文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)企業理念
当社グループは、ステークホルダーの皆様との対話をより一層深め、技術で未来を支えていく決意を込めた企業理念として「KOKUSAI ELECTRIC Way」を掲げております。
(2)経営方針
当社グループは、企業理念の実現に向け、半導体製造装置専業メーカーとして社会的責任を強く自覚し、事業活動とESGの取り組み(環境・社会課題の解決、ガバナンスの強化)の両側面から経済価値及び環境・社会価値を追求することにより、SDGsの達成に寄与するとともに、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な発展の両立をめざしてまいります。
(3)経営戦略
当社グループは、半導体製造プロセスの前工程における「成膜」工程に注力しており、バッチ成膜装置、トリートメント(膜質改善)装置で世界トップクラスのシェアを有しております。近年、半導体デバイス構造の微細化や構造の複雑化、三次元化によってウェーハの表面が複雑な形状になり、高品質な薄膜等を形成するにはより高度な技術が必要とされています。これに対して当社グループは、難易度の高い成膜と高い生産性を両立するバッチALD(注1)成膜技術や、高い生産性を維持しつつ形成された薄膜の膜質を改善するトリートメント技術を生かした高付加価値製品の販売拡大や研究開発に注力し、事業拡大を図ってまいります。また、装置のライフサイクル全体にわたって、メンテナンスや修理、部品供給、移設・改造などお客様のニーズに合わせたアフターサービスの拡充を図るとともに、今後の需要拡大に対応するための生産体制及び開発体制の拡充、DXを活用した生産効率向上にも注力してまいります。
ESGの取り組みでは、設定した5つのマテリアリティに基づき、課題解決に向けた活動を推進してまいります。
また、ディスクロージャーポリシーに則り、ステークホルダーの皆様と積極的に対話を行ってまいります。
(注1)当社グループでは、複数のガスをサイクリックに供給する工程を伴い、原子層レベルで成膜する手法を「ALD」と呼んでいます。
(4)中期計画
当社グループは、WFE(Wafer Fab Equipment:半導体製造装置市場)の市場規模および市場成長を前提として、中期目標を設定しております。WFEが1,200億ドルに達した時に当社グループの売上収益を3,300億円以上とし、資本コストを意識しながら中長期的な視点で資本収益性を向上させていきます。詳細は、当社ウェブサイト(URL:https://www.kokusai-electric.com/ir)にて公開しております。
(5)経営環境
半導体製造装置市場に大きく影響する半導体デバイス市場の規模は、2016年の約3,500億ドルに対し、2022年には約6,100億ドルと1.7倍へ拡大しており、2023年から2029年まで年平均成長率10.9%で成長することが予想されております(注1)。半導体デバイス市場拡大の背景には、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要拡大や、AI、IoT、DX等の拡がりによるデータセンターの拡充や環境負荷低減への投資(GX)等の産業向けの需要拡大、主要国による産業支援策があります。足元の世界経済は、緩やかな成長基調にあったものの、依然として先行きに対する不透明な状況が続いており、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要回復が遅れています。しかしながら半導体デバイス市場では、生成AIの普及等を背景に先端DRAMに対する需要が増加しており、2025年以降需要が本格回復し、更に2029年に向けて技術革新の継続・加速的により再び成長基調へ進むものと期待しています(注2)。
半導体製造装置市場は2016年の約370億ドルに対し、2022年には約980億ドルと2.6倍以上へ拡大しており、2023年から2029年まで年平均成長率8.0%で成長することが予想されております(注2)。足元では先端DRAM、先端ノード向けLogic/Foundry向けの設備投資が加速しており、NANDも2025年に入り回復の兆しが見られ、今後半導体デバイスの需要回復に伴って半導体製造装置の需要も回復するものと見ております。中長期的には、半導体デバイスの微細化、構造の複雑化、三次元化が進む中で、難易度の高い成膜と高い生産性を両立することのできる半導体製造装置へのニーズが高まると考えております。
(注1)出典:TechInsights Inc. Semiconductor Forecast (March 25)
(注2)出典:TechInsights Inc. IC MANUFACTURING EQUIPMENT MARKET HISTORY AND FORECAST (2019 - 2029) (March 2025)
半導体デバイス/半導体製造装置の世界市場規模(単位:十億ドル)
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2016年 |
2022年 |
2023年 |
2029年(予想) |
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半導体デバイスの 世界市場規模 |
351.8 |
613.9 |
559.1 |
1,040.4 |
|
半導体製造装置の 世界市場規模 |
37.0 |
97.7 |
99.0 |
156.1 |
出典:TechInsights Inc. Semiconductor Forecast (March 2025)
出典:TechInsights Inc. IC MANUFACTURING EQUIPMENT MARKET HISTORY AND FORECAST (2019 – 2029) (March 2025)
(6)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループを取り巻く事業環境は、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要回復が遅れる中、半導体デバイス市場では生成AIの普及等を背景に先端DRAMに対する需要が増加しています。Logic/Foundryは、一部のデバイスメーカーに投資抑制が見られるものの、全体として先端ノード向けの設備投資が加速しています。NANDも年度終盤に回復の兆しが見られ、今後回復が進むものと期待できます。中長期的には、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要拡大に加え、AI、IoT、DX等の拡がりによるデータセンターの拡充や環境負荷低減への投資(GX)等により、半導体関連市場は大きな成長が見込まれております。
こうした状況をふまえ、当社グループは、前述の経営戦略に基づき、以下の重点施策を推進してまいります。
① イノベーションによる高付加価値製品の継続的な創出とお客様のニーズを的確に捉えた開発体制の強化
今後加速されることが予測されるお客様の先端デバイス開発スピードに応えるため、イノベーションを創出し、難易度が高い成膜技術等を用いた当社が有する高付加価値製品の開発をさらに推進してまいります。この推進体制の一環として、韓国生産拠点のデモ評価エリアの拡張及び横浜テクノロジーセンタの設置を既に実施しており、また、今後米国デモセンターの新設(2026年9月竣工)を予定しております。
② グループ一体化経営をはじめとする高効率経営の推進
当社グループにおける営業、設計、調達、生産及びサービス業務の全体最適を目的として、生産管理や顧客管理等のシステムの統合を含むDXの推進を加速してまいります。
③ 多様な人財が活躍できる職場環境づくり
当社グループが持続的に成長・発展していくために、従業員一人一人の多様性を生かした新たな価値創出の機会を積極的に設け、その能力や才能を遺憾なく発揮できるよう、オープンな職場環境づくりをめざしてまいります。
④ さらなる業績拡大のためのお客様への提案力の強化
これまで当社がNAND分野で培ってきたバッチALDやトリートメント(膜質改善)をはじめとする先端プラットフォーム・プロセス技術を、Logic/Foundry分野及びDRAM分野へと展開いたします。また、新分野への挑戦を加速させるため、パワーデバイス・成熟ノード・センサー分野への取組みも継続して強化してまいります。当社は今後も、当社グループのコーポレートスローガンである「技術と対話で未来をつくる」に則り、お客様が抱える課題を深く理解し、その課題に対する解決策を積極的に提案してまいります。
⑤ サービスビジネスのさらなる拡大
当社製品のライフサイクル全体でお客様のニーズに合わせたサービスを提供するため、部品販売・メンテナンスをはじめとする、当社グループ全体でのオペレーションの最適化を推進し、持続的な成長をめざしてまいります。
(7)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、企業の持続的な成長性、収益性を測定するため、売上収益、調整後営業利益率、調整後営業利益及び調整後親会社の所有者に帰属する当期利益を重要な経営指標として位置付けております。当該指標を重視する理由について、売上収益は事業成長の目安となること、調整後営業利益率は売上の増加割合に対する収益性の変化を確認する目安となるためであります。また、資本コストを意識しながら中長期的な視点で資本収益性を向上させるため、ROE(自己資本利益率)及びROIC(投下資本利益率)についても重要な経営指標として位置付けてまいります。
なお、調整後営業利益及び調整後親会社の所有者に帰属する当期利益につきましては、経営成績の推移を把握するために以下の算式により算出しております。
① 調整後営業利益 = 営業利益(IFRS)- その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く)
② 調整後当期利益 = 当期利益- その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) - 持分法で処理されている投資の売却益 + ファイナンシング関連費用 + その他の金融費用 + 調整項目に対する税金調整額 - 税率変更に伴う一時的な税金費用の調整額
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、事業活動を通じて社会の信頼・期待に応えていくことが企業の社会的責任であると考えております。
当社グループのサステナビリティ経営は、この社会的責任を強く自覚した上で、事業活動とESGの取り組み(環境・社会課題の解決、ガバナンスの強化)の両側面から経済価値及び環境・社会価値を追求することにより、SDGsの達成に寄与するとともに、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な発展の両立をめざすものです。
