第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは、「中期経営計画2025」において、目指すべきありたい姿を「根元から新芽まで健康に成長し続ける会社」として位置づけております。前「中期経営計画2022」においては、Omnia LINKを開発し、自社で利用しながら、外販する「勝てるビジネスモデル」を確立しました。このコンタクトセンター・BPO事業とOmnia LINK外販の2つの事業を両面で成長しながら、持続的に成長していくことを目指しています。

 


 

また、「中期経営計画2025」では、経営ビジョンを達成するために以下の方針を定めております。

 

  i.  Omnia LINKの強力な成長
事業ポートフォリオの改善に向けて、高収益事業であるOmnia LINK外販事業の強力な成長を目指し、全社の収益性の改善を目指します。

 ii.  特徴あるコンタクトセンター・BPOの継続的成長
日本の労働力人口は減少する中で、AIを賢く利用し、人の応対はより高度になるものと当社グループは想定しております。その中で、Omnia LINKや当社グループのノウハウを活かした高度なオペレーションの実現によって、顧客企業への提供価値を高めるとともに、付加価値の向上を目指します。

iii.  事業基盤を支える経営基盤の構築
ビジネスを支える、コーポレート基盤の強化を行ないます。主には人材戦略やサステナビリティ、コーポレートガバナンスの強化等を実行します。

 

(2)経営戦略

当社の成長戦略は、「根元」事業であるコンタクトセンター・BPOサービスと、「新芽」事業であるOmnia LINKを始めとするシステムソリューションの販売を両面で成長させることにあります。その成長の在り方として、コンタクトセンター・BPOサービスは事業規模及び売上高の成長、システムソリューション販売は利益額・利益率の成長のドライバとして位置づけております。

コンタクトセンター・BPOにおいては、重点戦略グループ(金融業界・情報通信業界)を設定し、重点戦略グループにおける顧客の新規獲得や、取引開始済の顧客の深耕等を通じて、事業規模及び売上高の成長を牽引する方針です。

システムソリューション販売においては、Omnia LINKの外販拡大によるユーザー数の拡大、音声認識などのオプション販売の拡大によるユーザー当たりの売上高の拡大、また、コンタクトセンターに限らないオフィス向け製品となる「Omnia LINK ANYPUT」の販売によるターゲットユーザーの拡大の他、新たなソリューション開発を行ないます。新たなソリューション開発としては、金融機関を中心とした、店舗統廃合後のサービスのコンタクトセンターの集約化に必須となる、「商談、申込、電子契約」をワンストップで対応可能とした「UnisonConnnect(ユニゾンコネクト)」の販売を開始しております。このシステムはコンタクトセンター市場全体の拡大に資する取り組みと考えており、システムだけの販売のみならず、コンタクトセンター・BPO事業のセットでの販売も強化していきます。

なお、上記の当社の今後の成長戦略を図示すると、以下のようなイメージとなります。

 


 

(3)目標とする経営指標

当社は堅実で持続的な成長の実現を通じて新たな事業創出を図り、豊かな社会づくりへの貢献を目指しています。当社が経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標は売上高成長率、営業利益成長率です。

 

(4)経営環境

「コールセンターサービス/コンタクトセンターソリューション市場の調査(2022年)」(㈱矢野総合研究所・2022年11月15日発表)によると、2021年度のテレマーケティング市場規模は、1.1兆円と推計されております。同市場は、同研究所によると今後についても堅調に推移することが見込まれております。

その背景として、企業が昨今の労働力不足、人材不足を背景とした働き方改革やDX推進による自社内人的リソースの再構築を加速化させており、ノンコア業務をアウトソースする機運が高まっている点があげられ、また、改正労働契約法や改正労働者派遣法の2018年4月の適用開始に合わせて、自社雇用のパートや派遣スタッフからBPOに切り替えをする企業も増加していることで市場拡大が後押しされていると当社は考えております。

また、近年はAIやRPAなどのデジタル技術と人材によるオペレーションを組み合わせたサービスニーズが増加しており、当該市場へのプラス効果として働いております。合わせて、「顧客体験価値(注:商品やサービスの「価格」や「機能性」といった物理的な価値だけではなく、それらを通して得られる「満足感」や「喜び」というような感情や経験の価値も含めた概念)」を追求する企業が増加しており、顧客接点として重要な役割を持つコンタクトセンターにおいては、「窓口のマルチチャネル化による問い合わせ方法の多様化」や「ワンストップ化による問題解決力の向上」など、1つのセンターで対応しなければならない範囲の拡大と、問題解決力向上に向けた業務への深い理解が求められ、運営難易度が高まる傾向にあると考えております。そのため、専門業者の知見への期待から、アウトソーシングニーズの増加につながっております。

また、コンタクトセンターを自社運営している企業群は、上記の「テレマーケティング市場規模」と別に1.5兆円超が存在すると見込んでおり、潜在市場として認識しております。(注1)

 

(注1)当社推定値。当社席数と「コールセンターサービス/コンタクトセンターソリューション市場の調査(2022年)」(㈱矢野総合研究所・2022年11月15日発表)における当社シェアにより、日本のコンタクトセンターアウトソーシング事業者席数を算出。コールセンターの運用形態(コールセンター白書2022 ㈱リックテレコム)より、自社運営コンタクトセンター席数を算出し、当社の1席あたり売上高を乗じて算出。

 

さらには、金融機関のような全国に店舗を持つ企業においては、店舗の統廃合が進んでおり対面での接客をコンタクトセンターに集約する動きも見られます。この対面からコンタクトセンターへの集約の動きはこれまでになかった新たな市場であり、コンタクトセンター市場においては新市場開拓とも言えることから、今後も市場の成長が期待されるものと認識しております。

 

外部へ販売するシステムとしてのOmnia LINKの市場であるクラウド型CRMシステム市場規模は2021年に901億円(デロイト トーマツ ミック経済研究所「マーテック市場の現状と展望 2023年度版 クラウド型CRM市場編」 2023年12月11日)となっており、同市場の2020年から2024年までの4年間のCAGRは約17%となっております。

また、当連結会計年度末においてOmnia LINKはコンタクトセンター向けの専門システムとなっておりますが、今後の展開としてオフィス内でのビジネスコラボレーションツールとしての機能を2025年5月期に展開する予定です。その場合、対象顧客ターゲットはオフィスへと広がることとなり、新たな市場の獲得に取り組んでまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

上記経営環境において、当社が対処すべき課題は下記のとおりです。

 

① 中期経営計画の策定と実行

当社グループは、2023年度を初年度とする新たな3カ年の中期経営計画においても、経営ビジョンである「根元から新芽まで健康に成長し続ける会社」の実現に向けて、以下3点を取り組みの柱として設定し、さらなる企業価値の最大化を目指してまいります。

 

(ア)Omnia LINKの強力な成長

当社グループの最大の特徴、強みであり、成長ポテンシャルも大きいOmnia LINK外販事業について、その販売ライセンス数を加速度的に拡大してまいります。また、成長に向けて、内部体制の強化や取り組みの高度化を進めるとともに、顧客単価の上昇、サービスラインナップの拡充、対象市場の拡大に取り組みます。

 

(イ)特徴あるコンタクトセンター・BPO事業の継続的成長

引き続き当社グループの足元を支えるコンタクトセンター・BPO事業においては、Omnia LINKのさらなる内部活用を進めるとともに、ターゲット顧客に応じた営業戦略の策定と実行、人材・体制強化、現場主導での改善サイクルの実現など、さらに根元を強化するための施策に取り組みます。

また、今後の競争環境に勝ち抜くため、継続的に魅力的なサービスを開発・提供し続けるべく、次の成功例となりうるプロダクトのスケール拡大や新たなサービス・プロダクト開発を継続します。

 

(ウ)事業成長を支える経営基盤の構築

さらなる事業成長を目指す当社グループにおいて、成長スピードに合わせた経営基盤を構築・維持し続けるため、人的資本経営に資する人材戦略、気候変動に対応したGXの推進、成長に資する財務戦略の策定と実行、内部統制・ITガバナンス・コンプライアンス強化等の施策に取り組みます。

特に、人的資本への取り組みについては、前述の(ア)(イ)の実現のためにも必須の要素となります。当社の理念や事業戦略と結びついた人事戦略の遂行により、当社らしさを体現し、事業変革にあわせた人材ポートフォリオの改善を実現するとともに、さらなる将来を踏まえた人づくりを進めてまいります。

