第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは「Matching, Change your business」というミッションを掲げ、「世界の雇用にもっとも貢献する企業になる」というビジョンのもとに事業を展開しております。

 また、企業使命実現に向けた価値として、「お客様が目的を達成し心から満足する製品を提供する」ことを掲げるとともに、特に以下の3つの価値観を大切に考えております。

・Be professional/顧客の目的達成のために

・Tettei/考え抜く、やりきる

・Keep challenging/チャレンジする

 

(2)経営戦略

 当社グループは(1)に掲げた経営方針のもと、「企業における人材ニーズ」と「人材」のマッチングプロセスを最適化することを事業領域と考え、この実現のために以下の経営戦略を行ってまいります。

 

① サービス価値の拡充とプロダクトの拡充

・サービス価値の拡充として、PORTERSの利便性を向上させるオプションの開発やシステムの安定的な稼働のためのシステム投資などPORTERSの機能向上に取り組む。

・プロダクトの拡充として、潜在的な顧客ニーズに応えられるようなPORTERS以外の新製品の開発に取り組む。

 

② マーケティング及びセールス体制の強化

・既存のデジタルマーケティング施策に加え、メディアへの広告展開や、異なる媒体への広告施策に取り組む。

・営業人員の拡充や教育体制を強化することにより、大口ID利用企業の顧客化に取り組む。

 

③ 顧客接点の強化

・オンボーディング(注1)及びカスタマーサクセス(注2)を強化することにより、PORTERSのアップデート情報を含めたPORTERSの最新情報を既存顧客に適時に通知するとともに、同一顧客内の他部署への当社サービスの促進及び有料オプションの利用を促進させる。

 (注1) PORTERSのユーザーがシステムの利用方法を適切に理解し、そのサービス価値を享受できている状態。

 (注2) 顧客の成功のためにPORTERSのユーザーへ能動的に関与すること。

 

④ 海外展開の本格化

・サービス拠点の展開や、現地企業等との業務提携及びマーケティング施策を実施することにより顧客拡大を進めていくこと。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループでは、HR-Tech事業におけるPORTERSの販売を主力事業として展開しており、PORTERSのID数(※)を伸長させることが企業価値の向上に繋がると考えられることから、PORTERSのID数及びその財務的な成果である売上高を重要な経営指標と位置付けております。また、持続的な成長のためには、事業活動で獲得した原資をもとに新規投資を行うことが重要とも考えているため、投資の原資としての営業利益も重要な経営指標として位置付けております。

※ ID数とは、「PORTERS」有料稼働ID数のことを指します。

 

 

(4)経営環境

 当社グループでは、主に人材紹介会社や労働者派遣会社等の人材サービス会社に対して人材マッチングクラウドサービスを提供しております。有料職業紹介事業及び労働者派遣事業の市況やそれらの事業を営む会社のITへの投資意欲が経営環境を分析するに当たって重要な要素と考えております。

当社がサービスを提供する日本国内のHR-Tech事業の顧客は、有料紹介事業及び労働者派遣事業のどちらかもしくは両方に属しております。日本国内における有料紹介事業及び労働者派遣事業の市場につきましては、2019年から2022年にかけてそれぞれ、約31%増(2022年度 届出手数料:768,163百万円)、約26%増(2022年度 売上高8,764,600百万円)と拡大を続けております。2021年度の有料紹介市場届出手数料は新型コロナウイルス感染症が沈静化した影響もあり前年を上回っており、2022年度も有料職業紹介事業者数は増加していることから、今後においては拡大するものと見込んでおります。有効求人倍率の年間平均においては、2019年の1.55倍から2022年は1.31倍と減少しているものの、新型コロナウイルス感染症の沈静化に伴い回復傾向にあります。このことから、当社がサービス提供するHR-Tech事業の顧客が属する有料紹介事業及び労働者派遣事業の市場規模は維持もしくは拡大することが見込まれます。