当社グループでは、企業理念(KOKUSAI ELECTRIC Way)、マテリアリティ(重要取り組み課題)の特定、専門会議体の運営、国際的イニシアティブへの参画など強固なサステナビリティ経営基盤により、さまざまな活動を推進しております。
(1)ガバナンス
当社はサステナビリティ活動を牽引する専門の会議体として、社長執行役員を委員長としたサステナビリティ委員会を取締役会の下部組織として設置し、半期に1回開催しております。サステナビリティ委員会は、さまざまな社会課題、事業課題に対応するために必要な専門性をもった委員で構成しております。委員会の審議事項は、マテリアリティ、外部の要求事項等を考慮しながら決定しており、サステナビリティ関連方針の検討、マテリアリティから具体化するESGの各重点テーマに対する目標設定やその進捗管理、また、ビジネスリスク・マネジメントなどについて幅広く審議しております。委員会を中心としたサステナビリティ活動の状況は、社内に周知するとともに、四半期に1回、取締役会に報告しております。
(2)戦略
当社グループでは、SDGs達成への貢献と当社グループの持続的な発展の両立をめざすため、重点的に取り組む課題としてマテリアリティを特定しております。国際的に要求されている事項や、当社グループのサステナビリティ経営課題から、マテリアリティ候補を抽出・整理し、ステークホルダーの皆様と当社グループのそれぞれにとって重要度の高い項目をマトリクス評価により絞り込んでおります。これらの重要項目は、取締役会において自社の取り組みや戦略との整合性を確認の上、特定しております。
特定した5つのマテリアリティから、重点テーマ、さらには活動アイテムへと具体化し、KPIを定めて進捗管理しており、その状況はサステナビリティ委員会や取締役会でフォローアップしております。
マテリアリティの特定プロセスや、社内推進活動の状況は、積極的に社内外に公表し、ステークホルダーの皆様との対話を促進していきたいと考えております。
(3)リスク管理
当社では、抽出したリスクごとに事業継続への影響度や対策の実効性をレビューする他、社会情勢や事業環境の変化に伴い発生する新たなリスクを抽出していくため、全部門で定期的なリスクアセスメントを実施しております。リスクアセスメントの結果は、サステナビリティ委員会で審議し、その状況について取締役会に報告する体制としており、リスク対策と事業継続計画を万全なものとするため、継続して強化に努めております。
(主なリスクと対策)
|
No. |
リスク分類 |
想定する内容 |
リスクに対する取り組み |
|
1 |
政治・経済 |
各国・地域の経済、産業、安全保障等の政策影響による事業活動への制約発生 |
・各国・地域の政策に関する情報の注視 ・各種制約を想定した販売、生産、輸出入、サービス等に関する代替策・分業の事前検討 |
|
2 |
市場ニーズ |
市況の長期的な低迷、又は需要の急変動(増減)に追随できないことにより業績が低迷 |
・市場・お客様同行の把握 |
|
3 |
研究開発 |
技術開発競争において先導・追随できないことによる製品競争力の低下、業績の低迷 |
・積極的かつ効果的な研究開発投資 ・外部研究機関との共同研究推進 |
|
4 |
人材 |
人材の確保・育成の低迷、優秀人材の社外流出(退職)による競争力の低下 |
・安全で働きがいのある職場づくり、健康経営の推進 ・エンゲージメントサーベイによる定期的な調査 ・社内人材開発プログラムの拡充 ・主要ポジションに対する後継候補者の |
|
5 |
調達・生産 |
調達部品の供給遅延や停止による生産活動や 納期の遅延、受注取り消し等 |
・お客様やビジネスパートナーとの日常的な連携強化による代替策の準備 ・マルチベンダー化 |
|
6 |
製品・品質 |
製品欠陥に起因したお客様製品不良、安全・環境事故の発生による信頼の低下 |
・不具合の原因究明、再発防止活動徹底 ・製品安全設計や製品品質向上策の推進 |
|
7 |
知的財産 |
・第三者による当社グループ知的財産権侵害 ・第三者の知的財産権侵害 |
知的財産戦略部門を中心とした各部門や外部専門家との連携・対応 |
|
8 |
環境対応 |
・環境汚染事故発生による社会的信用低下 ・各国・地域の環境法令対応不備による停滞 |
・ISO14001による管理・点検等の徹底 ・各国・地域における法規制・条例の把握 |
|
9 |
大規模災害 |
当社グループの生産拠点やビジネスパートナーの被災による生産・部品供給の停滞 |
・生産BCP、大規模災害対策マニュアル策定 ・代替生産体制整備、サプライヤー連携強化 |
|
10 |
感染症の 世界的流行 |
社内クラスターの発生や他の国・地域への渡航 制限等による事業活動の停滞 |
・社長を議長とする対策会議の運営 ・各事業所における感染予防対策の徹底 ・事業活動への制限を想定した代替策検討 |
|
11 |
コンプライ アンス |
各国・地域の法規制への抵触による行政処分、 損害賠償の発生、社会的評価・信用の低下 |
・通報制度の構築・運用 ・各職場へのオンブズパーソンの配置 ・定期的なコンプライアンス教育の実施 ・コンプライアンス委員会や内部監査等による定期モニタリング ・外部専門家との相談窓口設置 |
|
12 |
訴訟 |
契約等の不遵守による取引先等との訴訟・紛争、損害賠償等の請求 |
技術的・取引上の契約・約束事項の記録の明確な設定、及び相互確認 |
|
13 |
情報 セキュリティ |
サイバー攻撃、不正アクセスでのシステム停止や情報漏洩による業務の停滞、社会的信用低下 |
情報セキュリティ委員会を中心とした従業員啓発とシステム対策両面からの継続的改善 |
(4)指標及び目標
本書提出日現在において、指標及び目標については一部を除き公表をしておりません。引き続き精査を踏まえ、開示内容を拡充していく予定です。なお、当社グループの各種実績データについては算定を行っており、当社ウェブサイト(
≪TCFDの提言に沿った取り組み≫
当社グループは、2021年8月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同しました。
「持続可能な社会の創造・地球環境の保全」をマテリアリティ(重要課題)の一つとして設定し、「環境負荷の低減」を重点テーマとして掲げており、その活動アイテムとして「温室効果ガスの排出削減」を進めております。
また、気候変動におけるリスクと機会を特定するとともに、それらが事業や財務に与える影響を分析の上、対応策を設けており、気温上昇を1.5℃に抑える温室効果ガス排出削減目標を設定して取り組んでおります。
なお、TCFDの提言に沿ったガバナンス、戦略、リスク管理及び指標と目標の4つの基礎項目による情報、および温室効果ガス排出量の実績については、当社ウェブサイト(以下URL)にて公開しております。
https://www.kokusai-electric.com/csr/environment/tcfd
https://www.kokusai-electric.com/csr/environment/performance
≪人的資本に関する戦略、指標及び目標≫
当社グループの事業活動の源泉は人であると認識しており、人材や価値観の多様化と生産性向上が両立できる働き方改革、企業の中長期的な成長戦略と個人のキャリアプランを尊重したOJT(On the Job Training)とOff-JT(Off the Job Training)による企業の成長と個人のキャリア実現の両立、心理的安全性のある企業風土、健康と安全の維持・向上は、企業の持続的な発展に必要不可欠です。
当社グループは、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)への取り組みをはじめ、事業のグローバル化の急進に対応できる人材の確保・育成や、組織風土改革、健康経営を推進し、イノベーション創出の基盤を強固なものとしていきます。
(1)戦略
① ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)の推進
a ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの考え方
急激な少子高齢化の進行、予測不可能な事業環境等により企業を取り巻く環境が大きく変化し続けており、当社が持続的に成長・発展していくためには、従業員一人ひとりの多様性を活かした新たな価値の創出やリーダーシップの発揮、チームとしての協働が必要となります。世界各国をフィールドとして当社が飛躍するためにも、性別、年齢、人種や国籍を問わずに、背景・視点・価値観の異なる従業員の多様性を尊重し、それを最大限に生かすこと、また異なる視点を持つ従業員同士が学び合うことで企業の成長につなげ、意欲のある従業員が世界を舞台にチャレンジを楽しみ益々活躍できる環境を形成していきます。2024年度は、外部講師を招き、世代間の多様性、ジェンダーによる多様性に焦点をあてた講演会を2回開催し、ダイバーシティの重要性を改めて認識する取り組みを実施しています。
b 多様な人材の雇用促進
当社は、予測不可能な事業環境の変化を先取りできるよう、性別、年齢、人種や国籍を問わず高い専門性を有する経験者採用を積極的に推進しております。経験者採用者がすぐに活躍できるように入社時の研修を強化するとともに、当社の企業文化の理解促進や経験者採用者のネットワーク構築のため、入社後一定期間経過した経験者採用者を対象とした振り返り研修を実施しております。
c 女性活躍推進の取り組み
当社は、性別の偏りなく人材の活躍を推進することを基本方針としており、背景・視点・価値観の異なる社員を偏りなく確保し、多様性を最大限に生かすことで企業の成長につなげていきます。女性活躍については、アファーマティブ・アクション(積極的な格差是正措置)の一環として、自社としての行動計画を策定し、女性活躍推進の取り組みを行っております。2024年度は、役員による女性社員のメンタリングやキャリア開発研修を実施しています。次世代育成支援対策推進法に基づいて定めた行動計画について、「プラチナくるみん」の認定要件となる目標を達成することができました。
d 障がい者雇用の取り組み
当社は、誰もが職業を通して社会参加できる「共生社会」をつくっていくため、障がい者の雇用にも積極的に取り組み、当社全体の職場環境の改善や生産性向上につなげていきます。障がい者の雇用の促進等に関する法律(改正障害者雇用促進法)及びその後の一部改正を踏まえ、障がい者や職場を支援する体制を整備するとともに、相談に対する適切な対応の促進を図るため、「障がい者相談窓口」を設置しております。相談窓口では、本人からの要請に基づいて合理的な配慮の提供を行うほか、本人や職場からの各種相談対応、職場への合理的な配慮の運営に関する助言を行っております。
e 労働組合との対話
