第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は「サイバーセキュリティ教育カンパニー」をコンセプトに掲げております。情報セキュリティ・サイバーセキュリティに特化した専門会社として、セキュリティコンサルティング、脆弱性診断、サイバーセキュリティソリューションをはじめ、セキュリティの全体像を網羅した教育サービスを提供しております。

 特に中堅企業において、情報セキュリティ対策が必要であるものの、サービスを提供する事業者や人材が不足している現状を踏まえ、当社は、長年のセキュリティコンサルティングや脆弱性診断等で培った豊富な知見を社会に還元することで、日本の情報セキュリティレベル向上に貢献することを理念としております。

 

(2)目標とする経営指標

 当社は、成長性と収益性を重視しており、成長性については売上高の前期比増加率、収益性については売上高営業利益率を重要な経営指標としております。

 

(3)経営環境及び中長期的な経営戦略

 社会システムのネットワーク化が進む近年において、コンピュータ・システムを取り巻く脅威は多様化しており、システムを攻撃されることにより甚大な被害を及ぼす傾向が強まっております。さらに、急速に進展するテレワーク等働き方の変化に伴い、サイバーリスクの及ぶ範囲とその被害は大幅に拡大しております。

 一方で、サイバーセキュリティの専門知識を持つ人材(セキュリティ人材)の多くは、一部の大手サイバーセキュリティ専門企業に所属しており、また、一般企業においては、自社のサイバーセキュリティに関する業務を外部の専門企業へ委託することが一般的であるため、自社内におけるセキュリティ人材の育成方法や育成機会が確立されず、結果的に、日本におけるセキュリティ人材が圧倒的に不足しております。また、サイバーセキュリティに関するサービスを提供する事業者側の提供能力にも限界があり、一般企業、特に中堅・中小企業では、サイバーセキュリティ対策を講じる上での相談先がないのが現状です。

 このような経営環境のもと、当社は「教育」を軸とし、中堅・中小企業に最適化したサービスを提供することで、顧客の自衛力を高め、日本の情報セキュリティレベルを底上げすることを中長期的な経営戦略として、事業を推進してまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 優先的に対処すべき財務上の課題は、現在ありません。今後さらなる事業の拡大と収益性の確保、そしてリスク低減のため、特に下記の5点を優先的に対処すべき事業上の課題として取組んでおります。

 

①「サイバーセキュリティ教育カンパニー」の更なる訴求

 依然としてセキュリティ人材が不足している業界環境のなか、日本全国の企業がサイバーセキュリティの「自衛力」を向上するためには、セキュリティ人材の育成が急務と考えます。

 当社は、セキュリティ専門人材向けの資格講座だけでなく、企業活動のあらゆる場面で「プラス・セキュリティ」の必要性が高まっていることを背景に、IT業界で働く方々が必要とするセキュリティの資格講座を取り揃え「プラス・セキュリティ」人材の育成にも取り組んでおります。

 また、自社に専門人材を置きたいという企業のニーズに対しては、パートナー企業のIT人材を、当社のセキュリティ教育をもってセキュリティ人材へとリスキリングしたうえで、SES(システムエンジニアリングサービス)として提供するビジネスモデルを確立しました。

 引き続き「サイバーセキュリティ教育カンパニー」のビジネスコンセプトを訴求し、市場ニーズを捉えることで、更なるビジネス拡大を目指します。

 

②アップセル・クロスセルの更なる推進

 中堅・中小企業におけるサイバーセキュリティの課題は多岐にわたっており、それぞれに最適化したサービスを提供することが求められております。ひとつのサービスの提供をきっかけに、当社の様々なサービスを適切に連携させることで、高い取引継続率の維持と、顧客満足度の向上を目指します。

 

③利益体質の強化

 当社は、中期的な経営戦略として、営業利益率の継続的な向上を目指すこととしております。各サービスにおいて、自動化やプロセスの標準化等の工夫を進め、中堅・中小企業に最適化したサービスを提供しながら、強い経営基盤の構築を目指します。

