第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針

(a)経営理念

 当社は経営理念として「自らが輝き、人を元気にする」を掲げております。当社のお客様は、体に不都合を持たれている方が多く、その影響で心も沈みがちになっている方もいるかもしれません。当社は介護という仕事を通して、お客様の「心」を元気にしたいと考えております。その為には、お世話をさせていただく私たちが暗く後ろ向きではいけません。お客様がその方らしく輝いて生きることを応援させていただくために、私たち自身が仕事を通じて自らを磨き自分らしく輝いて生きることが必要であり、当社社員が輝けば、利用者様の「心」が更に輝き出すと考えております。

 

(b)ミッション

 当社は下記をミッションとして定めております。

① 福祉の職場をもっと魅力的に!

 私たちサンウェルズは夢と誇りを持って志事(しごと)に取り組み、皆があこがれる業界づくりにチャレンジします。

② 介護サービスに進化と変化を!

 私たちサンウェルズは介護の常識にとらわれることなく、利用者様の立場に立ったより良いサービスづくりにチャレンジします。

③ 未来を作る「人」を育成する!

 私たちサンウェルズは仕事を通じてクリエイティブに発想し、自ら行動する「輝く大人」づくりにチャレンジします。

 

(2)目標とする経営指標

 当社では、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的としており、収益力の強化と経営の効率化を図るため、売上高及び経常利益率を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題の改善に取り組んでまいります。

 また、有料老人ホームの運営による売上高が、当社全体の売上高に占める比率が高いことから、「PDハウス」を含めた有料老人ホームにおける提供可能室数及び稼働率も経営成績に影響を与える主要な経営指標として捉えております。

 

(3)経営戦略

 わが国では、2007年に超高齢社会(公益財団法人長寿科学振興財団の定義)を迎え、更に高齢化も進行し、65歳以上人口割合は2020年の28.6%から一貫して上昇し、2070年には38.7%まで増加すると推計されており(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)、若年層の人口は減少の一途をたどり、より一層の少子高齢化が加速していくものとみられております。これにより、医療業界における需要と供給のバランスが崩れ、病院数の減少や医師不足といった問題が生じるおそれがあり、介護へのニーズはますます増加するものと考えられます。

 当社は2006年に介護施設としてデイサービスをスタートさせ、15年の歳月をかけてパーキンソン病に焦点を絞った「PDハウス」の全国展開にまで業容を拡大させてまいりました。

 今後は、北陸エリアのデイサービス、有料老人ホーム事業は業容を維持しつつ、「PDハウス」を経営戦略の中心に位置づけ、パーキンソン病専門施設として「PDハウス」での提供サービスを磨き上げること、また、新サービスを創造することによって差別化を実現し、中長期的に安定的かつ持続的な成長と企業価値の拡大を目指すことを計画しております。

 具体的には、以下を当社の経営戦略の骨子としております。

① 「PDハウス」のブランド構築

 パーキンソン病は治療手段について世界中で多くの研究が行われておりますが、いまだに根治する方法が確立されていない進行性神経難病になります。患者数は進行性神経難病の中でも最も多く、関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症)も含めると約20.2万人(厚生労働省「2023年度衛生行政報告例」(2023年度末現在)、特定医療費(指定難病)受給者証所持者数)の患者がいると推定されております。年齢層も60歳以上が約9割(同上)を占め、症状についても筋肉がこわばる(筋固縮)、体が動かしにくくなる(無動)、手足が震える(振戦)などの動きに関連する症状のほかに、幻覚や幻視、自律神経障害、睡眠障害など様々な生活障害を呈する疾患であり、ケアをするにも高い専門知識と経験、技術が必要になります。

 また、この疾患には正しい薬物療法と十分なリハビリテーションが重要とされますが、薬剤に関して多い方では1日10回程度に分けて薬を服用するケースもあり、リハビリテーションにおいても現行の介護施設では十分量のリハビリテーションを提供できる所が非常に少ないのが現状です。適切な服薬管理と十分な回数のリハビリテーションが提供できれば病気の進行を遅らせ、天寿を全うしていただくことも可能だと考えております。しかしながら、病気の初期段階や軽度要介護度の患者に対しての改善に関するリハビリ報告・治療研究報告は多く存在しますが、病気が進行し重度化した場合の改善事例が非常に少ないのが現状であります。

 「PDハウス」では、パーキンソン病を専門とする脳神経内科医や大学病院、研究機関との共同研究を進め、より効果的な新サービスの創造を目指しております。順天堂大学と当社施設をつないだ3次元オンライン診療システムの試験運用、転倒検知システムを用いた転倒の要因分析研究、運動機能評価システムの試験運用等を実施し、新たな専門サービスの開発により同業者の参入障壁の構築に努めております。

 これからの社会保障制度においては、入院期間の短期化や介護療養病床の廃止などにより、まだ専門的な治療が必要にもかかわらず地域に退院してくる方が増大することが予想されます。介護施設においても病院医療機関のように専門化(脳神経内科、消化器科、循環器内科など)を図り、地域包括ケアの中において専門性の高いケアを受けられる施設は重要と考えており、「PDハウス」はその一端を担える事業と自負しております。

 

② 「PDハウス」の事業拡大

 パーキンソン病及び関連疾患の患者数は2023年度末で約20.2万人(厚生労働省「2023年度衛生行政報告例」(2023年度末現在)、特定医療費(指定難病)受給者証所持者数)の患者がいると公表されております。そのため、地域ごとに必要とされる床数を展開していきたいと考えております。

 当事業年度末では、「PDハウス」を全国に43施設(2,325床)運営しております。今後も「PDハウス」展開を成長ドライバーとして位置づけ、大都市圏や地方の中核都市を中心に更なる全国展開を計画しております。大都市圏では期間を空けずに新規開設することにより、エリアの囲い込みと従業員の適正配置を行い、利益の最大化を図ります。地方の中核都市では、まずは一つ目を開設することにより、そのエリアにくさびを打ち、ニーズに合わせて周辺エリアに新規開設することで同業他社の進出を阻むと共に、中期的にはそのエリアでの高シェアを図ります。

 開設6か月前からリーダー職員を採用、入居ペースに合わせた採用を行い、入念な研修を経て開設を迎えます。当社は、業界内でも高位の採用倍率を維持(2025年3月期は8.0倍)しており、入社後も働きやすい職場環境を整備することで定着率の向上に努めております。また、当社では専門医監修の社内資格「PDライセンス」制度を導入し、パーキンソン病ケアの専門家育成に取り組んでおります。更に周辺の医療機関や施設からの紹介、TV、Web、パンフレット等による広告で集客をすることで早期黒字化を図り、高稼働体制の維持に努めております。開設時期が集中すると一旦は業績を押し下げる要因となりますが、早い段階で業績に寄与するようになるとともに、「PDハウス」を利用される方は長期に亘り施設を利用いただくので、安定した稼働率で推移し、定常的な業績を目指します。

 

③ 「PDハウス」を中心とした事業の展開

 現在、「PDハウス」はパーキンソン病が進行された方を中心に利用していただいております。そこで得たリハビリテーションのノウハウ等を活かし、中期的には軽度の方にも利用していただけるリハビリテーションサービスを提供することを計画しております。各地の「PDハウス」でのノウハウをコアにし、インターネットでリハビリテーションが受けられるサービスを展開することにより、より多くのパーキンソン病患者の方にサービスを提供してまいります。さらに海外でもこのインターネットでのサービスを展開することを計画してまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 再発防止策の策定と内部統制強化

 当社は、2024年9月20日付「特別調査委員会設置に関するお知らせ」にて公表いたしましたとおり、当社が不正な診療報酬の請求を行ったとする報道において指摘された内容の事実関係及び問題の有無を明確にするため、当社より独立した社外の専門家を委員とする特別調査委員会を設置し、客観性のある業務実態の調査を行ってまいりましたところ、2025年2月7日付「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」のとおり、特別調査委員会より調査報告書を受領いたしました。

 本調査の結果、訪問看護事業において診療報酬の請求が過大に行われた事実が判明したため、本件の対象となる部分について過年度の決算を訂正し、2022年3月期から2024年3月期の有価証券報告書及び2023年3月期の第1四半期から2024年3月期の第3四半期までの四半期報告書の訂正報告書を2025年2月12日付で提出いたしました。さらに、第18期及び第19期の内部統制報告書について、各期末時点において内部統制に開示すべき重要な不備が存在していたことを理由として、訂正報告書を同日付で提出いたしました。

 当社は、2025年2月12日付「再発防止策の策定及び関係者の処分に関するお知らせ」のとおり、本調査報告書において指摘された原因分析及び再発防止策の提言と真摯に向き合い、実効性のある再発防止策の策定と内部統制強化に向けて、以下の項目に係る取組みを実施しております。

