文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
当社は、医療現場におけるアンメットメディカルニーズに対して、IT技術の活用による新たなソリューションを提供することで社会へ価値を生み出し、医療が必要な全ての患者に最適な医療を提供し続けることができる、持続可能な社会の実現に貢献することを事業活動の目的としております。
上記の目的を実現するため、当社では以下のミッション、ビジョン、バリュー、行動指針を定め、経営を行っております。
現在、研究開発段階にある当社は、ROA、ROEその他の数値的な目標となる経営指標等は用いておりませんが、DTxプロダクト事業では、長期的視点での収益の最大化のために財務指標に先行する開発パイプラインの件数や臨床試験の進捗度合いを、DTxプラットフォーム事業では、収益の継続的な増加を実現するため契約件数を重要な経営指標として位置付けております。
DTxプロダクト事業では、DTxシーズの横断的な探索及び市場性の高い案件の選択と深耕が重要だと考えております。シーズの探索では、代表取締役社長の上野を中心に当社役職員が保有する業界内でのネットワークを最大限活用するとともに、機械学習自動分析システムの導入によるRWDの分析や販売後調査を通じて、医療機関・学術研究機関・製薬企業が抱えるDTxシーズの発掘を行ってまいります。案件の選択と集中については、高い収益性が見込まれる案件に十分なリソース配分を行うための投資判断基準を構築して、臨床試験の各相で案件の適切な取捨選択を行い、加えて、自社で完結することに固執せず販売権の導出等、他社との連携による早期収益化の方策を検討してまいります。
DTxプラットフォーム事業のうち汎用臨床試験システムでは、サンドボックス制度での研究成果とそれを踏まえたグレーゾーン解消制度での当社の確認に対する厚生労働省からの回答に基づき、臨床試験における実地モニタリングを省略するためのデファクトスタンダートを目指しております。実地モニタリングの省略に加え、被験者募集プロセスの効率化やデータ欠損の防止による臨床試験品質の向上の観点から、製薬企業や学術研究機関における研究開発コストのさらなる低減をシステム全体で実現してまいります。
さらに、機械学習自動分析システムでは、RWDを対象としたユースケースを蓄積しながら、新たな機能開発と使いやすいUI/UX(User Interface/User Experience)の改善を継続的に行い、新たな契約の獲得と顧客単価の向上を目指してまいります。
DTx開発支援においても、支援実績を積み上げると同時に、システム基盤の機能拡充を図り、更なる効率化を目指してまいります。
今後事業及び収益の拡大を図るために当社が対処すべきDTxプロダクト事業での主な課題は、開発中の治療用アプリそれぞれの医療機器製造販売承認の取得(不眠障害治療用アプリは製造販売承認を取得済み)と十分な収益が確保できる水準での保険収載を確実に実現することであります。併せて、臨床ニーズに対応した新たな治療用アプリの開発に着手し、それらを継続的に市場に投入していくことも長期的な課題として認識しております。
また、DTxプラットフォーム事業のうち汎用臨床試験システムでの課題は、規制に対応した上で臨床開発コストの低減に着実に寄与すること、機械学習自動分析システムでの課題は、長期にわたって利用してもらうために継続的なユーザーニーズの把握とそのニーズに即した機能拡充を行うことだと考えております。
新型コロナウイルス感染症の拡大は多くの事業にネガティブな影響を及ぼしましたが、外出自粛、医療機関への通院に対する抵抗感などが医療業界のデジタル化を促進した要因にもなっており、デジタル技術の活用で医療の効率化を目指す当社の事業展開にとってはポジティブな環境となっております。
その他、継続的な成長と企業価値の向上を目指す上で対処しなければならない各機能面での課題を以下のように考えております。
(営業活動における課題)
当社は、国内外の製薬企業や医療機関等と友好的かつ経済的な相互関係(共同研究開発体制)を築いており、今後さらなる共同研究開発契約を獲得・推進するために研究開発体制の整備・充実と連動した戦略的な営業活動が重要だと考えております。
(研究開発活動における課題)
当社は、DTxプロダクト事業において治療用アプリの治験システム、治療用アプリを搭載した端末装置、および治療用アプリのプログラムに関する特許技術を保有・活用しており、現時点においては大きな技術的優位性があると考えております。また、DTxプラットフォーム事業に分類される汎用臨床試験システムおよび機械学習自動分析システムは今後の活用に大きな可能性を秘めております。当社は、自社システムの優位性を確保し続けるため、国内外の製薬企業及び学術研究機関等との共同研究を推進しつつ、今後も自社内における研究開発及びその体制の強化を進めてまいります。
当社は、継続的に企業価値を高めていくためには、コーポレート・ガバナンスの強化が重要な課題の1つであると認識しております。経営の効率化を図りながら、一方でその健全性、透明性を高め、長期的、安定的かつ継続的に企業価値を向上させることが、株主をはじめ、すべてのステークホルダーの皆様から信頼をいただく条件であると考えております。企業価値向上のために、俊敏さを備えた全社的に効率的な組織の構築を必要条件としつつ、業務執行の妥当性、管理機能の効率性・有効性を心がけ、改善に努めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
①ガバナンス及びリスク管理
当社は、「ICTの活用によって持続可能な医療(Sustainable Medicine)を社会に提供し続けること」をミッションに掲げており、当社の事業活動そのものを通じて社会の持続可能性の向上と当社の企業価値向上の両立に努めております。
当該ミッションを達成するためのガバナンス体制として、当社では、取締役会を中心に、ミッションや経営戦略との関連性を踏まえ、サステナビリティに関する重要課題や方針、具体的な対策等について議論を行っており、経営と一体となった、実効性のあるサステナビリティ活動を推進しております。なお、具体的な施策については、取締役会での議論をもとに、社内の関係部署において社内横断的に取り組んでおります。
