文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「Transforming Tomorrow thru Disruptive Technology!」を企業理念に掲げ、「グローバルの最先端テクノロジーを通じて、お客様と共に経営変革を実現し、社会課題を解決」することを目指し、Mission(データとグローバルの最先端テクノロジーを活用し、人と組織の変革を支援する)、Vision(誰もがデータとテクノロジーを使いこなし、未来に挑戦できる社会を創る)、Value(Beyond Borders, Beyond Limits(国境も限界も超えて挑戦する) | Enjoy the Challenge(変革・成長を前向きに楽しむ) | Co-create the Future(顧客・社会と未来を共創する))を軸に事業を展開しております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、売上高及び営業利益を重視しており、持続的な成長と企業価値の向上に取り組んでおります。併せて、キャッシュ・フローの健全性も重要な管理指標として位置付けております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、以下の中長期的な経営戦略を立案しております。
① コンサルティングサービス領域の拡大と稼働率やプロジェクトの生産性向上
主力の「Salesforce」や「Anaplan」に加え、アオラナウ株式会社による「ServiceNow」領域、さらには「AWS」「Microsoft」「Databricks」などの主要クラウド及びデータプラットフォームも含めたマルチクラウド対応を強化しております。
これにより、顧客の多様な課題に対応可能な提案力を一層高めるとともに、AI関連資格の取得推進やプロジェクト収支の可視化を通じて、稼働率の最大化と付加価値向上を図ってまいります。
②カスタマーサクセス領域の再構築とキャリアローテーションの推進
従来はお客様常駐型の派遣サービスを中心としていたカスタマーサクセス領域において、現在は「Remote Service」や「Hybrid Service」など、場所にとらわれない柔軟なサービス提供体制への転換を進めております。
これに伴い、社員の経験やスキルを活かした流動的なキャリアローテーション制度を整備・運用することで、属人性の排除と業務の標準化を推進し、安定的なサービス提供と収益性の両立を図ってまいります。
③「ConsulTech」サービスの拡大と新規収益源の創出
営業・マーケティング部門の課題をテクノロジーで解決する伴走型DX支援サービス「ConsulTech」は、当社グループにおいて重点的に育成する新規事業領域です。
The Model型営業体制の構築支援や、MA(マーケティングオートメーション)・SFA(営業支援)ツールの導入・運用支援を中心に、企業の成長を支えるコンサルティングサービスとしての価値を高めております。今後は、受注件数及び顧客単価の拡大を通じて、中長期的な収益基盤の確立を図ってまいります。
④採用力とサービス単価の向上
採用力とサービス単価の向上を両輪で推進し、人的資本の質的強化と事業収益性の改善を図ってまいります。
具体的には、以下の3点に注力しております。
・中途・新卒採用の強化と教育体系の拡充
ダイレクトリクルーティングの活用による即戦力人材の獲得に加え、新卒採用の拡大と一貫した育成プログラムの整備により、長期的な人材基盤の強化を進めております。
・コンサルティングサービスの組織力強化
プロジェクト体制の標準化や知見の共有を通じて、提供価値の向上と案件単価の引き上げを図ってまいります。
・カスタマーサクセス領域におけるDX推進と教育強化
属人性の排除やリモート体制への対応を進める中で、業務効率化と対応力向上の両立を目指し、研修体制の高度化とツール活用を推進しております。
⑤SaaS製品「AGAVE」の事業基盤化
当社が開発・提供するクラウド型人事業務支援SaaS「AGAVE」については、安定的な成長と事業基盤化を図るべく、以下の3点に取り組んでおります。
・BPOパートナーとの連携を強化し、販路の拡大と業務受託ニーズの取り込みを推進
・海外給与対応機能の拡充を通じて、多拠点・グローバル企業の新規導入を促進
・既存顧客間のビジネス交流機会を創出し、ユーザー基盤の定着と追加導入の活性化を図る
(4)経営環境
当連結会計年度における我が国の経済は、物価上昇の継続や人手不足の深刻化、為替の変動、海外情勢の不安定化といった要因により、依然として先行きの不透明な状況が続いております。一方で、企業活動は中長期的な成長に向けた構造改革の重要性が高まり、デジタルトランスフォーメーション(DX)(注1)や業務の自動化、人材戦略の見直しなどを中心とした変革への取組が拡大しております。
当社グループが属するパブリッククラウドサービス市場においても、IT基盤のクラウド移行(クラウドマイグレーション)(注2)や、経営判断に資するデータ活用の高度化、生成AI・ノーコード開発の活用といった新たな潮流が広がっており、IT投資の重点は従来の「業務効率化」から「経営変革」へと移行しつつあります。
こうした中、企業によるクラウド導入の進展とともに、導入後の定着・活用を促進するための人材育成や組織改革のニーズも高まっており、クラウドをどのように経営成果に結びつけるかが、新たな経営課題として顕在化しています。
国内クラウド市場は、2028年までに年平均成長率(CAGR)16.3%で拡大し、2023年比で約2.1倍となる16兆6,285億円規模に達するとIDC(注3)は予測しています。
