文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「あらゆる判断を、Data-Informedに。」をパーパス(企業の目的)として掲げ、「すべての人がデータという武器を有効に用いて論理的に考え、合理的に判断する社会」の実現を目指しています。
当社グループは、業界リーディングカンパニーに対し、データに基づく判断・意思決定(Data-Informed Decision-Making(以下「DIDM」という。))支援を行っています。データインフォームドにおいては、人間が思考する際に、一般的なデータ分析のアウトプットに加え、生成AIなどから得られた情報群を「考えるための材料」として適切に提供することにより、人間の思考が拡張されていくことが理想の姿です。
当社グループは、創業以来、長年にわたって培ってきたデータ分析にまつわるノウハウやアセット群を活用すると共に、昨今、注目されている生成AIなどの新たな情報処理技術を取り入れて、クライアント企業の「データ“も”用いた判断」を核とした業務変革を推進し、事業成長・業績改善および競争力強化を実現します。
(2) 経営環境
各企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は、データ活用による業務効率化やAIアルゴリズム実装に対する需要を高めていると考えております。また、日本政府による「Society5.0」の提唱やDX推進を目的としたデジタル庁の創設、生成AI等の技術革新・一般社会への普及等もあり、ビッグデータの活用やAIアルゴリズム技術等の社会実装を目指す機運がますます高まっております。そうした流れの中で、当社グループのデータインフォームド事業が内包されるビッグデータアナリティクス(BDA)・テクノロジー市場、及びそれを含むAI市場は拡大し続けております。この中でも特に関連の深い国内ビッグデータ/アナリティクス市場は、IT専門調査会社 IDC Japan株式会社によると、企業のビジネスの可視化需要によるビジネスインテリジェンス(BI)市場の継続的拡大、データ活用環境整備に即した構造化データウェアハウス/非構造化データストア等の成長を背景として、2027年までの年間平均成長率(CAGR)は14.3%で、2027年には支出額が3兆541億円に達すると予測されています。(出典:2024年3月21日IDC Japan 国内ビッグデータ/アナリティクス市場 ユーザー支出額予測:産業分野セクター別、2022年の実績と2023年~2027年の予測)
このように、当社が事業を営むビッグデータアナリティクス・テクノロジーの市場は、継続的に高い成長率を維持すると予想しています。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上高の成長と利益ボラティリティの抑制を可能とする体制の構築を推進しています。この実現に向け、営業利益を起点とするKPIツリーを作成し、3つの指標を開示することといたします。
1.単体売上高:年間取引高区分別顧客・売上構成
2.単体コア営業利益率:費用内訳・1人当たり売上高情報
3.子会社売上高:各プロセス実施件数
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは「顧客理解No.1カンパニー」をビジョンに掲げ、中長期的な企業価値の最大化を目指しております。持続的な成長と強固な経営基盤の構築のため、以下の課題に優先的に取り組んでまいります。
1.継続的な売上規模の拡大と利益の確保
当社はこれまで、顧客に深く入り込む一気通貫型のサービス提供を通じて、難易度の高い経営課題の解決に取り組んでまいりました。こうした取り組みから得られた知見やノウハウは、自社プロダクトの開発に活かされるなど、当社グループの競争力の源泉となっております。当社グループは精鋭人材を中心としたサービス提供体制を維持しつつ、生産性の向上に努め、単純な人員増に依存せず売上規模の拡大を目指してまいります。
また、市場環境や成長段階を踏まえ、利益水準についての方向性を変更いたします。今後は事業の成長と並行してコスト管理の徹底にも取り組み、安定的な利益の確保に注力してまいります。
①長期契約の獲得
当社グループは、データ分析を活用したコンサルティングや情報基盤の構築、アプリケーションの開発・仕組化といった業務を主軸としております。なかでも、当社グループの強みを最大限に発揮できるのは、高度な経営課題を抱え、豊富なデータと投資余力を有するクライアント企業であると考えており、そうした企業との長期的な関係構築や、1社あたりの取引範囲の拡大が重要な課題であると認識しております。
現在は、分析から仕組み構築まで一気通貫で支援できる付加価値が評価され、主要なクライアント企業において深耕を進めておりますが、今後はさらに、資本業務提携や共同プロジェクトの実施、人材交流の促進等を通じて、より強固で持続的な関係の構築を図ってまいります。
②プロダクト領域の拡大とサービス提供体制の強化
当社グループは、これまで各業界の大手企業に対して提供してきたデータ活用診断や情報基盤の構築、アプリケーション開発・仕組化といった業務を通じて、技術力とノウハウを蓄積してまいりました。これらの知見を活かし、現在は自動化・省力化に寄与する汎用的な自社プロダクトを複数開発・提供しており、独自のアルゴリズムや特許技術を用いた高い品質と競争力のある価格設定を強みとして、契約件数のさらなる拡大を目指しております。
今後は、販売パートナーとの連携や当社グループ人員による営業活動に加え、展示会等のイベント出展や新たなマーケティング手法の導入など、多角的な取り組みを通じて、プロダクト領域における一層の拡販に取り組んでまいります。
また、こうしたサービスやプロダクトを安定的に提供し続けるためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠であると考えております。当社グループでは、大規模な一括採用を行うのではなく、少数精鋭の人材を採用し、短期間で高い能力を発揮できるよう育成する体制を構築しております。さらに、外部パートナー企業とも連携し、当社業務への理解を深めた専属メンバーとの協働を通じて、生産性の向上とサービス品質の維持・強化を両立させながら、提供体制の拡充に努めてまいります。
③投資活動とM&Aの推進
当社グループはこれまで、既存サービスおよびその周辺領域における成長を目的として、継続的に投資活動を推進してまいりました。今後も、既存プロダクトにおける新機能の開発や、新たな事業・プロダクトの創出に向けた先行的な投資を継続してまいります。
また、M&Aの活用による非連続的な成長も重要な手段と位置づけております。既存サービスの提供価値や提供規模の強化、サービス領域の拡大、ならびに企業の持続的成長に必要な人材の獲得等を目的として、引き続き積極的にM&Aを推進し、持続的な競争力の強化を図ってまいります。これにより、当社グループ全体の競争力を一層強化してまいります。
④利益水準の確保
当社グループはこれまで、売上の拡大を最優先に位置づけるとともに、利益については当該年度の配当原資を確保できる水準を目安としながら、積極的な投資活動を推進してまいりました。