また、サステナビリティに関する重要課題に関する各種リスクについては、リスク及び機会の識別及び評価を行い、その管理方法について検討の上、関係部署と連携し、対応することとしております。具体的には、原則として3ヶ月に1度の頻度でリスク管理委員会を開催し、リスク評価とモニタリング、リスクの見直しを実施し、その内容について取締役会へ報告を行なっております。取締役会は、サステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有していることから、リスク管理委員会から報告のあった内容を含め、当社のサステナビリティに関するリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての討議・監督を行なっております。なお、具体的なリスクの内容、管理体制は
また、具体的なガバナンス体制及びリスク管理体制については、
②戦略、指標及び目標
当社ではサステナビリティに関する重要課題を選定するとともに、それぞれに対する戦略を策定し、サステナビリティ活動に取り組んでおります。社会の持続可能性の向上と当社の企業価値向上を一体と考える当社では、これらの重要課題に適切に対応する戦略を定め、取り組んでいくことが、ひいては当社の企業価値向上にも寄与するものと考えております。
当社のサステナビリティに関する重要課題については、上記のガバナンス及びリスク管理を通じて以下のプロセスにより検討を行っております。
(特定のプロセス)
ステップ1 SASBやGRIなどが公表している各種指標やSDGs、ESG評価機関などの評価手法を参考に、当社の事業内容、経営計画を勘案の上、当社と関係するサステナビリティの課題項目を抽出(課題の抽出)
ステップ2 取締役会において、ステークホルダーにとっての重要度と、当社のミッションや経営戦略との関連性など当社にとっての重要度の両観点から、その妥当性や網羅性を議論(抽出した課題の評価)
ステップ3 上記議論を踏まえ、重要課題及びその具体的な実施策を検討(重要課題の特定)
ステップ4 取締役会での審議、承認を経て決定(重要課題の決定)
上記プロセスを経て、当社では、サステナビリティに係るマテリアリティ及び当該マテリアリティに対する戦略の概要を以下のとおり確定しております。特定・整理を行った重要課題については、当社のサステナビリティ活動の基本とし、当該重要課題の解決に向けた具体的な取り組みを推進しております。
サステナビリティに関する重要課題は当社の事業進捗や事業を取り巻く環境の変化に応じて、定期的に見直しを実施していきます。
(2)環境及び社会への貢献に関する考え方及び取組
①取り組みの説明
当社は、治療用アプリの研究開発、汎用臨床試験システムの普及を通じて、日本医療が抱える社会課題を解決し、持続的な医療の実現を目指しており、当社事業の推進そのものがサステナビリティに資すると考えております。
a 環境への貢献
治療用アプリは、その特性上、製造工場の稼働や流通過程における温室効果ガスの排出、水資源の利用・汚染、開発・検査機材等の産業廃棄物の発生、不要となった原材料・包装材の廃棄等の開発、製造の過程で一般的に発生が予想される環境負荷が発生せず、社会全体の環境負荷の低減に貢献します。

b 医療課題解決のための製品・サービスの提供
(a)医療費の増加
現在我が国では、医薬品や医療機器の開発コストが高騰し、それに伴い高額な薬価が設定されることで医療費が増加する傾向にあります。さらに、適切な治療法が十分に普及していない疾患については、治療の選択肢が限定されるため、結果的に治療期間の長期化等を招き、医療費の増加傾向を加速させる一因となっております。
一般的に有体物である医薬品や医療機器では、非臨床試験として、人体への投与・使用の可否判断を目的とした動物実験等の生物医学的試験の実施が必要となりますが、治療用アプリでは、それらが省略できるため、開発期間の短縮、開発コストの圧縮等が可能となり、また、医療機器製造販売承認後の製造過程においても、治療用アプリではソフトウェア自体が製品となるため、製造設備が不要となり、それに伴い工程管理や品質管理等が容易となるなど、通常の医薬品や医療機器に比べて、開発・製造の各プロセスにわたって発生し得る各種リスクを低減することで医療費の適正化を図ります。また、新たな治療選択肢を医療現場に提供することで、処方の適正化とそれによる治療期間の短縮により、増加する医療費の抑制に貢献します。

また、当社のブロックチェーン技術を実装した汎用臨床試験システム『SUSMED SourceDataSync®』は、モニタリング業務の工数と費用を削減することで、開発コストの圧縮を実現し、医療費の抑制に寄与します。
(b) アンメットメディカルニーズ
現在、我が国の医療現場におけるアンメットメディカルニーズについては、有効な医薬品・医療機器が存在せず、患者に対して必要な治療を十分に提供できていないばかりか、その対応を現場の医師に依存する状況が続いており、社会問題となっている医師の長時間労働を加速させる一因ともなっています。当社が開発を進める治療用アプリは、治療効果が実証されているにも関わらず患者に十分行き届いていない治療の提供を可能とするとともに、医師の長時間労働に依存する現状の見直しを図り、医師の働き方改革に貢献することで、医療現場におけるアンメットメディカルニーズの解消を図り、持続性のある医療提供体制の構築に寄与するものです。
なお、具体的な当社パイプラインの内容や進捗状況については
(c) ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロス
国内の未承認薬数は、年々増加傾向にあり、このようなドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの問題は、現在深刻な社会問題とされ、その対応は喫緊の課題となっております。2023年12月には、内閣府において「創薬力の向上により国民に最新の医薬品を迅速に届けるための構想会議」が設置され、ドラッグ・ロスの発生や医薬品の安定供給等の課題について検討が進められているところです。このようなドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの原因の一つとして医薬品や医療機器開発に要する膨大な時間と多額の開発コストが挙げられるところ、当社のブロックチェーン技術を実装した汎用臨床試験システム『SUSMED SourceDataSync®』は、臨床試験のモニタリング業務の工数と費用の大幅な削減を実現し、医薬品や医療機器の開発コストを圧縮することで、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの改善に寄与します。
(d)医療データの利活用
