第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営環境

 化学産業は、わたしたちの生活には欠かせない医薬品からスマートフォン、航空機など幅広い分野へ原料を提供する産業として世界経済の発展を支えてきました。しかしながら、今もなおエネルギーを大量に消費する重厚長大型の製造工程が主流で、大量の産業用エネルギーを消費、二酸化炭素ガスを排出しており、製造プラントは広大な敷地を要します。

 化学反応にはエネルギーが必要となります。化学産業は、勃興期から、「外部から」、「間接的に」、「全体を」加熱してエネルギーを伝達してきました。一方、電子レンジにも使われているマイクロ波は、「内部から」、「直接」、「特定の物質だけに」エネルギーを伝達します。当社はこのマイクロ波の特性を活用して化学反応をデザインし、「省エネルギー」・「高効率」・「コンパクト」・「高品質」なものづくりを実現する製造プロセスを提供します。

 さらにマイクロ波プロセスは再生可能エネルギー由来の電力を活用することで大幅に二酸化炭素の排出を減らすことができます。各国政府が約束した2050年のカーボンニュートラルは遠い未来のように思われますが、化学産業をはじめとした重厚長大な製造業の設備更新サイクルは40年であり、国際エネルギー機関(IEA)が発表したNet Zero by 2050 A Road Map for the Global Energy Sector IEA(2021年5月)では今後10年以内に、約30%の設備が設備改善の為の大規模投資が必要とされる25年目の寿命を迎えると言われております。カーボンニュートラルを実現するためには、それまでに、新しい革新的な技術を導入可能な状態にしなければいけません。また、一般的に新技術が実用化されるためには10年程度必要なことを考えますと、当社としては「今」新しいソリューションの開発に着手をする必要があると考えております。

 

(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、製造プロセスを化石資源由来の「熱と圧力」から電気由来の「マイクロ波」に置き換えることで、「省エネルギー」・「高効率」・「コンパクト」な環境対応型プロセスのグローバルスタンダード化を目指しています。これを実現する為に、技術プラットフォームを用いて幅広い顧客や業界が抱える課題に対してソリューションとして提供します。当社事業にとって最も重要なのは、技術が商業レベルで使われることでありますが、そのためには、新規案件を獲得し共同開発からスタートをした案件が、実証開発へ、そして最終的には、実機導入にまでステージアップすることが重要となります。これをモニタリングするために重視をしている経営指標としては、1)新規案件獲得数、2)案件総数及び3)フェーズ別売上高があります。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社が優先的に対処すべき課題は下記のように考えております。

 

① 開発戦略

 要素技術の開発、データベースの充実、ノウハウの整備、及びアカデミアとも協力をした技術の体系化をはかり効率的な開発体制を構築します。また、発信器など当社が競争優位を持たない分野については、外部機関とも積極的に協力することで技術プラットフォームを強化します。当社の強みは、マイクロ波化学において、研究開発から実証開発・エンジニアリング迄をワンストップで提供できることですが、これを可能とする要素技術群で構成されるインフラの開発投資を進めます。顧客の開発に共通的に使用できる設備を持ち、かつ、ラボ装置は市販されているものでは不十分な為、当社で開発し整備することで、安価かつ高品質なソリューションを提供することが出来る体制を構築します。

 また、「電化」の製造技術という観点から競合技術の動向にも注意を払いながらスピードを落とさずに開発を行う必要があります。一方で、マイクロ波加熱以外の有力な手段となるIH加熱・電気ヒーター加熱は、従来の化石燃料による加熱と同様に伝熱を基本とする技術で、直接エネルギーを伝えるマイクロ波と比較して、エネルギー変換効率が低く、スケールアップ難易度が高いため、その優位性を活かして社会実装をすすめることを目指します。