健全かつ安定的な労使関係の維持は、当社の発展の基礎となるものです。当社は、「KOKUSAI ELECTRIC 労働組合」と労働協約を締結し、定期的に労使協議の機会を設け、労働条件や人事制度について協議し、従業員の活性化に向けての意見交換を行うなど、職場規律の確立、職場環境の維持・改善に労使一体となって取り組んでおります。少子・高齢化社会の急速な到来、経済のグローバル化、規制緩和の進展等、労使を取り巻く環境が大きく変化しつつある中で、相互理解と協力の精神を基調として、広い視野かつ自主的な対話によって、問題の合理的、平和的解決を図っております。
② 働き方改革
a ワークライフバランスの考え方
社会の少子高齢化に伴い、育児や介護との両立など働き方のニーズが多様化する中、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を整備し、生産性を向上させワークライフバランスを実現することが当社の企業としての重要な課題になっております。当社は、育児や介護などのライフイベントに対応した施策を充実させるとともに、在宅勤務の推進による通勤時間の削減など、さまざまな施策により仕事と生活の両立支援を行っております。
b 仕事と生活の両立支援
当社は、「やりがいのある充実した仕事」と「健康で豊かな生活」の両立の観点から、仕事と育児・介護等のライフイベントとの両立を支援する制度の整備・拡充を推進しております。2021年度は、次世代法に対する当社の取り組みに対するトップメッセージの発信を行い、男性の育休取得事例を社内報やイントラネットへ掲載して情報共有を図っております。2024年度は、仕事と生活の両立に取り組む社員の具体的な事例を取り上げて、全社に共有しています。また、2025年4月からは、出生時育児休業の法改正に呼応し、産前産後休業および育児休業取得時の所得補償を拡充しています。これにより、パパ・ママ関係なく、出生時は育児に専念できる体制を構築しています。
c 「育児・仕事両立支援金」制度
当社は、子育てをしながら働く従業員が、さらに能力を発揮することができる環境を実現するため、2017年4月1日から「育児・仕事両立支援金」制度を導入しました。本制度では、共働き又はひとり親で、小学校3年生修了前の子を養育する従業員に、保育施設や学童施設の利用料など、子育てをしながら働くために要した費用を「育児・仕事両立支援金」として支給します。
d 在宅勤務制度
当社は、従業員のライフイベントとの両立支援として、また通勤時間の削減による「健康で豊かな生活」支援の施策として、2023年4月より在宅勤務制度を導入しました。在宅勤務が可能な業務に従事する従業員は、個人の選択により、業務に支障のない範囲で在宅勤務することができます。
③ 「自ら学び、自ら考え、自ら実行する」人材育成
a 次世代人材育成の考え方
当社の人材開発理念は、「自ら学び、自ら考え、自ら実行する人材の育成」です。当社の人材育成プログラムは、当社の中長期的な成長戦略と個人のキャリアプランのマッチングを図り、OJT(On the Job Training)によるチャレンジングな課題、人材育成を主眼としたフィードバック、育成箇所をサポートするOff-JT(Off the Job Training)で構成されております。
Off-JTでは、社内外の講師による業務上必要な技術・知識を習得する研修、オープンイノベーションを獲得するための技術講演会、グローバルでの対話促進を目的とした語学教育、効果的なプレゼンのポイントを掴み実践に強くなるためのプレゼン研修など、新卒・経験者採用問わず、入社時から個人の知識・スキルアップやキャリアアップのための社員研修を展開しております。今後は、事業環境の変化に主体的に対応できるようなリーダーシップ開発や、求められるスキルの変化に対応したアップスキルのトレーニングを拡充していきます。2024年は、キャリア相談窓口を社内外に設置したほか、キャリア開発研修を実施しています。また、従業員の自律的なキャリア形成を実現する仕組みとして社内公募制度を導入しております。
b e-learningの展開
当社は、従業員の知識や意識向上のため、さまざまなe-learningを推進しております。2023年度からグローバルでのコンプライアンス文化の徹底のため、グローバルで同じ内容でのコンプライアンスのオンライントレーニングを各拠点の言語で展開しております。2024年度は、従業員の自律的な学習の支援や最新の技術や理論を迅速に習得する仕組みとして、WBT(Web Based Training)ベースのKOKUSAI ACADEMYを開設し、意欲ある従業員がいつでも、どこでも学習に取り組める環境を整備しています。
また、エンジニア教育をはじめとした職種別、階層別教育も実施しております。
c 組織文化 エンゲージメントの向上
従業員のエンゲージメントレベルを向上し、働きがいのある会社を志向するため、毎年、エンゲージメントサーベイをグローバルで実施しております。2024年からは、世界最大規模で実施されているサーベイに参加し、働きがいのある企業として認定された企業をベンチマークすることで、自社の改善すべきところを明確にするとともに、他社のベストプラクティスも参考にして改善に取り組んでいます。
エンゲージメントサーベイの結果については、他社事例を含めて、従業員にも公開を行い、職場全員で改善策を話し合い、エンゲージメントレベルの向上への対応を実行しています。今後は、継続的な改善により、世界最大規模のサーベイ会社による働きがいのある企業の認定をめざします。
④ 従業員の健康と安全の維持・向上
a 健康経営
(a) 健康経営の推進
当社は、健康経営宣言をもとに法令遵守・一般的なヘルスケアのみのレベルから、健康の維持・増進を将来に向けた人的投資として戦略的に実践するレベルにステップアップすることを目標に取り組んでおります。
2024年度の取り組みに対して、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2025」の認定を受けました。さらに、2022年度からは健康管理システムを導入し、健診結果などの健康データを一元化することで、健康課題の傾向分析・検証を行い、経営戦略に紐づいた健康経営を進めております。感染症リスク対策新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症に対して、従業員が安心して働けるよう職場環境を整備し、対策を講じております。
(b) 感染症リスク対策
新型コロナウイルスやインフルエンザ等の感染症に対して、従業員が安心して働けるよう職場環境を整備し、対策を講じております。
(c) フィジカルヘルス
健康診断結果により、再検査が必要な方への受診勧奨や面談等のフォローアップを実施し、早期発見・疾病予防に向けて取り組んでおります。
(d) メンタルヘルス
ラインケア・セルフケア研修の実施とストレスチェック集団分析結果による職場環境改善に向けた取り組みを行っております。
また、産業医(精神科医)による相談・面談を定期的に実施し、不調者に対する支援に取り組んでおります。
(e) メンタル疾病に伴う休職者数(国内当社グループの社員)
(人)
|
休職者数 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2024年度 |
|
国内当社グループ合計 |
8 |
14 |
23 |
25 |
24 |
(注)1か月のうち7日以上休職した者
同一社員が年度内に複数回休職した場合は1人とする。
(2)指標及び目標
人的資本・多様性に関する取り組みのうち多様性については、性別、経験者(通年)採用及び国籍の3つの観点から注力しており、当社の主な指標及び目標と実績につきましては、以下のとおりです。
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指標 |
目標 |
2024年度実績 |
|
|
|
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|
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前年比増(2023年度は13.8%) |
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|
前年比増(2023年度は2.3%) |
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(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスク、リスク顕在化の可能性、顕在化の時期、連結業績への影響度及びリスクへの対応は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。
リスク項目マップ
|
分類 |
リスク項目 |
顕在化の |
顕在化の |
影響度 |
|
政治・経済の動向 |
マクロ経済環境 |
中 |
中期~長期 |
大 |
|
市場環境の動向 |
市場ニーズ |
中 |
中期~長期 |
大 |
|
他社との競合等 |
中 |
中期~長期 |
大 |
|
|
主要顧客への依存 |
中 |
中期~長期 |
大 |
|
|
海外事業 |
中 |
中期~長期 |
大 |
|
|
研究開発 |
低 |
長期 |
大 |
|
|
株式市場の動向 |
Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.グループとの関係 |
低 |
中期 |
小 |
|
当社株式の流動性 |
低 |
短期 |
小 |
|
|
災害・パンデミック、 |
大規模災害等 |
中 |
長期 |
中 |
|
感染症の世界的流行 |
中 |
長期 |
小 |
|
|
サプライチェーン |
調達・生産 |
高 |
中期~長期 |
大 |
|
品質問題 |
製造物・品質 |
低 |
中期 |
大 |
|
知的財産 |
知的財産 |
中 |
中期~長期 |
中 |
|
訴訟 |
訴訟等 |
低 |
中期~長期 |
小 |
|
環境 |
環境対応 |
低 |
中期~長期 |
中 |
|
人事管理 |
人材 |
高 |
短期~中期 |
中 |
|
コンプライアンス |
コンプライアンス等 |
低 |
中期 |
中 |
|
情報セキュリティ |
情報セキュリティ |
高 |
中期~長期 |
大 |
|
財務・税務 |
為替 |
中 |
特定時期 |
小 |
|
借入金 |
低 |
特定時期 |
大 |
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のれん及びその他の無形資産 |
低 |
特定時期 |
大 |
(1)マクロ経済環境