今後は、これまでの方針を見直し、成長投資と並行してコスト管理の精度を高めることで、一定水準の利益を安定的に確保することを目指してまいります。これにより、中長期的な企業価値の向上と財務の健全性を両立させてまいります。
2.クライアント企業へのサービス提供品質向上
当社グループは、社員一人ひとりがプロフェッショナルとしての自覚を持ち、常にクライアント企業の期待を上回る高品質な成果を迅速に提供することを心がけてまいりました。こうした姿勢が、当社グループの競争力の源泉であると認識しております。
その競争力を支えているのは、「戦略コンサルティング」「データ・サイエンス」「データ・エンジニアリング」「プロダクト開発」という4つのコアケイパビリティであり、これらは創業以来の実績とともに蓄積・強化されてまいりました。今後も、これらのケイパビリティを持続的に高めていくため、従業員への教育・育成体制の充実を図るとともに、高い付加価値を提供できる人材に対して適切な環境・制度を整備し、クライアント企業へのサービス品質の一層の向上に努めてまいります。
①技術力の研鑽
当社グループが中核的なケイパビリティとして位置づけている「戦略コンサルティング」「データ・サイエンス」「データ・エンジニアリング」「プロダクト開発」の4領域においては、生成AIをはじめとした新たな技術や知見が日々生まれており、継続的な習得と対応が求められております。
当社グループでは、従業員のみならず取締役も含めた全社的な体制で、最新の技術情報の取得やスキル向上に努めております。特に重要な分野においては、外部専門家を招聘し、定期的な意見交換や討議を行うことで、知見の深化と応用力の強化を図っております。今後も、必要に応じて業務委託契約や学術機関との共同研究等を拡充し、技術力の一層の向上に取り組んでまいります。
②サービス提供速度の維持・向上
当社グループが強みとする迅速なサービス提供は、単に技術力だけでなく、経営課題の本質を把握し、データを用いた分析を的確に業務へ組み込む力に支えられております。こうした力を発揮するには、当社独自の分析思想や業務プロセスを深く理解することが不可欠であり、新たに加わる従業員に対しては、徹底した教育を行っております。
また、プロジェクトをチームで推進する体制を整えており、属人性を排した対応によりサービス提供のスピードと品質を両立させております。今後も、業務の自動化や仕組み化、ノウハウの形式知化を進めることで、さらなるサービス提供速度の向上に努めてまいります。
③従業員の労働環境の整備
当社グループは、2019年夏よりリモートワークの試行を開始しており、新型コロナウイルス感染症の拡大時にも柔軟に対応し、全従業員が混乱なく在宅勤務を継続できる体制を整えてまいりました。
一方で、従業員の労働環境の整備は、企業としての責務であると同時に、当社の競争力を高めるうえでも重要な要素であると認識しております。このため、労働時間の正確な把握や定期的なヒアリングを実施し、必要に応じて制度やツールの見直し、備品の貸与・購入支援等を行っております。加えて、オフィス環境についても、衛生面への配慮や十分な作業スペースの確保を継続的に行い、従業員が安心して能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組んでおります。
3.内部管理体制の強化
当社グループは、成長段階にある企業でありながらも、取締役をはじめとする経営陣およびコーポレート部門(経営基盤強化本部)が中心となり、全社的に高度な内部管理体制の整備と運用に努めてまいりました。また、ミドルオフィスの体制強化により、フロント業務との連携を深め、実務に即した統制が図られるよう組織体制を構築しております。
今後のさらなる事業領域の拡大を見据え、柔軟性と迅速性を両立した内部管理体制の一層の進化と強化に取り組んでまいります。
①コーポレート・ガバナンスの確実な実施
適切なコーポレート・ガバナンスの実現に向け、代表取締役CEO、代表取締役COO、業務執行取締役、執行役員、各部門長(Division Leaderや経理財務部長等)が出席する営業会議等の重要な会議体には常勤監査役も参加し、議論の健全性と業務執行の透明性を担保しております。
また、こうした会議体にとどまらず、個別案件の進捗状況に関しても、業務執行部門とコーポレート部門が相互に情報を確認し合い、高度なガバナンスの実効性を確保しております。今後、事業の拡大に伴い議論や意思決定の複雑化が見込まれる中、外部専門家やシステムの導入も適宜検討しながら、ガバナンス体制の確実な運用を継続してまいります。
②リスク・コンプライアンスに関する取り組みの強化
当社グループでは、業務遂行上のリスクを適切に把握し、必要な対応策を講じるため、経営基盤強化本部長を委員長とするグループ・リスクマネジメント委員会を設置しております。同委員会では、毎四半期に定例会を開催し、業務フローに即したリスクの洗い出しや、重点テーマを設定した議論を通じて、リスク管理体制の強化に努めております。
また、コンプライアンスに関する取り組みについては、総務人事部が中心となり、各部門と連携しながら継続的な課題の把握と改善に取り組んでおります。これにより、法令および社会的規範の遵守意識の定着と運用の徹底を図ってまいります。
③情報セキュリティの強化・セキュリティ強度の維持
当社グループは、クライアント企業の経営情報や機密情報、トランザクション(取引)データ等、重要な情報を取り扱う機会が多いという事業特性を踏まえ、情報セキュリティの強化に継続的に取り組んでおります。
社内ガイドラインの整備や従業員への教育に加え、外部専門家による定期的なセキュリティチェックも実施しております。個人情報の取扱いについては、取扱量の最小化や運用管理体制の整備を徹底しており、プライバシーマークの取得も継続的に維持しております。今後も、確実な運用にとどまらず、社内教育・研修の強化や、セキュリティ関連システムの導入・改善を通じて、より強固な情報セキュリティ体制を構築してまいります。
4.流動性の確保及び企業価値の拡大
当社の流通株式比率は、上場時に実施した公募および売出しにより、取引所が定める形式要件を充足しております。
今後も、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、事業の着実な推進とあわせて、IR活動の強化や資本市場との建設的な対話に取り組んでまいります。加えて、実施可能な資本政策についても適宜検討を行い、流動性の確保に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループはデータインフォームド事業を通じてクライアント企業の抱える課題を解決し、クライアント企業の持続的な発展をご支援しております。それに際して、当社グループの提供するサービスは、クライアント企業を含む社会全体の持続的発展を下支えするものであるべきだと考えております。翻って、昨今の社会情勢に鑑みますと、各企業の直面する課題が複雑化・高度化し続けているのは明らかです。
こうした社会全体の複雑化が進むことで、人間社会および地球環境の在り方に大きな影響を与えます。そうした変化を敏感に捉え、持続可能な社会の実現を推進することが、当社グループ、あるいは当社グループのクライアント企業を含む全ての企業体の使命であると言えます。2015年9月の国連サミットにおけるSDGsの全会一致での採択を踏まえ、当社グループも、社会の一員としてサステナビリティ実現に向けた活動を行う必要性を強く感じております。
