当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営理念
当社は以下の経営理念を掲げ、事業を展開しております。
① ミッション
我々は、経営課題の解決のために、個々の社員として及び組織として、常に自己研鑽に努め、誠実に社内外の他者に貢献し、「良い仕事」をし続ける。
「良い仕事」とは、以下の3つの要素をすべて満たすものである:
a.顧客を成功に導き、顧客に喜ばれる仕事
(具体的な成果、高品質、スピード、リーズナブルな価格、心遣い)
b.社会に価値をもたらす仕事(社会に対する良い影響)
c.自らが成長でき、自ら誇れる仕事(自己成長、自己実現)
② ビジョン
a.我々は、完全成功報酬制のM&A仲介会社として、質量ともに圧倒的なリーディング企業になり、優良企業の存続・発展、起業家精神の高揚、経済全体の生産性の向上に貢献する。
b.我々は、様々な経営課題を解決することで、経営と経営者に付加価値を与え、企業や組織の経営力の向上に貢献し、社会に活力を与え、そして最も信頼される経営支援会社になる。
③ 価値観
a.インテグリティ
顧客、提携先、取引先、社員、株主、債権者、社会その他全ての関係者に対して、リスクを隠さず、裏表なく、誠実に仕事をする。
b.顧客の成功の実現
顧客の成功なくして我社の成功はない。我々は、顧客が大きな成果を得られるよう真摯に努力しなければならない。
c.長期的信頼関係の構築
顧客、提携先、取引先との長期的な信頼関係を築き、短期的な利益よりも、双方が長期的に利益を得られるよう行動する。
d.オーナーシップ
社員一人一人は、「自らの仕事を裁量権を持ってマネジメントする」という経営者の自覚と当事者意識を持って、自ら考え行動し、結果に責任を持つ。
e.プロフェッショナリズム
常にプロとして、生涯をかけて理論と実践により自己研鑽に努め、社内外のリソースを使いながら、合理的・効率的に業務を進め、プライドを持って仕事をする。
f.チームワーク
我社全体としての生産性が最大となるように行動する。社員は互いに協力し、他の社員から質問されたり、助けを求められたりしたときは、自分の仕事よりも優先して、親身になって助けなければならない。
g.チャレンジ精神
ビジネスチャンスの発掘に努め、自分ができることだけやろうとするのではなく、今までやったことがない新しいこと、高い目標に果敢に挑戦する。
h.謙虚さ
常に、自分が間違っているかもしれないと謙虚に考えて、相手の身になって考え、他者の意見もよく聞くようにする。
i.仕事を楽しむ
仕事で、楽しさを追求すべきである。自らコントロールできることに集中し、結果に一喜一憂せず、良い仕事をするプロセス、逆境を克服するプロセスを楽しむようにする。
j.倫理観を養う
法令を遵守し、倫理観を養い、社会的正義のない取引やサービス提供は行わない。会社や個人の利益のために、違法行為・不正行為を行わない。
(2)経営戦略
① ブランド戦略:「完全成功報酬制のM&A仲介会社No.1」ブランドの確立
広告投資を拡大し、またダイレクトメール・コールドコールによる提案型営業を積極化し、さらには金融機関等とのネットワークを強化することで、完全成功報酬制の意義とメリットの啓発に努めるとともに、完全成功報酬制のM&A仲介会社として、年間成約組数で圧倒的に業界第1位となることを目指してまいります。
また、「上場企業で唯一の売り手・買い手ともに完全成功報酬制のM&A仲介専門会社」という認知を浸透させ、「完全成功報酬制のM&A仲介会社No.1」ブランドを確立してまいります。
② ポジショニング戦略:小規模案件セグメントにおけるシェア拡大と1組当たり平均売上高の維持・向上
中小企業のM&Aにおけるボリュームゾーンである小規模案件セグメント(譲渡金額300百万円以下)においては、20百万円~25百万円を採用する仲介会社もある中で、最低成功報酬額が15百万円と低廉な当社は価格競争面で優位性があり、それを訴求することで市場の成長を上回って成約組数を成長(シェア拡大)させるべく努めてまいります。
なお、1組当たり平均売上高については、2025年5月期の実績では44百万円となっております。PEファンドの投資ポートフォリオの検索機能等を備えたPEファンドに特化したWEBメディア「PEファンド.JP」を運営している効果も得ながら、PEファンド関連の案件(ファンドへの売却、ファンドの投資先の売却、ファンドの投資先による追加買収)の件数を増やす等により、一層の引き上げを目指してまいります。
③ 営業戦略:バランスがよい案件ソーシングとネットワークソーシングの強化
問い合わせ、ダイレクトメール及びコールドコール、人的紹介(ファンドのエグジット案件含む)、金融機関等からの紹介等、各ルートからバランスよく案件をソーシングすることを目指してまいります。特に、金融機関等からの紹介や人的紹介によるネットワークソーシングについては、完全成功報酬制で、かつ最低成功報酬額も小さいという当社の特徴から、金融機関等は当社と連携しやすく、金融機関等からの紹介による案件発掘の余地は大きいと考えており、複数のコンサルタントを金融機関等の開拓担当に配置する等、人員体制を整備し、ネットワークソーシングの強化に努めてまいります。
