第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものです。

 

(1) 会社経営の基本方針

当社は、「信頼と誠実」を社是とし、「安全」、「堅牢」、「融通性」という基本コンセプトを守りながら、お客様の安全・安心を第一に、質実堅牢な製品づくりで「お客様の声」に応え続けていくことを経営方針としております。具体的には、次の全社活動方針を掲げて、製品品質の維持・向上を重点課題として取り組んでおります。

① 原価低減と生産性向上に向けた活動の推進

② 特色ある製品や仕組み、サービスの創造

③ 安定した製品品質と故障の削減

④ 労働災害ゼロ活動の推進

⑤ 情報システム、データの利活用推進

 

(2) 経営上の目標を達成するための客観的な指標等

当社では、持続的な成長と収益性の向上を図ることで企業価値を高めていくことが経営上の重要課題であると認識しており、売上高総利益率及び売上高営業利益率を主要な指標と位置付けております。

 

(3) 経営環境

一般社団法人日本エレベーター協会刊行「ElevatorJournalNo.50 2024.8」によると、2023年度の国内におけるエレベーター(ホームエレベーターを除く。)の新規設置台数は、新型コロナウイルス感染症に係る行動制限の緩和から前年度比3.6%増の20,484台、建物用途別では、当社の主な顧客である工場・倉庫向けエレベーターは同比0.7%減の2,405台、当社の主要製品である荷物用エレベーターは同比1.7%減の1,346台となりました。保守台数については、累積設置台数の増加に伴って、同比0.3%増の685,731台となりました。工場・倉庫向けの荷物用エレベーターについては、eコマース市場の拡大等を背景とした物流施設に対する投資意欲は、引き続き堅調に推移すると見込んでおり、保守に対する需要の継続的な増加と合わせて、当社のビジネス機会にプラスとなるものと判断しております。

船舶用エレベーターについては、造船市況の影響を受けますが、海運市況の改善などから新造船への需要は回復してきております。また、環境負荷が低いアンモニアや水素を燃料とする次世代船などへのニーズもあり、船舶用エレベーターに対する潜在的な需要は大きいものと判断しております。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

エレベーター業界の大手各社がグローバルな生産・販売体制を敷いて東アジア等を中心に積極的な海外展開を図っている状況のなか、当社といたしましては、経営資源を主に国内での荷物用エレベーターの製造、販売、据付及び保守・修理の一貫した事業並びに国内外での競争力を備えた船舶用エレベーターの分野に集中して投下することで競争力を高める方針としておりますが、今後は経営環境等を踏まえ、次の「事業戦略」を展開して持続的な成長と企業価値の向上の実現を目指してまいります。

①  生産能力増により新規設置台数の拡大とそれに伴う保守・点検契約台数の積上げを図ります。

  大型化が進む物流施設の需要の他に、物流中継地点の倉庫施設、半導体やその周辺産業、データセンター等の需要が顕在化しつつあることから、2025年3月期末のエレベーター(船舶用を除く。)の受注残高は、製造・販売の年間売上高を超える額となっております。生産能力の増強を目的として宇都宮工場を増改築し2024年10月から稼働しております。さらに生産工程の最適化や物流効率の改善を目的として、宇都宮工場の近隣に、2026年5月の稼働開始を予定する(仮称)芳賀工場の建設予定地を取得しています。

 

② 自社製エレベーターの安全かつ安定的な稼働を確保するための「計画修理」を積極的に提案し、保全強化に努めます。

近年、社会インフラの老朽化・脆弱性に対する危機意識の高まりを受けて、当社のお取引先からもエレベーターの稼働停止に伴う業務停滞リスクを回避するためのメンテナンスニーズが増加しております。当社の保守契約エレベーターの点検・稼働状況などの最新情報をデータベース化したうえで、計画的な修理対応を積極的にご提案することにより、故障・不具合による稼働停止を未然に防止し、エレベーターの保全強化を進めてまいります。

③  老朽化エレベーターの入替需要を取り込んでまいります。

    荷物用エレベーターでは、老朽化した既設のエレベーターを全撤去し新たなエレベーターを設置する入替需要が拡大していく見込みであり、設計や製造・施工の効率化などの施策を講じて、他社製品を含めた入替需要の取り込みを図ってまいります。