当社グループの推進するデータインフォームド、すなわち、データ“も”用いて判断、意思決定を行うという行動様式は、企業活動の効率向上に著しい貢献をするものと考えております。こうした取り組みは、社会全体の無駄を排除し、持続的な発展を可能とすることに大きく寄与しているものと認識しております。当社グループはこのデータインフォームドという行動様式を世の中に普及させることを目指し、クライアント企業のサステナビリティ経営の実現のためにサービスを提供し続けることで、持続可能な社会と経済成長の実現に向けて貢献してまいります。
このようなデータインフォームドという行動様式の普及および、クライアント企業の発展に資する継続的なサービスの提供・拡大のためには、人的リソースの確保が不可欠と考えております。このことから、当社グループでは「従業員」を最重要マテリアリティに設定しております。また、「あらゆる判断を、Data-Informedに。」というパーパスを基盤とした「行動指針(=高いマインドを持ち、行動に移していく実現力)」を定義しており、当社グループにおけるプロフェッショナリズムを具体的に表現したものとなっております。これを人材育成の過程で従業員に浸透させることで、組織としての方向性・ベクトルを一致させるとともに、各自高いプロフェッショナリズムをもって日々の業務を遂行することにより価値創出を推進してまいります。
(1) 具体的施策
当社グループは、クライアント企業のサステナビリティ経営の発展に資する継続的なサービス提供の拡充のため、継続的な人的リソースの確保・拡大が必要と考えております。そのために、当社グループのパーパスを実現していくプロフェッショナリズムを持った人材を育成することが重要となります。人材育成は、当社グループにおけるプロフェッショナリズムを具体的に定義した行動指針に基づいて実施しております。また同時に、多様な人材が長期にわたりポテンシャルを最大限に発揮して働けるための環境を整えることで、従業員一人ひとりの成長および生産性の向上を目指しています。当社グループでは以下のような施策を実施しており、これらにより、当社グループ及びクライアント企業のサステナビリティの実現に寄与するとともに、当社グループの企業価値の向上にも寄与するものと考えております。
◆人材育成
当社グループでは行動指針に基づいて人材の評価や育成を行っておりますが、育成において「アセットベースの人材育成」を重視しております。創業以来、当社グループはクライアント企業をデータインフォームドな状態に変革すべく、あらゆる業種・業態の様々なデータの分析を行ってまいりました。この長年にわたり培ってきたデータ分析のノウハウやモジュール群をアセットと位置づけ、このアセットを活用することで、データ分析手法を身に着けた人材を短期間で育成することを可能にしております。
ここでいう“アセットの活用によるデータ分析手法”は、分析スキルを身に着けることのみを指すのではなく、“クライアント企業の判断がより良い方向に向かうためにデータをどのような目的で活用するか”という思想の部分を兼ね備えていることが重要となります。すなわち、当社グループならではのデータ活用やデータの可視化における基本的な思想を身に着け、クライアント企業の事業課題にどう向き合うかに重きを置いております。このようなアセットベースの人材育成を実現するために、採用・育成・評価が重要となります。
①採用
当社グループのアセットベースの人材育成において、優秀な人材は不可欠です。優秀な人材とは、いわゆるコンサルタント経験者やデータサイエンティストを指すのではなく、背景を理解したうえでアセットを使いこなし、クライアント企業の事業課題に適切に向き合える人材を指します。そのため、採用する人材は業種・業界などのバックグラウンドのみならず、性別やキャリア、宗教、地域を問いません。このことから、多様性のある人材を獲得するうえで採用上の制限を可能な限り小さくすべく、多くの施策・制度を設けております。
a.フルリモートワーク制度導入による居住地に左右されない採用
b.ポテンシャル採用(データサイエンティスト・エンジニアの未経験者の採用)
c.リファラル採用
②育成
アセットベースの人材育成は、アセットの礎となる思想の理解から始まり、アセットの使い方・活用方法を覚えた後、実際のプロジェクトの現場でアセットを使うことで思想を体得します。さらに、実際のプロジェクトでアセットを用いて効率的に遂行するといった、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じて育成しています。この一連の育成手法に関して一定の方法論を確立したことで、様々なバックグラウンドを有する多様性のある人材に対し、数週間~半年という短い期間で業務の遂行に必要な最低限のレベルまで育成する体制を構築しております。
③評価
当社グループはアセットベースでの人材育成を行うことで、未経験人材も早期に戦力化することができます。併せて、従業員の更なる成長を期待し、「リアルタイムプロモーション」という毎月人事考課を可能とする制度を導入しております。成長を続ける者に対し、成長を適時・適切に評価し昇格を認めることで、一層の成長を促す人事評価制度となっております。また、人事評価制度には性別の違いに基づいた区分は設けておらず、多様性確保を基礎とした公正な評価制度となっております。また、成長を支援するための施策を実施しております。
◆社内環境整備
当社グループの社内環境整備の在り方は、優秀な人材を採用することを可能とし、また、高い生産性を発揮できるためのものとなっております。良好な就労環境とするための制度や、ライフステージの変化の際にも柔軟に働き方を変えることで長期にわたる勤続を可能とする制度等、様々な施策・制度を導入し、人材育成の下支えとなる環境を整備しております。このような柔軟性の高い働き方は、働く方がプロフェッショナルであることを前提に成立すると考えております。求められる成果を出すだけでなく、さらに自身のスキルを向上させ、組織全体の生産性向上に寄与することを目指す集団だからこそ、「柔軟な働き方」が運用可能となっております。
当社グループでは以下のような施策を実施しており、最重要マテリアリティである「従業員」が、より働きがいのある人間らしい働き方ができる環境を整えております。
①コアタイムのないフルフレックス(月内変形労働制)
②フルリモートワークとそれを支えるツールや施策
③過度な勤務防止のための就業時間管理
④ストックオプション制度
⑤持株会制度
⑥副業許可
(2) 指標及び目標
当社グループは、性別やライフステージに関わらず、すべての従業員が働きがいを持ち、長期的に活躍できる職場環境の整備を目指しています。
当社グループは性別による賃金制度の格差はなく、社内環境も性別関係なく整備をしており、「誰にとっても働きやすい、高い生産性が発揮できる、ライフステージが変わっても柔軟に働き方を変えることで長期の勤務ができる制度」を重視しております。実際に、女性従業員比率・女性管理職比率・男女別育児休業取得状況を分析した結果、全国平均と比較しても大きな男女差は見られません。特に男性従業員の(出生時)育児休業取得率は直近1年間で200%(
