第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものになります。

(1)経営方針

 当社は、「魔法のような、新体験を。」というコーポレート・ミッションを掲げており、今までにない新しいエンターテイメントの体験を世の中に提供することを目的に、VTuberグループ「にじさんじ」の運営等のサービス展開を行っております。

 

(2)経営環境

① VTuberグループとしての特徴

 当社の強みはVTuberによるライブ配信におけるVTuberとユーザーとの双方向のコミュニケーションを通じて培うVTuberとユーザーとのファンコミュニティであると考えています。当社のVTuberビジネスにはその特性上、以下に掲げる3つの強みがあると考えております。

1.当社ではVTuberのイラスト、キャラクターを会社がデザイン・設定し、VTuberのIPを会社が保有しております。会社がIPを保有することで、IPを活用したコマース領域やプロモーション領域への展開のしやすさや、ライバーの高い活動継続率などといった安定的な事業体制につながっております。

2.バーチャル世界においては現実世界における知名度を活かすことができず、バーチャル世界における知名度が重要となると当社では考えております。有名キャラクターや芸能人が一時的にVTuberビジネスを開始することは予想されるものの、グループとして成功する上では、ライブストリーミングを通じて獲得したファンとライバーとの間の関係性は他社の参入障壁となると考えております。

3.VTuberはバーチャルキャラクターであるため、ライバーの現実世界における制約(性別、職業、国籍等)を受けることなく配信が可能です。また、定期的なコンプライアンス研修の実施や動画内容のパトロールを行うことでコンテンツの健全性を確保し、炎上の発生を抑えることに繋がると考えております。

 

② 当社の業績について

 当社は、VTuberグループ「にじさんじ」の運営を起点として、ライブストリーミング領域、コマース領域、イベント領域、プロモーション領域を展開しており、VTuberをライブストリーミングにとどめることなく活動領域の拡大に取り組んで参りました。

 所属VTuber数の増加とサポート体制の拡充を両立することで、「にじさんじ」のファン数が着実に増加し、それによりコマース領域が大きく伸長しております。また、VTuberの活動の幅の拡がりと共に認知度も高まることで、「にじさんじ」に企業案件を依頼いただける顧客企業が増加し、プロモーション領域も大きく伸長しております。このようにコマース領域とプロモーション領域が中心となって、売上高の成長を牽引しております。

 また、当社の営業利益率についても改善傾向にありますが、当社が計上している売上原価のうちには、デザイナー、エンジニア、映像制作等の原価的な性質を持つ人件費や外注費の一部や配信スタジオの賃料等といった、必ずしも売上高の成長に比例して増加するとは限らないコストも含まれております。また、販売費及び一般管理費に含まれるコストも、営業、事業開発、経営管理等の原価項目以外の人件費、地代家賃等をはじめとして売上高の成長に比例して増加するとは限らないものが大半となります。

 

③ 当社所属VTuberとファンコミュニティについて

 約150名のVTuberで構成されるVTuberグループ「にじさんじ」では、各VTuberの動画配信を視聴したユーザーとの間で、他の「にじさんじ」所属VTuberの動画配信の視聴やコマース領域、イベント領域及びプロモーション領域を通じた接点を持つこと等により、当該ユーザーの「にじさんじ」のファンとしての定着を図っております。また、当社の新人VTuberは「にじさんじ」グループの一員としてデビューすることで、「にじさんじ」の既存ファンコミュニティを活用して、ファンを獲得することが可能となっております。

 

VTuberはキャラクターとしての魅力に加えて、ライバーと配信を通じたコミュニケーションを通じて各VTuberそれぞれがファンとの関係を築いていくという特徴があると考えております。また、当社は特定のVTuberへの依存が低いと認識しており、幅広いVTuberの活動に支えられて運営を行っております。それは収益分散状況に表れていると考えており、2024年4月期売上高のうち、約30%はTOP10のVTuberにより獲得された収益であり、約50%はTOP30のVTuberにより獲得された収益となっております。こうした収益の分散状況から、仮に特定のVTuberが卒業をすることになったとしても収益基盤への影響が限定的であり、当社事業の継続性・安定性は高いと考えております。

 

④ VTuber市場の更なる成長可能性

 VTuber市場は、誕生から間もない市場であり、VTuberの活動の幅の拡大に合わせて、アクセス可能な市場規模は今後も拡大していくと当社は考えております。VTuberは、2016年12月頃より、バーチャルな存在として活動するYouTuberを呼称する用語として用いられるようになった言葉であり、2017年には主に個人で活動するVTuberが多く生まれました。当社がVTuberグループ「にじさんじ」の活動を開始したのは2018年2月で、2018年以降は当社のように個人ではなくグループとして活動するVTuberが増加した時期であり、また、既存キャラクターのVTuber化や企業の広報宣伝を目的としたVTuberが誕生する等、VTuberはその活動を多様化していきました。こうした発展を背景に、日本国内のVTuber市場の規模は2023年度に800億円と見込まれており、2020年度からの年平均成長率は77%となっております(注1)。

