以下は、YCP Holdings (Global) Limited(以下、「当社」といいます。)を規律するシンガポールの法的枠組について概略を述べたものです。なお、以下の記載は全てを網羅するものではありません。
法制度
シンガポールは、判例法と制定法の組合せに基づくコモン・ロー制度を有します。
シンガポール会社法(Companies Act 1967 of Singapore)(以下、「シンガポール会社法」といいます。)は、シンガポール法に基づき設立された会社に適用される主要な制定法です。
設立
シンガポールにおける会社の設立は、シンガポール会計企業規制庁(Accounting and Corporate Regulatory Authority of Singapore)(以下、「ACRA」といいます。)に対して、特定の電子書式を設立計画中の会社の定款及びその他所定の文書と共に提出することにより行うことができます。
定款
シンガポール法に基づき設立された会社の定款(以下、「定款」といいます。)には、通常、株式資本及びそれに付随する権利の変更、株式の移転及び譲渡、株主総会、取締役及び取締役会、取締役の権限及び任務、会計、配当及び準備金、利益の資本組入、秘書役、社印、解散並びに会社の役員に対する免責などガバナンスに関する会社についての規定が定められます。
株主の権限
シンガポール会社法においては、会社の株式に額面価値又は名目価値はなく、シンガポール法に基づき設立された会社について、授権資本の概念は存在しません。また、シンガポール会社法に基づき設立された会社は、該当する場合、当該株式の保有者の資本の償還、余剰資本及び利益への参加、累積的/非累積的配当、議決権並びにその他の株式又は優先株式のその他の各クラスに関する資本及び配当の支払優先順位に関する権利について定款に定めがある場合のみ、優先株式を割り当て、発行し、又は、発行済株式を優先株式に転換することができます。
会社の株主は、自ら又は代理人によって、株主総会に出席し、株主総会において発言し議決権を行使することができます。
また、会社の株主は、シンガポールの裁判所に対して、以下を根拠としてシンガポール会社法に基づく命令を発するように申立てることができます。
・ 申立人を含む株主又は社債権者に対して抑圧的な方法で又は株主の利益を無視して、会社の事業運営又は当社の取締役(以下、「取締役」又は「取締役会」といいます。)の権限が行使されている場合。
・ 申立人を含む株主もしくは社債権者を不当に差別するもしくは他の方法によりそれらの株主に不利益を与える措置について、会社が講じもしくは講じるおそれがあり、又は株主総会により決議され、もしくは株主総会に提案された場合。
そのような申立てにあたって、シンガポールの裁判所は、上記のいずれかの根拠が成立すると考える場合、申立てのあった問題を終結させ又は救済するために、同裁判所が適切と判断する命令を発することができます。
また、会社の株主(以下、「株主」といいます。)は、シンガポール会社法及び定款に定める条件に従い、株主総会又は取締役会の決議がある場合には、配当を受領することができます。
株主総会
シンガポール会社法に基づき設立された会社は、シンガポール会社法に従って年次株主総会を開催することを義務づけられています。シンガポールにおける認可取引所に上場している公開会社を除き、年次株主総会は、ACRAにより延長されない限り、各会計年度の終了後6か月以内に開催される必要があります。
取締役会は、同取締役会が適当と認めるときは臨時株主総会を招集することができ、また株主が株主総会の開催を書面で請求した場合には、定款の規定にかかわらず臨時株主総会を招集しなければなりません。ただし、当該株主が、当該請求を行う時点で株主総会における議決権を伴う会社の払込済株式の総数の10%以上を保有していることが条件となり、取締役は、実務上可能な限り速やかに、ただし、いかなる場合も請求を会社が受領してから2か月以内に開催される臨時株主総会を正当に招集するための手続に直ちに着手しなければなりません。
適用される法律又は定款により別途義務づけられている場合を除き、株主総会での決議は普通決議により、単純過半数(すなわち、当該株主総会で行使された議決権の50.0%以上)により可決されるか、又は、適用法若しくは定款により当該決議につきより多くの割合の賛成が必要とされる場合は、株主総会に出席し投票する株主のうち、当該割合の賛成票により可決されます。例えば、定款に別段の定めがある場合を除き、以下の事項(これらに限られません。)は普通決議によります。
・ 株主資本の変更
・ 取締役の選任及び解任
・ 事業又は財産の全部もしくは実質的に全部を処分するための承認
・ 取締役の報酬の支払い又は増額の承認
会社の株主総会は、特別決議の採択のために行うものを除き、14日以上又は定款に定めるこれより長い期間より前の書面による通知によって招集される必要があります。
