当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
(a)経営理念
当社は経営理念として「自らが輝き、人を元気にする」を掲げております。当社のお客様は、体に不都合を持たれている方が多く、その影響で心も沈みがちになっている方もいるかもしれません。当社は介護という仕事を通して、お客様の「心」を元気にしたいと考えております。その為には、お世話をさせて頂く私たちが暗く後ろ向きではいけません。お客様がその方らしく輝いて生きる事を応援させて頂くために、私たち自身が仕事を通じて自らを磨き自分らしく輝いて生きる事が必要であり、当社社員が輝けば、利用者様の「心」が更に輝き出すと考えております。
(b)ミッション
当社は下記をミッションとして定めております。
① 福祉の職場をもっと魅力的に!
私たちサンウェルズは夢と誇りを持って志事(しごと)に取り組み、皆があこがれる業界づくりにチャレンジします。
② 介護サービスに進化と変化を!
私たちサンウェルズは介護の常識にとらわれることなく、利用者様の立場に立ったより良いサービスづくりにチャレンジします。
③ 未来を作る「人」を育成する!
私たちサンウェルズは仕事を通じてクリエイティブに発想し、自ら行動する「輝く大人」づくりにチャレンジします。
(2)目標とする経営指標
当社では、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目的としており、収益力の強化と経営の効率化を図るため、売上高及び経常利益率を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題の改善に取り組んでまいります。
また、有料老人ホームの運営による売上高が、当社全体の売上高に占める比率が高いことから、「PDハウス」を含めた有料老人ホームにおける提供可能室数及び稼働率も経営成績に影響を与える主要な経営指標として捉えております。
(3)経営戦略
わが国では、2007年に超高齢社会(公益財団法人長寿科学振興財団の定義)を迎え、更に高齢化も進行し、65歳以上人口割合は2020年の28.6%から一貫して上昇し、2070年には38.7%まで増加すると推計されており(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)、若年層の人口は減少の一途をたどり、より一層の少子高齢化が加速していくものとみられております。これにより、医療業界における需要と供給のバランスが崩れ、病院数の減少や医師不足といった問題が生じるおそれがあり、介護へのニーズはますます増加するものと考えられます。
当社は2006年に介護施設としてデイサービスをスタートさせ、15年の歳月をかけてパーキンソン病に焦点を絞った「PDハウス」の全国展開にまで業容を拡大させてまいりました。
今後は、北陸エリアのデイサービス、有料老人ホーム事業は業容を維持しつつ、「PDハウス」を経営戦略の中心に位置づけ、パーキンソン病専門施設として「PDハウス」での提供サービスを磨き上げること、また、新サービスを創造することによって差別化を実現し、中長期的に安定的かつ持続的な成長と企業価値の拡大を目指すことを計画しております。
具体的には、以下を当社の経営戦略の骨子としております。
① 「PDハウス」のブランド構築
パーキンソン病は治療手段について世界中で多くの研究が行われておりますが、いまだに根治する方法が確立されていない進行性神経難病になります。患者数は進行性神経難病の中でも最も多く、関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症)も含めると約19.7万人(厚生労働省「2022年度衛生行政報告例」(2022年度末現在)、特定医療費(指定難病)受給者証所持者数)の患者がいると推定されております。年齢層も60歳以上が約9割(同上)を占め、症状についても筋肉がこわばる(筋固縮)、体が動かしにくくなる(無動)、手足が震える(振戦)などの動きに関連する症状のほかに、幻覚や幻視、自律神経障害、睡眠障害など様々な生活障害を呈する疾患であり、ケアをするにも高い専門知識と経験、技術が必要になります。
また、この疾患には正しい薬物療法と十分なリハビリテーションが重要とされますが、薬剤に関して多い方では1日10回程度に分けて薬を服用するケースもあり、リハビリテーションにおいても現行の介護施設では十分量のリハビリテーションを提供できる所が非常に少ないのが現状です。適切な服薬管理と十分な回数のリハビリテーションが提供できれば病気の進行を遅らせ、天寿を全うしていただくことも可能だと考えております。しかしながら、病気の初期段階や軽度要介護度の患者に対しての改善に関するリハビリ報告・治療研究報告は多く存在しますが、病気が進行し重度化した場合の改善事例が非常に少ないのが現状であります。
「PDハウス」では、パーキンソン病を専門とする脳神経内科医や大学病院、研究機関との共同研究を進め、より効果的な新サービスの創造を目指しております。順天堂大学と当社施設をつないだ3次元オンライン診療システムの試験運用、転倒検知システムを用いた転倒の要因分析研究、運動機能評価システムの試験運用等を実施し、新たな専門サービスの開発により同業者の参入障壁の構築に努めております。
これからの社会保障制度においては、入院期間の短期化や介護療養病床の廃止などにより、まだ専門的な治療が必要にもかかわらず地域に退院してくる方が増大することが予想されます。介護施設においても病院医療機関のように専門化(脳神経内科、消化器科、循環器内科など)を図り、地域包括ケアの中において専門性の高いケアを受けられる施設は重要と考えており、「PDハウス」はその一端を担える事業と自負しております。
② 「PDハウス」の事業拡大
パーキンソン病及び関連疾患の患者数は2022年度末で約19.7万人(厚生労働省「2022年度衛生行政報告例」(2022年度末現在)、特定医療費(指定難病)受給者証所持者数)の患者がいると公表されております。そのため、地域毎に必要とされる床数を展開していきたいと考えております。
当事業年度末では、「PDハウス」を全国に31施設(1,650床)運営しております。今後も「PDハウス」展開を成長ドライバーとして位置づけ、大都市圏や地方の中核都市を中心に更なる全国展開を計画しております。大都市圏では期間を空けずに新規開設することにより、エリアの囲い込みと従業員の適正配置を行い、利益の最大化を図ります。地方の中核都市では、まずは一つ目を開設することにより、そのエリアにくさびを打ち、ニーズに合わせて周辺エリアに新規開設することで同業他社の進出を阻むと共に、中期的にはそのエリアでの高シェアを図ります。