より長期的なビジョンでは、VTuberの活動を拡げることでアニメ業界を中心としたエンターテインメント業界の広大な市場を開拓していくことを目指してまいります。ライブストリーミング領域においては、既存のYouTube配信やアニメの配信市場(1,652億円(注2))が類似した市場であると考えており、その一部を置き換えうると考えております。同様に、コンテンツ販売においては国内アニメ市場のグッズ販売市場(6,693億円(注2))を、イベントは国内アニメ市場のライブ市場(972億円(注2))の一部を置き換えうると考えております。また、プロモーション領域においては、日本の動画広告市場(6,253億円(注3))の一部を置き換えうると考えております。加えて、今後VTuberが活動領域を拡げることで、更にアクセス可能な市場は拡がっていくと考えております。例えば足元ではVTuberが歌手デビューを通じて、国内の音楽市場にアクセス可能となっているほか、VTuberがTVに出演する機会も増えていることから、今後リアルとバーチャルにおける芸能人/タレントの垣根がなくなっていくことで、VTuber市場が更に拡大する可能性があるものと考えております。

 

(注)1.株式会社矢野経済研究所「2023年 VTuber市場の徹底研究 ~市場調査編~」

2.一般社団法人日本動画協会「アニメ産業レポート2023」

3.株式会社サイバーエージェント「サイバーエージェント、2023年国内動画広告の市場調査を発表」

 

 

(3)中長期的な経営戦略等

 当社は中長期的な経営戦略として、引き続きVTuberの育成・デビューに取り組むとともに、エコシステムの強化を通してVTuber1人あたりの収益を拡大することを基本戦略としており、以下のような取組みを通じて①事業基盤の強化、②継続的なVTuberの輩出、③VTuber当たり収益の拡大を目指してまいります。

 

① 事業基盤の強化

 当社では新規VTuberのデビューに加えて、既存VTuberの強化やユニットプロデュースの促進に合わせ各領域での人的リソースを強化してまいります。当社事業に必要な人材例としては、VTuberの活動をサポートし、出演するリアルライブをVTuberと一緒に作り上げるタレントマネージャー、デザイン力×自社IPによって、ファンの方々へ質の高いコンテンツをデザインするイラストレーター、ライバーの3D配信や、社内外含む大型イベントに使用する3Dのキャラクターモデル、もしくは小物・背景を制作する3Dモデルデザイナー、スタジオにて配信/収録業務の映像、音声オペレーションを担当するスタジオエンジニアなどが挙げられます。当社では採用広報の強化など組織的に採用戦略を展開することで、VTuberを支える会社基盤を強化してまいります。

 また、当社では2024年秋に配信スタジオへの設備投資を行うことを計画しており、新スタジオは面積規模をこれまでの3倍の規模に拡張し、VTuberの人数増加や、多様なコンテンツ制作ニーズに対応してまいります。新スタジオでは、様々な用途で活用可能な2D/3Dスタジオ、レコーティングスタジオ、個人配信ブースといった各種のスタジオ機能をこれまで以上の規模・クオリティに拡充し、配信コンテンツ、音楽、イベントなどの領域で魅力的なコンテンツの提供を実現いたします。

② 継続的なVTuberの輩出

 当社では所属VTuberの活躍を通じて「にじさんじ」のファンコミュニティが拡大することで、「にじさんじ」というプラットフォームで活動を希望するライバー候補者の人数が増加し、それがより魅力的な才能に出会える可能性の最大化に繋がると考えております。

 当社は、2021年6月にバーチャル・タレント・アカデミーと呼ばれるVTuberの養成所を開設しております。ライバー候補の方々をVTuberとしてデビューさせる前段階において、配信トレーニング、ボイス・歌唱トレーニング、ダンス・モーショントレーニング、ファンとの向き合い方、動画編集・スタジオ活用能力の強化等、個々人が希望する活動の方向性等を加味しながら、能力の育成に努めております。バーチャル・タレント・アカデミーでは継続的なVTuberの輩出に向けた幅広い才能を集めるオーディションを定期的に開催しており、年間で50人から60人程度の候補生を選抜しております。また、よりユニークな才能を持ったVTuberの輩出に向けた通常とは異なるオーディションも開催しており、長期的な視点から、現在所属するVTuberとは異なるファン層の開拓に繋がり得る人材を発掘することも目指しております。

 

③ VTuber当たり収益の拡大

 当社ではユニットプロデュースの展開と成長を通じて、業界を牽引するようなTop VTuberへの投資と育成を行っております。ユニットプロデュースとは複数人のVTuberでVTuberユニットを組成し、VTuber個人としての活動に加えて、当該ユニットでの音楽コンテンツ、グッズ、ライブイベント、YouTubeでの番組コンテンツなどを提供するものです。多様なVTuberが所属する当社の強みを活かしたユニット展開を加速し、既存ユニットの成長と新規ユニットの輩出を通してファンコミュニティのさらなる拡大を目指してまいります。ユニット活動では、VTuber同士の掛け合いなどから新たな方向性や特徴が生まれることで従来とは違うファン層の開拓に繋がると考えております。

 また当社では、コマース領域での企画充実による各VTuberのファンコミュニティ拡大、スケジュール管理による機会損失の回避と販売機会の拡大を図るため、ファンコミュニティが求めるアイテムをより幅広く企画・供給出来る体制を整備しております。具体的には、①製品の企画・製造ラインを拡大し、ニーズのある製品を毎月安定的に供給できる体制を構築すること、②適切な販売スケジュールの管理を行い、製品リリースのタイミング等を適切に管理し機会損失を低減すること、③時流に合わせた商品企画を行い、ファンがより求める新製品や高品質な製品の企画・提供することを通じて、コマースのポテンシャルを最大化し、VTuber当たりの売上を拡大してまいります。

 