他方で、特別決議は、当該総会に出席し投票する株主(又は代理人の出席が認められている場合には、当該株主総会に出席した代理人)の75%以上の多数により可決されなければなりません。特別決議は、シンガポール会社法に基づき、一定の事項(以下を含みますが、これらに限られません。)を決議するために必要とされます。
・ 任意清算
・ 定款の変更
・ 社名変更
・ 減資
当該特別決議について、特別決議として当該決議を提案する意図を明記した、21日以上前の書面による通知が正式に行われる必要があります。
取締役及び取締役会
会社の事業運営は会社の取締役が決定又は監督し、各取締役はシンガポール会社法及び定款において株主総会の決議事項とされたもの以外の全ての会社の権限を行使することができます。
各会社は、シンガポールに通常居住する取締役を少なくとも1名置く必要があります。シンガポール会社法又は定款もしくは会社との契約のいかなる定めにもかかわらず、取締役は、シンガポールに通常居住する取締役が会社に1名も残らない場合には、辞任又は辞職することができず、上記に違反して企図された辞任又は辞職は無効となります。
取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会における普通決議により選任され、また解任されます(辞任又は辞任する取締役の権限は妨げられません。)。公開会社は、定款のいかなる定めにも、又は取締役と会社との間のいかなる合意にもかかわらず、株主総会の通常決議により取締役の任期満了前に取締役を解任することができ、当該決議についての特別通知(当該決議が提出された総会の28日以上前に行うものとします。)が必要となり、会社は、その受領後直ちに取締役を解任する旨の当該決議予定通知の写しを当該取締役に送付しなければならず、当該取締役は、当該株主総会の決議について聴き取りを受ける権利を与えられます。
シンガポール会社法において、会社における役員にはその会社の取締役もしくは会社秘書役又は会社がその役員として雇用する者が含まれるものとして定義されています。シンガポール会社法において、取締役は、名称の如何を問わず、会社の取締役の地位に就く者、慣習的に会社の取締役もしくはその大多数がその者の指示又は命令により行為することになっている者、及び会社の予備取締役又は代替取締役が含まれるものとして定義されています。取締役は、会社の従業員である必要はありませんが、取締役である者は、会社の別の業務執行役員職に就くことができ、後者の資格においては取締役も従業員であり得るものとして取り扱われます。
各取締役は、その立場に基づき、会社の信任に基づく立場にあります。制定法及びコモン・ローに基づく義務は取締役である全ての者に課され、この義務に違反すると刑事責任又は民事責任を問われる可能性があります。かかる義務には、注意及び技能に関連する義務、及び会社の利益を最優先して誠実に行為する義務、並びにその職務の履行に際しては常に誠実に行動し相当の努力を払うというシンガポール会社法に基づく法定の義務などを含みます。取締役は、自己の利益と会社に対する自己の義務が相反する状況に我が身を置くことを容認されていません。シンガポール会社法では、直接か間接かを問わず会社との取引又は取引提案に何らかの形で利害関係を有する取締役は全て、関連する事実を知った後可及的速やかに、取締役会で自らの利害関係の性質を宣言するか、又は会社との取引又は取引提案における自らの利害関係の性質、特性及び範囲に関する詳細を記載した書面による通知を会社に送付しなければなりません。上記の目的上、取締役の家族の構成員の利益は、取締役の利益として取り扱われます。
解散又はその他資本の償還
会社の解散又はその他資本の償還の際には、株式を保有する者は、各自の持分に応じて残存又は関連する資産の分配に参加する権利を有します。ただし、債権者や出資者等の権利及び他の種類の株式に特別の参加的権利が付帯している場合は当該権利に従います。
会社の解散は、シンガポールの裁判所による場合もあれば、任意による場合もあります。会社は、(a)定款によって会社の存続期間中と定められている期間の定めがある場合には、当該期間が満了した場合、もしくは定款によって会社の解散事由が定められている場合には、当該事由が発生した場合、そして会社が総会において会社の任意解散を求める決議を採択した場合、又は(b)会社が解散の特別決議をした場合、任意に清算することができます。シンガポールの2018年倒産・再編・解散に関する法律(2018年第40号)は特に、会社の倒産と解散に関する法律に適用される主要な制定法です。
当社の会社制度は、当社の設立準拠法であるシンガポール法のほか、当社の定款により定められます。
株式
