文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「不動産投資を変え、社会を変える」というグループミッションを掲げております。魅力的な資産運用の手段である不動産投資について、投資の機会が一部の富裕層や機関投資家に限定され、また管理手法や業務プロセスには依然として非効率な状況にあるという社会課題に対して、当社グループは不動産投資プロセスにDXを推し進めることにより、不動産投資を変え課題を解決いたします。具体的には、当社では、従前より機関投資家等のプロ向けに不動産投資運用サービス「CREAL PRO」を展開しておりますが、当社の有するプロ向け資産運用ノウハウにDXを組み合わせ、一般個人には手の届きにくい非公開市場である不動産投資市場へすべての個人がアクセスできるようなプラットフォームを構築しています。当社が運営する、不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」は、クラウドファンディングを活用することによりこれまで多額の資金や借入、時間と手間が必要であった不動産投資を一口1万円からオンラインで誰もが気軽に始められる新しい資産運用ツールとなります。また、「CREAL PB」は、物件の仕入、販売、顧客管理といった不動産投資運用のさまざまなプロセスにITを活用することで業務効率向上と中間費用の削減を目指し、個人投資家が実物不動産投資による中長期的な資産形成を効率的に行うためのサービスとなります。

(2) 経営環境
資産運用業(アセットマネジメント)が経済成長の柱の一つと位置づけられ、国全体で資産運用業を育成・強化していく資産運用立国実現の構想が掲げられる中、「資産運用」という市場は拡大傾向にあり、中でも「Fintech」を活用した資産運用のツールは急速に拡大しております。
「資産運用」と「ITの活用」という拡大が見込まれる二つの領域は、参入企業は多いものの、市場の成長性を鑑みると市場のポテンシャルは高く、当社の不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」には大きな可能性があると考えております。不動産投資クラウドファンディングのマーケットはグローバルで約142億ドル(2022年)から、今後は約7,934億ドル(2032年)まで成長するという予測がなされております。日本においても約10億ドル(2022年)から、今後は約583億ドル(2032年)へと成長するという予測もなされております(注1)。このように不動産投資クラウドファンディングのマーケットは、日本・海外ともに大きな市場の成長が想定されます。
(注)1.Polaris Market Research & Consulting LLP, Real Estate Crowdfunding Market Report (Forecast to 2032)より。
① 不動産テック(注1)×EC(注2)というユニークなビジネスと多様なメンバー構成
当社は、IT業界において熟練した技術経験を積んだエンジニア・デザイナー・マーケターで構成されるDX事業本部と不動産ファンド事業において長年の経験を有するメンバーで構成されたCREAL事業本部を同時に有し、業界でも非常に稀有なポジショニングを有しております。長らくイノベーションが発生していなかった不動産投資プロセスにDXを推し進める不動産テック会社であり、ITの活用による業務効率向上と中間費用削減により、投資家の皆様に安定的なリターンの提供が可能となります。
また、同時に自社で組成したファンド商品を自社で運営する不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」にてダイレクトに販売するEC事業の側面を有します。自ら商品を企画・組成の上、一般個人投資家への販売までも一貫してオンライン上で直接行う、ユニークな事業モデルを展開しております。
(注)1.不動産テックとは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのことをいいます。
2.ECとは、Electronic Commerceの略で、日本においては「電子商取引」と訳され、インターネットを利用して、売買、決済及びサービスの契約等の商取引を行うことをいいます。
② 不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL(クリアル)」の競争優位性
「CREAL」は、クラウドファンディングを活用した不動産ファンドオンラインマーケットです。投資家が一口1万円からすべてオンラインで不動産投資運用を完結することができる仕組みであり、不動産投資運用のDXを推進する事業です。競争優位性の源泉はシステム開発能力、商品組成、マーケティングの3点にあると考えます。
・システム開発における優位性
社内のエンジニア・デザイナーによる自社開発であり、投資家のニーズを「CREAL」のシステムにスピーディーに反映することが可能です。技術基盤と洗練されたUI/UX(注1)により、「CREAL」は『Ruby biz Grand prix 2020』(主催:Ruby biz グランプリ実行委員会(事務局:島根県 商工労働部 産業振興課 情報産業振興室))においてVertical Solution賞を受賞、また2020年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しております。
・商品組成における優位性
不動産ファンド事業において長年の経験を有するメンバーで構成されたCREAL事業本部におけるノウハウにより、サービスローンチ以来、保育園、学校、ホテル、オフィス、レジデンス、物流施設、商業施設、老人ホーム等の様々なアセットタイプの商品化を実現しております。また、各種施設運営会社や開発事業者との案件供給や情報共有を目的とした業務提携により、機動的な商品組成を可能としております。
・マーケティングにおける優位性
投資未経験の方に投資に対して広く関心を持って頂けるようなサービスを目指し、自社でのオンラインマーケティングの他に、以下のパートナーと提携しています。提携パートナーがお客様へ「CREAL」の紹介・誘導を行う報酬として、当社がお客様から頂く手数料を提携パートナーとシェアしており、今後も提携パートナーを増やしていく方針です。
