経済環境について |
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当社グループは、世界125以上の国と地域において事業活動を展開しております。当社グループの製品・サービスに対する需要は、それらの販売を行っている国や地域の経済状況の影響を受けます。当社グループの主要な市場における経済成長の減速、為替やクレジット市場におけるボラティリティ、失業率の増加、設備投資の水準の減退、各種政策の変更等により、当社グループの事業及び当社グループの顧客や取引先に悪影響を及ぼす可能性があります。世界の市場における景気後退等及びこれに伴う需要の減少により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。こうした経済環境に係る情報収集に努め、同時にコスト削減・業務効率の向上を図り、グローバルな事業基盤をさらに強化することによって、より強い収益体制の構築を目指してまいります。 |
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2. 市場動向について |
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当社グループの属する業界は、各国の医療制度に密接に関連しております。国内外で、医療費抑制や、医療の質の向上を目的とした、医療制度改革が継続して進められており、これらの改革や新たな医療・技術の開発等の要因により、技術革新や費用対効果の高い製品・ソリューションの提供に対する需要が高まる可能性があります。当社グループは各事業分野の動向を注視しており、社内の研究開発活動だけでなく、相乗効果のある買収や提携を通じて、顧客のニーズに応えようとしていますが、今後の市場環境の変化に対応できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループの診断・ライフサイエンスドメインの主要顧客である大学、官公庁、企業の研究機関における研究開発費は、経済状況によって変動する可能性があります。これらの顧客の多くは国や政府からの資金調達に依存しておりますが、国が支出する研究開発費のレベルは予算の優先順位や経済状況の変化の影響を受けるため、事前に予想しにくいという問題もあります。経済状況や国の支出削減政策は、国による研究開発費の支出に影響を及ぼす可能性があり、国から支出される資金の削減若しくは遅延により、顧客は当社グループ製品の購入を延期する、又は購入を見送る可能性があることから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 これら業界の動向や国家予算の動向等について、積極的に情報収集を行う取り組みを推進してまいります。 |
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3. 顧客動向/嗜好について |
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顧客を取り巻く事業環境や社会環境の変化、新技術の登場等により、顧客の需要は変化し続けることが予想されます。当社グループの糖尿病マネジメントドメインのユーザーである糖尿病患者からは、毎日使用する血糖値センサの測定精度の高さや価格の低さに加え、一度の装着でより長期間連続した測定が可能で、より痛みや出血の少ない低侵襲なセンサへのニーズが高まっております。当社グループのヘルスケアソリューションドメインの顧客である医療機関では、セキュリティやコスト等の観点から、クラウド型電子カルテ等への要望が高まりつつあります。また、当社グループの診断・ライフサイエンスドメインの顧客からは、従来製品に要求されていた正確性や安全性に加え、近年では、デジタル化された解析やワークフローの管理ツールの利用促進による顧客の業務フローの効率化・省力化や、環境負荷低減への配慮が求められるようになりました。当社グループはこのような顧客ニーズへの対応に取り組んでおりますが、顧客ニーズの変化に伴い当社グループが提供する製品・サービスの需要が低下する場合や、需要の変化への対応に必要な製品・サービス内容等の変更や新規製品・サービスの開発等が成功せず、顧客の要求水準や要求内容に見合う製品・サービスを提供できない場合、また、当社グループが顧客の需要の変化を適切に把握できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。今後も、一層の営業・マーケティング力の強化を図り、顧客動向やお客様のニーズの把握に注力し、より良い製品・サービスの提供に努めてまいります。 |
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4. 競合他社について |
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当社グループは、世界各地で、広範多岐に渡る製品・サービスの開発・生産・販売を行っており、国際的な大企業から小規模ながら急成長中の専門企業まで、様々なタイプの企業と競合しています。また、競合他社がそれぞれの競合事業において当社グループよりも、優れた技術力、製品ラインナップを含めたマーケティング資源、多様なビジネスモデル、強固な財務基盤等を有している可能性があり、当社グループの製品は、それぞれ、特徴・品質・価格・サービスその他の点で競争にさらされております。また、当社グループが関わる医療技術産業は、技術の変化や開発のスピードが速く、競合他社による製品・プロセス・技術の新規開発や改良は、当社グループ製品の競争力をしのぐ可能性があります。さらに、新興国での事業においては、低コスト製造による低価格製品を実現した企業により、当社グループ製品のシェアが奪われる可能性もあります。当社グループは、常に競合他社の動向に注意を払い情報収集に努めるとともに、当社グループの製品・サービスの強みを活かした革新的な技術開発・商品開発の努力を継続して、競争力強化を図っておりますが、競合他社に対して十分な競争力を確保できない場合には、当社グループの売上が減少する可能性があり、その場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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5. 医療費抑制政策に伴う価格変動リスクについて |
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当社グループが販売する製品には、世界的な傾向となっている医療費抑制政策を受け、定期的に償還価格の引き下げの影響を受ける製品があります。日本においては概ね2年に一度、診療報酬、薬価及び特定保険材料の公定償還価格の改定が行われておりますが、国民皆保険制度の維持を目的とした取り組みの一環として、2022年3月期から薬価が毎年改定されており、今後、当社グループのBGMやCGMを含む特定の製品の価格にも毎年の改定が拡大された場合、より頻繁に価格の引き下げが生じる可能性があります。米国においては、医療保険制度の改革により償還圧力が強まる中で低コスト化が顕著になっています。当社グループの主力製品であるBGMのセンサについては、過去にも米国における公的医療保険制度である「メディケア」の償還価格が大幅に引き下げられた経緯もあり、医療費抑制政策に伴う販売価格の変動を受けやすい製品になります。販売価格の変動の影響を限定するため、各国の事情に合わせて、保険でカバーされない自費購入者向けの販路拡大等にも努めておりますが、このような価格変動リスクは、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、臨床検査事業では、日本においては大部分の検査項目に対して診療報酬の基礎となる保険点数が定められておりますが、これらの保険点数は2年毎の改定が慣例となっており、医療費抑制政策に伴う料率の引き下げが実施された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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6. 保険制度等の改正に伴うシステムの改修について |
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当社グループが販売する電子カルテシステムや電子薬歴システム等の製品について、医療保険制度等の各種保険制度の改正に伴い大幅な制度変更が実施され、本制度変更に伴う大きなシステムの改修が必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらの制度改正の動向について、積極的な情報収集を行い、早期の把握とスムーズな対応に努めてまいります。 |
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7. 海外事業展開について |
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当社グループは世界各地に製品を供給しており、地政学上及び経済動向の不確実性、国家間や地域内での戦争・紛争・テロ、宗教や文化の相違、現地における労使関係、疫病の発生・蔓延等による社会的混乱等のリスクに直面する可能性があります。また、取引先との関係構築・拡大等の点で、海外での商習慣に関する障害に直面する可能性があります。さらに、各国税制、契約慣習・慣行、知的財産保護制度、投資規制、収益の本国送金に関する規制、現地産業の国有化、輸出入規制や外国為替規制の変更、といった様々な政治的、法的あるいはその他の障害が生じる可能性があります。 また、当社グループはグローバルに関係会社を有しており、関係会社管理の観点から法令順守・コンプライアンスを中心にグループとしての適切な管理に努めておりますが、関係会社において問題が発生した場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。 輸出製品については、関税その他の障壁、あるいは輸送費用により、当社グループ製品の競争力が弱まる可能性があります。特に、昨今の米国政府による関税政策の動向は、特定の国や地域からの輸入品に対して高率の関税を課す等、国際的な貿易環境に大きな影響を与えており、各国の関税政策にも変化が生じる可能性があります。これらの関税政策の変更により、当社グループが調達する原材料や部品のコストが増加するリスクや、当社製品の価格競争力が低下するリスクが存在します。また、当社グループのサプライチェーンが混乱し、取引先との関係に影響を与える可能性も考えられます。今後、各国政府が保護主義的な関税政策を強化する場合、当社グループの事業活動や収益性に対してさらなる悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、税率が日本よりも低い国でも事業展開しておりますが、各国の税制又は税率の変更等が生じた場合は、当該低税率国と日本の実効税率との差分による税負担軽減を享受できなくなり当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 新興国における国産品奨励政策による非関税障壁に対しては、現地生産化による対応を推進する等の他、今後も引き続き、自由貿易協定を最大限、積極的に活用していくとともに、上記の様々なリスクを総合的に勘案して、グローバルに最適な調達・生産・流通体制を構築していくよう検討を継続してまいりますが、このような試みが成功しない可能性があります。なお、今般のロシア・ウクライナ情勢に関連して、ロシアにおける販売の影響を受けるのは主に糖尿病マネジメントと診断・ライフサイエンスの事業ドメインとなります。現時点で当社グループ全体の売上に与える影響は軽微ですが、今後の動向次第では影響が拡大する可能性があります。 |
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8. 中期経営計画について |
