第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

  当中間会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当中間会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態及び経営成績及びキャッシュ・フローの状況

(経営成績)

当中間会計期間(2025年3月1日~2025年8月31日)においては、パイプラインの着実な開発の進展と、社内・社外両方のソースによるパイプラインの拡大に取り組んでまいりました。当社のパイプラインの中で最も進展した臨床開発段階にあるTMS-007(JX10)については、CORXEL Pharmaceuticals Hong Kong Limited(以下「CORXEL」)により、2025年5月にグローバル第Ⅱ相/第Ⅲ相臨床試験「ORION」(Optimizing Reperfusion to Improve Outcomes and Neurologic function)における最初の患者さんへの投与(FPI:First Patient In)が行われました。日本国内においては、当社が同臨床試験の日本パートの依頼者として治験計画届出書を提出し、臨床研究データベースjRCT(Japan Registry of Clinical Trials)への登録を行いました。また同じく臨床開発段階入りしているTMS-008については、第Ⅰ相臨床試験を完了いたしました。

 

①TMS-007関連(JX10)の活動

急性期脳梗塞を適応症とするTMS-007(JX10)は、当社が前期第Ⅱ相臨床試験までの開発を行い、他のSMTP化合物ファミリーとともに導出した低分子化合物であり、現在はCORXELを主体として、グローバルで行う第Ⅱ相/第Ⅲ相臨床試験「ORION」が進められています。当社はTMS-007の日本における独占的な開発販売権と、日本を除く全世界における開発・販売に対するマイルストーン一時金及びロイヤリティを受領する権利を、CORXELから得ています。

TMS-007(JX10)は、プラスミノーゲンの立体構造変化を介した血栓溶解による血流再建と、可溶性エポキシドヒドロラーゼ阻害を機序とする抗炎症作用に基づく虚血再灌流障害の抑制というメカニズムを持っており、単剤で「血流再建」と「虚血再灌流障害抑制」の双方の治療戦略に対応する薬剤候補です。そのため、t-PA等の薬剤及び薬剤候補物質に対する優位性を示す可能性があると考えています。

当社が日本国内で実施した前期第Ⅱ相臨床試験において、TMS-007(JX10)は良好な結果を収めております。現在、急性期脳梗塞治療薬として認可されている唯一の血栓溶解剤t-PAには、頭蓋内出血を助長する副作用のリスクがあることが知られております。かかるリスクを踏まえ、t-PAの使用は原則として発症後4.5時間以内に制限されています。これに対して、TMS-007の前期第Ⅱ相臨床試験においては、発症後12時間まで(TMS-007群の平均9.5時間)被験者を組み入れました。その結果、プラセボ群では米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)4以上の悪化を伴う症候性頭蓋内出血の発生頻度が2.6%(1/38)であったのに対して、TMS-007群では0%(0/52)であり、TMS-007の安全性が示唆されました。また有効性においても、生活自立度を評価するモディファイド・ランキン・スケール(mRS)のスコアのゼロ(全く症候がない)又は1(症候はあっても明らかな障害はない)への転帰率において、TMS-007は統計的な有意差を伴う有効性を示しました。

当中間会計期間においては、CORXEL主導にて進めているグローバル第Ⅱ相/第Ⅲ相臨床試験「ORION」に協力してまいりました。ORION試験は、2025年5月に中国で最初の患者さんへの投与が実施されるとともに、米国の臨床試験データベースClinicalTrials.govへ試験の詳細が登録・公開されました。各国においても、当局への申請、及び投与に向け医療機関の準備が進められております。日本パートにおいては、2025年4月に当社がPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)へ治験計画届出書を提出、同年8月に臨床研究データベースjRCT(Japan Registry of Clinical Trials)への登録を行い、投与に向けた準備を進めました。

また、TMS-007(JX10)の第Ⅰ相臨床試験の論文が、国際的な臨床薬理学ジャーナル「British Journal of Clinical Pharmacology」の2023年度の閲覧上位論文として、2025年4月にWiley社の「Top Viewed Article」に選定された他、2024年11月に米国心臓協会(AHA: American Heart Association)/米国脳卒中協会(ASA: American Stroke Association)の発行する学術雑誌「Stroke」に掲載された前期第Ⅱ相臨床試験結果の論文が、2025年5月に同学術雑誌の情報発信サイト「Blogging Stroke」に取り上げられました。

 

②TMS-008関連の活動

急性腎障害及びがん悪液質を適応症と想定し開発を進めているTMS-008については、血栓溶解作用をほとんど持たず、sEH阻害による抗炎症作用を有するSMTP化合物です。炎症性疾患を標的として広範な適応症が期待できると考えられます。

当社は、CORXELよりTMS-008における特定の適応に関して、全世界における独占的な開発製造販売権の許諾を得ています。

当中間会計期間においては、健常人における第Ⅰ相臨床試験のデータ・リードアウトを2025年4月に行い、同年6月に治験総括報告書(CSR: Clinical Study Report)が完成し、第Ⅰ相臨床試験が完了いたしました。足元では次相試験に向けた準備を進めております。

 

③JX-09関連の活動

JX09は、治療抵抗性又はコントロール不良の高血圧患者さんの治療を適応とした、経口の低分子アルドステロン合成阻害剤です。アルドステロン合成酵素阻害剤においては、アルドステロン合成酵素であるCYP11B2のみを選択的に阻害し、類似した構造を持つCYP11B1(コルチゾール合成酵素)を阻害しないことが重要と考えられていますが、JX09はCYP11B2に対する高い選択性を示しており、ベスト・イン・クラスの可能性があると考えられます。