以上の強みを背景に、当社の不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」は、高い資金調達力を誇っており、2025年3月末日現在において、130ファンドを組成し、うち96ファンドは償還済みであり、いずれも元本割れ・配当遅延も無く想定利回りの配当を完了しております。
(注)1.「UI/UX」のUIとは、User Interface(ユーザー インターフェース)の略で、インターネットサービスとユーザーの接点です。UXはUser Experience(ユーザー エクスペリエンス)の略で、ユーザーがサービスを通じて得る体験のことをいいます。
③ 「CREAL」の高い再投資率による積み上型モデルとしての収益安定性
「CREAL」は、ファンドが成立した場合に一定の管理手数料(アップフロント・フィー)を、また、ファンド運営時にも管理手数料(アセットマネジメント・フィー)を受領します。さらに、ファンド運営終了時においては売却手数料(エグジット・フィー)に加え、当社が物件を売却し利益が生じた場合には、当該売却利益の全部もしくはその一部(プロフィットシェア)を獲得します。投資家へ安定した投資商品を供給する対価としての手数料と、商品の利回り実績が、あらかじめ投資家へ提示している想定利回りを上回ったときに得られるプロフィットシェア(成功報酬)の二段構えのフィー体系となっており、投資家の満足度を維持しつつ当社にとっても安定かつ収益率の高いフィー体系となっております。また、「CREAL」における投資家のリピート投資率(注1)は安定的に推移しており、ファンド運営終了後も償還された金額と同水準、もしくはそれ以上の金額を新ファンドへ投資するロイヤルティの高いユーザー層を獲得しており、安定的な積み上げ型モデルの収益構造となっております。
(注)1.「リピート投資率」とは、GMV(注2)のうち過去1年間において投資実績がある登録会員の投資金額の割合を指し、以下の計算式で算出されます。
2. GMVとは「流通取引総額:Gross Merchandise Value」の略であり、「CREAL」においてファンド組成のため投資家から調達した資金額をいいます。
④ 「CREAL PRO」及びDX化を通じた「CREAL PB」の成長ポテンシャル
「CREAL PRO」は機関投資家や超富裕層を顧客とした不動産ファンド事業が中心となります。取得対象となる不動産は相対的に大きい規模(10億以上~)となり、かかる対象市場は主に不動産証券化市場になります。当該市場は年間約33兆円(注2)の市場規模であり、大きな市場となります。
また、「CREAL PB」では都心部の中古区分マンションの販売及びその後の各種管理サービスの提供を行っていますが、首都圏の区分マンションの年間取引額約1.7兆円(注1)のなかで、「CREAL PB」のシェアは0.4%であり、DX化により差別化されたサービスや効率的な業務運営を通じ大きな成長ポテンシャルがあります。「CREAL PB」では当社が独自で開発する「CREAL buyer」「CREAL concierge」がビジネスの各バリューチェーンにおいてDX化を推し進めており、IT化が今後進展していく不動産業界の中で、その強みを生かして大きな成長を目指します。
(注)1.国土交通省 土地・建設産業局 不動産市場整備課「不動産投資市場の現状について」
2.公益財団法人東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ(2023年4月度~2024年3月度) Ⅰ.中古マンションレポート 1.首都圏・都県別概況 (1)成約状況」より算出。
⑤ 「CREAL」を起点とした「CREAL PRO」及び「CREAL PB」の事業シナジー
「CREAL」における各種ファンドの物件売却先として「CREAL PRO」が展開する機関投資家や超富裕層向けの不動産ファンドへの売却を推し進めております。その結果、「CREAL」投資家への安定的なリターンの提供のみならず、「CREAL PRO」の顧客である機関投資家・超富裕層に対しても良質な投資案件を独占的に紹介できるといったメリットがあります。また「CREAL」オンライン投資家の中には、中長期な資産運用形成の実現のために実物不動産投資に興味がある投資家も一定数存在しており、そのような投資家を「CREAL PB」へ送客するケースや、「CREAL PB」の富裕層顧客を「CREAL PRO」へ送客するケース等もあり、クロスセル(注1)の実現を図っております。
(注)1.クロスセルとはある商品の購入を検討している顧客に対し、別の商品も組み合わせで購入してもらうための営業活動のことをいいます。
① 経営戦略
当社グループは、従来イノベーションが進んでいなかった不動産投資のプロセス変革のため積極的なIT投資を継続的に行っており、そうした成長投資の継続により「CREAL」を資産運用の代表的なサービスとしての地位を確立いたします。また、「CREAL PB」では当社が独自で開発する「CREAL buyer」「CREAL concierge」、及び「その他」では「CREAL manager」を活用し、IT化が今後進展していく不動産業界の中で、差別化されたDX戦略により成長を図っていきます。
「CREAL」、「CREAL PRO」、「CREAL PB」の商品ラインナップで、誰もが不動産投資による安定的な資産運用を実践できる社会、すなわち資産運用の民主化を目指していきます。
② 目標とする経営指標
当社グループの主な収益の源泉は、「CREAL」上でファンド組成・運用・物件の売却を行う場合に発生する一連の各種フィー及び売却益(第1 3 事業の内容 (2)事業の特徴 に記載)及び「CREAL PRO」におけるアセットマネジメント・フィーや不動産の売却益、並びに「CREAL PB」における投資用不動産の売却益となります。なお、当社「CREAL」における一連の各種フィーは、概ね以下のように設定しております。
すなわち、GMVが増加すれば当社が収受する各種フィーもダイレクトに増加いたします。このように「CREAL」においてはECサイトのフィーモデルと近い体系となっており、そのため経営指標としてGMVを重視しております。
様々なDX開発を行う当社グループにおいては、人件費を含む開発費用のほか、継続的に広告宣伝費等の販管費が先行投資として必要です。そのため、当社グループの事業基盤の着実な拡大を把握する指標として、営業利益ではなく、売上総利益を重要視する指標の1つとしております。
従って、当社の目標とする経営指標は当社グループ及び各サービス毎の売上総利益、並びに「CREAL」におけるGMVが最も重要な経営指標(以下、「KPI」という。)となります。