但し、金融機関等からの案件紹介には一定の関係構築期間が必要となるため、必ずしも性急に多数の成約は求めず、中長期目線で、ネットワークソーシング(人的紹介を含む)による成約を増やすことを目指してまいります。
④ 人事戦略:質の高い人材の採用と効果的な人材育成
完全成功報酬制のM&A仲介事業を成長・発展させるためには、能力と人間性に優れた人材を継続的に採用していく必要があります。
当社は、最大で40%以上というインセンティブ率を設定し、長時間労働のない働きやすい職場環境を整備することで、優秀かつ当社の価値観に合致した人材を厳選して採用してまいります。
人材育成については、M&A実務の経験豊富な教育専任の担当者を配置し、入社後約2か月間に集中的に研修を実施するとともに、実際のM&A案件を題材にOJTを受ける機会を数多く提供することで、早期に戦力化できる体制を構築しており、将来の人員増加に向けて当該教育体制の更なる改善・向上に進めてまいります。
⑤ 業務戦略:コンサルタント1人当たりの成約組数の回復・向上
当社は営業の初期段階で受託可能かどうかを、業界、売上規模、利益水準、希望条件等の観点から判断し選別を行うことで、成約につながらない業務負担を抑制すると共に、コンサルタントが1人で初期相談からクロージングまで担当する一気通貫の業務体制をとること等により、コンサルタントの生産性とモチベーションを高めており、これによりコンサルタント1人当たり成約組数を高める戦略をとっております。
当社のコンサルタント1人当たりの成約組数は、2025年5月期の実績では1.1組となっております。コンサルタント間のノウハウの共有の促進、コンサルタントに対するプロセス・成果管理体制の強化、並びにCRMシステム(顧客管理システム)及びマーケティングオートメーションツール(顧客開拓のためのマーケティング活動を自動化するツール)の活用といった業務のIT化等を進めることにより、引き上げを目指してまいります。
(3)経営環境
現在、中小企業経営者の高齢化と後継者不足を背景に、中小企業のM&Aに対する社会的ニーズは急速に高まっております。中小企業庁により設置された「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会」の事務局説明資料(2020年11月11日公表)によると、2025年までに平均的な引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万人が後継者未定であるとされております。そして、この状況を放置すれば、2025年までに累計650万人の雇用と22兆円のGDPが失われる可能性があると指摘されております。このような背景の中、中小企業の事業承継問題という大きな社会的課題の解決策の一つとしてM&Aの活用が期待されており、それを支援するM&A仲介会社が担う社会的な責任は過去に例を見ないほど高まっております。
このようにM&A仲介会社が果たすべき社会的役割の重要性が増す中で、当社は人材の積極採用と広告投資の拡大を進め、透明性が高くかつリスクの小さい完全成功報酬制によるM&A仲介支援というサービスを、より多くの中小企業に対して提供していきたいと考えております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 社会的信用力の向上
M&A仲介会社は依頼者にとって非常に大きな決断となる会社の売却や買収を支援するため、その遂行には重大な責任を伴います。また、中小企業の事業承継問題という日本経済にとって喫緊の社会的課題の解決策としてM&Aが期待されていることから、それを啓発・支援するM&A仲介会社は重い社会的責務を負っています。当社は、依頼者や社会全体に対する責任に応えるために、社会的信用力の向上が重要な課題であると認識しております。
当社が事業を展開する中小企業M&A仲介業界では、当該業界を直接的に管理する法令はありませんが、中小企業庁がM&A業者に対して適切なM&Aのための行動指針を提示するため、「中小M&Aガイドライン」を策定し、事業承継・引継ぎ支援センター及びその登録機関、並びにM&A支援機関登録制度の登録事業者に対してガイドライン遵守を義務付けるほか、その他の中小M&A支援に関わる幅広い機関にも遵守を求めております。当社は、M&A支援機関登録制度の登録事業者として、M&A市場の健全な発展に資するべく、当該ガイドラインを遵守しております。具体的には、ガイドラインに準拠した顧客説明資料の整備、業務手順の構築を実施するとともに、コンサルタントに対し当該ガイドラインについての社内研修を実施しております。