 

④東京以外の商圏拡大

 日本全国のうち東京以外にはサイバーセキュリティ専門企業が少なく、企業のセキュリティ対策ニーズにサービス供給が追い付いていない状況にあります。

 当社は、西日本支社における営業活動を拡充するとともに、地元のSIer等との連携強化を図り、西日本支社を足掛かりに日本全国へと更なる商圏拡大を目指します。

 

⑤業容拡大にともなう人材リソース不足の解消

 セキュリティ人材が不足している業界環境のなか、当社では、社員の採用・育成と、社外からの人材リソース供給の両面で対処しております。

 社員の採用・育成については、セキュリティ専門人材の採用に拘らず、入社後の教育によってセキュリティ人材へと育成する方針としております。

 社外からの人材リソース供給については、同業他社へ当社の教育コンテンツを提供することで、業界全体のセキュリティ人材を育成したうえで協業を推進することや、地方企業のIT人材にセキュリティ教育を実施し、脆弱性診断業務のニアショア化を図るなどをしております。

 引き続き「サイバーセキュリティ教育カンパニー」の強みを活かした施策で、人材リソースの確保に取り組んでまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社にとってのサステナビリティとは、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むことであり、当社の持続的な成長が、社会の持続的な発展に貢献できることにあると考えております。その実現に向けては、あらゆるステークホルダーとのエンゲージメントが重要であると認識しており、公正かつ透明性の高い経営の実現と、多様な人材が活躍し、働きやすい環境の整備に取り組んでおります。

 

(2)ガバナンス体制及びリスク管理

 取締役会を経営の基本方針や重要課題並びに法令で定められた重要事項を決定するための最高意思決定機関と位置づけ、原則月1回開催するとともに、事業経営にスピーディーな意思決定と柔軟な組織対応を可能にするため、常勤取締役(常勤監査等委員を含む)及び事業責任者等が出席する会議を原則週1回開催しております。加えて、監査等委員会を設置しており、業務執行に関する監視、コンプライアンスや社内規程の遵守状況、業務活動の適正性かつ有効性等を、監査等委員が取締役会に出席することで逐次確認しております。

 詳細は「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 サステナビリティ関連のリスク及び機会については、各部門責任者による情報共有及び週1回の会議を継続的に行い、リスクの早期発見に努めております。また、当社事業における重要リスクの一つである情報管理については、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の要求事項に準拠した体制を整えております。

 

(3)戦略(人的資本について)

 当社は、人的資本への投資の重要性を認識しており、従業員のウェルビーイングを実現することで、中長期的な企業価値向上に寄与するものと考えております。

 多様な属性、才能、経験等をもった人材を積極的に採用し、業務に必要は知識習得に向けた自己研鑽を促進することで、継続的な人材育成に取り組んでおります。

 また、テレワーク勤務、選択式時差出勤、時間単位有給制度などにより柔軟な働き方を可能とするとともに、株式給付信託(J-ESOP)をはじめとした従業員インセンティブの充実、各種福利厚生制度の拡充など、多様な人材が健康で、モチベーション高く、やりがいをもって働きやすい環境の整備に取り組んでおります。

 

(4)指標及び目標

 当社では、(3)戦略(人的資本について)において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に係る指標について、具体的な取り組みを行っているものの、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標を設定しておりません。

 今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討してまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 需要の低迷に関するリスク

 当社は、中堅企業を主な顧客とし、サイバーセキュリティ事業に特化したサービスを提供しております。これは、中堅企業におけるサイバーセキュリティの需要が活況であることを背景としておりますが、今後、経済環境の変化等、何らかの要因により、中堅企業におけるサイバーセキュリティの需要が著しく低迷した場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 競合の出現に関するリスク