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社のコーポレート・ミッションの実現及び持続的な成長と企業価値向上を表す指標として、売上高、各領域別売上高、営業利益、営業利益率を経営上重要な指標として位置付けております。また、売上高の拡大には、にじさんじVTuber数、ANYCOLOR ID数の拡大が必要であると考えております。以下では、当社のサービス別の売上高推移と営業利益を掲載しており、これらは多様な収益基盤を軸とした成長性と収益性の拡大を示していると当社では考えております。

 

領域別業績と営業利益の推移

(単位:千円)

 

 

2021年4月期

2022年4月期

2023年4月期

2024年4月期

売上高

7,636,041

14,164,140

25,341,711

31,995,554

ライブストリーミング領域

2,464,063

3,710,255

5,074,234

4,993,539

コマース領域

3,363,513

7,162,421

14,247,400

18,937,365

イベント領域

602,302

785,559

1,600,210

1,906,571

プロモーション領域

1,037,759

2,304,140

4,048,748

5,884,578

その他領域(注1)

168,400

201,762

371,117

273,499

営業利益

(営業利益率)

1,452,015

(19.0%)

4,191,075

(29.6%)

9,410,018

(37.1%)

12,361,867

(38.6%)

 (注)1.その他領域には中国でのVTuberビジネス等を含んでおります。

2.当社が2024年6月12日に公表した「中期的な成長に向けた経営方針」に基づき、当期において各事業領域への集約を行っており、各領域には国内、英語圏、韓国、インドネシアにおける売上高を含めて表示しております。

 

KPIの推移

 

 

2021年4月期

2022年4月期

2023年4月期

2024年4月期

VTuber数(日本・英語圏)

(名)

103

129

156

158

ANYCOLOR ID数

(万アカウント)

22

53

93

126

 

(5)優先的に対処すべき事業上の課題

 当社の優先的に対処すべき主な課題は以下のとおりであります。なお、優先的に対処すべき財務上の課題はございません。

① サービスの健全性の確保

 当社では、健全なコンテンツを発信していくことが、中長期的にはファンや顧客企業の獲得・蓄積に資すると考えており、当社に所属するライバーに対するコンプライアンス研修やコンテンツ管理に注力しております。また、SNS等の普及により、インターネット上でのクリエイターに対する誹謗中傷等が社会的に問題となっております。当社では、所属するライバー等をそうした脅威から保護するための体制の強化を進めてまいります。

 

② サービスの認知度向上

 当社が今後も高い成長率を持続していくためには、VTuber及び「にじさんじ」の認知度を向上させ、継続的に新規ファンを獲得していくことが必要不可欠であると考えております。これまでの活動を通じて、10代後半から20代前半の方々を中心に主には若年層の方々の間で一定の認知が広がってきているものの、更に幅広い層のファンを獲得するために、SNSを中心としたマーケティングや広報活動の拡充を推進してまいります。

 

③ ライバーの発掘と育成

 当社にとって、所属するライバーの育成と、新規でのライバーの発掘は事業上の根幹をなすものとなっております。当社は現在所属しているライバーに向けて、動画やコンテンツの制作に係る支援や企業案件の獲得、視聴者やファンの増加のための各種サポートを引き続き一層強化するとともに、VTuberの世界観やキャラクターデザインの改善等、様々な取り組みを継続してまいります。また、未来のライバーの発掘や育成のために、これまでに実施しているオーディションの形に捉われず、様々な可能性を追求してまいります。

 

④ 新技術への対応

 当社は、技術の発達によりエンターテイメントにおける新たな方法による表現が可能になり、ファンの方々に提供できる体験を進化させることができるという認識のもと、新技術への対応を適時に行うことが重要な課題であると考えております。したがって、当社では、VRやAR等を含む、近年において次々と登場する新技術に対応すべく、必要な対応や投資を積極的に行ってまいります。

 

⑤ 優秀な人材の採用と育成

 当社の継続的な成長には、事業拡大に応じた優秀な人材を採用するとともに、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。当社のコーポレート・ミッションに共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が働きやすい環境の整備や人事制度の構築を行ってまいります。また、採用後も、当社で存分に力を発揮することを後押しするために、業務を通じたトレーニングの他、研修制度等の充実にも努めてまいります。

 

⑥ 海外市場の開拓

 当社では現在、英語圏及び中国を中心に海外でもVTuberビジネスを展開しておりますが、これらの地域におけるVTuberの普及は発展途上の段階であり、積極的に事業拡大を図っていく中で、海外におけるVTuberの浸透に努めてまいります。また、現在進出していない国・地域におけるVTuberビジネスの可能性についても、継続的に検討してまいります。

 

⑦ 情報管理体制の強化

 当社では、所属ライバーや顧客に関する個人情報を保有しており、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。今後も社内規程の厳格な運用や、役職員に対する定期的な社内教育の実施、情報セキュリティシステムの整備等に取り組み、一層の情報管理体制の強化、徹底を図ってまいります。

 

⑧ 内部管理体制の更なる強化

 当社の更なる成長のためには、業務の効率化や、事業の規模やリスクに応じた内部管理体制の更なる強化が重要な課題であると認識しております。今後も、事業上のリスクを適切に把握・分析したうえで、リスク管理規程やコンプライアンス規程等の改定、社内教育の充実等を通じて、適正な内部管理体制の整備に取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社は、サステナビリティを巡る課題への取組を推進することが、収益機会の拡大及びリスクの減少につながり、中長期的な企業価値の向上に資するという観点から、人類、社会、経済、地球環境の持続可能性という文脈で、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めております。