 

特別調査委員会の提言内容を踏まえた再発防止策の項目

具体的な再発防止策

a.訪問看護事業を推進するための基盤となるリスク分析・評価等を行う体制の導入・実施

 

ア.「訪問看護・介護事業リスク検討委員会」の設置

・代表取締役自らが指揮を執り、経営陣と経営推進を担う従業員の意識改革を図ると共に、取締役会等との情報共有機関として社外有識者も招く「訪問看護・介護事業リスク検討委員会」を新設し、適切かつ十分なリスク分析・評価を行います。(2025年3月に設置し、毎月開催。)

イ.経営陣による施設ラウンドの定期実施

・訪問看護の現場状況に対する経営陣の認識不足を反省し、今後は定期的かつ計画的に施設訪問を実施し、入居者と現場職員の声に耳を傾け、運営状況を直接把握し改善が必要な点について迅速に対応いたします。また、訪問時には入居者・家族との意見交換の場を設けます。(2025年3月から実施中。今後も継続して実施。)

ウ.医療・介護業界のコンプライアンスに精通する外部有識者招へいの検討

・訪問看護事業のリスク分析・評価の専門性を鑑み、年内を目処に医療・介護業界のコンプライアンスに精通する外部有識者の社外取締役等への登用を検討いたします。

b.内部統制の強化・再構築

 

ア.PDハウス等の現場における内部統制の強化・再構築

 

(ア)訪問看護時間を正確に把握・記録する為の電子記録制度の導入

・訪問看護事業の正確な訪問時間記録と不正防止のため、居室へのQRコード設置と読み取りによる電子記録制度を導入し、訪問看護記録システムと連携することで、記録・管理を厳格化いたします。(2025年1月に体制構築し運用中。)

(イ)複数の看護師の連携による訪問看護計画の作成・見直し

・訪問看護計画の作成・見直しにおいては、看護師3名以上による協議を必須とし、現場のチェック機能を強化すると共に、計画内容の妥当性と透明性を確保いたします。また、加算要否検討の参考資料をマニュアルに追加し、複数回・複数名訪問の必要性・根拠等を訪問看護計画書に明記することを徹底いたします。(2025年1月からマニュアル化し運用中。)

(ウ)現場管理職による訪問看護記録のチェック体制の強化

・2025年1月より全訪問看護施設において、現場管理職が全訪問看護記録をチェックし、QRコード記録との整合性や訪問看護計画との適合性を確認しております。確認の結果改善が必要と認められた看護師については、月次会議で指導・改善を図ります。(2025年1月から実施中。同年4月1日付で看護部を設置し、体制強化のうえ継続実施。)

(エ)管理職(看護課長)による訪問看護記録のサンプルチェックの実施

・2025年1月より管理職(看護師)が、毎月全施設を訪問し、入居者5名分の直近1か月の訪問看護記録を無作為抽出し、現場管理職によるチェックの実施状況と、入居者状態に応じた適切なサービス提供状況を確認しております。(2025年1月から実施中。今後も継続して実施。)

(オ)運営部長による定期的なヒアリング調査の実施

・2025年1月より、各エリア運営部長は毎月各施設で職員5名程度と入居者5名程度を対象にヒアリング調査を実施し、業務遂行状況、不正行為の有無、職場環境、会社への要望、サービス提供状況・満足度などを幅広く把握し、面談記録を保管します。問題となり得る事象は速やかに訪問看護・介護事業リスク検討委員会に報告します。(2025年1月から実施中。今後も継続して実施。)

 

 

イ.管理部門における内部統制の強化・再構築

 

(ア)PDハウス等の現場の共用部カメラによる監視体制の導入

・訪問看護に係る全施設の廊下・フロアに記録用カメラを設置し、管理部門(総務部)が毎月10施設程度を抽出し、日中5件・夜間10件程度の映像をサンプルチェックする監視体制を構築します。これにより、計画通りの訪問実施状況を確認し、管理部門による現場への牽制力を確保します。(2025年4月から実施中。同年5月31日を以て監視体制完了。)

(イ)管理部門に新たに看護部を設置

・管理部門内に新たに看護部を設置し、全施設からの問い合わせ窓口として疑問・課題に対応すると共に、看護関連書類を横断的に監視し、課題発見時は直接指導を実施します。特に開設間もない施設については重点的に支援を行い、問題となり得る事象は速やかに訪問看護・介護事業リスク検討委員会に報告します。(2025年4月1日付で看護部を設置。)

ウ.内部監査室による監査機能の強化

 

(ア)内部監査における調査内容の拡充

・内部監査において、各書類の記載内容につき詳細に確認すると共に、記録内容と実態の齟齬の有無についてのヒアリング調査を無作為抽出した看護師10名に対して実施します。また、監査体制強化のため、内部監査部員を3名から6名に増員しております(うち1名は看護資格を保有)。なお、1拠点あたりの内部監査員は、監査補助員として近隣の看護資格を保有する役職者4名を加え、合計10名としております。監査結果は代表取締役及び経営会議に報告し、人事考課において考慮します。(2025年3月から実施中。同年6月30日を以て体制整備完了予定。)

(イ)内部監査の対象及び監査内容の拡充

・従来の内部監査対象施設に加え、新たに西日本・東日本運営部を監査対象とし、運営部長の各施設監督状況を監査項目に含めます。これにより、運営部長の監督に対する牽制力を確保します。(2025年3月から実施中。同年6月30日を以て体制整備完了予定。)

(ウ)内部監査室長への適切な役職者の配置及び権限の強化

・2025年3月1日付で内部監査室を課から部に改組すると共に当社以外での監査経験を有する部長職を配置し、権限を強化しております。

c.研修・教育の充実とコンプライアンス意識の醸成

 

ア.オペレーションに関する継続的な教育体制の構築

・入社時1回のみだったコンプライアンス・倫理観研修を、今後は全看護師・介護士等を対象に年複数回実施し、コンプライアンス教育に加え訪問看護に特化したオペレーション研修・確認試験を行い、継続的な教育体制を構築し、基本的なルールの浸透と意識醸成を図ります。(2025年3月から実施中。同年6月30日を以て体制整備完了予定。)

イ.訪問看護に関するマニュアルの整備・改訂及び管理体制の強化

・訪問看護に関する全マニュアルを見直し、誤解を生む表現を排除し、2025年1月より適用いたしました。また、管理体制強化のため、マニュアルの紙媒体保管を廃止し、研修用PC等で最新版のみを閲覧可能とする体制を2025年4月より開始しております。加えて、会社非認定の独自マニュアルの作成・使用を禁止し、違反時は就業規則に基づき処分いたします。(2025年3月から実施中。同年4月1日を以て体制整備完了。)

ウ.不正行為等に対する懲戒処分の厳格化及びその周知

・2025年4月1日付で就業規則を改訂し、不正行為等に関する懲戒処分の厳格化およびその周知を行いました。今後、同規則に基づき、厳格に運用してまいります。

 当社は再発防止策の一環として、本年5月23日に役員含む部長職を対象として「コンプライアンス研修」を実施いたしました。

 本研修は、役員含む部長職が率先して法令遵守の意識を徹底し、組織全体におけるコンプライアンス意識の更なる向上を図ることを目的としており、特に医療・介護報酬請求に関する法的枠組みおよび倫理的判断に対する理解の深化を主眼に置いております。

 当社は、今後も役員含む部長職のみならず、全役職員に対する教育を継続して実施し、一人ひとりの「コンプライアンス意識」を維持・醸成することで、全社的な再発防止に取り組んでまいります。

d.人事評価の指標としての施設単価目標の廃止を含む人事評価制度の変更

・主任職の人事考課における評価項目から施設単価目標は2025年2月に廃止いたしました。新たな評価項目については、顧客満足度と従業員満足度を主任・副主任職以上の評価項目に追加すると共に、コンプライアンス遵守を全従業員の評価項目に新たに加えます。(2025年6月30日を以て体制整備完了。)

e.就寝時間帯における訪問看護の内容の再検討

・就寝時間帯の訪問看護については、入居者・家族の希望、医師の見解、現場看護師の声等を踏まえ、複数看護師による計画検討を通じて、現場が無理なく実施できる内容を再検討し導入いたします。(2025年2月から実施中。同年6月30日を以て体制整備完了。)

f.ナースコール対応人員体制の確保

・各PDハウス等において、看護師・介護士が訪問看護中にナースコール対応を迫られる状況を改善するため、全施設にナースコール対応等を行う有料老人ホーム人員を24時間体制で配置し、入居者の状況に応じて人員を拡充いたします。(2025年3月から実施し、同月末を以て全施設、配置完了。今後も適宜見直しを実施。)