クラウドサービスの中でも、当社の主力分野としている米国Salesforce.comは、2025年2月に2025年通期業績を発表しました。売上高は前年比9%増の379億ドル、GAAP営業利益率は19.0%、Non-GAAP営業利益率は33.0%、純利益は前年比50%増の62億ドルと、主要な指標で堅調な成長を記録しています。
このような成長市場を背景に、当社グループは、SalesforceやAnaplanを活用したコンサルティングサービス、自社SaaSプロダクト「AGAVE」による業務基盤支援に取り組んでおります。さらに、2024年8月には関西エリアでの事業拡大を見据え大阪オフィスを新設したほか、アオラナウ株式会社によるServiceNow領域への展開を新たな柱として加えるなど、事業成長と収益基盤の強化を図っております。
※用語解説
(注1)デジタルトランスフォーメーション(DX):企業がデータやデジタル技術を活用して、製品・サービス、業務プロセス、ビジネスモデル、企業文化や風土を変革し、競争上の優位性を確立する取組。
(注2)クラウドマイグレーション:サーバーなどのITシステムを、物理的な自社設備からパブリッククラウド(例:Amazon Web Services、Google Cloud Platformなど)へ移行すること。
(注3)IDC:IDC Japan株式会社。IT及び通信分野に関する調査・分析・アドバイザリーサービスを提供するグローバル企業。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記経営環境を踏まえ、当社グループが対処すべき課題は下記のとおりです。
①優秀なIT人材の確保と育成
当社グループでは、コンサルティング事業の拡大とSaaSサービスの成長を支える人的資本の強化を最重要課題の一つと位置付けております。特に、SalesforceやServiceNowをはじめとする専門領域において、非IT人材も含めた採用と、短期間での実務配属を可能にする育成スキームを強化しております。さらに、AI関連資格の取得支援や社内トレーナー制度の導入により、高度人材の社内循環を促進しております。加えて、お客様企業に対するITリスキリング支援事業の展開も検討しており、人的資本の多層的な活用を推進してまいります。
また、社員の立案による能力向上のための各種研修が活発に行われており、「Salesforce」認定資格取得に係る研修費用・受験費用の会社負担や、人事評価制度の見直し・運用といった制度面からの支援も進めることで、社員の能力を最大限に引き出す環境づくりに全社を挙げて取り組んでいます。
②事業ポートフォリオの進化と価値提供の高度化
当社グループは、従来のSalesforceやAnaplanによる業務支援領域に加え、事業領域の多様化と価値提供の高度化に取り組んでおります。具体的には、営業・マーケティング領域における「ConsulTech」サービスの展開、アオラナウ社を通じた「ServiceNow」分野への進出に加え、AWS、Microsoft、Databricksなどの主要クラウド・データプラットフォームを活用したWeb・データ・生成AI関連領域への拡張を進めております。
また、SaaS製品「AGAVE」においては、BPO連携や海外給与対応機能の強化を通じて、継続収益性の高い事業基盤の構築を進めております。今後は、AI×データ領域への注力を一層強化し、先進技術を活用した付加価値の高いサービス提供を通じて、企業の経営課題解決に貢献してまいります。
③顧客・地域基盤の拡大と社会的インパクトの創出
2024年8月に大阪オフィスを開設し、関西圏での顧客獲得と人材採用の基盤を整備いたしました。今後も、関東・九州・関西を中心に全国展開を強化し、地域企業へのクラウド導入支援、IT人材のリスキリング、行政・大学との連携を通じたAI・データ人材の育成支援を推進してまいります。
また、社会課題解決型の取組として、自治体や大手企業との連携による生成AIの社会実装を目的とした「AIハッカソン」などの共創型イベントも継続的に実施し、企業の枠を超えた価値創出に貢献してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループにとってのサステナビリティとは、事業を通じて社会問題の解決に寄与することであります。当社グループの持続的な成長が、雇用機会の創出、あらゆる働き方の実現及び技術革新への促進につながり、持続可能な社会の実現に貢献できる世界を目指すことです。その実現に向け、顧客、取引先、従業員、株主をはじめとするあらゆるステークホルダーとの良好な関係を継続し、サステナビリティを重視した経営を実践しております。
(2)具体的な取組
当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、代表取締役会長兼社長佐藤司がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有する立場になります。
取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しております。議案として提出された内容を、当社グループのサステナビリティのリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての審議・監督を行っております。
