第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

本項における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、以下の経営理念を掲げております。

 

'ミッション’

「金融をサービスとして再発明する」

 

この経営理念の下、金融サービス提供者向けの次世代クラウド基幹システムの提供を中心に、ビッグデータ解析支援や金融サービスの企画・開発支援も行いながら、パートナー企業とともに人々にとって遠い存在である金融サービスを暮らしに寄り添ったものにすることを目指しております。また、証券業、保険業及び貸金業における社会的責任と公共的使命を深く認識し、正しい倫理的価値観を持った上で、多くのお客様に安心をお届けすることを目指し事業活動を行っており、これらの活動が当社グループの中長期的な株主価値及び企業価値の最大化につながると考えております。

 

(2)経営環境

当社グループのビジネスは、国内金融業、特に証券業、保険業及び貸金業に深く関連しております。

国内の証券業の市場規模については、2023年12月末の家計が保有する上場株式及び投資信託の資産残高が382兆円、その過去10年間の年平均成長率は5.0%となっております(出所:日本銀行、2023年)。

国内の損害保険業及び少額短期保険業の市場規模については、2022年度の年間保険料収入が、損害保険は9兆1,194億円で過去10年間の年平均成長率は2.2%、少額短期保険は1,346億円で過去10年間の年平均成長率は10.0%となっております(出所:日本損害保険協会及び日本少額短期保険協会、2023年)。加えて、日本の損害保険業の市場規模は、世界と比較しても6番目に大きい市場となっております(出所:sigma No 4/2022 Swiss Re Insurance)。

また、国内金融業界におけるIT投資の市場規模については、2024年の国内IT支出額の予測は29兆9,311億円、そのうち銀行・証券向けが5兆110億円、保険向けが1兆8,262億円となっており、金融業界向けは国内IT支出の中でトップクラスの規模となっております(出所:ガートナー社、2023年)。

 

上記のとおり当社グループのビジネスが深く関連する金融業界は、非常に大きく歴史ある産業である一方、モバイルテクノロジーの普及やデータ利活用等の技術進歩により、エンドユーザーはより質の高いサービスを求める傾向が高まり、特に顧客体験の向上が重要な課題となっております。金融庁が2021年6月に公表した「リスク性金融商品販売にかかる顧客意識調査」によると、金融機関の顧客推奨度(利用者が友人、知人に勧めたいと思うか否かを指数化したもの)は、保険、証券、銀行、消費者金融いずれも、他の業種より低く、十分な顧客体験を提供できていないと言えます。

 

金融サービスの顧客体験を改善し競争力を高めるためには、事業のデジタルトランスフォーメーションとそれに伴って蓄積されるビッグデータの利活用が求められています。これらを成功させるには、金融業界の専門知識と高度なテクノロジーを融合させなくてはなりません。

 

こうした状況に対応するため、既存金融機関は多額の投資を行っております。日本国内における金融業のIT投資額について、2026年度には2021年度比で21.1%増加すると予測されております。(出所:株式会社富士キメラ総研、2022年)その一方で、多くの金融機関にとっては、単独でこのような大規模な長期投資を継続することは難しいため、外部のソリューションを活用した効率的な変革が期待されるものと当社グループは考えております。

 

 

他方で、新たなプレイヤーによる金融事業への参入も増加傾向にあります。「Embedded Finance(組込型金融)」と呼ばれ、金融以外のサービスを提供する事業者が金融サービスを既存サービスに組み込んで金融サービスも提供することで、既存サービスの利便性の向上と収益の拡大を図る取組みが増加しております。高度なテクノロジーを有する複数の大手企業が、通信・配送・小売といった大規模な個人ユーザーを抱える既存事業を基盤として、金融事業への参入を決定しており、実際に証券仲介業者として既存事業のユーザーを対象とした資産運用サービスを提供する会社も現れております。

 

更に、日本政府が2018年6月に公表した「未来投資戦略2018」においては、「FinTech/キャッシュレス化の推進」が重点分野として位置づけられており、2020年6月には「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立する等、金融事業への新規参入を支援する法環境の整備も進んでおります。特に、利用者と金融機関との間に介在する仲介業者は、現行規制では金融商品取引法における金融商品仲介業者、保険業法における保険募集人や保険仲立人というように「機能」ごとに分かれており、事業者が「機能」をまたいで商品やサービスを取り扱う場合には、複数の登録等が必要となっております。その結果、銀行、証券、保険すべてのサービスをワンストップで提供できる仲介業者は数社しかおらず、利用者の利便性の点からは十分とはいえない状況でした。そのような中、今回の法改正により、「金融サービス仲介業」が創設され、仲介業者が少ない負担で複数業種かつ多数の金融機関が提供する多種多様な商品やサービスをワンストップで提供できるようになりました。

 

これまでの金融業界は、各金融機関が金融商品の組成からエンドユーザーへの販売、それらをつなぐシステムまで多くの機能を自社で担う垂直統合的な産業構造をなしていました。当社グループは、当社グループが提供する金融インフラストラクチャが横串となり、多数の金融商品とエンドユーザーへの販売を担う企業を1つのプラットフォームでつなぐことで、水平統合的な産業構造への転換を目指しております。

 

(3)経営戦略

当社グループの事業及び事業領域には次のような特徴があり、これらの特徴と上記の経営環境を踏まえて、中長期的な経営戦略を立案しております。

① ユニークな提供価値と市場機会

金融業界において、技術的負債に纏わる課題は広く認識されておりますが、新しいテクノロジーをベースにした基幹システムやソリューションを提供するプレイヤーは非常に少ない状況にあります。こうしたテクノロジーの導入は、既存金融機関の基幹システムを刷新するには非常に長い時間を要する一方で、新規参入や既存金融機関の新規事業の立上げにおいては、比較的導入されやすい傾向にあります。また、導入先企業のオペレーションに深く組み込まれたサービスであるため、一度導入されると解約が生じにくいという特徴があります。