これらを踏まえ、当社が提供する業界の規模につきまして、今後も一定規模の維持、拡大することを見込んでおります。

項目

2019年

2020年

2021年

2022年

有料紹介市場

届出手数料(注)1

583,234

百万円

522,174

百万円

629,817

百万円

768,163

百万円

労働者派遣市場

年間売上高(注)2

6,950,300

百万円

7,647,700

百万円

8,236,300

百万円

8,764,600

百万円

有料職業紹介事業所数(注)1

25,099

26,208

27,569

28,104

労働者派遣提出事業所数(注)2

38,040

42,065

43,042

43,112

有効求人倍率

(注)3

1.55倍

1.10倍

1.16倍

1.31倍

(注)1.出典:厚生労働省 職業紹介事業の事業報告の集計結果について

(注)2.出典:厚生労働省 労働者派遣事業の事業報告の集計結果について

(注)3.出典:厚生労働省 職業安定業務統計 一般職業紹介状況

 

 当社製品は、他の事業会社が提供するCRM(Customer Relationship Management)システムと競合する可能性があるものの、当社は創業以来20年間以上、有料職業紹介事業、労働者派遣事業等の人材業界に特化したサービスを提供しており、その中で得られた業界に対する深い知識や豊富な経験を競争優位性の源泉として、事業を継続して参りたいと考えております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題としては以下の事項を認識しております。

① サービスの認知度向上及び新規顧客の獲得

 当社グループはこれまで人材マッチングサービスを一貫して提供してきたことから、安定した顧客基盤の構築は出来ており、人材サービス業界における認知度は高いものと考えております。一方で、国内の主要地域及びアジア各国の販売網のさらなる拡大を行っていくためには、当社グループのサービスの認知度をより一層向上させ、当社グループのサービスが新規顧客に円滑に導入されることを強化していくことが重要な課題であると認識しております。新たな拠点の開設やデジタルマーケティングの強化により当社グループのサービスの認知度をより浸透させるとともに、新規顧客の獲得に努めてまいります。

 

② 開発スピードの強化

 当社グループが展開する既存サービスの新機能のリリースや海外市場へのサービス展開を迅速に実行していくためには、製品の開発体制を強化し、開発スピードを高い水準に維持することが重要な課題と認識しております。当社グループの開発部門における優秀な人員の確保や、開発プロセスの改善を行うことによりその実現に努めてまいります。

 

③ 新規事業の早期収益化

 企業価値の持続的向上を実現するためには、既存サービスにおける付加価値の向上に加え、積極的に新規事業の研究開発・育成を行うことが重要な課題と考えております。しかしながら、新規事業は初期段階においては収益に対して費用が先行することから、事業として十分な利益を獲得できない期間が長期化する可能性もあります。既存事業の顧客基盤を活用するとともに、自社での営業活動を積極的に行うことによって新規事業の早期収益化に努めてまいります。

 

④ 内部管理体制の強化

 当社グループが今後サービスの向上や業容の拡大をするためには、内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。当社では、事業規模に応じた適切な人員の確保に努めるとともに、内部統制の実効性を高めるための環境を整備し、コーポレート・ガバナンスを充実させていくことにより、内部管理体制の強化を図ってまいります。

 

⑤ システムの安全性の確保

 当社グループは、インターネット上で顧客にサービスを提供しておりシステムの安定稼働の確保は重要な課題と認識しております。そのため、突発的なアクセス増加にも耐えられるようなサーバー環境の強化や、システム安定稼働のための人員確保に努めてまいります。

 

⑥ 財務上の課題について

 当社グループでは毎期の事業活動で獲得した利益を原資としてシステム投資等を行うこととしており、安定的に利益を計上している現状においては、事業継続に支障を来たすような財務上の課題は認識しておりません。今後も当該方針のもとに事業活動を継続してまいりますが、新製品の開発や海外市場への展開に当たっては、多額の資金需要が生ずることも想定されます。そのような資金需要が生じた場合でも自己資金を充当する方針でおりますが、金融機関からの借入やエクイティファイナンスも選択肢として対応してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループにおいて、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスに関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様となります。

 当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

(2)戦略

当社グループにおける、人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下の通りです。

・人材育成方針

 当社グループの持続的な成長や企業価値向上を実現する上で、人材は競争力の源泉であり、最も重要な経営資源として、人材の確保及び育成を行っております。また、当社グループでは社員一人ひとりが自身のキャリアを長期にわたって発展させるための取り組みを行っており、定期的にキャリア目標の設定を行い、それに基づいた個々の活動計画を作成しています。この活動計画には、新しい技術や業務知識の習得だけでなく、リーダーシップやコミュニケーションなどのソフトスキルの育成も含まれております。