また、「CREAL」に係るKPIについては、登録会員数、累計調達額及びリピート投資率を重視しており、直近3年間の推移は以下のとおりです。
(注)1.「登録会員数」とは、本人確認及び登録審査手続きを終えて口座開設が完了し、いつでも投資が行える状態にある会員の数を指します。また、数値は期末時点のものになります。
2.「累計調達額」とは、実際の物件取得の金額のうち「CREAL」を通じて調達した金額の総累計額(償還額は控除せず)を指します。
① 不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」の認知度の更なる向上
事業の成長のためには、不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」の登録会員数増加とそれに伴うGMVの継続的な増加が不可欠です。サイトを魅力的に保つための創意工夫を継続的に実践していくとともに、各種マーケティング活動を通じて、更なる認知度の向上と登録会員数及びGMVの増加を図っていく必要があります。
② 良質な不動産投資案件の仕入れ
投資家に対して安定的なリターンを創出し、かつ売却時にキャピタルゲインを獲得できる良質な不動産を安定的に仕入れることは、不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」登録会員数及びGMVの増加と利益確保のために非常に重要なファクターとなります。当社の投資物件の情報入手は、不動産仲介会社及び事業提携をしているパイプライン提供企業からの日常的な情報提供が中心であります。今後は、不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」の認知度・知名度拡大により仲介会社を介さない不動産保有者からのダイレクトソーシングを推進するとともに、ホテル・介護施設・病院・保育園、デベロッパー等といった運営会社を始めとするパイプライン提携企業を増やし、継続的にネットワークを拡大していくことが、案件の安定的な確保のために重要と考えています。
③ 新規許認可の取得
当社は不動産特定共同事業法に基づく第三号及び第四号事業者(注1)としての許可につき金融庁および国土交通省へ申請中となります。当該許認可を取得することにより、外部のSPCを利用したクラウドファンディングでの案件組成が可能となります。外部のSPCにてクラウドファンディングを活用することで、「物件のオフバランス化」「金融機関・機関投資家のファンドへの参画」が期待され、より大型の案件組成も可能となることから、早期の許認可取得を目指し体制整備を行っております。
(注)1. 不動産特定共同事業法二条4項3号・4号に掲げる行為を業とする事業者
④ 優秀な人材の確保と育成
当社グループは今後の事業の拡大のために優秀な人材の確保・育成が重要な課題であると認識しております。そのため、継続的に業界経験者を中心とした中途採用を行っております。また、入社した社員に対しては定期的に社内の研修プランに従った研修・教育を実施することによりその育成に取り組んでおります。今後も継続的に採用を進め、社員への研修・教育制度の質を高めていくことで、優秀な人材の確保と育成を推進する方針であります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社グループの更なる事業の拡大、継続的な成長のためには、内部管理体制及びコーポレート・ガバナンスの更なる強化が重要な課題となります。当社グループは、監査役と内部監査室の連携、経営陣や従業員に対する研修の実施等を通じて、内部管理体制の一層の強化に取り組んでいく方針であります。
⑥ 財務基盤の強化
当社グループにおいて、新たなサービスの新規開発に取り組むため、また良質な不動産を安定的に仕入れるためには、手許資金の流動性確保が重要であると認識しております。このため、金融機関との良好な取引関係の構築や、内部留保の確保を継続的に行い、財務基盤の強化を図ってまいります。
当社グループは、「不動産投資を変え、社会を変える」というグループミッションのもと、事業活動を通じて、社会との共生を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当社グループにおける、サステナビリティ関連のリスク及び機会を把握・管理するためのガバナンス体制は、「
(サステナビリティについて)
「CREAL」はサービス開始以来、社会的に必要とされているが、資金が十分に流れていない不動産領域への投資に注力しております。具体的には、投資規模が小さいため世の中に必要な不動産であるのにもかかわらず、機関投資家からの投資がされにくかった保育園、学校、ヘルスケア、地方創生関連等のESG関連不動産に対して、クラウドファンディングプラットフォーム「CREAL」を通じて、個人投資家からの投資資金を募ることで、投資を実行しております。「CREAL」が社会に必要なアセットへの資金の道管の機能を果たし、また、個人にとって社会貢献と資産運用の両立を図るプラットフォームとなることを目指しております。
(人的資本について)
当社グループでは「不動産投資を変え、社会を変える」というミッション実現のため、役職員全員が守るべき価値観として、「Grit・Imagination・Fairness・Team」という4つのバリューを設けています。このバリューを人事評価制度に組み込むと共に、社員の柔軟な発想及び積極的な提案を促す表彰制度を導入し、モチベーション高く働ける社内環境作りに取り組んでおります。
また、社内のスキルセットを最適化し社員の自律成長を促進するため、公的資格の取得に向けた支援制度や研修プログラムの拡充を進めております。
当社グループでは、企業環境を取りまくリスクに対応するためリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会は、事業活動全般において直面するリスクに加え、サステナビリティ関連のリスクについて整理・抽出し、その対策を提示し改善活動を推進しております。具体的には、「
サステナビリティ関連の指標及び目標に関しては、事業上、人的資本に関する指標及び目標が特に重要であると考えております。
多様な人材が家庭と仕事を両立し持続的に働き続けられる環境を整備するために、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する当社グループの目標及び実績は次のとおりであります。
