第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社グループは、グローバルニッチトップの複合体を成す、すなわち国内外の小規模市場を一体的に捉えたグローバル市場において高いシェアと確固たる地位を築く、という成長シナリオに主眼を置き、次の指針に沿った事業活動を展開しております。

① 経営ビジョン

オンリーワン企業の実現に資する研究開発、技術開発等を遂行していき、高収益事業を構築していく。

 

② 中期経営基本方針

ⅰ.市場開拓による事業規模の拡大

ⅱ.構造改革による収益力の強化

ⅲ.新たなGNT(グローバルニッチトップ)事業の創出

ⅳ.未来を担う人材の育成

ⅴ.グローバル経営管理体制の強化

 

③ 目標とする経営指標

当社では、中期経営基本方針に基づき、2027年12月期に向けて以下の経営指標について目標を設定し、企業価値の向上に取り組んでおります。

 

 


 

(2) 経営環境

各事業セグメントにおける経営環境は以下の通りであります。

① リード端子事業

(自動車関連市場)

自動車関連市場において、EVやプラグインハイブリッドをはじめとする電動化や、自動運転機能や安全性の向上等の動きを背景に、自動車用エレクトロニクス市場は中長期的な拡大が期待されています。また、このような動きの中、小型高容量化、耐振動性、漏れ電流特性の向上等、小型アルミ電解コンデンサに対する高機能化のニーズが急速に高まっております。当社は、リード端子における重要な要素技術である異種金属の溶接技術や金属加工技術を得意とし、アルミ電解コンデンサ市場において世界トップシェアを有することに加えて、高い品質水準が要求される自動車市場(駆動系)向けにおいては95%の市場シェアを占める等、市場をリードする技術力、安定供給力を有しております。自社開発、自社生産体制により蓄積してきた技術開発をさらに強化し、製品の競争力、安定供給体制で市場をリードしてまいります。

 

(情報通信機器市場等、自動車関連以外の市場)

自動車関連以外の市場においても、電子機器の高機能化に伴い、アルミ電解コンデンサの高機能化のニーズが今後高まると考えております。

特に生成AI、データセンター等向けの情報通信機器において高精度のアルミ電解コンデンサを必要とする箇所が増加傾向にあり、当社が得意とする高機能製品の採用拡大が見込めると考えております。

一方で、民生機器市場の一部においては、汎用化の進展等により、価格競争が激しい分野も一定程度拡大していくものと考えております。こうした市場については、品質や信頼性、安定供給といった当社製品の付加価値が発揮できる分野に絞り込んで販売を続けていく方針であります。

 

② 光部品・デバイス事業

(海底ケーブル市場)

世界的な情報通信容量の拡大に伴い、国際社会におけるグローバルな情報通信基盤として、海底ケーブルの重要性が高まっております。現在の海底ケーブル網は全世界で150万km程度と推定されますが、毎年10万km以上が新しく敷設され、また海底ケーブルの通信容量の拡大ニーズに合わせて、ケーブルごとのデータ伝送容量が大きく拡大する傾向にあります。

生成AIの普及等、通信の大容量化へのニーズが加速する中、海底ケーブルにおいてもさらなる大容量化に対応した技術革新が加速度的に進んでおり、ケーブル当たりのファイバーペア数の飛躍的な増加、マルチコアファイバ化等、様々な新しい技術テーマに対応したデバイスの開発が不可欠な状況となっております。当社におきましては、海底ケーブル市場向けの主力製品である光アイソレータでは、世界で50%以上の市場シェアを持ち、海底で25年間にわたってメンテナンスフリーで動作可能な高い信頼性を実現しています。今後も海底ケーブルの技術革新をリードする研究開発を進め、大手通信事業者や海底ケーブル敷設会社等、次世代通信技術の開発を進めるお客様との連携を強化し、プラットフォーム作りに関わることでワンストップソリューションを展開してまいります。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① リード端子事業

リード端子事業におきましては、さらなる収益構造の改善を進め、安定的に営業利益率10%以上を維持できる体質を確立していきます。

従来から不採算製品の価格是正や高付加価値製品の開発と採用拡大に努めてまいりましたが、引き続き、高機能化が進むアルミ電解コンデンサの技術ニーズを先取りした新製品の開発やレーザ溶接等、新しい製造技術の開発に注力していきます。また、設備総合効率の改善を主軸とした生産効率の改善を進めると共に、自動車市場向けをはじめグローバル化が進む海外市場への営業体制を強化してまいります。

