第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループのミッション(使命)は「医療という希望を創る。」です。このミッションに基づき、当社グループは、患者に向けては「患者視点の医療をひとりでも多くの方へ提供できる環境を創る。」、医療機関に向けては「地域に求められ、働きがいのある職場環境を創る。」、そして社会に向けては「医療課題の解決によって健全で持続可能な社会を創る。」ことを目指して様々なサービスを展開しています。

 社名のシーユーシー(CUC)は、「変わるまで、変える(Change Until Change)」の頭文字から生まれました。変化を恐れず医療課題に挑戦する私たちの存在意義を表現しており、新しい挑戦に向かい続けるという強い意志を込めています。

 

(2)経営戦略

 医療機関セグメントでは、国内においては病院、訪問診療クリニック、透析クリニック、外来クリニック等を運営する医療機関向けに経営支援サービス(経営戦略策定・経営管理支援、マーケティング支援、IT・経理・総務等支援、人事・採用機能支援等に加えて、M&A・PMI支援、新規クリニック開設支援、病床転換支援等のプロジェクト受注)を拡大するとともに、支援先医療機関数の増加を目指しています。更に、高齢化先進国である日本の医療機関に対する経営支援サービスのノウハウを海外にも展開すべく、米国、ベトナム及びインドネシアでの事業の更なる拡大を目指しています。

 ホスピスセグメントでは、ホスピス型住宅の入居者に提供するサービスの質を最重要視した上で、既存のホスピス型住宅の入居者増加に加え、看取り機能が脆弱な地域を中心にホスピス型住宅の新規展開を加速し、より多くの医療依存度の高い(がん末期、神経難病等を患う)入居者向けに訪問看護及び訪問介護を提供していきます。

 居宅訪問看護セグメントでは、利用者に提供するサービスの質を最重要視した上で、既存の訪問看護ステーションの利用者拡大に加えて、新規エリアへの訪問看護ステーションの新規開設を行い、居宅の利用者向けに訪問看護を提供していきます。

 メディカルケアレジデンスセグメントでは、入居者に提供するサービスの質を最重要視した上で、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の入居者及びリハビリ強化型デイサービスの利用者増加に加え、既存施設の稼働率改善、介護需要が高い地域への新規開設を行いながら、より医療依存度、要介護度の高い入居者(要介護度3-4程度の方)の受け入れを推進していきます。

 国内においては今後も医療機関セグメントの顧客である支援先医療機関と、ホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業が連携することにより、各支援先医療機関の病院やクリニック等並びにホスピス型住宅、訪問看護ステーション及びメディカルケアレジデンスが位置する地域の地域包括ケアシステムが効率的に運営されるプラットフォームが構築されるよう事業を行っていきます。また、海外においては既存の足病及び下肢静脈疾患クリニックを主軸にロールアップ型M&Aによる事業基盤の拡大及び競争力向上に注力していきます。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、事業規模と収益性を測る指標として、売上収益、営業利益及びEBITDA(注)を重視しています。これらの指標の着実な拡大を維持しながらも、中長期的な企業価値向上のため、新規事業の展開を継続することを企図しています。

 医療機関セグメントでは当社が国内において経営支援を提供する病院及びクリニック等の数である支援先主要拠点数を、ホスピスセグメントではホスピス型住宅の定員数(訪問看護等サービスを提供する施設の定員数)及び稼働率(毎期の提供可能定員数に対するのべ入居者数の割合)を、居宅訪問看護セグメントでは利用者に提供したのべ総ケア時間(看護師及びセラピストが利用者にサービスを提供した時間の合計)を、メディカルケアレジデンスセグメントではメディカルケアレジデンスの定員数(定期巡回・随時対応型訪問介護看護等サービスを提供する施設の定員数)及び稼働率(毎期の提供可能定員数に対するのべ入居者数の割合)を、それぞれ主要な経営指標として認識しています。

 また、財務の安定性を判断する指標として、EBITDA有利子負債倍率及び親会社所有者帰属持分比率等を用い、安定的かつ持続的に企業価値を拡大していくことを目指しています。

(注)EBITDAの計算式は次のとおりです。

   EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費±その他の収益・費用

 

(4)経営環境

 当社グループが主にサービスを提供する日本では、全人口に占める65歳以上人口の割合が2021年には約29%のところ2040年には約35%となり(注1)、急速な高齢化による医療費の増大が見込まれ、医療費は2021年の約45兆円から2040年には約78兆円まで拡大すると予想されています(注2)。そのような環境下で、超高齢社会に備えた医療機関の機能転換(急性期医療から回復期医療への転換)が求められ、厚生労働省も病院医療よりも医療費を大幅に抑えられる在宅医療の拡大を推進しており、訪問診療利用者数は2011年の44.9万人から2019年には79.5万人に増加しています(注3)。一方で、日本の労働人口は2020年の約69.0百万人から2040年には5%以上減少して約65.4百万人となると推計されており(注4)、需要の高まる医療サービス提供のための医療従事者の確保が危ぶまれています。

 また、2022年時点で日本における病院の68.7%が60歳以上の経営者により運営されており(注5)、2017年時点で後継者不在の病院が68.4%(注6)であるため、M&A等により後継者不在の医療機関を、安定的に運営できる医療機関に承継する流れが進むことが予想されます。

 当社グループは米国において足病及び下肢静脈疾患クリニックを運営しています。米国における足病科の市場規模は約70億米ドルであり(注7)、今後も高齢化や糖尿病患者の増加等により堅調なニーズの拡大が見込まれています(65歳以上の人口は2020年の56.1百万人から2030年の73.1百万人へと年平均2.7%で増加すると推計されており(注8)、糖尿病患者は2020年の43.3百万人から2030年の54.9百万人へと年平均2.4%で増加すると推計されています(注9))。

 また、ベトナム及びインドネシアでは、2021年時点で国民一人当たり医療費がそれぞれ173ドル、161ドル(注10)であり、双方とも2000年と比較すると8倍以上となっており、今後もより多くの人が良質な医療にアクセスできる環境を整備することが求められるものと当社は考えています。

 我が国における訪問看護利用者数は2011年時点の38.5万人から2019年の83.5万人へと、年平均で約10.1%増加しており(注11)、また、我が国におけるがん・難病患者数は569万人とされています(注12)。一方で、居宅訪問看護業界においては24時間365日体制で安定的な運営が可能な大規模事業所のニーズが高まっている中で、従業員5人未満の小規模訪問看護ステーションが57%を占め(注13)、十分なサービス供給がされている状況ではないと考えています。

 

(注)1.「日本の将来推計人口」(国立社会保障・人口問題研究所)。

2.「国民医療費の概況」(厚生労働省)、「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」(内閣府、財務省、厚生労働省)。

3.「在宅医療の現状について」(厚生労働省、2022年)。在宅患者訪問診療料を月1回以上算定されていた患者の数。

4.「2023年度版労働力需給の推計」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構、2024年)。

5.「令和4年医師、歯科医師、薬剤師統計の概況」(厚生労働省、2024年)。

6.「医業承継の現状と課題」(日本医師会総合政策研究機構、2019年)。

7.「Podiatrists in the US」(IBISWorld、2023年)

8.「2017 National Population Projections Tables」(US Census Bureau、2020年)

9.「Diabetes 2030: Insights from Yesterday, Today, and Future Trends 」(Rowley et al, Population Health Management. 2016年)

10.Global Health Expenditure Database (World Health Organization.)。

11.「在宅医療の現状について」(厚生労働省 2022年)。医療保険と介護保険の合計数。

12.がん患者数466万人「令和2年患者調査(確定数)の概況」(厚生労働省)と指定難病患者数103万人「令和2年度衛生行政報告例」(厚生労働省)の合計。

13.「第220回社会保障審議会介護給付費分科会 資料3」(厚生労働省)。

 

(5)当社グループの強み

 当社グループは2014年の会社設立以来、高い成長性を維持しながら規模を拡大してきました。訪問診療クリニックの経営支援を起点として、病院や透析クリニック、外来クリニック等を運営する医療機関の経営支援、ホスピス事業、居宅訪問看護事業、メディカルケアレジデンス事業、ベトナム・インドネシアにおける医療機関への経営支援、米国における足病及び下肢静脈疾患クリニックの運営等幅広い領域において事業を展開しています。

 

 当社グループの強みは以下のとおりです。

 

① 安定成長を続ける医療機関セグメントの国内事業及び事業ノウハウを活かした海外事業展開

 当社は、経営人材が支援先医療機関に常駐することで、意思決定や戦略策定のサポートを現場の視点から行います。これにより顧客との継続的な関係を構築し高いリテンション率を維持しています。また、これまで培った医療機関の運営効率化ノウハウを生かし、支援先医療機関の安定的な事業運営に寄与しています。このようにして、規模拡大及び安定運営を実現した既存の支援先医療機関は、更なる規模の拡大のためにM&Aや新規クリニックの開設等を視野に入れ、当社が追加の経営支援を行う機会(新規の支援先医療機関の獲得)を得ることが可能になるという好循環が生まれています。