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資判断上重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しています。当社グループはこれらのリスクの可能性を十分認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針です。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)当社のリスクマネジメント体制
当社は、リスクの顕在化防止のため、また発生した場合の適切な対応による損失の最小化を図るため、代表取締役社長を委員長とし、取締役を中心に構成するリスク管理委員会を設置しております。
(2)当社のリスクマネジメント体制の運用状況
リスク管理委員会は、四半期に1回定期的に開催し、リスクの調査、その重要度に応じた各種リスクへの対応策の検討及び決定、対策の実施状況のモニタリング等を行っております。
(3)事業等のリスク
① 不動産市場の動向について
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループが属する不動産業界は、景気動向、金利動向及び地価の変動等の不動産市場の動向に影響され、当社グループにおいてもこれらの経済情勢の変化により、各事業の業績に影響を受けます。将来不動産価格が下落した場合には、棚卸資産の評価損が発生する可能性があります。また、不動産の価格が高騰し、これに伴い購入金額が上昇した場合には、物件の仕入が困難となる可能性があり、また、販売の際にはその収益性が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。もっとも、当社の運営する不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」の活用により、当社は銀行借入に依存することなく個人からダイレクトに資金を調達することができるため、金融機関の貸出姿勢の変化にかかわらず安定して不動産への投資が可能となっております。
② 新型コロナウイルス等の感染症の拡大について
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
新型コロナウイルス等の感染症の拡大は、生活防衛のための資産運用の重要性について認識される契機となり、在宅ワークを通じた個人投資家の時間的融通もあり、当社グループの展開するサービスへの追い風となる側面があります。一方で、その影響が長期化し経済不況が生じるような場合には、資産運用に対するニーズの動向が不透明になる可能性があり、また経済不況が不動産市況に影響がある場合には、不動産価格の下落や各種不動産の稼働率低下等を通じて、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループでは各種不動産に対して適切なアセットアロケーションを図るとともに、運営状況を慎重に把握することとしています。
③ 劣後出資を通じて案件売却時に損失が発生する可能性について
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社の運営する不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」では、投資家保護の観点から、出資持分を優先部分と劣後部分に分け、優先部分を保有する投資家は劣後部分を保有する投資家より優先的に配当等を受け取る仕組みを構築しております。想定どおりに収益が生じなかった場合のリスクを、劣後部分を有する投資家(当社)が劣後出資額を上限として負担することにより、優先部分への配当等の確実性を高めております。結果的には優先部分は劣後部分に比べてリターンは低くなるものの安定性が高く、劣後部分はハイリスク・ハイリターンとなります。なお、2020年12月以後の案件においては劣後出資割合を5%程度と設定しております。
当社は投資案件毎に案件総額の5%〜20%を劣後出資部分として投資(劣後出資)しています。つまり、投資案件売却時に損失が発生する場合には、劣後出資額を上限として当社が優先して損失を負担することから、不動産市況次第では売却時に損失が出る可能性があります。なお、当該劣後出資については当社のみ出資を可能としております。
売却時期においては原則として事前に案内をしている想定運用期間内で売却を目指しますが、例外として想定運用期間内に対象不動産の売却が完了しない場合には満了日の1ヶ月前までに投資家へ通知することにより、満了日から60ヶ月を超えない範囲で期間を延長する場合がございます。すなわち、不動産市況が下降局面で売却損失が発生する可能性が高い場合は、投資家との契約上、投資期間を長期に延長し、不動産市況が回復することを待つことのできる合意を予めとりつけております。かかる対応策を講じているにもかかわらず、売却損失が多く発生する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、サービス開始から当連結会計年度末現在に至るまで売却損失が発生した案件はございません。
④ クラウドファンディング市場の成長性について
(顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
不動産投資クラウドファンディングのマーケットはグローバルで約142億ドル(2022年)から、今後は約7,934億ドル(2032年)まで成長するという予測がなされております。日本においても約10億ドル(2022年)から今後は約583億ドル(2032年)へと成長するという予測もされております(注1)。今後も当社としては投資リターンを目的とした商品の市場成長を期待していますが、クラウドファンディング市場の成長速度によっては会員獲得のスピード、ひいては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(注)1.Polaris Market Research & Consulting LLP, Real Estate Crowdfunding Market Report (Forecast to 2032)より。
⑤ 不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」案件募集時に成立下限額を調達できない場合について
(顕在化可能性:低/影響度:小/発生時期:特定時期なし)