 当社は、中堅企業を主な顧客とし、サイバーセキュリティ領域で多角的なサービスを提供しております。現在において、中堅企業を主な顧客とする競合はないと考えており、当社はサイバーセキュリティ業界で独自のサービスポジションを獲得しております。これは、大企業向けに高価格のサービスを提供するセキュリティ企業が多い中で、当社が中堅企業向けに最適化した内容と価格でのサービス提供を実現させてきたことによると考えておりますが、競合が出現した場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 人材の確保に関するリスク

 当社の属するサイバーセキュリティ業界では、専門知識を有する人材の不足が共通課題とされております。今後、当社の業容が拡大する一方で、十分な人材を確保できない場合には、サービス提供の遅れや生産性の低下等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、サイバーセキュリティエンジニアを育成する教育講座の提供を事業のひとつとしておりますが、同事業を通じて専門人材を育成した企業とのパートナーシップを推進することで、社外より安定的に人材を確保する体制を構築しております。

 社内人材については、毎年行う新卒採用及び随時行う中途採用では、サイバーセキュリティ専門人材の採用に拘らず、採用後の教育によって専門人材へと育成する方針としております。また、入社後においても、当社の教育講座を無償で受講する等により専門知識の向上を図るとともに、職場環境の整備やモチベーション向上等に注力することで、人材流出を防ぎ、ノウハウや経験の社内蓄積に努めております。

 

(4) 技術革新への対応に関するリスク

 当社が属するサイバーセキュリティの分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があります。当社では、顧客のニーズを的確に捉え、より実効性のあるセキュリティサービスを提供すべく、新たな脅威や技術革新等に関する情報収集に努めております。しかし、これらの技術革新への対応が遅れ、他社に大きく先行された場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 情報漏洩に関するリスク

 当社のサービスでは顧客の重要な情報を入手します。これらの顧客情報の漏洩は事業展開において大きなリスクであります。当社では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、社内教育の実践、各種データのアクセス権限による制約、書面情報の施錠管理、オフィスの入退室管理等、対策を講じて実践しておりますが、顧客情報の漏洩が発生した場合、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 当社が提供する製品のバグや欠陥の発生によるリスク

 当社が提供するセキュリティ機器や、そのマネージドサービス等において利用するセキュリティ機器は、基本的に製品仕入れをしております。予め十分な検証やテストを実施した後にサービス提供を行っておりますが、サービス提供開始後に、当該製品に重大なバグや欠陥が発生したことが原因で顧客に著しい損害を与えた場合、契約解除に伴う売上の減少等により当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 災害、テロ活動、感染症等の発生に関するリスク

 地震や天災といった災害、国内におけるテロ活動などの予期せぬ事態により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 当社の顧客企業は様々な業種に属していることから、特定の業界環境の変化が当社の経営成績等に与える影響は僅少ではありますが、何らかの理由により、景気が著しく悪化し、多くの顧客企業がセキュリティ投資を抑制した場合には、売上の減少や利益率の低下、回収サイトの長期化など、当社の経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 筆頭株主との関係について

 当社の筆頭株主は株式会社ビジネスブレイン太田昭和(東京証券取引所プライム市場に上場)であります。同社は、当社の親会社でありましたが、2023年5月10日に当社株式の一部を売却したことにより、本書提出日現在において当社のその他関係会社となっております。

 

 当社と筆頭株主との関係は以下のとおりであります。

 ①資本関係について

 株式会社ビジネスブレイン太田昭和は、本書提出日現在において当社の議決権の39.55%(2024年3月31日現在の総株主の議決権の数を基準に算出)を直接保有しており、当社に対する大株主としての一定の権利を有しております。このことから、株式会社ビジネスブレイン太田昭和は議決権行使等により当社の経営等に影響を及ぼし得る立場にあり、同社の利益は他の株主の利益と一致しない可能性があります。また、株式市場での売却ではなく、特定の相手先への譲渡を行った場合には、当該譲渡先の保有株数や当社に対する方針によっては、当社の事業戦略等に影響を与える可能性があります。