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当社グループが策定した中期経営計画では、成長に向けた基盤構築をPhase1、取り組みを加速させて診断・ライフサイエンス領域を核とした持続的な成長の実現をPhase2として、2030年度までを2つのPhaseに分けて取り組んでまいります。Phase1にあたる中期経営計画2027では、重点施策として、「収益基盤強化のための構造改革」、「ポートフォリオ管理強化」、「診断・ライフサイエンス領域への注力」の3つの施策を実行することで企業価値の向上を目指してまいります。 この中期経営計画を策定するにあたり設定した多数の前提が想定通りにならない場合等には、当該計画における目標を達成できない可能性もあります。さらに、当社グループが正確に認識又は分析していない要因又は効果により、計画の施策がかえって当社グループの競争力を阻害する可能性もあります。 また、他社との競合状況が想定以上に厳しく成長の前提としたシェア拡大が図れないリスク、人員計画通り優秀な従業員を確保できないリスク、成長戦略、顧客戦略、商品戦略、コスト削減戦略等の諸施策が奏功しないリスク、新しい技術革新や顧客嗜好の変化に対応できない、又は対応に多額のコストを要するリスク、その他の想定していない事象の発生等、多数のリスク要因が内在しているため、目標を達成できない可能性、実施が困難になる可能性、施策自体が当社グループにとって有効ではなくなる可能性があります。 これらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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9. BGM事業への利益依存について |
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2025年3月期におけるセグメント利益の合計(その他及び調整・消去前)は30,409百万円となっておりますが、そのうち糖尿病マネジメントのセグメント利益は13,888百万円となっております。 当社グループとしては、BGMについては、市場規模が拡大している新興国市場での売上拡大と、市場規模が縮小している先進国市場でのシェア拡大を目指すとともに、CGMの投入により糖尿病マネジメントセグメントの売上・利益を確保していく計画です。しかしながら、今後、BGMの販売における新興国市場での売上拡大及び先進国市場でのシェア拡大や、CGMの展開が計画通りに進まない場合には、当社グループの利益減少に繋がる可能性があります。 加えて、診断・ライフサイエンスドメイン、ヘルスケアソリューションドメインの事業強化を推進し、3つのドメイン間でバランスのとれた収益構造を目指してまいりますが、新製品開発が計画通りに進捗しないリスクや競合他社の競争が想定以上に激しく各事業の強化が計画通りに進まないことにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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10. 為替リスクについて |
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当社グループの2025年3月期の地域別売上収益は、日本43.2%、欧州23.3%、北米21.9%、その他11.7%となっており、外貨建てで取引されている製品・サービスは、当社グループ売上の過半を占めており、その価格及びコストは、為替相場の変動により影響を受けるため、当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。また、当社グループでは、連結財務諸表作成にあたり各地域における現地通貨建て財務諸表を円換算しています。従って、為替レートに変動があれば、換算に適用するレートが変動し、円換算後の連結ベースでの損益や資産等に影響を受けることになります。当社グループは海外工場への生産移管、海外からの原材料調達等の構造的対応を図ると共に、売上規模と販売地域に応じた為替ヘッジ取引を行っております。しかしながら、想定外の変動が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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11. 生産・製造について |
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当社グループは、製品・サービスを世界各地に供給しており、市場への製品の安定供給に努めております。生産や製造に必要な金型・設備・ライン等は、それぞれの生産や製造に適合するように調整されており、適宜メンテナンスが必要です。当社は「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、定期的なメンテナンスはもちろん、生産・製造技術の革新に常に取り組んでおりますが、新たな生産・製造技術に対する生産設備等に係る投資が発生した場合、当該投資に伴うコストの増加は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、設備の老朽化等により、既存の金型・設備・ライン等の使用に支障をきたした場合、当社グループへの材料及び製品の供給が一時的に滞るおそれがあり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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12. 人員確保について |
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当社グループの製品開発・製造の中核子会社であるPHC株式会社の従業員の平均年齢は47.7歳(2025年3月期末時点)となっており、今後、想定通りに従業員の採用が進まない場合、又は、想定通りに現状よりも少人数でのオペレーション体制への移行が進まない場合には、生産技術の承継に支障をきたす可能性、また、生産、販売、本社の主要部門において労働力不足が生じる可能性があります。また、当社グループの事業は、経営陣の経験及びリーダーシップ並びにその他の重要な役員・従業員による貢献に支えられています。これらの重要な人材を喪失した場合や新たに獲得できなかった場合等には当社グループの事業に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループが必要とする優秀な人材については獲得競争が激しく、当社グループは優秀な人材の採用・育成・維持のために投資を行う必要があります。今後も、優秀な人材の採用に向けて、積極的に当社グループの魅力をアピール等してまいりますし、定年再雇用制度等を活用し、特殊な知識・経験を有する方に引き続き当社グループに従事頂くことにより、各職能のグループ全体のパフォーマンスの維持・向上や後継者の育成を図ってまいりますが、優秀な人材を計画通り確保できない場合や生産技術承継への支障又は労働力不足が生じた場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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13. 調達について |
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当社グループの調達は、部材及び委託において、適時・適量を考慮した発注体制を構築しております。当社グループは、サプライチェーンリスクを考慮し、可能な限り複数の調達先ソースを設定検討しますが、一部については、調達品質の特殊性や合理性から、代替設定等には、変化点管理の重要性から、設定にかなりの時間を要するものも存在します。調達における支障は、想定を超えた事案(国別の政策/制度等の方針変化・感染症影響・メーカー側でのフォースマジュール事案・民事再生・破産等)により、当社の事業に影響が生じた場合、手配を継続成立させるための必要人員工数や費用、また、各取引企業様との共存共栄を考慮した結果による費用が一時的に増加し、また、変更に伴う許認可の再取得のための費用負担増加が発生する可能性があります。また、市況相場の変動に伴い、当社事業の継続を目的のため、調達手配コストを見直す必要性から、原価上昇がやむを得ない判断となる可能性はあります。 |
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14. 物流業務等の外部委託について |
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当社グループは、物流業務の効率化及び流通在庫の適正化を目的として、糖尿病マネジメントドメインの製品のうち、ADCグループによって販売される製品の物流業務等を、RR Donnelley社及びDHL社に外部委託しております。ADCグループによって販売される当社グループの製品の大半は、日本国内で生産された後、RR Donnelley社の米国及びポーランドの2箇所の配送センターに集約のうえ世界各国の法規制等に応じて外装梱包され、DHL社の物流施設を通じて販売先へ出荷されます。予期せぬ災害や事故等の不可抗力、その他外部委託業者の業務の継続が困難になる事象等、何らかの理由により外部委託業者からのサービスの提供の中断・停止が生じた場合、外部委託業者の業務上の過誤により当社グループの評判が低下したり法令順守上の問題が生じたりする場合、又は外部委託業者との基本契約が変更され、当社グループの業務運営上何らかの影響が生じ、かつ当社グループがこれに適切な対応ができない場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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15. 品質について |
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当社グループが製造、販売、提供する製品やサービスには高い信頼性が要求されるため、当社グループは、品質マネジメントシステムである国際規格ISOの基準等に基づき、厳格な品質管理の下で設計、開発、製造段階から製品やサービスの品質保証に取り組んでおります。このように当社グループは、製品やサービスの有効性/安全性、検査の精度の確保について全力を挙げて取り組んでおりますが、万が一、当社グループの製品及びサービスによる安全問題、また製品出荷及びサービスの停止やリコール等により市場への安定供給及びお客様の業務に影響を及ぼす品質問題が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、事故等の発生に当社製品が直接関与していないことが明らかであっても、将来的に当社製品にリスクが波及する可能性がある場合、予防的な対策、措置を講じることがあります。そのような場合には、売上の低下、又はコスト増等により、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 加えて、使用時の偶発的な不具合や副作用等により、他者に損害を与え、賠償責任を請求されるリスクがあります。これらのリスクに対応すべく、賠償責任や製造物責任についての保険契約を締結しておりますが、万が一保険範囲を超える請求を受けてそれが認められた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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16. 研究開発について |
