第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、優れた特性を持つダイヤモンドの広い応用によって、様々な分野でのイノベーションの創出を進め、地球規模での地球環境維持や社会問題の解決を通じ、世界への貢献を目指しています。

当社で活動する従業員が、健康で充実した日々を送れるよう、様々な施策を講じています。また、株主や顧客、取引先などのあらゆるステークホルダーへの責任を果たすことを、経営方針としています。

 

(2) 経営環境等

当社の事業は、基本的には人工合成のダイヤモンドを販売する材料ビジネスですが、ほとんどがダイヤモンドの新しい応用を目指す分野に向けられています。天然のダイヤモンドは形状や組成が広い応用に適さないことから、人工合成のダイヤモンドを使った開発が進められています。また、伝統的な分野である宝石についても、人工合成への転換が進んできており、これに伴って多数の企業が設立され、活発な市場環境となっています。

工具用素材としての利用は、既存市場と言えますが、その市場規模は安定的であります。しかしこの市場は種結晶や基板及びウエハの市場と比較して低い価格水準であり、当社が幅広く参入する環境ではありません。宝石及び工具用素材以外の応用については、未だ創成期にあるため市場規模が小さく、個々の案件ごとの対応になっております。2インチウエハなどのインパクトのある製品が実用化できれば、大きな展開が可能となると考え、開発に注力しております。

 

現在製品を供給している分野について、市場環境を以下に示します。

①人工ダイヤモンド宝石製造用の種結晶市場

a.人工宝石の製造と市場

人工ダイヤモンド宝石は超高圧合成法と気相合成法によって製作されるダイヤモンド宝石です。ダイヤモンドとしては、天然に比べ不純物が少なく純粋で、無色だけでなくピンク、ブルー、イエロー等の色がついたものも発売されています。Bain and Companyの「The Global Diamond Industry 2020-2021」によれば、人工宝石は600~700万カラット(2020年)生産されており、その内の300~400万カラット以上(2020年)が気相合成法により製造されていると報告されております。また、全ダイヤモンド生産が1.1億カラット(2020年)とされていますので、既に5.5~6.4%が人工合成になっていると推定でき、人工ダイヤモンド宝石市場は今後、毎年15%~20%の成長率があると見込まれます。

気相合成法で作る人工ダイヤモンド宝石は、種結晶を用いて製造されており、人工宝石製造会社等や宝石販売会社等を通じて一般消費者の手に渡っています。

 

b.必要とされる種結晶の製造

この気相合成法で製作している宝石は、製作するに際して種結晶が必要とされます。通常は0.2mmないし0.3mm厚の薄い単結晶を種結晶として使用します。

気相合成法では、結晶の成長は厚さ方向のみ成長するため、面積方向の成長がほとんどありません。このため、成長によって種結晶の形状からの拡大が無く、最も一般的なブリリアンカットの宝石では、厚さと形状の関係が一定であるため、種結晶形状が宝石の大きさ(カラット数)を決定します。

このように、種結晶のサイズが、最終的に宝石となるダイヤモンドの大きさを決めるため、大きな宝石の製造を目指すには、大きな種結晶が必要となります。

人工宝石市場では、大型宝石の出荷が活発となっています。天然ではほとんど市場に出ていない5カラット以上の宝石を目指す動きもあって、当社は大型種結晶のニーズがあると見込んでおります。当社は5x5mm~10x10mmの広い範囲の形状を持つ種結晶を製作できます。現在では成長装置を数100台も保有する人工宝石製造会社が複数あり、これらの会社が必要とする月当たりの種結晶は1,000個を超える場合もあります。このような大量の種結晶を、品質の揃ったものとするためには、生産技術の安定が必要です。

 

c.種結晶ビジネスの競合

当社は種結晶を独自技術により製造し人工宝石製造会社等に販売しておりますが、当社の販売先である人工宝石製造会社の一部が、成長した結晶を薄く切断して、その表面を研磨することで、種結晶を製作しています。その場合には、当社と競合することになります。このやり方の製造コストは、現時点では当社より高いと判断しております。

 

②基板及びウエハ

ダイヤモンドの優れた半導体特性を生かすデバイス開発に必要な、基板やウエハを供給しています。ウエハについては、未だ市場ができていないものの、ウエハの研究開発用に各国の研究機関や企業に販売しています。最終的には、2インチ以上の口径を持つウエハが必要ですが、現時点では基礎研究段階であり、10x10mmを最大とする単結晶基板もしくは、25x25mmまでのモザイク結晶基板を販売しています。当社は、単純な基板だけでなく、結晶方位、基板上に半導体層を形成したエピ基板、結晶品質を制御した基板等の多様な要求に対応できる製品群があります。当社はモザイク結晶で大型化の先頭に立っており、ウエハ市場の創成をけん引して参ります。

 

③光学部品及びヒートシンク

ダイヤモンドの持っている高熱伝導率や、光やX線を透過する特性を利用し、デバイスの除熱や、各種測定器などに利用されています。

5Gシステムに代表される先端通信分野では、高発熱デバイスの使用が必要で、熱を除去して安定的なデバイスの動作をするため、ダイヤモンドの利用が進んでいます。また、検査機器で使用するX線発生装置の小型化に伴い、X線を透過する窓としての利用が開始されており、当社製品が使用されています。これまでの市場は、散発的に開発される部品の供給にとどまっていましたが、X線用窓が量産に移行した等の新しい動きがあります。当社が狙って開発している光学部品には、一定の市場が見通せるものもあります。

 

④工具素材

ダイヤモンド単結晶を利用する切削、耐摩耗工具は、相手材料が限定され、特殊な加工に限られています。また、工具素材の全市場では、ほとんどが超高圧合成単結晶を使用しています。超高圧合成単結晶のサイズが限定されていることから、当社の大型結晶への要求があります。なお、工具素材については、積極的に販売拡大を行わない方針であります。