 

 

② 光部品・デバイス事業

光部品・デバイス事業におきましては、引き続き主力市場である海底ケーブル向け光デバイス市場において、新製品開発と売上の拡大に努めてまいります。海底ケーブル市場においては、生成AIやIoTの進化等の情報通信の増大を背景として、中長期的な視点での技術革新が進んでおり、次世代技術であるマルチコアファイバ技術への対応等、10年或いはそれ以上先を考慮した研究開発を進めてまいります。

 

③ コア技術を活かした新しい事業分野への取組

新しい事業分野への取組も積極化してまいります。これまで開発を進めてきた当社独自のSSG®(スラリーキャスト法を用いた高純度石英ガラス製品)については、半導体製造装置メーカー等からの引き合いが増加しており、本格的な量産体制の構築に取り組んでまいります。

さらに、衛星通信分野や、生成AI・データセンター分野への取組を強化してまいります。これまで培ってきた高品質・高信頼性製品の強みを活かすと共に、企業買収・事業提携等による技術補完やマーケティング力強化についても積極的に取り組んでまいります。

 

④ 人材育成及び経営管理体制の強化

中長期の成長を支える経営体制作りとして、従業員のキャリアアップ制度の充実や新しい拠点整備等、人材確保と長期人材育成への仕組み作りを進めてまいります。さらに、ガバナンスの強化や社会貢献等、非財務に関する活動を引き続き強化し、持続可能な社会実現への貢献と、さらなる企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、持続的な成長と株主価値の向上に資するため、売上高営業利益率、ROIC、ROEといった指標の改善に努めることとしており、こうした指標の改善に向けた内部指標として、設備総合効率をはじめとする様々な指標を設定し、継続的に管理しております。中期経営計画においては、部門別のROICを改善指標とし、事業部門ごとの経営効率改善に取り組んでおります。

また、非財務に関する活動についても積極的な取組を行っております。2024年2月から全社横断組織としてサステナビリティ推進委員会を設置し、CO2排出量削減をはじめとした環境保全活動や、働きやすさ、ダイバーシティの観点からの指標を取り入れ、改善に取り組んでおります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)基本方針

当社グループは「豊かな個性を尊重する全員参加型の経営を実践し、新しい価値の創造を通じて、オンリーワン企業を目指す」という経営理念のもと、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するとともに、中長期的な視点で企業価値の向上を目指してまいります。また、サステナビリティ推進に関しては、「環境」「社会」「ガバナンス」を軸として、当社グループが特定したマテリアリティに重点的に取り組み、責任あるサステナビリティ経営を実践してまいります。

とりわけ、深刻化する地球環境保全への取組と変化の激しい市場環境でのニーズの先取りを最重要課題の一つと位置付けるとともに、マテリアリティの中で「気候変動への対応」と「人的資本の充実」を重視した取組を展開しております。気候変動への対応については長期的視点に立ち、温室効果ガス排出量の削減や環境配慮型製品の開発に努めております。人的資本の充実については、新しい価値創造に資する人材の育成や、人権・多様性への配慮を強力に推進しております。

 

(2)ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ経営への取組を強化し、中長期的な企業価値向上を図るためサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会のメンバーは委員長に代表取締役社長、委員としては当社グループ各社の最高責任者又は当社取締役が推薦した者で構成しております。サステナビリティ委員会は各部門と連携するとともに、適宜取締役会へ報告を行い、必要な施策を進めております。また、サステナビリティ委員会の下部組織として「環境」「社会」「ガバナンス」の各ワーキンググループを組成し、委員会メンバーを各組織に割り振って活動計画やKPIの検討、取組課題の実施を進めております。


 

(3)リスク管理

当社グループは、サステナビリティ委員会にてリスクマネジメント委員会との連携を図りつつESGを軸としたマテリアリティやESG課題に沿った施策の検討、及び進捗状況の確認を行うことにより、サステナビリティに関するリスク管理体制を構築しております。また、他の各委員会や各部署と情報共有・報告体制を構築しており、必要に応じて各施策への取組状況やKPIの進捗確認等を行うこととしております。サステナビリティ委員会はリスクマネジメント委員会等との連携において識別したリスクと機会の中で特に重要と特定されたものについては対応方針を検討した後、その内容について必要に応じて取締役会に報告し、グループを挙げて対策を講じてまいります。