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当社グループが事業展開するヘルスケア分野は、法的規制や許認可等により、研究開発から製品を上市するまでの期間が長く、臨床・治験を経て製品化されるものも多くあります。そのため当社グループでは、中長期の開発戦略を策定し、それに基づいて新技術や新製品、生産プロセス改革等に必要な研究開発投資や設備投資を行っておりますが、上市までの期間が長いために研究開発の途上で環境の変化等の理由により、方針を変更若しくは研究開発そのものを断念する可能性があり、その場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、顧客ニーズや価値観が多様化し、有望市場として新規参入を試みる企業が多い市場でもあり、当社グループが開発した製品について、想定した売上等の効果が得られない可能性があります。さらに、競合他社が投入した新技術・新製品開発によって、当社グループが製品化した新技術・新製品が予期せぬ陳腐化を起こし、結果として需要が減少する可能性があります。当社グループでは顧客ニーズの把握に努めておりますが、当社グループが常に顧客の求めるニーズに適切に応えられる製品を提供し続けられる保証はなく、また提供できる価格、数量、時期に関しても、常に顧客の要請に完全に応えられる保証はありません。顧客ニーズの多様化、新規参入の動向、競合他社による新技術・新製品の導入により、当社グループが顧客ニーズに応えられる製品を提供できなくなった場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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17. 研究開発にかかわる人材確保・育成について |
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当社グループの事業においては、研究開発や新製品の開発を担う専門性を有した優秀な研究者やエンジニアを確保・育成すると同時に、開発・生産に携わる優秀な従業員を各地で確保・育成する必要があります。しかしながら、優秀な従業員を確保・育成できない場合、当社グループの事業に影響が生じる可能性があります。また、これらの人材が当社グループの競合他社に転職する場合、当該競合他社の競争力を向上させ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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18. 技術革新について |
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当社グループが事業展開する分野は、今後の有望市場として他分野からも多くの企業が自社技術の同分野への転用を検討しており、非連続的な技術革新が起こる可能性があるとともに、既存の競合他社においても常に技術優位性を維持若しくは確保すべく、積極的な研究開発がなされている分野となっております。 当社グループとしましても、顧客ニーズに応えるべく自社の有する技術等を常により良いものにすべく技術開発に努めており、今後も、当社グループ自身による研究開発だけでなく、優れた技術を持つ他社との事業提携や買収等も視野に、技術革新の動向について注視してまいりますが、当社グループの製品を不要とする医療技術そのものの発展や、当社グループが有する技術的優位性を根底から覆す技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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19. 有利子負債について |
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当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結しており、2025年3月期末時点における総資産に占める借入金の割合は約47.9%となっております。当該契約には財務制限条項が付されており、これに抵触した場合、貸付人の請求があれば同契約上の期限の利益を失い、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社グループでは、当該契約における金利上昇リスクと財務制限条項への抵触による期限の利益喪失リスクに対応するため、主に以下の取り組みを実施しております。 ・経営管理 … 当社グループは、事業の安定性維持と持続的成長のため、売上収益、営業利益、(調整後)EBITDA、親会社の所有者に帰属する当期利益、及びそれらの成長率を重要な経営指標とし、具体的数値を目標設定した上で定点観測することにより、経営管理を行っていく方向です。 ・資金管理 … 当社グループは、原則として事業から生じる営業キャッシュ・フローをベースに借入金の返済を見込んだ上で、投資の計画を策定しております。投資及び財務キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローの範囲内となるよう管理し、レバレッジの改善と手許資金の増加確保に努めます。また、当社グループ内の資金残高を随時確認すると共に、資金繰り見通しについても定期的に更新することで常時動向を把握しております。なお、当社グループの資金調達は原則として、当社財務部門が一括して行っております。 ・金融機関との交渉 … 金融機関とは、経済環境や当社グループの事業の進捗状況を共有した上で、金利条件の改善、並びに、財務制限条項の縮小につき、随時交渉しております。また、グロス・レバレッジ・レシオの基準値に応じた金利スプレッドの低減等を契約に定めております。 しかしながら、かかる取り組みが成功しない可能性があり、また、事業活動により得た資金の相当な部分を負債の返済に充てる結果、研究開発や設備投資に使用できる資金や配当原資が減少する等の可能性があります。 |
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20. 固定資産、のれんの減損について |
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過去のパナソニックからのカーブアウトとその後のM&Aにより、当社の連結財務諸表に計上されている無形資産及びのれんは2025年3月期末時点において総資産の53.9%を占めております。当社の連結財務諸表はIFRS会計基準に準拠して作成しており、のれんは非償却資産であります。当社グループでは毎連結会計年度及び減損の兆候がみられる場合に減損テストを実施しており、当該のれんを含む資産グループから得られる将来のキャッシュ・フローの大幅な減少や事業環境等の重大な変化等は、減損に繋がる可能性があります。また、当社グループを取り巻く事業収益性の悪化等により、のれん等の資産価値が減損した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 12.のれん及び無形資産」をご覧ください。 |
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21. 株価リスクについて |
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当社グループは業務上の関係を有する企業が発行した新株予約権を保有しております。当該新株予約権は株価等の基礎データに基づき公正価値を測定されていることから、株価変動リスクにさらされております。また、当社グループが保有する投資株式についても、同様に株価変動リスクにさらされております。 業務上の関係を有する企業の株式や保有する投資株式の価格変動は、当社グループの財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
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22. 企業買収及び事業提携リスクについて |
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当社グループは、事業の拡大・成長に向けた手段のひとつとして、企業買収や事業提携を実施することがありますが、企業買収及び事業提携の適切な機会を見出せない、又は競合的な買収による場合を含め対象先との間で企業買収等に係る条件に合意できない場合には、当社グループの事業拡大に影響を及ぼす可能性があります。 また、企業買収においては、当該企業の経営状況、事業内容、財務内容、法令順守や契約関係等について詳細な事前調査を行い、リスクを吟味した上で決定してまいりますが、事前調査にて検出されなかった問題が生じた場合や買収後の統合作業において当初見積もっていた以上の経営資源の集中や期間を要する必要性が生じた場合、買収時点では予期していなかった事業環境の変化や買収時ののれん等の減損処理を行う必要が生じた場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 事業提携に関しても同様に、想定していたシナジーや業績を実現できない場合、事業環境の変化等を要因として提携事業を解消せざるを得ず、事業提携解消や事業撤退に際して費用等が発生する場合等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。例えば、Senseonics Holdings,Inc.との提携によるCGM製品の展開については、競合他社との競争の激化や、製品の販売に係る米国食品医薬品局(FDA)への承認申請の手続の遅延等により、計画通りに事業展開が進まない可能性があります。 また、企業買収や事業提携を通じて複数の新規事業を自社の事業と統合することは、経営陣の多大な注意と資源を必要とする複雑なプロセスであり、統合が効果的に実施されない場合には、既存事業の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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23. 内部統制に係るリスク |
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当社グループは、財務報告の適正性と信頼性を確保するための体制を整備し、運用するとともに、継続的な改善を図っています。しかしながら、有効な内部統制システムを構築している状況においても、従業員等の悪意あるいは重大な過失に基づく行動等、様々な要因により内部統制システムが機能しなくなる可能性があります。このような事象に適切に対処できない場合、将来的に法令違反等の問題が発生する可能性があり、また当社グループの社会的信用の失墜により事業に悪影響が生じる、あるいは行政処分による課徴金や刑事訴訟による罰金、民事訴訟による損害賠償金等の支払いが生じることにより、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 さらに、業務の有効性と効率性を確保するための体制についても、整備・運用をしており、継続的な改善を図っております。しかしながら、内部統制システム構築時点では想定していなかった事業・社会環境等の変化、また、こうした変化によるシステムの無効化に対して、社内の組織・機能が適切に対応できない等、様々な要因によりシステムが機能しなくなる可能性があります。このような事象に適切に対処できない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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24. 情報漏えいリスクについて |
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当社グループでは、事業を行うにあたり、顧客情報等の個人情報や自社製品開発に関する機密情報を多数扱っております。これらを適切に保護、管理するために、各種規程の整備及び定期的な社員教育を実施するとともに、情報システムに様々なセキュリティ対策を施して構築・運用しております。しかしながら、これらの情報に対する外部からの不正アクセス等の攻撃、社内管理体制の瑕疵、当社グループ従業員による故意又は過失、コンピュータウイルス等による情報漏えいが発生した場合、当社グループの社会的信用の低下、対応費用の発生、当社グループへの損害賠償請求等が発生する可能性があり、その場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、個人情報や機密情報の保護に関する法令等が改正される場合には、これらに対応するためにシステムの改修等に費用が発生することも予想され、その場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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25. 情報システムリスクについて |
