当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンとし、地球と月が1つのエコシステムとなる世界を築くことにより、月に新たな経済圏を創出することを目的としています。この実現に向け、史上初の民間月面探査へ向け研究・開発を推進する企業として、持続的な成長と企業価値の最大化を目指すことを基本方針としております。
(2)経営戦略等
1.品質向上サイクルの実現
当社グループは現在、2024年から2025年にかけてそれぞれ計画している月着陸のミッション(ミッション2及びミッション3)に向けて、ローバー及びランダーの開発を進めておりますが、過去の国主導の宇宙ミッションでは実現が困難であった、民間企業ならではの品質向上サイクルを回すことを企図しています。
既存の宇宙開発の課題の1つに、コストの高さ及びそれに起因する実証機会の少なさが挙げられます。過去の宇宙ミッションの多くが国主導のミッションですが、民間企業と比較して失敗に対する許容度を相対的に低く設定せざるを得ないことから、より慎重かつ複雑な開発プロセスと、より重層的な実証試験等を行わざるを得ず、開発コストが大規模かつ開発期間が長期化する傾向があります。
一般的に、技術的な品質を向上させ成功率を高めるためには、リスク・コントロールが可能な範囲での技術的失敗と改善を繰り返す、言わば健全な反復プロセスが必要不可欠とされています。しかしこれまでの宇宙ミッションでは、高額な開発コストはそのまま実証機会の少なさにつながり、結果的に宇宙開発におけるプロダクトの品質向上サイクルを回すことに限界が生じていたと考えられます。
当社グループは提供するプロダクトをロボティックスによる無人かつ小型で軽量化されたモデルに設定し、また必要とされる部材についても、近年その品質が急速に向上しているCOTS品から十分に宇宙品質に耐えられるものを選定し、柔軟に調達することを基本としています。また国主導のミッションと比較して、失敗に対する許容度を相対的に高く設定することが可能な民間企業としての特性を活かし、実用性が高く迅速な開発プロセスを設計し、結果的に既存の宇宙機器開発と比較して大幅な開発コストの低減が可能となっています。これにより実証機会を増加させ、将来的に反復ミッションと十分な研究開発による品質向上を実現し、更には量産による品質安定化を図ることを計画しております。
当社は、初の実証ミッションとなる2022年のミッション1及び2024年予定のミッション2を、技術実証ミッションとして位置づけています。前述のとおり、経験を十分に有するエンジニア陣による「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」に万全を期すことで、確かな開発品質を実現させていく計画ですが、失敗が一切存在しないミッションを保証するものではありません。当社としては、リスク・コントロール可能な範囲での失敗については、仮に発生した場合にも企業として許容可能な十分な手当を準備しています。実際に、ミッション1で獲得されたミッション・データは、着陸失敗の要因分析に関するデータまでを含めて、ミッション2以降の後続ミッションへと活用される予定であり、当社はそのために、後続するミッション2及びミッション3の開発も並行して進捗させております。ミッションを高頻度に実施し、技術的な経験値を継続して蓄積させていくことが、当社の技術的リスクを低減させ、持続安定的な事業運営を達成する上での重要な鍵となります。
2.ミッションリスクに備えた手当
当社グループが行う月着陸ミッションには、宇宙開発における一定の不確定要素が存在すること、特にミッション1及びミッション2においては当社の実証段階であることも踏まえれば、一定のミッションリスクが存在しますが、これに備えた十分な手当を行うことを戦略としております。
当社は、ミッション1を含めた複数ミッションについて、SpaceX社のファルコン9ロケットにランダーを搭載し打上げを行う予定です。ファルコン9はSpaceX社により開発された中型ロケットであり、打上価格が機当たり67百万米ドル/1回(本書提出日時点における公表値(https://www.spacex.com/media/Capabilities&Services.pdf))と同規模の他社ロケットと比較し安価であり、市場において大きなシェアを獲得しております。打上契約後は、仮に何か問題が発生しミッション継続に支障が起きた場合にも、SpaceX社は打上代金の返金をせず、打上業者と顧客である当社の双方がお互いに損害賠償請求権を放棄して、自損自弁にしておくことが業界慣行となっています。当社は、打上業者の中でも、足許で年間20回超のロケット打上げを行い、過去の打上げの成功確率としても約98%と極めて信頼性の高い実績を持つSpaceX社を選定しておりますが、仮に問題が発生した事態における財務的リスクを軽減するために、第三者の損害保険会社との間ですべてのミッションについて月保険を締結する予定であり、ミッション1については、三井住友海上火災保険株式会社との間で損害保険契約を締結済みであります。当該保険はロケットが打ち上げられてからランダーが月面に着陸し、通信の機能が正常に作動して地球とランダーとの間でデータ送受信が行われるまでを保険責任期間としております。
同様に、当社と当社の顧客との間においても、SpaceX社と当社との間と同様の仕組みを踏襲し、当社と顧客の双方がお互いに損害賠償請求権を放棄して自損自弁とする契約体系を基本としております。また、当社が手掛ける①ペイロードサービス、②データサービス及び③パートナーシップサービスでは、基本的にロケット打上げに先立つ1~2年前に本契約をし、以降、ロケット打上げまでの間に、ほぼ全額の金銭的対価を顧客から受領することを基本としていますが、仮に契約後に問題が発生しミッション継続に支障が起きた場合にも、当社側に契約不履行に繋がる程の重大な瑕疵(マテリアル・ブリーチ)が生じない限り、原則として当社から顧客への返金が生じない契約体系となり、複数のペイロード顧客との間で、既に上記趣旨の内容で最終契約を締結しております。将来的には、より多くの顧客に安心して当社のサービスを利用してもらい、産業を活性化させる上では、損害保険等の商品により顧客の財務的リスクを軽減させる仕組みが不可欠と考えており、月面輸送サービスにおける損害保険商品の将来的な導入を見据え、現在第三者の損害保険会社との間で検討を進めております。
3.継続的なミッション資金の十分な確保
先に記載のとおり、宇宙開発における技術の品質向上サイクルを実現させることは民間企業ならではの利点と言え、当社は、常に単発ではなく同時並行で継続的なミッションの準備を進めておくことで、リスク・コントロールが可能な範囲での技術的失敗を、タイムリーに次のミッションの改善へと反映させることを実現させます。
当社は足許、2022年のミッション1の開発に多くの人的・財務リソースを充ててきた一方、並行して2024年に計画するミッション2、2025年に計画するサイズアップされたシリーズⅡランダーでのミッション3の開発にも人的・財務的なリソースを配分しております。ランダー及びローバーの開発には一般的に高額の開発費用を要すること、また継続的に打上業者との間で高額な打上契約に関する合意を形成していかねばならないこと、そして複数ミッションの検討を同時並行して実施可能な十分の開発エンジニアを確保することから、当社は常に比較的大規模な財務的原資を手当する必要があり、継続的な資金調達の実施が持続的な事業運営上不可欠です。
当社は2014年の無担保転換社債型新株予約権付社債の発行(シード投資)に加え、2017年から2018年(シリーズA)、2020年(シリーズB)及び2021年(シリーズC)の三度の第三者割当増資により累計で約196.2億円の資金調達を実施し、その他にも2021年5月に実施した金融機関からの総額19.5億円の借入、2022年7月に実施したシンジケートローン契約による50億円の調達、2023年4月12日に東京証券取引所グロース市場への上場を通じて約62億円の調達等を実施しておりますが、今後も積極的に、グローバルな資本市場へアクセスし、十分な財務的資金バッファを確保することで、宇宙開発における技術の品質向上サイクルを実現していく計画です。
4.政府宇宙機関及び民間企業の双方の顧客ターゲティング
足許の当社の売上は、ミッション1及び2を対象とするパートナーシップサービスである「HAKUTO-R」プログラムからの売上が重要な割合を占めますが、同時に、当社はグローバルな顧客ニーズの高まりを背景に、顧客からのペイロードを輸送するペイロードサービスをミッション1から提供し、その売上の計上が開始されております。
当社は、2019年12月にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイの政府宇宙機関であるMBRSCより、ミッション1において10kgのペイロード(月面探査ローバー)を運ぶ大型受注を獲得し、2021年に本契約を締結致しました。MBRSCの前身となる機関は2006年に設立され、以降、2009年のDubaiSat-1、2013年のDubaiSat-2等、複数の衛星プロジェクトを打上げた実績を持つ、中東を代表する先進的宇宙機関の1つです。2020年7月には、UAE建国50周年を迎える2021年に中東初となる無人探査機の火星到着を目指す火星探査ミッションにおいて、MBRSCは火星探査機「HOPE」の設計と技術面の取りまとめを行い、三菱重工のロケットH-IIAによる打上げを成功させています。
この他の宇宙機関との間では、カナダ宇宙庁が推進するプログラムであるLEAPに採択されたカナダの民間企業であるMCSSとの間で人工知能のフライトコンピューターのペイロードサービス、Canadensysとの間でカメラのペイロードサービス、NGCとの間でデータサービスを提供する契約を締結しております。また、JAXAとの間では変形型月面ロボットのペイロードを月面へ輸送することで合意し、2021年4月に本契約を締結しております。
また、当社子会社であるispace technologies U.S., inc.は、主契約者であるドレイパー研究所等で構成されるドレイパーチームの一員として、2022年7月においてNASAのCLPSのタスクオーダーCP-12のサービスプロバイダーの1社に選ばれており、当該タスクオーダーの総額は73百万米ドルとなります。これに関して、当社子会社であるispace technologies U.S., inc.は、ドレイパー研究所との間で、ランダーの製造やペイロードサービスを実施するための請負契約を締結し、当該契約に基づき、ミッション3において、2機のリレー衛星を月周回軌道に投入し、月震計(FSS)、地下の熱流探査機(LITMS)、及び電磁場測定器(LuSEE)といった一連の科学実験機器を含むペイロードを月の裏側に存在する南極付近に輸送する予定です。これらの2機のリレー衛星はBlue Canyon Technologies Inc.が製造し、Advanced Space, LLC が運用をサポートする予定で、これらの衛星を活用して月震データを最大1年間にわたり収集する予定です。
当社子会社とドレイパー研究所の間の上記請負契約の契約金額は約5,450万米ドルとなっておりますが、支払は一定のマイルストーンの達成を条件とした分割払いとなっており、打上日(2026年3月期中を現時点で想定)までに総額の10%を除いた金額が支払われ、残り10%相当額については月面着陸及びペイロードからのデータの受信時に支払われる予定です。また、NASAの要請によりドレイパー研究所がミッション期間を延長した場合には、2機のリレーの衛星につき最大で280万米ドルの支払いを追加で受領できる可能性があります。ただし、当社子会社は、ドレイパー研究所との契約上、自らの契約不履行又は履行遅滞に起因して発生した損害についてドレイパー研究所に対して損害賠償義務を負う可能性があり、また、当社起因の理由によりタスクオーダーCP12の費用が増加した場合には、当該増加費用分をドレイパー研究所に対して当社が負担することになる可能性があることから、最終的な受取金額は減少する可能性もあります。
民間企業との間では、ミッション1のペイロードとして、日本特殊陶業株式会社との間で固体電池を月面へ輸送する契約を獲得しており、既に本契約を締結の上、全額の入金も完了しております。また、ミッション2顧客として、高砂熱学工業株式会社との間で月面用水電解装置、台湾中央大学との間で深宇宙放射線プローブ、株式会社ユーグレナとの間で微細藻類培養装置のペイロードサービス契約を締結しております。
また、当社は世界各国の民間企業・宇宙機関・研究機関との間で、MOU(Memorandum of Understanding)やInterim Payload Service Agreement(ペイロードサービス中間契約。以下、「I-PSA」という。)を締結しております(以下、MOUとI-PSAを総称して「MOU等」という。)。当該MOU等は基本的にミッション3以降における将来的なペイロードサービス、データサービスについて共同検討や共同開発を進める内容であり、今後も多くの民間企業・宇宙機関・研究機関とMOU等の締結を拡大させる予定です。民間企業とのMOU等締結の背景は様々ですが、直近では特に、月面における水資源を活用したバリューチェーンに含まれる事業と関係する企業との強固な関係を築いております。
例えば、バリューチェーンのエンド・ユーザーとなるトヨタ自動車株式会社との間では、同社とJAXAが概念検討を進める燃料電池車両技術を用いた月面でのモビリティ「有人与圧ローバー」に関連する地上試験、月面環境での技術実証に関する協議を進めております。また、ミッション3の顧客として、Helios Project, Ltd.との間で最大5kgのレゴリス融解酸素生成装置、株式会社アークエッジ・スペースとの間で15kgの衛星機器、Aviv Labs, LLC,との間で小型温室実験装置、CesiumAstro, Inc.,との間で通信機器、AstronetX PBC,との間で月面カメラのI-PSAを締結しております。加えて、本書提出日現在、例えば、下記の世界各国の民間企業との間でミッション3以降を対象としたMOUを締結しております。
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締結相手先 |
ペイロード |
重量 |
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Maana Electric SA |
電力及びエネルギー供給用実験機材 |
最大28kg |
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Stardust Consulting, S.L. |
紫外線観測装置 |
27kg |
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WeSpace Technologies Ltd. |
ドローン |
最小25kg |
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横河電機株式会社 |
レーザーガス分析装置 |
5kg |
|
千代田化工建設株式会社 |
水資源探査機 |
5kg |
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KP Labs sp. z o.o., |
オンボードコンピューター |
最大2kg |
|
KDDI株式会社 |
通信機器 |
- |
上記のMOU等には法的拘束力が認められず、受注及び当社の売上計上に繋がるかは不確実ではあるものの、当社は今後も民間企業各社とのMOU締結を進めてより多くの顧客と間で強固な関係を築く予定であり、将来的な民間企業からのペイロードサービスの受注につなげることを見込んでおります。