 

(4)戦略

① 気候変動に関する取組

イ.方針

当社グループは、リード端子事業において、EVをはじめとして今後省エネルギー化のニーズが大きく高まる自動車市場を最重点市場として位置付けております。また光部品・デバイス事業において、光ファイバー通信網に代表される高度情報化社会の実現に寄与する高効率光通信デバイスの開発を進める等、カーボンニュートラルの実現に向けて貢献できる製品の開発に努めております。

加えて、開発や製造、その他の事業活動の過程において発生するGHGの排出を削減するための取組を進めております。

当社グループは環境保全に向けた活動として、以下のことに取り組んでまいります。

・CO2削減に寄与する装置の導入

・太陽光等再生可能エネルギーの利用比率増加

・リード端子、光デバイス製造における生産性向上、省電力化

 

 

ロ.指標及び目標

GHG排出量

 (単位:t-CO2)

Scope1

Scope2

合計

(Scope1&2)

売上百万円当りの

排出量

(t-CO2/百万円)

2022年

198

17,065

17,263

1.10

2023年

141

13,358

13,499

1.00

2024年

143

14,659

14,803

0.93

 

(注)Scope3については排出量測定の取組を進めており、今後、サステナビリティ委員会によりGHG排出量の目標の設定等を検討してまいります。

 

② 人的資本に関する取組

イ.人材育成方針

『社会のニーズを先取りし独自の高い技術力で新しい価値創造に挑戦する、自発的に考え行動できる自立型人材の育成を目指します。』

当社グループは、専門的な知見のある大学教授からの指導会を定期的に設ける等、中長期的な視点で技術や製品の開発に取り組んでおります。加えて、派遣型の階層別研修や通信教育、コンプライアンス研修、資格奨励金制度等様々な機会を通じて人材育成に努めております。さらに、当社は海外に工場が多くあることから、現場とのコミュニケーションスキルを磨くための語学研修プログラム等の導入を進めております。

また、2024年度よりタレントマネジメントシステムを導入し、能力・スキル・経験等の幅広い人事データを一元管理し、社員一人ひとりに適した育成方法立案を進めております。

 

ロ.社内環境整備方針

『すべての従業員の人権と多様性を尊重し、一人ひとりが個性・能力を発揮し、自己実現の喜びを感じられる安心で安全な職場環境を構築します。』

当社グループは、健康経営優良法人として、総務部門と安全衛生委員会が主体となり健康経営を推進するヘルシーライフプロジェクトを立ち上げ、長時間労働の抑制、有給休暇の取得促進、健康セミナーの開催、健康習慣アンケート調査、運動費用補助制度等を通じて健康増進に向けた取組を行っております。

また、当社の行動規範では「個人の尊厳と権利の尊重」を掲げ、差別やハラスメントをはじめ、個人の尊厳を傷つける行為は一切行わないよう繰り返し教育、人権保護に努めております。

さらに、2024年度より人事制度改定に着手し、社員が個性・能力を発揮しモチベーションアップが図れるよう評価・等級・報酬体系の見直しを進めております。

一方、当社の女性管理職比率は連結で27.7%ですが、単体では3.8%となっており、今後の重要課題の一つとして改善策を進めてまいります。

 

ハ.指標及び目標

項目

指標

2024年度実績

目標

人権と多様性の尊重

女性管理職比率(連結)

27.7

2027年30

人権研修参加率

80

100%/年

グローバル人材の育成

海外業務に必要な専門知識習得者数

8

5人以上/年

語学研修参加率

未実施

30以上/年

安全で働きがいのある職場の実現

健康増進プログラムへの参加率

82

90%/年

有給休暇取得率

78

75%/年

育児休業取得率

75

80%/年

労働災害発生件数

3

0件/年

社員満足度調査及び改善の実施

1回実施

1以上/年

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下の通りであります。これらのリスクは、全てのリスクを網羅したものではなく、予測し難い事業等のリスクが存在するものと考えております。当社では、様々なリスクに対応するために、定期的にリスクマネジメント委員会を開催する等、リスクの把握とその軽減策を講じるよう努めております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)  海外事業について