 また、国内の医療機関支援により蓄積されたノウハウを、海外におけるクリニック経営等に活用することで更なる成長を目指しています。

 

② 巨大な市場を背景に成長するホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業

 我が国における訪問看護利用者数は2011年時点の38.5万人から2019年の83.5万人に増加し、年平均で約10.1%成長しています(注1)。また、2020年度末の我が国におけるがん・難病患者数は569万人とされており(注2)、日本における急速な高齢化を背景に在宅医療市場は今後も継続的に拡大すると当社は考えています。

 当社のホスピス事業でサービスを提供する定員数、居宅訪問看護事業の利用者数及びメディカルケアレジデンス事業でサービスを提供する定員数はいずれも大規模であり、高い成長が期待される市場において優位な地位を確立しています。

 ホスピスセグメントにおいて、当社が訪問看護サービスを提供するホスピス型住宅の定員数は2025年3月末時点で2,234名であり、2025年3月期における既存のホスピス型住宅の年間平均稼働率は83.2%です(注3)。ホスピスセグメントでは、2025年3月末時点で看護師724名、介護士656名を擁し、訪問看護及び訪問介護サービスを提供しています。

 居宅訪問看護セグメントの訪問看護ステーション数は、2025年3月末で89拠点であり、今後も積極的な新規拠点展開を予定しています。なお、居宅訪問看護セグメントでは2025年3月末時点で看護師727名、セラピスト525名を擁しており(注4)、2025年3月に訪問実績がある居宅訪問看護事業の利用者数は14,729名、のべ総ケア時間数は2025年3月期において年間1,220千時間(注5)となっています。

 メディカルケアレジデンスセグメントにおいて、サービスを提供する施設の定員数は2025年3月末時点で2,125名であり、2025年3月期における既存のメディカルケアレジデンスの年間平均稼働率は77.8%です(注6)。メディカルケアレジデンスセグメントでは、2025年3月末時点で看護師65名、介護士454名を擁し、定期巡回・随時対応型訪問介護看護等サービスを提供しています。

 今後も集客効率化、採用力強化、拠点の相互補完等のシナジーを発揮し、高水準の安定稼働を確保するというドミナント戦略のもと、居宅訪問看護事業における訪問看護ステーションは半径2~5km圏内、ホスピス事業におけるホスピス型住宅は半径10~15km圏内に拠点を出店することにより、展開を加速していきます。

(注)1.「在宅医療の現状について」(厚生労働省 2022年)。医療保険と介護保険の合計数。

2.がん患者数466万人「令和2年患者調査(確定数)の概況」(厚生労働省)と指定難病患者数103万人「令和2年度衛生行政報告例」(厚生労働省)の合計。

3.2025年3月期における既存ホスピス(2025年3月末時点で開設以降12ヶ月超経過又はM&Aによる新規取得)ののべ提供可能定員数に対する、のべ入居者の割合。

4.在宅治験に従事する看護師は除く。セラピストは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の総称。

5.看護師及びセラピストが利用者にサービスを提供した時間の合計。

6.2025年3月期における既存メディカルケアレジデンス(2025年3月末時点で開設以降12ヶ月超経過又はM&Aによる新規取得)ののべ提供可能定員数に対する、のべ入居者の割合。

 

③ 包括的なソリューションを提供する独自のアプローチ

 当社グループは医療機関セグメント、ホスピスセグメント、居宅訪問看護セグメント及びメディカルケアレジデンスセグメントに亘って医療・介護領域の様々な事業を展開しています。

 特に支援先医療機関が運営する病院や訪問診療クリニック、透析クリニック及び外来クリニック等と当社グループが運営するホスピス型住宅や訪問看護ステーションとの間のネットワークを強化することにより、医療機関支援からホスピス、居宅訪問看護まで垂直統合されたプラットフォームを構築し、患者、医療従事者及び社会に対して大きな価値提供ができると考えています。

 具体的には医療機関セグメントの国内事業、ホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業において高度急性期病院に対する接点を持つことにより、KOL(Key Opinion Leader:医療業界において多方面に大きな影響力を持つ人物の意)である医師や、それらの病院に入院する患者へのアクセスを持つことが可能になります。また、当社グループから支援先医療機関に患者を紹介するケースや、逆に当社グループが紹介されるケースがあります。

 当社グループ内では、ホスピス事業と居宅訪問看護事業の間での異動及び人材交流もあり、従業員に多様なキャリア機会を提供することができています。

 支援先医療機関の運営する拠点が多く存在する地域では、当社グループのホスピス型住宅や訪問看護ステーションを、これら支援先医療機関が運営する拠点の周辺に開設することにより、それらを密に連携させる取り組みも始めています。

 そして、医療機関事業により創出したキャッシュ・フローをホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業の設備投資に充当することが可能です。

 

④ 独自の雇用モデルに基づく強力な採用力

 当社グループが事業を展開する医療・介護業界において、事業の根幹となるのは優秀な人材の確保と育成であると考えています。医療機関事業に携わる従業員、ホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業に携わる看護師、介護士、セラピスト等の専門職の採用力やリテンション力を高めるために、差別化されたプラットフォームを構築することに成功しています。

 具体的には当社グループの「医療という希望を創る。」というミッションを実現するために従業員が達成感ややりがいを実感することができるよう、公平かつ協力的な社風を醸成するように努めています。また、継続的かつ充実した教育制度や柔軟な労働体系を設けることにより、スキルを向上させつつ長期間勤務できるような制度を整備しています。

 医療機関セグメントにおいて上述のような採用や企業風土醸成のノウハウを活用することにより、当連結会計年度における支援先医療機関に対する医師及びコメディカル(注1)採用支援業務の結果として、当連結会計年度に支援先医療機関の医師270名、コメディカル1,130名の採用に貢献しています。

 ホスピスセグメントでは当連結会計年度において660名の看護師・介護士の採用(注2)を行いました。新規施設の離職率が増加した結果、離職率は前連結会計年度比2.4ポイント増加の22.0%となりました。

 居宅訪問看護セグメントでは当連結会計年度において297名の看護師・セラピスト(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の採用(注2)を行いました。高稼働拠点の離職率が増加した結果、離職率は前連結会計年度比2.0ポイント増加の15.5%となりました。

(注)1.医師を除く医療従事者(看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師、管理栄養士等)。

2.非正規社員を含む。

 

(6)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 上記(2)に記載の経営戦略を実行していく上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。

 

① 人材の確保、育成

 当社グループが事業の規模、範囲を安定的かつ持続的に拡大するためには、それに見合った人材を確保、育成する必要があります。医療機関事業の従業員、ホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業の看護師、介護士、セラピスト等の専門職、管理部門の経営企画・経営管理・経理・人事・IT等の要員の確保と育成が必要です。

 採用力強化については、採用担当者の増強や、リファーラル制度の設置、インターン制度やイベント開催等、新規卒業者への各種施策を実施しています。リテンション率向上のために、当社グループの経営理念と接続した研修・育成制度、評価・表彰制度等、各種制度により従業員満足度の向上に努めています。

 

② 従業員の専門性向上

 当社の医療機関セグメントでは専門的な経営支援サービスを提供することにより支援先医療機関の規模拡大及び安定運営を実現しています。質の高いサービスを提供するためには、当社従業員の専門性向上が必要不可欠です。優秀な人材を数多く確保するために、医療業界での経験の有無を問わずに能力の高い人材を採用した上で、専門性向上のための教育を継続的に行っています。

 ホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業においては、顧客に提供するサービスの質を最重要視して事業運営をしているため、看護師、介護士、セラピスト等の専門性向上に特に力を入れて取り組んでいます。例えば入社時研修、役職別研修、管理者候補育成研修等、様々なプログラムを設けており、医療スキルを上げる研修のみならず、ホスピタリティや経営理念を学ぶ研修も行っています。

 

③ 新規拠点の展開

 当社のホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業では、知名度の向上と顧客獲得を実現し、必要とされている地域に幅広く当社グループのサービスを届けるために、新規拠点の展開を行っています。

 展開拠点の選定と開発、事業所の確保もしくは建設、拠点スタッフの採用、顧客獲得等を行い、新規拠点の展開を行うために、拠点展開の開発を行う人員強化や採用チーム等のバックオフィス機能強化等に努めています。

 

④ 内部管理体制の強化及びコーポレート・ガバナンスの充実

 当社グループが更なる事業拡大及び継続的な成長を目指し、ミッションを実現するためには、コンプライアンスを重視した経営及びコーポレート・ガバナンスの確立が必要であると認識しています。そのためにも、事業の拡大に備えた管理部門の強化、企業倫理の醸成、法令等遵守の徹底を図るべく内部統制の体制構築とその運用を行っています。