5.中長期的な売上拡大及び収益性の改善
当社は、技術が一定程度確立され、安定的な月面輸送が可能となると想定されるミッション4以降、平均して年2回から3回のミッションを実施することを計画しております。またミッション3以降は、顧客のペイロード需要が大型化する傾向が予想されることから、最大500kgまでのペイロード輸送を可能とするデザインのシリーズⅡランダーを開発する予定です。実際の顧客への販売重量は、デザイン上の重量から開発における不確実性や販売充足率を加味した歩留まり率をもとに販売重量を想定しており、ミッションを重ねるごとに開発マージンの効率化、販売充足率の向上により、顧客への販売重量を順次拡大させていくことを目指します。
表1:ミッションスケジュール及び想定販売重量
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ミッション |
打上げ (予定)時期 |
販売可能 重量(kg) |
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ミッション |
打上げ 予定時期 |
販売可能 重量(kg) |
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1 |
2022年12月 |
約12 |
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6 |
2027年 |
約151 |
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2 |
2024年Q4 |
約11 |
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7 |
2027年 |
約151 |
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3 |
2025年 |
約145 |
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8 |
2028年 |
約160 |
|
4 |
2026年 |
約137 |
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9 |
2028年 |
約160 |
|
5 |
2026年 |
約137 |
|
10 |
2028年 |
約168 |
※上記は本書提出日時点の想定であり今後変更となる可能性があります。このようにミッション3以降は当社の収益源となるペイロードサイズが増大し、更に将来的にミッションが高頻度かつ同時並行的に実施される予定であることから、ペイロードサービスからの売上を一層拡大させることを目指します。また、売上の拡大を図ると同時にコスト削減を実施することで収益性の向上を実現するよう計画しており、そのための施策としてCOTS品の利用、大量購入によるスケールメリットの享受、開発人員の習熟化による人件費削減、ノウハウ蓄積による試験工程の効率化の実施を目指します。
また中長期的には、複数のミッションから収集されたデータの蓄積を元に、データサービスからの売上も徐々に拡大することを想定しています。データサービスの提供の方法としては、(1)データの取得前から取得するためのペイロード機器の開発から当社が検討に加わり、データ取得のために必要なペイロードの輸送コストまで含めて顧客へ課金するケースと、(2)既に当社で保有する取得済みの顧客の需要に応じた付加価値の高いデータセットへ加工し、データ販売のみ提供するケースが存在します。2020年代前半において高頻度輸送を確立することで他社に先行してデータの収集、解析、高付加価値化を実施し、2020年代後半に向けてデータプラットフォームを活用した高収益なデータビジネスモデルの構築を目指します。
(3)経営環境
当社グループの事業が属する経営環境は次のような特徴があります。
当社グループが属する宇宙資源開発の分野では、2020年12月にはJAXAが開発した探査機「はやぶさ2」が地球から約3億キロメートル離れた小惑星「りゅうぐう」の土壌採取サンプルを含むカプセルを地球に帰還させる等、世界各国で政府主導による宇宙探査活動が活発化しています。
一方、近年ではテクノロジーの進化とCOTS品の拡大、ソフトウェア技術の進化を背景に、これまでは政府主導の宇宙機関に限定されてきた宇宙事業の門戸が民間企業へ開かれてきております。NASAを筆頭とする各国の宇宙機関では、地球低軌道における活動等に関する宇宙関連予算の大幅な節約につなげるべく、宇宙開発に民間企業を活用する傾向が拡大しており、サービスを提供可能な民間企業に対して政府が発注する「サービス調達」の形態による宇宙探査活動も活発化しております。
特に米国ではその傾向が顕著であり、一例として、NASAは2008年より商業補給サービス(Commercial Resupply Services:CRS)計画を発表しており、国際宇宙ステーション(International Space Station、(以下、「ISS」という。)への輸送を民間企業に委託しています。実際に2011年には高コストであったNASA自身によるスペースシャトルの開発と運用が停止され、その後、SpaceX社やオービタル・サイエンシズ社等、民間によるロケットの打上げと宇宙船のISSへのドッキングが成功しており、直近では2020年6月にSpaceX社のロケットから切り離された宇宙船「クルー・ドラゴン」が、民間企業としては史上初となるISSへのドッキングを成功させたことは世間の記憶にも新しいところです。
日本政府もまた民間による宇宙開発を推進していく考えであり、2018年11月には人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(通称宇宙活動法)が施行となり、民間事業者による更なる宇宙ビジネスの拡大を推進すると同時に、安倍内閣総理大臣(当時)を本部長とする宇宙開発戦略本部による、宇宙ベンチャー成長のための1千億円の資金支援枠が設定されました。また直近では、2021年6月15日に、通常国会において「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」(通称宇宙資源法)が可決され、2021年12月23日に施行されました。本法律は、日本の民間事業者が月その他の天体を含む宇宙空間に存在する水、鉱物、その他の天然資源である宇宙資源の探査及び開発に従事することを認めることを日本国として初めて明確に規定したものであり、日本は、米国、ルクセンブルク大公国、アラブ首長国連邦に続き、民間企業による宇宙資源利用を認める法律を制定した4番目の国となります。なお、当社はミッション1においてNASAへのレゴリス(月の砂)の販売取引を実施することから、上記宇宙資源法の許認可を2022年11月4日付で取得しております。このように、日本においても将来的な宇宙事業の政から民へのシフトと宇宙ビジネスへの政府の支援の拡大が予測されております。
宇宙市場全体の成長可能性については、2040年代にはその市場規模はグローバルで1兆米ドル以上に成長するとの予測がありますが(*)、宇宙産業の中でも特に月は、前述のとおりその存在が見込まれている水資源をエネルギーとして利用する経済価値が高く着目されており、世界各国が月面へのミッションを実行しております。
2019年初頭には中国の無人探査機「嫦娥4号(じょうが4号)」が世界で初めて月の裏側へ着陸し、また米国ではバイデン政権下で、昨年度対比で約15億米ドルもの増額となる248億米ドル相当の2022年度NASA予算が議会に申請され、1970年代のアポロ計画以降初となる月面の有人探査を2024年までに実施する「アルテミス計画」が推進されています。2020年10月以降本アルテミス計画の一環として、月面における平和的・友好的かつ透明性ある活動のガイドラインとなる「Artemis Accords(アルテミス合意)」に日本と米国を含む世界23カ国(2022年12月時点)が合意・署名する等、引き続き活発な進捗が見られております。
日本もまたJAXAがSLIM(Smart Lander for Investigating Moon)プロジェクトを推進し、将来の月惑星探査に必要な高精度着陸技術を小型探査機で実証することを計画しています。また、欧州宇宙機関のESAは、3Dプリンティング技術を活用して月面土壌から基地を製造し宇宙飛行士による深宇宙探査の拠点とすることを想定した、Moon Village構想を検討しています。
また昨今、NASAは、民間企業に対して今後10年間で総額26億米ドルの予算を投じ、月面への輸送サービス委託するCLPSプログラムを開始しております。当社子会社であるispace technologies U.S., inc.は米国のドレイパー研究所を中心とするチームに所属し、同チームで応募したCLPSに関する初期提案書は、2018年11月にNASAにより採択され、ispace technologies U.S., inc.は同プログラムにてNASAから受注する資格を有するチームの1社として選定されました。その後2022年7月において、同チームの提案がNASAに採択されており、ミッション3において、2機のリレー衛星を月周回軌道に投入し、月震計(FSS)、地下の熱流探査機(LITMS)及び電磁場測定器(LuSEE)といった一連の科学実験機器を含むペイロードを月の裏側に存在する南極付近に輸送する予定です。これらの2機のリレー衛星はBlue Canyon Technologies Inc.が製造し、Advanced Space, LLC が運用をサポートする予定で、これらの衛星を活用して月震データを最大1年間にわたり収集する予定です。
更には、宇宙機関による月面開発の本格化の動きを受け、月面でのエネルギー経済圏が創出されることを見据えた民間企業による新しいビジネスも生まれつつあります。トヨタ自動車株式会社は、水素を燃料とし、月面で1万キロ以上の走行が可能な有人与圧ローバー(ルナ・クルーザー)をJAXAと共同で開発し、2029年に月に打ち上げることを目指しています。清水建設株式会社は、月面拠点の開発に向けた構想や、月面での大規模太陽光発電により生まれたエネルギーを地球上にまで伝送するLunar Ring構想を掲げています。
加えて、2020年1月に行われた安倍内閣総理大臣(当時)による施政方針演説には『月を周回する宇宙ステーションの整備、月面での有人探査などを目指す新たな国際プロジェクトに、我が国として、その持てる技術を駆使し、貢献いたします。将来的な火星探査等も視野に、人類の新たなフロンティアの拡大に挑戦します(第二百一回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説より抜粋)』との文言が盛り込まれ、将来的にも、宇宙開発、中でも月面探査が日本の成長戦略の1つとして明確に期待される内容となっています。2020年6月には国の宇宙政策の基本方針である「宇宙基本計画」が政府によって改定され、米国が進める月探査計画への参画や、国内宇宙産業の規模(約1兆2,000億円)を2030年代早期に現在の2倍に引き上げる目標等が示されました。
また、日本政府の「スタートアップ5ヵ年計画」に基づいて、SBIR(Small Business Innovation Research、中小企業技術革新)制度の枠組みの中に存在する、「特定新技術補助金等」と「指定補助金等」という、2種類の補助金等のあり方を示す2つの文書「令和4年度特定新技術補助金等の支出の目標等に関する方針」、「指定補助金等の交付等に関する指針」が作成され、令和4年6月3日に閣議決定されました。その中で、各府省庁における研究開発のための補助金や委託費のうち、研究開発型スタートアップ等を交付対象に含む特定新技術補助金等について、研究開発型スタートアップ等への支出の目標額を設定するとともに、支出の増大を図るための措置を規定し、SBIR制度等の抜本拡充として令和4年度補正予算案に総額2,060億円(注1)が織り込まれています。なお、2022年度第1回SBIR推進プログラム公募で、内閣府ガバニングボードにより決定された対象分野に宇宙領域も含まれています。
更に、2023年1月には、岸田文雄内閣総理大臣がNASAを訪問し、日米両国が平和的目的のための宇宙協力を行う際の基本事項を定めた「日・米宇宙協力に関する枠組協定」を締結しました。
PwC社の調査に基づくと、当社がターゲットとする市場が大きく拡大することが予想されております。各地域の市場トレンドや観測可能な調査に基づくボトムアップ分析の楽観的シナリオにおいては、月面輸送サービス事業の市場は2040年に84億米ドル(注2)、月面データ取得・販売事業の市場は12億米ドル(注2)に達するとされており、それぞれの2020年から2040年の期間においての年平均成長率は12%/22%と高い成長が予測されております。また、当社のビジョンである「2040年に月に1,000人が居住」することと同様の前提を置いた場合のロードマップ分析による同社の調査データによると、月面輸送市場は年間約1,502億米ドル(注2)まで達すると推定されております。
(注1)スタートアップ全体に関する予算金額であり、このうち一部が宇宙分野へ配分されることが期待されます。ただし、予算が配分されない可能性もあり、計画どおりに進まない可能性もあります。
(注2)2036~2040年の累計値の年平均値
(*) 出所:総務省 宙を拓くタスクフォース(第6回)平成31年3月1日開催。NTTデータ経営研究所作成の「長期的な宇宙ビジネス市場規模の試算」
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループがステークホルダーから主に期待されている点は、計画から遅延しない研究開発活動による技術確立とミッションの実行、顧客からの事業収益の獲得、事業運営のために必要な原資の適時な調達、及び限られた資金の最大限に効率的な使用等を通じて、収益の最大化を図ることと認識しております。
技術確立の実現のため、今後複数ミッションの同時開発を実施し、後続ミッションへの技術フィードバックを適時に実施してまいりますが、複数ミッションを同時並行で進捗させるために、事業収益の獲得や資金調達を通じた財務基盤の確立が重要となります。
より直接的に開発の進捗を確認する上では、当社が開示するミッションごとの開発スケジュール及び、1つの開発フェーズが完了し、次のフェーズへ移行する上でマイルストーンとなる審査の完了報告が重要となります。
当社は2017年よりミッション1のランダー開発を開始しており、以降、途中でミッション内容の変更を行った影響により開発期間の長期化等も発生しましたが、2022年10月までに製造、最終試験まで完了し、2022年12月11日にミッション1の打上げを実施しました。「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」では、各フェーズで行われるべき作業プロセスが完了すると、それぞれのフェーズにおける結果を評価し、次フェーズへの移行可否を判断する技術審査を行いますが、ミッション1の開発プロセスにおいても以下のとおりの審査を経ております。
表2:ランダー開発フェーズの概観(ミッション1のケース)
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フェーズ |
フェーズA |
➡ |
フェーズB |
➡ |
― |
➡ |
フェーズC |
➡ |
フェーズD |
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技術 審査 |
SRR System Requirement Review |
PDR Preliminary Design Review |
⊿SRR・⊿PDR Delta SRR ・Delta PDR |