 

・社内環境整備に関する方針

 従業員の働き方については、ライフステージの変化、多様化する価値観に合わせて、生産性高く働ける仕組みを整備しており、全ての人材が活躍できる環境を整えております。

 具体的には、時短勤務制度、在宅勤務制度等を通じた柔軟な働き方への支援や、産前・産後休業を取得した社員が早期に職場復帰して業務に継続的に取り組めるよう支援を行い、多様な人材が活躍できる組織を構築し、安心して働き続けることができる職場環境の整備に努めております。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、リスク管理の統括機関としてリスク管理委員会及びコンプライアンス委員会を設置し、主要なリスク及び機会について識別、評価、管理しております。さらに、当社グループのリスクの対応方針や課題について、優先度を選別・評価し迅速な意思決定を図っております。当社グループのリスク管理委員会及びコンプライアンス委員会については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項 c.リスク管理体制の整備の状況」に記載のとおりであります。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、提出日現在において、人材育成方針や社内環境整備方針に関する具体的な指標及び目標は設定しておりません。しかしながら、当社グループが描くサステナビリティを推進するために、より働きやすい環境の実現や社内制度の改善に向けての取り組みを行っていく必要があると認識しており、今後、人材育成方針及び社内環境整備に関する方針を含めた人的資本に関する指標及び目標について、検討して参ります。なお、当社ミッションを実現し、事業成長を加速するためには、様々な局面において多様な意見を反映することが重要であるという認識の下、女性や中途採用者の管理職への登用を推進しており、当社の女性管理職の比率は約3割となっております。

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると考えられる事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。当社は、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針であります。具体的には、当該リスクを把握し、管理する体制・枠組みとして当社内にコンプライアンス委員会及びリスク管理委員会を設置し、対応いたします。詳しくは「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 a.企業統治の体制の概要 ヘ コンプライアンス委員会・リスク管理委員会」をご参照ください。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、全てのリスクを網羅するものではありません。

(1)当社グループの事業環境に関するリスク等

① 人材サービス業界の動向について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社グループがHR-Tech事業において提供する人材マッチングクラウドサービスは、人材紹介会社や労働者派遣会社等の人材サービス会社を重要な顧客としております。これらの企業の業績は転職市場における転職動向や一般企業の派遣社員に対する派遣需要等の動向に左右され、有効求人倍率の低下や失業率の上昇等により労働市場が悪化した場合、PORTERSの契約ID数が変動することにより当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合リスクについて

発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 HR-Tech事業が属する人材マッチングビジネス向けCRM(Customer Relationship Management)市場は、人材サービス会社を主要な顧客としており、人材サービス分野に対する深い知識や豊富な経験が必要であることから、新たな市場参加者が積極的に参入する脅威は高くないと判断しております。しかしながら、ITやインターネットを用いたサービスは常に進化し続けており、当社製品に代替する製・商品又はサービスが生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)当社グループの事業内容に関するリスク

① 特定のサービスに依存するリスク

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社グループでは、HR-Tech事業の主力製品であるPORTERSの売上が売上の大部分を占めております。当該事業のサービス内容の向上や安定的にサービスを供給できる体制の確保に努めるとともに、新規事業の創出に取り組んでおりますが、アクセス障害等によりサービスを長期間にわたり提供することができなくなった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 解約について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 HR-Tech事業の主たるサービスであるPORTERSはリカーリング型のサービスとして、長期的に利用されることを想定しておりますが、顧客の事業環境の変化等により、契約の更新がされない又は中途解約が行われる可能性があります。当社では、カスタマーサクセスサポートを継続的に実施するとともに、顧客の要望を吟味の上、PORTERSの機能拡充を行うことにより顧客維持に努めております。しかしながら、顧客の人材サービス事業からの撤退や、当社製品に対するニーズの低下により当社の想定を超える解約が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 新規事業に係るリスク

発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小

 当社グループでは事業規模の拡大と収益源の多様化を図るため、積極的に研究開発投資を実行し、その成果を活用した新規事業の創出に取り組んでおります。新規事業については、市場動向の分析、収益化のスケジュールの策定、事業のモニタリング等により投資額が回収できないリスクの低減を図っております。しかしながら、新規事業が安定した収益を生み出すまでには一定の期間が必要となることが予想され、また、予測困難な事象の影響による収益化の遅延や追加コストの支出が発生することも想定されるため、開始した新規事業が期待した成果に結びつかない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 海外での事業展開のリスク