上記のガバナンスのもと、現在当社グループが取り組んでいるサステナビリティ課題は人的資本についてであります。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループでは、①各種研修制度の確立②多様な人材の活用③働きやすい風土づくりという3つの柱により人材育成を行ってまいります。①については、新卒新入社員に対する長期研修プログラムの運営や認定資格の取得に対する社内トレーニングの充実、全社員に対する実践的なeラーニング研修の提供などを行ってまいります。②については、女性管理職の積極的登用、高度なスキルや実践経験を有するキャリア採用の積極的採用、外国人採用による異文化交流の推進などを進めてまいります。③については、ITを積極的に活用した効率的なテレワークの活用により、育児や介護と仕事との両立を支援できる勤務体系、有給取得の推進、定期的な全社ミーティングによる理念の共有と一体感の醸成などを行ってまいります。数々の施策のもと、多様性を認め合い、人材育成と社内環境整備を推進しております。
当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスクコンプライアンス委員会において行っております。現在はサステナビリティに関するリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込み等についても、リスクコンプライアンス委員会で行っておりますが、今後サステナビリティ委員会の設置を検討してまいります。
当社グループでは、上記「②戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
(注1)連結子会社となるCirclace HT Co.,Ltd.及びアオラナウ株式会社については、本指標には含めておりません。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)特定分野への依存及び競争優位性の維持について
当社は、Salesforce 等の特定技術領域に注力することで成長を遂げてまいりましたが、当該分野における市場ニーズの変動や、競合他社の参入拡大等により、競争優位性が相対的に低下するリスクが存在いたします。
当社は、このようなリスクに備え、市場環境や技術トレンドを迅速かつ的確に把握するためのデータドリブン経営を推進するとともに、新規事業への戦略的な投資を積極的に進めております。加えて、競争力の維持・向上を目的とし、ブランド価値の向上に資する IR・PR 活動の強化にも取り組んでおります。
(2)社会情勢及び顧客動向の変化について
社会情勢や景気動向の変化、並びに顧客企業における事業方針の見直し等により、IT 投資に対する需要が一時的に停滞し、受注予定案件の中止・延期・規模縮小といった事態が発生するリスクが存在いたします。
当社は、このような不確実性に備え、経営会議にて定めた指針に従い、営業活動を通じて顧客に対する影響調査を実施し、また、関係性の一層の強化を図るとともに、海外イベントにも定期的に参加する事で、市場変化の早期察知体制を整備し、機動的な対応が可能な経営基盤の構築に努めております。
(3)AI等の技術革新に伴う事業環境の変化について
近年、ChatGPT をはじめとする生成AIの普及が急速に進展しており、人の工数を基軸とする従来型のビジネスモデルに対し、構造的な変化をもたらしつつあります。当社においても、AI 技術の進展による業務効率化の影響を受け、収益性の変動リスクが顕在化する可能性がございます。
当社は、このような変化に対応するため、AI Agentの活用など、AI 技術と人材の相補的な活用を前提とした新たなビジネスモデルへの転換を推進しております。あわせて、顧客ニーズを的確に捉える仕組みの構築や、海外の先進事例に学ぶ視察活動を通じ、継続的な知見の蓄積及び社内共有体制の強化に取り組んでおります。
(4)人材獲得について
IT人材の採用競争が激化することにより、市場に求められている最先端技術の知識、経験及びビジネススキルを保有している人材が枯渇もしくは不足するリスクが存在いたします。
当社は、戦略的な採用活動だけではなく、従業員の教育・研修を体系的に実施し、カリキュラムを常に最新に見直す事で、市場に一致した人材維持に努めています。また、外部業者と中長期での戦略的パートナーになることで、安定したサプライチェーンを構築し、維持することに努めております。
(5)サービス品質について
社内人材の不足により、サービスの提供品質が低下した結果、獲得案件について収益の低下、訴訟発生及び市場からの信頼を失うリスクが存在いたします。
当社は、このようなリスクに備え、適正な業務提供ができるよう、従業員に資格取得を促す等、社内人材の技術向上施策を積極的に行っております。また、社内のPMOや外部専門家の意見を現場のみならず経営層に反映できる仕組みを組織として構築することで、サービスの提供が維持・向上されるよう努めております。
(6)グループモニタリングについて
子会社、関連会社及び出資先企業の業績変動を早期に察知できない事により、不測の補正や減損が発生するリスクが存在いたします。
当社は、このようなリスクに備え、会計処理についてグループ単位での画一的な管理を行い、各企業に対して週次のレポートをいただくことで、精確かつ明朗な会計が適切に行われている事を適宜適切に確認できるよう努めております。
(7)株式会社パソナグループとの関係について
株式会社パソナグループは、当事業年度末現在における当社の発行済株式総数の33.14%を保有しており、当社は同社の持分法適用会社に該当します。
① パソナグループ内における当社の位置づけについて
当社グループは、「Salesforce」や「Anaplan」、「ServiceNow」等に特化したコンサルティング事業、自社開発のDX事業及び主に「Salesforce」に関する研修を展開しているエデュケーション事業を展開しており、同様の事業を展開していない株式会社パソナグループ及びその子会社との競合関係はありません。