 ②人的関係について

 本書提出日現在、当社の社外取締役である岡田幸憲は、株式会社ビジネスブレイン太田昭和に所属しており、取締役監査等委員である古谷伸太郎は、2020年6月まで株式会社ビジネスブレイン太田昭和に所属しておりました。これは、同社における経験に基づいた経営的視点や知見を得ることを目的としております。なお、当社の経営方針及び事業展開については、株式会社ビジネスブレイン太田昭和の事前承認を要するものはなく、独自の意思決定によって進めております。なお、当社における株式会社ビジネスブレイン太田昭和からの出向者はおりません。

 ③取引関係について

 株式会社ビジネスブレイン太田昭和グループとの取引については、売上高は198,883千円(2024年3月期 売上高の2.8%)、その他給与計算のアウトソーシング等の取引が発生しておりますが、取引条件については、当社と関係を有しない会社との取引と同様に、取引条件等を総合的に勘案し、交渉の上決定しております。

 ④筆頭株主からの独立性の確保について

 当社の経営判断及び事業展開にあたっては、株式会社ビジネスブレイン太田昭和の指示や事前承認に基づいてこれを行うのではなく、独立役員である取締役監査等委員2名を含む取締役会を中心とした当社経営陣の判断のもと、独自に意思決定して実行しております。

 

(9) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、当社の取締役及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。また、今後においても新株予約権を活用したインセンティブプランを活用していく方針であります。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日の前月末現在(2024年5月31日)、これらの新株予約権による潜在株式数は33,600株であり、発行済株式総数7,629,600株の0.4%に相当しております。

 

(10) 法的規制等について

 当社は、当社の事業を制限する直接的かつ特有の法的規制は本書提出日現在において存在しないと考えております。しかしながら、今後、当社の事業を直接的に制限する法的規制がなされた場合、また、従来の法的規制の運用に変更がなされた場合には、当社の事業展開は制約を受ける可能性があります。当社としては引き続き法令を遵守した事業運営を行っていくべく、今後も法令遵守体制の強化や社内教育などを行っていく方針ですが、今後当社の事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当社の経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 訴訟等について

 当社の事業運営にあたって、予期せぬトラブルや問題が生じた場合、当社の瑕疵にかかわらずこれらに起因する損害賠償の請求や、訴訟の提起を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合は、起訴内容や損害賠償額の状況及びその結果によっては当社の社会的信用が低下することに加え、当社の経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①重要な経営指標の状況

 当社は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおり、売上高の前期比増加率及び売上高営業利益率を重要な経営指標としております。

 当事業年度における各指標の実績は、以下のとおりです。

 

(単位:千円)

回次

第40期

第41期

決算年月

2023年3月

2024年3月

売上高

5,558,022

7,002,941

(前期比増加率)

26.6%

26.0%

営業利益

736,492

1,113,024

(売上高営業利益率)

13.3%

15.9%

 

 当事業年度における、当社の事業環境は、後述の「③経営成績の状況」に記載のとおりであり、主に中堅企業の旺盛なセキュリティニーズを捉えることで、すべての事業において売上高が前期比で増加しました。

 当事業年度における売上高営業利益率(15.9%)につきましては、人的資本への投資(人員数の増加等)を拡充したことにより、販売費及び一般管理費が増加したものの、それを上回る売上高の大幅な増加により、売上高営業利益率が上昇しました。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は6,536,708千円となり、前事業年度末に比べ2,412,119千円増加いたしました。その主な内容は、売掛金及び契約資産の増加275,920千円、株式会社ブロードバンドセキュリティ及び株式会社セキュアイノベーションの株式の追加取得等による関係会社株式の増加2,047,076千円等によるものであります。

 

(負債)

 当事業年度末における負債合計は4,103,083千円となり、前事業年度末に比べ1,698,663千円増加いたしました。その主な内容は、買掛金の増加100,385千円、株式会社ブロードバンドセキュリティの株式の取得資金に係る長期借入金の増加1,362,351千円等によるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は2,433,625千円となり、前事業年度末に比べ713,456千円増加いたしました。その主な内容は、繰越利益剰余金の増加680,566千円等によるものであります。