当社グループは、売上高全体に占める海外向けの比率が高く、アジア地域に複数の生産拠点を配置することによりサプライチェーンを構築しております。それに伴い、対象国の経済動向、社会情勢及び政治状況の変化や自然災害等に伴うリスクが存在します。こうしたリスクの顕在化により当社グループ子会社が営む事業の遅延、中断及び中止等、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいては、当該リスクを軽減するために、各事業の特性を踏まえた複数拠点での生産対応、また非常時に備えた製品及び主要材料等の在庫保有や自家発電設備の設置等、各拠点の事情に応じた対策を進めており、安定供給と事業保全の両立を図っております。

 

(2)  為替相場の変動について

当社グループは、売上高全体に占める海外向けの比率が高く、外貨取引及び保有に伴う為替変動リスクを抱えております。急激な為替相場の変動が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、当該リスクを軽減するために、外貨建の債権債務のポジションを掌握し、受取外貨による外貨支払を基本線としつつ、必要に応じて外貨の円転及び外貨の購入等を機動的に実施しております。

 

(3)  原材料等の価格変動・安定調達について

当社グループは、アルミ線をはじめとした原材料等を仕入れており、材料価格の変動の影響を受ける可能性があります。この影響を受けやすいリード端子事業につきましては、材料価格の変動を販売価格に反映させることにより価格変動リスクの低減に努めております。また、様々な事故や自然災害の発生に伴うサプライチェーンの混乱や倒産等による調達先からの原材料等の安定調達に支障が出た場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、調達先に対して定期的に監査等の調査を行うと共に、調達ルートの複数化を進める等、安定調達に努めております。

 

(4) 価格競争について

当社グループは、グローバルニッチ市場において競争力の高い製品の提供に努めておりますが、一定の競合他社が存在しております。競合他社の価格政策等によって価格競争が激化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、高付加価値製品の開発を進めると共に高い市場シェアを維持しており、非価格競争を以て経営成績等への影響を最小限にすべく対応しております。

 

(5) 特定顧客への依存について

当社グループは、光部品・デバイス事業に属する海底ケーブル関連製品において、高水準のマーケットシェアを維持しております。しかしながら、市場参加者が限定的であるという市場構造であるため、特定の取引先への依存度が高いというリスクを抱えております。そのため、当該市場の需給環境や主要取引先との取引量に大きな変化が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループといたしましては、長年培ってきた顧客基盤の維持に努めると共に、新規事業の創出や新分野及び新市場の開拓を進めてまいります。

 

(6)  天候・自然災害等について

当社グループは、多くの生産設備を有しており、地震や風水害等の予期せぬ自然災害等、また不測の事態や火災等の事故が発生した場合には、生産能力の著しい低下等が生じる可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、当該リスクを軽減するために、各生産拠点において、生産設備の定期的な災害防止検査・点検の実施、止水、耐震対策等を順次進めることにより生産設備の保全に努めております。

 

(7)  研究開発について

当社グループは、既存製品及び新製品の研究開発等により技術力の向上を図っておりますが、競合他社との開発競争の激化等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、当社が競争優位性を持つ分野に研究開発リソースを絞り込む「ニッチトップ戦略」により、市場における技術優位性の維持に努めております。

 

(8)  製品の品質について

当社グループは、IATF16949やISO9001等の各種品質標準の認証取得に加えて、当社グループが定めた品質方針に基づき、業界をリードする高い品質の実現に注力しております。しかしながら、何らかの原因により当社製品に欠陥が生じた場合や、製造物責任による高額な賠償金の支払い義務、品質不良に起因する高額な間接的損害が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、当該リスクを軽減するために、継続して品質管理体制の強化に努めるとともに、付保状況の見直しや、国内外PL(製造物賠償責任)保険への加入を進めております。

 

(9)  人材確保について

当社グループが企業の価値を永続的に高めていくためには、研究開発や製造、マネジメントをはじめ、各部署に必要な人材の確保が不可欠であります。企業間の採用動向や労働人口の変化が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、当該リスクを軽減するために、新人・中途採用を問わず計画的・継続的な人材採用や育成、福利厚生の充実等の対策を行っております。

 

(10) 他社との提携の成否について

当社グループは、持続的な事業の成長を果たすため、必要に応じて社外から新たな技術の獲得や、業務提携、またM&Aの可能性があると考えております。M&Aの実現や業務提携等には、多額の投資を必要とすることに加えて、知的財産権や人的な問題等が発生する場合があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、当該リスクを軽減するために、M&Aや業務提携にあたりましては技術面だけでなく、財務・法務等に係る総合的なデューデリジェンスを実施し、対象会社のリスクを適切に把握のうえ実行してまいります。