 

⑤ 財務健全性の確保

 連結子会社におけるホスピス型住宅の建設やM&A等の事業投資に当たり資金調達が必要になるため、外部調達の金利水準が変動した場合や計画どおりの資金調達ができなかった場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態又はキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 EBITDA有利子負債倍率及び親会社所有者帰属持分比率等といった財務の安定性を測る指標のモニタリング及び金利動向の定期的な把握を通じた金利変動リスクの定量化を行うことで、財務健全性の確保に努めています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループが目指すサステナビリティ経営

 当社グループは、「医療という希望を創る。」をミッションとして掲げています。本ミッションの実現を目指す事業活動は、患者様、医療従事者、及び社会が抱える構造的な「不」や「負」を解消し、具体的な希望、すなわち価値を創出することを基本方針としています。医療現場では人材が深刻に不足し、地域によって医療提供体制に格差が生じています。また、急速な高齢化に伴い、医療ニーズは複雑化・多様化しています。当社グループはこれらを当社グループが一丸となって対応すべき喫緊の社会的課題と受け止めています。さらに気候変動対策をはじめとする地球環境保全への積極的な貢献、そしてあらゆる事業活動の基盤となる揺るぎないコンプライアンス体制の確立と企業統治の強化もまた、極めて重要な課題であると認識しております。
 こうした社会・環境・ガバナンス(ESG)全般にわたる重要課題に対し事業を通じて解決策を構築し実行していくことは、サステナビリティへの取り組みと不可分であると考えます。医療従事者の働きがい、働きやすさを向上させ、医療をゆきわたらせるための基盤を築くこと。質の高い医療を追求し、誰もが安心して生活できる地域医療を整備すること。事業活動における環境負荷を低減し、持続可能な地球環境の実現に尽力すること。そして、高い倫理観に基づき透明性と公正性を備えた経営を実践すること。これらの取り組みは、当社の理念追求と、事業を通じたESG課題(社会課題の解決、環境への配慮、ガバナンスの強化)への取り組みを戦略的に統合するものであり、豊かな社会を持続可能な形で次世代へ繋いでいくことに寄与します。

 当社グループは、全てのステークホルダーの皆様との連携を重視し、これらの事業活動を通じて持続的な成長を果たし、企業価値及び社会全体の発展に貢献していきます。

 

 

  (1)ガバナンス体制

 

 当社はグループの長期的な成長を支えるサステナビリティを重視しており、その達成のためにグループ主要各社横断でサステナビリティプロジェクトを設置しています。サステナビリティプロジェクトでの協議事項やマテリアリティ毎の進捗状況について取締役会に定期報告することにより、取締役会が当社グループのサステナビリティ経営に関する監督の機能を果たしています。取締役会は、経営方針・戦略の策定、予算・事業計画の検討、業績目標の進捗モニタリングといった中核業務に加え、主要な設備投資やM&A(買収・売却)の監督といった重要な意思決定においても、サステナビリティの観点を不可欠な要素として組み込み、持続的な企業価値向上を追求しています。

 

(2)戦略


マテリアリティ(重要項目)

 当社グループはミッションである「医療という希望を創る。」を持続可能な形で達成するために、国際的なESGの主要な枠組みを参考に、取締役・執行役員・幹部社員が社会・ステークホルダーおよび当社における重要度を複合的に議論することにより、経営理念を実現するために必要な以下の5つのマテリアリティを特定しました。また、各マテリアリティに対して専任の担当取締役又は執行役員を任命し、長期的な価値の創造に向けて、課題解決に向けた活動を推進しています。

 

 

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 ① 患者様と医療従事者のウェルビーイングの追求

患者様が住み慣れた場所でその方らしく暮らし続けられる地域医療の整備と、それを高品質なサービスで支える医療従事者のウェルビーイングの追求は、当社の事業運営の核となります。サービス提供における課題を的確に把握し改善を続けていくために、自社事業においてCS調査(顧客満足度調査)の実施を推進しています。医療機関事業においては2019年より支援先の訪問診療クリニックに対しCS調査の導入・運用支援を行い、調査結果は支援先クリニックにおける訪問診療サービスの質の評価および具体的な改善策の策定に活用されています。また、当社グループの株式会社シーユーシー・ホスピス、ソフィアメディ株式会社では、顧客ロイヤルティを測る指標であるNPS®(ネット・プロモーター・スコア)を用いたCS調査を導入しています。これらの調査を経年的に実施・分析することで、変化する社会のニーズに対する自社の対応力を高めるとともに、より充実したケア体制の構築を目指しています。

 また、サービスを提供する医療従事者が心身ともに健康で、やりがいと成長を実感しながら働ける環境こそが質の高い医療サービスの源泉となり、顧客満足の継続的な向上につながると考えます。多様な人材がやりがいをもって継続的に働き続けられるよう、安全で快適な職場環境の整備、柔軟な働き方の推進、キャリア形成支援、メンタルヘルスケアの充実等に積極的に投資し、一人ひとりのウェルビーイングを組織全体で支えます。その実現のため、月次のコンディションアンケートおよび年次の従業員満足度調査を通じて、従業員の心身の健康状態や業務に対するエンゲージメントを定期的に把握し、職場環境の改善やサポート体制の強化に努めています。医療専門職にとって働きがいのある環境を整備することは、質の高い医療サービスを安定的に提供し続けるためにも不可欠であると考えます。これらの取り組みの結果、2025年春に発表された「WELLBEING AWARDS 2025」の組織・チーム部門にて最高賞のGRAND PRIXを受賞しました。

 

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 また、当社グループではサステナビリティへの取り組みを推進するための提案機会である「サステナビリティコンテスト」を年に1度開催しています。このコンテストを機会にサステナビリティの重要性を深く認識し、従業員一人ひとりが主体的にその実現に取り組む組織文化を醸成することを目指しています。2024年度は「人の可能性」をテーマに開催し、国内外のグループ会社から50の提案が集まりました。この中から従業員のがん予防や治療と仕事の両立を推進する提案や、健康とキャリアをつなぐ新しい雇用モデル、社内人材マッチングのプラットフォーム作りなどの提案が選出され、今後実行に向けて検討を進めていきます。
 さらに、文部科学省が推奨するキャリア教育推進の一環として中学生の企業訪問の受け入れや、高校生に向けたキャリア授業を開催しています。これらの活動は将来を担う世代に医療の重要性や当社グループの取り組みの社会的意義を伝え、医療分野への理解を深めてもらう機会となっています。

 

 ② 持続可能でイノベーティブな医療サービスの創出

 誰もが安心して質の高い医療・ケアを受けられるよう、増え続ける医療・介護ニーズや、医療人材をはじめとするリソースの制約といった社会課題に対し、DXの推進や適切なリソース配分を実行しています。2024年10月には「透析フロア」「介護フロア」「メディカルフロア」など療養患者の多様なニーズにフロア別の専門的な医療ケアで対応する「あむらいふ虹ヶ丘フィールド」を支援先医療機関と連携し開設しました。IoT介護機器の導入やオペレーション設計により、省人化とケアの質の担保の両立を図ります。また、国際ツーリズムの増加に伴うインバウンド救急の急増に対応するため、外国人渡航客である患者様に「医療コンシェルジュ」が多言語で応対する取り組みを各地の支援先医療機関にてサポートしています。
 

 ③ 安心安全な医療の提供

 グループ横断で安全な医療・介護サービスの提供の推進を図ることを目的とした医療安全委員会を設置し、多角的な視点で、迅速かつ効率的に安全を確保する取り組みを実施しています。患者様・医療従事者双方の安全を実現するため、支援先医療機関とも連携しながら、さまざまなリスクの最小化に取り組んでいます。医療機関事業においては医療法人のインシデント・アクシデントレポートを医療的知見に基づいたさまざまな角度から分析、課題を抽出し、対策方針を立てるコンサルティングを行っています。また、災害対策関連の研修を継続的にグループ内で展開しており、2024年度は株式会社シーユーシー・ホスピスにおいて施設長や管理責任者を対象にBCP研修を実施しました。
 

 ④ 地球環境に配慮した経営

 環境負荷に配慮したエネルギーの消費、温室効果ガスの排出量削減、医療廃棄物の適正な処理のために、様々な検討・施策を行っています。また、前述の「サステナビリティコンテスト」において、第1回目開催の2023年度では「環境」をテーマに開催し、2024年度は選出された提案の実運用を進めました。病院の食品ロス削減と地域社会への貢献の両立をはかり、支援先医療機関にて生ごみを堆肥化するコンポスト導入を実施し、患者様のリハビリテーションも兼ねた菜園づくりを進めています。また、グループの施設において生ごみ処理機の導入を開始しました。これらの取り組みをグループ全体に展開していく予定です。