当社では、原則週1回以上、代表取締役、常勤取締役、常勤監査等委員及び各事業領域を所管する執行役員、その他代表取締役が必要に応じて選任する役職員で構成される経営会議を開催し、サステナビリティを巡る課題の把握及びサステナビリティ推進のための各施策を迅速に協議しております。

 また、取締役会においては、代表取締役田角陸をサステナビリティに関する経営判断の最終責任者とし、定期的にサステナビリティを巡る課題への対応について審議を行うこととしております。

 

(2)戦略

当社は、サステナビリティ関連のリスクとして、インターネット上での誹謗中傷をはじめとしたインターネットサービスに係る人権侵害を特に重要なものとして認識しております。

当社がインターネットを通じて新しいエンターテインメント・コンテンツを提供するうえで、コンテンツ提供者であるクリエイターに対する誹謗中傷は、クリエイターによる活動を妨害し、当社コンテンツの流布を阻害するものであります。

また、インターネットサービスに係る人権侵害は、大きな社会問題として認識されており、これに対する有効な対応策を講じなければ、文化の発展そのものが停滞することにもなりかねないものと認識しております。

 このように、当社は、当社にとっての上記リスクへの対策が、社会的な課題解決に直結するものとして、上記リスクをサステナビリティ関連の重要なリスクとして位置づけており、各種の対策を実施することとしております。

 具体的には、このリスクに対応するために社内に「攻撃的行為及び誹謗中傷行為対策チーム」を設置、当社の発信力を活用したインターネットサービスに係る人権侵害に対する啓発活動、ステークホルダーとの連携を通じた問題解決に向けた情報の共有、有効な法的措置の検討及び実施といった取組を推進しております。

 

 当社の人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

 当社は、バリューの一つとして「思いやりで、向き合う。」を掲げており、当社事業に関わり、様々なバックグラウンドを持つすべての人が互いに敬意を払うことで、それぞれの能力と熱意を引き出していくことを基本的な価値観としながら、サステナビリティの推進を強く意識した人材育成及び社会環境整備に関する制度を拡充しております。

 具体的には、社員表彰制度の採用、役職員のキャリアコース選択制度の採用、コンプライアンスや情報セキュリティをはじめとする全従業員に対する複数種類の研修の実施、フレックスタイム制の採用、育児休暇取得をはじめとする制度的休暇の取得の奨励、食費手当制度、社内規程に基づく副業の認可等を行っております。

 

(3)リスク管理

 当社は、コーポレート・ガバナンスの強化を図りながら、サステナビリティ関連のリスクの管理を取締役会主導で実施しております。取締役会やコンプライアンス委員会を通じて発見・分析されたサステナビリティ関連のリスクは、経営会議にも共有され、当該リスクに関連する部門の執行役員が具体的にその対応を実施しており、必要に応じて取締役会への報告も行われております。

 

 

(4)指標及び目標

 当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する実績を評価する指標及び目標を具体的に定めておりませんが、当社がサステナビリティ関連のリスクとして特に重要と認識するインターネット上での誹謗中傷をはじめとしたインターネットサービスに係る人権侵害については、「攻撃的行為及び誹謗中傷行為対策チーム」による活動実績(法的措置の件数等)を定期的に報告することとしております。

 その他のサステナビリティ関連のリスク及び機会に関する実績を評価する指標及び目標についても、今後その精緻化を図ってまいります。

 また、当社は、人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針における指標及び目標については、上記(2)において記載した戦略の実施を通じ、サステナビリティを推進するうえで適切な指標及び目標を見定めてまいります。

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、以下のようなものがあります。

 当社では、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

(特に重要なリスク)

① 他社が運営している動画配信プラットフォームへの依存について

 当社のライブストリーミング領域はYouTube等の他社が運営する動画配信プラットフォーム上において、サービスを提供しております。しかしながら、当社が動画配信プラットフォームの運営会社の利用規約等に違反すること等に起因して先方との契約関係が終了し、当社のサービスが当該動画配信プラットフォーム上で展開できなくなった場合、または当該動画配信プラットフォームが利用者の減少により、動画配信媒体としての価値が低下した場合には、当社事業にも影響が生じ、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がある、特に重要なリスクと認識しておりますが、顕在化のリスクは高くないと認識しております。

 当社では、動画配信ビジネス以外にも、コンテンツ販売やイベント等を通じて、動画配信プラットフォームのみに依存することなく、ファンの蓄積や収益の確保に努めており、当社の収益全体に占める動画配信ビジネスの比率は過度に高い状況にはないと認識しております。また、単一のプラットフォームのみに依存することなく、ファンをSNS等の様々な箇所に蓄積しており、動画配信プラットフォームを移行する等の対応も可能な体制となっております。

 

② 人気VTuberへの依存について

 当社が運営するVTuberグループ「にじさんじ」はグループとしてのデビューに加え、ライブ配信においてVTuberとのコミュニケーションを通じたユーザーとの絆を深めることで、特定のVTuberへの依存が低いと認識しており、幅広いVTuberが多くのファンによって支えられています。一方でコンテンツ・IPサービスを展開しているうえで、人気VTuberへの依存、新規人気VTuberを生み出せないリスク等は常にリスクとして認識しており、当社の強みを生かして安定的にVTuberを増加させるとともに、ファンコミュニティの熱量を維持しつつ拡大していくことを目指します。