 

(11) 情報セキュリティについて

当社グループは、事業経営に関わる多岐にわたる重要機密情報を有しておりますが、標的型攻撃やランサムウェア等、増加・深刻化するサイバー攻撃による当該情報の漏洩や業務の停止が発生することで、当社グループにおける調達体制、生産体制、物流体制、販売体制等、事業活動の継続に影響が生じる場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、当該リスクを軽減するために、「情報セキュリティ基本方針」等の情報管理に関する規程を定め、また従業員に対して情報管理に関する教育を行うと同時に、グループ各拠点のいずれにおいて情報セキュリティに関する問題が発生しても、損害を最小限にとどめて供給責任を果たしうる体制の構築及び管理ソフトウェアの導入を推進する等、情報管理体制の強化に努めております。

 

(12) 知的財産権について

当社グループは、弛まぬ研究開発を重ね、競争優位性の源泉たる技術の蓄積を図り、知的財産権としての権利化を進め、法的保護に努めておりますが、知的財産権の不正利用や他社との特許紛争等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、当該リスクを軽減するために、管理する知的財産権に関して、第三者による権利の侵害リスク調査や他社に対する特許侵害回避のための専門家との連携等、調査の充実と適切な判断を行う体制を構築しております。

 

(13) コンプライアンスについて

当社グループは、当社グループが事業を展開する国又は地域において、環境法令等多くの法令・公的規制による影響を受けております。そのため、法令等の重要な変更が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、万一、各種法令諸規則に抵触する行為が発生し、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、監督官庁等からの処分、訴訟の提起、係争中事案の進展、社会的信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、当該リスクを軽減するために、各種法令や諸規則が遵守されるよう全ての役員及び従業員に対してコンプライアンスの徹底を行っております。具体的には、コンプライアンス研修等の実施や、コンプライアンス管理規程の制定、コンプライアンス委員会の設置・運営等により、コンプライアンスの風土醸成と全社的推進を図っております。

 

(14) 固定資産の減損について

当社グループは、工場、機械設備等多くの固定資産を保有しており、四半期毎に各拠点において当該資産の減損兆候の判定を行っております。業績変動等を理由に減損の兆候が生じ、固定資産の減損を行う必要が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 特定人物への依存について

当社の代表取締役である石井太は、当社グループの研究開発や営業政策の他、様々な経営判断に対して高い知見を有しており事業運営において極めて重要な役割を担っております。当社グループは、取締役会や経営会議等において役員及び従業員への情報共有を行うことで経営管理体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により業務遂行が困難になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 大株主について

当社の代表取締役である石井太及び同氏の資産管理会社であるアイエフマネジメント株式会社が、本書提出日現在で発行済株式総数の61.8%を所有しております。同氏は、安定株主として一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針であります。同氏は、当社の代表取締役であることから、当社といたしましても安定株主であると認識しておりますが、将来的に何らかの事情により同氏により当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、中国や欧州で停滞が見られたものの、好調が続く米国経済やインドをはじめとするアジア地域での経済成長に支えられ、おおむね堅調に推移いたしました。一方で、欧米における高い金利水準の継続やエネルギー価格の高騰等による物価上昇、中国での不動産市場の低迷等、いくつかの懸念材料が散見される状況となりました。

日本におきましては、雇用や所得環境が改善したことに加えて、アフターコロナの流れの中でインバウンド消費が盛り上がりを見せる等、回復傾向となりましたが、円安による物価上昇に伴う消費の落ち込みや品質不正問題等による自動車生産の低迷等の影響も受けました。

電子部品業界におきましては、前半は、情報通信機器市場の調整が長引いたことや中国での製造業の停滞から厳しい状況が続きました。後半は、過剰在庫の調整一巡や、生成AI普及等による回復の兆しが見られましたが、EV市場の急減速による自動車産業の停滞や高金利の継続による先行き景気悪化懸念等の影響を受け、再度調整傾向となりました。

こうした中、当社では、中期経営計画の達成に向けて、新製品の開発と拡販、設備総合効率の改善、リード端子事業における生産体制の再構築・生産工程の効率化や、不採算製品・不採算受注の改善等、売上の拡大と収益構造の改善に努めました。

また、新規分野として注力している高純度石英ガラス製品(SSG®)の拡販活動の強化や、PLZT光スイッチ技術の開発会社であるエピフォトニクス株式会社の子会社化等、中長期的な成長に向けての施策にも取り組みました。