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② 事業開発体制

 当社は、技術プラットフォームを幅広く顧客や業界が抱える課題のソリューションに適用します。また、最終的に社会実装するために、化学メーカーをはじめとした様々なプレイヤーとアライアンスを組むことにより事業を拡大します。このため、世界中の化学メーカー等とのネットワークを構築し、常に顧客や業界ニーズ・トレンド情報を収集し咀嚼しております。このためには、当社の技術を理解・発信し顧客や業界ニーズとマッチングさせることができるプロデューサー的な機能を持った事業開発体制を構築し強化を図るために、継続的な人材採用と組織づくりが必要となります。

 また、顧客の化学メーカーにとって、これまでに導入した実績がない技術であるマイクロ波化学プロセスを導入することは、経営的な判断となります。当社がスムーズな技術導入を実現するためには、開発の初期段階より顧客側経営層からの理解が必要となり、その為に経営レベルでの関係構築及び経営目線での価値提言に努めて参ります。

 

③ 研究開発体制

 当社がテクノロジー企業として構築したマイクロ波プロセスに関する技術プラットフォームは、化学メーカー等とのアライアンス戦略における競争優位の源泉となっています。したがって、今後も継続的に充実を図り、当社の競争優位をより強固とするための研究開発の継続が重要であり、それを可能とする体制の構築・強化が課題であると認識しており、継続的な人材採用及び育成が重要と考えております。

 

④ 人材確保

 マイクロ波化学は業際分野であり、化学、物理(電磁気学)、エンジニアリングなどの専門家から構成される開発体制を構築する必要があります。また、単に技術を提供するだけでなく、顧客の製造迄支援するためには、エンジニアについても、プロセスエンジニア、機械、電気計装、生産技術、及びシミュレーション技術者からなる多様な技術者をバランス良く継続的に採用する必要があります。

 さらに、当社が、今後も持続的に成長するためには、パイプラインの拡大を常に行う必要があり、それを推進する人材の確保は重要な課題となります。特に、各プロジェクトの研究開発から事業化までをマネジメントできるプロジェクトリーダー級の即戦力人材の確保に努めてまいります。

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⑤ 経営管理体制

 当社が継続的な開発パイプラインの拡充及び事業開発の展開を進める上で、パイプラインの進捗管理、予実管理等を行うための経営管理体制の強化は重要な課題と認識しております。当社は、組織が健全かつ有効、効率的に運営されるように、パイプラインの進捗モニタリングを行うための内部統制の整備、強化、見直しを行っていく方針です。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、成長途上の会社であり、経営の規模拡大と健全性・透明性の確保を両立させていくことが、企業価値の持続的な増大のために必須であると認識しております。

 その実現のためには、コーポレート・ガバナンスの強化・充実が重要課題と考えており、全社の活動において内部統制を有効に機能させることを目指しております。

 当社は、取締役会、監査等委員会、会計監査人を設置しており、迅速で合理的な意思決定体制及び業務執行の効率化を可能とする社内体制を構築し、企業統治の体制強化を図っております。

 取締役会は、重要な経営事項の審議及び意思決定を行う機関と位置付けており、原則として毎月1回定期的に開催するほか、効率的かつ迅速な意思決定を行うため、必要に応じ臨時に開催し、取締役から業務執行状況の報告を受け、取締役の業務執行を監督しています。

 監査等委員会は、コーポレート・ガバナンスの状況を監視するとともに、取締役の業務の執行が適法かつ適切に行われているかを監査しており、監査等委員が取締役会に出席することで、議事内容や手続き等につき確認しております。

 また、日常的に業務を監査する役割として、内部監査担当者を置き、内部監査を実施し、代表取締役社長、取締役会及び監査等委員会に報告することとしております。

 

(2)リスク管理

 当社は、リスクを適切に識別し、評価し、及び管理するため、事業目的と関連した経営に重大な影響を及ぼすリスクについては、対応方針その他リスク管理の観点から重要な事項については取締役会において十分に審議するとともに、担当部署にて規則・ガイドラインなどの案を策定しております。