② 安定性と成長性を併せ持つ収益モデル

当社グループの金融インフラストラクチャ事業の収益は、フロー収益、ストック収益、従量課金収益の3つから構成されております。フロー収益は顧客にとっては新規に自前で立ち上げる場合と比較して安価であり、中長期的にはストック収益と従量課金収益が収益の中心になることから、安定的かつ継続的な事業進捗が見込める収益モデルであります。「(2)経営環境」に記載のとおり、証券、保険ともに個人における市場規模の拡大が見込まれる中で、当社グループの金融インフラストラクチャ事業で提供する各パートナー企業のサービスにおいても取引高が拡大して、従量課金収益が今後拡大するものと考えております。また、導入先企業がその顧客に対して金融サービスの基盤となるインフラストラクチャを提供するという性質上、解約率は低い傾向にあり、顧客LTV(Life Time Value:1顧客あたりの生涯に生み出す収益)の最大化を推進しやすいモデルであります。

③ データ蓄積によるインフラストラクチャの価値向上

当社グループの金融インフラストラクチャ事業の証券インフラストラクチャビジネスにおいては、パートナー企業が仲介業者やマーケティングパートナーとなり、当社グループがエンドユーザーである一般顧客と契約を締結するため、当社グループにも顧客情報が蓄積されることとなります。こうした顧客の属性情報や行動情報を分析可能な形で蓄積することで、サービスやマーケティングの最適化に活用することが可能になります。

 

 

具体的な当社グループの経営戦略は、以下の通りであります。

① 金融インフラストラクチャの機能拡充とパートナー数の拡大

近年、個人向けサービスを展開して大規模な顧客基盤を有する企業を中心に、様々な企業が金融事業へ参入しております。更に、こうした動きに対して、既存金融機関も新規事業としてデジタル特化の新たなサービスの立上げを行っており、新しいテクノロジーが導入されやすい環境にあると捉えております。

当社グループは、これまでインフラストラクチャの安定稼働と業務プロセスの確立を優先し安定的な成長を続けておりましたが、様々なニーズに応えられるよう金融インフラストラクチャの機能拡充を図るとともに、大企業向けの事業開発チームを確立し、パートナー数の拡大に取り組み始めております。

既存事業で個人ユーザーを有している企業は、当該個人ユーザーをターゲットとした証券・保険等の金融サービスを提供するニーズが高いと当社は考えており、実際に金融事業へ参入している企業が複数現れております。主な業界としては、銀行、クレジットカード、Eコマース、小売店、運輸、通信、コンシューマー向けアプリ等が挙げられ、各企業が自身の既存事業における顧客を開拓することでARPU(Average Revenue Per User:ユーザー1人あたりの平均売上高)を継続的に拡大し、結果としてLTVの拡大が実現されると当社は考えております。従って、当社グループは、これらの業種に属する企業を中心に営業活動を行うことにより、当社グループの金融インフラストラクチャを活用したパートナー企業の拡大を図ってまいります。

また、当社グループの金融インフラストラクチャ事業は、各パートナー企業において提供される金融サービスの顧客数、取引の増加により当社が獲得する収益は拡大するものの、かかる金融サービスの顧客(エンドユーザー)開拓はパートナー企業自身が既存事業の顧客に対して行うため、当社グループには顧客開拓コストが発生しにくい特徴があります。従って、収益の増加に対して発生するマーケティング費用等が押さえられるというビジネス構造であるため、顧客数や取引数の増加に伴い、中長期的に利益率が向上すると考えております。

② データ解析にかかる技術力の向上

現在は、テクノロジーの先進性やコスト競争力によって差別化を図っておりますが、将来的には競合他社が現れる可能性もあると考えております。そのため、当該インフラストラクチャに蓄積されるデータを活用したサービス改善やマーケティングの最適化を行うことにより、持続的な競争優位性を生み出すことが重要と考えております。このため、中長期的な視点に立ちデータ解析の知見と技術力の向上に努めてまいります。

③ 事業領域・地域の拡大

当社グループは、「金融を'サービス'として再発明する」というミッションのもと、金融サービス提供者向けの次世代クラウド基幹システムの提供を行い、パートナー企業とともに新しい事業やサービスを創出することで、事業成長を実現してきました。現在は、証券インフラストラクチャ「BaaS」、保険インフラストラクチャ「Inspire」、当期よりクレジットインフラストラクチャ「Crest」を提供しておりますが、更なる成長に向けて、中長期的には送金/決済等についても、必要な許認可等を取得した上で、参入することを目指しております。当社グループは、今後も他の金融事業領域や日本にとどまらず海外での展開も視野に入れて、事業拡大を進めてまいります。

 

(4)目標とする経営指標

金融インフラストラクチャ事業においては、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、パートナー数を重要指数としております。

 

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後当社グループが成長を遂げていくために優先的に対処すべき事業上の課題は以下の通りです。なお、優先的に対処すべき財務上の課題は、現在ありません。

① 金融インフラストラクチャ事業の収益拡大

当社グループは、上記「(3)経営戦略」で記載したように、「BaaS」や「Inspire」等の金融インフラストラクチャを導入いただく企業を拡大することが重要であると考えております。当社グループが提供する金融インフラストラクチャは、個人顧客を数多く有する企業が顧客対象となるため、主に大企業をターゲットとしたセールス体制となっております。当社グループは、これまでの実績を通じたPR等により、大手金融機関や金融サービスに関心を有する大企業とのネットワークを構築し、当該ネットワークを活用して潜在顧客の意思決定層へアプローチし、事業開発チームが顧客とともにビジネスプランニングを行うところから支援することで受注までつなげる体制を構築しております。今後更に大企業向けの事業開発チームを拡充し、パートナー数の拡大に取り組んでまいります。