「PDハウス」の開設においては、大手ハウスメーカー各社の紹介を中心に、年間2,000件以上の開発候補地から選定しております。開設6か月前からリーダー職員を採用、入居ペースに合わせた採用を行い、入念な研修を経て開設を迎えます。当社は、業界内でも高位の採用倍率を維持(2024年3月期は9.7倍)しており、入社後も働きやすい職場環境を整備することで定着率の向上に努めております。また、当社では専門医監修の社内資格「PDライセンス」制度を導入し、パーキンソン病ケアの専門家育成に取り組んでおります。更に周辺の医療機関や施設からの紹介、TV、Web、パンフレット等による広告で集客をすることで早期黒字化を図り、高稼働体制の維持に努めております。開設時期が集中すると一旦は業績を押し下げる要因となりますが、早い段階で業績に寄与するようになるとともに、「PDハウス」を利用される方は長期に亘り施設を利用いただくので、安定した稼働率で推移し、定常的な業績を目指します。
③ 「PDハウス」を中心とした事業の展開
現在、「PDハウス」はパーキンソン病が進行された方を中心に利用していただいております。そこで得たリハビリテーションのノウハウ等を活かし、中期的には軽度の方にも利用していただけるリハビリテーションサービスを提供することを計画しております。各地の「PDハウス」でのノウハウをコアにし、インターネットでリハビリテーションが受けられるサービスを展開することにより、より多くのパーキンソン病患者の方にサービスを提供してまいります。さらに海外でもこのインターネットでのサービスを展開することを計画してまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 利用者満足度の向上
当社の社会的使命は、利用者様に心から満足いただけるサービスを提供することだと考えております。当社がサービスを提供する各施設においては、利用者様に安心安全に、安定したサービスを提供するとともに、各利用者様のご要望に沿えるよう柔軟に対応することが必要になります。当社では、人材の確保、サービス基盤の拡充等に加え、各施設内、施設間の連携を強化し、急な状況変化にも耐えうる体制を整備しております。
② 「PDハウス」のブランド力強化及び知名度向上
当社は、都市部を始め全国へと展開を進め、「PDハウス」のブランド力強化と知名度の向上に努めており、2024年3月期においては、従来より展開してきた関東・関西に加え、新たに愛知県・熊本県に新規開設いたしました。
③ 情報管理体制の構築及び強化
当社は、事業を行う上で入手した顧客に関する様々な個人情報を保有しております。万が一これらの情報が外部に漏えいした場合、当社に対する信用失墜や損害賠償請求等によって当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
情報管理については、従業員との情報管理に関する誓約書の締結、社内規程の整備及び従業員教育の徹底等、管理体制の強化に努めることで情報流出を抑止しております。又、インターネットセキュリティの強化及び事業所の防犯対策等の実施により外部者の不正な情報取得を防ぐなど、可能な限りの対策を取っております。
IT社会の発展に伴い、当社でも稟議の電子決裁、保存書類のペーパーレス化、Webでの入社面接、Web会議等、業務の効率化を図るためITを導入して参りました。ネットワークの管理に関しましてはIT統合管理システムを導入し、事業の拡大とともに増加するPC機器等の管理を行えるように致しました。それにより災害時でも耐えうる情報管理体制の構築に取り組んでおります。
④ 財務体質の強化
当社は、有利子負債の割合が株主資本に対して高い比率となっております。今後は、運転資金拡大に加え、施設開設のための資金の確保も必要であることから、有利子負債とのバランスを勘案し自己資本の拡充を図ってまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
利用者満足度の高いサービス提供のためには、利用者様からの信頼を獲得することが必要であり、そのため当社では個人情報管理体制をはじめとした、内部管理体制の強化を継続して推進していくこと及び事業規模拡大に対応した十分な内部管理体制の整備が必要であると認識しております。当社は内部管理部門についても積極的な人材採用を進めるとともに、社内業務のIT化・アウトソーシングなどを活用し、効率的な内部管理体制を整備してまいります。
当社は、『介護サービスに進化と変化を』のミッションを実現するにあたり、業界の先駆者としてケアサービスの拡充・開発を推進すること、長期的な展望をもとに事業拡大を図ることが前提になると考えております。また、その施策においては、世間のニーズに敏感に順応することが必須であり、社会問題やステークホルダーの価値観が変容し続ける現代に際して、持続的な成長過程においてサステナビリティの本質を切り離して考えることは不可能であると認識しております。介護サービスの未来を考えることは、すべての人類の未来を考えることだと、当社は考えております。当社に関わる顧客、取引先、従業員、株主はもちろん、人々が暮らす環境や社会について尊び、サステナビリティを重視した経営を実践してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当社が有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)ガバナンス
サステナビリティに係る取り組みを推進するための体制として、取締役会直属の組織「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ統括責任者である代表取締役社長を委員長とし、各部門の課長以上の者により委員を構成しております。同委員会にてサステナビリティの方針や中期目標の策定、これに基づく各部門におけるサステナビリティ推進活動の進捗の把握・評価・検証などを行い、取締役会の監督のもと経営のトップ自らが関与し、サステナビリティ推進に取り組んでおります。
(2)戦略
人的資本に関する戦略
① 雇用の場の創出と働き手の待遇改善
当社は、PDハウスの全国展開により、開設地域に雇用の場を創出してまいります。同時に、働き手の待遇改善を積極的に行い、定着率向上に繋げてまいります。
従業員の一人ひとりがそれぞれの持つ個性や多様性を活かせる職場づくりが、組織全体の基本能力を強化することになると考え、働きやすい環境の創造に尽力しております。
従業員の資産形成とモチベーション向上を目的として、2023年4月より新たに従業員持株会制度を導入いたしました。従業員の拠出金の10%を奨励金として支給しております。2024年3月期末時点での加入率は25%となっており、従業員の関心も高く、さらなる加入率の増加に向けて取り組みを行っております。
さらに継続している取組みとして、従業員アンケートを定期的に実施することで従業員の意見を収集し、労働環境・福利厚生制度への反映を実施し、働きやすい職場環境づくりに活かしております。