 

 

(3)目標とする経営指標

当社は先端技術を使っている製造業であり、製造設備への投資を継続的に行っていく必要があります。このために、高い利益率を維持し、確固たる資金調達手段を保持することが重要と考えられます。このような観点から、主な経営指標として、以下の経営指標を重視しております。

①売上高成長率

②経常利益率

③ROE

④自己資本比率

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、優れた物性を兼ね備えるダイヤモンドを広く利用できるように、その特性が発揮できるダイヤモンド単結晶を供給しておりますが、将来の半導体応用を大きな目標としており、当該目標を達成するために、以下の事項を課題として認識しております。

①市場開拓・市場規模

当社が対象とする市場は、新しいか、もしくは市場の形成過程にあります。従って、市場情報が不足しており、市場の立ち上がりやその後の市場規模等に関する情報をどのように入手、推定し、経営判断に活かしていくかが課題と認識しております。

②技術開発

技術的なアドバンテージが今後の事業展開で大きな役割を果たしますので、技術開発力を増進するための、研究開発テーマの選別や研究開発計画の実行・管理等に対する経営的な判断を誤らないようにすることが課題と認識しております。

③人材強化

組織を上場会社として必要な体制とするため、リーダー層の充実と、それぞれの部署のスキルを持った人材が必要であります。人材の獲得と教育の両者をバランスよく進めるための施策を講じることが課題と認識しております。

④生産体制の強化

当社の最大の規模である種結晶ビジネスは、非常に速い変化が見られ、ユーザーからは増産の要求が来ています。設備投資が遅れて、生産能力の拡大が間に合わない事態にならないよう、タイムリーな設備投資計画の実行に必要な経営資源の確保に努めることが課題と認識しております。

⑤資金調達

事業規模が次第に大きくなってきており、必要な設備投資額は以前に比べると拡大してきております。タイムリーな設備投資計画の実行に必要な資金調達を実行することが課題と認識しております。

⑥他社との提携等

当社の経営資源には限りがあることから、事業進捗のスピードアップを目的として、部分的に他社との提携等に取り組んでおりますが、効果的・効率的な他社との提携等を企画、交渉、運営する人材や組織の整備が課題と認識しております。

⑦経営陣の高齢化と後継者の育成

当社の経営陣の高齢化が進んでおり、経営陣の後継者の育成が課題と認識しております。

 

2【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1) 人工宝石ビジネス市場の状況

当社が参入している人工ダイヤモンドの宝石市場は、世界的に拡大傾向が続くものと見込んでおりますが、宝飾品としての人工ダイヤモンドの認知が進まず市場形成が遅れることや、国内外の経済情勢の悪化や景気動向の減退等の理由により、市場の成長が鈍化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。ただし、米国を中心に認知度が上がっており、このようなリスクは低いと考えております。

 

(2) 特定ユーザーへの過度の依存

当社の売上に占める種結晶の比率は、2022年3月期売上高の93.0%となっております。種結晶ビジネスに対する方針として、長期的な受注によって、半年以上先までの生産状況の確定、生産要員の確保を行うことが可能となります。ユーザーからの要求で当社が生産能力を増強する決断には、ユーザーからの情報の信頼性が必要で、このために大規模なユーザーの確保を優先事項としています。これまでに有力なユーザー数社に対し、長期的な受注をもらうことを条件に、優先的に生産能力を確保することを進めてきました。具体的には、要求量の多いユーザーには、①半年以上の発注、②今後の設備増設計画の開示、を要請しています。このような当社の要請を受け入れる形で、ユーザー数社との関係が非常に強くなっております。2021年3月期の売上状況では、インド、日本、イスラエル、米国にある売上上位4社合計で売上の72.2%、2022年3月期の売上状況では、イスラエル、インド、日本、米国にある売上上位4社合計で、売上の79.3%を販売しております。これらの企業の倒産や立地する国や地域の情勢によっては、当社が種結晶を出荷できないといった事態も想定されます。このような事態が発生すれば、大幅な売上の減少により、当社の経営成績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社としましては、このような場合においては、他の大口ユーザー及び多数の小口ユーザーに対して販売量を増加させることで、短期間で売上の減少をリカバーする所存です。このような対応措置が採れるよう、小口ユーザーを引き留めることも営業の方針として進めております。

 

(3) 知的財産権管理

 ①産総研との独占実施契約

当社の生産技術は、産総研が開発した手法を元にしており、この技術の知的財産権は産総研が有しております。当

社は、産総研との間において、当社の製造技術に係る産総研特許の独占的通常実施権の許諾契約を締結しております。

当該許諾契約に定める特許権の概要及び存続期間満了日、当該許諾契約の解約事由は、「第2 事業の状況 4.経営

上の重要な契約等」に記載のとおりであります。

なお、当該許諾契約について、継続に支障をきたす要因は発生しておりませんが、当社の帰責事由により、当該契約が解約され、独占実施契約の契約期間満了前に終了した場合には、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、独占的通常実施権の契約期間満了後(2023年11月1日以降)は、非独占的通常実施権が特許の存続期間満了日まで付与される契約となっておりますが、他社が産総研に対して実施権を要求すること等により、産総研が他社と非独占的通常実施権を付与する契約を締結した場合は、当該他社は当社の競合となる可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。なお、当社としては、独占実施契約の契約期間満了時に、産総研に対して独占実施契約の継続を申請する予定であり、その際は当社のこれまでの実績に基づき産総研と交渉する方針であります。仮に、他社が産総研から実施権の許諾を受けた場合でも、多くのノウハウの確立や親結晶の作製に年単位の時間が必要と考えられるため、当社が競争優位性を継続して確保できると考えております。