CDR Critical Design Review |
PSR Pre-Shipment Review |
LRR Launch Readiness Review |
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目的 |
ビジネス要件とシステム要件の整合性を確認の上、システム設計開始を承認する審査会 |
仕様値に対する設計結果、設計検証計画の実現性を確認する審査会 |
― |
製造と試験の詳細設計と検証計画が適正かを、これまでに実施した試作評価、熱構造特性の評価、電気機械設計等の評価を活用して確認する審査会 |
試験結果の確認及び、打上場への輸送承認を行う審査会 |
ロケットへのインテグレーション作業終了の確認及び、打上げと初期運用への移行承認を行う審査会 |
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当社の ケース |
2017年下期に実施。外部専門家がオブザーバーとして参加。MDR及びSDRを包含して実施 |
2018年下期に実施。グローバルに約30名の外部専門家が審査に参加 |
ランダー開発を月周回から月面着陸へと変更する上で必要な変更を審議するため、SRR(2019年8月)及び⊿PDR(2019年11月)を実施 |
2020年9月以降、外部専門家も交えて実施、2021年2月に最終完了 |
2022年10月に実施 |
2022年11月に実施 |
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上記審査過程の中でも、特にPDRとCDRを特に重要なマイルストーンであると認識をしております。ミッション2の開発プロセスにおいては、2022年7月にPDRを、2023年1月にCDRを完了しており、ミッション3の開発プロセスにおいては、現在PDRを実施中となります。
また、顧客からの事業収益の観点では、ペイロードサービス契約及びデータサービス契約に加え、MOU及びI-PSAの締結総額が収益の先行指標として重要となります。本書提出日現在、ミッション1の総契約金額(ペイロードサービス契約及びデータサービス契約)は約10百万米ドルであり、ミッション2の総契約金額(すべてペイロードサービス契約)は約16百万米ドルであり、ミッション3以降の総契約金額は約54.5百万米ドルになります。また、ペイロードサービスに係るMOU及びI-PSAの締結総額は約280百万米ドルとなります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
宇宙関連ビジネスはグローバル・ベースで、継続的かつ加速度的に拡大していくものと見込まれており、この産業の潮流に対応するために必要な技術確立が急がれる状況です。足許、当社グループは、多額の先行研究開発投資と長期の開発期間を要する宇宙関連機器の開発に従事していることから、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、現在のところすべての開発投資を補うための十分な収益は生じていないことから、2023年3月末時点において純資産が△2,347百万円となり債務超過となりました。これらの状況から、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。当該事象又は状況を解消し、安定的な事業収益が創出されるまでの間、下記を重要な課題として取り組んでおります。
ただし、当該重要事象等を解決するための対応策を実施していること、また、債務超過の解消のための自己資本の充実を目的とした機動的な資金調達の可能性を適宜検討していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
① 研究開発の推進
2022年から2024年を目途に計画する二度のR&Dミッションに向けて、打上事業者による打上機会を確保すると同時に、開発スケジュール、開発コスト及び開発クオリティを厳格に管理することで、ランダー及びローバーの開発を着実に進めてまいります。
② 顧客の開拓
当社が事業収益を獲得するために必要なランダー及びローバーは開発途上にあります。また当社が事業収益を見込む市場は、現在グローバルでも草創期に当たります。当社では現在初回となるR&Dミッションについて顧客からの潜在的受注を確認していますが、事業収益の安定化に向けて引き続き中長期的に持続可能な顧客市場を開拓してまいります。
③ 人材の確保
当社はランダー及びローバーの研究開発を遂行するために、継続して多様な開発領域について高度な専門性と能力を備えた人材を国内外から雇用しております。
また、急速に従業員数が拡大する組織の中において、各人材がその能力を最大限に発揮することが可能な環境を整えるための取り組みを引き続き行ってまいります。
④ 成長に対応した内部統制の構築と適切な運用
将来的な月面探査ミッションを支える資金調達オプションの1つとしての株式公開のために、必要な業務プロセス、財務・経理上の体制、労務管理、子会社管理、セキュリティ管理等を整備する等、当社の成長に対応した内部統制の構築及び運用の実施を引き続き行ってまいります。
⑤ 財務上の課題について
当社にとって、安定的な事業収益化を目指す上で将来的に継続的なミッションの実現が必要であり、そのための必要資金を着実に確保することが重要です。当社ではこれまで、無担保転換社債型新株予約権付社債の発行、第三者割当増資、金融機関からの借入、クラウドファンディング、公募増資等によって資金調達をしてまいりましたが、今後も、ミッション推進のために機動的な資金調達の可能性を適時検討してまいります。なお、当連結会計年度末において債務超過であるものの、2023年4月12日の東京証券取引所グロース市場への上場にともなう公募増資により、2023年4月における月次決算では債務超過を解消しております。
また、当社はミッション1に関して三井住友海上火災保険株式会社との間で損害保険契約を締結済であり、ミッション1において設定したマイルストーンのうちSuccess9を達成しなかったことにより、保険金を受領する可能性がありますが、現時点において確定しておりません。
さらに、2022年7月に株式会社三井住友銀行をアレンジャー、株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社商工組合中央金庫をコアレンジャー、株式会社静岡銀行を参加金融機関とする、総額50億円のシンジケートローン契約を締結しております。本契約には財務制限条項が付されており、2023年3月期末時点で、当該条項に抵触しております。しかしながら、当社は2023年3月期末を基準とする財務制限条項に係る期限の利益喪失につき権利行使しないことについてシンジケート団から合意を得ております。
2023年3月期末時点で抵触した財務制限条項は以下のとおりです。
・各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を正の値に維持すること。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループにとってのサステナビリティとは、事業を通して「地球と月がひとつのエコシステムとなる経済圏を創出すること」に貢献することであり、長期的な人類の地球上の生活の持続を目指すことです。その実現に向けて、顧客、取引先、従業員、株主をはじめとするあらゆるステークホルダーとの信頼関係を大切に、サステナビリティを重視した経営を実践しております。
(2)具体的な取り組み
①ガバナンス
当社グループは、「Expand our planet. Expand our future.」というビジョンのもと、経営の効率化、健全性、透明性を高め、中長期的、安定的かつ継続的に株主価値を向上させることが、コーポレート・ガバナンスの基本であると認識しております。
このため、企業倫理の醸成と法令遵守、経営環境の変化に迅速・適切・効率的に対応できる経営の意思決定体制を構築して、コーポレート・ガバナンスの充実を図ります。
また、すべてのステークホルダーからの信頼を得ることが不可欠であると考え、情報の適時開示を通じて透明・健全な経営を行ってまいります。
詳細は、「
②リスク管理
当社は、経営の透明化の向上とコンプライアンス遵守の経営を徹底するため、コーポレート・ガバナンスの強化を図りながら、経営環境の変化に迅速に対応できる組織体制を構築することを重要な経営課題と位置付けております。当社は、会社法第362条第4項第6号及び会社法施行規則第100条に基づき、2019年2月8日開催の取締役会決議により、以下のとおり内部統制システムの整備に関する基本方針を定め、業務の適正性を確保するための体制の整備・運用をしております。
詳細は、「
③戦略
当社グループのビジネスモデル及び宇宙産業は草創期であり、ビジネスモデル及び市場の実現のためには、経験を十分に有するエンジニア、市場を開拓しビジネスを推進するビジネスデベロップメント及び事業を支えるコーポレートのすべての職種において、様々なバックグラウンドと知見を持つ人的資本が最大の価値創造の源泉であると考えております。サステナビリティの実践に向けて、人的資本を最重要視して投資を行うことで、持続的に人的資本やその他の資本を増強することを目指して戦略を設計しております。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。
当社グループでは、バリューとしてダイバーシティ、インテグリティ、リスペクトを掲げており、様々な知識と技能を持つ人材に対して、国籍や性別を問わず門戸を開いております。その結果、当社グループとしては世界33か国から、当社としては世界20か国からの人材が集結しています。また、当社グループでは57%。当社単体でも34%が日本以外の国籍を持つ人材で占められております。「出身国・地域」という意味での多様性は大きく、またそのことによって生まれる様々な文化背景やコミュニケーションの取り方、受け取り方の違いに日々向き合うことが、先駆者の少ない月着陸船の開発をはじめとした当社事業における技術革新の原動力となっております。最終的には、多様性が基礎となる「Moon Valley 2040」を実現することを目指してまいります。
宇宙開発事業を推進するにあたり、現時点では宇宙に特化した人材は非常に稀であり今後当社のみならず宇宙開発産業全体の発展に当たり人材開発は非常に重要な課題です。そのため、複数の宇宙関連大学・大学院の研究室と連携しインターンシップを通じた将来の従業員候補生の育成、またその育成そのものを通じて当社従業員のメンターとしての育成、管理能力および技術力の向上を図る取り組みを企画・実施してまいります。
また、社内での人材育成と相互の意思疎通は当社グループのバリューであるインテグリティとリスペクトの実践そのものです。経営陣から従業員に向けての情報発信の場として、隔週で全グループオンライン会議を行っております。オフラインでは月着陸船の打上や着陸の瞬間を従業員とその家族を交えての観測会をはじめ各種交流会・食事会などのイベントを通じ、従業員が当社グループのマイルストーンを共有し祝いあう機会を設けております。また、従業員からのフィードバックを得る手段としてエンゲージメントサーベイを定期的に行っております。そこで得られた内容を検討・反映し、経営陣と管理職は四半期に一度の経営立案ワークショップの導入を計画するなど、更にエンゲージメントを高める取り組みも行っております。
(4)指標及び目標
前述のとおり、当社グループはサステナビリティ戦略において人的資本を最重要視しております。サステナビリティの実践に向けて、多様性の確保を続けるとともに人的資本の重要テーマとして「エンゲージメント」を置き、向上を図っております。具体的には「エンゲージメントサーベイスコア」を指標として置き、定期的なモニタリングを行っております。当連結会計年度の実績と目標は以下の通りです。
(エンゲージメントサーベイスコア)
前述の通り、当社グループはエンゲージメントサーベイスコアのモニタリングを定期的に行っており、当連結会計年度の実績は前連結会計年度比4%増の66%となりました。引き続きエンゲージメントサーベイと退職理由、社内異動実績、業績評価結果、労働時間など各種結果との関連分析を行い、キャリアヒアリング等を通じた従業員との直接のコミュニケーションを行うことにより、翌連結会計年度に70%を目指し、さらなる従業員エンゲージメントの向上及び人材力の強化を目指してまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社グループはこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクをすべて網羅したものではなく、さらにこれら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意いただく必要があると考えます。当社グループは月面開発事業を行っており月面着陸がビジネス遂行上の要件となりますが、未だ当社において月面への着陸実績はありません。また、当社が属する宇宙産業自体未だ市場草創期であり確立した市場は存在しておらず、将来の市場規模拡大には不確実性を伴います。また、月着陸船の開発には長い年月と多額の研究費用を要するとともに、すべての開発及び月面着陸ミッションが成功するとは限らないことからも、当社への投資は一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられます。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅したものではありません。
(1)ミッションの未達について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:1年以内)
当社が行うミッションについて、ミッション1においては月面着陸、ミッション2においては月面着陸及びローバーによる月面探査を目指してまいります。一方、月面開発事業は元来技術的リスクを伴うものであり、当社においてこれまで月面着陸の実績はなく、また、民間企業や日本の宇宙機関が月面着陸を行った事例もありません。当社としては、技術的にはランダーの推進及び着陸誘導制御は旧ソ連によるルナ計画、米国のアポロ計画、中国による嫦娥計画等の実績があり特に革新的な新規技術を必要とするものではないとの理解であり、ミッション1においてミッションを計10個のSucessマイルストーンに分解したうち、Success8となる月周回軌道上でのすべての軌道制御マヌーバの完了(Sucess 8)まで無事達成しております。一方で、Success9となる月面着陸の完了は未達で終わっており、本書提出日現在、当社のランダーが月に着陸した実績はありません。加えて、地球外の天体にランダーを着陸させることは元来難易度が高いオペレーションであるため、当社では両分野の開発は経験豊富な第三者と協業することでリスクの低減に努めておりますが、予期せぬトラブルが発生した場合、今後もミッションが未達となる可能性があります。ミッション未達についても様々な事象が想定され、①ロケットの打上時に障害が発生する可能性、②月へ向かう航行中に障害が発生する可能性、③月の周回軌道に入る際に障害が発生する可能性、④月への着陸が安定的に成功しない可能性、⑤着陸後にランダーからローバーを放出する等のミッションを実行できない可能性等が考えられます。
