当第3四半期累計期間において、新たな事業等のリスクの発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
文章中の将来に関する事項は、当第3四半期会計期間の末日現在において当社が判断したものであります。
当第3四半期累計期間のわが国経済は、経済活動の正常化に伴う個人消費や雇用情勢等に回復の兆しがあり、緩やかな回復基調が続いた一方、不安定な海外情勢の長期化を背景とする物価上昇や海外景気の下振れリスクなどにより、依然として先行きの不透明な状況が続いております。
国内の医療用医薬品市場においては、ドラッグ・ラグや後発医薬品の供給不足で医薬品供給の土台が揺らぐ中、 薬価制度の抜本的見直しも議論されています。また、ドラッグ・ラグやドラッグ・ロスの観点からは医薬品の開発に要する膨大な時間とコストが課題とされており、最先端のICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)をはじめとしたデジタル技術の活用によって、新薬の研究や開発に必要となる期間やコストを圧縮することが期待されています。
こうした中、当社は「ICTの活用で“持続可能な医療”を目指す」というビジョンを掲げ、自社構築のデジタル医療プラットフォームを活用した治療用アプリ開発を行う「DTx(デジタル治療:Digital Therapeutics)プロダクト事業」、並びに汎用臨床試験システム、機械学習自動分析システムの提供及びこれらシステムを活用したDTx開発支援から構成される「DTxプラットフォーム事業」を展開し、ブロックチェーン技術やAI(人工知能)技術の応用で業界に新たな価値を生み出し社会課題を解決することを目指して事業を推進しています。
DTxプロダクト事業では、医薬品に依存しない不眠障害治療の選択肢として欧米で推奨されている認知行動療法を実施する不眠障害治療用アプリを開発しております。本アプリについては、2023年2月15日付で厚生労働省より医療機器製造販売承認を取得し、現在は保険適用と製品の上市に向けた準備を進めております。今後は、塩野義製薬株式会社との間で締結した本アプリに関する販売提携契約に基づき、開発進展などに応じたマイルストン収入として総額最大41億円の受領を予定するとともに、製品上市後はその販売額に応じたロイヤリティの受領を予定しております。また、杏林製薬株式会社と共同開発を行っている耳鳴治療用アプリにおいては、特定臨床研究を開始し、最初の被験者により本アプリの使用が開始されたことによるマイルストン1億円を受領いたしました。今後は、共同研究開発及び販売に関する契約に基づき、開発進展などに応じたマイルストン収入として総額最大5億円の受領を予定するとともに、製品上市後はその販売額に応じたロイヤリティを受領する予定です。さらに、2023年9月にあすか製薬株式会社との間で産婦人科領域における治療用アプリの共同研究開発及び製品上市後の販売に関する契約を締結し、契約一時金として2億円を受領しました。今後は開発段階などに応じたマイルストン収入として総額最大25億円の受領を予定するとともに、製品上市後はその販売額に応じたロイヤリティを受領する予定です。その他のパイプラインにつきましても、慢性腎臓病患者向けの腎臓リハビリアプリ、進行がん患者向けのアドバンス・ケア・プランニングを支援するアプリでは、探索的試験(第Ⅱ相臨床試験に相当)を完了するなど、開発は順調に進捗しております。今後も長期的視点での収益の最大化のために、財務指標に先行する開発パイプラインの件数や、臨床試験の進捗を重要な経営指標と位置付けて事業運営を行ってまいります。
DTxプラットフォーム事業では、当社のブロックチェーン技術を活用した治験管理システム(SUSMED SourceDataSync®)を利用し、アキュリスファーマ株式会社において、ナルコレプシー患者を対象としたヒスタミン H3 受容体拮抗薬/逆作動薬 Pitolisant の国内第Ⅲ相臨床試験及び閉塞性睡眠時無呼吸症候群に伴う日中の過度の眠気が残存する患者を対象としたヒスタミン H3 受容体拮抗薬/逆作動薬 Pitolisant の国内第Ⅲ相臨床試験が実施されております。また、杏林製薬株式会社との共同開発において開始された耳鳴治療用アプリの特定臨床研究についても、SUSMED SourceDataSync®を活用しております。今後もブロックチェーン技術を用いた治験の実施により、新薬開発コストの適正化と治験データの信頼性向上を同時に実現することを目指してまいります。
アカデミア等との共同研究につきましては、当社が開発する治療用アプリやプラットフォームシステムの着実な普及のために重要な取り組みであると考えております。東北大学との間ではSUSMED SourceDataSync®を活用した静脈疾患レジストリの構築に関する基本合意書を締結しました。今後もこれまで社内で蓄積してきた知見をベースに社外の知識も取り込んで新しい価値を創り出すべく、多くの大学や研究機関との共同研究を積極的に推進してまいります。
これらの結果、当第3四半期累計期間における業績は、事業収益307,903千円(前年同四半期は497,809千円)、営業損失227,157千円(前年同四半期は89,297千円の利益)、経常損失219,377千円(前年同四半期は93,418千円の利益)、四半期純損失218,515千円(前年同四半期は89,192千円の利益)となりました。