④  船舶用エレベーターの販売拡大を図ります。

    環境対策や世界的な物流量の回復に伴って新造船への投資需要が高まることが見込まれることから、荷物用エレベーターの実績・ノウハウを活かした新製品の開発や設計部門の増強などの施策を講じて、船舶用エレベーターの拡販を図っていきます。また、2024年3月期は、韓国市場に新規参入いたしました。

⑤  保守・部品製造の内製化を進めてまいります。

新規設置台数、保守・点検契約台数の伸長に対応して、安定した製品供給力やサービス品質の維持・向上を図るために、協力会社に委託していた一部製造プロセスや保守・メンテナンス業務を内製化するとともに、部品・パーツの自社設計を進めます。更にこれにより、乗用エレベーターの分野で進む、製造販売と保守メンテナンスの分業化に対抗し、製造販売から保守メンテナンスまでを一貫して提供していく当社の事業構造を維持してまいります。

⑥  新市場への参入の準備を進めてまいります。

既存事業の成長力・収益力を基盤としながら、長期的な成長を確保していくために、関連市場へのビジネスの拡大を目指します。既存事業と親和性の高い周辺分野や横展開をターゲットとして、まずは新市場参入の基盤作りを進めるための、成長投資を行ってまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社では「事業戦略」の推進に注力するとともに、次の経営課題に対処してまいります。

①  販売価格見直しによるコストアップの吸収

輸入資材を含む資材価格の上昇、外注費や運搬費、従業員人件費の上昇等を、自助努力により吸収することができない場合には、販売価格の見直しを検討してまいります。

②  生産能力・据付能力の拡充

堅調な需要に対応していくため、生産設備の更新・合理化投資等を順次行ってまいります。具体的には、栃木県芳賀郡芳賀町に、焼付塗装工場である(仮称)芳賀工場を新設し、2026年5月の稼働を目指します。併せて、エレベーターを建物に設置する据付工事の人員を増員して、受注案件の処理能力を高めてまいります。

③  リニューアル需要(入替・修理)への対応強化

リニューアル需要(入替・修理)へ対応していくため、2025年4月に組織変更をおこない、営業・設計・工事、それぞれの部門について、新たなリニューアル専門の部署を設置しました。自社製エレベーターの安全かつ安定的な稼働を確保するために、「計画修理」を積極的に提案し、保全強化に努めてまいります。

④  人材確保の強化

    事業の拡大に対応するため、競争力の根幹である優秀な人材の採用を進めてまいります。具体的には3年連続でのベースアップ等により、従業員の待遇改善を図るとともに、2024年4月に技術研修部を設置し、社員の基礎教育研修に力を入れてまいります。また、2024年度に教育・採用担当者の増員をおこない、新卒・中途の積極的な採用を、更に進めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、サステナビリティの本質は、ステークホルダーとの対話と調和の中で社会に貢献し続けることであると考えております。「エレベーターで社会を支える。」という理念の下、安全性・快適性・利便性等の価値の提供は元より、社会課題への対応、地球環境への配慮に積極的に取り組んでおります。物流センターや倉庫、工場、研究開発拠点などの社会インフラを支える重要な機能であるエレベーターを提供する企業として、環境にやさしい優れた性能の製品の開発・製造に努め、持続可能な社会の実現に取り組んでまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

 (1) ガバナンス

当社では、当社が直面する、あるいは将来発生する可能性のあるリスクを識別し、識別したリスクに対して予防策を講じ、また当社の損失の最小化を図ることを、組織的に取り組んでおり、中でも重要な事項に関する審議と方針の検討・実施は、リスク管理委員会が行っております。サステナビリティに関するリスクと機会についても、他のリスクと同様に、こうした体制の中で、ガバナンスを効かせております。

また、取締役会においては、各管掌取締役による業務報告の中で、適宜活動内容の報告を行い、サステナビリティを含むリスク全般について、対応を推進しております。

 

  (2) 戦略

当社におけるサステナビリティを推進するうえで、人的資本が最重要と認識しております。

 

 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、柔軟な働き方を可能とする勤務制度や仕事と育児・介護の両立に向けた支援、女性活躍推進法への対応、定年年齢を60歳から63歳へ延長するなど、多様な人材が働きやすい就業環境の整備に取組んでおります。

必要な人材を確保する観点では、従来は中途採用が中心でしたが、2022年3月の上場を機に、新卒社員の採用にも力を入れております。3年連続で新卒社員の初任給を見直しするとともに、2022年4月から高校卒の新卒社員の採用を復活させました。また、教育・採用担当者の増員をおこない、採用活動の強化を図っております。