 

② 流動性の確保及び企業価値の拡大

当連結会計年度末における当社株式の流通株式比率はプライム市場の上場維持基準を充たしておりますが、流通株式時価総額については将来に渡って安定的に基準を充足し続けるといえる水準には至っておりません。当社株式の流通株式数は投資家による売買を通じて変動することとなりますが、上場維持基準を充足し続けるために、当面の間は、㈱パソナグループとの連結関係を維持できる範囲において実施可能な資本政策を検討し、大株主(親会社等)と連携のうえで流動性確保に努めるとともに、当社グループの経営方針・経営戦略に沿い、事業規模・売上高並びに利益額・利益の成長を通じて企業価値を継続的に向上させることで流通株式時価総額の拡大に努めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する全般方針

当社グループは「根元から新芽まで健康に成長し続ける会社」を経営ビジョンとしております。新芽(新規事業)であるOmnia LINKの販売やOmnia LINKを活用した高度なコンタクトセンター・BPOの運営により、日本の生産性の向上及び人材の育成を通して、「社会の新芽を創造する」ことを実現してまいります。

 

昨今、オンライン化や店舗閉鎖による省人化が進む時代への変化も見られつつあります。そのような時代でも、「どこにお住いのお客様に対しても、平等にサービスを提供できるコンタクトセンターの社会的インフラの側面」をしっかりと自覚し、対応してまいります。また、クラウド型システムであるOmnia LINKを有する当社の特徴として、「どこに住んでいても働ける環境」の提供を実現しています。少子高齢化時代に突入し、ビジネスケアラーの増加も想定されます。当社グループであるからこそ、家族のケアと自身のキャリアを描ける職場環境の提供が可能であります。これらの取り組みは、「社会の根元を強くする」に資する当社の提供価値と考えております。

 

事業を通じて「根元から新芽まで健康に成長し続ける会社」を目指し、社会課題の解消に取り組んでまいります。

 


 

(2)人的資本

「人材」の成長なくして企業の成長はなく、「人を最大限に活かす」ことが、会社の中長期的な発展につながっていくと考えています。私たちは「人材」を最も重要で最大の「資本」と捉え、すべての人的資本を活かし、その価値を持続的に向上させる人材戦略の実践、推進を通じて、企業価値の向上を図ってまいります。

 

① ガバナンス

人事戦略における重要課題に関しては、経営と方針について議論の上、組織権限規程で定められた経営会議にて課題や施策等に関する具体的な審議を経て決定しております。また、最重要事案については、取締役会に付議し決議しております。さらに、各課題における取組みの進捗、効果について四半期毎に中期経営計画進捗会議において共有し、各管掌役員をはじめとする役職者より要望および意見を聴取の上、PDCAサイクルを実行し、改善を重ね推進しております。

 

② 戦略

経営理念である「洞察を通じた社会への貢献」を実現するため、時代の潮流の中で様々に変化する顧客課題に対し、当事者意識をもって解決するプロフェッショナルな人材の育成を目指しております。

中期経営計画においては、人材への成長投資を事業成長のドライバーの一つとして、「ⅰ.ビーウィズらしさの体現」、「ⅱ.事業変革に合わせた人材ポートフォリオの改善」、「ⅲ.次の10年を見据えた人づくり」の3つの方針を柱とした人材戦略を推進しております。

 

ⅰ.ビーウィズらしさの体現

会社の理念、ビジョンと社員の自己実現が重なり、お互いが貢献し合う組織文化を築きあげ、急激な事業変革にも柔軟に対応できる強固な絆とマインドの形成を目指します。また、社員の意見を取り入れた就労環境・制度の改善取組み、ならびに理念に通じる価値を創発した社員への賞賛・表彰制度を整備し社員エンゲージメントの最大化を図ります。

 

ⅱ.事業変革に合わせた人材ポートフォリオの改善

既存のコンタクトセンター・BPO事業のデジタライゼーションに加え、Omnia LINK販売事業などの新規事業を展開するビーウィズにとって、現状の人材ポートフォリオの改善は重要課題となります。適正人材の再配置、再配置に向けたデジタルスキル強化を行い、事業環境変化への布石を打つとともに継続的な競争力強化を実現してまいります。

 

ⅲ.次の10年を見据えた人づくり

継続的な企業経営を実現するために、重要なポジションの人材パイプラインを構築し、計画的な育成を進めていきます。また、技能や知識だけでなく、「ⅰ.ビーウィズらしさの体現」を実行できる人材の育成を目指します。

 

ⅰ~ⅲで示した3つの柱に対する具体的な取組みを、a.人材育成方針、b.社内環境整備に分けて記載します。

 


 

a. 人材育成方針

ⅰ.ビーウィズらしさの体現

(a) 経営理念の理解促進

当社の卓越性を「洞察」と捉え、洞察力を強みにすることでステークホルダーに提供できる価値を言語化する理念浸透ワークショップを実施しています。総勢約600名の正社員に対し28回のワークショップを開催し、魅力を共創する企業であることを当社の企業価値と定めました。

事業理念である「洞察を通じた社会への貢献」を「魅力共創企業」と言語化して、全社員が「ミッション、ビジョン、バリュー」を理解し、事業理念を体現する行動につながるよう開催したワークショップを通じて帰属意識を高めました。さらなる企業理念の浸透、企業文化の形成にかかる取り組みを継続し、急激な事業変革にも柔軟に対応できる強固な絆とマインドを形成してまいります。

(b) 新規事業の実践研修

当社は専任の新規事業開発部門を持っておりません。顧客との接点となるオペレーション部門や営業部門が、顧 

客の環境に合わせた価値創造型DXを提供することができるよう、有志を対象としたDX研修の企画を実施いたしま

した。研修は、DXへの知見を広げ深めることだけではなく、DXによって生み出される価値を享受する、社会の理

解と洞察を目的とし、顧客との未来共創を目指しております。

 

ⅱ.事業変革に合わせた人材ポートフォリオの改善

(a) ビーウィズ2.0人材(※1)へのアップデート

(※1:デジタルによる効率化、付加価値の提供が可能なスキルを発揮できる人材)

顧客の利便性の向上、コンタクトセンター・BPOセンターの効率化を進めるためには、デジタル化は不可欠です。当社では、コンタクトセンター・BPOセンターの構築・運営を行うスーパーバイザーをはじめ、全部門の社員が、デジタル技術を駆使した効率化を促進できるよう、「ビーウィズ2.0教育プログラム」を進行しています。デジタルリテラシーや、ビジネススキルをアップデートし、実業務での「課題発見」から「改善提案」までを行う1.5年間のプログラムにより、社員のリスキリングを促し、事業の生産性向上と高度化につなげております。

(b) 人材の再配置

要員計画に則り、成長性の高い事業へのジョブローテーションを定期的に実施しています。その際には、事業の生産性を高める為、適材の配置に務めていますが、新規事業への再配置の場合には、配置人材の状況をモニタリングし、人事部および配属先事業部による育成支援、要員交代を検討します。また、会社からの指示ではなく、社員が対象ポジションに手を挙げる公募制度を導入しており、これにより意欲ある人材へのチャレンジ環境を提供しております。

(c) エンジニア機能の拡充と育成

クライアントシステムとの連携などITシステム開発を含めたコンタクトセンター・BPO案件の受託を可能にする為、グループ会社である㈱ドゥアイネットでのSE機能の拡充、推進しております。また、CIO管掌下においてシステムエンジニア機能を拡充し、育成体系を整備しております。また、2019年に長崎県と立地調印を締結し、RPAやAIを活用した効率的で高品質なオペレーションサービスである「デジタル&オペレーション」の開発ニアショア拠点として「デジタルラボ長崎」を開設しており、DXを支える人材として長崎県下の学生を積極的に採用し、地域雇用支援を推進するとともに、複数の地場企業との新規プロダクト開発に着手をしております。

 

ⅲ.次の10年を見据えた人づくり

(a) ポストオフ・再雇用制度の導入

役職者は60歳で次世代に活躍の場を提供するためポストオフします。また、ポストオフ後のシニア世代も状況に応じて働き方や職務範囲を選択できる再雇用制度を導入し、引き続き活躍を支援していくことで、企業労働力を担保します。