 

② 利用者満足度の向上

 当社の社会的使命は、利用者様に心から満足いただけるサービスを提供することだと考えております。当社がサービスを提供する各施設においては、利用者様に安心安全に、安定したサービスを提供するとともに、各利用者様のご要望に沿えるよう柔軟に対応することが必要になります。当社では、人材の確保、サービス基盤の拡充等に加え、各施設内、施設間の連携を強化し、急な状況変化にも耐えうる体制を整備しております。

 

③ 「PDハウス」のブランド力強化及び知名度向上

 当社は、都市部を始め全国へと展開を進め、「PDハウス」のブランド力強化と知名度の向上に努めており、2025年3月期においては、関東・関西でのドミナント展開に加え、新たに京都府・兵庫県・新潟県に新規開設いたしました。

 

④ 情報管理体制の構築及び強化

 当社は、事業を行う上で入手した顧客に関する様々な個人情報を保有しております。万が一これらの情報が外部に漏えいした場合、当社に対する信用失墜や損害賠償請求等によって当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 情報管理については、従業員との情報管理に関する誓約書の締結、社内規程の整備及び従業員教育の徹底等、管理体制の強化に努めることで情報流出を抑止しております。また、インターネットセキュリティの強化及び事業所の防犯対策等の実施により外部者の不正な情報取得を防ぐなど、可能な限りの対策を取っております。

 IT社会の発展に伴い、当社でも稟議の電子決裁、保存書類のペーパーレス化、Webでの入社面接、Web会議等、業務の効率化を図るためITを導入してまいりました。ネットワークの管理に関しましてはIT統合管理システムを導入し、事業の拡大とともに増加するPC機器等の管理を行えるように致しました。それにより災害時でも耐えうる情報管理体制の構築に取り組んでおります。

 

⑤ 財務体質の強化

 当社は、有利子負債の割合が株主資本に対して高い比率となっております。今後は、運転資金拡大に加え、施設開設のための資金の確保も必要であることから、有利子負債とのバランスを勘案し自己資本の拡充を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、『介護サービスに進化と変化を』のミッションを実現するにあたり、業界の先駆者としてケアサービスの拡充・開発を推進すること、長期的な展望をもとに事業拡大を図ることが前提になると考えております。また、その施策においては、世間のニーズに敏感に順応することが必須であり、社会問題やステークホルダーの価値観が変容し続ける現代に際して、持続的な成長過程においてサステナビリティの本質を切り離して考えることは不可能であると認識しております。介護サービスの未来を考えることは、全ての人類の未来を考えることだと、当社は考えております。当社に関わる顧客、取引先、従業員、株主はもちろん、人々が暮らす環境や社会について尊び、サステナビリティを重視した経営を実践してまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当社が有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、気候変動関連課題を含むサステナビリティ関連の取り組みを推進するための体制として、「サステナビリティ委員会規程」に基づき、サステナビリティ委員会を取締役会直属の組織として設置しています。サステナビリティ委員会は代表取締役を委員長とし、各部門の課長以上の者により委員を構成しております。

 サステナビリティ委員会は、原則として6か月に1回開催されており、気候変動関連課題を含むサステナビリティ方針および中期目標の策定をしています。また各部門における活動の進捗管理を行い、企業全体のサステナビリティに関わる取り組みの推進をしています。審議内容は代表取締役を通して直接取締役会に報告され、監督を受けており、経営戦略や事業計画の策定、年間予算の審議に反映することとしています。

 なお、当社のコーポレート・ガバナンス体制は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。

 

※当社サステナビリティ推進体制

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(2)戦略

 ①人的資本に関する戦略

 a.雇用の場の創出と働き手の待遇改善

当社は、PDハウスの全国展開により、開設地域に雇用の場を創出してまいります。同時に、働き手の待遇改善を積極的に行い、定着率向上に取り組んでおります。

継続している取り組みとして、定期的に従業員アンケートを実施して従業員の意見を収集し、労働環境・福利厚生制度への反映を行い、働きやすい職場環境づくりに活かしてきました。当該年度においては、2024年9月の報道以降、特別調査委員会による調査の実施を鑑みて同アンケートを見送りましたが、新年度の2025年4月に実施しております。

また、経営理念「自らが輝き、人を元気にする」を体現すべく、健康経営への取り組みを行い、2025年3月10日付で「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を受けております。お客様を元気にするには、まず何よりサンウェルズの仲間一人ひとりが健康で元気に働けること、すなわちウェルビーイングの向上が何よりも大切だと考えております。理念に共感する従業員が相互に信頼しあい、お客様に良質なサービスを提供していくことを目指しております。お客様の健康に関わる企業として絶えず進化していけるよう、従業員が自ら輝くための基礎となる健康増進施策や働く環境整備に継続的に取り組み、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様の期待にお応えしてまいります。

 

 b.人材採用

優秀な人材の確保が当社の今後の事業拡大および成長において重要な課題であると認識しております。

2025年3月期は、1,354名の人員を確保することができました。主な取り組みとして、就職説明会開催回数の増加、従業員からの友人・知人紹介による「リファラル採用」の継続、YouTubeチャンネル内容の拡充を図りました。就職説明会参加人数、リファラル採用人数は前事業年度より増加しており、YouTubeチャンネル登録者も1年間で1.7倍に増加しました。また、新たにタレントプール採用の取り組みを始め、成果が出ております。今後の採用活動にもこれらの取り組みを継続しつつ、安定的な人材確保を進めてまいります。

 

 c.人材育成

当社が安定的かつ持続的な事業を運営していくためには、利用者が安心・安全に生活できるサービスを提供できる人材の育成が重要と考えます。

そのため人材育成については、役職別の研修プログラムを整備しております。特に新規役職者の養成に関しては、2024年より新たに業務指導やマネジメント研修などの内容補強を行い、開設数増加にも耐えうるリーダー育成を進めております。

また、専門性向上に対しては、順天堂大学、福岡大学とのオンラインセミナーを継続的に開催し、PDハウスで勤務するリハビリ職、看護職、介護職のパーキンソン病患者に対するケアスキル向上を図っているほか、パーキンソン病ケアの専門家育成のために社内資格「PDライセンス(1級~3級)」制度を導入し、PDハウスで勤務する全従業員(介護職・看護職・リハビリ職)が初級にあたる3級を取得必須とし、パーキンソン病ケアのスペシャリスト集団を目指す仕組みづくりを行っております。専門的なケアの均質化・高水準化に注力するとともに、知識・技術の向上が評価される体制づくりを行うことで、従業員が自ら学び成長する職場環境づくりに取り組んでおります。

 これらの取り組みの一方で、特別調査委員会の調査結果では、業務マニュアルの整備および管理の不備が指摘され、誠に遺憾ながら従業員教育の不徹底があったと言わざるを得ない状況が確認されました。本件を真摯に反省し、適正な業務マニュアルの制定、管理、運用の徹底のための再発防止策を策定し、改善への取り組みを開始いたしました。

また経営陣を含む従業員教育において、コンプライアンス・倫理研修を毎年実施することとし、コンプライアンス意識の醸成を行ってまいります。

人材育成は一夜にしてはならないことを理解し、引き続き、利用者様に良質な介護サービスを提供すべく、人材の育成に注力してまいります。

 

 ②環境に関する取組

  当社は、介護サービスを提供する事業者として、高齢者やその家族に対する安心と支援を提供し、社会全体の福祉向上に寄与しています。今後ますます進んでいく高齢化社会において、今後の事業の安定的な継続と企業価値の向上および持続可能なサービス提供の観点から、気候変動に関する対応を踏まえ、事業活動の幅を広げることが喫緊の経営課題であると認識しております。

  そこで気候変動が将来いかなる進行を遂げた場合においても事業継続が可能となるよう、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに則り、気候変動に関するシナリオ分析を実施いたしました。異なる気温上昇幅(1.5℃、4℃)ごとの影響を想定し、2050年までの事業環境および当社の事業活動に及ぼすリスクと機会を精査いたしました。以下は、2024年度中に実施したシナリオ分析の条件設定とその結果、並びにシナリオ分析を通じて識別した気候変動に関するリスク機会の評価結果となります。

想定シナリオ

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

世界観

世界の平均気温上昇が産業革命前と比べて1.5℃までに抑えるシナリオ。脱炭素を目指した政策や規制が強化されるとともに、低炭素製品・サービスの需要が拡大する。

世界の平均気温が産業革命前と比べて最大4℃上昇するシナリオ。
世界的に気候変動対策が十分に進展せず、物理的な被害が顕著に拡大する。

参照シナリオ

IEA 『WEO2024』NZEシナリオ, APSシナリオ
IEA 『WEO2019』SDSシナリオ

IEA 『WEO2024』 STEPSシナリオ

IPCC 『第5次報告書』RCP2.6シナリオ

IPCC 『第5次報告書』RCP8.5シナリオ

 