 また、想定されるリスクに応じた有事に備えるとともに、有事が発生した場合には、当該規則・ガイドラインに従い迅速かつ適切に対応する体制を整備しているほか、役職員に対してリスク管理に関する教育・研修を継続的に実施しております。

 

(3) 戦略

 当社は、「Make Wave, Make World 世界が知らない世界をつくれ」というミッションのもと、「100年以上変わらない化学産業を革新し、モノづくりの世界を変革する -マイクロ波プロセスをグローバルスタンダードに-」をビジョンとして掲げております。

 これらを実現する上で、「自律的なプロフェッショナル集団の形成」が人的資本領域における最重要課題であると認識しており、それに沿った人材育成方針及び社内環境整備方針を採用しており、具体的には次のとおりであります。

 

(a) 多様な人材の確保

 マイクロ波化学は業際分野であり、化学、物理(電磁気学)、エンジニアリングなどの専門家から構成される開発体制を構築する必要があります。また、単に技術を提供するだけでなく、顧客の製造まで支援するためには、エンジニアについても、プロセスエンジニア、機械、電気計装、生産技術、及びシミュレーション技術者等多様な人材が必要となります。当社は、継続的に多様な人材の採用及び育成を行うことが重要であると考えております。

 

(b) プロジェクトリーダーの育成

 当社は、技術プラットフォームを幅広く顧客や業界が抱える課題のソリューションに適用します。また、最終的に社会実装するために、化学メーカーをはじめとした様々なプレイヤーとアライアンスを組むことにより事業を拡大します。このため、世界中の化学メーカー等とのネットワークを構築し、常に顧客や業界ニーズ・トレンド情報を収集し咀嚼しております。このような体制を支える人材として、当社の技術を理解・発信し、顧客や業界ニーズとマッチングさせることができるプロデューサー的な機能を担える人材、及び各プロジェクトの研究開発から事業化までをマネジメントできるプロジェクトリーダー級の人材の採用及び育成が重要であると考えております。

 

 

(c) 人事制度

 当社は、上記のような人材を採用及び育成するための社内環境整備の一環として、「コンピテンシー」を用いた人事制度を採用しております。

 「コンピテンシー」とは、当社において求められる優秀な人材が発揮する行動特性を記述したものであり、当社においては、「コンピテンシー」に基づいた目標設定、進捗管理及び評価により、各社員の育成を図っております。

 

(4) 指標及び目標

 当社における人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績は下表のとおりです。

指標

2023年3月期

(実績)

2024年3月期

(目標)

採用

従業員増加数

4人

9人

採用コスト

19,194千円

28,920千円

育成及び社内環境整備コスト

1,773千円

17,403千円

 

 

3【事業等のリスク】

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。

また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しておりますが、当社に関するすべてのリスクを網羅するものではありません。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 技術の応用領域の拡大について

 当社は、従来困難とされてきたマイクロ波プロセスの大型化に成功し、大規模マイクロ波化学工場である「M3K」の立ち上げに成功した後、食品添加物、医薬品、炭素素材、電子材料など多様な分野へと応用領域を拡大しております。このように、マイクロ波プロセスは、基礎化成品、機能性化成品、燃料など様々な領域に応用可能であると考えておりますが、新しい技術領域であり不確実性が高いため、当社技術の市場への浸透が計画通りに進まない場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 新規参入・技術革新について

 当社は、独自に構築したプラットフォーム技術を事業基盤としており、マイクロ波化学分野においては強固な競争優位性を確保しているものと考えております。しかしながら、当社を上回る研究開発能力を備えた新規参入企業が出現すること、または当社の特許技術に抵触しない技術をもって当社を上回る技術が開発されることも考えられます。

 当社としては、数多くの領域でマイクロ波プロセスによるプラント建設を進めマイクロ波化学に関する知見を蓄積することで、この競争優位性をより強固なものにできると考えておりますが、新規参入企業の出現や当社を上回る技術の開発により、当社の競争優位性が低下する結果、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、マイクロ波に対する代替技術を持った事業者の新規参入や、技術革新によりニーズが減退し、業界環境そのものが著しく変化する可能性があります。顧客ニーズの変化を先読みして、競合技術を継続的に観測し、この結果を当社の技術開発に活かしていくことで対処したいと考えております。