(b) サクセッションプランの実現

重要ポジションを定め、後継者候補を選抜し、ストレッチアサインメントなど育成計画を定めて推進しております。

また、各重要ポジションの後継者候補数の厚みを定期的にモニタリングし、組織統括の継続性を担保します。

 

b. 社内環境整備

ⅰ.ビーウィズらしさの体現

(a) エンゲージメントの最大化

 正社員については、経営理念に通じる発揮能力を評価する人事制度や、社員の意見を取り入れた就労環境、

制度の改善に取り組んでおります。また、自ら異動を申告できるなど将来のキャリアプランを支援する仕組みを

用意しております。さらに、通期で最も成果、価値を創発した社員を表彰するなどして、理念の実現と社員の  

エンゲージメント向上を図っております。
   半期ごとに実施する社員アンケート調査では、これら取組みが社員のエンゲージメント向上に寄与しているか

を測定しております。

 理念の実現には社員の「心身の健康」増進、安全で安心して働ける職場環境と整えることが必要不可欠である

との考えのもと、生産性向上と組織の活性化を目的に従業員の健康管理を全社課題としてとらえ、社員の健康管

理、職場環境整備、メンタルヘルス対応等の健康経営推進に取り組んでまいります。

 また、2022年度より開始している、豊富な経験をもつ全国のスーパーバイザーが集結した「100人で考えるエン

ゲージメント」にて、目標設定、評価制度の運営を開始しました。これにより、多様な働き方や個々の特性を称

賛し認め合う文化を醸成し、有期雇用社員を含む全従業員のエンゲージメントを向上させることを目指しており

ます。

 

ⅱ.事業変革に合わせた人材ポートフォリオの改善

(a) 多様な人材の活躍

〇女性活躍推進

 当社では多様な人材が個々に最大限力を発揮できるようダイバーシティ&インクルージョンの活動を推進しております。その中でも女性活躍推進については重要な課題と認識しております。

 女性活躍の推進はライフイベントとキャリアを両立できる仕組みに留まらず、全社の意思決定に女性が占める役割が大きくなることで、多様性への深い理解と健全な議論が出来る社内風土の醸成に繋がると考えております。そのため、一定以上の職責における女性従業員割合の改善、ひいては男女の賃金格差の改善を図る施策を講じてまいります。

 女性が管理職を目指すうえで障害となり得る要因として次の3つがあると想定しております。

 1)管理職の労働時間が長く、ライフイベントとの両立が困難と感じさせる風土

 2)ライフイベント等でのキャリアの中断による昇進の遅延

 3)ライフステージ毎の心身の変化・健康

 これらを排除し、安心してキャリアを計画できるように、以下の施策を進めてまいります。

 ・管理職で効率的な働き方を実現している女性社員のモデルケースの発信

 ・女性社員のキャリアに対する悩みを支援する座談会の実施や情報発信

 ・女性特有の健康に関する社内リテラシー向上施策の実施

 

〇障がい者雇用

当社は、障がい者が長く働き続けることができるよう支援態勢を整えたシェアードサービスグループで70名を超える精神障がい者や重度身体障がい者を雇用しております。シェアードサービスグループは6つのグループに分かれており、障がい者の中から選ばれたチームリーダーが中心となり運営しております。各部署から委託された事務や事務補助などの本業を実施することにより会社への貢献意識を高めております。

また、各拠点のコンタクトセンター・BPOセンターにおいて、オペレーターとして業務に従事している障がい者も多く雇用しております。今後も健常者との垣根のない障がい者雇用を目指し、継続して注力し、働き成長できる場を実現してまいります。

 

〇中途採用

女性活躍や障がい者雇用と並行し、引き続き、外部人材の確保を目指します。

中途(経験者)採用においては、当社の成長ドライバーとなりうる人材として、様々なバックボーンを持つ、多様な職種の人材を採用しております。当社の正社員は、全体の8割が中途採用で構成されており、新たな知見や学びを得ることができております。

今後は、当社での働き方を柔軟にしていくことで、より多様な人材が活躍できる環境と人材確保を目指します。具体例として、週休3日制度の導入を検討し、時間的や場所などの制約がある正社員の採用につなげてまいります。これにより、多様な人材が当社で働くことを選択できる状況を作り、また、アルムナイとのネットワークを構築しながら、当社にはない知見獲得に向けてオープンイノベーションの機会創出を目指します。

アルムナイとの協業や副業・兼業としての受け入れ、業務委託や再雇用を視野に入れ、当社の更なる成長のキーファクターとなるよう継続的な取組みを実施していきます。

 

(b) 人材の獲得

昨今の人材採用難を、当社も類に漏れず体感しています。人材の確保は当社の事業の基盤とも言える重要事項であり、今後も様々な工夫を凝らし目の前の採用難を乗り越えるべく、母集団の拡大と魅力付けにおける改善を推進してまいります。
 これまで、採用媒体やダイレクトリクルーティングなど、特定の転職・就職プラットフォーム上にいる人材へのアプローチを行ってまいりました。新たに、Web広告やSNSなどを効果的に活用し、認知向上と興味喚起を行い、母集団の拡大を目指します。
 また、魅力付けにおいては、候補者ニーズの多様化に対応できるよう、よりパーソナルな候補者コミュニケーションを実現していくことで、候補者体験を向上させ、これまで以上に各部門との採用フローにおける連携を強化し、候補者が必要な情報を具体的に提供することで、働く環境、仕事内容、待遇など、具体的なイメージを持ち、入社の意思決定ができるコミュニケーションを図ってまいります。今期においては当社への理解、また認知度の向上を目的に新卒応募者に向けに当社の情報やメッセージを体系的かつストーリーをもって取りまとめた採用ピッチ資料を作成、展開をしております。

新卒採用については、昨今の就職活動トレンドに合わせて、学生が自身の状況に合わせたタイミングで当社に出会えるよう、全学年を対象にに常時門戸を開いております。全学年を対象としたインターンを受けることでのビジネス経験の提供、4年生の秋以降にも学生と接点を持つ通年採用、若年層の確保のための第二新卒層の採用、ダイバーシティの観点から国籍問わない採用の実施など柔軟な採用戦略を実施していくことで、着実な人材確保につなげてまいります。
 また、中途採用については採用市場や競合トピックスにアンテナを張り、当社に新たな価値をもたらす人材に通年でコンタクトできるようオープンポジション採用を継続してまいります。

 

(c) デジタル効率化時間

当社グループでは、デジタルによる自動化、効率化を推進するための定量目標を定めております。RPA開発部門による業務自動化だけでなく、各拠点にてデジタルツールを用いた自動化や効率化を自発的に行ったものを集計しております。当連結会計年度の年間効率化時間は全拠点合計で約196,000時間を達成しており、ナレッジの共有によりさらなる効率化を目指します。

 

(d) 人材リテンション施策

異業種からの転職者が、早期に新しい組織に馴染み戦力化することを支援するオンボーディング策「タンデム教育プログラム」を実施しております。タンデム自転車を漕ぐように、転職者を先頭に、上司・同僚・教育部門、そして同期が力を合わせて転職者の活躍を支援します。入社直後に「タンデムオリエンテーション」、数か月後に「タンデム座談会」を実施し、座談会では、入社時期の近い者同士とのワークを通じて、自分自身や周囲とのコミュニケーションの在り方を確認し、横の関係性を強固にすることで離職を防ぐリテンション効果も発揮しております。

 

〇ファミリー制度

ファミリー制度では、新卒社員に、所属する自組織とは別組織の既存社員とのコミュニティを形成しております。各ファミリーが定期的なコミュニケーションを取り、業務内外問わず、自組織以外の相談先として重要な役割として機能しております。

また、既存社員にとっても新たな社内人脈形成につながっており、帰属意識の向上にも寄与しております。

 

〇オンボーディングツール

「入社→定着→活躍」のプロセスの中で、所属部門と連携しながら人事部でも定期的なサポートを行っております。月1回の定期アンケートをもとに、対象者の仕事・対人・健康面でのコンディションを把握し、所属組織と連携して、働きやすい環境への改善を目指しております。

 

