第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

 

回次

第21期

第22期

第23期

第24期

第25期

決算年月

2020年5月

2021年5月

2022年5月

2023年5月

2024年5月

売上高

(千円)

24,900,793

28,845,675

32,405,568

35,158,816

38,253,042

経常利益

(千円)

1,449,236

2,167,283

2,591,487

2,269,326

2,527,424

親会社株主に帰属する
当期純利益

(千円)

928,008

1,655,401

1,776,891

1,678,180

1,833,227

包括利益

(千円)

932,715

1,662,203

1,776,891

1,678,180

1,833,227

純資産額

(千円)

3,025,965

4,214,084

6,605,774

7,841,894

9,192,904

総資産額

(千円)

7,446,984

8,487,223

10,490,692

12,207,044

14,096,851

1株当たり純資産額

(円)

235.52

328.85

481.82

564.24

652.58

1株当たり当期純利益金額

(円)

72.50

129.33

136.40

122.14

131.15

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益金額

(円)

133.74

119.69

127.46

自己資本比率

(%)

40.5

49.6

62.9

64.2

65.2

自己資本利益率

(%)

34.1

45.8

32.9

23.2

21.5

株価収益率

(倍)

10.35

14.96

14.06

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,553,024

1,476,453

1,586,673

1,533,497

2,569,473

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

387,534

302,396

366,266

611,999

894,215

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

567,988

713,864

580,693

438,205

492,853

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

2,168,421

2,628,614

4,429,714

4,913,008

6,095,412

従業員数
〔ほか、平均臨時
雇用人員〕

(名)

530

3,890

620

4,555

661

5,143

666

5,485

698

6,161

 

(注) 1.2021年4月13日付で普通株式1株につき10株の割合で株式分割を、2021年10月22日付で普通株式1株につき200株の割合で株式分割を行っております。これに伴い、第21期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して1株当たり純資産額、1株当たり当期純利益金額、潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額を算定しております。

2.第21期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

3.第22期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため記載しておりません。

4.第23期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、2022年3月2日に東京証券取引所市場第一部(提出日現在東京証券取引所プライム市場)に上場しているため、新規上場日から第23期末までの平均株価を期中平均株価とみなして算定しております。

5.第21期及び第22期の株価収益率は当社株式が非上場であるため記載しておりません。

6.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第23期の期首から適用しており、第23期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

7.従業員数は期末時点の正社員数であり、当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む就業人員数になります。

8.従業員数〔 〕内に外数で記載しております「平均臨時雇用人員」は、契約社員およびアルバイトの年間平均雇用人員(1日8時間換算)であり、派遣社員を除いております。臨時雇用人員の主たる業務はオペレーターとなります。

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

第21期

第22期

第23期

第24期

第25期

決算年月

2020年5月

2021年5月

2022年5月

2023年5月

2024年5月

売上高

(千円)

24,874,411

28,811,706

32,376,725

35,129,848

38,191,566

経常利益

(千円)

1,430,195

2,113,207

2,534,036

2,201,588

2,588,150

当期純利益

(千円)

922,645

1,630,005

1,748,331

1,645,464

1,866,673

資本金

(千円)

100,000

100,000

692,200

794,133

893,598

発行済株式総数

(株)

6,400

64,000

13,700,000

13,893,200

14,083,200

純資産額

(千円)

3,006,943

4,180,949

6,544,080

7,747,487

9,131,946

総資産額

(千円)

7,417,367

8,441,933

10,382,391

11,999,814

13,945,554

1株当たり純資産額

(円)

234.92

326.26

477.32

557.44

648.26

1株当たり配当額
(うち1株当たり中間配当額)

(円)

126,000

(54,000)

8,900

(-)

47

(-)

49

(-)

53

(-)

1株当たり当期純利益金額

(円)

72.08

127.34

134.21

119.76

133.54

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益金額

(円)

131.59

117.36

129.79

自己資本比率

(%)

40.5

49.5

63.0

64.5

65.5

自己資本利益率

(%)