②知的財産権の取得方針、侵害等

当社は、生産技術が漏洩することを防ぐため、これまで特許などの出願を行わない方針としておりました。生産技術には多数のノウハウがあり、これが技術の実現には重要なカギとなっています。しかし、製品に関連する特許などについては、当社が権利を保有することが重要である場合が出てきているため、今後はこのような知的財産権について、権利化できるように、出願及び審査を進めてまいります。また、技術的なよりどころとなっている産総研の特許群については、維持及び他社による模倣状況のチェックを行っております。しかしながら、他社との間で知的財産権を巡る紛争が生じた場合や、他社から知的財産権を侵害された場合には、事業活動に支障が生じ、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。主力製品である種結晶については、これまで出願された特許は見つかっておらず、公知となって長期を経過していることもあり、特許上の係争が起こる可能性は低いと考えております。

 

(4) 生産技術の模倣

当社は、産総研の特許の独占実施契約を締結して利用しております。(契約期限:2023年10月31日、契約に含まれる特許数:国内外の総件数17件、独占実施権の継続はその時点で産総研と協議を予定、独占実施期間終了後も各特許の存続期限まで非独占実施権は継続されます。)当社では、特許の技術による種結晶製造のノウハウを確立するため、産総研と共同研究を行って来ており、製品化までのノウハウについては特許に記載されていないこともあり、他社が容易に模倣することは難しいと考えております。しかしながら、他社が当社の技術を模倣し種結晶等の製造を行うことになった場合、事業活動に支障が生じ、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

なお、現在の実施権契約は17件の特許を包括的に締結していますが、個々の特許の存続期限が2024年以降に次々に到来するので、それらの重要性に鑑み、契約書の内容を変化する必要が出てくると考えられます。その時には、当社の事業継続と特許の期限を迎えていない技術の占有状況が維持でき、リスクを最小限とするよう、産総研と契約内容を協議いたします。

 

(5) 退職者による技術・ノウハウ流出

当社の生産技術には産総研の特許権のほかに生産ノウハウがありますが、当社は漏洩が起こらないよう常に管理を行なっており、役職員の退職時には秘密保持誓約書を提出させることとしております。しかし、生産ノウハウ等の情報流出が発生し、他社が当社の生産技術を模倣した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。産総研特許の範囲である基幹技術については、独占実施権で守られておりますので、流出してもリスクは大きくないと判断しております。

 

(6) 競合他社について

  ①ユーザーが自家生産する種結晶との競合

当社は種結晶を独自技術により製造し人工宝石製造会社等に販売しておりますが、当社の販売先である人工宝石製造会社から取引に際して当社から購入した種結晶から種結晶を再製作しない旨の宣誓書を入手しております。しかし、当社の販売先である人工宝石製造会社の一部が、当社から購入した種結晶を利用して成長させた結晶を薄く切断して、その表面を研磨することで、種結晶を製作しています。その場合には、当社と競合することになります。このやり方の製造コストは、現時点では当社より高いと判断しておりますが、宝石製造会社の技術進捗や購入する装置が安価化することによって、当社の製造コストの優位性がなくなり、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。既にこの手法で種結晶を生産しているユーザーもありますが、継続して当社種結晶を購入していることから、生産性などの観点では、リスクはそれほど大きくないと判断しております。

 ②多結晶ダイヤモンドを種結晶として用いる手法が出来た場合

現在の人工宝石の製造では、単結晶を種結晶とすることが必須の条件となっています。多結晶を用いても、宝石用のダイヤモンドを製造できるようになれば、大面積で製造できるため、単結晶に比べて安価になる可能性があります。ただし、現時点では多結晶の成長は、単結晶に比べて成長速度が遅いため、大面積の結晶が出来ることの利点は、加工コストを下げることだけに限定されると考えております。ヘテロ成長と呼ばれる、ダイヤモンド以外の物質(例えば、金属とかセラミクス等)への成長を行って作られたダイヤモンドを使う動きは、既に見られております。当社は、当社製品に比べて大幅に価格が安くなるとは想定していませんので、それほど大きな脅威とは考えていませんが、そのような事態となれば、当社種結晶の優位性が失われ、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(7) 生産装置の陳腐化

当社では種結晶の成長装置の性能向上等を目的として、産総研と成長装置の基礎的開発を共同で実施することや、装置製造会社との開発活動を実施しております。しかし、競合他社である人工ダイヤモンド宝石製造会社が成長装置の技術革新を実現した場合、当社の成長装置の性能が陳腐化することでコスト競争力が失われ、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、産総研とも共同研究などを通じて、成長装置の高度化を進める所存で、リスクを下げるような各種の対策を講じております。

 

(8) 島工場建設に係る建設資材、生産装置の価格高騰による資金不足及び建設スケジュールの遅延

工場建設やそれに伴う生産装置の設置には、長期の準備期間が必要であります。当該準備期間に建設資材、生産装置の価格が高騰し、当初の計画での調達資金では資金が不足する事態が考えられます。また、当該準備期間に建設資材の調達遅れや自然災害、新型コロナウイルス感染症対策等の影響で、島工場の物件の引き渡し遅れや、それに伴う生産設備の設置遅れが発生し、島工場の建設スケジュールが当初のスケジュールから遅延する事態が考えられます。その場合には、計画通りの島工場の建設ひいては計画通りの増産ができず、一部のユーザーとの契約が履行できないような事態となる可能性があります。それによって当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。特に、新型コロナウイルス感染症の影響で世界的に資材不足が顕在化しており、島工場については、このようなリスクがあると考えております。なお、島工場の建設スケジュールについては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設」に記載のとおりであります。

 