  また、気候変動のリスクと機会について、サステナビリティ委員会にて事業活動への影響を検討し、以下のリスクと機会を特定しています。

分類項目

時間軸
(※1)

種別

事業への影響

重要度評価(※2)

移行

カーボンプライシングの導入

中期

リスク

・炭素税徴収や関連エネルギーのコストの増加
・食料品価格や原材料価格の炭素税額転嫁による調達コストの増加

エネルギーコストの変化

長期

リスク

・電力などの価格上昇による、運営コストの増加

政策・規制の高度化

中期~短期

リスク

・省エネ政策の進展に伴う新規施設建設・増改築時の省エネ性能基準の強化への対応費用の増加

廃棄物規制

中期~長期

リスク

・廃棄物処理費用の高騰による対応コストの増加

物理

自然災害の激甚化

短期~長期

リスク

・拠点の被災による売上高の減少
・拠点の被災による資産価値の低下

長期

機会

・災害レジリエンス性の高い福祉施設の需要増加

平均気温の上昇

長期

リスク

・熱中症予防のための空調利用にかかるエネルギーコストの増加

長期

リスク

・農産物の不作などによる、食品価格の高騰

長期

リスク

・ウイルスを媒介する虫の生息域拡大による感染症リスクの増加および予防・営業停止損失の発生

短期

リスク

・内装材や家財道具のカビ発生頻度の増加による清掃・改修対応コストの増加

※1:時間軸の定義

短期…直近会計期 / 中期…1年~5年後 / 長期…5年後以降

※2:重要度評価の基準

大…営業利益対比1%以上 / 中…営業利益対比1%未満 / 小…営業利益対比0.1%未満

 

  当社事業に重大な財務影響を及ぼす可能性のある気候変動関連リスクに関する、4℃シナリオ、1.5℃シナリオそれぞれの仮説に基づく考察結果は以下のとおりです。

a.4℃シナリオ

  気候変動課題の対応が従来通りであり、気温が4℃上昇してしまう将来世界を想定し、分析を行った結果、当社事業においては物理リスクの増加が特定されました。当社は、「PDハウス」をはじめとした住居型福祉施設を日本全国に展開しています。新規拠点の開設に際しては、ハザードマップを活用した水害リスク評価を全ての候補地で実施し、リスクの低い土地を選定の上で開設しております。しかしながら、気温が4℃上昇するシナリオにおいては、既存拠点においても洪水による資産被害リスクおよび営業停止損害リスクが顕在化し、その想定被害総額が当社の重大リスク閾値を超える可能性があると評価されました。また、異常気象の激甚化によるライフラインやサプライチェーンの寸断も想定され、営業の停止やそれに伴う売り上げの減少も見込まれます。

 

b.1.5℃シナリオ

  気温上昇を1.5℃に抑えるべく、気候変動関連の政策や規制などが高度化した将来世界においては、移行リスクの増加が特定されました。当社は、住居型福祉施設を運営し、利用者が常時居住可能な環境を提供しております。気温上昇に伴い、熱中症リスクの高まりが懸念される中、利用者の安全確保の観点から、空調設備の継続的な使用は不可欠であり、また、施設運営上、一定の電力消費は避けられません。そのため、将来的にカーボンプライシングの導入や再生可能エネルギーの普及による電力価格の上昇が進行した場合、当社の事業運営におけるコスト負担が増加する可能性があります。カーボンプライシングの導入によるコストは衛生用品や食料品など原材料価格への転嫁という形で、高騰分は直接操業コストの増加として影響が想定されます。

  また廃棄物規制の高度化による影響も想定されます。当社が展開する福祉事業はし尿を含んだ紙おむつの廃棄が避けられません。しかしながら使用済みオムツは焼却処分する際に大きな環境負荷がかかることが指摘されており、今後は廃棄量の削減を目的とした処理費用の高騰やリサイクルのための回収の対応コストなどが想定されます。

 

  以上のようなシナリオ分析結果を踏まえ、当社サービスの利用者の皆様が今後も安心してサービスをご利用いただける環境を確保するため、リスクの低減を図るべく各種対応を進めてまいります。

  なお、シナリオ分析で特定したリスクや機会に対応していくための現在の取り組み状況として、以下のような取り組みがあります。

気候変動対策取り組み状況
・拠点周辺におけるハザードマップを活用した水害リスク分析の継続的な実施
・飲食料品、衛生用品等の必要資材の備蓄拡充
・自家発電設備および予備電源の導入、整備
・自家発電設備の導入による電力供給の安定化
・省電力型空調機器の導入による消費電力の抑制
・新設拠点のLED照明化(既存拠点については既に導入済み)
・Scope 1・2(自社事業における温室効果ガス排出量)の算定およびモニタリングの実施

 

(3)リスク管理

 当社における気候変動関連のリスク管理は、サステナビリティ委員会が担当しています。シナリオ分析によってリスクを識別し、当社事業への影響が想定されうるものを特定し、その影響の重要度を評価します。重要度の評価にあたっては、特定したリスク・機会項目を「影響度(財務インパクトの規模)」および「発生可能性」の2軸でマッピングし、対応の優先順位を決定します。

 優先度の高い重要課題に対しては、サステナビリティ委員会における審議のもとで、具体的な対応策や戦略の検討を行うこととしています。このうち、自然災害リスクをはじめとした発生後の事業継続のための施策が必要な事項については、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会に報告され、対応策の検討がなされます。

 検討した対応策は、関係する各部門に指示・実行され、その進捗状況についてはサステナビリティ委員会及びリスクマネジメント・コンプライアンス委員会がモニタリングを行い、必要に応じて改善策の検討や施策の見直しを行います。

 なお、一連のプロセスは監査等委員会による監査を義務付けており、各対応策の実効性、透明性を確保しております。

 

(4)指標及び目標

①人的資本に関する指標及び目標

a.働きやすい環境づくりの指標:離職率および有給休暇取得率

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

2026年3月期(目標)

離職率)(注)

10.0

15.4

11.3

12.0

13.6

17.3

年次有給休暇取得率

61.1

63.3

61.2

64.4

66.0

60.0

(注)期中入社及び期中退職者は除く

 

b.サンウェルズ健康経営戦略マップ

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c.健康経営における2026年3月期目標

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②環境に対する指標及び目標

 当社はGHG排出量の削減が気候変動関連のリスクの低減につながるとの認識のもと、2022年3月期分より、GHGのScope1,2(自社事業によって発生する)排出量の算定と、使用電力量の開示を行っております。今後は2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、以下の目標を設定し、排出量の削減に向けた取り組みを実施します。

 

 気候変動対応目標

・2030年 GHG排出量の42%削減(2022年度比)

・2030年 電力の再生可能エネルギー化100%切り替え

 

 ※自社事業活動における温室効果ガス排出量及び電気使用量

 

 

 

※小数点第一位以下切上

管理指標

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

SCOPE1(t-CO2)

672

889

1,089

SCOPE2(t-CO2)

2,766

3,962

5,458

SCOPE1,2(t-CO2)

3,438

4,851

6,548

電気使用量(kWh)

6,297,347

8,749,139

12,416,003

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)人材の確保について

 当社が今後事業をさらに拡大し、成長を続けていくためには優秀な人材の確保が重要課題となっております。介護事業においては、介護士、看護師、理学療法士など専門職の確保が必須ですが、医療・介護業界での慢性的な人材不足と今後益々の介護業界へのニーズの高まりで、求人競争激化の環境は予断を許さない状況であります。このような状況の下、当社では、人材採用に関する専門部署を設置し、求人サイトやメディアを利用しておりますが、これを漫然と利用し続けることを避け、常に効果を検証しながら積極的かつ戦略的な採用活動を実施するほか、福利厚生制度の整備や柔軟な働き方を認めるなど、従業員の労働環境に配慮し、働きやすい環境づくりに取り組んでおります。

 しかしながら、こうした人材の確保が計画どおりに進まなかった場合、又は育成が計画どおりに進まず、あるいは重要な人材が社外に流出した場合には、既存施設ではサービス提供の規模縮小、新規施設ではオープン時期の順延等により、競争力の低下や事業拡大の制約要因が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)コンプライアンスに関するリスク