また新たに、経営理念「自らが輝き、人を元気にする」を体現すべく、2024年5月に「健康宣言」を表明し健康経営への取組みを開始いたしました。お客様を元気にするには、まずは当社の従業員が健康で働ける状態であることが重要であると考え、従業員の健康確保、プレゼンティーズムの改善およびアブセンティーズムを予防する取組みを行ってまいります。
② 人材採用
優秀な人材の確保が、当社の今後の事業拡大および成長において重要な課題であると認識しております。
2024年3月期は、目標採用数1,008名に対して、1,023名の採用を実施し、目標を上回る人員を確保することができました。主な取組みとして、従業員からの友人・知人紹介による「リファラル採用」の強化と、YouTubeチャンネルの拡充を図りました。「リファラル採用」については、前期よりも77名増(66%増)の194名が入社いたしました。YouTubeチャンネルについては、チャンネル登録者数が2,700名を超え、期初の500名より大きく数字を伸ばし、介護業界でも上位の数字となっております。また、様々な取り組みにより、就職説明会参加者は1,000名を超え、当社ホームページからの応募者数も1,400名を超える結果となりました。今後の採用活動にもこれらの取組みを継続しつつ、安定的な人材確保を実践してまいります。
③ 人材育成
当社が安定的かつ持続的な事業を運営していくためには、利用者が安心・安全に生活できるサービスを提供できる人材の育成が重要と考えます。そのため人材育成については、専門職種別や役職別の研修プログラムと教育マニュアルを整備しております。特に役職者育成に関しては、2024年より新たに業務指導やマネジメント研修などの内容補強を行い、開設数増加にも耐えうるリーダー育成制度を確立しております。
また、順天堂大学とのオンラインセミナーを年6回、順天堂大学、福岡大学との合同事例検討会を年5回実施し、PDハウスで勤務するリハビリ職、看護職、介護職のスキル向上を図りました。さらに、パーキンソン病ケアの専門家育成のために社内資格「PDライセンス(1級~3級)」制度を新たに導入しました。PDハウスで勤務する全従業員(介護職・看護職・リハビリ職)が初級にあたる3級を取得必須とし、パーキンソン病のスペシャリスト集団を目指す仕組みづくりを行っております。専門的なケアの均質化・高水準化に注力するとともに、知識・技術の向上が評価される体制づくりを行うことで、従業員が自ら学び成長する職場環境づくりに取り組んでおります。
介護人材の無資格・未経験の従業員採用にも注力し、その上で介護士の知識・技術の高水準化・均一化を目的として、介護職員初任者研修の受講費用を当社で全額負担しております。
(3)リスク管理
当社は、リスクマネジメント・コンプライアンスの実効性の向上と、コンプライアンスの維持・向上を図るため、「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会規程」に基づいてリスクマネジメント・コンプライアンス委員会を設置しており、リスクマネジメントの実施状況を把握するとともに必要な措置について審議しております。具体的には、リスクマネジメントに係る方針の決定、年度計画の策定、「リスク管理規程」及び「コンプライアンス基本規程」の改定、個別リスクの管理状況の把握、リスク回避措置の指導監督、主要かつ重要な事業、その他重要業務に係る事業継続計画の策定に関する指導監督等を行っております。リスクマネジメント・コンプライアンス委員会は、原則として毎月1回開催するほか、緊急議案が発生した場合には臨時リスクマネジメント・コンプライアンス委員会を開催しております。また、サステナビリティに関するリスクについても、世界情勢や経営状況の変化に伴った継続的な審議を行っていくために、サステナビリティ委員会と連携した協議・対応を行うことと定めております。協議結果は経営会議の決議によって実行がなされますが、取締役会への報告とそれに伴う監査等委員会による監査を義務付けており、各対応策の実効性、透明性を確保しております。
(4)指標及び目標
人的資本に関する指標及び目標
① 働きやすい環境づくりの指標:離職率および有給休暇取得率
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2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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10.0 |
15.4 |
11.3 |
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61.1 |
63.3 |
61.2 |
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(注)期中入社及び期中退職者は除く
② 従業員満足度調査の結果推移
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実施時期 |
満足 |
不満足 |
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2022年1月 |
75% |
25% |
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2022年7月 |
76% |
24% |
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2023年1月 |
80% |
20% |
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2023年7月 |
80% |
20% |
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2024年2月 |
77% |
23% |
※目標:75%以上 2022年1月より調査開始
③ サンウェルズ健康経営戦略マップ
④健康経営における2025年3月期目標
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)人材の確保について
当社が今後事業をさらに拡大し、成長を続けていくためには優秀な人材の確保が重要課題となっております。介護事業においては、介護士、看護師、理学療法士など専門職の確保が必須ですが、医療・介護業界での慢性的な人材不足と今後益々の介護業界へのニーズの高まりで、求人競争激化の環境は予断を許さない状況であります。このような状況の下、当社では、人材採用に関する専門部署を設置し、求人サイトやメディアを利用しておりますが、これを漫然と利用し続けることを避け、常に効果を検証しながら積極的かつ戦略的な採用活動を実施するほか、福利厚生制度の整備や柔軟な働き方を認めるなど、従業員の労働環境に配慮し、働きやすい環境づくりに取り組んでおります。