しかし、今後当社グループの経営方針及び事業展開を変更した場合、又は、株式会社パソナグループ及びその子会社が経営方針及び事業展開を変更した場合には、将来的に競合する可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 株式会社パソナグループとの取引及び取引条件について
2025年3月期における、当社と株式会社パソナグループとの取引について、当社の費用に係る総額は3,234千円であります。これらのうち、取引金額が1,000千円以上となる取引内容は以下のとおりであります。
株式会社パソナグループとの主な取引(2025年3月期)
(注)取引金額には、消費税等は含まれておりません。
なお、これらの取引は、独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っております。
③ 株式会社パソナグループとの人的関係について
2025年6月26日開催予定の定時株主総会にて、当社取締役8名のうち、株式会社パソナグループより1名を選任する予定であります。豊富な経営知識から、当社事業に関する助言を得ることを目的として招聘したものであります。なお、兼任している役員は以下のとおりであります。
なお、本書提出日現在において株式会社パソナグループからの出向者の受け入れは無く、今後も原則同社グループからの出向者の受け入れは行わない方針であります。
(8)TQUILA LIMITEDとの関係について
TQUILA LIMITEDは、当事業年度末現在における当社の発行済株式総数の31.99%を保有しております。
同社は、アイルランドにおいてグループ会社の経営指導を行っており、当社との事業上の競合関係はありません。
また、創業当時より「Salesforce」に関する事業の助言を得ることを目的として、同社より取締役を招聘しており、2025年6月26日開催予定の定時株主総会においても、1名を選任する予定であります。なお、兼任している役員は以下のとおりです。
TQUILA LIMITEDとの取引及び取引条件について
2025年3月期における、当社とTQUILA LIMITEDとの取引について、当社の費用に係る総額は6,000千円であります。これらのうち、取引金額が1,000千円以上となる取引内容は以下のとおりであります。
TQUILA LIMITEDとの主な取引(2025年3月期)
(注)取引金額には、消費税等は含まれておりません。
なお、これらの取引は、独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っております。
(9)外注先の確保について
当社グループのコンサルティング事業では、システムの開発・連携・運用等において必要に応じて協力会社に外注をしております。協力会社とは、定期的なミーティングの実施による状況把握、関係構築を図ることで当社グループにとって優良なパートナー・外注先の確保に努めております。現状では、有力な協力会社と長期的かつ安定的な取引関係を保っておりますが、協力会社において技術力及び技術者が確保できない場合又は外注コストが高騰した場合には、円滑なサービス提供等が阻害され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)技術革新への対応について
当社グループが事業を展開するクラウド領域は、技術革新や顧客ニーズの変化が非常に速く、刻々と新たなサービスが開発・供給されております。
このような変化に対応すべく、当社グループは最新の技術情報の収集蓄積、分析及び習得、それに対応した新たなサービスの提供に努めておりますが、当社グループによる技術革新への対応が遅れた場合、あるいは革新的な技術に対応するための多額の研究開発費用が追加的に発生する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)法的規制等について
当社は、電気通信事業法上の電気通信事業者として届出を行い受理されております。また、いわゆる労働者派遣法上の労働者派遣事業許可を得ております。社会情勢の変化、法改正等による規制強化等により、特定事業の継続が困難となる可能性は否定できません。
当社グループは、これら法令等を遵守した運営を行ってきており、今後の社内教育や体制の構築等を継続して行っていく予定であります。万が一、かかる規制の強化等がなされた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、近年、インターネット関連事業を規制する法令は度々変更・追加がなされており、今後新たな法令等の規制がなされた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)新規事業の展開について
当社グループは、自社開発SaaSに留まらず、マルチクラウドや優秀な人材を獲得する上で、事業拡大や収益源の多角化を実現しうるために、新規事業への取組を継続して進めていく方針であります。しかしながら、新規事業が安定した収益を生み出すまでには一定の期間と投資費用を要することが予想されることから、その間、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、新規事業は不確定要素が多く、当初の計画どおりに推移しなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)特定人物への依存について