 

(3) 知的財産について

 当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はなく、現時点においては、当社の事業に関し他者が保有する特許権等への侵害により、事業に重大な支障を及ぼす可能性は低いものと認識しております。また、技術調査等を継続して行って侵害事件を回避するよう努めております。ただし、当社のような研究開発型の企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難です。今後、当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士や弁理士と協議の上、その内容によって個別具体的に対応策を検討していく方針ですが、当該第三者の主張の適否にかかわらず、解決に時間及び多額の費用を要する可能性があり、また、当社の技術に関しては、細心の注意を払って管理しておりますが、第三者が当社の技術を侵害した場合であっても、解決に時間及び多額の費用を要する可能性があります。その場合には当社の事業戦略及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 現状、要素技術群において、反応系デザインが中心の共通の要素技術である、基礎物性評価、シミュレーション、制御は秘匿化し、反応器デザインが中心の個別の要素技術である基盤機構は特許化、公知化する戦略をとっており、このようにして積み重ねた知財は当社の強みとなっております。

 

(4) 多額の研究開発費の発生について

 当社の第16期事業年度の研究開発費の総額は444,650千円です。マイクロ波プロセスは、基礎化成品、機能性化成品、燃料など様々な領域への応用が可能であると考えられます。当社はマイクロ波化学産業を興し同産業におけるリーディングカンパニーとなることを目指し、グリーン、ヘルスケア、エレクトロニクスなどを重点領域として複数の次世代パイプラインの研究開発を進めています。これら研究開発が当初計画よりも遅延する場合、または当初期待していた結果が得られない場合、研究開発費用が当初計画よりも増大し、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 収益計上が変動する傾向について

 当社の事業収益は、共同開発契約に伴う開発一時金の収受によるものが中心であるため、その計上時期や金額によっては事業収益、当期純利益(損失)は不安定に推移する可能性があります。

 

(6) パイプラインの進捗について

 当社は共同開発契約を締結するにあたり、研究開発目的ではなく、事業化の達成が目的であることを確認しております。事業化までのロードマップを事前合意し、マイルストン毎に契約を締結しておりますが、開発が難航した場合や、顧客における経営方針の変更、業績悪化等に伴う予算削減等がなされた際には、開発の継続が困難となる場合があります。また、事業化段階であるフェーズ4においては、ライセンス収入等の継続収益が発生することを想定しておりますが、本書提出日現在において、継続収益の計上実績はありません。今後、開発の進捗によりフェーズ4に到達するパイプラインが増加し、継続収益が発生することを見込んでおりますが、顧客の事業状況によってはパイプラインの事業化が困難となる場合があります。

 以上のように、当社の想定どおりにパイプラインが進捗しない場合において、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 特定の取引先に売上が集中する可能性について

 当社は多数の企業と共同開発を実施しておりますが、売上単価が大きいフェーズ2以降の案件について、現時点では取引先が数社となっています。今後、フェーズ1の案件がフェーズ2へとステージアップすることで、このような状況は解消されると考えておりますが、開発の進捗に偏りが生じた際には、本状況が継続する可能性があります。

 

(8) 経営上重要な契約について

 当社の事業展開上、重要と思われる契約の概要は「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」に記載しておりますが、当該契約が解除又はその他の事由に基づき終了した場合、又は契約の相手方の経営方針の変更、経営環境の極端な変化などがあった場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 業績の不確実性について

① 過年度の業績推移について

 当社がソリューション提供型のビジネスを開始したのは第11期であり、第13期及び第16期以外においては、当期純損失を計上しております。

 今後、さらなる事業拡大を推進してまいりますが、過年度の経営成績が今後の当社の経営成績等を判断する材料としては、不十分である可能性があります。

 今後、未だ経験していない事業上のトラブルが発生する可能性は否定できず、当社の業績に影響を及ぼすと考えられる様々な外部環境の変化について予想することは、現状においては困難であると思われます。