33.9

45.4

32.6

23.0

22.1

株価収益率

(倍)

10.52

15.26

13.81

配当性向

(%)

87.4

34.9

35.0

40.9

39.7

従業員数
〔ほか、平均臨時
雇用人員〕

(名)

527

3,889

613

4,553

654

5,142

645

5,484

667

6,160

株主総利回り

(%)

132.86

137.82

(比較指標:配当込みTOPIX )

()

()

()

(114.47)

(152.40)

最高株価

(円)

1,486

2,210

2,617

最低株価

(円)

1,225

1,051

1,695

 

(注) 1.2021年4月13日付で普通株式1株につき10株の割合で株式分割を、2021年10月22日付で普通株式1株につき200株の割合で株式分割を行っております。これに伴い、第21期の期首に当該株式分割が行われたと仮定して1株当たり純資産額、1株当たり当期純利益金額、潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額を算定しております。

2.第21期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式が存在しないため記載しておりません。

3.第22期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、潜在株式は存在するものの、当社株式は非上場であり、期中平均株価が把握できないため記載しておりません。

4.第23期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益金額については、2022年3月2日に東京証券取引所市場第一部(提出日現在東京証券取引所プライム市場)に上場しているため、新規上場日から第23期末までの平均株価を期中平均株価とみなして算定しております。

5.第21期及び第22期の当社株式は非上場であるため株価収益率を記載しておりません。

6.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第23期の期首から適用しており、第23期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

7.従業員数は期末時点の正社員数であり、当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人員数になります。

8.従業員数〔 〕内に外数で記載しております「平均臨時雇用人員」は、契約社員およびアルバイトの年間平均雇用人員(1日8時間換算)であり、派遣社員を除いております。臨時雇用人員の主たる業務はオペレーターとなります。

9.第21期から第23期の株主総利回り及び比較指標については、2022年3月2日に東京証券取引所市場第一部(提出日現在東京証券取引所プライム市場)に上場しているため、記載しておりません。

10.最高・最低株価は、東京証券取引所市場第一部におけるものであります。なお、2022年4月4日以降の最高株価および最低株価は、東京証券取引所プライム市場におけるものであります。2022年3月2日に東京証券取引所市場第一部(提出日現在東京証券取引所プライム市場)に上場しているため、第21期及び第22期の最高株価及び最低株価を記載しておりません。

 

 

2 【沿革】

ビーウィズ株式会社設立以後の企業集団に係る経緯は、次のとおりであります。

年月

概要

2000年5月

コンタクトセンター・BPO事業者としての事業拡大を目的に、三菱商事㈱及び現ソフトバンクグループ㈱の合弁事業会社として東京都新宿区に設立

2000年6月

カスタマーサポート業務を初受託

2001年11月

事業拡大を目的として、東京都新宿区 に新宿センター(現 本社/新宿センター)を開設

2002年11月

社団法人日本テレマーケティング協会(現 一般社団法人日本コールセンター協会)に加入

2004年5月

ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証規格である「BS7799-2:2002」及び「ISMS認証基準(ver2.0)」を同時取得