こうした対応により、当該ガイドラインを遵守し健全に業務を行っていることを外形的に示し、また依頼者に対して明示的にアピールすることで、社会的信用の向上に努めてまいります。
② 知名度の向上
先行する大手仲介会社と比較して当社のM&A仲介業界における認知度は低く、知名度を向上させる必要があると考えております。
今後、広告投資を拡大し、またダイレクトメール・コールドコールによる提案型営業を積極化し、さらには金融機関等とのネットワークを強化することで、完全成功報酬制の意義とメリットの啓発に努め、当社の知名度向上を目指してまいります。
③ 人材の採用及び育成
M&A仲介事業の更なる成長を担保するには、より多くの優秀な人材の採用と育成が課題になると認識しております。
当社は、引き続き料率の高いインセンティブ制度を提示するとともに、ノルマのない管理体制や、テクノロジーを活用した効率的かつ長時間労働のない働きやすい職場環境を整備することで、優秀な人材を厳選して採用してまいります。
人材育成については、実際のM&A案件を題材としたOJTを受ける機会を数多く提供することで、早期に戦力化できる体制の維持・向上を進めます。
また、担当者1名が一気通貫で責任を持って案件を担当することでコンサルタントに幅広いノウハウが蓄積し、成長が早くなることから、一気通貫で案件を担当することを希望する応募者も多いため、人材採用を有利に進めていくとともに、主体的に案件に携わり実績を積み上げたいと考える上昇志向の強いコンサルタントにとってモチベーション高く働ける環境を提供してまいります。
④ 管理体制の強化
M&A仲介会社の社会的責任を鑑みると、コンプライアンスの遵守を始めとした内部管理体制の強化が課題になると認識しており、現在も、コンプライアンスマニュアル勉強会の定期的な実施や、情報管理に関する社内研修を実施しております。
上場企業として、資本市場から厳しい監視を受け、それに応えるべく高い透明性と厳格な管理体制を保つことにより、全てのステークホルダーの信頼に応え、企業としての社会的責務を全うするための企業文化・組織体制を構築し、維持するように努めてまいります。
⑤ 成約率の向上
M&Aマーケットにおいて売却案件の供給量が増加したこと等の背景もあり、買い手側が案件を慎重に検討し選別する姿勢を強めていること等を要因として、検討期間の長期化や不成立が増え、成約率が低下しています。
当社は、当該環境変化に対応するため、2025年2月より、「買い手情報リサーチチーム」を本格稼働し、新規買い手の開拓を進めるとともに、2025年6月より、トップコンサルタントを部長とし、各部メンバーに対する緊密な指導・営業支援を行う体制へ移行しております。これらの組織変更により、強い買収ニーズを持つ買い手候補を拡充するとともに、質の高い売却案件を受託できる体制を構築し、成約率の向上を図ってまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では、持続的な成長と企業価値向上という経営上の目標を達成するために、売上高及び成約組数を経営指標として重視しております。また、これらに影響を与える指標として、成約1組当たりの売上高、コンサルタント1人当たりの成約組数、及び平均コンサルタント数を把握・管理することで、売上高及び成約組数の持続的な成長を目指しております。これらの指標の過年度推移は以下の通りです。
|
決算期 |
2021年5月期 |
2022年5月期 |
2023年5月期 |
2024年5月期 |
2025年5月期 |
|
売上高(百万円) |
837 |
649 |
1,273 |
2,197 |
1,892 |
|
成約組数(組) |
33 |
30 |
47 |
53 |
43 |
|
成約1組当たりの 売上高(百万円) |
25 |
22 |
27 |
41 |
44 |
|
コンサルタント1人当たりの 成約組数(組) |
2.5 |
1.4 |
1.8 |
1.8 |
1.1 |
|
平均コンサルタント数(人)※ |
13.0 |
22.0 |
26.5 |
30.0 |
38.0 |
※平均コンサルタント数は、前期末と当期末のコンサルタント数の和を2で除して算定しております。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス及びリスク管理
当社は、業務執行取締役3名と常勤監査等委員1名で構成されるリスク・コンプライアンス会議を定期(年4回)及び必要に応じて臨時に開催し、サステナビリティを含めた会社経営全般に関する事象を広範囲に検証し、リスクを把握した上で、具体的な対応策を検討しております。また、これら検討内容及び対応策の中で重要なものについては、取締役会へ報告する体制となっております。
(2)人的資本に関する戦略