現在、当社の発行済み株式は1種類、すなわち普通株式のみです(以下、「本株式」といいます。)。本株式は、全ての点において同一の権利を有しており、いずれも同順位です。当社の取締役は、シンガポール会社法及び当社の定款に従うことを条件として、当社の株主総会決議があることを条件に取締役会が決定する優先権、劣後権、もしくはその他特別な権利又は配当、議決権、資本の償還その他に関するかを問わず、かかる制限のついた当社株式を発行することができます(定款第10条)。
本株式は全て記名式株式です。当社は、シンガポール会社法の規定に従うことを条件に、かつ同法に従い、当社が随時適切と考える条件及び方法で、当社の発行済みの本株式を取得することができます。シンガポール会社法により要求される場合、当社が上記により購入又は取得する株式は、自己保有されていない限り、当社による購入又は取得時に直ちに消却されたものとみなされ、当該株式に付随する権利及び特権は失効します(定款第9条)。
ただし、シンガポール会社法で認められる場合を除き、当社は、直接か間接かを問わずいかなる者に対しても、シンガポール会社法に基づき定められる一定の例外に基づく場合を除き、本株式の取得又は取得計画を目的として、又はそれに関連して資金援助を行うことはできません。
シンガポール会社法では、各会社は株主名簿を保管し、株主名簿には特に、株主の氏名及び住所並びに過去7年間に株主として名簿に記載されたか又は株主でなくなった日を記載します。当社の株主名簿は、シンガポール会社法により要求され、又は認められる、そこに記載されたあらゆる事項を推定する証拠となります。
新株の発行
当社は、株主総会で当社株主の事前の承認を得た場合に限り、当社の資本として新株を発行することができます(定款第8条)。
株式の譲渡
定款に定める制限に従うことを条件として、株主は、通常の書式又はその他取締役会が定款(定款第28条)に従い承認した書式で、適正に署名された株式譲渡証書を用いることにより、自己名義で登録されている本株式を譲渡することができます。定款の定めにかかわらず、シンガポール会社法第130条では、公開会社は、適切な譲渡証書が交付されない限り株式又は社債の譲渡を登録できません。ただし、法律の運用により会社の株式に対する権利を移転されたものを株主として登録する権限には影響しません。会社法その他適用のある法律に従うことを条件として、取締役は、その絶対的な裁量により、本株式の譲渡通知の提出を拒否することができ、かかる拒否の理由を提示し、又は譲渡拒否の根拠を示す義務を負いません。取締役は、特に、本株式が全額払込済みでないかもしくは先取特権が付されている場合、又は株式譲渡に関する定款の規定(定款第32条第1項)が遵守されていない場合、本株式の譲渡通知の提出を拒否することができます。シンガポール会社法第130条ABでは、会社が株式、社債その他の会社の持分の譲渡の登録を拒否する場合、会社は、株式譲渡が会社に提出された日から30日以内に、譲渡人及び譲受人に拒否の通知を送付しなければなりません。
譲渡登録は、当社年次株主総会直前の14日間又はかかる他の時期(もしあれば)及び取締役が適時決定する当該期間に閉鎖することができますが、いかなる年においても30日及び取締役が本株式の譲渡に係る通知の提出を停止できる期間を超えては閉鎖されません(定款第35条)。
摩損、汚損、毀損又は紛失した株券については、交換の申込みをする者が2シンガポールドルを超えない手数料(取締役はこれを随時要求することができます。)を支払い、摩耗又は汚損の場合には当社取締役会が要求する証拠の提出と旧株券の引渡しと引き換えに、毀損又は紛失の場合には補償(もしあれば)の実行の証拠と引き換えに、当社はこれを交換します。また、毀損又は紛失の場合、交換用の株券の交付を受ける株主は、損失を負担し、当該毀損又は紛失の証拠に関する当社の調査及び当該補償に伴い発生した一切の費用を当社に支払うものとします(定款第16条)。
株主総会・議決権
年次株主総会及び臨時株主総会については、少なくとも14日前に書面で通知しなければなりませんが、特別決議又はシンガポール会社法に基づき特別通知がなされた決議の採択が提案されている株主総会については、少なくとも21日前に書面で通知が行われなければなりません(定款第61条第1項)。当該通知は、当該総会に出席し、投票する権利が付帯する本株式を保有する株主で、当該総会の招集時に当社の本株式に関して同人により現在支払われるべき全ての払込請求額又はその他の金額を払い込んでいる全員に対して行う必要があります。当社の取締役(代理取締役を含みます。)及び監査役は、当該総会の場所、日時及び特別な議題のある場合は当該議題の要項を含む一定の事項を明記しなければなりません。