(e) 健康経営推進

 〇職場環境の整備

職場の健康づくりを推進していくため、社内各拠点に健康づくり委員を任命し、健康づくり委員会を設置。

従業員が健康づくりについては話し合える場を設け、全社で職場の健康づくりに取り組んでおります。

また健康測定機器を設置し従業員日常的に健康状態を測定・管理できる環境を提供しております。

〇休職・復職支援体制

従業員が健康に働くことができるよう、休職者に対しては産業医、保健師、人事産業保健スタッフ、および休職者の上長が、休職、休職中、復職となるタイミングで緊密に連携しております。休職者それぞれの体調回復状況に合わせて、対象者と適正なメンバーによる面談や適切なフォローを実施することで、主治医診断結果を尊重しつつも、会社として復職・再休職可否判断を行える体制を構築し、休職者の現場復帰をサポートしております。

〇セルフケア・ラインケア研修実施

メンタルヘルスの保持・増進(メンタル不調者を出さないための職場環境づくり)のため、新卒入社社員・中途入社社員向けに「セルフケア研修」、管理職向けには「ラインケア研修」を実施しております。コロナ禍により上司部下のコミュニケーションが業務に偏るなどの希薄化を受け、当該研修においては、部下の「ワークエンゲージメント」に寄与できる管理職となるべく、JD-Rモデル(仕事の要求度-資源モデル)を基に上司部下の関係性向上を図りました。社員自身でのケア、また上司から配下メンバーへのケアの双方にアプローチすることで、社員がより健康的に安心して働きやすい職場環境づくりに取り組んでおります。

 

③ リスク管理

既存事業の拡大と新規事業の創発を並行して推進していく上で、計画的な採用と一人一人の成長を通して盤石な人材基盤を作りあげることが重要です。採用市場の激化に伴う採用力の低下、並びに人材の離脱をリスクと捉えております。人事の重要指標にこれらも含めて、毎月算出をし関係部門への開示を行っております。また、採用レポートおよび離職レポートを発行しており、実態から分析を行い課題を捉え施策の検討をしております。

検討された施策に関しては、重要度に応じて経営と方針について議論の上、組織権限規程で定められた経営会議にて具体的な審議を経て施策の導入を決定しております。各課題における取組みの進捗、効果については、四半期毎に中期経営計画進捗会議において共有しております。

ビーウィズの理念や経営計画に共感する人材の採用、ならびに社員への成長機会の提示を推進しリスク抑制に務めます。

 

 

④ 指標及び目標

以下の通り、目標を設定しモニタリングを行います。


 

(3)気候変動に対する対応

当社グループは、気候変動問題が事業にもたらす影響を把握し、優先事項の一つとして認識するとともに、気候変動への対策に積極的に取り組むべく、2022年7月にTCFD提言への賛同を表明いたしました。

以下の通り、TCFD提言において開示が推奨されている「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの項目に沿って開示を行い、段階的に開示情報の拡充を図ってまいります。


① ガバナンス

気候変動に関する課題や対応策について協議することを目的として、SDGs推進委員会内に「TCFD分科会」を設置し、当該会議体で決定した方針及びアクションプランに基づき、具体的な施策をSDGs推進委員会から全社へ展開いたします。

取締役会は、年2回これらの取り組みの進捗報告を受け、助言を行うことでモニタリングを図ってまいります。

 

② 戦略

戦略策定にあたっては、将来の気候変動がもたらすリスク及び機会を推測し、当社グループ戦略のレジリエンスを説明するために、「リスク重要度の評価」、「気候関連シナリオの測定」、「財務インパクト評価」、「対応策の定義・検討」の4段階でシナリオ分析を実施しております。

 

■設定シナリオ

当社グループの業種や事業特性を踏まえ、以下のシナリオを設定いたしました。

 

*社会像:

<2030年の平均気温上昇2~1.5℃未満を達成するものとするシナリオ>

-カーボンニュートラルの実現に向けて、政策転換や技術革新が進められるため、移行リスクは高い

-異常気象等の物理リスクは、「4℃上昇シナリオ」よりも低く抑えられる

 

<2030年の平均気温が4℃上昇するシナリオ>

-新たな政策、規制は導入されないため、移行リスクは低いが、CO2排出量は継続的に増加する

-異常気象等の物理リスクが高い

 

 

*参照シナリオ:

移行-IEA発行の各種レポート、環境省・気象庁等の日本政府発行の各種レポート等

物理-IPCC発行の各種レポート、環境省・気象庁等の日本政府発行の各種レポート等

 

■シナリオ分析の結果

リスク

分類

リスク項目

影響

2~1.5℃

4℃

移行リスク

政策

・炭素税の規制導入によるコスト増


※1

技術

・気候変動対応に関連するシステムおよびサービスへの投資損失


※2


※2

市場

・エネルギー価格の高騰による業務運営のコスト増

評判

・気候変動に適切に対応しない場合、投資家からの評判悪化による資金調達難


※2


※2

・ネガティブイメージによるクライアントとの取引機会の損失


※2


※2

・ネガティブイメージによる従業員の採用難、離職率の増加


※2


※2

物理リスク

急性

・異常気象の激甚化による業務停止に伴う収益減

・水災害等の対策コスト増

慢性

・平均気温の上昇よる就業環境改善に伴うコスト増

 

 

機会

分類

機会項目

影響

2~1.5℃

4℃

製品/サービス

・カーボンニュートラルの促進に伴う製品、サービスの需要拡大

市場

・気候変動および感染症対応に伴う、BCP対策の需要拡大

 

※1 4℃シナリオにおいては発生しないと想定しています。

※2 現段階ではデータが不足し影響の評価が困難な状況です。なお、「対応策の定義・検討」につきましては、順次開示を進める方針としております。

 

③ リスク管理

当社グループは、SDGs推進委員会TCFD分科会にて、事業年度毎に事業に関わる全社の気候変動リスクを抽出し、その項目をリスクマップで管理することにより、リスクマネジメント委員会との連携を図りながらモニタリングを行う体制をとっております。

また、当該会議体にて対応策を協議した気候変動リスクについては、年に2回取締役会へ報告を行い、重要リスクについては必要に応じて経営戦略へ反映し、対応しております。

 

 

④ 指標及び目標

当社グループでは、気候変動リスク及び機会を管理するための指標を温室効果ガス(CO2)排出量と定め、Scope1・2・3の区分で排出量を算出いたします。

当社グループにおける2023年度の温室効果ガス排出量実績(単体)は以下の通りとなります。

 

■2023年度(2023年6月度~2024年5月度)※ 単位:t-CO2

*Scope1:-都市ガスによるCO2排出量 6

*Scope2:-電力使用によるCO2排出量 1,011

           -冷水・蒸気等によるCO2排出量 235

*Scope3:-カテゴリ1(購入した製品・サービス) 7,082

           -カテゴリ2(資本財) 847

           -カテゴリ3(Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動) 249

           -カテゴリ4(輸送、配送(上流)) 164

           -カテゴリ5(事業から出る廃棄物) 56

           -カテゴリ6(出張) 734

               -カテゴリ7(雇用者の通勤) 2,025

 

また、2050年カーボンニュートラル実現に向けた温室効果ガス(CO2)削減目標を以下の通り策定しております。

 

■CO2排出量の削減目標(Scope1・2)

*Scope1:2040年までに実質ゼロ

*Scope2:2030年までに実質ゼロ

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)リスクマネジメント体制

当社は、当社グループの事業活動における諸種のリスク管理を所管するリスクマネジメント委員会を設置し、常勤取締役及び取締役会で任命された執行役員が、リスク管理基本規程に従い以下のリスク管理体制の構築と運用にあたっております。

当社グループの事業活動に関する事業リスク及びオペレーションリスクについては、取締役及び執行役員の職務分掌に基づき、それぞれの担当管掌ごとに管理することとしております。リスクマネジメント委員会は全社横断的視点で、経営上の重要なリスクの管理に対する全社方針の決定、個々のリスクの抽出、評価、見直し、対応策の検討、管理状況の定期的な確認を行います。また、リスクマネジメント委員会の円滑かつタイムリーな運用を推進するために、経営企画部がリスクマネジメント委員会事務局を担い、各部門のリスク管理部門長とも連携してリスクの低減にあたっております。

 


 

 

(2)リスクマネジメントの運用プロセス

当社は、リスクマネジメント委員会を定期的(年7回)及び必要に応じて臨時に開催しております。委員会では、企業活動に関して抽出されたリスクとその対応方針を策定するとともに、リスクマネジメントシステムが有効に機能しているかどうかの検証・評価を行っております。各担当執行役員管掌下のリスクに対しても、それが当社全体に及ぼすシナリオや他のリスクとの関連性について横断的視点をもって過不足なく点検し、リスクの低減を図っております。