(9) 重要な生産装置の重大な故障

当社の生産工程において、必ず使用する必要があるイオン注入装置を1台しか保有していません。当社では定期的な設備点検により故障を防止する対策を行っておりますが、主要部品が壊れるなど長期にわたって当該装置が稼働できないという状況になった場合には、生産が完全に止まることとなり、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。今後、生産能力の拡張を進める中で、イオン注入装置の追加導入を進めてまいります。島工場を建設し、イオン注入装置が2台となった場合には、リスクは大幅に低減します。

 

(10) 特定人物への依存

これまでの当社の新製品開発や新技術開発については、当社の代表取締役社長である藤森直治を中心として推進してまいりました。当社は、産総研ダイヤモンド研究センター長であった藤森直治を中心に、ダイヤモンド単結晶製造技術の事業化を目的として設立されており、その技術の知見に対する依存度は極めて高いと言えます。開発や生産に係る技術者を雇用、育成することで、藤森直治に依存しない体制の構築を進めておりますが、何らかの理由により業務執行できない事態となった場合、新製品の開発遅れや、生産効率化の遅れなどにより、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(11) 小規模組織であること及び人材確保

当社は小規模な組織であり、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は事業の拡大を目指していますが、その実現には管理体制強化及び絶え間ざる技術革新が必要であり、管理部門、生産部門、開発部門で幅広く人材確保を進めています。しかしながら、計画通りの採用が実現できなかったり、必要とする能力を有する人材の応募が無かったりした場合には、適切な人材配置が困難となり事業拡大に制約が発生するなどにより、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 感染症等の影響(新型コロナウイルス感染症問題)について

当社は新型コロナウイルス感染症対策として、役職員に対し、テレワークやオフピーク通勤を奨励しており、定期的にPCR検査を実施しております。また、遠距離の出張の原則禁止や宴会を行わないこととしております。しかし、当社において感染症等が蔓延した場合、業務停止及び遅延によって、売上の減少、納期遅延等が生じる可能性があります。また、当社の顧客に感染症等が蔓延した場合、顧客からの発注が止まることや、出荷停止、遅延等が生じる可能性があります。さらに、当社の仕入先や外注先に感染症等が蔓延した場合には、調達及び製品製造の停止や遅延等が生じる可能性があります。これら諸要因の動向によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 自然災害等

当社の活動拠点の本社、横江第1工場及び横江第2工場は、大阪府北摂地区に立地し、外注先は愛知県西部の臨海地域に立地と、活動拠点は分散しているため、両地域が同時に台風や地震で壊滅的な被害を受ける可能性は低い、と判断しております。しかしながら、当社の生産能力の大部分は大阪府北摂地域に集中しているため、大阪府北部で大地震やその他操業に影響する災害などが発生した場合には、売上の減少、装置類の損傷による多額の補修費用の発生、停電による情報管理ネットワークの遮断等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(14) 当社製品へのクレーム

当社では生産する全ての製品について、万全の品質管理に努めるとともに、全ての工場の設備の予防保全に努めており、現時点において、品質に関する重大なクレーム及び納期に関するクレーム等は発生しておりません。また、軽度のクレームには迅速に対応し、顧客の信頼を損ねないような対応を行っておりますが、将来、製品の重大な品質クレームや重大な生産トラブルによる納期クレームが発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 為替リスク

当社は数多くの海外顧客との取引があり、海外顧客との取引(日本の商社経由の取引を含む)は外貨建て取引を採用しており、当社の取引高に占める外貨建の取引の割合は2021年3月期が87.5%、2022年3月期が93.8%となっております。現時点では為替リスク対策をとっていないことから急激な為替変動による為替リスクが生じる可能性があり、為替損失等が発生した場合には当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。為替に関して円高のトレンドが明確となった場合には、為替予約によってリスクを回避することを検討いたします。最近3年間くらいの変動状況から、100円/$以上の円安の水準では、為替予約を基本的には行わず、100円/$の水準に近づいた段階で為替予約を執行することを検討いたします。

 

(16) 中近東の政治情勢

当社の主要な販売先としてイスラエルの企業が含まれるため、当社では、販売対象地域の状況把握に努めておりますが、政治情勢が不安定となり戦争の勃発等の事態となった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 情報漏洩

当社は、開発段階から顧客と共同で取り組んでいる案件について、秘密保持契約を締結し情報管理を行っております。また、共同開発(研究)契約を締結して進めている案件もあります。これらの契約は、契約していること自体が重要情報である場合もあり、役職員にはこの重要性を知らしめ、啓発、教育を行うと共に、秘密保持誓約書を提出させる等、情報漏洩の防止には万全を期しております。

しかし、情報の漏洩が発生した場合には、当社が賠償責任を負う可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 訴訟に関するリスク

当社の事業又は活動に関連して、知的財産権、環境、労務等、様々な訴訟、紛争、その他の法的手段が提起される可能性があります。現在、当社の経営成績と財政状態に重大な影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来において、重要な訴訟等が提起された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に、主要製品である種結晶に関する係争については、注意を払っております。

 

(19) ストック・オプションの行使による株式価値の希薄化

当社は、取締役、監査役及び従業員等に対するインセンティブを目的として、ストック・オプションを付与しております。これらのストック・オプションが権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化することとなり、将来における株価に影響を及ぼす可能性があります。本書提出日の前月末現在のこれらのストック・オプションによる潜在株式数は、135,300株であり、本書提出日の前月末現在の発行済株式総数2,185,300株の6.2%に相当しております。

 

(20) 配当政策

当社はこれまでの経営状況から、配当を行っておりません。将来の社債発行や増資に際して、配当を行っていないことでの不利が発生し、必要な資金調達が出来ない事態がリスクとなる可能性があります。それによって、必要な設備投資ができなかったり、遅れたりすることで、ビジネスの拡大が妨げられたり、顧客を失ったりする可能性があります。当社は、上場後においては、利益を確保できれば、配当の実施を検討いたしますが、現時点では未確定です。