また、当社では、コアタイムのないフルフレックスタイム制度を導入し、従業員の裁量と多様な働き方を尊重しています。一方で、制度の柔軟性が高いことにより、深夜時間帯や法定休日における労働が発生しやすい運用となっている側面があり、時間外労働時間の中でもこれらの割合が高くなる傾向が見られます。深夜時間帯や休日の労働は心身の負担も大きく、ワークライフバランスの確保や健康面への配慮からも、深夜労働および法定休日労働の低減を通じて時間外労働全体の適正化と従業員の健康確保を図ります。
このような背景から、当社は以下を重要指標として定めております。
株式会社ギックス(単体)
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内容 |
指標 |
2025年6月期 |
目標 |
期限 |
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配偶者の出産時における男性従業員の特別休暇取得率向上 |
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男性従業員の育児休業取得率の維持 |
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時間外労働全体の適正化と従業員の健康確保 (※本目標には管理監督者を含む) |
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基準対比
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基準対比
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基準対比
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(注)1.目標は全て年度単位での目標値です。
2.当社の36協定起算月の都合で③④⑤の指標については前年11月~10月を集計することとし、目標値は2024年11月~2025年10月の実績対比での削減目標となります。なお、「2025年6月期」に記載されている数値は、2024年11月~2025年6月の情報を元に集計した仮数値となります。
3.各指標の計算式は以下のとおりです。
①:配偶者出産時特別休暇取得率=配偶者出産時特別休暇取得者数÷該当休暇付与対象者数×100
②:育児休業取得率=育児休業を取得した男性従業員の数(事業年度)÷配偶者が出産した男性従業員の数(事業年度)×100
③④⑤の削減率:
(1−(評価対象期間の一人あたり該当労働時間÷基準期間の一人あたり当該労働時間))×100
(3) ガバナンス及びリスク管理
当社グループの事業を取り巻く様々なリスク及び機会に対し的確な管理・運営を行うために、定期的に潜在リスク情報を集約するとともに、様々な機会の提供について検討しております。具体的には、「グループ・リスクマネジメント委員会」において、その影響の重要度と対応方針を評価しており、当委員会で評価されたリスクの内容は四半期に一度、取締役会に報告されています。なお、サステナビリティの取り組みにおけるリスクについても、発生事象や対応策が既知の事業リスクと共通する点も多いため、上記「グループ・リスクマネジメント委員会」において統合して運用しております。また、人的リソースの確保につながる人材育成及び社内環境整備を実現することを目的として、常時各種施策の導入等を検討するとともに、2025年7月より、グループ各社・全体の人事戦略・組織設計・人材活用を推進することを目的とした組織である「グループ人材戦略室」も新設しました。
また、当社グループが最重要マテリアリティと定める「従業員」すなわち人材については、上記「グループ・リスクマネジメント委員会」に加え、毎月の定時取締役会において、入社者、退職者、内定状況等の報告を実施しております。当社グループのリソース確保に関するモニタリング活動を、経営陣が直接行うことで、課題の早期検知及び対策検討を実現しています。加えて、プロジェクトのリソース状況を定期的に確認するとともに、各従業員の勤務実態や活動状況を把握することに努めています。これにより、当社グループの人的リソースの有効活用を図りつつ、従業員の労働環境の改善・勤務時間の平準化等の働き方改革を推進しています。
本書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであり、各リスクに対して発生可能性と影響度をそれぞれ評価しています。また必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の判断上、重要であると考えられる事項につきまして、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下の通り記載しております。
当社グループのリスク管理体制に関しましては、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 イ 企業統治の体制の概要 (グループ・リスクマネジメント委員会)」に記載のとおりであります。
なお文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。
1.業界及び景気動向の変動による影響(発生可能性:中、影響度:大)
クライアント企業を取り巻く労働人口減少やIoT化の進展、企業競争環境の激化などの動向により、当社グループの関連市場は大幅な拡大が予測されています。しかし当社グループのクライアント企業や当社グループが提供するサービスの導入予定企業の業績による影響、他の経営改革案件や技術への投資変更による影響を受ける可能性があります。また、当社グループにおいては国内外の経済情勢の変動に伴う事業環境の悪化が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
2.人材の確保・維持及び育成(発生可能性:高、影響度:大)
当社グループは、優秀な戦略コンサルティング素養とデータサイエンス素養を併せ持つ人材を獲得・確保・維持・育成を進めることで事業を推進・拡大しております。しかしながら、内部における人材育成・教育、並びに外部からの人材採用が想定通りに進まないことなどによる人的リソースの不足がある場合、当社グループの経営成績及び業績に影響を与える可能性があります。
3.技術革新による影響(発生可能性:低、影響度:中)
当社グループが事業を展開するアナリティクス・AI業界は、技術の変化やそれに対するクライアント企業のニーズの変化、競合の新サービス・アルゴリズムの展開などにより日々変化しております。当社グループは不変的な経営課題設定力や問題解決力と汎用的なアナリティクス力を主軸とし、それに対して最先端の機械学習・深層学習技術・自然言語処理技術などを組み合わせていく形をとることで技術革新の変化が直接的に当社グループのサービス品質や業績に影響が出にくいビジネスモデルを構築しております。しかしながら予想以上の破壊的なイノベーションの進展などにより、当社グループの競争力に影響を及ぼすような代替技術や高度技術の大幅な汎用化等が発生した場合、当社グループの経営成績及び業績に影響を与える可能性があります。
4.情報及び情報システムの管理(発生可能性:低、影響度:大)