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループはグローバルに事業を展開しており、当社グループの業績は国内外の景気、経済動向、社会情勢及び地政学的リスク、各国の関税政策等に影響されます。例えば、半導体デバイスの急激な需要の増減や需給バランスの悪化によって、半導体デバイスメーカーの設備投資計画に大きな変更が生じれば、当社グループの調達、製造コスト、販売の計画に影響が生じる可能性があります。また、国際的な貿易摩擦や製品の国産化施策に伴う関税、貿易障壁、国産メーカー支援強化等の政策により、当社グループにおける製造コストの上昇、国を跨いだ輸送の遅延、販売機会の変化等が生じる可能性があります。また、ロシア・ウクライナ問題の長期化、世界的なインフレの長期化、インフレ抑制のための金利上昇、新興国の成長鈍化、中台関係の悪化、中東及び北朝鮮での地政学的リスクの増大等により世界経済が低迷する場合、当社グループの主要な販売地域にも影響を及ぼす可能性があります。加えて、「(10)感染症の世界的流行」に記載のとおり、感染症の世界的な感染拡大等が再度発生した場合、消費者行動及び事業活動を含む世界全体の経済活動に影響が生じる可能性があります。
当社グループは、マクロ経済環境について注視しながら事業運営を進めていく方針ですが、上記のような影響が生じた場合、当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
2023年3月期には、2022年10月7日付米国輸出管理規則(EAR)(注1)の改正公布により、米国製半導体製造装置について中国の特定の先端半導体メーカーへの輸出が禁止され、その後複数の中国の半導体メーカーが米国政府の発行する制裁リスト(Entity List)に掲載されました。また、日本においても、全世界向けを対象とした先端半導体製造装置の輸出規制に関する改正法令が2023年7月23日に施行されました。このような米中貿易摩擦は日本や他国にも波及し、中国の半導体デバイスメーカーのみならず他の大手半導体デバイスメーカーの投資計画に影響を及ぼすなど、今後の半導体業界にとっての大きなリスクであると懸念されます。
(注1):EAR=Export Administration Regulations(輸出管理規則)
(リスクへの対応)
当社グループは、事業等のリスクについて、社長執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会において総合的に管理・検討する体制のもと、各部門が必要な対応を行い、定期的に、また必要に応じて取締役会へ報告、審議する管理体制を整備しております。
また、当該リスクを軽減するため、市場動向や競合状況の調査・分析を行い、お客様との対話を通じてニーズを把握し、そのニーズに応えることのできる付加価値の高い製品・サービスを提供し続けるべく研究開発をはじめとする事業活動を推進しております。加えて、半導体デバイス別および地域別の売上構成バランスをより適正化すべく努めてまいります。
(2)市場ニーズ
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
半導体業界は技術革新が激しく、技術の変化により市場が大幅に成長する反面、需要と供給のギャップが急激に広がり供給過剰となり、半導体製品の値崩れ及び設備投資の抑制が発生することがあります。
半導体デバイス市場は事業構造上、不安定な性質を有しているため、将来においても市況が低迷する可能性があります。半導体デバイス市場と連動する半導体製造装置市場もこの不安定な市況を避けることは難しく、半導体市況に連動し当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、幅広い用途で半導体の利用が進んでおり、半導体を利用した新しい製品や技術の導入時期、消費者の嗜好の変化、業界の動向等が、半導体の需要や半導体メーカーの設備投資、研究開発計画に与える影響は大きくなっていることから、半導体の市場動向の予測は複雑化しております。3か月に1回程度更新される民間調査機関(TechInsights等)にて、WFE(Wafer Fab Equipment:半導体製造装置市場)CY年度予測が発表されます。市場動向から下方修正、又はマイナス成長予測に転じる場合があり、その予測どおりに主要顧客投資計画の見直しからの後ろ倒しや縮小・中止などが発生した場合には、当社業績に影響を与える可能性が生じます。また、主要顧客における予測していない事故や事態、半導体デバイス市場の想定を超える需要の悪化により当社グループの事業が影響を受ける可能性があるだけではなく、予測を上回る半導体の需要増に応じた半導体製造装置の需要の増加に対応できず、当社グループが市場の好況の恩恵を十分に享受できず、主要顧客との取引関係にも影響を与える可能性があります。
また、半導体製造装置メーカーの変更は、一般的にコストが高く、顧客である半導体メーカーが一度特定の半導体製造装置メーカーの装置を選択すると、当該半導体メーカーは同じ半導体製造装置メーカーの製品を利用し続ける傾向にあります。他の半導体製造装置メーカーの製品を利用している顧客が当社グループ製品に乗り換えることは必ずしも容易ではないため、他の半導体製造装置メーカーの製品を使用している潜在的な顧客に当社グループ製品を販売することができない場合、当社グループの売上及び市場シェアの拡大に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(3)他社との競合等
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
他社との競合の観点では、当社の主力製品であるバッチ成膜装置は、他社の枚葉装置と部分的に競合し、また、同じバッチ成膜装置の競合メーカーと激しい競争が続いております。トリートメント(膜質改善)装置についても、複数の競合メーカーとの競争があります。当社グループでは、高品質成膜・高性能半導体製造装置(25~50枚少数枚数バッチ処理)で、枚葉装置よりも生産性における優位性を維持するとともに、当社のALD成膜技術、プリカーサ(成膜に使用するガス)開発や、排気技術の開発など、技術開発における優位性の維持に努めておりますが、技術革新、生産能力の拡充や生産性の改善等の実現が他社に遅れ、販売価格の前提となるコスト、性能、生産量が競合他社に劣る場合や、新たな競合メーカーが台頭した場合、受注高の減少及びシェアの低下により売上及び収益が悪化することにより、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(4)主要顧客への依存
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
半導体業界は、近年の激しい景気変動や技術競争から再編が進んでおり、プレイヤーが集約された市場環境となっております。当社グループにおいても、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ 生産、受注及び販売の実績」に記載のとおり、主要顧客に対する売上収益が連結売上収益の相当程度を占めております。当社グループは、リスクを軽減するため、主たる経営数値は当然のこととして、各種の経営指標についても継続的に管理するとともに、リスクをふまえた一定の目標に基づき適切な改善を行ってまいります。また、取引先に対し定期的な信用調査や信用リスクに応じた取引限度額を設定するなど、信用リスクの管理のための施策を講じておりますが、主要顧客各社の事業方針の変更、取引条件の変更、技術革新、業界動向、各国の関税政策、地政学的影響などの理由により取引量が縮小した場合や販売価格低下の圧力が強まった等の場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが売掛債権を有する主要顧客の財政状態が悪化し、期限どおりの支払いを得られない場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(5)海外事業
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、海外の各国において以下のようなリスクがあります。これらの事象が発生した場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの売上収益の比率が高い国においては、「(1)マクロ経済環境」に記載のとおり、今後、地政学的問題や貿易摩擦などによって各国の国産メーカーへの支援強化等が実施される可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。地域別の売上収益については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 21.売上収益」をご参照ください。
・投資、輸出入、関税、公正競争、腐敗防止、環境、労働、租税その他事業活動に係る法令その他の公的規制及びその変更
・社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動上の制約
・政治的要因、社会的要因及び経済情勢の変動
・テロ、戦争、自然災害、各種感染症等の発生による社会的混乱等
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
加えて、技術的、取引上の契約事項の明確な記載と相互確認を行うとともに、海外事業に係る取引先、輸出先政庁との情報共有、輸出管理運用基準の遵守、輸出管理教育の受講、輸出管理部門、法務部門と担当部門の連携強化を図っております。
(6)研究開発
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:大)
当社グループを取り巻く半導体デバイス市場は、従来の携帯電話やパソコンなどのコンシューマー向けからデータセンターや5G、AIなどの高成長産業向けへと需要がシフトしながら急速に拡大しております。これに伴い、半導体デバイスは複雑な構造へのシフトが進んでおり、半導体製造装置はより難易度の高い技術と高い生産性の両立が求められ、半導体の世代ごとの開発に追従する厳しい技術開発競争下にあります。
当社グループにとって研究開発は重要課題の一つであり、積極的な投資によって顧客ニーズに応えうる付加価値の高い技術及び製品を提供し続けることを基本としておりますが、市場環境の変化に対応できない場合や製品競争力を維持できない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(1)マクロ経済環境」におけるリスクへの対応と同様です。
(7)Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.グループとの関係
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:小)