教育研修の観点では、2024年4月から技術研修部を新たに設置し、新卒入社・中途入社を問わず、基礎教育研修に力を入れております。

その一方で、シニア世代の人材活用、中でも63歳定年再雇用以降の人材活用も重要であると認識しており、本人の希望を尊重しつつ、会社との協議を経たうえで雇用契約を継続することで、意欲的に仕事に取り組んでもらい、幅広い世代の社員が勤務できる環境を整えております。さらに、柔軟な働き方を可能とする在宅勤務制度、時差勤務制度及び育児介護休業制度による短時間勤務等を導入しており、特に、育児介護休業制度については、法定を上回る適用年齢とすることで、多様な就業環境の整備を進めております。

 

  (3) リスク管理

当社では、サステナビリティ関連を含むリスクについて、次のプロセスで識別、評価、管理をしております。

各部門にてリスクを予見した際には、適切に評価するとともに最小のコストで最良の結果を得るべく、必要な措置を講じます。リスクが発生した際にも同様の措置が講じられます。部門長は、講じられたこれらの措置について関係部署とも協議を行い、重要と判断したリスクについては、リスク管理委員会に報告します。リスク管理委員会では、リスク防止策や発生したリスクへの対策を決定、実施するとともに、リスクのモニタリングを行います。また、リスク管理委員は、日常的・継続的にリスクの発生をモニタリングするとともに、リスク情報を入手した際は、直ちに委員長にその内容を報告します。

こうしたプロセスにて、リスクをモニタリングするとともに、その影響の最小化を図っております。

 

  (4) 指標及び目標

当社は、女性労働者の配置拡大と多様な職務経験の機会を増やすため、女性労働者の上位職階へ昇進する割合を15%以上とする目標を掲げております。また、働きやすい職場環境を整備するため、有給休暇の取得率を60%以上とする目標を掲げ、これを継続達成しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社では、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置して、リスク管理規程に則り、自然災害や製品品質、人材、安全、法令等の様々な事業運営・事業継続上のリスクについて管理を行うこととしており、これらのリスクが顕在化する可能性を認識した上で、顕在化の回避及び顕在化した場合の早期対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。リスク管理体制の整備の状況等については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

<リスク評価の手法>

当社では個別のリスクを評価するため、発生の可能性と、発生した場合の影響度を評価軸とする「リスク評価マトリクス」を用いて、リスクの重要性の識別をしております。

※リスク評価マトリクス


<個別のリスク>

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のようなものがあります。また、以下の記載は、当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありません。

 

(特に重要なリスク)

  (1)経営環境に関するリス

 ① 資材等の調達について

当社の製品に使用する主な原材料は鋼材やワイヤーロープ、モーター等ですが、鋼材の仕入価格については鉄鋼市場の影響を受けます。また、一部の資材については海外からの外貨建てによる調達を行っていることから、これらの原材料の市場価格が上昇した場合、為替相場が変動した場合、又は安定的な調達が困難となった場合には、当社の製造コストを上昇させることになり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社では、販売価格への転嫁を進めるとともに、国内外の複数の調達先との取引関係を強化して安定的な調達ができる体制を構築し、コスト削減などを図ることで、リスクの低減に努めております。

 

 ② 賃金の上昇について

インフレ率の上昇や労働力不足、最低賃金引上げなどにより、当社のみならず外注先の賃金も上昇した場合には、当社の製造コスト、販管費が増加することになり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特に建設業・製造業では人手不足が深刻化しており、今後も人件費の上昇圧力が見込まれます。そのため、当社では、自助努力によりコストアップの吸収ができない場合は、適宜販売価格への転嫁を進めることで、リスクの低減に努めております。

 

   (2) 事業活動に関するリスク

  ① 人材の確保及び育成について

当社が事業の持続的な成長を実現するためには、国内外の市場で活躍できる人材や高い専門性を有する技術者の確保と育成が重要な課題であると認識しております。建設業・製造業全体で人手不足が深刻化しており、特に技術者や保守要員の確保・育成が困難となった場合や人材の流出が進んだ場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社では、新卒及び経験者の積極的な採用活動を行うとともに、賃金・福利厚生など社員待遇の改善や教育・研修体制の充実などを図ることにより、既存社員の定着にも注力しております。

 