 

(21) 各工場の賃貸借契約が解除され、継続使用が困難となるリスク

当社が活動している各工場は、賃貸借契約で入居しております。災害あるいは貸主の都合によっては、この契約を解除され、退出を余儀なくされれば、生産活動に支障を来たします。工場の移転期間中の減産や、インフラ設備の除去費用、さらに移転費用の負担があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。現状の契約期間は、横江第1工場が3年、横江第2工場が2年と比較的短期間であることから、今後、契約期間の長期化に向けた対応を検討いたします。

 

(22) 法的規制等

当社は事業活動において、製造物責任法、外国為替及び外国貿易法、特許法、下請代金支払遅延等防止法、建築基準法、借地借家法、労働安全衛生法、消防法、廃棄物処理法、大気汚染防止法等の各種法的規制を受けておりますが、上記法的規制等の新設や改正等が行われた場合には、当社の事業活動が制約を受け、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は、法令等の遵守に努めておりますが、何らかの理由で上記法的規制等への抵触が発生した場合、当社の事業活動が制約を受け、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりで

あります。

①経営成績の状況

当事業年度における経済状況は、各国がwithコロナへと移行が進み、全体に立ち上がってきました。特に米国は株価の上昇もあって、消費が活発化しGDPは増加しました。物価が上昇してきたため、政策金利の上昇や、金融緩和の停止が進められ、2022年1月以降は株価の反落が見られました。

このような状況下で、依然としてコロナ禍による旅行等への消費支出は完全に回復していないと見られ、代替支出としての宝石購入はかなりの高水準で推移したとの情報があります。LGD(Laboratory Grown Diamond:人工宝石)市場は、天然ダイヤモンドの鉱山開発の負の側面が無く、倫理的にも優れていることが消費者に理解されたことから、拡大傾向を一層強めたとの報道もあります。このため、LGDの製造業者である当社の種結晶ユーザーは、一斉に増産を進めてきました。単に設備増設ばかりでなく、新たな大型投資によって工場を新設する動きも見られました。このために、当社への既存ユーザーからの種結晶供給量の増加依頼が多数入り、当社は2021年4月に成長装置を増設したものの、継続的に生産能力以上の引き合いを受ける状況となりました。一方、前事業年度にも増して新しく宝石製造を開始する企業が多数起業し、これ等の企業からも当社製品への引き合いが来ております。

前事業年度に決断した設備投資が、期首に稼働しましたので、生産量を増加出来ました。種結晶生産の効率化も鋭意進めましたので、当社の種結晶生産能力は大幅に増加しました。ユーザーからは、更なる生産能力の増強が求められていましたので、ユーザーの増産計画を聴取して、当社として新工場の建設が必要と判断しました。

一方、本社にありました生産及び開発関連設備を2021年12月30日で停止し、移転するため、横江第1工場に近い建物を借り、横江第2工場として2022年2月に一部が稼働する状況になりました。この際、生産部の工程合理化を同時に進めるため、成長工程と研磨工程を各々集中されることに致しました。設備の配置換えを伴いましたので、工期が長くなりましたが、2022年3月末には生産設備は全て稼働いたしました。

上記のとおり、設備投資による増産と一部設備の停止という事態がありましたが、その後、生産関連設備停止の影響を克服し、生産効率は予想以上に向上しました。加えて、為替相場が円安に振れたことでの増収もあり、売上総額は12月に修正した予想を上回り、前年同期比37.0%増加の1,562,260千円に達しました。また、設備増設、人員増によって減価償却費や人件費が増加しましたが、製品売上原価は前年同期比7.8%の増加に留まりました。準備を進めてきましたIPO対応と、上記の設備移転関連費用の支出がありましたので、販売費及び一般管理費は、前年同期比58.3%と大幅に増加致しました。しかし、売上が増加した効果は大きく、営業利益は大幅に増加しました。

以上の結果、当事業年度の売上高は1,562,260千円(前年同期比37.0%増)、営業利益は520,465千円(前年同期比94.4%増)、経常利益は527,877千円(前年同期比95.0%増)、当期純利益は374,816千円(前年同期比47.9%増)となりました。

なお、当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載をしておりません。

また、製品種類別の販売実績は以下のとおりであります。

(種結晶)

上記のような市場の状況で、量的に拡大しているだけでなく、大型の宝石を指向する動きが顕著に見られます。すなわち、3カラット以上の宝石の需要が高まっており、これに対応するように各種のカット形状が選択されています。当社の種結晶への要求も、10x10mm以上の大型品が大幅に拡大したことで、平均単価が上昇しました。当社の売上上位6ユーザーへの出荷数量は大幅に拡大して、10x10mm以上の大型種結晶の出荷数が増加し、平均単価も上昇しました。また、この1年間だけでも50社以上の新参入の企業から種結晶の引き合いがありましたが、生産能力が限界に達しており、多くは対応できない状況でした。当社は引き続き各ユーザーに長期的な契約締結を要請した結果、主なユーザーからは6ヶ月以上の発注を頂いており、安定な生産と共に、生産設備の拡充を計画的に進めております。

 この結果、売上高は1,453,333千円(前年同期比45.4%増)となりました。

(基板及びウエハ)

ダイヤモンドのデバイス応用研究は、世界各地で活発化していますが、未だ基礎的な段階にあって、多くの研究機関は小型の基板での研究開発を行っています。当社の2インチウエハの開発遅れもあり、本格的なデバイス開発への移行は進んでいません。コロナ禍の影響で、日本では公的研究機関や大学の一部が半ば休止状態を継続し、受注が減少いたしました。米国、欧州、オーストラリアからの発注がありましたが、売上高は47,101千円(前年同期比19.1%減)となりました。