 

 

③経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類へと移行され、コロナ禍前を上回るインバウンド需要の拡大や内需の回復が進展した一方で、地政学的リスクの高まりや、円安傾向、エネルギー資源・原材料価格の高騰等に伴う物価上昇などが依然として続いており、先行きは不透明な状況にあります。

当社が属するサイバーセキュリティ業界を取り巻く環境は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やクラウドサービスの利活用など、ITへの依存度が高まるとともに、サイバー攻撃は増加の一途をたどっております。加えて、国を挙げてのサイバーセキュリティ強化の潮流や、サプライチェーンリスクの対策要請などが追い風となり、相対的にサイバーセキュリティ対策が遅れている中堅・中小企業においても、その対策は必須かつ急務となっております。

一方で、日本におけるサイバーセキュリティ人材は依然として不足しており、自社に専門人材を置きたいという企業の需要に対して、人材の供給が追い付いていないのが現状です。

また、業務、製品・サービスのデジタル化が進展する中で、企業活動のあらゆる場面で「プラス・セキュリティ」の必要性が高まっていることから、サイバーセキュリティ教育のニーズは飛躍的に向上しております。

※「プラス・セキュリティ」とは

自らの業務遂行にあたってセキュリティを意識し、必要かつ十分なセキュリティ対策を実現できる能力を身につけること、あるいは身につけている状態のこと。(出典:経済産業省「サイバーセキュリティ体制構築・人材確保の手引き」)

 

このような環境のなか、当社は、中堅・中小企業の旺盛なセキュリティ対策ニーズを捉え、企業規模に適したセキュリティサービスを提供すること、また、広くITに関わる人材を対象にセキュリティ教育サービスを提供すること、さらに、セキュリティ人材を確保したいという企業のニーズを捉え、専門人材を提供することで、業績を拡大しております。

当事業年度においては、すべてのサービスが伸長し、売上高7,002,941千円(前期比26.0%増)となりました。利益面では、従業員向け株式給付信託(J-ESOP)や期末賞与の引当、従業員のスキル向上のための教育等、人的資本への投資を実施するとともに、業容拡大に伴う各種コスト増加を認識しながらも、大幅な増収効果や、継続的な業務効率化等が奏功し、営業利益1,113,024千円(同51.1%増)、経常利益1,104,319千円(同49.7%増)、当期純利益783,428千円(同60.5%増)となり、売上高・利益ともに過去最高額を更新しました。

なお、当社はサイバーセキュリティ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

事業別の状況は、以下のとおりであります。

(コンサルティング事業)

 (コンサルティングサービス)

 企業のサイバーセキュリティに関する課題について、現状を可視化し、リスクを分析したうえで、適切な改善策を提案するサービスです。セキュリティ改善計画の策定、セキュリティの管理体制やインシデント対応の体制構築の支援、システム監査やセキュリティ監査、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に代表される各種認証取得の支援、インシデント発生をシミュレーションした対応訓練サービス等、幅広く提供しております。

 当事業年度においては、サプライチェーンリスクの対策要請に起因した、中堅・中小企業におけるリスクアセスメントの需要が増加したこと等により、売上高は837,279千円(前期比17.2%増)となりました。

 

 (脆弱性診断サービス(タイガーチームサービス))

 ハッカーと同様の技術を持つ専門エンジニアが、企業のネットワークシステムに疑似攻撃を実施し、脆弱性の有無を診断するサービスです。検出した脆弱性については、その詳細な内容と対策措置、結果報告書を提供しております。

 当事業年度においては、中堅・中小企業のDX推進に伴う、Webアプリケーションの脆弱性診断の需要の増加等により、売上高は777,660千円(前期比14.8%増)となりました。

 

(教育事業)

 (セキュリティ訓練サービス)