当社代表取締役社長の佐藤司は、当社の経営戦略の策定や事業推進において重要な役割を果たしております。当社は、事業拡大に伴い、取締役会等における役員及び幹部社員との情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に対して過度に依存しない経営体制の構築を目指し、人材の育成・強化に注力しておりますが、今後何らかの理由で同氏が当社の業務を遂行することが困難になった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)知的財産権について
当社グループは、運営する事業に関する商標・システム等の知的財産権の獲得に努めております。当社グループが使用する商標、システム等について、現時点において第三者の知的財産権を侵害するものはないと認識しております。今後も、事業活動において、第三者の特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう、外部の専門家の知見も踏まえながら、適切な管理に努めてまいります。
しかしながら、仮に当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合は、当該第三者より、損害賠償請求、使用禁止請求等が発生する可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)情報管理体制について
当社グループは、提供するサービスに関連して、多数の顧客企業の情報資産を取り扱っております。これらの情報資産を保護するため、情報セキュリティ基本規程を定めるほか、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得するなど、情報管理体制の強化に努めております。
しかしながら、何らかの理由によりこれらの重要な情報資産が外部漏洩するような場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)システムトラブル等について
当社グループのクラウドサービスのコンサルティング、カスタマーサクセス事業は、SalesforceやServiceNow等、各種サービスを顧客企業に提供することを前提としており、クラウドサービス元の提供自体にシステム障害が起こるような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、SaaSは、インターネットに接続するための通信ネットワークに依存しております。安定的なサービス提供のため、セキュリティ対策の強化や、定期的なバックアップ、稼働状況の監視、社内体制の整備等を行っておりますが、自然災害や事故等による予期し得ないトラブルにより大規模なシステム障害が起こるような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)配当政策について
当社は、株主に対する利益還元が経営の重要課題であると認識しておりますが、当社は事業拡大過程にあり、将来の事業拡大に向けた投資等に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考え、創業以来配当を実施しておりません。
今後においては、事業基盤の状況や内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案し、配当実施を検討してまいりますが、現時点において配当実施可能性及びその実施時期等については未定であります。
(18)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社は、当社の役員、従業員並びに社外協力者に対するインセンティブを目的として、ストック・オプションによる新株予約権を付与しており、2025年3月31日現在における発行済株式総数に対する潜在株式の割合は1.71%となっております。これらの新株予約権が行使された場合、既存株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,329,427千円となり、前連結会計年度末と比べ124,271千円増加しました。これは主に現金及び預金が25,393千円増加し、売掛金が104,549千円増加したことによるものであります。主な内訳は、現金及び預金833,354千円、売掛金430,936千円であります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は493,149千円となり、前連結会計年度末と比べ154,902千円増加しました。これは主に投資有価証券が55,000千円増加し、敷金及び保証金が125,082千円増加したことに対して、建物附属設備が46,385千円減少したことによるものであります。主な内訳は、のれん119,817千円、投資有価証券59,470千円、敷金及び保証金190,439千円、繰延税金資産82,674千円であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は833,769千円となり、前連結会計年度末と比べ247,483千円増加しました。これは主に1年内償還予定の転換社債型新株予約権付社債が148,660千円増加、未払消費税等が45,746千円増加、契約負債が34,506千円増加し、賞与引当金が22,435千円増加したことに対して、1年内返済予定の長期借入金が46,660千円減少したことによるものであります。主な内訳は、買掛金41,188千円、1年内償還予定の転換社債型新株予約権付社債148,660千円、未払金70,085千円、未払費用68,339千円、未払法人税等64,596千円、未払消費税等106,030千円、契約負債122,506千円、賞与引当金150,337千円であります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は59,528千円となり、前連結会計年度末と比べ106,162千円減少しました。これは主に転換社債型新株予約権付社債が100,427千円減少したことによるものであります。主な内訳は、転換社債型新株予約権付社債48,232千円であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は929,279千円となり、前連結会計年度末と比べ137,853千円増加しました。これは主に利益剰余金が184,047千円増加したことに対して、非支配株主持分が68,877千円減少したことによるものであります。主な内訳は、資本金408,033千円、資本剰余金456,669千円、利益剰余金126,213千円であります。