本社オフィスにおいては2023年より再生可能エネルギー由来電力を使用しています。

 

 ⑤ コンプライアンスの徹底

 コンプライアンスの徹底と不正発生の余地を排除する仕組み作りをグループ全体で継続的に実践しています。

契約・請求業務や個人情報・機密情報の厳格な管理等における適正性の確保と不正リスクの根絶を目指し、内部統制の強化を図っています。多重チェック体制の構築や情報セキュリティ対策の強化、コンプライアンスに関する従業員教育の実施、そして公正な業績評価制度の運用などを通じ、健全な業務運営と組織文化の醸成を推進しています。

 

(3)リスク管理

 

 当社グループではリスクコンプライアンス委員会にて、サステナビリティに関連するリスクを適切に識別・評価・管理し、その体制整備のためにコンプライアンス担当執行役員および委員会メンバーが議論し、意思決定を行います。リスクコンプライアンス委員会の決議内容は取締役会にて報告され、監督を受けています。

 

 

(4)指標及び目標
 
 当社グループでは、ミッションの実現に向けて、医療の未来を担う人材こそが最も重要な基盤であると考えます。多様化が加速する社会において、患者様お一人お一人に寄り添った質の高い医療サービスを提供し続けるためには、まず多様な人材がその能力を最大限に発揮し、安心して働き続けられる環境と制度を整備することが不可欠です。 同時に、深刻化する医療人材の不足という社会課題に真摯に向き合い、量と質の両面から医療人材の確保・育成に注力します。これらを通じて、多様なバックグラウンドを持つ全ての従業員が誇りを持って持続的にキャリアを形成できる環境を構築することが、当社グループの喫緊の課題であると認識しています。この考えに基づき、サステナビリティに関する具体的な指標および目標を次のように設定し、キャリアパスの整備や両立支援制度のさらなる拡充を積極的に推進しています。


<当社グループ主要連結子会社4社の女性管理職比率と目標>

① 当社単体:女性管理職比率          2030年度末までに30%

② 当社グループ主要連結子会社4社合計:女性管理職比率  2030年度末までに50%

 

社名

2024年度の女性管理職比率

2030年度 目標

株式会社シーユーシー

13.9%

30%

株式会社シーユーシー・ホスピス

56.8%

ソフィアメディ株式会社

62.9%

株式会社ノアコンツェル

22.2%

当社グループ4社合計

43.0%

50%

 

3【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下の記載は将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではなく、記載された事項以外の予見できないリスクも存在します。このようなリスクが現実化した場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。

 

(1)事業環境について

① 医療ヘルスケア市場について

当社グループは医療ヘルスケア市場で事業を展開しています。現在の事業の中核となっている高齢者医療マーケットは今後も高齢者の増加に伴い拡大が見込まれています。また、当社グループは「医療という希望を創る。」というミッションの実現を目指し、医療を取り巻く「不・負」を解決する新たなサービスを創出していく所存です。

しかしながら、長期的に国内の高齢者人口は減少に転ずることが見込まれており、また当社の想定を超える医療保険制度の見直し等が発生することもありえるため、そのような事象が発生した場合には、医療ヘルスケア市場が縮小し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 他社との競合について

当社グループは、医療機関、患者及び顧客(利用者及び入居者)のニーズに合った新しいサービスの拡充に常に取り組んでいます。競合については以下のとおりです。

 

(医療機関セグメント)

 国内における医療機関に対する経営支援サービスは病院やクリニックの売上成長及び収益改善に資する各種サービスを包括的に提供するものであり、戦略・施策の立案から実行までをワンストップで提供できるという点で現在のところ直接的な競合の存在を認識していませんが、医療機関に対する支援サービスを行う会社は複数存在します。

 資本力、顧客基盤、知名度、価格競争力、営業力などの点において当社グループよりも優れた企業が、新規参入、事業領域の拡大・強化、企業買収、提携などにより、当社グループと同等又はより優れたサービスを、より低い価格で提供した場合、当社グループの競争上の優位性が失われ、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、米国においては、足病及び下肢静脈疾患クリニックを運営する各地域で競合が存在します。既に展開している地域において競争が激化した場合のほか、当社グループが新規地域への展開を検討する際に既に他社が優位性を有している場合には、当社グループによる事業運営又は展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ホスピスセグメント、居宅訪問看護セグメント、メディカルケアレジデンスセグメント)

 ホスピス事業では、株式会社アンビスホールディングス、日本ホスピスホールディングス株式会社、株式会社サンウェルズ(すべて上場会社)といった競合が存在し、地域によっては、これらの会社と競合する場合があります。

 居宅訪問看護事業では、事業を展開している各地域で競合が存在します。基本的に小規模事業者が多く、現時点では経営の安定性やブランド力という点で当社グループに相対的に優位性があると考えています。

 メディカルケアレジデンス事業では、事業を展開している各地域の介護施設が競合となりますが、当社グループが運営する施設は比較的大規模かつより医療依存度、要介護度の高い入居者(要介護度3-4程度の方)の受け入れを推進していくことで差別化を図っています。

 既に競合が存在する地域において競争が激化した場合のほか、当社グループが優位な地域においても、上記の競合他社が当該地域に進出あるいは当該地域での事業を強化する場合や、競合他社が企業買収・提携などを活用して地域の垣根を超えた大規模な範囲でサービスを展開する場合等においては、当社グループの優位性が失われ、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社がこれまで事業を行っていなかった地域に新規に事業を展開するに際し、当該地域で先行して事業を展開する競合他社の顧客基盤が想定以上に強力であり、あるいは競合他社が先行者としての優位性を活用してサービス内容や事業展開を強化した場合には、当社グループが当該地域において期待どおりに顧客を獲得できないなど、当社グループの事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

 以上のほか、各事業で他の有力企業との競争激化や、新規参入の増加、業界再編等により、当社グループが事業を行う業界の事業環境が大きく変化し、当社グループがこれに適時・適切に対応できなかった場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ インフレと人件費高騰について

当社グループは、主として労働集約型の事業を行っているため、賃金水準が急激に高騰した場合には人件費の負担増が発生します。特にホスピス事業では、事業拡大のために新規施設を開設することが重要ですが、インフレ等による建築資材の高騰や建設人材の不足等により調達コストが増加し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業運営について

① 人材の採用、育成について

 当社グループが安定的に事業拡大するためには、ミッション実現のために主体的に行動できる優秀な人材を採用し、育成する必要があります。

 医療機関セグメントの国内事業においては、支援先医療機関からの様々なニーズに対応可能な専門性の高いスタッフを確保・育成するため、採用時における適性の見極めを行うことに加えて、社内業務の標準化、マニュアル化を進めることにより育成体制を強化しています。加えて、支援先医療機関向けの有資格者採用支援のために、医療職種別(医者、看護師など)の採用チームを組成しています。

 ホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業においては看護師、介護士及びセラピストの採用や育成が事業の根幹です。そのため、採用業務に経営資源を集中させ、積極的な採用活動を行っています。特にがん末期やALS等の難病のケアには高い専門性が求められることから、それらの専門性を持つ医療スタッフを採用することに加え、経験の浅い看護師、介護士及びセラピストであっても安心して継続して働けるように教育体制も充実させ、安定した人員の確保に努めています。

 しかしながら、日本の労働人口は今後も減少することが見込まれており、医療・介護業界での慢性的な人材不足等により、採用が予定どおり進まない場合や、適切な研修等を実施することにより育成することができない場合、既存社員の社外流出等が多く発生した場合には、顧客に対する十分なサービスの提供が困難となり、サービスの質の低下につながるおそれがあります。加えて、当社グループが計画する新規施設の開設に支障が生じる可能性があります。また、そのような状況に対応するため人材の確保に想定以上の支出が必要となるなど、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 各種規制、許認可、指定について

 当社グループは、各事業所において法規制に基づいた許認可や指定を受け業務を遂行しています(表)。特にホスピス事業、居宅訪問看護事業及びメディカルケアレジデンス事業では、健康保険法、介護保険法、障害者総合支援法、老人福祉法、高齢者住まい法等に基づく看護及び介護サービスを提供しており、これらの法律及び関連諸法令の適用を受けます。

 当社グループは、各種許認可や指定を受けるために様々な要件に従う必要があり、その要件を満たすように細心の注意を払い事業を行っているほか、当社グループの内部監査部による内部監査において、これらの要件遵守について重点的に監査を実施しています。