JX09について、当社は、CORXELより日本における独占的な開発販売権を許諾されています。現在、CORXELによりオーストラリアにおいて第Ⅰ相臨床試験が実施されており、当社は、今後日本での臨床試験を実施することにより、グローバル治験の一翼を担う計画を検討しています。

 

④TMS-010関連の活動

脊髄損傷を適応症とし、2022年7月に北海道大学とオプション契約を締結して評価を行ってきたシーズについて、2024年7月3日に同大学との間でライセンス契約を締結し、当社のパイプラインにTMS-010として追加いたしました。当社は当該ライセンス契約により全世界における独占的な開発製造販売権を取得しております。

脊髄損傷は、運動麻痺・感覚麻痺・排尿排便障害などに至ることがある重篤な疾患ですが、未だ効果的な薬剤がない状況にあります。北海道大学で見出された当該治療薬候補化合物は、血液脳脊髄関門(BBSCB:Blood-brain spinal cord barrier)の破綻を防ぐことで、脊髄の二次損傷を抑制する神経保護作用が期待できます。

当中間会計期間においては、当社は、臨床試験開始に必要な非臨床試験及びGMP製造レベルの製剤の検討と並行して、原薬供給元の選定を進めました。また、臨床試験計画の策定を引き続き行っています。

 

⑤パイプラインの拡充に関する活動

当社は、当中間会計期間において、社内プログラム及び社外プログラムの2つの軸において、パイプラインの拡充を図るための研究開発活動を積極的に推進いたしました。

社内プログラムにおいては、当社がこれまでSMTP化合物の研究開発によって培った可溶性エポキシドヒドロラーゼ(sEH)阻害に関する知識と経験を活かし、AIを活用した化合物生成による阻害剤のデザインや天然物ライブラリーのスクリーニングを含む複数のアプローチを活用し、新たなsEH阻害剤の候補となる化合物の探索を行いました。その中から有望な候補化合物を取得し、当該化合物の薬理・薬効評価及び毒性試験を進めました。また、TMS-008の開発対象となる適応の追加についても検討を進めました。社外プログラムにおいては、アカデミア等の研究機関や創薬企業等の早期研究開発段階にあるプログラムの探索及び評価を継続いたしました。前述④に記載のTMS-010の他に、同じく北海道大学と独占評価を実施中のシーズについて、引き続き様々な観点からの評価活動を進めました。

 

以上の活動の結果、当中間会計期間における営業費用は、TMS-007及びTMS-008をはじめとする研究開発費として298,666千円を、その他の販売費及び一般管理費として173,267千円を計上したことから、合計では471,934千円となりました。

これらの結果、営業損失は471,934千円(前年同期は営業損失452,240千円)、経常損失は484,716千円(前年同期は経常損失451,834千円)、中間純損失は487,473千円(前年同期は中間純損失477,820千円)となりました。

なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績については記載を省略しております。

 

  (財政状態)

(資産)

当中間会計期間末の資産合計は、前事業年度末に比べ89,859千円増加し、3,122,129千円となりました。

これは主に、営業費用等の支出があった一方、新株予約権の権利行使があったことにより、現金及び預金が

161,646千円増加したことによるものであります。

(負債)

当中間会計期間末の負債合計は、前事業年度末に比べ86,753千円減少し、130,027千円となりました。

これは主に、未払計上した前事業年度経費の支出により未払金が78,723千円減少したことによるものであります。

(純資産)

当中間会計期間末の純資産は、前事業年度末に比べ176,613千円増加し、2,992,101千円となりました。

これは主に、中間純損失487,473千円を計上した一方で、新株予約権の権利行使があったことにより資本金及び資

本準備金がそれぞれ329,735千円増加したことによるものであります。

なお、2025年7月に資本金702,327千円、資本準備金702,327千円をそれぞれ減少し、同額をその他資本剰余金に振

り替えるとともに、当該その他資本剰余金1,404,655千円を繰越利益剰余金に振り替えて欠損填補に充当しており

ます。

この結果、当中間会計期間末において資本金1,137,611千円、資本剰余金2,313,754千円、利益剰余金△487,473千

円となりました。

 

(キャッシュ・フローの状況)

当中間会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べ161,646千円増加し3,084,596千円となりました。当中間会計期間におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当中間会計期間において営業活動に使用した資金は、476,386千円(前年同期は409,597千円の支出)となりました。これは主に、税引前中間純損失の計上によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当中間会計期間において投資活動に使用した資金は、2,544千円(前年同期は29,172千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当中間会計期間において財務活動により獲得した資金は、640,576千円(前年同期は918千円の収入)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入によるものです。

 

(2)会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更はありません。

 

(3)経営方針・経営戦略等

当中間会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

当中間会計期間における研究開発費の総額は298,666千円であります。

 なお、当中間会計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(6)経営成績に重要な影響を与える要因

当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 1 事業等のリスク」を参照ください。

 

(7)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社は、創薬等のコンセプトやシーズの研究費及びパイプラインの製品化に向けた開発費及び会社運営のた

めの管理費用について資金需要を有しております。当社は、それらの運転資金及び設備資金につきましては、

内部資金又は増資により資金調達しております。当中間会計期間末における現金及び現金同等物は3,084,596千円

と当面の事業運営に問題のない資金水準となっております。

 

3【経営上の重要な契約等】

 当中間会計期間において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。