 人気VTuberのライバーが活動を休止・停止した場合や、スキャンダルや炎上によりVTuber活動に影響が生じた場合、当社がマネジメント戦略上の理由でVTuber活動を抑制した場合、ライバーとの間での業務委託契約はその期間が限定されており、毎回更新できる保証はなく、上記のような人気ライバーとの業務委託契約が更新に至らなかった場合、新規の人気VTuberを生み出すことができなかった場合等には、当社又は「にじさんじ」のレピュテーションや、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、特に重要なリスクと認識しておりますが、顕在化のリスクは高くないと認識しております。

 当社では、VTuberの活動を幅広くサポートしており、ライバーの方々に安心して活動していただける体制の構築に努めております。また、ライバーは「にじさんじ」所属VTuberとしての活動を当社から独立して行うということは困難であり、現在までの「にじさんじ」VTuberの引退は少数となっております。

 

③ 動画内容に不適切な内容が入ることによるレピュテーションリスク

 当社では所属するライバーに対して公序良俗の違反や知的財産権の侵害につながるような動画配信や活動をしないよう指導に努めております。また、第三者からの指摘等により所属ライバーが不適切な活動を行っていることを認識した場合はすみやかに対処するように努めております。しかしながら、当社の対応が不十分だった場合には、当社や所属ライバーのレピュテーション低下や訴訟、訴訟に至らないまでも紛争につながることで、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がある、特に重要なリスクと認識しておりますが、顕在化のリスクは高くないと認識しております。

 当社では、健全なコンテンツを発信していくことが、中長期的にはファンや顧客企業の獲得・蓄積に資すると考えており、当社に所属するライバーに対するコンプライアンス研修やコンテンツ管理に注力しております。当社では引き続き、当社や所属するライバーを不適切な内容の動画を配信することによるレピュテーション低下から保護するための体制の強化を進めてまいります。

 

 

(重要なリスク)

(1)事業環境に関するリスク

① インターネット環境等について

 当社事業は、主としてインターネットを通じてサービスを提供しております。近年におけるスマートフォンやタブレット型端末機器の普及等を背景として、一般ユーザーのインターネット利用環境は継続的に整備が図られ、インターネット上で提供されるサービス及びその利用は拡大傾向にあります。

 しかしながら、将来において、インターネット利用にかかる規制強化、利用料改定等を含む通信事業者の動向の変化、急速な技術革新が生じた場合、一般ユーザーのインターネット利用動向やその在り方に重大な変化が生じた場合、また当社においてこれらの外部環境変化への対応に支障が生じた場合は、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② VTuber業界の成長性について

 当社の主軸であるVTuberビジネスは、コンテンツ市場の一端を成すものであり、特に事業の特性やファン層の類似性等の観点から、アニメ市場と密接に関連する市場であると考えており、これら市場の動向に影響を受ける可能性があると認識しております。

 当社では、インターネットの普及を通じて、コンテンツを制作するクリエイターと、それを体験するユーザーの垣根がなくなってきていること、SNS等を通じてクリエイターとユーザーでの間やユーザー相互のコミュニケーションの文化が醸成されてきていること等といった背景から、VTuber市場に潜在的に大きな成長可能性があると考えております。

 一方で、当社の事業領域については、比較的新しい市場であることや市場自体が成長途上にあると考えられること等から、現時点においては当該市場の定義が確立されたものにまで至っておらず、今後も定義や形を変えながら進化していくものと考えております。昨今では、未成年者による高額課金が問題となっておりますが、当社は配信動画概要欄・弊社ホームページにおいて未成年者に向けて注意喚起文を掲載し、国民生活センターとも連携しながら当該問題へ対応しております。

当社は、市場の変化に応じた事業展開を推進していく方針ではありますが、今後において規制導入やその強化、業界におけるトラブル等による信頼性の毀損、その他の要因により当該市場の成長に支障が生じた場合、当社事業にも影響が生じ、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、製品・サービス分野における消費動向は、経済環境や社会情勢等に強く影響を受ける可能性があり、景気動向や雇用情勢、税制、災害その他により個人消費や企業の広告出稿等に著しい影響を及ぼす事象が生じた場合、当社事業にも影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 競合他社の動向について

 当社が事業展開するVTuber市場においては、現在までにVTuber専業企業に加えて、ゲーム会社等のエンターテイメント企業、動画配信プラットフォーム企業、タレントマネジメント企業等の多くの企業が事業を展開しており、市場の競争環境は厳しさを増しております。

 当社はこれまでに培ってきたライバーへの各種活動のサポートやVTuber市場における「にじさんじ」ブランドの継続的な拡大を行ってきております。また、既存キャラクターやタレントの活用ではなく、ライバーをプロデュースすることにより、事業を拡大してきており、動画配信に限らずコンテンツ販売やイベント開催、企業案件の獲得等、多岐に渡るサービスを展開している点は当社の強みであり、ゲーム会社等のエンターテイメント企業、動画配信プラットフォーム企業、タレントマネジメント企業等の潜在的な競合企業やアニメ等の他の動画コンテンツとの差別化に繋がると考えております。

 しかしながら、当社のこうした取り組みが予想通りの成果をあげられない場合や、より魅力的・画期的な特徴を持つサービスを展開する競合他社の出現により、当社が展開するサービスからのファンの離反等が生じる場合には、当社事業にも影響が生じ、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2)事業内容に関するリスク