また、ミッション3以降については、当社は、重量や設計も異なるシリーズⅡランダーの使用を計画しているところ、シリーズⅡランダーの開発及び運航について想定外の問題が生じる可能性があります。また、ミッション3で予定している2機のリレー衛星の輸送についても、初の月周回軌道への輸送となることから、ミッション1及びミッション2とは異なる問題が生じる可能性があります。加えて、ミッション6以降の使用を目指して開発に着手しているシリーズⅢランダーの開発及び運航についても想定外の問題が生じる可能性があります。当社は、シリーズⅡランダー及びシリーズⅢランダーを使用する計画のミッションにおいて、前述のとおり、シリーズⅠランダーを使用するミッションよりも多くの販売可能重量及び売上高を計画していることから、これらのランダーに問題が生じた場合、当社の収益に生じる悪影響の程度が大きくなる可能性があります。
当社においては、前記「第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>」及び「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等 2.ミッションリスクに備えた手当」に記載のとおり、ペイロードサービスについては、その一部の対価を前払いとし、かつ、契約後の返金を行わないこととすることや、損害保険契約を締結する等によって、ミッションが未達となった場合のリスク軽減措置を講ずる予定です。特に、2024年を予定するミッション2については既に当社販売可能重量を満たすだけのペイロードサービス契約を締結済みとなっております。また、前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等 1.品質向上サイクルの実現」記載のとおり、事業モデルとしても、一定の失敗が生じ得ることは織り込んだ上での事業運営を行っております。したがって、当社としては、1回のミッションの未達が直ちに営業面、財務面における重大な悪影響を及ぼすものではないと考えております。しかしながら、ミッションの未達が継続して発生した場合においては、当社の技術的信用力が低下することで、当社の株価・資金調達能力・評判に悪影響が及ぶ可能性があり、後続ミッションにおける顧客離反リスクが顕在化する可能性があります。また、ミッションが未達となることにより、当社の技術力の検証ができない可能性や、必要なデータを取得できない可能性もあり、これにより、その後のミッションに影響を及ぼす可能性があります。
また、前記「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等 2.ミッションリスクに備えた手当」記載のとおり、当社とSpaceX社との間の打上契約では、打上げ後にはいずれの責かを判定することが困難なことから、業界慣行上、相互の責を問わない契約となっており、当社の責によらないと考えられる事由により発生しミッション継続に支障が起きた場合であっても、同社に対して打上代金の返金を求めることができないこととされています。上記のリスク軽減措置についても、例えば当社が加入する保険の保証限度内で当社が負担する損失をカバーできない等、リスクを軽減するのに十分でない可能性があり、また、本書提出日現在において当社はミッション2以降について保険契約を締結していないところ、月保険においては現時点で商品内容が確立されておらず、不確実性を伴うこと等から、当社が望む経済的条件で保険に加入できない可能性、損害を十分に幅広くカバーする保険に加入できない可能性や、高額な保険料によって当社の収益が圧迫される可能性もあります。
(2)開発遅延について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社は2022年12月11日にミッション1の打上げを完了するとともに、現在ミッション2、3に向けてランダー及びローバーの開発を進めており、その開発状況の詳細は前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」記載のとおりです。当社は、スケジュールについては進捗管理を専担するプロジェクト・マネジメント・オフィスを設け厳格に管理しており、仮にスケジュールに影響を与える事象が生じた場合においては、全体スケジュールへ影響を及ぼさないよう、製造工程の手順調整や部分的な作業の加速によって調整する方針ですが、従前ミッション1において、発注から納品までに年単位の時間を要する長納期品の納入に伴う開発期間の変更や、顧客ペイロードインターフェースのためのランダー仕様変更、ランダーの推進系システムの一部不具合による再調達等により、開発スケジュールの遅延が生じたことがあり、今後も同様の遅延が生じる可能性があります。当社が行う月面開発事業においては高度な技術と正確性が求められ、ミッションの成功に向けては、細心の注意を図り、万全を期す必要があることから、今後の組立工程や試験の結果、及びその結果を踏まえた物品の再調達による納期の関係等様々な要因により、やむを得ず遅延が発生する可能性があります。
開発上の技術的問題により遅延が生じた場合、当該問題を克服するために想定外の費用が生じる可能性や、想定外の期間の遅延が生じる可能性があります。当社が2024年に打上げを計画するミッション2については、既にサブシステムレベルでのCDRが完了し、今後フェーズD(制作・試験)へと移行してまいりますが、フェーズDにおいても、様々なコンポーネントを1つのシステムに組み立てる過程や、組立後の試験において不整合や不具合が判明する場合があり、その結果、ミッション2の実行時期が遅延する可能性があります。また、生じた問題の度合いによっては、再度CDRをやり直す必要が生じる可能性があり、その場合、ミッション2の打上時期が大幅に遅延する可能性があります。また、前記「第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>」記載のとおり、当社のミッション3以降のシリーズⅡランダーと、ミッション6以降にシリーズⅡランダーと併用することを目指して開発に着手しているシリーズⅢランダーは、ミッション1及びミッション2で使用するシリーズIランダーの設計からの変更を予定しているところ、ミッション1及びミッション2に用いるシリーズⅠランダーと比較して大きく、デザインや仕様のほか、組立、運用場所もミッション1及びミッション2から変更される予定であることから、ミッション1及びミッション2のシリーズⅠランダーを予定通り開発できたとしても、ミッション3以降のシリーズⅡランダー及びミッション6以降のシリーズⅢランダーが予定通り開発できる保証はなく、開発できたとしても当初の想定を上回る費用が生じる可能性があります。ミッションが遅延した場合、打上げ契約等外部パートナーとの間の契約内容を変更する必要が生じる可能性や、追加の費用負担が発生する可能性があり、当社の希望通りに変更や資金的な手当てができない場合にはミッションの実行に支障が生じる可能性があります。さらに、当社が既に受注を受けている顧客が発注の変更又はキャンセルを要望する可能性があります。当社は、少なくとも技術実証段階であるミッション1、ミッション2の期間については、当社ペイロードサービスの本格的な商業化前であることに鑑みて、顧客とのペイロード契約上、かかる変更やキャンセルに伴う返金が発生しない方針で基本的に合意し最終契約を締結しておりますが、商業化を目指すミッション3以降において同趣旨での契約が合意されない場合には、当社が想定する収益が減少する可能性があります。また、1つのミッションが遅延した場合には、後続のミッションスケジュールにも影響を及ぼす可能性があります。このような場合には、売上計上時期が後ろ倒しになる等、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)外部要因によるミッションの遅延について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:特定時期なし)
当社の開発がスケジュール通りに進む場合にも、当社からのコントロールが難しい要因により当社のミッションスケジュールが影響を受ける可能性があります。当社はSpaceX社と打上契約を締結していますが、打上げのタイミングは第三者との相乗り契約となる場合には、相手方のミッションスケジュールに影響を受ける可能性があり、また、天候・周期・同じ打上場所において先行する他社の打上スケジュール等により、数週間から長い場合には数ヵ月の調整が必要になる場合もあるため、SpaceX社との契約上打上可能期間を数ヵ月間の幅をもって設定することにより対処しております。また、顧客が当社ランダーに搭載するペイロードについては、当該顧客においても月面開発事業のためのペイロード開発について経験を有さないことが想定されるところ、顧客側での開発状況が想定通りに進捗しない場合や顧客側の都合でペイロードの重量や仕様に変更がある場合等においては当社のミッションスケジュールに影響を与える可能性があり、その結果、売上計上時期が後ろ倒しになる等、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、原則として、顧客が契約上の期限までにペイロードを提供できない場合には顧客が代替のマス・シミュレータを提供しなければならない旨の規定を含む契約を顧客との間で締結しており、また、契約締結後、又は必要に応じて契約締結以前の交渉段階から、顧客のペイロード開発の進捗状況をモニタリングすることで当該リスクに対処してまいりますが、かかる対応が必ずしも十分にできない可能性があります。
(4)市場について (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の属する宇宙産業は将来の成長が期待される市場でありますが、当社が事業収益を見込むペイロードサービスとデータサービスは、現在グローバルでも草創期に当たります。それゆえ、宇宙産業の将来には多くの不確実性が伴います。当社では既に現在ミッション1及びミッション2の顧客からの受注の確定及び、ミッション3以降に係る顧客からの潜在的受注を確認しておりますが、今後、当該事業における市場が当社の想定通り成立・成長する保証はありません。例えば、世界的な経済情勢や企業の景気による影響等により事業環境が変化した場合には、当社の顧客が政府機関の場合には月関連の事業に投入可能な予算額が減少し、また民間企業の場合には研究開発予算や事業開発予算・ブランディング予算等が減少し、その結果、市場において十分な需要が生じない可能性があります。加えて、当社又は第三者が策定する市場規模に関する予測は、様々な仮定や前提条件に基づいており、前提条件の内容等によってその結果は大きく異なります。例えば、前記PwC社の調査においても、各地域の市場トレンドや観測可能な調査に基づくボトムアップ分析と、当社のビジョンである「2040年に月に1,000人が居住」することと同様の前提を置いた場合のロードマップ分析では大きく結果が異なります。したがって、これらの予測において用いられる仮定や前提条件が正しくない場合には、予測とは大きく異なった結果となる可能性があります。また、当該調査は2021年9月に発表されたものであり、例えばNASAのアルテミス計画の遅延等、それ以降の市況や地政学的状況の変化を反映しておりません。
また、前記「第1 企業の概況 3.事業の内容 <当社グループが注力する月面輸送サービスのセグメントについて>」記載のとおり、当社は、ペイロードサービスにおいて、小型セグメントへの戦略的集中を行っており、中~大型のセグメントのペイロードを指向する顧客とは重複しない一定層の小型セグメントが成立し得ると考えているところ、ペイロード市場における主要なニーズが、当社が対応出来ない中~大型のペイロードを指向する場合には、当社が提供するサービスへの需要が十分に喚起されないおそれがあり、また、仮に需要があったとしても、他の事業者が提供する中~大型ランダーの余剰スペースに搭載する形のペイロードサービスによって代替されるおそれもあります。さらに、当社が行うペイロードサービスの単価等については既に確立した水準は存在しないことから、契約相手方との関係や競合相手の状況によっては、当社が希望する水準での価格設定や契約条件の設定を行えない可能性があります。
加えて、データサービスについては、潜在的な顧客からのニーズは確認されており、当社として顧客からの受注も存在しているものの、現時点で十分な市場は確立されておらず、また、同サービスにおける価格設定についても、今後市場動向や競合の動向によって仕組み等が変動する可能性があります。したがって、将来的に同サービスにおいて、当社が期待するだけの需要を喚起できない可能性や、できたとして当社が希望する水準での価格設定を行えない可能性があります。また、当社が顧客のために取得したデータについて、顧客との交渉次第では、当社が権利を確保できない可能性があり、その場合、当社が計画するデータプラットフォームやデータベースの構築が遅延する、又は実現しない可能性があります。
このように、当社の想定通りに市場が成立・成長しなかった場合等には、売上計上時期が後ろ倒しになる等、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)当社のデータプラットフォームを用いたSaaS型・サブスクリプション型のサービスについて
前記「第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>2.データサービス」記載のとおり、将来的には、当社の高頻度なミッションを通じて、当社のインターナル・ペイロードから取得・蓄積した情報に、地球上で入手可能な既存のデータも加え、加工、解析、統合することで、顧客にとって高付加価値な「大規模な月のデータベース」をクラウド上に構築し、顧客が自由にアクセスし、定額料金を課金の上、利用して頂く、SaaS型・サブスクリプションモデルのビジネスの展開を目指しています。当該ビジネスモデルの実現のためには、当面の間、当社がインターナル・ペイロードを通じて月面の様々なデータを取得することが前提となりますが、ミッション未達等により、当社の想定通りミッションが実行されない場合には、当社の月面データ取得にも悪影響が及ぶ可能性があります。また、当社が十分に資金調達を行うことができない等の理由により、当社の想定通りの頻度でミッションが実行できない場合にも、当社の月面データ取得にも悪影響が及ぶ可能性があります。これらの場合、当社の同サービスの競争力を失う可能性があります。加えて、ミッションが予定通り実行されたとしても、当社がインターナル・ペイロードとして輸送するローバーや、計測機器・カメラ機器等を通じて、想定通り月面のデータが取得できるという保証はなく、当社の想定通りデータが取得できない場合、サービスの提供が困難となる可能性があります。また、データサービスのビジネス展開のためには、データセンサー・データプラットフォームの構築費用やデータサービスのための人件費等多額の支出が必要となるところ、必要となる支出が当社の想定を上回る可能性があります。また、支出したにもかかわらず、様々な要因により、当社がデータサービスを実施できない可能性があります。さらに、当社がデータサービスの提供のために外部業者と協力する場合、当該業者と契約条件を合意できない場合や当該業者によるサービスが想定通りに提供されない場合等には、当社によるデータサービスの提供に支障が生じる可能性があります。
加えて、今後、当社がデータサービスの展開ができたとしても、競争が激化する場合や、当社が付加価値のあるサービスを競争力のある価格で提供できない場合には顧客を獲得できる保証はなく、また、当社が十分な利益を上げられるほどの単価を設定できる保証もありません。
(6)当社のMOU及びI-PSAについて
前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等」記載のとおり、当社は世界各国の民間企業・宇宙機関・研究機関との間で、基本的にミッション3以降における将来的なペイロードサービス、データサービスについて、MOU等を締結しております。しかしながら、これらのMOU等は法的拘束力を伴うものではなく、MOU等を締結したとしても、当社の売上高が計上されるわけではありません。また、これらのMOU等について、当社が最終契約を締結できる保証はありません。また、最終契約を締結できたとしても、当該契約の内容は、MOU等の内容とは大幅に異なる可能性があります。さらに、当社が締結するMOU等は、相当期間、先の内容について定めるものもあり、仮にMOU等の内容通り最終契約締結に至ったとしても、将来の時点においては経済合理性を欠いている可能性もあります。