具体的には、当社グループを取巻くビジネス上の環境や、当社グループ固有のオペレーションフローなど内外様々な要因から個別のリスクを抽出・検討し、その重要度等から取組むべき優先順位をつけ、特に重要と認識するリスクを全社リスク管理重点項目とし、経営計画の中に組入れております。重点項目は、年度計画の進捗確認のため、リスク対策の実行やモニタリング状況を四半期ごとにリスクマネジメント委員会にて報告しております。委員会では、必要に応じて適宜、リスク対策についての確認や修正が行われます。

リスク管理の状況については取締役会に対して、第2四半期の終了時点で中間報告を、連結会計年度終了後に年間の総括報告を行っております。また、リスクマネジメント委員会には監査等委員も出席し、リスクの管理状況について確認を行い、必要に応じて意見を得ております。

 


 

(3)リスクの抽出・評価プロセス

当社グループが認識する各個別のリスクは、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性がありますが、反面、事業成長の機会にもなり得るため、単に脅威だけではなく好機をも含め、バランスをもった視点でとらえ抽出いたします。当連結会計年度内において抽出したリスクは144項目であり、類型ごとに整理し、リスクマップとして一覧化しております。一覧化した個々のリスクの大きさを表すために、そのリスクが発生する可能性と、発生した場合に事業に与える影響度の二軸で個々のリスク値を算出しております。また、単にリスク値の大きさだけでは判断せずに、リスクアセスメント表を用いて各リスクの特性を総合的かつ多角的に評価・プロットし、当社のリスク対策の優先度とリスク管理重点項目を決定しております。

 

 

リスクマップ(項目抜粋)

 

類型

中分類

リスク項目(個別項番)

1

ガバナンス

コーポレートガバナンス

(1)・・・(14)

2

戦略と計画

企業責任と持続可能性

(15)(16)

外部要因

(17)・・・(36)

経営戦略

(37)・・・(46)

3

業務プロセスと経営インフラ

財務と会計

(47)・・・(62)

人事施策

(63)・・・(76)

法務

(77)・・・(85)

情報システム

(86)・・・(90)

情報セキュリティ

(91)・・・(94)

営業/マーケティング

(95)・・・(100)

広報

(101)(102)

商品開発

(103)

サプライチェーン

(104)

業務プロセス(全部門共通)

(105)・・・(110)

業務プロセス(PJT)

(111)・・・(128)

4

コンプライアンス

法令遵守/社会規範

(129)・・・(131)

業法違反

(132)・・・(135)

5

開示

会計

(136)

財務

(137)(138)

税務

(139)

役所/監督官庁対応

(140)

IR

(141)・・・(144)

 

 


 

 

(4)主要なリスク項目

① 顧客企業の事業環境変化によるリスク

当社グループが提供するコンタクトセンター・BPO等の主力サービスは、アウトソーシングというビジネスの性質上、顧客企業の属する業界での競争激化や法規制の強化などの理由による経営方針の転換、また顧客企業の業績悪化等によるコストの低減などの事情で、当社グループの受託業務量が大幅に変動する可能性があり、その場合は少なからず当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの取引先とは継続的な長期契約が多く、短期間での大きな変動は比較的発生しにくいものの、当該リスクは常に発生する可能性があると認識しております。

顧客ポートフォリオの多様化や個々の顧客企業からの受託領域の拡大、また時流や企業のニーズにあった最新のサービスやソリューションの開発を迅速に進め、提供していくことで取引を拡大し、リスクの低減を図ってまいります。

 

② 特定の顧客企業への依存度によるリスク

当社グループの当連結会計年度における売上高に対して、東京電力エナジーパートナー株式会社様との取引の構成比は16.4%、株式会社パソナ様は15.4%となっております。また売上高上位5社では、総売上高の約42.0%を占めており、当該顧客企業との取引動向が当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。これに対して、営業戦略を加速し、新規取引先の拡大や、既存の顧客企業に対するDXソリューション提案やクロスセルによる取引領域の拡大、またOmnia LINKをはじめとした社会の変化に適応する新たなソリューションの提供を通じ、収益の拡大を進めることで、特定顧客企業への依存度を低下させ、リスクの低減を図ってまいります。

 

③ 大型スポット業務受託に関するリスク

当社グループが受託する業務は、その多くが中長期の継続的な契約でありますが、社会情勢によるニーズの突発的な発生や、顧客企業からの要請により期間が限定されたスポット業務も例年発生しており、そのうち規模が大きいものを受託した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

大型スポット業務を受託した場合、一時的に売上高が拡大する他、当社グループの人員や保有するスペースの稼働率が向上することにより収益性が上がり、売上高、利益に著しいプラス要因が発生することがあります。さらに当該スポット業務が終了すると、一時的に拡大した収益が剥離することで前述の稼働率が通常レベルに回帰し、翌年度の収益性が低下する可能性をもたらします。スポット業務は毎年発生しておりますが、当社グループにおいてはビジネス拡大の機会でもあります。大型スポット業務の発生は、顧客企業からの突発的な要請や社会情勢の変化、国家レベルでの制度変更などが要因であることも多いため、予測することは非常に困難です。

当社グループでは当該リスクを認識し、スポット業務の売上高比率が高まりすぎないように基準を定めて受注案件の判断を行うとともに、中長期での契約継続が期待できる業務の新規受託の推進や、既存業務の採算性確保によって、大型スポット受託の多寡による経営成績の変動を抑制するべく努めております。

 

④ 契約に関するリスク

当社グループが提供するコンタクトセンター・BPOサービスは、顧客企業のビジネスプロセスの一部または全部を請負い、改善を図っていくという業務の性質上、また、顧客企業の属する業種業態内で競合する企業群との競争状態や、業界業種で関連する法規も異なることなどの理由から、その内容は一様ではなく、業務ごとに最適な業務プロセスをオーダーメイドで提供しております。その際、実際の業務構築段階において、顧客企業との事前の設計あるいは予測による見込みから業務の難易度や工数が乖離することがあります。また、運営中の受託業務においても、事業環境変化に伴う顧客企業の急な要請による業務要件の変更等が発生する可能性があります。これらの変更要因により、当社グループが顧客企業に請求する項目、単価、数量等にも変更が生じ、その結果として、請求内容の誤謬が発生する可能性があり、その内容によっては当社グループの収益に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、これらの要件変更等によりKPIの変更・追加や業務の目的自体が洗替えされることもあります。顧客企業の目的達成のために、当社グループが当初用意した経営資源の範囲を越えて、より難易度の高い業務となった場合、生産性が低下し採算性が悪化するほか、努力しても顧客企業の満足するKPI基準に到達できずに業務の遂行に支障をきたした結果、受託業務の打ち切りやケースによっては損害賠償請求を受ける可能性があります。これらは当社グループの信用の失墜や経営成績に影響を及ぼすことに繋がります。このようなリスクへの対策として、業務内容の変更が発生した場合には、顧客企業と密接な協議を行うとともに、仕様変更による条件変更に対しての条件交渉を行い、リスクの低減を図っております。

 

⑤ 人材の確保及び人件費高騰によるリスク

当社グループが提供する各サービスにおいて、高度な専門知識や経験を有する人材の確保は経営の重要課題と考えております。一方で、新規サービスの開発やDXに精通している人材は求人市場でも引く手あまたであり、国内企業だけでなく世界的にも人材がひっ迫しています。当社グループが必要とする知識や経験を有し、顧客企業の要望や社会の変化に応え続けることの出来る人材が、必要な時期に必要なだけ確保できる保証はなく、人員計画に基づく採用が行えなかった場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループが受託する業務を行うためには、その業務に従事する多数のオペレーターの確保が必要となります。しかしながら、労働人口の減少、少子高齢化といった日本の構造的な問題や、景気などの社会情勢によって十分な労働力を継続的に確保できない可能性があり、その結果として採用に係る費用の増加、人件費の上昇が想定されます。近時、インフレ傾向による物価上昇、人手不足による賃金改定の流れ、働き方改革関連法の施行などにより人件費上昇の圧力がかかり続けており、こうした状況が長く続いた場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクを認識し、必要な人材を確保するために、様々な採用手法を駆使するとともに、働きやすい環境としての在宅勤務の推進(制度の完備、セキュリティの確保、顧客企業の承諾等)にも取り組んでおります。一人ひとりの従業員が長く働きたいと思えるように、社内資格制度や表彰制度を設けるなど定着率の改善施策にも取り組んでおります。