当社は、顧客にとって納得性の高い完全成功報酬制のM&A仲介サービスをより多くの顧客に提供していきたいと考えております。その実現のためには、多様な職歴を持つ優秀な人材の採用及び育成が不可欠であり、それら優秀な人材を惹きつける労働環境及び多様な人材が働きやすい労働環境を構築しております。具体的には、明確かつ料率の高いインセンティブ制度、フレックスタイム制の導入、一気通貫で案件を担当することによる労働時間のコントロールのしやすさ、システム活用による残業時間の抑制等が該当します。人材育成については、M&A実務の経験豊富な教育専任の担当者を配置し、入社後約2か月間に集中的に研修を実施しております。
また、事業年度を通じて経営理念に沿った行動をしたと思われる従業員を従業員間の投票により決定及び表彰することや、優秀な業績を達成した従業員を社長賞として表彰することで、継続的に従業員のモチベーションを高め、企業文化の醸成につながる会社運営をおこなっております。
(3)人的資本に関する指標及び目標
上記「(2)人的資本に関する戦略」において記載した施策等を維持、発展させながら、従業員の質の向上及び従業員数の増加を図ってまいります。従業員数として、2026年5月期末に66名到達を中期的目標として目指しております。
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)事業環境に関連するリスク
① 国内M&A市場の低迷
(発生可能性:中 影響度:中 発生時期:特定時期なし)
中小企業の後継者不在による事業承継、業界再編、事業の選択と集中、創業者利益の獲得等のM&Aニーズが拡大しており、また「中小M&Aガイドライン」の策定、経営資源引継ぎ補助金制度の制定、税制による支援等、政府によるM&Aを含む事業承継の促進策の後押しもあり、中長期的に中小企業M&A市場は安定的に拡大すると考えております。しかし、将来何らかの事情により中小企業M&A市場が縮小に転じた場合には、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
一方、短期においては、中小企業のM&A市場は、景気動向、自然災害、パンデミック等により一時的に低迷する可能性があり、その場合には、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
② 法規制・許認可
(発生可能性:低 影響度:中 発生時期:特定時期なし)
現状、M&A仲介業を直接的に規制する法令・許認可はありません。しかし、今後、法令等の制定・改定によりM&A仲介業が法的に規制される状況となった場合には、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
なお、M&A仲介業を営むための必須の条件ではないものの、M&A仲介業界に関する登録制度及び業界団体として以下のものがあります。
2021年8月において、中小企業庁によりM&A支援機関登録制度が創設され、M&A支援機関の活用に係る補助金については、当該支援機関の登録事業者の活用に係る費用のみが対象となることとが定められております。当社は、2021年9月より、当該支援機関の登録事業者となっており、中小企業庁が定めた「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月改訂)を遵守していることを当社サイト上で宣言しております。
また、業界団体としては、M&A支援機関等を会員とする自主規制団体である一般社団法人M&A支援機関協会(※)があります。当社は、当該協会が策定した倫理規程及び業界自主規制ルール3規程(広告・営業規程、コンプライアンス規程、契約重要事項説明規程)を遵守しております。
※一般社団法人M&A支援機関協会:M&A仲介の公正・円滑な取引の促進、中小M&Aガイドラインを含む適正な取引ルールの徹底、M&A支援人材の育成サポート及びM&A支援機関に係る苦情相談窓口の運営を目的として設立された業界団体です。
③ 競合
(発生可能性:大 影響度:中 発生時期:特定時期なし)
M&A仲介業界は法規制・許認可等がなく、大規模な設備投資も必要ないことから、参入障壁が低い事業と考えられます。そのため、上場企業、未上場企業、個人事業者や金融機関、会計事務所等の多数の競合先が既に存在するとともに、今後も新規参入が増えることにより、競争が更に激しくなる可能性があります。
当社は、競合する大手企業が存在しない「売り手・買い手ともに完全成功報酬制のM&A仲介専門会社」という独自のポジションを確立するとともに、競合先が比較的少ない小規模案件(譲渡金額300百万円以下)を注力分野の一つとすることで競争優位を実現する方針ですが、今後、競争環境が激化した場合には、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
(2)事業内容に関連するリスク
① 業績変動
(発生可能性:大 影響度:中 発生時期:特定時期なし)