② 売上の拡大並びに利益及びキャッシュ・フローの定常的な創出

当社グループは、事業拡大を目指して開発投資や人件費・採用費を中心に積極的な先行投資を進めており、2023年3月期までの経営成績は営業損失を計上しておりました。当社の成長事業である金融インフラストラクチャ事業は、原則としてパートナー企業がマーケティングを行うため、サービス数が増加しても当社グループの広告宣伝費は著しく増加せず、機能拡充のための開発費もパートナー数が増加するほど1社あたりの費用負担は低減する傾向にあるため、収益性については新たなパートナー企業の獲得及びエンドユーザー増加に伴うトランザクションの増加による売上高の拡大が重要となります。パートナー企業については、金融インフラストラクチャのサービスに興味を有する顧客候補は多く、交渉中、契約締結済みのパイプラインは複数存在している状況であります。今後も開発投資や採用等の先行投資を進めつつ、中長期的な利益及びキャッシュ・フローの最大化を目指してまいります。

③ 優秀な人材の採用及び育成

当社グループは、継続的な事業成長の実現に向けて、テクノロジーと金融の双方に明るい優秀な人材を採用し、強い組織体制を整備することが重要であると考えております。2024年3月末時点のプロダクト開発に関わる人員の割合は、グループ全体で73%(エンジニア、プロジェクトマネージャー、デザイナー、ウェブディレクターの合計)を占めており、顧客に対して質の高い金融サービスの開発・運用を提供できる体制が構築されております。今後も積極的な採用活動を推進していく一方で、各種社内勉強会の開催をはじめ、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、人事制度の構築やカルチャーの推進等を進めてまいります。

④ 情報管理体制の継続的な強化

当社グループは、提供するサービスに関連して多くの個人情報を取り扱っており、情報管理体制を継続的に強化していくことが重要であると考えております。これらを保護するため、情報セキュリティポリシーを定め、この方針に従って適切に管理しておりますが、今後も社内研修の実施をはじめ、社内体制や管理方法の強化を行ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「金融を’サービス’として再発明する」をミッションに掲げております。このミッションを遂行し金融サービスを暮らしに寄り添ったものにすることで社会の活性化に貢献することを基本的な考えとしております。当社グループにとってのサステナビリティとは、事業を通して社会課題の解決に寄与することであり、当社グループの持続的な成長が、社会の持続的な発展に貢献できるような世界を目指すことです。その実現のため、株主の皆様やお客様をはじめ、取引先、地域社会、従業員等、各ステークホルダーと良好な関係を築き、長期的視野の中でグループ企業価値の向上を目指すべく経営活動を推進しております。

近年、世界的に異常気象や大規模な自然災害による被害が甚大化する中、気候変動対応様々な社会課題の顕在化やステークホルダーの価値観の変容に伴い、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した経営や経済価値と社会価値の双方を創出するサステナビリティ経営がより一層求められています。

当社グループも、持続的な社会の創造については、責任をもって取り組んでいくべきであると考えています。

 

(1)ガバナンス

当社グループは、様々な要因により将来の不確実性が高まる中、環境の大きな変化に対する迅速かつ効率的な対応を強化するとともに、事業機会の拡大と社会課題の解決を目指し、柔軟なガバナンスを構築しています。取締役会、ManagementMeeting及びグループリスク管理委員会がリスクや機会を含むESGに関する監督の責任を持ち、そのもとで代表取締役及び配下の各組織体が業務執行を担っています。

 取締役会を経営の基本方針や重要課題並びに法令で定められた重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、原則月1回開催するとともに、事業経営に迅速な意思決定と柔軟な組織対応を可能にするため、取締役及び事業責任者等が出席するManagementMeetingを月1回開催しております。グループ全体のリスクを把握し、適切な対応方針を決定し、気候変動対応を含むESG課題への具体的な取組状況については、ManagementMeetingにて報告しております。

 

(2)戦略

当社グループは、事業活動に伴う環境負荷を低減するための施策を通じて、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めてまいります。

具体的には、気候関連の規制強化や、脱炭素に向けた技術革新の進展により予想されるリスクや機会の影響分析を行い、分析した結果をもとに解決策を検討、具体的な実施につなげてまいります。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループの競争力の源泉は、人材であると考えております。当社グループの事業環境の中で、付加価値を最大化させるためには、テクノロジーと金融の双方に明るい優秀かつ多様な人材の獲得を図りつつ、また体制面でも、獲得した人材が定着し、より一層活躍できるための環境構築を目指します。そのためには、多様な人材を受け入れることが可能なキャリアプランの構築、それぞれが抱える業務課題を解決するために必要な能力を最大限発揮させるためのサポート体制(必要なスキル習得や人材育成が可能な環境の構築など)が必要であると考えており、それを備えるための人事制度等を充実させてまいります。

 

(3)リスク管理

当社グループにおいても、「環境問題・気候変動への積極的な取り組み」を重要課題の一つとして認識しております。気候変動を含む当社グループの事業活動に係る様々なリスクに関し、グループリスク管理委員会にて識別・評価・管理を行い、担当者を選定して課題に取り組んでおります。

 

 

(4)指標及び目標

当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

定着率(注)

2026年3月まで90

88.7

管理職に占める女性労働者の割合

2026年3月まで30

37.5

 

(注)定着率=100%-(当該事業年度の退職者数÷当該事業年度の期首在籍者数)

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(特に重要なリスク)

(1) 許認可の取消しについて

当社グループにおいて、当社は保険業法に基づく「少額短期保険主要株主」、当社子会社の株式会社スマートプラスは金融商品取引法に基づく「第一種金融商品取引業者」、「第二種金融商品取引業者」及び「投資運用業者」、当社子会社のスマートプラス少額短期保険株式会社は保険業法に基づく「少額短期保険業者」、当社子会社の株式会社スマートプラスクレジットは貸金業法に基づく「貸金業者」の登録を受けており、かかる許認可(登録)及び各規制法の遵守は、当社グループの事業運営上、重要な事項となっております。