医療データは社会保障政策、創薬、医療機器開発、その他の健康・医療ビジネス等、幅広い分野での利活用が期待される一方で、品質が担保された医療データであることの重要性も指摘されており、医療分野での使用に耐えられる品質水準の確保が課題となっております。汎用臨床試験システム『SUSMED SourceDataSync®』に実装されている当社のブロックチェーン技術は、高度な耐改竄性を有していることから、臨床試験への導入によりデータの改竄を防止することに加え、販売後においてもデータクオリティが担保されたレジストリの構築を可能とすることで、幅広い分野で利活用できる高い品質が担保されたデータを提供します。
(3) 人的資本に関する考え方及び取組
①戦略
当社は、医療現場におけるニーズとIT技術を有機的に組み合わせ、新しい医療をつくり、持続可能な医療(Sustainable Medicine)を実現することをミッションとしております。そのためには、医療を中心とした社会課題の解決に強い関心を持つ様々な分野のプロフェッショナルが協力し、一人ひとりが本来有している専門性を更に高めながら研究開発・事業化を推進していける環境の整備及び高い専門性を有した社員の貢献に報いるための制度の構築が重要だと考えております。
当社は、以下に示す5つの「行動指針」を定め、採用基準の1つとするとともに、これらの価値観に基づく環境整備、制度構築に取り組んでおります。

②指標及び目標
当社では、以下の3点を上記の戦略への取組における重点項目として、その状況を定量・定性両面の複数の指標で測定、評価しております。
a 社員の成長と活躍推進
b 多様な人材の活躍(多様な働き方)
c 社員の健康と安全
a 社員の成長と活躍推進
当社は、研究開発型の企業として、学会等での講演や論文発表、知的財産権の創出などを積極的に行っており、「本質的な成果にこだわる」「成長を楽しむ」という行動指針に示されているように、社員に対しても、職務発明規程を定め、研究開発の実施、研究成果の公表、知的財産権の出願等を推奨しております。
また、社員自身のスキルを高めることができる機会として副業を許可しており、当事業年度は、短期のものも含めて延べ7件の副業が行われました。副業に関する定量的な目標は設定しておりませんが、今後も社員のスキル獲得のための副業が可能となるような環境の整備を進めてまいります。
b 多様な人材の活躍(多様な働き方)
当社は、より良い医療の実現のため、様々な分野のプロフェッショナルが協力し、研究開発・事業化を推進しています。医師、薬剤師、看護師、弁護士などの国家資格保有者、医学、薬学、物理学などの博士号保有者といったプロフェッショナル人材がサスメドのビジネスを支えています。
また、「プロフェッショナルとして尊重する」という行動指針を定め、上記の資格や学位の有無にかかわらず、異なる経験や専門性を持つメンバーがお互いにその多様性を認め、尊重し合う企業文化の醸成に取り組んでおります。
その一環として、働き方の多様性を確保するために、リモートワークと出社のハイブリット勤務、コアタイムのないフルフレックスタイム制度等を導入しております。働き方に関する指標は以下のとおりです。
休暇取得がネガティブに働くことがないカルチャーや、社員同士が互いを尊重し、良好な関係を築くことができる環境を醸成してきていることから、全社員の年休の取得率は81.8%に向上しました。また上記指標以外で、男性社員の育児休暇取得が3件ありました。
引き続き、社員のライフステージの変化や組織体制の変更を視野に入れ、更に多様な働き方を可能とする環境を目指した制度づくりを推進します。
c 社員の健康と安全
医療分野で事業を行う企業として、まず働く社員が健康であることが重要と考えており、健康診断や健康増進イベントの参加率向上など、身近な取組から社員の健康対策を推進しています。また、現時点で導入義務はありませんが、ストレスチェックもすでに開始しており、社員のメンタル面での健康や安全のサポートを行っております。健康診断受診率、ストレスチェック受検率はともに前年同様100%です。
少数精鋭の組織体制のため社員数は多くありませんが、採用による体制強化を継続的に進めており、社員1人あたりの平均所定外労働時間は9時間28分/月と、効率良く安定した勤務環境の整備に留意しております。
以上の重点項目への取り組みの結果、今期実施したエンゲージメントサーベイでは、エンゲージメント率を示すeNPS®※(employee Net Promoter Score®)は-8.82でした。定着率は80%程度を目標とする中、前回の79.2%から、83.3%に向上しました。
さらなる人員の拡充を見据えて、新入社員の受け入れ体制の整備にも取り組んでまいりました。特に、オンボーディングに力を入れ、社内業務を知るための各リーダーによる部署間キャッチアップ勉強会の開催、部署を跨いだ交流会など、定期的に全社でフォローアップするプログラムを導入しました。また、新入社員1名に対し1名以上のメンターをアサインし、試用期間中の目標設定とフィードバックを行うことで、コミュニケーションの機会が増加しています。このような配属先と新入社員の相互理解のための取り組みは、定着率の向上につながった理由の一つと考えております。
また、社員の貢献に報いるための制度として、評価制度に準じたストック・オプション制度を設けています。ミッションの実現および、中長期的な業績や企業価値の向上を社員一丸となって目指していきたいというメッセージを元に設計し、半期毎の評価に基づいたストック・オプションを定期的に発行しております。
今後も、優秀な人材の定着や活躍を目的とした組織運営を行ってまいります。
※NPS及びNet Promoter Scoreは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標です。
(4)コーポレート・ガバナンスに関する考え方及び取組
当社では、以下の4点を上記の戦略への取組における重点項目として、その状況を定量・定性両面の複数の指標で測定、評価しております。
a コーポレート・ガバナンス
b コンプライアンス(企業倫理・腐敗防止)
c リスクマネジメント(BCP管理・情報セキュリティ)
d 知的財産の活用及び創出環境の強化
a コーポレート・ガバナンス
当社は、実効性のあるコーポレート・ガバナンスがサステナビリティの実現に不可欠と考え、適正なコーポレート・ガバナンス体制を整備することで、経営の健全性及び透明性、効率性の確保と充実に努めております。具体的には、取締役会(毎月)、監査役会(毎月)、ガバナンス委員会(年2回以上)を定期的に開催するとともに、内部監査によりガバナンス・プロセスの評価を行っております。各会議及び内部監査の状況については、