発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社グループでは、経営戦略の一環としてアジアを中心とする海外市場において事業を展開しております。海外市場は、政治、文化、法令及び規制等が日本と異なり、その業務の遂行には不確実性が伴います。海外展開に際しては、専門家の活用等により、現地の事業環境、会計、税務等の調査を行うことによりリスクの低減を図っておりますが、不測の事態の発生により当社の海外展開に支障をきたした場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ システムに関するリスクについて

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社グループでは、インターネット環境を利用して各種サービスを提供しておりますが、人為的ミス、ネットワーク機器の故障、コンピュータウイルス、ネットワーク障害等を起因とするシステム障害が発生する可能性があり、また、ソフトウエアの不具合によりサービスの継続的な提供に支障をきたす可能性があります。当社グループでは過去のシステム障害の発生状況の分析により適切な対応策を策定し、万一トラブルが発生した場合においても短期間で復旧できるような体制を整えております。また、適切なセキュリティ体制を構築することにより、外部からの不正アクセスを回避するよう努めております。さらに、社内において信頼度の高い開発体制を構築・維持し、製品の不具合の発生可能性を低減させております。しかしながら、予測困難な要因によるシステム障害やソフトウエアの重大な不具合が発生した場合、サービス提供の停止等を通じて、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 技術革新への対応について

発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社グループの事業領域であるHR-Tech市場は近年目覚ましい発展を遂げており、技術革新の速度が極めて速いという特徴を有しております。当社では適切なIT人材の確保や社内の開発体制を充実させることにより、新技術への対応が可能な製品開発に努めておりますが、顧客ニーズに見合う技術のキャッチアップに遅れ、技術革新に適時に対応できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)訴訟及び知的財産権に関するリスク等

① 訴訟リスク

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社グループは、法令違反行為を防止するための内部管理体制を構築し、役職員への研修によるコンプライアンス意識の醸成等を通じて法令順守を徹底させることに努めております。現時点では、損害賠償を請求されている事実や訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、顧客企業や取引先、第三者との間で予期せぬトラブルが発生して訴訟を提起された場合、その内容及び結果によっては多額の損害賠償金の支払いが必要となり、あるいはレピュテーションの悪化を通じて売上が減少するなどして、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 商標権、特許権等の知的財産権を侵害するリスク

発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社グループは、知的財産権についてはコーポレートユニットによる一元的な管理を行うとともに、知的財産権の侵害の可能性については調査可能な範囲で対応を行っており、第三者の知的財産権を侵害しないように努めております。しかしながら、万一にも知的財産権の侵害をしてしまった場合には多額の損害賠償金の支払いが必要となり、あるいはレピュテーションの悪化を通じて売上が減少するなどして当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 個人情報の保護について

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は事業運営にあたり個人情報を取り扱っているため、「個人情報の保護に関する法律」等に基づく個人情報保護方針を策定し、管理体制を整備する等、個人情報の適切な管理と流出防止については細心の注意を払っております。しかしながら、何らかの原因により個人情報が外部に流出した場合は、当社の信用低下を招くとともに損害賠償請求訴訟の提起等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)組織体制等に関するリスク

① 特定の人物に依存するリスク

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社の代表取締役社長西森康二及び取締役副社長御子柴智美は、創業当初より経営戦略の策定や事業活動の推進において重要な役割を果たし、当社グループの経営は両者を中心に行われてきました。両者は、当社グループの経営方針の策定や事業戦略の構築、海外展開等において重要な役割を果たしているとともに、提出日現在において上位株主でもあります。当社グループは、事業拡大に伴い両者に依存しない経営体質の構築を進めておりますが、何らかの理由により両者の経営方針に重大な齟齬が生じた場合や、不測の事態が生じた場合、又はいずれかが取締役を退任するような事態が生じた場合には、当社グループの今後の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材の確保・育成について

発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社グループのサービスの更なる向上や社内管理体制の強化のためには、優秀な人材の確保・育成が不可欠であると認識しております。採用面ではダイレクトリクルーティング等を用いて積極的な人材採用を行うとともに、ストック・オプションや従業員持株会を用いたインセンティブ制度の導入により離職を防止することに努めておりますが、適格な人材を十分確保できなかった場合には、当社グループの事業展開に支障が生じ、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 小規模組織であることについて