(重要なリスク)

  (1) 経営環境に関するリスク

 ①  経済情勢について

当社が取り扱う荷物用エレベーターは、主要な納入先である物流施設や工場などの建設需要の動向に影響を受けます。また、船舶用エレベーターは、新造船の需要動向に左右されます。今後、経営環境の変化により、これらの需要が低迷して新規受注数が減少した場合や、製品・サービスの価格が下落した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社では、製造、据付、保守・修理の各工程において内製化と外注委託を併用するとともに、日本及びアジア地域での資材調達先の拡大を図るなど、コスト削減や固定費圧縮によるリスク低減を図っております。また、当社は潤沢な手元資金を有しており、借入は行っておりませんが、金利変動は顧客や業界全体の設備投資意欲や需要動向に影響を与える可能性があるため、市場環境の変化にも注視し、柔軟な経営対応に努めています。

 

 ②  自然災害等について

当社では、生産設備として横浜市に本社工場と鳥浜製品管理センターの2拠点、宇都宮市に宇都宮工場の1拠点を設置し、販売及びサービス拠点等を国内主要都市及び中国上海市に展開しておりますが、自然災害等の発生に備えてBCP(事業継続計画)を策定しております。しかしながら、今後、想定を上回る大規模な自然災害の発生や感染症の流行拡大等により、建屋や生産設備、施工現場等の被災、サプライチェーンの混乱、従業員の就労不能、当社製品に対する需要の低下等が生じる可能性があり、当社の事業遂行に支障が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。2025年6月には宇都宮工場の近隣に塗装工場である(仮称)芳賀工場の着工を予定しており、宇都宮工場で製作したエレベーターの部材を同工場で塗装できる体制が整えば、一定量のエレベーターを宇都宮市周辺で製作できる見込みです。引き続き、BCPの高度化や見直しを図ってまいります。

 

  (2) 事業活動に関するリスク

 ①  海外での事業活動について

当社は、中国や台湾等のアジア地域においても、船舶用エレベーターの販売や資材の調達などの事業活動を行っておりますが、各国の法律・規制や租税制度の変更、テロ・戦争・内乱などによる政治的社会的混乱や予期し得ない経済情勢の悪化、為替レートの変動等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社では、現地法人や取引先等を通じて、各国の経済・社会・政治的状況や法規制の動向について情報を収集するようにしており、対応が必要な事象が生じた際には、現地法人や専門家等と連携して対処していくことで、リスクの低減を図ってまいります。

 

 ②  情報セキュリティについて

当社は、顧客の技術、製造、営業活動及び個人情報等に関する機密情報を様々な形態で保有しており、これらの情報を保護するため適切なセキュリティ対策を講じておりますが、サイバー攻撃や不正アクセス等により万一、これらの情報が漏えいした場合やデータの破壊、システム停止等が発生した場合には、その対応のための多額の費用負担や当社に対する社会的信用が毀損して受注活動に影響が及ぶ等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 ③  代表取締役社長への依存について

当社の代表取締役社長である守谷貞夫は、経営方針や経営戦略の決定をはじめ、当社の事業推進において重要な役割を果たしております。当社では、後継者計画等を策定・運用するため、取締役会の諮問機関として指名・報酬委員会を設置し、事業拡大に伴い同人に依存しない経営推進体制の構築を進めておりますが、何らかの事由により同人が当社における職務を継続することができなくなった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④  社会インフラとしてのエレベーターの重大な故障・事故等について 

当社の主力製品である物流施設向け荷物用エレベーターは、社会インフラの一部である物流ネットワークの基盤を構成しており、その安定稼働を担保することは、社会経済活動の維持に不可欠です。万が一、エレベーターに重大な故障や事故が発生して長期停止となった場合、個別の損害賠償責任にとどまらず、物流施設全体の稼働停止やサプライチェーンの混乱など、社会全体に広範な影響を及ぼすおそれがあるとともに、当社への信頼失墜や行政当局からの業務改善命令・営業停止等の指導・命令を受けた場合には、当社の財政状態及び経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのために、2025年4月には組織変更をおこない、営業・設計・工事それぞれの部門に、新たなリニューアル(入替・修理)専門の部署を設置して、自社製エレベーターの安定的な稼働を確保するための「計画修理」を積極的に提案し、事故発生の未然防止と保全体制の強化に努めてまいります。

 