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当社グループは、製造工程やサプライチェーンの管理、商品の受発注、経営管理等に関するシステム等、事業全般にわたり、情報システムを整備し、そのシステムに基づいて事業を運営しております。そのため、これらのシステムの安全性や信頼性、効率化・能力向上は当社グループの事業展開において重要なものですが、これらのシステムの設計・運営については第三者に依拠しており、これらのシステムが効率的に稼動しない場合や、サイバー攻撃等でシステムのセキュリティが確保できない場合、災害・事故、ハードウェア・ソフトウェアの欠陥等によるシステム障害に陥った場合等により継続的かつ安定的にシステムが運営できない可能性があります。また、最近ではランサムウェア攻撃等のサイバーセキュリティ上の脅威が全般的に増加しています。そのような事態に備えて、各種重要システムの複製を距離の離れたデータセンターに保有しており、災害を含めた不測の事態の際には、そちらに切り替えた業務継続を可能としていますが、継続的かつ安定的にシステムが運営できない場合には、当社グループの経営や事業の遅滞、問題改善に対する費用の発生、当社グループの信頼性や評判を毀損する等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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26. 訴訟等について |
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当社グループは、事業を展開していく過程において、各種契約違反、労働問題、知的財産権に関する問題、情報漏えいに関する問題等に関して、ユーザー、取引先、競合他社、当社グループ従業員、規制当局等より訴訟を提起される可能性やその他の法的手続きの当事者となるリスクを有しております。そのようなリスクを低減させるために、当社グループでは、グループ行動規範やコンプライアンス基本規程等を整備し、従業員に対して、階層別研修(新入社員研修、キャリア入社者研修、昇級者向け研修、管理職向け研修)の実施、コンプライアンス意識実態調査の実施、e-ラーニングによる教育や法務に関する情報発信等を通じて、従業員のコンプライアンス意識を高めるための施策を実施しております。なお、当社グループ製品カテゴリーの多くは医療関係者による使用を想定した製品となっておりますが、血糖自己測定システムに関してはエンドユーザーである一般消費者が直接利用されるものになります。そのため、血糖自己測定システムの不備等があった場合、一般消費者により訴訟を提起される可能性があります。当社グループが当事者となり、訴訟やその他手続きにおいて、敗訴若しくは不利益な内容を甘受せざるを得ない場合、当社グループの評判及び信用等が毀損する若しくは影響を被る可能性があります。また、最終的な責任を負うか否かにかかわらず、かかる請求があった場合への対応に対して、費用や時間がかかり、結果として、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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27. 法規制、許認可(薬事等)について |
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当社グループは、日本における「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」等、医薬品、医療機器を対象とする世界各国の法的規制、事業を展開するに当たっての必要な許認可の取得を行っております。また、製造物責任、情報保護、知的財産権、コンテンツ規制、競争法、消費者保護、腐敗防止、税金等、世界各国での様々な法令等の適用を受けております。当社グループでは、社内の管理体制の構築や従業員の教育・啓発を行い、これらの法令順守に向けた取り組みを推進しておりますが、これら法令に違反する行為が行われた場合、又は法令の改正若しくは新たな法令、ガイドライン等が制定された場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 特に、新興国におきましては、国産品奨励の目的から非関税障壁が設けられる場合があり、これへの対応として、現地生産等の方法も検討しますが、現地の法整備が十分でなく、解釈が一貫していない等のケースも見受けられます。現地当局との十分な調整に努めても、計画通りに事業展開が進まないといった可能性もあります。 当社グループとして、各国の関係法令・許認可に対して迅速に対応することに努めてまいりますが、万一法令等に抵触し、許認可の取り消し等、何らかの行政処分等を受けた場合、また関係法令の制定や改訂への対応が間に合わない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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28. 知的財産権について |
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当社グループは糖尿病マネジメント、ヘルスケアソリューション及び診断・ライフサイエンスの3ドメインにおいて、多くの知的財産権を保有し、その維持・管理を行っております。しかしながら、当社グループが保有する知的財産権が認められない、若しくは充分な保護が得られない地域・国がある可能性や模倣される可能性があり、当社グループが保有する知的財産権の保護が損なわれた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループは、研究開発や新製品の開発の際に、関連する第三者の知的財産権について、網羅的な調査を行い、第三者の知的財産権を侵害しないように努めておりますが、当社グループが展開する事業分野は多岐に渡っており、第三者の知的財産権の保有や登録等の状況を完全に把握することは容易ではないため、当社グループが意図せずに第三者の知的財産権を侵害する可能性や、当社グループの事業分野において新たに成立した第三者の知的財産権との間に、当社グループを当事者とする知的財産権の帰属等に関する紛争が生じる可能性や、それらに関して損害賠償や使用差止等の請求を受ける可能性があります。これらの結果により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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29. 環境問題リスクについて |
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当社グループは、事業運営上適用される規制を順守すべく様々な対策を講じており、環境対応については主要な製造拠点ではISO14001を取得しその充実を図っております。もっとも、適用される規制を順守出来なかった場合や環境問題を引き起こした場合等には、損害賠償、生産停止、社会的評価の低下等の可能性、又は新しい規制への対応による費用負担の増加等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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30. ESGについて |
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当社グループは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の取り組み(以下「ESG」)が、持続可能な成長を実現する上で重要であると認識しております。しかし、ESG関連の法規制の強化や、顧客・投資家からの期待や要求の高まりに適切に対応できない場合、事業活動や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。 具体的には、ESG関連のデューディリジェンスや開示が不十分な場合、ビジネスパートナーからの要請に適切に対応できず、取引機会の喪失や競争力の低下を招く可能性があります。また、ESG評価が低下した場合には、主要なESGインデックスの組み入れ対象から外れる可能性があり、これにより株式市場における企業価値や投資家からの評価が低下するリスクが生じます。また、気候変動や人権問題に関するリスクを適切に特定・対応できない場合、法令遵守の問題や事業活動における損失が発生する可能性があります。 こうしたリスクを低減し、ESGへの取り組みを強化するため、当社では以下の施策を実施しています。全社的なESGプロジェクトを管理する「サステナビリティ委員会」を設置し、リスクマネジメント委員会と連携してリスク低減への取り組みを進めています。また、社内での定期的なトレーニングを通じて社員の意識向上に努めています。 |
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31. 自然災害及び地政学的脅威、疫病の発生・蔓延等による社会的混乱について |
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当社グループの生産拠点において、地震、風水害、津波、大雪、火災等の災害、事故又はテロや国際紛争等の地政学的な脅威、若しくは、疫病の発生・蔓延等による社会的混乱が発生した場合は、被害状況によっては、当該生産拠点における生産活動が停止し、製品の出荷が停止又は遅延し、又は生産設備の修理、代替等のために多大な損失・費用を被る可能性があります。また、仕入先や物流の取引先に災害、事故又は地政学的な脅威若しくは疫病の発生・蔓延等による社会的混乱が発生した場合、又は電力の供給不足や電力価格の上昇が生じた場合、当該仕入が中断し必要な原材料を確保できなくなる場合、若しくは製品の配送及び輸出ができなくなる場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループは、自然災害、及び地政学的脅威、疫病の発生・蔓延等による社会的混乱においては、当社グループ従業員の安全配慮義務のため、事業場の閉鎖や事業中断を行う可能性があり、その際は休業補償や労働生産性の悪化が利益を圧迫する要因となり得る等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
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32. パンデミックについて |
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当社グループの事業は、パンデミックによるリスクにさらされております。未知の感染症の世界的な流行は、世界経済の減速を招くと共に、その感染拡大を防止するために政府、企業及び個人が採った措置を含め、当社グループの製品・サービスに対する需要や、当社グループの事業、サプライチェーン及び流通システムに影響を与えます。 また、当社グループの従業員が感染症に感染した場合や各地域においてロックダウン措置が実施された場合には、従業員の業務遂行能力につき大きく影響を受ける可能性があります。当社は政府当局の勧告に従い、従業員の安全を優先して予防措置等を講じますが、これらの措置が功を奏さず、製造施設の一時的な閉鎖等が必要となる可能性があります。 |
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33.風評被害について |