総会において定足数を満たすためには、2名の株主が本人自ら又は代理人により当該総会に出席しなければなりません(定款第63条第1項)。定款は、議決権を有する株主は、本人自ら又は代理人により議決権を行使することができ、投票に際しては、本人自ら、その代理人又はその他正当に権限が与えられた代表者により出席した当社の株主は、その保有する株式1株につき1議決権を有すると定めています(定款第74条)。本受益権の受益者による議決権の行使に関する手続は、「第8 本邦における提出会社の株式事務等の概要」の「2 受益者の権利行使方法 (1)議決権行使に関する手続」をご参照ください。
賛否同数となった場合は、株主総会の議長が追加票又は決定票を投じる権利を有します(定款第68条)。
国外に居住する株主又は外国株主による株式保有及び議決権に関する制限
シンガポール会社法及び定款は、非居住者である又は外国の株主の本株式に付随する議決権を保有し又は行使する権利に対し、一切の制限を課していません。
配当
当社は、株主総会の普通決議により配当を宣言することができますが、当社取締役会が勧告した金額を超えて配当金を支払うことはできません。
当社取締役会は、自ら適当と考え、当社の状態が当該支払いを正当化すると考える場合、随時、株主の承認なく、中間配当を宣言し、これを支払うことができます。
当社は、配当金を当社の配当可能利益のみから支払わなければなりません(シンガポール会社法第403条及び定款第121条)。
本株式もしくは種類株式に付随する権利又は制限を前提として、かつシンガポール会社法に基づき別途認められる場合を除き、全ての配当金は、(a)株主が保有する本株式数に比例して株式に対する支払いに充当されますが、本株式の一部につき支払われる場合、全ての配当は、部分的に支払われた本株式について支払われ又は支払済みとして記録された金額に応じて配分及び支払いが行われ、また(b)配当金支払の対象期間の一部期間について現に支払われ又は支払済みとして記録された額の割合に応じて配分され支払われます(定款第117条第1項)。
別段の指示がない限り、配当金は、株主の最新の登録住所又は共同保有者の場合には、当社の株主名簿に先に名前が記載されている共同保有者の最新の登録住所に宛てて各株主に郵送される小切手又は金銭支払証券をもって直接に支払うことができます(定款第125条)。
取締役会
当社取締役会は、当社の経営全体についての責任を委ねられています。取締役は、シンガポール会社法もしくはその他適用のある法律又は定款により当社が株主総会において行使することが義務づけられている権限を除き、定款の全ての権限を行使することができます(定款第99条)。定款は、当社取締役会が通常シンガポールに居住する取締役を少なくとも1名置くことを規定しています(定款第83条)。
役員への補償
定款では、シンガポール会社法又はその他適用のある法律に従うことを条件として、当社の各役員は、当社役員が、過失、不履行、義務違反又は信任義務違反について当社以外の者が被った債務につき、その一切の責任(ただし、シンガポール会社法第172条B(1)(a)又は(b)に定める責任を除きます。)について当社の資産からの補償を受けることができる旨を定めています(定款第143条)。
シンガポール会社法に基づき、会社に関連する過失、債務不履行、義務違反又は信任違反に関連して同社の役員に生じる責任を免除する規定はその範囲を問わず効力を有しません。さらに、シンガポール会社法に基づき、ある会社が、当該会社に関する過失、不履行、義務違反又は信任違反に関連して自社の役員に発生した債務について、当該役員のために直接的又は間接的に補償を行う旨の規定はその範囲を問わず効力を有しません。ただし、当該会社が、当該債務に対して役員保険を付保している場合、又は当該役員が当該会社以外の者に対して負担する債務(ただし、シンガポール会社法第172条B(1)(a)又は(b)に定める債務を除きます。)についての補償規定は、この限りではありません。シンガポール会社法第172条B(1)(a)は、その発生経緯を問わず、刑事訴訟手続に係る罰金又は規制の性質を有する義務の違反に関連して制裁として規制当局に支払う金額の支払いについての役員の責任を定め、シンガポール会社法第172条B(1)(b)は、役員が有罪判決を受けた刑事訴訟の防御、役員に対し判決が下された、会社又は関連会社が提起した民事訴訟手続の防御又は裁判所が救済を認めなかった救済の申請において当該役員が負う責任を定めています。
本書の日付時点で、シンガポールにはいかなる外国為替管理規制も存在しません。
(1) シンガポールにおける特定の所得税、印紙税、相続税及び消費税(以下、「GST」といいます。)の効果
以下の記述は、本株式の取得、保有又は処分に伴うシンガポールの特定の所得税、印紙税、相続税及び消費税の効果について要約したものです。この記述はシンガポールの現行の税制に基づいており、法律上又は税務上のアドバイスを構成するものではなく、そのように意図されているものでもありません。本記述は現行の税法又はその解釈の変更により影響されるものであり、かかる変更は遡及的である場合もあります。本記述は本書の日付時点で有効な法律の正確な解釈であると考えられますが、かかる法律を管轄する裁判所又は財務当局がこの解釈に同意すること及びかかる法律に今後変更がないことについては、いずれも一切保証はありません。