当社グループが取得している許認可(登録)につき、有価証券報告書提出日現在において、事業主として欠格事由及びこれらの許認可(登録)の取消事由に該当する事実はないと認識しております。しかし、今後、欠格事由又は取消事由に該当する事実が発生し、許認可(登録)取消等の事態が発生した場合には、当社グループの業務に支障をきたすとともに、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があるため、特に重要なリスクと認識しております。

また、当社グループは、事業活動を行う上で、上記を含む様々な法律、規制、政策、実務慣行、会計制度及び税制等の法令諸規則を遵守して業務を行っておりますが、これらの法令諸規則は将来において新設・変更・廃止される可能性があり、その内容によっては、当社グループのサービスの提供が制限される、新たなリスク管理手法の導入その他の体制整備が必要となる等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金融庁からの処分について

当社子会社の株式会社スマートプラスは、関東財務局から金融商品取引法第29条に基づく第一種金融商品取引業及び第二種金融商品取引業の登録を受け、金融商品取引法等の法令・規制等を遵守し事業を行っております。金融商品取引業については、金融商品取引法第52条第1項及び第4項若しくは同法第53条第3項、同法第54条により登録の取消しとなる要件が定められており、万が一、これらに該当した場合、登録の取消しを含む行政処分が下されます。

当社グループにおいて何らかの事由により諸法令等に違反する事象が発生した場合、行政指導・業務停止・登録取消等の行政処分を受ける可能性があります。その場合、当社グループの信用が著しく損なわれ、経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(3) システムトラブルについて

当社グループの事業は、インターネットを通じて提供されているものであり、システムの安定稼働が、業務遂行上、非常に重要であります。そのため、ネットワーク監視やシステム管理体制の構築等、継続的なシステム障害に対する取組みを実施しております。

しかしながら、プログラムの不具合、人為的ミス、不正アクセス、自然災害等の諸要因により、システム障害や情報漏洩が発生した場合には、当社グループへの信頼や企業イメージの低下や相当な費用負担により、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 個人情報保護について

当社グループは、金融インフラストラクチャ事業等を通して各種の個人情報を保有しております。当社グループは、個人情報の外部漏洩の防止はもちろん、不適切な利用、改ざん等の防止のため、個人情報の管理を事業運営上の重要事項と捉えております。個人情報保護基本規程及び情報システム管理規程を制定し、個人情報を厳格に管理するとともに、全従業員を対象として社内教育を徹底する等、個人情報の保護に関する法律及び関連法令並びに当社グループに適用される関連ガイドラインの遵守に努めるとともに、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。

しかしながら、万が一、外部からの不正アクセスや社内管理体制の瑕疵等により個人情報が外部に流出した場合や不適切な利用、改ざん等が発生した場合には、当社グループへの損害賠償請求や対応に多額の費用を要するほか、社会的信用の失墜により、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります

(その他のリスク)

(5) 金融業界の市況変動について

当社グループは、主に金融機関を対象に事業を展開しているため、景気の減速や急激な市況変動等の事態が発生した際には、金融機関による当社グループサービスへの支出等の事業活動が大きく減退する可能性があります。

万が一、金融業界の市況が大きく悪化した場合には、金融機関からの受注量等が減少し、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(6) 金融商品にかかるマーケット変動について

当社グループが提供する証券インフラストラクチャ「BaaS」は、株式流通市場を用いたものであります。株式相場の下落又は低迷により、流通市場の市場参加者が減少し、株券等の売買高が縮小する場合には、委託手数料から生じるレベニューシェアが減少する可能性があります。また、当社グループの株式会社スマートプラスは、個人向けの証券サービスを運営しており、当該サービスについても、株式相場の下落又は低迷により、流通市場の市場参加者が減少し、株券等の売買高が縮小する場合には、委託手数料の減少等が発生する可能性があります。このような場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 競合による事業環境変動について

当社グループは、今後においても顧客ニーズへの対応を図り、事業拡大に結び付けていく方針であります。しかしながら、これらの取組みが予測通りの成果をあげられない可能性や、画期的なサービスを展開する競合他社の出現、その他の競合等の結果、当社グループ及びそのサービスの競争優位性が失われ、当社グループの売上高が低下する可能性があるほか、サービス価格の低下や利用者獲得のための広告宣伝費等の費用の増加を余儀なくされる可能性もあり、そのような場合には当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 技術革新等による事業環境変動について

当社グループが事業展開している金融業界では、技術革新や顧客及びエンドユーザーのニーズや嗜好の変化のスピードが非常に早く、金融関連事業者はその変化に柔軟に対応する必要があります。そのため当社グループは、最新の技術動向や環境変化を常に把握できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。

しかしながら、当社グループが技術革新や顧客ニーズの変化に適時に対応できない場合、又は、変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(9) サービスの信頼性低下リスク

当社グループが提供するサービスに関わる関係者には、法令遵守の徹底に加え、所定のルールに従い掲載前にウェブサイト上のコンテンツや広告の内容についてコンプライアンス部による入念なチェックを実施する等、コンプライアンスの遵守を徹底しております。また、各領域における関連法令に抵触することがないよう、加えてサービスの信頼性を確保できるよう、専門家と連携を図りながら監修体制を導入しております。しかしながら、何らかの理由により正確性、公平性に欠けたサービスが提供された場合、当社グループの事業、経営成績及び社会的信用に影響を与える可能性があります。

 

(10) 金融インフラストラクチャの導入の遅延又は解消に関するリスク

当社グループが提供する金融インフラストラクチャは、大型のエンタープライズ向けSaaSビジネスであるため1件の導入が収益に大きく影響するという特徴があります。各プロジェクトにおいて想定以上に工数がかかった場合、納期の月ずれ、期ずれが発生する可能性があるほか、想定したパートナー企業や取引先との契約が締結されない、サービスの提供に至らない、パートナー企業や取引先との取引が様々な事情又は要因により解消される可能性があり、当該状況が発生した場合には当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(11) 特定の提携先・取引先への依存リスク