しかしながら、こうした人材の確保が計画どおりに進まなかった場合、又は育成が計画どおりに進まず、あるいは重要な人材が社外に流出した場合には、既存施設ではサービス提供の規模縮小、新規施設ではオープン時期の順延等により、競争力の低下や事業拡大の制約要因が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)コンプライアンスに関するリスク
当社は、法令遵守及び企業倫理に基づき誠実に行動することを経営上の最重要課題としております。事業に直接関係する法令のみならず、近年、SNSによるトラブルが問題になるなど、企業が求められる企業倫理は多岐に渡ります。そのため、社会的責任のある企業として遵守すべき法令全般につき、当社の全役職員が法令等・倫理に基づいた行動をとるよう、コンプライアンスやリスク管理を統括する専門部署を設置するなど強化に取り組んでおります。また、内部通報制度を整備運用して内部の不正を抑止するよう努めております。しかしながら、コンプライアンス上の問題に直面した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の失墜等により、当社の業績や財務状況に影響を与える可能性があります。
(3)新規施設の開設について
当社は事業の拡大のため、新規施設の開設を推進しております。新規開設機会を逃さないよう常に情報収集に努め、必要に応じて、迅速な経営判断が下せるよう、代表取締役社長を含めた経営陣は緊密な連携をとることとしております。また、新規施設の開設にあたっては、各種調査を実施し、十分な検討時間を設けて様々な角度から事業計画及び採算性等を十分に検討した上で実施しております。
しかしながら、希望する立地に物件を確保できない場合やプロジェクトに遅延が発生した場合、また、事業計画と実績に大幅な乖離が生じた場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)高齢者介護における安全管理及び健康管理について
当社が介護サービスを提供しているのは、主に要介護認定を受けた介護度の高い高齢者であり、介護事故、転倒事故、食中毒、食物誤嚥事故、感染症の集団発生、また高齢者の特性に起因する事故等が発生する可能性があり、利用者の命に係わる重大な事故に発展する可能性もあります。これらにより、当社側の過失責任や管理責任が問われた場合には、損害賠償の支払い等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに関する顕在化の可能性は一定程度あると認識しておりますが、各種スキルアップ研修の提供や介護マニュアル、業務手順書等の整備等により社員教育を徹底しているほか、日常のサービス提供におけるヒヤリハット事例を共有することで、未然の事故防止に努めており、当該リスクの顕在化の抑制に最大限努めております。
(5)診療報酬改定及び介護報酬改定について
当社は医療保険制度及び介護保険制度のもと、訪問看護及び訪問介護を行っております。医療保険制度については2年毎、介護保険制度については3年毎に、制度の見直し及び診療報酬、介護報酬の改定が行われております。そのため、当社事業を推進するにあたり、定期的な制度の見直しや診療報酬、介護報酬の改定により当社にとって不利な変更がなされた場合、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、これまでの改定状況から勘案しても、当該改定に伴い当社の事業がただちに大きな影響を受ける可能性は低いと考えております。しかしながら、医療保険制度及び介護保険制度の目的や方針等に大きな変更があった場合や同制度が廃止された場合は、当社事業に及ぼす影響は大きく、事前に政府での検討状況等について情報収集を行い、必要な対応策を実行することとしております。
(6)法的規制について
当社は介護保険法に基づく介護サービスの提供にあたり、事業所ごとに指定業者として指定を受けており、同指定を取得するにあたり、厚生労働省令「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(1999年3月31日厚生省令第37号)及び各自治体条例介護保険法で定める基準を満たしております。
該当する根拠法で許認可取消事由がそれぞれ定められておりますが、主な内容は以下のとおりであります。
・不正請求 …実体のないサービス提供に対する請求、実体のない加算請求
・人員基準違反…人員不足での運営、無資格者によるサービス提供、実在しないスタッフによる記録作成、勤務時間の虚偽
・運営基準違反…記録の未整備、計画未作成、重要事項や計画の説明未実施
・虚偽報告 …自治体への届出や報告、実地指導対応における事実とは違う書類提出や答弁
なお、当社では当該基準を常に満たすために人材の育成、教育、採用を強化しているほか、当社が運営する各施設の管理者が緊密に連携を取れるよう連絡体制を整備しており、基準の遵守を徹底しております。加えて、内部監査室の監査による確認の実施のほか、情報収集に努め、基準の変更等にも迅速に対応しているため、当事業年度末現在、事業運営の継続に支障を来すような状況は生じておりません。しかしながら、これらの基準を遵守できなかった場合や不正請求が認められた場合には、指定の取消し等の処分を受けるおそれがあります。一事業所でも指定取消を受けた場合、法人が指定の欠格事由に該当し、指定取消から5年間は新たに指定を受けることができず、また指定の更新も受けることができなくなります。その場合には、当社の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
各サービスと根拠法等、主な指定・登録取消事由
① 訪問系サービス
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サービス名 |
根拠法等 |
主な許認可取消事由 |
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訪問看護 介護予防訪問看護 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。 ・健康保険法(厚生労働省) 介護保険法に基づく指定を受けた際には、健康保険法の指定があったとみなされるため、有効期間は介護保険法に基づく指定の有効期間に準じる。 地方厚生局が事業の指定権者となる。 |
・訪問看護 介護保険法第77条 (指定の取消し等) ・介護予防訪問看護 介護保険法第115条の9 (指定の取消し等) |
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訪問介護 居宅介護支援 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。なお、居宅介護支援については、2018年4月以降の指定権者は市区町村となっている。 |