当社グループは、事業推進において、クライアント企業から経営戦略上重要な経営機密・営業機密・人事機密などの情報を受領し、分析することによって助言等の業務を行っております。情報の取扱いについては、各種規程の整備や認証の取得に加え、社員を含む関連する当事者(業務委託先を含む)からの誓約書の提出、コンプライアンス教育などを実施し、適切な運用を行っております。また、クライアント企業から受領した情報・データに関しては施錠できる環境下での保管、社員個々人のID及びパスワードでのみアクセス可能なクラウド環境での運用を行っております。当社グループは複数のクラウドサービスと契約しており、いずれかのサービスに障害が起きても、他のクラウドサービスにて業務が継続できる対応体制を整えております。更には、各クラウドサービスのリージョンにおいても冗長構成となっていることに加え、仮にリージョン内での障害が発生しても、当社グループは他リージョンへの切り替えによる復旧体制を構築しており、数時間のサービス提供遅延は出るものの、復旧に向けて迅速に対応できる体制を整えております。また、顧客企業が契約するクラウドサービス上に各種プログラム・アルゴリズムを構築する案件も多いため、クラウドサービスの障害は当社グループのソリューション提供に間接的には影響を受けるものの、直接的な被害が生じることはありません。
しかしながら、ヒューマンエラー、その他予期せぬ要因による情報漏洩の発生、悪意を持った外部からのクラウド環境の破壊等による情報の破損や滅失が発生した場合、当社グループが損害賠償責任を負う可能性や、クライアント企業からの信用失墜により当社グループの経営成績及び業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループが契約するクラウドサービス全てが同時にシステムエラー、人為的な破壊行為、自然災害等や当社グループの想定していない事象の発生により停止した場合や、コンピューター・ウイルスやハッカーの侵入その他の不具合等によりシステム障害が同時に生じた場合、又は契約が解除される等により全てのクラウドサービスの利用が継続できなくなった場合には、当社グループの経営成績及び業績に影響を与える可能性があります。
5.コンプライアンス体制(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループは、事業の推進並びに拡大に対して、コンプライアンス体制が有効かつ適切に機能することが重要であると認識しております。そのためコンプライアンスに関しては、総務人事部が主管となり毎月の全社会議における周知徹底を行うとともに、社内規程・規則を策定しております。また、当社グループは、経営体質の強化及び経営の透明性・健全性を一層向上させることを目的に、グループ・リスクマネジメント委員会を任意の委員会として設置しています。同委員会は経営基盤強化本部長を委員長とし、執行役員、Division Leader等の部署長、子会社役員により構成され、オブザーバーとして常勤監査役、内部監査室長が参加しています。リスクマネジメントに関する統括的監督機能を持ち、当社グループ全体の各種リスクに対する対応方針及び組織ごとのリスク対策について指示・監督等を行い、その状況を取締役会に報告しております。しかし、故意あるいは想定できない重大なコンプライアンス違反や法令違反があった場合、当社グループの社会的信用が低下し、当社グループの企業価値及び業績や事業に影響を与える可能性があります。
6.特定の売上先への依存(発生可能性:高、影響度:大)
当社グループが提供するサービスはクライアント企業に深く関与し、クライアント企業の変革を共に推進するという性質上、特定のクライアント企業に関連する売上金額が高まる傾向にあります。単一のクライアント企業でありつつも、複数の部門部署別での契約の締結や分野の違う案件の獲得などを行っておりますが、クライアント企業自体の業績悪化、カウンターキーパーソンの異動・転出、当社グループに対するクライアント企業内評価の変動等が発生した場合、当社グループの経営成績及び業績に影響を与える可能性があります。具体的には、当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、西日本旅客鉄道㈱1,049,843千円(43.8%)、㈱TRAILBLAZER 527,642千円(22.0%)、アサヒグループジャパン㈱284,596千円(11.9%)であります。
7.新規事業について(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループのプロダクト領域は、そのサービス特性から業界を横断してサービスを提供することが可能なビジネスモデルです。今後も、多種多様な業界向けに新サービス・事業の展開を推進してまいります。また同時に、プロダクト以外のサービスにおいても、将来の事業拡大に向けた投資を推進しております。これら拡大・推進に伴い、人的並びにシステム・ソフトウェアに対する投資の増加といった支出が追加的に発生する可能性があります。加えて、今後はM&Aの活用による非連続な成長を目指します。これらの将来に向けた積極的な投資・M&A活動により、利益率の低下を引き起こす可能性があります。また新規事業及び買収企業・事業の開始・拡大・展開が計画通りに進展しない場合、当社グループの経営成績及び業績に影響を与える可能性があります。
8.知的財産権(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループが、第三者の知的財産権を侵害する可能性につきましては、特許事務所と密な連絡体制をとることにより、調査可能な範囲で対応を行っております。しかしながら密な調査・把握をもってしても、当社グループが意図せず第三者の知的財産権を侵害してしまう可能性を完全に排除することは困難です。この場合、損害賠償請求や知財ロイヤリティ料金の支払等により当社グループの事業、企業価値及び業績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループの知的財産権に対する第三者による侵害に対しては、同種サービス・事業の継続的な調査・把握を行っております。しかしながら密な調査・把握をもってしても、当社グループの知的財産権に対する第三者による侵害を完全に予防することは困難です。この場合、知的財産権の保護が損なわれることにより当社グループの事業、企業価値及び業績に影響を与える可能性があります。
9.法的規制・制度の動向による影響(発生可能性:低、影響度:大)
当社グループが、データアナリティクスに用いているデータは個人が特定できない統計データであることに加え、データ収集・保管を行っているクライアント企業やデータ提供企業自身が顧客やデータ入手先よりデータ分析許諾を得たデータのみです。またデータの授受・分析環境への送信などにおいてはインターネットを用いることから、現在の関連する法律としては、個人情報保護法となりますが、現時点では当社グループが行う事業そのものを規制する法律・法令はありません。また、当社グループが扱うデータは前述の通り、個人を特定できないデータがほとんどでありますが、重要データとの認識に鑑み、個人情報保護に関するJIS Q15001(プライバシーマーク)の認証を取得しております。しかしながら、今後の法律・法令の変化や規制・制度の適用基準の変化、業界の自主的ルールの策定などが行われた場合、当社グループの事業、企業価値及び業績に影響を与える可能性があります。