b コンプライアンス(企業倫理・腐敗防止)
サステナビリティの実現には公正で透明性の高い事業運営と各従業員の高い倫理観を維持・強化していくことが不可欠と考えます。当社におけるコンプライアンスを徹底させるため、定期的なコンプライアンス推進委員会の開催のほか、役職員向けの情報発信・全社勉強会の実施・理解度の測定と評価といった取り組みを通じて、当社の役職員におけるコンプライアンス意識の向上に努めております。このようなコンプライアンスに対する考え方を踏まえ、当社では、重大なコンプライアンス違反0件の達成を本取り組みの指標として掲げております。
c リスクマネジメント(BCP管理・情報セキュリティ)
当社は、大規模地震、風水害、感染症の流行など将来の不確実性に対し、事業継続に向けた対策を継続的に実施する観点から、「事業継続計画(BCP)」の作成・定期的な見直しを行い、事業に関わる様々なリスクの顕在化の防止、影響の最小化を図っております。また、実効的な「事業継続計画(BCP)」とするため、全社での定期的なBCP訓練を実施しております。
また、当社の事業においては、情報の喪失、改ざん、外部への漏洩等を未然に防ぐことが不可欠であると考え、ISMS(ISO27001)認証を取得・維持し、継続的な情報セキュリティマネジメント体制の構築、定期的なリスク分析・評価及びモニタリングによるリスク低減を図っております。またISMS認証の規格に基づく研修及びテストを年に一度、全社員を対象に実施し、社員の情報セキュリティへの意識と知識の向上に取り組んでいます。このようなリスクマネジメントに対する考え方を踏まえ、当社では、年1回以上のBCP更新と社内訓練の実施及びISMS認証の維持を本取り組みの指標として掲げています。
d 知的財産の活用及び創出環境の強化
研究開発を通じて創出する知的財産は当社の競争力の源泉であり、重要な経営資産です。そのため当社では創出した知的財産を適切に保護・管理するとともに、知的財産の創出環境を強化するため、従業員が業務の中で知的財産の創出及び活用を意識できる環境作りを目指しております。このような環境作りの一環として、当社では、知的財産に関する従業員教育を継続的に実施しております。
さらに、当社では、学術研究機関・製薬企業とも連携を強化の上、当社が培ってきたノウハウを有効活用し、継続的な研究開発に取り組むことで、知的財産の創出環境の強化と当社が保有する知的財産の活用を推進しております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきまして、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の開始から4年以上が経過し、この間のワクチン接種の普及、治療薬の開発及び上市、社会全体の感染状況等から、当該感染症が当社の事業に与える影響・リスクは重要ではないと判断し、前事業年度の有価証券報告書に記載していた「(3) 業績・財務及び資本政策等に関するリスク ⑥ 新型コロナウイルス感染拡大による影響について」を削除しています。
また、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は治療用アプリ及びプラットフォームシステムの開発を事業領域としており、特に治療用アプリの開発には医薬品と同じく相当程度の時間と投資が必要となります。治療用アプリの開発では臨床試験の結果や、規制当局からの要望・指導、関連する法令の変更・改訂等によって計画に不確実性が生じ、開発方針の変更、開発の延期もしくは中止などを招くことによって当社の長期的な財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。個々の治療用アプリの開発リスクの低減には限界があるため、学術研究機関との連携強化、治療用アプリ開発プラットフォームの活用によって、効率的なシーズ探索を行い、継続的に開発パイプラインの充実を図る方針としております。
通常、医療機器は本来期待する効果と共に、期待されない副作用が生じる可能性があります。治療用アプリに関しては、一般の医薬品や医療機器と同様にその安全性に関して臨床試験の中で十分に検討され、また、侵襲性が低く副作用が発生した場合の深刻度も相対的に高くはありませんが、上市後に、より多く使用される段階で予期できない副作用が発現する可能性は否定できません。
当社は、上記の副作用発生に起因する補償又は賠償に対応するために、想定しうる範囲で治験保険や製造物責任保険への加入を予定しておりますが、補償範囲外の賠償責任を問われる可能性があります。さらに、重篤な副作用や死亡例の発生は、製品及び企業イメージを大きく損ね、製品の回収、製造販売の中止、薬害訴訟の提起、製造物責任賠償等と併せて、当社の長期的な財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社が属する医療機器等の業界は研究、開発、製造及び販売のそれぞれの事業活動において、医薬品医療機器等法、薬事行政指導、医療保険制度並びにその他関係法令等により、様々な規制を受けています。当社が開発している治療用アプリは医療機器に該当し、厚生労働大臣による医療機器製造業あるいは医療機器製造販売業の登録が必要となります。この登録は5年ごとの更新が必要となるため、更新が認められない場合には、治療用アプリの開発を継続できなくなる可能性があります。当社では、人員体制の拡充強化、適正な業務フローの実施を継続的に行い、登録更新に必要な要件を満たしていく方針としております。
また、当社が開発した治療用アプリやシステムの使用が規制当局によって承認されない場合、それらの上市や他社へのサービス提供が困難になる可能性があります。さらに、承認を取得できた場合であっても健康保険の対象として保険収載されない、もしくは期待通りの保険点数が付与されない場合、当社の財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社は、これまでに実施した臨床試験等から、不眠障害治療用アプリについては有望な有効性および安全性データが得られていると判断しており、2023年2月にはそれらデータに基づいて製造販売のための承認・許可を取得しております。本書提出日現在、令和6年度診療報酬改定における新しい保険医療材料制度に則って保険収載の手続きを進めるべく、2024年8月に製造販売承認事項一部変更承認を申請しております。