本記述は本株式の購入、保有又は処分に関するシンガポールにおける特定の税の効果についての概要にすぎず、当社がシンガポールにおいてシンガポール所得税務を目的とする税務上の居住者であることを前提としています。本書における記述は、本株式の取得、保有もしくは処分の決定に関わる全ての税務上の検討事項を包括的又は網羅的に記載することを意図してはおらず、特定の規則が適用される投資家の税務上の取扱いに対応するものではありません。
一般事項
シンガポールの税務上の居住者である法人納税者は、シンガポールで発生し又はシンガポールを源泉とする所得のほか、一定の例外を除き、シンガポール国内で受け取り又は受け取ったとみなされる外国源泉所得に対して、シンガポールの所得税の適用を受けます。外国源泉所得のうち、シンガポールの税務上の居住者が2003年6月1日以降、シンガポール国内において受け取り又は受け取ったとみなされる配当金、支店の収益及び役務に対する所得については、以下を含む一定の条件を満たす場合であれば課税が免除されます。租税優遇措置により外国において実質的な事業活動を行うことが認められた結果当該外国において課税の免除(源泉徴収税)を受けた外国源泉所得についても、所定の要件を満たせば課税の免除が行われます。
一部の例外を除いて、シンガポールの税務上の居住者である個人は、シンガポールで発生し又はシンガポールを源泉とする所得に対してシンガポールの所得税の適用を受けます。2004年1月1日以降シンガポール国内においてシンガポールの税務上の居住者である個人が受け取った、又は受け取ったとみなされる全ての外国源泉所得(シンガポール国内のパートナーシップを通じた受け取り所得を除きます。)は、税額控除の対象とされます。
税務上の非シンガポール居住者である法人納税者の場合は、一定の例外はありますが、シンガポールで発生し又はシンガポールを源泉とする所得、並びにシンガポール国内で受け取り又は受け取ったとみなされる外国源泉所得に対して、所得税の適用を受けます。税務上の非シンガポール居住者である個人は、一定の例外はありますが、シンガポールで発生し又はシンガポールを源泉とする所得に対して、所得税の適用を受けます。
法人の場合は、その事業の管理及び経営がシンガポール国内において実施されている場合、シンガポールの税務上の居住者とみなされます。個人の場合は、課税年度の前年度に通算183日以上物理的にシンガポール国内に所在しもしくはシンガポールにおいて(取締役として以外の)従業員として雇用に従事していたか、又は当該課税年度においてシンガポールに常時居住している場合、シンガポールの税務上の居住者とみなされます(ただし、その一時的不在が合理的なものであり、かつ当該個人がシンガポールの居住者であるとの主張に反しない場合を除きます。)。
シンガポールの現行の法人税率は17.0%です。
また、2020年度を最初の課税年度として、会社の課税対象所得のうち1万シンガポールドルまでの部分の75.0%、並びに1万シンガポールドル以上19万シンガポールドルまでの部分の50.0%が、法人税の適用を免除され、(当該免除後の)残余部分については全額、現行の法人所得税率による課税の対象とされます。
シンガポールの税務上の居住者である個人に対しては、当該個人の課税対象所得によって税率が異なり、現行の最高税率は22.0%です。2022年度シンガポール予算案(以下、「2022年度予算案」といいます。)で公表されたとおり、2024年の課税年度から、シンガポールの税務上の居住者である個人に対する個人所得税の最高税率は22.0%から24.0%に引き上げられる予定です。
税務上の非シンガポール居住者である個人の場合、給与所得に対する税率は、(i)一律15.0%(許容される個人的救済措置のための控除なし)、又は(ii)累進居住者税率(許容される個人的救済措置のための控除あり)のいずれか高い方で課されます。その他のシンガポールを源泉とする課税所得については、一律22.0%の税率が課されます。2022年度予算案で公表された通り、2024年の課税年度から、税務上の非シンガポール居住者である個人の所得税率は22.0%から24.0%に引き上げられる予定です。
グローバル税源浸食防止モデルルール(第2の柱)
グローバル税源浸食防止モデルルール(第2の柱)は、シンガポールにおいて、2024年多国籍企業(ミニマム課税)法(以下、「MMTA」といいます。)により実施されています。MMTAにより、(a)多国籍企業トップアップ課税(以下、「MTT」といいます。)、及び(b)国内トップアップ課税(以下、「DTT」といいます。)が導入されています。