 

⑥ システム障害の発生によるリスク

当社グループは、受託しているコンタクトセンター業務において、自社開発を行っているクラウド型PBX「Omnia LINK」を多数利用しているとともに、顧客企業へのライセンス販売も行っております。当該サービスが各種の障害、故障、ならびに重大な欠陥、または外部事業者により提供される通信インフラにおけるネットワーク障害の発生等によって正常に稼働しない状態が継続した場合、コンタクトセンター業務の遂行に重大な支障をきたすだけでなく、それらを起因として顧客企業に発生した逸失利益等に係る損害賠償請求を受けるなど、当社グループの経営成績、財政状態に影響を与える可能性があります。

このため当社グループでは、各種の契約締結において損害賠償上限を定めるなど、損害の拡大の防止を行うとともに、システム開発時の品質保証レビューや稼働前後のシステム点検等によって、機密性・障害許容性・回復性・安定性といった品質特性の向上に努めリスクの低減を図っております。また、システム障害が発生した際の障害報告フローを明確化し、迅速に対応することで早期の復旧ができるように努めております。

 

⑦ セキュリティと情報漏洩リスク

当社グループはその事業の特性として、顧客企業の営業上及び技術上の機密に該当する情報のほか、顧客企業が保有するエンドユーザー等の個人情報を含む情報資産をお預かりし、業務を行っております。万が一、これらの情報の漏洩事故を発生させた場合、顧客企業との間における取引関係の終了、また、顧客企業やエンドユーザーから損害賠償請求等を受けることによって、当社グループの社会的信用、経営成績、財務状態に影響が発生する可能性があります。年々、サイバーリスクは高度化、巧妙化しており、これらセキュリティリスクへの対応は重要な経営課題となっております。

このような状況を踏まえて、当社グループでは「セキュリティポリシー」及び「プライバシーポリシー」を制定し、その遵守に努めております。また、2004年に情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の認証を、2009年にはプライバシーマーク認証を取得し、情報管理体制の構築・維持に努めるとともに、人的・物理的・技術的といった様々な観点から機密情報管理対策を講じております。また、万が一の情報流出における損害賠償請求へ対応するため、一定額までのサイバーセキュリティ保険を付保しております。

 

⑧ 内部管理体制におけるリスク

当社グループの急激な事業成長等の変化により、内部管理体制の構築の遅滞や不備が生じた場合や、構築した内部統制システムに重大な欠陥が認められた場合、またこれを逸脱するような事態に至った場合、当社グループの適正な業務運営に支障をきたし、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。その結果、当社グループの社会的評価が毀損する恐れがあり、欠陥の重大性や原因等の程度に応じては様々な法的責任が課せられ、金融市場における資金調達力が制限されることによって、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに対して当社グループでは、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制に関する要件に則り、「財務報告に係る内部統制評価の基本規程」を制定し、基本方針の設定・展開、内部統制の整備・運用及び評価における全社的な管理体制、手順、ならびに手続きに関する人員及びその編成等を定め、内部統制やコーポレート・ガバナンスの体制を構築するとともに、当該体制が有効に機能するよう取り組んでおります。

 

⑨ 法規制等に係るリスク

当社グループは、自己の事業活動および顧客企業からの業務を受託する過程において、個人情報保護法や消費者保護関連法のほか、各種労働関係法令、税法、特定商取引法等の様々な法令の適用を受けております。当社グループが、これらの適用法令等に違反した場合、当社グループの事業運営、経営成績および社会的信用に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、一定の事業を行う上で取得する許認可等については、行政当局の監督を受けておりますが、当社グループがこれら許認可等の維持要件に違反し、当局から業務停止命令、罰金、その他の処分を受けた場合には、対象事業を行うことができなくなる可能性があります。さらには将来、当社グループに適用される法令等の新設または改正、司法や行政の解釈に変更がある場合において、複雑化する法規制への対応の遅れにより事業機会を逸する可能性や、当社グループの事業運営や業績、社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

このため当社グループでは、事業上遵守が必要となる法令の改定について、法務部門が中心となり常に情報収集を行い、法規制への対応の遅れが出ないよう取り組んでおります。また、法令の新設や改正等に伴い規程類の改定を行う際には、必要に応じて専門家のレビューを受け、解釈に齟齬が出ないように留意しております。

 

⑩ 係争・訴訟等に関するリスク

当社グループの受託業務等において、業務に必要な内外の経営資源を確保出来ないこと等により、顧客企業との受託契約に基づく当社グループとしての責務を果たせずに、顧客企業に生じる損害の一部又は全部につき請求を受ける可能性があります。この場合、法令や契約に対する違反の有無に関わらず、これらが訴訟問題となり、当社グループの責に帰すものと認められた場合には、当社グループの経営成績、社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、何らかの理由で当社グループ従業員、または元従業員から労務問題等を理由に訴訟の提起や、それによる損害賠償金の支払いを求められる可能性があります。さらには、これらが係争となり、当社グループに大きな責がある等の司法判断がなされた場合には、当社グループの経営成績、社会的信用に影響を与える可能性があります。

このリスクを認識し、当社グループでは各種の契約締結時においては、法務部門により入念に内容を精査しており、必要に応じて専門家に確認をとるなど、リスクの低減に努めております。

 

⑪ 労務管理に関するリスク

当社グループでは、受託業務の遂行のため、パートタイム・アルバイトを含む多様な雇用形態の有期雇用従業員を多く雇用しており、これらの従業員もしくは元従業員との間で雇用に関する紛争が発生する可能性があります。また、仮に法令への抵触、ハラスメントなどによって当社グループの責が認められる場合、監督官庁からの指導や処分を受けるほか、訴訟を提起される可能性もあり得ます。このような場合において、当社グループの社会的信用や事業運営に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、労働関係法令の遵守にとどまらず、各種のハラスメント行為の撲滅や、従業員同士が互いを尊重し働きやすい職場環境を整えることが、ダイバーシティの推進においても極めて重要であると認識しております。コンプライアンス遵守のための体制整備に努めるとともに、ハラスメント防止規程を制定し、定期的に役職員、従業員に対して発信し、教育の機会を多く持つことで労務管理におけるトラブルやハラスメント発生の防止に努めております。その他、従業員に対してトラブル等専門の本社相談窓口、社外通報窓口等を設置することで、就業上のトラブルが発生してしまった場合でも、気兼ねなく相談できる体制の確立と即座に対応が可能な体制を整えております。

 

⑫ 大規模自然災害等に関するリスク

当社グループでは、全国に事業拠点を分散配置するとともに在宅勤務体制の整備を行うことで、大規模な自然災害等が発生した場合においても、被災していない地域の経営資源をもって被災地域の一部業務運営を補うことを可能としております。顧客企業の事業の継続性を支援する事業者として、有事においても可能な限り事業継続できる環境を整備することは経営の重要課題であると認識しております。

しかしながら、大規模な地震をはじめとする津波、風水害、火災などの自然災害、電気・通信網の遮断などの社会インフラの混乱、また未知のウイルス等感染症の大規模流行等の発生によって、当社グループの事業運営、経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは予期せぬ事態の発生に備え、事業継続計画を制定しております。災害等の発生要因別に有事における手順書を備え、定期的な見直しや訓練を行う等、体制整備とリスクの低減に努めております。

 

⑬ 株式会社パソナグループとの関係について

(ア)資本関係

当社の親会社である㈱パソナグループは、当連結会計年度末現在において当社の発行済株式総数の過半数を超える55.7%を保有しており、当社の役員の選任、他社との合併等の組織再編、定款変更等の当社の株主総会決議の結果に重大な影響力を及ぼす可能性を有します。当社には親会社による事前の承認事項等は存在しておらず、また、議長を含めて独立社外取締役のみで構成される任意の指名報酬委員会を設けるなど、独立性の担保を図っておりますが、それでもなお、当社の株主総会の承認を必要とする事項に関しては、㈱パソナグループが影響を及ぼす可能性があります。

 