当社の事業計画については、承認後の保険収載を前提として作成しておりますが、上市に至る過程において様々な薬事規制に従う必要があり、仕様の変更や臨床試験の再実施など、事業計画のスケジュールに変更を及ぼす事象が発生した場合には、当社の長期的な財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社は、本書提出日現在において常勤取締役4名、非常勤取締役3名及び従業員39名の小規模組織であり、現在の内部管理体制はこのような組織規模に応じたものとなっていますが、今後、業容拡大に応じた継続的な管理部門の体制強化により内部管理体制の拡充を図る方針であります。
また、当社の事業活動は、現在の経営陣、事業を推進する各部門の責任者及び少数の研究開発人員に強く依存するところがあります。そのため、常に優秀な人材の確保と育成に努めていますが、人材確保及び育成が順調に進まない場合、もしくは人材の流出が生じた場合には、当社の中期的な事業活動に支障が生じ、財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社での人的資本に関する考え方及び取組は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本に関する考え方及び取組」をご参照ください。
当社の創業者であり代表取締役社長である上野太郎は、当社の経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の推進において、当社の最高責任者として影響力を有しております。このため当社は上野に過度に依存しない体制を構築すべく、複数の取締役による業務管掌領域の分担をはじめとした経営組織の強化を図っておりますが、上野が何らかの理由により当社の業務を継続することが困難となった場合には、当社の短期的な事業戦略に大きな影響を及ぼす可能性があります。
治療用アプリやそれに類似する医療機器の開発に携わる企業は、我が国ではまだ少ないものの、海外では既に上場している企業もあり、日本の製薬企業が海外の治療用アプリを日本に導入して臨床試験を開始するなど、国内での競争環境は厳しくなりつつあります。当社が開発を進めているパイプラインを対象とした、競合企業との研究・開発、臨床試験、販売等の事業活動での競争結果により、当社の治療用アプリの上市が計画通りに進行しない場合、当社の中期的な財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社では、知的財産権の獲得を中心とした参入障壁の構築により、競争優位性を維持していく方針としております。
当社は、本書提出日現在、提起されている訴訟はありませんが、将来、何らかの事由の発生によって訴訟等による請求を受ける可能性を完全には回避できません。こうした事態が生じた場合、当社の長期的な財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社では、研究開発をはじめとする事業展開において様々な知的財産権を利用しており、これらは当社所有の権利であるか、あるいは適法に使用許諾を受けた権利であるものと認識しております。
一方で、当社が現在出願している特許が全て成立する保証はなく、さらに、特許が成立した場合でも、当社の研究開発を超える他社の優れた研究開発により、当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在しています。当社の特許権の権利範囲に含まれない優れた技術が開発された場合には、当社の長期的な財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社では、保有している知的財産の有効活用並びに新たな知的財産権の構築のために、一定規模の研究開発投資を安定的、継続的に実施していく方針としております。
また、当社では他社の特許権の侵害を未然に防止するため、当社として必要と考える特許の調査を実施しており、これまでに、当社の開発パイプラインに関する特許権等の知的財産権について第三者との間で訴訟が発生した事実はありません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって知的財産権侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、当社の長期的な財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社はシステム障害、セキュリティ侵害等を未然に防止するためにシステムの多重化をはじめとして様々な手段を講じておりますが、ウイルス、権限のないアクセス、自然災害、通信エラーあるいは電気障害などが引き起こす事故が発生する可能性を否定することはできません。システム障害、セキュリティ侵害等が発生した場合、当社が保有する臨床試験における重要な情報等が喪失又は流出する可能性があります。データの喪失あるいは機密情報の流出を招いた場合、データ復旧のために金銭的・時間的に多大な負担を余儀なくされ、特定の開発品の開発スケジュールが遅延することはもとより、損害賠償請求や当社の社会的信用の失墜、取引先企業との提携関係の解消など、当社の中期的な財務状況や経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当社は、デジタル機器やIoT技術を治療に取り入れた治療用アプリの研究開発を主軸とするベンチャー企業であります。治療用アプリの研究開発には多額の初期投資を要し、その投資資金回収も他産業と比較して相対的に長期に及ぶため、ベンチャー企業が当該事業に取り組む場合は、一般的に期間損益のマイナスが先行する傾向にあります。当社も第2期(2017年6月期)から当事業年度(2024年6月期)については当期純損失を計上しております。
当社は、治療用アプリのシーズ獲得とパイプライン開発を推し進めることにより、将来の利益拡大を目指していますが、将来において計画通りに当期純利益を計上できない可能性があり、その場合には、繰越利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れる可能性があります。今後は、保有する開発パイプラインの他社への導出やマイルストン収入の獲得など、より早期に収益計上を可能とする方策についても検討していく方針であります。