当社グループは、当社子会社の第一種金融商品取引業者である株式会社スマートプラスが東京証券取引所への株式等の注文取次業務を行うために、東京証券取引所の総合取引参加者資格を有する大和証券株式会社と注文取次に関する提携を行っております。当該提携先が、財務面等事業上の問題に直面した場合、(業界再編等によって)戦略的志向を変更した場合又は当社グループが魅力的な提携相手でなくなったと判断した場合には、当社グループとの業務提携を望まなくなる、若しくは当該提携が解消される可能性があり、その場合には別の総合取引参加者である証券会社との提携を模索する必要があります。

万が一、当社グループが当該業務提携を継続できず、速やかに他の代替先に切り替えられない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(12) 事業領域の拡大にかかる潜在的リスク

当社グループは、「金融を'サービス'として再発明する」というミッションのもと、新しい事業やサービスを創出し、新たな事業領域にスピード感をもって参入することにより事業成長を続けております。一方でこのような事業展開を実現するためには、その事業固有のリスク要因が加わることとなり、本項に記載されていないリスク要因が当社グループのリスク要因となる可能性があります。そして、新規事業の参入のため、新たな人材の採用、システムの開発、営業体制の強化等追加的な投資が必要とされ、新規事業が安定的な収益を生み出すには長期的な時間が必要とされることがあります。また、新規に参入した事業の市場の拡大スピードや成長規模によっては、当初想定していた成果を挙げることができないことがあり、事業の停止、撤退等を余儀なくされ、当該事業用資産の処分や減損により損失が生じる可能性があります。

このような場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(13) M&Aにかかる潜在的リスク

当社グループは新規事業やサービスの拡大のため、M&Aをその有効な手段の一つとして位置付けており、今後も必要に応じてM&Aを実施する方針です。当社グループは、M&Aに際して、対象企業のビジネス、財務内容及び法務等について詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスクの低減を図る方針であります。

しかしながら、これらの調査の段階で確認又は想定されなかった事象がM&Aの実行後に発生又は判明する場合や、M&A実施後の統合や事業展開が計画通りに進まない場合には、当初期待した業績への寄与の効果が得られない可能性や、対象企業の投資価値の減損処理が必要になることも考えられ、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(14) 自己資本規制比率を維持できないリスク

金融商品取引業者には、金融商品取引法及び金融商品取引業等に関する内閣府令に基づき、自己資本規制比率維持の規制が課されており、自己資本規制比率が120%を下回ることのないようにする必要があります。有価証券報告書提出日時点では、当社子会社の株式会社スマートプラスにおいて同比率が120%を下回る事実はないと認識しております。

しかしながら、将来何らかの事由により定められた自己資本規制比率を維持できない場合は、業務停止や金融商品取引業者の登録の取消しを命じられる可能性があります。また、経営環境の悪化による損失計上等の要因により自己資本規制比率が著しく低下した場合には、比率を維持する観点から積極的にリスクをとり収益を追求することが困難となり、収益機会を逸する可能性が高まります。その結果、当社グループの営業活動に影響を与え、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 顧客資産の区分管理ができないリスク

金融商品取引業者は、顧客資産が適切かつ円滑に返還されるように顧客から預託を受けた金銭を自己の固有財産と区分して管理し、金銭信託に一本化することが義務付けられております。当社子会社の株式会社スマートプラスでは、複数の信託銀行と顧客区分管理信託契約を締結し、顧客資産の保全体制を整えております。

しかしながら、何らかの事由により当社グループにおいて金銭信託を実施できない事象が発生した場合、行政指導・業務停止・登録取消等の行政処分を受ける可能性があります。その場合、当社グループの信用が著しく損なわれ、経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(16) 金商業者の禁止行為に該当するリスク

金融商品取引業者は、金融商品取引法第38条により、金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為や、顧客に対し不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結を勧誘する行為等、様々な禁止行為が定められております。

当社グループでは、コンプライアンス規程等に禁止行為を織り込み役職員に対し周知徹底を図っておりますが、当社グループにおいて何らかの事由によりかかる法律に違反する事象が発生した場合、行政指導・業務停止・登録取消等の行政処分を受ける可能性があります。その場合、当社グループの信用が著しく損なわれ、経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(17) 犯罪収益移転防止法への未対応リスク

金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律及び犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「犯罪収益移転防止法」という。)は、顧客の本人確認及び記録の保存を法律上の義務とし、顧客管理体制の整備を促すことにより、テロ資金や犯罪収益の追跡のための情報確保とテロ資金供与及びマネー・ロンダリング等の利用防止を目的としております。

当社グループでは、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づき、当社グループ所定の本人確認書類等を顧客から徴収して本人確認を行うとともに反社会的勢力に該当しないことの確認を行い、顧客カードを作成して本人確認記録及び取引記録を保存する等、法令遵守を徹底しております。

しかしながら、当社グループにおいて何らかの事由によりかかる法令に違反する事象が発生した場合、行政処分や当社グループの信頼失墜等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(18) 保険業法への未対応リスク

当社の子会社であるスマートプラス少額短期保険株式会社は日本の少額短期保険会社であり、保険業法及び関連業規制の下、金融庁による包括的な規制等の広範な監督下にあります。また、保険業法においては、業務範囲の制限、一定の準備金の確保及び最低限のソルベンシー・マージン比率の維持等、少額短期保険会社が遵守すべき事項が定められております。

当社グループでは、スマートプラス少額短期保険株式会社においてリスク・コンプライアンス委員会を設置し、法令遵守に関する事項を一元的に管理するとともに、コンプライアンスに関する基本方針・行動規範を定め、役職員に対し法令遵守の徹底を図っております。

しかしながら、何らかの事由によりかかる法律に違反する事象が発生した場合、行政指導・業務停止・登録取消等の行政処分を受ける可能性があります。その場合、当社グループの信用が著しく損なわれ、経営成績及び財政状態に重大な影響を与える可能性があります。