KKRによって運営されているKKR HKE Investment L.P.は、2024年3月31日現在において当社発行済株式総数の43.4%を保有しておりましたが、2024年7月に実施しました所有株式の売出しおよびオーバーアロットメントによる売出し等により、2025年3月31日現在における当社総株主議決権の保有割合は23.5%に減少いたしました。当社のその他の関係会社であることに変更はありません。
当連結会計年度末時点において、当社の監査等委員でない取締役である中村正樹1名がKKRの日本法人である株式会社KKRジャパンから派遣されております。
KKR HKE Investment L.P.は、中長期的には売却等により所有比率を低下させることが同社の方針と認識しておりますが、当社について他の一般株主と異なる利害関係を有しており、一般株主が期待する議決権の行使その他の行為を行わない可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、当該株主との取引等について、取引の合理性及び取引条件の妥当性を確認し、取締役会の承認を得ることとしております。
なお、当社は、Kohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.とのMonitoring Agreementに基づき、同社より経営全般に関するコンサルティング、資金調達等に関する経営指導を受け、契約に基づくフィーを支払っておりましたが、2022年3月31日にMonitoring Agreementを解除いたしました。これにより、2023年3月期以降、当該契約に基づく対価の支払いは発生いたしません。
(8)当社株式の流動性
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:小)
東京証券取引所プライム市場の流通株式比率に係る上場維持基準は35%であるところ、当社の新規上場時における流通株式比率は41.7%程度となっておりましたが、KKR HKE Investment L.P.等による当社株式の売出し及びオーバーアロットメントによる売出し等により、2025年3月31日現在における流通株式比率は57.1%程度となりました。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、KKR HKE Investment L.P.との間における流通株式を増加させるための施策に関する対話、従業員の所有する新株予約権の行使やパフォーマンス・シェア・ユニット(PSU)及びリストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)に基づく株式交付による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図ってまいります。
(9)大規模災害等
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)
災害や人為的な原因等により電力、通信、交通等の社会的共通資本に関して重大な障害が発生した場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。特に、主要生産拠点である当社富山事業所ならびに砺波事業所において長期にわたり稼働が困難となった場合には、より重大な影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループの事業拠点は、国内及び海外に展開しており、生産及び販売活動に大きな影響を与える地震、津波、洪水、火災等の災害に備え、下記の対応を行っております。
・富山事業所ならびに砺波事業所における大規模災害発生を想定した、初期安全確保から生産稼働復旧に至る方針マニュアルの策定と運用
・安全衛生リスク評価による予防安全装置の拡充継続・適切配分、ビジネスリスクアセスメントの見直し
・社員の安全が確保できない場合は緊急対応として屋外避難の実施
・安全運転講習、ISO45001に基づく安全衛生管理、海外出張用安全衛生マニュアル等による継続的リスク指導
(10)感染症の世界的流行
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:小)
新型コロナウイルスをはじめとする感染症の世界的な流行は、都市封鎖や外出の禁止、自粛による移動の制限、事業拠点の閉鎖、生産活動の制約、個人消費や設備投資等の減少、サプライチェーンの混乱、世界的な資本市場の散発的な乱高下や資金調達環境の悪化等を生じさせ、世界経済の悪化を招き、当社グループの事業や経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況、また、当社グループの顧客やサプライヤーの業務等にも影響を生じさせる可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを軽減するため、感染症流行時には感染防止対策を徹底するとともに、サプライチェーンの動向を注視し、支障が生じた際には対策本部を設置するなどして迅速な対応を行ってまいります。
(11)調達・生産
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループの使用する購入品資材等は、マルチベンダー化や継続的な仕入供給先への先行情報提供等により安定的な供給の確保に努めておりますが、供給の遅延・中断、急激な需要の増加、経済環境の悪化等により、必要不可欠な購入品資材等の供給不足や市場価格の上昇が生じる可能性があります。また、グループ製品に使用する資材等の仕入先を変更する際には、顧客の事前承認が必要な場合がありますが、顧客からの要求仕様を満たすために必要な特定の仕入品は、顧客承認を得るまで特定の仕入先からしか入手できず、必要な購入品資材等が不足する可能性があります。また、特定の仕入先の被災、事故、倒産等による急な供給遅延・中断が発生し、顧客の事前承認を取得するまでの間に代替品に切替えることができない場合、当社グループの生産活動に影響が生じ、顧客への納期遅延や受注取り消し等により、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクを回避するために下記の対応を行っており、例えば、仕入先から生産中止による供給停止を要望された場合でも、仕入先には通常1年前の申請を義務付けているため、仕入先からの供給を確保しつつ、代替品を選定するなど切り替えの準備を進め、顧客承認を取得した上で代替品に切替えております。
近年においては、マクロ経済環境における海外及び国内の経済動向、社会情勢及び地政学的リスク等の影響により、購入品資材等の仕入価格の上昇が継続しております。当社グループでは、価格上昇妥当性精査に加え商品の高付加価値化や製品への価格転嫁等により仕入価格上昇の影響を吸収していく方針です。
・ビジネスパートナーとの日常連携と仕入価格の適時妥当性評価
・ビジネスパートナーミーティングの定例・臨時開催による市場および生産情報共有と協議
・QCDE(Quality Cost Delivery Environment)定期評価の実施
・重点ビジネスパートナーの経営監視の実施
・取引先緊急対応MAPの作成(二次、三次取引先の把握)
・マルチベンダー化の継続的推進
・購入品の高付加価値化及び製品への価格転嫁努力
(12)製造物・品質
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:大)
大規模なリコールや製造物賠償責任につながるような製品の欠陥が発生し多額の追加費用が発生することになった場合や、品質に問題が生じたことにより受注取り消しが発生した場合、当社グループの製品・サービスに対する顧客からの信頼が低下した場合、その他当社グループの製品の製造過程で問題が生じた場合(災害等により事業継続に支障が生じた場合、及びサプライヤーからの供給に問題が生じた場合等を含みます。)には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、国際標準規格である品質マネジメントシステム(ISO9001)及び環境マネジメントシステム(ISO14001)により製品を製造しており、重大な品質問題を防ぐため以下の取り組みを行っております。また、当社グループの製品の製造過程で問題が生じた場合には対策本部を設置するなどして迅速な対応を行ってまいります。
・製品安全設計の推進
・継続的な製品品質向上策の推進
・不具合発生時の是正・予防処置基準に準拠した原因追及、対策、再発防止策等の是正処置
(13)知的財産
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期~長期、影響度:中)
当社グループは、当社の技術及び製品の競争力強化の観点から事業運営において知的財産に関する取り組みが重要であると認識しており、当社グループの技術やノウハウを保護するため、知的財産権の確保に努めておりますが、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する製品の販売等をすることにより当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、万が一、第三者が当社グループによって当該第三者の知的財産権を侵害しているとの見解を抱いた場合、当該第三者より、差止請求や損害賠償請求等の請求を受ける可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、当該リスクにより、当社の健全な事業活動の継続に支障をきたすことのないよう、研究開発部門、設計部門、法務部門、知的財産部門など関係部署が相互に連携し、より適切な知的財産権のポートフォリオを構築するよう努めております。また、当社グループでは、研究開発部門、設計部門、法務部門、知的財産部門など関係部署が相互に連携し、技術及び製品の開発を進めており、必要に応じて、外部の専門家等の助言を得ております。
(14)訴訟等
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期~長期、影響度:小)
当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めておりますが、事業活動を進めていく上で取引先等から訴訟を受ける可能性や、訴訟に至らないまでも紛争に発展して請求等を受ける可能性があります。それらの訴訟等で当社グループが勝訴するという保証はなく、それらの訴訟等が当社グループの将来的な事業活動に影響を与える可能性があることは否定できません。また、さまざまな事情により、訴額の大きな訴訟等が提起された場合には、仮に損害賠償等の金銭の支払いが命じられる可能性が低いとしても、社会的な注目を集める結果、当社グループの社会的評価が低下する可能性があり、これにより当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当社グループの事業活動に関する法令等の遵守はもとより、社会規範と企業倫理に則った透明性の高い経営を行うための行動を実践することを目的として、コンプライアンスの基本方針や体制などを定める会社規則を制定し、国内外の主要拠点における事業活動状況について、主にコンプライアンスの観点から把握するための体制として、コンプライアンス担当役員のもと本社の経営サポート部門を中心に構成するコンプライアンス委員会を設置しております。また、法令や企業倫理上疑義のある事項等を早期に発見し、速やかな対策を講じるための仕組みとして、当社グループ統一のコンプライアンス通報制度を設けております。