当社は、株主への利益還元を重要な経営課題と認識しており、将来的には経営成績及び財政状態を勘案しつつ剰余金の分配を検討する所存でありますが、多額の先行投資を行う研究開発活動の継続的かつ計画的な実施に備えた資金の確保を優先するため、当面は配当等による株主への還元は行わない方針としております。
また「① マイナスの繰越利益剰余金の計上について」に記載したとおり、繰越利益剰余金がプラスとなる時期が著しく遅れた場合、剰余金の分配についても遅れる可能性があります。
当社は、研究開発型企業として多額かつ長期にわたる研究開発費用の負担が続くため、継続的に営業損失を計上しており、現状では安定的な収益源を十分には有しておりません。
このため、安定的な収益源を確保するまでの期間においては、必要に応じて適切な時期に資金調達等を実施し、財務基盤の強化を図る方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合は、当社事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。今後は、他社との共同研究開発体制の構築、保有する開発パイプラインの他社への導出、マイルストン収入の獲得など、多様な資金調達手段を確保していく方針であります。
当社は医療機器の研究開発型企業であり、将来の研究開発活動の拡大に伴い、増資を中心とした資金調達を機動的に実施していく可能性があります。その場合には、当社の発行済株式数が増加することにより、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
当社は、当社取締役、監査役、従業員及び社外協力者の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を採用し、会社法第236条、第238条及び第239条の規定に基づき、取締役会の承認により、当社取締役、監査役、従業員及び社外協力者に対して新株予約権の発行と付与を行っております。今後も優秀な人材の確保のため、同様のインセンティブ・プランを継続する可能性があります。本書提出日現在において、これら新株予約権による潜在株式数は686,500株であり、発行済株式総数16,759,300株の4.1%に相当します。
また当社の取締役に対して、中長期的な企業価値の向上に対するインセンティブとして譲渡制限付株式を付与する制度を導入しており、今後も当該制度による譲渡制限付株式を付与する可能性があります。従って、今後新株予約権が行使された場合や譲渡制限付株式が発行された場合には、当社の1株当たりの株式価値は希薄化する可能性があります。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は以下のとおりであります。
当事業年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな持ち直しの動きがみられた一方、不安定な海外情勢の長期化を背景とする物価上昇や海外景気の下振れリスクなどにより、依然として先行きの不透明な状況が続いております。
国内の医療用医薬品市場においては、ドラッグ・ラグや後発医薬品の供給不足で医薬品供給の土台が揺らぐ中、 薬価制度の抜本的見直しも議論されています。また、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスの観点からは医薬品の開発に要する膨大な時間とコストが課題とされており、最先端のICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)をはじめとしたデジタル技術の活用によって、新薬の研究や開発に必要となる期間やコストを圧縮することが期待されています。
こうした中、当社は「持続可能な医療(Sustainable Medicine)の実現」というビジョンを掲げ、自社構築のデジタル医療プラットフォームを活用した治療用アプリ開発を行う「DTx(デジタル治療:Digital Therapeutics)プロダクト事業」、並びに汎用臨床試験システム、機械学習自動分析システムの提供及びこれらシステムを活用したDTx開発支援から構成される「DTxプラットフォーム事業」を展開し、ブロックチェーン技術やAI(人工知能)技術の応用で業界に新たな価値を生み出し社会課題を解決することを目指して事業を推進しています。
DTxプロダクト事業では、医薬品に依存しない不眠障害治療の選択肢として欧米で推奨されている認知行動療法を実施する不眠障害治療用アプリを開発しております。本アプリについては、2023年2月15日付で厚生労働省より医療機器製造販売承認を取得し、保険収載の手続きを進めておりましたが、令和6年度診療報酬改定において保険医療材料制度の見直しが行われたことから、2024年8月に製造販売承認事項一部変更承認を申請し、保険適用と製品の上市に向けた準備を進めております。今後は、塩野義製薬株式会社との間で締結した本アプリに関する販売提携契約に基づき、開発進展などに応じたマイルストン収入として総額最大41億円の受領を予定するとともに、製品上市後はその販売額に応じたロイヤリティの受領を予定しております。また、杏林製薬株式会社と共同開発を行っている耳鳴治療用アプリにおいては、特定臨床研究を開始し、最初の被験者により本アプリの使用が開始されたことによるマイルストン1億円を受領いたしました。今後は、共同研究開発及び販売に関する契約に基づき、開発進展などに応じたマイルストン収入として総額最大5億円の受領を予定するとともに、製品上市後はその販売額に応じたロイヤリティを受領する予定です。さらに、2023年9月にあすか製薬株式会社との間で産婦人科領域における治療用アプリの共同研究開発及び製品上市後の販売に関する契約を締結し、契約一時金として2億円を受領しました。今後は開発段階などに応じたマイルストン収入として総額最大25億円の受領を予定するとともに、製品上市後はその販売額に応じたロイヤリティを受領する予定です。その他のパイプラインにつきましても、進行がん患者向けのアドバンス・ケア・プランニングを支援するアプリでは、探索的試験(第Ⅱ相臨床試験に相当)を完了し、その結果が米国臨床腫瘍学会(ASCO)のオーラルセッションに採択され、2024年6月2日に発表が行われました。本アプリについては、東京慈恵会医科大学と産学連携講座を開設し、社会実装を目指していくこととしています。また、慢性腎臓病患者向けの腎臓リハビリアプリでも、探索的試験(第Ⅱ相臨床試験に相当)を完了しております。さらに、持続性知覚性姿勢誘発めまいに対して新潟大学と共同開発を行っている治療用アプリに関して日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会総会・学術講演会で発表を行い、新たにパイプラインに追加するなど、開発は順調に進捗しております。今後も長期的視点での収益の最大化のために、財務指標に先行する開発パイプラインの件数や、臨床試験の進捗を重要な経営指標と位置付けて事業運営を行ってまいります。