2004年6月

事業拡大を目的として、神奈川県横浜市に横浜センター(現 横浜第一センター)を開設

2004年12月

事業拡大を目的として、神奈川県横浜市に横浜第二センターを開設

2005年5月

事業拡大を目的として、大阪府大阪市に関西支店(現 大阪第一センター)を開設

2005年7月

事業拡大を目的として、北海道札幌市に北海道支店(2009年2月移転後、現 札幌第一センター)を開設

2005年12月

本社機能を、現在の新宿パークタワーに移転、新宿センターと統合

2006年10月

事業拡大を目的として、長崎県長崎市に長崎センターを開設

2006年12月

情報セキュリティ管理の国際規格「ISO27001:2005」の認証を取得

2006年12月

三菱商事㈱が株式を追加取得し当社を100%出資の子会社化

2008年4月

事業拡大を目的として、和歌山県和歌山市に和歌山センターを開設

2008年4月

事業拡大を目的として、横浜第三センター(2010年8月横浜第二センターに統合)を開設

2009年2月

「プライバシーマーク」の認証を取得

2009年6月

事業拡大を目的として、福岡県福岡市に福岡センター(現 福岡第一センター)を開設

2011年4月

BPOコンサルティングサービスを開始

2012年5月

㈱パソナグループの出資により、㈱パソナグループと三菱商事㈱の合弁事業会社となる

2014年4月

事業拡大を目的として、愛知県名古屋市に名古屋センターを開設

2014年11月

事業拡大を目的として、大阪府大阪市に大阪アドバンストバリューセンター(2018年8月移転後、現 大阪第二センターへ改称)を開設。

2015年1月

情報セキュリティ管理の国際規格「ISO27001:2013」への移行が完了

2015年3月

事業拡大を目的として、北海道札幌市に札幌第二センターを開設

2015年6月

マイナンバー収集サービスを開始

2015年12月

㈱パソナグループが当社の全株式を取得し、完全子会社化

2016年10月

事業拡大を目的として、愛媛県松山市に松山センターを開設

2016年12月

事業付加価値向上を目的として、株式70%を取得し、コールセンターシステム開発会社である㈱アイブリットを子会社化

 

2017年1月

事業拡大を目的として、神奈川県横浜市に横浜第三センターを開設

2017年2月

クラウド型コンタクトセンターシステム「Omnia LINK(オムニアリンク)」を提供開始

2017年4月

当社独自の顧客応対メソッド「ミライ転換力」サービス開始

2018年6月

プロセスの一部をテクノロジーで自動化するアウトソーシング「デジタル&オペレーション」を提供開始

2018年12月

一般財団法人 日本次世代企業普及機構からホワイト企業認定を取得

2019年1月

事業拡大を目的として、北海道札幌市に札幌第三センターを開設

2019年4月

超小口データ入力サービス「ANNIM(アニム)~みんなで使って育てるAI-OCR~」提供開始

2019年11月

AIによる「声の印象評価システム」の開発のため、滋賀大学と連携協定を締結

2019年12月

eスポーツのマッチングサイト「JOZ(ジョーズ)」提供開始

2020年3月

コンタクトセンターの応対品質教育プラットフォーム「Qua-cle(クオクル)」提供開始

2020年6月

在宅でのオペレーションサービス「Bewith Digital Work Place」提供開始

2020年11月

Omnia LINK事業の更なる成長促進を目的に、株式を追加取得し㈱アイブリットを完全子会社化

2020年11月

配送・訪問サービスの効率化を実現する、到着時刻や現在地をお知らせする宅配/訪問ラストワンマイルアプリ「ドコビジタ」提供開始

2021年4月

女性活躍推進法に基づく「えるぼし」最高位に認定

2021年6月

事業拡大を目的として、福岡県福岡市に福岡第二センターを開設

2022年3月

東京証券取引所市場第一部へ上場

2022年4月

事業拡大を目的として、長崎県長崎市にデジタルラボ長崎を開設

2022年4月

東京証券取引所市場区分再編に伴い、プライム市場へ移行

2022年7月

事業拡大を目的として、神奈川県横浜市に横浜第四センターを開設

2022年10月

システム開発力の向上を目的として、株式60%を取得し、システム開発会社である㈱ドゥアイネットを子会社化

2023年2月

本人確認や契約書の署名もワンストップで対応可能なオンライン接客・契約システム「UnisonConnect」提供開始

2023年4月

オンライン研修やテレワークでの生産性を格段に向上させる在宅コンタクトセンター支援ツール「Be-mon」提供開始

2023年6月

事業拡大を目的として、北海道札幌市に札幌第四センターを開設

2024年4月

クラウド型PBX「Omnia LINK」が生成AI(オペレーターと顧客の会話の要約)に対応

2024年4月

経済産業省と東京証券取引所及び独立行政法人情報処理推進機構が共同で選出する「DX注目企業2024」に選定

 

 

 