・訪問介護 介護保険法第77条 (指定の取消し等) ・居宅介護支援 介護保険法第84条 (指定の取消し等) |
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介護予防・日常生活支援総合事業 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要。 市町村が事業の指定権者になる。 |
介護保険法第115条の45の9 (指定権者の指定の取消し等) |
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居宅介護 重度訪問介護 |
・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。 |
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第50条 (指定の取消し等) |
② 通所系サービス
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サービス名 |
根拠法等 |
主な許認可取消事由 |
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通所介護 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が事業の指定権者となる。 |
・通所介護 介護保険法第77条 (指定の取消し等) |
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地域密着型通所介護 認知症対応型通所介護 |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要。 市町村が事業の指定権者となる。 |
・地域密着型通所介護 ・認知症対応型通所介護 介護保険法第78条の10 (指定の取消し等) |
③ 入所系サービス
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サービス名 |
根拠法等 |
主な許認可取消事由 |
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認知症対応型共同生活介護 (グループホーム) |
・介護保険法(厚生労働省) 指定の有効期間は6年間で、以後6年毎の更新が必要。 市町村が事業の指定権者となる。 |
・認知症対応型共同生活介護 介護保険法第78条の10 (指定の取消し等) |
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住宅型有料老人ホーム |
・老人福祉法(厚生労働省) 届出制であり、届出後の有効期間の設定はない。都道府県、政令指定都市及び中核市が届出先となる。 |
老人福祉法第29条第14項 (届出等)※事業の制限又は停止に関する定めあり。 |
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サービス付き高齢者向け住宅 |
・高齢者住まい法(国土交通省) 登録制であり登録の有効期間は5年で、以降5年毎に更 新が必要。 都道府県、政令指定都市及び中核市が登録先となる。 |
高齢者住まい法第26条 (登録の取り消し) |
(7)感染症について
当社事業所では、換気・手洗い・手指消毒の励行等をはじめ、フェイスシールド、N95マスク、ガウンテクニックの正しい着用方法の研修を行う等、日常的に感染対策に取り組んでおります。しかしながら、新型インフルエンザやコロナウイルス等の感染症が想定を大きく上回る規模で発生及び流行し、当該地域の事業所の稼働が長期にわたり困難になった場合には、事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)虐待等の防止への取組とリスクについて
当社は、老人福祉法及び介護保険法に規定する「養介護施設」又は「養介護事業」に該当し、これらの養介護施設又は養介護事業で働く当社の職員は、高齢者虐待防止法に定める「養介護施設従事者等」に該当します。高齢者虐待防止法では、養介護施設従事者等による身体的虐待、介護・世話の放棄・放任等の高齢者虐待の防止に関する取り組みを求められており、当社は役職員を対象とした研修やマニュアルの整備等により、いかなる虐待も防止するように努めております。しかしながら、虐待や不適切な身体拘束が発生した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の失墜等により、当社の業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(9)大規模な自然災害について
当社が保有する施設が所在する地域において大規模な地震、風水害等の自然災害、事故、火災等によって人的・物的被害を受けた場合、当該地域の事業所の稼働が長期にわたり困難になった場合には、事業活動に支障が生じ、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当該リスクの発生時期等は予測することができませんが、常に当該リスクが顕在化する可能性はあると認識しております。そのため、当社では各種保険制度への加入はもちろんのこと、避難訓練、災害時の連絡手段の確立、飲食物の備蓄等を行うなど、自然災害等の発生による被害を最小限に抑えるための対策を実施しております。
(10)内部管理体制のリスク
当社では、企業価値の持続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要であると認識しております。その認識のもと、内部管理体制の一層の充実を図るべく、内部通報制度の運用や内部監査の実施、情報セキュリティ体制の構築等により、コーポレート・ガバナンスの強化に取り組んでおりますが、急速な事業拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)特定人物への依存について
当社の代表取締役社長である苗代亮達は当社の創業者であり、設立以来、最高経営責任者として経営方針や経営戦略等、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしております。特定の人物に依存しない体制の構築を目指しておりますが、現在においても同氏の影響力は大きなものとなっております。そのため、同氏が退任、その他の理由により当社の経営から退くような事態が発生した場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)競合他社の出現について