DTxプラットフォーム事業では、当社のブロックチェーン技術を活用した治験管理システム(SUSMED SourceDataSync®)を利用し、アキュリスファーマ株式会社において、ナルコレプシー患者を対象としたヒスタミン H3 受容体拮抗薬/逆作動薬 Pitolisant の国内第Ⅲ相臨床試験及び閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の眠気が残存する患者を対象としたヒスタミン H3 受容体拮抗薬/逆作動薬 Pitolisant の国内第Ⅲ相臨床試験が実施されております。また、杏林製薬株式会社との共同開発において開始された耳鳴治療用アプリの特定臨床研究についても、SUSMED SourceDataSync®を活用しております。さらに、国立大学法人東北大学との間ではSUSMED SourceDataSync®を活用した静脈疾患レジストリの構築に関する契約を締結しました。今後も医療分野においてブロックチェーン技術を活用することで、医療データの信頼性向上及び臨床開発コストの適正化の実現を目指してまいります。
アカデミアとの取り組みにつきましては、国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学と「視線解析技術による疾患バイオマーカーの探索」に関する取り組みを開始し、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の「産学官共同mission-oriented型創薬技術研究プロジェクト」として採択されております。今後もアンメットニーズや医療の持続可能性に寄与する研究開発活動を引き続き強化してまいります。
こうした事業活動の結果、当事業年度における業績は、事業収益342,577千円(前事業年度比35.4%減)、営業損失364,981千円(前事業年度は48,316千円の損失)、経常損失357,222千円(前事業年度は44,318千円の損失)、当期純損失357,415千円(前事業年度は50,749千円の損失)となりました。
なお、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)に採択された研究事業の精算金額確定などによる「助成金等収入」6,784千円を営業外収益に計上しております。
また、当社の全社資産について将来の回収可能性を検討した結果、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回ると判断し、減損損失2,726千円を認識しております。減損損失の金額の内訳は建物附属設備740千円、工具器具備品1,986千円となります。
セグメント別の概況は、以下のとおりです。
(DTxプロダクト事業)
当セグメントは、治療用アプリ開発で構成されております。治療用アプリ開発では、不眠障害治療用アプリにおいて、保険適用と製品の上市に向けた準備を進めております。また、杏林製薬株式会社と共同開発を行っている耳鳴治療用アプリにおいては、特定臨床研究を開始し、最初の被験者により本アプリの使用が開始されたことによるマイルストン1億円を受領いたしました。当該マイルストンについては、本契約締結時に受領し契約負債に計上しておりました契約一時金1億円と併せて収益計上しております。さらに、あすか製薬株式会社との間で産婦人科領域における治療用アプリの共同研究開発及び製品上市後の販売に関する契約を締結し、契約一時金として2億円を受領しております。販売段階にあるプロダクトはまだありません。
この結果、本事業の事業収益200,000千円(前年同期は400,000千円)、セグメント利益55,618千円(前年同期は256,989千円の利益)となりました。
(DTxプラットフォーム事業)
当セグメントは、汎用臨床試験システム及び機械学習自動分析システムの提供、並びにこれらシステムを活用したDTx開発の支援で構成されております。汎用臨床試験システムの提供に関しては、アキュリスファーマ株式会社との間で締結した、治験実施に関する契約に基づき、企業治験としては世界初となるブロックチェーン技術を活用した治験を実施しております。さらに、杏林製薬株式会社との共同開発において開始された耳鳴治療用アプリの特定臨床研究においても、SUSMED SourceDataSync®を活用しております。機械学習自動分析システムの提供及びDTx開発の支援に関する活動につきましては、継続利用に支えられ、収益は安定的に推移しております。
この結果、本事業の事業収益142,577千円(前年同期は130,654千円)、セグメント損失11,227千円(前年同期は66,118千円の利益)となりました。
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は、4,898,414千円となり、187,045千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が201,918千円減少した一方、未収消費税等が9,846千円、前払費用が4,881千円増加したこと等によるものであります。
当事業年度末における固定資産合計は、33,672千円となり、前事業年度末に比べ18,007千円増加いたしました。これは主に投資その他の資産が17,091千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は、321,399千円となり、前事業年度末に比べ96,721千円増加いたしました。これは主に契約負債が111,219千円、未払金が12,536千円増加した一方、未払消費税等が27,759千円減少したこと等によるものであります。
当事業年度末における固定負債合計は、6,390千円となり、前事業年度末に比べ740千円増加いたしました。これは、資産除去債務が740千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は4,604,297千円となり、前事業年度末に比べ266,500千円減少いたしました。これは主に当期純損失の計上に伴い利益剰余金が357,415千円減少した一方、譲渡制限付株式報酬としての新株発行、並びにストック・オプションの行使により、資本金が40,011千円、資本剰余金が39,985千円増加したほか、新株予約権が10,924千円増加したこと等によるものであります。