「CREAL」にて大型案件を募集する際には、案件成立にあたっての下限調達額を設定することがあります。投資家からの応募金額が下限調達額を下回る場合には案件自体が成立せず、応募金額を投資家に返還することになりますが、案件の不成立が続く場合には投資家からの応募が減少していく可能性があり、ひいては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また成立下限額を調達できない場合、募集の前提となる不動産の売買契約の条件によっては、売主へ違約金を支払う場合があり、当該違約金の支払いが当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 案件仕入について
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループの資産運用プラットフォーム事業では、個人向け及び法人向けに数多くの投資対象から良質と思われる案件の仕入れを行っていますが、それらは仲介会社、施設運営事業者(ホテル・介護施設・病院・保育園等の運営者)、一般事業法人、個人不動産オーナー等多岐に分散しています。案件仕入は特定の会社に集中せずに常に広いネットワークの中から行っていますが、当社グループが良質と判断できる案件の仕入れを計画どおりに行うことができない場合、売上や各種フィー収入の減少を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 運営事業者の運営能力及び与信状況について
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
ホテルや老人ホームといった、運営管理にあたり特別な専門性が求められるオペレーショナルアセットは、運営事業者の運営能力や与信状況次第で、その物件から生み出される収益、ひいては、その物件価値自体が大きく変動する可能性があります。当社が保有するオペレーショナルアセットに関して、その運営事業者の運営体制に問題が生じた場合や、事業者自体の与信不安が生じた際には、未回収の債権が生じる可能性があることに加え、物件自体の価値の下落を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 引き渡し時期による業績の変動について
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループでは、不動産の売却にあたっては引渡基準を採用しています。当社グループでは、引渡時期による業績の変動がないように案件管理・期日管理を徹底しておりますが、案件によっては1件あたりの売上高や損益が財務数値に大きな影響を与えることがあり、そのような案件の引渡時期が計画に対して前後することにより、当社グループの四半期や年度損益に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ KPIの動向について
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループでは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営戦略及び目標とする経営指標」に記載のとおり、各種KPIを設定して経営状況の管理を行っています。これらKPIの達成やその指標の改善に常に努めておりますが、各種KPIの実績が大幅に悪化することを通じて、売上高や収益率に大きな悪影響を及ぼし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 競合について
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
クラウドファンディング市場は急速な勢いで成長しているため、既存企業や新規参入企業との競合はあるものの、現在は市場成長の恩恵が上回っているものと考えています。しかしながら、今後市場の成長が鈍化した場合、あるいは参入企業が多く増える場合には、新規投資家獲得速度の減速や投資家離脱、あるいは投資家あたりの投資金額減少を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 人材の確保について
(顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループでは、今後の事業拡大のためには、優秀な人材を確保することが最重要課題だと考えています。このため、今後も優秀な人材の採用及び教育研修実施の機会・内容の充実により、当社グループの企業理念及び経営方針を理解した、当社の成長を支える社員の育成を行うとともに、優秀な人材の確保を継続して行ってまいりますが、計画どおりに人材が確保できない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 小規模組織であることについて
(顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
本書提出日現在における当社グループの組織は小規模であり、会社の規模に応じた内部管理体制や業務執行体制を構築しております。このため、業容拡大に応じた人員を確保できず、役職員による業務遂行に支障が生じる場合、あるいは役職員が予期せず退任又は退職した場合、内部管理体制や業務執行体制が有効に機能せず、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
⑬ 訴訟などの可能性について
(顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループでは、コンプライアンス経営の重要性を認識しており、コーポレート・ガバナンスの強化に努めています。当社グループの事業に関連して、過去第三者との間で重要な訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はありませんが、当社グループが販売した物件の契約不適合やクレーム等に起因する訴訟等が発生する可能性は存在します。訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 契約不適合責任について
(顕在化可能性:低/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社グループが販売した物件に対して民法及び宅地建物取引業法のもと、契約不適合責任を負っています。万が一、当社グループが販売した物件に契約の内容に適合しないものがあるとされた場合には、当社グループは契約不適合責任に基づく、補修工事費用の負担等を追うことがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑮ 個人情報の管理について