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当社グループのコーポレートブランドであるPHC、Ascensia、LSIメディエンス、ウィーメックス、メディフォード、Epredia、事業・製品ブランドであるCONTOUR、STACIA、PATHFAST、Medicom、Shandon、Microm、Menzel Gläser、Richard-Allan Scientific、PHCbi、等は、当社グループの事業にとって重要な商標です。当社グループが保有する商標等の不正利用や製品・サービスへの苦情が発生・拡散した場合、その内容の正確性にかかわらず、安全性・信頼性のブランドイメージ及び社会的信用が毀損する風評被害が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 また、従業員若しくは第三者が関与する不適切行為やその他の事故によっても、ブランドイメージ及び社会的信用が損なわれる可能性があります。なお、当社は、従業員に対しコンプライアンス教育を継続的に実施することで不適切な行為等やその他の事故等が発生しないよう徹底し、リスクの低減に努めています。 |
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34. ファンド株主(KKR PHC Investment L.P.)との関係について |
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当社は、グローバルな投資会社であるKohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.のプライベート・エクイティ・ファンドであるKKR PHC Investment L.P.から出資を受けております。2025年3月末の時点においても、持株比率38.03%を所有しており、「その他の関係会社」の関係は継続しています。 |
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35. 大株主(三井物産株式会社)との関係について |
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当社は、三井物産株式会社より出資を受け入れております。2025年3月末の時点においても、持株比率17.33%を所有しており、大株主としての関係は継続しています。 |
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36. 大株主(株式会社生命科学インスティテュート)との関係について |
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当社は、株式会社生命科学インスティテュートより出資を受け入れております。2025年3月末の時点においても、持株比率9.74%を所有しており、大株主としての関係は継続しています。 |
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37. 大株主(パナソニックホールディングス株式会社)との関係について |
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当社は、パナソニックホールディングス株式会社より出資を受け入れております。2025年3月末の時点においても、持株比率7.74%を所有しており、大株主としての関係は継続しています。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
a.財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べて31,844百万円減少し、532,482百万円となりました。この主な要因は、過去の買収により発生した無形資産の償却が進んだこと等により無形資産が10,739百万円減少したこと、借入金の返済等により現金及び現金同等物が7,451百万円減少したこと等によるものであります。
負債合計は、前連結会計年度末と比べて33,852百万円減少し、391,310百万円となりました。この主な要因は、返済が進んだこと等により借入金が29,785百万円減少したこと等によるものであります。
資本合計は、前連結会計年度末と比べて2,008百万円増加し、141,171百万円となりました。この主な要因は、在外営業活動体の換算差額等によりその他の資本の構成要素が4,081百万円減少した一方、主に当期利益を10,485百万円、支払配当を△4,917百万円計上した結果、利益剰余金が5,764百万円増加したこと等によるものであります。また、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の24.7%から1.9ポイント増加して26.6%となりました。
b.経営成績の状況
当社は、2025年3月期よりセグメントの内訳を変更いたしました。
従来、糖尿病マネジメントに含まれていた診断薬事業及びヘルスケアソリューションのLSIM事業に含まれていた診断薬事業を、診断・ライフサイエンスに移管し、診断薬事業として区分しました。また、従来ヘルスケアソリューションのLSIM事業に含まれていた創薬支援事業を、同じヘルスケアソリューションの中でCRO事業として区分しました。
以下の文章は変更後の区分にて記載いたします。
2025年3月期(以下、「当期」)における当社グループの売上収益は361,593百万円(前年同期比2.2%増)となりました。糖尿病マネジメントは為替の好影響を受けるも、前年同期比で減収となりました。ヘルスケアソリューションは2023年10月に実施したM&Aの効果や電子処方箋管理ソフトウェアの需要増等により増収となりました。また、診断・ライフサイエンスは市況停滞の影響を受けつつも、為替の好影響もあり前年同期と同等の売上となりました。
営業利益は22,580百万円(前年同期比1,341.9% 増)となりました。糖尿病マネジメントは一時費用の減少及び持続血糖測定器(CGM)事業の利益改善等があったものの、血糖値測定システム(BGM)事業の減収影響等により減益となりました。ヘルスケアソリューションはヘルスケアITソリューション事業における増収影響や、上述のM&Aにより取得した事業の収益改善、LSIM事業において前第3四半期連結会計期間の12,737百万円の減損損失影響がなくなったことやコスト削減効果等により増益となりました。また、診断・ライフサイエンスは病理事業の増収影響及びコスト削減効果に加え、診断薬事業での前第3四半期連結会計期間の1,246百万円の減損損失影響がなくなったこと及び一時費用の減少等により増益となりました。
調整後EBITDAは50,095百万円(前年同期比0.8%増)となりました。主な当該調整項目としては、一時的な事業構造改革関連収益・費用(当期851百万円加算、前年同期7,195百万円加算)、一時的なその他の収益・費用(当期1,227百万円減算、前年同期1,716百万円減算)がありました。
税引前利益は18,823百万円(前年同期は13,249百万円の損失)となりました。これは主に、営業利益の増加に加え、為替差損益の改善及び支払利息の減少によるものです。
親会社の所有者に帰属する当期利益は10,485百万円(前年同期は12,893百万円の損失)となりました。
なお、従来記載しておりましたキャッシュベースでの親会社の所有者に帰属する当期利益及び算出表は、2024年11月13日公表の中期経営計画において同指標を配当性向の基準としていた従来の配当方針を変更したことを踏まえ、当期より記載を省略いたします。
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(単位:百万円) |
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
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売上収益 |
353,900 |
361,593 |
2.2% |
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営業利益 |
1,566 |
22,580 |
- |
|
|
EBITDA |
46,158 |
50,397 |
9.2% |
|
|
調整後EBITDA |
49,713 |
50,095 |
0.8% |
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税引前利益(△は損失) |
△13,249 |
18,823 |
- |
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当期利益 (△は損失) |
△12,857 |
10,364 |
- |
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親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失) |
△12,893 |
10,485 |
- |
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米ドル平均レート (円) |
144.49 円 |
152.48 円 |
7.99 円 |
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ユーロ平均レート (円) |
156.78 円 |
163.67 円 |
6.89 円 |
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(注)EBITDA、調整後EBITDAは国際会計基準(IFRS会計基準)に基づく開示ではありませんが、当社はこの開示が投資家の皆様に有益な情報を提供すると考えています。
(EBITDA及び調整後EBITDAの算出表)
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(単位:百万円) |
||
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
|
|
営業利益 |
1,566 |
22,580 |
- |
|
|
+ 減価償却費 |
27,933 |
27,871 |
△0.2% |
|
|
+ 減損損失(有価証券等を除く) |
16,657 |
△54 |
- |
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|
EBITDA |
46,158 |
50,397 |
9.2% |
|
|
(調整額) |
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+ 一時的なM&A関連収益・費用 |
629 |
74 |
△88.2% |
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+ 一時的な事業構造改革関連収益・費用 |
7,195 |
851 |
△88.2% |
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|
+ 一時的な資産の処分等収益・費用 |
△2,553 |
- |
- |
|
|
+ 一時的なその他の収益・費用 |
△1,716 |
△1,227 |
- |
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|
調整後EBITDA |
49,713 |
50,095 |
0.8% |
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(注)EBITDA及び調整後EBITDAを以下の算式により算出しております。
EBITDA=営業利益+減価償却費+減損損失(有価証券等を除く)
調整後EBITDA=EBITDA+一時的な収益・費用