3 【事業の内容】

(1)事業の概要

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社、連結子会社(㈱アイブリット、㈱ドゥアイネット)、関連会社(シャドーコンサルティング㈱)の計4社で構成されており、自社開発のクラウドPBX(注1) Omnia LINK(オムニアリンク)等のデジタル技術を活用したコンタクトセンター(注2)・BPO(注3)サービスの提供、およびAI・DX(注4)ソリューションの開発・販売を行なっております。

当社グループは事業理念である「洞察を通じた社会への貢献」の実践を通じ、コンタクトセンター・BPO事業を通じて、業務の企画・設計などの上流工程から、教育・運営までをワンストップでご提供することで、顧客企業の競争力強化の一助を担ってまいりました。

また、2016年に子会社化したアイブリットの開発力を活かしたクラウドPBX Omnia LINKのご提供をはじめとする自社開発のシステムソリューションの販売も行っております。PBXは、コンタクトセンターに限らず、企業など複数の電話回線を持つ場所には、必須のシステムです。主な役割は、受発信機能(企業にかかってきた電話を適切に振り分けて着信させる機能や、適切な通知番号での発信を可能にする等)や、内線通話、転送、保留など電話に関わる制御を行なう装置です。

 

(注1)Private Branch eXchange:構内交換機。従来は構内に置いていたPBXをクラウド化し、インターネット上で通話・通信を行うことで、従来の電話システム環境を改善することができるシステム。

(注2)顧客対応チャネルを「電話」に絞らず、「メール」「チャット」「WEB」など複数の組み合わせで顧客対応するセンターを「コンタクトセンター」と定義しております。当社は顧客対応チャネルを複数ご提供しており、「電話」に限っていないため、事業内容を「コールセンター」ではなく、「コンタクトセンター」と記載しております。

(注3)Business Process Outsourcingの略で、企業活動における業務プロセスの一部について、業務の企画・設計から実施までを一括して専門業者に外部委託することを指します。BPOには、広義での捉え方と狭義での捉え方があります。広義での捉え方は、「ITアウトソーシング」との対比で、ビジネスプロセスにおけるアウトソーシングを広義の「BPO」と捉えます。この場合、コンタクトセンターも「BPO」の一部と見ることができます。狭義での捉え方は、広義で捉えた「BPO」のうち、顧客対応を伴わないもの(多くは企業のバックオフィス部門や、受発注や請求などの事務業務)を狭義の「BPO」として捉えます。当社の事業である、「コンタクトセンター・BPO」における「BPO」は狭義の「BPO」の意味合いとして使用しております。

(注4)デジタルトランスフォーメーションの略。進化したIT技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念。

 

当社グループのコンタクトセンター・BPOサービスでは、顧客へのサービス提供の際、顧客ごとのニーズを捉え、オーダーメイドで見積もりを提示し、必要なリソースやシステム、環境を用意して顧客に役務の提供を行なっております。外部資源・情報を戦略的に活用し、コア業務へリソースを集中させることで顧客企業が競争力を高める手段を提供しています。当社のようなアウトソーシング事業者は顧客企業の業務を専門的に請け負うことにより、顧客企業には適正対価での品質・生産性の向上を提供し、また自社にとっては業務の受託規模を増加していくことにより事業を継続的に成長させていくことが可能となります。また、アウトソーシングの提供形態には場所・運営・システムまですべてを提供する「フルアウトソーシング」と、場所・システムは顧客が用意し、当社が運営を行う「インソーシング」があります。当社グループにおける2024年5月期売上高の約3分の2がフルアウトソーシングとなっており、インソーシングよりも場所・運営・システムを含めたフルアウトソーシングの提供に注力しております。

 