 しかしながら、当社の想定を超える法制度の改正が行われたこと等により、当社グループがこれらの法律及び関連諸法令を遵守することができなかった場合又は診療報酬若しくは介護報酬等の不正請求や、人員基準違反、運営基準違反、虚偽報告といった事由が認められ、指定が取消又は停止となった場合には、当該事業の継続が困難となり、また、事業の一時停止を受けるなど、当社グループの事業活動に重大な支障が生じるほか、これらの事案への対応に要する大きな支出や風評被害等にもつながるため、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、介護保険法に基づく各種指定について指定取消を受けた場合、指定取消から5年以内における新たな指定の取得及び介護サービス事業所としての更新が出来なくなります。

 また、法律の改廃や適用基準の変更等により、診療報酬・介護報酬が減少する、保険適用者が減少し利用控えが進むなどの事象が生じた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 加えて、医療保険制度に基づく診療報酬は2年に1度、介護保険制度に基づく介護報酬は3年に1度の頻度で制度の改定が行われており、今後、診療報酬及び介護報酬の見直しにより、大幅な改定が行われた場合には、医療機関セグメントにおいては国内の支援先医療機関の新規出店の減速や、支援先医療機関の業績悪化に伴う当社の業務受託報酬の支払遅延又は支払停止につながり、ホスピスセグメント、居宅訪問看護セグメント及びメディカルケアレジデンスセグメントにおいては直接的な売上収益の減少につながるため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(表)当社グループの各事業所が受けている主な指定

取得

指定権者、届出先又は登録先

許認可名称

許認可内容

有効期限

主な許認可取消事由

当社グループの各事業所

厚生労働省

地方厚生局

指定訪問看護事業者

健康保険法の訪問看護事業

6年毎の更新

健康保険法 第95条(指定訪問看護事業者の指定の取消し)

都道府県、政令指定都市又は中核市

指定訪問看護事業者

介護保険法の訪問看護事業

6年毎の更新

介護保険法 第77条(指定の取消し等)

都道府県、政令指定都市又は中核市

指定訪問介護事業者

介護保険法の訪問介護事業

6年毎の更新

介護保険法 第77条(指定の取消し等)

都道府県、政令指定都市又は中核市

居宅介護・重度訪問介護事業

障害者総合支援法の居宅介護

6年毎の更新

障害者総合支援法 第50条(指定の取消し等)

都道府県、政令指定都市又は中核市

指定通所介護事業者

介護保険法の地域密着型通所介護

6年毎の更新

介護保険法 第77条(指定の取消し等)

都道府県、政令指定都市又は中核市

指定地域密着型サービス事業者

介護保険法の地域密着型訪問介護看護

6年毎の更新

介護保険法 第78条(指定の取消し等)

都道府県、政令指定都市又は中核市

住宅型有料老人ホーム

老人福祉法の施設事業

なし

老人福祉法 第29条14項(届出等)※事業の制限又は停止に関する定めあり

都道府県、政令指定都市又は中核市

サービス付き高齢者向け住宅

高齢者住まい法の施設事業

5年毎の更新

高齢者住まい法 第26条(登録の取消し)

市区町村

介護予防・日常生活支援総合事業

介護保険法の総合事業

6年毎の更新

介護保険法 第115条の45の9(指定事業者の指定の取消し等)

市区町村

居宅介護支援事業

介護保険法の居宅介護支援

6年毎の更新

介護保険法 第84条(指定の取消し等)

市区町村

指定地域密着型通所介護事業者

介護保険法の地域密着型通所介護

6年毎の更新

介護保険法 第78条の10(指定の取消し等)

 

③ 情報管理について

 当社グループでは事業活動を通じて顧客に関する経営情報等の機密情報を受け取り、また一部事業では多数の顧客あるいはその家族の個人情報(既往症、病歴、治療状況などの要配慮個人情報を含みます。)を取り扱っています。

 当社グループの情報管理については、個人情報保護方針の策定や、社員教育の実施、担当者以外のサーバーへのアクセス制限等の社内体制の強化など、情報漏洩防止の厳重な対策を講じ、細心の注意を払っています。

 しかしながら、通信設備等の予期せぬトラブル等によりシステムが停止した場合や、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏洩等が不測の事情により発生した場合、社員や業務委託先による情報漏洩が発生した場合、また、漏洩した情報が不正使用される等の機密情報の流出に伴う重大なトラブルが発生した場合、社会的信用の低下につながり、当社グループの事業、経営成績又は財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ M&Aについて

 当社グループでは、同業もしくは異業種の他社に対するM&A(子会社化や事業譲受等)や提携等を実施することにより、当社グループの事業を補完もしくは強化すること、又は新規事業の展開が可能であると考えています。

 その実施にあたっては、対象企業や対象事業について各種デューディリジェンスを行う等、慎重な検討の上で意思決定をし、可能な限りリスクの低減に努めています。

 しかしながら、M&A等の実施後に当社グループが事前に認識し得なかった問題が明らかになった場合や、取得した企業等や事業の経営が計画どおりに進まない場合、許認可を要する事業を事業譲渡等により譲り受け、譲受後に許認可を得られない場合、又は期待していたシナジー効果を生まずに戦略目的が達成できない場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 特定人物への依存について

 当社の代表取締役である濵口慶太は、創業者であると同時に創業以来当社グループの事業推進に深く関与しており、同氏は当社グループの経営戦略構築やその実行に重要な役割を果たしています。当社グループでは組織体制の強化を図り、特定の人物に過度に依存しない体制の整備を進めていますが、何らかの理由により同氏の当社グループにおける経営執行継続が困難になった場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 親会社グループとの関係について

 本書提出日現在、当社の親会社であるエムスリー株式会社は、当社の議決権の63.45%を所有しています。親会社グループは、国内における医師会員34万人以上(2025年4月時点)が利用する医療従事者専門サイト「m3.com」、米国の「MDLinx」や英国の「Doctors.net.uk」等の医療従事者のプラットフォーム、医師の人材紹介事業等を中心に様々なサービスをグローバルに展開しており、当社グループは親会社のサイトソリューションセグメントに区分されています。

 したがって、エムスリー株式会社は、株主総会の特別決議を要する事項(例えば、吸収合併、事業譲渡、定款変更等を含みますが、これらに限りません。)を単独で可決することはできないものの拒否権を有するとともに、株主総会の普通決議を必要とする事項(例えば、取締役の選解任、剰余金の処分や配当等を含みますが、これらに限りません。)に関する決定権及び拒否権を有することになり、当社に重要な影響を及ぼしえます。親会社が当社グループの事業や経営方針に関して有する利益は、当社の他の株主の利益と異なる可能性があります。

 また、当社は親会社と良好な関係を有していますが、何らかの理由により下記に掲げる当社と親会社グループとの間の主な関係について、関係が悪化した場合又は悪化したと受け取られた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 一方、当社の独立性の維持のため、当社取締役会における親会社の役職員を兼務する取締役は7名中で1名のみとしています。

 なお、当社と親会社グループとの間の主な関係等の詳細については、以下に記載のとおりです。

 

(ⅰ)親会社役職員による当社取締役の兼任

 本書提出日現在、親会社であるエムスリー株式会社の執行役員である大場啓史は、当社の取締役を兼任しています。当該取締役は、様々なコーポレート機能に関する知見により当社グループの経営力を高めるべく、当社より就任を要請し、今後も継続して要請することを予定しています。

 親会社から役員を受け入れている状況を踏まえ、当社取締役会に占める親会社の役職員との兼務がある取締役は7名中で1名のみとし、独立社外取締役2名を選任するとともに、監査等委員会設置会社制度を採用することで取締役会の監督機能を強化しています。当社の業務執行に係る意思決定に親会社からの承認は求められません。しかしながら、そのようなガバナンスが適切に機能しない場合には、親会社の意向が当社の経営判断に強く影響し、少数株主の利益が脅かされる可能性があります。

 他方、当社取締役に親会社の役職員との兼任者がいなくなり、期待していた知見が提供されず同等程度以上の会社経営に関する知見を有した取締役を招聘できない場合には、当社の事業、経営成績又は財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅱ)当社株式の流動性について

 本書提出日現在、当社の親会社であるエムスリー株式会社は、当社の議決権の63.45%を所有しています。当社は今後も流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により、新規上場時よりも流動性が低下する場合には、売買が停滞する可能性があり、当社株式の需給関係に悪影響を及ぼす可能性があります。今後は当社の親会社への一部売出しの要請やストックオプションや株式を活用したインセンティブプラン、事業規模、売上収益及び利益額の成長を通じた株主層の拡大等の組み合わせにより、必要に応じて流動性の向上を図っていく方針です。

 また、親会社が当社株式を市場内外で売却する場合又はその懸念が市場において認識される場合、当社株式の需給の悪化又はそのおそれにより、当社株式の市場価格に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)事業内容について

① 医療機関セグメントについて

(ⅰ)支援先医療機関について

 支援先医療機関においては、医師又はコメディカル(医師を除く看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師、管理栄養士等の医療従事者)等の不足、各種法令、許認可、指定等の不遵守、情報漏洩、不正、医療事故又は感染症の流行等の事象が発生しないよう事業を行っていると理解しています。