c.キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は前連結会計年度末に比べ7,451百万円減少し、39,592百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動からの現金純額は41,941百万円であり、前年同期比637百万円の収入の増加となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によって使用された現金純額は8,473百万円であり、主として有形固定資産及び無形資産の取得による支出11,610百万円から構成されております。前年同期から12,598百万円の支出の減少となりましたが、当該減少の主な要因は、前連結会計年度において連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が11,500百万円生じていたことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によって使用された現金純額は前連結会計年度と同水準の39,068百万円であり、主として長期借入金の返済による支出27,003百万円、リース負債の返済による支出6,814百万円及び親会社の所有者への配当金の支払額4,916百万円から構成されております。
d.生産、受注及び販売の実績
(a)生産実績
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自2023年4月1日 至2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自2024年4月1日 至2025年3月31日) |
前年 同期比 (%) |
|
|
糖尿病マネジメント |
(百万円) |
96,480 |
94,130 |
97.6 |
|
ヘルスケアソリューション |
(百万円) |
119,226 |
127,961 |
107.3 |
|
診断・ライフサイエンス |
(百万円) |
132,252 |
133,579 |
101.0 |
|
計 |
(百万円) |
347,959 |
355,671 |
102.2 |
|
その他及び調整・消去 |
(百万円) |
- |
- |
- |
|
連結 |
(百万円) |
347,959 |
355,671 |
102.2 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.百万円未満を切り捨てて記載しております。
(b)受注実績
当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しております。
(c)販売実績
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自2023年4月1日 至2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自2024年4月1日 至2025年3月31日) |
前年 同期比 (%) |
|
|
糖尿病マネジメント |
(百万円) |
101,597 |
98,692 |
97.1 |
|
ヘルスケアソリューション |
(百万円) |
120,282 |
128,311 |
106.7 |
|
診断・ライフサイエンス |
(百万円) |
129,653 |
130,920 |
101.0 |
|
計 |
(百万円) |
351,533 |
357,924 |
101.8 |
|
その他及び調整・消去 |
(百万円) |
2,366 |
3,669 |
155.1 |
|
連結 |
(百万円) |
353,900 |
361,593 |
102.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は、外部顧客に対する売上収益を示しております。
3.百万円未満を切り捨てて記載しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものであります。
a.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRS会計基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
連結財務諸表の作成に当たっては、過去の実績や取引状況を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積り及び予測を行っておりますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合等、不確実性が存在するため、実際の結果がこれらの見積りや予測と異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 3.重要性がある会計方針」及び「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a)経営成績の状況
当期における当社グループの業績は、売上収益が361,593百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益が22,580百万円(前年同期比1,341.9%増)、減価償却費や一時的収益・費用を除いた調整後EBITDAは50,095百万円(前年同期比0.8%増)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
売上収益 |
営業利益又は損失 |
||||
|
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減 (%) |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減 (%) |
|
|
糖尿病マネジメント |
101,597 |
98,692 |
△2.9 |
16,007 |
13,888 |
△13.2 |
|
ヘルスケアソリューション |
120,282 |
128,311 |
6.7 |
△9,446 |
9,272 |
- |
|
診断・ライフサイエンス |
129,653 |
130,920 |
1.0 |
5,645 |
7,248 |
28.4 |
|
計 |
351,533 |
357,924 |
1.8 |
12,206 |
30,409 |
149.1 |
|
その他及び調整・消去 |
2,366 |
3,669 |
55.1 |
△10,639 |
△7,828 |
- |
|
連結 |
353,900 |
361,593 |
2.2 |
1,566 |
22,580 |
1,341.9 |
|
セグメントの名称 |
EBITDA |
調整後EBITDA |
||||
|
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減 (%) |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減 (%) |
|
|
糖尿病マネジメント |
23,004 |
19,855 |
△13.7 |
25,944 |
20,444 |
△21.2 |
|
ヘルスケアソリューション |
13,575 |
19,176 |
41.3 |
14,566 |
19,251 |
32.2 |
|
診断・ライフサイエンス |
19,356 |
18,599 |
△3.9 |
17,767 |
18,106 |
1.9 |
|
計 |
55,935 |
57,630 |
3.0 |
58,277 |
57,801 |
△0.8 |
|
その他及び調整・消去 |
△9,777 |
△7,233 |
- |
△8,564 |
△7,706 |
- |
|
連結 |
46,158 |
50,397 |
9.2 |
49,713 |
50,095 |
0.8 |
(糖尿病マネジメント)
当期の糖尿病マネジメントの売上収益は、98,692百万円(前年同期比2.9%減)となりました。BGM事業は、為替の好影響を受けた一方、欧米等の先進国市場における市場縮小、低価格チャネルへの移行及び米国における販売協業終了の影響が継続し減収となりました。欧州市場においては当社の市場シェアは拡大しているものの、市場の縮小影響を補うには至りませんでした。CGM事業は米国において1年間継続使用が可能なEversense 365を当第3四半期連結会計期間に上市したこと等により増収となりました。
当期の糖尿病マネジメントの営業利益は、13,888百万円(前年同期比13.2%減)となりました。BGM事業の減収影響や、販売チャネル構成及び先進国・新興国の販売割合の変化による利益率の低下、為替による販管費の増加等による減益を、第3四半期までは前年同期に計上した事業構造改革関連費用の減少やCGM事業の利益改善等がカバーしていましたが、通期では補うことができませんでした。
調整後EBITDAは20,444百万円(前年同期比21.2%減)となりました。主な当該調整項目として、一時的な事業構造改革関連収益・費用(当期597百万円加算、前年同期4,712百万円加算)の計上がありました。
(EBITDA及び調整後EBITDAの算出表)
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|
(単位:百万円) |
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
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営業利益 |
16,007 |
13,888 |
△13.2% |
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+ 減価償却費 |
6,812 |
6,027 |
△11.5% |
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+ 減損損失(有価証券等を除く) |
183 |
△60 |
- |
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EBITDA |
23,004 |
19,855 |
△13.7% |
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(調整額) |
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+ 一時的なM&A関連収益・費用 |
- |
- |
- |
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+ 一時的な事業構造改革関連収益・費用 |
4,712 |
597 |
△87.3% |
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+ 一時的な資産の処分等収益・費用 |
△9 |
- |
- |
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+ 一時的なその他の収益・費用 |
△1,763 |
△8 |
- |
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調整後EBITDA |
25,944 |
20,444 |
△21.2% |
(注)1,従来糖尿病マネジメントに含まれていた診断薬事業を、2025年3月期より診断・ライフサイエンスに移管しました。それに伴い、2024年3月期の数値も組み替えて記載しております。
2.EBITDA及び調整後EBITDAを以下の算式により算出しております。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + 減損損失(有価証券等を除く)
調整後EBITDA = EBITDA + 一時的な収益・費用
(ヘルスケアソリューション)
当期のヘルスケアソリューションの売上収益は、128,311百万円(前年同期比6.7%増)となりました。内訳として、LSIM事業が65,576百万円(前年同期比0.6%増)、ヘルスケアITソリューション事業が52,072百万円(前年同期比17.7%増)、CRO事業が10,662百万円(前年同期比1.8%減)となりました。