(イ)㈱パソナグループにおける当社グループの位置づけ

持株会社である㈱パソナグループを中心とする企業グループは、連結子会社の㈱パソナを中核事業会社とし、人材関連事業や、地方創生事業等を行っております。

当社は親会社グループの中では「コンタクトセンターサービス」を専門的に提供している唯一の事業会社であり、あわせて「アウトソーシングサービス(自社の経営資源にて運営)を中心としたBPOサービス」を提供しておりますが、「派遣法に基づく人材派遣業務(人材の供給)」を主軸とした事業の変遷としてBPOサービスを提供している親会社グループ各社とは事業特性が異なり、創業より「カスタマーサービス及びBPOサービスの専門家集団としての業務設計等のノウハウによるBPOサービス(業務運営)」を主軸として事業を展開しております。

事業展開の変遷は異なりますが、「コンタクトセンターサービスが含まれず、かつ業務設計等のノウハウが必要ではない定型的なBPOサービス」に関しては、親会社グループ会社(㈱パソナ)でも一部提供しているケースがあり、その点について事業競合が生じている又は生じる可能性を有しております。この事業競合が生じている又は生じる可能性を有している部分の当社の連結売上高に占める割合は、低位と呼べる水準です。当社は親会社グループ内において「コンタクトサービスを専門的に提供する唯一の事業会社」として明確な棲み分けがなされており、自社開発のクラウド型PBX「Omnia LINK」を強みとした、国内でも特徴のあるコンタクトセンターサービスを展開するとともに、これまで培ってきた「業務の運営」を主軸としたBPOサービスの経験・ノウハウ等により、親会社グループ内外に関わらず、独立性と競争優位性を持って事業を展開しており、親会社グループ内での事業競合によって当社グループの経営の独立性を損なうような状況にはありません。

今後も当社グループは経営の独立性を維持しながら、事業競合するサービスを含めて、親会社グループ各社と時には競い合い、時には連携することで当社グループの事業拡大を目指すと共に、親会社グループ全体の事業拡大にも寄与し、人材サービス業界におけるプレゼンスを高め、当社グループ及び親会社グループの双方の企業価値向上を目指してまいります。

 

(ウ)パソナグループ各社との人的関係

当連結会計年度末現在、当社の取締役である若本博隆氏は㈱パソナグループの取締役副社長執行役員を兼務しております。同氏については、同氏の経験豊富な経営知見を当社の経営に活用すること等を目的に当社が招聘したものであり、当社の独立性は確保されております。なお、当連結会計年度末現在、当社グループにおいて、同氏のほかに、㈱パソナグループおよび、当社グループを除く同社のグループ会社からの人材の受け入れはありません。

 

(エ)パソナグループ各社との取引関係

当社グループと㈱パソナグループを中心とするパソナグループ各社は、独立第三者間取引で適用される取引条件又は社会通念上合理的な見積りによる公正妥当な取引条件により、営業取引等を行っております。また、当社グループの連結売上高にはパソナグループ各社からの紹介案件によるものが一部含まれますが、当社グループの新規案件獲得の商流は、90%程度が既存取引先からの紹介や、当社グループが開催する各種ビジネスセミナー、展示会、インターネット広告、自社WEBサイト経由でのお問合せ等からによるものであり、パソナグループ各社への依存度は小さい状況にあります。また、パソナグループ各社との取引のうち最も大きいのは株式会社パソナとの取引になりますが、当連結会計年度における売上構成比として15.4%となっておりますが、その大多数はマスタークライアントが存在する受託案件となっており、同社を通じて様々な業界業種のBPO案件を受託しております。なお、パソナグループ各社からの紹介案件かどうかに関わらず、個別案件における取引開始の可否判断や取引の条件交渉は、当社グループが独立した立場で実施しております。

当連結会計年度における当社グループと当社以外のパソナグループ各社との主な取引は「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 (関連当事者情報)」に記載しております。

なお、パソナグループ各社との取引を行う場合は、一般株主との間に利益相反関係が生じるリスクが存在することを認識し、取引条件の適切性を確保するために、当社グループが定める関連当事者等管理規程に基づき、取引開始前に、取引の相手方が関連当事者等に該当しないかを関連当事者等管理部門が確認しております。さらに、取引の合理性(事実上の必要性)及び取引条件の妥当性等について経営会議にて審議・検討し、監査等委員会での見解を踏まえた上で、取締役会で決議するものとしております。取引の開始後においても定期的なモニタリングを実施の上、次年度以降の更新、及び当該年度内における取引内容又は条件等が変更となる、もしくは超過等が見込まれる場合、あらためて取締役会にて決議するものとしております。

 

(オ)親会社が存在していることを踏まえたガバナンス強化の取組み

当社グループの独立性を継続的に確保していくための取り組みとして、常勤監査等委員と監査部による関連当事者等取引申請書類の査閲や独立性監査等の実施等を通じて、内部監査部門及び監査等委員会におけるモニタリングを強化しております。モニタリングでは、関連当事者等取引や不当な事業調整の有無をはじめとした独立性を毀損するような実態が生じていないかどうかを、定期的及び必要に応じて随時に確認を行うことで、ガバナンスの確保を行うとともに株式市場・投資家によるモニタリングも可能となるように親会社グループとの各関係内容等を丁寧に開示してまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、円安の加速や物価の上昇などにより消費の足踏みが見られたものの、賃上げの適用の広がりもあり緩やかな回復基調にあります。一方で世界的な金融引き締めや、各国での選挙、ウクライナやイスラエルにおける地政学的リスク等、不透明な状況が続きました。

当社グループの属するコンタクトセンター・BPO業界は、引き続き、チャイナリスクを発端としたリショアリングBPOや、非対面接客の需要の高まりも背景に、旺盛な需要が続き、堅調に推移しております。

このような経営環境の下、当社グループは2026年5月期までを対象期間とする「中期経営計画2025」において、「根元から新芽まで健康に成長し続ける会社」をビジョンとし、既存(根元)事業である「コンタクトセンター・BPOサービス」と、新規(新芽)事業である「クラウドPBX(注) Omnia LINK(オムニアリンク)をはじめとするシステム開発・販売」の両面での成長を掲げてまいりました。

 (注)PBX:Private Branch eXchangeの略・構内交換機

 

(コンタクトセンター・BPOサービス)

コンタクトセンター・BPOサービスは、重点戦略グループのひとつである金融業界において、NISAから新NISAへの転換を契機とした案件の獲得や、店舗統廃合を契機とした接客のコンタクトセンターへの集約など、市場環境の変化を追い風としながら、新しいコンタクトセンターの在り方をご提案し、事業の拡大が続きました。

増加する業務量への対応として、2023年9月には、札幌エリアで4拠点目となる「札幌第四センター」を開設しました。また、「福岡第二センター」においては、増床を実施しました。当連結会計年度末におけるオペレーションブース数は、全国17拠点、7,024ブースとなりました。また、コンタクトセンター・BPOサービスにおけるOmnia LINK利用占有率(コンタクトセンター・BPOサービスでの利用PBXのうち、Omnia LINKが占める割合)は73.1%となりました。

当社グループは、従前よりPBXのクラウド化をはじめとしたDXに取り組んでまいりましたが、その取り組みを高く評価いただき、経済産業省と東京証券取引所及び独立行政法人情報処理推進機構が共同で選出する「DX注目企業2024」に選定されました。

今回の選定は、以下のような点が総合的に評価されたものです。

 

1. クラウドPBXの自社開発と活用

クラウドPBX「Omnia LINK」を自社開発し、自社のコンタクトセンター・BPO事業で活用しており、さらには、システムのみを外販するというビジネスモデルが明快である。


2. 在宅コンタクトセンターの実践

コロナ禍において、PBXのクラウド化によって、在宅でのコンタクトセンター運営を即時開始したこと。また、在宅での勤務によって、採用効率、定着率を高めることができており、人員数の獲得だけでなく、より優秀な人材の獲得、さらなるサービスの質の向上にも寄与することで、好循環を生み出すことが期待できる。

 

3. コンタクトセンターによる社会課題の解決と、新たな市場の開拓

コロナ禍を機に消費者向け店舗の統廃合が始まっている点に注目し、店舗での接客をコンタクトセンターに集約するためのシステム「UnisonConnect(ユニゾンコネクト)」を開発し、対面窓口を縮小する企業のビジネスをコンタクトセンターに集約することで、社会課題を解決しながら自社の新たな顧客層の開拓とビジネス拡大につなげている点がユニークである。時宜を得た取組みでありDXの一つのあるべき姿として将来性を感じる。