なお、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)に採択された共同研究の分担金の確定などによる「助成金等収入」6,784千円を営業外収益に計上しております。
また、当社は営業キャッシュ・フローが継続してマイナスとなり、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回ることが見込まれるため、全社資産について減損損失を認識しております。減損損失の金額の内訳は工具器具備品で1,848千円となります。
報告セグメント別の実績は、以下のとおりです。
(DTxプロダクト事業)
当セグメントは、治療用アプリ開発で構成されております。治療用アプリ開発では、不眠障害治療用アプリにおいて、保険適用と製品の上市に向けた準備を進めております。また、杏林製薬株式会社と共同開発を行っている耳鳴治療用アプリにおいては、特定臨床研究を開始し、最初の被験者により本アプリの使用が開始されたことによるマイルストン1億円を受領いたしました。当該マイルストンについては、本契約締結時に受領し契約負債に計上しておりました契約一時金1億円と併せて収益計上しております。さらに、あすか製薬株式会社との間で産婦人科領域における治療用アプリの共同研究開発及び製品上市後の販売に関する契約を締結し、契約一時金として2億円を受領しております。その他のパイプラインにつきまして、慢性腎臓病患者向けの腎臓リハビリアプリ、進行がん患者向けのアドバンス・ケア・プランニングを支援するアプリでは、探索的試験(第Ⅱ相臨床試験に相当)を完了しております。加えて、複数の医療機関と共同研究を行い、次のパイプラインの獲得を目指しております。販売段階にあるプロダクトはまだありません。
この結果、本報告セグメントの当第3四半期累計期間の事業収益は200,000千円(前年同四半期は400,000千円)、セグメント利益は88,458千円(前年同四半期は308,028千円の利益)となりました。
(DTxプラットフォーム事業)
当セグメントは、汎用臨床試験システム及び機械学習自動分析システムの提供、並びにこれらシステムを活用したDTx開発の支援で構成されております。汎用臨床試験システムの提供に関しては、アキュリスファーマ株式会社との間で締結した、治験実施に関する契約に基づき、企業治験としては世界初となるブロックチェーン技術を活用した治験を実施しております。さらに、杏林製薬株式会社との共同開発において開始された耳鳴治療用アプリの特定臨床研究においても、SUSMED SourceDataSync®を活用しております。機械学習自動分析システムの提供及びDTx開発の支援に関する活動につきましては、継続利用に支えられ、収益は安定的に推移しております。
この結果、本報告セグメントの当第3四半期累計期間の事業収益は107,903千円(前年同四半期は97,809千円)、セグメント損失は7,395千円(前年同四半期は56,784千円の利益)となりました。
(資産)
当第3四半期会計期間末における流動資産合計は、5,012,132千円となり、前事業年度末に比べ73,327千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が95,217千円減少した一方、売掛金及び契約資産が9,077千円、前払費用が11,288千円増加したこと等によるものであります。
当第3四半期会計期間末における固定資産合計は、33,658千円となり、前事業年度末に比べ17,993千円増加いたしました。これは主に投資その他の資産が20,589千円増加した一方、無形固定資産が2,595千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
当第3四半期会計期間末における流動負債合計は、314,024千円となり、前事業年度末に比べ89,347千円増加いたしました。これは主に契約負債が101,964千円、未払金が11,522千円及び未払費用が3,086千円増加した一方、未払消費税等が27,759千円減少したこと等によるものであります。
当第3四半期会計期間末における固定負債合計は、前事業年度末より増減はなく5,650千円となりました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は4,726,116千円となり、前事業年度末に比べ144,681千円減少いたしました。これは主に譲渡制限付株式報酬としての新株発行、並びにストック・オプションの行使により、資本金が34,716千円、資本剰余金が34,690千円増加したほか、新株予約権が4,434千円増加した一方、四半期純損失の計上に伴い利益剰余金が218,515千円減少したこと等によるものであります。
当第3四半期累計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
当第3四半期累計期間において発生した当社の優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更及び新たに生じた課題はありません。
当第3四半期累計期間における当社の研究開発費の総額は、178,803千円であります。なお、当第3四半期累計期間において、当社の研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当第3四半期会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。