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は小規模な組織であり、経営資源の効率的な配分を図るために内部管理体制もこれに応じたものとなっております。当社は今後の事業拡大に応じて内部管理体制の充実を図っていく方針でありますが、体制の構築が適時適切に進捗しなかった場合には、事業運営に影響を及ぼすとともに当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(5)その他

① 配当政策

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社は株主に対する利益還元が経営上の重要課題と認識しております。しかしながら、現在は事業の成長過程にあることから、内部留保の拡充による財務基盤の強化や収益基盤の確立に繋がる新規事業への投資を積極的に実施することが企業価値向上に結び付くものと考えております。将来的には利益還元の方策の一つとして配当を行う方針ではありますが、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。

 

② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

発生可能性:大、発生可能性のある時期:1年以内、影響度:中

 当社では、役職員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しており、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は6.1%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

③ 当社株式の流通株式比率について

発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

 当社における株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率について、2024年12月末現在において25.5%にとどまっており、同社が上場維持基準として定める流通株式比率25%以上の水準に近接していることから、当該上場維持基準に抵触するリスクがあります。今後は、当社の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、大株主への一部売出の要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図っていく方針であります。

 

④ 自然災害、事故及び感染症発生により業務継続に影響を及ぼすリスク

発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大

 当社の事業活動においては、クラウドサービスの提供にあたってコンピュータシステムおよびネットワークシステムを活用しております。セキュリティの強化、データのバックアップ体制の構築等のシステムトラブル対応策や感染症発生時における対応策を講じていますが、これらの対応策にも関わらず、想定を超えた自然災害、事故によるシステムトラブルや世界規模での感染症の流行等が発生した場合には、正常な事業活動が阻害され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善などにより、景気は緩やかに持ち直す動きがみられたものの、資源価格の高騰や物価高、中国経済に対する先行き懸念や中東情勢の緊迫化など、依然として不透明な状況が続いております。

 このような経済環境の中、当社グループでは「Matching, Change your business」をミッションに掲げ、世界の雇用にもっとも貢献する企業になるというビジョンのもと、HR-Tech事業においては、人材クラウドマッチングサービスであるPORTERSを提供するとともに、Global HR-Tech事業では、求人媒体であるatB Jobsの開発・運営を行ってまいりました。この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高1,923百万円(前期比21.1%増)、営業利益391百万円(前期比3.9%増)、経常利益387百万円(前期比2.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益268百万円(前期比0.1%増)となりました。

 報告セグメント別の業績は以下のとおりであります。

 

(HR-Tech事業)

 当連結会計年度において、セールス面では、見込顧客の獲得のためにデジタルマーケティングへの投資を継続的に行うとともに、国内外でのPORTERS Magazineの発行によって市場における潜在顧客へのアプローチに努めました。これに加えて、営業部門の人員増強等により営業活動を強化した結果、多数の新規顧客の獲得に繋がりました。PORTERSの開発面では、利便性向上のためのPORTERSの既存機能の改修及び効率的な業務遂行のためのパフォーマンスの改善を行いました。これらの活動の結果、新規顧客のID獲得は良好に推移するとともに、既存顧客のID増加にも貢献し、ID数の伸長にも寄与いたしました。さらに、当社顧客である人材紹介会社や労働者派遣会社において、業務効率化のためにIT投資を積極的に行うという姿勢は継続したことから、PORTERSは堅調に成長し続け、2024年12月末時点で有料ユーザーID数は14,802IDとなりました。この結果、HR-Tech事業における当連結会計年度の売上高は1,886百万円(前期比18.7%増)、セグメント利益は495百万円(前期比31.4%増)となりました。

 

(Global HR-Tech事業)

 当連結会計年度において、オフショア開発サービスについては、バングラデシュ国内のリソースを活用したサービスの提供を行ってまいりました。また、求人媒体であるatB Jobsについて、積極的な営業及び広告活動により求人掲載件数が期初計画通りに順調に伸長するとともに、モバイルアプリのリリースなど、同サイトの利便性向上のための開発及び改修を行いました。この結果、Global HR-Tech事業における当連結会計年度の売上高は37百万円、セグメント損失は104百万円となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は1,653百万円となり、前連結会計年度末に比べ183百万円増加いたしました。