 企業の役職員を対象に、組織全体のセキュリティリテラシー向上を図るコンテンツを提供しております。

 標的型メール訓練サービス(トラップメール)は、攻撃メールを模擬した無害の訓練メールを送信し、対象者が訓練メールに含まれるURLリンクあるいは添付ファイルを開封した場合に、教育コンテンツが表示されるとともに、当社が訓練結果を集計し、顧客企業に報告するサービスです。また、企業の日常業務のなかでのセキュリティ対策を分かりやすく説明する、情報セキュリティ対策のe-ラーニングサービス(Mina Secure®)を提供しております。

 当事業年度においては、インシデントの多発を背景に、緊急性の高いセキュリティソリューション事業・ITソリューション事業のサービスに需要が集中した結果、顧客企業におけるセキュリティ訓練サービスの優先度が低くなったことから、売上高は505,050千円(前期比4.6%増)となりました。

 

 (教育講座)

 セキュリティエンジニア及びITエンジニア向けに、セキュリティに関するトレーニング及び認定資格試験を提供しております。

 セキュリティの全体像を網羅した各種講座を取り揃えておりますが、主要なものでは、米国EC-Council International 社の提供する、国際的に認知度の高いセキュリティエンジニア向け講座や、ITに関わる人材を広く対象とした、当社オリジナルのセキュリティ人材資格「SecuriST®(セキュリスト)」シリーズがあります。

 当事業年度においては、IT企業・SIerにおけるセキュリティ教育ニーズの高まりから特に「SecuriST®(セキュリスト)」シリーズの講座の受講者数が大幅に伸長し、売上高は703,368千円(前期比28.7%増)となりました。

 

(セキュリティソリューション事業)

 最新の脅威や攻撃手法に対する有効なセキュリティ製品及び導入・運用サービスを提供しております。また、発生したインシデントに対しては、緊急対応サービスも提供しており、原因及び被害範囲の調査を実施し、事態収束後は、セキュリティ製品の導入支援、運用管理面のサポート、関係者へのセキュリティ教育等、当社の様々なサービス連携で、再発防止に向けたサポートをワンストップで提供しております。

 当事業年度においては、中堅・中小企業で多発するサイバー攻撃・セキュリティ事故に対する緊急対応やセキュリティ製品導入の需要が旺盛であったことから、売上高は2,298,521千円(前期比26.2%増)となりました。

 

(ITソリューション事業)

 ITインフラ構築やシステム開発、SES(システムエンジニアリングサービス)等、セキュリティ周辺領域のサービスを提供しております。特にSESにおいては、セキュリティ人材特化型への移行を推進し、セキュリティ人材を確保したいという企業のニーズを捉え、大きく伸長しております。

 当事業年度においては、セキュリティソリューション事業と連携するサービスの需要増大や、セキュリティ人材特化型SESの好調等により、売上高は1,881,061千円(前期比43.1%増)となりました。

 

④キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度に比べ156,109千円増加し1,229,432千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は713,549千円となりました。この主な要因としては、税引前当期純利益が1,104,319千円、仕入債務の増加額が100,385千円等となった一方、法人税法の支払額が382,015千円等になったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は2,005,260千円となりました。この主な要因としては、株式会社ブロードバンドセキュリティ及び株式会社セキュアイノベーションの株式の取得等による関係会社株式の取得による支出1,752,730千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果増加した資金は1,447,820千円となりました。この主な要因としては、株式会社ブロードバンドセキュリティの株式の取得資金に係る長期借入れによる収入1,636,515千円等によるものであります。

 

⑤生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は生産活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績は次のとおりであります。なお、当社はサイバーセキュリティ事業の単一セグメントであるため、事業部門別に記載しております。

 

事業部門

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

コンサルティング

1,621,459

112.2

322,249

112.6

教育

1,161,975

111.8

51,764

52.7

セキュリティソリューション

2,378,111

101.8

1,750,712

104.7

ITソリューション

2,098,004

151.6

784,320

131.7

合計

7,259,550

117.0

2,909,046

109.7

 

c.売上実績

 当事業年度の売上実績は次のとおりであります。なお、当社はサイバーセキュリティ事業の単一セグメントであるため、事業部門別に記載しております。

 