(15)環境対応
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期~長期、影響度:中)
当社グループは、法及び規制の遵守のために必要な経営資源を投入しておりますが、現在及び過去の生産活動に関わる環境責任に伴う費用負担や損害賠償が発生する可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、排水、排気、騒音、廃棄等における環境汚染に関するさまざまな環境法及び規制の適用を受けており、以下の対応を行っております。加えて、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に沿い、気候変動におけるリスクと機会を特定するとともに、それらが事業や財務に与える影響を分析し、対応策を設けております。
・ISO14001による環境管理、法規制・条例の把握
・使用エネルギーの適正管理
・排水・排気設備の日常点検
・廃棄物委託業者の現地確認実施
・化学物質の適切な管理(許可、登録、使用量管理、廃棄時WDS(Waste Data Sheet)の提供)
・顧客への製品の化学物質情報の提供
・SBT(Near-term)認定に沿ったGHG(温室効果ガス)排出量の削減
・RE100(Renewable Energy 100%)認定に沿った再生可能エネルギーへの転換
(16)人材
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期~中期、影響度:中)
当社グループがグローバルな事業展開を進めるなか、イノベーションを創出し成長を続けるためには、国内外で多様な人材を確保・育成すること、多様性を生かす組織文化が重要となります。
少子高齢化の加速に伴う人材不足に起因して、必要な人材を継続的に採用・維持することができない場合や重要人材を喪失した場合には、人材不足による製品開発力の低下や顧客サポートの質の低下を招き、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、国内外で必要な人材をタイムリーに確保するため、国内外で経験者採用を拡大するとともに、多様な人材が働きやすい職場づくりの推進、グループ・グローバル共通のラーニングマネジメントシステムの活用や社内教育プログラムの実践により戦略的に人材の確保・育成を図っております。
(17)コンプライアンス等
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
事業を展開する各国の法令、規則の適用を受けるため、コンプライアンス体制や内部統制システムに内在する限界、法規制、法解釈の変更等により法規制等の遵守が困難になる可能性があります。また、貿易紛争により輸出規制や関税等が強化される可能性もあります。これらの規制を遵守できなかった場合には、業務への障害、罰則や課徴金の適用、法令違反に係る損害賠償請求、業務停止等の行政処分、当社グループに対する社会的評価・信用の低下等により、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。また、規制の強化によってそれを遵守するためのコストが大幅に上昇する可能性や、各国の競争法によって当社グループの事業の拡大が妨げられる可能性があります。
また、当社グループは、財務報告の適正性と信頼性を確保するための内部統制システムを構築しておりますが、さまざまな要因により内部統制システムが機能しなくなる可能性があります。このような事象に適切に対処できない場合、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
「(14)訴訟等」におけるリスクへの対応と同様です。
加えて、コンプライアンス教育により法令、規則の周知徹底を行うとともに、澱み・癒着を防止するために、管理部門、担当ビジネスパートナーの定期ローテーションを強化するとともに、内部監査による定期的なモニタリングを実施しております。
(18)情報セキュリティ
(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:中期~長期、影響度:大)
当社グループは、事業活動を通じて、機密情報、顧客情報、個人情報等を取得・保有、利用しており、それらが意図せず流出した場合、社会的信用の低下や、損害賠償の発生、製品競争力の低下等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、情報システム及び情報ネットワークを駆使しながら事業活動を行っており、サイバー攻撃、不正アクセス、自然災害、停電、機器類の故障、人為的ミスなどにより障害等が発生した場合には、業務の停滞や信用の低下が生じ、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループは、当該リスクへの対応として、情報セキュリティマネジメントに関する社内規程を定め、情報セキュリティ統括責任者を中心とした情報セキュリティ委員会を運営し、従業員対策とシステム対策の両面から継続的に改善しております。また、個人情報保護法への対応として、当社保有の情報資産保護のため、情報セキュリティ方針に基づく「情報セキュリティ事故発生時の連絡体制図」を定め、事故並びに事故の疑い時に迅速に対応できる連絡通報体制を構築しております。さらに、保護対象となる情報について、社内IDを使用したアクセス制限のほか、パスワードの設定・変更を定期的に見直すことにより管理を厳格化しております。
(19)為替
(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループにおける海外売上収益は高い水準で推移しております。また、当社グループの外貨建ての資産及び負債の評価は為替相場の変動により影響を受けております。為替相場の急激な変動によっては、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、海外での製品販売を円建としており、また、為替予約等の措置を講じることで、為替変動によるリスクを一定程度軽減させるよう努めております。
(20)借入金
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、LBOスキームにより株式取得を実施した際、金融機関等を貸付人とする多額の借入れを行っております。また、必要な運転資金について、営業活動より稼得した現預金を充当するほか、設備投資や急激な経済状況の悪化などで資金調達が必要になった場合には、金融機関からの借入れ等を行うことがあります。金融市場の混乱や景気低迷、金融機関の融資姿勢の変化により資金調達環境が悪化した場合や、市場金利の急速な上昇等により支払利息が急激に増加した場合には、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。今後、当社の経営成績が著しく悪化するなどして財務制限条項に抵触した場合、借入先金融機関の請求により当該借入について期限の利益を喪失し、一括返済を求められるなどして、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 13.借入金」をご参照ください。
(リスクへの対応)
当社グループは、上記のLBOスキーム実施時の借入金について、金利負担の減少、財務制限条項の緩和や有利な返済計画とする観点から、2021年3月期に金利(配当)負担の重い優先株式の買戻しとメザニン借入の返済を含む1,250億円の借り換えを行いました。この2021年3月期に借り換えを行った借入金の契約期限が2026年3月期に到来する為、今後の金利上昇見通しを考慮し、1年前倒しして2025年3月期に600億円の借り換えを行っております。
(21)のれん及びその他の無形資産
(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、2018年5月に当社が日立国際電気の全株式を取得した際にLBOを用いた出資を行っております。これにより、のれん及びその他の無形資産が2025年3月期においてそれぞれ59,065百万円、50,442百万円計上されており、合わせて連結資産合計の32.1%を占めております。当社が連結決算において採用する国際会計基準では、当該のれん及び一部の耐用年数を確定できない無形資産については、償却を行わず、事業年度ごと又は減損の兆候が確認される場合において、減損テストを実施し、当社グループの事業の収益やキャッシュ・フロー創出力が低下したと認められる場合に減損損失を計上することが必要となり、これにより当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計と異なり、前述のとおり、のれん及び耐用年数の確定ができない無形資産の償却を行わないため、当該のれん及びその他の無形資産について減損損失の計上が必要となる場合、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計での減損損失の計上に比して計上額が多額となる可能性があります。
2025年3月期においては、減損テストの結果、将来キャッシュ・フローによる使用価値(回収可能価額)は帳簿残高を上回っており、減損損失の計上は不要と判断しております。しかしながら、仮に税引前の割引率が一定の場合、将来キャッシュ・フローの見積額が74.1%減少すると回収可能価額と事業価値の帳簿価額が等しくなる可能性があります。
(リスクへの対応)
当社グループでは、上記リスクを逓減するため、事業の収益力強化に努めており、主に以下の取り組みを実施しております。
① 顧客関係性の向上による、利益の最大化とシェアの拡大
顧客エンゲージメントの最適化を推進するとともに、差別化技術開発を加速し、高付加価値製品の展開によるシェアの拡大、収益力強化に注力してまいります。
② プロダクト・ライフサイクル・ビジネスの持続的成長
顧客へ納入した装置のアフターサービスは、装置販売の拡大とともに、重要な事業として強化に取り組み順調に拡大してきました。今後も、プロダクト・ライフサイクル・ビジネスをさらに高度化して、拡大展開を推進してまいります。
③ 製品・アプリケーション別戦略によるPOR(注)獲得強化と収益拡大