当社が、全国展開を図っている主力の「PDハウス」は、一般的な介護施設では提供できないパーキンソン病を患った方への専門的なリハビリサービスの提供を他社との差別化要因の一つとしております。
当該事業の遂行に必要な特許等は存在しないため、当社のビジネスモデルを模倣し、同様のサービス提供する競合他社が現れる可能性があります。現在、当社では、大学、研究機関との共同研究を実施し、新たなサービスの開発に努めておりますが、競合他社の新規参入等による競合環境が激化した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)情報管理について
当社は、事業を行う上で入手した顧客に関する様々な個人情報を保有しております。
情報管理については、従業員との情報管理に関する誓約書の締結、社内規程の整備及び社員教育の徹底等、管理体制の強化に努めることで内部からの情報流出を抑止しており、インターネットセキュリティの強化及び事業所の防犯対策等の実施により外部者の不正な情報取得を防ぐなど、可能な限りの対策を取ることとしており、情報漏えいリスクの顕在化については、限りなく低いと考えております。しかしながら、これらの情報が外部に漏えいした場合、当社に対する信用失墜や損害賠償請求等によって当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14)信用・評判について
介護事業においては利用者、そのご家族及び関係者の方々からの信頼の下、サービスを提供しております。施設での不適切な運営や不正請求、職員の不祥事等により、当社及び当社が提供するサービスについて信用を失った場合、または評価が低下した場合は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対して当社は、経営理念、ミッション及び行動指針を定め、役職員に周知徹底しているほか、利用者の方が気持ちよく施設を利用できるよう様々な研修プログラムを役職員に対し提供し、高品質なサービス提供を通じて、利用者様等からの信頼の獲得に日々励んでおります。
(15)減損会計について
当社は、キャッシュ・フローを生み出す最小単位として、主に施設を基本単位としてグルーピングしております。介護施設の新規開設後の実績が計画どおりであるかを経営会議においてモニタリングし、減損に関するリスクの低減に努めております。しかしながら、外部環境の著しい変化等により、施設収益が悪化し、施設における営業活動から生ずる損益が継続してマイナスとなった場合には、固定資産について減損損失を計上することとなり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(16)訴訟等の可能性について
当社は、サービスの提供にあたって法令遵守の徹底及び顧客や取引先とのトラブル回避に努めており、現時点において業績及び財政状態に影響を及ぼす訴訟が提起されている事実はありませんが、今後予期せぬ事象の発生により、訴訟その他の請求が発生した場合、これらの訴訟等の内容及び結果によっては、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクについては、現時点で顕在化のリスク及び影響を予測することはできませんが、研修等を通じて役職員のコンプライアンス意識を高めるほか、顧客及び取引先等と日頃から良好な関係の構築に努めることが、当該リスク顕在化の抑制につながると考えております。
(17)地域との関係について
介護・医療サービスの提供という事業性から、事業の収益性に課題が生じた場合においても、撤退時の利用者の行き先確保、賃貸借契約上の制約、医療機関や行政機関との関係性の維持等から即時撤退を行うことが困難な場合があり、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(18)長期賃貸借契約について
当社が運営する施設の中には、長期賃貸借契約に基づいているものがあり、一定期間は事業撤退の制約が課せられます。これに反した場合は中途解約による違約金等の支払いが生じる可能性があります。
また、契約期間満了後において契約更新が難しい場合がありますが、その場合は計画的に新たな移転先を決める事としており、当該リスクが顕在化する可能性は限りなく低いと考えております。
(19)有利子負債に関するリスク
当社では、新規開設にかかる設備資金の一部を金融機関からの借入で調達しており、また、ファイナンス・リース取引におけるリース債務の計上により、当事業年度末の有利子負債残高は20,106百万円、有利子負債自己資本比率は393.5%となっております。
今後は、現行の金利水準が変動した場合、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。当社は、介護事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産合計は31,518百万円となり、前事業年度末から12,306百万円増加しました。これは主に、新規施設の開設等により建物が2,451百万円、リース資産が4,375百万円、建設仮勘定が2,481百万円、売掛金が1,310百万円増加したことによるものです。
(負債)
当事業年度末における負債合計は26,392百万円となり、前事業年度末から11,787百万円増加しました。これは主に、新規施設の開設等によりリース債務が4,631百万円、短期借入金が2,700百万円、長期借入金が1,610百万円増加したことによるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は5,125百万円となり、前事業年度末から519百万円増加しました。これは主に、当期純利益779百万円の計上等により利益剰余金が増加したことによるものです。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたことに伴い、社会経済活動を維持しながら感染拡大に対応する段階へと移ったことで、景気は緩やかに持ち直しへと向かいました。一方、終結の見通しが立たないロシア・ウクライナ情勢や急激な為替相場の変動による世界的なエネルギー・原材料価格の高騰など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社の関連する介護及び医療環境につきましては、団塊の世代が全て75歳以上の高齢者となる2025年を目途に、高齢者が要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられる社会の実現(地域包括ケアシステムの構築)への取り組みが進められています。地域に関わらず適切な医療・介護が受けられる体制が求められ、質の高い在宅医療・訪問看護の確保が重要となってきています。さらに指定難病においてはその専門性を有することから、専門病院や専門介護のニーズが今後ますます高まっていくものと考えております。