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は4,846,920千円(前事業年度は5,048,838千円)となりました。当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は230,762千円(前事業年度は100,591千円の収入)となりました。主な増加要因としては、契約負債の増加111,219千円、株式報酬費用24,868千円、未払金の増加12,986千円等、主な減少要因としては、税引前当期純損失356,205千円、未払消費税等の減少27,759千円等があったことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は8,528千円(前事業年度は18,189千円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出6,717千円及び有形固定資産の取得による支出2,560千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は37,372千円(前事業年度は62,362千円の収入)となりました。これは主に、新株式の発行による収入37,380千円等によるものであります。
当社は受注生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
当社は受注生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
当事業年度における販売実績は、以下のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。その作成において、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を及ぼす見積りの判断は、一定の会計基準の範囲内において、過去の実績や判断時点で入手可能な情報に基づき合理的に行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(固定資産の減損)
当社は、固定資産の減損について、事業用資産においては管理会計上の区分を基準に、本社等に関しては共用資産としてグルーピングし、減損の兆候の有無を判定しております。減損の兆候があった場合、将来キャッシュ・フローを見積り、減損の要否を判定しております。判定の結果、減損が必要と判断された資産については、帳簿価格を回収可能価格まで減損処理をしております。
(事業収益)
当事業年度の事業収益は、342,577千円(前事業年度は530,654千円)となりました。これは主に、DTxプロダクト事業において、耳鳴治療用アプリの契約締結に伴う契約一時金及び、探索的試験において当該アプリの利用が開始されたことに伴うマイルストンを収益計上したこと、並びにDTxプラットフォーム事業における汎用臨床試験システムの採用件数が増加したこと等によるものです。
(事業費用、営業損失)
当事業年度の事業原価については11,727千円(前事業年度は7,988千円)となりました。これは主に、DTxプラットフォーム事業における機械学習自動分析システムの受託分析による事業収益の増加に伴い事業原価が増加したこと等によるものです。当事業年度の研究開発費は243,352千円(前事業年度は176,311千円)となりました。これは主に、DTxプラットフォーム事業における汎用臨床試験システムの追加開発等によるものです。当事業年度の販売費及び一般管理費は、452,478千円(前事業年度は394,671千円)となりました。これは主に、事業規模の拡大による人件費の増加等によるものです。
その結果、営業損失は364,981千円(前事業年度は48,316千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当事業年度の営業外収益は、8,071千円(前事業年度は4,421千円)となりました。これは主に、助成金等収入6,784千円等によるものです。また、当事業年度の営業外費用は312千円(前事業年度は422千円)となりました。
その結果、経常損失は357,222千円(前事業年度は44,318千円)となりました。
(特別利益、特別損失、法人税等合計、当期純損失)
当事業年度の特別利益は、3,771千円(前事業年度は634千円)となりました。これは、新株予約権戻入益3,365千円、投資有価証券売却益406千円によるものです。また、当事業年度の特別損失は、2,754千円(前事業年度は5,854千円)となりました。これは主に、固定資産の減損損失2,726千円等を計上したことによるものです。当事業年度における法人税等合計は1,210千円(前事業年度は1,210千円)となりました。
その結果、当期純損失は357,415千円(前事業年度は50,749千円)となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因に関しては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
当社の最重要課題は不眠障害治療用アプリの販売を確実に実現させることです。また、治療用アプリ開発のプラットフォームを活用し複数のパイプラインを組成し治療用アプリ開発に取り組むと同時に、汎用臨床試験システム、機械学習自動分析システムの開発も継続して行っていきます。これらの研究開発での必要資金に関しては、自己資金にて充当する方針であります。加えて将来的には不眠障害治療用アプリの販売利益の再投資も行うことで、企業価値の最大化を目指してまいります。
経営者の問題意識と今後の方針に関しては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(1) 販売提携契約
(2) 共同研究開発及び販売に関する契約
当社は、治療用アプリ開発を行う研究開発型の企業として、経営資源を治療用アプリ及び医療業界向けのプラットフォームシステムの開発に集中しております。治療用アプリにおける開発のパイプラインについては「第1 企業の概況 3 事業の内容」をご参照ください。
当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は