(光学部品及びヒートシンク)

これまで試作的に出荷してきた、赤外線やX線の窓材が、量産に移ったことで、まとまった受注を継続的に得られるようになってきました。ヒートシンクについても、量産に近づいた製品がありましたが、一方で基板と同じように、コロナ禍の影響による開発活動低下もありました。売上高は29,506千円(前年同期比15.2%減)となりました。

 

(工具素材)

スマホ関連部材の加工用工具といった大きな案件がありませんでしたが、長刃長の工具素材は安定した受注を得ることが出来ました。売上高は32,319千円(前年同期比32.1%減)となりました。

 

②財政状態の状況

 (資産)

当事業年度末における流動資産は1,418,554千円となり、前事業年度末に比べ232,354千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が118,961千円、仕掛品が62,185千円及び売掛金が37,495千円それぞれ増加したことによるものであります。

固定資産は1,398,999千円となり、前事業年度末に比べ304,987千円増加いたしました。これは主に有形固定資産が

333,690千円増加したことによるものであります。

この結果、資産合計は2,817,554千円となり、前事業年度末に比べ537,342千円増加いたしました。

 

(負債)

当事業年度末における流動負債は357,188千円となり、前事業年度末に比べ12,830千円増加いたしました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が100,560千円減少したものの、未払法人税等が42,421千円、未払金が34,543千円及び賞与引当金が13,436千円それぞれ増加したことによるものです。

固定負債は415,105千円となり、前事業年度末に比べ114,195千円増加いたしました。

この結果、負債合計772,294千円となり、前事業年度末に比べ127,025千円増加いたしました。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は2,045,259千円となり、前事業年度末に比べ410,316千円増加いたしました。これは主に、資本金が17,750千円増加、資本準備金が17,750千円増加、当期純利益の計上により繰越利益剰余金が374,816千円増加したことによるものです。

この結果、自己資本比率は72.6%(前事業年度末は71.7%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ118,961千円増加して、当事業年度末には1,066,995千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は635,000千円(前事業年度は440,577千円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益516,451千円、減価償却費231,257千円があった一方で、棚卸資産の増加額67,297千円等があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は545,005千円(前事業年度は401,284千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出533,931千円、及び差入保証金の差入れによる支出12,815千円等があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は15,666千円(前事業年度は525,955千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入190,000千円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入35,206千円等があった一方で、長期借入金の返済による支出202,344千円があったことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における生産実績は以下のとおりであります。

生産高

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

前年同期比(%)

生産高合計(千円)

727,038

109.0

 (注)1.金額は製造原価によっております。

    2.当社の売上高及び生産高は、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模(生産能力)に依存します。なお、最近2事業年度の当社の生産能力(カラットベース)は、以下のとおりであります。

 

前事業年度

(自2020年4月1日

至2021年3月31日)

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

(カラット)

(カラット)

生産能力

90,000

110,000

 

b.受注実績

 当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における製品種類別の受注実績は以下のとおりであります。

製品種類

当事業年度

(自2021年4月1日至2022年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

種結晶(注)

2,015,456

254.3

1,118,255

228.9

基板及びウエハ

43,888

80.4

7,261

83.1

光学部品及びヒートシンク

41,834

109.8

13,694

632.5

工具素材

32,462

78.9

2,667

105.7

合計

2,133,640

230.3

1,141,877

227.5

 (注)当社への既存ユーザーからの種結晶供給量の増加依頼が多数入った他、各ユーザーに対して長期的な契約締結を要請した結果、当事業年度における種結晶の受注高及び受注残高が前年同期比で増加しております。

 

c.販売実績

 当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における製品種類別の販売実績は、以下のとおりであります。

製品種類

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

前年同期比(%)

種結晶(千円)(注)2.

1,453,333

145.4

基板及びウエハ(千円)

47,101

80.9

光学部品及びヒートシンク(千円)

29,506

84.8

工具素材(千円)

32,319

67.9

合計(千円)

1,562,260

137.0

 (注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自2020年4月1日

至2021年3月31日)

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Lusix LTD.

335,586

29.4

410,079

26.2

Sigma Carbon Technologies

178,278

15.6

387,413

24.8

CBC株式会社

188,796

16.6

244,378

15.6

Cornes Technologies USA

120,057

10.5

196,404

12.6

 

    2.当社は、大型のダイヤモンド単結晶を大量に製造することができますが、当社の主要な製品である種結晶に

      ついて、人工宝石市場における種結晶の大型化のニーズが増大しております。なお、当事業年度におけるサ

      イズ別の種結晶の出荷割合(出荷個数ベース)は以下のとおりであります。

種結晶サイズ

当事業年度

(自2021年4月1日

至2022年3月31日)

割合(%)

7x7mm以下

26.4

8x8mm~9x9mm

50.2

10x10mm以上

23.4

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。

また、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

なお、 新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載のとおりであります。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。

a.経営成績に重要な影響を与える要因

当社の事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社の資金需要のうち主なものは、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備投資、研究開発費、人件費等の営業費用であります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 当社は、日常の運転資金については自己資金で賄い、自己資金では賄えない設備投資資金等については金融機関からの長期借入で賄うとともに、資本での調達を検討することとしております。

 なお、当事業年度末における借入金の残高は、439,838千円であり、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,066,995千円であります。

 

c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための成長性を判断する客観的な指標として、①売上高成長率、②経常利益率、③ROE、④自己資本比率を重視しております。