10.特定の業務委託先への依存(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループの事業推進並びに展開に際しては、高度な技術力と不確定な要件からアジャイル的にプロジェクトを進めていく経験・知見が重要になります。そのため、当社グループは特定領域の専門家に業務を委託しております。複数の委託先への業務分散を推進しておりますが、特に高度な技能等が必要になる案件の増加により、必要な業務委託先を確保することができない場合、当社グループの経営成績及び業績に影響を与える可能性があります。
11.自然災害(発生可能性:低、影響度:大)
当社グループによる予測が不可能かつ突発的な、大規模な地震等の自然災害、事故、戦争などにより、当社グループの各事業所並びに従業員の自宅をはじめとした社会インフラが壊滅的な損害を被る可能性があります。このような自然災害に備え、強固なビルへの入居、従業員安否確認の連絡フロー整備、データのクラウド上での保存、食料等の備蓄等の準備並びに注意喚起を行っておりますが、想定を著しく超える範囲での損害の場合は、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの経営成績及び業績に影響を与える可能性があります。また当社グループが被災しない場合でも顧客企業や外部パートナー企業の被災により、間接的に損害を被る可能性もあります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、インバウンド消費の拡大や大手企業を中心とした賃上げをはじめとした雇用・所得環境の改善を背景に回復傾向がみられました。一方で、世界的な金融引締めや円安によるコスト負担増加・物価上昇もあり、景気の先行きは不透明な状況が続いています。そのような中、各企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は、データ活用による業務効率化やAIアルゴリズム実装に対する需要を高めていると考えております。また、日本政府による「Society5.0」の提唱やDX推進を目的としたデジタル庁の創設、生成AI等の技術革新・一般社会への普及等もあり、ビッグデータの活用やAIアルゴリズム技術等の社会実装を目指す機運がますます高まっております。
そうした流れの中で、当社グループのデータインフォームド事業が内包されるビッグデータアナリティクス(BDA)・テクノロジー市場、及びそれを含むAI市場は拡大し続けております。この中でも特に関連の深い国内ビッグデータ/アナリティクス市場は、IT専門調査会社 IDC Japan株式会社によると、企業のビジネスの可視化需要によるビジネスインテリジェンス(BI)市場の継続的拡大、データ活用環境整備に即した構造化データウェアハウス/非構造化データストア等の成長を背景として、2027年までの年間平均成長率(CAGR)は14.3%で、2027年には支出額が3兆541億円に達すると予測されています。(出典:2024年3月21日IDC Japan 国内ビッグデータ/アナリティクス市場 ユーザー支出額予測:産業分野セクター別、2022年の実績と2023年~2027年の予測)
このような環境の下、当社グループは「あらゆる判断を、Data-Informed(データインフォームド)に。」をパーパスとして掲げ、業績拡大を目指しております。当社グループの掲げる「データインフォームド」は、データを用いて論理的に考え合理的に判断することで、人間による意思決定の精度を高め、事業運営における再現性を高めることを狙いとしております。データインフォームドな判断をクライアント企業の各種業務に組み込むことで、業務における判断の精度が向上し、経営課題解決及び競争力強化が実現されます。当社グループは、このような“人間が判断の主体となる”ことを前提にしたデータ活用を推進する「データインフォームド市場(DI市場)」をターゲット市場と定義し、クライアント企業のニーズに合わせてDIコンサルティング・DIプラットフォーム・DIプロダクトの3つのサービス(総称:DIサービス)を柔軟に組み合わせて提供しています。
当連結会計年度においては、これまで注力してきた『「4つのケイパビリティ」と「3つのサービス」をベースにした一気通貫のサービス提供』、『既取引部門・取り組み中の領域におけるDIサービスの利用継続・拡大及び同社内の新規領域へのDIサービスの提供(縦横展開)』、『アセット活用の継続的な強化活動』等を継続しました。また同時に、中長期的な成長に向け、新規クライアント開拓及び協業型ビジネスの立ち上げや、顧客理解の深化によるサービスの高付加価値化等を通じ『ビジネスモデルの転換』を推進していくこととし、2024年7月にこれらを目的とした新組織も創設しました。加えて、成長加速に向けたM&Aにも注力しました。
具体的には、2024年10月には、ANAグループの新ブランド「AirJapan」を運航する株式会社エアージャパンに対し「レベニューマネジメント高度化伴走支援」サービスの提供を開始しました。行動データで顧客を理解するマーケティングツール「Mygru」においては、2024年8月に神戸市で導入された都市OSで提供される地域サービス「子育て支援スタンプラリー」に活用されたほか、日本航空株式会社の公式アプリ「JALマイレージバンクアプリ」上で展開するキャンペーンツールとして導入されました。さらに、2025年3月には、ユニバーサル ミュージック合同会社が実施したMrs. GREEN APPLE「MGA DIGITAL STAMP RALLY」にも「Mygru」が採用されるなど、エンターテインメント業界への展開も開始しました。本年3月には、これまで取り組んできた「Data-Informedを企業内に浸透させるための仕組み」に関する活動を、新たなフレームワーク「Adaptable Data System:ADS(アッズ:変化に適応可能な仕組み)」として再構築するとともに、より「顧客理解」領域に適用したサービス「顧客理解のためのADS=ADS for Customer Understanding:CU/ADS(クアッズ)」をリリースしました。インオーガニックな成長を目指したM&Aにおいても、2024年9月にフォトコンテストサービス「Camecon(カメコン)」を譲受しました。さらに、2025年4月には、主にシステム開発事業・労働者派遣事業を営む株式会社メイズの株式取得・子会社化を決定しました。
これらの効果があった一方で、大規模開発案件におけるコスト超過プロジェクトの発生に伴い、当該プロジェクトに割く工数が増加し、他プロジェクトへの投下工数が減少したこと等により、売上高は前期比では小幅な増収となりました。また、コスト超過プロジェクトの直接的・間接的影響が営業利益・経常利益を大きく押し下げることとなりました。加えて、「Camecon」サービスの事業譲受の際に発生したのれんにつき、想定顧客・ターゲット及び今後の事業計画を見直したうえで回収可能性について慎重に検討をした結果、第3四半期連結会計期間において減損損失を計上することとなりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は2,398,476千円(前期比13.3%増)、営業損失は99,659千円(前期は133,830千円の利益)、経常損失は101,164千円(前期は132,984千円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は99,975千円(前期は88,195千円の利益)となりました。