 流動資産は前連結会計年度末に比べ63百万円減少し、1,157百万円となりました。これは主に、PORTERSの利用料の請求時期を変更したこと等による現金及び預金291百万円の減少(※)、請求時期の変更等に伴う売掛金179百万円の増加(※)によるものであります。

 固定資産は前連結会計年度末に比べ246百万円増加し、496百万円となりました。これは主に、株式会社KIKAN flexにおいてソフトウエア開発を行ったことに伴うソフトウエア仮勘定225百万円の増加によるものであります。

 

(負債)

 流動負債は前連結会計年度末に比べ74百万円減少し、307百万円となりました。これは主に、PORTERSの利用料の請求時期を変更したことによる契約負債128百万円の減少(※)によるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は1,346百万円となり、前連結会計年度末に比べ257百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上268百万円による利益剰余金の増加があったことによるものであります。

 

 

※ PORTERSの利用料の請求時期について、2023年12月までは、役務提供月の前月に利用料を請求し、前受金(契約負債)として収受しておりましたが、2024年1月より、利用料を役務提供月の翌月に請求することに変更いたしました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べて291百万円減少し、821百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、88百万円の支出(前年同期は298百万円の収入)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益386百万円の計上、売上債権の増加179百万円、契約負債の減少128百万円、法人税等の支払額119百万円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、244百万円の支出(前年同期は83百万円の支出)となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出194百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、1百万円の収入(前年同期は41百万円の支出)となりました。これは新株予約権の行使による株式の発行による収入1百万円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載はしておりません。

 

b.受注実績

 当社グループの行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、受注実績に関する記載はしておりません。

 

c.販売実績

 当社グループの販売実績は次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

HR-Tech事業

1,886

118.7

Global HR-Tech事業

37

合計

1,923

121.1

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

  2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%を超える相手先がいないため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成されております。連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載の通りであります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 財政状態

 財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に含めて記載しております。

 

b 経営成績

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は1,923百万円となりました。これは主に、マーケティング活動及び営業活動を積極的に実施したことによる新規顧客の獲得によりID数が増加したこと等により、当連結会計年度末のID数が14,802IDとなったことが要因です。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度の売上原価は446百万円となりました。これは主にシステムの安定稼働のためにサーバー費用が増加したことによります。この結果、売上総利益は1,477百万円となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,085百万円となりました。主な要因としては、製品の認知度向上のためにマーケティング投資を積極的に行ったことによるものです。この結果、営業利益は391百万円となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 当連結会計年度の営業外収益は0百万円、営業外費用は4百万円となりました。この結果、当連結会計年度の経常利益は387百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の特別損失は1百万円となりました。また、当連結会計年度における法人税等合計は160百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は268百万円となりました。

 

c キャッシュ・フローの状況の分析

 キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

d 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について

 経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」をご参照ください。

 当該指標の推移については以下の通りであります。

単位:百万円

 

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

売上高

1,022

1,100

1,290

1,587

1,923

営業利益

150

222

338

377

391

ID数

(※1)

計画数(※2)

10,581

9,751

10,232

11,529

14,787

実績数

9,051

9,937

11,067

12,697

14,802

差異数(※3)

△1,530

186

835

1,168

15

※1:期末時点の「PORTERS」の有料稼働ID数となります。

※2:2020年12月期は、新型コロナウイルス感染症の影響により顧客の事業環境が悪化した結果、既存顧客のID数の減少等が生じたため計画数を下回っております。2021年12月期及び2022年12月期は、顧客の事業環境が回復傾向であったことに加え、積極的なマーケティング活動への投資により新規顧客の獲得が順調に進んだため計画数を上回っております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資金需要が生じるものとしては、人件費、外注費、広告宣伝費、地代家賃等の運転資金のほか、事業拡大に伴う採用活動のための採用費であります。財政状態や資金使途を勘案しながら、必要な資金は営業活動により得られたキャッシュ・フロー、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループでは、HR-Tech事業において、マッチング最適化のためのアルゴリズムの研究及びその製品化のための開発投資や、PORTERSの追加機能開発のための開発投資を行っており、当連結会計年度の研究開発費は87百万円であります。