 しかしながら、何らかの理由により支援先医療機関において上記の事象が発生した場合や、想定外の大幅な診療報酬改定が行われた場合等には、当該支援先医療機関の事業運営や業績が悪化する可能性があります。

 これにより当社グループが予定していた業務受託報酬を請求あるいは回収できなくなる可能性があるほか、支援先医療機関において不適切な事象等が発生したことで、それらの医療機関に対して経営支援を行っている当社及び当社の事業に対する評価や社会的信頼に悪影響を及ぼすなど、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅱ)支援先医療機関との業務委託契約について

 当社は支援先医療機関に対する経営支援サービスの質の向上及びそのサービスメニューを拡大することで、支援先医療機関からの業務委託を継続していただけるよう日々取り組んでいます。

 しかしながら、支援先医療機関との関係が悪化した場合や、支援先医療機関の経営方針の転換が生じた場合等には、業務委託契約が解除にいたる可能性があります。また、支援先医療機関の事情や判断で、業務委託契約が更新されない可能性があります。

 医療機関セグメント(国内)の売上収益は主に支援先医療機関からの報酬によって構成されますが、支援先医療機関の経営状態は様々な要因により悪化する可能性があり、支援先医療機関の経営状態が悪化した場合、当社の業務受託報酬を請求あるいは回収できなくなる可能性があります。そのような事象が重なるようなことがあれば当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、弁護士等の専門家との連携により、支援先医療機関との業務委託契約については医療法の剰余金配当の禁止に抵触していないと認識しています。

 

(ⅲ)海外での医療行為提供について

 当社グループは、海外においては、当社グループが直接、医師や看護師を雇用し医療行為を提供しています。危機管理マニュアルの遵守を徹底し医療事故等が発生しないように最新の注意を払いながら医療行為の提供を行っていますが、現地の医療事情、法規制、慣習その他の理由により、万が一事故等が発生した場合には、国内を含む当社グループの事業に対する社会的信用が低下し、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅳ)ファクタリングについて

 当社グループは医療機関が有する診療報酬債権を買取り、その債権の回収を行う診療報酬ファクタリングサービスを提供しています。当該債権に関しては、当社グループ規程に基づき、診療報酬額のモニタリングを行い、リスク管理を実施しています。

 また、そのすべてが国民健康保険団体連合会及び社会保険診療報酬支払基金に対するものであるため、債権の回収不能リスクは低いと考えていますが、何らかの事情によりその回収が遅延又は不能になるようなことが発生した場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② ホスピスセグメント、居宅訪問看護セグメント及びメディカルケアレジデンスセグメントについて

(ⅰ)診療報酬及び介護報酬について

 ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、健康保険制度に基づく医療保険収入と介護保険制度に基づく介護保険収入が収入の大部分を占めます。健康保険制度は2年に1度、介護保険制度は3年に1度の頻度で改定が行われ、当社グループでは、長期的な改定の方向を見据え収入源の分散や中重度対応等の取組をしています。

 しかしながら、想定外の大幅な減額改定が行われた場合には、当社グループが収受する診療報酬・介護報酬が減少するほか、当社グループのサービスの顧客数や利用頻度・利用額が減少するなどの事情が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(ⅱ)顧客の安全について

 ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、訪問看護師、訪問介護士、訪問セラピスト等に対し顧客の安全を守るための教育研修を実施し、事故の発生防止や緊急事態に対応出来るように取り組んでいます。

 しかしながら、医療依存度、要介護度の高い高齢者や障害者等にサービスを提供する場合、サービス提供中の転倒・転落等の不慮の事故など、顧客の生命、安全にかかわる事故が発生する可能性は一定程度あります。

 また、当社グループでは、サービス提供者による顧客への身体的虐待、介護・看護の放棄・放任、心理的虐待等が発生しないよう役職員を対象とした教育研修やマニュアルの整備を行うとともに、そのようなことが起きない組織風土の醸成に取り組んではいますが、上記のような不適切な事象を完全に防止できる保証はありません。

 万が一これらの事象が発生し、訴訟等で過失責任が問われるような事態が生じた場合、当社はかかる事態に備えて損害賠償責任保険を付保していますが、損害賠償義務が生じた場合には当社による金銭的な負担が生じる可能性があるほか、当社や当社の運営する施設等に対する社会的信用が低下し、又は風評被害等によって当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅲ)虐待等の防止について

 ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、訪問看護師、訪問介護士、訪問セラピスト等がホスピス型住宅を含む顧客の居宅においてそのサービスを提供します。当社グループでは、サービス提供者による顧客への身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待等の高齢者虐待が発生しないよう役職員を対象とした教育研修やマニュアルの整備を行うとともに、そのようなことが起きない組織風土の醸成に取り組んでいます。

 しかしながら、万が一そのような事象が発生し、顧客やその家族よりそのような訴えがあった場合には、多額の損害賠償責任を負う可能性があるほか、当社グループ及びそのサービスに対する社会的評価が失墜し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅳ)顧客の逝去について

 ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、行政や医療機関等との連携によって、安定的な顧客の確保に努めており、高齢者の増加とともに需要が増加している状況にあると認識しています。

 しかしながら、顧客には医療依存度の高い高齢者やがん末期及び難病患者等が多く含まれることから、当社グループが想定する以上の顧客の逝去が続いた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅴ)システム障害について

 ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては電子カルテを使用していますが、通信設備等の予期せぬトラブル等によりシステムが停止した場合や、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏洩等が不測の事情により発生した場合、また漏洩した情報が不正使用される等の機密情報の流出が生じた場合には、重大なトラブルが発生する可能性があります。

 災害時対応として紙媒体で顧客情報を保管する等の対応をしていますが、想定外の規模のシステム障害やその復旧の長期化等の事象が発生する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅵ)ホスピス事業における新規開設遅延について

 ホスピス事業では、その事業拡大のために新規施設を計画的に開設していくことが必要になります。しかしながら、他社との競合により好立地を確保できない場合、各種規制により新規施設が開設できない場合、その他例えば土地から埋蔵物が発見される場合や、工事期間中の台風や大雪といった不可抗力な事由等、予測困難な事由が発生する場合には、開設計画の実現性が不確実となります。

 以上の不確定要素をはじめ、建設人材や建材の不足等何らかの理由で大幅な開設時期遅延が生じた場合には、利益機会を逸失し当社グループの事業、経営成績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅶ)ホスピス事業における協働先との契約の早期終了について

 ホスピス事業では、有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅を運営する事業者との協働契約(相手方事業者は施設の運営のみを担当又は施設の運営と訪問介護を担当)を締結し、当社グループが訪問看護又は、訪問看護及び訪問介護を提供している施設があります。

 相手先事業者の事業停止や倒産、協働契約の違反等何らかの事由で協働契約が早期に終了する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅷ)地域との関係について

 ホスピス事業では、独自の市場調査に基づき新規開設場所を選定しています。しかしながら、結果的に事業の収益性が当初見込みに届かず撤退を検討する可能性があり、当社グループ施設撤退後の入居者の転居先確保が困難な場合は当社グループの社会的評判が低下する可能性があります。

 また、医療機関や行政機関との関係性維持の観点から即時撤退を行うことが困難な場合には、収益が確保できないまま事業を継続しなければならない可能性があり、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅸ)長期賃貸借契約について

 ホスピス事業が運営する一部の施設について、土地又は建物もしくはその両方を当社グループ外の第三者より賃貸借契約に基づき賃借しています。

 事業の特性上、長期間の賃貸借契約を締結することが多く、この場合一定期間は撤退の制約が課されるとともに、もし契約期間内に撤退する場合には中途解約による違約金等の支払が発生するため、当社グループは契約締結に際し、当社グループの事業継続に大きな影響を及ぼす契約内容とならないよう細心の注意を払っています。

 しかしながら、事業の収益性が当初見込みに届かず中途解約し、撤退せざるを得ない状況が重なるような事象が発生する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ⅹ)居宅訪問看護事業における移動中の交通事故について

 居宅訪問看護事業において、訪問看護サービスを提供する従業員は、自転車又は自動車を使用して利用者の居宅へ訪問しています。当社グループは従業員の安全を守り、ひいては安定的に利用者へサービス提供をできる状態を確保するため、従業員に対し交通事故防止のための教育研修を実施しています。

しかしながら、当社グループの従業員が悪質な交通事故等を起こした場合には、当社グループが使用者として損賠賠償の負担を余儀なくされる可能性があるほか、当社グループの社会的信用が低下するなど、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他

① 資産の減損について

 当社グループではM&A(子会社化や事業譲受等)の結果として有形固定資産、のれん及び償却期間の定めのある無形資産等の資産を有しています。当社グループは事業の収益性及び成長性を考慮して事業やセグメントを構成しており、減損リスクの高い事業については適切なモニタリングを実施しています。