 当社は、法令遵守及び企業倫理に基づき誠実に行動することを経営上の最重要課題としております。事業に直接関係する法令のみならず、近年、SNSによるトラブルが問題になるなど、企業が求められる企業倫理は多岐にわたります。そのため、社会的責任のある企業として遵守すべき法令全般につき、当社の全役職員が法令等・倫理に基づいた行動をとるよう、コンプライアンスやリスク管理を統括する専門部署を設置するなど強化に取り組んでおります。また、内部通報制度を整備運用して内部の不正を抑止するよう努めております。しかしながら、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の失墜等により、当社の業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(3)新規施設の開設について

 当社は事業の拡大のため、新規施設の開設を推進しております。新規開設機会を逃さないよう常に情報収集に努め、必要に応じて、迅速な経営判断が下せるよう、代表取締役社長を含めた経営陣は緊密な連携をとることとしております。また、新規施設の開設にあたっては、各種調査を実施し、十分な検討時間を設けて様々な角度から事業計画及び採算性等を十分に検討した上で実施しております。

 しかしながら、希望する立地に物件を確保できない場合やプロジェクトに遅延が発生した場合、また、事業計画と実績に大幅な乖離が生じた場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)高齢者介護における安全管理及び健康管理について

 当社が介護サービスを提供しているのは、主に要介護認定を受けた介護度の高い高齢者であり、介護事故、転倒事故、食中毒、食物誤嚥事故、感染症の集団発生、また高齢者の特性に起因する事故等が発生する可能性があり、利用者の命に係わる重大な事故に発展する可能性もあります。これらにより、当社側の過失責任や管理責任が問われた場合には、損害賠償の支払い等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに関する顕在化の可能性は一定程度あると認識しておりますが、各種スキルアップ研修の提供や介護マニュアル、業務手順書等の整備等により社員教育を徹底しているほか、日常のサービス提供におけるヒヤリハット事例を共有することで、未然の事故防止に努めており、当該リスクの顕在化の抑制に最大限努めております。

 

(5)診療報酬改定及び介護報酬改定について

 当社は医療保険制度及び介護保険制度のもと、訪問看護及び訪問介護を行っております。医療保険制度については2年ごと、介護保険制度については3年ごとに、制度の見直し及び診療報酬、介護報酬の改定が行われております。そのため、当社事業を推進するにあたり、定期的な制度の見直しや診療報酬、介護報酬の改定により当社にとって不利な変更がなされた場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、これまでの改定状況から勘案しても、当該改定に伴い当社の事業がただちに大きな影響を受ける可能性は低いと考えております。しかしながら、医療保険制度及び介護保険制度の目的や方針等に大きな変更があった場合や同制度が廃止された場合は、当社事業に及ぼす影響は大きく、事前に政府での検討状況等について情報収集を行い、必要な対応策を実行することとしております。

 

(6)法的規制について

 当社は介護保険法に基づく介護サービスの提供にあたり、事業所ごとに指定業者として指定を受けており、同指定を取得するにあたり、厚生労働省令「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(1999年3月31日厚生省令第37号)及び各自治体条例介護保険法で定める基準を満たしております。

 該当する根拠法で許認可取消事由がそれぞれ定められておりますが、主な内容は以下のとおりであります。

・不正請求  …実体のないサービス提供に対する請求、実体のない加算請求

・人員基準違反…人員不足での運営、無資格者によるサービス提供、実在しないスタッフによる記録作成、勤務時間の虚偽

・運営基準違反…記録の未整備、計画未作成、重要事項や計画の説明未実施

・虚偽報告  …自治体への届出や報告、実地指導対応における事実とは違う書類提出や答弁

 当社は、これらの基準を遵守できなかった場合や不正請求が認められた場合には、指定の取消し等の処分を受けるおそれがあります。一事業所でも指定取消を受けた場合、法人が指定の欠格事由に該当し、指定取消から5年間は新たに指定を受けることができず、また指定の更新も受けることができなくなります。その場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、当社が不正な診療報酬請求を行ったとする報道を受け、当社より独立した社外の専門家を委員とする特別調査委員会を設置し、客観性のある業務実態の調査を行い、2025年2月7日、当該特別調査委員会より調査報告書を受領いたしました。当該調査の結果、当社が「PDハウス」等で受け入れている入居者は、重症度の高いパーキンソン病患者であったことから、入居者及びご家族の同意を得た上で、1日3回・複数名訪問を標準としていたところ、現場の看護師等の多くに1日3回・複数名訪問が必須との認識を与えてしまい、訪問回数及び同行者の要否という観点での個別的検討・見直しが徹底されていなかったことが判明しました。また、そのような中で、①数十秒から数分という短時間の訪問であるにもかかわらず30分を標準とする訪問看護を実施したとして診療報酬の請求を行っていた事案、及び②訪問看護サービス提供の際に同行者が不在であったにもかかわらず同行者がいたものとして診療報酬請求を行っていた事案が存在していたことも判明しました。これを受けて、当社は、2025年2月12日開催の取締役会において、当該調査報告書において指摘された原因分析及び再発防止策の提言を踏まえ、実効性のある再発防止策の策定と内部統制強化に向けた取組みを決議すると共に、経営責任を明確にすると共に今後の再発防止を徹底する観点から、関係者の処分を決議いたしました。当社は、今回の事態に至ったことを深く反省し、全役職員が一丸となり、速やかに再発防止策を実行し、信頼の回復に努めてまいりますが、今後の管轄当局からの指導その他の進捗次第では、社会的信用の低下、法的責任や費用・損失の負担、行政機関による処分等により、当社の事業、業績又は財政状況が重大な影響を受ける可能性があります。

 

各サービスと根拠法等、主な指定・登録取消事由

① 訪問系サービス

サービス名

根拠法等

主な許認可取消事由

訪問看護

介護予防訪問看護

・介護保険法(厚生労働省)

指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。

都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。

・健康保険法(厚生労働省)

介護保険法に基づく指定を受けた際には、健康保険法の指定があったとみなされるため、有効期間は介護保険法に基づく指定の有効期間に準じる。

地方厚生局が事業の指定権者となる。

・訪問看護

介護保険法第77条

(指定の取消し等)

・介護予防訪問看護

介護保険法第115条の9

(指定の取消し等)

訪問介護

居宅介護支援

・介護保険法(厚生労働省)

指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。

都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。なお、居宅介護支援については、2018年4月以降の指定権者は市区町村となっている。

・訪問介護

介護保険法第77条

(指定の取消し等)

・居宅介護支援

介護保険法第84条

(指定の取消し等)

介護予防・日常生活支援総合事業

・介護保険法(厚生労働省)

指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。

市町村が事業の指定権者になる。

介護保険法第115条の45の9

(指定権者の指定の取消し等)

居宅介護

重度訪問介護

・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(厚生労働省)

指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。

都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。

障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第50条

(指定の取消し等)

 

② 通所系サービス

サービス名

根拠法等

主な許認可取消事由

通所介護

・介護保険法(厚生労働省)

指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。

都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。

・通所介護

介護保険法第77条

(指定の取消し等)

地域密着型通所介護

認知症対応型通所介護

・介護保険法(厚生労働省)

指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。

市町村が事業の指定権者となる。

・地域密着型通所介護

・認知症対応型通所介護

介護保険法第78条の10

(指定の取消し等)

 

③ 入所系サービス

サービス名

根拠法等

主な許認可取消事由

認知症対応型共同生活介護

(グループホーム)

・介護保険法(厚生労働省)

指定の有効期間は6年間で、以後6年ごとの更新が必要。

 市町村が事業の指定権者となる。

・認知症対応型共同生活介護

介護保険法第78条の10

(指定の取消し等)

住宅型有料老人ホーム

・老人福祉法(厚生労働省)

届出制であり、届出後の有効期間の設定はない。都道府県、政令指定都市及び中核市が届出先となる。

老人福祉法第29条第14項

(届出等)※事業の制限又は停止に関する定めあり。

サービス付き高齢者向け住宅

・高齢者住まい法(国土交通省)

 登録制であり登録の有効期間は5年で、以降5年ごとに更

 新が必要。

 都道府県、政令指定都市及び中核市が登録先となる。

高齢者住まい法第26条

(登録の取消し)

 

(7)感染症について

 当社事業所では、換気・手洗い・手指消毒の励行等をはじめ、フェイスシールド、N95マスク、ガウンテクニックの正しい着用方法の研修を行う等、日常的に感染対策に取り組んでおります。しかしながら、新型インフルエンザやコロナウイルス等の感染症が想定を大きく上回る規模で発生及び流行し、当該地域の事業所の稼働が長期にわたり困難になった場合には、事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)虐待等の防止への取組とリスクについて