 

② 研究開発投資について

 当社は、マイクロ波プロセスの基盤技術確立、応用領域拡大のため、設備機器の導入、研究員及びエンジニアの増員等、研究開発にかかる先行投資を積極的に実行しております。

 今後も、研究開発にかかる先行投資を継続するとともに、事業開発を強化することで、共同開発契約やライセンス契約の締結による収益の計上に努めてまいりますが、研究開発の効果が十分に得られない場合や、事業開発が計画通りに進まない場合には、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 人材及び組織について

①少数の事業推進者への依存について

 代表取締役社長CEOである吉野巌は、経営戦略の策定、事業開発の推進において重要な役割を果たしております。また、取締役CSOである塚原保徳は、創業以前はマイクロ波化学分野の研究者として活動しており、同分野における豊富な知見を活かして、創業当初から当社研究開発の中心的存在であり、現在もその推進に重要な役割を担っております。

 当社では、これらの取締役に過度に依存しない経営体制を築くために、研究開発、事業開発の遂行にあたって、各種会議体の設置によって意思決定やノウハウ蓄積を組織的に行うなど、経営組織の強化を図っております。しかしながら、当面の間はこれら取締役への依存度が高い状態で推移するものと考えております。このような状態において、これら取締役の事業への関与が何らかの理由により困難となった場合には、当社の事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②少人数組織であることについて

 当社は、当事業年度末現在、従業員64名(臨時雇用者含む)と小規模であり、内部管理体制も相応の規模となっております。当社においては、業務上必要な人員の増強及び内部体制の充実を図っていく方針でありますが、必要な人材を獲得できない場合、人材流出が生じた場合及び代替要員の不在等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 情報管理について

 当社のプラットフォーム技術及びパイプラインの開発並びにその他事業遂行等に関する重要な機密情報が流出するリスクを低減するために当社は、役職員、顧問、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めています。しかしながら、役職員、顧問、取引先等によりこれが遵守されなかった場合等には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には当社の事業や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 法令規制等について

 当社は、法令の遵守を基本として事業を進めておりますが、製造物責任、消防法、電波法、廃棄物処理責任、環境・個人情報保護関連、税制関連等において、さまざまな法的規制を受けており、今後更にその規制が強化されることも考えられます。そのような場合、事業活動に対する制約の拡大やコストの増加も予想され、当社企業の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 固定資産の減損について

 当社は、マイクロ波プロセスの技術プラットフォームを構築すべく、有形固定資産及び無形固定資産等の固定資産を取得・保有しております。これらの資産の取得にあたっては事前に必要性や収益性を十分に検証した上で決定しておりますが、研究開発の効果が十分に得られないこと、事業開発が計画通りに進まないこと、または経営環境や事業の状況の著しい変化等により、収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、対象資産に対する減損損失の計上により、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 業績の季節的変動について

 当社の主要顧客である化学企業においては、新年度直前の3月までに研究開発予算の獲得が行われるため、当社との共同開発は第1四半期または第2四半期に開始することが多くなります。その結果、当社の収益が計上される共同開発の完了時期が下半期に偏重する傾向にあります。また、大型案件の完了時期による影響があります。これに対して販売費及び一般管理費は、その大部分が固定費であることから、利益の割合も下期に偏重する傾向にあり、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 

第16期事業年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)の各四半期会計期間の売上高

(単位:千円)

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

合計

157,322

185,362

252,294

620,374

1,215,353

 

(15) 検収時期の変動について

 共同開発契約においては、開発テーマに関する報告書・サンプル、機器等の成果物を納品し対価を得ており、顧客による成果物の検収が完了した時点で収益を認識しております。

 このような契約において、顧客と合意の下、開発状況に応じた開発期間の延長等を行うことにより、顧客による成果物の検収が当初予定よりも遅れた場合、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 関係会社株式について