当連結会計年度の経営成績は、売上高は15,924百万円(前期比18.2%増)、営業利益は3,939百万円(前期比40.1%増)、経常利益は4,856百万円(前期比54.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,252百万円(前期比70.8%増)となりました。当連結会計年度における期中平均レートは、1米ドル当たり151.69円となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(リード端子事業)

当連結会計年度におけるリード端子事業の売上高は8,403百万円(前期比13.6%増)、セグメント利益(営業利益)は403百万円(前期比799.3%増)となりました。

自動車用エレクトロニクス市場では、前半は、アルミ電解コンデンサ市場における過剰在庫の調整に伴う低迷が欧州や中国等で続いたことに加え、品質不正問題による自動車生産の停滞の影響を受けました。後半に入り、こうした調整が一段落したことによる回復が見られました。その後、欧州の自動車及び車載関連市場が大きく減退したこと、中国における需要の鈍化等の影響により市場は再度調整局面となりました。

民生機器市場におきましては、前半はコロナ禍において発生したステイホーム需要の反動等による調整が続きましたが、猛暑によるエアコン需要等が下支え要因となりました。情報通信機器市場については、前半の市場の調整が一巡したことに加えて、AIサーバーを中心とするIT需要の拡大により好調に推移しました。

こうした状況の中、前半には一部品種の受注急増に伴う想定外の固定費上昇が一時的な利益押し下げ要因となりましたが、後半はフレキシブルな生産体制の構築を進めたことに加えて、これまで進めてきた不採算製品の価格是正、小ロット受注の見直し、生産性改善等の効果が出始めました。また、中長期的な収益構造の改善に向けて、EDLC(電気二重層キャパシタ)向け製品、対振動特性や絶縁特性を大幅に改善した新製品「バリレス」等の高付加価値製品の拡販に努めました。

生産技術面では、製品の品質と信頼性の向上や生産効率の改善に向け、高効率・高精度を実現する新しい溶接技術であるレーザー溶接の開発に取り組みました。

 

 

(光部品・デバイス事業)

当連結会計年度における光部品・デバイス事業の売上高は7,520百万円(前期比23.9%増)、セグメント利益(営業利益)は3,536百万円(前期比27.8%増)となりました。

海底ケーブル向け光デバイス製品では、昨年からの海底ケーブルプロジェクトの一部延期等の影響による調整が一巡したこと、世界的な通信インフラ強化の流れに伴う新たな海底ケーブルプロジェクトが発表されたこと等、需要の先行き見通しが改善しました。こうした需要見通し改善により光アイソレータ及び光フィルタの受注が急速に増加し、売上は回復傾向をたどりましたが、第4四半期に、反動と思われる一部顧客からの一時的な調整も見られました。

開発面では、情報通信の拡大ニーズに対応し、小型や複合製品の開発を進めました。また、海底ケーブルのマルチコアファイバ化に対応した次世代デバイスとして、新たな光アイソレータとファンイン/ファンアウト(※1)の複合光デバイスの開発に取り組みました。

加えて、新規事業として位置づけている高純度石英ガラス(SSG®)製品については、昨年より量産供給を開始した紫外線用非球面レンズの販売が順調に増加しました。また、半導体関連メーカー等さまざまな用途への採用に向けて、拡販活動とサンプル出荷を進めました。

その他、衛星間光通信ネットワークサービスを手掛ける株式会社ワープスペースと2024年11月に資本・業務提携、2024年4月に子会社化した次世代情報通信インフラ向けの研究開発を手掛けるエピフォトニクス株式会社における経営体制の強化等、新分野の開拓に取り組みました。

 

※1:ファンイン/ファンアウト(製品)

マルチコアファイバの各コアとシングルコアファイバのコアを接続する光部品。「ファンイン」とは複数の入力を一つの出力にまとめること、また「ファンアウト」は一つの入力を複数の出力に分岐することです。例えば、1本の光ファイバケーブルに複数のコアを内蔵するマルチコアファイバを海底ケーブルとして使用する際、数十キロメートルごとに設置する光中継器内で、一旦シングルコアファイバへ分岐して光信号を増幅した後に再度一つの出力にまとめ直す場合に使われます。

 

 

② 財政状態の状況

(資産)