 当社は、老人福祉法及び介護保険法に規定する「養介護施設」又は「養介護事業」に該当し、これらの養介護施設又は養介護事業で働く当社の職員は、高齢者虐待防止法に定める「養介護施設従事者等」に該当します。高齢者虐待防止法では、養介護施設従事者等による身体的虐待、介護・世話の放棄・放任等の高齢者虐待の防止に関する取り組みを求められており、当社は役職員を対象とした研修やマニュアルの整備等により、いかなる虐待も防止するように努めております。しかしながら、虐待や不適切な身体拘束が発生した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の失墜等により、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9)大規模な自然災害について

 当社が保有する施設が所在する地域において大規模な地震、風水害等の自然災害、事故、火災等によって人的・物的被害を受けた場合、当該地域の事業所の稼働が長期にわたり困難になった場合には、事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当該リスクの発生時期等は予測することができませんが、常に当該リスクが顕在化する可能性はあると認識しております。そのため、当社では各種保険制度への加入はもちろんのこと、避難訓練、災害時の連絡手段の確立、飲食物の備蓄等を行うなど、自然災害等の発生による被害を最小限に抑えるための対策を実施しております。

 

(10)内部管理体制のリスク

 当社では、企業価値の持続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要であると認識しております。その認識のもと、内部管理体制の一層の充実を図るべく、内部通報制度の運用や内部監査の実施、情報セキュリティ体制の構築等により、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでおりますが、急速な事業拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、上記(6)に記載のとおり、当社において本来請求すべきではない診療報酬を請求していた事案等の存在が判明したことを受けて、2025年2月12日、過年度の決算を訂正し、2022年3月期から2024年3月期の有価証券報告書及び2023年3月期の第1四半期から2024年3月期の第3四半期までの四半期報告書について、訂正報告書を提出すると共に、第18期及び第19期の内部統制報告書について、各期末時点において内部統制に開示すべき重要な不備が存在していたことを理由として、訂正報告書を提出しました。あわせて、当社は、2025年2月12日開催の取締役会において、実効性のある再発防止策の策定と内部統制強化に向けた取組みを決議しており、今後、当該再発防止策を着実に実行すると共に、適正な内部統制の整備及び運用の更なる強化に取り組み、内部管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの一層の充実を図ることが重要であると考え、再発防止に努めてまいります。

 

(11)特定人物への依存について

 当社の代表取締役社長である苗代亮達は当社の創業者であり、設立以来、最高経営責任者として経営方針や経営戦略等、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしております。特定の人物に依存しない体制の構築を目指しておりますが、現在においても同氏の影響力は大きなものとなっております。そのため、同氏が退任、その他の理由により当社の経営から退くような事態が発生した場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)競合他社の出現について

 当社が、全国展開を図っている主力の「PDハウス」は、一般的な介護施設では提供できないパーキンソン病を患った方への専門的なリハビリサービスの提供を他社との差別化要因の一つとしております。

 当該事業の遂行に必要な特許等は存在しないため、当社のビジネスモデルを模倣し、同様のサービス提供する競合他社が現れる可能性があります。現在、当社では、大学、研究機関との共同研究を実施し、新たなサービスの開発に努めておりますが、競合他社の新規参入等による競合環境が激化した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)情報管理について

 当社は、事業を行う上で入手した顧客に関する様々な個人情報を保有しております。

 情報管理については、従業員との情報管理に関する誓約書の締結、社内規程の整備及び社員教育の徹底等、管理体制の強化に努めることで内部からの情報流出を抑止しており、インターネットセキュリティの強化及び事業所の防犯対策等の実施により外部者の不正な情報取得を防ぐなど、可能な限りの対策を取ることとしており、情報漏えいリスクの顕在化については、限りなく低いと考えております。しかしながら、これらの情報が外部に漏えいした場合、当社に対する信用失墜や損害賠償請求等によって当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)信用・評判について

 介護事業においては利用者、そのご家族及び関係者の方々からの信頼の下、サービスを提供しております。施設での不適切な運営や不正請求、職員の不祥事等により、当社及び当社が提供するサービスについて信用を失った場合、または評価が低下した場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクに対して当社は、経営理念、ミッション及び行動指針を定め、役職員に周知徹底しているほか、利用者の方が気持ちよく施設を利用できるよう様々な研修プログラムを役職員に対し提供し、高品質なサービス提供を通じて、利用者様等からの信頼の獲得に日々励んでおります。

 

 

(15)減損会計について

 当社は、キャッシュ・フローを生み出す最小単位として、主に施設を基本単位としてグルーピングしております。介護施設の新規開設後の実績が計画どおりであるかを経営会議においてモニタリングし、減損に関するリスクの低減に努めております。しかしながら、外部環境の著しい変化等により、施設収益が悪化し、施設における営業活動から生ずる損益が継続してマイナスとなった場合には、固定資産について減損損失を計上することとなり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)訴訟等の可能性について

 当社は、サービスの提供にあたって法令遵守の徹底及び顧客や取引先とのトラブル回避に努めており、現時点において業績及び財政状態に影響を及ぼす訴訟が提起されている事実はありませんが、今後予期せぬ事象の発生により、訴訟その他の請求が発生した場合、これらの訴訟等の内容及び結果によっては、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクについては、現時点で顕在化のリスク及び影響を予測することはできませんが、研修等を通じて役職員のコンプライアンス意識を高めるほか、顧客及び取引先等と日頃から良好な関係の構築に努めることが、当該リスク顕在化の抑制につながると考えております。

 

(17)地域との関係について

 介護・医療サービスの提供という事業性から、事業の収益性に課題が生じた場合においても、撤退時の利用者の行き先確保、賃貸借契約上の制約、医療機関や行政機関との関係性の維持等から即時撤退を行うことが困難な場合があり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)長期賃貸借契約について

 当社が運営する施設の中には、長期賃貸借契約に基づいているものがあり、一定期間は事業撤退の制約が課せられます。これに反した場合は中途解約による違約金等の支払いが生じる可能性があります。

 また、契約期間満了後において契約更新が難しい場合がありますが、その場合は計画的に新たな移転先を決めることとしており、当該リスクが顕在化する可能性は限りなく低いと考えております。

 

(19)有利子負債に関するリスク

 当社では、新規開設にかかる設備資金の一部を金融機関からの借入で調達しており、また、ファイナンス・リース取引におけるリース債務の計上により、当事業年度末の有利子負債残高は22,489百万円、有利子負債自己資本比率は261.8%となっております。

 今後は、現行の金利水準が変動した場合、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

 

(20)宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入りについて

 当社は、2024年7月に東京証券取引所プライム市場に市場区分を変更しているところ、2025年2月12日付の「過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度の決算短信等の訂正に関するお知らせ」のとおり、過年度の決算を訂正したことにより、東京証券取引所プライム市場への市場区分の変更審査における形式基準(利益の額)及び実質基準(コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性の観点等)を充足しない事案であったことが認められました。結果として、市場区分の変更申請に係る宣誓書において宣誓した事項に違反し、市場区分の変更に係る基準に適合していなかったとして、2025年4月30日付で株式会社東京証券取引所より宣誓書違反による再審査に係る猶予期間入りの通知を受けました。

 2026年4月30日までの猶予期間内に東京証券取引所プライム市場の新規上場基準に準じた基準に適合するかどうかの審査申請を行った場合、当該基準に適合したときは、当社株式の上場が継続されることとなりますが、当該基準に適合しないときは、上場廃止となります。なお、猶予期間内に同取引所スタンダード市場又は同取引所グロース市場への市場区分の変更申請を行った場合、当該市場区分の変更の承認を受けたときは、上記にかかわらず、変更後の市場区分において、当社株式の上場が継続されることとなります。

 

(21)継続企業の前提に関する重要事象等

当社は、2025年2月7日付「特別調査委員会の調査報告書の受領に関するお知らせ」のとおり、本調査の結果、短時間訪問事案及び同行者不在訪問事案が存在していたことが判明しました。本件の対象となる部分について過年度の決算を訂正し、再発防止策の実行による運営体制の見直しを行った結果、収益性は一時的に大幅に低下したことから、当事業年度において当期純損失925百万円を計上いたしました。

また、当事業年度末の借入金のうち、2023年3月14日締結のコミットメント期限付タームローン契約(当事業年度末現在の借入金残高392百万円)及び2023年9月15日締結のコミットメント期限付タームローン契約(当事業年度末現在の借入金残高649百万円)に付されている財務制限条項に抵触しております。

これらの事象又は状況は、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に該当しております。

しかしながら、当社は事業モデルを根底から見直し、安定した利益構造を確立するため、以下の具体的な対応策を実施しております。

 