当社は、原則として、報酬の全てを案件のクロージング後に受領するという完全成功報酬制を採用しており、また、成功報酬額は案件の譲渡金額に大きく左右されます。そのため、コンサルタント数及び成約件数を継続して増加させることで個別案件が業績全体へ与える影響を低減させるよう取り組んでおりますが、期間ごとの案件のクロージングの数、譲渡金額の変動、成約率の低下、大型案件の成否、案件進捗の遅延等の影響が大きくなった場合、四半期又は事業年度の期間業績が大きく影響を受ける可能性があります。
② 訴訟・クレーム
(発生可能性:中 影響度:中 発生時期:特定時期なし)
当社は、適切なコンプライアンス体制を確立するとともに、サービスの質を向上するための社内手続き、クレーム報告・管理体制、及び教育制度を整備していますが、不測の事態等の発生により顧客から訴訟又は重大なクレームを受ける可能性があります。
そのような場合には、損害賠償や当社の社会的信用・ブランドの毀損等により、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
なお、当社に不利益や経済的損失を与えうる事象についてリスク・コンプライアンス会議にて広範囲に検討するとともに、重要な事象については取締役会に報告する体制となっております。
③ M&A仲介事業への依存
(発生可能性:中 影響度:中 発生時期:特定時期なし)
当社は、M&A仲介のみの単一事業を営んでいます。中長期的には、M&A仲介以外の業界への進出による事業の多角化も検討してまいりますが、当面は、今後も継続的な拡大が見込まれる中小企業のM&A仲介市場を中心に事業展開を行う予定です。そのため、将来何らかの事情により中小企業M&A市場が縮小に転じた場合には、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
(3)組織体制に関連するリスク
① 人材確保
(発生可能性:中 影響度:中 発生時期:特定時期なし)
M&A仲介事業においては、コンサルタント一人一人の能力が案件の成否に与える影響は大きく、事業拡大のためには、十分な数の優秀な人材を採用・育成・維持することが必要不可欠となります。
当社は、優秀な人材を採用し、長期的に勤務を継続してもらうために、引き続き料率の高いインセンティブ制度を提示し、ノルマのない管理体制や、テクノロジーを活用した効率的かつ長時間労働のない働きやすい職場環境の整備に努めています。
しかし、採用環境における競争激化や想定外の大量離職により、事業拡大に必要なコンサルタント数が確保できない場合には、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
② 小規模組織
(発生可能性:中 影響度:低 発生時期:特定時期なし)
当社は小規模組織であり、内部管理体制も企業規模に応じたものとなっております。今後、組織の拡大に応じて、特定の人員に過度に依存しないよう、優秀な人材の確保及び育成により経営リスクの軽減に努め、今後の業容拡大を見据えて、内部管理体制の一層の強化、充実を図る方針です。
しかし、これらの施策が適切に進まなかった場合、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
③ 情報管理体制
(発生可能性:低 影響度:中 発生時期:特定時期なし)
当社は、業務の性質上、顧客の機密情報やインサイダー情報等の守秘性の高い情報を取り扱っており、顧客と締結した秘密保持契約等に基づく守秘義務を負っています。当社では、内部情報管理規程、機密情報管理規程を整備するとともに、従業員に対する研修を実施すること等により、情報管理を徹底しております。
また、当社では、顧客からの問い合わせ等により個人情報を取得する場合があります。当社は、個人情報の保護に関する法律及びその関連法規に基づき、個人情報管理規程を定めることにより、個人情報を適切に管理しております。
しかし、不測の事態等により顧客の機密情報、インサイダー情報、及び個人情報等の漏洩や不正利用が発生した場合には、損害賠償や当社の社会的信用・ブランドの毀損等により、当社の業績が影響を受ける可能性があります。
(4)その他のリスク
① 調達資金の使途
(発生可能性:中 影響度:低 発生時期:2年以内)
当社の株式上場時における公募増資による調達資金は、人材採用、及び広告宣伝に投資する予定です。しかし、当該投資について期待通りの成果が得られない場合、当社の業績が影響を受ける可能性があります。なお、今後の事業展開において、経営環境等の変化に対応するため、調達資金を上記計画以外の使途に充当する可能性があります。その場合は、速やかに資金使途の変更について開示を行う予定であります。
② 当社株式の流動性
(発生可能性:中 影響度:低 発生時期:特定時期なし)
当社の株主構成は、当社株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は本書提出日現在において29.4%にとどまる見込みです。