(19) 内部管理体制について

当社グループは、企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を図る多様な施策を実施しております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。

しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20) 人材の確保及び育成について

当社グループの事業においては、今後の事業拡大や新規事業の展開に伴い、エンジニアをはじめ事業運営に不可欠な人材を適時に確保し、それら人材を育成の上有機的に連携させる必要があると考えております。

しかしながら、日本国内における雇用環境によっては人材獲得競争が激化することになり、当社グループの必要とする人材が必要な時期に確保できない場合、エンジニアを含むキャリアや資格保有者等の人材育成が計画通り進まない場合、人材の社外流出が発生した場合、人材の獲得若しくはつなぎ止めのための労務費の増加等が発生した場合等には、競争力の低下や事業拡大の制約要因が生じ、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(21) 災害・紛争・事故について

当社グループにおいては、自然災害等が発生した場合に備え、事業継続計画の策定等有事の際の対応策検討と準備を推進しております。しかしながら、地震、台風、津波、豪雨、洪水等の自然災害、火災、停電、新型コロナウイルス感染症をはじめとする未知の感染症の拡大等が発生した場合、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの事業拠点である日本の首都圏において大規模な自然災害等が発生した場合には、サービスの提供等が止むを得ず一時的に停止する可能性もあり、このような場合、当社グループの信頼性やブランドイメージを毀損するだけでなく、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(22) 金融インフラストラクチャ事業の事業歴が浅いことについて

当社は2013年12月に設立され、2014年11月に株式投資教育アプリ「あすかぶ!」をリリースし、フィンテックソリューションの提供を開始し、また、2016年8月に「株式会社ナウキャスト」を株式交換により完全子会社化し、ビッグデータ解析事業へ参入した事業歴の比較的短い会社であり、とりわけ金融インフラストラクチャ事業は2019年11月より外部パートナー企業への提供を開始しておりますが、提供開始後の経過期間は4年程度と業歴の浅い事業です。このように当社グループが営む事業が伝統的な金融事業そのものとは異なる新規性を有し、技術革新や競合他社との競争等激しい事業環境の変化に晒されていることに加え、当社グループにおけるかかる事業の業績も浅いことから、当該事業の過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の実績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。

(23) 特定経営者への依存について

代表取締役社長CEOである林良太は、創業以来代表取締役を務めております。同氏は、当社グループの経営方針や事業戦略構築、信用力の向上等において重要な役割を果たしております。当社グループは事業拡大に伴い、取締役会等における役員及び幹部社員との情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に依存しない経営体質の構築を進めておりますが、何らかの理由により同氏が業務を継続することが困難となった場合には、当社グループの今後の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(24) 先行投資と赤字計上について

当社グループが提供する金融インフラストラクチャ事業は、開発費用の支出、エンジニア人員の採用等の先行投資を必要とする事業であり、結果として当社は連結業績において2023年3月期まで営業赤字を継続して計上しておりました。今後もより多くの実績拡大を目指して、研究開発及びエンジニア人員等の優秀な人材の採用・育成を行ってまいりますが、かかる投資に際しては計画的に行うとともに、導入実績の増加、売上高の拡大及び収益性の向上に向けた取組みを行っていく方針であります。しかしながら、想定通りの導入実績の獲得が進まない場合等には、連結営業赤字を計上する等、当社グループの事業及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(25) 配当政策について

当社は、現在成長段階にあると認識しており、事業拡大や組織体制整備への投資のため、内部留保の充実が重要であると考え、会社設立以来配当を実施しておらず、今後の配当実施の可能性及び時期については未定であります。しかしながら、株主還元を適切に行っていくことが経営上重要であると認識しており、事業基盤の整備状況や投資計画、業績や財政状態等を総合的に勘案しながら、将来的には安定的な配当を行うことを検討していく方針でありますが、当社の業績、投資計画その他の事情により、今後も配当が実施できず、又は、実施しない可能性があります

 

(26) 訴訟について

当社グループは、有価証券報告書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、事業を展開する中で、当社グループが提供するサービスの不備、情報漏洩等により、何かしらの問題が生じた場合等、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟の提起がなされる可能性があります。その場合には、当該訴訟に対する防御のために費用と時間を要する可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損され、また損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(27) 知的財産権の管理について

当社グループは、運営するコンテンツ及びサービスに関する知的財産権の獲得に努めております。また、第三者の知的財産権の侵害を防ぐ体制として、当社グループの管理部門及び顧問弁護士への委託等による事前調査を行っております。しかしながら、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者から損害賠償請求や使用差止請求等の訴えを起こされる可能性があり、これらに対する対価の支払いやこれらに伴うサービス内容の変更の必要等が発生する可能性があります。また、当社グループが保有する知的財産権について、第三者により侵害される可能性があるほか、当社グループが保有する権利の権利化ができない場合もあります。こうした場合、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

   経営成績の状況

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、「金融を'サービス'として再発明する」をミッションに掲げております。このミッションのもと、金融サービス事業者向けの次世代クラウド基幹システムの提供等を通じて、パートナー企業とともに人々にとって遠い存在である金融サービスを暮らしに寄り添ったものにすることを目指しております。

今般、日本の経済は新型コロナウイルス感染症の影響が薄まり、政府や日銀による各種経済政策の効果も相まって社会活動の正常化に向けた動きが見られ、経済が持ち直し始めているものの、世界的な金融引き締めによる物価高騰や急激な円安などの影響もあり、景気の先行きについては不透明な状況が続いています。しかしながら、金融サービスにおけるデジタルトランスフォーメーションの流れは衰えることなく、当社グループが提供するサービスのニーズもより一層高まっていると認識しております。