① Google LLCとの契約について

 当社はGoogle LLCとの契約に基づき、当社が同社に対し、当社が管理する動画コンテンツの利用許諾を行う一方で、当社は、同社から提供されるツールを使用して、YouTube上において当該コンテンツを管理し、当該コンテンツから生じる収益の一定料率分を受領しております。

 当該契約は1年間の契約期間で、30日前の終了通知がない限り、さらに1年間自動更新されることになっております。現時点で当該契約が解除になる事由は発生しておりませんが、当該契約が終了する契機は、当社の破産等の債務超過、事業の譲渡等による事由、当該契約条項で秘密保持や保証違反等の重要な条項違反があり、また、両当事者ともに30日前に通知することで中途解約することができるとされております。

 当該契約が解除された場合には、当社事業にも影響が生じ、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 海外展開について

 当社では現在、英語圏及び中国を中心に海外でもVTuberビジネスを展開しておりますが、これらの地域におけるVTuberの普及は発展途上の段階であり、積極的に事業拡大を図っていく中で、海外におけるVTuberの浸透に努めております。また、現在進出していない国・地域におけるVTuberビジネスの可能性についても、継続的に検討しております。

 しかしながら、こうした国及び地域におけるVTuberの普及は不確実性を伴うものであり、また言語、地理的要因、法制度・税制度を含む各種規制、経済的及び政治的不安、文化・ユーザーの嗜好や商慣習の違い、為替変動等の様々な潜在的リスク、事業展開に必要な人材及びライバーの確保の困難性、及びそれぞれの国・地域において競争力を有する競合他社との競争リスクが存在します。当社がこのようなリスクに対処できない場合、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 新規ビジネス開発について

 当社ではVTuberビジネスに次ぐエンターテイメントビジネスとしてVTuberに限らず、「魔法のような、新体験を。」顧客に提供すべく、事業活動を行っております。今後もエンターテイメントの新たな可能性を信じて、積極的にまだ世の中にないようなエンターテイメントを創造し、そうしたサービスを事業上の軸となるよう、成長させていくことに努めております。

 しかしながら、新規ビジネスの立ち上げと拡大については、既存ビジネスよりもリスクが高いことを認識しております。入念な市場分析や事業計画構築にも関わらず、予測とは異なる状況が発生し、計画通りに進捗しない場合には、投資資金を回収できず、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 技術革新について

 当社は、技術の発達によりエンターテイメントの新たな表現が可能になり、ファンの方々に提供できる体験を進化させることができるという認識のもと、新技術への対応を適時に行うことが重要な課題であると考えております。したがって、当社では、VRやAR等を含む、近年において次々と登場する新技術に対応すべく、必要な対応や投資を積極的に行ってまいります。しかしながら、当社が展開する事業領域の技術が革新的に変化し、当社がその潮流についていくことができなかった場合や対応に想定以上のコストを要するような場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ システムトラブルについて

 当社の事業は主としてインターネットを介して提供されており、そのサービス基盤はインターネットに接続するための通信ネットワークに依存をしております。当社では、安定的なサービス運営を行うために、サーバー設備等の強化や社内体制の構築を行っております。しかしながら、システムへの一時的な過負荷や電力供給の停止、ソフトウエアの不具合、コンピュータウィルスや外部からの不正な手段によるコンピュータへの侵入、自然災害、事故等、当社の予測不可能な要因によってシステムがダウンした場合や、当社のシステム外でユーザーのアクセス環境に悪影響を及ぼす事象が発生した場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制等に関するリスク

① 個人情報管理について

 当社では、所属するライバーや顧客に関する個人情報を保有しており、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。今後も社内規程の厳格な運用や、役職員に対する定期的な社内教育の実施、情報セキュリティシステムの整備等に取り組み、一層の情報管理体制の強化、徹底を図ってまいります。しかしながら、万が一に情報が漏洩した場合には、損害賠償費用の発生、社会的信用の失墜等により、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権の侵害・公序良俗違反について

 当社では、当社が運営する事業に関する知的財産権の取得に努め、当社が保有する商標、コンテンツ等についての保護を図るとともに、所属するライバーに対して公序良俗の違反や知的財産権の侵害につながるような動画配信や活動をしないように所属VTuberへのコンプライアンス研修の実施、配信動画のモニタリングを行っております。しかしながら、当社の知的財産権が第三者から保護されない場合や、第三者から知的財産権の侵害を主張される場合において、当社主張に対する防御または紛争の解決のために費用や損失が発生し、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ インターネット、アプリ等についての法令の解釈適用に関するリスク

 当社の主な事業領域であるインターネット上での動画配信やライバーを活用した各種の事業は、新しい業態の事業であるため、当社の事業遂行に関連して、著作権法のほか、肖像権・プライバシー権、特定商取引法に関する法律、不当景品類及び不当表示防止法、個人情報の保護に関する法律、動画配信にかかる租税法等に関して、現行の法令及び権利内容の解釈適用上で論点が生じる可能性があり、その結果として当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)会社組織に関するリスク

① 代表取締役CEO 田角陸への依存について

 代表取締役CEOである田角陸は、当社の創業者であり、創業以来代表を務めております。同氏は、VTuber事業の展開に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において極めて重要な役割を果たしております。当社では、取締役会等における役員及び幹部社員への情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を行っておりますが、何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難となった場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材に関するリスク