 当社は、ティエムティ㈱とショ糖エステルの製造及び販売に係る特許・ノウハウライセンス契約を締結して技術供与するとともに投資を行っており、その株式を保有しております。同社は、過年度において、工場立上げの準備過程にあり、継続的に収益を計上していなかったため、同社にかかる関係会社株式については、必要に応じて評価損を計上しております。本書提出日現在、同社においては、商業出荷を開始しておりますが、今後、投資に見合う収益が得られない、あるいは損失が発生する等により、関係会社株式(当事業年度末の残高は319,444千円)に追加の評価損が発生し、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 なお、同社との取引関係及び同社の要約財務諸表は「第5 経理の状況  1.財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 関連当事者情報」に記載しております。

 

(17)自然災害、事故、テロ、戦争などについて

 当社は大阪府吹田市において研究開発、大阪市住之江区において実証開発を実施しておりますが、地震、台風等の自然災害の影響を受ける可能性があります。同様に火災等の事故災害、テロ、戦争等が発生した場合、開発拠点の設備等に大きな被害を受け、開発が遅延、または中止を余儀なくされる可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社の事業戦略及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)新型コロナウイルスの影響について

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、更なる拡散の脅威や経済活動の停滞等が発生する可能性があります。当社においても、顧客の業績が悪化し契約の変更や取引の縮小等が生じる場合や、開発活動が過度に制限される場合には、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末の資産合計は3,077,400千円となり、前事業年度末に比べ1,494,990千円増加しました。

 これは主に、現金及び預金が1,025,740千円、売掛金が177,143千円、未収入金が59,254千円、前払金が102,800千円、関係会社長期貸付金が80,000千円それぞれ増加したことによるものであります。

 

(負債)

 当事業年度末の負債合計は1,371,354千円となり、前事業年度末に比べ414,382千円増加しました。これは主に、買掛金が61,252千円、1年内返済予定の長期借入金が150,000千円、契約負債が363,229千円それぞれ増加したのに対し、長期借入金が200,000千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末の純資産は1,706,045千円となり、前事業年度末に比べ1,080,607千円増加しました。これは、資本金及び資本準備金がそれぞれ502,607千円、利益剰余金が75,393千円それぞれ増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

 製造業の中でも化学産業は、原料や素材を担う産業として経済の発展を支えてきました。しかしながら、多くの製品や製法にイノベーションが起こる中、同産業は長きにわたってその登場からほとんど姿を変えておらず、現在も未だ重厚長大のエネルギー大量消費型のプロセスが多く残っています。

 当社は、「何を作るか」ではなく「どのように作るか」に着目し、製造プロセスを化石資源由来の「熱と圧力」から電気由来の「マイクロ波」に置き換えることで、「省エネルギー」・「高効率」・「コンパクト」な環境対応型プロセスのグローバルスタンダード化を目指す技術プロバイダーです。

 当社は、「デザイン力」及び「要素技術群」からなる技術プラットフォームを駆使して、顧客課題に応じて、ラボ開発、実証開発といった研究開発フェーズから、実機製作、製造支援といった事業フェーズまでをワンストップでソリューションとして提供しております。現在では、食品添加物、医薬品、炭素素材、電子材料などの幅広い分野において研究開発のパイプライン拡充及び積極的な事業開発活動を行っております。

 

 近年、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、「カーボンニュートラル」を目指す動きが世界的に加速しております。わが国でも2020年10月、臨時国会で「2050年カーボンニュートラル」が宣言されたことを受け、経済産業省により2兆円のグリーンイノベーション基金が造成されるなど、二酸化炭素排出の削減を経営課題として取り組む企業等に対して、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援を行う機運が高まっております。