アプリケーションごとの装置プラットフォームの最適化とターゲットの明確化によりPORの獲得を推進してまいります。顧客の要求に合致した技術開発と提案により、高収益である次世代新製品、新アプリケーションの拡販に取り組み、新PORの獲得とともに収益の拡大をめざしてまいります。
(注)Process Of Recordの略であり、「顧客の半導体製造プロセスにおける製造装置認定」のことを指します。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、3,415億円となり、前連結会計年度末に比べ339億円減少しました。主な内容として、現金及び現金同等物は、借入金の期限前返済による減少915億円、自己株式の取得による支出に伴う減少185億円、資金の借入れによる増加600億円等により479億円減少しました。一方で有形固定資産は、富山県砺波市の新工場建設等により115億円増加しました。営業債権及びその他の債権は、売上収益増加に伴い108億円増加しました。
当連結会計年度末の負債合計は、1,453億円となり、前連結会計年度末に比べ427億円減少しました。主な内容として、借入金は借換により333億円、営業債務及びその他の債務は131億円減少しました。
当連結会計年度末の資本は1,962億円となり、前連結会計年度末に比べ88億円増加しました。主な内容として、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上等により利益剰余金が281億円増加しました。一方で自己株式の取得により資本の控除項目である自己株式が180億円増加しました。
b.経営成績
当連結会計年度における世界経済は、緩やかな成長基調にあるものの、欧州や中東における地政学リスクの長期化、中国経済の減速、米中貿易摩擦の影響、各国の関税政策に対する懸念などにより、依然として先行きに対する不透明感が続いています。
当社グループを取り巻く事業環境は、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要回復が遅れる中、半導体デバイス市場では生成AIの普及等を背景に先端DRAMに対する需要が増加しています。Logic/Foundryは、一部のデバイスメーカーに投資抑制が見られるものの、全体として先端ノード向けの設備投資が加速しています。NANDも年度終盤に回復の兆しが見られ、今後回復が進むものと期待できます。中長期的には、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要拡大に加え、AI、IoT、DX等の拡がりによるデータセンターの拡充や環境負荷低減への投資(GX)等により、半導体関連市場は大きな成長が見込まれております。
こうした状況において、当連結会計年度における当社グループの売上収益は、前連結会計年度と比べてDRAM、Logic/Foundry、NANDのすべてのアプリケーション向けで装置販売が伸長し、装置ビジネスの売上収益が増加したことに加え、部品販売やレガシー装置販売が好調に推移し、サービスビジネスの売上収益が増加したことから、2,389億円(前連結会計年度比32.1%増)となりました。これに伴い、営業利益は513億円(同66.9%増)、税引前利益は508億円(同70.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は360億円(同60.9%増)と、各利益が前連結会計年度と比べて増益となりました。
なお、当社グループは、半導体製造装置事業による単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は448億円となり、前連結会計年度末の926億円と比べて479億円の減少となりました。各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前期に比べ355億円増加し、385億円の収入となりました。主なキャッシュ・フローの増加要因としては、売上収益増加に伴う当期利益の計上360億円によるものであります。一方で主な減少要因は、売上収益増加に伴う営業債権及びその他の債権の増加116億円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主として有形固定資産の取得による支出等により、277億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主として長期借入金の借換、自己株式の取得による支出等により、581億円の支出となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは半導体製造装置事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
半導体製造装置事業 |
202,707 |
110.4 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当社グループは半導体製造装置事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|||
|
受注高 (百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
半導体製造装置事業 |
224,862 |
151.8 |
135,608 |
90.6 |
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社グループは半導体製造装置事業のみの単一セグメントであるため、製品・サービス別の販売実績を示しております。
|
区分 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
製品 |
164,292 |
138.8 |
|
サービス |
74,641 |
119.4 |
|
合計 |
238,933 |
132.1 |
(注)1. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおり であります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
CXMT Corporation |
26,153 |
14.5 |
48,759 |
20.4 |
|
Samsung Electronics Co., Ltd. |
35,774 |
19.8 |
31,806 |
13.3 |
|
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd. |
- (注2) |
- (注2) |
30,827 |
12.9 |
(注)2. 該当連結会計年度において連結売上収益の10%未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 重要性がある会計方針及び見積もり
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と考えられるさまざまな要因を考慮した上で、見積もり及び判断を行っておりますが、見積もり特有の不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積もりと異なる場合があります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「同 4.重要な会計上の見積もり及び判断」をご参照ください。
② 経営成績等の状況に関する分析・検討内容
(売上収益)
半導体デバイス市場では生成AIの普及等を背景に先端DRAMに対する需要が増加しており、Logic/Foundryは全体として先端ノード向けの設備投資が加速しています。また、NANDも今後回復が進むものと期待できます。そうした中、DRAM、Logic/Foundry、NANDのすべてのアプリケーション向けで装置販売が伸長したことにより当社の装置売上収益は1,643億円(前期比138.8%)となりました。また、部品販売やレガシー装置販売が好調に推移したことによりサービス売上収益は746億円(前期比119.4%)となり、売上収益全体では、2,389億円(前期比132.1%)となりました。
(営業利益)
売上収益の増加により売上総利益が増加しました。また、他方で中長期的な成長に向けた研究開発費、人件費等の販売費及び一般管理費は増加したものの、営業利益は513億円(対売上収益比率21.5%)となりました。
(税引前利益)
長期借入金の利息支払い等金融費用の発生(14億円)等により、当連結会計年度の税引前利益は508億円(対売上収益比率21.3%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
法人所得税費用が148億円計上となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は360億円(対売上収益比率15.1%)となりました。
財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループでは、運転資金については、内部留保により調達することを基本としております。設備資金については、案件の都度、手持ち資金でまかなえるか、又は長期借入金にて調達するかを検討しており、必要に応じて外部からの資金調達を行うこととしております。
なお、子会社の資金調達については、グループ資金の効率性確保の観点から原則として当社が実施し、当社から当社グループ子会社に貸付を実施します。当社グループでは、グループ資金を当社が集中して管理し、グループ全体としての資金の効率的な調達・運用を実現しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の売上収益は2,389億円、営業利益は513億円であり、営業利益率は21.5%となりました。調整後営業利益は578億円、調整後当期利益は423億円となりました。
当社グループを取り巻く事業環境は、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要回復が遅れる中、半導体デバイス市場では生成AIの普及等を背景に先端DRAMに対する需要が増加しています。Logic/Foundryは、一部のデバイスメーカーに投資抑制が見られるものの、全体として先端ノード向けの設備投資が加速しています。NANDも年度終盤に回復の兆しが見られ、今後回復が進むものと期待できます。中長期的には、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要拡大に加え、AI、IoT、DX等の拡がりによるデータセンターの拡充や環境負荷低減への投資(GX)等により、半導体関連市場は大きな成長が見込まれております。