  (3) その他のリスク

 ① 大株主について

当社の代表取締役社長である守谷貞夫は当社の大株主であり、同人の親族及び親族の資産管理会社である株式会社M2Wの保有する株式数を含めると、発行済株式総数の 65.5%を所有しております。同人等は支配株主には該当しませんが、安定株主として引き続き一定の議決権を有し、その議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しており、当社といたしましても、同人等は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により大株主である同人等の保有株式が減少した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスク)

  (1) 経営環境に関するリスク

 ① 競合について

当社が属するエレベーター業界においては、AIやIoT等の技術革新が進みつつある中、グローバルな生産・販売体制を敷いて事業活動を行う有力企業を含めた競合先との競争が続いております。当社では、経営資源を主に国内での荷物用エレベーターの製造、販売、据付及び保守・修理の一貫した事業と、国内外での競争力を備えた船舶用エレベーターの分野に集中して投下することで競争力を高めておりますが、最新の技術革新への対応の遅れにより、製品・サービス価格が下落したり、新規受注数が減少した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 (2) 事業活動に関するリスク

 ①  外注委託について

当社は、生産性の向上や外部企業のスキル活用、保守・修理サービス拠点のカバー等を目的に、協力会社に製造工程の一部を委託し、又は役務の提供を受けております。協力会社とは事業展開方針等について情報共有を図る等、取引関係をより強固とする施策を行っておりますが、今後、協力会社の人材の確保難や取引価格の上昇、事業承継問題等が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため当社では、生産工程の一部や、一部地域の保守メンテナンス業務の内製化を図ることで、リスクの低減に努めております。

 

 ②  取引先の信用リスクについて

当社では、売掛金や受取手形等、取引先に対する売上債権を有しており、これら取引先の信用リスクについて信用調査を行う等の適切な管理を行っておりますが、取引先の業績悪化や経営破綻等により、売上債権の回収に支障が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③  労働災害について

当社が関与するエレベーター等の製造、据付及び保守・修理の各作業では、労働災害の防止や労働者の安全と健康管理のため、労働安全衛生法等に則り、安全衛生体制の整備を図っております。当社では安全衛生委員会を設置し、日常的な安全衛生教育を実施している他、安全衛生部による安全パトロールを実施する等、事故の未然防止を図るための安全管理を徹底しております。しかしながら、万一、重大な労働災害が発生した場合には、一時的に補償金等の負担が生じ、また、当社に対する社会的信用が毀損して受注活動に影響が及ぶ等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④  資金調達について

当社は、営業活動から得られる自己資金に加えて、金融機関によるコミットメントラインの設定及び手形割引等により事業活動に必要な資金を調達する体制を整えております。金利水準の上昇や金融機関の当社に対する信用の低下等により調達コストが上昇した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

   (3) 法的規制及び訴訟等に関するリスク

 ①  許認可等及び法規制について

当社は、建設業法に基づき、下表のとおり一般建設業の許可を取得してエレベーターの据付施工等を行っておりますが、虚偽の事実の申告等不正な手段による許可の取得や役員等の欠格要件に該当した場合等には、建設業法第29条により許可の取消しとなります。

許認可等の名称

一般建設業(許可) 

許可番号

国土交通大臣 許可(般-3)第6463号

有効期間

2021年8月22日から2026年8月21日まで

建設業の種類

機械器具設置工事業

 

また、クレーン等安全規則に基づき、下表のとおりエレベーター製造許可を取得して、エレベーターの製造を行っておりますが、製造許可条件を満たさなくなった場合に許可の取消しとなります。

許認可の名称

エレベーター製造許可

許可番号

神労基許ク第1153号

神労基許ク第429号

許可の範囲

ロープ式 積載荷重20.0t

ロープ式 積載荷重5.0t

油圧式 積載荷重30.0t

有効期限

期間の定めなし

 

当社では、社内規程の整備や役職員に対する教育研修等を通じて法令遵守に努めていることから、現時点でこれら許可の取消事由に該当する事実はありませんが、万一取消事由に抵触して許可が取り消された場合には、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

上記の一般建設業の許可やエレベーターの製造許可のほか、当社は、建築基準法や労働安全衛生法、消防法、船舶安全法等、幅広い法令等による規制を受けており、それらにしたがって事業活動を行う必要がありますが、当社では、これらの法令等が遵守されるよう、役職員に対して教育研修等を通じて周知徹底を図っております。現時点で当社の事業継続に支障をきたす事項はありませんが、今後、何らかの理由により法令違反等が発生して処罰・処分等の制裁を受けた場合には、当社に対する社会的信用が毀損して受注活動に影響が及ぶ等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、将来、これらの法令等が改正された場合、当社の事業継続に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 ②  製造者責任について