(7)販売可能なペイロード容量について
当社のミッション1及びミッション2では、ランダーの設計上、顧客に提供可能なペイロード容量を30kgに設定しておりますが、このすべての重量について顧客へ課金することは想定しておりません。具体的には、顧客に販売するためのデータを取得するための社内の実験機器の搭載や、顧客ペイロードの性質に伴う想定外の追加デバイスの搭載等により、顧客に課金可能なペイロード容量が削減される可能性があります。事業計画上は、ミッション1においては12.43kg、ミッション2においては10.5kgを顧客に課金可能な容量として設定し、一定程度保守的な見積もりを置いておりますが、2024年を予定するミッション2においては今後の状況次第で変更となる可能性があります。またミッション3以降においては、顧客に提供可能なペイロード容量を最大500kgに設定予定ですが、ミッション1及びミッション2と同様に不確定要素が存在することから、事業計画上は過去の実績を鑑み一定の開発マージンを割り引いた容量を設定し、更に容量をすべて充足するだけの顧客を獲得できない可能性を踏まえ、一定の販売充足率の前提も掛け合わせた想定歩留まり率を設定の上、将来的にこの値が徐々に改善される前提を置き、売上計画を立てております。
上記に加えて、ペイロードの構成によっては想定よりも多くのペイロード容量を要する場合もあり、ペイロード容量は顧客へ課金できる容量とは異なり、また、販売可能容量のすべてについて顧客の契約を獲得できるとは限らない点に留意する必要があります。
(8)競合について
当社の事業と同様のビジネスモデルを有している企業は海外に数社あり、その中には、2023年中にミッションの実行が予定されているものがあります。また、当社は、月面ペイロード輸送事業及びデータ事業を行う企業のみならず、宇宙衛星軌道にペイロードを輸送する事業を行う企業や、月面探査ローバーの開発事業のみを行う企業等とも競合する可能性があります。
当社は東北大学の吉田研究室での月面探査ローバー開発をベースとして、創業以来、約10年にわたるローバー開発の歴史を持ち、当社開発のローバーは「Google Lunar XPRIZE」の中間賞を受賞した実績を有します。また、ランダー開発においても2016年頃から取り組みを開始する等、比較的長い期間の開発実績と研究成果の蓄積を有しており、これらランダー及びローバーの開発状況が評価されたことからNASAのCLPSへ採択され、今後も継続してNASAから提示されるタスクオーダーの受注資格を有する等の実績を持ちます。それに加え、技術的難易度の高い着陸誘導制御をアポロ計画の月着陸で実績を持つドレイパー研究所と協業することによる技術競争力、日本、米国、欧州3拠点体制により各国政府の輸出規制等に左右されない最適なサプライヤー選定が可能になることによるコスト競争力の両面において他社との差別化を目指してまいりますが、宇宙産業は将来の成長が期待される市場であり、引き続き国内外の事業者がこの分野に参入してくる可能性があります。このため、先行して事業を推進していくことで、さらに実績を積み上げて市場内での地位を早期に確立してまいりますが、今後において十分な実績が得られなかった場合や、新規参入により競争が激化した場合には、ペイロード価格を下げざるを得ない場合による売上減少等、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、データサービスについても、当社のペイロードサービスの競合他社が、当社同様、ミッションで取得したデータを用いた上でデータサービスを提供する可能性があり、また、宇宙衛星軌道上で宇宙データサービスを取り扱う会社が、業務の一部として、月面データ事業に従事する可能性もあります。
当社の競合他社の中には、当社に比べ、より多額の投資ができる企業や、より高価値又は魅力的な価格でサービスを提供することができる企業が存在する可能性があります。また、既存の競合他社が、第三者と戦略的提携等を行うことにより、競争力を強化する可能性もあります。加えて、今後、海外の競合他社が政府から補助金等を受領することによって競争力を高める可能性もあります。このように、当社の競争力は多くの要因によって影響を受けるところ、当社が競争力を維持することが出来なかった場合、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9)重要な外部パートナー及び顧客への依存について (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社が開発するランダーは、前記「第1 企業の概況 3.事業の内容 <ランダー・ローバーのテクノロジー及びペイロード>」に記載のとおり、ミッション1及びミッション2の推進系システムについてはAriane Groupに製造を委託し、着陸制御システムの開発についてはドレイパー研究所とのアライアンス関係を築いています。
また、ミッション1から3の打上げに関しては、SpaceX社とファルコン9ロケットによる打上契約を締結しております。これらの関係は、当社における技術及び競争上の強みとなっていると考えております。
しかしながら、当社がこれらの関係を継続し続けられる保証はありません。当社これらのパートナーと長期にわたるビジネス面での連携を過去より実施し信頼関係を構築するとともに、定期的なミーティング等の場を通じて関係維持に努めておりますが、既存の関係を失った場合、同等の技術的水準又は価格水準を提供する代わりの第三者パートナーを確保できない可能性があります。また、現状の契約期間の終了後にこれらのパートナーとの契約を再締結又は更新できる保証はなく、これらの契約が同価格又はサービス水準では更新されない可能性もあります。さらに、これらはいずれも海外の企業であるため米国等の輸出管理規制が強化されることにより、これらのパートナーとの協働ができなくなる可能性もあります。
加えて、重要なパートナーとの契約では、通常の民間企業と契約する場合に比べて、当社にとって不利な契約条項が含まれる可能性があります。例えば、当社子会社であるispace technologies U.S., inc.は、2022年7月にNASAのCLPSのタスクオーダーCP-12のサービスプロバイダーに採択されています。これに関して、当社子会社であるispace technologies U.S., inc.は、ドレイパー研究所との間で、ランダーの製造やペイロードサービスを実施するための請負契約を締結し、当該契約に基づき、ミッション3において、2機のリレー衛星を月周回軌道に投入し、月震計(FSS)、地下の熱流探査機(LITMS)、及び電磁場測定器(LuSEE)といった一連の科学実験機器を含むペイロードを月の裏側に存在する南極付近に輸送する予定です。しかし、当社子会社は、ドレイパー研究所との契約上、自らの契約不履行又は履行遅滞に起因して発生した損害についてドレイパー研究所に対して損害賠償義務を負う可能性があり、また、当社起因の理由によりタスクオーダーCP-12の費用が増加した場合には、当該増加費用分をドレイパー研究所に対して当社が負担することになる可能性があることから、最終的な受取金額は減少する可能性もあります。
また、上記の企業以外にも、当社は開発するランダーの部品の多くを外部から調達しているところ、部品調達に遅延が生じた場合や、当該部品に欠陥等があった場合、さらには、新型コロナウイルスの拡大を含む天災や事故等により外部サプライヤーの生産能力が制限された場合等には、当社の開発・ミッションに遅延が生じる可能性や、代替調達先の確保をしなければならなくなることにより追加の費用を負担する可能性があります。
加えて、「第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>」記載のとおり、当社のランダーは、ロケットから放出された後、ミッション完了まではすべて当社が東京都中央区日本橋に開設いたしましたミッション・コントロール・センターより、当社の従業員により制御されるところ、そのために必要なミッション・コントロール・センターとランダー間の宇宙通信については、欧州宇宙機関(ESA)傘下のESOCの協力の下、同機関が保有する専用の宇宙通信ネットワークを利用する計画であるため、当該ネットワークに障害が生じた場合にはミッションの実行に支障を生じさせる可能性があります。
(10)打上業者に関するリスクについて
当社がミッション1からミッション3で使用するランダーの打上げについては、前記「第1 企業の概況 3.事業の内容 <ランダー・ローバーのテクノロジー及びペイロード>」に記載のとおり、SpaceX社と打上契約を締結しております。
当該契約上ミッション2においては、第三者のペイロードとの相乗りでSpaceXのロケットに搭載される予定です。SpaceX社は、当社及び相乗り先のスケジュールや打上場所の天候等を考慮して打上スケジュールを決定する責任を負っており、当社のミッションスケジュールに遅延等の影響が生じる可能性があります。また、ミッション3においては当社がSpaceX社のロケットを占有する契約となっておりますが、この場合も、米国連邦航空局等の政府機関によるSpaceX社のロケット及び/又は当社のランダーの打上げの承認が遅れた場合等に、打上げスケジュールに影響が生じる可能性があります。
このような場合でも、当社は既存顧客との間で、少なくともミッション1及びミッション2の間は、基本的な方針として当社の顧客に対して返金を行わない契約を締結しておりますが、顧客側が任意解除権を有する契約や一定期間以上のスケジュール遅延が生じた場合に顧客側に解除権が発生する(ただし、後者については既に受領済みの対価についての返金は不要となる)契約や、一定のマイルストーンの達成を一部支払の条件としている契約を一部の顧客との間で締結しており、結果としてミッションが遅延又は達成されない場合、当社の評判や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社はミッション4以降においても、ランダーの打上げについては、第三者である打上業者に委託をする予定ですが、将来において必ずしも十分な数の打上業者が存在するとは限らず、業界全体として十分な打上機会が確保されない結果、当社ランダーの打上コストが当社の想定を上回り、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、打上業者の不足等により、当社のスケジュール通りのミッションの実現を可能とする打上業者と当社が契約できなかった場合には、当社のミッションスケジュールに遅延等が生じる可能性があります。
上記の結果ミッションスケジュールに遅延が生じた場合には、遅延の期間や顧客との契約の内容によっては、当社の売上高の計上時期に影響が生じる可能性があります。
(11)政府機関の顧客について (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社の既存顧客の多くが政府機関であり、また、当面の間、当社の潜在顧客の多くも政府機関となることが予想されるところ、一般に政府機関の数は限定的であり、受注できる契約数も限定的となる可能性があります。また、政府機関からの発注については、国家予算や地政学上のリスクによる影響を受ける傾向があり、これらによって、政府機関からの発注自体が少なくなるか、発注内容が変更若しくは取り消される可能性があります。また、政府機関からの発注への応募についても一定の当該国での内製化要件等が課される場合もあり、当社としては米国・日本・欧州の各拠点で開発体制を敷いているものの、当社が必ずしも応募できるとは限りません。加えて、政府機関との契約については、入札手続を経ることから当社が期待する水準の単価とならない可能性があり、したがって、当社の想定通りに受注できない可能性があります。また、契約締結後も、政府機関による解約が広く認められる場合等民間企業と契約する場合に比べて当社にとって不利な契約条項が含まれる可能性、政府機関が契約先であるゆえに労働・人種差別・環境等の法規制の対象となる可能性、当社において追加的な規制や要件の遵守を求められる可能性、契約対象であるプロジェクトが遅延する可能性、支出に際して政府機関の承認が必要となる可能性、当社の技術内容を含めた一定の事項について開示が要求される可能性、調達先について一定の要件を課される可能性や、現地のオフィスや施設等の設置等を求められる可能性等があります。
加えて、政府機関との契約においては、契約条件の遵守について政府機関による詳細な調査権が認められる場合があります。さらに、当社がこれらの規制や条件等に違反した場合、契約の解約のみならず、行政処分等の対象となる場合があり、かかる処分等が下された場合、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
したがって、政府機関からの発注については、受注できたとしても、当社が想定したとおりの収益を上げることができない可能性があります。
(12)資金調達について (顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:1年以内)
当社は事業活動を維持拡大するため、今後も多額の研究開発投資が必要となり、また、想定を上回る投資の増加、事業環境の変化への対応、シンジケートローン契約に係る財務制限条項の遵守に向けた資金確保が事業上重要となります。当社が現在契約しているシンジケートローンの財務制限条項を遵守するため、また、ミッション3以降の将来的な顧客からの売上が当初計画よりも遅れるケースや、追加的な開発コストが必要となるケース等に備え、当社として安定的な財務基盤を維持することは重要と考えられることから、ロックアップ期間終了後の近い将来において、約50億円程度の資本増強による資金調達を実施する可能性があります。
また、前記「第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>2.データサービス」記載の大規模データベースの実現のためには、様々な分野において、多額の研究開発投資が必要となり、継続的な外部からの資金調達が必要となる可能性があります。例えば、当社は上記大規模データベースの実現等将来の事業規模拡大を企図した研究開発投資(以下、「先端研究開発投資」という。)を早期に実施する予定であるため、上記約50億円程度の資本増強による資金調達に加え、これと同規模程度の追加の資金調達を、資本増強、負債調達又はその他の方法により、来期実施する可能性があります。ただし、当該資金調達を実施しない場合にも、既に契約済みであるミッション3顧客からの入金に加え、今後ミッション3以降の将来的な顧客から計画通りの入金を計上することが可能である場合、それらを原資として、先端研究開発投資を除いた当社の運転資金を維持することが基本的に可能であると見込まれることから、追加の資金調達の手段、時期等につきましては、今後の金融環境や事業環境を踏まえつつ慎重に検討していく予定であり、追加の資金調達の全額又は一部を実施しない可能性もあります。
しかしながら、当社が将来において想定する上記の資金調達が出来ない場合や、必ずしも望ましい条件での資金調達ができない場合等は、当社がキャッシュ・フロー不足に陥る可能性や、当社の事業を支えかつこれを成長させるために必要な投資を行うことができない可能性や、当社のミッションの一部の遅延又は中止を余儀なくされる可能性や、当社が財務制限条項を遵守できなくなる可能性があり、これにより当社が将来の支出計画又は事業活動の一部を遅延又は断念しなければならなくなるおそれや、当社の競争力に悪影響が生じるおそれがあります。また、当社は、上記の資金調達以外にも、今後、継続的な外部からの資金調達が必要となる可能性があるところ、継続的な資本調達のために当社株主に希薄化をもたらす株式発行が繰り返し行われる可能性があります。さらに、借入れによる調達を行う場合には、財務制限条項その他の条項が設定されることにより、当社の事業活動が制約される可能性があります。