①人員配置の適正化に伴うコスト削減

再発防止策の重点施策として、全施設で訪問看護計画の見直しを実施いたします。特に、夜間帯に入眠が常態化しているケースについては計画を変更し、各入居者に対して必要なサービスが適切に提供できるよう再策定いたします。全施設で一斉に訪問看護計画の見直しを実施した結果、各施設において余剰人員が発生し、一時的に売上原価(労務費率)が上昇いたしました。そのため、ドミナント施設への異動や人員調整を行い、各施設の適正な人員配置を図ることで収益面の改善を目指します。

 

②新規施設の開設による収益への貢献

2026年3月期においては、未開設エリア(滋賀県、岡山県、静岡県、栃木県、岐阜県)を含む全国13か所に新たな「PDハウス」を開設いたします。新規開設時にかかる初期費用の負担が増加するため、開設初年度における収益性は一時的に悪化することとなりますが、早期に投資を回収し、利益を生み出す基盤を築くことで、翌期以降の収益性に大きく貢献します。

 

また、財務制限条項に抵触している当該契約につきましては、取引先金融機関より期限の利益喪失の権利行使を行わないことについて書面による承諾を得ております。取引先金融機関とは緊密に情報を共有し、協議可能な関係の維持に努めており、継続的な支援についても表明いただいております。

なお、資金面につきましては、2025年3月21日付「債権の流動化に関するお知らせ」のとおり、キャッシュ・フローの改善及び財務安全性の向上を目的として債権流動化の契約を締結し、当面の事業資金を確保しております。

以上により、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。当社は、介護事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は38,994百万円となり、前事業年度末から7,403百万円増加しました。これは主に、新規施設の開設等により建物が5,268百万円、現金及び預金が2,330百万円増加したことによるものです。

(負債)

 当事業年度末における負債合計は30,377百万円となり、前事業年度末から3,984百万円増加しました。これは主に、リース債務が1,555百万円、診療報酬返還に伴う負債が1,189百万円、借入金の合計額が842百万円増加したことによるものです。

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は8,616百万円となり、前事業年度末から3,418百万円増加しました。これは主に、公募による自己株式の処分等により資本剰余金が4,570百万円増加した一方、当期純損失925百万円の計上等により利益剰余金が減少したことによるものです。

 

② 経営成績の状況

当事業年度におけるわが国の経済は、社会経済活動の正常化が進み、インバウンド需要の高まりによって景気は緩やかな持ち直しの動きがみられました。一方で、円安を背景とした物価上昇、エネルギー・原材料価格の高騰や金融資本市場の変動など、依然として先行き不透明な状況が続いております。

当社の関連する介護及び医療環境につきましては、団塊の世代が全て75歳以上の高齢者となる2025年に向けて、高齢者が要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられる社会の実現(地域包括ケアシステムの構築)への取り組みが進められてきました。地域に関わらず適切な医療・介護が受けられる体制が求められ、質の高い在宅医療・訪問看護の確保が重要となってきています。さらに指定難病においてはその専門性を有することから、専門病院や専門介護のニーズが今後ますます高まっていくものと考えております。

このような環境のもと、当社は、パーキンソン病専門施設である「PDハウス」の全国展開を加速させてきました。パーキンソン病患者の方のニーズに応えるべく、2024年4月にPDハウス国立(東京都国立市)、2024年5月にPDハウス太平(北海道札幌市東区)及びPDハウス陣原(福岡県北九州市八幡西区)、2024年6月にPDハウス東大宮(埼玉県さいたま市見沼区)、2024年8月にPDハウス八千代中央(千葉県八千代市)、2024年9月にPDハウス南柏(千葉県柏市)及びPDハウス熱田(愛知県名古屋市熱田区)、2024年10月にPDハウス新潟紫竹山(新潟県新潟市中央区)及びPDハウス西京極(京都府京都市右京区)、2024年11月にPDハウス神戸深江本町(兵庫県神戸市東灘区)、2024年12月にPDハウス初芝(大阪府堺市東区)、2025年1月にPDハウス越谷(埼玉県越谷市)を新規開設いたしました。

一方で、2025年2月12日付「再発防止策の策定及び関係者の処分に関するお知らせ」のとおり、当第4四半期会計期間より再発防止策の実行による運営体制の見直しを行った結果、収益性は一時的に大幅に低下いたしました。また、当事業年度において、特別調査委員会の設置に係る諸費用等で特別調査費用等638百万円、上場契約違約金62百万円を特別損失として計上しております。

これらの結果、当事業年度の売上高は26,496百万円(前年同期比31.8%増)、営業利益は1,114百万円(同51.0%減)、経常利益は388百万円(同77.4%減)、当期純損失は925百万円(前年同期は802百万円の当期純利益)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、5,637百万円となり、前事業年度末に比べて2,330百万円増加しました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは1,883百万円の資金増加(前事業年度は2,557百万円の資金増加)となりました。これは主に、法人税等の支払額1,315百万円等の減少要因があったものの、減価償却費の計上1,384百万円、診療報酬返還に伴う負債の増加1,189百万円等の増加要因があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは4,396百万円の資金減少(前事業年度は5,662百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出4,207百万円等の減少要因によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは4,842百万円の資金増加(前事業年度は3,801百万円の資金増加)となりました。これは主に、自己株式の処分による収入4,574百万円等の増加要因によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注に該当する事項がないため、受注実績に関する記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

 なお、当社は介護事業の単一セグメントであるため、サービス区分別の販売実績を記載しております。

サービス区分の名称

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

PDハウス          (百万円)

23,332

136.3

医療特化型住宅        (百万円)

1,990

105.7

グループホーム        (百万円)

169

101.1

デイサービス         (百万円)

472

108.8

福祉用具事業         (百万円)

499

105.1

加圧トレーニング事業     (百万円)

33

100.3

合計(百万円)

26,496

131.8

 (注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

石川県国民健康保険団体連合会

3,674

18.3

3,968

15.0

東京都国民健康保険団体連合会

2,369

11.8

3,558

13.4

大阪府国民健康保険団体連合会

2,838

14.1

3,334

12.6

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積り、判断並びに仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額、開示期間の収益・費用の金額及び開示情報に影響を与えます。ただし、これらの見積り、判断並びに仮定は、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果とは異なる場合があります。

 当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社は「自らが輝き、人を元気にする」を経営理念に掲げております。わが国では、2007年に超高齢社会(公益財団法人長寿科学振興財団の定義)を迎え、更に高齢化も進行し、65歳以上人口割合は2020年の28.6%から一貫して上昇し、2070年には38.7%まで増加すると推計されており(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)、介護・医療の需要はさらに高まるとされています。一方で、介護・医療の制度を経済的に、また人的に支える労働人口の減少が予測されており、今後の高齢化の進展に対応し得る介護・医療の持続可能な制度設計がわが国の根本的、かつ緊要な課題の一つであることは論をまちません。

 当社では、この課題に対して、指定難病であるパーキンソン病患者を対象とした「PDハウス」とこれに関連するサービスの提供を通じて、地域の介護・医療資源を効果的かつ効率的に利用できる仕組みづくりを行うことで応えてまいります。地域では、病床削減とこれに伴って療養の場を病院から在宅(自宅や施設等)へ移すとする政策を受けて、特に慢性期や終末期における介護・医療の需要が高まっております。パーキンソン病患者は慢性期が長期化する傾向があることから、当社にとって有利な事業環境であり、引き続き事業を積極的に展開していく背景となっております。

 

 当事業年度において、当社では新たにPDハウス国立(東京都国立市)、PDハウス太平(北海道札幌市東区)、PDハウス陣原(福岡県北九州市八幡西区)、PDハウス東大宮(埼玉県さいたま市見沼区)、PDハウス八千代中央(千葉県八千代市)、PDハウス南柏(千葉県柏市)、PDハウス熱田(愛知県名古屋市熱田区)、PDハウス新潟紫竹山(新潟県新潟市中央区)、PDハウス西京極(京都府京都市右京区)、PDハウス神戸深江本町(兵庫県神戸市東灘区)、PDハウス初芝(大阪府堺市東区)及びPDハウス越谷(埼玉県越谷市)を開設いたしました。当社は、介護事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

(売上高)

 当事業年度の売上高は26,496百万円となり、前事業年度より6,389百万円の増加となりました。これは主に、「PDハウス」を新規開設し、サービス提供が開始されたことにより医療保険及び介護保険収入が生じたことなどによります。

 