当社では、エレベーターの製造、据付及び保守等の各業務に関して適用される法令や規格等に準拠するとともに、ISO9001を取得して生産・据付工程等の品質管理を行っております。しかしながら、当社の製品に重大な欠陥や施工不良があった場合には、損害賠償や当社に対する社会的信用が毀損して受注活動に影響が及ぶ等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③  知的財産権について

当社は、知的財産権に係るトラブルを回避するため、必要に応じてWeb検索システムの活用や弁理士事務所に調査を依頼する等の対応に努めておりますが、万一、第三者との間で知的財産権の問題が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④  訴訟等の提起について

当社は、事業活動を進めていく中で様々な訴訟等を受ける可能性があり、訴訟等が提起された場合には、結果によっては、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社では、法令の遵守や人権の尊重等に関して役職員が実践すべき行動のあり方を示した「企業行動規範」を制定して役職員に周知等を図るとともに、内部通報制度を導入するなど、コンプライアンス・リスクへの対応を図っております。

 

   (4) その他のリスク

 ①  新株発行による株式価値の希薄化について

当社は取締役及び従業員に対するインセンティブ等を目的としたストックオプション制度を採用しております。現在付与している新株予約権に加え、今後付与する新株予約権の行使等が行われた場合、発行済株式数が増加し、1株当たりの株式価値を希薄化させる可能性があります。なお、本書提出日の前月末日現在における新株予約権による潜在株式数は95,000株であり、発行済株式総数17,633,300株の0.5%に相当しております。

また、当社取締役に対する報酬の一部について譲渡制限付株式を割り当てることとしております。今後割り当てる当社普通株式は、その全株数について新株発行を予定しており、発行済株式数が増加し、株式価値を希薄化させる可能性があります。

 

 ②  当社株式の流動性について

当社は、株式会社東京証券取引所への上場に際して公募増資及び売出しを行うなど、当社株式の流動性の確保に努めており、今後も大株主からの売出し協力や当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達等により、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③  保有資産について

当社では、保有資産に関して、時価情報を把握するなど適正なモニタリングを行って資産価値の維持、保全に努めておりますが、保有する不動産や有価証券等の時価の著しい下落等により減損損失が発生し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ④  繰延税金資産について

繰延税金資産の計算は、将来の課税所得など様々な予測・仮定に基づいており、経営状況の悪化や税務調査の結果等により、実際の結果が予測・仮定とは異なる可能性があります。従って、将来の課税所得の予測・仮定に基づいて繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産は減額され、その結果、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概況

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。なお、当社はエレベーター事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は省略しております。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 

経営成績

 当事業年度におけるわが国経済は、個人消費の一部に足踏みが残るものの、雇用や企業収益は改善の動きがみられるなど、緩やかな回復基調となりました。その一方で、物価上昇の継続による消費者心理の下振れや、アメリカの政策動向による影響が、わが国の景気を下押しするリスクとなっており、経済の先行きには、注意を要する状況が続いております。

 このような状況のもと、当社の荷物用エレベーターの製造・販売においては、いわゆる2024年問題や技術労働者不足等により工事発注が先送りされる案件があったものの、大型化が進む物流施設の需要の他に、物流中継地点の倉庫施設、半導体やその周辺産業、データセンター等の需要が顕在化しつつあることから、引き続き、受注状況は堅調です。また、2024年10月には宇都宮工場の増改築工事が完了し、年間600台の生産体制が整いました。

 保守・修理においては、保守契約台数が7,400台を超え、保守物件の安全かつ安定的な稼働を確保するため、「計画修理」の積極的な提案営業にも取り組んでまいりました。

 また、原価・運用面においては、資材価格の高止まりや、円安による輸入資材価格の上昇に対し、引き続き、国内調達への切り替えや内製化による原価コントロールを進めるとともに、人員増強による施工能力・保全能力の拡充にも継続して取り組んでおります。

この結果、当事業年度の売上高は19,435,433千円前事業年度比10.9%増)、営業利益は4,092,941千円同57.8%増)、経常利益は4,198,292千円同59.7%増)、当期純利益は2,840,888千円同65.3%増)となりました。