(13)財務制限条項について (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社グループの借入金のうち、株式会社三井住友銀行をアレンジャー、株式会社みずほ銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社商工組合中央金庫をコアレンジャー、株式会社静岡銀行を参加金融機関とする、総額50億円のシンジケートローンには、財務制限条項(下記①及び②)が付されており、2023年3月期末時点で、当該条項(下記①)に抵触しております。当社は、2023年3月期末を基準とする財務制限条項に係る期限の利益喪失につき権利行使しないことについて、シンジケート団から合意を得ておりますが、当社が将来において財務制限条項に抵触した場合、シンジケート団から同様の合意を得られる保証はなく、シンジケート団が当社の期限の利益を喪失させる権利を行使した場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
なお、2023年3月末時点において純資産は△2,347百万円であり、同時点において現預金残高は3,381百万円となっております。
①各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を正の値に維持すること。
②各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される現預金の合計金額を30億円以上に維持すること。
(14)継続企業の前提に関する重要な事象について
当社グループは多額の先行研究開発投資と長期の開発期間を要する宇宙関連機器の開発に従事していることから、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、現在のところすべての開発投資を補うための十分な収益は生じていないことから、2023年3月末時点において純資産が△2,347百万円となり債務超過となりました。これらの状況から、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
ただし、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、当該重要事象等を解消するための対応策を実施していること、また、債務超過の解消のための自己資本の充実を目的とした機動的な資金調達の可能性を適宜検討していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
(15)株式価値の希薄化について
前記「(12)資金調達について」記載のとおり、当社の事業においては、継続的に外部からの資金調達が必要となる可能性があり、その手段として、株式発行が繰り返し行われた場合には、当社の株式価値が希薄化する可能性があります。
また、当社は、業績向上に対する意欲向上を目的としてストック・オプション制度を導入しており、会社法の規定に基づく新株予約権を当社グループの従業員に付与しております。2023年3月末現在、新株予約権の対象となっている株数は8,797,343株であり、当社発行済株式総数の53,901,120株に対する潜在株式比率は16.3%に相当しております。これらの新株予約権が行使された場合は、当社の株式価値が希薄化する可能性があります。
(16)人材の確保と育成について
当社が今後更なる成長を成し遂げていくためには、優秀な人材の確保が重要課題の一つであると認識しております。当社は現在も人材紹介会社を利用した中途採用を実施し、従業員からの紹介による採用(リファラル採用)制度を導入するとともに外部業者を活用する等、多様なチャネルを用いて優秀な人材の確保を進めておりますが、ミッション数の増加やデータサービスの立ち上げ及び拡充に伴う今後の事業拡大のためにはより一層の多様かつ優秀な人材採用が必要となります。これらの人材を十分に採用できない場合や、あるいは在職中の優秀な従業員が退職する等した場合には、当社の事業拡大の制約となり、その結果、ミッションの遅延が生じる等、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)法的規制等について
当社は、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)に基づく人工衛星等の打上げに係る許認可、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律(宇宙資源法)に基づく資源の探査及び開発に係る許認可、並びに、当社完全子会社である株式会社ispace Japanで取得すべきランダー等の当社宇宙機が宇宙空間から地上に向けて電波を発するに当たっての電波法等の許認可を除き、現状想定している当社の事業を制限する直接的かつ特有の法的規制は本書提出日現在において存在しないと考えております。宇宙活動法、宇宙資源法及び電波法については、当社が実施する各打上ミッションごとに許認可を取得する必要がありますが、ミッション1の宇宙活動法に係る許認可については関係省庁との協議を実施し、2022年11月4日付で許認可を取得しております。宇宙資源法に関しましても、同様に2021年12月23日施行後に関係省庁とコンタクトを取り始め、2022年11月4日付で許認可を取得いたしました。また、電波法に関しては、免許取得の前提となる国際電気通信連合(ITU)との宇宙空間で使用する電波の周波数の調整が完了し、電波法に基づく無線局免許取得に向けた総務省とミーティングを重ね、2022年9月7日付で予備免許を取得しております(本免許につきましては、制度上、ミッション1において当社のランダーが月面に着陸した後に取得する予定となっておりました。)。
上記以外にも、当社が事業収益を見込む市場は、現在グローバルでも草創期に当たっており、今後当社の事業を直接的に制限する法的規制がなされた場合には、当社の事業展開は制約を受ける可能性があります。例えば、上記の宇宙資源法上、当社が採掘等をした宇宙資源について、当該採掘等をした者が所有の意思をもって占有することによってその所有権が認められていますが、今後の国際的枠組み等で所有権を規制された結果、所有権に関して誓約を受ける可能性は否定されません。また、いわゆる宇宙5条約等についても、惑星汚染への対策(宇宙条約第9条)、及び、第三者への損害発生時の対応(宇宙損害責任条約第2条及び第3条)等において当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。「資源採取の適法性(宇宙条約第2条)」については、月面で展開をする当社の宇宙機(又は当社ランダーに搭載した他社のペイロード)が月面の環境を汚染しないかという問題がありますが、国際宇宙空間研究委員会が定める惑星保護方針に準拠する方法で当社事業を進めるよう準備をしており、宇宙条約第9条が当社事業の障害となるおそれ(問題の発生可能性)は低いものと考えております。また、「第三者への損害発生時の対応(宇宙損害責任条約第2条及び第3条)」につきましては、打上ロケットから切離し後に仮に当社の宇宙機が第三者に損害を与えた場合には「打上げ国」である日本が責任を負う可能性があり、その場合には生じた損害につき、当社も求償を受けるリスクがありますが、他衛星への衝突リスク等については、(i)宇宙活動法に基づく打上げ許可に際して内閣府にて事前に十分審査されておりますのでそのリスクは低いと考えており、また、(ii)宇宙損害責任条約上は宇宙空間で生じた第三者損害については「過失責任」であるところ、法的には宇宙空間で生じた損害については予見可能性がないという点で「無過失」を主張する余地も残されていることから、現時点で当社事業の大きな障害となる規定ではないと評価しております。なお、打上ロケット切離し前の第三者損害に関しましては、打上業者であるSpaceXが責任を持つ契約内容となっておりますので、基本的に当社の事業上のリスクは極めて低いと理解しております。当社としては引き続き法令を遵守した事業運営を行うべく、法令順守体制の強化や社内教育等を行っていく方針ですが、今後当社の事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(18)月面開発について
当社は前記「第1 企業の概況 3.事業の内容」記載のとおり、月の水資源やその他資源の商業的価値に着目した上で、“地球と月がひとつのエコシステムとなる世界を築くことにより、月に新たな経済圏を創出する”というビジョンのもと事業活動を行っており、当社が行うミッションはいずれも月面着陸が要件となっております。現状、月面開発事業については、各宇宙機関や民間企業が大規模な予算や計画を有しており、当社としては、今後、この傾向は継続し、拡大するものと考えております。
しかしながら、中長期的には、月を探査した結果、月の水資源の埋蔵量が当初想定と異なる、あるいは月の水資源の採取が、技術的に又はコスト上容易でないことが判明する等、月の資源価値や商業的価値が当初の期待とは異なる可能性があります。また、特に大きな影響を及ぼす米国において、政策変更等により、宇宙領域への投資規模の拡大/縮小や、宇宙領域の中でも重点対象が月から他へシフトすることも考えられます。その場合、当社が行うペイロードサービス等の需要が、当初想定したほどのスピード又は規模で拡大せず、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(19)新型コロナウイルスの感染拡大について
現時点において、新型コロナウイルス感染拡大による当社事業への影響は限定的ですが、過去には、渡航や移動制限等により、当社の開発及び営業活動、広報活動には制約が生じておりました。また、サプライヤーとの関係においてもランダー開発に必要な物品の納入に一部遅延が生じておりますが、製造工程の調整等により全体スケジュールへ影響がないよう管理実施しております。その他にも、今後、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の停滞により、当社顧客が月関連事業に投入できる予算が減少する可能性があります。これらの場合、当社の事業運営、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がありますが、今後の感染拡大の規模や収束の時期についての見通しは立っておらず、現時点で業績に与える影響を予測することは困難であります。
(20)知的財産権について
当社は、事業運営の際に第三者の知的財産権侵害等が起こらないよう、弁護士事務所への照会等を実施し慎重に調査・検討を行っておりますが、第三者の知的財産権に抵触しているか否かを完全に調査することは極めて困難であります。このため、知的財産権侵害とされた場合には、損害賠償又は当該知的財産権の使用に対する対価の支払等が発生する可能性があり、その際には当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社の知的財産権が第三者により侵害された場合、営業秘密、ノウハウその他機密情報が外部に流出した場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、当社のペイロードが獲得するデータに対して適切な保護が得られない場合には、今後の当社の事業、特にデータサービスにおけるデータプラットフォームの構築等に悪影響を及ぼす可能性があります。
(21)訴訟、係争について
当社では、本書提出日現在において業績に重大な影響を及ぼす訴訟や係争は生じておりません。
しかしながら、今後何らかの事情によって当社に関連する訴訟、係争が行われる可能性は否定できず、かかる事態となった場合、その経過又は結果によっては当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(22)システム障害等について
当社では、社内システムのセキュリティ対策やネットワークの監視等を行い、安定的に運用できるように対策を講じておりますが、サイバー攻撃や不正アクセス等により重要データの流出が発生した場合、ITインフラ機器の障害、コンピューターウイルスへの感染、自然災害、その他不測の事態が生じることによりシステムトラブル等が発生した場合や、第三者によるデータの不正使用等が生じた場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、本書提出日時点において当社のデータサービスについてのデータシステムを構築しておらず、当該システムの構築やアップデートを適切に行えない場合、想定以上に期間を要する場合や、当該システムに障害が生じた場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(23)輸出規制について
当社では、ITAR(武器国際取引に関する規則)、EAR(米国輸出規則)及び外国為替及び外国貿易法(外為法)の対象となる技術情報を取り扱っております。当社においては米国製の慣性航法装置がITAR管理品に該当し、ランダー開発に用いる品目にはEAR及び外為法管理品が多数含まれることから、輸出管理を統括する専門部署を設置し厳格に輸出管理を行っております。また、輸出管理規制に関してeラーニングによる社内研修を実施することで全役職員への周知徹底も図っておりますが、規則を遵守できなかった場合には法的な処分を受け、また、社会的な信用の失墜等を招き、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(24)個人情報について
当社では、社員や一部顧客の個人情報を取り扱っておりますが、「個人情報の保護に関する法律」を遵守し、厳格な個人情報の管理の徹底を図っております。しかしながら、これら個人情報が漏洩した場合、社会的信用の失墜、事故対応による多額の経費発生等により、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性がございます。
(25)内部管理体制について
当社では、今後の事業運営及び業容拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しており、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底のため内部管理体制を充実・強化させていく方針であります。しかしながら、事業規模に応じた内部管理体制の整備に遅れが生じた場合は、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(26)特定人物の依存について
当社の代表取締役CEOである袴田武史は、当社の創業者であり、設立以来当社の経営方針及び事業戦略の立案や、その遂行において重要な役割を担っております。当社は特定の人物に依存しない体制を構築すべく、幹部社員への情報共有や権限の委譲によって代表取締役CEOに過度に依存しない組織体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により代表取締役CEOの当社における業務遂行が困難になった場合やその他の当社経営陣及び重要な従業員が当社から離職する場合、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(27)配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を経営課題と認識しており、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元政策を決定していく所存であります。