このような事業環境のもと、当連結会計年度においては、継続的な事業成長を実現するため、引き続き人材採用や機能拡充に積極的に取り組んでまいりました。

この結果、前連結会計年度末以降、金融インフラストラクチャ事業のパートナー数が増加、ビッグデータ解析事業のデータライセンス契約件数が増加したことにより、フロー収益及びストック収益が拡大し、当連結会計年度における売上高は5,375,312千円(前年同期比40.7%増)、営業利益は204,945千円(前年同期は328,718千円の営業損失)、経常利益は194,450千円(前年同期は324,657千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は78,447千円(前年同期は388,016千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

セグメント別の業績は以下の通りです。

報告セグメントの変更については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等) セグメント情報」の「1 報告セグメントの概要  報告セグメントの変更等に関する事項」に詳細を記載しております。

 

 

(ⅰ)金融インフラストラクチャ事業

金融インフラストラクチャ事業は、金融サービスを運営するために必要となる複雑な基幹システムを、クラウド上でSaaS型のシステムとして顧客に提供しております。

証券インフラストラクチャビジネスでは、既存パートナーへの保守運用及び機能拡充開発、新規パートナーへの初期導入支援に注力いたしました。当連結会計年度においては、新規パートナーへの開発支援によるフロー収益と既存サービス拡大に伴う従量課金収益が、売上高の拡大に寄与しました。サービスの初期開発については、セゾン投信株式会社が当社の「BaaS」へシステム移管を行ったことに加え、株式会社アンバー・アセット・マネジメントやCSアセット株式会社等が投資一任運用サービスをローンチしました。この結果、「BaaS」上での稼働サービス数は12サービス(前連結会計年度末時点:8サービス)となっております。

保険インフラストラクチャビジネスでは、新規パートナーの獲得に向け、当社グループの保険基幹システムである「Inspire」の機能拡充に注力いたしました。当連結会計年度においては、新規パートナーへの初期導入支援はなかったものの、既存パートナーによる取扱保険商品の追加にかかる開発が売上高の拡大に寄与しました。当連結会計年度中の新規ローンチはなかったため、「Inspire」の導入企業数は9社(前連結会計年度末時点:9社)となっております。

クレジットインフラストラクチャビジネスでは、クレジットインフラストラクチャ「Crest」が稼働開始し、個人向けローンサービスの実証実験を開始いたしました。その結果、「Crest」上での稼働社数は1社(前連結会計年度末時点:0社)となっております。

コスト面については、証券インフラストラクチャビジネス、保険インフラストラクチャビジネス及びクレジットインフラストラクチャビジネスいずれも、将来のビジネス拡大を見据え、引き続き人材採用、機能拡充の先行投資を行いました。

 

以上の結果、当連結会計年度の金融インフラストラクチャ事業の売上高は2,957,487千円(前年同期比67.4%増)、セグメント損失は106,192千円(前年同期は691,852千円のセグメント損失)を計上しました。

 

(ⅱ)フィンテックソリューション事業

フィンテックソリューション事業では、金融機関向けにデジタルトランスフォーメーション及びデジタルマーケティングの支援を行っております。

ソリューションビジネスでは、株式会社三菱UFJ銀行に対して「Money Canvas」に関する継続的な開発支援を行っており、当連結会計年度においてはアプリ開発や家計簿機能を追加しました。

 

以上の結果、フロー収益が拡大し、当連結会計年度のフィンテックソリューション事業の売上高は1,115,235千円(前年同期比8.6%増)、セグメント利益は63,438千円(前年同期比53.6%減)となりました。

 

(ⅲ)ビッグデータ解析事業

ビッグデータ解析事業は、ビッグデータを保有する企業のデータ利活用の促進を支援しており、企業の持つビッグデータを機関投資家や官公庁に提供するデータライセンスビジネスや、企業のデータ利活用を支援するデータ解析支援ビジネスを行っております。

データライセンスビジネスでは、機関投資家向けにオルタナティブデータを提供する「Alterna Data」において銘柄選定支援機能、データ精度検証機能、企業間比較機能を拡充しました。

データ解析支援ビジネスでは、不動産業界向けのテナント・商圏分析サービスにおいてクレジットカードデータや人流データを活用した売上予測モデル、併売分析モデルを構築したことに加え、生成AIの活用を支援する新規ビジネスを立ち上げました。

 

以上の結果、「Alterna Data」の契約件数が伸長し、当連結会計年度のビッグデータ解析事業の売上高は1,302,589千円(前年同期比26.7%増)、セグメント利益は256,884千円(前年同期比15.9%増)となりました。

 

 

② 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は20,175,791千円となり、前連結会計年度末に比べて2,465,966千円増加いたしました。

流動資産は19,559,978千円となり、前連結会計年度末と比較して2,248,723千円増加いたしました。これは主に証券業における預託金、信用取引資産、並びに短期差入保証金が1,496,634千円増加したこと等によるものであります。

固定資産は615,813千円となり、前連結会計年度末と比較して217,242千円増加いたしました。これは主に有形固定資産が16,796千円、ソフトウェアが53,863千円、ソフトウェア仮勘定が79,206千円増加したこと等によるものであります。


(負債)

当連結会計年度末における負債合計は11,453,856千円となり、前連結会計年度末と比較して2,545,942千円増加いたしました。

流動負債は10,903,199千円となり、前連結会計年度末に比べて2,077,497千円増加いたしました。これは主に、証券業における預り金、信用取引負債、受入保証金が1,068,077千円、1年内返済予定の長期借入金が228,900千円増加したこと等によるものです。

固定負債及び特別法上の準備金は550,657千円となり、前連結会計年度末に比べて468,444千円増加いたしました。これは主に、長期借入金が400,400千円、信託型ストックオプション関連損失引当金が38,949千円増加したこと等によるものであります。


(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は8,721,935千円となり、前連結会計年度末に比べて79,976千円減少いたしました。これは主に、資本金が27,780千円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失により利益剰余金が78,447千円、非支配株主持分が13,101千円減少したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フローが938,062千円の資金減、投資活動によるキャッシュ・フローが343,666千円の資金減、財務活動によるキャッシュ・フローが684,017千円の資金増となりました。 