なお、当事業年度末における受注残高は21,476,230千円(前事業年度末比31.5%増)となりました。

 

財政状態

 (資産)

当事業年度末における総資産は、17,190,150千円(前事業年度末15,072,009千円)となり、2,118,140千円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加1,242,319千円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加636,883千円、仕掛品の増加115,196千円によるものです。

 

(負債)

当事業年度末における負債は、5,702,753千円(前事業年度末5,948,432千円)となり、245,678千円減少しました。これは主に、支払手形の減少873,123千円、工事損失引当金の減少128,827千円、前受金の増加283,942千円、未払法人税等の増加206,702千円、未払消費税等の増加223,373千円によるものです。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は、11,487,397千円(前事業年度末9,123,577千円)となり、2,363,819千円増加しました。これは、自己株式の取得による減少116,561千円、配当金の支払による減少394,217千円、当期純利益の計上による増加2,840,888千円などによるものです。

 

 

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べ1,242,318千円増加し、5,739,625千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は1,997,480千円前事業年度は2,577,753千円の収入)となりました。収入の主な内訳は、税引前当期純利益が4,198,292千円、減価償却費が174,151千円、前受金の増加額が283,942千円です。支出の主な内訳は、法人税等の支払額が1,188,971千円、仕入債務の減少額が884,487千円、売上債権及び契約資産の増加額が636,883千円、棚卸資産の増加額が169,619千円となります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用した資金は261,322千円前事業年度は401,706千円の支出)となりました。支出の主な内訳は、宇都宮工場の増改築等による有形固定資産の取得による支出190,730千円となります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動に使用した資金は499,226千円前事業年度は265,421千円の支出)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出116,561千円、配当金の支払額394,217千円によるものです。

 

 

③ 生産、受注及び販売の状況

当社はエレベーター事業の単一セグメントであるため、「生産、受注及び販売の状況」につきましては、セグメント別の記載を省略しております。

 

a.生産・販売実績

当事業年度における生産・販売実績を売上種類ごとに示すと、次のとおりです。

 

売上種類の名称

生産高・販売高(千円)

前事業年度比(%)

エレベーター(船舶用を除く。)

9,531,061

102.9

船舶用エレベーター

885,625

177.3

保守・修理

8,994,538

123.9

合計

19,411,225

114.1

 

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2.「船舶用エレベーター」には部品の販売額が、「保守・修理」には保守点検業務にかかる受託金額がそれぞれ含まれております。

 

b.受注実績

当事業年度における受注実績を売上種類ごとに示すと、次のとおりです。

 

売上種類の名称

受注高(千円)

前事業年度比(%)

受注残高(千円)

前事業年度比(%)

エレベーター(船舶用を除く。)

13,434,172

134.6

16,384,527

131.3

船舶用エレベーター

1,124,882

71.3

2,354,817

111.3

保守・修理

5,083,289

152.3

2,736,885

157.3

合計

19,642,343

131.9

21,476,230

131.5

 

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2.「保守・修理」については、修理・改修業務にかかる受注高及び受注残高を記載しており、保守契約に基づく保守点検業務については、受注高及び受注残高に含めておりません。

3.上記金額のうち外貨建については、㈱三菱UFJ銀行が公表した各期末日におけるTTM(公表仲値)によって円換算しております。

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載されているとおりです。

当社は、財務諸表作成において必要な見積りについては、過去の実績やその時点で入手可能な情報等を勘案した上で行っておりますが、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

当事業年度の売上高は19,435,433千円前事業年度比10.9%増)となりました。売上種類別の変動要因は次のとおりです。

a. 「エレベーター(船舶用を除く。)」の売上高は、おおむね順調に推移し、9,503,241千円前事業年度比2.1%減)となり、このうち、新規設置の売上高は8,374,523千円同0.1%増)、入替の売上高は1,128,717千円同15.4%減)となりました。なお、設置台数は、 新規設置が392台前事業年度は434台)、入替が23台同36台)です。

b. 「保守・修理」の売上高は、保守台数、修理工事ともに順調に推移し、8,994,538千円前事業年度比23.9%増)となりました。なお、保守・点検契約の新規契約台数は429台前事業年度は452台)、再契約台数は53台同46台)、解約・休止台数は152台同101台)、期末の保守・点検契約台数は7,445台同7,115台)となりました。

c.「船舶用エレベーター」の売上高は、堅調な受注を背景に937,653千円前事業年度比64.9%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