事業部門

当事業年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

前年同期比(%)

コンサルティング(千円)

1,614,940

116.0

教育(千円)

1,208,418

117.4

セキュリティソリューション(千円)

2,298,521

126.2

ITソリューション(千円)

1,881,061

143.1

合計(千円)

7,002,941

126.0

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自2022年4月1日

至2023年3月31日)

当事業年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

兼松エレクトロニクス株式会社

1,051,728

18.9

1,155,100

16.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、この有価証券報告書提出日現在において認識及び分析・検討したものであります。

 

a.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者により、一定の会計基準の範囲内で、かつ、合理的であると考えられる見積りについては、過去実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

 当社は、繰延税金資産の回収可能性を定期的に検討しております。その判断に際して将来の課税所得を合理的に見積り、将来の税負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲内で繰延税金資産を計上しております。回収可能と認められない金額については、評価性引当額を計上しております。

 

(進捗度に基づく収益認識)

 当社では、コンサルティング事業のコンサルティングサービス及びセキュリティソリューション、ITソリューション事業の一部サービスは、一定期間にわたり履行義務が充足される取引と判断し、当該期間に応じた進捗度に基づき収益を認識しております。

 

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績等

(売上高)

 当事業年度の売上高は7,002,941千円(前事業年度5,558,022千円)となり、前事業年度に比べ1,444,918千円増加しました。主な変動要因については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①重要な経営指標の状況及び③経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(売上原価・売上総利益・売上総利益率)

 当事業年度の売上原価は4,723,734千円(前事業年度3,775,127千円)となり、前事業年度に比べ948,607千円増加しました。この主な要因は、売上高の増加によるものでありますが、原価を意識した効率的な事業運営が奏功し原価率が前期比で0.5ポイント減少しました。

 この結果、売上総利益は2,279,206千円(前事業年度1,782,895千円)となり、496,311千円の増加となりました。

 

(販売費及び一般管理費・営業利益)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は1,166,182千円(前事業年度1,046,403千円)となり、前事業年度に比べ、119,778千円増加しました。この主な要因は、人的資本への投資(人員数の増加等)を拡充したことにより

ます。

 この結果、営業利益は1,113,024千円(前事業年度736,492千円)となり、376,532千円の増加となりました。

 営業利益は前事業年度に比べ51.1%の大幅な増加となっております。

 また、重要な経営指標と位置付けている営業利益率は、15.9%(前事業年度13.3%)となりました。

 

(営業外損益・経常利益)

 当事業年度の営業外収益は、受取配当金等により6,889千円(前事業年度3,229千円)となり、3,659千円の増加となりました。営業外費用は支払利息、為替差損等により15,593千円(前事業年度2,209千円)となり、13,384千円の増加となりました。

 この結果、経常利益は1,104,319千円(前事業年度737,512千円)となり、366,807千円の増加となりました。

 

(特別損益、法人税等合計、当期純利益)

 当事業年度において、特別利益及び特別損失は計上しておらず、税引前当期純利益は1,104,319千円(前事業年度737,512千円)、法人税等合計は320,891千円(前事業年度249,392千円)となりました。

 この結果、当期純利益は783,428千円(前事業年度488,120千円)となり、前事業年度に比べ295,308千円の増加となりました。

 

 

c.キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの状況分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ④キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

d.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

e.資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社は、事業運営上必要な資金を安定的に確保するために、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等でバランスよく調達していくことを基本方針としております。これらの資金調達方法の優先順位については、調達時期における資金需要の額、用途、市場環境、調達コスト等を勘案し、最適な方法を選択する方針であります。なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,229,432千円となっており、当面事業を継続していく上で十分な流動性を確保しております。

 

f.経営者の問題意識と今後の方針について

 当社が今後事業を拡大し、収益性を確保しながら持続的な成長を図るためには、経営者は「第2 事業の状況1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、当社の経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。