以下の図のように、アウトソーシングサービスの領域は様々です。アウトソーシング業界においては、大きく「IT領域」(注5)と「ビジネスプロセス領域」が存在します。当社グループのサービス範囲は、その大半が、「ビジネスプロセス領域」のうち、着色している「コンタクトセンター」「調達」「購買」「人事・採用」「経理」「業界特化型サービス(注:製品や商品を販売するにあたって、その業界に特化して生じる事務業務のこと)」を対象領域としております。その中でも「コンタクトセンター」は当社グループの売上高の約70%を占めております。コンタクトセンター領域においては、オリジナル顧客対応メソッド「ミライ転換力」の確立や、80種類以上のスーパーバイザー(注:オペレーターを指導する立場にあるリーダー的立場のスタッフ)向け教育コンテンツを有しており、コンタクトセンターサービス提供会社としての専門性を保有し、強みを有する領域となっております。

 

(注5)2022年に子会社化した㈱ドゥアイネットは、「IT領域」における「システムソフトウエア設計/開発/運用」のアウトソーシングを担っております。また、2022年11月にリリースした㈱Works Human Intelligenceとの協業は、提供する統合人事システム「COMPANY」の導入支援を行うもので、システム利用における詳細設計や、設定支援、マニュアル作成等のIT導入に係るアウトソーシングを行うものです。売上高比率は大きくはありませんが、ビジネスプロセス領域とIT領域の垣根を超えた、事業領域の拡張を行っております。

 


 

コンタクトセンター・BPOの主な機能は、オペレーターを介して顧客企業のエンドユーザーや従業員に向けた高品質なサービスを提供することにあります。質の高い対応を行なうことによって、最終的にエンドユーザーや従業員の満足度を高めることが、顧客企業の満足度を高めることになり、契約期間や当社の売上高の拡大につながります。

そのために当社として注力するべき事項は、オペレーターやスーパーバイザーなどのオペレーションに関わる人材の教育や、テクノロジーによるスタッフの支援を通じた運営品質や生産性の向上を実現する仕組みを構築し、継続的にQCD(注:Quality<品質>、Cost<費用>、Delivery<納期>)の改善を行うことです。

また、運営を通じてエンドユーザーや従業員の声を受け取り、適切に顧客企業にフィードバックすることで、商品開発やサービス改善のヒントを提供し、受託している業務自体の高付加価値化を目指すことも顧客企業と長く取引を続ける中で大変重要なポイントです。

 

 

当社グループのコンタクトセンター・BPO事業のビジネスモデル概念図を以下に記載します。

 


 

当社は顧客企業(業務発注企業)を委託者としたコンタクトセンター・BPOサービスに関する業務委託契約を締結し、受託した業務の遂行のための場所やシステム、オペレーターやスーパーバイザーなどの体制を用意し、顧客企業のエンドユーザーへの対応にあたります。主な収益は顧客企業から受け取る、スタッフの稼働時間・システム・場所等の提供費用となっております。一部商品販売や販売勧奨を目的としたアウトバウンド業務(注:電話を発信する業務のこと)では、販売実績に応じたインセンティブ請求が発生することがあります。

 

コンタクトセンターで使用するシステムは、複数存在します。例えば、PBXや通話録音システムなどの電話応対の基幹となるシステムや音声認識システム(音声のテキスト化)や音声合成システム(テキストの音声化)、顧客管理システム、FAQシステム等が挙げられます。これらの各システム・機能はOmnia LINKの機能として内包されており、コンタクトセンター・BPOにおけるシステム利用料としてOmnia LINK利用料を請求しております。ただし、前述のようにコンタクトセンター・BPOはオーダーメイドの特性を有することから、Omnia LINKの活用範囲を企業ごとにカスタマイズし都度提案を行なっております。また、顧客の要件がOmnia LINKの機能だけでは満たせない場合は、要件が満たされる外部のシステムを仕入れ、提供することもあります。

また、当社との業務委託契約がなく、自社でコンタクトセンターを運営している企業に対して、コンタクトセンターシステムとしてOmnia LINKのみを販売することもあります(当社では「Omnia LINK外販」と呼称)。

 

当社の事業の特徴は、自社開発のPBX Omnia LINKを保有している点にあります。

PBXは、コンタクトセンター運営には必要不可欠なシステムですが、日本のPBX市場においては、長年米国のメーカーの寡占状態にありました。当社グループでは自社のコンタクトセンターシステムのコスト削減・高機能化を目的に2016年に株式会社アイブリット社を買収し、自社開発PBXとしてOmnia LINKを開発いたしました。