今後は、当社主要株主による一部売出しの検討、当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等を勘案し、これらの組み合わせにより流動性の向上を図っていく方針であります。しかし、何らかの事情により流動性が向上しない場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当社の事業領域である中小企業M&A市場の現況としては、後継者不在を背景とした事業承継の解決策として、また企業規模の拡大及び事業多角化など成長戦略の一環としてのM&Aニーズは根強く、中小企業庁が公表している『事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について』(2024年6月28日公表)においても、70代以上の経営者の割合が引き続き高く、地域の小規模な事業者の事業承継が課題であると言及されております。このような社会課題解決のために政府による事業承継及びM&Aに対する支援策もあり、中小企業M&A市場は継続して拡大していくと考えております。
また、M&A仲介業界においては、後継者不在の中小企業を対象とする中小M&Aの当事者となる中小企業や、中小M&Aをサポートする各種支援機関の手引き・行動指針を示すことを目的として、中小企業庁が『中小M&Aガイドライン』を策定しており、現在、その第3版が発表されております。当社は、M&A支援機関登録制度に登録している企業として、第3版にて定められたルールを遵守した事業活動を実施しております。さらに、業界団体である一般社団法人M&A支援機関協会が定める、不適切な譲り受け側事業者を共有する仕組み(特定事業者リスト)にも参加し、M&A支援の質の一層の向上を目指しております。
このような情勢のなか、当社は営業・マーケティング面につきましては、広告出稿に加えて、ダイレクトメール及び電話等によるダイレクトマーケティング、地方放送局との業務提携及びCM放送、PEファンド各社との精力的な情報交換、金融機関等の提携先の開拓に継続して取り組み、M&A案件の発掘を積極的に進めました。また、買い手候補となりうる企業に対して積極的に連絡を取り買収ニーズをヒアリングする「買い手情報リサーチチーム」を本格稼働し新規買い手候補の開拓に努めており、より迅速な案件成約及び成約率の向上を目指しております。
しかしながら、複数案件で検討期間の長期化や不成立が生じ、成約組数は前事業年度を下回りました。
人員面につきましては、当事業年度末のM&Aコンサルタント数は42名(前事業年度末は34名)となりました。なお、1組当たりの売上高が200百万円を超える大型案件が中間会計期間に複数組成約したことにより、当事業年度における1組当たり売上高は44,004千円(前事業年度は41,468千円)となり、前事業年度と比較して上昇しました。
この結果、当事業年度においては、成約組数が43組(前事業年度は53組)、売上高1,892,197千円(前期比13.9%減)、営業利益497,305千円(同49.5%減)、経常利益486,254千円(同50.6%減)となり、特別損失として解決金34,000千円を計上し、当期純利益311,117千円(同53.7%減)となりました。
なお、当社はM&A仲介事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
(資産の部)
当事業年度末の流動資産につきましては、前事業年度末に比べ35,802千円増加し、1,958,557千円となりました。これは主として、未収還付法人税等が28,166千円発生したことなどによるものであります。
当事業年度末の固定資産につきましては、前事業年度末に比べ31,405千円減少し、166,880千円となりました。これは主として、繰延税金資産が28,918千円減少したことなどによるものであります。
(負債の部)
当事業年度末の流動負債につきましては、前事業年度末に比べ534,756千円減少し、223,924千円となりました。これは主として、未払法人税等が269,215千円減少し、未払金が191,717千円減少したことなどによるものであります。
(純資産の部)
当事業年度末の純資産につきましては、前事業年度末に比べ539,153千円増加し、1,901,513千円となりました。これは主として、新規上場にともなう増資及び役職員によるストック・オプションの行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ114,018千円増加し、当期純利益の計上により利益剰余金が311,117千円増加したことによるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は1,912,696千円であり、前事業年度末と比べ3,064千円の減少となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、支出した資金は224,300千円(前事業年度は986,366千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益が452,254千円あった一方で、未払金の減少額が191,717千円、法人税等の支払額が424,055千円あったことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、支出した資金は6,800千円(前事業年度は109,514千円の支出)となりました。