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度の売上原価は21,581百万円となり、前事業年度より6,624百万円の増加となりました。これは主に、新規に「PDハウス」を開設したことに伴い採用した施設従業員の人件費が生じたことなどによります。この結果、売上総利益は4,914百万円(前年同期比4.6%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は3,800百万円となり、前事業年度より923百万円の増加となりました。これは主に、業務の規模拡大に伴い採用した本社従業員の採用費及び人件費が生じたことなどによります。この結果、営業利益は1,114百万円(前年同期比51.0%減)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 当事業年度の営業外収益は166百万円となり、前事業年度より61百万円の増加となりました。これは主に、東京都介護職員・介護支援専門員居住支援特別手当事業補助金等が増加したことなどによります。また、当事業年度の営業外費用は892百万円となり、前事業年度より234百万円の増加となりました。これは主に、新規出店によりリース債務の支払利息が増加したことなどによります。この結果、経常利益は388百万円(前年同期比77.4%減)となりました。

 

(特別利益、特別損失)

 当事業年度の特別損失は704百万円となりました。これは主に、特別調査費用等が638百万円、上場契約違約金が62百万円増加したことによるものです。

 

(当期純損失)

 当事業年度の法人税等合計は609百万円となり、この結果、当期純損失は925百万円(前年同期は802百万円の当期純利益)となりました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社の資金需要のうち主なものは、新規施設開設のための資金、運転資金等となっております。当社の資金調達については、自己資金及び金融機関からの借入れ等で実施しております。なお、これらの資金調達方法については、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行い、決定しております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおり認識しており、これらのリスクについては発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。

 

⑤ 経営戦略の現状と見通し

 当社は介護サービスの提供を行っておりますが、現在運営している施設については、稼働率も順調に推移しているほか、医療保険制度や介護保険制度において報酬が決まっていること等により売上高を増加させることは難しいため、今後はコスト削減及び運営の効率化等により利益率を向上させ、強固な収益基盤を構築したいと考えております。

 成長戦略としましては、北陸エリアで2019年3月期に第1号施設を開設し、2020年3月期に全国展開を開始後、当事業年度末において全国43か所で運営を行っているパーキンソン病患者専門の有料老人ホーム「PDハウス」が、高い稼働を維持していることから、「PDハウス」の新規開設を積極的に推進してまいります。これまでパーキンソン病患者専門の有料老人ホームが無かったことに加え、高齢化社会の進行により同疾患患者数が増加しており、需要が高まっていることを受け、各都道府県における患者数等を勘案し、施設の開設を進めてまいります。

 

⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社の経営者は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社が今後さらなる成長を遂げるためには、様々な課題に対処することが必要であると認識しております。

 それらの課題に対応するために、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、「PDハウス」による競合との差別化を推進し、更なる事業拡大を図ってまいります。

 

⑦ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおり、売上高及び経常利益率を重要な経営指標としております。

 しかしながら、2025年2月に過年度の決算を訂正し、再発防止策の実行による運営体制の見直しを行ったことで、当事業年度における収益性は一時的に大幅に低下しております。「PDハウス」の事業拡大により、売上高については、当事業年度は26,496百万円と前年同期比で31.8%増となっておりますが、経常利益率については、当事業年度は1.5%と前年同期比で7.1ポイント減少しております。

 なお、目標達成に向けた今後の対応につきましては、「3 事業等のリスク (21)継続企業の前提に関する重要事象等」に記載のとおり、当社は事業モデルを根底から見直し、安定した利益構造を確立するための対応策を実施しております。

 

5【重要な契約等】

(1)財務制限条項が付された借入金契約

主な借入先

株式会社横浜銀行(アレンジャー兼エージェント)

株式会社北陸銀行

株式会社北陸銀行

株式会社みずほ銀行

契約形態

シンジケートローン方式タームローン

バイラテラル方式タームローン

コミットメント期限付タームローン

当初借入金額

800百万円

530百万円

500百万円

資金使途

設備資金

設備資金

設備資金

借入期間

自 2020年3月31日

至 2045年3月31日

自 2022年10月4日

至 2029年9月30日

自 2023年3月14日

至 2030年9月30日

担保の有無

あり

なし

あり

保証の有無

なし

なし

なし

2025年3月期末日の長期借入金残高

632百万円

265百万円

321百万円

2025年3月期末日の1年以内返済

長期借入金残高

33百万円

75百万円

71百万円

財務制限条項

①各決算期末日において、単体の貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の決算期末日の金額又は2019年3月期末の金額のいずれか大きい方の75%以上に維持すること。

②単体の損益計算書上の経常損益において、2期連続して損失を計上しないこと。

①各決算期末日において、単体の貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の決算期末日の金額の75%以上に維持すること。

②単体の損益計算書上の経常損益において、2期連続して損失を計上しないこと。

①各決算期末日において、単体の貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の決算期末日の金額の75%以上に維持すること。

②単体の損益計算書上の経常損益において、2期連続して損失を計上しないこと。

③各決算期において、単体の貸借対照表及び損益計算書におけるネットレバレシオ※1を、20以下とすること。

 

 

 

主な借入先

株式会社三菱UFJ銀行

株式会社みずほ銀行

株式会社北陸銀行(エージェント)

株式会社富山銀行

契約形態

実行可能期間付タームローン

コミットメント期限付タームローン

シンジケートローン方式コミットメントライン契約

当初借入金額

750百万円

700百万円

2,000百万円

資金使途

設備資金

設備資金

設備資金

借入期間

2023年6月27日

2031年6月30日

2023年9月15日

2031年9月30日

2023年2月3日

2026年2月6日

担保の有無

あり

あり

あり

保証の有無

なし

なし

なし

2025年3月期末日の長期借入金残高

 562百万円

 549百万円

2025年3月期末日の1年以内返済長期借入金残高

 107百万円

 100百万円

財務制限条項

①各決算期末日において、単体の貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の決算期末日の金額又は2023年3月期末の金額のいずれか大きい方の75%以上に維持すること。

②各決算期末日において、単体の損益計算書における経常損益の金額を0円以上に維持すること。

③各決算期において、単体の貸借対照表及び損益計算書における基準値※2を、20以下とすること。

①各決算期末日において、単体の貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の決算期末日の金額の75%以上に維持すること。

②単体の損益計算書上の経常損益において、2期連続して損失を計上しないこと。

③各決算期において、単体の貸借対照表及び損益計算書におけるネットレバレシオ※1を、20以下とすること。

①各決算期末日において、単体の貸借対照表における純資産の部の金額を、直前の決算期末日の金額の75%以上に維持すること。

②単体の損益計算書上の経常損益において、2期連続して損失を計上しないこと。

(注)※1 ネットレバレシオ=(有利子負債-現預金)/(税引後当期損益+減価償却費)

※2 基準値=有利子負債-(売掛金+棚卸資産-買掛金+現預金)/(営業利益+減価償却費)

 

(2)債権流動化に関する基本契約

当社は、2025年3月21日付の取締役会決議に基づき、2025年3月31日付で債権流動化に関する基本契約を締結しており、その内容は以下のとおりであります。

 

①債務者       各都道府県の国民健康保険団体連合会及び社会保険診療報酬支払基金

②対象債権      診療報酬債権、介護報酬債権、障害福祉サービス等報酬債権

③譲受人       ファンタスティック・ファンディング・コーポレーション東京支店

④極度額       35億円

⑤初回実行日     2025年4月18日

⑥契約期間      1年間(自動更新)

⑥その他重要特約等  なし

 

 

6【研究開発活動】

 当社では、順天堂大学医学部神経学講座と共同し、2019年10月に共同研究講座「ICT制御に基づく在宅医療開発講座」を開設しております。この共同研究講座では、2019年10月より当社のパーキンソン病専門の有料老人ホームにおいて検証実施を始めた、ICT(情報通信技術)によるマルチセンサーやウェアラブル端末によるモニタリングによって、患者のバイタル、活動量、消費カロリーといったビッグデータを蓄積することで、病気の進行状況が数値化され、高い診療効果を得ることや、24時間変動を把握することで正確な薬剤調整に繋がることが期待できます。また、2024年4月に共同研究講座「PD長期観察共同研究講座」を開設しております。この共同研究講座では、パーキンソン病専門介護施設における大規模コホートにより得られるデータに基づく、パーキンソン病に特化した”科学的介護”のための支援技術の構築に繋がることが期待できます。このようにデータ収集・解析を行い、パーキンソン病患者の日常生活動作(ADL)上の障害を検出し、住宅のハード面及びソフト面における介入を行うことにより、パーキンソン病患者の生活の質(QOL)を改善するホームアダプテーションの研究・開発を行っております。また、当社従業員に対するパーキンソン病に関連する基本や最新情報についてのオンラインセミナーが開催され、パーキンソン病の理解や知識レベルの向上を図っております。

 これにより、当事業年度の研究開発費の総額は59百万円であります。当社は、介護事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。