(顕在化可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループの事業活動において、顧客・取引先・クラウドファンディングの会員の機密情報や個人情報を取得・保有しています。当社グループでは、これらの情報流出を防止するために、情報管理規程を定め、個人情報の保護に関する法律、関係諸法令及び監督当局のガイドライン等を遵守し、社内規程の制定及び管理体制の確立を図るとともに、個人情報管理責任者を選任して、上記関係規範を従業員に周知・徹底しています。個人情報の取り扱いについては、今後も、細心の注意を払ってまいりますが、不測の事態によって当社グループが保有する個人情報が外部流出した場合、賠償責任を課せられるリスクや当社グループに対する信用が毀損するリスク等があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑯ 災害の発生及び地域偏在について
(顕在化可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
地震、暴風雨、洪水等の自然災害、暴動、火災等の人災、感染症の拡大が発生した場合、当社グループが保有する不動産の価値が大きく毀損する可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが保有する不動産は、売却時の需要を考慮した上で、東京を中心とする首都圏所在の比率が高い状況にあり、当該地域における地震その他の災害、地域経済の悪化等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑰ 法的規制等について
(顕在化可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループが行う主要な事業につきましては、主に以下の法令等による規制を受けています。しかしながら、今後、これらの法令等の解釈の変更及び改正が行われた場合、また、当社グループが行う事業を規制する法令等が新たに制定された場合には、事業内容の変更や新たなコスト発生等により、当社グループの業績及び今後の事業運営に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが取得している以下の許認可(登録)等につき、本書提出日現在において事業主として欠格事由及びこれらの許認可(登録)の取消事由に該当する事実はないことを認識していますが、今後、欠格事由又は取消事由に該当する事実が発生し、許認可(登録)取消等の事態が発生した場合には、当社グループの事業に支障を来たすと共に業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」については、不動産特定共同事業法に基づき運営していますが、クラウドファンディング市場の歴史がまだ浅く、今後、不動産特定共同事業法の改正等が生じる可能性があります。かかる改正等が生じた場合は、当社として直ちに対応していく方針ですが、法改正による規制強化等によって事業運営に与える影響が大きい場合には、事業活動、並びに財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(a) 当社グループの事業活動に関係する主な法的規制
(b) 当社グループの取得している免許・登録等
当社
クリアルパートナーズ株式会社
⑱ システムリスクについて
(顕在化可能性:低/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」は、外部のサーバーや通信ネットワークシステムを利用し、事業を運営しています。従いまして、サーバーのシステムダウンや外部からの不正アクセス、サイバー攻撃等により、「CREAL」に何かしらの問題が発生した場合には、「CREAL」の運営に支障を来たし、当社グループに対する信用の毀損を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑲ 配当政策について
(顕在化可能性:事業計画の進捗状況による/影響度:小/発生時期:特定時期なし)
当社は、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施していく方針でありますが、業績が予想に届かず利益剰余金が不足する場合や、システム環境の整備等、投資の財源として資金を有効活用することが望ましいと考えられる場合には、配当を実施しない、あるいは予定していた配当を減ずる可能性があります。
⑳ ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について
(顕在化可能性:高/影響度:小/発生時期:権利行使期間内)
当社では、取締役、監査役、従業員等に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しています。本書提出日の前月末現在における新株予約権による潜在株式数は205,700株であり、当連結会計年度末における発行済株式総数6,023,000株の3.4%に相当します。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社取締役会長である徳山明成は、当連結会計年度末時点の発行済株式総数の24.8%の議決権を所有している大株主であります。同氏は、現在当社の非常勤取締役として業務執行取締役ではないものの、相応の稼働時間をもって取引先開拓等の各種側面支援を行っており、今後も安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求すると共に、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。同氏は安定株主であると認識しておりますが、将来的に何らかの事情により、大株主である同氏の株式が減少した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(顕在化可能性:中/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社株式の流動性については、事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国の経済は、消費者物価指数が前年同期比で継続的に2.0%を超過しインフレが継続するなかで、賃上げによる雇用・所得環境の改善が続き、緩やかな経済の回復が見られました。