半導体デバイス市場は、マートフォンやパソコン等の電子機器の需要回復が遅れる中、生成AIの普及等を背景に先端DRAMに対する需要が増加しています。Logic/Foundryは、一部のデバイスメーカーに投資抑制が見られるものの、全体として先端ノード向けの設備投資が加速しています。NANDも年度終盤に回復の兆しが見られ、今後回復が進むものと期待できます。中長期的には、スマートフォンやパソコン等の電子機器の需要拡大に加え、AI、IoT、DX等の拡がりによるデータセンターの拡充や環境負荷低減への投資(GX)等により、半導体関連市場は大きな成長が見込まれ、当社グループでは今後の需要に対応するための研究・開発投資や設備投資を継続してまいります。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(参考情報)
当社グループは、経営成績の推移を適切に把握するために、調整後営業利益及び調整後当期利益を算出しております。これらは国際会計基準(IFRS)により規定された指標ではなく、当社の業績を評価する上で、通常の営業活動の結果として投資家が有用と考える財務指標であり、上場準備のために発生する上場関連費用、上場後には発生しないと見込まれるマネジメントフィー等の非経常的なものについて除外しております。
(1)調整後営業利益
(単位:百万円)
|
|
第6期 |
第7期 |
第8期 |
第9期 |
第10期 |
|
自2020年4月1日 至2021年3月31日 |
自2021年4月1日 至2022年3月31日 |
自2022年4月1日 至2023年3月31日 |
自2023年4月1日 至2024年3月31日 |
自2024年4月1日 至2025年3月31日 |
|
|
営業利益 |
60,037 |
70,652 |
56,064 |
30,745 |
51,320 |
|
-その他の収益(注3) |
△16,571 |
△231 |
△270 |
△679 |
△348 |
|
+その他の費用 |
87 |
1,235 |
1,562 |
487 |
253 |
|
(調整額) |
|
|
|
|
|
|
+企業結合により識別した無形資産等の償却 |
6,391 |
6,368 |
6,369 |
6,369 |
5,907 |
|
+スタンドアローン関連費用(注4) |
423 |
1,024 |
353 |
223 |
317 |
|
+マネジメントフィー (注5) |
275 |
308 |
- |
- |
- |
|
+売却関連費用(注6) |
1,771 |
9 |
- |
- |
- |
|
+株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) |
- |
56 |
173 |
694 |
304 |
|
調整額 計 |
8,860 |
7,765 |
6,895 |
7,286 |
6,528 |
|
調整後営業利益(注1) |
52,413 |
79,421 |
64,251 |
37,839 |
57,753 |
(2)調整後当期利益
(単位:百万円)
|
|
第6期 |
第7期 |
第8期 |
第9期 |
第10期 |
|
自2020年4月1日 至2021年3月31日 |
自2021年4月1日 至2022年3月31日 |
自2022年4月1日 至2023年3月31日 |
自2023年4月1日 至2024年3月31日 |
自2024年4月1日 至2025年3月31日 |
|
|
当期利益 |
33,043 |
51,339 |
40,305 |
22,374 |
36,004 |
|
-その他の収益(注3) |
△16,571 |
△231 |
△270 |
△679 |
△348 |
|
+その他の費用 |
87 |
1,235 |
1,562 |
487 |
253 |
|
(調整額) |
|
|
|
|
|
|
+企業結合により識別した無形資産等の償却 |
6,391 |
6,368 |
6,369 |
6,369 |
5,907 |
|
+スタンドアローン関連費用(注4) |
423 |
1,024 |
353 |
223 |
317 |
|
+マネジメントフィー (注5) |
275 |
308 |
- |
- |
- |
|
+売却関連費用(注6) |
1,771 |
9 |
- |
- |
- |
|
+株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) |
- |
56 |
173 |
694 |
304 |
|
+ファイナンシング関連費用 |
4,270 |
- |
- |
- |
- |
|
+その他の金融費用 |
1,054 |
- |
- |
- |
- |
|
+調整項目に対する税金調整額 |
1,160 |
△2,685 |
△2,507 |
△2,172 |
△1,970 |
|
-税率変更等に伴う一時的な税金費用の調整額(注7) |
- |
△1,857 |
- |
- |
1,836 |
|
調整後当期利益(注2) |
31,903 |
55,566 |
45,985 |
27,296 |
42,303 |
(注)1.調整後営業利益は以下の算式により算出しております。
調整後営業利益 = 営業利益(IFRS)- その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く)
2.調整後当期利益は以下の算式により算出しております。
調整後当期利益 = 当期利益 - その他の収益 + その他の費用 + 企業結合により識別した無形資産等の償却 + スタンドアローン関連費用 + マネジメントフィー + 売却関連費用 + 株式報酬費用(業績連動型株式報酬制度に係るものを除く) - 持分法で会計処理されている投資の売却益 + ファイナンシング関連費用 + その他の金融費用 + 調整項目に対する税金調整額 - 税率変更等に伴う一時的な税金費用の調整額
3.第6期のその他の収益には、契約解除料16,362百万円が含まれており、これは2021年3月にApplied Materials, Inc.との事業統合の契約解除が確定したことによるものとなります。
4.スタンドアローン関連費用は、国際会計基準の導入、適時開示体制構築及び内部統制体制構築等の上場関連の一時的な費用であります。
5.マネジメントフィーはKohlberg Kravis Roberts & Co. L.P.とのMonitoring Agreementに基づく報酬であります。
6.売却関連費用は、Applied Materials, Inc.との事業統合に向けた準備費用及び事業再編等に関わる一時的な費用であります。
7.第10期の税率変更等に伴う一時的な税金費用の調整額は、連結子会社間における事業譲渡に伴う一時的な費用であります。
8.調整後営業利益及び調整後当期利益につきましては、国際会計基準により規定された指標ではなく、当社の業績を評価する上で、通常の営業活動の結果として投資家が有用と考える財務指標であり、上場準備のために発生するスタンドアローン関連費用、上場後には発生しないと見込まれるマネジメントフィー等の非経常的なものについて除外しております。
(1)借入契約
当社は2025年3月27日付で、既存借入金のリファイナンスを目的として、株式会社三井住友銀行をエージェントとする金銭消費貸借契約を締結し、借入を実行しております。
主な契約内容は以下のとおりであります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 13. 借入金」をご参照ください。
1 契約の相手先
株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、三井住友信託銀行株式会社及び株式会社日本政策投資銀行
2 借入金額
総額60,000百万円
3 借入枠
コミットメントライン 30,000百万円
4 返済期限
2025年9月末より6ヶ月ごとに返済(最終返済日2030年3月29日)
5 金利
基準金利(全銀協 TIBOR 運営機関が公表する日本円TIBOR)+スプレッド
6 主な借入人の義務
財務制限条項の遵守
当社グループで行っている研究開発活動は、
・現世代品の改善に向けたコンポーネント技術の研究開発
・次世代のバッチ成膜装置における成膜の研究開発
・次世代の枚葉装置におけるトリートメント(膜質改善)技術の研究開発
・次々世代の要素技術及び新製品の研究開発
・半導体後工程関連技術の研究開発
であります。
これらの活動は、原則として当社のみで行っておりますが、次々世代の研究開発の一部においては、大学や外部機関との協業にて推進しております。また、顧客との間では、当社評価機を貸し出してのデバイス開発も行っております。
また、成膜・トリートメント技術・ソフトウェアの研究開発は、ハード・ソフトウェア開発を担当するシステム開発本部とプロセス開発を担当するプロセス開発本部にて、対応しております。
当社グループを取り巻く半導体デバイス市場では、電子機器の需要拡大やデータセンターの拡充等により一層の成長が期待され、デバイスのさらなる高機能化、高集積化に加え、要素から製品開発までのサイクルタイムの短縮が要求されております。
これらの要求に対し、表面積が一段と増大する三次元積層デバイスに適応する高機能成膜技術やトリートメント・キュア技術の研究・開発を推進しております。
前者の高機能成膜技術は主力製品であるバッチ成膜装置で、より低コストを可能とするラージバッチ炉、また精密な制御でより高機能な成膜を実現できるミニバッチ炉の技術開発を推進しております。
一方、後者のトリートメント・キュア技術は、枚葉装置でプラズマ等の活性化技術を駆使し、各種アプリケーションの開発を推進しております。
上述のプロセス、プラットフォームの開発に加え、温度制御、供給系、排気系などの各種コンポーネントの要素開発では、外部(大学、各種研究機関、及び原料メーカーを始めとするパートナー各社)との協業を一層強化しております。
また、半導体後工程関連技術については、2025年3月に開所した横浜テクノロジーセンタ(略称YTC)を活用して研究開発を加速してまいります。
外部協業の推進により開発サイクルの短縮を図っておりますが、シミュレーション技術の適用拡大やデバイス測定環境の内製化による分析・解析技術力の向上にて、効率的な開発を実現しております。
研究開発成果について、絶縁膜やメタルプロセスのバッチ装置において、さらなる膜品質向上と高生産性を実現し、メモリーデバイス向けを中心に、PORの維持拡大に貢献することができました。また、各種コンポーネント開発と合わせた次世代向けプラットフォームの開発も加速できており、来期以降の市場展開に向け引き続き開発を継続してまいります。その他、既存PORに関しても、研究開発成果を各種継続的改善に繋げることができております。
この結果、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
また、当社グループは半導体製造装置事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。