なお、当社グループはData-Informed事業のみの単一セグメントであることから、セグメントごとの記載を省略しております。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,873,027千円となり、前連結会計年度末に比べ353,589千円減少いたしました。これは、売掛金及び契約資産が228,163千円増加した一方で、現金及び預金が587,508千円減少したこと等によるものであります。固定資産は237,898千円となり、前連結会計年度末に比べ112,066千円増加いたしました。これは、投資有価証券が50,000千円、繰延税金資産が32,086千円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は、2,110,925千円となり、前連結会計年度末に比べ241,522千円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は250,116千円となり、前連結会計年度末に比べ55,268千円減少いたしました。これは、1年内返済予定の長期借入金が45,817千円減少したこと等によるものであります。固定負債は44,168千円となり、前連結会計年度末に比べ8,928千円増加いたしました。これは、資産除去債務が8,928千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は、294,284千円となり、前連結会計年度末に比べ46,340千円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は1,816,640千円となり、前連結会計年度末に比べ195,182千円減少いたしました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純損失99,975千円及び剰余金の配当114,754千円によるもの等であります。
この結果、自己資本比率は83.7%(前連結会計年度末は84.1%)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ587,508千円減少し、1,184,841千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は319,688千円(前期は62,514千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失を123,247千円計上したこと及び売掛金及び契約資産の増加が228,163千円あったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は107,434千円(前期は14,407千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出50,000千円及び有形固定資産の取得による支出32,393千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は160,384千円(前期は50,074千円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額114,525千円等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループはData-Informed事業を営んでおり、該当事項はありません。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績を示すと、次のとおりであります。なお、当社グループはData-Informed事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
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当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
|||
|
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
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2,453,758 |
110.6 |
637,579 |
109.5 |
(注)金額は販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績を示すと、次のとおりであります。なお、当社グループはData-Informed事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
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当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
2,398,476 |
113.3 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
||
|
金額 (千円) |
割合 (%) |
金額 (千円) |
割合 (%) |
|
|
西日本旅客鉄道㈱ |
1,121,143 |
52.9 |
1,049,843 |
43.8 |
|
㈱TRAILBLAZER |
139,400 |
6.5 |
527,642 |
22.0 |
|
アサヒグループジャパン㈱ |
452,361 |
21.4 |
284,596 |
11.9 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
③資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状況を目指し、安定的なキャッシュ・フローの創出に努めております。運転資金需要のうち主なものは、当社グループのサービス提供のための人件費や外注費等の営業費用によるものの他、納税資金等であります。運転資金は、手持資金、銀行借入及び新株発行により資金調達を行っております。今後も事業活動を支える資金調達については、低コストかつ安定的・機動的な資金の確保を主眼にして多様な資金調達方法に取り組んでまいります。なお、事業拡大に伴う研究開発投資の増大や人件費投資の増大といった多額の先行投資が見込まれる場合、これら資金需要に対応するため、自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で調達することを予定しております。