流動資産は前連結会計年度末に比べ1,595百万円増加し、18,331百万円となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産が562百万円、有価証券1,801百万円原材料及び貯蔵品322百万円増加した一方で、現金及び預金1,537百万円減少したことによるものであります。

固定資産は前連結会計年度末に比べ2,116百万円増加し、10,353百万円となりました。これは主に、機械装置及び運搬具(純額)281百万円土地612百万円のれん291百万円投資有価証券470百万円増加したことによるものであります。

この結果、総資産は前連結会計年度末に比べ3,711百万円増加し、28,684百万円となりました。

 

(負債)

流動負債は前連結会計年度末に比べ422百万円増加し、2,945百万円となりました。これは主に、買掛金224百万円未払法人税等665百万円増加した一方で、短期借入金196百万円1年内返済予定の長期借入金309百万円減少したことによるものであります。

固定負債は前連結会計年度末に比べ81百万円減少し、2,309百万円となりました。これは主に、リース債務58百万円繰延税金負債47百万円増加した一方で、長期借入金208百万円減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ340百万円増加し、5,254百万円となりました。

 

(純資産)

純資産は前連結会計年度末に比べ3,371百万円増加し、23,430百万円となりました。これは主に、利益剰余金2,712百万円為替換算調整勘定671百万円増加したことによるものであります。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は9,799百万円となりました。

当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、3,836百万円の収入となりました。主な資金増加要因は、税金等調整前当期純利益4,856百万円減価償却費947百万円、主な資金減少要因は、売上債権の増加額640百万円、棚卸資産の増加額306百万円法人税等の支払額908百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、3,115百万円の支出となりました。主な資金増加要因は、定期預金の払戻による収入450百万円、主な資金減少要因は、定期預金の預入による支出956百万円有形固定資産の取得による支出1,433百万円投資有価証券の取得による支出504百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,636百万円の支出となりました。主な資金減少要因は、短期借入金の減少額327百万円長期借入金の返済による支出626百万円配当金の支払額539百万円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

リード端子事業

6,743

+15.1

光部品・デバイス事業

2,231

+19.9

合計

8,975

+16.3

 

(注) 金額は、製造原価によっております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高 (百万円)

前期比 (%)

受注残高 (百万円)

前期比 (%)

リード端子事業

8,403

+13.6

光部品・デバイス事業

5,855

△20.5

2,862

△36.8

合計

14,258

△3.4

2,862

△36.8

 

(注) リード端子事業については、受注から出荷(売上計上)までの期間が数日と非常に短いことから

受注残高の集計には含めず、販売実績をもって受注高としております。

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

リード端子事業

8,403

+13.6

光部品・デバイス事業

7,520

+23.9

合計

15,924

+18.2

 

(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度
 (自 2023年1月1日
  至 2023年12月31日)

当連結会計年度
(自 2024年1月1日
 至 2024年12月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

SubCom,LLC

2,345

17.4

3,268

20.5

Alcatel Submarine Networks UK Ltd.

2,010

14.9

2,796

17.6

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における経営成績の状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載しております。また、当連結会計年度における財政状態の状況の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの詳細につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の仕入費用や生産子会社の製造費用、及び販売費及び一般管理費の営業費用であります。また、投資を目的とした資金需要は生産施設における機械装置等の充実のための事業投資であります。

当社グループは、事業運営上必要な運転資金及び設備投資資金については、自己資金にて賄うことを基本方針としております。また、一部はグループ会社間で融資を行っております。

 

③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について

当社グループでは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を事業別営業利益と設定しております。前連結会計年度及び当連結会計年度の数値については、次のとおりとなっております。

指標

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

  至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

事業別営業利益
(リード端子事業) (百万円)

44

403

事業別営業利益
(光部品・デバイス事業) (百万円)

2,767

3,536

 

 

 

④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績等に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、培った技術力に更に磨きをかけ、より一層高度な信頼性、安全性、機能性を追求することにより、競争力に優れる新製品の開発を推進しております。

 

当社グループの研究開発は全て当社が行っており、当連結会計年度末時点の人員は58名であります。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は807百万円であります。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

(1) リード端子事業

エレクトロニクス市場においては、自動車関連、生成AI・データセンター向けをはじめとして、高機能化、省エネルギー化、高信頼性といった様々なニーズがますます高まっており、電子機器の基幹部品であるアルミ電解コンデンサについても小型・高容量化、低漏れ電流、高リップル電流、高信頼性等の要求水準が高度化しています。