MMTAは、2025年1月1日以降に開始する会計年度において、当該会計年度直前の4会計年度のうち少なくとも2会計年度の当該グループの年次連結グループ収益(当該グループの最終親会社の連結財務諸表を参照して決定されます。)が7億5,000万ユーロ以上である多国籍企業(以下、「MNE」といいます。)グループに適用されます。
MTTは、シンガポール所在の親会社の、シンガポール国外の関連事業体及び無国籍事業体に対する持分に適用されますが、国内事業体に対する持分には適用されません。MTTの最低税率は15.0%で、トップアップ税額は、MNEグループの管轄区域ごとに算定される実効税率(以下、「ETR」といいます。)を用いて計算されます。MTTの課税規定は、MMTA第12条に記載されており、以下の場合に事業体に対してMTTが課されます。
1. 当該会計年度中のいずれかの時点において、当該事業体がMNEグループの責任社員である場合。
2. 当該MNEグループが当該会計年度において、対象範囲内のMNEグループである場合。
3. 当該会計年度中のいずれかの時点において、当該事業体がMNEグループの他の構成事業体(以下、「CE」といいます。)に対する持分を保有している場合。
4. 他のCEがシンガポール国外の法域に所在する事業体又は無国籍事業体であり、当該会計年度においてトップアップ税額を有している場合。
5. 当該事業体がシンガポールに所在している場合。
DTTは、シンガポールに所在する一部のCEに対し、ETRを15.0%以上に引き上げるためのトップアップ課税を行います。DTTの課税規定はMMTA第28条であり、以下の場合に当該会計年度におけるMNEグループに対するDTTと同等のDTTを課します。
1. MNEグループが対象範囲内のMNEグループである場合。
2. 当該MNEグループのCEのうち少なくとも1社がシンガポールに所在している場合又は(a)シンガポールの法律に基づいて設立、組織、法人化もしくは登録されたフロースルー・エンティティであり、(b)責任社員ではなく、かつ(c)その収入、支出、利益もしくは損失のいずれかに関してリバース・ハイブリッド・エンティティである場合。
3. MNEグループが当該会計年度においてトップアップ税額を有している場合。
対象範囲内のMNEグループには、様々な行政上の要件が適用されます。これには、MMTAに基づく登録を行うこと、シンガポールのCEを指定現地DTT申告事業体(以下、「DFE」といいます。)/指定現地GIR申告事業体(以下、「GFE」といいます。)として指定すること、MTT及びDTT申告書を提出すること並びにGloBE情報申告書(以下、「GIR」といいます。)を提出することが含まれます。
ただし、除外事業体はMTT及びDTTの対象外となります。除外事業体の収益は、MNEグループが対象範囲内であるかどうかを判断する際には考慮されますが、除外事業体の利益、損失、未払税金、有形資産、給与支出などの属性は、デミニマス要件を含むMTT及びDTTの様々な計算から除外されます。さらに、当該除外事業体は、MTT及びDTTに基づく行政上の義務(例えば、GloBE情報申告書の提出など)の対象外となります。除外事業体には、政府事業体、国際機関及び非営利組織が含まれます。
さらに、MTT及びDTT制度は、MNEグループのコンプライアンス負担の軽減に資するセーフハーバーを設けています。ある管轄区域についてMNEグループによってセーフハーバーが選択された場合、当該管轄区域におけるMNEグループの適格事業体のトップアップ税額はゼロとみなされます。シンガポールは現在、以下の3つのセーフハーバーを設けています。(i)移行期間CbCRセーフハーバー。(ii)簡易計算セーフハーバー。(iii)QDMTTセーフハーバー。
対象範囲内のMNEグループがMTT及びDTTに関する義務を履行しない場合、MMT法に基づき罰則が科されることがあります。MTT及びDTTの規則は新規のものであるため、MNEは規則を熟知するために時間を要します。一部のMNEから、当該規則が複雑であるとのフィードバックが寄せられていることを踏まえ、シンガポール内国歳入庁は、MNEグループが規則の適切な適用を確保するために合理的な措置を講じたことを証明できる場合、2025年度からの最初の3会計年度において、軽微な対応を採用します。
配当金の分配
シンガポールは、一段階法人税制度(以下、「一段階法人税制」といいます。)を採用しています。一段階法人税制の下では、税務上シンガポールの居住者である会社が支払う税は、最終的なものとされます。税務上シンガポールの居住者である会社が支払う全ての配当金は、株主が税務上の居住者であるか否かにかかわらず、かつ当該株主が法人であるか個人であるかにかかわらず、その株主の手元においてシンガポールでは課税が免除されます。