 マイクロ波プロセスは、従来の「外部から」「間接的」「全体」にエネルギーを伝達するプロセスに対して、「内部から」「直接的」「ターゲットした物質」に効率的にエネルギーを伝達することが可能であり、エネルギー削減を実現することができます。さらに、2000年代以降、安価、かつ発電量が増えてきた自然エネルギー由来の電気と組み合わせた「電化」のプロセスとして大幅な二酸化炭素削減が可能であるため、カーボンニュートラル実現に向けた有望なキーテクノロジーとして注目されております。

 

 とりわけ、廃プラスチックを基礎化学原料へ戻してから再重合し新品同様のプラスチックを再生産する「ケミカルリサイクル」の領域においては、マイクロ波を活用したプラスチック分解技術プラットフォームである「PlaWave」を積極的に展開し、多種多様なプラスチックを対象とした共同開発を、複数の化学企業と行っております。

 また、このほか、当事業年度に着手した主要な開発プロジェクトとしては、下記が挙げられます。

(1) カーボンフリーなエネルギーとして期待の高まる水素の製造において、温室効果ガスの一種であるメタンの熱分解により得られる「ターコイズ水素」の省エネルギーかつ高効率な製造プロセス確立を目指した実証開発の開始。

(2) 鉄よりも強く、アルミより軽いことから、次世代の素材として注目され、今後、モビリティをはじめとする様々な分野において適用拡大が期待される炭素繊維の製造において、環境負荷の低い革新的な技術を用いた量産体制の検討開始。

(3) 食品や医薬品等を対象とする凍結乾燥において、従来法と比較して、乾燥時間の大幅な短縮や、それに伴う高品質化を可能とする技術を適用したマイクロ波多段式凍結乾燥装置「SiriusWave」の販売開始。

 

 このような「カーボンニュートラル」に貢献する開発テーマを中心に、新規案件の獲得活動に注力したほか、ラボフェーズに続いて実証フェーズに進んだ案件の開発を着実に進めた結果、当事業年度は、新規案件獲得数は通期計画25件に対して27件、契約済みの案件総数は通期計画52件に対して61件となりました。

 以上の結果、当事業年度における経営成績は、売上高1,215,353千円(前年同期比41.2%の増加)、営業利益は59,841千円(前事業年度は87,495千円の営業損失)となりました。また、支払利息7,768千円(リース債務に係る金額6,118千円含む)及び上場関連費用28,955千円を営業外費用として計上したこと等により経常利益は26,078千円(前事業年度は98,876千円の経常損失)、補助金収入167,829千円を特別利益に、固定資産除却損13,632千円、固定資産圧縮損123,736千円を特別損失に計上したことにより当期純利益は75,393千円(前事業年度は110,247千円の当期純損失)となりました。

 また、当社は、マイクロ波化学関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,025,740千円増加し1,246,269千円となりました。

当事業年度におけるキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、372,940千円の収入(前事業年度は226,012千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純利益56,538千円、減価償却費73,281千円、固定資産圧縮損123,736千円、仕入債務の増加額61,252千円、契約負債の増加額363,229千円を計上したのに対し、売上債権の増加額177,143千円、未収入金の増加額59,249千円、前払金の増加額102,800千円を計上したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、282,477千円の支出(前事業年度は125,843千円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出185,802千円、関係会社長期貸付金の貸付による支出80,000千円を計上したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、935,277千円の収入(前事業年度は190,063千円の収入)となりました。これは主に、株式の発行による収入1,005,214千円を計上したのに対し、長期借入金の返済による支出50,000千円を計上したことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績は、次のとおりであります。なお、当社はマイクロ波化学関連事業の単一セグメントであるため、売上高の主な内訳別に記載しております。

区分

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

フェーズ1(千円)

459,950

63.8

フェーズ2(千円)

1,190,500

617.5

フェーズ3(千円)

0.0

フェーズ4(千円)

0.0

その他(千円)

18,300

合計(千円)

1,668,750

170.4

 

 

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はマイクロ波化学関連事業の単一セグメントであるため、売上高の主な内訳別に記載しております。

区分

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

前年同期比(%)

フェーズ1(千円)