また、現金及び現金同等物に係る換算差額12,148千円の資金増を含めた結果、当連結会計年度の資金残高は、前連結会計年度末に比べ585,563千円減少し、4,768,814千円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。


(営業活動によるキャッシュ・フロー) 

営業活動により使用した資金は938,062千円となりました。この主な増加要因として、証券業における預り金及び受入保証金の増減額1,655,175千円の増加があった一方で、減少要因として、営業貸付金の増減額649,112千円、証券業における預託金の増減額950,000千円、証券業における信用取引資産及び信用取引負債の増減額736,469千円の減少等によるものであります。


(投資活動によるキャッシュ・フロー) 

投資活動により使用した資金は343,666千円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出216,240千円、有形固定資産の取得による支出49,759千円等によるものであります。


(財務活動によるキャッシュ・フロー) 

財務活動により獲得した資金は684,017千円となりました。この主な増加要因として、長期借入れによる収入800,000千円、ストックオプション行使に伴う新株発行による収入54,717千円があった一方で、減少要因として、長期借入金の返済による支出170,700千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a 生産実績

 当社グループが営む事業は、金融サービスの構築・運営を可能にする次世代クラウド基幹システムを提供する金融インフラストラクチャ事業、金融機関のデジタルトランスフォーメーションのニーズに対応したソリューションの提供を行うフィンテックソリューション事業、及びオルタナティブデータを提供するビッグデータ解析事業であり、提供するサービスの性質上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。

 

b 受注実績

 当社グループでは、受注販売を行っておりますが、受注から売上高計上までの期間が短期であるため、受注実績は記載しておりません。

 

c 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

(千円)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

(千円)

前年

同期比(%)

金融インフラストラクチャ事業

1,766,288

2,957,487

67.4

フィンテックソリューション事業

1,026,936

1,115,235

8.6

ビッグデータ解析事業

1,027,747

1,302,589

26.7

合計

3,820,972

5,375,312

40.7

 

(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

株式会社三菱UFJ銀行

906,453

23.7

922,043

17.2

ニッセイアセットマネジメント株式会社

171,812

4.5

553,900

10.3

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

   重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内に合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、判断時には予期し得なかった事象等の発生により、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」及び「「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

 

(固定資産の減損)

 当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。


 (投資有価証券)

当社グループは、非上場株式等を保有しております。これらの評価において、発行体の超過収益力等に毀損が生じた際に、これを反映した実質価額が取得価額の50%程度以上下落している場合は、減損処理を行うこととしております。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

 当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

②  経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1.経営成績の分析・評価

(売上高)

当連結会計年度において、売上高は5,375,312千円(前年同期比40.7%増)となりました。

金融インフラストラクチャ事業は、既存パートナーへの保守運用及び機能拡充開発、新規パートナーへの初期導入支援に注力いたしました。

フィンテックソリューション事業は、株式会社三菱UFJ銀行に対して「Money Canvas」に関する継続的な開発支援を行っており、当連結会計年度においてはアプリ開発や家計簿機能を追加しました。

ビッグデータ解析事業は、機関投資家向けにオルタナティブデータを提供する「Alterna Data」において銘柄選定支援機能、データ精度検証機能、企業間比較機能を拡充しました。

(営業利益)

当連結会計年度において、売上原価は2,150,125千円(前年同期比24.9%増)、販売費及び一般管理費は3,020,241千円(前年同期比24.4%増)となりました。将来のビジネス拡大を見据え、引き続き人材採用、金融インフラストラクチャの機能拡充にかかる先行投資を行ってまいりました。

この結果、営業利益は204,945千円(前年同期は328,718千円の営業損失)となりました。

 

(経常利益)

当連結会計年度において、営業外収益が20,943千円(前年同期比131.3%増)、営業外費用が31,437千円(前年同期比529.7%増)が発生し、経常利益は194,450千円(前年同期は324,657千円の経常損失)となりました。

(当期純損失)

当連結会計年度において、特別利益が8千円(前年同期比94.6%減)、特別損失が158,235千円(前年同期比221.2%増)発生し、法人税等合計は167,229千円(前年同期比41.0%増)となりました。

この結果、当期純損失は131,005千円(前年同期は492,393千円の当期純損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は78,447千円(前年同期は388,016千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

2.財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載の通りであります。

 

③  資本の財源及び資金の流動性についての分析

キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要  ③キャッシュ・フローの状況」に記載の通りです。

当社グループにおける主な資金需要は、人件費等の運転資金及び設備投資資金であります。財政状態等や資金使途を勘案しながら、運転資金は自己資金を基本としつつ、投資資金は自己資金並びに金融機関からの長期借入及びエクイティファイナンスによる外部からの資金調達についても資金需要の額や用途、当該タイミングにおける金利及び資本コストを比較した上で優先順位を検討して実施することを基本としております。

 

④  目標とする経営指標

当社グループは、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、金融インフラストラクチャ事業のパートナー数を、目標とする経営指標として位置づけています。第10期連結会計年度末時点のパートナー数は22件で、第9期連結会計年度末比+5件となっております。デジタルトランスフォーメーションの必要性が高まる中で、IFA会社による投資一任サービスの導入や資産運用会社による直販事業展開に関する需要が旺盛となったことで、パートナー数が増加したものと分析しております。

 

金融インフラストラクチャ事業におけるパートナー数

 

2021年3月

期末

2022年3月

期末

2023年3月

期末

2024年3月

期末

証券インフラストラクチャ

12

保険インフラストラクチャ

クレジットインフラストラクチャ

合計

17

22

 

 

⑤  経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑥  経営者の問題意識と今後の方針について

当社グループは、これまでインフラストラクチャの安定稼働と業務プロセスの確立を優先し安定的な成長を続けておりました。今後は、様々なニーズに応えられるよう金融インフラストラクチャの機能拡充を図るとともに、大企業向けの事業開発チームを確立し、パートナー数の拡大に取り組んでまいります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

 該当事項はありません。