② 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、物価上昇の継続や人手不足の深刻化、為替の変動、海外情勢の不安定化といった要因により、依然として先行きの不透明な状況が続いております。一方で、企業活動は中長期的な成長に向けた構造改革の重要性が高まり、デジタルトランスフォーメーション(DX)や業務の自動化、人材戦略の見直しなどを中心とした変革への取組が拡大しております。
当社グループが属するパブリッククラウドサービス市場においても、IT基盤のクラウド移行(クラウドマイグレーション)や、経営判断に資するデータ活用の高度化、生成AI・ノーコード開発の活用といった新たな潮流が広がっており、IT投資の重点は従来の「業務効率化」から「経営変革」へと移行しつつあります。
こうした中、企業によるクラウド導入の進展とともに、導入後の定着・活用を促進するための人材育成や組織改革のニーズも高まっており、クラウドをどのように経営成果に結びつけるかが、新たな経営課題として顕在化しています。
国内クラウド市場は、2028年までに年平均成長率(CAGR)16.3%で成長し、2023年比で約2.1倍となる16兆6,285億円規模に達する見通しであると、IDCは予測しています。
クラウドサービスの中でも、当社の主力分野としている米国Salesforce.comは、2025年2月26日に2025年通期業績を発表、売上高は前年比9%増の379億ドル、GAAP営業利益率は19.0%、Non-GAAP営業利益率は33.0%、純利益は前年比50%増の62億ドルと、主要な指標で堅調な成長を記録しております。
このような成長市場を背景に、当社グループは、SalesforceやAnaplanを活用したコンサルティングサービス、自社SaaSプロダクト「AGAVE」による業務基盤支援に取り組むとともに、2024年8月には関西エリアでの事業拡大を見据え大阪オフィスを新設いたしました。さらに、アオラナウ株式会社によるServiceNow領域への展開を新たな柱として加え、事業成長と収益基盤の強化を推進しております。
当社グループの当連結会計年度における売上高は3,804,013千円となり、前年比31.1%増と、前年を大きく上回る結果となりました。一方で、中長期的な戦略的ビジネス基盤の拡大に向けた体制強化、並びに人的資本投資にかかる継続的な社員募集費や業務委託費の増加などにより、販売費及び一般管理費は増加しましたが、売上の拡大によりこれを吸収し、営業利益は203,634千円(前年は営業損失85,321千円)、経常利益は204,051千円(前年は経常損失51,178千円)、親会社株主に帰属する当期純利益は184,047千円(前年は親会社株主に帰属する当期純損失39,166千円)と、いずれも前期の赤字から黒字へと転換いたしました。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を「デジタルプラットフォーム事業」の単一セグメントから、「コンサルティング事業」と「アオラナウ事業」の2区分に変更しています。以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で表示しています。
(イ)コンサルティング事業
当連結会計年度におけるコンサルティング事業の売上高は3,242,503千円(前年比14.9%増)、セグメント利益は322,125千円(前年は△48,850千円)という結果になりました。
コンサルティング事業では、コンサルティング、AI&Data Innovation、SaaSサービス(AGAVE)の各サービスを展開しており、SalesforceやAnaplanを主力とした業務支援型の「コンサルティング」及び、データ活用や生成AI導入支援を担う「AI & Data Innovation」など、各領域が堅調に推移しております。稼働率の改善も進んでおり、プロジェクト単位ではなく週単位での稼働状況をモニタリングする体制を整備したことで、リソース配置の最適化が進み、稼働率・利益率ともに向上いたしました。2024年8月には大阪に新オフィスを開設し、関西圏での新規案件を複数受注。加えて生成AIや自律型AIに関連した新たなサービスも複数リリースしております。
SaaSサービス(AGAVE)では、契約ユーザーID数は前年を大きく上回り、「AGAVE」の利用は堅調に拡大しています。特に、兼ねてよりご要望の多かった「海外給与計算サービス」を新たにリリースしたことで、既存顧客の満足度向上及びアップセルに寄与し、新規顧客獲得の機会も広がっております。海外人事労務に特化した専門性の高いクラウドサービスと、ストック型ビジネスという強みを背景に、継続的な新規顧客の獲得に加え、それに伴う導入支援サービスによる売上も加わり、事業は順調に成長しております。
(ロ)アオラナウ事業