当社グループの調べにおいては、コンタクトセンター・BPOサービスの提供会社が自社開発のPBXを保有している例は極めて少なく、競合企業の多くがPBXの開発会社から仕入れを行った上で、サービス提供をしています。そのため、自社開発のPBXを有するコンタクトセンター・BPOサービス提供会社として、当社グループは、業界でも稀有なポジションを獲得していると考えております。

 

PBXには、「オンプレミス型」と「クラウド型」の2つのタイプが存在しており、Omnia LINKはクラウド型PBXとなっております。以下はオンプレミス型PBXとクラウド型PBXの違いを記載した図です。PBX利用企業にとっては、オンプレミス型PBXの場合、利用する場所自体にPBXを物理的に設置する必要があり、新規設置や増設には初期費用や準備期間が必要な上、利用場所も限られますが、クラウド型PBXの場合は、PBXはデータセンター上に存在するため、複数の場所において利用規模の変動を含め柔軟に利用することが可能であり、在宅勤務環境を含めて、利用拠点に制限を設けずにPBXを活用することが可能となります。


当社グループでは、自社の受託業務の中でOmnia LINKを活用しております。社内で利用するコンタクトセンターシステムの内、73.1%(2024年5月実績)がOmnia LINKを利用しており、Omnia LINKの活用を通してコンタクトセンターから開発部門にダイレクトに改善要望を上げています。この改善要望を満たすことで、Omnia LINKは機能強化を重ねてきました。そのような取り組みから、Omnia LINKの機能は、基本的な電話の受発信の機能やCRM機能(Customer Relationship Management:顧客管理システム)だけでなく、コンタクトセンターにおける通話音声のリアルタイムテキスト化や、AIによる自然言語処理(人間が日常的に使っている自然言語をコンピューターに処理させる一連の技術)を用いたFAQレコメンデーション(それまでの会話内容から予測される想定問答の提示)まで広がっております。コンタクトセンターシステムの競合製品は、一つの機能を単体で販売しており、複数システムをそれぞれ調達の上で組み合わせて使用するものが大半ですが、Omnia LINKは基本機能から高付加価値機能までをオールインワンでご提供しており、機能の幅広さがOmnia LINKの強みであると当社グループでは認識しております。

 

Omnia LINKの主な機能は以下の通りです。


Omnia LINKは以下3点の要因から当社グループの競争力の源泉となっております。

 

① システム内製化によるコスト削減
 上述のようにPBXはコンタクトセンター運営に必要不可欠なシステムであることから、過去、当社グループがコンタクトセンターサービスをご提供するにあたっては、米国メーカーを中心に複数企業の製品に対するシステム投資コストおよび保守コストが重複して発生しておりました。PBXの調達そのものを内製化したことにより、拠点新設や増強時のコストについて、その規模にもよりますが10百万円~100百万円程度のコスト削減が可能になり、Omnia LINKの社内利用を本格的に開始した2016年頃と比較しても、当社グループの利益水準は大きく改善しております。

 

② 柔軟な拠点戦略
 当社グループのコンタクトセンター新拠点は、標準PBXとしてOmnia LINKを利用しております。従来のPBXの場合、筐体やライセンスの納品まで時間を要すため、拠点新設の意思決定から実行までのリードタイムが長期化しておりました。Omnia LINKは自社開発かつクラウド型のため最短数日での導入が可能です。これにより拠点新設や増強のリードタイムが大幅に改善しました。その結果、顧客の要望に沿った業務実施場所の柔軟性の獲得とともに、サテライトオフィスや在宅を活用した運営も可能となりました。顧客提案時における機会損失を防止し、タイムリーな提案を行うことで受注を拡大し、コンタクトセンターサービスの成長につなげております。機会を逃さずに高収益案件を獲得することができるため、1席あたりの月次売上高(注:アウトソーシング業務の月次売上高/月次稼働席数。オペレーションブースの収益面での効率性を現す指標)もOmnia LINKの利用拡大とともに増加傾向にあります。
   また、新型コロナウイルス感染拡大の状況下においては、自社のクラウドPBXを保有していたことから、感染拡大の早い局面(2020年6月頃)の時点で在宅コンタクトセンターサービスである「Bewith Digital Work Place(ビーウィズデジタルワークプレイス)」を開始いたしました。2024 年5月時点で1,600名強のオペレーターが在宅でのオペレーションを行なっており、オペレーターの安全性の確保、BCP対策、柔軟な増席対応につながっております。これは、コンタクトセンター・BPOサービスの競合企業と比較してもテレワークの活用度合いは高い状況と自負しております。