LSIM事業は、特殊検査やコロナ関連検査等が減少した一方、一般検査の増加や成長施策として取り組んでいる遺伝子分野の検査売上の増加等により前年同期と同等の売上となりました。
ヘルスケアITソリューション事業は、前年同期に義務化の影響による一時需要があったオンライン資格確認システムの需要減による減収を電子処方箋管理ソフトウェアの需要増に伴う増収が補うとともに、2023年10月に取得手続きを完了した富士フイルムヘルスケアシステムズ株式会社の電子カルテ・レセプト関連事業の売上貢献により増収となりました。
CRO事業は、非臨床事業における大型案件獲得が寄与したものの、治験事業の減収により前年同期比微減となりました。
当期のヘルスケアソリューションの営業利益は、9,272百万円(前年同期は9,446百万円の損失)となりました。これは主に、LSIM事業が前第3四半期連結会計期間に計上した12,737百万円の減損損失影響が当期ではなくなったことやコスト削減等により大幅な増益となったこと、ヘルスケアITソリューション事業においてオンライン資格確認システムの需要減の影響や人件費の増加等は継続したものの、電子処方箋管理ソフトウェアの需要獲得による増収影響や上述の前年度に取得した事業の収益改善効果、一時費用の減少等が要因です。
調整後EBITDAは、19,251百万円(前年同期比32.2%増)となりました。主な当該調整項目として、一時的なM&A関連収益・費用(当期74百万円加算、前年同期296百万円加算)の計上がありました。
(EBITDA及び調整後EBITDAの算出表)
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(単位:百万円) |
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
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営業利益(△は損失) |
△9,446 |
9,272 |
- |
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+ 減価償却費 |
9,965 |
9,904 |
△0.6% |
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+ 減損損失(有価証券等を除く) |
13,056 |
- |
- |
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EBITDA |
13,575 |
19,176 |
41.3% |
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(調整額) |
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+ 一時的なM&A関連収益・費用 |
296 |
74 |
△75.0% |
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+ 一時的な事業構造改革関連収益・費用 |
695 |
- |
- |
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+ 一時的な資産の処分等収益・費用 |
- |
- |
- |
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+ 一時的なその他の収益・費用 |
- |
- |
- |
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調整後EBITDA |
14,566 |
19,251 |
32.2% |
(注)1.従来ヘルスケアソリューションのLSIM事業に含まれていた診断薬事業を、2025年3月期より診断・ライフサイエンスに移管しました。それに伴い、2024年3月期の数値も組み替えて記載しております。また、LSIM事業に含まれていた創薬支援事業をCRO事業として区分しました。
2.EBITDA及び調整後EBITDAを以下の算式により算出しております。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + 減損損失(有価証券等を除く)
調整後EBITDA = EBITDA + 一時的な収益・費用
(診断・ライフサイエンス)
当期の診断・ライフサイエンスの売上収益は、130,920百万円(前年同期比1.0%増)となりました。内訳として、病理事業が58,310百万円(前年同期比8.3%増)、バイオメディカ事業が52,747百万円(前年同期比4.4%減)、診断薬事業が19,862百万円(前年同期比3.6%減)となりました。
病理事業は、欧米における消耗品販売が好調であったこと、米州での値上げ影響、欧州の販売子会社の貢献に加え、為替の好影響があり、市況低迷による機器販売の減少や中国の需要減少等を補い増収となりました。
バイオメディカ事業は、為替の好影響やアジアの一部地域において消耗品需要等の回復が見られたものの、主に日本や米州、中国での需要減少の影響を受け減収となりました。研究・医療支援機器分野では、特に日本での製薬企業の大規模案件数が減少したことが減収の大きな要因となりました。また、米州地域は当第4四半期連結会計期間の米国の政策による情勢不安の影響が拡大したこと等により減収となりました。調剤支援機器・その他売上は、米国市場における販売先の旧機種切替キャンペーンの奏功により上半期は増収となりましたが、旧機種の切替が一巡したことで通期では減収となりました。
診断薬事業は、移動式免疫発光測定装置パスファースト関連売上が堅調に推移したことに加え、一時的な収益の計上があったものの、電動式医薬品注入器の販売減少等の影響により減収となりました。
当期の診断・ライフサイエンスの営業利益は、7,248百万円(前年同期比28.4%増)となりました。
バイオメディカ事業は研究・医療支援機器分野の減収及びそれに伴う生産調整の影響等により減益となった一方、病理事業が増収影響に加えて輸送費低減等のコスト削減施策、過去に実施した組織のスリム化の効果等を背景とした利益率の改善により増益となったこと、診断薬事業が前第3四半期連結会計期間に計上した1,246百万円の減損損失影響がなくなったことや事業構造改革関連費用が減少したこと及び一時収益により増益となったことが要因です。
調整後EBITDAは、18,106百万円(前年同期比1.9%増)となりました。主な当該調整項目には、一時的な事業構造改革関連収益・費用(当期138百万円加算、前年同期664百万円加算)、一時的なその他の収益・費用(当期631百万円減算、前年同期44百万円減算)がありました。
(EBITDA及び調整後EBITDAの算出表)
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(単位:百万円) |
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2024年3月期 |
2025年3月期 |
増減 |
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営業利益 |
5,645 |
7,248 |
28.4% |
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+ 減価償却費 |
10,293 |
11,312 |
9.9% |
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+ 減損損失(有価証券等を除く) |
3,417 |
38 |
△98.9% |
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EBITDA |
19,356 |
18,599 |
△3.9% |
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(調整額) |
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+ 一時的なM&A関連収益・費用 |
333 |
- |
- |
|
+ 一時的な事業構造改革関連収益・費用 |
664 |
138 |
△79.2% |
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+ 一時的な資産の処分等収益・費用 |
△2,543 |
- |
- |
|
+ 一時的なその他の収益・費用 |
△44 |
△631 |
- |
|
調整後EBITDA |
17,767 |
18,106 |
1.9% |
(注)1.従来、糖尿病マネジメントに含まれていた診断薬事業及びヘルスケアソリューションのLSIM事業に含まれていた診断薬事業を、2025年3月期より診断・ライフサイエンスに移管し、診断薬事業として区分しました。それに伴い、2024年3月期の数値も組み替えて記載しております。
2.EBITDA及び調整後EBITDAを以下の算式により算出しております。
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + 減損損失(有価証券等を除く)
調整後EBITDA = EBITDA + 一時的な収益・費用
(b)財政状態の状況
「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 a.財政状態の状況」にて記載しておりますのでご参照ください。
(c)資本の財源及び資金の流動性についての分析
(イ)キャッシュ・フロー
「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 c.キャッシュ・フローの状況」にて記載しておりますのでご参照ください。
(ロ)資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための材料及び部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。販売費及び一般管理費の主なものは人件費及び広告宣伝費等です。
(ハ)資金調達と財務マネジメント
当社グループは、運転資金や設備投資のために、最適な資金確保と流動性の保持及び健全な財政状態を維持することを財務方針としております。
運転資金は手許資金でまかなうことを原則としております。基本的には当社が一元して資金を調達・運用し、運転資金が必要な各子会社に対しては当社グループ内から貸付を行うことで効率化を図っております。
また、設備投資等の長期資金需要に関しては、投資回収期間とリスクを勘案した上で調達方法を決定しております。なお、当連結会計年度は、設備投資及び研究開発活動等の資金について、主に営業活動の結果得られた資金から充当しております。
資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、銀行とコミットメント・ライン契約を締結しており、成長を維持するために必要とされる流動性を確保していると考えております。2025年3月末時点の借入残高は約2,553億円であり、取引金融機関とは良好な関係を維持しております。
(d)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの売上は、販売を行っている国又は地域の経済状況、医療制度、競合他社の状況、顧客動向や嗜好の変化等による影響を受け、また当社グループの製品の販売価格は、世界的に浸透している医療費抑制政策の影響を受ける可能性があります。また、当社グループは、外貨建てで取引されている製品・サービスが売上収益の過半数を占めていること等から、為替相場の変動により経営成績が影響を受ける可能性があります。費用面では、原材料価格等による影響を受けます。
当社グループの経営成績に影響を与える他の要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
(e)経営戦略の現状と見通し
当社グループの属するヘルスケア業界では、先進国における高齢化社会、世界的な生活習慣病の増加、各国における医療費削減等の経営環境に直面しております。