このような環境のもと、当社は、パーキンソン病専門施設である「PDハウス」の全国展開を加速させてきました。パーキンソン病患者の方のニーズに応えるべく、2023年4月にPDハウス港南台(神奈川県横浜市)及びPDハウス城東(大阪府大阪市)、2023年8月にPDハウス八王子(東京都八王子市)、2023年9月にPDハウス東大阪2号館(大阪府東大阪市)、2023年10月にPDハウス用賀(東京都世田谷区)及びPDハウス光の森(熊本県熊本市)、2023年11月にPDハウス神大寺(神奈川県横浜市)、2023年12月にPDハウス平和が丘(愛知県名古屋市)を新規開設、2023年6月にPDハウス板橋(東京都板橋区)を増床いたしました。これにより、当事業年度末における「PDハウス」施設数は31施設となりました。既存施設を含めた各施設の稼働率は、いずれも順調に推移しております。なお、当事業年度に新規開設した施設のうち、7施設はファイナンス・リース取引に該当しております。これが主な要因となって、当事業年度の支払利息は635百万円(前年同期比70.8%増)となっております。
これらの結果、当事業年度の売上高は20,107百万円(前年同期比51.9%増)、営業利益は2,237百万円(同134.6%増)、経常利益は1,685百万円(同155.2%増)、当期純利益は779百万円(同156.7%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、3,307百万円となり、前事業年度末に比べて696百万円増加しました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは2,557百万円の資金増加(前事業年度は1,140百万円の資金増加)となりました。これは主に、売上債権の増加額1,310百万円等の減少要因があったものの、税引前当期純利益1,668百万円の計上、診療報酬返還に伴う負債の増加額1,253百万円及び減価償却費797百万円の計上等の増加要因があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは5,662百万円の資金減少(前事業年度は2,041百万円の資金減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出5,489百万円等の減少要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは3,801百万円の資金増加(前事業年度は2,696百万円の資金増加)となりました。これは主に、長期借入金による収入1,900百万円、短期借入金の純増額2,700百万円等の増加要因によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載を省略しております。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注に該当する事項がないため、受注実績に関する記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。
なお、当社は介護事業の単一セグメントであるため、サービス区分別の販売実績を記載しております。
|
サービス区分の名称 |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
PDハウス (百万円) |
17,114 |
177.3 |
|
医療特化型住宅 (百万円) |
1,883 |
73.8 |
|
グループホーム (百万円) |
167 |
103.0 |
|
デイサービス (百万円) |
433 |
114.6 |
|
福祉用具事業 (百万円) |
475 |
104.8 |
|
加圧トレーニング事業 (百万円) |
32 |
88.0 |
|
合計(百万円) |
20,107 |
151.9 |
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
石川県国民健康保険団体連合会 |
3,241 |
24.5 |
3,674 |
18.3 |
|
大阪府国民健康保険団体連合会 |
1,680 |
12.7 |
2,838 |
14.1 |
|
東京都国民健康保険団体連合会 |
933 |
7.1 |
2,369 |
11.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積り、判断並びに仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額、開示期間の収益・費用の金額及び開示情報に影響を与えます。ただし、これらの見積り、判断並びに仮定は、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果とは異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社は「自らが輝き、人を元気にする」を経営理念に掲げております。わが国では、2007年に超高齢社会(公益財団法人長寿科学振興財団の定義)を迎え、更に高齢化も進行し、65歳以上人口割合は2020年の28.6%から一貫して上昇し、2070年には38.7%まで増加すると推計されており(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)、介護・医療の需要はさらに高まるとされています。一方で、介護・医療の制度を経済的に、また人的に支える労働人口の減少が予測されており、今後の高齢化の進展に対応し得る介護・医療の持続可能な制度設計がわが国の根本的、かつ緊要な課題のひとつであることは論をまちません。
当社では、この課題に対して、指定難病であるパーキンソン病患者を対象とした「PDハウス」とこれに関連するサービスの提供を通じて、地域の介護・医療資源を効果的かつ効率的に利用できる仕組みづくりを行うことで応えてまいります。地域では、病床削減とこれに伴って療養の場を病院から在宅(自宅や施設等)へ移すとする政策を受けて、特に慢性期や終末期における介護・医療の需要が高まっております。パーキンソン病患者は慢性期が長期化する傾向があることから、当社にとって有利な事業環境であり、引き続き事業を積極的に展開していく背景となっております。
当事業年度において、当社では新たにPDハウス港南台(神奈川県横浜市)、PDハウス城東(大阪府大阪市)、PDハウス八王子(東京都八王子市)、PDハウス東大阪2号館(大阪府東大阪市)、PDハウス用賀(東京都世田谷区)、PDハウス光の森(熊本県熊本市)、PDハウス神大寺(神奈川県横浜市)及びPDハウス平和が丘(愛知県名古屋市)を開設、また、PDハウス板橋(東京都板橋区)を増床いたしました。当社は、介護事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