 当社の継続的な成長には、事業拡大に応じた優秀な人材を採用するとともに、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。当社のコーポレート・ミッションに共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が働きやすい環境の整備や人事制度の構築を行っております。また、採用後も、当社で存分に力を発揮することを後押しするために、業務を通じたトレーニングのほか、研修制度等の充実にも努めております。

 しかしながら、人材獲得競争の激化や市場のニーズの変化等により、想定通りの採用が進まない等といった優秀な人材の獲得が困難となる場合や、現在在職する人材の社外への流出が生じた場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 事業体制及び内部管理体制の強化について

 当社のさらなる成長のためには、業務の効率化や、事業の規模やリスクに応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。今後も、事業上のリスクを適切に把握・分析したうえで、社内規程や各種マニュアルの整備、社内教育の充実等を通じて、適正な内部管理体制の整備に取り組んでまいります。また、当社は法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し、運用しております。

 しかしながら、今後の急速な事業規模の拡大等により、十分な内部管理体制の構築に支障が生じた場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の財務報告にかかる内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社の財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(5)経営成績及び財政状態等について

  配当政策について

 当社は、企業価値の継続的向上を図るとともに、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置付けております。このような観点から、当社は、将来における安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた株主への利益還元を継続的に行うことを基本方針としております。具体的には、事業から生み出される利益については、事業費用や設備投資を通じたVTuber事業の成長、株主への還元、将来の投資を見据えた内部留保のバランスを考慮しながら活用していく方針です。株主還元は主として自己株式の取得で対応することを考えており、現時点において配当実施の可能性及び実施時期等については未定であります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は23,629,897千円となり、前事業年度末に比べ6,057,453千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が3,807,931千円、売掛金が1,501,918千円及び商品が696,132千円増加したこと等によるものであります。固定資産は1,446,918千円となり、前事業年度末に比べ545,517千円増加いたしました。これは主に、建設仮勘定が297,400千円、敷金が198,917千円増加したこと等によるものであります。

 この結果、総資産は、25,076,815千円となり、前事業年度末に比べ6,602,970千円増加いたしました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は5,314,917千円となり、前事業年度末に比べ256,136千円増加いたしました。これは主に、買掛金が223,108千円、未払金が75,955千円増加したこと等によるものであります。固定負債は45,000千円となり、前事業年度末に比べ111,320千円減少いたしました。これは長期借入金の返済によるものであります。

 この結果、負債合計は、5,359,917千円となり、前事業年度末に比べ144,816千円増加いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は19,716,897千円となり、前事業年度末に比べ6,458,154千円増加いたしました。これは新株予約権の行使に伴い、資本金及び資本剰余金がそれぞれ116,485千円増加したこと及び当期純利益 8,725,995千円の計上により利益剰余金が増加した一方で、自己株式を2,500,218千円取得したことによるものであります。

 

 

② 経営成績の状況

 当社は「魔法のような、新体験を。」というコーポレート・ミッションのもと、新しいエンターテイメントを提供する会社として、VTuberグループ「にじさんじ」の運営を主軸としたエンターテイメント領域での事業展開を行っております。当社のVTuberビジネスは、主にYouTubeにおけるライブ配信動画を中心とした動画配信活動によるライブストリーミング領域、当社がIPを有するVTuberのオリジナルグッズや音声を録音したデジタル商品の販売を行うコマース領域、当社所属のVTuberが出演する、音楽をはじめとしたイベントを主催するイベント領域、企業からのタイアップ広告、IPライセンス、メディア出演等の案件であるプロモーション領域の4領域で構成されています。VTuberグループ「にじさんじ」は日本国内を中心に、「NIJISANJI EN」は英語圏を中心にそれぞれ上記4領域での活動に従事しております。

 国内VTuberビジネスでは、VTuberグループ「にじさんじ」に所属する日本国内で活動するVTuber数は127人(前年同期比1名増加)となりました。また、「にじさんじオフィシャルストア」や「にじさんじFAN CLUB」等の利用の際に必要となるIDであるANYCOLOR IDは1,263千ID(前年同期比35%増)となりました。海外VTuberビジネスに関しても、英語圏におけるVTuberビジネス「NIJISANJI EN」の拡大をはじめとして注力しており、VTuber数は31人(前年同期比1名増加)となりました。

  以上の結果、当事業年度の業績は、売上高31,995,554千円(前年同期比26.3%増)、営業利益12,361,867千円(前年同期比31.4%増)、経常利益12,341,610千円(前年同期比30.6%増)、当期純利益8,725,995千円(前年同期比30.3%増)となりました。

 なお、当社は動画コンテンツ関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ3,807,931千円増加し、16,291,344千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動により獲得した資金は6,903,568千円(前事業年度は6,723,414千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益12,341,610千円、仕入債務の増加額223,108千円の計上があった一方で、売上債権の増加額1,501,918千円、法人税等の支払額3,648,552千円及び棚卸資産の増加額696,132千円があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において投資活動により支出した資金は658,532千円(前事業年度は103,327千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出353,729千円、敷金の差入による支出248,917千円があったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動により支出した資金は2,437,095千円(前事業年度は104千円の獲得)となりました。これは、自己株式の取得による支出2,510,147千円、長期借入金の返済による支出159,325千円、株式の発行による収入232,376千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.商品仕入実績

 当事業年度の仕入実績は、次のとおりであります。

事業領域の名称

仕入高(千円)

前期比(%)