当期製品製造原価は13,391,279千円(前事業年度比0.7%増)となりました。

このうち、当期総製造費用に「材料費」が占める割合は、原価コントロール及び新設設置台数の減少等により、前事業年度に比して低下しました。また、同じく「労務費」が占める割合は、人員増加、内製化等により、前事業年度に比して上昇しました。

工事損失引当金戻入額128,827千円(前事業年度は161,843千円の戻入)の計上もあり、売上原価は13,260,074千円前事業年度比0.9%増)、売上総利益は6,175,358千円同40.7%増)、売上高総利益率は、31.8%(前事業年度は25.0%)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は、2,082,417千円前事業年度比16.0%増)となりました。人員増に伴い主として人件費が増加しております。

以上の結果、営業利益は、4,092,941千円前事業年度比57.8%増)となり、売上高営業利益率は21.1%(前事業年度は14.8%)となりました。

 

 

(営業外損益、経常利益)

営業外収益は、違約金収入及び作業くず売却益の計上等により、124,556千円前事業年度比53.2%増)、営業外費用は、為替差損の計上等により19,204千円前事業年度比58.2%減)となりました。以上の結果、経常利益は、4,198,292千円前事業年度比59.7%増)となりました。

 

(特別損益、当期純利益)

当事業年度において特別利益及び特別損失は計上されず、その結果、当期純利益は、2,840,888千円前事業年度比65.3%増)となりました。

 

財政状態の分析等については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」をご参照ください。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について

当社では、売上高総利益率及び売上高営業利益率を主要な経営指標とし、顧客ニーズへの対応や資材調達コストの削減、業務の効率化等を図ってその改善・向上に取り組んでおりますが、当事業年度の数値については、次のとおりです。

 

 

第78期当事業年度

 

前事業年度比

売上高総利益率

31.8%

6.8ポイント改善

売上高営業利益率

21.1%

6.3ポイント改善

 

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

当社といたしましては、これらのリスクに対して継続的な状況把握に努めるとともに、対応策を検討してリスクの最小化・分散化を図っていきます。

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としておりますが、運転資金は自己資金を基本としております。また、継続的な成長を図るため、設備投資や研究開発の拡充に努めておりますが、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に資金調達を行う予定です。当事業年度末の現金及び現金同等物は5,739,625千円であり、流動性を確保しております。

 

(6) 経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

(1) 研究開発方針等

当社では、技術本部開発部において、主に顧客ニーズや法令改正等への対応、コストダウン等を目的とした技術・性能や製品の開発、既存製品の改良等の開発業務を行っております。「技術的裏付けのある製品作り」と「コストダウンに寄与する製品の開発」を活動の基本方針としており、全社活動方針である「特色ある製品や仕組み、サービスの創造」や「安定した製品品質の確保と故障の削減」等に資する成果を挙げられるよう開発業務を推進しております。

 

(2) 大学との共同研究

当社は、国立大学法人滋賀大学との間で、データサイエンスと経済経営分野の研究及び人材育成における包括的連携に関する協定を締結しております。同大学との連携・協力を通じてDXを推進するとともに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、当社事業の持続的な拡大を図りたいと考えております。

今後、同大学と共同して、データ基盤の構築とデータサイエンス・AI手法による生産プロセスの最適化や保守・修理業務における新たなサービス展開等に関する研究を行っていく方針です。

 

(3) 研究開発のテーマ

当事業年度における開発業務の主なテーマは、以下のとおりです。(2024年4月1日から2025年3月31日)

開発テーマ

内  容

主要構成部品の安定供給体制の確立

エレベーターの主要構成部品が安定調達できるように、製品の機能及び性能について、技術的な裏付けとなる評価・確認を実施し、調達の選択肢を増やす取り組みを推進しています。

エレベーター安全装置の自社設計化

複数の構成部品について、従来品との互換性を考慮した、自社製品の設計・開発作業を進めています。

新規部品の開発によるコスト削減

ドア機構の改善、自社設計化によるコスト削減を進めています。

大型エレベーターに関する新規採用部品
の開発

従来とは異なるバリエーションや、製品仕様の採用を模索する取り組みを推進しています。

 

なお、当事業年度における開発活動に要した費用は、研究開発費及び開発部門人件費の合計96,594千円です。