①当事業年度における売上高成長率は、37.0%(前期は61.9%)となっております。

売上高成長率は、当社の成長性や事業進捗のペースを表す指標として、重視しております。

当社が競争優位性を確保しながら適切なペースで売上高を向上させ、経営上の目標を達成するための施策としては、当社の売上高はダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模に依存することから、金融機関からの借入及び資本での調達による長期的な資金を獲得し、設備投資を進め、生産能力の拡大を図ってまいります。

 

②当事業年度における経常利益率は、33.8%(前期は23.8%)となっております。

経常利益率は、当社の売上高に対する収益性を表す指標として、重視しております。

当社の事業進捗及び競争優位性の確保にとって、設備投資及び研究開発活動が重要ですが、そのための長期的な資金として自己資金を継続的に確保することが必要であるため、一定の経常利益率の確保に努めてまいります。

 

③当事業年度におけるROEは、20.4%(前期は20.0%)となっております。

 ROEは、当社の投下資本に対する収益性を表す指標として、重視しております。

また、研究開発活動により、ダイヤモンド単結晶の新たな用途を開拓することにより事業領域の拡大を図ってまいります。具体的には、ダイヤモンド半導体デバイス開発に必要な素材の開発や光学部品として必要な高品質結晶の開発を推進してまいります。

 

④当事業年度の自己資本比率は、72.6%(前期は71.7%)となっております。

 当社の事業進捗にとって設備投資は重要ですが、財務の健全性を保つためには、自己資本比率を50%以上に保ちたいと考えております。過度な借入を行うことがないよう、キャッシュ・フローにも注意を払っております。

 

4【経営上の重要な契約等】

当事業年度末現在における経営上の重要な契約等は以下のとおりであります。

(1) 特許実施権許諾契約

契約締結先

契約締結年月日

契約期間

契約の名称

主な内容

国立研究開発法人産業技術総合研究所

(注1)

2020年5月1日

2023年10月31日まで

特許実施権許諾契約

当社の製造技術に係る産総研特許の独占実施権契約。全部で内外の17件の特許について、独占実施権を当社に付与する。

(注)1.契約締結先は、2015年に「独立行政法人産業技術総合研究所」から「国立研究開発法人産業技術総合研究所」に名称が変更されております。

   2.上記の契約による独占的実施権の許諾期間満了後は、非独占的通常実施権が特許の存続満了日まで付与されることとなっております。

   3.上記の契約は、以下の事由に該当する時は、書面による通知をもって産総研が当社に解約を申し入れることができることとなっております。

     (産総研からの解約事由)

     ①当社が上記の契約に基づく特許実施権許諾の対価を支払わない時、又はそれらの支払いを著しく遅延した時

     ②当社が、上記の契約に定める当社製品の販売状況に関する報告書の提出を著しく遅滞した時、又は帳簿の閲

      覧に正当な理由なく応じない時

     ③当社が上記の契約に定める秘密保持義務を怠った時

     ④当社が、直接間接を問わず、本契約に定める特許の有効性について争った時

     ⑤当社が、本契約の履行について虚偽の報告その他不法行為をした時

   4.上記の契約は、以下の事由に該当する時は、書面による通知をもって当社が産総研に解約を申し入れることが

     できることとなっております。

     (当社からの解約事由)

     ①産総研が上記の契約に定める秘密保持義務を怠った時

     ②本契約に定める特許の全部について拒絶すべき旨の査定もしくは拒絶をすべき旨の審決又は特許を無効にす

      べき旨の審決が確定した時

   5.上記の契約上の義務を履行しない場合には、15日以上の期間を定め当該義務の履行に関する催告をし、当該期間内に相手方による履行がなされない時は、書面による通知をもって、産総研又は当社が相手方に対し解約を申し入れることができることとなっております。

   6.上記の契約に定める特許権の概要及び存続期間満了日は、以下のとおりであります。

特許権の名称

対象国

出願

または

登録

出願番号または出願年月日

登録番号または登録年月日

存続期間満了日

ダイヤモンドの表面層又は成長層の分離方法

日本

登録

特許第4919300号

2012年2月10日

2027年8月31日

ダイヤモンドの表面層又は成長層の分離方法

米国

登録

米国特許9410241号

2016年8月9日

2027年8月31日

オフ角を有する単結晶基板の製造方法

日本

登録

特許第4873467号

2011年12月2日

2026年7月27日

オフ角を有する単結晶基板の製造方法

日本

登録

特許第5382742号

2013年10月11日

2026年7月27日

オフ角を有する単結晶基板の製造方法

独国

登録

独国特許第602007033907.3号

2013年11月20日

2026年7月27日

オフ角を有する単結晶基板の製造方法

仏国

登録

仏国特許第2048267号

2013年11月20日

2026年7月27日

オフ角を有する単結晶基板の製造方法

英国

登録

英国特許第2048267号

2013年11月20日

2026年7月27日

マイクロ波プラズマCVD装置の基板支持体

日本

登録

特許第4366500号

2009年9月4日

2024年3月22日

大面積ダイヤモンド結晶基板及びその製造方法

日本

登録

特許第4849691号

2011年10月28日

2028年12月25日

大面積ダイヤモンド結晶基板及びその製造方法

日本

登録

特許第8940266号

2015年1月27日

2028年12月25日

モザイク状ダイヤモンドの製造方法

日本

登録

特許第5621994号

2014年10月3日

2030年12月15日

モザイク状ダイヤモンドの製造方法

英国

登録

英国特許第2488498号

2017年11月22日

2030年12月15日

ダイヤモンドの表面層又は成長層の分離方法

独国

登録

独国特許第602007045953.2号

2016年8月9日

2027年8月31日

ダイヤモンドの表面層又は成長層の分離方法

仏国

登録

仏国特許第2058419号

2016年4月2日

2027年8月31日

ダイヤモンドの表面層又は成長層の分離方法

英国

登録

英国特許第2058419号

2016年4月2日

2027年8月31日

単結晶の製造方法

日本

登録

特許第4613314号

2010年10月29日

2025年5月26日

単結晶の製造方法

米国

登録

米国特許7736435号

2010年6月15日

2025年5月26日

 