(売上高)
当事業年度の売上高は20,107百万円となり、前事業年度より6,871百万円の増加となりました。これは主に、「PDハウス」を新規開設及び増床し、サービス提供が開始されたことにより医療保険及び介護保険収入が生じたことなどによります。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は14,938百万円となり、前事業年度より4,967百万円の増加となりました。これは主に、新規に「PDハウス」を開設したことに伴い採用した施設従業員の人件費が生じたことなどによります。この結果、売上総利益は5,168百万円(前年同期比158.3%)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度の販売費及び一般管理費は2,931百万円となり、前事業年度より619百万円の増加となりました。これは主に、業務の規模拡大に伴い採用した本社従業員の採用費及び人件費が生じたことなどによります。この結果、営業利益は2,237百万円(前年同期比234.6%)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当事業年度の営業外収益は105百万円となり、前事業年度より4百万円の減少となりました。これは主に、新型コロナウイルスの感染拡大防止及び物価高騰対策支援に関する補助金等が減少したことなどによります。また、当事業年度の営業外費用は657百万円となり、前事業年度より253百万円の増加となりました。これは主に、新規出店によりリース債務の支払利息が増加したことなどによります。この結果、経常利益は1,685百万円(前年同期比255.2%)となりました。
(特別利益、特別損失)
当事業年度の特別損失は17百万円となりました。これは主に、「令和6年能登半島地震」の義援金によるものです。
(当期純利益)
当事業年度の法人税等合計は888百万円となり、この結果、当期純利益は779百万円(前年同期比256.7%)となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社の資金需要のうち主なものは、新規施設開設のための資金、運転資金等となっております。当社の資金調達については、自己資金及び金融機関からの借入れ等で実施しております。なお、これらの資金調達方法については、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行い、決定しております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおり認識しており、これらのリスクについては発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。
⑤ 経営戦略の現状と見通し
当社は介護サービスの提供を行っておりますが、現在運営している施設については、稼働率も順調に推移しているほか、医療保険制度や介護保険制度において報酬が決まっていること等により売上高を増加させることは難しいため、今後はコスト削減及び運営の効率化等により利益率を向上させ、強固な収益基盤を構築したいと考えております。
成長戦略としましては、北陸エリアで2019年3月期に第1号施設を開設し、2020年3月期に全国展開を開始後、当事業年度末において全国31か所で運営を行っているパーキンソン病患者専門の有料老人ホーム「PDハウス」が、高い稼働を維持していることから、「PDハウス」の新規開設を積極的に推進してまいります。これまでパーキンソン病患者専門の有料老人ホームが無かったことに加え、高齢化社会の進行により同疾患患者数が増加しており、需要が高まっていることを受け、各都道府県における患者数等を勘案し、施設の開設を進めてまいります。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針について
当社の経営者は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、当社が今後さらなる成長を遂げるためには、さまざまな課題に対処することが必要であると認識しております。
それらの課題に対応するために、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、「PDハウス」による競合との差別化を推進し、さらなる事業拡大を図ってまいります。
⑦ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおり、売上高及び経常利益率を重要な経営指標としております。
「PDハウス」の事業拡大により、売上高については、当事業年度は20,107百万円と前年同期比で151.9%となっております。これは、現時点において予定どおりの進捗となっており、堅調に推移しているものと認識しております。一方で、経常利益率については、当事業年度は8.4%と前年同期比で3.4ポイント増加しております。これは、施設の出店数増加に伴うスケールメリットにより、売上原価率及び売上高販管費率が減少したことによるもので、高収益企業へのさらなる成長に向けた基盤固めが進んでいるものと認識しております。
該当事項はありません。
当社では、順天堂大学医学部神経学講座と共同し、2019年10月に共同研究講座「ICT制御に基づく在宅医療開発講座」を開設しております。この共同研究講座では、2019年10月より当社のパーキンソン病専門の有料老人ホームにおいて検証実施を始めた、ICT(情報通信技術)によるマルチセンサーやウェアラブル端末によるモニタリングによって、患者のバイタル、活動量、消費カロリーといったビッグデータを蓄積することで、病気の進行状況が数値化され、高い診療効果を得ることや、24時間変動を把握することで正確な薬剤調整に繋がることが期待できます。このようにデータ収集・解析を行い、パーキンソン病患者の日常生活動作(ADL)上の障害を検出し、住宅のハード面及びソフト面における介入を行うことにより、パーキンソン病患者の生活の質(QOL)を改善するホームアダプテーションの研究・開発を行っております。また、当社従業員に対するパーキンソン病に関連する基本や最新情報についてのオンラインセミナーが開催され、パーキンソン病の理解や知識レベルの向上を図っております。また、2021年に順天堂大学がリリースした遠隔地を映し出す3次元オンライン診療システムの実証実験を当社では2021年6月より共同実施しており、全身観察でより精度の高い診察が可能となったり、通院や待ち時間における身体的苦痛の解消が期待できます。
これにより、当事業年度の研究開発費の総額は