コマース領域

5,808,896

133.3

その他領域(注)2

17,574

39.6

合計

5,826,471

132.4

 (注)1.当社は動画コンテンツ関連事業の単一セグメントであるため、事業領域別の仕入実績を記載しております。

    2. その他領域には中国でのVTuberビジネス等を含んでおります。

 

c.受注実績

 当社は概ね受注から役務提供までの期間が短いため、受注状況に関する記載を省略しております。

 

d.販売実績

 当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。

事業領域の名称

販売高(千円)

前期比(%)

ライブストリーミング領域

4,993,539

98.4

コマース領域

18,937,365

132.9

イベント領域

1,906,571

119.1

プロモーション領域

5,884,578

145.3

その他領域(注)2

273,499

73.7

合計

31,995,554

126.3

 (注)1.当社は動画コンテンツ関連事業の単一セグメントであるため、事業領域別の販売実績を記載しております。

    2. その他領域には中国でのVTuberビジネス等を含んでおります。

3.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年5月1日

至 2023年4月30日)

当事業年度

(自 2023年5月1日

至 2024年4月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ

9,213,346

36.4

12,848,672

40.2

Google LLC

4,787,733

18.9

4,766,727

14.9

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容等

(売上高)

 当事業年度の売上高は、31,995,554千円(前年同期比26.3%増)となりました。

 売上高の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度の売上原価は、16,788,930千円(前年同期比22.0%増)となりました。

 主な要因は、所属VTuberへのサポート体制の拡充、リアルグッズ、デジタルグッズ等のコンテンツ領域への注力、VTuberを活用したプロモーション領域の拡大による制作原価、支払報酬等の増加によります。この結果、売上総利益は15,206,623千円(前年同期比31.3%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、2,844,756千円(前年同期比31.1%増)となりました。

 主な要因は、人件費、支払報酬等の増加によります。この結果、営業利益は、12,361,867千円(前年同期比31.4%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

 当事業年度において、営業外収益は269千円、営業外費用は20,526千円発生しました。

 主な要因は、支払手数料9,928千円、為替差損5,003千円が発生したことによるものです。この結果、経常利益は、12,341,610千円(前年同期比30.6%増)となりました。

 

(特別損益、当期純利益)

 当事業年度において税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を3,615,615千円計上した結果、当期純利益は8,725,995千円(前年同期比30.3%増)となりました。

 

 なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

② 資本の財源及び資金の流動性に関する分析

 当社の運転資金需要のうち主なものは、ライバーへの報酬やコンテンツ制作原価等の売上原価や、人件費や地代家賃等の販売費及び一般管理費といった営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、配信スタジオへの設備導入や新規サービスの開発費等であります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としておりますが、エクイティファイナンスによる外部からの資金調達についても資金需要の額や用途、当該タイミングにおける金利及び資本コストを比較した上で優先順位を検討して実施することを基本としております。

 なお、第7期事業年度末(2024年4月30日)における借入金の残高は156,320千円となっており、現金及び現金同等物の残高は16,291,344千円となっております。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。

 これらリスク要因の発生を回避するためにも、運営する事業の強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

④ 経営者の問題意識と今後の方針について

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等」に記載のとおり、主な経営指標として売上高、各領域別売上高、営業利益、営業利益率を経営上重要な指標として位置付けております。また、売上高の拡大には、にじさんじVTuber数およびANYCOLOR ID数の拡大が必要であると考えております。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)ライバーとの業務委託契約

契約締結日

ライバーにより異なる

契約の名称

ライバー専属契約

相手方の名称

ライバー

契約期間

契約締結日から2年間(自動更新あり)

契約の概要

ライバーは、当社の専属ライバーとして、VTuber活動を行う。

対価:

VTuber活動によって当社が得た収益に、各VTuber活動の内容に応じて一定の料率を乗じたものをライバーに支払う。

 

(2)Live2D利用契約

契約締結日

2018年12月11日

契約の名称

Live2D出版許諾契約

相手方の名称

株式会社Live2D

契約期間

契約締結日から1年間(自動更新あり)

契約の概要

株式会社Live2Dが著作権を有する許諾SDKを利用して、当社がYouTube等の動画配信プラットフォームで動画配信を行う。

対価:

当社が動画配信ビジネスから得た収益に一定の料率を乗じたものを株式会社Live2Dに支払う。

 

(3)YouTube上でのコンテンツ管理契約

契約締結日

2021年7月7日(契約更改に伴う)

契約の名称

CONTENT LICENSE AGREEMENT

相手方の名称

Google LLC

契約期間

契約締結日から1年間(自動更新あり)

契約の概要

当社が著作権を有する動画コンテンツの利用許諾を行う一方で、Google LLCから提供されるツールを使用してYouTube上において当該コンテンツを管理し、当該コンテンツから生じる収益を受領する。

 

(4)事業提携契約

契約締結日

2020年3月23日

契約の名称

事業提携に関する覚書

相手方の名称

株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ

契約期間

株式会社ソニー・ミュージックエンターテイメントによる出資の完了日(2020年4月10日)から3年間(1年間の自動更新あり)。ただし、同契約の効力発生日から18か月が経過した後、本覚書の内容について協議を行うものとする。

契約の概要

VTuberグループ「にじさんじ」名義のライブイベント(第三者が主催するものを除く。)を共催すること。

対価:

共催対象となるライブイベントにおける収入及び支出を一定の共催比率に基づいて按分する。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。