(2) 賃貸借契約及び借地権設定契約

契約締結先

契約締結年月日

契約期間

契約の名称

主な内容

株式会社イマス

2014年10月14日

2015年2月1日から

2020年1月31日まで

(注1)

建物賃貸借契約書

当社の横江第1工場として使用する建物の賃借

小西ますみ

小西税

小西敦

2021年12月21日

2021年12月23日から

2023年12月22日まで

(注2)

事業用建物賃貸借契約書

当社の横江第2工場として使用する建物の賃借

有限会社KND

2022年3月22日

2022年5月20日から30年間

(注3)(注4)

事業用定期転借地権設定契約書

2022年10月稼働予定の当社の島工場用地として使用する土地の事業用定期転借地権の設定

(注)1.契約期間満了6ヶ月前までに、当社及び契約締結先双方より相手方に対し、書面による別段の申し出がない場合は、本契約は自動的に3年間更新されることとなっております。なお、本契約期間内に契約締結先の正当な理由及び当社の都合により本契約を解約する場合、当社及び契約締結先双方ともに6ヶ月前までに相手方に対し、書面にて通告することが必要であります。

   2.当社及び契約締結先の協議により、本契約を更新することができることとなっております。ただし、契約締結先が当社に対して、契約期間満了の6ヶ月前までに、本契約を更新しない旨または本契約の条件を変更する旨の通知等、特段の意思表示をした場合は、この限りではありません。また、本契約期間内であっても、当社が契約締結先に対して、3ヶ月前までに書面により解約の申し入れを行うことにより、本契約を解除することができます。

   3.当社及び契約締結先は、本契約期間中に本契約を解約することはできないこととなっております。ただし、当社は、本契約期間中であっても、やむを得ない事情により、本契約を解約する場合は、6ヶ月前までに契約締結先に対して書面で通知することにより、通知後6ヶ月を経過後に本契約を解約することができます。

   4.契約期間の開始日は、当社による本体工事着手日と定めています。

 

 

5【研究開発活動】

当社の研究開発活動は、(1)生産技術に関する研究開発、と(2)新製品に関する研究開発、(3)製造装置及び方法に関する研究開発の3つのカテゴリーにおいて、優先順位を考慮して実施しております。

開発テーマは審査会を経て選定され、年度計画の下で開発作業を行っています。また、年度単位で報告会を開催して、進捗状況を社内に周知しています。

 

当事業年度における研究開発費の総額は、54,297千円であります。研究開発活動の結果、当事業年度において、①16x16mm大型結晶の開発、②低抵抗Bドープの成長条件開発、③高品質結晶の開発、④大型基板研磨手法の開発について成果がありました。

開発の具体的な内容は、以下に示すとおりです。

なお、当社は、ダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(1) 生産技術に関する研究開発

当社の生産技術は、親結晶からの分離技術によって、親結晶と同じサイズの子結晶を作るところが出発点になっており、このプロセスでは、親結晶の大きさとその性状は、子結晶を通じて全ての製品を決定づけることとなります。このため、元となる結晶を、大型化し、高品質化することが、全ての製品にとって重要な技術課題となっており、現在進めているこの部分の研究開発は、15x15mmより大型の単結晶を実用化することに集約されます。

 

(2) 新製品に関する研究開発

当社が想定している新製品は、応用分野によって分かれており、以下のとおりであります。

①ダイヤモンド半導体デバイス開発に必要な素材の開発

a.ウエハの開発

2インチのウエハの製品化が、デバイス開発に係る多くの研究者から望まれています。この理由は、従来の半導体材料を使ったプロセスを使わなければ、非常に細い線を描画したり、非常に薄い半導体層を作ったりすることができないからです。

2インチウエハは当社技術であるモザイク結晶で作成を試みていますが、量産に用いるにはさらに大型の3インチウエハ、4インチウエハが必要となってきます。当社は、2インチに引き続き、3インチウエハの開発を行い、継続的にこの開発を進めてまいります。

 

b.低抵抗基板の開発

ダイヤモンドデバイス開発に必要な材料として、縦型デバイスを製作するための基板があります。縦型デバイスは、デバイスの底面から上面(または逆方向)へ電流を流すため、抵抗値の低い基板が必要です。

当社は既にこのような低抵抗のダイヤモンドが成長する条件を確立しており、0.2mm程度の厚さの基板を製造できるよう、開発を行っております。

 

②光学部品として必要な高品質結晶の開発

 ダイヤモンドは、熱伝導率が高く、熱膨張係数が小さいため、高エネルギービームの光学部品として適した材料です。また、X線を透過するのにも適しています。このような特性の組み合わせとして、強力なX線ビームを作り出す放射光施設で使う光学部品(特にモノクロメーターと呼ばれる部品)をダイヤモンド化することが、期待されています。

モノクロメーターに使用する結晶は、極限までの高品質とする必要があり、当社はこの結晶の開発を進めています。

 

(3) 製造装置及び方法に関する研究開発

現在の成長装置の形成面積は、ほぼ直径45mmの範囲にとどまっています。このことによって、2インチウエハ(直径50mm)を製作することが難しいことで、ウエハ開発そのものにも影響を与えています。

そのため、成長コストにも直結する成長装置の形成面積の拡大を目指し、産総研等と共同研究を行っており、具体的には産総研のアイデアを基に、装置メーカーで装置試作を行うという方式で、この開発を進めておりましたが、開発進捗のスピードを上げるため、2020年7月より試作装置を当社に移転して、継続して実験を進めております。