 

③ Omnia LINK外販を通じた売上・利益の増大
 自社でOmnia LINKを利用するだけでなく、Omnia LINKそのものをクラウドサービスとして外部企業へ販売する戦略を採用したことで、より安定した全社収益確保の一助となり、当社グループの業績に貢献しております。また、Omnia LINKはコンタクトセンターの基幹システムであるため、導入時にはオペレーションフローの見直しを含めた業務への影響が生じることから、他システムへの切り替えが行いづらく、契約が長期化する傾向にあります。そのため、より安定した収益を生み出しやすい事業モデルへと、当社グループの事業構造の転換が進んでおります。

 

 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金
(千円)

主要な事業
の内容

議決権の所有
(又は被所有)
割合(%)

関係内容

(親会社)

 

 

 

 

 

株式会社パソナグループ
 (注)

東京都

港区

5,000,000

グループ経営戦略の策定と業務遂行支援、経営管理と経営資源の最適配分の実施、雇用創造に係わる新規事業開発等

(55.68)

当社のコンタクトセンター・BPOサービスを販売しております。

 

役員の兼任 1名

(連結子会社)

 

 

 

 

 

株式会社アイブリット

東京都

渋谷区

20,000

クラウドPBX「Omnia LINK」の企画・開発

100

当社は、クラウド型IP-PBXを基盤としたコールセンター向けテレフォニーソリューションの提供を受けております。

 

役員の兼任 2名

(連結子会社)

 

 

 

 

 

株式会社ドゥアイネット

長崎県

長崎市

10,000

システムの設計・開発及び保守サービスの提供、Web制作、Webマーケティング

60

当社からシステム開発を委託しております。

(持分法適用関連会社)

 

 

 

 

 

1社

 

 

 

 

 

 

(注) 有価証券報告書の提出会社であります。

 

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2024年5月31日現在

従業員数(名)

698

6,161

 

(注)1.当社グループは、コンタクトセンター・BPO事業の単一グループセグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

  2.従業員数は、当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む就業人員数になります。

  3.従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員(1日8時間換算)であります。

  4.臨時従業員は契約社員及びアルバイトであり、派遣社員を除いております。臨時従業員の主たる業務はオペレーターとなります。

 

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

2024年5月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

667

6,160

39.5

6.5

5,065

 

(注)1.当社は、コンタクトセンター・BPO事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

  2.従業員数は、当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人員数であります。

  3.従業員数欄の(外書)は、臨時従業員の年間平均雇用人員(1日8時間換算)であります

  4.臨時従業員は、契約社員及びアルバイトであり、派遣社員を除いております。臨時従業員の主たる業務はオペレーターとなります。

  5.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

 

(3) 労働組合の状況

当社グループにおいて労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 ① 提出会社

当事業年度

管理職に

占める

女性労働者

の割合(%)

(注1)

男性労働者の

育児休業

取得率(%)

(注2)

労働者の男女の

賃金の差異(%)(注1)

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

19.8

58.3

81.1

84.6

90.4

 

(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.管理職に占める女性労働者の割合については、当社から他社への出向者を含み、他社から当社への出向者は除いて集計しております。

4.男性労働者の育児休業取得率については、当社から他社への出向者を含み、他社から当社への出向者は除いて集計しております。

5.男女の賃金格差については、当社から他社への出向者および他社から当社への出向者を除き集計しております。