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠し作成しております。この財務諸表作成における見積りにつきましては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で行われている部分があります。これらの見積りにつきましては、継続して検証し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがあります。なお、この財務諸表の作成に関する重要な会計方針につきましては「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
⑥経営者の問題意識と今後の方針について
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
⑦経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、売上高の成長と利益ボラティリティの抑制を可能とする体制の構築を推進しています。この実現に向け、3種類の指標を開示することといたします。
a.単体売上高:年間取引高区分別顧客・売上構成
b.単体コア営業利益率:費用内訳・1人当たり売上高情報
c.子会社売上高:各プロセス実施件数
これらの指標の推移は以下の通りです。
|
各種指標 |
前連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
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a.単体売上高: |
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年間取引高区分別顧客(社)、売上構成 |
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A区分(1億円以上) |
3社 (84%) |
3社 (81%) |
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B区分(10,000千円以上1億円未満) |
7社 (13%) |
13社 (14%) |
|
C区分(10,000千円未満) |
45社 (4%) |
65社 (5%) |
|
b.単体コア営業利益率: |
|
|
|
費用内訳・1人当たり売上高情報 |
|
|
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社内人件費売上高比率 |
17.5% |
24.6% |
|
外注費売上高比率 |
40.4% |
38.3% |
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1人当たり売上高(期末のフロント人員数で算出) |
46.7百万円 |
33.0百万円 |
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c.子会社売上高: |
|
|
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各プロセス実施件数 |
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IM(情報取得) |
54件 |
86社 |
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TOP面談 |
3社 |
13社 |
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LOI(意思表示) |
1件 |
5件 |
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クロージング |
1件 |
1件※ |
※ただし、2025年4月に、株式会社メイズの株式譲受について2025年10月にクロージングすることを決定済み
a.単体売上高:年間取引高区分別顧客・売上構成
当社単体の売上高を拡大するために必要な一気通貫支援の実現やクライアント企業内における縦横展開(部内展開・社内展開)の推進等により、クライアント単価の上昇・取引高の高いクライアントの増加を目指します。なお、協業提携先を介した取引の場合は、エンドクライアントを「取引先」としてカウントすることとします。
当連結会計年度においては、新規クライアントの開拓をミッションとして持つ専任組織を立ち上げました。加えて、既存クライアントとの関係強化にも注力したことにより、B区分のクライアントを増加させながら、同時にC区分のクライアントを大幅に増加させることができました。これを足掛かりに、翌連結会計年度においてはさらにA区分・B区分のクライアントを増やしていく予定です。
b.単体コア営業利益率:費用内訳・1人当たり売上高情報
当社単体のコア営業利益(事業活動により生み出される本業の営業利益)を拡大させるために、各費用が適正な水準となるようコントロールすることで、単体コア営業利益率を確保する方針としております。具体的には、当社がこれまで培ってきたアルゴリズムや「ゾクセイ」といったアセットを活用することにより生産性を改善してまいります。その指標として、社内人件費・外注費の売上高比率を四半期単位で継続的に把握するとともに、1人当たり売上高の改善を目指します。
当連結会計年度においては、主に中途採用を推進したことにより一時的な社内人件費比率の上昇・1人当たり売上高の低下が発生しております。これについては将来的な売上高拡大、採用者の育成・成長による貢献度上昇により、社内人件費比率の低下・1人当たり売上高の上昇が可能と考えております。また、外注費比率につきましても、前連結会計年度から大きく改善しておりませんが、今後コスト統制を強化することによる低減を目指します。
c.子会社売上高:各プロセス実施件数
子会社の売上高の拡大を目指してM&Aを強力に推進してまいります。すでに社内には専門のM&Aチームを立ち上げており、常に複数の案件を精査・検討しております。
当連結会計年度におきましては、前連結会計年度の1.5倍以上の案件を検討したうえで、フォトコンテストサービス「Camecon」の事業譲受をクロージングし、また、2025年10月に株式会社メイズの株式を取得することについても決定しております。
なお、当該指標に関する有限責任監査法人トーマツの監査及びレビューは受けておりません。
(株式取得による子会社化)
当社は、2025年4月25日開催の取締役会において、株式会社メイズの全株式を取得し、子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
当社グループは、既存サービスの発展や顧客ニーズに対応するため技術面における研究開発に取り組んでおります。特に、最先端技術の当社サービスへの適用検討や研究論文の実務への応用可能性の探求といった基礎研究要素の強い開発活動を行っております。また、より質の高いデータ分析業務の提供を目的にデータ分析業務の効率化に通じる開発活動及びプロダクトの機能追加開発も進めており、これら研究開発の結果、すでにクライアント企業へのサービス提供に役立てられております。これら研究開発活動は当社グループ従業員のほか、専門性の高い業務委託先との連携によって行われております。当社グループの研究開発活動の金額は、
なお、当社グループはData-Informed事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。