また、日本銀行が2024年3月に10年国債金利の変動許容幅の拡大やマイナス金利の解除を決定したことに続き、6月には長期国債買入れを減額していく方針であることを決定、7月に政策金利を引き上げるなど金融政策の正常化も進展しており、デフレからの本格的な脱却が期待されます。海外経済については、米国では景気拡大が続きソフトランディングを意識した政策金利の引き下げが行われていましたが、米政権の関税政策によるマクロ経済への影響については不確実性が高まっています。欧州では一部の地域の景気には足踏みが見られます。為替レートについては、欧米の高い金利水準の継続により日本との金利差縮小には一定の時間がかかるとの見通しから円安水準で推移しています。また、エネルギー価格は下落の兆しがみられるものの依然として高く、国内の物価上昇へと波及しております。加えて、米政権の政策動向、中東情勢、中国経済の下振れなど、依然として先行き不透明な状況を注視する必要があります。
当社グループが属する不動産及び不動産クラウドファンディング業界におきましては、円安を背景とする外国人旅行者数・インバウンド消費の増加を背景に、国内ホテルの宿泊者数はコロナ禍以前を上回り、商業施設の販売額もコロナ禍以前の水準を上回りました。レジデンスのうちマンションの売買市場におきましては、首都圏を中心に中古マンション、新築マンションともに平米単価は上昇傾向を維持して高い水準を維持しています。また、日本の低金利と円安を背景にした海外投資家による国内不動産への投資需要が継続しています。一方で、原材料費高騰や人件費上昇による建築コストの増加、日銀の政策変更や国内外の金融情勢の変化が及ぼす影響について、今後も注視する必要があります。
こうした環境の中、当社グループは、「CREAL」サービスにおいて商業施設、ホテル、オフィス、老人ホーム、一棟レジデンス、物流施設の不動産ファンドをオンラインで提供して運用資産の残高とアセットタイプの拡大を図るとともに、着実に売却を実行しオンライン投資家にリターンを提供することで、2025年3月末時点で、投資家会員数は9.7万人、累計投資金額は700億円を突破しました。「CREAL PRO」サービスにおいては、機関投資家向けに物件を売却したほか、これまでに継続して蓄積してきたアセットマネジメント契約を背景に、安定収入の基盤となるアセットマネジメントフィーを着実に計上しています。そして「CREAL PB」サービスでは、中古ワンルームマンションの販売本数を伸ばしました。一方で、事業拡大に伴い先行投資も含めた人員の拡充が進み、人件費が大きく増加をいたしました。
この結果、売上高は41,823,444千円(前年同期比98.7%増)、売上総利益5,666,282千円(前年同期比59.1%増)、営業利益1,968,257千円(前年同期比100.8%増)、経常利益1,830,123千円(前年同期比94.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,351,394千円(前年同期比108.7%増)となりました。
なお、当社グループは資産運用プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
資産・負債及び純資産の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産は52,936,860千円となり、前連結会計年度末と比べ17,187,737千円増加しております。これは主に、現金及び預金の増加7,839,908千円、預託金の増加958,469千円、販売用不動産の増加6,232,186千円、また、臼木証券株式会社を連結子会社としたことにより証券業における預託金867,000千円及び証券業における信用取引資産5,103千円を、並びに株式会社ティーエーティーの株式を取得したことにより関係会社株式730,742千円を計上しております。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は47,663,084千円となり、前連結会計年度末に比べ15,720,897千円増加しております。これは主に、「CREAL」事業の拡大に伴う匿名組合出資預り金の増加15,994,840千円、短期借入金の減少2,680,359千円、長期借入金の増加912,488千円によるものであります。また、臼木証券株式会社を連結子会社としたことにより証券業における預り金751,895千円、証券業における信用取引負債5,103千円、証券業における受入保証金75千円、及び特別法上の準備金として金融商品取引責任準備金700千円を計上しております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は5,273,775千円となり、前連結会計年度に比べ1,466,840千円増加しております。これは主に、新株予約権の行使により資本金が35,484千円及び資本剰余金が35,484千円増加し、親会社株主に帰属する当期純利益の計上1,351,394千円によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度に比べ7,739,897千円増加し15,499,520千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは10,020,598千円の収入(前年同期は1,211,263千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,830,616千円、匿名組合出資預り金の増加額15,994,840千円の影響により資金が増加し、預託金の増加額958,469千円、棚卸資産の増加額6,084,837千円、クラウドファンディング預り金の減少額680,519千円の影響により資金が減少したことによります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは1,170,208千円の支出(前年同期は134,776千円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入200,000千円による資金の増加の一方で、定期預金の預入による支出300,012千円、関係会社株式の取得による支出753,283千円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出197,278千円により資金が減少したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは1,114,305千円の支出(前年同期は2,906,965千円の収入)となりました。これは主に、短期借入金の純減額2,680,359千円、長期借入金の返済による支出1,256,512千円の影響により資金が減少した一方で、長期借入れによる収入2,754,878千円により資金が増加したことによります。