シンガポールでは、居住者及び居住者ではない株主に支払われた配当金について、源泉課税を課していません。
株式の売却利益
当社株式の売却により得られる資本の性質を有するとみなされる利益に対しては、2024年1月1日に施行された1947年シンガポール所得税法(以下、「SITA」といいます。)の新しい第10条第L項に該当しない限り、シンガポールでは課税されません。当社株式の売却によって得られる利益は所得として解釈される場合があり、所得税の監査官がシンガポールにおける取引、事業、専門職又は職業の遂行とみなす活動から発生したものである等当該活動に関連付けられるキャピタルゲインである場合は、シンガポールの所得税の対象となり得、シンガポールにおいて課税される場合があります。当社株式がシンガポールでの長期投資目的の保有ではなく、売却により利益を得る意図や目的で取得された場合、当該利益が通常の取引や事業の過程における活動やその他の事業活動の通常の付随行為から生じたものではない場合でも、当該利益は本質的に所得とみなされる可能性があります。他方、シンガポールでの当社株式の処分による利益は、シンガポール税務当局(Inland Revenue Authority of Singapore )が所得ではなくキャピタルゲインとみなした場合、シンガポールでは課税されません。
以下の一定の例外及びSITA第10条第L項を除き、SITA第13条第W項では、2012年6月1日から2027年12月31日までの期間(両日を含みます。)に法人納税者が普通株式の処分から得た利益について、非課税とすることを定めています。
(i) 株式を処分する会社が、株式を処分される会社の普通株式の20.0%以上の株式を合法かつ有益に保有していた場合。
(ii) 株式を処分する会社が、処分直前の少なくとも24か月間にわたって継続して20.0%以上の株式を保有していた場合。
SITA第13条第W項に規定される上記の「セーフハーバー・ルール」は、以下の場合(ただし、これらに限定されません。)、株式を処分する会社には適用されません。
(i) 株式の処分による利得又は収益が、第26条(保険会社の利益に関する規定)で言及された会社の所得の一部として含まれる株式の処分。
(ii) シンガポールの不動産の取引業又は主に保有事業を行う会社(不動産開発を除く)で、その株式がシンガポール又はその他の国の証券取引所に上場していない会社の、2022年6月1日以前の非上場株式の処分。
(iii)(シンガポール又はその他の国に所在する)不動産取引業を行う会社、又は主に(シンガポール又はその他の国に所在する)不動産保有事業を行い、事業が活発ではないか無収入である会社、又は(シンガポール又はその他の国において)不動産開発事業を行う会社の、2022年6月1日以降の非上場株式の処分。ただし、当該不動産が、取引収入を得るため会社自身の事業のために開発されたものであり、かつ、当該会社が株式の処分前の過去60か月間にいかなる不動産開発事業も行っていない場合は、この限りではありません。
(iv) 組合員の一人又は数人が会社である、組合、有限責任組合又は有限責任事業組合による株式の処分。
SITA第10条第L項に基づき、関連グループの事業体がシンガポール国外の動産又は不動産を売却又は処分したことによりシンガポール国内で得た利益は、一定の状況においてはSITA第10条(1)(g)に基づき課税対象となる所得として扱われます。登記された株式、持分証券又は有価証券は、会社の設立地にかかわらず、登記簿または主たる登記簿(複数の登記簿がある場合)がシンガポール国外にある場合、シンガポール国外にあるものとみなされます。当社の株式が外国資産とみなされた場合において関連グループの事業体(除外事業体を除きます。)が2024年1月1日以降に当社の株式を処分した場合、その処分益は課税対象となります。事業体は、その資産、負債、収益、費用及びキャッシュ・フローが、(a)グループの親会社の連結財務諸表に含まれている場合又は(b)グループの親会社の連結財務諸表から、規模もしくは重要性のみを理由として又は売却目的保有であることを理由として除外されている場合、事業体グループのメンバーとされます。グループは、(i)当該グループの事業体の全てがシンガポールで法人化、登記又は設立されていない場合又は(ii)グループの事業体の全てがシンガポール国外に事業所を有している場合、関連グループとなります。除外事業体とは、SITA第10条第L項に定義されており、第10条第L項に列挙されている要素を考慮すると、純粋な持分保有会社又はシンガポールにおいて十分な経済的実体を持たないその他の事業体が含まれます。
投資家が、当社の株式の処分によりシンガポールで利益を得た場合、適用される税務上の取り扱いについて、各自の税務アドバイザーに相談することが推奨されます。