 しかしながら、将来的に予測不能な原因等による収益性の悪化、あるいは当社グループのモニタリング機能の不備等により、減損損失が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権について

 当社グループでは当社グループの持つ知的財産権を侵害されないよう細心の注意を払っていますが、他社からの侵害を把握しきれない、もしくは適切な対応ができない場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループが各種サービスを展開するにあたっては、他社の持つ特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っていますが、万が一、他社の知的財産権を侵害した場合には、多額の損害賠償責任を負い、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 非支配株主について

 当社グループの海外子会社の一部には非支配株主が存在します。当該非支配株主とは事業拡大に向け良好な関係を保っており、当該子会社等の意思決定に影響を及ぼすことは現時点で想定していませんが、万が一、当該非支配株主との関係が悪化した場合には、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 海外展開について

 当社グループは、海外子会社を通じて現地での事業展開をしていますが、現地での関連法令・税制・政策の制定、改正又は廃止、政治的、経済的環境の変化、電力・輸送・通信等のインフラの停止・遅延、人件費の上昇、為替変動、地政学的な緊張の高まり又は伝染病の蔓延や自然災害発生等のカントリーリスクを内在しています。

 当社は社員が現地に常駐することで、現地の政府当局や弁護士事務所などからの情報連携を強化し、早期に情報収集をすることでリスクの低減に努めていますが、かかるリスクが顕在化し、現地での事業活動に悪影響が生じる場合には、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ コンプライアンスについて

 当社グループでは、コンプライアンスの遵守を重要課題と位置づけ、健康保険法、介護保険法、障害者総合支援法、老人福祉法、高齢者住まい法、労働基準法、消防法等をはじめとする法令及び諸規程を遵守し、企業人、社会人として良識のある行動をするよう従業員の意識向上を図っています。しかしながら、万が一、コンプライアンス遵守に抵触する事象が発生した場合には、法令による処罰や提訴、社会的信用力の低下につながり、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 訴訟等について

 当社グループは、法令遵守を重視したサービスを提供しており、現時点において当社グループの事業、経営成績又は財政状態に影響を及ぼす訴訟が提起されている事実はありませんが、顧客やその家族等からの信頼が失われる事象の発生等により、当社グループが訴訟、係争、またこれらに起因する損害賠償請求の当事者となる可能性があります。これらの法的手続に関連して多額の費用を支出し、また、事業活動に支障をきたす恐れがあり、万が一、当社グループに不利な司法判断等がなされた場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、医療機関セグメント(国内)においては、当社グループが直接医療を提供しないものの、支援先医療機関で同様の事象が生じた場合には、支援先医療機関からの訴訟、係争、またこれらに起因する損害賠償請求の当事者となる可能性があります。また支援先医療機関に対して経営支援を行っている当社及び当社の事業に対する評価や社会的信頼に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 大規模な災害等について

 当社グループは、不測の事態に備え事業継続計画(BCP)の策定等を行っており、非常用物品の備蓄、各種研修、訓練等を行っていますが、大規模な地震、台風、津波、洪水、大雨等の災害又は感染症の拡大等により、事業所建物や看護師、介護士、セラピストを含む当社グループの従業員及び顧客が損害を被った場合、あるいは、当社の事業所の運営やサービス提供に制約が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 新株予約権の行使について

 当社グループでは、役職員等に対するインセンティブを目的として、当社の新株予約権を付与しています。また、今後も新株予約権を発行、付与する可能性があります。2025年3月31日現在、発行済株式総数29,990,400株に対して、新株予約権の行使により今後増加する可能性のある株式数は682,400株です。現在付与している新株予約権及び今後付与される新株予約権が行使された場合、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

⑨ 有利子負債について

 当社グループは、運転資金については自己資金で対応し、設備投資やM&A資金は株式上場時の調達資金に加え、借入などにより外部調達することを基本方針としています。そのため、外部調達の金利水準が変動した場合や計画どおりの資金調達ができなかった場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態又はキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 配当政策について

 当社グループは、中長期的かつ持続的な企業価値の向上を目指しており、そのためには、将来の成長を見据えたホスピス施設への先行投資や設備投資、新規事業や海外への先行投資等を積極的に行うことが重要であると認識しており、現時点では事業の拡大と効率化のために投資し、企業価値の増大を優先すべきだと考えています。

 しかしながら、今後は財政状態及び経営成績を勘案しながら、配当を実施していく方針です。ただし、当社グループの業績が計画どおりに進展しない等、当社グループの業績が悪化した場合には、継続的に配当を行えない可能性があります。

 

⑪ 資金使途について

 当社グループが調達した資金の使途については、主にホスピスの建設資金に充当する予定です。しかしながら、変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点での計画外の使途にも充当される可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。この場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態の概況

(資産)

 資産合計は、前連結会計年度末比22,332百万円増の85,167百万円となりました。流動資産については、前連結会計年度末比2,869百万円増の20,520百万円となりました。これは主に、2024年10月に株式会社ノアコンツェルを連結子会社化したこと及び、診療報酬債権を対象としたファクタリング取引が増加したことに伴い、営業債権が3,393百万円増加したことによるものです。非流動資産については、前連結会計年度末比19,462百万円増の64,647百万円となりました。これは主に、ホスピス型住宅の増加等に伴い有形固定資産が6,802百万円増加し、株式会社ノアコンツェルを連結子会社化したこと及び株式会社ノアコンツェルの不動産の流動化等により使用権資産11,732百万円増加したことによるものです。

(負債)

 負債合計は、前連結会計年度末比20,050百万円増の54,881百万円となりました。これは主に、使用権資産の増加に伴いリース負債が11,794百万円増加したこと及び、2024年1月に拠出した米国足病事業の買収資金の復元を目的として長期借入金の借り入れを行ったこと等により借入金が5,031百万円増加したことによるものです。(資本)

 資本合計は、前連結会計年度末比2,282百万円増の30,286百万円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が3,150百万円増加したこと等によるものです。

 

② 経営成績の状況

 従来、報告セグメントについては、「医療機関」、「ホスピス」及び「居宅訪問看護」の3区分としていましたが、当連結会計年度において、株式会社ノアコンツェルを連結子会社化したことに伴い、新たに「メディカルケアレジデンス」を追加しています。

 

 当連結会計年度の業績は、以下のとおりです。また、当連結会計年度からのセグメント変更に伴い、前期の数値を新たな報告セグメントに組み替えて表示しています。セグメント変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.セグメント情報」をご参照ください。

 なお、EBITDAの計算式は次のとおりです。

 EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費±その他の収益・費用

 

(当連結会計年度の業績)

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

比較増減

売上収益

33,025

47,043

+14,017

+42.4%

営業利益

3,737

5,343

+1,606

+43.0%

税引前利益

4,138

5,246

+1,108

+26.8%

親会社の所有者に帰属する当期利益

2,595

3,131

+536

+20.7%

EBITDA

5,524

8,051

+2,528

+45.8%

 

(セグメントの業績)

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

比較増減

医療機関

セグメント売上収益

11,750

17,603

+5,853

+49.8%

セグメント利益

3,875

3,616

△260

△6.7%

EBITDA

4,504

4,570

+66

+1.5%

ホスピス

セグメント売上収益

10,389

13,759

+3,370

+32.4%

セグメント利益

405

1,002

+597

+147.4%

EBITDA

1,087

2,014

+927

+85.3%

居宅訪問看護

セグメント売上収益

10,946

12,309

+1,363

+12.5%

セグメント利益

616

1,205

+589

+95.7%

EBITDA

1,086

1,651

+565

+52.0%

メディカルケアレジデンス

セグメント売上収益

3,567

+3,567

セグメント利益

299

+299

EBITDA

640

+640

その他

セグメント売上収益

205

120

△85

△41.6%

セグメント利益

18

55

+37

+199.8%

EBITDA

23

11

△12

△52.2%

調整額

セグメント売上収益

△264

△314

△50

セグメント利益

△1,178

△834

+344

合計

セグメント売上収益

33,025

47,043

+14,017

+42.4%

セグメント利益

3,737

5,343

+1,606

+43.0%

EBITDA

5,524

8,051

+2,528

+45.8%

 

a.医療機関セグメント

 M&A支援報酬の増加に加え、2024年1月における米国足病事業の買収により海外の売上収益が増加したため、当連結会計年度の売上収益は17,603百万円(前期比49.8%増)、EBITDAは4,570百万円(前期比1.5%増)となりました。

 セグメント利益については、前連結会計年度まで調整額として計上した当社グループの費用の一部について各セグメントの業績をより適切に評価するため配賦方法を見直したことにより、人件費等の販売管理費が増加し、セグメント利益は3,616百万円(前期比6.7%減)となりました。