当社は生産活動を行っていないため、生産実績に関する記載はしておりません。
提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
(注)1.当社グループは資産運用プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
当連結会計年度の財政状態については、「(1) 経営成績等の状況 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b. 経営成績
(売上及び売上総利益)
「CREAL」サービスにおいて商業施設、ホテル、オフィス、老人ホーム、一棟レジデンス、物流施設の不動産ファンドをオンラインで提供して運用資産の残高とアセットタイプの拡大を図るとともに、着実に売却を実行しオンライン投資家にリターンを提供することで、2025年3月末時点で、投資家会員数は9.7万人、累計投資金額は700億円を突破しました。「CREAL PRO」サービスにおいては、機関投資家向けに物件を売却したほか、これまでに継続して蓄積してきたアセットマネジメント契約を背景に、安定収入の基盤となるアセットマネジメントフィーを着実に計上しています。そして「CREAL PB」サービスでは、中古ワンルームマンションの販売本数を伸ばしました。結果、売上高は41,823,444千円となり、売上総利益は5,666,282千円となりました。
(販売費及び一般管理費及び営業利益)
販売費及び一般管理費は、主に不動産ファンドオンラインマーケット「CREAL」登録会員数獲得のための広告宣伝費、及び事業拡大に伴う人件費の増加により3,698,025千円となりました。この結果、営業利益は1,968,257千円となりました。
(営業外損益及び経常利益)
テナント解約の違約金収入の他、保険金の受取や業務委託料の受領等により営業外収益を12,859千円計上した一方で、資金調達に伴う利息及び手数料の計上により営業外費用は150,993千円となりました。この結果、経常利益は1,830,123千円となりました。
(特別損益、法人税等及び親会社株主に帰属する当期純利益)
税金等調整前当期純利益の計上により、法人税等は479,261千円となり、当期純利益は1,351,354千円となりました。非支配株主に帰属する当期純損失39千円を計上し、この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,351,394千円となりました。
なお、経営者の問題意識と今後の方針、及び当社グループに重要な影響を与える要因については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「(1) 経営成績等の状況 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、クラウドファンディング組成時に行う劣後出資、不動産取得のための取得資金であります。資金調達につきましては、増資を通じた自己資金の他、各プロジェクトや物件ごとに金融機関からの借入を行っております。また、資金繰りの悪化の際に機動的に資金を調達する観点から、金融機関と当座借越契約を締結しており、流動性の確保に努めております。今後の事業拡大にともなう運転資金需要については、自己資金の他、適宜金融機関より調達を行う方針であります。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社の主な収益の源泉は、「CREAL」上でファンドを組成・運用・物件の売却を行う場合に発生する一連の各種フィーと不動産の売却益、及び「CREAL PRO」におけるアセットマネジメント・フィーや不動産の売却益、並びに「CREAL PB」における投資用不動産の売却益となります。
成長段階にある当社においては、人件費を含む開発費用のほか、継続的に広告宣伝費等の販管費が先行投資として必要です。そのため、当社グループの事業基盤の着実な拡大を把握する指標として、営業利益ではなく、売上総利益を重要視する指標の1つとしております。また、「CREAL」サービスにおいては、GMV(流通取引総額:Gross Merchandise Value)が増加すれば当社が収受する各種フィーもダイレクトに増加するため、経営指標としてGMVを重視しております。2025年3月期における各指標の前年同期比の増減率は以下のとおりであり、順調に増加をしているとの認識でおります。引続き対処すべき経営課題の改善を図りながら、経営戦略を推進してまいります。
(財務上の特約が付された金銭消費貸借契約)
当社の借入金のうち、以下の金銭消費貸借契約については、財務制限条項が付されており、これに抵触し貸付人から請求があった場合には、期限の利益を喪失します。
※ 各金銭消費貸借契約に付された財務制限条項の特約要件は下記のとおりであります。
要件1.連結貸借対照表について、連結会計年度末及び中間連結会計期間末の純資産額が、直前連結会計年度末または中間連結会計期間末の純資産額の75%以上を維持すること
要件2.当社の貸借対照表について、事業年度末及び中間会計期間末の純資産額が、直前事業年度末または中間会計期間末の純資産額の75%以上を維持すること
要件3.連結損益計算書について、経常利益が2期連続して損失を計上しないこと
要件4.当社の損益計算書について、経常利益が2期連続して損失を計上しないこと
要件5.当社の貸借対照表について、事業年度末の純資産額が、直前事業年度末または2022年3月期末のいずれか大きい方の純資産額の75%以上を維持すること
要件6.当社の貸借対照表について、事業年度末の純資産額が、直前事業年度末または2024年3月期末のいずれか大きい方の純資産額の75%以上を維持すること
要件7.関係会社の損益計算書について、経常利益が2期連続して損失を計上しないこと
該当事項はありません。