このような環境の下、当社グループでは、グローバル規模での中長期成長を支える社内体制の構築・強化、人材の確保と育成の強化、事業及び収益基盤の拡大等に取り組むことで売上拡大や利益の確保に努めていく所存です。
当社グループの経営戦略の現状と見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」にて詳細にご説明しておりますのでご参照ください。
(f)経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」にて詳細にご説明しておりますのでご参照ください。
当連結会計年度において、重要な契約等の決定又は締結等はありません。
なお、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約に係る記載は、2024年4月1日より前に締結されたものであるため、省略しております。
当社グループは、ヘルスケア分野において、世界中の健康を願うすべての人々の豊かな社会づくりに貢献するため、技術の革新と融合を通じて新たな価値を創造することを目指し、研究開発に取り組んでいます。
2024年11月に公表した中期経営計画では、2030年の目指すべき姿として「精緻な技術でヘルスケアの未来を切り拓くリーダーとなる」ことを掲げました。高品質な医療を誰もが身近に享受できる未来の実現に向けて、強みである精緻な技術を基盤に、ヘルスケアの未来を切り開いていきます。
目指すべき姿を実現するため、各事業の位置付けを明確化し、特に診断・ライフサイエンス領域を高成長が期待される重点分野として位置づけ経営資源を集中させる取り組みを行っています。研究開発の方針として、ドメインにおけるコア製品・技術を活用したソリューションの創出に加え、他社やパートナーと積極的な協業を通じて、スピード感をもった技術・製品開発を推進しています。また、デジタルヘルスや遺伝子細胞治療分野等の新領域にも積極的に取り組み、医療の質の向上、コスト削減、医療資源の効率的な利用を追求しています。
当社グループでは、グループの成長戦略に基づき、本社部門の事業開発部と事業部の研究開発チームが連携して研究開発に取り組んでいます。事業開発部は、グループ横断的なR&D戦略の立案や中長期的な視点でのコア技術の開発推進等を担い、事業部の研究開発チームは、各事業に関連した研究開発や既存製品・サービスの継続的な開発に注力しています。
当社グループの研究開発費は、
(1) 糖尿病マネジメントドメイン
糖尿病マネジメントドメインでは高精度な血糖値測定システム(BGM)や持続血糖測定システム(CGM)、シームレスなデータ連携、デジタル糖尿病管理ソリューションにより、糖尿病患者様のQOL(生活の質)向上に貢献しています。当連結会計年度には、資本業務提携をしているSenseonics Holdings, Inc.社(以下、「Senseonics社」)が研究開発を行い当社グループが独占販売するEversense365 CGMシステムについて、FDAより認可を取得し米国での販売を開始しました。Eversense365は18歳以上の1型及び2型の糖尿病を持つ患者様向けに開発された365日型CGMシステムで、糖尿病管理を向上させる次世代製品です。センサの耐用期間が1年となり、年1回のセンサ交換、故障やセンサの無駄削減、信頼のおけるアラート表示等の特徴があり、患者様はご自身の測定機器に煩わされることなく日常生活を送ることができます。Senseonics社は、CGMの成長における重要パートナーとして今後も共に取り組んでまいります。
当連結会計年度の糖尿病マネジメントドメインにおける研究開発費は、
(2) ヘルスケアソリューションドメイン
ヘルスケアソリューションドメインは医療ITから臨床検査、創薬支援サービスまで、幅広くサービス・ソリューションを提供することで、患者様や医療従事者の皆様を支援するヘルスケアサービスの充実を目指しています。
ヘルスケアITソリューション事業では、診療所用医事一体型電子カルテシステム、保険薬局用電子薬歴システムを基軸とした次世代に繋がるクラウド関連の商品や特定保健指導支援ツール、遠隔医療システム等商品開発を進めています。当連結会計年度では、完全クラウド型・診療所向け医事一体型電子カルテシステム「Medicomクラウドカルテ」を開発し先行受注を開始しました。高い操作性を意識した画面設計、診療情報提供書(紹介状)や健康診断結果報告書等文書作成の支援機能や、算定・会計時のAI自動算定機能、各種帳票(領収書・医療費明細書・処方箋)発行機能を標準搭載しており、医師、事務員の方の業務の効率化に貢献します。
また、薬局向けクラウド型薬歴共有サービス「Pharnes Link Ⅱ」の提供を開始しました。薬剤師の人数と薬歴端末数の不均衡による業務効率の低下や、急伸する在宅医療市場への薬局の進出等、薬局内外での運用ニーズに対応した新サービスであり、薬歴端末の追加を低コスト・簡易に実現し、薬剤師の作業効率向上に貢献します。
遠隔医療システムについては、医療現場の多様なニーズにこたえる、コンパクトで持ち運び可能なリアルタイム遠隔医療システム「Teladoc HEALTH TV Pro300(以下、TV Pro300)」を発売しました。「TV Pro300」は、「Teladoc HEALTH」シリーズの新機種で、持ち運べるコンパクトさと高性能なカメラを兼ね備え、「医療MaaS車両への搭載」や「訪問診療」「手術支援」等、シーンを選ばずオールマイティに活用できる新製品です。また「Teladoc HEALTH」は、へき地医療や周産期・新生児医療、感染症対策での活用に加えて、透析医療、臓器提供体制構築支援、妊婦検診、災害・緊急対応、次世代を担う医療従事者の育成現場でも活用され、医療従事者の負担軽減や患者様の医療アクセス向上等に貢献しています。
その他、「オンライン資格確認」と連携する医療機関・薬局向け医事コンピュータ用の導入数が50,000件を超え、また、「電子処方箋」と連携する医療機関・薬局向け電子処方箋管理ソフトウェアの導入数が10,000件を超えました。このように国の進める多様な医療・健康データとの接続に関する施策との積極的な連携を通じ、当社グループによるデジタルプラットフォームを実現していきます。
CRO事業では新しいモダリティと革新的な治療概念の普及に対応すべく、がん、認知症含む神経変性疾患、感染症等の各種疾患への治療薬開発に貢献する薬効薬理モデルの拡充や新たな分析技術の開発等に取り組みました。当連結会計年度では、薬物分析及びバイオマーカ―分析業務にペプチド吸着制御LC技術を導入した新たな受託サービスを開始しました。Future Peak株式会社とのコンサルティング契約を通じてこの新たなサービスを実現し、医薬品開発の分野において最先端の分析結果を提供します。
LSIM事業では多様な検査領域で長きにわたり培ってきた分析力をコアに、検査結果の解析力を加え、新しいソリューション創出に取り組みました。
当連結会計年度のヘルスケアソリューションドメインにおける研究開発費は
(3) 診断・ライフサイエンスドメイン
診断・ライフサイエンスドメインでは独自の電気化学センサ技術を活用したIn-Lineモニタリングの開発や、パートナー企業との協業を通じたデジタル病理及び免疫組織化学技術の開発を推進し、先端治療開発ソリューションの拡充を図っています。
バイオメディカ事業では、医療、ライフサイエンス分野の研究で用いられる保存機器、培養機器、実験環境機器、及び病院や薬局等の調剤室で用いられる調剤機器、フードソリューション機器の商品開発を行っています。
当連結会計年度では、培養中の細胞の代謝変化をリアルタイムに可視化する研究用ライブセル代謝分析装置「LiCellMo(リセルモ)」を、国内向けには9月より、海外向けには10月より販売を開始しました。本製品は、診断薬事業部の主力商品である血糖値センサの技術を活用した高精度In-Lineモニタリング技術をコアとしており、当社グループの事業間シナジーを活かした製品開発により実現したものです。本製品により、がん免疫研究や幹細胞研究、さらにそれらの製剤化に向けた製造プロセス検討において、これまでの代謝研究では得られなかった新しい知見を獲得する機会を研究者の皆様に提供するとともに、細胞医薬品製造プロセスにおけるQCD(品質、コスト、納期)課題に応える革新的なソリューション創出をさらに加速し、モダリティの進化への貢献を目指しています。また、本製品はThe Analytical Scientist誌の「2024年イノベーションアワード(2024 Innovation Award)」を受賞しました。The Analytical Scientist誌は、計測科学分野に関わる人々や技術、イノベーションに焦点を当て、分析科学の領域で新たな可能性を切り拓く革新的な技術を表彰するイノベーションアワードを毎年発表しています。
10月にパシフィコ横浜で開催された「再生医療JAPAN 2024」で、In-Lineモニタリング技術を活用した自動培養装置「LiCellGrow」のプロトタイプを出展しました。本製品は細胞培養中の代謝データをリアルタイムで取得し、測定結果に基づいて自動的に培地を交換する機能を備えており、再生医療・細胞治療における製造プロセスの効率化と品質向上に貢献します。
また、カナダの再生医療商業化センター CCRM(Centre for Commercialization of Regenerative Medicine)と初代T細胞の拡大培養プロセスを開発するための共同研究契約も締結し、CCRMが有する再生医療分野とバイオ医薬品製造の専門知識を組み合わせることにより、細胞・遺伝子治療(CGT)の早期普及に向けた細胞培養の効率化と品質向上を実現する新たな培養プロセスの構築を目指します。
また、2023年に再生・細胞医療分野において業務提携している株式会社サイフューズとの共同研究に基づき、同センサ技術を用いて、3D細胞製品の品質向上と安定製造に繋がる新生産技術を開発しました。
CO2インキュベーターについては、製薬企業及び研究施設・医療機関向けに、器内の汚染制御性能とユーザビリティの向上を追求した180℃器内乾熱滅菌型CO2インキュベーター「MCO-171AICUVD」の販売を開始しました。
病理事業では、Enhancing Precision cancer diagnosticsを推進するための新製品の開発を行っています。当連結会計年度ではE1000 Dx デジタルパソロジーソリューション「E1000 Dx」が、米国FDAより510(K)認可を取得しました。E1000 Dxは自動化された高速ホールスライドイメージングデジタルスキャナーと医療用モニター、高度な画像管理及び画像表示ソフトウェアを備えており、一日最大1,500枚の組織サンプルの高解像度デジタル画像を作成することができます。E1000 Dxにより、検査室における処理能力が大幅に向上し、がん診断の効率化を図ります。
また、グローバルで販売しているSlideMateレーザープリンターが、検査室の業務効率と検体のトレーサビリティ機能を向上させるイノベーションとして、米国のVizient社からイノベーティブ・テクノロジー認定を受けました。
診断薬事業は、2023年の当社グループの事業再編により、PHC株式会社診断薬事業部と株式会社LSIメディエンスの診断薬事業本部を統合し、2024年4月に診断・ライフサイエンスドメインに移管しました。診断薬事業部の強みであるモノづくりの風土に、体外診断薬及び医療機器の開発・製造の新たな技術・知見・ノウハウが融合醸成することにより、高性能且つ高品質な製品を国内外に広く提供することが可能となりました。現在主に電動式医薬品注入器と移動式免疫発光測定装置及び体外検査試薬に注力して研究開発を行っています。
当連結会計年度では血小板活性化に伴い血中濃度が上昇する可溶性C型レクチン様受容体(C-type lectin-like receptor2 : sCLEC-2)を測定する「sCLEC-2測定キット」を認定検査試薬(研究用試薬)として発売しました。本試薬は、山梨大学 井上克枝教授の研究グループが発見したsCLEC-2を測定するために、PHC株式会社が共同で開発し、同社が製造販売する「全自動臨床検査システム STACIA」の専用試薬として製品化されたものです。
当連結会計年度の診断・ライフサイエンスドメインにおける研究開発費は