567,193

183.0

フェーズ2(千円)

593,960

185.3

フェーズ3(千円)

35,000

116.7

フェーズ4(千円)

0.0

その他(千円)

19,200

合計(千円)

1,215,353

141.2

 (注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

当事業年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

三井化学㈱

214,281

24.9

268,090

22.1

住友化学㈱

255,500

21.0

三菱ケミカル㈱

215,432

25.0

163,600

13.5

ティエムティ㈱

200,000

23.2

大日本印刷㈱

92,500

10.8

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度末日における資産及び負債、会計年度における収益及び費用について会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しては、過去の実績及び適切な仮定に基づいて合理的に計算しておりますが、実際の結果と相違する場合があります。

 当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当事業年度における財政状態及び経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況 ② 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フロー、資本の財源及び資金の流動性

 当社は、基盤技術の強化をはかるべく、積極的に研究開発活動を実施してまいりましたが、今後も継続して実施する方針であり、必要な資金は、自己資金、金融機関からの借入金、新株発行による調達資金により充当することとしております。

 当社の資金の流動性については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の分析

 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、1)新規案件獲得数、2)案件総数及び3)フェーズ別売上高を主な経営指標として重視しており、各指標の進捗度は以下のとおりです。

 

新規案件獲得数及び案件総数

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

新規案件獲得数

9件

18件

27件

案件総数

19件

41件

61件

 

フェーズ別売上高

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

フェーズ1

211,925千円

309,950千円

567,193千円

フェーズ2

246,101千円

320,460千円

593,960千円

フェーズ3

30,000千円

35,000千円

フェーズ4

200,100千円

その他

19,200千円

合計

458,026千円

860,510千円

1,215,353千円

 

 当事業年度においては、「カーボンニュートラル」に貢献する開発テーマを中心に、新規案件の獲得活動に注力したほか、ラボフェーズに続いて実証フェーズに進んだ案件の開発を着実に進めた結果、堅調に推移したものと認識しております。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)合弁契約

相手先の名称

相手先の住所

契約

締結日

契約期間

契約内容

太陽化学株式会社

三重県四日市市

2015年

3月16日

2015年3月16日から(有効期限規定なし)

マイクロ波技術を使用したショ糖エステル製造に関する合弁事業

 

(2)特許・ノウハウライセンス契約

相手先の名称

相手先の住所

契約

締結日

契約期間

契約内容

ティエムティ株式会社

三重県四日市市

2015年

4月29日

2015年4月29日から

特許が有効に存続するまで

マイクロ波技術を使用したショ糖エステル製造の特許権及びノウハウ実施権許諾

(注)ティエムティ㈱は、当社の関連会社であります。

6【研究開発活動】

 当社は、マイクロ波プロセスの研究開発に取り組んでおり、当事業年度は、以下を重点領域として、技術プラットフォーム強化を行いました。

(1) シミュレーション精度向上

 前事業年度より引き続き、数値解析と実験の結果比較例を増やし、両者に差異を与える因子を抽出し、それらの因子に着目する形でモデル化(抽象化)の手法の体系化に取り組みました。これにより、精度が高く効率の良い開発が可能となります。

 

(2) 複素誘電率・測定技術向上

マイクロ波反応器デザインにおける電磁場解析の精度を左右する物性値「複素誘電率」の測定を反応条件下で行う高温複素誘電率測定技術の開発に取り組みました。

 

(3) ラボ標準機開発

ケミカルリサイクル、気固系、高温系などの共通性の高い技術領域において、ラボ標準器の設計・製作に取り組みました。これにより、実験操作の標準化、対応可能な案件の増加が可能となり、早期事業化に向けた開発効率の向上が期待されます。

 

2023年3月31日現在、研究開発本部は22名、エンジニアリング本部は24名在籍しており、これは総従業員数の71.9%に当たります。

当事業年度の研究開発費の総額は444,650千円であります。

なお、当社はマイクロ波化学関連事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は省略しております。