さらに、シンガポールの所得税の目的上、会計の目的上シンガポール財務報告基準(国際版)(以下、「SFRS(I)」といいます。)第9号「金融商品」を採用し又は採用しなければならない法人株主は、当社株式の売却又は処分が行われていない場合でも、SFRS(I)第9号の規定(シンガポール所得税法の適用ある規定による修正後のもの)に従い、(キャピタルゲインやロスではない所得についての)損益の認識を要求される場合があります。この場合、かかる税務上の扱いの対象となりうる株主は、当社株式の取得、保有及び処分に関して、シンガポールの所得税制上、SFRS(I)第9号の採用により生じうる効果について、各自の会計及び税務アドバイザーに相談すべきです。
印紙税
株券の形式で証される当社株式がシンガポールにおいて譲渡される場合で、当社がシンガポールにおいて株式原簿を維持している場合、株式の支払われる対価又は市場価格のいずれか高い方に基づいて計算される0.2%の料率で、株式の契約又は譲渡証書について印紙税の支払義務が生じます。かかる印紙税は、その契約がシンガポールにおいて最初に締結された後14日以内に、シンガポール国外で最初に締結された場合は、シンガポールで最初に受領された後30日以内にそれぞれ支払う必要があります。シンガポール国外で締結された電子的契約は、以下のいずれかの場合、シンガポール国内で受領されたものとして扱われます。(a) 電子的契約がシンガポール国内の者によって検索もしくはアクセスされた場合、(b) 電子的契約の電子的コピーがデバイス(コンピュータを含みます。)に保存され、シンガポール国内に持ち込まれた場合、又は(c)電子的契約の電子的コピーがシンガポール国内のコンピュータに保存された場合。
印紙税は、別段の合意がない限り買主が負担します。
譲渡契約書又は譲渡証書が作成されず(例えば、無記名株式の場合、譲渡に契約又は合意の締結が必要とされないもの)、又はシンガポール国外で作成された場合は、株式の譲渡において印紙税は課税されません。ただし、譲渡契約書又は譲渡証書がシンガポール国外で作成され、シンガポール国内において受領された場合には、印紙税の課税対象となります。
相続税
2008年2月15日をもってシンガポールの相続税は全面的に廃止されました。
消費税(GST)
株式の譲渡は、1993年物品及びサービス税に関する法律の第4附則に基づきGSTを免除されています。
GSTの目的のためにシンガポールに帰属するGST登録投資家による、シンガポールに帰属する別の者への株式の売却は、GSTが課されない免除された供給となります。免除された供給の実施に関連してGST登録投資家が負担した納入済みのGST(例えば、仲介手数料に対するGST)は、通常、シンガポールのGST監査官から回収することはできず、投資家がGST法に基づいて規定された一定の条件を満たすか、一定のGST特権を満たさない限り、投資家の追加費用となります。
GST登録投資家が、シンガポール国外に帰属する者に対し、直接利益をもたらすため、当該投資家が契約上行う事業の過程において、又は事業を推進する上で株式を売却する場合、一定の条件を満たすことを条件に、一般的に、当該売却は0%のGSTの課税対象となる供給とみなされます。GST登録投資家が事業の過程において、又は事業を推進する上で当該供給を行う際に負担した納入済みのGST(例えば、仲介手数料に対するGST)は、シンガポールのGST監査官から全額回収できる可能性があります。
消費税に関する登録者がGSTの課税上シンガポールに帰属する投資家に対し当該投資家の株式の取得、売却又は保有に関連して提供した仲介、取扱い又は決済などのサービスについては、現行の標準税率9.0%で消費税が課されます。シンガポール国外に帰属する投資家に対して、その直接的な利益のため契約により提供される類似のサービスに課される消費税の税率は、当該投資家との間で完全にその事業上の立場で契約が締結されており、その事業上の立場がシンガポール国外に帰属しており、完全にその事業上の立場で同人に直接的に利益をもたらしており、その事業上の立場がシンガポール国外に帰属している場合又はシンガポールに帰属するGST登録者である場合、基本的に0%です。
(2) 日本における課税上の取扱い
「第8 本邦における提出会社の株式事務等の概要 2 受益者の権利行使方法 (4) 配当等に関する課税上の取扱い」をご参照ください。
当社のシンガポール法カウンセルであるラジャ・タン法律事務所(Rajah & Tann Singapore LLP)から以下の趣旨の法律意見書が提出されています。
(1) 当社はシンガポール法に基づき適式に設立され、有効に存続していること。
(2) 本書の「第1 本国における法制等の概要」における記載は、かかる記載が本書で引用されているシンガポールの法的事項の要約を構成する限りにおいて、本書に記載されている事項を公正に要約していること。