当連結会計年度におけるアオラナウ株式会社の売上高は561,510千円(前年比619.4%増)、セグメント利益は△118,490千円(前年は△36,470千円)という結果になりました。2024年1月の本格的な事業開始以降、ServiceNowを活用したノーコード/ローコード開発や業務自動化のコンサルティングサービスを中心に、順調に受注を拡大し、第4四半期には黒字化を達成するなど、収益基盤の改善が進んでおります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、833,354千円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、220,289千円の収入(前連結会計年度は105,349千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益159,040千円、賞与引当金の増加22,435千円、株式給付引当金の増加20,920千円、契約負債の増加34,506千円、未払消費税等の増加45,746千円があった一方で、売上債権の増加104,549千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、197,635千円の支出(前連結会計年度は102,164千円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出55,000千円、敷金及び保証金の差入による支出131,802千円があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、3,791千円の収入(前連結会計年度は126,061千円の収入)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入18,370千円、新株予約権付社債の発行による収入48,232千円があった一方で、長期借入金の返済による支出61,230千円があったことによるものであります。
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績及び受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度において、「アオラナウ事業」が成長し、当期末に事業管理方法を見直した結果、当連結会計年度より、従来の「デジタルプラットフォーム事業」の単一セグメントから、「コンサルティング事業」、「アオラナウ事業」の2区分に変更しております。
前期比は、当連結会計年度の報告セグメントの区分に基づいて計算した比率を開示しております。
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当連結会計年度において、コンサルティング事業の売上高は3,242,503千円、アオラナウ事業の売上高は561,510千円となりました。
(売上原価、売上総利益)
当連結会計年度において、売上原価は2,047,807千円となりました。当連結会計年度の前半において、稼働率の低下が見られたが、後半に入り稼働率が改善されました。
この結果、売上総利益は1,756,205千円となりました。
(営業利益)
当連結会計年度において、販売費及び一般管理費は1,552,571千円となりました。中長期的な戦略的ビジネス基盤の拡大に向けた体制強化、並びに人的資本投資にかかる継続的な社員募集費や業務委託費の増加などにより、販売費及び一般管理費は増加しましたが、売上の拡大によりこれを吸収しました。
この結果、営業利益は203,634千円となりました。
(経常利益)
当連結会計年度において、営業外収益が10,219千円、営業外費用が9,802千円発生しました。子会社の吸収合併に伴って、保険の解約を行い、返戻金の受け取りがありました。
この結果、経常利益は204,051千円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度において、特別利益が946千円、特別損失が45,957千円発生し、法人税等合計は43,607千円となり、当期純利益は115,432千円となりました。
非支配株主に帰属する当期純損失68,614千円となった結果、親会社株主に帰属する当期純利益は184,047千円となりました。
財政状態とキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況及び③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金の状況につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループにおける主な資金需要は、人件費等の運転資金及び設備投資資金であります。財政状態等や資金使途を勘案しながら、運転資金は自己資金を基本としつつ、投資資金は自己資金並びに金融機関からの長期借入及びエクイティファイナンスによる外部からの資金調達についても資金需要の額や用途、当該タイミングにおける金利及び資本コストを比較した上で優先順位を検討して実施することを基本としております。
⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、売上総利益率、コンサルティング事業における顧客企業の中での大企業売上比率を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題に取り組んでおります。
(パートナー契約)
当連結会計年度の研究開発活動は、DXにおいて、日々の運用をしていく上で軽微な活動はしておりますが、大規模な既存製品の機能追加、新商品開発等は行っておらず、研究開発費に計上するものはありません。