 

b.ホスピスセグメント

 既存施設の稼働率上昇及び当連結会計年度における新規開設(10施設)等により、売上収益は13,759百万円(前期比32.4%増)となりました。

 セグメント利益及びEBITDAについては、利益率の高い50床規模施設の稼働率が上昇したことに伴い、セグメント利益は1,002百万円(前期比147.4%増)、EBITDAは2,014百万円(前期比85.3%増)となりました。

 

c.居宅訪問看護セグメント

 利用者数と利用者1人当たりケア時間がともに増加したことに伴い、当連結会計年度ののべ総ケア時間(注)は1,220千時間(前期比14.5%増)となり、売上収益は12,309百万円(前期比12.5%増)となりました。

 セグメント利益及びEBITDAについては、看護師及びセラピストの稼働率向上により、セグメント利益は1,205百万円(前期比95.7%増)、EBITDAは1,651百万円(前期比52.0%増)となりました。

 

(注)当セグメントの看護師及びセラピストが利用者に居宅訪問看護サービスを提供した時間の合計。セラピストは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の総称。

 

d.メディカルケアレジデンスセグメント

 2024年10月に札幌市において住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅及びリハビリ強化型デイサービスの運営や施設入居者への定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを運営する株式会社ノアコンツェルの発行済株式のすべてを取得し、連結子会社化したことにより、当連結会計年度の売上収益は3,567百万円、セグメント利益は299百万円、EBITDAは640百万円となりました。

 

 以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上収益は47,043百万円(前期比42.4%増)、営業利益は5,343百万円(前期比43.0%増)、EBITDAは8,051百万円(前期比45.8%増)となりました。

 また、2024年5月15日に、当社が完全子会社であるCUC America Inc.へ追加出資を行い、当該出資金によりCUC America Inc.が当社に借入金の全額を返済したことによる為替差益が360百万円発生しました。その結果、税引前利益は5,246百万円(前期比26.8%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は3,131百万円(前期比20.7%増)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末残高より722百万円減少し、7,533百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、2,503百万円の収入(前期は4,156百万円の収入)となりました。主に、税引前利益5,246百万円、減価償却費及び償却費3,286百万円によるキャッシュ・フローの増加及び売上債権の2,337百万円の増加、法人所得税の支払額2,894百万円によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、4,450百万円の収入(前期は14,746百万円の支出)となりました。主に、株式会社ノアコンツェル等の持分取得による2,806百万円の支出及び株式会社ノアコンツェルの不動産の流動化に伴う有形固定資産の売却による収入13,237百万円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、7,599百万円の支出(前期は14,373百万円の収入)となりました。主に長期借入金による収入7,500百万円及び長期借入金の返済による支出13,058百万円、リース負債の支払による支出2,048百万円によるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは、製品の生産を行っていないため、記載すべき事項はありません。

 

b.受注実績

 当社グループは、実績に応じて売上が計上される契約がほとんどであり、受注時に受注金額を確定することが困難な状況であるため、記載を省略しています。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

(単位:百万円)

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

医療機関

17,289

+49.8

ホスピス

13,759

+32.4

居宅訪問看護

12,309

+12.5

メディカルケアレジデンス

3,567

報告セグメント計

46,923

+42.8

その他

120

△41.6

合計

47,043

+42.4

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

   2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%を超える相手先がないため、記載を省略しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 重要性がある会計方針及び見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務

諸表規則」という。)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。また、連結財務諸表の作成にあたっては、企業結合における無形資産の公正価値の測定、非金融資産の減損テスト、金融商品の公正価値の評価について、過去の実績や将来キャッシュ・フロー等を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積り及び予測を行っていますが、前提条件やその後の環境等に変化がある場合等の不確実性が存在するため、実際の結果がこれらの見積りや予測と異なる場合があります。なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。

 

③ 資金の源泉と流動性についての分析

当社グループの主な資金需要は、事業活動にかかる人件費、ホスピス事業の土地取得及び新規ホスピス型住宅建設費用、居宅訪問看護事業の新規拠点開設費用、メディカルケアレジデンス事業の新規拠点開設費用、米国足病事業のロールアップ型M&Aの取得費用等です。当社グループが上場時に調達した資金はホスピス型住宅の建設に充当しており、これに加えて不足する資金については外部借入により資金調達を行っています。また、当社を頂点とする当社グループのCMSを導入しており、当社グループ内資金を当社が一元管理しています。各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで資金効率の向上を図っています。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針

  経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のと

おりです。

 

5【重要な契約等】

(シンジケートローン契約)

 当社は、2024年1月に拠出した米国足病事業の買収資金の復元を目的として、2024年5月30日付の取締役会において、シンジケートローン契約を締結することを決議し、2024年6月5日付で契約締結いたしました。

 シンジケートローン契約の主な内容は以下のとおりです。

(1)借入先

   株式会社三井住友銀行、株式会社日本政策投資銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社りそな銀行、株式会社紀陽銀行、株式会社京都銀行、株式会社静岡銀行、株式会社常陽銀行

(2)借入金総額      7,000百万円

(3)借入実行日      2024年6月7日

(4)返済期限       2034年6月7日

(5)借入金利       基準金利にスプレッドを加算した利率

(6)当連結会計年度末残高 6,441百万円

(7)担保の有無      無

(8)主な借入人の義務

以下の財務制限条項を同時に遵守することです。

① 2024年3月期末日及びそれ以降の各連結会計年度末日における連結財政状態計算書に記載される資本合計の金額を、2023年3月期末日における連結財政状態計算書に記載される資本合計の金額の75%に相当する金額、又は直近の連結会計年度末日における連結財政状態計算書に記載される資本合計の金額の75%に相当する金額のうち、いずれか高いほうの金額以上に維持すること

② 2024年3月期末日及びそれ以降の各連結会計年度末日における連結損益計算書に記載される営業損益を2連結会計年度連続して損失としないこと

 

 

(株式譲渡契約)

 当社は、2024年9月25日付の取締役会において、札幌市において住宅型有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅を運営する株式会社ノアコンツェルの全発行済株式を取得し、連結子会社とすることを決議し、2024年9月25日付で株式譲渡契約を締結しました。同契約に基づき、2024年10月2日付で株式を取得しました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.企業結合」に記載のとおりです。

 

(連結子会社における固定資産の譲渡及び賃借に関する契約)

 当社の連結子会社である株式会社ノアコンツェルは、2024年12月19日開催の当社の取締役会において、株式会社ノアコンツェル所有の土地建物を不動産信託し、その信託受益権を譲渡することを決議し、2024年12月23日付で信託受益権譲渡契約、2024年12月25日付で不動産管理処分信託契約及びマスターリース契約兼建物管理委託契約をそれぞれ締結しています。

(1)不動産管理処分信託契約

*信託財産 株式会社ノアコンツェルの土地建物

No.

施設名

所在

土地面積(㎡)

延床面積(㎡)

ブランジェ

札幌市西区発寒六条十三丁目716番地3

1,958

3,060

サングレース発寒

札幌市西区発寒八条十三丁目736番地1等

9,024

6,729

コニーズバレー

札幌市西区発寒八条十三丁目736番地11等

4,448

ペイサージュ

札幌市豊平区福住一条二丁目53番地1

3,111

3,811

グランテラス

札幌市東区北六条東六丁目1番地1等

4,683

7,684

リブ・カシータ

デイサービスセンター泉共北6条

札幌市東区北六条東六丁目2番地3

1,092

モエレの杜

札幌市東区中沼西三条二丁目117番地530

1,252

1,065

モエレヒルズ

札幌市東区中沼西三条二丁目117番地634等

1,439

10

旭ヶ丘アーバンクラス

札幌市中央区南十二条西二十二丁目1番地1等

3,642

3,233

11

旭ヶ丘アン・ジュール

札幌市中央区南十二条西二十二丁目5番地5等

2,597

12

プレザント芸術の森

札幌市南区常盤二条二丁目34番地45

1,052

936

13

オリヴィエ

札幌市手稲区西宮の沢四条一丁目11番地9等

1,717

4,095

14

エリザベス

札幌市清田区平岡五条一丁目32番地8

7,211+4,079(1/2)

4,444

15

ヴィクトリア

札幌市清田区平岡五条一丁目32番地11等

3,091

 

合計

 

35,689

47,723

(注)記載面積は小数点以下を四捨五入して表示しています。

*信託先  三菱UFJ信託銀行株式会社

*信託期間 2024年12月25日~2034年12月31日

 

(2)信託受益権譲渡契約

*契約先  合同会社Pj SNOW

 

(3)マスターリース契約 兼 建物管理委託契約

*契約先  三菱UFJ信託銀行株式会社

*契約内容 上記(2)信託受益権譲渡契約の対象と同一の不動産に対する賃貸借契約

*契約期間 契約条件による

*対価   契約条件による

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。