これは、無形固定資産の取得による支出が6,800千円あったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、獲得した資金は228,036千円となりました。これは、株式の発行による収入が228,036千円あったことによるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
該当事項はありません。
c.販売実績
当社はM&A仲介事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自2024年6月1日 至2025年5月31日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
M&A仲介事業 |
1,892,197 |
86.1 |
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合計 |
1,892,197 |
86.1 |
(注) 最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自2023年6月1日 至2024年5月31日) |
当事業年度 (自2024年6月1日 至2025年5月31日) |
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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日本グロース・キャピタル株式会社 |
- |
- |
280,781 |
14.8% |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、資産・負債及び収益・費用に影響を与える見積り及び判断を必要としております。
当社は、財務諸表の基礎となる見積りについて過去の実績に基づき合理的であると考えられる判断を行ったうえで計上していますが、これらの見積りには不確実性が伴うため、見積りと実際の結果とが異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成において採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載のとおりです。
また、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等の分析
当社の経営成績等については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社のキャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、資金需要のうち主なものは、事業拡大のための広告宣伝費、採用費、人件費等であります。また、資金の源泉は主として営業活動によるキャッシュ・フローによって確保しております。
d.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析
当社では経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として売上高及び成約組数を重視しております。また、これらに影響を与える指標として、成約1組当たりの売上高、コンサルタント1人当たりの成約組数、及び平均コンサルタント数を把握・管理しております。
当事業年度における売上高は1,892,197千円(前期比13.9%減)、成約組数は43組(同18.9%減)となりました。また、成約1組当たりの売上高44,004千円(同6.1%増)、コンサルタント1人当たりの成約組数は1.1組(同38.9%減)、平均コンサルタント数(※)は38.0人(同26.7%増)となりました。
成約1組当たりの売上高は、大型案件の成約件数が順調に積みあがったことで増加しました。また、平均コンサルタント数は、前事業年度と比較して増加しております。
しかしながら、売上高、成約組数について、前事業年度を下回る結果となっております。
(※)平均コンサルタント数は、前期末と当期末のコンサルタント数の和を2で除して算定しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。