しかしながら、当社は成長過程にあり内部留保が充実しているとはいえず、創業以来配当を行えておりません。また、現時点ではミッションの達成に向けた研究開発投資等に充当し、事業拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。
将来的には、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元を行うことを検討してまいりますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。
(28)税務上の繰越欠損金について
第13期事業年度末には、当社に税務上の繰越欠損金が存在しており、将来における法人税等の税負担が軽減されることが予想されます。ただし、将来において当該繰越欠損金が解消又は失効した場合は、通常の税率に基づく税負担が生じることとなり、当社の当期純利益及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。
(29)自然災害等について
大規模な地震等の自然災害、伝染病の蔓延や事故等、当社による予測が不可能又は突発的な事由によって、事業所等が壊滅的な損害を被る可能性があります。このような自然災害に備え、従業員安否確認手段の整備、防災品の確保等に努めておりますが、想定を超える自然災害が発生する場合は、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、打上施設やサプライヤーが自然災害により損害を被った場合、悪天候により打上スケジュールが遅延した場合、サプライヤーの所在する地域においてテロや政治的混乱が生じた場合や、宇宙空間内で太陽フレアや流星塵が生じることによってランダーとの通信に悪影響が生じる場合等にも、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(30)海外事業展開について
当社グループは、海外への事業展開にも取り組んでおり、ルクセンブルク大公国及び米国に連結子会社を有しております。ルクセンブルク子会社及び米国子会社の財務諸表における現地通貨建の項目は、連結財務諸表作成のために円換算されることから、連結財務諸表数値は為替相場の変動による影響を受ける可能性があります。また、これら子会社が所在している国の政治・経済・社会情勢・法規制等の影響により、事業遂行の不能等のカントリーリスクが顕在化する可能性があります。
また、当社グループの海外現地法人は財務諸表を現地通貨建てで作成しています。また、当社も海外のサプライヤーとの間で複数の外貨建て取引を行っていますが、特に為替予約その他ヘッジ取引は行っておりません。当社は、ペイロードサービスやデータサービス等の主要な事業については米ドル建ての入金とすることによって、米ドルに対する円の為替変動リスクを一定程度軽減しておりますが、今後著しい為替変動があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
さらに、海外での事業活動においては、当社の企業文化を保ちつつ優秀な人材を確保することが困難となるリスク、宇宙産業や宇宙資源開発に関する法規制に関するリスク、雇用や労働慣行に関する現地法規制に関するリスク、言語・慣習の違いや地理的分散によって経営陣によるコミュニケーションが困難となるリスク、輸出入規制・課税に関するリスク、法規制の変更に関するリスク、法規制の遵守に関するリスク、贈賄規制に関するリスク、知的財産権の保護に関するリスク、新型コロナウイルスを含む公衆衛生や渡航制限に関するリスク、政治・経済状況に関するリスク等が存在し、これらが顕在化した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(31)収益認識に係る会計処理について (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし)
当社は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2021年3月26日)を適用しており、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識しております。ミッション1及びミッション2においては履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができないため、原価回収基準を適用しており、今後収益認識を開始するミッション3についても同様の理由により原価回収基準を適用予定ですが、3回のミッションを経たミッション4以降は履行義務の充足に係る進捗度を総原価の発生割合により見積る方法で収益認識を実施することを検討しております。また、進捗度の見積りに利用する総原価からは、「収益認識に関する会計基準の適用指針」の22項に準じて打上コストを除いた原価を用いることを想定しております。ただし、実際の会計処理は将来の顧客との契約締結後において個々の契約内容に従い決定されるものであることから、適用される実際の会計処理は上記と異なる可能性があります。特に、当社が想定する総原価からの打上コストの控除については、下記4つの要件すべてが満たされる必要があり、個別の契約内容を確認の上最終的な会計処理を決定してまいります。
① 当該財が別個のものではないこと
② 顧客が当該財に関連するサービスを受領するより相当程度前に、顧客が当該財に対する支配を獲得することが見込まれること
③ 移転する財のコストの額について、履行義務を完全に充足するために見込まれるコストの総額に占める割合が重要であること
④ 企業が当該財を第三者から調達し、当該財の設計及び製造に対する重要な関与を行っていないこと
実際の契約内容を検討した結果当社の想定する会計処理が適用されない場合には、認識する収益総額は変動しないものの、収益認識タイミングが想定と異なるものとなり、期間損益に影響を与える可能性があります。
(32)当社実績について
ランダー及びローバーの開発に当たっては、研究開発費の支出や優秀な技術者の採用等、先行的な投資が必要であり、結果として当社は創業以来営業赤字を継続して計上しております。今後も開発部門におけるスケジュール管理、財務部門によるコスト管理及び各開発段階におけるレビュープロセスによるクオリティ管理を実施することで開発を着実に推進するとともに、事業収益の安定化に向けて引き続き中長期的に持続可能な顧客市場の開拓を進めていく方針にあります。しかしながら、当社の技術は現時点では完全には実証されておらず、また、当社が属する市場は新しい市場であることから、今後の当社の利益を正確に予測することには困難が伴い、想定通りの開発計画・顧客開拓が進まない場合、当社サービスに対する需要が想定通りに集まらない場合、当該投資に見合った収入が得られない場合、想定外の費用が生じた場合等には、想定通りのタイミングで利益を上げることができず、当社グループの事業及び業績に重要な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、本書提出日時点において、データサービスについては売上実績がないことから、当社の過年度の業績は当社を評価するために十分な材料とはならず、今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。
(33)当社グループのイメージ及びブランドについて
当社の事業活動において、イメージ及びブランドは、既存顧客との関係維持又は新規顧客の獲得にとって重要な要素であると認識しています。ミッション未達や遅延、当社サービスの不具合、サイバー攻撃、顧客データの管理に関する問題について、当社にとってネガティブな報道がされた場合、当社に不利益な風説が流布した場合、当社の従業員又は経営陣による違法又は不適切な行為のあった場合その他当社のイメージやブランドに悪影響を与える事態が生じた場合や、同業他社に事故等が生じることにより月面探査に対するイメージが低下する場合には、当社の顧客が離反する又は当社が新規顧客を獲得できなくなることにより、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、第三者が当社の許可なく当社のブランド、商標、ロゴ等を使用した場合には、当社のイメージやブランドに悪影響が生じ、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(34)公募増資による調達資金使途について
東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資により調達した資金の使途につきましては、主にランダー開発や打上代金の支払い等運転資金に充当する予定であります。しかしながら、当社グループが属する業界の急速な変化により、当初の計画通りに資金を使用した場合でも、想定通りの投資効果をあげられない可能性があります。
(35)ベンチャーキャピタル等の株式所有割合に伴うリスクについて
当社の発行済株式総数に対するベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(以下「ベンチャーキャピタル等」という。)の所有割合は2023年3月末現在42.1%であります。当社の株式公開後において、当社の株式の株価推移によっては、ベンチャーキャピタル等が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性が考えられ、その場合、株式市場における当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、当社株式の市場価格に悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は7,192,886千円となり、前連結会計年度末に比べ5,294,581千円減少いたしました。これは主に、現金及び預金が2,950,606千円、ミッション1の打上実施等により前渡金及び長期前渡金の合計額が2,656,531千円減少したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は9,540,493千円となり、前連結会計年度末に比べ5,884,575千円増加いたしました。これは主に、2022年7月において各取引金融機関との間で締結したシンジケートローン契約に基づき、長期借入金が4,715,573千円増加したこと及びペイロードサービス及びパートナーシップサービスの進捗に伴い契約負債が1,156,878千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は前連結会計年度末に比べて11,179,156千円減少し、2,347,606千円の債務超過となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上(11,398,248千円)により利益剰余金が減少したことによるものであります。なお、2022年6月30日開催の定時株主総会の決議により、2022年6月30日付で資本準備金を4,210,385千円減少し、その他資本剰余金に振り替えております。また、振り替えたその他資本剰余金を繰越利益剰余金に振り替え、欠損填補を行っております。
② 経営成績の状況
当社グループは、人類の生活圏を宇宙に広げ、持続的な世界を実現するべく、「Expand our planet. Expand our future」をビジョンに掲げ、月面開発の事業化に取り組んでいる次世代の民間宇宙企業です。
当連結会計年度における世界経済は、一部で回復の兆しはあるものの、引き続き新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により不確実な状況が継続しております。
かかる環境下の中ではあるものの、当社グループが属する宇宙資源開発の分野では、NASAが推進する有人月探査計画であるアルテミス計画において、月面における平和的・友好的かつ透明性ある活動のガイドラインとなる「Artemis Accords(アルテミス協定)」に、日本と米国を含む全23カ国(2023年3月末時点)が調印するなど、引き続き活発な進捗が見られております。
日本政府においても画期的な進展があり、2021年6月15日には「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律」が国会において可決され成立しました。当法律は、日本の民間事業者が月その他の天体を含む宇宙空間に存在する水、鉱物、その他の天然資源である宇宙資源の探査及び開発に従事することを認めることを規定したものです。民間企業による宇宙資源利用を認める法律を制定した国としては、世界でも米国、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦に続く4番目の国となり、引き続き宇宙開発及び月面探査が大きく推進されることが期待されます。
このような状況の中、当社グループは、引き続きミッション1の月面着陸船(以下「ランダー」という。)開発を進捗させ、2022年9月までにランダーフライトモデルの最終的な機能試験を実施し、10月には打上予定地である米国フロリダまでの輸送を完了しました。米国への輸送後は、ロケットへの搭載作業、燃料充填等の最終準備を完了させ、2022年12月11日(日)16時38分(日本時間)に米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地 40射点より打上を実施しております。これらミッション1の重要なマイルストーンの進捗のみならず、ミッション2及びミッション3についても、ランダー開発を進捗させるとともに、ペイロードサービスの新規顧客獲得を推進しております。また、当社グループの活動をコンテンツとして利用する権利や広告媒体上でのロゴマーク露出、データ利用権等をパッケージとして販売し技術面や商品開発面での協業を行うパートナーシップ事業においても、既存パートナー企業とのパートナーシップ関係を推進するとともに、ミッション2までを対象とする「HAKUTO-R」の新規顧客獲得を推進いたしました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は989,241千円(前期比46.7%増)、営業損失は11,023,904千円(前期は4,056,667千円の営業損失)、経常損失は11,378,300千円(前期は4,039,154千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は11,398,248千円(前期は4,059,896千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