 

(クラウドPBX Omnia LINKをはじめとするシステム開発・販売)

当連結会計年度においても、クラウドPBX「Omnia LINK」は、コンタクトセンターにおける音声認識の市場浸透を背景に堅調な引き合いがありました。一方で、クラウドPBXの浸透とともに、1社あたりのライセンス数が減少傾向にあることから、第2四半期より営業戦略の大きな転換を図りました。具体的には、1社あたり100ライセンスを目安とした大型案件を改めてターゲットに定め、大型案件に必要な機能の改修や営業人員のスキル向上、役割分担の見直し等を図りました。その結果、当連結会計年度末のライセンス販売数は、期初に設定した目標数を下回りましたが、前年同期比で約1.4倍となる3,248ライセンスとなりました。また、音声認識が好調であったためARPU(1ライセンス当たりの単価)は当初想定よりも高い約20千円となりました。上記に伴い、Omnia LINK外販のARR(年間経常収益:毎月継続して生じる収益×12か月で算出)は7.9億円(前年同期比+30.5%)となりました。

2024年4月には、Omnia LINKの技術を応用し、スマートフォンでの利用を可能にした「Omnia LINK ANYPUT(オムニアリンク エニプット)」の販売を開始しました。コンタクトセンターと物流などをはじめとするフィールドワークをつなぐ、新しいビジネスコラボレーションツールとして、広くお客様獲得に努めてまいります。

 

上記の取り組みの結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は前期に続き過去最高となる38,253百万円(前年同期比8.8%増)、営業利益は2,543百万円(同14.3%増)、経常利益は2,527百万円(同11.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,833百万円(同9.2%増)となりました。

なお、当社グループは、コンタクトセンター・BPO事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における総資産額は、14,096百万円となり、前連結会計年度末比1,889百万円増加となりました。これは主に、現金及び預金の増加1,186百万円、売掛金の増加123百万円、ソフトウエアの増加216百万円等によるものであります。

 

(負債)

当連結会計年度末における総負債額は、4,903百万円となり、前連結会計年度末比538百万円の増加となりました。これは主に、未払費用の増加200百万円、未払消費税等の増加263百万円等によるものです。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産額は、9,192百万円となり、前連結会計年度末比1,351百万円の増加となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益1,833百万円を計上した一方で、剰余金の配当680百万円により利益剰余金が減少したためです。

 

③ キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、2,569百万円(前年同期は1,533百万円の資金の獲得)となりました。主な増加要因として税金等調整前当期純利益2,537百万円(前年同期2,268百万円)等があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は、894百万円(前年同期は611百万円の支出)となりました。主な減少要因としてコンタクトセンター拠点の新設及び増床に伴う有形固定資産の取得による支出360百万円(前年同期218百万円)、無形固定資産の取得による支出305百万円(前年同期218百万円)、敷金及び保証金の差入による支出126百万円(前年同期12百万円)があったことによるものです。

 

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、492百万円(前年同期は438百万円の支出)となりました。主な増加要因として新株予約権の行使による株式の発行による収入198百万円(前年同期201百万円)があった一方で、減少要因として配当金の支払額680百万円(前年同期643百万円)等があったことによるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

当社グループは、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

b 受注実績

当社グループは、受注生産をしておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。

 

c 販売実績

当社グループは、コンタクトセンター・BPO事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載をしておりません。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

コンタクトセンター・BPO事業

38,253,042

8.8

 

(注)なお、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。

相手先

第24期連結会計年度

(自 2022年6月1日

至 2023年5月31日

第25期連結会計年度

(自 2023年6月1日

至 2024年5月31日

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

東京電力エナジーパートナー(株)

6,198,280

17.6

6,288,677

16.4

(株)パソナ

3,421,560

9.7

5,902,649

15.4

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

① 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高

当連結会計年度における売上高は38,253百万円、売上高成長率は、8.8%となりました。特定のコロナウイルス関連案件の縮小はあったものの、大型案件の獲得、既存案件の規模の拡大が売上高の増加に寄与しました。とくに、重点戦略グループのひとつである金融業界への注力の結果、新規案件の獲得につながり、売上高の増加の一因となりました。また、自社開発のクラウドPBX Omnia LINKの活用等によって、需要を逃さずに柔軟な対応を実現しております。上記の取り組みの結果、コンタクトセンター・BPOサービスの売上高が増加しました。

 

b.売上原価、売上総利益

当連結会計年度の売上原価は32,186百万円(前期比108.1%)となりました。売上原価については、人件費が増加しました。これは売上高の増加による従業員数の増加や賃上げによるものです。その一方で、売上原価率を低減させるための人材派遣の起用を縮小させる取り組みや、デジタル技術を活用した生産性向上に取り組みを実施しました。その結果、当連結会計年度における売上原価率は84.1%となり、前連結会計年度から0.6%の減少となり、当連結会計年度における売上総利益は6,066百万円(前期比112.4%)となりました。

 

c.販売費及び一般管理費、営業利益

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は3,523百万円(前期比111.1%)となりました。増加の主な要因は事業拡大や賃上げによる人件費の増加、株主優待制度の導入によるものです。当連結会計年度における販管費率は9.2%となり、前連結会計年度から0.2%の増加となりました。販管費率は増加したものの、売上原価率が低減したことによって、当連結会計年度における営業利益は2,543百万円(前期比114.3%)となりました。

 

d.営業外損益、経常利益

当連結会計年度において主に新型コロナウイルス感染症に関する補助金収入11百万円等により営業外収益は16百万円(前期比25.9%)、持分法による投資損失30百万円等により営業外費用は31百万円(前期比179.5%)となりました。結果、経常利益は2,527百万円(前期比111.4%)となりました。

 

e.特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益

当連結会計年度において持分法適用会社の有償増資に伴う持分変動利益13百万円により特別利益13百万円、固定資産除却損3百万円により特別損失は3百万円、法人税等合計は704百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,833百万円(前期比109.2%)となりました。

 

② 財政状態に関する認識及び分析・検討内容

財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に含めて記載しております。

 

③ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について

当社グループは堅実で持続的な成長の実現を通じて新たな事業創出を図り、豊かな社会づくりへの貢献を目指しており、売上高成長率及び営業利益成長率を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的指標としております。

当連結会計年度における売上高は38,253百万円となり前年同期比からの成長率は8.8%となっております。当社の売上高の成長には、新規案件の獲得や既存案件の拡大が必要なことはもちろんですが、その実現を支える要素として、人材、オフィス等のファシリティ、システムの3つの要素が重要であります。人材やファシリティについては事業拡大に備えた事前の対応が、当社のキャパシティを左右することになるため、適切な備えを継続して実施しております。システムについては、特にコンタクトセンターサービスに必須となるPBXについて、自社開発のOmnia LINKにより、事業拡大に柔軟に対応できる環境を実現しております。これらの取り組みを引き続き進めることで、さらなる新規案件の獲得に取り組み、成長率の維持・向上を図ります。

売上原価や販売費及び一般管理費において増加要因はあったものの、売上高の増加や、売上原価率を低減させるための人材派遣の起用を縮小させる取り組み、業務の効率化及びデジタル化や人件費以外の費用低減を通じた販売費及び一般管理費の抑制にも取り組みました。結果、営業利益は2,543百万円で前年同期比の成長率は14.3%となっております。

 

④ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る内容

 a.キャッシュ・フローの状況分析

 キャッシュ・フローの状況の詳細は「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

 b.資本の財源及び流動性に係る内容

 当社グループの主な資金需要は運転資金と設備投資資金になります。運転資金は、「営業活動によるキャッシュ・フロー」および銀行借入金にて賄う方針であります。具体的には、手元流動性資金、国内金融機関2行と締結している特殊当座貸越枠のフレキシブルな資金調達手段を確保し、流動性リスクを適切にコントロールしてまいります。また、設備投資資金に関しては、内部留保及び資金計画に基づき、長期借入による調達を行い、財務の安定性を確保してまいります。

 

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっての会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりです。

また、この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りや判断を行う必要があります。過去の実績や現在の状況に応じ、合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断を行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。