こうした状況に伴い、アルミ電解コンデンサの主要部品であるリード端子についても、漏れ電流特性、低抵抗、溶接強度、カシメ性、耐振動等の向上に大きく寄与する付加価値商品を開発し、ハイブリッドコンデンサ、固体コンデンサ、EDLCキャパシタ等、多様化するコンデンサに使用していただいております。

当社では、特に技術革新のニーズが高いとされる、自動車関連市場や生成AI・データセンター市場向けリード端子の特性向上に焦点をあて、様々なタイプの高機能リード端子の開発を進めております。

自動車の安全機構に使用される二次電源用EDLCキャパシタ向けや、電子回路のショート、誤作動を防止するための特殊加工を施したリード端子等、様々な用途に対応した高付加価値製品のラインアップを進めておりますが、今後のさらなる高機能化に向けて、電気伝導率のより高い銅材料の仕様と高信頼を両立した新製品等、さらなるラインアップの強化に努めております。

また、アルミ電解コンデンサメーカー各社と技術会議を開催し、市場要求に迅速に対応できる技術情報の入手と開発期間の短縮にも注力し、お客様の幅広いニーズに対応できるソリューション展開に努めております。

なお、リード端子事業において、研究開発費として計上した金額は111百万円であります。

具体的なテーマは次のとおりであります。

・異種金属の新しい溶接技術の開発(レーザ溶接)

・漏れ電流防止をはじめとする各種特性改善(コンデンサ性能の向上)

 

(2) 光部品・デバイス事業

顧客のプラットフォーム作りや新しい技術提唱の機会に関わって、光ファイバ通信の技術革新(例えば、マルチコアファイバ)に対応した光部品、及び光デバイスの研究開発に取り組んでおります。また、大学等の研究機関、研究開発型企業への資本参加や技術提携等にも取り組み、次世代のデータセンター、光量子コンピューター、宇宙光通信等の分野に向けた研究開発も強化しております。

なお、光部品・デバイス事業において、研究開発費として計上した金額は696百万円であります。

具体的なテーマは次のとおりであります。

・光部品

磁気光学単結晶のファラデー回転子

・光デバイス

海底ケーブルの高速大容量化をターゲットとした高信頼性光デバイス

 

 

マルチコアファイバと関連した光デバイス

 

 

シリコンフォトニクスと関連した次世代光デバイス

 

 

PLZT薄膜を用いた高速応答光デバイス

 

 

衛星間光通信をターゲットとした光デバイス

・光モジュール

波長選択スイッチ

・石英ガラス製品

製造技術SSG®(*1)を用いた高純度石英ガラス部品

・技術開発

デジタルホログラフィ干渉法(*2)の応用

 

 

光部品・デバイス事業の当連結会計年度における研究開発成果は次のとおりであります。

a. 光デバイス

海底ケーブルの多芯化ニーズに対応して、光アイソレータや光フィルタを複合化した光デバイス、及び他の機能を含めたモジュール化の開発を進め、お客様へのサンプル出荷を開始しました。

また、将来のマルチコアファイバ普及に向けた新製品の開発を進め、ファンイン/ファンアウトと光アイソレータを複合化した光デバイスを試作し、光通信分野で世界最大級の国際会議「OFC2024」においてKDDI総合研究所らと共著で論文発表しました。

 

b. 石英ガラス製品

高純度石英ガラス製品の製造技術SSG®を用いた従来にない高純度石英ガラス製品の形状ラインアップを強化しました。半導体製造装置メーカーからの引き合いが増加しており、展示会「セミコンジャパン」に出展し、その後半導体製造装置メーカー各社に対しサンプル提供を進めました。また、生産能力の増強、BCP体制の強化等、安定供給に向けた取組を進めております。

 

c. 技術開発

デジタルホログラフィ干渉法を用い、UV硬化型接着剤による光学部品の挙動と接着材自体の硬化特性について明らかにし、産業応用工学会論文誌において島根大学と共著で論文発表しました。

 

(用語解説)

項番

用語

意味・内容

製造技術SSG®

湖北工業が確立した高純度石英ガラス製品の製造技術。

形状の自由度が極めて高いといった利点を持ち、従来の切削加工

等では困難な複雑形状の高純度石英ガラス成型部品を実現。

デジタルホログラフィ干渉法

レーザー光とデジタル画像とを組み合わせた3次元計測手法のひとつで、3次元のイメージング技術。