なお、当社グループの事業は月面開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,950,606千円減少し、当連結会計年度末には3,381,935千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は7,322,198千円(前連結会計年度は5,405,563千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失11,378,647千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は90,086千円(前連結会計年度は90,330千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出54,919千円、無形固定資産の取得による支出29,678千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は4,364,028千円(前連結会計年度は7,463,817千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入4,750,000千円等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当連結会計年度の受注実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
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サービスの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
|||
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受注高 (千円) |
前年同期比 (%) |
受注残高 (千円) |
前年同期比 (%) |
|
|
ペイロードサービス |
- |
- |
2,763,663 |
97.1 |
|
その他 |
696,135 |
255.7 |
517,312 |
287.2 |
|
合計 |
696,135 |
28.3 |
3,280,975 |
108.4 |
(注)1.当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、前連結会計年度のペイロードサービスにおきまして、大型案件を受注したことによるものです。
2.パートナーシップサービスについては、その事業の性質上、受注生産形態になじまないため、受注実績は記載しておりません。
3.当社グループは単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループは、月面開発事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載はしておりません。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
月面開発事業(千円) |
989,241 |
146.7 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
European Space Agency |
100,856 |
15.0 |
363,243 |
36.7 |
|
Mohammed Bin Rashid Space Centre |
197,732 |
29.3 |
278,248 |
28.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積もりを必要としております。経営者は、これらの見積もりについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績
(売上高)
当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べて315,100千円(46.7%)増加し、989,241千円となりました。これは主に、2021年4月以降順次顧客獲得を進捗させているペイロードサービスの売上に加え、研究受託開発売上が増加したことによるものであります。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べて96,920千円(28.5%)増加し、436,468千円となりました。これは主に、ミッション1の開発が進捗したことに加え、後続ミッションであるミッション2の開発も並行して進めたことによるものであります。この結果、売上総利益は前連結会計年度に比べて218,180千円(65.2%)増加し、552,773千円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べて7,185,417千円(163.6%)増加し、11,576,677千円となりました。これは主に、2022年12月11日にミッション1の打上げを完了したこと、また後続ミッションであるミッション2及びミッション3の開発も並行して進めたことにより研究開発費の計上額が増加したことによるものであります。
その結果、営業損失は△11,023,904千円(前年同期は△4,056,667千円)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比べて31,865千円(43.7%)増加し、104,785千円となりました。これは主に、為替差益83,481千円を計上したことによります。
営業外費用は、403,773千円(728.7%)増加し459,181千円となりました。これは主に、借入金増加による支払利息196,155千円の計上(前期支払利息は24,948千円)及び支払手数料250,000千円の計上によるものであります。
その結果、経常損失は△11,378,300千円(前年同期は△4,039,154千円)となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純損失)
特別利益は、計上しておりません。また、特別損失は、固定資産除却損347千円を計上しております。
その結果、税金等調整前当期純損失は△11,378,647千円(前年同期は△4,044,178千円)となりました。
(法人税等、親会社株主に帰属する当期純損失)
法人税等は、主に法人税、住民税及び事業税12,721千円を計上したことにより3,882千円(24.7%)増加し、19,600千円となりました。
その結果、親会社株主に帰属する当期純損失は△11,398,248千円(前年同期は△4,059,896千円)となりました。
b.財政状態
主な増減内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループは、安定的な事業収益化を目指す上で将来的に継続的なミッションの実現が必要であり、2022年12月11日に打上げを実施したミッション1だけでなく、後続ミッションであるミッション2及びミッション3のランダー開発も既に着手しており、今後も積極的に開発活動を推進してまいります。当社の資金需要として主なものは、ランダー開発のための部材調達費用、事業の拡大に伴う人件費、打上げ費用等です。必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。
現預金保有残高については、2023年3月期末における現金及び現金同等物が3,381,935千円であり、必要な流動性を確保しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。
⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。
⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(1)技術援助等を受けている契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約締結日 |
契約内容 |
契約期間 |
|
㈱ispace (当社) |
THE CHARLES STARK DRAPER LABORATORY, INC. |
米国 |
2018年6月1日 |
ミッション1,2を対象とする着陸誘導制御ソフトウェア開発契約 |
2018年6月1日から 開発サービス終了日まで |
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㈱ispace (当社) |
THE CHARLES STARK DRAPER LABORATORY, INC. |
米国 |
2018年6月1日 |
着陸誘導制御ソフトウェアのライセンス許諾契約 |
2018年6月1日から 利用停止時まで |
|
㈱ispace (当社) |
SPACE EXPLORATION TECHNOLOGIES CORP. |
米国 |
2018年6月29日 |
ミッション1から3を対象とするロケット打上契約 |
2018年6月29日から 打上サービス終了日まで |
(2)当社グループが技術援助等を与えている契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約締結日 |
契約内容 |
契約期間 |
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ispace technologies U.S., inc. (当社子会社) |
THE CHARLES STARK DRAPER LABORATORY, INC. |
米国 |
2023年1月26日 |
NASA CLPSに係る請負契約(※) |
2022年8月10日から 2025年5月31日まで |
(※)当該請負契約の概要については、前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題 (2)経営戦略等及び(3)経営環境」をご参照ください
(3)その他
当社は、2022年7月8日開催の取締役会において、株式会社三井住友銀行をアレンジャーとしたシンジケートローン契約を締結することを決議し、2022年7月26日付で契約締結いたしました。なお、当シンジケートローン契約には財務制限条項が付されております。
1.シンジケートローン契約締結の理由
当社月面着陸船・月面探査機の開発及び運用資金支払への充当を目的としております。
2.シンジケートローン契約の概要
(1) アレンジャー兼エージェント 株式会社三井住友銀行
(2) 借入金額 5,000百万円
(3) 借入金利 基準金利+スプレッド
(4) 借入実行日 2022年7月29日
(5) 返済期限 2025年7月31日
(6) 期限前弁済条項
①当社がミッション3又はミッション4の各契約に基づく売上金を受領した場合、ミッション3売上金の20%に相当する金額及びミッション4売上金の10%に相当する金額を期限前弁済すること。
②当社が株式公開を行った場合、5億円を期限前弁済すること。(注)
③当社の株式公開以降に第三者割当増資その他の募集株式・募集新株予約権の発行を行った場合、当該発行に係る調達金額に応じて15億円又は調達金額の20~25%に相当する金額を期限前弁済すること。
(注)当該期限前弁済は、当該報告書の提出日時点において完了済です。
(7) 担保等の有無
担保:株式会社三井住友銀行に開設した返済用リザーブ口座に対する質権の設定
保証:独立行政法人中小企業基盤整備機構による債務保証
(8) 財務制限条項
①各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を正の値に維持すること。
②各事業年度末日における連結貸借対照表に記載される現預金の合計金額を30億円以上に維持すること。
また、当社は、2021年4月30日に、株式会社三菱UFJ銀行との間で当座貸越契約(貸越元本極度額:1,000百万円。元本残高1,000百万円)を締結しましたが、同契約には期限前返済条項が付されており、株式公開に伴う資金調達(エクイティ調達)を行った場合は、かかる調達日の翌営業日以降貸付人が別途指定する日に、貸付の元本全額を、貸付人所定の方法により返済することとされています。当該元本の返済は、当該報告書の提出日時点において実施済です。
当社グループは月着陸、月面探査プロジェクトの達成に向けて、ランダー及びローバーの開発を実施しております。現在の研究開発は、当社のCTO室で実施されており、当連結会計年度における研究開発費の総額は、
当社は、2021年初頭にミッション1のランダー開発に係るCDR(Critical Design Review)を経て、フェーズC(詳細設計)を完了致しました。CDRは、ミッション要求からシステム仕様を経て設計結果に至るまでの一貫した整合性・実現性、開発計画を審査するものであり、一般的に宇宙機の開発において、設計段階が完了しモノ作りとしての製造段階への移行可否を判断する、開発上の中でも重要なマイルストーンとされています。CDRの実施に際しては、下記のとおり開発の各分野の外部専門家をレビュアーとして招聘し審議を頂きました。
中須賀 真一氏(東京大学教授)
低コストの超小型衛星の開発に精通しており、全体システムを俯瞰して技術妥当性を判断できる方であることからレビュアーとして招聘
趙 孟佑氏(九州工業大学教授)
深宇宙ミッションで特に重要となる帯電の影響について豊富な経験を有する方であることからレビュアーとして招聘
高島 健氏(JAXA)
JAXAにて深宇宙探査宇宙機の開発に携わり、全体システムを俯瞰して判断できる方であることからレビュアーとして招聘
一連の審査過程においては、社内エンジニアとは離れた中立的な外部専門家の立場から、設計(システム設計全般や帯放電環境等について)、試験(フライトモデルシステム試験計画等について)、運用(軌道設計等について)に関する一連の流れを審査頂いております。当社が実施したミッション1のランダー開発について、開発計画、設計の成果と、CDR後に実施する試験、運用の計画検討を審査頂いた結果、適切に進められていることをご確認頂きました。
CDRの完了後は、次のフェーズD(制作・試験)の段階へと開発フェーズを移行し、必要な加工やテストなどが完了したコンポーネントが段階的にランダーシステムへと組み立てられていきます。当社のミッション1においては、2021年初頭から当社がランダーの組み立て作業を行っている千葉県成田市の株式会社JALエンジニアリングのエンジン工場において、パイプの溶接作業を実施しました。また2021年5月より開始したドイツのAriane Groupの工場における本格的な組み立て作業を実施し、2022年10月までにすべてのランダー製造工程及び最終試験まで完了しております。その後、打上げ地である米国への輸送を実施し、輸送後はロケットへの搭載作業、燃料充填等の最終準備を完了させ、2022年12月11日に米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地 40射点より打上を実施しております。ミッション1において、着陸シーケンスの前に計画されている全ての月軌道制御マヌーバを完了し、ランダーが着陸シーケンスを開始する準備が出来ていることを実証し、事前に設定した10個のマイルストーンの内、Success8迄を完了しました。その後、2023年4月26日(日本時間)に実施した着陸シーケンスにて、ランダーとの通信の回復が見込まれないことから、Success9「月面着陸の完了」および Success10「月面着陸後の安定状態の確立」の達成は困難と判断しました。
また当社は、ミッション1の実施以降も、継続して高頻度ミッションを実現していく上で、ミッション1ランダーの開発と並行してミッション2及びミッション3ランダーの開発を開始しております。ミッション2は基本的にミッション1と同様のランダーを製造して、やはり同様にSpaceX社のロケットに搭載して打ち上げることを想定しています。基本設計がミッション1と同様のものを利用する予定のため、2022年7月にPDR(Preliminary Design Review)が完了し、現在フェーズC(詳細設計)へ移行しております。
また2025年に計画するミッション3では、ランダーの設計をこれまでのサイズから変更し、500kgのペイロードを輸送可能なランダーのサイズアップを実行することを計画し、主に米国子会社の拠点において研究開発を開始しております。
(注) 上記は、現時点での想定であり、今後、変更される可能性があります。